本発明は、血液透析をより効率的に、容易に、かつ/またはより安価なものとする種々のシステムおよび方法を含む、血液透析システムおよび同様の体外血液処置システムに関する。本発明の一態様は、概して、流体流のための新規な流体回路に関する。一組の実施形態では、血液透析システムは、血流路および透析液流路を含むことができ、透析液流路は、平衡回路、混合回路および/または方向付け回路のうちの1つまたは複数を含む。場合によっては、混合回路による透析液の調製は、患者の透析から分離することができる。場合によっては、回路は、少なくとも部分的に1つまたは複数のカセット内に画定され、任意選択的に、導管、ポンプ等と相互接続される。一実施形態では、流体回路および/またはさまざまな流体流路は、少なくとも部分的に、血液透析システムの電気的構成要素から空間的にかつ/または熱的に隔離することができる。場合によっては、透析液流路および/または透析装置と流体連通する気体供給部を設けることができ、それは、駆動されると、透析液が透析装置を通過するように促進し、血流路内の血液が患者に戻るように促進することができる。こうしたシステムは、たとえば、可能な限り多くの血液を患者に戻すことが望ましいいくつかの緊急状況(たとえば、停電)において有用であり得る。本発明の別の態様では、血液透析システムはまた、空気等の制御流体を用いて作動させることができる、ポンプ、弁、ミキサ等、1つまたは複数の流体処理装置も含むことができる。場合によっては、制御流体は、場合によっては脱着可能であり得る外部ポンプまたは他の装置を用いて、流体処理装置に吐出することができる。一実施形態では、流体処理装置のうちの1つまたは複数を概して剛性(たとえば、回転楕円体形状を有する)とすることができ、任意選択的に、装置を第1区画および第2区画に分割する隔壁が装置内に収容されている。
本発明のさまざまな態様は、血液ろ過システム、血液透析ろ過システム、血漿交換システム等、血液透析等のための新規なシステムに関する。したがって、本明細書に記載するさまざまなシステムおよび方法は、血液透析に関して記載されているが、本明細書に記載するさまざまなシステムおよび方法は、他の透析システムに、かつ/または血液または血漿等の他の体液を処置することができるあらゆる体外において適用可能である。
上述したように、血液透析システムは、典型的には、血流路および透析液流路を含む。こうした流路内では、流体の流れは必ずしも直線状ではなく、流体が流路の入口から流路の出口に流れることができる流路内にあらゆる数の「分岐」があり得ることに留意するべきである。こうした分岐の例については詳細に後述する。血流路では、血液は、患者から引き出され、透析装置に通された後、患者に戻される。血液は、透析装置によって処置され、廃棄物分子(たとえば、尿素、クレアチニン等)および水が、血液から透析装置の半透明膜を通して、透析液流路によって透析装置を通過する透析液内に渡される。さまざまな実施形態において、血液は、2本のラインによって患者から引き出すことができ(たとえば、動脈ラインおよび静脈ライン、すなわち「二重針」流)、または場合によっては、血液は、同じ針を通して患者から引き出しかつ戻すことができる(たとえば、同じ針内に2本のラインがともにが存在することができる、すなわち「単一針」流)。さらに他の実施形態では、「Y」字型部位または「T」字型部位が使用され、そこでは、2つの分岐(1つは、引き出された血液のための流路であり、2つ目は返血のための流路である)を有する1つの患者接続部を通して、血液が患者から引き出されかつ患者に戻される。実施形態では、単腔式針またはカテーテルとともに「Y」字型接続部または「T」字型接続部を形成することができる。別の実施形態では、2つの内腔を有する単一のカテーテルまたは針を使用することにより、「二重針」流効果を得ることができる。患者は、血液透析または同様の処置を必要とするいかなる対象でもあり得るが、典型的にはヒトである。しかしながら、血液透析は、犬、猫、猿等の非ヒト対象に対して行うことができる。
透析液流路において、新鮮透析液が調製され、血流路からの血液を処置するように透析装置に通される。透析液はまた、透析装置内で血液の処置のために平衡化することも可能であり(すなわち、透析液と血液との間の圧力が等化され)、すなわち、透析装置を通る透析液の圧力は、透析装置を通る血力の圧力に厳密に、多くの場合正確に、またはいくつかの実施形態では、少なくとも血液の圧力の約1%または約2%の範囲内で一致する。場合によっては、血流路と透析液流路との間でより大きい圧力差(正または負のいずれか)を維持することが望ましい場合もある。透析装置を通過した後、廃棄物分子(後述する)を含む使用済み透析液は、何らかの方式で廃棄される。場合によっては、透析液は、透析装置内での血液の処置の前に、電気抵抗ヒータ等の適切なヒータを用いて加熱される。透析液はまた、たとえば、汚染物質、感染性微生物、残がいを除去するために、限外ろ過装置を用いてろ過することができる。限外ろ過装置は、これら等の種が通過するのを防止するように選択されたメッシュまたは細孔サイズを有することができる。たとえば、メッシュまたは細孔サイズは、約0.3マイクロメートル未満、約0.2マイクロメートル未満、約0.1マイクロメートル未満または約0.05マイクロメートル未満等であり得る。透析液を用いて、血液から廃棄物分子(たとえば、尿素、クレアチニン、カリウム等のイオン、リン酸塩等)および水が、浸透または対流移送によって透析液内に引き込まれ、透析液は、当業者には周知である。
透析液は、通常、通常の血液中の濃度と同様の塩化ナトリウム、重炭酸塩、カリウムおよびカルシウム等のさまざまなイオンを含む。場合によっては、重炭酸塩は、通常の血液中に見られるものより幾分か高い濃度であり得る。通常、透析液は、1種または複数種の原料、すなわち「酸」(酢酸、ブドウ糖、NaCl、CaCl、KCl、MgCl等のさまざまなタイプを含むことができる)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)および/または塩化ナトリウム(NaCl)と、水供給部からの水とを混合することによって調製される。塩、オスモル濃度、pH等の適切な濃度を用いることを含む透析液の調製は、当業者には周知である。詳細に後述するように、透析液は、透析液が血液を処置するために使用される割合と同じ割合で調製される必要はない。たとえば、透析液は、透析と同時に、または透析の前に作成され、透析液保管容器等に保管され得る。
透析装置内では、透析液および血液は、通常、互いに物理的に接触せず、半透膜によって分離される。通常、半透膜は、セルロース、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル等のポリマーから形成され、こうしたポリマーは、イオンまたは小分子(たとえば、尿素、水等)の移送を可能にするが、血液の処置中に塊の移送または対流は可能にしない。場合によっては、ベータ−2−ミクログロブリン等、より大きい粒子さえも膜を通過することができる。他の場合では、たとえば、半透膜を横切る静圧差がある場合、流体、イオンおよび小分子の対流移送が発生する可能性がある。
透析液および血液は、透析装置内において互いに接触せず、通常、膜によって分離される。多くの場合、透析装置は、半透膜から形成された複数の個々のチューブまたは繊維(そこを血液が流れる)が、透析液が流れるより大きい「シェル」によって包囲される(または場合によっては逆も可)、「シェルおよびチューブ」設計に従って構成される。透析装置を通る透析液および血液の流れは、場合によっては、逆流または並流であり得る。透析装置は、当業者には周知であり、多数の異なる商業的供給源から入手可能である。
一態様では、透析液流路は、平衡回路、混合回路および/または方向付け回路等、1つまたは複数の回路に分割することができる。回路は、流体流に対して、必ずしも流体的に隔離される必要はなく、すなわち、流体は、流体回路内外に流れることができることに留意するべきである。同様に、流体は、流体回路が流体連通しているかまたは互いに流体接続されている場合に、一方の流体回路から別の流体回路に進むことができる。本明細書で用いる「流体」は、限定されないが、空気等の気体および水、水溶液、血液、透析液等の液体を含む、流体特性を有するあらゆるものを意味することに留意するべきである。
流体回路は、通常、一定数の流体入力を受け入れ、場合によっては、流体入力に対して1つまたは複数の作業を行った後、流体を適切な出力に仕向ける明確なモジュールである。本発明のいくつかの実施形態では、後述するように、流体回路はカセットとして画定される。具体的な例として、透析液流路は、平衡回路、方向付け回路および混合回路を含むことができる。別の例として、血流路は血流回路を含むことができる。平衡回路内では、透析液は、平衡回路内に導入され、上述したように、透析装置を通過する透析液の圧力が透析装置を通過する血液の圧力と平衡するように、ポンプが透析液に作用する。同様に、方向付け回路内では、新鮮透析液は混合回路から平衡回路に渡され、使用済み透析液は平衡回路からドレンに渡される。混合回路内では、原料および水は混合されて新鮮透析液を形成する。血流回路は、患者から血液を引き出し、血液を透析装置に通し、かつ血液を患者に戻すように使用される。これらの回路については、詳細に後述する。
図2Aに、こうした流体回路を有する血液透析システムの例を、高水準な概略図として概略的に示す。図2Aは、血流回路10を含む透析システム5を示し、血流回路10を通って、血液が患者から透析装置14に進み、処置済みの血液が患者に戻る。この例における血液透析システムは、平衡回路143(内側または内部透析液回路の一部)も含み、それは、限外ろ過装置73を通過した後の透析液を取得し、透析液を透析装置14に通し、使用済み透析液は、透析装置14から平衡回路143に戻る。方向付け回路142(外側または内部透析液回路の一部)が、限外ろ過装置73を通過する前の新鮮透析液を処理する。混合回路25は、たとえば必要に応じて、透析中にかつ/または透析に先立って等、さまざまな原料49および水を用いて透析液を調製する。方向付け回路142はまた、水供給部から水を受け取り、それを、透析液を調製するために混合回路25に渡すことができ、方向付け回路142はまた、平衡回路143から使用済み透析液を受け取り、それを、ドレン31を介して廃棄物としてシステム5から出すことができる。たとえば、血液透析システムの消毒のために、血流回路10と方向付け回路142との間に接続することができる導管67もまた、点線で示す。一組の実施形態では、これらの回路(たとえば、血流回路、平衡回路、方向付け回路および/または混合回路)のうちの1つまたは複数は、カセットを含むことができ、カセットは、その部分を通る流れを制御するために必要な弁およびポンプを組み込んでいる。こうしたシステムの例については詳細に後述する。
図2Bは、本発明の実施形態による血液透析システムの概略図である。この概略図において、血流回路10を通る流れを制御するために血流カセット22が使用され、透析液回路を通る流れを制御するために透析液カセット21が使用される。血流カセットは、カセット22を通る血液の流れを制御する少なくとも1つの入口弁24(他の実施形態では、2つ以上の入口弁が含まれる)とともに、血液中への抗凝血剤の流れを制御する抗凝血剤弁またはポンプ12、および場合によっては一対のポッドポンプを含む可能性がある血流ポンプ13を含む。これらのポッドポンプは、各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる、2006年4月14日に出願された、「体外熱的治療システムおよび方法(Extracorporeal Thermal Therapy Systems and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/792,073号明細書に、または2007年4月13日に出願された、「流体ポンプシステム、デバイスおよび方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されているようなタイプ(またはそのタイプの変形)であり得る。この例におけるポンプおよび弁のすべては、制御システム、たとえば電子およびデジタル制御システムによって制御することができるが、他の実施形態では他の制御システムが可能である。
2つのポッドポンプを設けることにより、血流回路10に血液をより連続的に流すことができるが、他の実施形態では、単一ポッドポンプ等、単一のポッドポンプを使用することができる。ポッドポンプは、(入口および出口における受動的逆止弁の代りに)能動的入口弁および能動的出口弁を含むことができ、それにより、いくつかの条件の下で、血流回路10における流れを反転させることができる。たとえば、血流回路内で流れを反転させることにより、血液透析システムは、血流回路の出口が患者に適切に接続され、それによって処置済み血液が患者に正しく戻っているか否かを確認することができる。たとえば、患者接続箇所が、落下する等により、外れた場合、血流ポンプを反転させることにより、血液ではなく空気を引き込む。この空気は、システムに組み込まれた標準的な空気検出器によって検出することができる。
別の実施形態では、透析装置の下流に位置する血液出口弁26およびエアトラップ/フィルタ19を血流カセット22に組み込むことができる。血流カセット22のポッドポンプおよびすべての弁(ポッドポンプの入口および出口に関する弁を含む)は、空気圧式に作動させることができる。一実施形態における正および負の気体圧力源は、カセットを保持するベースユニットまたはカセットを保持する別の装置によって提供される。しかしながら、他の実施形態では、カセットに流体接続された外部装置、またはシステムに組み込まれたあらゆる装置によって、正および負の気体圧力を提供することができる。ポンプチャンバは、上で参照した、2006年4月14日に出願された、「体外熱的治療システムおよび方法(Extracorporeal Thermal Therapy Systems and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/792,073号明細書において、または2007年4月13日に出願された、「流体ポンプシステム、デバイスおよび方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されているように作動させることができる。たとえば、後述するように、ポンプを制御しストロークの終了を検出することができる。血流カセット22はまた、抗凝血剤のバイアルを受け取る、一体的に形成されたスパイクも含むことができる。
一実施形態では、抗凝血剤ポンプは、(制御流体によって制御することができる)3つの流体弁と、単一のポンピング区画(ただし、他の実施形態では2つ以上のポンピング区画があり得るとを含む。弁は、区画をフィルタ付きエアベントに、抗凝血剤のバイアル(あるいは、袋あるいは瓶等の他の抗凝血剤供給部)に、または血流路に接続することができる。抗凝血剤ポンプは、流体弁の開閉を逐次行い、ポンプ区画内の圧力を、たとえば制御流体を介して制御することによって、操作することができる。抗凝血剤がバイアルから取り除かれると、それに、等しい体積の空気が置き換わり、たとえば、バイアル内の圧力を比較的一定に保持することができる。このように抗凝血剤容量を空気と置き換えることは、たとえば、(i)フィルタ付きエアベントからポンプ区画に弁を開放し、(ii)負圧源をチャンバに接続することによって空気を区画内に引き込み、(iii)エアベント弁を閉鎖し、(iv)区画をバイアルに接続する弁を開放し、(v)正圧源を区画に接続することによって、バイアル内に空気を押し込むことによって行うことができる。エアベントおよびバイアルへの弁ではなくバイアルおよび血液路への弁を用いて、同様の手順でバイアルから血流路内に抗凝血剤を送り込むことができる。
図3Aは、図2Aに示す全体的な概要の具体的な実施形態を示す概略図である。図3Aは、本発明の一実施形態により、血流回路141、平衡回路143、方向付け回路142および混合回路25を、カセットにおいていかに実装し、互いに、かつ透析装置14、限外ろ過装置73および/またはヒータ72と相関させることができるかを詳細に示す。当然ながら、図3Aは、図2Aの全体的な血液透析システムの単なる1つのあり得る実施形態であり、他の実施形態では、他の流体回路、モジュール、流路、配置等が可能であることが理解されるべきである。こうしたシステムの例については、詳細に後述し、また、各々が参照により本明細書に組み込まれる以下の文献に見ることができる。すなわち、2007年2月27日に出願された、「血液透析システムおよび方法(Hemodialysis System and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/903,582号明細書、2007年2月27日に出願された、「血液透析システムおよび方法(Hemodialysis System and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/904,024号明細書、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,680号明細書、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,712号明細書、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,787号明細書、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,793号明細書または2007年10月12日に出願された、「カセットシステム一体型装置(Cassette System Integrated Apparatus)」と題する米国特許出願第11/871,803号明細書である。
図3Aの構成要素については、詳細に後述する。簡単に、血流回路141は、抗凝血剤供給部11と、患者から血液を透析装置14に送り込む血流ポンプ13とを含む。抗凝血剤供給部11は、透析装置に向かって流れる血液の経路にあるように示されているが、他の実施形態では、代わりに、患者に向かって流れる血液の経路に、または血流ポンプ13の上流または下流等、別の好適な位置に配置することができる。抗凝血剤供給部11は、血流ポンプ13から下流のあらゆる位置に配置することができる。平衡回路143は、同様に透析液を透析装置14に送り込む2つの透析液ポンプ15と、バイパスポンプ35とを含む。方向付け回路142は、透析液ポンプ159を含み、それは、透析液を透析液タンク169からヒータ72および/または限外ろ過装置73を通して平衡回路に送り込む。方向付け回路142はまた、平衡回路143から廃棄物流体を取得し、ドレン31に仕向ける。場合によっては、後述するように、たとえば消毒のために、導管67を介して血流回路141を方向付け回路142に接続することができる。透析液は、透析液供給部から透析液タンク169に流れ込む。
いくつかの実施形態では、本発明は、システム内に含まれるかまたはシステムに供給される水と、システム内に含まれるかまたはシステムに供給される少なくとも1種の供給溶質とから透析液を作成する方法を提供する。たとえば、図3A、図3B、図7Aおよび図7Bに示すように、透析液は混合回路25で生成される。水供給部30からの水は、方向付け回路142を通って混合回路25に流れ込む。透析液原料49(たとえば、重炭酸塩および酸)もまた、混合回路25に加えられ、一続きの混合ポンプ180、183、184を用いて透析液が生成され、その後、透析液は方向付け回路142に送られる。許容可能な透析液品質が生成されかつ処置中に維持されるのを確実にするための上記方法およびその制御について、より詳細に後述する。
このシステム例では、流体回路のうちの1つは血流回路、たとえば、図3Aにおける血流回路141である。血流回路では、患者からの血液は、透析装置を通して送り出され、その後、患者に戻される。場合によっては、血流回路は、後述するようにカセットに組み込まれるが、必ずしもそうである必要はない。血流回路を通る血液の流れは、場合によっては、透析液流路を通って、特に透析装置および平衡回路を通って流れる透析液の流れと平衡する。
図4Aに、血流回路の一例を示す。概して、血液は、患者から動脈ライン203を通って血流ポンプ13を介して透析装置14まで流れる(通常の透析中の流れの方向を矢印205によって示すが、動作のいくつかのモードでは、後述するように、流れは異なる方向であり得る)。任意選択的に、抗凝血剤供給部から抗凝血剤ポンプ80を介して、血液中に抗凝血剤を導入することができる。図4Aに示すように、抗凝血剤は、血液が血流ポンプ13を通過した後に血流路に入ることができるが、他の実施形態では、血流路に沿ったあらゆる好適な位置において抗凝血剤を加えることができる。たとえば、図4Bにおいて、血液が血流ポンプ13を通過する前に、抗凝血剤は血流路に入る。これは、たとえば、図30C〜図33Dに示すタイプの血液ポンプカセットが使用され、血流が、血液をカセットの頂部から入りカセットの底部から出るように向けられる場合に、有用であり得る。したがって、血液ポンプチャンバはさらに、透析装置に送り込まれる前の血液中に存在する可能性がある空気を閉じ込める役割を果たすことができる。他の実施形態では、血流ポンプの下流のいずれの場所にも抗凝血剤供給部11を配置することができる。透析装置14を通過し透析を受けた後、血液は、任意選択的に、エアトラップおよび/または血液サンプルポート19を通過して、静脈ライン204を通って患者に戻る。
図4Aに示すように、血流カセット141はまた、血流カセットを通して血液を移動させる1つまたは複数の血流ポンプ13も含む。ポンプは、たとえば、後述するもの等、制御流体によって駆動されるポンプであり得る。たとえば、一実施形態では、ポンプ13は、2つ(またはそれより多い)ポッドポンプ、たとえば、図4Aにおけるポッドポンプ23を備えることができる。各ポッドポンプは、この特定の例では、剛性チャンバを含むことができ、それは、各チャンバを流体区画および制御区画に分割する可撓性隔壁または膜を備えている。これらの区画には4つの入口弁/出口弁があり、流体区画に2つ、制御区画に2つある。チャンバの制御区画の弁は、双方向比例弁とすることができ、一方は第1制御流体源(たとえば、高圧空気源)に接続され、他方は第2制御流体源(たとえば、低圧空気源)または真空シンクに接続されている。区画の流体弁は、ポッドポンプが汲み出しているときに流体流を方向付けるように開閉することができる。ポッドポンプの非限定的な例は、各々が参照により本明細書に組み込まれる、2006年4月14日に出願された、「体外熱的治療システムおよび方法(Extracorporeal Thermal Therapy Systems and Method)」と題する米国仮特許出願第60/792,073号明細書、2007年4月13日に出願された、「流体ポンプシステム、デバイスおよび方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されている。ポッドポンプのさらなる詳細については後述する。2つ以上のポッドポンプが存在する場合、ポッドポンプは、あらゆる好適な態様で、たとえば同期して、非同期で、同相で、または位相がずれて等のように、操作することができる。
たとえば、いくつかの実施形態では、ポンピングサイクルに影響を与えるように、2ポンプ型ポンプを、位相をずらして循環させることができ、たとえば、1つのポンプチャンバが充填される間に第2ポンプチャンバが空になる。あらゆる所望のポンピングサイクルを与えるために、0°(ポッドポンプが同じ方向に作用して一斉に充填され空になる)と180°(ポッドポンプが反対方向に作用し、他方のポンプが空である際に一方のポッドポンプが充填される)との間のいずれかの位相関係を選択することができる。
180°の位相関係により、ポッドポンプカセットを出入りする連続した流れをもたらすことができる。これは、たとえば、たとえば二重針流または「Y」字型あるいは「T」字型接続部と使用する場合に、有用である。しかしながら、0°の位相関係を設定することは、場合によっては、単一針流の場合に、単一針または単腔式カテーテルによって「Y」字型または「T」字型接続がなされる状況において、または他の場合に有用であり得る。0°関係では、ポッドポンプは、最初に針から充填され、その後、同じ針を用いて、血液を、血流路を通して患者に戻す。さらに、場合によっては、透析装置を横切ってプッシュ/プル関係(血液透析ろ過法または連続バックフラッシュ)を達成するために、0°と180°との間の位相での運転を用いることができる。図8A〜図8Cは、こうした位相関係の例のグラフ図である。これらの図では、各ポッドポンプの容量または流れ、各ポッドポンプの容量および両ポッドポンプの総ホールドアップ容量が、時間の関数として示されている。これらの時間および流量は、任意に選択され、ここでは、ポッドポンプ間の関係を異なる位相で示すために提示されている。たとえば、180°位相関係(図8B)では、総ホールドアップ容量は実質的に一定のままである。
場合によっては、図14に示すように、抗凝血剤(たとえば、ヘパリン、または当業者に既知である他のあらゆる抗凝血剤)を血流カセット141内の血液と混合することができる。たとえば、抗凝血剤をバイアル11(または、チューブあるいは袋等の他の抗凝血剤供給部)内に収容することができ、血流カセット141は、バイアルのシールに孔を開けることができる一体的に形成されたスパイク201(一実施形態では針である)によって、抗凝血剤バイアルを受け入れることができる。スパイクは、プラスチック、ステンレス鋼または別の好適な材料から形成することができ、場合によっては、滅菌可能材料とすることができ、たとえば、材料は、材料を滅菌するように十分に高い温度および/または放射線に耐えることができる。例として、図4Aに示すように、血流カセット141とスパイク201を一体的に形成することができ、スパイクの上にバイアル11を配置して、バイアルのシールに孔を開けることができ、それにより、抗凝血剤は血流カセットに流れ込み、血液流路内の血液と混合され、または場合によっては、後述するように透析液と混合され得る。
血流カセット141における、場合によっては計量チャンバとして作用することもできる第3ポンプ80を用いて、カセット内の血液中への抗凝血剤の流れを制御することができる。第3ポンプ80は、ポンプ13と同じ設計である場合もあれば異なる設計である場合もある。たとえば、第3ポンプ80は、ポッドポンプとすることができ、かつ/または第3ポンプ80は、空気等の制御流体によって作動させることができる。たとえば、第3ポンプ80は、膜ベースの定量ポンプまたは隔壁ベースの定量ポンプであり得る。たとえば、図4Aに示すように、第3ポンプ80は、剛性チャンバを含むことができ、それは、チャンバを流体区画および制御区画に分割する可撓性隔壁を備える。チャンバの制御区画の弁を第1制御流体源(たとえば、高圧空気源)に接続することができ、他方の区画を、第2制御流体源(たとえば、低圧空気源)または真空シンクに接続することができる。チャンバの流体区画の弁は、制御区画に応じて開閉することができ、したがって、血液中への抗凝血剤の流れが制御される。こうしたポッドポンプのさらなる詳細については、後述する。一組の実施形態では、後述するように、フィルタ81を通して血流路内に空気を導入することも可能である。
流体管理システム(「FMS」)測定を用いて、膜または隔壁のストローク中にポンプチャンバを通して送り出される流体の容量を測定するか、またはポンピングチャンバ内の空気を検出することができる。FMS方法については、米国特許第4,808,161号明細書、同第4,826,482号明細書、同第4,976,162号明細書、同第5,088,515号明細書および同第5,350,357号明細書に記載されており、それら全体として参照により本明細書に組み込まれる。場合によっては、抗凝血剤ポンプ、透析液ポンプまたは他の膜ベースポンプによって吐出される液体の容量は、FMSアルゴリズムを用いて求められ、そこでは、チャンバ圧力の変化を用いて充填ストロークの終了と吐出ストロークの終了とにおける容量測定値が計算される。充填ストロークおよび吐出ストロークの終了における計算された容量の差が、実際のストローク容量である。この実際のストローク容量を、特定のサイズのチャンバに対する予測されたストローク容量と比較することができる。実際の容量および予測された容量が著しく異なる場合、ストロークは適切に完了しておらず、エラーメッセージを生成することができる。
ストローク容量がスケールによって収集される場合、基準チャンバに対する校正値を求めるために計算を逆方向に行うことができる。FMSシステムは、FMS測定のために大気に排気することができる。別法として、システムは、FMS測定のために正の高圧源および負の低圧源に排気することができる。そうすることにより、特に以下の利点が得られる。(1)高圧源が、圧力が制御された圧力リザーバである場合、リザーバおよびチャンバの圧力センサに対して、チャンバがリザーバに排気しているときにそれらが同様であることを確実にするようにクロスチェックを行う機会がある。これを用いて、圧力センサの破壊または弁の故障を検出することができる。(2)相対的に高い/低い圧力を用いて排気することにより、FMS測定に対して大きい圧力差があり、そのため、より優れた分解能を得ることができる。
血流回路141はまた、場合によっては血流回路141に組み込まれたエアトラップ19も含むことができる。エアトラップ19を用いて、血流路内に存在する可能性がある気泡を除去することができる。場合によっては、エアトラップ19は、重力により血液から存在する可能性があるあらゆる空気を分離することができる。場合によっては、エアトラップ19はまた、血液をサンプリングするためのポートも含むことができる。エアトラップは、当業者には既知である。
本発明の別の態様によれば、エアトラップ19は、血液が透析装置から出た後、かつ患者に戻る前に、血流路に配置される。図4Cおよび図4Dに示すように、エアトラップ19は、球状または回転楕円体形状の容器6を有し、その入口ポート7が頂部の近くにかつ容器の垂直軸からずらして設けられ、出口9が容器の底部に設けられ得る。したがって、トラップの内壁4の湾曲形状は、血液が容器の底部に重力で引き寄せられる際に、内壁に沿って循環するように血液を仕向けることができ、それにより、血液からの気泡の除去が容易になる。透析装置14の出口9から出る血液に存在する空気は、エアトラップ19の頂部から入り、血液が底部の出口から静脈血液ライン204に流れ出る際に、容器の底部に残る。入口ポート7をトラップ19の頂部の近くに配置することにより、容器内に空気が最小限しかまたはまったく存在しないトラップ(「ラン−フル」エアトラップとして)を通して血液を循環させることも可能である。トラップにおける血液の通常の循環に対して空気−血液界面をなくすことができることが、有利であり得る。入口ポート7を容器の頂部にまたはその近くに配置することにより、血液管を通る流体の流れを反転させる(すなわち、トラップ19の底部から頂部に、トラップ19の入口ポートを通って出る)ことにより、トラップに存在する空気の大部分またはすべてをトラップから除去することも可能である。実施形態では、分割隔壁または膜を備えた自己封止ストッパまたは別の構成等の自己封止ポート3が、トラップの頂部に位置し、それにより、容器から(たとえば、シリンジにより)空気を引き出すことができる。消毒中の自己封止ポートの清掃を容易にするために、自己封止膜の血液側面を、トラップの内部の頂部と略同一平面上に配置することができる。自己封止ポート3はまた、血液サンプリング場所として、かつ/または液体、薬物または他の化合物を血液回路に導入するのを可能にする役割を果たすことも可能である。針によるアクセスが企図される場合、封止されたゴム型ストッパを使用することができる。分割隔壁を備える自己封止ストッパを用いることにより、無針システムを用いるサンプリングおよび流体送達が可能になる。
追加の流体接続部82により、血流回路10を患者に、かつ/または血流回路10を含むシステムをプライミングまたは殺菌するために流体源に接続することも可能である。概して、消毒中、動脈ライン203および静脈ライン204は、導管67を介して方向付け回路142に直接接続され、それにより、消毒流体(たとえば、高温の水、およびいくつかの実施形態では高温の水と1種または複数種の化学物質との組合せ)が、透析装置14および血流回路141を通って再循環のために方向付け回路142に戻るように流れることができる。この消毒は、参照により本明細書に組み込まれる、ケンリー(Kenley)らによる米国特許第5,652,898号明細書に示されているものと同様である。これについてはまた、より詳細に後述する。
動脈ライン203内の圧力は、患者から血液を引き出すために、場合によっては大気圧未満の圧力に維持され得る。ポッドポンプが使用される場合、血流ポンプ13内の圧力は、ポンプを動作させるために使用される正および負の圧力リザーバから利用可能な圧力に本質的に制限される可能性がある。圧力リザーバまたは弁が故障した場合、ポンプチャンバ圧力はリザーバ圧力に近づく。これにより、流体圧力が上昇して、ポッドポンプ内の隔壁が「底に達する」(すなわち、表面と接触するためにそれ以上移動することができない)までリザーバ圧力と一致し、流体圧力は、安全限界を超過せず、自然な体液圧力と平衡する。この故障によって、いかなる特別な介入もなしに、ポッドポンプの動作が自然に停止する。
図30〜図33に、血流カセットの具体的な非限定的な例を示す。ここで図30Aおよび図30Bを参照すると、カセットの例示的な実施形態の頂部プレート900の外側が示されている。頂部プレート900は、ポッドポンプ820、828の一方の半体を含む。この半体は、供給源の流体が流れる液体半体である。2つの流体路818、812が示されている。これらの流体路は、それらのそれぞれのポッドポンプ820、828に通じている。
ポッドポンプ820、828は、隆起した流路908、910を含む。隆起した流路908、910により、隔壁(図示せず)がストロークの終了に達した後に、流体がポッドポンプ820、828を流れ続けることができる。したがって、隆起した流路908、910により、隔壁が空気または流体がポッドポンプ820、828に閉じ込められるようにすること、または隔壁がポッドポンプ820、828の入口または出口を閉鎖する(それにより連続した流れが阻止される)ことが最小限になる。隆起した流路908、910は、1つの例示的な実施形態では特定の寸法を有するように示されているが、場合によっては、寸法は、流体流路818、812と等価である。しかしながら、代替実施形態では、隆起した流路908、910の方が、幅が狭く、またはさらに他の実施形態では、隆起した流路908、910は、目的が、流体の所望の流量または挙動を達成するように流体流を制御することであるため、いかなる寸法でもあり得る。いくつかの実施形態では、隆起した流路908、910および流体流路818、812は、寸法が異なる。したがって、隆起した流路、ポッドポンプ、弁または他のあらゆる態様に対して本明細書に示し記載する寸法は、単に例示的な代替実施形態である。他の実施形態が容易に明らかである。
このカセットの1つの例示的な実施形態では、頂部プレートは、スパイク902とともに容器高所部(perch)904を含む。スパイク902は、この例では中空であり、流路に流体接続されている。いくつかの実施形態では、スパイク内に針が取り付けられる。他の実施形態では、針は容器取付具に接続される。
ここで図30Cおよび図30Dを参照すると、頂部プレート900の内側が示されている。隆起した流路908、910は、ポッドポンプ820、828の入口流路912、916および出口流路914、918に接続する。隆起した流路については、より詳細に後述する。
定量ポンプ(図示せず)は、エアベント906への接続部とともに、スパイクの中空路902への接続部を含む。1つの例示的な実施形態では、エアベント906は、エアフィルタ(図示せず)を含む。エアフィルタは、場合によっては、粒子エアフィルタであり得る。いくつかの実施形態では、フィルタは、マイクロ寸法(somicron)の疎水性エアフィルタである。さまざまな実施形態では、フィルタのサイズを変更することができ、場合によっては、サイズは、所望の結果によって決まる。定量ポンプは、エアベント906から空気を取り入れ、スパイクの中空路902を通して第2流体(図示せず)の容器に空気を送り込み、その後、スパイクの中空路902を通して容器(図示せず)からある容量の第2流体を箇所826において流体ライン内に送り込むことによって作用する。図30Cに、定量ポンプに対するこの流体流路を矢印で示す。
ここで図31Aおよび図31Bを参照すると、中間プレート1000の液体側が示されている。内部頂部プレートの流体路に対して相補的な領域を示す。これらの領域は、一実施形態において製造のモードである、レーザ溶接に寄与する表面仕上げを示す、わずかに隆起した軌道である。この図には、流体入口810および流体出口824も示す。
次に、図31Cおよび図31Dを参照すると、一実施形態による中間プレート1000の空気側が示されている。弁孔808、814、816、822の空気側は、(図31Aに示す)中間プレートの流体側の孔に対応する。図33Cおよび図33Dに示すように、隔壁1220は弁808、814、816、822を完成し、隔壁1226はポッドポンプ820、828を完成する。定量ポンプ830は、隔壁1224によって完成される。弁808、814、816、822、832、834、836は、空気圧式に駆動され、隔壁が穴から引き離されると、液体が引き込まれ、隔壁が穴に向かって押されると、液体は押し通される。流体流は、弁808、814、816、822、832、834、836の開閉によって方向付けられる。
図31Aおよび図31Cを参照すると、定量ポンプは3つの孔1002、1004、1006を含む。1つの孔1002は、空気を定量ポンプ内に引き込み、第2孔1004は、空気をスパイク/供給源容器に押し込み、また、液体を供給源容器から引き出し、第3孔1006は、第2流体を定量ポンプ830から流体ラインの箇所826に押し込む。
弁832、834、836は、第2流体定量ポンプを作動させる。弁832は第2流体/スパイク弁であり、弁834は空気弁であり、弁836は、流体ラインの領域826への流体の流れを制御する弁である。
次に図32Aおよび図32Bを参照すると、底部プレート1100の内部の図が示されている。ポッドポンプ820、828、定量ポンプ830および弁808、814、816、822、832、834、836の作動/空気チャンバの内部の図が示されている。ポッドポンプ820、828、定量ポンプ830および弁808、814、816、822、832、834、836は、空気圧式空気源によって駆動される。ここで図32Cおよび図32Dを参照すると、底部プレート1100の外側が示されている。空気の供給源は、カセットのこの側に取り付けられる。一実施形態では、チューブが、弁およびポンプ1102の特徴部分に接続する。いくつかの実施形態では、弁は連動し、2つ以上の弁が同じ空気ラインによって駆動される。
ここで図33Aおよび図33Bを参照すると、第2流体の容器(または他の供給源)1202を備えた、組み立てられたカセット1200が示されており、それは、この実施形態では、上述したように、取り付けられた抗凝血剤が示されている。容器1202は、第2流体の供給源を含み、容器取付具1206によって、中空スパイク(図示せず)に取り付けられる。スパイクは、容器取付具1206内に位置し、容器取付具1206によって反対の位置に保持される容器1202の頂部を貫通するように上方に向けられ得る。スパイクは、図30Cおよび図30Dに示す中空路902と同様の流体チャネルと流体連通する。エアフィルタ1204は、エアベント(図示せず、図30Aにおいて906として示す)に取り付けられるように示されている。図33Aには示さないが、容器の高所部(図30Aにおいて904として示す)は、容器取付具1206の下にある。
場合によっては、定量ポンプは、基準チャンバに関連し、吐出する流体の容量を求めるために圧力変換器によってモニタリングすることができる、FMSポンプである。FMSアルゴリズムは、圧力の変化を用いて、充填ストロークの終了と吐出ストロークの終了とにおいて容量測定値を計算する。充填ストロークおよび吐出ストロークの終了における計算された容量の差は、実際のストローク容量である。この実際のストローク容量を、特定のサイズのチャンバに対する予測されたストローク容量と比較することができる。実際の容量と予測された容量とが著しく異なる場合、ストロークは適切に完了しておらず、エラーメッセージを生成することができる。FMSシステムは、FMS測定のために雰囲気に排気することができる。別法として、システムは、FMS測定のために、正の高圧源および負の低圧源に排気することができる。一組の実施形態では、定量ポンプ(たとえば、抗凝血剤ポンプ)は、プライミングされる。ポンプをプライミングすることにより、定量ポンプおよび流路から空気が除去され、流体容器(たとえば、抗凝血剤バイアル)内の圧力が許容可能であることが確実になる。
定量ポンプは、ポンプチャンバ内の空気がバイアル内に流れ込むように設計することができる。定量ポンプ流体弁のすべてを閉鎖し、外側容積を測定し、ポンプのFMSチャンバを真空にし、弁を開放してバイアルからポンピングチャンバに引き込み、外側容積を(再度)測定し、FMSチャンバに圧力をかけ、弁を開放してバイアルに流体を押し戻し、その後、外側容積を(再度)測定することによって、試験が行われる。流体の流れによってもたらされる外側容積の変化は、ポンピングチャンバの既知の容積に対応するはずである。ポンピングチャンバをバイアルから充填することができない場合、バイアル内の圧力は低すぎ、空気を送り込まなければならない。逆に、ポンピングチャンバの中身をバイアル内に空けることができない場合、バイアル内の圧力は高すぎ、抗凝血剤の一部をバイアルから送り出さなければならない。これらの試験中にバイアルから送り出される抗凝血剤は、たとえばドレンを通して廃棄することができる。
ヘパリンまたは他の薬物を血液路に通常送達している間、バイアル内の圧力を定期的に測定することができる。バイアル圧力が、大気圧未満の所定閾値に近づいている場合、たとえば、定量ポンプは、最初に、定量ポンプエアベントを介してバイアル内に空気を導入して、バイアル内の圧力を正常に戻し、バイアルからの適度に正確な量の薬物の引出しを確実にするのに役立つことができる。バイアル圧力が、大気圧を超える所定閾値に近づく場合、定量ポンプは、バイアルからの薬物の次の引出しの前に、バイアル内にそれ以上空気を注入しないようにすることができる。
図33Cおよび図33Dに、図33Aおよび図12Bに示す組み立てられた流体ポンプカセット1200の組立分解図を示す。いくつかの実施形態では、このカセットは、血液を汲み出すように適合され得る。これらの図に、ポッドポンプの隔壁または膜1226の例示的な実施形態を示す。隔壁のガスケットまたはビードは、ポンピングチャンバとポンプの制御チャンバとの間に隔壁を配置し、(ポンピング側体すなわち頂部プレート900における)液体チャンバと(制御側体すなわち底部プレート1100における)空気/作動チャンバとの間にシールを提供する。隔壁1226の本体すなわちドームの窪んだ凹凸は、特に、ストロークの終了に空気および液体がチャンバから漏れ出るための追加の空間を提供する。
例示的な実施形態では、隔壁1226は、ポンプカセットのポンプ部分のポンププチャンバおよび/または制御チャンバの内壁の形状に概して一致するように、湾曲した、ドーム状または半球形状を有している。ポンピングチャンバまたは制御チャンバの内部剛性壁が異なる形状を有する場合、他の隔壁形状も可能である。好ましい実施形態では、ポンプの制御チャンバからポンピングチャンバを分離する隔壁は、ポンプカセットのポンプ部分のポンピングチャンバおよび/または制御チャンバの内壁の特定の湾曲した輪郭と概して一致する形状または輪郭を有している。ポンプチャンバの剛性内壁輪郭が制御チャンバのものと一致する場合、流体吐出ストローク中にポンピングチャンバ内に広げられたときに、ポンピングチャンバの湾曲した内壁と概して一致し、流体充填ストローク中に制御チャンバ内に広げられたときに、制御チャンバの湾曲した内壁と概して一致する輪郭を有するように、隔壁を成形することができる。
いくつかの実施形態では、図146Bに示すように、可撓性隔壁または膜1226の本体1700は、断面厚さが可変である。選択された隔壁材料の強度、曲げ特性および他の特性に適応するように、より薄いか厚いかまたは可変厚さの膜を使用することができる。隔壁を管理するために、より薄いか厚いかまたは可変の隔壁厚さを使用することも可能であり、それにより、いくつかの領域において他の領域より容易に曲がるように促進し、それによって、ポンピング作用およびポンプチャンバ内の対象、すなわち流体の流れの管理に役立つ。この実施形態では、隔壁は、その中心の最も近くにその最も厚い断面領域があるように示されている。しかしながら、断面厚さが可変の隔壁を有する他の実施形態では、最も厚い領域および最も薄い領域は、隔壁上のあらゆる場所であり得る。したがって、たとえば、相対的に薄い断面を隔壁の中心の近くに配置し、相対的に厚い断面を隔壁の周辺の近くに配置することができる。さらに他の構成が可能である。図147A〜図147Dを参照すると、隔壁のいくつかの実施形態は、その表面または表面実施形態上のさまざまな隆起した特徴、突起または突出部を有するように示されている。平滑面(図147A)ではなく、これらの隆起した特徴としては、たとえば、隔壁の作動および/またはポンピング側のさまざまな場所に位置する可変厚さおよび/または形状の、隆起したリングまたは部分的にあるいは完全に円周上の隆起1702(図147B)、隆起したリブあるいは半径方向隆起1704(図147C)、または複数の凹陥した窪み、隆起したドットあるいはバンプ1706(図147D)を挙げることができる。隔壁の一実施形態では、隔壁は、少なくとも1つの部分において接線勾配を有するが、他の実施形態では、隔壁は、完全に平滑であるかまたは実質的に平滑である。ここで図148Aおよび図148Bを参照すると、隔壁の代替実施形態のうちの1つが示されている。この実施形態では、隔壁は、窪み面またはドット状面を有している。典型的な構造では、隆起した特徴、突出部またはドット1706は、ポンプの液体ポンピングチャンバに面する隔壁の面に形成されている。好都合な成形方法は、隔壁のポンピングチャンバ側を、成形キャビティ内で凸状に形成し、それにより、隔壁の本体は、隔壁のポンピングチャンバ側が凸状形態にあるとき、隔壁の周縁に対して(すなわち、隔壁1226のビード、ガスケットまたはOリング部品1708に対して)弛緩したまたは非応力形状である。したがって、汲出し動作中に隔壁をポンピングチャンバ内に完全に広げるために必要である力を小さくすることができ、隔壁は、流体吐出ストローク中、その成形された非応力状態に向かう傾向がある。
隔壁は、所望の耐久性と汲み出される対象流体との適合性とを有するあらゆる可撓性材料から作製することができる。隔壁は、作動チャンバに適用される流体、液体、または気体の圧力あるいは真空に応じて曲ることができるあらゆる材料から作製することができる。隔壁材料はまた、特定の生体適合性、温度適合性、または隔壁によって送り出されるかまたは隔壁の動きを容易にするためにチャンバに導入され得るさまざまな対象流体との適合性に対して、選択することも可能である。例示的な実施形態では、隔壁は、高伸び率シリコーンから作製される。しかしながら、他の実施形態では、隔壁は、限定されないが、シリコーン、ウレタン、ニトリル、EPDMまたは他のあらゆるゴム、エラストマーあるいは可撓性材料を含む、あらゆるエラストマーまたはゴムから作製される。隔壁は、その弛緩形状、非応力形状または成形形状を越えて引っ張られたときに弾性特性を示すことができる。
隔壁の形状は、複数の変量によって決まる。これらの変量としては、限定されないが、チャンバの形状、チャンバのサイズ、対象流体の特性、ストローク毎に送り出される対象流体の容量、およびハウジングへの隔壁の取付手段またはモードが挙げられる。隔壁のサイズは、複数の変量によって決まる。これらの変量としては、限定されないが、チャンバの形状、チャンバのサイズ、対象流体の特性、ストローク毎に送り出される対象流体の容量、およびハウジングへの隔壁の取付手段またはモードが挙げられる。したがって、これらの変量または他の変量に応じて、隔壁の形状およびサイズは、さまざまな実施形態において異なり得る。
隔壁は、あらゆる厚さを有することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、厚さの範囲は、約0.0508mm(0.002インチ)から約3.175mm(0.125インチ)までの間である。隔壁に使用される材料に応じて、所望の厚さは異なり得る。一実施形態では、約0.381mm(0.015インチ)から約1.27mm(0.050インチ)の範囲の厚さの高伸び率シリコーンが使用される。しかしながら、他の実施形態では、厚さは異なり得る。
例示的な実施形態では、隔壁は、隔壁1226の本体1700等、隔壁の領域の少なくとも一部に実質的にドーム状または回転楕円体(または他の湾曲した)形状を含むように事前に成形される。図149Aおよび図149Bに、ドーム状隔壁の一実施形態を示す。図149Bは、図149Aに示す線に沿った断面図を示す。この場合もまた、ドームの寸法は、上述した変量のうちのいくつかまたはそれより多くに基づいて異なり得る。しかしながら、他の実施形態では、隔壁は、事前に成形されたドームまたは湾曲形状を含まない場合もある。
例示的な実施形態では、隔壁ドームは、液体射出成形を用いて形成される。しかしながら、他の実施形態では、圧縮成形を用いることによってドームを形成することができる。代替実施形態では、隔壁は実質的に平坦である。他の実施形態では、ドームサイズ、幅または高さは異なり得る。
さまざまな実施形態では、さまざまな手段および方法によって、隔壁を適所に配置することができる。一実施形態では、隔壁は、カセットのいくつかの部分の間に締め付けられ、これらの実施形態のうちのいくつかでは、カセットのリムは、隔壁のビード1708を掴む特徴を含むことができる。この実施形態の他のものでは、隔壁は、少なくとも1本のボルトまたは別の装置を用いてカセットに締め付けられる。別の実施形態では、隔壁は、一片のプラスチックとオーバモールドされ、その後、プラスチックがカセットに溶接されるかまたは他の方法で取り付けられる。別の実施形態では、隔壁は、ポンプカセット1710中間体すなわち中間プレート1000と制御側体すなわち底部プレート1100との間にはさみつけられる(たとえば、図146A、図146Bを参照)。隔壁をカセットに取り付けるいくつかの実施形態が記載されているが、隔壁をカセットに取り付けるあらゆる方法または手段を用いることができる。隔壁は、1つの代替実施形態では、カセットの一部に直接取り付けられる。いくつかの実施形態では、隔壁は、隔壁がプレートにはさみつけられる縁または周縁の方が、隔壁の他の領域より厚い。いくつかの実施形態では、相対的に厚い領域は、ガスケット、いくつかの実施形態ではOリング、ビード要素あるいはリング、または中間プレート1000の底部プレート1100に対する、あるいは中間プレート1000のポンプカセット1710のポンピング側体すなわち頂部プレート900への圧縮または溶接による捕捉に好適である他のあらゆる形状の厚化である。いくつかの実施形態では、2つ以上のガスケットまたはビードが、カセットに対する隔壁の取付箇所を提供することができる。他の実施形態では、隔壁は単一ビードまたはガスケットを含む。たとえば、図147A〜147Dの実施形態に、1つのビードまたはガスケット1708を備えた隔壁を示す。
いくつかの実施形態では、隔壁の周縁のガスケット、Oリングまたはビード1708は、隔壁の本体1700と連続している(または同時成形される)。ガスケットと隔壁の主部分または本体との間の遷移部は、ガスケットまたはビードの厚さと隔壁の本体の厚さとの中間の厚さであり得る。別法として、ビードと本体との間の遷移部は、隔壁の本体の厚さと一致する均一な厚さを有することができる。しかしながら、他の実施形態では、ガスケットまたはビードは、隔壁の別個の部品であり得る。いくつかの実施形態では、ガスケットまたはビードは、隔壁と同じ材料から作製される。しかしながら、他の実施形態では、ガスケットまたはビードは、隔壁とは異なる材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、ガスケットまたはビードは、隔壁の周囲にリングをオーバモールドすることによって形成される。ガスケットまたはビードは、ポッドポンプハウジング実施形態を補完するように望まれるあらゆる形状のリングまたはシールであり得る。いくつかの実施形態では、ガスケットまたはビードは圧縮型ガスケットであり、ガスケットまたはビードを適所に締め付ける剛性形状のカセット構成要素に一致する断面形状を得る。
図150に示すように、隔壁のガスケット1708と隔壁の本体1700との間の隔壁1226の遷移部分1712は、中間体と制御側体との間で支持するか、はさみつけるかまたは締め付けることができる。実施形態では、これは、ポンプカセット1710の中間体1000の、中間体の開口部の周縁に沿った突出部または突起1714によって達成され、開口部は、制御側体すなわち底部プレート1100の制御チャンバ1716とカセット1710のポンピング側体すなわち頂部プレート900のポンピングチャンバ1718との間の可撓性隔壁1226の本体1700の移動に適応するように形成されている。締め付ける特徴1714は、この実施形態では、カセットアセンブリの中間体すなわち中間プレート1000から形成されるが、同様の特徴は、カセットアセンブリの制御側体すなわち底部プレート1100から等しく有効に形成されることが可能であり、中間体と制御側体との間の隔壁1226の遷移部分1712をはさみつけるかまたは締め付けるように機能する。
図149Aおよび図149Bに示すように、隔壁1226の本体1700は、隔壁のポンピングチャンバ側がポンプカセット1710のポンピングチャンバ1718側に対して凸状である、弛緩したまたは非応力形態を有するように、成形することができる。したがって、ポンプに設置されると、隔壁のいかなる弾性張力も、隔壁のポンピングチャンバ側が凸形状を呈するときに低減し、かつ/または隔壁がポンピングチャンバ内に広げられたときに最小である。図150および図151に示すように、この場合、隔壁1226のガスケット1708と隔壁1226の本体1700との間の遷移領域1712は、中間体1000の突起1714に巻き付くように湾曲することができ、隔壁1226をポンピングチャンバ1718領域内に本質的に伸ばす(drape)ことができる。この構成は、吐出ストローク中にポンピングチャンバ壁に対して最小限の引伸ばしで隔壁を完全に配置することができるという点でいくつかの利点があり得るが、ポンピングチャンバ内の隔壁と中間体の接合部の近く(そこに対して隔壁がはさみつけられるかまたは締め付けられる)におけるある程度の凝血または繊維状タンパク質連鎖の形成に関連することも、予期せずに分かった。他の説明も存在することができるが、典型的な隔壁形態(ポンピングチャンバ側に対して凸状の弛緩状態)が血液を送り出すときの凝血に関連する可能性がある2つのあり得る理由がある。第1に、隔壁1226の本体1700は、遷移領域1712が弾性的に伸長するまで負圧または真空が制御チャンバ1716にかけられるとき、制御チャンバ1716内に完全に配置される場合もあれば配置されない場合もあり、中間体1000の隔壁接触部分と遷移領域1712の近くまたは遷移領域1712における隔壁の表面との間に不連続性または間隙をもたらす。こうした不連続性または間隙は、血液成分のための付着場所としての役割を果たす可能性があり、それにより血液の停滞および凝血の開始に至る。代りに、吐出ストローク中に隔壁がポンピングチャンバ内に配置される際、隔壁1226の本体1700の周辺部1720は、隔壁が自然に、中間体1000のまたはポンピング側体あるいは頂部プレート900のポンピングチャンバ壁1722と接触するその非応力形態を回復しようとするため、幾分かの血液を閉じ込める可能性がある。こうした血液の閉じ込めにより、血液成分が停滞し凝血が開始することになる可能性がある。いずれの状況でも(または他の理由で)、ポンピングチャンバ壁1722に向かって凸状である非応力形態を自然に呈するように成形された隔壁1226により、繊維状タンパク質連鎖または血塊の形成が促進される可能性があると考えられる。
意外なことに、ポンプカセットのポンピングチャンバ内の血塊または繊維状タンパク質連鎖の発生を、隔壁1226の設計および形態を変更することによって低減させることができることが分かった。図152Aおよび図152Bに示すように、代替実施形態では、隔壁1226の弛緩または非応力状態が、ポンピングチャンバ側に対して凸状の隔壁のポンプ面を有するのではなく、ポンプカセット1710の制御チャンバ1716側に対して凸状の隔壁の制御面を有するように、隔壁1226の本体1700を成形することができる。したがって、ポンプに設置されると、隔壁におけるいかなる弾性張力も、隔壁の制御チャンバ側が凸形状を呈するときに低減し、かつ/または隔壁が制御チャンバ内に完全に広げられたときに最小である。この場合、内部に隔壁が成形される型枠は、枠の凹状部分ではなく型の凸状部分に位置する複数の凹陥した「窪み」を有することができる。図153および図154に示すように、この場合、隔壁1226のビードまたはガスケット1708と隔壁1226の本体1700との間の遷移領域1712は、中間体すなわち中間プレート1000および制御側体すなわち底部プレート1100の締付けまたははさみつけ部分と接触することから現れるため、中間体1000のチャンバに面する壁1722またはポンプ体あるいは頂部プレート900から離れるように自然に湾曲することができる(1724)。この構成のあり得る利点は、充填ストローク中に隔壁1226の本体1700に負圧がかけられる際、隔壁1226の周辺部分1720が、中間体1000のチャンバに面する壁1722から離れるように自然に移動する傾向があるということである。これは、遷移領域1712の伸長と、隔壁1226の遷移領域1712と隔壁1226が接触しているカセットの部分との間の不連続性または間隙の発生とを防止するのに役立つことができる。別法として、吐出ストローク中、ポンピングチャンバ内に配置されることに抵抗する隔壁の弾性力が、隔壁の周辺部分1720がポンピングチャンバ壁1722と完全に接触するのを防止することができ、したがって、その領域における血液の閉じ込めおよび停滞を回避するのに役立つ。したがって、制御チャンバ壁に向かって凸状形態を有するように成形された隔壁の弾性回復力により、隔壁の周辺領域がポンピングチャンバ壁と完全に接触しポンピングチャンバ内にいかなる残留流体も閉じ込める可能性があることを阻止することができる。いくつかのポンプ形態では、この周辺領域における隔壁1226とポンピングチャンバ壁との間にあり得る空間を維持することは、血液または血漿(または他の相対的に粘性の液体)等、タンパク質物質を含有する液体を送り出すときに有用である可能性があり、それは、溶解または懸濁した化合物が、ポンピングチャンバ1718の中間体すなわちポンピング側体のチャンバに面する壁1722に隣接するポンプ領域において凝集する、癒着する、重合するまたは凝固する可能性が低くなるためである。
代替実施形態はまた、隔壁1226の本体1700の周辺部分1720とポンピングチャンバ1718の周辺部1722との間の停滞領域の形成を阻止する役割も果たすことができる。たとえば、ガスケット1708と隔壁1226の本体1700との間の遷移領域1712を拡張するように隔壁1226を成形することができ、それにより、隔壁1226がポンプカセット内に取り付けられたとき、遷移領域1712は、ガスケット1708領域から離れるようにかつカセット1710の中間体1000の締付部分1712と接触しなくなるように出るように、チャンバ内にさらに広げられる。したがって、弛緩状態では、隔壁1226の本体1700は、中間体のチャンバに面する側1722(またはより全体的に、ポンピングチャンバ1718壁の周辺部1722)と接触しないようにさらに弾性的に移動する傾向がある。任意選択的に、隔壁1226の遷移領域1712は、中間体1000のチャンバに面する側1722(またはより全体的に、チャンバ壁の周辺部1722)に向かって曲がることに対するその剛性および抵抗を向上させるように、断面が厚くなるように成形することができる。
本発明のシステムはまた、平衡回路、たとえば図3Aに示すような平衡回路143も含むことができる。場合によっては、血流回路はカセットに組み込まれるが、それは必ずしも必要ではない。平衡回路内では、透析装置を出入りする透析液の流れを、透析装置に入る量と本質的に同量の透析液が透析装置から出るように平衡させることができる(しかしながら、この平衡は、場合によっては、後述するように、バイパスポンプを使用することによって変更され得る)。
さらに、場合によっては、透析液の流れはまた、透析装置内の透析液の圧力が、血流回路を通る血液の圧力と概して等しくなるように、透析装置を通して平衡させることができる。場合によっては、血流回路141および透析装置を通る血液の流れは、透析装置を通る透析液流路内の透析液の流れと同期する。流体が透析装置の半透膜を横切って移動される可能性があるため、かつ平衡回路のポンプが正圧で運転するため、平衡回路ポンプに対して、血流ポンプからの圧力および制御データを用いて、透析装置への吐出ストロークを血液ポンプの吐出ストロークと同期するようにタイミングをとることができる。
図5に、平衡回路の非限定的な例を示す。平衡回路143では、透析液が、任意選択的な限外ろ過装置73から1つまたは複数の透析液ポンプ15(たとえば、図5に示すように2つ)内に流れ込む。この図における透析液ポンプ15は、2つのポッドポンプ161、162と、2つの平衡チャンバ341、342と、平衡チャンバをバイパスするポンプ35とを含む。平衡チャンバは、剛性チャンバから形成され、剛性チャンバがチャンバを2つの別個の流体区画に分割する可撓性隔壁を備え、それにより、一方の区画内への流体の進入を用いて、流体を他方の区画から強制的に出すことができまたはその逆も可能であるように、構成することができる。ポッドポンプおよび/または平衡チャンバとして使用することができるポンプの非限定的な例は、各々が参照により本明細書に組み込まれる、2006年4月14日に出願された、「体外熱治療システムおよび方法(Extracorporeal Thermal Therapy Systems and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/792,073号明細書、あるいは2007年4月13日に出願された、「流体ポンプシステム、デバイスおよび方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されている。ポッドポンプのさらなる例について、以下に詳細に述べる。図5の概略図に示すように、弁のうちの多くは、「連動する」かまたは組として合わせて同期することができ、それにより、組におけるすべての弁が同時に開閉することができる。
より詳細には、一実施形態において、流れの平衡化は以下のように作用する。図5は、弁211、212、213が連動し弁241および242が連動する、弁211、212、213、241、242の第1の同期した、合わせて制御される組とともに、弁221、222、223が連動し弁231および232が連動する、弁221、222、223、231、232の第2の同期した、合わせて制御される組を含む。第1時点では、弁211、212、213、241、242の第1連動組は開放され、弁221、222、223、231、232の第2連動組は閉鎖される。新鮮透析液は平衡チャンバ341に流れ込み、一方で使用済み透析液は透析装置14からポッドポンプ161に流れ込む。弁221が閉鎖されているため、新鮮透析液は、平衡チャンバ342に流れ込まない。新鮮透析液が平衡チャンバ341に流れ込む際、平衡チャンバ341内の使用済み透析液は押し出され、平衡回路143を出る(弁223は閉鎖されているため、使用済み透析液はポッドポンプ161に入ることができない)。同時に、ポッドポンプ162は、ポッドポンプ内に存在する使用済み透析液を平衡チャンバ342内に押し込む(開放している弁213を通して、すなわち、弁242および222は閉鎖されており、使用済み透析液が平衡チャンバ342に流れ込むのを確実にする)。これにより、平衡チャンバ342内に収容された新鮮透析液が平衡回路143を出て透析装置14に入る。また、ポッドポンプ161は、使用済み透析液を透析装置14からポッドポンプ161内に引き込む。これを図18Aにも示す。
ポッドポンプ161および平衡チャンバ341が透析液で充填されると、弁211、212、213、241、242の第1組は閉鎖され、弁221、222、223、231、232の第2組は開放される。212が閉鎖され、このとき弁221は開放されているため、新鮮透析液は、平衡チャンバ341ではなく平衡チャンバ342に流れ込む。新鮮透析液が平衡チャンバ342に流れ込む際、このとき弁213は閉鎖されているため、チャンバ内の使用済み透析液は押し出され、平衡回路を出る。また、このとき、ポッドポンプ162は、使用済み透析液を透析装置からポッドポンプ内に引き込み、弁232はこのとき閉鎖され、弁222はこのとき開放しているため、使用済み透析液は、ポッドポンプ161内に流れ込むのが防止される。弁232および211が閉鎖し、弁223が開放しているため、ポッドポンプ161は、(先のステップからの)ポッドポンプに収容された使用済み透析液を平衡チャンバ341内に押し込む。これにより、平衡チャンバ341内に収容された新鮮透析液が、透析装置内に向けられる(弁241がこのとき開放し、弁212がこのとき閉鎖されているため)。このステップの最後に、ポッドポンプ162および平衡チャンバ342は、透析液で充填されている。これにより、システムの状態は、本明細書の始めの形態に戻り、したがって、サイクルは繰り返して、透析装置を往復する透析液の一定の流れを確実にすることができる。これを、図18Bにも示す。実施形態では、平衡チャンバ弁の制御側における流体(たとえば空気)圧が、適切に機能していることを確実にするためにモニタリングされる。
具体的な例として、弁の第1連動組用のポートに対して、真空(たとえば、約27.586kPa(4psi)の真空)をかけることができ、それによってそれらの弁が開放され、一方で、弁の第2連動組に対して正圧(たとえば、約137.931kPa(20psi))(1psiは6.896kPa)の気圧)がかけられ、それらの弁が閉鎖される(その逆も可)。ポッドポンプは、各々、平衡チャンバ341、342のうちの一方の空間のうちの一方に透析液を送り込む。透析液を平衡チャンバの空間内に強制的に送ることにより、隔壁により、平衡チャンバ内の他方の空間から等しい量の透析液が押し出される。各平衡チャンバ内では、一方の空間は、透析装置に向かう新鮮透析液によって占有され、他方の空間は、透析装置からの使用済み透析液によって占有される。したがって、透析装置を出入りする透析液の容量は実質的に等しく維持される。
平衡チャンバに関連するいかなる弁も、あらゆる好適な圧力の下で開閉することができることに留意するべきである。しかしながら、弁閉鎖を開始し行うために、弁を閉鎖して維持するために最終的に使用される圧力(「保持圧力」)より低いかまたはより制御された圧力をかけることが有利であり得る。弁の閉鎖をもたらすために保持圧力と等価な圧力をかけることにより、すでに閉鎖した下流の弁が漏れるほど流体ラインにおいて過渡的な圧力上昇がもたらされる可能性があり、それは、透析装置を出入りする透析液の流れの平衡化に悪影響を及ぼす。透析液ポンプおよび平衡チャンバの入口弁および/または出口弁を、より低いかまたは制御された圧力で閉鎖することにより、透析装置を出入りする透析液の流れの平衡化を改善することができる。実施形態では、たとえば、これは、弁の流体制御ラインにかけられている圧力に対してパルス幅変調(「PWM」)を採用することにより、行うことができる。以下の理論に限定されることなく、弁を「緩閉鎖する」ために適度なまたは制御された圧力を使用することは、たとえば以下の理由で有効であり得る。(1)場合によっては、平衡チャンバ内の圧力は、閉鎖された平衡チャンバ出口弁の保持圧力を過渡的に超える可能性がある(たとえば、弁隔壁の後方の流体の質量に抗して平衡チャンバ入口弁を閉鎖するために過剰な圧力をかけることによって生じる)。流体ラインにおける圧力の過渡的な上昇は、閉鎖された出口弁の保持圧力を超える可能性があり、それにより、平衡チャンバの両側の間で流体が漏れ、流体送達が不均衡になる。(2)また、急速な弁閉鎖につながる、平衡チャンバと平衡チャンバ弁との間の空気または気体の存在により、平衡チャンバの反対側からの流体と平衡せずに、過剰な流体が平衡チャンバを通して押し流される可能性がある。
隔壁が平衡チャンバの壁に近づく(それにより、平衡チャンバの一方の容積が最小に近づき、他方の容積が最大に近づく)と、弁の第1連動組用のポートに対して正圧がかけられ、それによりそれらの弁が閉鎖し、一方で、弁の第2連動組に真空がかけられ、それによりそれらの弁が開放する。そして、ポッドポンプが各々、平衡チャンバ341、342のうちの他方における空間のうちの一方に透析液を送り込む。この場合もまた、透析液を平衡チャンバの空間内に強制的に送ることにより、隔壁により、等しい量の透析液が平衡チャンバの他方の空間から押し出される。各平衡チャンバにおいて、一方の空間が、透析装置に向かう新鮮透析液によって占有され、他方の空間が透析装置からの使用済み透析液によって占有されるため、透析装置を出入りする透析液の容量が等しく維持される。
また、図5にはバイパスポンプ35も示されており、バイパスポンプ35は、ポッドポンプ161または162を通過することなく平衡回路143を通るように透析装置14からの透析液の流れを仕向けることができる。この図では、バイパスポンプ35は、上述したものと同様のポッドポンプであり、剛性チャンバと、各チャンバを流体区画および制御区画に分割する可撓性隔壁とを備えている。このポンプは、上述した他のポッドポンプ、定量ポンプおよび/または平衡チャンバと同じである場合もあれば異なる場合もある。たとえば、このポンプは、各々が参照により本明細書に組み込まれる、2006年4月14日に出願された、「体外熱治療システムおよび方法(Extracorporeal Thermal Therapy Systems and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/792,073号明細書、または2007年4月13日に出願された、「流体ポンプシステム、デバイスおよび方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されているようなポンプであり得る。ポッドポンプについてはまた、詳細に後述する。
このポンプを作動させるために制御流体が使用されるとき、透析液は、透析装置を通る血液の流れに対して平衡しないように透析装置を通して引き出すことができる。透析装置の透析液出口側におけるバイパスポンプ35の独立した作用により、透析装置内の血液からの流体のさらなる正味の限外ろ過がもたらされる。これにより、患者から透析装置を通ってドレンに向かう液体の正味の流れをもたらすことができる。こうしたバイパスは、たとえば、患者が腎臓を通して流体(主に水)を減少させることができないために増大することが多い、患者が有する流体の量を低減させるのに有用であり得る。図5に示すように、バイパスポンプ35は、ポッドポンプ161および162の動作とは無関係に、制御流体(たとえば、空気)によって制御することができる。この構成により、患者からの正味の流体除去を、こうした流体を患者から引き出すことができるように平衡ポンプ(内部透析液ポンプおよび外部透析液ポンプ)を動作させる必要なしに、容易に制御することができる。この構成を用いて、患者からの流体の正味の引出しを行うために、内部透析液ポンプを血液ポンプと平衡しないようにまたは位相をずらして動作させる必要はない。
透析装置を横切る流れの平衡化を行うために、透析装置に入る流れが透析装置から出る流れと概して等しいことを確実にするように、血流ポンプ、平衡回路のポンプおよび方向付け回路のポンプ(後述する)を協働するように動作させることができる。限外ろ過が必要である場合、限外ろ過ポンプ(ある場合)は、所望の限外ろ過速度を達成するために、他の血液ポンプおよび/または透析液ポンプのうちのいくつかまたはすべてとは独立して運転することができる。
透析液の脱ガスを防止するために、平衡回路のポンプは、常に大気圧より高い圧力で維持される可能性がある。しかしながら、対照的に、血流ポンプおよび方向付け回路ポンプは、大気圧未満の圧力を用いて、充填ストロークのためにチャンバ壁に向かって隔壁を引っ張る。流体が透析装置を横切って移動する可能性があるため、かつ平衡回路のポンプが正圧で動作するため、平衡回路ポンプは、平衡した流れモードで動作するために、血流ポンプからの情報を使用することができる。したがって、透析装置の平衡回路チャンバの吐出ストロークを、血液ポンプの吐出ストロークと同期させることができる。
一組の実施形態では、こうした平衡モードで運転しているとき、血流ポンプからの吐出圧力がない場合、平衡回路ポンプの隔壁は、透析装置を横切って流体を血液内に押し込み、平衡回路の別のポッドは完全に充填されない。この理由で、血流ポンプは、それが能動的にストロークを吐出しているときを報告する。血流ポンプがストロークを吐出しているとき、平衡ポンプは動作する。血流ポンプが血液を吐出していないとき、透析装置から平衡ポンプへの流れを制御する弁(および、上述したようなこれらの弁と連動する他の平衡弁)を閉鎖して、血液側から透析液側へのいかなる流体の移動も発生させないようにすることができる。血流ポンプが吐出していない間、平衡ポンプは有効にフリーズし、血流ポンプが再度吐出を開始すると、ストロークは継続する。ポンプが最小限のインピーダンスで大気圧を超えて動作するのを確実にするために、平衡ポンプ充填圧力を最小の正の値に設定することができる。また、透析装置の両側の圧力を概して一致させ、内部ポンプの吐出ストローク中に透析装置を横切る流れを最小限にするために、平衡ポンプ吐出圧力を血流ポンプ圧力に設定することができる。
場合によっては、透析装置に対する血液ポンプの吐出圧力より高い圧力で、透析ポンプが透析装置に透析液を吐出するようにすることが有利であり得る。これは、たとえば、チャンバ全体分の清浄な透析液を透析装置に送達することができることを確実にするのに役立つことができる。実施形態では、透析液ポンプにおける吐出圧力は、内部ポンプがそのストロークを終了させるのに十分高いが、透析装置内の血液の流れを停止させるほど高くはないように設定される。逆に、透析液ポンプが透析装置から使用済み透析液を受け取っているとき、場合によっては、透析液ポンプ内の圧力を透析装置の血液側の出口圧力より低く設定することも有利であり得る。これは、受け取っている透析液チャンバを常に充填することを確実にするのに役立つことができ、それにより、平衡チャンバでフルストロークを完了することができるために十分な透析液があることが確実になる。これらの差圧によってもたらされる半透膜を横切る流れは、互いを打ち消し合う傾向があり、さもなければ、ポンプアルゴリズムは、透析装置の透析液側および血液側における平均圧力を一致させようとする。
透析装置の膜を横切って発生する対流は、わずかな増分での透析装置を横切って往復する前後の一定のかつ繰り返されるシフト(正味の限外ろ過をもたらさない)は、それにも関わらず、血液管および透析装置内の凝血の形成を防止するのに役立つことができ、それにより、ヘパリンの投与量の減少を可能にし、透析装置の耐用年数を長くし、透析装置の清掃および再使用を容易にすることができるため、有益であり得る。バックフラッシュには、対流によるより優れた溶質除去を促進するというさらなる利点がある。別の実施形態では、血液の吐出ストロークの透析装置を通る透析液の吐出ストロークとの同期に対してわずかに調整を行うことにより、透析装置の膜を横切る連続したある形態のバックフラッシュもまた行うことができる。
いくつかの実施形態では、内部透析液カセット143のポッドポンプ15(図89)は、透析装置14の血液側における閉塞を最小限にするために位相を調整することができる。内部透析液ポップポンプ15は、内部透析液ポンプ15の各ストロークによって液体を透析装置14の血液側にかつ透析液側に戻るように交互に流すために、血液ポンプ13とともに作用するように位相を調整することができる。ポンプストローク、弁開放、弁閉鎖およびポップポンプ作動圧のタイミングは、自動コンピュータ6106によって制御することができる。自動コンピュータは、ポンプ、弁を制御することができ、空気圧分散モジュール9000を介して圧力データを受け取る。透析装置の膜を横切って往復して流体を押し流すように内部透析液ポンプの位相を調整することには、限定されないが、血液からの大分子溶質の除去を促進し、透析装置の閉塞を最小限にすることを含む利点がある。
透析装置14を通る流れは、図89に概略的に示すポンプおよび弁によって制御することができる。図12Kに、血液ポンプおよび透析液ポンプのタイミングおよび機能の一例をプロットしている。血液ポンプのポッドポンプ23a、23bは、180度位位相をずらして動作して、透析装置14に略連続した血液の流れを提供することができる。清浄な血液および幾分かの透析液流体は、BTSにおいて透析装置から静脈ライン204に流れることができる。新鮮透析液は、平衡ポッド342から透析装置に流れ込むことができ、一方、血液側からの使用済み透析液および流体は受取側ポッドポンプ161に流れ込む。清浄な透析液は、他方の透析液ポンプ162が使用済み透析液を平衡ポッド342に強制的に流し込む際に、平衡ポッド342から流れることができる。使用済み透析液および清浄な透析液は、隔壁によって分離される。他方の平衡ポッド341は、次のポンプストロークを準備して外部透析液ポンプ159からの新鮮透析液で充填することができる。
下流弁を開放し、上流弁を閉鎖し、193によって測定されるポッド圧力を上昇させることにより、血液ポンプ23Aに対して血液を透析装置14に吐出させることができる。上流弁を開放し、上流ラインを閉鎖し、197によって測定される周囲圧力未満に圧力を低下させることにより、血液ポンプ23bに対して動脈ラインから充填することができる。
透析装置の膜を横切って流体を押し込みかつ引き出す1つの例示的な手順は、時点12411で、血液ポンプ23bが充填される一方で、血液ポンプ23Aが透析装置に血液を吐出することで開始することができる。吐出ポンプおよび充填ポンプの測定された圧力は、それぞれ12420および12430にプロットされている。圧力12420、12430は、可変弁198、199が弁ポートのサイズを正弦曲線状に変化させることに応じて周期的に変化することができる。自動コンピュータ6106は、血液ポンプにおけるストロークの終了を検出するために、圧力トレース12420および12430をモニタリングすることができる。
内部透析液のポンプおよび弁は、透析装置14内の血液からの流体が時点12411と時点12412との間で受取側透析液ポンプポッド161に流れ込むことができるように制御することができる。透析装置14への清浄な透析液の流れを阻止するように、弁231を閉鎖することができる。弁232を開放することができ、血液からの流体が透析液ポンプポッド161に流れ込むのを可能にするように、ポンプポッド圧力12440を低くすることができる。血液ポンプ13は、この期間12410中、透析装置を通して血液を流すことができる。
時点12412と時点12413との間で、透析装置の膜を横切る流れをゼロまたは最小限にして、透析装置を通して透析液を流すように、内部透析液弁およびポンプを制御することができる。ポンプポッド162内の空気圧12450が、清浄な透析液を平衡ポッド342から透析装置14を通してポンプポッド162内に強制的に流すことができるように、弁231および213を開放することができる。ポンプ162は、使用済み透析液を膜341Cの後側に流すことにより、平衡ポッド342から清浄な透析液を強制的に引き出すことができる。血液ポンプ13は、この期間中、透析装置に血液を流し続けることができる。ポンプポッド161および162内の圧力は、可変弁163、164が弁ポートのサイズを正弦曲線状に変化させるのに応じて周期的に変化することができる。自動コンピュータ6106は、透析液ポンプ15におけるストロークの終了を検出するために、圧力トレース12440および12450をモニタリングすることができる。
透析液ポンプストロークの最後の部分の間、透析液は透析装置の血液側に流れ込むことができる。受取側ポンプポッド161は、時点12413において完全に充填することができ、一方で、吐出ポンプ162は、時点12414まで平衡ポッド342から新鮮透析液を送り出し続ける。平衡ポッドからの透析液は、満杯のポンプポッド161に入ることができない可能性はなく、代わりに、透析装置の膜を横切って流れて血液回路に入ることができる。血液ポンプ13は、この期間の一部またはすべての間に、透析装置に血液を流し続けることができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、透析装置の血液側に流れ込む透析液は、膜チューブの細孔、中心および端部から相対的に大きい溶質を取り除くことができると考えられる。表面から取り除かれると、相対的に大きい溶質は、膜を通してまたは膜を横切って流れる可能性が高い。
1つの例示的な方法では、透析液ポンプ161、162の作用を停止させることができ、一方で、受取側ポンプポッド161が満杯でない場合、血液ポンプ13は一方のポンプポッドから他方のポンプポッドに切り替える。切り替える血液ポンプからの圧力信号による間違ったストロークの終了を回避するために、透析液ポンプを停止させることができる。自動コンピュータ6106は、受取側ポンプポッド161が満杯になる前に、血液ポンプ13に対するストローク終了状態を検出した場合、平衡チャンバ出口弁231およびポンプ入口弁232を閉鎖することができる。血液ポンプが再始動すると、弁231および232を再度開放することができる。受取側ポンプポッド161が満杯になった後に血液ポンプポッドがストロークを完了した場合、吐出側ポンプポッド162がそのストロークを完了するまで、血液ポンプは待機する。自動コンピュータは、ストローク終了状態を判断するための相関数に基づいて、ポンプポッドストロークが完了している、または透析液ポンプポッドが満杯になっていると判断することができる。
透析装置の膜に損傷を与えることなく透析液および血液流の所望の方向を確実にするために、透析液回路内のポンプポッド圧力を最適に設定することができる。吐出ポッドポンプ162内の圧力を、血液吐出圧力より約7.199kPa(54mmHg)高く設定することができる。受取側ポンプポッド161を、周囲圧力より約3.333kPa(25mmHg)高いか、または血液吐出圧力から膜間圧力を引いた圧力のうちの高い方に調整することができる。充填または受取側ポンプポッド162が満杯になった後、吐出ポンプポッド圧力を、透析装置の最大膜間圧力まで増大させることができる。
1つの例示的な方法では、血液ポンプ198、199における可変弁は、各ポンプのストローク終了検出を別個に測定することができるように、透析液ポンプ163、164の可変弁とは異なる周波数で循環させることができる。別の場所で記載したように、ポンプポッドにおける可変弁の絞りは、平均値の周辺で正弦曲線状に変化する。この絞りの小さい変化により、起動チャンバ内の測定圧力も同様にわずかに変化する。別の場所で記載した相関フィルタが、圧力が可変弁変動にいかに十分に応答するかの数値的尺度を生成する。結果としての相関数を用いて、ストローク終了を求めることができる。血液ポンプポッド23a内の圧力変動は、充填ポンプポッド161のセンサによって検出することができ、それは、間違ったストローク終了読取値をもたらす可能性がある。しかしながら、相関フィルタは、可変弁周波数とは異なる周波数の圧力信号を拒否する。2つのポンプ161、23aからの圧力信号を隔離するために、血液ポンプ可変弁がディザリングする周波数の90%の周波数で、可変弁をディザリングさせることができる。
1つの例示的な方法では、吐出ポンプ遅延12410は、透析液ストロークの終了において所望の量の透析液を血液回路内に吐出するように最適に調整される。単純な比例閉ループコントローラが、血液回路12416内への透析液流に対する所望の時間を達成するように、吐出ポンプ遅延12410を変化させる。コントローラは、流れ回路の血液側および/あるいは透析液側の流れインピーダンスの変化、または透析装置の膜内外インピーダンスの変化に対して適合するように、ポンプ遅延時間を調整することができる。
そして、手順が繰り返され、ポンプポッド162はこのとき、透析装置の血液側から流体を受け取るプロセスを開始する受取側ポンプであり、一方で、吐出側ポンプ161は固定されている。そして、受取側ポンプ162が満杯になるまで、両ポンプ161および162は移動する。この時点で、ポンプ161は、継続し、血液側に透析液を吐出する。
ポンプ、弁および平衡チャンバにより透析装置を横切って往復する小さい周期的な流れをもたらす方法は、1つの例示的な方法である。他の方法およびポンプ/弁実施形態が企図される。
内部透析液および血液カセットの記載したハードウェアならびに透析液の位相を調整する方法は、一実装形態である。流体を、周期的に強制的にフィルタを横切って往復させるために、半透過性フィルタの少なくとも一方の側において1つまたは複数のポンプの位相を調整する同じ方法を、限定されないが限外ろ過装置を含む他の半透過性フィルタを通る液体の流れに適用することができる。
停滞している血流により凝血がもたらされる可能性があるため、治療中、血流を可能な限り連続的に維持することが概して有益である。さらに、血流ポンプにおける吐出流量が不連続である場合、平衡ポンプは、そのストロークをより高頻度で休止しなければならず、それにより、透析液の流量が不連続かつ/または低くなる。
しかしながら、血流ポンプを通る流れは、さまざまな理由で不連続である可能性がある。たとえば、患者に対して安全な吐出圧力を提供するために、圧力は、血流ポンプ内でたとえば約+79.993kPa(+600mmHg)および/または約−46.662kPa(−350mmHg)に制限される可能性がある。たとえば、二重針流の間、血流ポンプの2つのポッドポンプは、互いに180°位相をずらして動作するようにプログラムすることができる。圧力に制限がなかった場合、この位相調整は常に行うことができる。しかしながら、患者に対して安全な血液の流れを提供するために、これらの圧力は制限される。インピーダンスが充填ストロークにおいて高い(針が小さい、非常に血液の粘性が高い、患者アクセスが不十分である等による)場合、負の圧力限界に達する可能性があり、充填流速は、所望の充填流速より低速になる。したがって、吐出ストロークは、先の充填ストロークが完了するまで待機しなければならず、それにより、血流ポンプの吐出流速に休止がもたらされる。同様に、単一針流の間、血流ポンプは0°位相で運転される可能性があり、そこでは、2つの血流ポンプポッドポンプは、同時に空になりかつ充填される。両ポッドポンプが充填されたとき、2つのポッドポンプの容量が吐出される。実施形態では、起動の手順により、第1ポッドポンプ、次いで第2ポッドポンプが充填され、その後、第1ポッドポンプ、次いで第2ポッドポンプが空になる。したがって、単一針または単腔構成における流れは不連続である可能性がある。
圧力飽和限界を制御する1つの方法は、所望の流速を充填ストロークおよび吐出ストロークの最も遅い流速に制限するというものである。これにより、血液吐出流速がより低速になるが、流速は依然として既知であり、常に連続的であり、それにより、より正確かつ連続的な透析液流速がもたらされる。単一針動作において血液流速をより連続的にする別の方法は、ポッドを充填するために最大圧力を使用することであり、そのため、充填時間が最小限になる。そして、所望の吐出時間は、所望の総ストローク時間から充填ストロークにかかった時間を引いた時間に設定することができる。しかしながら、血液流速を連続的にすることができない場合、血流ポンプが充填されているときに透析液ポンプが停止する時間を補うために、血液流速が吐出しているときに、透析液流速は、プログラムされた値より高いように、調整されなければならない可能性がある。血液の流れが連続的でないほど、透析装置への血液吐出中に、透析液流速をより上向きに調整しなければならない可能性がある。これが正確なタイミングで行われる場合、いくつかのストロークにわたって取得される平均透析液流速は、依然として所望の透析液流速に一致することができる。
図34〜図36に、平衡カセットの非限定的な例を示す。図34Aに示すカセットの一構造では、弁は、同時に駆動されるように連動する。一実施形態では、弁832、834、836、838の4つの連動する組がある。場合によっては、連動する弁は、同じ空気ラインによって駆動される。しかしながら、図の実施形態では、各弁はそれ自体の空気ラインを有する。例示的な実施形態に示すように弁を連動させることにより、上述した流体流が生成される。いくつかの実施形態では、弁を連動させることにより、要求に応じて流体経路を規定するように適切な弁が開閉されることも確実になる。
この実施形態では、本明細書においてより詳細に記載するように、流体弁はボルケーノ(volcano)弁である。流体流路の概略について、特定の流路に関して記載したが、さまざまな実施形態では、流路は、弁およびポンプの作動に基づいて異なり得る。さらに、入口および出口ならびに第1流体および第2流体という用語は、単に説明の目的で(このカセット、および同様に本明細書に記載する他のカセットに対し)使用されている。他の実施形態では、入口は出口である場合があり、同様に、第1流体および第2流体は、異なる流体または異なる流体のタイプまたは組成であり得る。
図35A〜図35Eを参照すると、カセットの例示的な実施形態の頂部プレート1000が示されている。最初に図35Aおよび図35Bを参照すると、頂部プレート1000の上面図が示されている。この例示的な実施形態では、頂部プレートのポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822は、同様に形成されている。この実施形態では、ポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822は、底部プレートと組み立てられた場合、総容量は38mlである。しかしながら、さまざまな実施形態では、総容量は、この実施形態におけるものより大きい場合もあれば小さい場合もある。第1流体入口810および第2流体出口816が示されている。
ここで図35Cおよび図35Dを参照すると、頂部プレート1000の底面図が示されている。この図には、流体路が示されている。これらの流体路は、中間プレート900において図34Bに示す流体路に対応している。頂部プレート1000および中間プレートの頂部は、ポッドポンプ820、828に対して、かつ平衡ポッド812、822の一方の側に対して、カセットの液体または流体側を形成する。したがって、液体流路の大部分が頂部プレートおよび中間プレートにある。平衡ポッド812、822の流路の他方の側は、図36A〜図36Bに示す、ここには示さない底部プレートの内側に位置する。
依然として図35Cおよび図35Dを参照すると、ポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822は溝1002を含む。溝1002は、特定の形状を有するように示されているが、他の実施形態では、溝1002の形状はあらゆる望ましい形状であり得る。図35Cおよび図35Dに示す形状は例示的な実施形態である。溝1002のいくつかの実施形態では、溝は、ポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822の流体入口側と流体出口側との間に通路を形成する。
溝1002は流体路を提供し、それにより、隔壁がストロークの終了にあるとき、入口と出口との間に依然として流体路があり、それにより、ポッドポンプまたは平衡ポッドにおいて流体または空気のポケットが閉じ込められない。溝1002は、ポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822の液体側および空気側の両方に含まれる(ポッドポンプ820、828の空気側および平衡ポッド812、822の反対側に関して図36A〜図36Bを参照されたい)。
1つの例示的な実施形態では、ポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822の液体側は、入口流路および出口流路が連続しているが外側リング1004もまた連続しているという特徴を含む。この特徴により、隔壁(図示せず)に形成されたシールを維持することができる。
図35Eを参照すると、頂部プレート1000の例示的な実施形態の側面図が示されている。ポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822の連続した外側リング1004も示されている。
ここで図36A〜図36Eを参照すると、底部プレート1100が示されている。最初に図36Aおよび図36Bを参照すると、底部プレート1100の内面が示されている。内面は、中間プレート(図示せず、図34Eを参照)の底面と接触する側である。底部プレート1100は空気ライン(図示せず)に取り付けられる。ポッドポンプ820、928および中間プレートの弁(図示せず、図34Eを参照)を作動させる空気のための対応する入口孔を、1106で示す。孔1108、1110は、図34C、824、826にそれぞれ示す第2流体入口および第2流体出口に対応する。ポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822の対応する半体もまた、流体路に対する溝1112と同様に示されている。頂部プレートとは異なり、ポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822の底部プレートの対応する半体は、ポッドポンプ820、828と平衡ポッド812、822との間で違いを明確にする。ポッドポンプ820、828は、底部プレートの第2半体に空気路を含み、平衡ポッド812、822は、頂部プレートの半体に同一の構造を有する。この場合もまた、平衡ポッド812、822は液体を平衡化し、したがって、図示しない隔壁の両側は液体流体路を含み、一方で、ポッドポンプ820、828は、液体を送り出す圧力ポンプであり、したがって、一方の側は液体流体路であり、底部プレート1100に示す他方の側は、空気作動チャンバまたは空気流体路を含む。
カセットの1つの例示的な実施形態では、送り出されている流体のさまざまな特性を識別するように、カセットにセンサ素子が組み込まれている。一実施形態では、3つのセンサ素子が含まれる。一実施形態では、センサ素子は、センサセル1114に位置している。セル1114は、センサ素子ハウジング1116、1118、1120に3つのセンサ素子を収容する。実施形態では、センサハウジング1116、1118のうちの2つは、伝導率センサ素子を収容し、第3センサ素子ハウジング1120は、温度センサ素子を収容する。伝導率センサ素子および温度センサ素子は、当技術分野におけるあらゆる伝導率センサ素子または温度センサ素子であり得る。一実施形態では、伝導率センサ素子はグラファイトポストである。他の実施形態では、伝導率センサ素子は、ステンレス鋼、チタン、白金、または耐食であるようにコーティングされるが依然として導電性である他のあらゆる金属から作製されたポストである。伝導率センサ素子は、コントローラまたは他のデバイスにプローブ情報を送信する電気リード線を含むことができる。一実施形態では、温度センサは、ステンレス鋼プローブに埋め込まれたサーミスタである。代替実施形態では、カセットにセンサがないか、または温度センサのみがあるか、1つまたは複数の伝導率センサのみがあるかまたは別のタイプのセンサのうちの1つまたは複数がある。いくつかの実施形態では、センサ素子は、カセットの外側に別個のカセット内に位置し、流体ラインを介してカセットに接続され得る。
依然として図36Aおよび図36Bを参照すると、定量ポンプ830の作動側もまた、ポンプを作動する空気のための対応する空気入口孔1106とともに示されている。ここで図36Cおよび図36Dを参照すると、底部プレート1100の外側が示されている。弁、ポッドポンプ820、828および定量ポンプ830の空気ライン接続点1122が示されている。この場合もまた、平衡ポッド812、822は、空気によって駆動されないために空気ライン接続点を有していない。同様に、第2流体出口824および第2流体入口826のための底部プレート1100の対応する開口部が示されている。
ここで図36Eを参照すると、底部プレート1100の側面図が示されている。側面図には、内側底部プレート1100を包囲するリム1124が示されている。リム1124は、隆起し連続しており、隔壁(図示せず)に対する接続点を提供する。隔壁は、この連続し隆起したリム1124上に載り、底部プレート1100のポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822の半体と頂部プレートのポッドポンプ820、828および平衡ポッド812、822の半体との間のシールを提供する(図示せず、図35A〜図35Dを参照)。
上述したように、透析液は、方向付け回路から、任意選択的にヒータを通りかつ/または限外ろ過装置を通り、平衡回路まで流れる。場合によっては、方向付け回路はカセットに組み込まれるが、それは必ずしも必要ではない。方向付け回路の例は、図3Aにおいて方向付け回路142として示されている。方向付け回路142は、この例では、複数の異なる機能を行うことができる。たとえば、透析液は、透析液供給部から(後述するように、混合回路から等)方向付け回路を通って平衡回路まで流れ、一方で、使用済み透析液は、平衡回路からドレンまで流れる。透析液は、方向付け回路内の含まれる1つまたは複数のポンプの動作によって流れることができる。場合によっては、方向付け回路は透析液タンクも含むことができ、それは、透析液を平衡回路に渡す前に透析液を収容することができる。こうした透析液タンクにより、場合によっては、透析液の生成速度をシステム内の透析装置の透析液の使用速度と異ならせることができる。方向付け回路はまた、水供給部から混合回路(存在する場合)まで水を仕向けることも可能である。さらに、上述したように、いくつかの動作、たとえば消毒のために、方向付け回路に血流回路を流体接続することができる。
したがって、場合によっては、透析液を必要に応じて作成することができ、それにより、大量の透析液を保管する必要がない。たとえば、調製された後の析液を透析液タンク169内に保持することができる。透析液弁17が、透析液のタンク169から透析装置20内への流れを制御することができる。透析液は、透析装置14に送られる前にろ過されかつ/または加熱され得る。使用済み透析液が透析液回路20から出て流れるのを制御するために、廃棄物弁18を使用することができる。
図6に、方向付け回路の1つの非限定的な例を示す。この図では、方向付け回路142は、上述したように、透析液供給部からの透析液を、平衡回路に入る前に、透析液タンク169に、その後、透析液ポンプ159、ヒータ72および限外ろ過装置73に流体接続する。この図は、透析液流路内の透析液が透析液供給部から透析液タンク、ポンプ、ヒータおよび限外ろ過装置に(その順序で)流れることを示すが、他の実施形態では、他の順序も可能であることが理解されるべきである。ヒータ72を使用して、透析液を体温に、かつ/または血流回路内の血液が透析液によって加熱され、患者に戻る血液が体温以上になるような温度に加温することができる。限外ろ過装置73を使用して、後述するように、透析液内にある可能性があるあらゆる病原体、発熱物質等を除去することができる。そして、透析液は、透析装置に向けられるように平衡回路内に流れ込む。
透析液タンク169は、あらゆる好適な材料を含み、使用する前に透析液を保管するためにあらゆる好適な寸法であり得る。たとえば、透析液タンク169は、プラスチック、金属等を含むことができる。場合によっては、透析液タンクは、本明細書において考察したようにポッドポンプを形成するために使用されるものに類似する材料を含むことができる。
方向付け回路142を通る透析液の流れは、透析液ポンプ159の動作によって(少なくとも部分的に)制御することができる。さらに、透析液ポンプ159は、平衡回路を通る流れを制御することができる。たとえば、図5を参照して上述したように、方向付け回路からの新鮮透析液は、平衡回路143の平衡チャンバ341および342内に流れ込み、ポンプ159は、新鮮透析液をこれらの平衡チャンバ内に流れ込ませる駆動力として使用され得る。一組の実施形態では、透析液ポンプ159は、上述したものに類似するポッドポンプを含む。ポッドポンプは、剛性チャンバを含み、剛性チャンバは、各チャンバを流体区画および制御区画に分割する可撓性隔壁を備えている。制御区画は、空気源等の制御流体源に接続することができる。ポッドポンプおよび/または平衡チャンバとして使用することができるポンプの非限定的な例は、参照により本明細書に組み込まれる、2006年4月14日に出願された、「体外熱治療システムおよび方法(Extracorporeal Thermal Therapy Systems and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/792,073号明細書に、または2007年4月13日に出願された、「流体ポンプシステム、デバイスおよび方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されている。ポッドポンプについては、また詳細に後述する。
(ヒータ)
ポンプ159を通過した後、透析液は、ヒータ、たとえば図6におけるヒータ72まで流れることができる。ヒータは、透析液を加熱するために好適なあらゆる加熱装置、たとえば、当業者には既知であるような電気抵抗ヒータであり得る。ヒータは、方向付け回路から(たとえば、図3Aに示すように)分離したまま維持することができ、またはヒータは、方向付け回路または同様に他の回路(たとえば、平衡回路)に組み込むことができる。
1つの非限定的な例では、ヒータは、ヒータカートリッジと、流体路を提供する金属チューブと、鋳造物と、1つまたは複数の温度センサとを備えることができる。金属チューブは、ステンレス鋼管のコイルであり得る。鋳造物は、ステンレス鋼コイルにオーバモールドされかつヒータカートリッジを受け入れる空洞を含む亜鉛またはアルミニウムであり得る。温度センサは、たとえば、コントローラにヒータ温度を提供するように配線される、サーミスタ、抵抗温度検出器(RTD)または熱電対を含むことができる。ハードウェア温度過昇保護を提供するために、熱スイッチまたはヒューズをケーシングに取り付け、カートリッジヒータと直列に配線することができる。一実施形態では、カートリッジヒータは、およそ110VACで動作して約1kWの熱出力を提供するように設計され得る。別の実施形態では、カートリッジヒータは、およそ220VACで動作して約1kWの熱出力を提供するように設計される。
別の実施形態では、カートリッジヒータは、独立して通電することができる2つ以上のヒータ素子を組み込むことができる。たとえば、単一のヒータカートリッジに、2つの500Wヒータ素子を含めることができる。ヒータ素子に電源が入れられるかまたは切られる際にヒータを通る電流の変化の大きさを低減させるために、複数の独立したヒータ素子に逐次電力を提供することができる。これにより、たとえばオーバヘッドライト等、同じ回路の他の器具に電力を供給する電源における電圧変動を低減させることができる。逐次のまたは位相がずれた起動を用いて複数の独立したヒータ素子にヒータ電力を提供することは、電圧変動またはフリッカの規制上の制約を満たすのに役立つことができる(たとえば、電磁気的互換性に関する国際電気標準会議規格(International Electrotechnical Commission Standard on Electromagnetic compatibility)(IEC61000−3−3)を参照されたい)。
場合によっては、透析液は、透析装置を通過する血液が著しく冷やされないような温度まで加熱される。たとえば、透析液が透析装置を通過する血液の温度またはそれを超える温度であるように、透析液の温度を制御することができる。こうした例では、血液は幾分か加熱することができ、それは、上述したように、血流回路のさまざまな構成要素を通過する血液によってもたらされる熱損失を相殺するのに有用であり得る。さらに、後述するように場合によっては、ヒータを制御システムに接続することができ、それにより、不正確に加熱された透析液(すなわち、透析液が高温すぎるかまたは低温すぎる)が、たとえばライン31を介して透析装置に渡される(たとえば、図3a、図6または図122を参照)代わりに、再循環させる(たとえば、透析液タンクに戻す)かまたはドレンに送ることができる。ヒータは、方向付け回路および/または平衡回路等の流体回路の一部として一体化することができ、または、図3Aに示すように、ヒータは、透析液流路内の別個の構成要素であり得る。
ヒータはまた、いくつかの実施形態では、消毒または滅菌の目的で使用することも可能である。たとえば、水を血液透析システムに通し、ヒータを用いて加熱することができ、それにより、水は、消毒または滅菌を発生させることができる温度、たとえば少なくとも約70℃、少なくとも約80℃、少なくとも約90℃、少なくとも約100℃、少なくとも約110℃等に加熱される。場合によっては、後述するように、さまざまな構成要素に水を再循環させることができ、かつ/またはヒータが水をこうした消毒または滅菌温度まで加熱することができるように、システム内の熱損失を(たとえば、後述するように)最小限にすることができる。
ヒータは、上述したように(たとえば、患者を透析するために透析液を体温まで引き上げ、システムを洗浄するために水温を消毒温度まで引き上げるように等)ヒータを制御することができる制御システムを含むことができる。
ヒータコントローラの非限定的な例は以下の通りである。コントローラは、変化する入口流体温度とともに、脈動流または可変流速を扱うことができるように選択され得る。さらに、ヒータ制御は、流れが異なる流路の各々を通るように向けられると適切に機能しなければならない(透析する、消毒する、再循環させる等)。一実施形態では、ヒータコントローラは、限外ろ過装置のIR(赤外線)温度センサおよびタンクのIR温度センサとともに、SIP1基板において使用される。他の実施形態では、基板は、熱損失が少ない箱の中にあり、入口温度センサに対して伝導率センサを使用する。コントローラの別の実施形態は、タンク(ヒータ入口)および限外ろ過装置(ヒータ出口)の両方の温度を用いる単純な比例コントローラを使用する。たとえば、powerHeater=massFlow*((tankPGain*errorTank)+(UFPGain*errorUF)
式中、PowerHeater=ヒータデューティサイクルコマンド(0%〜100%)、MassFlow=流体質量流速、TankPGain=タンクまたは入口の温度センサのための比例ゲイン、ErrorTank=タンクまたは入口の温度センサと所望の温度との差、UFPGain=限外ろ過装置または出口温度センサのための比例ゲイン、ErrorUF=ufまたは出口温度センサと所望の温度との差。
ヒータデューティサイクルコマンド(0%〜100%)から、PWMコマンドが生成される。いくつかの実施形態では、このコントローラは、所与の温度が維持されずヒータが飽和した場合、質量流速を低下させることができる。
(ヒータ制御部)
図122のヒータ72の代替実施形態は、透析液流路を含むことができ、そこを通して、電気ヒータ素子およびヒータ温度センサが、ヒータの上流および下流の流体路に位置する温度センサによって補完される。温度センサ254は、ヒータのすぐ上流に位置して、入ってくる流体の温度に関する情報を提供する。内部透析液カセットに入る透析液の温度を測定するために、限外ろ過装置73の下流に冗長温度センサ252および251が配置され、透析液の温度は、患者に戻る血液の温度に影響を与える可能性がある。内部カセットから分流した流れを測定するために、ライン731に温度センサ255を配置することができる。
図89を参照すると、例示的な実施形態では、平衡または内部透析液回路143において、方向付けまたは外部透析液回路142において、限外ろ過ポンプ回路35において、混合回路25において、かつ/またはドレンライン31において、ヒータ72の入口等の種々の位置で流体温度を測定することができる。ヒータコントローラは、これらの温度センサのうちの1つまたは複数からの測定された温度に基づいて、ヒータ72の出力を変更することができる。制御するために選択される特定の流体温度センサは、所与の時点において(たとえば、治療中、限外ろ過装置73を通る連続した透析液再循環によって休止した治療中、透析液生成中等)使用される、存在する透析液の流体流路に基づくことができる。たとえば、透析動作の一時停止または休止は、平衡回路および透析装置を通る透析液の流れを停止するために、コントローラが内部透析液回路の弁を閉鎖することを含むことができる。場合によっては、透析液タンクから外部透析液ポンプを通って透析液タンクに再循環するかまたは任意選択的にドレンに向けられるように透析液を流し続けることが有利であり得る。再循環またはドレン流路に、または少なくとも各宛先に共通であるがヒータ72から下流の上流流路に、ヒータ72を制御するコントローラに対するフィードバックのために、温度センサを配置することができる。この構成により、ヒータ72は、透析液タンクから引き出されているか、または透析液タンクに再循環している透析液に対して所定の温度を維持することができる。したがって、透析動作の再開時、所定または所望の温度の新鮮透析液が、平衡回路および透析装置に吐出するためにより迅速に利用可能である。さらに、ヒータ72を通る(任意選択的に、より低速な維持流速での)透析液の連続した流れの間の温度フィードバックは、透析動作における一時停止または休止中の透析液の過熱を防止するのに役立つ。いくつかの実施形態では、限外ろ過装置は、任意選択的に、この再循環またはドレン流路内において、ヒータ72の上流または下流のいずれかに存在することができる。
図123Aを参照すると、代替実施形態では、「ヒータ制御モード」は、ヒータの周囲における制御ループ608からなる。実施形態では、ヒータ制御モードは、単純な比例積分コントローラに対する閉ループコントローラを用いて、ヒータ72に対してデューティサイクルコマンドを出力することにより、ヒータ温度612を所望の温度610にする。別の例では、閉ループコントローラは、比例コントローラである。ヒータ温度612は、ヒータ温度センサによって測定される。ヒータ温度センサは、ヒータ72内の流れ導管と熱接触する。ヒータ温度センサもまたヒータ72に組み込むことができる。
デューティサイクルコマンドは、1Hzの基本周波数でのパルス幅変調(「PWM」)コマンドに変換され得る。ヒータ電流は、ゼロ交差をオンオフするSCR電子回路によって、PWMコマンドにより制御され得る。ヒータ電流はまた、トランジスタスイッチ(FET、IGBTまたはBJT等)によって制御することも可能である。60Hz電源周波数を想定すると、1HzPWM周波数により1/60の分解能が可能になる。
別の実施形態では、PWM(パルス幅変調)コマンドは、基本周波数が1/4Hzであり、そのため、ヒータ素子は、4秒間の一部はオンになり、4秒間の残りはオフとなり、その後、周期は繰り返される。2つ以上のヒータ素子が存在する一実施形態では、コントローラは、異なるPWM信号で素子に電力を提供することができる。一例では、ヒータ素子を同じ周波数で駆動することができるが、一度に2つ以上の素子をオンとすることがないように、信号を遅延させるかまたは位相シフトさせることができる。所与の時点でヒータ素子のすべてには電力を印加しないことにより、電流の変化が最小限になり、したがって、AC電源における電圧変動が低減する。
一例では、同じヒータ72内に2つの500Wヒータ素子が配置される。デューティサイクルは0.125Hzで命令され、そこでは、第1ヒータはt=0秒で電源が入れられ、第2ヒータは、2秒間遅延する。したがって、2つのヒータ素子は、いかなるデューティサイクルに対しても同じ時点でオンに切り替えられない。2つのヒータ素子は同時にオンである可能性があるが、電流変動を低減させるために、両ヒータは、好ましくは、同時にオンまたはオフに切り替えられない。本文脈では、「オンに切り替えられた」という用語は、ヒータ素子に実質的な電流が流れていない状態からヒータ素子に電流が流れている状態への遷移を意味する。図155に、25%デューティサイクルでの2つのヒータ素子の制御の例を示し、そこでは、第1ヒータおよび第2ヒータに対して25%デューティサイクルがプロットされている。第1ヒータのオン/オフ状態は、線12615によってプロットされており、第2ヒータ素子のオン/オフ状態は、時間12612に対する時間軸において線12620によってプロットされている。第1ヒータは、タイムマーカ12616において1秒間オンにされ、その後、25%デューティサイクルに対して再度オンにされるタイムマーカ12617までオフとなる。第2ヒータは、同じデューティサイクルおよび周波数でオンにされるが、2秒間遅延し、それにより、タイムマーカ12621においてオンとなる。より一般的には、第2ヒータは、第1ヒータと同じ周波数で動作するが、半分の周期、遅延し、周期は周波数の逆数である。より一般的には、ヒータ素子が1からnまで番号が付けられ、ヒータ素子iと呼ばれる、n個のヒータ素子に対して、すべてのヒータ素子が同じ周波数およびデューティサイクルで動作するが、各ヒータ素子は、先のヒータ素子i−1から、周期をnで割った数だけ遅延する。ヒータデューティサイクルコマンドに対する下限はゼロであり得る。ヒータは、100%デューティサイクルでまたは低減したデューティサイクルで動作するように構成され得る。最大デューティサイクルは、利用可能な電力によって制限され得る。一実施形態では、ヒータに対する最大デューティサイクルは、8アンペアの総消費電流に対して70%とすることができ、それにより、適切な電力が透析装置6001における構成要素の平衡を維持することができる。別の実施形態では、最大総消費電流は11アンペアであり、熱デューティサイクルは100%に制限される。ユーザまたは技術者は、ヒータコントローラの最大デューティサイクルと(図61においてブロック形態で表す)透析装置6001の最大消費電流とを、ソフトウェアを介して高出力設定または低出力設定を選択することによって設定することができる。低い方の出力設定により、透析装置6001を、透析装置6001に対して水を準備する機械と同じ回路に差し込むことができる。最大ヒータコマンドは、図123A〜図123Cに示す飽和ブロック619によって制限される可能性がある。ヒータを通る最大流量は、センサ251、252によって測定されるような許容される最低透析液温度を達成する透析液を生成するために、入口温度254および利用可能な電力に基づいて制御することができる。
ヒータコントローラは、より多くの電力を使用することにより、ヒータ温度を上昇させることができるため、固有に非対称であるとみなすことができるが、ヒータ温度を低下させる周囲空気または流れている透析液への熱損失に左右される。
2つの制御ループを用いて、システムにおける温度を制御することができる。第1制御ループは、ヒータ自体に作用し、内部ヒータ温度をフィードバックしてヒータに対するデューティサイクルコマンドを生成する。第2制御ループは、ヒータループの周囲でコントローラを折り返させ、所望の流体温度と実際の流体温度との間の誤差に基づいて所望のヒータ温度を計算する。フィードバックを提供するために使用される流体温度センサは、所望のまたは選択された流路に基づいて選択することができる。コントローラは、複数の異なるモードで実行することができる。ヒータの内部ループを、単独で実行して、ヒータの温度を直接制御することができ、または2つのループを合わせて実行して、流体温度を制御することができる。
限定されないが、周囲温度、入ってくる透析液温度および透析液流量を含む外部要因による、種々のレベルの熱損失に適合するために、図123Aの制御ループを、異なる積分ゲイン618および比例ゲイン616で操作することができる。
ヒータ制御モードは、治療アプリケーション6203(図62)において選択された動作モードに応じて異なるゲインを選択することができる。ヒータを通る高流体流が必要な動作モードが選択された場合、ゲイン616、618をより高く設定することができる。ヒータを通る低流体流を必要とする動作モードが選択された場合、ゲイン616、618をより低く設定することができる。温度のオーバシュートを防止するために、ヒータを通る流れがないモードの間、ゲインを最小値またはゼロ値に設定することができる。消毒温度は材料温度限界に近い可能性があり、熱消毒に関連する大きい温度上昇により温度オーバシュートがもたらされる可能性がより高いため、高温でのオーバシュートを防止するために、消毒動作モード中はゲイン616、618を低く設定することができる。
飽和ブロック619が、ヒータ制御ループ608の出力614を最大ヒータデューティサイクルの出力に制限することができる。好ましい実施形態では、最大ヒータデューティサイクルは、約70%と約100%との間で選択可能である。
別の実施形態では、温度オーバシュートを回避するために、積分器620の値を制限することができる。ヒータコマンドがその上限である場合、ヒータコマンドがその上限未満に低下するまで、積分器の値620を増大させることはできない。積分器の値は常に低減させることはできる。
ヒータを通る流体流が瞬間的に停止したときにヒータ温度変動を最小限にするために、ヒータ制御モードは、ヒータ動作を停止し、1つまたは複数の制御パラメータをメモリに保存することができる。ヒータを通る流体流が短期間停止する好ましい実施形態では、ヒータをオフとすることができ、積分器の値620を保存することができる。その後、動作モードに対して適切なゲイン616、618で、かつメモリからリロードされた積分器の値を用いて、再度ヒータをオンにすることができる。
図123Bに、「流体温度制御モード」と呼ばれるヒータコントローラの代替実施形態を示す。流体温度制御モードは、ヒータ制御モードの内部制御ループ608の周囲に外部制御ループ638を追加することができる。外部制御ループ638は、所望のヒータ温度610を変更することにより、実際の流体温度632を所望の流体温度630にすることができる。流体温度制御モードは、この所望のヒータ温度610を内部制御ループ608に供給し、内部制御ループ608は、ヒータ制御モードにおいて上述したようにヒータを制御する信号614を生成する。内部制御ループは、透析ユニットの動作モードに基づいてゲイン616、618を変更することと、ヒータコマンドが最大許容値に達すると積分器を制限することとを含むことができる。流体温度制御モードは、以下の所望の温度630、入口流体温度254、流体流量およびゲイン係数に基づくフィードフォワードコマンド(ffCmd)642を含むことができる。
ffCmd=Tdes+(Tdes−Tin)×m*ffGain
式中、ffCmdはフィードフォワードコマンドである
Tdesは所望の温度設定値である
Tinはヒータの入口における温度である
mは所望の質量流量である
ffGainは計算に適用されるゲインである。
外部制御ループ638は、フィードフォワードコマンド642に対して、所望の流体温度点630と最大許容ヒータ温度との間の値に対する上限および下限を課す飽和ブロック644を含むことができる。第2飽和ブロック639が、外部制御ループ638の出力610を最大ヒータ温度に制限することができる。好ましい実施形態では、透析中の最大温度は約70℃に、消毒中は約112℃に設定することができる。
流体温度制御モードは、治療アプリケーション6203(図62)において選択された動作モードに応じて、異なるゲイン636、638を選択することができる。動作モードがヒータを通る高流体流量を必要とする場合、ゲイン636、638を高く設定することができる。動作モードが、ヒータ72を通る流体の低流量を必要とする場合、ゲイン636、638を低く設定することができる。温度オーバシュートを防止するために、ヒータを通る流れがない場合、ゲインを最小値またはゼロ値に設定することができる。
流体温度制御モードは、温度オーバシュートを回避するために積分器の値640を制限することができる。ヒータコマンド614または所望のヒータ温度610が最大許容値である場合、ヒータコマンドおよび所望のヒータ温度がその上限未満に低下するまで、積分器の値640を増大させることはできない。積分器の値は常に低減させることはできる。
流体温度制御モードは、任意選択的に、透析液を所望の温度限界内に維持するように、外部ポンプ159からの透析液流量を変化させることができる。ヒータコマンド614または所望のヒータ温度610が、所定最短期間に最大許容値である場合、透析液流量を、たとえば約30ml/分/ストロークの流量まで低下させることができる。ヒータコマンドおよび所望のヒータ温度が、所定の最短期間にそれらの上限未満に低下する場合、流量がその元のプログラムされた値に戻るまで、所望の流量を、たとえば30ml/分の流量まで上昇させることができる。好ましい実施形態では、最短期間は、現ストロークおよび先のストロークを完了する時間に設定される。流体温度制御モードは、最短期間を用いて、より平滑な温度応答を生成し温度オーバシュートを低減させる。ヒータを通る流れは、所定の最小値に制限され得る。好ましい実施形態では、外部ポンプによって測定されるようなヒータを通る透析液に対する最小流量は、約100ml/分に設定される。
ヒータを通る流体流が短時間停止するときにヒータ温度変動を最小限にするために、流体温度制御モードは、ヒータ動作を停止し、1つまたは複数の制御パラメータをメモリに保存するようにプログラムされる。透析ユニットが、透析液レベルおよび流体弁の性能を含む機能的点検を実行するため、流体流を定期的に停止することができる。ヒータを通る流体流が短期間停止する好ましい実施形態では、ヒータは電源が切られ、一方で、先行する透析液流量および積分器の値640、620はメモリに保存される。流れが再開すると、積分器の値および透析液流量はメモリからリロードされ、ヒータは再度電源が入れられ、ゲイン616、618、636、638は、動作モードに対して適切であるように設定される。
代替実施形態では、図123Cに示すように、ヒータコントローラは、ヒータの周囲の制御ループ648からなる「ヒータのみ出力モード」を有する。ヒータのみ出力モードは、単純な比例積分コントローラを用いて、デューティサイクルコマンドをヒータ72に出力することにより、ヒータ温度612をヒータ設定値温度610にすることができる。ヒータ設定値温度610は、飽和ブロック644によって制限されるフィードフォワードコマンド646の出力であり得る。フィードフォワードコマンド646は、測定された入口流体温度647、所望の流体温度611、想定された流体質量流量およびゲイン係数等、複数のパラメータに基づくことができる。好ましい実施形態では、フィードフォワード信号646を以下のように計算することができる。
ffCmd=Tdes+(Tdes−Tin)×mA*ffGain
式中、ffCmdはフィードフォワードコマンドである
Tdesは所望の温度設定値である
Tinはヒーターの入口における温度である
mAは想定された質量流量である
ffGainは計算に適用されるゲインである。
フィードフォワードコマンド646は、飽和ブロック644によりあらゆる値に制限することができる。好ましい実施形態では、飽和ブロック644は、所望のヒータ温度610を、たとえば41℃等、所望の流体温度611と最大値との間の値に制限する。
ヒータ温度612は、ヒータ温度センサによって測定することができる。入口温度は、センサ254によって測定される。デューティサイクルコマンドはPWMコマンドに変換することができ、それは、一態様では、約1Hzの基本周波数を有する。ヒータ電流は、ゼロ交差においてオンおよびオフになるSCR電子回路またはFET、IGBTあるいはBJT等のトランジスタスイッチにより、PWMコマンドによって制御することができる。60Hzの電源周波数を想定すると、1Hz PWM周波数により1/60の分解能が可能になる。
ヒータデューティサイクルコマンドに対する下限はゼロに設定することができる。ヒータは、100%デューティサイクルでまたは低減したデューティサイクルで動作するように構成され得る。最大デューティサイクルは、利用可能な電力によって制限される可能性がある。好ましい実施形態では、最大デューティサイクルは約70%に設定され、総消費電力を8アンペアに制限し、それは、透析装置6001における構成要素の平衡を維持する出力を可能にする。別法として、最大総消費電流は11アンペアに設定され、熱デューティサイクルは100%に制限される。ユーザまたは技術者は、ヒータコントローラの最大デューティサイクルと透析装置6001の最大消費電流とを、ソフトウェアを介して高出力設定または低出力設定を選択することによって設定することができる。低い方の出力設定により、透析装置6001を、透析装置6001に対して水を準備する機械と同じ回路に差し込むことができる。利用可能な電力に応じて、ヒータを通る最大流量は、生成される透析液がセンサ251、252によって測定されるような許容最低透析液温度に達するように、入口温度254をモニタリングすることにより、制御することができる。
ヒータのみ出力モードは、治療アプリケーション6203(図62)において選択された動作モードに応じて異なるゲインを選択することができる。ヒータを通る高流体流量が必要な動作モードが選択された場合、ゲイン616、618をより高く設定することができる。ヒータを通る低流体流を必要とする動作モードが選択された場合、ゲイン616、618をより低く設定することができる。温度のオーバシュートを防止するために、ヒータを通る流れがないモードの間、ゲインを最小値またはゼロ値に設定することができる。消毒温度は材料温度限界に近づく可能性があり、大きい温度上昇により温度オーバシュートがもたらされる可能性がより高いため、高温でのオーバシュートを防止するために、消毒動作モード中はゲイン616、618を低く設定することができる。
温度オーバシュートを回避する別の方法は、積分器の値620を制限することを含む。ヒータコマンドがその上限である場合、ヒータコマンドがその上限未満に低下するまで、積分器の値620を増大させることはできない。積分器の値は常に低減させることはできる。
ヒータを通る流体流が瞬間的に停止したときにヒータ温度変動を最小限にするために、ヒータのみ出力モードは、ヒータ動作を停止し、1つまたは複数の制御パラメータをメモリに保存することができる。ヒータを通る流体流が短期間停止する好ましい実施形態では、ヒータの電源を切ることができ、積分器値620を保存することができる。その後、動作モードに対して適切であるように設定されたゲイン616、618で、メモリから積分器の値をリロードすることにより、再度電源を入れることができる。
ヒータコントローラの一実施形態では、ヒータ機能、温度センサおよび制御電子回路を含む、ヒータシステムの機能を確認するために、始動中、複数の安全点検が実行される。始動安全点検は、温度センサ出力が予期された範囲内であることを点検することを含むことができる。実施形態では、温度センサに対する予期される範囲は、0℃から110℃である。
ヒータに電源を入れかつ電源を切ることができることを検証するために、始動安全点検は、短期間、ヒータの電源をオンにし、この電源オン期間中、およびその後、電源オフ期間中、ヒータ温度センサをモニタリングするヒータシステム試験を含むことができる。試験では、ヒータセンサ値が、電源オン期間中に増大し、電源オフ期間中は増大し続けないことが必要である可能性がある。1つのヒータ素子を用いる好ましい実施形態では、ヒータは、約5秒間、電源がオンにされ、温度センサは、5秒間の電源オン期間中および後続する20秒間の電源オフ期間中にモニタリングされる。実施形態では、ヒータ温度が、少なくとも約1.0℃および約6.0℃以上、上昇する場合に、試験は合格する。
複数のヒータ素子での始動安全点検により、各ヒータ素子および関連する制御スイッチの機能が検証される。安全点検は、一度に1つの素子を、ヒータ温度をモニタリングしながら、ある期間電源オンに切り替えた後にオフにして試験することができる。安全検査は、各ヒータ素子に対してこのプロセスを繰り返し、それにより、各素子および制御スイッチが動作可能であることを検証することができる。安全点検に合格するために、モニタリングされる温度は、ヒータ素子が電源オンに切り替えられている間は第1所定値より高く上昇しなければならず、その後、電源オフ期間中は、第2所定閾値を超えて上昇してはならない。一例では、安全点検では、電源オン期間中に第3所定閾値を超えて温度が上昇しないことも必要である。
2つのヒータ素子がある好ましい実施形態では、ヒータ本体において温度センサから先端側に位置する第1ヒータ素子またはプレヒータ素子。安全点検は、プレヒータを15秒間、100%デューティサイクルで電源オンにし、その後、45秒間オフ期間が続き、温度上昇が60秒の期間にわたって測定される。温度の上昇は、試験の期間にわたってモニタリングされる。いかなる時点においても、ヒータ温度上昇が6度を超える場合、ヒータは電源がオフにされ、試験は不合格になる。60秒間の最後に、試験に合格するために、ヒータ温度上昇は少なくとも0.5度でなければならない。第2ヒータ素子の安全点検は、第2ヒータ素子を約5秒間100%デューティサイクルでオンにし、5秒のオン期間および後続する20秒のオフ期間中に、温度センサがモニタリングされる。実施形態では、ヒータ温度が少なくとも約1.0℃および約6.0℃以上、上昇する場合に、試験は合格する。
透析ユニットの動作中、適切なヒータ機能を検証するために、ヒータコマンド614がその最大値にあるときに、ヒータ温度がモニタリングされる。この試験に合格するために、ヒータ温度は、指定された期間にわたって所定量上昇するように予期される。好ましい実施形態では、ヒータ温度は、1分間にわたって約0.5℃を超えて上昇すると予期される。この試験は、患者が透析ユニットに接続されている動作モード中に行うことができる。
安全試験は、過度の流体温度を回避するためにすべての動作中にヒータ温度をモニタリングすることができる。ヒータ温度612が所与の動作モードに対して最大許容ヒータ温度を超えた場合、ヒータおよびヒータコントローラは使用不可になる。好ましい実施形態では、患者接続動作中の最大ヒータ温度は、約70℃に設定される。消毒モード中の最大ヒータ温度は、約100℃〜110℃等、より高い温度に設定することができる。ヒータは、ヒータの温度ヒューズから構成された二次安全システムを含むことができる。
安全試験は、流体温度センサのうちの2つ以上をモニタリングし、温度センサのうちのいずれか1つが最大消毒流体温度を超えた場合に、ヒータ14およびヒータコントローラを使用不可にすることができる。好ましくは、流体温度センサ251、252、254、255のすべてがモニタリングされ、最大消毒流体温度は約100℃に設定される。この試験の1つの利点は、単一流体温度センサの故障またはヒータ温度センサの故障に対して保護するということである。
安全試験は、流体温度制御モード中に外部ポンプ157をモニタリングすることと、流体流を検証することができない場合に、ヒータ72およびヒータコントローラを使用不可にすることとを含むことができる。外部ポンプコントローラが閉塞または空気漏れを検出した場合、流体温度制御モードにおいてヒータ72およびコントローラを使用不可にすることができる。
上述したヒータ制御部は、単に例としてのものであり、本発明の他の実施形態では、他のヒータ制御システムおよび他のヒータも可能であることが理解されるべきである。
透析液はまた、たとえば限外ろ過装置を用いて、汚染物質、感染性の生物、病原体、発熱物質、残がい等を除去するようにろ過することも可能である。フィルタは、たとえば図3Aに示すように、たとえば、方向付け回路と平衡回路との間において、透析液流路のあらゆる好適な位置に配置することができ、かつ/または限外ろ過装置は、方向付け回路または平衡回路内に組み込むことができる。限外ろ過装置が使用される場合、上述したような種がフィルタを通過しないように選択されたメッシュまたは細孔サイズを有するように選択することができる。たとえば、メッシュまたは細孔サイズは、約0.3マイクロメートル未満、約0.2マイクロメートル未満、約0.1マイクロメートル未満、または約0.05マイクロメートル未満等であり得る。当業者は、限外ろ過装置等のフィルタを知っており、多く場合、こうしたフィルタは容易に商品として入手可能であり得る。
場合によっては、フィルタからの廃棄物(たとえば、濃縮水流)が、図6の廃棄物ライン39等、廃棄物の流れに渡されるように、限外ろ過装置を動作させることができる。場合によっては、濃縮水流に流れ込む透析液の量を制御することができる。たとえば、濃縮水が低温過ぎる(すなわち、ヒータ72が作用していないか、またはヒータ72が透析液を十分な温度まで加熱していない)場合、透析液流全体(または少なくとも透析液の一部)を、廃棄物ライン39に分流させ、任意選択的に、ライン48を用いて透析液タンク169に再循環させることができる。フィルタからの流れもまた、いくつかの理由で、たとえば、温度センサ(たとえば、センサ251および252)、伝導率センサ(透析液濃度を確認するため、たとえばセンサ263)等を用いてモニタリングすることも可能である。こうしたセンサの例については後述する。さらなる非限定的な例は、2008年2月27日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる、「センサ装置システム、デバイスおよび方法(Sensor Apparatus Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第12/038,474号明細書に示されている。
この特定の例では、限外ろ過装置および透析装置が、汚染物質、感染性の生物、病原体、発熱物質、残がい等の除去のための冗長な選別法を提供する(ただし他の場合では、限外ろ過装置は存在しない場合がある)ことに留意するべきである。したがって、汚染物質が透析液から患者に達するために、汚染物質は、限外ろ過装置および透析装置の両方を通過しなければならない。一方がろ過できない場合であっても、他方が依然として滅菌を可能にし、汚染物質が患者の血液に達するのを防止することができる。
方向付け回路142はまた、平衡回路から来る使用済み透析液を、ドレンに、たとえば図6において廃棄物ライン39を通してドレン31に送ることも可能であり得る。ドレンは、たとえば、局所的なドレンであるか、または適切に廃棄されるように廃棄物(たとえば、使用済み透析液)を収容する別個の容器であり得る。場合によっては、方向付け回路からかつシステムからの廃棄物の流れを制御するために、1つまたは複数の逆止弁または「一方向」弁(たとえば、逆止弁215および216)を使用することができる。また、場合によっては、血液漏れセンサ(たとえば、センサ258)を用いて、血液が透析装置を通って透析液流路内に漏れているか否かを判断することができる。さらに、流体回路のいずれかからの血液あるいは透析液または両方の漏れを示すように、血液透析ユニットの底部の収集パンに液体センサを配置することができる。
ドレン31(図89)は、漏れおよび隔壁の破断がないか平衡回路および方向付け回路をモニタリングするエアインライン(air−in−line)検出器(AIL)37を含むことができる。AIL検出器37を超えて流れる透析液は、事前に方向付けカセットおよび平衡チャンバ内のポンプおよび平衡カセット内のポンプとともに複数の弁を通って流れている。弁またはポッドポンプの隔壁のいずれかが漏れた場合、漏れた空気は、ドレン31におけるAIL検出器を通過して流れる。さらに、AIL検出器37は、加熱されている可能性がある透析液から発生する気体を検出することができる。好ましい実施形態では、AIL検出器37は、流れが上向きである場合、ドレン31に配置される。この有利である可能性がある位置により、透析液とともに流れる気泡の検出が容易になり、それは、(好適な程度に長くすることができる)ドレン路が、気泡が検出器37に達する前に固まるのに十分な機会を提供するためである。ドレン31にAIL検出器37を配置することにより、検出器は、気泡から隔壁の破断を特定することができる。
さらに、方向付け回路142は、水供給部30、たとえば袋等の水の容器から、かつ/または、水を生成することができる装置、たとえば市販のもの等の逆浸透装置から水を受け取ることができる。場合によっては、当業者には既知であるように、システムに入る水は、一定の純度で設定され、たとえば、一定値未満のイオン濃度を有する。方向付け回路142に入る水は、さまざまな場所に、たとえば新鮮透析液を生成するために混合回路にかつ/または廃棄物ライン39に渡され得る。場合によっては、後述するように、ドレン31、さまざまな再循環ラインへの弁が開放され、水がシステムを通って連続的に流れることができるように、方向付け回路142と血流回路141との間に導管67を接続することができる。ヒータ72も駆動される場合、システムを通過する水は、たとえば、システムを消毒するのに十分な温度まで連続的に加熱される。こうした消毒方法については、詳細に後述する。
図41〜図45に、平衡カセットの非限定的な例を示す。ここで図41Aおよび図41Bを参照すると、カセットの一実施形態の頂部プレート900の外側が示されている。頂部プレート900は、ポッドポンプ820、828の一方の半体を含む。この半体は、供給源流体が流れる流体/液体の半体である。入口および出口のポッドポンプ流体路が示されている。これらの流体路は、それらのそれぞれのポッドポンプ820、828に通じている。
ポッドポンプ820、828は、隆起した流路908、910を含むことができる。隆起した流路908、910により、隔壁(図示せず)がストロークの終了に達した後、流体がポッドポンプ820、828を通って流れ続けることができる。したがって、隆起した流路908、910により、隔壁が、空気または流体がポッドポンプ820、828に閉じ込められるようにすること、または隔壁がポッドポンプ820、828の入口または出口を閉塞する(それによって流れが阻止される)ことが最小限になる。隆起した流路908、910は、この実施形態では特定の寸法を有するように示されている。代替実施形態では、隆起した流路908、910は、より広いかあるいは狭く、またはさらに他の実施形態では、隆起した流路908、910は、目的が、流体の所望の流量または挙動を行うように流体流を制御することであるため、いかなる寸法でもあり得る。したがって、隆起した流路、ポッドポンプ、弁または他のあらゆる態様に対して本明細書に示し記載する寸法は、単に例示的な代替実施形態である。他の実施形態が容易に明らかである。図41Cおよび図41Dは、カセットのこの実施形態の頂部プレート900の内側を示す。図41Eは、頂部プレート900の側面図を示す。
ここで、図42Aおよび図42Bを参照すると、中間プレート1000の液体/流体側が示されている。図41Cおよび図41Dに示す内部頂部プレートの流路に対して相補的な領域が示されている。これらの領域は、この実施形態において製造の1つのモードである、レーザ溶接に寄与する表面仕上げを示す、わずかに隆起した軌道である。カセットを製造する他のモードについては上述している。
次に図42Cおよび図42Dを参照すると、この実施形態による中間プレート1000の空気側、または底部プレート(図示せず、図43A〜図43Eに示す)に面する側が示されている。弁孔802、808、814、816、822、836、838、840、842、844、856の空気側は、(図42Aおよび図42Bに示す)中間プレート1000の流体側の孔に対応する。図44Cおよび図44Dに示すように、隔壁1220はポッドポンプ820、828を完成し、隔壁1222は弁802、808、814、816、822、836、838、840、842、844、856を完成する。弁802、808、814、816、822、836、838、840、842、844、856は空気圧式に駆動され、隔壁が穴から引き離されると、液体/流体が流れることができる。隔壁が穴に向かって押されると、液体の流れは阻止される。流体流は、弁802、808、814、816、822、836、838、840、842、844、856の開閉によって方向付けられる。次に図43Aおよび図43Bを参照すると、底部プレート1100の内部の図が示されている。ポッドポンプ820、828および弁802、808、814、816、822、836、838、840、842、844、856の作動/空気チャンバの内部の図が示されている。ポッドポンプ820、828および弁802、808、814、816、822、836、838、840、842、844、856は、空気圧式空気源によって駆動される。ここで図43Cおよび図43Dを参照すると、底部プレート1100の外側が示されている。空気の供給源は、カセットのこの側に取り付けられる。一実施形態では、チューブが、弁およびポンプ1102の上のチューブに接続する。いくつかの実施形態では、弁は連動し、2つ以上の弁が同じ空気ラインによって駆動される。
ここで図44Aおよび図44Bを参照すると、組み立てられたカセット1200が示されている。図12Cおよび図12Dに、図44Aおよび図44Bに示す組み立てられたカセット1200の組立分解図が示されている。これらの図において、ポッドポンプ隔壁1220の実施形態が示されている。隔壁のガスケットは、(頂部プレート900の)液体チャンバと(底部プレート1100の)空気/作動チャンバとの間にシールを提供する。いくつかの実施形態では、隔壁1220のドーム上の凹凸が、特に、ストロークの終了において空気および液体がチャンバから漏れ出るための追加の空間を提供する。カセットの代替実施形態では、隔壁は二重ガスケットを含むことができる。二重ガスケットの特徴は、ポッドポンプの両側が液体を含む実施形態において、または両チャンバの側部を封止することが望まれる用途において好ましい。これらの実施形態では、ガスケットまたは他の特徴(図示せず)に対して相補的なリムが、ガスケットが底部プレート1100のポッドポンプチャンバを封止するために内側底部プレート1100に追加される。
ここで、図45を参照すると、カセットのポッドポンプ828の断面図が示されている。この図には、隔壁1220の取付具の詳細が示されている。この場合もまた、この実施形態では、隔壁1220ガスケットは、中間プレート1000および底部プレート1100によってはさみつけられている。中間プレート1000のリムは、ガスケットが、頂部プレート900に位置するポッドポンプ828チャンバを封止するための特徴を提供する。
次に、図45を参照すると、この断面図は、組み立てられたカセットにおける弁834、836を示す。隔壁1220は組み立てられて示されており、この実施形態では、中間プレート1000と底部プレート1100との間に挟装されることによって保持されている。依然として図45を参照すると、この断面図はまた、組み立てられたカセットにおける弁822も示す。隔壁1222は、中間プレート1000と底部プレート1100との間に挟装されることによって適所に保持されるように示されている。
一組の実施形態では、透析液は、別個に調製し、方向付け回路において使用されるためにシステムに導入することができる。しかしながら、場合によっては、透析液を混合回路内で調製することができる。混合回路を、あらゆる好適な時点で透析液を生成するように運転することができる。たとえば、透析液は、患者の透析中に、かつ/または透析の前に生成することができる(透析液はたとえば透析液タンクに保管することができる。混合回路内では、(たとえば、水供給部からの、任意選択的に方向付け回路によって混合回路に送達される)水をさまざまな透析液原料と混合して透析液を形成することができる。当業者は、好適な透析液原料、たとえば、上述したように、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび/または酸について既知である。透析液は、必要に応じて構成することができ、それにより、大量に保管する必要がないが、場合によっては、透析液タンク内に幾分かを保管することができる。
図7Aは、場合によってはカセットに組み込むことができる混合回路の非限定的な例を示す。図7Aにおいて、方向付け回路からの水は、ポンプ180の作用により混合回路25に流れ込む。場合によっては、水の一部は、たとえば混合回路を通して原料を搬送するのに使用される原料49に向けられる。図7Aに示すように、水が、重炭酸塩源28(場合によっては、塩化ナトリウムを含む場合もある)に送達される。場合によっては、塩化ナトリウムおよび/または重炭酸塩は、水の作用によって移動する粉末状または粒状の形態で提供され得る。重炭酸塩源28からの重炭酸塩は、重炭酸塩ポンプ183を介して混合ライン186に送り込まれ、そこに、方向付け回路からの水もまた流れ込む。(液体の形態であり得る)酸源29からの酸もまた、酸ポンプ184によって混合ライン186に送り込まれる。原料(水、重炭酸塩、酸、NaCl等)は、混合チャンバ189内で混合されて、透析液を生成し、その後、透析液は、混合回路25から流れ出る。各原料が混合ラインにおいて追加される際に、それが適切な濃度で追加されるのを確実にするように、混合ライン186に沿って伝導率センサ178および179が配置される。許容可能な透析液品質が生成され処置中に維持されるのを確実にする、この方法およびその制御については、より詳細に後述する。
一組の実施形態では、ポンプ180は、上述したものと同様の1つまたは複数のポッドポンプを備えている。ポッドポンプは、剛性チャンバを含むことができ、剛性チャンバには、各チャンバを流体区画および制御区画に分割する可撓性隔壁がある。制御区画は、空気源等の制御流体源に接続することができる。ポッドポンプとして使用することができるポンプの非限定的な例は、各々が参照により本明細書に組み込まれる、2006年4月14日に出願された、「体外熱治療システムおよび方法(Extracorporeal Thermal Therapy Systems and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/792,073号明細書に、または2007年4月13日に出願された、「流体ポンプシステム、デバイスおよび方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されている。同様に、場合によっては、ポンプ183および/または184は、各々がポッドポンプであり得る。ポッドポンプのさらなる詳細については後述する。
場合によっては、ポンプのうちの1つまたは複数は、ポンプ内の圧力をモニタリングする圧力センサを有することができる。この圧力センサを用いて、ポンプ区画が完全に充填され吐出していることを確実にすることができる。たとえば、ポンプがフルストロークの流体を吐出することを確実にすることは、(i)区画を充填し、(ii)流体弁の両方を閉鎖し、(iii)正の空気圧リザーバと区画との間の弁を開放することによって区画に圧力をかけ、(iv)この正の圧力弁を閉鎖して、弁と区画との間の通路に加圧空気を残し、(v)流体がポンプ区画から出ることができるように、流体弁を開放し、(vi)流体が出る際に区画内の圧力降下をモニタリングすることによって行うことができる。フルストロークに対応する圧力降下は、一貫していることが可能であり、初期圧力、弁と区画との間のホールドアップ容量および/またはストローク容量によって決まる可能性がある。しかしながら、本明細書に記載するポッドポンプのうちのいずれかの他の実施形態では、基準容量区画を使用することができ、この容量は、圧力および容量データを通して求められる。
水ポンプおよび/または他のポンプによって吐出される容量を、伝導率測定値に直接関連付けることができ、そのため、容量測定値は、生成される透析液の組成に対するクロスチェックとして用いることができる。これにより、治療中に伝導率測定値が不正確になる場合であっても、透析液組成が安全なままであることを確実にすることができる。
図7Bは、場合によってはカセットに組み込むことができる混合回路の別の例を示す概略図である。この図の混合回路25は、ライン186に沿って水供給部から水を送り出すポッドポンプ181を含み、その中に、透析液を作成するためのさまざまな原料が水に導入される。別のポンプ182が、水供給部からの水を、重炭酸ナトリウムを保持する供給源28(たとえば、容器)内に、かつ/または塩化ナトリウムを保持する供給源188内に送り込む。第3ポンプ183が、溶解した重炭酸塩を混合ライン186に導入し(混合チャンバ189で混合され)、第4ポンプが、溶解した塩化ナトリウムをライン186内に導入する(混合チャンバ191で混合される)。第5ポンプ184が、第1ポンプ181を通過する前の水に酸を導入する。混合は、各々が、所定の原料が混合ライン186に追加された後に伝導率を測定する伝導率センサ178、179および177を用いてモニタリングされ、適切な量および/または濃度の原料が追加されていることを確実にする。こうしたセンサの例については後述する。さらなる非限定的な例は、2008年2月27日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる、「センサ装置システム、デバイスおよび方法(Sensor Apparatus Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第12/038,474号明細書に示されている。許容可能な透析液品質が生成され処置中に維持されることを確実にする、この方法およびその制御については、より詳細に後述する。
ここで図3Bを参照すると、この実施形態では、混合回路25は、2つの供給源、すなわち酸原液源27および結合された重炭酸ナトリウム(NaHCO3)および塩化ナトリウム(NaCl)源を用いて透析液を構成する。図3Bに示す実施形態に示すように、いくつかの実施形態では、透析液構成システム25は、各供給源の倍数を含むことができる。システムが連続的に運転される方法の実施形態では、冗長透析液源がシステムの連続した機能を可能にし、それは、一組の供給源が使い尽くされ、システムが冗長供給源を使用し、供給源の第1組が交換されるためである。この工程は、たとえばシステムが運転停止されるまで、必要に応じて繰り返される。
図34〜図36に、平衡カセットの非限定的な例を示す。図37に示す例示的な流体流路カセットでは、弁は独立して開放する。この例示的な実施形態では、弁は空気圧式に開放する。また、この実施形態では、本明細書における別の場所でより詳細に記載したように、ボルケーノ弁である。
ここで図38A〜図38Bを参照すると、カセットの1つの例示的な実施形態の頂部プレート1100が示されている。この例示的な実施形態では、頂部プレート1100におけるポッドポンプ820、828および混合チャンバ818は、同様に形成される。この例示的な実施形態では、ポッドポンプ820、828および混合チャンバ818は、底部プレートと組み立てられると、総容量が38mlである。しかしながら、他の実施形態では、混合チャンバは、所望のいかなるサイズの容量でもあり得る。
ここで図38Bを参照すると、頂部プレート1100の底面図が示されている。この図には、流体路が示されている。これらの流体路は、中間プレート1200における図39A〜図39Bに示す流体路に対応する。頂部プレート1100および中間プレート1200の頂部は、ポッドポンプ820、828のためのかつ混合チャンバ818の一方の側のためのカセットの液体または流体側を形成する。したがって、液体流路の大部分が頂部プレート1100および中間プレート1200にある。図39Bを参照すると、第1流体入口810および第1流体出口824が示されている。
依然として図38Aおよび図38Bを参照すると、ポッドポンプ820、828は、溝1002を含む(代替実施形態では、これが溝である)。溝1002は、特定のサイズおよび形状であるように示されているが、他の実施形態では、溝1002のサイズおよび形状は、望ましいいかなるサイズまたは形状でもあり得る。図38Aおよび図38Bに示すサイズおよび形状は、1つの例示的な実施形態である。溝1002のすべての実施形態において、溝1002は、ポッドポンプ820、828の流体入口側と流体出口側との間に通路を形成する。代替実施形態では、溝1002は、ポッドポンプの内部ポンピングチャンバ壁の溝である。
溝1002は流体路を提供し、それにより、隔壁がストローク終了にあるとき、入口と出口との間に依然として流体路があり、それにより、ポッドポンプに流体または空気のポケットが閉じ込められない。溝1002は、ポッドポンプ820、828の液体/流体側および空気/作動側の両方に含まれる。いくつかの実施形態では、溝1002を混合チャンバ818に含めることも可能である(ポッドポンプ820、828の作動/空気側および混合チャンバ818の反対側に関して図40A〜図40Bを参照)。代替実施形態では、溝1002は、まったく含まれないか、またはポッドポンプ820、828の一方の側にのみ含まれる。
カセットの代替実施形態では、ポッドポンプ820、828の液体/流体側は、入口および出口の流路が連続的であり、ポンピングチャンバの周囲に成形された剛性外側リング(図示せず)もまた連続的であるという特徴(図示せず)を含むことができる。この特徴により、隔壁(図示せず)とともに形成されたシールを維持することができる。図38Eを参照すると、頂部プレート1100の例示的な実施形態の側面図が示されている。
ここで図39A〜図39Bを参照すると、中間プレート1200の例示的な実施形態が示されている。中間プレート1200は、図37A〜図37Fにもまた示されており、これらの図は図39A〜図39Bに対応する。したがって、図37A〜図37Fは、さまざまな弁およびさまざまな通路の位置を示す。それぞれのポッドポンプ820、828のための隔壁(図示せず)の位置とともに、混合チャンバ818の位置が示されている。
ここで図39Aを参照すると、カセットの1つの例示的な実施形態において、送り出されている流体のさまざまな特性を識別するように、カセットにセンサ素子が組み込まれている。一実施形態では、一実施形態では、3つのセンサ素子が含まれる。しかしながら、この実施形態では、6つのセンサ素子(3つの組が2つ)が含まれる。センサ素子は、センサセル1314、1316に位置している。この実施形態ででは、センサセル1314、1316は、センサ素子用のカセットの領域として含まれる。一実施形態では、それぞれのセンサ素子ハウジング1308、1310、1312および1318、1320、1322に2つのセンサセル1314、1316の3つのセンサ素子が収容される。一実施形態では、センサ素子ハウジング1308、1312および1318、1320のうちの2つは、伝導率センサ素子を収容し、第3センサ素子ハウジング1310、1322は、温度センサ素子を収容する。伝導率センサ素子および温度センサ素子は、当技術分野におけるあらゆる伝導率センサ素子または温度センサ素子であり得る。一実施形態では、伝導率センサ素子はグラファイトポストである。他の実施形態では、伝導率センサ素子は、ステンレス鋼、チタン、白金、または耐食であるようにコーティングされるが依然として導電性である他のあらゆる金属から作製されたポストである。伝導率センサ素子は、コントローラまたは他の装置にプローブ情報を送信する電気リード線を含む。一実施形態では、温度センサは、ステンレス鋼プローブに埋め込まれたサーミスタである。しかしながら、代替実施形態では、2007年10月12日に出願された「センサ装置システム、デバイスおよび方法(Sensor Apparatus Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願(DEKA−024XX)に記載されているものに類似する温度センサ素子および伝導率センサ素子の組合せが使用される。
代替実施形態では、カセットにセンサがないか、または温度センサのみがあるか、1つまたは複数の伝導率センサのみがあるかまたは別のタイプのセンサのうちの1つまたは複数がある。
ここで図39Cを参照すると、中間プレート1200の例示的な実施形態の側面図が示されている。ここで図40A〜図40Bを参照すると、底部プレート1300が示されている。最初に図40Aを参照すると、底部プレート1300の内面または内側面が示されている。内面または内側面は、中間プレート(図示せず)の底面と接触する側である。底部プレート1300は、空気または作動ライン(図示せず)に取り付けられる。ポッドポンプ820、828および弁(図示せず、図37A〜図37Fを参照)を作動させる空気のための中間プレート1300の対応する入口孔が示されている。孔810、824は、図39B、810、824にそれぞれ示す第1流体入口および第1流体出口に対応する。流体路のための溝1002のように、ポッドポンプ820、828および混合チャンバ818の対応する半体もまた示されている。ポンプの作動孔もまた示されている。頂部プレートとは異なり、ポッドポンプ820、828および混合チャンバ818の底部プレート1300の対応する半体は、ポッドポンプ820、828と混合チャンバ818との差を明らかにする。ポッドポンプ820、828は、底部プレート1300に空気/作動路を含み、混合チャンバ818は、頂部プレートに半体と同一の構造を有している。混合チャンバ818は、液体を混合し、したがって、隔壁(図示せず)も空気/作動路も含まない。3つのセンサ素子ハウジング1308、1310、1312および1318、1320、1322を備えたセンサセル1314、1316もまた示されている。
ここで図40Bを参照すると、外側または外部底部プレート1300に、作動ポート1306が示されている。これらの作動ポート1306に作動源が接続されている。この場合もまた、混合チャンバ818は、空気によって駆動されないため、作動ポートを有していない。図40Cを参照すると、底部プレート1300の例示的な実施形態の側面図が示されている。
上述したように、本発明のさまざまな態様では、血流回路、平衡回路、方向付け回路および/または混合回路等の1つまたは複数の流体回路をカセットにおいて実装することができる。他のカセット、たとえば2008年2月27日に出願され参照により本明細書に組み込まれる、「センサ装置システム、デバイスおよび方法(Sensor Apparatus Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第12/038,474号明細書に開示されるような検知カセットが存在することができる。いくつかの実施形態では、これらの回路のうちのいくつかまたはすべてが単一カセットにおいて結合される。代替実施形態では、これらの回路は、各々、それぞれのカセットにおいて画定される。さらに他の実施形態では、1つのカセットに流体回路のうちの2つ以上が含まれる。場合によっては、2つ、3つまたはそれより多いカセットを、互いに対して、任意選択的にカセット間に流体接続があって、固定することができる。たとえば、一実施形態では、上述したようなポッドポンプ等のポンプを介して、2つのカセットを接続することができる。ポッドポンプは、剛性チャンバを含むことができ、それには、各チャンバを第1側および第2側に分割する可撓性隔壁が設けられ、それらの側は、上述したようなさまざまな目的で使用することができる。
本発明で使用することができるカセットの非限定的な例としては、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,680号明細書、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,712号明細書、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,787号明細書、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,793号明細書、2007年10月12日に出願された、「カセットシステム統合装置(Cassette System Integrated Apparatus)」と題する米国特許出願第11/871,803号明細書、または2008年2月27日に出願された、「カセットシステム統合装置(Cassette System Integrated Apparatus)」と題する米国特許出願第12/035,648号明細書に記載されたものが挙げられる。これらの各々は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
カセットはまた、ポッドポンプ、流体ライン、弁等、さまざまな特徴も含むことができる。本明細書に示し記載するカセット実施形態は、例示的なかつさまざまな代替実施形態を含む。しかしながら、同様の機能を含むあらゆる種々のカセットが企図される。本明細書に記載するカセット実施形態は、図に示すような流体回路図の実装形態であるが、他の実施形態では、カセットは、さまざまな流体路および/あるいは弁の配置ならびに/またはポッドポンプの配置および数を有することができ、したがって、依然として本発明の範囲内にある。
1つの例示的な実施形態では、カセットは、頂部プレート、中間プレートおよび底部プレートを含むことができる。各プレートに対して種々の実施形態がある。概して、頂部プレートは、ポンプチャンバおよび流体ラインを含み、中間プレートは、相補的な流体ライン、定量ポンプおよび弁を含み、底部プレートは作動チャンバを含む(いくつかの実施形態では、頂部プレートおよび底部プレートは、平衡チャンバまたはポッドポンプの相補的な部分を含む)。
概して、隔壁は、中間プレートと底部プレートとの間に位置するが、平衡チャンバまたはポッドポンプに対して、隔壁の一部は中間プレートと頂部プレートとの間に位置する。いくつかの実施形態は、隔壁がカセットに、オーバモールドされ、捕捉され、接着され、圧入され、溶接され、または他のあらゆる取付プロセスまたは方法で、取り付けられる場合を含むが、例示的な実施形態では、プレートが組み立てられるまで、隔壁は、頂部プレート、中間プレートおよび底部プレートとは別個である。
カセットは、種々の材料から構成することができる。概して、さまざまな実施形態では、使用される材料は固体でありかつ非可撓性である。一実施形態では、プレートは、ポリスルホンから構成されるが、他の実施形態では、カセットは、他のあらゆる固体材料から、例示的な実施形態ではあらゆる熱可塑性または熱硬化性材料から構成される。
1つの例示的な実施形態では、カセットは、隔壁をそれらの正しい位置に(たとえば、1つまたは複数のポッドポンプが存在する場合、それらに対して)配置し、プレートを順番に組み立て、プレートを接続することによって形成される。一実施形態では、プレートは、レーザ溶接技法を用いて接続される。しかしながら、他の実施形態では、プレートは、接着し、機械的に締結し、互いにひもで縛り、超音波溶接し、またはプレートを合わせて取り付ける他のあらゆるモードとすることができる。
実際には、カセットを用いて、あらゆる供給源からあらゆる位置にあらゆるタイプの流体を送り込むことができる。流体のタイプとしては、栄養のある流体、栄養のない流体、無機化学物質、有機化学物質、体液または他のあらゆるタイプの流体が挙げられる。さらに、流体は、いくつかの実施形態では気体を含み、したがって、いくつかの実施形態では、カセットを用いて気体が送り出される。
カセットは、流体を所望の位置からかつ所望の位置まで送り出すとともに方向付ける役割を果たす。いくつかの実施形態では、外側ポンプは、流体をカセット内に送り込み、カセットは流体を送り出す。しかしながら、いくつかの実施形態では、ポッドポンプは、流体をカセット内に引き込み、流体をカセットから送り出す役割を果たす。
上述したように、弁の位置に応じて、流体路の制御が行われる。したがって、異なる位置にある弁または追加の弁は、このカセットの代替実施形態である。さらに、上述した図に示す流体ラインおよび流体路は、流体ラインおよび流体路の単なる例である。他の実施形態は、より多い、より少ないかつ/または異なる流体路を有することができる。さらに他の実施形態では、カセット内に弁は存在しない。
上述したポッドポンプ(カセット内にポッドポンプがある場合)の数もまた、実施形態に応じて変更することができる。たとえば、上に示し記載したさまざまな実施形態は2つのポッドポンプを含むが、他の実施形態では、カセットは1つのポッドポンプを含む。さらに他の実施形態では、カセットは3つ以上のポッドポンプを含むか、またはポッドポンプは存在しない場合もある。ポッドポンプは単一ポンプであり得るか、または、上述したように、たとえばより連続的な流れを提供するように、タンデムで作用することができる複数のポッドポンプが存在することができる。カセットのさまざまな実施形態で、いずれかまたは両方を使用することができる。しかしながら、上述したように、場合によっては、カセットにポッドポンプが存在しないが、2つ以上のカセットの間に収容される場合がある。こうしたシステムの非限定的な例は、2008年2月27日に出願され参照により本明細書に組み込まれる、「カセットシステム統合装置(Cassette System Integrated Apparatus)」と題する米国特許出願第12/038,648号明細書に示されている。
本明細書に開示するさまざまな流体入口および流体出口は、場合によっては流体ポートであり得る。実際には、弁の配置および制御に応じて、流体入口は流体出口であり得る。したがって、流体入口または流体出口として流体ポートを示すのは、単に説明のためである。さまざまな実施形態は、交換可能な流体ポートを有している。流体ポートは、カセットに特定の流体路を与えるために設けられる。これらの流体ポートは、必ずしもすべてが常に使用されるとは限らず、代わりに、種々の流体ポートが、実際にはカセットの使用の柔軟性を提供する。
図46を参照して、カセットの別の非限定的な例を示す。ここで図46Aを参照すると、統合された、組み立てられたカセットシステムが示されている。混合カセット500、中間カセット600および平衡カセット700は、流体ラインまたは導管によって接続されている。ポッドは、カセットの間にある。ここで図46Bおよび図46Cを参照すると、さまざまな図が、統合されたカセットシステムの効率を示す。図50A、図50Bおよび図50Cにそれぞれ、流体ラインまたは導管1200、1300、1400を示す。流体は、これらの流体ラインまたは導管を通ってカセット間を流れる。ここで図50Aおよび図50Bを参照すると、これらの流体ラインまたは導管は、より大きい逆止弁流体ライン1300およびより小さい逆止弁流体ライン1200を表す。例示的な実施形態では、逆止弁はダックビル弁であるが、他の実施形態では、いかなる逆止弁も使用することができる。図50Cを参照すると、流体ラインまたは導管1400は、逆止弁を含まない流体ラインまたは導管である。この説明の目的で、「流体ライン」および「導管」という用語は、1200、1300および1400に関して同義で使用される。
ここで図46Bおよび図46Cならびに図51Aを参照すると、以下は、さまざまなカセットを通る流体流の一実施形態の説明である。説明を容易にするために、流体流は混合カセット500で開始する。ここで図46Bおよび図51Aを参照すると、混合カセット500の流体側が示されている。流体側は、流体入口または流体出口のいずれかである、複数のポート8000、8002、8004、8006、8008および8010〜8026を含む。さまざまな実施形態では、流体入口および流体出口は、逆浸透(「RO」)水8004、重炭酸塩、酸および透析液8006のための1つまたは複数の流体入口を含むことができる。また、ドレンを含む1つまたは複数の流体出口、酸8002、および透析液タンクのための排気口としての少なくとも1つのエアベント出口。一実施形態では、チューブ(図示せず)は、出口の後方にあり、(汚染を防止するための)排気口である。水、重炭酸塩および水混合物、透析液混合物(酸および水が添加された重炭酸塩)のための追加の出口もまた含まれる。
透析液は、混合カセット500から出て、透析液タンク(図示せず、図51Aにおいて1502として示す)まで流れ、その後、導管を通って内部透析液カセット700まで流れる(外部透析カセット600のポッドポンプ602および604(604は図示せず、図46Dおよび図46Eに示す)によって送り出される)。カセット内の流体路を変更することができる。したがって、さまざまなカセット流体路とともに、さまざまな入口および出口の位置を変更することができる。
ここで図51Bを参照すると、カセットシステムの一実施形態では、コンドセル、伝導率センサおよび温度センサが、図46A〜図46Cに示すカセットシステムの外側の別個のカセット1504に含まれている。この外側センサカセット1504は、2008年2月27日に出願され参照により本明細書に組み込まれる「センサ装置システム、デバイスおよび方法(Sensor Apparatus Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第12/038,474号明細書に記載されたもののうちの1つであり得る。
図51Bに、この実施形態に対する流体流路が示されている。この実施形態では、透析液のための混合プロセスの間、重炭酸塩混合物は、混合カセット500から離れて、外側センサカセットに流れ、その後、混合カセット500内に再度流れ込む。重炭酸塩混合物が事前に確立された閾値を満たすと、重炭酸塩混合物に酸が追加される。次に、混合チャンバ506内で重炭酸塩および酸が追加されると、透析液は、カセットから出てセンサカセットに流れ込み、その後、混合カセット500に戻る。許容可能な透析液品質が生成され処置中に維持されるのを確実にする、この方法およびその制御については、より詳細に後述する。
ここで図46Dを参照すると、混合カセット500は、空気圧作動側を含む。500として示すブロックにおいて、酸または重炭酸塩を送り出すかまたは計量するために、カセット500に、複数の弁および2つのポンピングチャンバ8030、8032が組み込まれている。いくつかの実施形態では、追加の定量ポンプ、またはより少ない定量ポンプが含まれる。定量ポンプ8030、8032は、所望のあらゆるサイズであり得る。いくつかの実施形態では、ポンプは互いに対してサイズが異なるが、他の実施形態では、ポンプは互いに対して同じサイズである。たとえば、一実施形態では、酸ポンプは、重炭酸塩ポンプより小さい。これは、より高濃度の酸を使用する場合により効率的かつ有効である可能性があり、それは、精度のためにより小さいポンプを使用することが望ましい場合があり、また、制御方式に対して、制御において部分的ストロークではなくフルストロークを使用するようにより小さいポンプがあることが望ましい場合があるためである。
導管1200、1300は、逆止弁を含む。これらの導管1200、1300は、一方向流を可能にする。例示的な実施形態では、これらの導管1200、1300はすべてドレンに通じる。図51Aの流路回路図を参照すると、これらの逆止弁導管の位置が明らかである。図示する実施形態では、ドレンに向けられるいかなる流体も、混合カセット500を通って流れる。再び図46Bを参照すると、カセット500の流体側に流体ドレンポート8006が位置している。
透析液が混合されると、透析液がセンサカセット(図51Bの1504)まで流れ、透析液が設定されたパラメータ/閾値内にないと判断された後、透析液は、混合カセット500内に戻るように送り込まれ、平坦な導管1400を通り、外部透析液カセット600に、その後、導管逆止弁導管1200に戻り、その後、混合カセット500を通ってドレン流体出口に至る。
ここで図46Dおよび図46Eを参照すると、さまざまなポッド502、504、506、602、604、702、704、706、708が示されている。ポッドハウジングの各々は同様に構成されているが、ポッドハウジングの内側は、ポッドがポッドポンプ502、504、602、604、702、704であるか、平衡チャンバポッド706、708であるか、混合チャンバポッド504であるかに応じて異なる。
ここで、図51Aおよび図51Bとともに図46Dおよび図46Eを参照すると、流体流路およびカセットシステムの両方に、さまざまなポッドが示されている。ポッド502は、水ポッドポンプであり、504は、混合カセット500の重炭酸塩ポッドポンプである(重炭酸塩に水を送る)。ポッド506は混合チャンバである。透析液が混合チャンバ506内で混合され、その後、混合カセット500からセンサカセット1504まで流れ、透析液が許容可能であるものとして適格となると判断されると、透析液は、混合カセット透析液タンク出口を通って透析液タンク1502まで流れる。しかしながら、透析液が許容可能でないとみなされた場合、流体は、カセット500内に戻るように送り込まれ、その後、1400導管を通り、外部透析液カセット600に至り、その後、1200逆止弁導管を通り、混合カセット500を通ってドレン出口から送り出される。
図51A〜図51Bとともに図46A〜図46Cを参照すると、混合カセット500と内部透析液カセット700との間に、外部透析液カセットが示されている600。ポッドポンプ602、604は、透析液を透析液タンク1502から汲み出し、それを、内部透析液カセット700内の平衡チャンバ706、708に送る(透析液に対する駆動力)。外部透析液カセット600は、透析液を内部透析液カセットに押し流す(すなわち、内部透析液カセット700内のポンプは、透析液を引き込まない)。したがって、外部透析液カセット600から、透析液は透析液タンク1502から、ヒータ1506を通って、限外ろ過装置1508を通り、その後、内部透析液カセット700内に送り込まれる。
ここで、図51A〜図51Bとともに図46Dおよび図46Eをさらに参照すると、内部透析液カセット700は、定量ポッド8038(すなわち、限外ろ過定量ポッド)を含み、平衡ポッド706、708およびポッドポンプ702、704を含む。内部透析液カセット700はまた、流体出口および流体入口を含む。これらの入口および出口は、透析装置1510への出口、透析装置1510からの入口および透析液入口を含む(限外ろ過膜1508は、内側透析液カセットのポートに接続する)。流体入口および流体出口はまたは、プライミングおよび消毒中、DCAおよびDCVの接続のために含まれている。さまざまな導管(1200、1300、1400)は、カセット500、600、700間の流体連通としての役割を果たし、透析液流体流とともに流体が混合カセット500を通って流出するために通過するために使用される。最も大きい逆止弁1300は(図50Bにも示す)、最大逆止弁であり、消毒中に使用される。このチューブは、好適な実施形態において消毒中に導管を通って流れる血液の塊および他の汚染物を収容するために相対的に大きい。
例示的な実施形態では、カセットシステムの弁およびポンプは、空気圧式に駆動される。空気圧源は、個々のチューブを介してカセットに取り付けられる。したがって、各ポンプ、平衡ポッドまたは弁は、空気圧作動式マニホルド(図示せず)への個々のチューブ接続を含む。ここで図52A〜図52Fを参照すると、チューブは、例示的な実施形態では、少なくとも1つのブロック1600に接続されている。いくつかの実施形態では、さまざまなチューブを接続するために2つ以上のブロックが使用される。ブロック1600は、マニホールド内に投入され、その後、空気圧アクチュエータに適切に接続される。これにより、空気圧チューブをマニホールドに容易に接続することができる。
再び図46を参照すると、カセットシステムは、一実施形態では、システムを合わせて保持するように機能するばね8034を含む。ばね8034は、混合カセット500および内部透析液カセット700に、留め具8036を介して掛けられる。しかしながら、他の実施形態では、限定されないが、たとえばラッチ手段または弾性手段等、システムを適切な向きで維持するのに役立つ他のあらゆる手段および装置を使用することができる。
ここで図47A〜図47Cを参照すると、ポッドの例示的な実施形態が示されている。ポッドは、2つの流体ポート902、904(入口および出口)を含み、さまざまな実施形態では、ポッドは別の方法で構成され得る。構造の種々の実施形態は、全体として参照により本明細書に組み込まれる、2007年4月13日に出願され、「流体ポンプシステム、デバイスおよび方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されている。
ここで、図47A、図47Dおよび図47Eを参照すると、チャンバの溝906が示されている。溝906は、ポッドハウジングの各半体に含まれている。他の実施形態では、溝は含まれておらず、いくつかの実施形態では、溝は、ポッドの一方の半体にのみ含まれている。
ここで図48Aおよび図48Bを参照すると、ポッドポンプ502、504、602、604、702、704で使用される膜の例示的な実施形態が示されている。この膜については、図5Aに関して示し記載している。他の実施形態では、図5B〜図5Dに示す膜のいずれも用いることができる。図49に、例示的な実施形態によるポッドポンプの組立分解図が示されている。
本発明のさまざまな態様は、さまざまな目的で使用される1つまたは複数の「ポッドポンプ」を含む。ここでは概略的なポッドポンプの構造について説明するが、上述したように、この構造は、ポンプ、平衡チャンバ、混合チャンバ等として、さまざまな用途に対して変更することができる。さらに、ポッドポンプは、システムのいずれの場所、たとえばカセットの上、2つ以上のカセットの間等に配置され得る。
概して、ポッドポンプは、(あらゆる好適な形状、たとえば、球形、楕円形等を有することができる)剛性チャンバを含み、ポッドポンプは、各チャンバを第1半体および第2半体に分割する可撓性隔壁を含むことができる。場合によっては、剛性チャンバは回転楕円体である。本明細書で用いる「回転楕円体」は、主軸、長軸または短軸のうちの1つを中心に回転した楕円形に概して対応し、3次元卵形、偏平および扁長の回転楕円体、球体および実質的に等価な形状を含む、あらゆる3次元形状を意味する。
ポッドポンプの各半体は、少なくとも1つの入口弁を有することができ、多くの場合(常にではないが)少なくとも1つの出口弁を有する(場合によっては、入口および出口の両方に同じポートを用いることができる)。弁は、たとえば、開閉弁または双方向比例弁であり得る。たとえば、チャンバの一方の側の弁は、双方向比例弁とすることができ、一方は高圧源に接続され、他方は低圧(または真空)シンクに接続され、他方の半体の弁は、流体流を方向付けるために開閉され得る。
いくつかの実施形態では、隔壁は、さまざまな断面厚さを有している。選択された隔壁材料の強度、曲げ特性および他の特性に対応するように、より薄い隔壁、より厚い隔壁または可変厚さの隔壁を使用することができる。より薄いか、より厚いかまたは可変の隔壁の壁厚さを用いて、隔壁を管理することも可能であり、それにより、いくつかの領域において他の領域より容易に曲がるのを促進し、それにより、ポンプ作用およびポンプチャンバ内の対象流体の流れの管理を補助する。この実施形態では、隔壁は、その中心の最も近くにその最も厚い断面領域があるように示されている。しかしながら、断面が可変の隔壁を有する他の実施形態では、最も厚い領域および最も薄い領域は、隔壁上のいかなる位置でもあり得る。したがって、たとえば、相対的に薄い断面は、中心の近くに位置し、相対的に厚い断面は、隔壁の周辺の近くに位置することができる。隔壁の一実施形態では、隔壁は、少なくとも1つの部分において接線勾配を有するが、他の実施形態では、隔壁は完全に平滑であるかまたは実質的に平滑である。
隔壁は、所望の耐久性および対象流体との適合性を有するあらゆる可撓性材料から作製することができる。隔壁は、作動チャンバにかけられる流体、液体あるいは気体の圧力または真空に応じて曲がることができるあらゆる材料から作製することができる。隔壁材料はまた、特定の生体適合性、温度適合性、または隔壁によって押し出されるかまたは隔壁の移動を容易にするためにチャンバに導入され得るさまざまな対象流体との適合性に対して選択することも可能である。例示的な実施形態では、隔壁は、高伸度シリコーンから作製される。しかしながら、他の実施形態では、隔壁は、限定されないが、シリコーン、ウレタン、ニトリル、EPDM、または他のあらゆるゴム、エラストマーまたは可撓性材料を含む、あらゆるエラストマーまたはゴムから作製される。
隔壁の形状は、複数の変量によって決まる。これらの変量としては、限定されないが、チャンバの形状、チャンバのサイズ、対象流体の特性、ストローク1回当たりに送り出される対象流体の容量、および隔壁のハウジングに対する取付手段またはモードが挙げられる。隔壁のサイズは、複数の変量によって決まる。これらの変量としては、限定されないが、チャンバの形状、チャンバのサイズ、対象流体の特性、ストローク1回当たりに送り出される対象流体の容量、および隔壁のハウジングに対する取付手段またはモードが挙げられる。したがって、これらの変量および他の変量に応じて、隔壁の形状およびサイズはさまざまな実施形態において異なり得る。
隔壁はあらゆる厚さを有することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、厚さの範囲は、約0.0508mm(0.002インチ)から約3.175mm(0.125インチ)(1インチ=2.54cm)の間である。隔壁に使用される材料に応じて、所望の厚さは変化する可能性がある。一実施形態では、約0.381mm(0.015インチ)から約1.27mm(0.050インチ)までの範囲の厚さの高伸度シリコーンが使用される。しかしながら、他の実施形態では、厚さは異なり得る。
例示的な実施形態では、隔壁は、隔壁の領域の少なくとも一部に実質的にドーム形状を含むように予め形成される。この場合もまた、ドームの寸法は、上述した変量のうちのいくつかまたはそれより多くに基づいて異なり得る。しかしながら、他の実施形態では、隔壁は、予め形成されたドーム形状を含まない場合もある。
例示的な実施形態では、隔壁ドームは、液体射出成形を用いて形成される。しかしながら、他の実施形態では、圧縮成形を用いてドームを形成することができる。代替実施形態では、隔壁は実質的に平坦である。他の実施形態では、ドームのサイズ、幅または高さは異なり得る。
さまざまな実施形態では、さまざまな手段および方法によって、隔壁を適所に保持することができる。一実施形態では、隔壁は、カセットのいくつかの部分の間に締め付けられ、これらの実施形態のうちのいくつかでは、カセットのリムは、隔壁を掴む特徴を含むことができる。この実施形態のうちの他のものでは、隔壁は、少なくとも1つのボルトまたは別の装置を用いてカセットに締め付けられる。別の実施形態では、隔壁は、プラスチック片とオーバモールドされ、その後、プラスチックはカセットに溶接されるかまたは他の方法で取り付けられる。別の実施形態では、隔壁は、中間プレートと底部プレートとの間にはさみつけられる。隔壁をカセットに取り付けるいくつかの実施形態について記載されているが、隔壁をカセットに取り付けるあらゆる方法または手段が使用され得る。1つの代替実施形態では、隔壁は、カセットの一部に直接取り付けられる。いくつかの実施形態では、隔壁は、隔壁の他の領域より縁の方が厚く、そこで隔壁がプレートによってはさみつけられる。いくつかの実施形態では、この相対的に厚い領域は、ガスケット、いくつかの実施形態では、Oリング、リングまたは他のあらゆる形状のガスケットである。
ガスケットのいくつかの実施形態では、ガスケットは、隔壁と連続している。しかしながら、他の実施形態では、ガスケットは、隔壁の別個の部品である。いくつかの実施形態では、ガスケットは、隔壁と同じ材料から作製される。しかしながら、他の実施形態では、ガスケットは、隔壁とは異なる材料から作製される。いくつかの実施形態では、ガスケットは、隔壁の周囲にリングをオーバモールドすることによって形成される。ガスケットは、ポッドポンプハウジング実施形態を補完するように望まれるいかなる形状のリングまたはシールでもあり得る。いくつかの実施形態では、ガスケットは、圧縮型ガスケットである。
剛性チャンバであるため、ポッドポンプは、概して一定の容積を有している。しかしながら、ポッドポンプ内では、第1区画および第2区画は、チャンバを分割する可撓性隔壁の位置に応じて異なる容積を有することができる。したがって、一方の区画に空気を強制的に送り込むことにより、チャンバの他方の区画内の流体が排出される。しかしながら、流体は、典型的には、可撓性隔壁が存在するため、ポッドポンプ内で互いに直接接触することはできない。
したがって、一実施形態では、送り出すために用いられるポッドポンプは、第1区画に制御流体を受け取り、第2区画に送り出されるべき流体を受け取るように構成されている。制御流体は、任意の流体とすることができ、液体でも気体でもあり得る。一実施形態では、制御流体は空気である。ポッドポンプから(たとえば、真空、または少なくともポッドポンプ内の圧力より低い圧力によって)制御流体を引き離すことにより、ポッドポンプは、流体(たとえば、血液、透析液等)をポッドポンプの他方の区画内に引き込む。同様に、制御流体をポッドポンプに(たとえば、高圧源から)強制的に送り込むことにより、ポッドポンプは流体を排出する。また第2区画の弁を制御することにより、流体を第1弁を通して導入し、その後、制御流体の作用により第2弁を通して排出することができる。
別の例として、ポッドポンプは、たとえば上述したような透析液の流体平衡のために使用することができる。こうした場合、制御流体の代わりに、流体は、ポッドポンプの各区画に向けられ得る。上述したように、ポッドポンプの容積は、剛性チャンバにより概して一定のままである。したがって、第1容量の流体が平衡ポッドの第1区画に引き込まれるとき、等しい容量の流体が、平衡ポッドの第2区画から排出される(流体は、ポッドが動作する条件下において概して非圧縮性であると想定する)。したがって、こうした平衡パッドを用いることにより、等しい容量の流体を移動させることができる。たとえば、図5において、平衡ポッドにより、新鮮透析液が第1区画に入り、使用済み透析液が第2区画に入ることができ、新鮮透析液および使用済み透析液の容積流は、互いに対して平衡することができる。
場合によっては、チャンバを分割する可撓性隔壁を含まないポッドポンプが使用される。こうした場合、ポッドポンプは、混合チャンバとして使用することができる。たとえば、図7Aの混合チャンバ189は、こうしたポッドポンプであり得る。
図9に、ポッドポンプの非限定的な例を示す。この図は、カセットの実施形態で使用することができる空気圧式制御弁の断面図である。本明細書で用いる「空気圧式」は、空気または他の気体を用いて可撓性隔壁または他の部材を移動させることを意味する。(空気は単に例として使用され、他の実施形態では、窒素(N2)、CO2、水、油等の他の制御流体を用いることができることに留意するべきである)。3つの剛性部品、すなわち「頂部」プレート91、中間プレート92および「底部」プレートが使用される。(「頂部」および「底部」という用語は、単に、図9に示す向きを指す。弁は、実際の使用においていかなる方向にも向けることができる。)頂部プレート91および底部プレート93は、両側が平坦であり得るが、中間プレート92には、さまざまな流体路、チャンバおよびポートを画定するチャネル、圧痕および孔が設けられている。隔壁90は、中間プレート92とともに、弁チャンバ97を画定する。空気圧ポート96を通して空気圧が提供され、それにより、正の気体圧力により、隔壁90が弁座99に押し付けられて弁を閉鎖するか、または負の気体圧力により、隔壁が弁座から引き離されて弁を開放する。隔壁90、頂部プレート91および中間プレート92によって、制御気体チャンバ98が画定されている。中間プレート92には圧痕が形成されており、その中に、隔壁の一方の側の制御気体チャンバ98および他方の側の弁チャンバ97を形成するように隔壁90が配置される。
空気圧ポート96は、頂部プレート91とともに、中間プレート92の「頂」面に形成されたチャネルによって画定される。カセットにおけるいくつかの弁チャンバの間に流体連通を提供することにより、弁が互いに連動することができ、それにより、単一の空気圧源によって、互いに連動した弁のすべてを同時に開閉することができる。中間プレート92の「底」面に形成されたチャネルは、底部プレートとともに、弁入口94および弁出口95を画定する。中間プレート92を通して形成された孔は、(弁座99を通して)弁入口94と弁チャンバ97との間および弁チャンバと出口95との間に連通を提供する。
隔壁90には、厚化リム88が設けられ、それは、中間プレート92の溝89に緊密に嵌合する。したがって、頂部プレート91が中間プレート92に超音波溶接される前に、溝88に隔壁90を配置し溝88によって保持することができ、そのため、隔壁は、2つのプレートを合わせる超音波溶接を妨げず、それにより、隔壁は、2つのプレートが適所に保持されるように正確に合わせて超音波溶接されることに左右されない。したがって、この弁は、超音波溶接が非常に厳密な公差に対して行われることに依存することなく、容易に製造することができる。図9に示すように、頂部プレート91は、隔壁の厚化リム88が溝89から飛び出ないように、隔壁90が溝89から離れる方向に過度に付勢されるのを防止するように、制御気体チャンバ98内に延在する追加の材料を含むことができる。
圧力センサを用いて、ポッド内の圧力をモニタリングすることができる。たとえば、チャンバの空気圧側にかけられる空気圧を変更することにより、隔壁が総チャンバ容積を横切って周期的に往復移動する。各サイクルにおいて、空気圧によってポッドに真空が引かれるとき、入口流体ポートの上流弁を通して流体が引き出される。そして、空気圧によってポッドに正圧が送られるとき、流体は、続いて、出口ポートおよび下流弁を通して排出される。
図10は、流体制御カセットの実施形態に組み込むことができるポッドポンプの一実施形態の断面図である。いくつかの実施形態では、カセットは、図9および図10に示す構成技法に従って作製されたいくつかのポッドポンプおよびいくつかの弁を組み込む。こうした実施形態では、図10のポッドポンプは、図9の弁を作製するために用いられた同じ3つの剛性部品のうちの異なる部分から作製される。これらの剛性部品は、「頂部」プレート91、中間プレート92および「底部」プレートである。(上述したように、「頂部」および「底部」という用語は、単に図9に示す向きを指す)。ポッドポンプを形成するために、頂部プレート91および底部プレート93は、合わせて半球状ポッドポンプを画定する、概して半球状部分を含むことができる。
隔壁109は、ポッドポンプの中心空洞を、送り出される流体を受け取るチャンバ(ポンピングチャンバ)と、ポンプを空気圧式に作動する制御ガスを受け入れる別のチャンバ(作動チャンバ)とに分離する。入口94により、流体がポンピングチャンバに入ることができ、出口によって、流体はポンピングチャンバから出ることができる。入口94および出口95は、中間プレート92と底部プレート93との間に形成することができる。空気圧ポート106を通して空気圧が提供され、正の気体圧力により、隔壁109がポッドポンプの空洞の一方の壁に押し付けられて、ポンピングチャンバの容積を(図10に示すように)最小にし、または、負の気体圧力により、隔壁がポッドポンプの空洞の他方の壁に向かって引き寄せられてポンピングチャンバの容積を最大にする。
ポッドポンプの幾つかの実施形態では、ポッドポンプの空洞にさらされる1つまたは複数のプレートの溝を含むさまざまな構造が使用される。他にも利点があるが特に、溝を形成することにより、隔壁が流体あるいは空気(または両方)に対する入口流路あるいは出口流路(または両方)を閉鎖するのを防止することができる。
隔壁109に厚化リム88を設けることができ、それは、中間プレート92の溝89に緊密に保持される。したがって、図9の弁チャンバの場合のように、頂部プレート91が中間プレート92に超音波溶接される前に、隔壁109を溝89内に配置しかつ溝89によって保持することができ、そのため、隔壁は、2つのプレートを合わせる超音波溶接を妨げることがなく、隔壁は、2つのプレートが適所に保持されるように正確に合わせて超音波溶接されることに左右されない。したがって、このポッドポンプは、超音波溶接が非常に厳密な公差に対して行われることに依存することなく、容易に製造することができる。
図11Aは、図10に示すもの等、ポッドポンプのための圧力作動システム110の実施形態を示す概略図である。この例では、制御流体として空気が使用される(たとえば、それによってポンプは空気圧式に駆動される)。上述したように、他の実施形態では、制御流体として他の流体(たとえば、水)も使用することができる。
図11Aにおいて、圧力作動システム110は、ポッドポンプ101の作動チャンバ112内の気体に対して正の加圧および負の加圧を交互に提供する。空気圧作動式システム110は、作動チャンバ圧力変換器114、可変正供給弁117、可変負供給弁118、正圧気体リザーバ121、負圧気体リザーバ122、静圧リザーバ圧力変換器115、負圧リザーバ圧力変換器116とともに、電子コントローラ119を含む。
正圧リザーバ121は、作動チャンバ112に、制御気体の正の加圧を提供して、ポンピングチャンバ111がその最小容積である位置(すなわち、隔壁が剛性ポンピングチャンバ壁に接する位置)に向かって隔壁109を付勢する。負圧リザーバ122は、作動チャンバ112に、制御気体の負の加圧を提供して、ポンピングチャンバがその最大容積である位置(すなわち、隔壁が剛性作動チャンバ壁に接する位置)に向かって、隔壁109を反対方向に付勢する。
この例では、これらのリザーバ121、122の各々と作動チャンバ112との間の流体連通を制御するために、弁機構が使用される。図11Aにおいて、リザーバの各々に対して別個の弁が使用され、すなわち、正供給弁117が、正圧リザーバ121と作動チャンバ112との間の流体連通を制御し、負供給弁118が、負圧リザーバ122と作動チャンバ112との間の流体連通を制御する。これらの2つの弁は、電子コントローラ119によって制御される。(別法として、2つの別個の弁117、118の代わりに、単一の三方向弁を使用することができる。)場合によっては、正供給弁117および負供給弁118は、バイナリオン−オフ弁とは対照的に、可変絞り弁である。可変弁を使用する利点については後述する。
コントローラ119はまた、図11Aに示す3つの圧力変換器、すなわち作動チャンバ圧力変換器114、正圧リザーバ圧力変換器115および負圧リザーバ圧力変換器116から圧力情報を受け取る。それらの名称が示唆するように、これらの変換器は、作動チャンバ112、正圧リザーバ121および負圧リザーバ122内の圧力をそれぞれ測定する。コントローラ119は、2つのリザーバ121、122内の圧力をモニタリングして、それらが適切に(正または負に)加圧されていることを確実にする。これらのリザーバ121、122内で所望の圧力を得るために、1つまたは複数のコンプレッサ型ポンプを使用することができる。
一実施形態では、正圧リザーバ121によって提供される圧力は、通常の条件下で、隔壁109を剛性ポンピングチャンバ壁に対して押し付けるのに十分強力である。同様に、負圧リザーバ122によって提供される負圧(すなわち、真空)は、好ましくは、通常の条件下で、隔壁を剛性作動チャンバ壁に対して押し付けるのに十分強力である。しかしながら、いくつかの実施形態では、リザーバ121、122によって提供されるこれらの正圧および負圧は、正供給弁または負供給弁118のいずれかが完全に開放していても、隔壁109に対してかけられる正圧または負圧は患者に害を与えるほど強力ではないように、十分安全な範囲内にある。
一実施形態では、コントローラ119は、作動チャンバ圧力変換器114から圧力情報をモニタリングし、この情報に基づき、弁機構(弁117、118)を制御して、隔壁109をその最小ポンピングチャンバ容積位置まで移動させ、この位置に達した後、隔壁109をその最大ポンピングチャンバ容積位置まで引き戻す。
(作動チャンバ圧力変換器114、正圧リザーバ圧力変換器115、負圧リザーバ圧力変換器116、可変正供給弁117、可変負供給弁118、コントローラ119、正圧気体リザーバ121および負圧気体リザーバ122を含む)圧力作動システムは、断熱された空間(図6の要素61)の外側に完全にまたは大部分位置している。血液または透析液と接触する構成要素(すなわち、ポッドポンプ101、入口弁105および出口弁107)は、場合によっては、それらをより容易に消毒することができるように断熱された空間内に配置することができる。
図11Bに、ポッドポンプに対する圧力作動システム110の別の例を示す。この例では、ポッドポンプ101は、ポンピングチャンバ111、作動チャンバ112、および2つの側を分離する隔壁109を含む。流体ポート102および104は、たとえば、流体弁(図示せず)を使用することにより、ポンピングチャンバ111を出入りする流体のアクセスを可能にする。しかしながら、ポッドポンプ101内では、流体ポート102および104は、概して隆起した形状を有する「ボルケーノ」ポート126を含み、それにより、隔壁109がポートに接触すると、隔壁はポートに対して緊密シールを形成することができる。図11Bにはまた、圧力リザーバ121、122を接続する三方向弁も示されている。三方向弁123は、この例では単一ポートによって作動チャンバ112と流体連通している。
図11A〜図11Bに示す2リザーバ空気圧作動式システムの代りに、隔壁を往復して移動させるために他のタイプの作動システムを使用することができることが理解されよう。
上述したように、図11Aの空気圧作動式システム110の正供給弁117および負供給弁118は、好ましくは、バイナリオン−オフ弁とは対照的に、可変絞り弁である。可変弁を用いることにより、作動チャンバ112および隔壁109にかけられる圧力は、隔壁に完全なリザーバ圧力をかける代りに、リザーバ121、122内の圧力の単なる一部であるように容易に制御することができる。したがって、ポッドポンプを動作させる圧力がポッドポンプ毎に異なる可能性があるが、異なるポッドポンプに対して同じリザーバまたはリザーバの組を使用することができる。当然ながら、リザーバ圧力は、さまざまなポッドポンプの隔壁にかけられる所望の圧力より大きい必要があるが、一方のポンプは、リザーバ圧力のたとえば半分で動作させることができ、別のポッドポンプは、同じリザーバで、ただし、たとえばリザーバ圧力の1/4で作動させることができる。したがって、透析システムにおける異なるポッドポンプが異なる圧力で動作するように設計されていても、これらのポッドポンプはすべて、同じリザーバまたはリザーバの組を共有するが、可変弁を使用することにより、依然として異なる圧力で駆動されることが可能である。ポッドポンプで使用される圧力は、透析処置の間に上昇するかまたは変化する可能性がある状態に対処するように変更することができる。たとえば、システムの管を通る流れが、チューブがねじれることによって妨げられた場合、制限の増大を過補償するために、ポッドポンプで使用される正圧または負圧のうちの一方または両方を増大させることができる。
図12は、可変弁を用いて、ポッドポンプにかけられる圧力をいかに制御することができるかを示すグラフである。縦軸は、正のリザーバおよび負のリザーバ(図11Aにおける要素121および122)内の圧力をそれぞれ表すPR+およびPR−と、ポッドポンプの隔壁に作用する正の制御圧および負の制御圧をそれぞれ表すPC+およびPC−とを用いて圧力を表す。図12に示すように、時間T0からおよその時間T1まで、(ポンピングチャンバから流体を押し出すように)作動チャンバに正圧がかけられる。正の可変弁(図11Aにおける要素117)によってもたらされる流量絞りを繰り返し増減させることにより、作動チャンバにかけられている圧力は、およそ所望の正の制御圧PC+で保持することができる。圧力は、所望の制御圧の周囲で、制限曲線状に変化する。作動チャンバと連通している作動チャンバ圧力変換器(図11Aの要素114)は、作動チャンバ内の圧力を測定し、圧力測定情報をコントローラ(図11Aの要素119)に渡し、コントローラは、可変弁を制御して、作動チャンバの圧力が所望の制御圧PC+の辺りで変化するようにする。障害状態がない場合、隔壁は、ポンピングチャンバの剛性壁に対して押し付けられ、それによりストロークを終了する。コントローラは、可変弁によってもたらされる絞りが低減しても、作動チャンバで測定される圧力がそれ以上低下しない場合に、ストロークの終了に達したと判断する。図12において、排出ストロークの終了は、時間T1の辺りで発生する。ストロークの終了が検知されると、コントローラは、可変弁を完全に閉鎖し、それにより、作動チャンバの圧力は、所望の制御圧PC+をはるかに超えて上昇することはない。
正の可変弁が閉鎖した後、負の可変弁(図11Aの要素118)は、部分的に開放されて、負圧リザーバが気体を作動チャンバから引き出し、したがって流体をポンピングチャンバ内に引き込むのを可能にする。図12に示すように、T1の直後の時間からおよそ時間T2まで、作動チャンバには負圧がかけられる)。排出(正圧)と同様に、負の可変弁によってもたらされる流量絞りを繰り返し増減させる上述したストロークにより、作動チャンバにかけられている圧力を、(負圧リザーバ内の圧力より弱い)およそ所望の負の制御圧PC−に保持することができる。圧力は、所望の制御圧の辺りで正弦曲線状に変化する。作動チャンバ圧力変換器は、圧力測定情報をコントローラに渡し、コントローラは、作動チャンバの圧力が所望の制御圧PC−の辺りで変化するように可変弁を制御する。障害状態がない場合、隔壁は作動チャンバの剛性壁に対して引っ張られ、それにより引出し(負圧)ストロークが終了する。上述したように、コントローラは、可変弁によってもたらされる絞りが低減しても、作動チャンバにおいて測定される部分的真空がそれ以上低下しないときに、ストロークの終了に達したと判断する。図12において、引出しストロークの終了は、およそ時間T2で発生する。ストロークの終了が検知されると、コントローラは、可変弁を完全に閉鎖し、それにより、作動チャンバの真空は、所望の負の制御圧PC−をはるかに超えて上昇することはない。引出しストロークが終了すると、正圧による新たな排出ストロークを開始するために、正の可変弁を部分的に開放することができる。
したがって、この例における各ポッドポンプは、2つの可変オリフィス弁を使用して、流れを正圧源から負圧源に絞る。作動チャンバ内の圧力がモニタリングされ、コントローラは、この圧力測定値を用いて、作動チャンバ内の所望の圧力を達成するように両弁に対して適切なコマンドを確定する。この構成のいくつかの利点は、圧力限界を考慮しながら所望の流量に達するように、充填圧力および吐出圧力を正確に制御することができることと、小さい正弦曲線状のシグネチャ(signature)コマンドを用いて圧力を変化させることができることとである。このシグネチャをモニタリングして、ポンプがストロークの終了に達したときを判断することができる。
バイナリ弁の代わりに、このように可変弁を用いる別の利点は、可変弁を部分的にのみ開閉することにより、弁の摩耗および引裂きが低減するということである。バイナリ弁を完全に開閉するように繰り返し「激しく打つ」ことにより、弁の耐用年数が短くなる可能性がある。
ストロークの終了が検出され、相関関数の積分値が非常に小さい場合、これは、ストロークに閉塞が発生し適切に完了しなかったことを示す可能性がある。閉塞が発生したのが充填ストロークであるか吐出ストロークであるかを確認することにより、下流の閉塞から上流の閉塞を識別することができる可能性がある(これは、隔壁がチャンバ壁の近くにあるときにストロークの終了の近くで発生する閉塞の場合は困難である可能性がある)。図13A〜図13Bは、閉塞の検出を示す(閉塞が検出されたとき、チャンバ圧力は0に降下する)。
通常動作下では、相関関数の積分値は、ストロークが進行するに従って増大する。この値が小さいままであるかまたは増大しない場合、ストロークは、非常に短い(非常に低インピーダンスの流れまたは閉塞の場合)かまたは、実際の圧力が、不良の弁または圧力信号のために所望の正弦曲線状圧力を追跡することができない。相関がないことを検知して、これらの場合のエラー処理に使用することができる。
流量コントローラが運転している通常の状況では、制御ループは、流量のいかなる変化に対しても圧力を調整する。回路のインピーダンスが劇的に増大し、流れが目標流量に達する可能性がある前に圧力限界が飽和した場合、流量コントローラは、所望の流量に達するように圧力をより高く調整することができなくなる。これらの状況は、回路内に血液の塊が形成された場合等、ラインが部分的に閉塞した場合に発生する可能性がある。流量が目標流量に達していない圧力飽和は、検出してエラー処理に使用することができる。
流体弁の漏れおよびノイズのある圧力信号等、弁または空気圧に問題がある場合、リップルが、ストロークにおいて不明瞭に続く可能性があり、ストローク終了アルゴリズムは、ストロークの終了を検出するために、圧力リップルに十分な変化を確認することができない。この理由で、ストロークを完了する時間が過度であるか否かを検出するために、安全点検が追加される。この情報をエラー処理に用いることができる。
図3Aにおけるポンプ13等の二重ポンプでは、ポンプサイクルをもたらすように、2つのポンプチャンバを反対方向に周期的に運転することができる。0°(両チャンバが同じ方向に作用する)から180°(チャンバが反対方向に作用する)までの位相関係を選択することができる。両チャンバを同じ方向に同時に移動させることは不可能である可能性があるため、場合によっては、位相の動きを幾分か変更することができ、そうすることにより、入口弁および出口弁両方を開放する可能性があり、ストロークの終了は適切に検出されない。
180°の位相関係を選択することにより、ポッドに出入りする連続した流れがもたらされる。これは、連続流が望まれる場合の名目上のポンプモードである。0°の位相関係を設定することは、単一針流の場合に有用である。ポッドは、まず針から充填され、その後、同じ針に吐出する。0度と180度との間の位相での運転を用いて、透析装置を横切ってプッシュ/プル関係(血液透析ろ過法/連続バックフラッシュ)を達成することができる。図8A〜図8Cは、こうした位相関係のグラフ図である。
ポッドポンプは、さまざまなサブシステムを通る流体の流量を制御することができる。たとえば、正弦曲線状の圧力波形をDC圧力コマンドに追加して、ポッドポンプに対する、命令された圧力信号を構成することができる。隔壁が移動しているとき、ポッド内の圧力は正弦曲線状コマンドを追跡する。隔壁がチャンバ壁と接触し、それ以上移動していない場合、ポッド内の圧力は一定のままであり、正弦曲線状入力コマンドを追跡しない。ポッドの圧力信号コマンド追跡の相違を用いて、ストロークの終了が検出される。ストローク終了情報から、各ストロークの時間が計算される。ポッドの容積およびストロークを完了する時間を知ることにより、各ポッドに対する流量を求めることができる。流量は、次のストロークのために必要なDC圧力を計算するために、PIループにフィードバックされる。
正弦曲線状入力の振幅は、実際の圧力がコマンドを適度に追跡するのに十分大きく、かつ最小DCポンプ圧から減ぜられポッドに適用された場合に、圧力が、隔壁を、流体粘度、揚程高さおよび流体回路抵抗の予期された動作条件の下で移動させるのに十分高いように、十分小さいように選択することができる。正弦曲線状入力の周波数は、ストロークの終了を確実に検出することができるように、経験的に選択された。1回のストローク当たりの正弦波の周期が高いほど、ストローク終了検出アルゴリズムの精度が向上する。
ポンプストロークの終了において、またはポッドポンプの出口ラインにおける閉塞中、測定された圧力は予測された圧力からずれる。実施形態では、ポッドポンプの命令された圧力からの測定された圧力のずれを検出するために、ポッドにおける命令された圧力信号および測定された圧力信号を、相互相関フィルタを通して送出することができる。好ましくは、相互相関フィルタ用のサンプリング窓のサイズは、入力正弦波の周期と等価である。窓内のすべてのサンプルに対して、命令された圧力信号に対して、実際の圧力の先行するサンプルが掛けられ、先行する相関値に加算される。その後、窓は、1フレーム分シフトし、プロセスは繰り返される。実施形態では、その後、得られた結果は、微分され、入力正弦波周波数と同じコーナ周波数と減衰比が1である2次フィルタを通される。このフィルタの効果は、入力正弦波周波数で相関信号を隔離するバンドパスフィルタとして作用することである。任意選択的に、その後、このフィルタの出力の絶対値は、正弦波周波数の同じ周波数であり減衰比がたとえば約3.0である2次ローパスフィルタに通される。この第2フィルタは、微分信号を積分し結果としての信号のノイズを低減させるために使用される。2つの信号が相関する場合、結果としてのフィルタリングされた値は大きくなる。2つの信号が(たとえば、ストロークの終了において)相関しない場合、結果としてのフィルタリングされた値は小さくなる。フィルタリングされた相互相関信号が特定の所定閾値より小さくなると、または信号が、ストロークを通してその最大値の一定の割合だけ低下すると、ストロークの終了を検出することができる。特定のポンプシナリオに対する性能を調整するために、この閾値または割合の低下は、圧力および流量の関数として変更することができる。
ストローク終了アルゴリズムは、通常、ストロークの終了を検出するために正弦波リップルの約1周期をとるため、この周期時間を最小限にする(正弦波周波数を最大限にする)ことにより、ストロークの終了における遅延が低減する。低圧、高周波数の流れは、コントローラによって十分追跡されない。低圧ストロークは、流量が低下する傾向があり、したがって、ストロークの終了における遅延は、総ストローク時間における割合が低くなる。この理由で、周波数は、低圧のストロークほど低い可能性がある。正弦波の周波数は、吐出圧力の線形関数または他の関数として調整することができる。これにより、ストロークが短いときに最小遅延が確保される。所望の圧力に対する正弦波の周波数が変化する場合、相互相関関数のフィルタもまた調整されるべきである。フィルタは、この変化する周波数に基づいてフィルタ係数を連続して計算するように設定される。
ポッドチャンバ内の圧力もまた、2つの可変ソレノイド面を用いて制御することができ、一方は、プレナムを高い方の圧力源に接続し、第2ソレノイド弁は、プレナムを低い方の圧力の(または真空)シンクに接続する。ソレノイド弁は大きい不感帯領域を有する傾向があるため、補償するために、コントローラのアルゴリズムに非線形オフセット項を追加することができる。
(位相不感応(insensitive)相互相関)
システムコントローラ119(図11A)は、圧力駆動往復ポンプ110を動作させる弁117、118(可変弁等)の流量絞りの変化に応じて圧力を複数の方法で分析することができる。1つの技法は、弁の動作を制御する信号に対してポンプの作動チャンバ112の圧力信号の位相シフトに対して不感応である相互相関フィルタを用いるというものである。上記圧力および弁信号データに位相不感応相互相関フィルタを適用することにより、本明細書では相関数と呼ぶ一組の値が生成される。相関数は、作動チャンバ112で測定された圧力と、ポンプ作動チャンバに正圧を供給する可変弁117またはポンプ作動チャンバに負圧を供給する可変弁118のいずれかの開閉を操作する周期的に変化する信号との相関の定量的な尺度である。
実施形態では、可変弁117、118を操作する信号は、作動チャンバ112内で所望の圧力を達成するために、弁コマンド信号を変化させる閉ループコントローラの出力であり得る。この実施形態では、所望の圧力は、周期的に変更され、コントローラは、各時間増分において所望の圧力と測定圧力との間の差を最小限にするように弁コマンド信号を変化させる。この実施形態では、相関数は、弁コントローラを駆動する所望の圧力と作動チャンバ内の測定圧力との間で計算することができる。
実施形態では、相関数を用いて、送り出されている液体の瞬間流量とともに、ストローク終了、部分的閉塞および完全な閉塞を含む複数の他の状態の推定値を提供することができる。相関数は、限定されないが、ポンプ圧センサ114から受け取られる圧力信号、弁117、118(この例では可変弁)を操作する電子信号の振幅、および弁操作信号に適用される時間変化信号(たとえば、リップル波形)の周波数を含む、複数の入力を用いて計算することができる。例示的な実施形態では、この相関数を用いて、血液透析装置6001(図61においてブロック形態で表す)におけるポッドポンプのさまざまな動作パラメータについて記述することができる。それはまた、他のシステムでも使用することができ、そこでは、液体が、正圧源および/または負圧源に流体接続された可変弁の動作を通して、正または負の流体圧(たとえば、空気圧等)にさらされる制御チャンバまたは作動チャンバを有する圧力駆動式往復チャンバに、送り込まれるかまたはそこから送り出される。
一態様では、相関数は、供給弁に対する時間変化するコマンド信号と応答するポンプ圧信号との間の相互相関と、遅延したコマンド信号と不変の圧力信号との第2相互相関とのベクトル和であるとみなすことができる。この数学的演算により、可変信号と、ポンプ作動チャンバ内の圧力変化に関連する信号との間の位相角に対して不感応であり得る相関数がもたらされる。一実施形態では、相互相関は、圧力信号と弁コマンド信号とに対して計算され、そこでは、入力正弦波の周期の1/4分、遅延するかまたはシフトしている。
図130に、相関数の計算の基礎をなす原理を示す。この例では、可変弁を用いて、圧力駆動式往復ポンプに正または負の空気圧が供給される。相互相関フィルタのためのサンプリング窓のサイズは、可変弁信号12020の周期と等価である。可変弁信号は、好ましくはDC信号であり、その上に、正弦波形が重ね合わされている。他の実施形態では、DC信号に、たとえば三角波または矩形波等、他の時間変化する周期的信号を適用することができる。コントローラは、デジタルで可変弁コマンド信号およびポンプ圧信号をサンプリングし、サンプリング窓の各サンプルに対して可変弁信号のAC成分に測定された圧力信号のAC成分を掛けることにより、可変弁コマンド信号と圧力信号との間の相互相関を計算することができる。サンプリング窓の各サンプル点に対する2つのAC信号の積がその後、合計される。
圧力のAC信号と、1/4周期または90度、時間がシフトした可変弁コマンド信号とから、第2相互相関が計算される。この第2相互相関は、サンプリング窓における各サンプル点に対して、シフトされた可変信号のAC成分に測定された圧力信号のAC成分を掛けることによって計算される。そして、サンプリング窓における各サンプル点に対する2つのAC信号の積が合計される。
次に、これらの2つの相互相関のベクトル加算の振幅が、第1相互相関の平方と第2相関の平方との和の平方根をとって相関数をもたらすことによって計算される。1/4周期シフトにおいて第1相互相関の第2相互相関とのベクトル加算を行う1つの利点は、圧力と可変弁信号との間の位相の変化に対する相関数の感度の低下を含む。最後に、ノイズを低減させるために、圧力信号は、たとえば可変弁周波数に等しい可能性があるカットオフ周波数を有する2次フィルタに通すことができる。
相関角は、第1相互相関を水平ベクトルとしてみなし第2相互相関を垂直ベクトルとしてみなすことにより、第1相互相関および第2相互相関から計算することができる。相関角は、第1相互相関に対する合計されたベクトルの角度である。角度は、弁駆動信号に対する作動チャンバ圧力の尺度位相シフトであるとみなすことができる。
コントローラは、相関数を計算するように複数の方法でプログラムすることができる。たとえば、各信号のAC成分は、サンプリングされた値から信号の平均値を減ずることによって計算することができる。可変弁および圧力信号の平均値は、相互相関計算が開始する前に最初のいくつかのサンプルから求めることができる。この方法は、圧力信号におけるノイズの影響を低減させるのに役立つ。好ましい実施形態では、可変弁および圧力信号のAC成分は、時間に対して可変弁信号および圧力信号の微分をとることによって求められる。微分計算は、比較的柔軟かつロバストである。可変弁および圧力信号の離散サンプリング点に対する、第1相互相関(A)に対するこの計算の1つの例示的な実装形態は、以下の式1によって与えられる。
式1
式中、V(j)およびP(j)は、サンプルjに対するそれぞれサンプリングされた可変弁信号および圧力信号であり、V(j−1)およびP(j−1)は、サンプルjの前のサンプルに対する可変弁信号および圧力信号であり、nは、窓におけるサンプルの数であり、τは窓周期である。一例では、窓の幅nは、入力正弦波または課された周期的弁コマンドの変動の1周期である。第1相関の値Aは、各時間ステップにおいて、ストローク開始コマンドのたとえば1.25*nの時間ステップの後で開始して計算することができ、ストローク終了コマンドまで継続する。
同じ計算を繰り返して、以下の式2に示すように、可変弁信号を1/4周期だけシフトさせて、第2相互相関を計算することができる。
式2
第2相関の値Bは、各時間ステップにおいて、ストローク開始コマンドのたとえば1.25*nの時間ステップ後に開始して計算することができ、ストロークの終了まで継続する。
生の相関数は、以下の式3に示すように、第1相互相関値Aの平方と第2相互相関値Bの平方との和の平方根として定義することができる。
式3
そして、式4に示すように、たとえば可変弁信号の周波数に等しいカットオフ周波数を有する2次ローパスフィルタによって、相関数をフィルタリングすることができ、Corr(i)=Raw(i−1)+α*[Raw(i)−Corr(i−1)]
式4
式中、αは平滑化因数0<α<1である。
以下のように第1相互相関値および第2相互相関値から、相関角を計算することができ、
式5
式中、A(1)およびB(1)は、A(i)およびB(i)の初期値である。相関角は、弁コマンド信号と測定された作動圧力信号との間の位相シフトの測定値であるとみなすことができる。相関角は、ポンピングチャンバ内の隔壁109のストロークの進行または相対位置を示すことができる。特に1つのあり得る理論は、相関角12141は、作動チャンバ112の容積が小さい場合に小さく、作動チャンバの容積が増大すると増大する可能性がある、ということである。
図133に、第1相互相関(A)12138、第2相互相関(B)12139、位相不感応相互相関12140および位相不感応相互相関角12141のグラフ図を示す。相互相関結果は、図132にプロットされた値12106、12116の2つの正弦波の組から計算される。2つの正弦波の組の間の位相差は、往復する容積型ポンプにおける可変弁コマンド信号12105(図134)と作動チャンバ圧力12115との間の位相関係の変化に類似することができるように、経時的に変化する。可変弁コマンド信号12105と圧力信号との間の変化する位相角に対する1つのあり得る理論は、ポンプチャンバ111が液体を充填するかまたは空にする際、作動チャンバの容積が、それぞれより小さくなるかまたは大きくなり、それによって、弁コマンドに対する圧力の応答性が変化する、というものである。
位相不感応相互相関12140は、2つの信号12106、12116の間の位相差の変化にも関わらずおよそ一定である。2つの信号の間で位相角が変化する際、第1相互相関値12138および第2相互相関値12139は大幅に変化する。
図134に、この位相不感応相関数の1つの例示的な使用を示し、そこでは、図11Aに記載したハードウェアを用いて、圧力データおよび相関値が、圧力駆動型往復ポンプに対する吐出ストロークおよび充填ストロークについてプロットされている。吐出ストロークは、一方または両方の可変弁117、118を制御して、作動チャンバ112をセンサ114によって測定される所望の圧力まで加圧することによって、開始することができる。圧力が所望のレベル12110まで上昇すると、圧力は、正圧可変弁117のみによって制御される。正圧可変弁117に対する制御信号は、加圧中の可変弁信号および現測定圧力の関数であり得る。正圧可変弁の絞りまたは開放は、測定圧力12115の応答する変動をもたらすように正弦曲線状に12105変化する可能性がある。実施形態では、信号を安定化させるために、(上述したような)相関数の計算を数サイクル後に開始するように、コントローラ119をプログラムすることができる。
高い相関数12140は、測定された圧力が可変弁コマンド信号を追跡していることと、隔壁が移動していることとを示すことができる。コントローラは、ストローク中に最大相関数12145を格納することができる。経時的な相関数の積分12150により、ポンプ110によって押しのけられた液体の量の尺度をさらに提供することができる。
膜タイプの圧力駆動型往復ポンプにおける1つの例示的な方法では、吐出ストロークにおける物理的なストロークの終了は、膜109がポンプ101内の液体のすべてまたは大部分を押しのけ、ポンプチャンバの壁に対してそのエクスカーションの限界に達したときに発生するものとして定義することができる。指定されるストロークの終了は、相関数がおよそゼロになる時点として定義することができる。物理的なストロークの終了時、作動チャンバまたは制御チャンバ112の容積は固定になり、チャンバ内の圧力は、弁コマンド信号に応じて変動を停止することができる。指定されたストロークの終了12160では、圧力信号12115がその周期性を喪失した後の短時間の間に、相関数12140はゼロに向かって低下する。物理的なストロークの終了からわずかに遅延するが、相関数に基づく指定されたストロークの終了は、物理的なストロークの終了のより確実な指示を提供し、それは、信号強度による信号ノイズおよび変動の影響が低減するためである。
充填ストロークは、吐出ストロークと同様のプロセスに従う。充填ストロークは、一方または両方の可変弁117、118が作動チャンバ112を所望の低圧12102にするときに開始する。圧力が所望の低圧まで低下すると、作動圧力は、負圧可変弁118のみによって制御することができる。負圧可変弁118に対する制御信号は、加圧中の可変弁信号および現測定圧力の関数であり得る。負圧可変弁コマンド信号は、測定圧力における応答する変動をもたらすように正弦曲線状に変化する可能性がある。計算の信頼性を向上させるために、(上述したような)相関数の計算を数サイクル後で開始するようにコントローラ119をプログラムすることができる。1つの例示的な方法では、膜タイプの圧力駆動型往復ポンプでは、充填ストロークに対する物理的なストロークの終了は、ポンプチャンバが液体で満杯になり、かつ膜109が作動チャンバの壁に対してそのエクスカーションの限界に達したときに発生するものとして定義することができる。指定されたストロークの終了は、相関数がおよそ0になる時点として定義することができる。物理的なストロークの終了時、作動チャンバ112の容積は略ゼロで固定となり、チャンバ内の圧力は、弁コマンド信号に応答して変動するのを停止する。指定されたストロークの終了12165時、圧力信号がその周期性を喪失すると、相関数12140は短時間の間にゼロに向かって低下する。
透析装置は、内部透析液ポンプおよび血液ポンプによって発生する圧力波に対して透過性である。相互相関処理は、たとえば、可変弁コマンド信号から十分に異なる周波数である、透析液ポンプにおける圧力信号を拒絶する傾向がある。したがって、内部透析液ポンプおよび血液ポンプに対する相関数計算は、透析液ポンプおよび血液ポンプの可変弁コマンド信号を異なる周波数で変化させるようにコントローラをプログラムすることにより、互いに隔離することができる。
コントローラ119は、相関数12140が最大相関数12145の所定の割合未満に低下したときにストロークの終了12160、12165を宣言することができる。別の例示的な実装形態では、コントローラは、相関数12140が、最大相関数1245の所定の割合未満に低下し、かつ時間の経過によって増大していないとき、ストロークの終了12160、12165を宣言することができる。他の実施形態では、指定されたストロークの終了は、相関数12140が、ポンプストローク中の所定時間間隔の間に平均相関数の所定の割合未満に(値が、所定期間にわたってそれ以上増大しないというさらなる条件があってもなくても)低下するときに、宣言することができる。別の例示的な実装形態では、コントローラは、相関数12140が所定閾値未満に低下したときに、ストロークの終了12160を宣言することができる。別の例示的な実装形態では、コントローラは、相関数12140が所定閾値未満に低下し、かつ時間の経過によって増大していないときに、ストロークの終了12160を宣言することができる。
ポンプから出る瞬間的な流量は、ポンプストロークの大部分の間に相関数から求めることができる。流量は、相関数に比例することができる。図131は、弁117における正弦曲線状に変化する絞り12020に応答する作動チャンバ112内の3つの例示的な圧力トレース12050、12052、12054を示す。作動チャンバ112における圧力応答12050、12052、12054は、膜109が移動する際に作動チャンバ容積が変化しているとき、可変弁117、118の変化する絞りを追跡する傾向がある。圧力トレース12050は、吐出ストローク中にチャンバ111の液体側からの流れが停止する場合の圧力応答の例である。流れが停止した場合、作動チャンバ112の容積は一定となり、チャンバは、圧力12050がリザーバ圧力12051に達するまで充填される。作動チャンバ112の容積が一定である場合、入口弁117の絞りの変化は、圧力上昇率のみを変化させることができる。圧力トレース12054は、ポンプからの液体流量が比較的絞られない場合の圧力応答の例であり、その場合、膜は迅速に移動している可能性があり、作動チャンバ容積は迅速に増大している可能性があるため、空気の流れを絞ることにより、チャンバ112内の圧力12054が著しく低下する。圧力トレース12052は、低い流量の例であり、そこでは、弁の絞り12020が変化する際に、チャンバ内の圧力12052はわずかにしか変化しない。相関数は、可変弁の絞りの所与の振幅に対して圧力波形の振幅に比例する。高振幅圧力波は、高速膜移動と、ポンプに出入りする液体の高い流量とを示すことができる。したがって、高い相関数は、流量に比例することができる。瞬間的な流量を測定するこの方法の利点としては、治療の信頼性の向上、治療の精度の向上、より優れた流量制御およびより低コストの計装が挙げられる。
別の例示的な実装形態では、コントローラは、相関値12141が定義されていないときにストロークの終了を宣言することができる。コントローラは、相関角の値からストロークの進行を計算することができる。瞬間的な流量は、相関角12141の変化率から計算することができる。
ポンプチャンバからの液体流が絞られるとき、閉塞が存在していると考えられる。図135に示すように、上で計算したような相関数に基づいて、部分的閉塞および完全な閉塞を検出することができる。部分的閉塞は、低い相関数および低い積分相関数をもたらす可能性がある。コントローラ119は、より多くのポンプストロークを命令するかまたはかけられる最大圧力を増大させることにより、部分的閉塞を補償することができる。完全な閉塞は、ストロークの終了に類似し、相関数、積分相関数および相関角において同様の応答をもたらす可能性がある。実施形態では、コントローラは、ストローク間の相関および積分相関数を追跡することにより、閉塞検出をモニタリングすることができる。たとえば、最大相関数12145、積分相関数12150、またはストロークの終了時の相関角の絶対値のうちのいずれかが、先行する完全スロトーク値から所定量低減した場合(たとえば、先行するフルストローク値の約70%未満までの低減)、完全な閉塞を宣言することができる。別の態様では、最大相関数、積分相関数、またはストロークの終了時の相関角の絶対値が、3つの連続したストロークに対してフルストローク値の90%未満である場合に、完全な閉塞を宣言することができる。フルストロークの最大相関数、積分相関数、またはストロークの終了時の相関角の絶対値は、最近のフルストロークから取得することができる。別の態様では、最大相関数、積分相関数、またはストロークの終了時の相関角の絶対値が、少なくとも2つのストロークに対して所定最大値未満である場合に、完全な閉塞を宣言することができる。この最後の試験を用いて、たとえば、ストローク間の比較をよくても困難にする、開始から閉塞するチャンバを検出することができる。
(血流基準)
別の態様では、コントローラは、体外血流システムの血液回路で生成される血流の品質、妥当性または十分な量を表す数値を求めることができる。これは、血液ポンプの充填ストローク中に制御チャンバ壁に向かって移動している血液ポンプの隔壁の応答性に関連することができる。血液透析システムは、この特徴から利益を得ることができる体外血流システムの一例である。血液透析中に血液ポンプの充填の精度を求めることは有用である可能性があり、それは、透析装置の血液側の圧力が、血液ポンプの充填が低層であるかまたは不適切であるために、血液ポンプによる低速なまたは不適切な血液吐出によって影響を受ける可能性があるためである。透析装置における血液圧力は、好ましくは、透析装置の透析液出口に接続された透析液ポンプが完全に充填するのを可能にするのに十分なレベルで、または少なくとも、透析液流平衡回路が容積測定的に平衡して動作するのを可能にするように十分に維持されるべきである。したがって、システムコントローラが、(たとえば通常動作から導出される)所定値または基準と比較することができる、血液回路に関連する血流値または基準を求めることができることが有利であり、それにより、透析液ポンプ動作は、透析装置において十分な血流および/または血液圧力を確実にすることができるまで、一時的にまたは他の方法で、調整され、休止され、または停止されることが可能である。
血流基準は、血液ポンプストローク毎に、またはさらには血液ポンプ充填ストロークの持続時間の間に変化する可能性がある。実施形態では、コントローラは、単一の血液ポンプ充填ストローク中に、連続してまたは周期的に血流基準を求めることができる。これは、血液透析治療中、有用である可能性があり、それは、コントローラが、透析液ポンプ動作を休止または停止するコマンドを発行する前に、ユーザに、血流回路内の血流を向上させる調整を行う機会があり得るためである。たとえば、(標準を満たさない血流基準をもたらす)不十分な血流状態は、バスキュラアクセス部位に発生する可能性がある(たとえば、ろうにおける塊形成、血管またはろうの壁に対してカニューレオリフィスがひっこうした等)か、または、バスキュラアクセスにまたはそこから通じる血液管内で発生する可能性がある(たとえば、血液管の曲りまたはキンク)。実施形態では、コントローラは、血液ポンプが、ユーザが不十分な血流状態を補正するのに十分な時間、動作し続けるのを可能にすることができる。一例では、コントローラによる血流基準のリアルタイムの追跡またはモニタリングにより、コントローラは、透析液ポンプの停止を本来開始する閾値に達する前に、ユーザに対して警告することができる。別の例では、コントローラは、標準に満たない血流基準が、2つ以上のポンプストロークに対して存在することを可能にすることができ、その間、ユーザに対して、その状態が警告され、それを補正する十分な時間が与えられる。1つの好ましい実施形態では、コントローラは、3つの連続した血液ポンプストロークに対して標準に満たない血流基準が持続するまで、透析液ポンプの調整または停止を遅らせる。
血流基準は、システムコントローラによって生成される圧力信号に対する血液ポンプの隔壁の応答性から求めることができる。好ましくは、血流基準は、血液ポンプの充填ストローク中に求められ、その間、隔壁のポンプ制御チャンバに向かう移動中、時間変化する圧力波形が適用される。
したがって、透析液出口から流体を受け取る透析液ポンプと、透析装置に吐出するために血液回路から血液を受け取る血液ポンプと、血液ポンプの制御チャンバ内に位置する圧力センサと、圧力をモニタリングし血液ポンプの隔壁への圧力の印加を制御するコントローラとを備える、透析装置からの流体の流れを制御するシステムにおいて、コントローラは、充填ストローク中に隔壁に対して時間変化する圧力波形を適用し、圧力センサによって測定される制御チャンバ内の圧力応答をモニタリングするように構成することができる。測定された圧力変動の大きさが所定閾値からずれる場合、コントローラは、透析装置の透析液出口に接続された1つまたは複数の透析液ポンプを調整し、休止しまたは停止する処理を開始することができる。
図11Aに概説したようなシステム例では、圧力作動システム110は、往復ダイアフラムポンプ101の作動チャンバ112に対して正の空気圧および負の空気圧を交互に提供する。この例では、システム110は、作動チャンバ圧力変換器114、可変正供給弁117、可変負供給弁118、正圧気体リザーバ121、負圧気体リザーバ122、正圧リザーバ圧力変換器115、負圧リザーバ圧力変換器116とともに、電子コントローラ119を含むことができる。
正圧リザーバ121は、隔壁109をポンピングチャンバ111の対向する壁に向かって付勢して流体吐出ストロークを行うように、制御または作動チャンバ112に対する正の空気圧源を提供する。負圧リザーバ122は、隔壁109を作動チャンバ112の対向する壁に向かって付勢して流体充填ストロークを行うように、制御または作動チャンバ112に対する負圧または真空源を提供する。充填ストローク中、ポンプの流体入口弁106は開放され、流体出口弁107は閉鎖されている。血液ポンプでは、充填ストローク用の流体は、ポンプの流体入口に接続された動脈血管ラインを介して患者のバスキュラアクセスからもたらされる。ポンプに利用可能な血液の容量が、たとえば血液ラインの狭隘、バスキュラアクセスの部分的な凝血発生、血管カニューレのオリフィスの部分的閉塞等によって制限される場合、制御チャンバ112内の負圧の印加に対する隔壁109の機械的応答は損なわれる可能性がある。
実施形態では、コントローラ119は、作動チャンバ圧力変換器114から圧力情報をモニタリングし、この情報に基づいて、弁機構(弁117、118)を制御して、隔壁109をその最小ポンピングチャンバ容積位置まで押しやり、その後、この位置に達すると、隔壁109をその最大ポンピングチャンバ容積位置まで引き戻すことができる。コントローラ119は、所望の流量をもたらすように、作動チャンバ112内の制御圧力を変化させることができる。さらなる実施形態では、コントローラ119は、制御弁117、118に対して時間変化するかまたは周期的な制御信号を(たとえば、弁オリフィスの電気機械変動により)課すことによって、図12に示すような所望の制御圧力の辺りで変動する圧力を生成することができる。隔壁109が、充填ストローク中にコントローラによって課される圧力信号処理中に、予測されたように制御チャンバに向かって移動しない場合、ポンプ制御チャンバ内の測定された圧力または圧力変動は、コントローラ119によって検出可能な予測される値または圧力変動から逸脱する可能性がある。
ここで図156を参照すると、ポンプ制御チャンバからの圧力追跡が示されており、そこでは、作動チャンバが制御弁を介して負圧リザーバに接続されている充填ストローク中、弁制御信号13100は負圧の辺りで変動する。制御信号13100は、mmHgの単位の所望の予測されたまたは呼び圧力としてプロットされている。結果としての測定された作動チャンバ圧力13110は、最初は、27秒に示すように制御信号13100を十分に追従しない。ストロークが進行すると、測定チャンバ圧力13110は、およそ37秒のストロークの終了まで、制御信号をますます緊密に追従する。
血液ポンプ充填ストローク中に血流の品質、妥当性または利用可能性を表す流れ基準は、コントローラにより、測定作動チャンバ圧力13110をモニタリングすることによって計算することができる。たとえば、流れ基準は、測定圧力13110のピーク間の大きさと、充填ストロークの過程の間のその変動とに基づくことができる。別の実施形態では、測定されたピーク間測定圧力変動は、予測されたあるいは所望のピーク間圧力変動、または通常のあるいは完全な流れ状態の間に基準線で得ることができるピーク間圧力変動に正規化することができる。これらの値は、ローパスフィルタによってフィルタリングされるか、または信号ノイズを低減させるように充填ストロークの過程にわたって、スライドする平均窓を用いて平滑化され得る。
実施形態では、流れ基準は、制御信号13100および測定圧力13110の相互相関から計算される。好ましい実施形態では、流れ基準は、制御信号13100および測定圧力13110の第1相互相関と、90°シフトした制御信号位相および測定圧力13110の第2相互相関とのベクトル和によって計算される、位相不感応相互相関数の大きさに基づく。これらの計算については、詳細に上述している。位相不感応相互相関の大きさのローパスフィルタリングされた値から、相関数13120を導出することができる。図156によって示す例では、測定圧力13110が約27秒で制御信号13100の追跡を開始するまで、相関数は最初はゼロである。相関数は、およそ165まで急速に上昇し、その後、29秒においておよそ135まで減衰した後、36秒において265のピークまで着実に上昇し、その後、37秒においてストロークの終了でゼロまで低下する。一実施形態では、コントローラは、隔壁が移動している間、相関数に等しい流れ基準を設定し、その後、ストローク終了が発生するかまたは検出される前に達した値で保持することができる。
別の実施形態では、図156に示すように、流れ基準13130は、単一ポンプストローク中に最大平均相関数に設定することができる。流れ基準または最大平均相関数は、相関数が最初に増大し始めた後に、初期遅延期間待機した後に計算することができる。遅延期間は、相関値を安定させることができる第1期間と、相関数が平均される第2期間とを含むことができる。流れ基準の初期値は、ポンプストローク中の第2期間中に平均値に設定することができる。図156に示す例では、流れ基準13130は、ポンプストロークの開始時の初期期間の後に、かつ約1秒間の第2期間13125中に初期流れ基準値13130を設定するように計算される。コントローラは、相関数の次の秒の量の平均を計算するようにプログラムすることができ、新たな平均が現流れ基準値より大きい場合に、流れ基準を新たな平均に更新する。図156に示すように、相関数は、最初は低下する可能性があるが、コントローラは、相関数13120が約33秒において流れ基準13130を超過し始めるまで、流れ基準をその先行するより高い値で一定に維持する。流れ基準13130は、相関数が低下し始める約36秒まで、段階的に増大し続ける131308。流れ基準13130は、(次の充填ストロークの開始時、始動過渡現象13105を排除しながら)13130Aにおける次のストロークで相関数の第1平均が計算されるまで、この最大値で一定に保持される。図示する例では、2ポンプシステムにより、コントローラは、(第1ポンプが吐出し、第2ポンプが充填される際)2ポンプシステムの相補的なポンプからの圧力データを分析することにより、次の充填ストロークからのデータを蓄積することができる。1ポンプシステムでは、コントローラは、充填ストローク圧力データの分析を続けるために、単一ポンプの次の充填ストロークまで待機する。
コントローラは、計算された流れ基準が指定された値または所定値未満に低下する場合に、血液透析システムの内部および/または外部透析液ポンプを休止または停止するようにプログラムすることができる。こうした値は、たとえば、血液ラインからの利用可能な血流が制御された方法で変化するさまざまなポンプ状態の間に、流れ基準値を求めることによって、得ることができる。これらの流れ状態のうちのいくつかの間、透析装置内の血流または血液圧力は、フルストローク容量の透析液を吐出するのに十分充填される透析液ポンプ(たとえば、内部透析液ポンプ)の能力を低下させる程度まで、影響を受ける。この状況が持続する場合、透析液平衡回路を介する透析液流平衡化に悪影響が及ぼされる可能性がある。したがって、この状態に関連する流れ基準を閾値として使用することができ、この値で、コントローラは、流れ基準が閾値を超えるまで、透析液ポンプを休止または停止するようにプログラムすることができる。
実施形態では、コントローラは、各ポンプ充填ストロークの過程の間、体外または血液透析システムのユーザに対し、流れ基準を示すようにプログラムすることができる。たとえば、流れ基準値は、グラフィカルユーザインタフェースに送信することができ、ユーザに対して治療中の血液ラインにおける血流の品質または妥当性を常時示す。ユーザインタフェース(たとえば電子タブレット等)は、ユーザに対し、生の流れ基準データを提供することができる。別の実施形態では、流れ基準は、1から5の範囲に比例してスケーリングすることができ、「5」の値は、たとえば最高の流れを表し、「3」の値は適切な値を表し、「1」の値は不十分な流れを表す。したがって、流れ基準値の指定された範囲は、「1」〜「5」の設定値の各々にマッピングすることができ、それにより、血液ライン内の血流の妥当性のユーザの解釈が簡略化する。他の実施形態では、たとえば移動するかまたは拡張する棒グラフ、ダイヤルゲージ、または一組の着色光等、ユーザに対してグラフィカルに表示することができる。
好ましい実施形態では、限界または準最適流れ基準により、コントローラはユーザに警告することができ、それにより、ユーザは、血液ライン内の血流を改善する(たとえば、ラインを再配置する。ラインをまっすぐにする、バスキュラアクセスカニューレを調整する等)ようにすることができる。コントローラは、ユーザに信号通知することと、ユーザが状態を補正するのを可能にするように透析液ポンプの休止または停止の前に十分な時間の経過を可能にすることとを含む、透析液ポンプを休止または停止する処理を開始するように、プログラムすることができる。実施形態では、ユーザに、充填ストローク中に低流量状態に対して警告することができ、それにより、ユーザによる適時の調整によって、流れ基準を、充填ストロークの終了の前に許容可能な値に戻すことができる。他の実施形態では、コントローラは、透析液ポンプに対して停止するように命令する前に、2つあるいは3つ(またはそれより多い)連続した充填ストロークに対して、準最適な流れ基準値が必要であるようにプログラムすることができる。したがって、ユーザによる低流量状態の適時の補正により、透析液ポンピング動作の中断、場合によっては治療の中断を阻止することができる。例では、コントローラは、流れ基準が3回の連続した充填ストロークに対して150未満のままである場合に、透析液ポンプを休止または停止するようにプログラムすることができ、流れ基準が5回の連続した血液ポンプストロークに対して200を超えるまで、透析液ポンプを再始動しないようにプログラムすることができる。これらの実施形態のうちのいくつかでは、コントローラは、透析液ポンプが一時停止している間に、血液ポンプの動作を継続させることができ、それにより、ユーザには、透析液ポンプを再始動させることができる血流状態を回復する機会が与えられ、したがって、治療の早期の終了が回避される。
図157Aおよび図157Bは、ポンピング動作中に流れ基準を評価しそれに作用するコントローラの動作の例を示す。血液ラインがクランプによって徐々に閉塞された調査中の流れ基準13210、血液ポンプ流量13230および内部透析液ポンプ流量13220のプロットを示す。この例では、多くのポンプストロークにわたって流量絞りを発生させ、コントローラが透析液ポンプを停止する信号をトリガする前におよそ1時間以上かかった。図157Bには、透析液ポンプが停止していた期間が示されている。流れ基準13210は、約22500秒の時点での300を超える値(図157A)から25900秒での150未満の値(図157B)まで、着実に低下する。血液ポンプ流量13230および内部透析液ポンプ流量13220は、この期間中低下する。(内部透析液ポンプは、流れ基準制御に無関係なポンプ制御要件に対して、この期間中、周期的に完全に停止する)。図157Bでは、およそ25900秒において、ピーク流れ基準値は、3ストロークのうちの2ストローク、150未満に低下した。この例では、この状態は、タイムマーカ13240(およそ、25970秒の時間)において、コントローラが内部透析液ポンプおよび外部透析液ポンプを停止させるのに十分である。血液ラインに対するクランプは、タイムマーカ13242(およそ26400秒)において取り外され、流れ基準は、約400まで急速に改善された。コントローラは、タイムマーカ13244(およそ26500秒)で内部透析液ポンプを再始動し、透析液流量はその後、400ml/分に戻った。(可変弁校正)
可変弁は、弁の前後の所与の圧力差に対して弁を開放するために必要な最小電流を求めるように校正することができる。最小電流は、クラッキング電流と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、クラッキング電流は、作動チャンバ112とリザーバ121、122との間の圧力差によって線形に変化する可能性がある。測定されたポンプ作動チャンバ圧力114とクラッキング電流との間の数学的関係は、校正手続きを通して確立することができる。校正手続きの一例は、一方または両方の可変弁117、118を用いて、作動チャンバ112内の所定背圧を確立する。両方の弁が閉鎖した後、作動チャンバ内の圧力が圧力センサ114によって測定される際に、一方の弁への電流が増大する。弁に送られる電流が徐々に増大する際に測定圧力が上昇することが分かる場合、クラッキング電流は測定電流である。クラッキング電流は、2つ以上の所定背圧に対して求めることができ、コントローラは、このデータを用いて、弁のクラッキング電流をポンプ作動チャンバ内の既存の背圧と関連付ける式に当てはめることができる。ポンプおよび弁システムの実施形態では、式は線形方程式であり得る。
校正手続きの一態様では、コントローラは、ポンプに関連する各可変弁に対して、ポンプ作動チャンバの4つの初期背圧値においてクラッキング電流を確定する。この確定は、数回(たとえば、合計12回の測定に対して3回)繰り返すことができる。コントローラは、異常電流値を無視し、残りのデータを用いて初期背圧の関数としてクラッキング電流の線形方程式を展開するようにプログラムすることができる。
(透析装置内の気泡による流体不均衡の軽減)
新鮮透析液または使用済み透析液のいずれかから空気または他の気体が脱ガスすることにより、平衡チャンバによって透析装置に押し流された新鮮透析液容量と新鮮透析液を押し流すために使用された平衡チャンバ内の使用済み透析液容量との累積的な不均衡がもたらされる可能性がある。たとえば、平衡チャンバの使用済み透析液側の通路から気泡が排出されない場合、その交互の膨張および収縮により、追加の量の使用済み透析液が、平衡チャンバから放出される可能性があり、これは、透析装置に押し流されている新鮮透析液によって考慮されない。内部透析液ポンプが使用済み透析液を平衡チャンバ内に押し流す際、かつ、等価な容量の新鮮透析液が透析装置に押し流されている際、ポンプの圧力下で気泡が圧縮される。しかしながら、ポンプストロークの終了時、平衡チャンバ内の圧力が低減すると、気泡は膨張し、追加の少量の使用済み透析液を平衡チャンバ出口から排出する。追加の少量の使用済み透析液が、多数回のポンプストロークにわたって累積的に平衡チャンバの使用済み透析液側から排出されていることにより、透析装置内に押し流されている新鮮透析液とドレンに排出されている新鮮透析液との間に著しい不均衡がもたらされる可能性がある。実施形態では、このあり得る流体不均衡は、内部透析液ポンプストロークの終了時の気泡膨張により透析液がドレンラインの前方ではなくポンプチャンバに向かって押し流されることを確実にすることにより、軽減することができる。この考慮されない流体流を軽減する処理は、ポンプ162から図5の平衡チャンバ342への吐出ストロークを考慮することによって、例示することができる。平衡チャンバ342をポンプ162からの透析液で充填するポンプストロークの終了時、出口(ドレン)弁222が閉鎖される。そして、吐出ポンプ出口弁213を開放したまま維持しながら、平衡チャンバ342は、弁231、221を閉鎖することによって流体ロックすることができる。次に、コントローラは、吐出ポンプ162に対する空気圧を解放することができ、それにより、平衡チャンバへの流体路内のあらゆる気泡が膨張することができる。気泡膨張によって押しのけられたいかなる液体も、ドレンではなくポンプ162に向かって自由に戻る。最後に、コントローラは、吐出ポンプの出口弁213を閉鎖し、弁222を開放して、平衡チャンバ342内の透析液をドレンに放出するように準備することができる。この同じ処理は、ポンプ161および平衡ポンプ341に適用することができる。さらに、平衡チャンバ341、342の新鮮透析液側において同様の処理を用いることができる。その場合、コントローラは、そのポンプストロークの終了時に外部透析液ポンプ内の圧力を解放して、平衡チャンバのうちの1つを充填することができ、一方で、外部透析液ポンプと平衡チャンバとの間の弁は依然として開放している。外部透析液ポンプと平衡チャンバとの間の流体路内のいかなる膨張する気泡も、透析液を、透析装置に向かって下流ではなく、ポンプに向かって押しのける傾向がある。
(血液ポンプの短いストローク)
血液カセットのポッドポンプ180(図3A)は、血液成分に対する損傷を低減するために、短縮ストロークを実行することができる。血液成分に対する損傷は、ポッドポンプ内の膜が、ポンピングストロークの終了時にポンピングチャンバの壁と完全に接触するのを停止することによって低減させることができる。システムコントローラが血液流量をモニタリングし、かつ閉塞がないかモニタリングする間に、血液ポンプは短くストロークすることができる。ポンピングの開始時、定常流を達成し、必要な吐出圧力、必要な充填圧力、およびポンピングチャンバを充填する時間を含む、短いストロークを制御するために使用されるパラメータを求めるために、フルストロークが行われる。流量は、満杯のチャンバ分の流体を吐出するために必要な時間から求めることができる。定常流状態は、a)約3ml/分未満の平均流量変化、b)最大ポンプ流量が充填圧力および吐出圧力の両方に対して目標の約15ml/分以内であること、およびc)平均チャンバ吐出流量が、最小作動圧力でポンプ流量の約10%以内であることによって示すことができる。
血液ポンプは、コントローラが、定常段階中に求められる吐出圧力の所定の割合(たとえば約80%)まで吐出ストロークを低減させるようにすることにより、短くストロークすることができる。圧力の低減により、吐出ストロークは、ポンプ隔壁が向きを変え、略空のチャンバがポンプ充填ストロークを開始する時点まで、たとえばおよそ90%完了することができる。ポンプ隔壁は、充填ストロークを行っているチャンバがストロークの終了に達したときに向きを変える。充填ストロークは、定常段階中にコントローラが求めた圧力で発生する。短いストロークの特質は、最大相関数および積分相関数と、後続する充填ストローク中の同じチャンバのストローク終了までの時間とを検査することによってモニタリングすることができる。コントローラ119(図11a)は、上述したストローク終了検出アルゴリズムを用いてポンプを充填する時間をモニタリングすることができる。コントローラ119は、作動チャンバ112内の吐出圧力を調整することができ、それにより、チャンバを充填する時間は、定常段階中に求められた充填時間の90%になる。別法として、積分相関値をモニタリングすることができ、充填の終了は、完全なストローク終了サイクルに対応する積分相関数のたとえば90%であるとみなされる。
血液ポンプ101およびコントローラ119は、充填ストローク中の相関数を用いて、短いストローク中のポンプの上流または下流の完全な閉塞を検出することができる。下流の完全な閉塞により、チャンバ内により多くの血液が残ることになり、それにより充填時間が短くなる。ストローク終了は、相関数における大きい低下によって検出することができる。短い充填時間は、低い積分相関数によって検出することができる。同様に、ポンプの上流の閉塞により、相関数の大きい低下およびより低い積分相関数がもたらされる。
短いストローク方式は、吐出インピーダンスが一定であると想定する。しかしながら、透析装置14または血液ラインの前後の流れ抵抗の変化、または患者のアクセスにおける変化により、血液ポンプはフルストロークを行う可能性がある。この問題は、100ストローク毎にフルストロークに戻ることにより、必要な吐出圧力、充填圧力および充填時間を再度学習することによって、軽減することができる。吐出および充填インピーダンスが変化しなかった場合、検査は8回を超えるフルストロークを必要としない可能性がある。溶血を制限するために、コントローラ112は、過剰な数または割合の血液ポンプストロークがフルストロークである場合に、治療を終了することができる。一例では、コントローラ112は、200回を超えるフルストロークが発生する場合、または初期定常段階の後のストロークの20%がフルストロークである場合、治療を終了する。
(PWM弁によるEOS、閉塞および背圧の検出)
パルス化弁を介してポッドポンプの起動チャンバに接続された正圧源または負圧源と、ポッドポンプの起動チャンバに結合された圧力センサとを用いて、ストローク終了、ポンプの上流および下流の閉塞および流体圧力を含むポンプ動作パラメータを求めることができる。図136に、1つの例示的な構成を示す。バイナリ弁12260は、FMS弁12240を介してポッドポンプ12212の作動チャンバ12214に正圧を供給して、流体をポンプから弁12220を通して吐出するように指示することができる。FMS弁12240は、迅速に開閉して、作動チャンバ12214内の圧力を徐々に増大させることができる。密に結合された圧力センサ12230が、チャンバ12214内の空気圧を測定することができ、その圧力をコントローラ12270に送出する。FMS容量12242およびFMS圧力センサ12244が存在する可能性があるが、この実施形態では使用されない。
コントローラは、FMS弁12240の開閉を制御し、図137に示す弁動作12310および作動チャンバ内の結果としての圧力12315の時間履歴を生成するために、圧力センサ12230データを記録することができる。弁は、周波数、コントローラ12270によって制御される開放期間の持続時間および閉鎖期間の持続時間により、周期的にパルス駆動することができる。デューティ周波数は、発見的に選択することができる。周波数は、膜移動とシステムコンプライアンスとを識別するために十分低い可能性がある。周波数は、流体を押しのけることができるように十分低いが、必要な最大流量を満たすために十分高いように選択することができる。
膜12215の応答およびポンプ12212からの流れは、各ポンプステップ(図138)の間に圧力低下を合計することによって分析的にモニタリングすることができる。FMS弁12240が閉鎖されると、コントローラは、各時間ステップまたはサンプル間の圧力の変化を計算することができ、以下のように、1つの閉鎖弁期間にわたって差を合計する。
ΔPCH=Σ(Pi−Pi−1)
圧力データは、信号ノイズを排除するようにフィルタリングすることができる。チャンバ圧力は、圧力変化を計算する前にローパスフィルタを用いてフィルタリングすることができる。正圧変化は、合計から排除することができる。圧力の合計12320は、FMS弁12240が開放するときにゼロ12321にリセットすることができる。コントローラ12270は、圧力変化の合計の12320絶対値が定義された値12325を超える場合に、ポンプからの流体の流れを検出することができる。コントローラは、定義された値を超える合計の後に定義された値12325を満たさない第1合計12320に対してストロークの終了を検出することができる。コントローラは、すべての流体がポッドポンプ12212から排出されるのを確実にするように、FMS弁12240が開放されて保持されるように命令することができる。FMS弁12240は、ストローク間繰返し精度を向上させるように開放して維持され、それにより、流量精度が向上する。
図138のハードウェア構成ならびに図137および図138における圧力データは、ポッドポンプの下流の流体圧力に関する情報を提供することができる。流体はこの時、作動チャンバ12214内の空気圧がポンプ12212および弁12220の下流の流体圧力より大きくなるまで、ポッドポンプから流れ出ない。コントローラ12270は、ステップ12317で発生するように、圧力変化の合計12320の絶対値が定義された値12325を超えるときに、流体の流れおよび膜の移動を検出することができる。コントローラは、このステップ12317の間に、圧力12315の平均を下流圧力として格納することができる。別法として、FMS弁が再度開放される前のステップ12317の最後における圧力を下流圧力として格納することができる。
ポッドポンプ12212の下流の完全な閉塞は、図136におけるハードウェア構成および図137、図138における圧力プロットによって求めることができる。作動圧力内の圧力が最大圧力12312まで増大する際に、いかなる流体流または膜移動も検出されない場合、コントローラ12270によってポンプ12212の下流の閉塞を宣言することができる。コントローラは、圧力合計12320が所与の値12325を超えない場合に、流体が流れなかったと判断する。
図138におけるハードウェア構成および図139における圧力データは、充填ストローク中にポッドポンプの上流の流体圧力に関する情報を提供することができる。充填ストロークは、ポッドポンプ12212の作動チャンバ12214に対してFMS弁12240を介して負圧を供給するようにバイナリ弁12250を開放し、弁12210を通して流体をポンプ内に引き込むように指示することによって開始することができる。FMS弁12240は、作動チャンバ12214内の圧力を徐々に低下させるように迅速に開閉することができる。密に結合された圧力センサ12230が、チャンバ12214内の空気圧を測定することができ、その圧力をコントローラ12270に送出する。コントローラは、FMS弁12240の開閉を制御し、図139に示す弁動作および作動チャンバ内の結果としての圧力12315の時間履歴を生成するために、圧力センサ12230データを記録することができる。
作動チャンバ12214内の空気圧が、ポンプ12212および弁12210の上流の流体圧力未満となるまで、流体はポッドポンプ内に流れ込まない。コントローラ12270は、ステップ12327において発生するように、圧力変化の合計12320が定義された値12328を超える場合に、流体の流れおよび膜の移動を検出することができる。コントローラは、ステップ12327の間の圧力12315の平均を上流圧力として格納することができる。別法として、FMS弁が再度開放される前にステップ12327の最後における圧力を、下流圧力として格納することができる。
ポッドポンプ12212の上流の完全な閉塞は、図136におけるハードウェア構成および図139における圧力プロットを用いて求めることができる。作動圧力内の圧力が最小圧力12332まで低下した際に流体流または膜移動が検出されない場合、コントローラ12270によってポンプ12212の上流の閉塞を宣言することができる。コントローラは、圧力合計12320が所与の値12328を超過しない場合に、流体が流れなかったと判断することができる。
図140に、1つの例示的なハードウェア構成を示す。弁12260は、作動チャンバ12214内の圧力を段階的に増大させるように迅速に開閉するように使用することができる。バイナリ弁12260の迅速な開閉により、図137および図138に類似する圧力プロットをもたらすことができる。ストロークの終了、下流圧力および下流閉塞は、上述したものと同じ方法によって求めることができる。上流圧力は、弁12260を閉鎖し弁12250を迅速に開閉して作動チャンバ12214内の空気圧を段階的に低下させることによって、求めることができる。弁12250を迅速に開閉することにより、図139に類似する圧力プロットをもたらすことができる。上流圧力および上流閉塞は、上述した方法と同じ方法で求めることができる。
(FMSシステムによる空気検出)
場合によっては、コントローラは、ヘパリン定量ポンプ80(図4A)の液体側12216に空気が存在するか否かを知る必要があり、それは、ヘパリン定量ポンプ80がヘパリンバイアル11から液体を送り出すとともにヘパリンバイアル11内に空気を送り込むためである。ここでは空気検出処理と呼ぶ、定量ポンプ内の空気を検出する1つの例示的な方法では、コントローラ12270は、正圧源12265を用いて第1FMS容積測定を行い、その後、負圧源12255を用いて第2FMS容積測定を行うことができる。アクチュエータ−チャンバ12214の計算された容積の差は、空気容量基準(Air Volume Metric)と呼ぶことができる。コントローラ12214は、空気容量基準が空気容量限界(Air Volume Limit)を超えた場合に、定量ポンプの液体側12216に空気が存在すると宣言することができる。空気容量限界は、定量ポンプが空気で満杯であるときに空気検出処理を2回実行して空気容量基準を求め、その後、ポンプが液体で満杯である時に処理を繰り返すことによって、別個に求めることができる。空気検出限界は、ポンプが空気で満杯である場合と液体で満杯である場合に対して2つの空気容量基準の平均に設定することができる。空気検出限界を求める処理は、空気容量基準の2つの値が近すぎる場合、または液体充填ポンプに対する空気容量基準が、気体充填ポンプに対する空気容量基準より大きい場合に、繰り返すことができる。空気容量限界は、各定量ポンプに対して求めることができる。この方法により、追加のハードウェアなしに、かつマニホールド温度の大きい変化、管容積および屈曲、機械間の基準容積変動にも関らず、空気を検出する正確かつ確実な方法が提供される。
図14に、制御アルゴリズム例の図を示す。この例のコントローラは、標準的な離散PIコントローラである。PIコントローラの出力は、2つの経路に分割され、1つは、供給源弁に対する経路であり、1つはシンク弁に対する経路である。弁の不感帯を補償するために、これらの経路の各々にオフセット項が追加される。そして、結果としてのコマンドは、ゼロより大きい弁に制限される(シンク弁の場合は反転された後)。
オフセット項は、供給源弁の場合は正であり、シンク弁の場合は負である。結果として、両方の弁が、誤差がゼロとなる場合であっても作動する。これらのオフセットにより、コントローラの軌跡を追跡し妨害を排除する能力が向上するが、コマンドオフセットが実際の弁不感帯よりわずかに大きい場合、定常状態にある両方の弁から漏れることになる可能性もある。これが当てはまる場合、弁は、定常状態において、等しくかつ反対の漏れ質量流量を有することになる。
制御システムが休止しているときにこの漏れ質量流量をなくすために、誤差項の絶対値がある期間小さいままである場合に、弁をオフにするために「省電力」ブロックを追加することができる。これは、サーボモータに機械式ブレーキを用いることに類似している。
ここで図15を参照すると、この例でのコントローラは、標準の離散PIレギュレータを使用し、PIレギュレータの図が示されている。積分器は、コマンドが飽和したときにワインドアップを防止するように制限することができる。積分器は、常にアンワインドが可能である。充填ストロークおよび吐出ストロークに対してポッド内に異なる量の空気が存在するため、ポッドの応答は、充填ストロークおよび吐出ストロークに対して非常に異なる可能性がある。異なるポッド応答に対して充填ストロークおよび吐出ストロークをより適切に調整するために、比例ゲインが異なるように調節される。
PIレギュレータに対して選択される飽和限界は、結果に対して加算されるオフセットが考慮されるべきである。たとえば、弁が12Vで飽和し、PIループの後に5Vの固定オフセットが加算される場合、PIループにおける飽和限界は、7Vに設定されるべきである。この正および負の飽和限界は、供給源弁およびシンク弁における不感帯が異なるために、異なる可能性がある。
充填ストローク中、上流流体弁は閉鎖され、下流流体弁は開放されて、チャンバ内への流体の流れを可能にする。吐出ストローク中、上流流体弁は開放され、下流流体弁は閉鎖されて、チャンバを出る流体の流れを可能にする。ストロークの終了時、次のストロークが開始するまで、両流体弁は閉鎖される。
上述したように、いくつかの態様では、ポッドポンプは、制御流体、たとえば、空気、窒素、水、油等の作用によって動作させることができる。制御流体は、比較的非圧縮性であるように選択され、場合によっては、比較的安価でありかつ/または非毒性であるように選択され得る。制御流体は、一連のチューブまたは他の好適な導管を用いてシステム内をポンプの方に向けることができる。コントローラは、チューブまたは導管の各々を通して制御流体の流れを制御することができる。場合によっては、制御流体は、さまざまなチューブまたは導管内で異なる圧力で保持することができる。たとえば、制御流体の一部は、正圧(すなわち、大気圧より高い圧力)で保持することができ、制御流体の一部は、負圧(大気圧より低い圧力)またはさらにはゼロ圧力(すなわち、真空)で保持することができる。具体的な非限定的な例として、図11Aに示すもの等のポッドポンプは、コントローラによる制御流体の操作によって制御することができる。上述したように、コントローラ(119)は、弁(たとえば、弁117および118)を開閉して、ポンプサイクル中の異なる時点で、ポッドポンプの空気圧側を正圧(121)または真空圧(122)にさらすことができる。
さらに、いくつかの実施形態では、コントローラ(通常は電子)はまた、さまざまな流体回路から別個に維持することができ、それにより、コントローラとさまざまな流体回路との間に電子的接触はないが、制御流体(たとえば、空気)は、コントローラとさまざまなポンプとの間を移動することができる。この構成には、保守が容易である(コントローラおよびさまざまな回路を互いに独立して修理することができる)ことを含む、複数の利点がある。一実施形態では、流体回路は、消毒温度まで加熱しかつ/または消毒を行うために比較的高温または他の厳しい状態(たとえば、放射線)にさらすことができ、一方で、(通常はより損傷を受けやすい)電子コントローラは、こうした厳しい状態にさらされず、さらには、断熱壁(たとえば、「防火壁」)等によって別個に維持することができる。
したがって、いくつかの実施形態では、システムは、(加熱されない)「低温」セクションと、たとえば消毒の目的で一部が加熱される可能性がある「高温」セクションとを含むことができる。低温セクションは、断熱材を介して高温セクションから断熱することができる。一実施形態では、断熱材は、成形された発泡断熱材であり得るが、他の実施形態では、限定されないが噴霧断熱材またはシートから切断された断熱材を含む、あらゆるタイプの断熱材とすることができる。
場合によっては、「高温」セクションは、比較的高温に加熱される可能性があり、たとえば、「高温」セクションは、「高温」セクション内の構成要素を滅菌するのに十分な温度まで加熱される可能性がある。多くの電子回路が、50℃を超えると必ず故障するかまたは他の不都合な結果となるため、いくつかの実施形態では、消毒される可能性がある他の構成要素から電子回路を分離することが有利であり得る。したがって、場合によっては、消毒される必要があり得る構成要素は、「高温」セクションに維持され、こうした温度まで加熱することができない構成要素は、「低温」セクションに維持される。一実施形態では、低温セクションは、空気が低温ボックスを出入りして流れるのを可能にするように、循環システム、たとえばファンおよび/またはグリッドを含む。
「高温」セクションのすべてまたは一部は、断熱材に入れることができる。場合によっては、断熱材は、「高温」セクションに対するアクセス点、たとえば、ドア、ポート、ガスケット等を覆うように拡張することができる。たとえば、「高温」セクションが封止される場合、場合によっては、断熱材は、「高温」セクションを完全に包囲する可能性がある。
「低温」セクション内に存在する可能性がある構成要素の非限定的な例としては、電源、電子回路、電源ケーブル、空気圧制御部等が挙げられる。場合によっては、「高温」セクションを出入りする流体の少なくとも一部は、「低温」セクションを通過することができるが、他の場合では、流体は、「低温」セクションを通過することなく「高温」セクションを通過することができる。
「高温セクション」内に存在する可能性がある構成要素の非限定的な例としては、カセット(存在する場合)、流体ライン等が挙げられる。場合によっては、「高温」セクションには、電気部品も含めることができる。これらには、限定されないが、ヒータが挙げられる。一実施形態では、ヒータを用いて、流体に加えて、高温ボックス自体を加熱することができる(たとえば、図3Aのヒータ72を参照)。いくつかの実施形態では、ヒータは、所望の温度に達するように「高温」セクション全体を加熱する。
一実施形態では、「高温」セクションは、流体ラインのいくつかまたはすべてを含む。さらに、場合によっては、「高温」セクションは、限定されないが、温度センサおよび伝導率センサ、血液漏れセンサ、ヒータ、他のセンサ、スイッチ、非常灯等を含むことができる。
場合によっては、マニホールド、たとえば空気または別の制御流体のためのマニホールドが、「低温」セクションから「高温」セクションに遷移することができる。
構成要素を「高温」セクションおよび「低温」セクションに分離することにより、いくつかの利点を提供することができる。それらには、限定されないが、電気部品の寿命、信頼性または効率が挙げられる。たとえば、構成要素を高温および低温に分離することにより、高温ボックス全体を加熱することができる。これにより、より効率的な熱の使用を可能にすることができ、それにより、よりエネルギー効率の高いシステムとなる。これにより、また、標準的な、市販の電子回路の使用も可能とすることができ、それによりコストが下がる。
いくつかの実施形態では、ポンプ、弁等を制御するために使用される制御流体は空気であり、空気は、1つまたは複数の空気圧縮機の動作によってシステムに導入することができる。場合によっては、空気圧縮機は、システム内で血流路系および透析液流路系から別個に維持することができ、空気圧縮機からの空気は、さまざまなチューブ、導管、パイプ等を通してさまざまなポンプに導入することができる。たとえば、一実施形態では、空気圧インタフェースを用いて、空気圧縮機から、さまざまなポンプまたはチャンバに流体接続された一連のチューブまたは導管に空気が向けられる。
図16に、非限定的な例を示し、それは、一実施形態による二重ハウジング配置の概略図を示す。この配置は、多くの空気圧作動式ポンプおよび/または弁を含むカセットとともに有利に使用することができる。カセットにおける空気圧作動式ポンプおよび/または弁の数が十分に多い場合、これらのポンプおよび弁を収容するカセットはそのように大きくなる可能性があり、関係する圧力は、ポンプおよび弁のすべてを適切に封止しかつ位置決めすることが困難となる可能性があるほど高くなる可能性がある。このように困難であることは、2つ以上の異なるハウジングを使用することによって軽減することができる。弁およびポンプ(ポッドポンプ42等)は主ハウジング41内に配置され、そこから、接続チューブ45が空気圧ポート44から通じている。主ハウジング41はまた、液体が主ハウジングを出入りして流れるのを可能にする入口および出口チューブ43も有している。接続チューブ45は、主ハウジング41およびそれより小さい二次チューブ支持ハウジング46において弁とポンプとの間の空気圧連通を提供し、二次チューブ支持ハウジング46には、チューブの各々に対する空気圧インタフェース47が設けられている。基礎ユニットにおける受け口に対してすべての空気圧インタフェース47を適切に位置決めしかつ封止することは、空気圧作動が大きい方の主ハウジングに直接適用される場合より、小さい方のチューブ支持ハウジング46によってより容易に行うことができる。
一組の実施形態では、1つまたは複数の供給タンクまたは他の圧力源を備えたシステムに、制御流体(たとえば、空気)を供給することができる。たとえば、2つのタンクが使用される場合、一方の供給タンクは正圧リザーバとすることができ、一実施形態では、設定値が約99.991kPa(750mmHz)(ゲージ圧)(1mmHgは約133.3パスカル)である。他方の供給タンクは、真空または負圧リザーバとすることができ、一実施形態では、設定値は、約59.995kPa(450mmHz)ゲージ圧)である。この圧力差は、たとえば、供給タンクと必要なポッドとの間圧力で使用され、ポッドポンプに対する可変弁の正確な制御を可能にする。供給圧力限界は、可変弁の制御に対して十分な圧力差を提供するように、患者血流ポンプに設定することができる最大圧力に幾分かのマージンを足した値に基づいて設定することができる。したがって、場合によっては、システム全体に対して圧力および制御流体を供給するために、2つのタンクを使用することができる。
一実施形態では、2つの独立した圧縮機が、供給タンクに流体を供給する。タンク内の圧力は、実施形態に応じて、たとえば、単純なバンバンコントローラ(2つの状態で、すなわち、オンまたは開放状態およびオフまたは閉鎖状態で存在するコントローラ)を用いるか、またはより高性能の制御機構を用いて、あらゆる好適な技法を用いて制御することができる。バンバンコントローラの一例として、正のタンクの場合、実際の圧力が所望の圧力からヒステリシスを減じた値より小さい場合、正のタンクに流体を供給する圧縮機はオンとなる。実際の圧力が、所望の圧力にヒステリシスを足した値より大きい場合、正のタンクに流体を供給する圧縮機はオフとなる。同じロジックを、真空タンクおよび真空圧縮機の制御に対して適用することができるが、ただしヒステリシス項の符号が逆になる。圧力タンクが調節されていない場合、圧縮機はオフとなり、弁は閉鎖される。
ヒステリシスバンドのサイズを低減させることにより、より厳密な圧力タンクの制御を行うことができるが、これにより、圧縮機のサイクリング周波数が高くなる。これらのリザーバの非常に厳密な制御が必要である場合、バンバンコントローラは、PIDコントローラに置き換えられ、圧縮機にPWM信号を用いることができる。他の制御方法も可能である。
しかしながら、他の実施形態では、他の圧力源を使用することができ、場合によっては、2つ以上の正圧源および/または2つ以上の負圧源を使用することができる。たとえば、異なる正圧(たとえば、約133.322kPa(1000mmHg)および約93.325kPa(700mmHg))を提供する2つ以上の圧源を使用することができ、それを用いて漏れを最小限にすることができる。たとえば、高い正圧を用いて弁を制御することができ、より低い負圧を用いてポンプを制御することができる。これが、透析装置にまたは患者に送ることができる可能性がある圧力の量を制限し、ポンプの作動が弁に隣接してかけられる圧力に打ち勝たないように維持するのに役立つ。負圧の非限定的な例は、約−53.328kPa(−400mmHg)である。場合によっては、負圧源は真空ポンプとすることができ、正圧源は空気圧縮機とすることができる。
(圧力分散モジュール)
図101〜図121は、圧力分散モジュール9000の形態の空気圧作動式マニホールドの一実施形態の詳細を示す。圧力分散モジュールは、(たとえば、図30〜図46に示すような)システムの液体処理カセットのポッドポンプおよび弁を圧力リザーバ(図11Aの121、122)に接続する。さまざまな実施形態におけるシステムのさまざまなポッドポンプおよび弁が、上述したように、デジタル弁および比例弁を介して1つまたは複数の圧力リザーバへの選択的な接続によって制御されかつ駆動される。これらのリザーバは、高正圧リザーバ、低負圧リザーバ、負圧または真空リザーバおよび雰囲気への排気口を含むことができる。患者に対する安全圧力限界は、約+79.993kPa(+600mmHg)および/または約−46.662kPa(−350mmHg)で定義することができる。低圧リザーバは、大気圧と高い安全患者圧力との間で維持することができる。高圧リザーバは、低圧リザーバの上方に維持することができる。真空リザーバは、大気圧と低い安全患者圧力との間で維持することができる。
図101A、図101Bにおける圧力分散モジュール9000は、マニホールド9060、カートリッジ弁9020、表面実装弁9030、圧力センサ9040、圧力リザーバに接続されたポート9605、および図30〜図46に示すもののような流体処理カセットの対応するポートに接続されたポート9050、9055を備えることができる。空気圧モジュール9000は、コネクタを介していくつかのポート9050、9055に接続し/相互接続する空気圧ライン(図示せず)を介して、流体処理カセット(図30〜図46)に接続することができる。一例では、空気圧ラインは、圧力分散モジュール9000のポート9050、9055から流体処理カセットのポートまで直接接続する。別の例では、空気圧ライン群が、流体処理カセットのポートを、圧力分散モジュール9000の出力側に取り付けられたインタフェースブロック9820(図103)を介して圧力分散モジュール9000と可逆的に嵌合することができる、1つまたは複数のインタフェースブロック9850、9860(図102)の対応するポートに接続する。
リザーバ、弁およびポートは、多部品空気圧マニホールド9060に接続される。弁9020、9030は、いくつかの実施形態では、ハードウェアインタフェースボード(図61のブロック6111参照)からの電気信号によって制御される。圧力センサ9040は、インタフェースボード6111に電気的に接続することができる。一部には圧力センサ9040から受け取られる信号に基づいて、圧力分散弁9020、9030を開閉することにより、図60の透析ユニット6001におけるカセット内の流体弁およびポンプの制御を通して、血液、透析液、水等を制御するように、自動コンピュータ6106(図61)を構成することができる。カセットのポッドポンプおよび弁は、圧力分散モジュール9000の2方向および3方向デジタル弁および比例弁を備えた電気機械弁の動作により、圧力リザーバへの選択的接続によって、空気圧式に駆動される。デジタル弁は2つの位置を有している。2方向デジタル弁は、開放しているかまたは閉鎖されている。3方向デジタル弁は、共通ポートを第1ポートまたは第2ポートのいずれかに接続する。比例弁は、可変電流を有する駆動電気信号によって制御される流れに対する可変抵抗を提供する。一例では、比例弁は、最小の開放の面積を変化させることにより、可変抵抗を達成する。別の例では、比例弁は、弁が開放位置と閉鎖位置との間で迅速に移動する間に、弁が開放している時間の割合を変化させることにより、流れ抵抗を変化させる。別の例では、弁は、完全に閉鎖することなく、相対的に閉鎖された位置と相対的に開放した位置との間で振動することができる。流れ抵抗は、弁が相対的に開放した位置にあるように命令される時間の割合を変化させることによって変更される。
一実施形態では、図101A、図101Bおよび図109に示す表面実装弁9030は、「可変弁」とも呼ぶ比例弁であり得る。図示する実施形態では、複数の表面実装弁9030が、端部マニホールドブロック9090の上面9093に取り付けられ、上面9093は、チャネル付き面9092に対して平行である。いくつかの実施形態では、表面実装弁9030の第1ポートは、第1ポート9097にねじ込まれ、第1ポート9097を第2ポート9098に接続する(図101B、図109を参照)。いくつかの実施形態では、表面実装弁9030は、比例ソレノイド弁等、種々の市販の可変弁のうちの任意のものとすることができ、一実施形態では、弁は、オハイオ州シンシナティのクリパード・インスツルメント・ラボラトリー社(Clippard Instrument laboratory,Inc.,Cincinanti,OH)から入手可能なクリパードミニマティック(Clippard Minimatic)EV−PM−20−6025弁である。別の実施形態では、弁9030は、ニューハンプシャー州ホリスのパーカー・ハネフィン・コーポレーション(Parker Hannifin Corporation(Hollis,NH))のモデル11−15−3−BV−12−P−0−0等、表面実装に好適なあらゆるデジタル二方弁または三方弁であり得る。表面実装される二方弁または三方弁は、上面9093の表面にあるポート9097および9098または第3ポート(図示せず)を選択的に接続することができる。
図101Bおよび図110は、複数のカートリッジ弁9020および圧力リザーバ9061〜9064への接続部を含む実施形態を示す。カートリッジ弁は、マニホールドポートに挿入される。カートリッジ弁9020の外側にシールを収容するように空洞9075が形成されている。機械加工された空洞は、カートリッジ弁9020の封止および適切な機能を確実にするように、弁の製造業者によって定義される一組の寸法を有することができる。この実施形態では、50個のカートリッジ弁9020が、中間マニホールドブロック9070の背面9074に取り付けられている。背面9074は、チャネル付き面9072に対して垂直な中間マニホールドブロック9070の側である。いくつかの実施形態では、カートリッジ弁は、コネチカット州ウエストブルックのザ・リー・カンパニーUSA(The Lee Company USA(Westbrook,CT))から入手可能なリーLHDAプラグイン(Lee LHDA Plug−In)弁等の三方弁である。カートリッジ弁9020は、空洞9075内に挿入され、マニホールド中間プレート9070に機械的に接続されるバッカープレート9022(図104)によって固定して取り付けられる。図110に示すように、カートリッジ弁9020は、回路基板9021内に差し込まれる。
図101Bに示すように、圧力センサ9040は、端部マニホールドブロック9090の上面9093に直接取り付けることができる。圧力センサ9040は、プリント回路基板(PCB)9044にはんだ付けされた集積回路であり得る。図101Aに示すように、1つまたは複数の圧力センサ9040を含むプリント回路基板9044は、各センサを空気圧式に隔離するようにガスケット9041により、PCB9040を適所に保持し各圧力センサを隔離するのに十分にガスケット9041を圧縮するようにプレート9042により、マニホールド端ブロック9090のチャネル付き面に対して平行な上面9093に取り付けることができる。一例では、圧力センサ9040は、アリゾナ州テンペのフリースケール・セミコンダクター社(Freescale Semiconductor,Inc.(Tempe,Arizona))から入手可能である(部品番号MPXH6250A)。PCB9044は、端部マニホールドブロック9090にユニットとして取り付けることができる。各圧力センサ9040の圧力検知面は、ポート9043(図101B)およびチャネル9091(図106)を介して、基準空間9412(図106)等の所望の圧力源に、またはより遠隔にポッドポンプの作動チャンバに、透析液リザーバタンク169に、多くの場合は液体処理カセット内の液体圧力をモニタリングするために、流体接続することができる。
上述した圧力リザーバは、中間マニホールドブロック9070および端部マニホールドブロック9090の継手を介して空気圧マニホールドに流体接続することができる。図110に示す継手9062を介して、負の空気圧または真空のリザーバを接続することができる。継手9061を介して高圧リザーバを接続することができる。低圧リザーバは、中間マニホールドブロック9070および端部マニホールドブロック9090の両方に接続することができる。継手9064を介して中間マニホールドブロック9070に低圧リザーバを接続することができる。低圧リザーバはまた、継手9063を介して端部マニホールドブロック9090にも接続することができる。デジタル弁ブロックから中間プレート9080および中間プレートガスケット9081、9082を通って端部マニホールドブロック9090(図108に示す)までの流路(図示せず)がある。両ブロック9070、9090は、周囲圧力または大気圧への接続部を有している。各接続部または孔は、ウォーターガイド9065で覆うことができ、それは、孔を封止しないが、いかなる水もマニホールド内で好ましい方向に向ける。圧力分散モジュール9000を接続することができる圧力リザーバは、システムコントローラによって制御されるポンプによって指定されたまたは所定の圧力で維持される空間である。実施形態では、高圧リザーバは、約7.241MPa(約1050PSI)の圧力で維持することができ、正圧リザーバは、約5.862MPa(約850PSI)の圧力で維持することができる。さまざまな空気圧作動式ポンプおよび弁に実際に送られる圧力は、圧力分散モジュール9000における二方弁、三方弁および可変弁によって向けられる圧力リザーバに基づいて変更することができる。さらに、中間圧力もまた、オン−オフ弁の迅速な開閉の組合せにより、または可変弁のオリフィスの変動により、送ることができる。
(マニホールドまたは圧力分散モジュール)
マニホールド9060は、1つまたは2つの端部マニホールドブロック9090と、1つまたは複数の中間マニホールドブロック9070と、1つまたは複数の中間プレート9080およびガスケット9081、9082とを備えることができる。図105に、多部品空気圧マニホールド9060の組立分解図を示す。2つのマニホールドブロック9090、9070を、間にガスケットが施された中間プレート9080があって、合わせて締め付けることができる。中間プレート9080はまた、裏当てプレートとも呼ぶことができ、それは、ガスケットに対して複数のチャネル9071、9091に対して封止させる剛性面を提供するためである。図106には、端部マニホールドブロック9090の下側のチャネル9091が見える。各マニホールドブロック9070、9090は、チャネル9071、9091がある少なくとも1つの面9072、9092と、他の面のさまざまなポート9050、9055(図105)、9605(図106)、9041(図109)および9370(図111A)とを備えることができる。チャネル9071(図108)および9091(図106)は、開放頂部とともに中実底部および2つの側壁を含む溝として構成することができる。チャネルは、マニホールドブロックの1つの面9072、9092内に切り込むことができ、または、マニホールドブロック面9072、9092の表面の上方に延在する壁によって形成することができる。図107に示すように、剛性平坦中間プレート9080によって裏当てされるガスケット9081、9082をチャネルに対して締め付けることにより、チャネルの開放頂部を封止することができる。中間プレート9080は、ガスケット9081、9082を、チャネル9071、9091のすべてに対して封止させる裏当てプレートである。チャネル9071、9091は、圧力源9605、弁9020、9030、センサ9040、およびブロックの他方の面に存在する出口ポート9050、9055に接続されている。マニホールドブロック9070、9090は、機械的締結具9066により、それらの間にガスケット9081、9082および中間プレート9080を挟装して、マニホールドブロックの各々のチャネル付き面9072、9092の複数のチャネル9071、9091を封止することができる。この挟装構造により、各ブロック9090、9070の1つの面におけるチャネル9071、9091の組との複数のマニホールドブロックの小型組立が可能になる。
いくつかの実施形態では、マニホールドブロックの6つの面のうちの5つにポートまたはチャネルがある。端部マニホールドブロック9090は、面9092の上にチャネル9091を有することができる。圧力センサ9040および表面実装弁9030は、端部マニホールドブロック9093の上面9093に取り付けることができる。端部マニホールドブロック9090は、マニホールドブロックの長さにわたって延びる供給ライン9606を含むことができる。供給ライン9606用のポートは、端部マニホールドブロック9090の各端部にある。液体処理カセットに接続するポート9050、9055は、正面9096にあり得る(図103、図105)。背面9094は、液体処理カセットまたはカートリッジ弁用の空洞に接続する追加のポートを含むことができる。
中間マニホールドブロック9070は、上面9072にチャネルを有することができる。カートリッジ弁9020は、背面9074に取り付けることができる。正面9076は、液体処理カセットに接続するポート9050、9055を含むことができる。中間マニホールドブロックの両端面は、中間マニホールドブロック9070の長さにわたって延びる空洞である供給ライン9605に接続するポートを含む。一実施形態では、中間マニホールドブロック9070の底面(図示せず)は、供給ライン9605に接続する追加のポートを含むことができる。別の実施形態では、中間マニホールドブロック9070の底面(図示せず)は平坦であり得る。別の実施形態では、中間マニホールドブロック9070の底面(図示せず)は、以下に限定されないがポート9050、カートリッジ弁9020および供給ラインのうちのいくつかの間に流体接続を提供する追加のチャネルを含むことができる。
いくつかの実施形態では、空気圧チャネル9071(図105)は、ポート9050、9055のうちの多くをカートリッジ弁9020に接続し、カートリッジ弁9020のうちの多くを供給ライン9605のうちの1本に接続する。供給ライン9605は、マニホールドブロックの長さまたはその実質的な部分にわたって延びる長い空洞の形態であり得る。中間マニホールドブロックでは、端面9076からの供給ラインは、チャネル9071の経路に対して略垂直に延びることができる。したがって、いかなるチャネル9071も、供給ライン9065のうちのいずれか1つに接続することができる。チャネルはまた、概して、正面9074から背面9075まで延び、それにより、液体ポンピングカセットへのポートとカートリッジ弁との間の接続を可能にする。同様に、端部マニホールドブロック9090のチャネル9091により、供給ライン9065、ポート9055および表面実装弁9030への接続が可能になる。3つの供給ライン、すなわち高圧ライン9620、低圧ライン9630および真空ライン9640(図105)は、3つの圧力リザーバのうちの1つに配管することができる。第4ライン9610は、雰囲気に排気することができる。いくつかの実施形態では、チャネル9071のうちの1つまたは複数は、弁9020を、(FMS技法を介して)遠隔接続された空気圧作動式膜ポンプの容積変化を求めるために使用される、端部マニホールドブロック9090の基準空間に接続する。図106において、端部マニホールドブロック9090の基準またはFMS空間9412が見える。
図111A〜図111Cに、チャネル9071(たとえば、図105に示す)に出入りする流体接続の一例を示し、そこでは、中間マニホールドブロック9070の同じ部分の3つの図を提示する。(たとえば、図104および図110に示す)カートリッジ弁空洞9075は、カートリッジ弁空洞9075への3つのチャネルの各々からの垂直孔を介して、3つのチャネルに接続することができる。垂直孔は、背面9074から異なる軸方向深さにおいてカートリッジ弁空洞と交差することができ、それにより、3方向カートリッジ弁は、第2孔を第1孔または第3孔のいずれかに接続することができる。第2孔は、液体処理カセットに接続することができ、そこでは、空気圧が液体弁を開閉し、またはポッドポンプを作動させることができる。第1孔および第3孔は圧力リザーバに接続することができる。
図111A〜図111Cに、液体処理カセット内の圧力リザーバと液体弁との間の接続部の例を示す。右端のカートリッジ弁空洞90370Aは弁9037を受け入れる。カートリッジ弁空洞90380Aは、供給ライン9620を介して真空リザーバに接続される。図111Aの右端のチャネルは、チャネルを供給ライン9620に接続する垂直孔9620Aと、カートリッジ弁空洞9370Aに接続する第2孔9620Bとを有している。図111Cに、第2孔9620Bを示す。次にチャネルは、混合カセットの酸混入(Mix Acid In)弁9370D(図120)を、ポート9050への垂直孔9370Cおよびカートリッジ弁空洞9370Aへの垂直孔9370Bを介して、カートリッジ弁9370に接続する。図111A、図111Cに、空洞9370Aを示す。高圧は、供給ライン9640から孔9640を介して、第3チャネルを通り、垂直孔6940Bを介してカートリッジ弁空洞9370A内に流れる。次の4つの弁9375、9380、9385および9390に対して、同様の接続が行われる。カートリッジ弁空洞9075は、1列ずれて2列に形成され、それにより、カートリッジ弁空洞9075は互い違いになる。互い違い配置により、2つのカートリッジ弁空洞9370Aおよび9375Aが、圧力を供給する単一チャネルを共有することができる。単一孔9640Bが、カートリッジ弁空洞両方の背面近くを通過することにより、両カートリッジ弁空洞9370A、9370Bに高圧を供給することができる。右端のチャネルは、部分的には、供給ラインに対して垂直に、部分的には、供給ラインに対して平行に位置合せされて、垂直孔9620Bが両カートリッジ弁空洞9375Aおよび9370Aを通過し、両弁に真空を供給することができるようにする。垂直孔9620B、9370Bおよび9640Bは、マニホールドブロック9070の背面9074から異なる距離で、カートリッジ弁空洞9370A、9375Aと交差する。垂直孔の配置により、カートリッジ弁9370、9375は、混合カセットの液体弁9370E、9375Eを高圧供給ライン9640に、または真空供給ライン9620に接続することができる。中間プレート9080およびガスケット9081、9082は、中間マニホールドブロック9070のチャネル9071を、限定されないが、チャネル9091、圧力ポート9041および表面実装弁ポート9097、9098を含む、端部マニホールドブロック9090のあらゆる要素に接続する、孔9084を含むことができる。
図111Dおよび図112に、FMSシステムとともにポンプを含むマニホールド配管の例示的な記載を提示する。中間マニホールドブロック9070は、異なる空気圧制御機能を実施するようにチャネルの特徴を組み込んでいる。チャネル9726は、弁ステーション9730まで下る孔9734に空気圧源を運ぶ。チャネル9735は、弁ステーション9729まで下る孔9736に異なる空気圧源を運ぶ。孔9732は、ステーション9729の異なるポートまで下り、チャネル9727は、弁ステーション9728および9730の両方と交差する孔9731までこの空気圧信号を搬送する。これらの特徴は、弁ステーション9729、9730および9728それぞれに対応する弁9729A、9730Aおよび9728Aを含む空気圧回路図(図112)の一部を実施する。
チャネル9071は、ガスケット9081(たとえば、図105参照)によって封止され、ガスケット9081は、有利には、中間プレート9080によってチャネルに対して本質的に均一に押圧される。マニホールドブロックおよびガスケットは、ガスケットにおける圧力の本質的に均一な分散を確実にする特徴を含むことができる。中間マニホールドブロック9070は、ガスケット9081における一致するスロット9083(図105)を通って嵌合する隆起セクション9078(図111A、図111Bを含むことができる。中間プレート9080は、隆起した特徴9072の上に位置し、ガスケットの本質的に均一な圧縮を確実にする。いくつかの実施形態では、ねじ9066(図105)を用いて、2つのマニホールドブロック9070、9090の間にガスケットおよび中間プレートが締め付けられる。中間プレート9080は、ガスケットに対して実質的に平滑かつ剛性の裏当てを提供し、それにより、2つ以上のマニホールドブロックを、多部品空気圧マニホールド9060内に組み付けることができる。
ガスケット9081、9082および中間プレート9080は、中間マニホールドブロック9070と端部マニホールドブロック9090との間の圧力よび流れの連通を可能にする孔9084を含む。孔9084のうちのいくつかは、中間マニホールドブロック9070から表面実装弁9030へのかつ戻る流れを可能にすることができる。孔のうちのいくつかは、圧力センサ9040が、中間マニホールドブロック9070のチャネル9071内の圧力を測定することができるようにする。ガスケット9081、9082および中間プレート9080を通る孔のうちのいくつかは、中間マニホールドブロック9070の供給ライン9605を端部マニホールドブロック9090の供給ライン9066に接続することができる。一実施形態におけるガスケットは、40ショアA硬度のエチレンプロピレンジエンモノマー(Mクラス)ゴム(EPDM)または同様のエラストマーから作製される。中間プレート9080は、好ましくは、ガスケットを両マニホールドブロックの溝に対して押し付ける剛性かつ実質的平面状の表面を提供する比較的堅いプレートである。一実施形態では、中間プレート9080は、約0.508cm(0.2インチ)厚さのアルミニウムである。
図106に、代替実施形態を提示し、そこでは、第3中間マニホールドブロック9070Aが追加されている。この実施形態では、中間マニホールドブロック9070の下側(図107では見えない)は、第2中間マニホールドブロック9070と第3中間マニホールドブロック9070Aとの間を連通する孔があって平滑である。ガスケット9081Aが、中間マニホールドブロック9070Aのチャネル9071Aを封止する。中間マニホールドブロック9070Aのチャネルは、9071と同じ機能を提供し、排気ポート9050A、弁9020Aおよび供給ポート9605Aを接続する。第2マニホールドブロックおよび第3マニホールドブロックを積層することができ、それは、カートリッジ弁9020Aが背面9074Aにあり、排気ポートが正面9075Aにあり、供給ポートが端面9076にあるためである。
圧力分散システム9000のさらなる代替実施形態は、端部マニホールドブロックと、一方の面にチャネルがあり反対側の面に平滑面がある2つ以上の中間マニホールドブロックとを備えることができる。背面9074の一方の側にカートリッジ弁9020を取り付けることができ、反対側の面に排出ポートを取り付けることができる。供給ラインは、マニホールドブロックの長さにわたって延在することができる。中間マニホールドブロック9070のこの実施形態の平滑面9073は、第2中間マニホールドブロック9070Aのチャネル9071Aを封止するガスケット9081A用の裏当てプレートとして作用する。他の実施形態では、間にガスケット9081Aを置いて、複数の中間マニホールドブロックを追加することができ、それにより、より複雑な空気圧式または流体駆動式のシステムを制御するためにより多くのチャネルおよびより多くの出力ポートを生成することができる。
別の代替実施形態(図108)では、中間マニホールドブロック9070は、上部可視面および下部(見えない)面の両方にチャネル9071を有している。9070の下部面のチャネルは、9070と9070Aとの間のガスケットおよび中間プレート9080両方を介して封止することができる。複数の中間マニホールドブロックは、各々の間にガスケットが施された中間プレート9080を配置することにより、上面および下面の両方にチャネルがあるように合わせて積層することができる。このように、2つの面にチャネルがある複数の中間マニホールドブロックを結合して、より複雑な空気圧供給システムを形成することができる。
別の例では、マニホールド9060は、2つの端部マニホールドブロック9090の間に1つまたは複数の中間マニホールドブロック9070を備えることができる。マニホールドブロック9070、9090の各対の間にガスケットが施された中間プレート9080を配置して、流体チャネルを形成することができる。
図109の正面に、圧力分散マニホールドをカセットに接続する空気圧ライン用のポート9050、9055が見える。いくつかの実施形態では、ポート9050からの空気圧ラインは、統合されたカセットシステム(たとえば、図46A〜図46Eのカセットシステム)に、統合されたカセットシステムを容易に交換することができるように迅速に分離するインタフェースブロックを介して接続することができる。図103に、圧力分散システム9000に関連して固定インタフェースブロック9820を示す。図102に示す2つの取外し可能インタフェースブロック9850、9860は、固定インタフェースブロックの正面側9821に対して2つのクランプ9830によって9820に対して締め付けられる。取外し可能インタフェースブロック9852、9862の面のガスケット(図示せず)は、気密シールを提供する。固定インタフェースブロック9820に圧入される位置合わせピン9822は、一致するポートが位置合わせされるように、取外し可能ブロック9850、9860を位置合わせする。取外し可能インタフェースブロック9850、9860は、流体ポンプおよび弁が位置する透析ユニットの「高温ボックス」空洞内に位置することができる。この空洞は、透析液搬送ポンプおよび弁の消毒中に高温環境にさらされる可能性がある。対照的に、固定インタフェースブロック9820は、透析システムの温度の影響を受けやすい要素(電子部品および電気機械部品)を保護するように、高温ボックスセクションから熱的に分離されている、透析ユニットのセクション(「低温ボックス」セクション)に位置することができる。
たとえば図46A〜図46Eの統合カセットシステムは、可撓性ラインを介して2つの取外し可能なインタフェースブロック9850、9860に接続することができる。別法として、統合カセットシステムには、固定インタフェースブロック9820または取外し可能インタフェースブロック9850、9860のいずれかの嵌合ポートに接続しそれと封止係合を形成するように空間的に配置された、隆起した剛性ポートを備えることができる。可撓性ラインは、ブロックの頂部においてポート9854、9864に固定される。ブロックは、ポリスルホン、または高温で優れた安定性を有する別の強靭な熱可塑性材料から製造することができる。取外し可能ブロック9850および9860を固定ブロック9820に対して配置し、その後、クランプ9830のハンドルを回して取外し可能ブロックを固定することにより、透析装置6001の空気圧制御部に統合カセットシステムを接続することができる。取外し可能ブロックは、統合カセットシステムと圧力分散モジュール9000との間の多くの接続部を位置合せしかつ封止する、確実かつ迅速な設計を提供する。それらは、圧力分散モジュールへの迅速な接続およびそこからの分離を可能にし、それにより、統合カセットシステムが定期的に交換される際の効率が向上する。
固定インタフェースブロック9820は、透析装置6001の周囲温度部分における圧力分散システム9000を熱的に隔離して、加熱された透析液/消毒流体が統合カセットシステムを通って流れる、断熱された高温ボックスからの熱流を低減する。いくつかの実施形態では、固定インタフェースブロック9820は、ポリスルホン、または高温で優れた安定性を有する別の強靭な熱可塑性材料から製造される。いくつかの実施形態では、固定インタフェースブロック9820は、圧力分散システム9000にボルト締めすることができ、9050ポートはガスケット9810で封止することができ、ガスケット9810また、透析ユニットの高温ボックスセクション内の周囲温度から圧力分散モジュールを熱的に隔離するのにも役立つことができる。
ポート9055は、圧力分散システム9000を、たとえば図30〜図34の血液カセットと透析液タンク(図示せず)用のFMSリザーバとに接続する。図101Aに示す12個のポート9055は、透析装置の高温ボックスの表面のプレート9890に可撓性チューブを介して接続される。可撓性チューブを備えた第2プレートは、高温ボックスの表面の第1プレートにボルト締めされる。第2プレート(図示せず)は、可撓性チューブを介して、透析液タンク用のFMS空間にかつ制御ポートアセンブリ(図示せず)に接続される。制御ポートアセンブリは、血液カセット1100(図33D)の底部プレートのポートに接続する空気圧受け口を有している。
マニホールドブロックは、望ましい場合は、設置業者または製品開発業者によって予め製造しカスタマイズすることができる。チャネル9071および供給ライン9605を接続する垂直孔なしに、大量生産生産されるマニホールドブロックを製造することができ、その後、所与のチャネルを所定の供給ラインに接続することによって、そうしたマニホールドブロックを特定の用途に対して構成することができる。
(圧力分散モジュールの空気圧回路図)
空気圧回路図の図113〜図117に、可変弁マニホールドおよびデジタル弁マニホールドの実施形態の詳細な配管回路図を記載し、血液カセット、透析液カセットおよび混合カセットの対応する流れ回路図を図118〜図121に示す。空気圧回路図では、供給ライン9610、9620、9630、9640は、縦線で表されている。三方弁、たとえば9210は、2つの異なる供給ラインに、かつ液体処理カセット25、141、142、143の液体弁9210Eに配管することができる。血液ポンプ用の三方弁9210は、電源が供給されていないとき、液体弁9210Eを真空供給ライン9640に接続することができる。非電源供給位置では、液体弁9210Eは、好ましくは、電源遮断中に血液が閉じ込められないように、デフォルト開放位置にある。電源供給位置では、液体弁9210Eは、低圧供給ライン9630に接続されて液体弁を閉鎖する。血液ポンプ13は、低圧供給ライン9630および真空供給ライン9640に接続する一対の比例弁、たとえば9110、9112によって作動させることができる。血液ポンプ13に供給される圧力は、圧力センサ9111によってモニタリングすることができる。ポンプ用のいくつかの空気圧回路は、送り出される容量の正確な測定を可能にするためにFMSチャンバを含むことができる。一例は、真空ラインおよび高圧ラインにそれぞれ接続された弁9230および9235によって駆動される薬剤定量またはヘパリンポンプ11である。作動流体路は、FMSチャンバ9238に接続され、第3弁9233を通ってヘパリンポンプ9233Eに向かって流れる。圧力センサ9239、9234は、弁9233の上流および下流の圧力をモニタリングすることができる。
圧力供給ラインおよびデフォルト弁位置は、故障時に安全状態を達成するように選択することができる。血液カセット141内で血液を処理する液体弁9210E、9215E、9220E、9225Eおよびポンプ13には、真空供給ライン9640および低圧供給ライン9630によって動力を供給することができる。低圧ポンピングは、生物学的流体、それにより患者の血管系を、低圧リザーバを超える圧力にさらす可能性を回避するように血液成分を処理するポンプまたは弁に対して、選択することができる。内部透析液カセット143内では、透析液ポンプ15は、低圧供給ライン9630および周囲圧力ライン9610に接続することができる。内部透析液ポンプ15は、好ましくは、透析液圧力を周囲圧力より低くし、それにより透析液から発生する気体の量を最小限にするのを回避するように、真空供給ライン9640に接続されていない。この場合、外部透析液ポンプ159は、内部透析液カセット143に入る透析液に正圧を供給することができ、それにより、上流弁9270、9265が開放するときに内部透析液ポンプ15を充填する。
圧力分散システム9000における三方弁の非電源供給位置は、コントローラまたはFPGA安全システムの電源遮断または停電中に安全状態を提供するように選択することができる。血液ポンプ弁9210、9215、9220、9225、ODP弁9350、9355、9360、9365およびBTSクランプ9430は、デフォルトで、液体弁を開放して血液を血液カセットから押し出すのを可能にする真空接続となる。ヘパリンポンプ弁9230、9235、限外ろ過ポンプ弁9285、9290、酸ポンプ弁9410、9415および重炭酸塩ポンプ弁9420、9425に対する非電源供給位置は、ポンプを圧力リザーバから分離し、それにより、それらはいかなる流体も送り出さない。弁の平衡は、デフォルトで、高圧および低圧を液体弁に接続することができ、それにより、電源が遮断されたときに液体弁が閉鎖する。血液の患者への返血は、停電シナリオにおいて、たとえば、低(または高)圧加圧タンクから圧力分散マニホールド弁9325を通り、弁9328を介して透析液タンク169内に通じる弁のデフォルト配置を介して、可能である。透析液タンク169内の透析液にかけられる圧力は、外部透析液ポンプおよび弁、限外ろ過装置、および透析装置への内部透析液流体路を介して透析装置の血液側に向けることができ、適切な分配マニホールド弁は、透析装置の通路用のデフォルト開放位置、または最終的にドレンに通じる他の透析液通路用のデフォルト閉鎖位置のいずれかに配置される。したがって、透析液は、静圧を介して透析装置膜の血液側に搬送することができ、それにより、血液管セット内の血液が患者の血管系に返血されるのが可能になる。
本発明のいくつかの態様は、さまざまなセンサを含む。たとえば、本明細書に記載する本発明のさまざまな実施形態では、流体処理は、センサマニホールドを備えるセンサ装置システムを含むことができる。センサマニホールドは、たとえば、透析液伝導率センサおよび透析液温度センサを含む、システムで使用される流体センサの大部分を含むように配置することができる。センサマニホールドは、他のタイプのセンサを含むことができる。こうした実施形態の例は、透析、心臓バイパス、および他のタイプの体外処置および治療等、さまざまな生物学的流体および/または治療薬の送出し、計量、測定、制御および/または分析を伴う、システムおよび方法の実施形態を含む、さまざまな医療状態の診断、処置または改善のためのシステムおよび方法を含むことができる。さらなる例は、水処理システム、水蒸留システム、および透析液等、さまざまな医療状態の診断、処置または改善に使用される流体を含む流体を調製するシステムを含む、流体処理および調製システムを含む。
本明細書に記載する発明の実施形態の例は、透析システムおよび方法を含むことができる。より詳細には、本明細書に記載した発明の実施形態の例は、各々が参照により本明細書に組み込まれる、2007年10月12日に出願された、「ポンプカセット(Pumpiung Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,680号明細書、または2008年2月27日に出願された、「カセットシステム統合装置(Casstte System Integrated Appratus)」と題する米国特許出願第12/038,648号明細書に記載されたタイプの血液透析システムおよび方法を含むことができる。
こうしたシステムおよび方法では、1つまたは複数のセンサマニホールドの利用により、対象媒体を、1つの環境から、センサ読取値を取得するのをより促進する別の環境に移動するのを可能にすることができる。たとえば、カセットマニホールドは、検知プローブ等のセンサ装置には好ましくない、温度および/または湿度等、さまざまなタイプの環境条件にさらされる可能性が低い領域に含めることができる。別法として、検知装置および検知装置システムは、損傷を受け易い可能性があり、システムの他の構成要素より誤動作しやすい可能性がある。センサマニホールドを使用することによりセンサ装置およびセンサ装置システムを、システムの他の構成要素から分離することにより、検知装置および検知装置システムを、システムの他の構成要素に対する影響を最小限にして、検査し、校正し、修理し、または交換することができる。システムの残りの部分に対する影響を最小限にしてセンサマニホールドを検査し、校正し、修理しまたは交換することができることは、2008年2月27日に出願された、「カセットシステム統合装置(Cassette
System Integrated Appratus)」と題する米国特許出願第12/038,648号明細書に記載されている統合カセットシステムおよび方法に関連して利用する場合に、有利であり得る。別法として、センサマニホールドは、システムの他の構成要素より多少頻繁に交換される可能性がある。
図53〜図58を参照すると、例示的なセンサマニホールドのさまざまな実施形態が示されている。1つまたは複数の対象媒体、たとえば、これらの例示的な実施形態では液体は、カセットマニホールド4100内に収容されるかまたはそこを流れることができる。たとえば、1つの対象媒体は、事前成形されたチューブコネクタ4101を介してカセットマニホールド4100に入り、事前成形されたチューブコネクタ4102を介してカセットマニホールドから出ることができる。チューブコネクタ4101と4102との間には、カセットを通る流体路(図54において流体路4225として最もよく示す)がある。同様に、流体路(図54においてそれぞれ流体路4223、4220、4222、4224および4221として示す)は、チューブコネクタ4103および4104、4105および4106、4107、4108および4109、4110および4111、ならびに4112および4113の間に延在する。いくつかの実施形態では、各流体路は、組成または特性が異なる対象媒体を含むことができる。他の実施形態では、1つまたは複数の流体路は、同じかまたは同様の対象媒体を含むことができる。いくつかの実施形態では、同じ対象媒体を、同時に2つ以上の流体路に流して、こうした流体路に関連するセンサ装置システムを検査および/または校正することができる。
ここで図55を参照すると、本明細書に記載するセンサ装置およびセンサ装置システムとともに使用することができるセンサマニホールド4100のこれらの例示的な実施形態では、カセットは、頂部プレート4302および基部4301を含む。チューブコネクタ4101と4102との間に延在する(図54に示すような)流体路4225等の流体路は、基部と頂部プレートとの間に延在する。カセットは、種々の材料から構成することができる。概して、さまざまな例示的な実施形態では、使用される材料は堅く非可撓性である。好ましい実施形態では、プレートは、ポリスルホンから構成されるが、他の実施形態では、カセットは、あらゆる他の硬い材料から、例示的な実施形態では、任意の熱可塑性材料から構成される。センサマニホールド4100のいくつかの実施形態は、2008年2月27日に出願された、「カセットシステム統合装置(Casstte System
Integrated Apparatus)」と題する、米国特許出願第12/038,648号明細書に記載されているシステムおよび方法を利用して製造することができる。
再び図55を参照すると、本明細書に記載するセンサ装置およびセンサ装置システムとともに使用することができるセンサマニホールドのこれらの例示的な実施形態では、センサマニホールド4100はまた、プリント回路基板(PCB:printed circuit board)4304およびPCBカバー4305も含むことができる。さまざまな実施形態は、血液透析システム等のシステムにカセットマニホールド4100を機械的に接続するために利用することができるコネクタ4303(図53および図56Bにも示す)を含むことができる。カセットマニホールド4100はまた、さまざまな方法を利用して、センサマニホールド4100の層を合わせてユニットとして保持することも可能である。さまざまな実施形態では、図43に示すように、一実施形態ではねじであるが他の実施形態ではあらゆる接続手段であり得るコネクタ4306(図56Bにも示す)が利用されるが、他のタイプのねじ、溶接、クリップ、クランプ、ならびに他のタイプの化学的結合および機械的結合等、当業者には既知であるあらゆる手段を利用することができる。
ここで図56Aを参照すると、センサマニホールド4100の例示的な実施形態では、チューブコネクタ4401等のチューブコネクタを利用して、対象媒体が流体路4402内に導入されるかまたは流体路4402から取り除かれる。流体路4402内に延在する検知プローブ4404等の検知プローブが、センサマニホールドの特定の流体路に収容されるかまたはそこを流れる対象媒体のさまざまな特性を求めるように、センサマニホールド4100内に組み込まれる。さまざまな実施形態では、1つの検知プローブを利用して、対象媒体の温度および/または他の特性を検知することができる。別の実施形態では、2つの検知プローブを利用して、対象媒体の温度および/または伝導率および/または他の特性を検知することができる。さらなる実施形態では、3つ以上の検知プローブを含めることができる。いくつかの実施形態では、本明細書で概説したタイプの温度検知プローブおよび伝導率検知プローブの1つまたは複数の組合せを利用することができる。他の実施形態では、伝導率センサおよび温度センサは、当技術分野におけるあらゆる伝導率センサまたは温度センサであり得る。一実施形態では、伝導率センサ素子(またはセンサリード)はグラファイトポストである。他の実施形態では、伝導率センサ素子は、ステンレス鋼、チタン、または伝導率測定に通常使用される(または使用することができる)タイプのあらゆる他の材料から作製されたポストである。いくつかの実施形態では、伝導率センサは、センサリードからセンサ機構、コントローラまたは他のデバイスに信号を送信する電気的接続を含む。さまざまな実施形態では、温度センサは、温度を検知するために一般に使用される(または使用することができる)温度センサのいずれでもあり得る。
再び図56Aを参照すると、検知プローブ4404は、PCB4405に電気的に接続されている。いくつかの実施形態では、適切な電気的接続を確保するために、センサ素子4404とPCB4405との間に導電性エポキシ樹脂が利用されるが、センサ素子4404とPCB4405との間に適切な電気的接続を得るために、当業者には既知である他の方法を使用することができる。PCB4405は、エッジコネクタ4406があるように示されている。さまざまな実施形態では、エッジコネクタ4406を使用して、センサ情報をカセットマニホールド4100から主システムに送信することができる。エッジコネクタ4406は、媒体エッジコネクタ(図58に示す媒体エッジコネクタ等)に接続することができる。さまざまな実施形態では、媒体エッジコネクタ4601は、血液透析装置(図示せず)に設置することができる。こうした実施形態では、(図55に示すような)ガイドトラック4310および4311を利用して、エッジコネクタ4406および媒体エッジコネクタ4601の接続を補助することができる。さまざまな実施形態はまた、血液透析システム等のシステムにカセットマニホールド4100を機械的に接続するために利用することができる(図53、図55および図56Bに示すような)コネクタ4303も含むことができる。
再び図56Aを参照すると、エアトラップ4410が示されている。いくつかの実施形態では、エアトラップ4410等のエアトラップを利用して、システム内で空気を閉じ込めかつパージすることができる。図54に最もよく示すように、対象媒体は、センサマニホールド4100内でチューブコネクタ4107と4109との間で流体路4222を流れることができる。対象媒体の流れは、(チューブコネクタ4108の近くで)流体路4222内で曲り目の周囲で低速になる際、コネクタ4108を通る対象媒体から空気を除去することができる。
ここで図56Bを参照すると、PCBカバー4305が示されている。PCBカバー4305は、コネクタ4306によってセンサマニホールド4100に接続することができる。エッジコネクタ4406も示されている。
いくつかの実施形態によれば、センサマニホールド4100は、流体流の制御に関して受動的である。こうした実施形態では、センサマニホールド4100は、対象媒体の流れを制御するために弁またはポンプ機構を含んでいない。こうした実施形態では、対象媒体の流れは、センサマニホールド4100の外部の流体制御装置によって制御することができる。他の実施形態では、センサマニホールドは、1つまたは複数の機械弁、空気圧弁、または当業者によって一般に使用される他のタイプの弁を含むことができる。こうした実施形態では、センサマニホールドは空気圧式ポンプ機構、機械式ポンプ機構、または当業者によって一般的に使用される他のタイプのポンプ機構を含む、1つまたは複数のポンプ機構を含むことができる。こうした弁およびポンプ機構の例は、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する、2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,680号明細書、または2008年2月27日に出願された、「カセットシステム統合装置(Cassette System Integrated
Apparatus)」と題する米国特許出願第12/038,648号明細書に記載されている弁およびポンプ機構を含むことができる。
ここで図57を参照すると、基部4301にチューブコネクタ4401が示されている。頂部プレート4302が、コネクタ4303とともに示されている。検知プローブ4501等の検知プローブが、頂部プレート4302を通って流体路4503内に延在している。検知プローブ4501は、本明細書において概略的に考察した検知プローブの実施形態を含むさまざまなタイプのセンサであり得る。
検知プローブ4501等の検知プローブは、すべて同じであり得るか、行われる機能のタイプに基づいてさまざまなセンサから個々に選択することができるか、または行われる機能のタイプに基づいて、同じプローブを個別に変更することができる。同様に、流体路の長さおよび流体路の形状等、流体路の構成は、行われる機能に基づいて選択することができる。例として、流体路における対象媒体の温度を検出するために、サーミスタ等の温度センサを使用することができる。この場合もまた、例として、対象媒体の伝導率を測定するために、温度および伝導率を測定するように構成された1つの検知プローブと、伝導率のみを測定するように構成された1つの検知プローブとを利用することができる。他の実施形態では、温度および伝導率の両方を測定するように構成された2つ以上の検知プローブを利用することができる。こうした構成のさまざまな実施形態では、例として、第2温度センサは、存在するが、通常動作では利用されない可能性があり、第2温度は、冗長温度測定に利用することができ、または第2温度は冗長温度測定に利用することができる。
再び図57を参照すると、PCB4502が、電気接続部4503を備えるように示されている。図58でさらに示すように、PCB4602は、(図45において4501として示す)検知プローブに接続する電気接続部4603を備えるように示されている。PCB4602はまた、(図57において4305として示す)頂部プレートに取り付けるための開口部4604もまた含む。いくつかの実施形態では、電気接続部4603は、空隙4606があってPCB4602に取り付けられるかまたはPCB4602とともに製造される。こうした実施形態では、空隙4606を利用して、PCB4602に対してより小さい衝撃で、センサマニホールド4100のさまざまな構成要素の収縮および拡張を可能にすることにより、検知プローブ4501とPCB4602との間の電気接続部に対する保護を提供することができる。
再び図58を参照すると、PCB4602はまた、エッジコネクタ4605を備えるように示されている。本明細書に記載したように、エッジコネクタ4605は、エッジコネクタ受け4601とインタフェースすることができ、エッジコネクタ受け4601は、センサマニホールド4100がインタフェースする、血液透析システム等のシステムに接続され得る。
図53〜図58に示す例としてのセンサマニホールド4100のさまざまな実施形態は、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する、2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,680号、または、2008年2月27日に出願された、「カセットシステム統合装置(Cassette System Integrated Apparatus)」と題する米国特許出願第12/038,648号明細書に記載されている血液透析システムおよび方法とともに利用することができる。いくつかの実施形態では、センサマニホールド4100は、図59に示す温度センサおよび伝導率センサのすべてを含む。図59は、上で参照した特許出願に記載されている本発明の一実施形態による流体回路図を示す。
例として、さまざまな実施形態では、図59に示すような位置4701における対象媒体の温度および伝導率は、センサマニホールド4100を利用して求めることができる。こうした実施形態では、対象媒体は、(図54に示すような)流体路4220を通って(図53に示すような)チューブコネクタ4105に流れ込み、(図53に示すような)チューブコネクタ4106において出る。対象媒体の伝導率は、流体路4220内に延在する2つの検知プローブ(図示せず)によって測定され、それら検知プローブのうちの少なくとも一方は、サーミスタ等の温度検知素子を含むように構成されている。対象媒体の伝導率測定値または温度測定値を利用して、血液透析システムに対する有用性のさまざまな情報を求めかつ/または相関させることができる。たとえば、さまざまな実施形態では、図59の位置4701において、対象媒体は、重炭酸塩系溶液が加えられた水から構成することができる。位置4701における対象媒体の伝導率を利用して、適切な量の重炭酸塩系溶液が位置4701の前に加えられたか否かを判断することができる。いくつかの実施形態では、伝導率測定値が所定範囲から逸脱するか、または所定測定値から所定量を超えて逸脱する場合、対象媒体は、適切な濃度の重炭酸塩系溶液を含まない可能性がある。こうした場合、いくつかの実施形態では、血液透析システムに対して警告することができる。
また、例として、さまざまな実施形態において、図59に示すような位置4702における対象媒体の伝導率は、センサマニホールド4100を利用して求めることができる。こうした実施形態では、対象媒体は、(図54に示すような)流体路4221を通って(図41に示すような)チューブコネクタ4112に流れ込み、(図53に示すような)チューブコネクタ4113において出る。対象媒体の伝導率は、流体路4221内に延在する2つの検知プローブ(図示せず)によって測定され、それら検知プローブのうちの少なくとも一方は、サーミスタ等の温度検知素子を含むように構成されている。対象媒体の伝導率測定値または温度測定値を利用して、血液透析システムに対する有用性のさまざまな情報を求めかつ/または相関させることができる。たとえば、さまざまな実施形態では、図59の位置4702において、対象媒体は、重炭酸塩系溶液およびその後酸系溶液が加えられた水から構成することができる。位置4702における対象媒体の伝導率を利用して、適切な量の酸系溶液(および、先のステップにおける重炭酸塩系溶液)が位置4702の前に加えられたか否かを判断することができる。いくつかの実施形態では、伝導率測定値が所定範囲から逸脱するか、または所定測定値から所定量を超えて逸脱する場合、対象媒体は、適切な濃度の酸系溶液および重炭酸塩系溶液を含まない可能性がある。こうした場合、いくつかの実施形態では、血液透析システムに対して警告することができる。
さらなる例として、さまざまな実施形態において、図59に示すような位置4703における対象媒体の温度および伝導率は、センサマニホールド4100を利用して求めることができる。こうした実施形態では、対象媒体は、(図54に示すような)流体路4222を通って(図53に示すような)チューブコネクタ4107に流れ込むかまはたはそこから流れ出ることができ、(図53に示すような)チューブコネクタ4109に流れ込むかたまたはそこから流れ出ることができる。本明細書に記載したように、空気は、流体路4222の曲り目を通過する際に対象媒体から除去することができる。こうした場合、対象媒体の一部は、チューブコネクタ4108を通ってドレンに除去され、その対象媒体の一部とともに空気がエアトラップから運び出される。対象媒体の伝導率は、流体路4222内に延在する2つの検知プローブ(図示せず)によって測定され、それら検知プローブのうちの少なくとも一方は、サーミスタ等の温度検知素子を含むように構成されている。対象媒体の伝導率測定値または温度測定値を利用して、血液透析システムに対する有用性のさまざまな情報を求めかつ/または相関させることができる。たとえば、さまざまな実施形態では、図59の位置4703における伝導率測定値を利用して、透析装置のクリアランスに相関させることができる。こうした場合、いくつかの実施形態では、この情報はその後、血液透析システムに送出することができる。
また、さらなる例として、図59に示すような位置4704における対象媒体の温度は、センサマニホールド4100を利用して求めることができる。こうした実施形態では、対象媒体は、(図54に示すような)流体路4223を通って(図53に示すような)チューブコネクタ4103に流れ込み、(図53に示すような)チューブコネクタ4104において出る。対象媒体の温度は、流体路4223内に延在する1つまたは複数のセンサプローブ(図示せず)によって測定される。位置4704における対象媒体の温度測定値を利用して、血液透析システムに対する有用性のさまざまな情報を求めかつ/または相関させることができる。たとえば、さまざまな実施形態では、図59における位置4704において、対象媒体の温度は、加熱装置4706の下流で求められる。温度が所定範囲から逸脱するかまたは所定測定値から所定量を超えて逸脱する場合、血液透析システムに対して警告することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、対象媒体の温度が所定範囲内になるまで、加熱装置4706を通して対象媒体を再循環させることができる。
また、さらなる例として、さまざまな実施形態では、図59に示すような位置4705における対象媒体の温度および伝導率は、センサマニホールド4100を利用して求めることができる。こうした実施形態では、対象媒体は、(図54に示すような)流体路4224を通って(図53に示すような)チューブコネクタ4110に流れ込み、(図53に示すような)チューブコネクタ4111において出る。対象媒体の伝導率は、流体路4224内に延在する2つの検知プローブ(図示せず)によって測定され、それら検知プローブのうちの少なくとも一方は、サーミスタ等の温度検知素子を含むように構成されている。対象媒体の伝導率測定値または温度測定値を利用して、血液透析システムに対する有用性のさまざまな情報を求めかつ/または相関させることができる。たとえば、位置4705における温度測定値および伝導率測定値は、対象媒体の温度、伝導率、および相関により組成が、対象媒体が透析装置4707、したがって患者に達する前に許容範囲内にあるか否かを判断するさらなる安全点検として使用することができる。いくつかの実施形態では、温度測定値および/または伝導率測定値が所定範囲から逸脱するかまたは所定測定値から所定量を超えて逸脱する場合、血液透析システムに対して警告することができる。
本明細書に記載するさまざまな実施形態に対して、カセットは、プラスチックおよび金属を含むあらゆる材料から作製することができる。プラスチックは、可撓性プラスチック、剛性プラスチック、半可撓性プラスチック、半剛性プラスチック、またはこれらのうちのいずれかの組合せであり得る。これらの実施形態のうちのいくつかでは、カセットは、1つまたは複数の熱ウェルを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の検知プローブおよび/またはこうした対象媒体の1つまたは複数の特性に関する情報を転送する1つまたは複数の他の装置が、対象媒体と直接接触している。いくつかの実施形態では、カセットは、流量および圧力を有する流体を保持するように設計されている。他の実施形態では、カセットの1つまたは複数の区画は、媒体が流れている場合であっても、大部分が停滞している媒体または導管内に保持された媒体を保持するように設計されている。
いくつかの実施形態では、検知プローブから対象媒体を分離する必要に基づいて、センサ装置を使用することができる。しかしながら、他の実施形態では、検知プローブは、温度、伝導率、および/または対象媒体を直接用いる他の検知に対して使用される。
本発明の別の態様は、概して、本明細書において考察したようなシステムの方法および動作に関する。たとえば、血液透析システムは、プライミングされ、流れが平衡化され、空にされ、空気でパージされ、消毒される等が可能である。
一組の実施形態は、概して、流体によるシステムのプライミングに関する。プライミングされる流体は、最初に、透析液タンク(たとえば、透析液タンク169)に向けられる。その後、図17Aの太い黒線によって示すように、限外ろ過装置73が最初に、流体を透析液タンク169から限外ろ過装置73に押し流し、液体がライン731を出て廃棄物ライン39を通ってドレンに流れるようにすることによって、プライミングされる。限外ろ過装置73に存在するいかなる空気も、自然にプライミングポートまで上昇し、ドレンに押し流される。
次に、図17Bに示すように、平衡回路および方向付け回路のポンプ159が、流体を、限外ろ過装置73を通り、平衡回路を通ってドレンに出るように押し流すことによって、プライミングされる。ポンプ159は、流体を前方に(限外ろ過装置を通してドレンまで)流すことによってプライミングされる。透析装置14に入る空気は、透析装置の頂部まで泡立ち、透析装置出口を通ってドレンに出る。
次に、血流ポンプおよび管が、流体を、血流回路およびエアトラップを通して導管67を介して方向付け回路に戻るように循環させることによって、プライミングされる。図17Cに示すように、流体は、限外ろ過装置および透析装置を通過し、流体を強制的に、エアトラップを通しドレンまで下るように押し流す。エアトラップは、血流回路内を循環している空気を閉じ込め、それをドレンに送る。空気センサが空気の検出を停止する(かつ、いくつかの追加の流体が、安全域としてシステムに通された)とき、プライミングを停止することができる。
別の実施形態の組は、たとえば、システムからさまざまな流体を空にするために、システムに空気を加えることに関する。たとえば、1つの動作では、透析液タンクが空にされる。透析液タンク169の排気口226が開放され、ポンプ159を使用して、空気がポンプ159内で検出される(後述する)まで、透析液タンクからの流体がドレンに送り出される。これを、図19に示す。
いくつかの実施形態では、空気はまた、平衡回路に送り込むことも可能である。これを図20に示す。透析液16の排気口226が開放され、それにより、空気が透析液タンクに入ることができる。ポンプ159を使用して、限外ろ過装置73の外側に空気が送り出される。この空気圧が、限外ろ過装置の外部の流体を内部に移動させ、その後、流体は、透析装置を通ってドレンを下って流れる。この動作中、ポンプ159および限外ろ過装置の外側は空気で充填される。
さらに、図21Aに示すように、空気は、抗凝血剤ポンプ80によって血流回路に引き込むことができる。空気は、最初にポッドポンプ23(図21A)に導入され、その後、ポッドポンプから動脈ライン203に向けられ、ドレン(図21B)を下り、または(透析装置14を介して)静脈ライン204に向けられドレン(図21C)を下ることができる。
一組の実施形態では、完全性試験が行われる。限外ろ過装置および透析装置は、湿潤すると容易に空気を通さない膜材料を用いて構成することができるため、フィルタを水でプライミングし、その後、フィルタの一方の側に加圧空気を加えることによって、完全性試験を行うことができる。一実施形態では、血流ポンプのうちの1つに空気出口が含まれ、したがって、ポンピングチャンバを用いて、完全性試験に使用するために空気を送り出すことができる。この実施形態は、相対的に大きいポンプの利点を使用する。空気圧は、水のすべてをフィルタを通るように押し流し、空気流は、水が押しのけられると停止する。しかしながら、空気流が継続する場合、膜は、破断し、交換しなければならない。したがって、システムは水でプライミングされる。最初に、混合回路がまず、透析液タンクの前で空気を除去するようにプライミングされる。そして、限外ろ過装置の外側が次にプライミングされ、それは、限外ろ過装置は、外側がプライミングされるまで、平衡回路に水を通さないためである。平衡回路および透析装置が次にプライミングされる。最後に、水は、透析装置にわたって押し流されて血流回路をプライミングする。
混合回路は、最初にポンプ183により水を、ライン281および重炭酸塩源28を通し、その後、ポンプの各々を通し、ライン186を通して透析液タンク169まで押し流すことによって、プライミングされる。透析液タンク169は排気されるため、気泡を通して頂部まで押し流され排気口226から出る空気。空気が透析液タンク169からプライミングされると、タンクは水で充填され、プライミング流は、透析液タンクから限外ろ過装置73を通ってドレンまで続く。これを、図22Aに示す。そして、上述したように、水がプライミングされる(図17を参照)。次に、図23Bに示すように、血流ポッドポンプ23が透析液タンク169からの水で充填され、一方で、図22Cに示すように、平衡ポンプ15は空にされる。
試験は、血流ポンプを用いて、各チャンバ分の水を、透析装置14を横切って平衡ポンプチャンバ15まで押し流すことによって行われ、平衡ポンプチャンバ15は、空になり始め(図22C)、雰囲気に排気され、それにより、透析装置14の透析液側において大気圧で存在する。図22Dを参照されたい。血流回路チャンバの各々は、所定圧力を用いて吐出し、流量を求めるためにストロークの終了が確定される。
別の完全性試験は、限外ろ過装置の流れ試験である。この試験では、透析液タンクは水で充填され、限外ろ過装置は、透析液タンクからの水を、限外ろ過装置を通してライン731から出るように圧送することによって、プライミングされ、水は、限外ろ過装置を通して送り出され、流量を制御し、流れを維持するために必要な吐出圧力をモニタリングする。
別の実施形態の組は、システムの消毒およびリンスに関する。このプロセスは、治療中に蓄積したあらゆる物質を除去し、あらゆる活性化した病原体を死滅させる。通常、熱が使用されるが、場合によっては、消毒剤を加えることができる。水は、透析液タンクを用いて維持され、水が排出される際に必要に応じて補充される。
図23に、再循環流路を示す。この経路に沿った流れは、本質的には連続的であり、導管67を用いて血流回路を方向付け回路に接続する。主流路は、ヒータ72によって加熱され、ヒータ72は、再循環流路内の水温を、たとえば存在する可能性があるあらゆる活性化した病原体を死滅させることができる温度まで上昇させるために使用される。水の大部分は再循環するが、一部はドレンに分流する。ライン48および731は、この例では、適切に消毒されるのを確実にするために開放したまま維持される。さらに、限外ろ過装置73を通る流路は、限外ろ過装置から空気をパージし、かつ/またはこの経路を通して再循環流を提供するように、定期的に選択することができる。温度センサ(たとえば、センサ251および252)を用いて、適切な温度が満たされることを確実にすることができる。こうしたセンサの非限定的な例は、2008年2月27日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる、「センサ装置システム、デバイスおよび方法(Sensor Apparatus Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第12/038,474号明細書に示されている。
一組の実施形態では、混合回路25の原料49は、以下のようにプライミングすることができる。最初に、図24Aに概略的に示すように、水混合ポッドポンプ280が水で充填され、その水は、重炭酸塩ポンプ183を通って後方にかつ重炭酸塩源28の底部に押し流され、それにより、重炭酸塩源28の頂部から、重炭酸塩水供給ポンプ282に通じるライン内に、空気が排出される。その結果、重炭酸塩源28内の空気は、重炭酸塩水供給ポンプ282に収集される。図24Bを参照されたい。そして、ポンプ282内の空気は、水混合ポンプ280に搬送され、水混合ポンプ280は、空気をライン186内に透析液タンク169に向かって移動させる。図24Dを参照されたい。水混合ポンプ280によって押し流される空気は、透析液タンク169内に移動することができ、そこで、透析液タンク169の排気口226は、開放されてシステムから空気を放出し、または、空気を、好適な弁制御によってドレン31に向かって押し流すことができる。図3Aを参照されたい。水を、水混合ポンプ280から重炭酸塩ポンプ183、重炭酸塩源28、重炭酸塩水供給ポンプ282を通して水混合ポンプ280まで移動させるプロセスを必要な回数繰り返すことにより、流路から空気を除去し、必要に応じて重炭酸塩供給部28を完全に湿潤させることができる。また、水混合ポンプ280からの空気およびプライミング液を、透析液タンク169の代わりにドレン31に押し込むことにより、システムは、不適切に混合された重炭酸塩/水物質をタンク169に加えるのを回避することができる。
重炭酸塩供給部28および関連する回路(重炭酸塩経路)が逆にプライミングされて、重炭酸塩経路を前方向にプライミングすることができる。すなわち、重炭酸塩水供給ポンプ280によって、あらゆる残っている空気を除去し、透析液を調製するために好適な濃度の重炭酸塩を水混合ポンプ280に提供するように重炭酸塩経路を準備するために、必要に応じて、重炭酸塩ポンプ183を通して重炭酸塩源28内に、かつ水混合ポンプ280に、水を移動させることができる。重炭酸塩経路の前方プライミング中に水混合ポンプ280に吐出される液体は、ポンプ280によってドレン31に向けることができる。
酸経路、すなわち、酸供給部29および酸ポンプ184を含む回路部分をプライミングするために、酸ポンプ184を操作して、液体を水混合ポンプ280に吐出することができ、水混合ポンプ280は、その後、プラミング液をドレン31に向けることができる。図24Cを参照されたい。酸経路が好適にプライミングされるまで、必要に応じてこれを繰り返すことができる。典型的には、酸供給部29は、(重炭酸塩供給部28とは異なり)使用の準備ができている液体形態となるが、そうでない場合、水混合ポンプ280を用いて、水を逆方向に、酸ポンプ184を通って酸供給部29内に向けることができる。(あらゆる必要な排気は、酸供給部29において、たとえば酸容器の弁または開口部を通して行うことができる。)プライミングが完了した後、水混合ポンプ280は、水を、ライン186を通してドレン31に向けて、ライン186およびあらゆる残りの空気または他の物質の他の成分を除去することができる。
酸および重炭酸塩溶液(および、別個の塩化ナトリウム源が存在する場合は、塩化ナトリウム溶液)は、その後、透析液を調製するために入ってくる水とともに計量される。センサ178および179を使用して、各原料の水との部分的混合物が正確であることが確実になる。仕様を満たしていない透析液はドレンに空けられ、適切な透析液は透析液タンク14に送り出される。
図7A、図7B、図24A〜図24D、図46D〜図46Eおよび図51Bに関連して上述したように、本発明は、いくつかの実施形態において、水供給部と、濃縮した溶質源の1つまたは複数の供給部(たとえば、重炭酸塩源28および酸源29)とから、透析液を「システム内で」作成するように構成された方法および制御システムを提供する。濃度に関する仕様が許容可能な品質基準内にあり続けることを確実にするために、透析液のこうした方法漸進的な組立てを実施し制御する例示的な実施形態について後述する。
図7Aの混合回路25を参照すると、いくつかの実施形態では、本発明の血液透析システムは、(たとえば酸原液供給部29からの)標準的な市販の45X酸原液を使用して、血液透析治療用の透析液を作成するように構成されている。他の実施形態では、本明細書に記載する方法を用いて、種々の他の標準的なまたは個別の方法のうちのいずれかを実施することができる。重炭酸塩ナトリウムが、フロースルーカートリッジ28(たとえば、バクスターアルトラカート(Baxter Altracart)カートリッジまたは同様のもの)から引き出される。本質的に純粋な水が、このカートリッジの頂部に送り込まれ、濃縮溶液が底部から引き出される。濃縮溶液の濃度は、カートリッジの温度によって変化し、カートリッジが使用されている間に発生する粉末を通るあらゆるチャネリングによっても影響を受ける可能性がある。
水は、水混合ポンプ180内に引き込まれる。濃縮重炭酸塩ナトリウム溶液は、ポンプ180のチャンバが充填されている際に、重炭酸塩ポンプ183によって水流に計量しながら供給される。これにより、水/重炭酸塩混合物に対して、ポンピングチャンバ内で混合する機会が与えられる。この水および重炭酸塩ナトリウムの部分的混合物は、ポンプ180から、伝導率の測定のために伝導率測定セル178を通るように送り出される。一実施形態では、この部分的混合物の目標伝導率は、および3.7mS/cmであり、そのため、こうした実施形態では、伝導率測定セル178は、この値の近くの測定値に最適化することができる。そして、酸ポンプ184は、酸濃縮溶液(たとえば、45X酸原液)を部分的混合物内に計量しながら供給する。この流れは、混合チャンバ189を通り、その後、伝導率測定セル179まで進む。一実施形態において目標透析液濃度をもたらす最終的な伝導率はおよそ14mS/cmであり、そのため、こうした実施形態に対して、透析液伝導率を測定する伝導率測定セル(たとえば、セル179および253(たとえば、図6を参照))は、この値の近くの測定値に最適化することができる。
いくつかの実施形態では、伝導率測定セル178および179は、均質でない可能性がある(これらのセンサを通過する際に溶液の濃度に著しい変動が依然としてある可能性がある)溶液を測定して、伝導率に対してより正確な値を得るため、複数の個別の測定値が取得され、溶液が伝導率測定セルを通って流れている間にのみ、これらの測定値は、高速(たとえば、200Hz)で平均される。結果としての平均された測定値は、容器内に溶液を収集し、伝導率を測定する前にそれを完全に混合することによって得られる測定値と十分に相関することが分かった。
これらの溶液の伝導率は、温度に大きく依存する、たとえば、1℃当たり約2%変化する可能性があるため、いくつかの実施形態では、伝導率測定の精度を向上させるために、温度補正を適用することができる。場合によっては、測定された伝導率の変化に対する温度変化の影響は略線形であるが、場合によっては、非線形特性が、伝導率対温度データの2次または3次曲線当てはめが温度補正を行うことに関して著しい利益を提供することができるように十分に有効である可能性がある。いくつかの実施形態では、2つの伝導率対温度曲線が利用され、1つは、重炭酸塩ナトリウム溶液の伝導率測定の補正のためであり、もう1つは、最終的な透析液の伝導率測定のためのものである。これらの補正は、温度に基づいて選択される乗算器として表わすことができる。慣例により、伝導率は、通常、25℃で表される。したがって、補正曲線は、異なる測定温度で1.0以外の補正係数を用いて、25℃に対して1.0の値をもたらすように構成することができる。重炭酸塩溶液補正用の曲線および透析液補正用の曲線から導出される補正係数は、組成が異なるためにわずかに異なる可能性があるが、それらはともに、典型的な実施形態では、5℃での約0.6から40℃での約1.3まで変化する。
伝導率は、溶液におけるイオン濃度の強関数であるため、最初の溶液における重炭酸塩ナトリウムの量と、最終的な溶液における塩化ナトリウムおよび他のイオンの量とは、いくつかの実施形態では、望ましい場合、伝導率測定値から推論するかまたは直接求めることができる。温度補正と同様に、測定された伝導率と溶質濃度との間の関係は、略線形である可能性があるが、非線形特性が、補正基準として使用する伝導率対濃度データの2次または3次曲線当てはめが、測定された伝導率データから濃度を求めるのに著しい利益を提供することができるほど十分に有効である場合がある。
最終的な透析液における重炭酸塩ナトリウムの所望の量は、グラム/リットル(または等価に、ミリグラム/ミリリットル)で指定することができる。伝導率から組成を計算するために、センサ178によって測定された伝導率測定値は、最初に、上述したように温度に対して補正することができ、その後、上述した伝導率対濃度データ曲線当てはめを用いて、組成を計算することができる。伝導率データから実際の濃度を求めることは、いくつかの実施形態に対して、少なくとも2つの理由で有益である可能性がある。すなわち、組成が濃度に対して正確な単位になり、それによりコントローラは関連測定値に焦点を合わせることができ、かつ、ポンプストローク毎に組成の予測が容易になり、それにより、(より詳細に後述するように)規格外透析液が透析液タンク169に加えられるのを防止する安全点検を容易にすることができる。酸原液は複数の原料を含み、塩化ナトリウムは、追加の伝導率に対して主な要因である。重炭酸塩ナトリウムが測定セル179内にすでにあるため、加えられた酸原液の寄与のみを求めるための関連する伝導率測定値は、センサ189によって測定される伝導率と、センサ178によって測定される重炭酸塩混合物の伝導率との間の差である。
いくつかの実施形態では、透析液の混合および生成を制御する制御システムは、後述するように構成し実施することができる。内部制御ループは、濃縮溶液を混合流内に(たとえば、混合チャンバ189に)吐出するようにポンプを動作させるように構成することができる。この制御レベルでは、目標混合割合は、各水ポンプストロークに対して加えられる各原液のポンプストロークの目標数で指定することができる。各水ポンプ180ストロークに対して、定量ポンプ183、184は、それぞれの目標数に最も近い整数値のストロークを吐出し、残りの部分を次の水ポンプストロークに繰り越すことができる。これにより、制御システムは、比が整数として実施されても、比を浮動小数点量として調整することができる。
いくつかの実施形態では、制御システムは、伝導率測定値が、透析液濃度品質制御基準を満たす、たとえば、処方の周辺の許容可能な濃度の範囲内にある透析液を作成するための一次誘導関数として使用されるように構成することができる。濃縮原料の濃度は、治療中に幾分か変化する可能性がある。水ポンプ180によって吐出されるストローク容量は、ある程度ストローク毎に変化する可能性がある。伝導率フィードバックを使用することによる容量計量により、これらの影響が軽減され、透析液が、可能な限りまたは望ましいように指定された組成に近い状態で現れることを確実にすることができる。上述したように入力測定値として求められた重炭酸塩ナトリウムの部分的混合物の組成を使用し、後続する透析液混合のために水ポンプのストローク毎の重炭酸塩ポンプのストロークの数を出力として求める、制御プロトコル全体の重炭酸塩制御ループを提供することができる。同様に、酸原液制御ループは、入力として(上述したように)酸を加える結果としての測定された伝導率変化と、出力として後続する透析液混合のために水ポンプのストローク毎の酸ポンプのストロークの数とを使用するように構成することができる。
上述した制御ループは、透析液組成に影響を与える可能性がある、ポンプ吐出容量、反応物濃度等の定期的な変動を補正し処理するように構成することができる。実質的に規格外の透析液をもたらす可能性がある著しい妨害および特別な環境を軽減/考慮するために、さらなる安全機能をシステム設計および/または制御システムに構成することができる。タンクに保管される透析液は、患者の安全を確保するために目標組成の所定パーセントの範囲内でなければならず、たとえば、一実施形態では、透析液は、常に、処方/目標組成の2.5%の範囲内で維持される。たとえば、水ポンプ180の1回のフルストロークが50mlであり、かつ透析液タンク169内に維持される透析液の最低容量が1リットルである(すなわち、こうした場合のポンプストローク容量は、タンク内の最低1リットル容量の1/20すなわち5%である)例示的な実施形態に対するこうした安全基準では、タンクに意図せずに加えられた純水の1ストロークにより、5%の規格外透析液組成を引き出す可能性がある。こうしたことが発生しないように、伝導率センサ179と透析液タンクのすぐ上流に配置された弁(たとえば、図6の弁147)との間の管ホールドアップ容量は、水混合ポンプ180の完全なストロークを保持するようなサイズである。概して、あらゆるストロークの測定された組成が、タンクに加えられると、タンク内の透析液の濃度の許容可能性を危うくするのに十分規格外であると判断された場合、そのストロークはドレン(たとえば、図6の31)に分流する。
1つの特定の例では、システムにより、以下の3つの安全点検が行われ、タンクに新たに混合された透析液を加える前に、それらのすべてが合格しなければならない。(1)センサ179によって測定される伝導率によって求められるように、測定されているストロークボーラスに対する混合組成は、水および加えられた原液の容量に対して目標ストローク組成におよそ一致しなければならず、すなわち、上述したように、いくつかの実施形態では、これらの量はフルストロークに量子化されるため、所与のストロークの目標組成は、透析液タンク内の透析液の処方された組成と著しく異なる可能性があり、(2)先行する20回の混合ストロークの移動平均組成(50mlのポンプストローク容量に対して1リットル)は、目標処方透析液組成の許容可能な割合の範囲内、たとえば、2%の範囲内でなければならず、(3)新たに混合されたがまだストロークボーラスが加えられていないタンク内の透析液の計算された/予想された組成は、目標処方透析液組成の許容可能な割合の範囲内、たとえば、2%の範囲内でなければならない。
制御および安全システムはまた、いくつかの実施形態では、所定のユーザエラーによってもたらされる危険を防止するように構成することも可能である。たとえば、混合された透析液における溶質濃度を求めるためのパラメータとして伝導率が使用される実施形態では、ユーザは、治療に必要でありかつシステムが予測する適切な酸原液(たとえば、45X酸原液)を収容していない容器を使用し、こうした不正確な反応物で治療を開始しようとする危険がある。無制限の伝導率フィードバックシステムでは、混合回路に引き込まれるいかなる材料も、水と混合されて透析液に対して予測された伝導率をもたらすという重大な危険がある。これが発生する可能性を最小限にするために、制御システムは、水/酸凝縮液混合比に対して事前設定限界を強制するように構成することができる。ポンプ180および酸原液ポンプ184の両方は、好ましい実施形態では、適度に正確な容積型ポンプである。水/酸凝縮液混合比に対する事前設定限界は、酸原液が治療プロトコルに必要なもの(たとえば、標準45X原液)ではないことが明らかである場合に、治療を禁止する一方で、正常な変動に直面した場合は治療を促進するように選択することができる。
別の実施形態の組では、抗凝血剤ポンプがプライミングされる。ポンプをプライミングすることにより、ヘパリンポンプおよび流路から空気が除去され、抗凝血剤バイアル内の圧力が許容可能であることが確実になる。抗凝血剤ポンプは、ポンプチャンバ内の空気がバイアル内に流れ込むように設計することができる。抗凝血剤ポンプ流体弁のすべてを閉鎖し、外側容積を測定し、FMチャンバを真空にし、弁を開放してバイアルからポンピングチャンバ内に引き込み、外側容積を(再度)測定し、FMSチャンバに圧力を充填し、弁を開放して流体をバイアル内に戻るように押し流し、その後、外側容積を(再度)測定することによって、試験が行われる。流体流からもたらされる外側容積の変化は、ポンピングチャンバの既知の容積に対応するべきである。ポンピングチャンバがバイアルから充填することができない場合、バイアル内の圧力は低すぎ、空気を送り込まなければならない。逆に、ポンピングチャンバが中身をバイアル内に空けることができない場合、バイアル内の圧力は高すぎ、抗凝血剤の一部をバイアルから送り出さなければならない。これらの試験中にバイアルから送り出される抗凝血剤は、たとえばドレンを通して廃棄することができる。
さらに別の実施形態の組では、システムは、患者が接続されていない間に、透析液によってリンスされる。これは、処置の前または後に行うことができる。処置の前に、透析液内に滅菌剤が蓄積しないように、透析液を移動させ、一部をドレンに送ることができる。処置後、この動作は、血液路を透析液でリンスして、いかなる残留血液もドレンに押し出す。この動作で使用される流路は、上述したように水で使用される流路と同様である。
酸原液は、混合チャンバから送り出すことができる。ポンプ184は、ポッドポンプ280がポンプ184および酸源29から酸を引き出し、ライン186で混合されドレンに送られるようにすることができるように、起動される。同様に、図25に示すように、重炭酸塩は、混合チャンバから送り出すことができる。ポンプ183を使用して、重炭酸塩源28から水が引き出され、ポッドポンプ280を使用して、水がライン186内にドレンまで通される。
さらに別の実施形態の組では、透析液プライムは、患者にプライミング流体を与えないように、血流回路から除去される。図26Aおよび図26Bは、平衡ポンプチャンバの各々を出てドレンに排出されている流体を示す。次に、透析装置14の透析液側が閉鎖され、一方で、血液は患者から血流路内に引き込まれる(図26C)。そして、患者接続部が塞がれ、一方で、血流ポンプチャンバ23が、透析装置を横切ってプライミング流体を平衡回路まで押し流す(図26Dおよび図26E)。そして、この流体は、上述したように、ドレンまで押し流される。この動作は、十分なプライミング流体が除去されるまで必要に応じて繰り返すことができる。その後、平衡ポンプは、新鮮透析液で再充填され、図26Fに示すように、患者接続部は塞がれたままにする。
さらに別の実施形態の組では、抗凝血剤のボーラスを患者に送達することができる。最初に、図27Aに示すように、抗凝血剤のボーラスが、バイアル(または他の抗凝血剤供給部)からポンプ13の1つのチャンバに送り込まれる。抗凝血剤ポンプは、バイアルに空気を送り込むこととバイアルから抗凝血剤を送り出すことと交互に行い、それにより、圧力を比較的一定に維持する。そして、残りの容積は、透析液で充填される(図27B)。そして、図27Bに示すように、結合された流体は動脈ライン203を下って患者まで送達される。場合によっては、同じポンプチャンバを再び透析液で再充填することができ(図27Bを参照)、その容量もまた患者に送達することができ、それにより、抗凝血剤のすべてが適切に送達されることが確実になる。
動脈ボーラス送達中に、エアインライン検出器33aによって空気が検出された場合、ボーラスは、静脈ライン204を介して送達することができる(図89を参照)。動脈ラインで検出された空気は、ヘパリンボーラスとともにポンプチャンバ13内に引き戻すことができる。ヘパリンボーラスは、次に、ポンプ13内のチャンバが収容するヘパリンを透析装置14に向かって送達し、それに続き、ポンプ13の第2チャンバ分を透析装置に向かって送達することにより、患者に送ることができる。そして、ヘパリンボーラスおよび透析液は、空気を除去するためにエアトラップ19を通り、静脈エアインライン検出器33bを通過して患者まで流れる。ポンプ13から静脈ライン204を介する患者への通路は、相対的にホールドアップ容量が大きい。ヘパリンボーラスを患者内に押し流すことができ、追加の透析液は、外部透析液ポンプ159から透析装置14を通して送達される。
さらに別の実施形態の組では、システムは、プッシュプル式血液透析ろ過法を行うことができる。こうした場合、血流ポンプ13および平衡ポンプ15を同期させて、透析装置を横切って流体を往復させることができる。血液透析ろ過法では、静水圧を使用して、水および溶質が血流回路から平衡回路まで透析装置の膜を横切って押し流され、そこで排出される。いかなる理論によっても拘束されないが、溶質が大きいほど、血液透析ろ過法における対流力のために、使用済み透析液により容易に搬送されると考えられる。
一組の実施形態では、溶液注入を用いて、患者に流体を送達することができる。図28に示すように、方向付け回路のポンプ159を使用して、流体が透析装置14を横切って血流回路内に押し流され、これにより、流体(たとえば、透析液)が患者に送達される。
別の実施形態の組によれば、繰り返し使用された後、透析装置の膜壁に化合物が付着し蓄積する結果として、透析装置は、その効率、またはさらには機能する能力を完全に喪失する可能性がある。透析装置のクリアランスを求めるあらゆる標準的な尺度を使用することができる。しかしながら、後述するように、いくつかの実施形態では、透析装置のクリアランスを求める本発明の方法を採用することができる。
一態様では、本発明は、血液透析システムにおける透析装置のクリアランスを測定して、透析装置がそれ以上使用されるべきではない点まで劣化したか否かを判断する方法を含む。透析装置のクリアランスを求める本発明の方法について、本明細書では、本発明の他の態様に関連して本明細書に記載した、例示した血液処置システムおよび方法に関して説明するが、透析装置クリアランスの尺度を求める本発明の方法は、上述したシステムでのみ使用するようには限定されず、膜ベースの透析装置を使用する本質的にあらゆる血液透析システムで採用することができる。
また、透析装置の測定された小分子(たとえば、イオン)クリアランスに関連する透析装置クリアランスパラメータを求め、こうしたデータから透析装置の等価の尿素クリアランスを求める、本発明のデータ整理方法についても後述する。いくつかの実施形態では、透析装置クリアランス測定値は、透析装置の透析液側から透析装置の血液側を分離する半透膜を通る溶液内のイオンの通過を測定することによって求められる。好都合には、こうした方法のために使用される溶液内のイオンは、処置プロトコルのためにシステムの動作中に透析液を形成するために使用される酸原液源27に収容された酸原液に存在するものと同じであり得る。後述したもの等、いくつかの実施形態では、酸原液源27は、透析膜の通過が確定されるイオンのための供給源として使用される。酸原液は、典型的には、処置に使用される透析液のものより数倍(たとえば、40倍〜45倍)濃縮された濃度で電解質、NaCl、CaClおよび他の塩の水溶液を含む。Na+およびCl−は、透析装置クリアランスを求める本明細書に記載する方法で行われる測定に寄与する、溶液内の主なイオンであるが、後述する典型的な実施形態では、測定されるのは、総イオンクリアランスである。他の実施形態では、Na+等の所定イオンまたは他のあらゆる選択されたイオンは、望ましい場合は、所定のイオンクリアランスを測定するために個々に溶液に加えることができる。本血液透析システムに関連して使用され、かつ本明細書において具体的に記載しない他の血液透析システムおよび方法でも使用することができる、本発明の透析装置クリアランス測定技法のいくつかの例示的な実施形態について後述する。
いくつかの実施形態では、透析装置膜にどれくらい沈着物が蓄積したか、すなわち、透析装置のクリアランスがどれくらい低下したかを測定する一方法では、透析装置の血液側に気体が押し流され、一方で、透析装置の透析液側に液体が保持される。透析装置内の気体の容量を測定することにより、透析装置で測定される気体の容量に基づいて、透析装置のクリアランスを計算することができる。
別法として、別の実施形態では、本システムの空気圧態様により、以下のようにクリアランスを求めることができる。透析装置膜に沿って圧力差を加え、透析装置の膜を通して液体の流量(すなわち、流速)を測定することによって、圧力差および流量に基づいて、透析装置のクリアランスを相関させ/求めまたは計算することができる。たとえば、相関テーブルまたは数学的関係を含む、相関または事前プログラムされた基準の既知の組に基づいて。たとえば、しかしながら、ルックアップテーブルを使用することができ、または所定の数学的関係も使用することができる。
透析装置のクリアランスはまた、血液チューブプラグバック再循環路におけるかつ/または透析液流路における伝導率プローブを使用して測定することも可能である。処置の後、患者は、血液チューブを再度消毒ポート内に接続する。血液チューブおよび透析装置内の流体は、これらの消毒ポート接続部を通して再循環させることができ、この溶液がこの再循環路内の伝導率測定セルを通過する際に、その溶液の伝導率を測定することができる。この方法のさまざまな実装形態例について、より詳細に後述する。
いくつかの実施形態において透析装置クリアランスを測定するために、透析液路を通して実質的純水を循環させることができ、血液再循環路を通って流れる流体の伝導率を連続してモニタリングすることができる。純水は、濃度勾配および透析装置のクリアランスに比例する割合で、血流回路再循環路内の溶液からイオンを取得する。透析装置のクリアランスは、血流回路再循環路内の溶液の伝導率が変化する割合を測定することによって、かつ/または透析液流路内の溶液の伝導率が変化する割合を測定することにより、求めることができる。
いくつかの実施形態では、透析装置のクリアランスは、一方の側で純水を循環させ、他方の側で透析液を循環させ、伝導率を用いて透析装置を通過する流体の量を測定することによって、測定することができる。
いくつかの実施形態では、有利には、本発明の血液透析システムは、治療処置プロトコルに対してシステムの各使用前にシステムの透析装置の小分子クリアランス(たとえば、イオンクリアランス)を試験するように構成されている。透析装置クリアランス試験は、システムのユーザが、次の治療のために新たな酸および重炭酸塩原液を調製した後に、かつ血液管セットの血液チューブが依然として透析装置の消毒ポート内に(たとえば、血流管が導管67を介して方向付け回路と相互接続されている箇所で(たとえば、図17Cを参照))差し込まれている間、行うことができる。
いくつかの実施形態では、透析装置のクリアランスを測定する方法は、血液透析システムの血流回路/経路を通る1つの液体の流れを生成しながら、透析液流回路/経路を通る第2液体の流れを生成することを含む。いくつかの実施形態では、イオン(または、溶液にイオンをもたらす塩)等の小分子が、血流経路および透析液流経路内の液体のいずれかまたは両方に加えられ、透析膜の一方の側における液体の他方の側に対するイオン強度の時間変化する変化がもたらされる。そして、液体を、透析装置を通るように送り出すことができ、血流路および透析液流路を通って循環する液体のいずれかまたは両方におけるイオンの濃度を示すパラメータを測定して、透析装置のクリアランスを求めることができる。
いくつかのこうした実施形態では、イオンは、液体流経路のうちの1つにのみ(すなわち、血流経路内を流れる液体または透析液流経路内を流れる液体のいずれかに)加えられ、一方で、本質的純水が、最初に、他方の流れ経路に加えられかつそこを循環する。こうした実施形態では、血流経路および透析液流経路のうちのいずれかまたは両方における液体の伝導率の測定値は、イオンが加えられた流路から、最初に本質的純水が充填された流路まで、透析膜を横切るイオンの通過の尺度を提供することができる。伝導率は、透析液クリアランスを求めるために液体流経路における液体のイオン強度の尺度を求めるための好都合な手段であるが、他の実施形態では、イオン濃度の他の尺度を使用することができ、かつ/または、クリアランスの測定のために、イオン種または荷電種であるもの以外の小分子を使用することができる。
いくつかの実施形態では、イオンは、流路のうちの1つに加えられ、こうした流路の液体は、透析装置クリアランスが求められる期間にわたって透析装置を通って流れる液体のイオン強度の変化があるように、透析装置を通して押し流される。より詳細に後述するように、いくつかのこうした実施形態では、伝導率の測定および透析装置のクリアランスの確定を容易にするために、こうした流路を通って流れるイオン強度が相対的に高い液体の1つまたは複数のボーラスまたはパルスを生成するために、システムのこうした流路に供給される水に対して、濃縮イオンまたは塩含有溶液を1つまたは複数のパルスまたはボーラスで加えることができる。
いくつかの実施形態では、たとえば、高イオン強度溶液のボーラスまたはパルス等の変化がシステムの流路に加えられる、すぐ上に記載したものに対して、こうした流路を、非循環式であり、透析装置を一回通過するように構成することが望ましい場合がある。いくつかのこうした実施形態では、透析液膜の他方の側と流体連通している流路が連続した再循環式であることがさらに有利である可能性がある。たとえば、1つのこうした実施形態では、透析液流路は、高イオン強度溶液の1つまたは複数のパルスが(たとえば、酸原液源によって)加えられる経路であり、さらに詳細に後述するように、透析液流経路は、透析装置を通る貫流用に構成され、一方で、血流回路は、透析装置の血液側を通る液体の連続再循環用に構成され、最初は本質的純水によってプライミングされる。
有利には、時間によるイオン強度の変化が、クリアランスの測定中に透析装置の少なくとも一方の側を流れる液体にもたらされるいくつかの実施形態において、かつ特に、一方の流路が非再循環式であるように構成される一方、透析装置膜の反対側と連通している流路が連続再循環式であるように構成されている実施形態では、透析装置内で以下のような状態が発生する。すなわち、透析膜の一方の側の他方の側に対する流体のイオン強度が、時間に対して大きさが変化し、それにより、いくつかの実施形態において、透析液膜を通るイオンの通過が、試験の所定期間中に、透析液流経路から膜を横切って血液流経路まで移動し、一方で、試験の他の期間中は、血流経路から透析液膜を横切って透析液流経路まで移動する。
上述したように、かつより詳細に後述するように、透析装置膜の小分子(たとえば、イオン)クリアランスを測定する、好都合であるが排他的な手段は、透析液クリアランス測定の過程の間、透析液流経路および血流経路を流れる液体流の一方または両方の伝導率を測定することによってもたらされる。たとえば図3A〜図3Bに例示したような本透析システムの実施形態に関連して採用する具体的な例について以下に述べる。この例示的な実施形態では、伝導率測定は、透析液流経路を通って流れる液体と血液流経路を通って流れる液体との両方に対して行われ、伝導率測定データの両セットが、透析液クリアランスを求めるために使用される。しかしながら、代替実施形態では、伝導率は、別法として、流体経路のうちの一方のみに対して測定することができ、かつ/または図3A〜図3Bおよび図81に示すシステムに例示するものとは異なる流体回路の点において、伝導率の複数の測定を行うことができる。伝導率測定点の位置および数により、試験中に透析膜を横切るイオンの通過からもたらされる伝導率の変化を検出することができる限り、こうした測定の構成は、透析装置クリアランスの尺度を取得するために使用することができる。たとえば、図81を参照すると、後述する透析装置クリアランスを求める所定の例示的なプロトコルでは、透析システムの血液側流れ経路を流れる液体の伝導率は、伝導率プローブ8002によって点4703において測定され、一方で、透析液流経路を流れる液体の伝導率は、伝導率プローブ8004により点4705において測定される。代替実施形態では、1回または数回の伝導率測定を行うことができ、かつ/または伝導率プローブは異なるように位置決めすることができる。たとえば、1つの代替実施形態では、血液側回路で伝導率プローブ8002を使用する代りに、透析装置4707の下流に配置された透析液流回路の追加の伝導率プローブを使用して、透析装置4707に入りかつ出る液体のイオン濃度を測定することができ、それにより、試験中に透析装置膜を通過するイオンの尺度が提供される。
以下は、本発明による本発明の伝導率ベースの透析装置クリアランス試験の1つの実施形態の説明である。図81を参照し、図81は、太線で強調表示されている透析装置クリアランス試験を行うために使用される設定に対応する流体ラインおよび機器とともに、図3Bの透析システムの実施形態を再現している。図において、透析液流経路は実線で示されており、血流経路は破線で示されている。要約すると、本例では、システムの流れ経路は、最初に、図示するように位置4703において再循環のために相互接続されている血液セット全体を通して、本質的純水を用いてプライミングされる。透析液流回路および血流回路が、透析処置プロトコル中に使用されるもの(たとえば、いくつかの実施形態では、約250ml/分〜500ml/分および1つの特定の例では、約350ml/分)と同様であるように選択することができる、所定流量で流れている液体を収容する間に、試験が行われる。いくつかの実施形態では、透析液流回路を通る液体の流量は、血液流回路内を再循環している流量と本質的で同じであるように維持される。試験中、血流経路内の液体の伝導率は、伝導率プローブ8002を用いて測定され、一方で、透析液流路を流れている液体の伝導率は、伝導率プローブ8004を用いて測定される。試験中、より詳細に後述するように、混合回路(たとえば、図7Aを参照)によって相対的に伝導率の高い透析液の1つまたは複数のパルスまたはボーラスが生成され、透析液流回路を通して送り込まれる液体に加えられ、透析装置4707の膜を横切る血液側へのイオンの移動により、血流回路を通って流れる相対的に伝導率の高い流体の対応するパルスがもたらされる。パルスの通過後、液体の伝導率は、より低い値に向かって戻り、場合によっては、混合回路によって供給される液体が濃縮透析液から水に切り替える際、ゼロに近づく可能性がある。相対的に伝導率の高い液体のパルスの通過中に測定された透析装置の透析液側から血液側へのイオン通過の伝達関数を分析することにより、透析装置の小分子(たとえば、イオン)クリアランスを計算することができる。透析装置クリアランス試験を用いて、透析装置が、いくつかの実施形態において追加の治療セッションに対して適切なクリアランスを提供することができることを検証することができる。伝導率測定値に基づいて透析液クリアランスを測定する本明細書に記載するいくつかの方法は、尿素クリアランスを近似するのに有用であり、それは、透析装置クリアランスを求めかつ表す臨床的に好都合な手段である。より詳細に後述するように、本発明の一態様はまた、伝導率ベースの透析装置クリアランス測定値を推定された尿素クリアランスの確定値に変換する技法およびアルゴリズムも含む。
上述したように、いくつかの実施形態では、処置プロトコルを行う前に、ただしユーザが酸原液および重炭酸塩反応物をシステムに接続した後、透析装置クリアランス試験が行われる。この時点で、システムのラインは、典型的には、残留消毒薬および所定量の空気とともに所定量の水を含む。初期ステップとして、たとえば図17A〜図17Cおよび図22Aに例示したように、かつそれらの図に関連して上述したように、水供給ライン8006(図81を参照)を介してシステムに水を供給して、ラインを水で充填し、透析液流経路および血流経路の両方をプライミングすることができる。
水は、供給入口8006を介して水ポンプ180に供給することができ、外部透析液/方向付け回路に透析液タンク169へ送り出される。透析液タンクは充填され、水は、透析液タンクからポンプ159を介して平衡回路に送り出され、移動中の水は限外ろ過装置73を通過する。そして、水は、図示するように透析装置4707に流れ込み、透析装置を通過して透析装置を充填し、図示するように、透析液流経路の残りの部分を充填する。プライムシーケンスの少なくとも一部の間、ドレン8008を介して透析液経路から出る流れは、水を、強制的に透析装置膜を通り血流経路に流し込むように制限することができる。血流経路は、最初に、水および残留空気で完全にプライミングされ、消毒液が除去されるまで、ドレンに向けることができる。プライミングの終了時、透析装置流経路は、経路に入る液体が、透析液流回路の周囲に単一ループを形成し、ドレン8008を介してシステムから出るように構成される。対照的に、血液流経路は、図示するように、連続的な再循環に対して構成される。代替実施形態では、血流経路は、非循環流に対して構成することができ、一方で、透析液流経路は、再循環流に対して構成されるか、または両流れ経路が、再循環式または非再循環式のいずれかとすることができる。プライミング手順の終了時、ライン、透析液タンク、限外ろ過装置73および透析装置4707のすべてが、水で完全に充填され実質的に空気がない状態であるべきである。
水でプライミングした後、システムは、クリアランス試験を行うように準備することができる。いくつかの実施形態では、透析液側流体に加えられる高伝導率パルスの希釈の程度を低減させるために、透析液タンク169が空にされ(たとえば、図19およびそれを行うプロセスに対する関連する考察を参照)、その後、水によって部分的にのみ再充填され、それにより、試験を行うために十分であるが、高濃度パルスを望ましくない程度まで希釈するほどではない水を収容し、たとえば、透析液タンク169が約2リットルの容量を有する実施形態では、それは、この段階で100ミリリットルから数100ミリリットルの水で充填することができる。測定を行う前に、限外ろ過装置73を事前プライミングするために、図19に示すように、この液体のわずかな部分をドレンに送り込むことができる。
試験を行うために、上述したように、血流経路は、連続的な再循環に対して構成され、透析液経路は、ドレンまで一度送り出すように構成されている。血流経路流量が透析液流経路流量と一致するいくつかの実施形態では、システム内の血液側回路および透析液側回路で動作しているポンプの各々(たとえば、ポンプ180、159、161、162および23)は、一斉に動作して、透析装置4707の透析液側および血液側に所望の一致した流量を提供する。高濃度透析液のボーラス/パルスを生成するために、水ポンプ180のいくつかのストローク中、酸源29から酸は、上述した酸ポンプ184を介して透析液流経路に送り込まれる。たとえば、1つの特定の実施形態では、酸ポンプ184は、水ポンプ181を介して供給される水の20〜40回のストローク毎に、酸原液の2〜3回のフルストロークを供給する。
いくつかの実施形態では、血液流経路内の再循環流の流れ方向は、透析液流路内の液体の流れ方向に対して逆流である。他の実施形態では、流れは、並流するように循環させることができる。混合回路によって形成される高伝導率液のボーラス/パルスは、外部透析液/方向付け回路に進んで部分的に充填された透析液タンク169内に進み、そこから透析装置4707を通るように送り出される。試験中の透析液側経路および血液側経路を通る液体の送出し中、流体の動きをもたらすために利用される上述したポンプの各ポンプストローク中、血液側伝導率プローブ8002および透析液側伝導率プローブ8004によって、複数の伝導率測定を行うことができ、各ポンプストロークに対して、複数の伝導率測定値(たとえば、100〜200+測定値)を平均して、特定のポンプストローク数に対して平均伝導率を生成することができる。こうした測定は、試験の過程の一部またはすべての間、行われ続ける。
いくつかの実施形態では、試験は、高伝導率/高イオン強度透析液の単一ボーラス/パルスを、透析液流経路に通すことを含む(こうした試験の結果を、図82に関して後に示し説明する)。しかしながら、他の実施形態では、複数のパルスを加えて、より複雑な伝導率対時間/ポンプストローク数の関数を生成することができる。さらに他の実施形態では、透析液流経路を高濃度透析液でスパイキングする代わりに、透析液流経路内を循環している液体のスパイキングの代わりに、またはそれに加えて、血液側流れ経路に対して濃縮溶液をさらに加えることができる。したがって、望ましい場合は、分析のために、伝導率対時間/ポンプストローク数の多種多様の関数形式を生成することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、伝導率対時間/ポンプストローク数データは、正弦波または他の周期関数の形態をとることができる。
図82に、濃縮透析液の単一ボーラス/パルスが、水を収容している再循環式血流経路に対して、透析液流経路および透析装置に通された、上述した例示的な透析液クリアランス試験によって生成されるデータの例を示す。この図のグラフは、測定された伝導率対ポンプストローク数をプロットしており、それは、測定時間と試験中に透析装置を通過した総容量とに相関する。ポンプストローク数に対する各データ点は、上述したように、試験中に測定された複数の個々の伝導率測定値の平均を表す。伝導率プローブ8004によって測定されるような透析液側液体の伝導率を示すプロットは、線8050によって示され、伝導率プローブ8002によって測定されるような血液側再循環液において測定される伝導率のプロットは、線8052で示されている。
グラフから明らかであるように、透析液側で測定された刺激伝導率に比較して血液側で測定された反応伝導率は、相対的に低い最大伝導率振幅を有すること、および測定時間の遅れ(すなわち、最大伝導率は、後のポンプストローク数において発生する)を特徴とする。データの時間遅れ変位は、図81に示すシステムでは、透析装置膜を横切るイオン移動の動力学によって主にもたらされているのとは対照的に、主にシステムにおけるホールドアップ容量効果によってもたらされると考えられる。他の実施形態では、伝導率プローブ8004および8002の一方または両方は、図示する位相遅れ挙動を低減させるかまたは最小限にするために、透析装置4707により近接して配置することができる。透析液側伝導率測定値と血液側伝導率測定値との振幅の差は、透析液クリアランスに主に関連する係数であると考えられる。いくつかの実施形態では、測定された振幅差、および任意選択的に位相遅れ/位相シフトは、クリアランスの尺度として直接使用することができ、システムの制御回路/ソフトウェアによって、連続した使用に対する透析装置の適性を判断するためのパラメータとして採用することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、より詳細に後述するように、伝達関数に相関しかつ測定された血液側伝導率データを当てはめる数学的モデルを展開することが望ましい場合があり、それにより、データから、システムによって透析装置クリアランスの尺度として使用されるパラメータを求めるために利用するかまたはさらに操作することができる単一の、任意選択的に無次元パラメータを導出することができる。データの関数形式と当てはめパラメータの所望の数およびタイプに応じて、当業者には、データを当てはめ、透析装置クリアランスを示すパラメータを導出するために、非常に多種多様の統計的かつ 数学的データ当てはめプロトコルおよびアルゴリズムを使用することができる可能性があることが、当業者には明らかとなろう。しかしながら、いくつかの実施形態では、本発明の方法およびプロトコルを用いて、無次元イオンクリアランスを表す単一の係数Kが導出され、そのパラメータは、同じ透析装置に対して測定された尿素クリアランスに実質的に線形に関連する。いくつかのこうした実施形態では、モデルは、重み付け関数に基づくことができ、式0において以下に示す関数形式を有することができる。
Model[i]=(1−K)*Average(Model[i−n:i−1])+K*CondDialysate[i−m](式0)
上記式において、Kは、透析装置膜のイオンクリアランスを示す無次元当てはめ定数である。iは、選択された時間間隔(たとえば、ポンプストローク数)であり、Model[i]は、(図82において曲線8054としてプロットされている)時間間隔iで血流経路液において測定された伝導率の計算された値であり、Average(Model[i−n:i−1])は、i−nからi−1までの間隔の範囲にわたって求められるModel[i]の先行する値の平均値であり、CondDialysate[i−m]は、間隔iの前の時間m間隔で求められる透析液側流体の伝導率の測定値(たとえば、上述したような測定された伝導率の値の平均、特定のポンプストローク数)であり、そこで、nは2以上であり、mは0以上である。Kは、試験された測定間隔の範囲にわたって、Model[i]に対する式をCondBloodSide[i]データ(すなわち、曲線8052)に当てはめることによって求められる。(K*CondDialysate[i−m])によって示される式の部分は、上述した位相シフト挙動による補正を表し、mの値は、測定された透析液側伝導率8050曲線の位相が、測定された血液側伝導率曲線8052の位相とおよそ位置合せされるように選択することができる。図82に示す図示するデータの場合、mは、この目的で、約7であるように選択することができる。いくつかの実施形態では、nは、mより大きいように選択される。1つの特定の実施形態では、n=m+1である。いくつかの実施形態では、測定されたポンプストローク数全体にわたるデータを、モデルを当てはめるために利用することができるが、いくつかの実施形態では、最大ピーク振幅をひとまとめにするデータ(たとえば、図82に示すグラフにおいて約30と約45との間のポンプストローク数に対するデータ)を当てはめることのみが必要であるかまたは望ましい場合がある。
式DC−1において上に示したモデル形式は、いくつかの実施形態では、分析されるデータの範囲(すなわち、曲線8052によって表されるデータ)にわたって、モデル計算Model[i]と血液側液体に対する伝導率の測定値との間の全誤差を望ましい程度まで最小限にするKの値を求めることによって、データに当てはめられる。上述したように、Kに対して最適な値を求めるために使用することができる、複数の統計的かつ曲線当てはめアルゴリズムがある。1つの特定の方法では、Kに対する一対のモデル推定値が計算され、2つのモデル推定値のうちのいずれが、観察されたデータ点とモデルとの間により低い誤差をもたらすか求められる、反復プロセスが使用される。たとえば、モデル推定値の第1対は、K=0.0の値およびK=1.0の値を使用することができる。次に、実際の測定されたデータ点に近い方のモデルを使用して、Kのあり得る値の範囲が狭められる。したがって、K=1.0の値によってより優れた当てはめが得られる場合、モデル推定値の次の組は、K=0.5およびK=1.0であり得る。この推定値の組が、Kの最適値が0.5に近い方であることを示す場合、モデル推定値の次の組は、K=0.5およびK=0.75を使用することができる。選択されたKの2つの推定値が、たとえば3つの少数位内で互いに等しくなるまで、この処理を繰り返すことができる。
本発明の一態様では、係数K(イオンクリアランスに関連する無次元クリアランス係数)が、透析装置の尿素クリアランスに本質的に線形に関連すると判断された。この線形関係を用いて、クリアランス係数Kを、特定の透析装置に対する血液流量および透析液流量の所望の組合せに対する推定された尿素クリアランスに変換することができる。図83に示すグラフは、X軸における上述したように求められるクリアランス係数Kを、尿素クリアランスを定量的に測定するために使用される市販の装置(バクスター(Baxter)モデル番号(ここにモデル番号が挿入される)〜(ここにモデル番号が挿入される))を使用して試験される同じ透析装置の測定された尿素クリアランスに対して比較するデータを示す。この実質的に線形の関係を用いて、無次元伝導率ベースのクリアランス係数Kを推定された尿素クリアランスに変換することができる。これは、臨床医および患者が、典型的には、尿素クリアランスの概念を理解しているため、有利であり得る。そして、システムコントローラおよびソフトウェアは、こうした推定された尿素クリアランスが、利用されている特定のモデルの新たな透析装置に対して臨床医が設定可能な公称尿素クリアランスの割合を下回る場合、ユーザが次の治療の後に透析装置を交換するように提案するように構成することができる。
一組の実施形態では、停電の場合、可能な限り多くの血液を患者に戻すことが望ましい可能性がある。血液透析システムの一実施形態は、圧縮気体を用いて、システムで使用されるさまざまなポンプおよび弁を作動させるため、さらなる実施形態は、停電時にこの圧縮気体を用いてシステム内の血液を患者に戻すように、この圧縮気体を利用する。この処理にしたがって、図29Aを参照すると、透析液は、透析装置14を横切って押し流され、血液流回路10内に存在する血液を患者に返血する。(好ましい実施形態では、圧縮空気である)圧縮気体を用いて、透析装置を横切って透析液を押し流すことができる。弁77が、圧縮空気を解放してこの機能を開始する。この方法は、電源遮断または他の何らかの停電によって、透析装置が、処置の最後に通常採用される方法を用いて患者の血液を返血することが阻止される状況で使用することができる。
圧縮空気を使用して、透析装置14の透析液側の圧力を上昇させ、透析液を、強制的に透析装置を通して血液側まで流し、それにより、患者の血液を患者に押し戻すため、患者または補助する人は、工程をモニタリングして、適切な返血が達成されると、血流回路と患者との間のチューブを締め付ける。
一実施形態では、血液透析システムに、リザーバ70が組み込まれ、リザーバ70は、処置を開始する前に圧縮空気で充填される。このリザーバ70は、手動弁77を介して透析液回路20に接続される。処置が終了するかまたは中止された場合、弁は、患者または補助する人によって開放され、返血工程が開始する。透析装置14の膜は、透析液を通過させるが空気は通過させない。圧縮空気は、患者チューブが締め付けられるか、または透析装置の透析液側が空気で充填されるまで、透析液を押しのける。
別の実施形態では、圧縮空気を収容するリザーバが、透析装置の付属品として設けられる。停電または透析装置のシステム障害により処置が早期に終了した場合、このリザーバが装置の透析液回路に取り付けられ、返血工程を開始することができる。先の実施形態と同様に、返血工程は、患者チューブが締め付けられるか、または透析装置の透析液側が空気で充填されたときに終了する。
図29Bに示すさらに別の実施形態では、空気リザーバ70がシステムに組み込まれ、透析液流体から空気を分離する可撓性隔壁76を備えた流体リザーバ75に取り付けられる。この場合、圧縮空気は、透析液回路に入るのではなく、透析液回路20内の圧力を上昇させるように隔壁76を押す。押しのけられることが可能な透析液の容量は、流体チャンバ75の容積によって決まる。患者チューブが締め付けられたとき、または流体のすべてが排出され、隔壁76が流体チャンバ75の壁に対して底に達したときに、返血工程は終了する。
これらの実施形態のいずれにおいても、システムまたは方法の動作は、透析液装置においてプログラムを実行することにより、処置の間で定期的に検査することができる。試験中、ユーザインタフェースは、ユーザに対して返血工程を作動するように促し、装置は、透析液回路内の圧力をモニタリングして正常な動作を確実にする。
図29Aおよび図29Bに示すシステムでは、血液は、血流ポンプ13によって患者から引き出され、透析装置14を通して押し流され、患者に戻される。これらの構成要素およびそれらを接続する管は合わせて、血流回路10を構成している。血流回路10に収容された血液は、処置が終了するかまたは中止するときに患者に戻されるべきである。
透析液は、透析液ポンプ159によって透析液タンク169から引き出され、透析液を体温まで加温するヒータ72に通される。そして、透析液は、透析液に存在する可能性があるあらゆる病原体および発熱物質を除去する限外ろ過装置73を通って流れる。そして、透析液は、透析装置を通って治療を行い、透析液タンクに戻るように流れる。
バイパス弁74を用いて、透析装置14を透析液回路の残りの部分から隔離することができる。透析装置14を隔離するために、透析液回路20を透析装置に接続する2つの弁が閉鎖され、透析装置の周囲で透析液を分流する弁が開放される。
この返血処置は、透析装置14が隔離されているか否かに関らず使用することができ、処置が終了するかまたは中止したときに使用される。透析液装置は、電源が切られるかまたは動作が停止されるため、ポンプは動作していない。患者が、返血の準備ができると、空気弁77が患者または補助する人によって開放される。圧縮空気リザーバ70内の空気が透析液回路20に向かって流れ、透析装置14の透析液側の圧力を上昇させる。この圧力の上昇は、図29Aに示すように直接、または図29Bに示すように隔壁76を押すことによって間接的に、空気が透析液回路に入るようにすることによって行うことができる。
透析装置の透析液側における空気圧は、幾分かの透析液を、強制的に透析装置14を通って血流回路内に押し流す。この透析液は、血液を押しのけ、血液を患者に返血する。患者または補助する人は、透析装置14および血液チューブを見ることにより、返血工程を観察することができる。透析液は、透析装置で開始し、血液を押しのけて、はるかに清浄であるようにする。このより清浄な溶液は、透析装置から透析装置から患者に向かって進む。それが患者に達すると、血液チューブクランプ71を用いて、管がはさみつけられ、返血工程が終了する。一方のラインが他方のラインより早急に返血する場合、迅速な方のラインを最初に締め付けることができ、低速な方のラインを後に締め付けることができる。
返血が完了し、血液ラインが締め付けられると、患者を透析装置から切り離すことができる。
図29Aに、システムおよび方法の一実施形態の実装形態を示し、それは、透析装置14内に細いチューブを作製するために使用される材料の親水性を利用する。この材料が湿潤しているとき、透析液は通過することができるが、空気は通過することができない。図29Aに示す実施形態が実施される場合、空気は、透析装置14に入ることができるが、血流回路10まで通過することはできない。
いずれの実装形態においても、透析装置14を通過することができる透析液の容量が制限される。この制限は、圧縮空気リザーバ70のサイズ、透析装置14内に収容された透析液の容量、および図7Bに示す実装形態の場合は、流体リザーバ75のサイズによって課される。患者に対して余分な流体を与えすぎることは、治療中に流体を除去する治療上の利点を妨害するため、透析装置に押し流すことができる透析液の容量を制限することは有利である。
別の実施形態では、電源遮断時、透析液を透析液回路から透析装置を通して移動させる空気圧は、通常、膜ポンプに電源を供給し、FMS測定用の圧力源も提供する、加圧空気リザーバから導出することができる。図80に示すように、たとえば、この空気圧源に、透析液タンク169をモニタリングするために使用されるFMS経路170を介してアクセスすることができる。実施形態では、空気圧または真空を、血液透析装置の液体流路内のさまざまなポンプおよび弁に向けるマニホールド弁は、電気的に駆動される。いくつかの実施形態では、血液透析装置の液体流路内の弁は、それら自体、電気的に作動させることができる。電力がない場合、それらは、デフォルトの開放位置または閉鎖位置を有するように選択するかまたは事前設定することができる。たとえば、マニホールド弁のデフォルト位置が閉鎖である場合、その目標物に空気圧(または真空)を伝達することはできない。同様に、マニホールド弁のデフォルト位置が開放である場合、それが接続される圧力源または真空源は、下流のデバイス(膜ベースのポンプ、膜ベースの弁、または別のタイプの弁等)を加圧することができる。液体流路内の流体を直接制御する弁自体が電気的に駆動される場合、弁は、そのそれぞれの流路を閉鎖するかまたは開放するいずれかのデフォルト位置を有するように選択することができる。図80に示す例では、マニホールド弁170aおよびFMS弁170bを、たとえば、デフォルト開放位置を有するように構成することにより、加圧空気タンクからの圧力を、透析液タンク169に伝達することができる。他のさまざまなマニホールド弁を、適切なデフォルト位置に構成することにより、マニホールド弁によって制御される、対応する流路弁は、透析液タンク169から、外部透析液ポンプ回路159、限外ろ過装置73、平衡回路143の一部、最終的に透析装置14までの経路を開放するようにすることができる。したがって、電力がない場合、かつ透析装置14の血流側にインピーダンスがない場合、透析液タンク169からの透析液を、透析装置14まで流すことができ、それにより、血液の返血が可能になる。通常の透析中、制御ソフトウェアは、血液管セット内に存在する血液のすべての返血を可能にするように、透析液タンク169内に十分な透析液が供給されることを確実にすることができる。
代替実施形態では、透析液タンクと透析装置との間の透析液路において流体を直接制御する弁自体が電気的に駆動される場合、それらは、開放デフォルト位置を有するように選択することができる。逆に、透析装置から流体を分流させる経路内で流れを制御する他の弁は、デフォルト閉鎖位置を有するように選択することができる。
たとえば、図80において、適切なマニホールド弁に対するデフォルト構成により、外部透析液ポンプ回路159の入口弁および出口弁171と平衡回路弁172とを、「開放」位置のままにすることができ、透析装置14に流路が提供される。逆に、透析液タンク169の入口フィード弁173aおよび再循環弁173bと、限外ろ過装置73のドレン弁174とは、透析液がドレンに押し流されないように、電力が供給されない状態における「閉鎖」デフォルト位置を有するようにすることができる。さらに、内部透析液ポンプ回路15の入口弁175とバイパスまたは限外ろ過ポンプ回路35の入口弁176とは、電力が供給されていない状態で透析液流が透析装置14からそれらの経路内に入らないように、「閉鎖」デフォルト位置を有するようにすることができる。
制御されない返血を回避するために、血液管セットの動脈供給ラインおよび静脈戻りラインは、電力がないときにデフォルト「閉塞」位置を維持し、通常の透析中に「非閉塞」位置まで移動する、オクルーダ機構によって圧縮することができる。オクルーダは、血液ポンプカセットに達する前の動脈ラインと、透析装置または気泡トラップから出た後の静脈ラインとの両方を同時に閉塞するように配置することができる。好ましい実施形態では、返血が可能になる前に、患者、術者または補助する人は、返血が計画されたときまたは電源遮断に関連する返血が開始されるとき、患者のバスキュラアクセス部位から動脈ラインを引き抜く。好適なコネクタ(針または無針スパイク、ルアーロックコネクタ等)が、動脈ラインの端部に配置され、その後、静脈戻りラインのエアトラップ(エアトラップ19等)に接続される。これは、血液ポンプカセットの頂部または透析装置の頂部において血流路内に捕捉されるいかなる空気も、患者のバスキュラアクセスに向かって不注意で返血されるのを防止するのに役立つ。動脈ラインがエアトラップに接続されると、患者、術者または補助する人は、オクルーダを「非閉塞」位置まで手動で移動させることができ、静脈戻りラインの圧力を下げ、透析液回路からの加圧透析液が、血液管セット内の血液を患者のバスキュラアクセスに向かって押し流すことができる。患者は、エアトラップから下流の静脈ラインにおける空気を観察する場合、単にオクルーダを再度係合させ返血工程を停止することができる。
上記返血処置は、血流路内の血液を最終的に患者のバスキュラアクセスに向かって移動させる溶液としての透析液で説明しているが、返血処置において、生理学的に適合性がありかつ血液に安全に混合することができるあらゆる電解溶液を使用することができる。さらに、返血技術は、透析システムに限定される必要はない。患者の血液を体外で循環させるあらゆるシステムは、緊急返血システムおよび方法から利益を得ることができる可能性がある。したがって、半透膜を有するフィルタ(透析装置または限外ろ過装置)を体外システムの血液流路内に導入することができる。半透膜の他方の側は、弁によって連通する圧縮ガス源によって加圧することができる流路内の電解溶液にさらされる。
本発明の一態様では、透析システムは、透析液回路内の平衡チャンバ等、チャンバを含むことができ、チャンバは、チャンバ内で移動可能でありかつチャンバの第2部分からチャンバの第1部分を流体的に分離する膜を有している。1つのこうした平衡チャンバについては、図5ならびに参照番号341および342を参照して上述している。チャンバは、第1部分への第1入口と第2部分への第2入口とを含むことができ、たとえば、それにより、流体は、第1入口を介してチャンバに入りかつチャンバから出て、チャンバの第1部分を充填することができ、第2入口を介してチャンバに入りかつチャンバから出て、チャンバの第2部分を充填することができる。第1部分および第2部分ならびに膜は、第1部分内に提供される流体の容量が、第2部分内の流体の対応する容量を押しのけ、かつその逆も可能であるように配置することができる。したがって、第1チャンバが実質的に充填されるとき、第2チャンバは実質的に空である可能性があり、その逆も可能である。
血液漏れセンサが、チャンバに関連付けられかつチャンバの第1部分内の血液(特に、赤血球、ヘモグロビン、他の細胞成分または他のタンパク質)を検出するように配置することができる。たとえば、血液漏れセンサは、チャンバ内の流体によって吸収され、減衰され、または他の方法で操作される光の量を測定するように配置された発光器および検出器を含むことができ、光の量は、チャンバ内の血液またはその構成成分の存在を示すことができる。一実施形態では、発光器は、約570nmの波長を有する光を導入することができ、その光は、ヘモグロビンおよび/または他の血液成分によって概して吸収されるかまたは他の方法で減衰する。したがって、チャンバの第1部分を通して送出される照明の光レベルを求め、それを照明の基準レベルと比較することにより、チャンバ内に血液が存在するか否かを判断することができる。
一構成では、透析装置から使用済み透析液を受け取るように第1入口を流体結合することができ、それにより、使用済み透析液をチャンバ内に導入することができる。使用済み透析液が透析装置から受け取られるため、これにより、血液漏れセンサが、透析装置から出る使用済み透析液に血液が存在するか否か、たとえば、透析装置が、透析装置膜を横切って血液または血液成分を漏らしているか否かを判断することができる。第2入口が、たとえば透析装置に提供される清浄な透析液を受け取るように接続されるようにすることも可能である。したがって、血液漏れセンサを動作させて、清浄な透析液に関連する信号検出の基準レベルを求めることができ、それにより、血液漏れセンサは、使用済み透析液の信号伝達特性を、信号伝達定数に影響を与える実質的にすべての他の変量を保持する清浄な(血液のない)透析液と連続的にまたは定期的に比較することができ、それは、伝達媒体内の変動のみが、使用済み透析液の一意の特性に起因するためである。すなわち、清浄な透析液とともに、平衡チャンバおよび/またはチャンバ膜の壁の透明な部分または半透明部分等、任意選択的に血液検出に関連する平衡チャンバの部分の光学特性および他の特性は、処置中に変化する可能性があり、場合によっては、それは、血液漏れセンサの動作に影響を与える可能性がある。たとえば、チャンバ構造は、単一の処置、複数の処置または消毒工程の過程にわたって徐々に不透明になる可能性があり、検出光を減衰させる可能性がある。しかしながら、血液漏れセンサが、処置工程中に同じチャンバ内で清浄な透析液および使用済み透析液を交互に操作することができるようにすることにより、血液漏れセンサは、使用済み透析液自体に起因するもの以外の変動に対して感度が減じる可能性があり、それにより、センサは、透析装置から流れる透析液における血液の存在を確実にかつ正確に検出することができる。
上述した実施形態では、血液漏れセンサは、流体の光学特性を検出して血液の存在または不在を判断するが、血液漏れセンサは、化学特性(血液成分の抗体または他の受容体への結合等)、電気特性(流体伝導率の変化等)、漏れた巨大タンパク質の使用済み透析液の濁度に対する影響等、透析装置膜における欠陥を示す可能性がある他の特性を検出することができる。さらに、血液漏れセンサを使用して、放出器から検出器への信号の伝送に影響を与える可能性がある他の非血液化合物の存在を検出することも可能である。したがって、本発明の態様は、血液の存在を判断するために流体の光学特性を検出すること、または他の化合物が流体を通る信号伝送に影響を与える可能性がある血液センサとしてのその唯一の使用に、必ずしも限定されない。
一実施形態では、血液漏れセンサは、チャンバの第1部分を占有する流体における血液レベルに関連する信号(第1測定値)の伝送を測定し、チャンバの第2部分を占有する血液のない流体における同様の信号(第2測定値)の伝送を測定して、第1測定値および第2測定値を互いに比較するように配置することができる。第1測定値および第2測定値を比較することにより(たとえば、第1測定値が使用済みの、場合によっては血液で汚染された透析液に関連し、第2測定値が清浄な血液のない透析液に関連する場合)、光伝送および検出に対する、混乱させるかまたは偏らせるいかなる影響も除去することができる。血液漏れセンサは、実質的に流体で(たとえば、使用済み透析液で)満杯の第1部分と実質的に流体が空である第2部分とにより血液レベルの第1測定値を測定するように配置することができ、実質的に流体が空である第1部分と実質的に流体で(たとえば、清浄な透析液で)満杯である第2部分とによって第2測定値を測定するように配置することができる。
一実施形態では、血液漏れセンサは、チャンバの第1部分における第1レベルとチャンバの第2部分における第2レベルとを測定し、第1レベルおよび第2レベルを互いに比較するように構成することができる。第1レベルおよび第2レベルを比較することにより(たとえば、第1レベルが使用済み透析液に関連し、第2レベルが清浄な透析液に関連する場合)、透析液変動のいかなる影響も血液検出から除去することができる。血液漏れセンサは、実質的に流体で(たとえば、使用済み透析液で)満杯の第1部分と実質的に流体が空である第2部分とにより第1測定値を測定するように配置することができ、実質的に流体が空である第1部分と実質的に流体で(たとえば、清浄な透析液で)満杯である第2部分とによって第2測定値を測定するように配置することができる。
チャンバは、チャンバの内部空間を画定する壁を含むことができ、膜は、第1部分および第2部分が実質的に流体で満杯になるときにチャンバ壁と接触するように配置することができる。たとえば、膜は、第1部分に流体を導入することができ、それにより、第2部分が実質的に空になりかつ膜がチャンバ壁の一態様と接触するまで、膜は移動して第2部分から流体を放出するように、配置することができる。逆に、第2部分に流体を導入することができ、それにより、第1部分が実質的に空になりかつ膜が(たとえば、チャンバの反対側の)チャンバ壁の別の態様と接触するまで、膜が移動して流体を第1部分から放出する。したがって、チャンバは、清浄な透析液または使用済み透析液で交互に実質的に充填することができ、それにより、血液漏れセンサは、第1部分が使用済み透析液で実質的に満杯である間に、血液の存在に関連する信号を検出し、第2部分が清浄な透析液で実質的に満杯であるときに、血液の不在に関連する信号を検出するように、動作することができる。
血液漏れセンサは、チャンバ内に光を放出するように配置された発光器と発光器から放出された光を検出するように配置された光検出器とを含むことができる。たとえば、発光器および光検出器は、チャンバの反対側に配置することができ、それにより、直線状の光路が発光器から光検出器まで延びる。結果として、発光器は、チャンバ内の流体を通過しかつ光検出器で受け取られる光を放出することができる。一実施形態では、発光器および光検出器は、発光器によって放出されかつ光検出器によって受け取られる光が膜を通過するように配置することができる。たとえば、膜およびチャンバ壁の好適な部分は、透明であるか、または透明あるいはさもなければ好適に半透明である部分を有することができ、それにより、光は、チャンバの第1部分を通過し、膜を通過し、チャンバの第2部分を通過することができる。したがって、同じ発光器/検出器対を使用して、第1チャンバおよび第2チャンバ両方の発光器信号の伝送を検出することができる。一実施形態では、発光器および光検出器は、発光器から放出されかつ光検出器によって受け取られる光がチャンバの壁を通過するように配置することができる。したがって、血液漏れセンサは、チャンバの外側に配置された発光器と、チャンバの外側に配置された光検出器とを含むことができ、それにより、光は、チャンバの壁を通ってチャンバの内部空間に入る。一構成では、血液漏れセンサは、血液が40%のヘマトクリットを有し、かつ1リットル当たり約0.4375ml以上の血液の濃度である透析液において血液を検出するように配置することができる。別の構成では、血液漏れセンサは、血液が40%のヘマトクリットを有し、1リットル当たり0.2ml以上の血液の濃度である透析溶液において血液を検出するように配置することができる。他の構成では、血液漏れセンサは、血液が、透析機器に対する国際規格設定機関によって指定される閾値濃度の半分に等しいかまたはそれ未満の濃度である透析液において血液を検出するように配置することができる。
本発明の別の態様では、透析システムの透析液回路において血液を検出する方法は、チャンバであって、チャンバの第1部分をチャンバの第2部分から分離する可動膜を有するチャンバの第1部分を通して光を伝達するステップと、第1部分を通して伝達された光に対して検出された光レベルに基づいて、第1部分における液体内の血液の存在を判断するステップとを含む。たとえば、チャンバは、透析液回路における平衡チャンバとすることができ、平衡チャンバの第1部分は、透析装置から使用済み透析液を受け取るように流体結合することができる。第1部分を通して伝達された光に対する減衰または他の影響が、検出され、使用済み透析液における血液成分(または他の化合物)の存在を表すことができる。一構成では、第1光レベルは、チャンバの第1部分における流体を通して伝達された光に対して検出することができ、第2光レベルは、チャンバの第2部分における流体を通して伝達された光に対して検出することができる。第1部分における血液の存在は、検出された第1光レベルおよび第2光レベルの比較に基づいて判断することができる。たとえば、チャンバの第1部分を使用済み透析液で充填し、第1部分が使用済み透析液で実質的に充填されている間に、チャンバの第1部分を通して光を伝達することにより、第1光レベルを求めることができる。同様に、第2部分を清浄な透析液で充填し、第2部分が清浄な透析液で実質的にファイリングされている間に、チャンバの第2部分を通して光を伝達することにより、第2光レベルを求めることができる。結果として、単一の発光器/検出器対を使用して、血液のないまたは濁りのない流体に関連する基準測定値として第2光レベルを使用することにより、使用済み透析液の容量における血液または濁度レベルを測定することができる。
本発明の別の態様では、透析システムの透析液回路において血液を検出する方法は、チャンバであって、チャンバの第1部分をチャンバの第2部分から分離する可動膜を有するチャンバを準備するステップと、透析装置からチャンバの第1部分に受け取られる使用済み透析液を準備するステップと、第1部分における使用済み透析液の検出された特性に基づいて、第1部分における使用済み透析液に血液が存在するか否かを判断するステップとを含む。たとえば、検出された使用済み透析液の特性は、血液の存在を示すことができる、使用済み透析液による光の吸収を含むことができる。同様に上述したように、透析装置に送達するための清浄な透析液は、チャンバの第2部分に提供することができ、第2部分における清浄な透析液の特性は、たとえば、清浄な透析液を通して伝達された光に対して検出された光レベルによって表されるような、清浄な透析液、チャンバ壁およびチャンバ内の膜による光伝達の低下に基づいて測定することができる。使用済み透析液および清浄な透析液の検出された特性を比較することができ、任意の差を用いて、使用済み透析液における血液の存在を判断ことができる。使用済み透析液の特性は、使用済み透析液が実質的に充填された第1部分と、実質的に空である第2部分とにより(たとえば、膜がチャンバの一方の側のチャンバ壁と接触している状態で)検出することができ、清浄な透析液、チャンバおよび膜の特性は、清浄な透析液が実質的に充填されている第2部分と、実質的に空である第1部分とによって(たとえば、膜は、チャンバの別の側のチャンバ壁と接触している状態で)検出することができる。
本発明の別の態様では、透析システムの透析液回路において血液を検出する方法は、チャンバであって、チャンバの第1部分をチャンバの第2部分から分離する膜を有するチャンバに関連する血液漏れセンサを準備するステップを含む。チャンバは、透析装置に対して使用済み透析液の流出と清浄な透析液の流入とを平衡させるために使用される平衡チャンバであり得る。血液漏れセンサは、発光器から光検出器へ清浄な透析液を通過する(膜および/またはチャンバ壁等の他の要素を通過する可能性もある)光の吸収または減衰を検出することによる等、チャンバの第2部分における清浄な透析液の特性を検出することにより、血液のない基準測定値を求めることができる。血液検出で使用される基準レベルを求めることは、光検出器において光レベルを検出し格納する程度に単純であり得るか、または検出器感度を調整し、測定された光の値に適用されるように補正値を計算し、清浄な透析液における光吸収要素の濃度を求めること等、他の工程も含むことができる。さらに、血液検知動作は、検出器が、血液で汚染された透析液と清浄な透析液とを識別するのに十分な基準信号を受け取るために、発光器の放射出力を調整することを含むことができる。コントローラを用いて、発光器の放射出力を、検出器によって所定強度の基準信号が受け取られるように連続的にまたは定期的に調整することができる。たとえば、基準信号は、検出器の動作範囲の上限であるように調整することができ、それにより、受け取られた信号の強度の劣化は、検出器の動作範囲内にあり続ける可能性が高くなる。
基準信号調整された血液漏れセンサを使用して、チャンバの第1部分における使用済み透析液に血液が存在するか否かを判断することができる。たとえば、血液漏れセンサを用いて、透析装置から受け取られるチャンバの第1部分における使用済の透析液の光減衰または他の特性を測定することができる。検出された光レベルまたは他の特性は、同じ膜を有する同じチャンバ内の清浄な透析液に対して検出された光レベルまたは他の特性と比較することができ、2つの値の差を用いて、使用済み透析液に血液が存在するか否かを判断することができる。上述したように、チャンバの第2部分が清浄な透析液で実質的に充填される状態に対して、清浄な透析液の光レベルまたは他の特性を検出することができ、チャンバの第1部分が使用済み透析液で実質的に充填される状態に対して、使用済み透析液の特性を検出することができる。
本発明の別の態様では、透析システムの透析液回路において血液を検出する方法は、少なくとも部分的に、平衡チャンバおよび透析装置を含む透析液回路を通して透析液を循環させることにより、患者に透析処置を提供するように透析システムを動作させるステップを含む。透析装置から流れる使用済み透析液における血液の存在を判断ように配置される血液漏れセンサを提供することができる。一実施形態では、透析システムが、患者に透析処置を提供するように動作中である間、血液漏れセンサを用いて、清浄な透析液の特性を測定することができる。たとえば、血液漏れセンサは、システムが処置中に動作中である間、平衡チャンバ内の清浄な透析液による光吸収または減衰を測定することができる。この特性を使用して、使用済み透析液に血液が存在するか否かを判断することができる。たとえば、血液漏れセンサは、平衡チャンバ内の使用済み透析液に存在する血液によってもたらされる光減衰(または、指定された周波数範囲内の光の吸収)を検出するように配置することができる。したがって、血液漏れセンサは、透析システムが患者に透析処置を提供するように動作中である間に、血液漏れセンサを、チャンバ内の清浄な透析液を通して伝達される光の量を求めるように動作させることにより、血液のない透析液を表す可変である可能性がある基準測定値を採用することができる。すなわち、血液漏れセンサは、患者に対して透析処置を提供している通常のシステム動作中に、基準測定を繰り返し行うことができる。この構成により、同じチャンバを占有している使用済み透析液における血液の正確な測定を可能にすることができ、血液漏れセンサにおける誤検出または他の誤った動作を低減させる可能性がある。さらに、繰り返される基準測定工程により、血液センサを、処置工程において使用される清浄な透析液の変化、またはチャンバ壁あるいは可撓性膜の一部の透明度または半透明度の変化に対して不感応とすることができる。
一実施形態では、透析システムは、清浄な透析液でかつ使用済み透析液で平衡チャンバを交互に実質的に充填するように動作させることができる。本明細書において平衡チャンバの動作の考察から理解されるように、平衡チャンバは、処置中に、清浄な透析液および使用済み透析液で交互に充填されるように動作させることができ、チャンバ内の膜は、清浄な透析液および使用済み透析液の分離を維持するように移動する。平衡チャンバに清浄な透析液が実質的に充填されると、血液漏れセンサを動作させて、血液のないまたは濁りのない平衡チャンバを通る伝達に関連する信号を求めることができる。清浄な透析液内に血液が存在しないため、血液漏れセンサによって検出される清浄な透析液の特性は、基線値または基準値を提供することができ、それを使用済み透析液の後続する測定で使用して、血液が存在するか否かを判断することができる。
本発明の一態様では、血液漏れセンサを使用して、血流回路10から透析装置膜を横切って透析システムにおける平衡回路143または透析システムの他の透析液回路に血液が移動しているかまたは移動したかを判断することができる。こうした血液の漏れを検出する能力は、血液透析システムには必要であり、ドレンまで移動している使用済み透析液が通過する半透明管片に関連する(たとえば、図5に示すセンサ258のような)光検出器を用いて、以前から行われている。いくつかのこうした検出技法では、精度および信頼性の問題があり、たとえば、センサが関連するドレンチューブが汚れるかあるいは不透明になるかまたは他の方法で光の光学的伝達に影響を与え、頻繁な再校正または調整が必要であった。
1つの例示的な実施形態では、平衡回路143または他の透析液流路における平衡チャンバにおいて血液を検出することができる。平衡チャンバにおいて血液を検出する1つのあり得る利点は、平衡チャンバのすべての充填サイクルおよび排出サイクルに対する等、あらゆる所望の頻度で既知の清浄な透析液に関連して連続的にまたは定期的に検知システムを調整することができる、ということである。すなわち、平衡チャンバが交互に、清浄な透析液で充填され、その後使用済み透析液で充填され、続いて清浄な透析液で充填され、以下続くため、平衡チャンバにおいて血液を検出するために使用されるセンサは、チャネルが清浄な透析液で充填されたときに基線または基準の血液のない測定レベルを確定し、基準レベルを、チャンバが使用済み透析液で充填されたときに検知された検出レベルと比較することができる。結果として、患者の処置中にすべての透析液流入サイクルおよび流出サイクルに対して血液センサを有効に調整することができるが、より低頻度の調整頻度を用いることができる。平衡チャンバにおいて血液を検出するために使用されるセンサは、従来の血液センサによって使用されたものと同じかまたは同様の原理で動作することができ、たとえば、センサは、平衡チャンバ内の液体の光を導入する発光器と、液体を通して伝達された光を検出する検出器とを含むことができる。しかしながら、他のセンサを使用して、血中タンパク質または他の化合物の存在を検出する化学的検出器等、血液の存在を判断することができ、そうしたセンサは、清浄な透析液を使用して基準測定値の繰り返される判断に対して同様に再調整することができる。
図84は、図3Aに示すもののような回路を有するもの等の血液透析システムで使用することができる代替的な平衡回路143の概略図を示す。図84における平衡回路143は、図5のものに略同一であり、相違は、平衡チャンバ341のうちの1つとともに血液漏れセンサ343が設けられているということである。この実施形態では、血液漏れセンサ343は、1つの平衡チャンバ341のみに対して設けられているが、センサ343は、両チャンバ341および342に対して、または平衡チャンバ342とのみ設けることができる。また、以下の詳細な説明から明らかとなるように、望ましい場合は、ポッドポンプ161または162の一方または両方で血液漏れセンサを使用することができ、それは、これらのポンプ161、162が交互に使用済み透析液で充填され空気で充填され得るためである。清浄な透析液の代わりに基準流体として空気を使用して、測定された血液基準線レベルを求めることは、清浄な透析液を使用することと同等に望ましいものではない可能性がある(たとえば、清浄な透析液の光学特性は、透析液の血液から不純物を除去する能力にいかなる影響も与えることなく、処置中に変化する可能性があるため)が、ポッドポンプ161、162を駆動するために使用される空気または他の流体は、ポンプ161、162内のゼロ血液レベルを表す好適な基準を提供することができる。より詳細に後述するように、システムコントローラは、平衡回路143において血液が検出された場合に処置を停止するかまたは他の方法で処置を変更する等、システム動作を制御する際に、検出された血液レベルを使用することができる。
図85は、血液漏れセンサ343に関連する平衡チャンバ341の例示的な実施形態の断面図を示す。この実施形態では、平衡チャンバ341は、図47A〜図49に示すポッドと同様の全体的な構成を有しているが、平衡チャンバ341に対する他の構成も可能である。この実施形態では、平衡チャンバ341は、使用済み透析液ポート341aおよび清浄透析液ポート341bとを有している。図84から理解されるように、使用済み透析ポート341aは、ポッドポンプ161、162の出口およびドレン31に流体結合されており、清浄透析液ポート341bは、限外ろ過装置73と透析装置14入口との間のラインに流体結合されている。膜341cは、使用済み透析液ポート341aおよび清浄透析液ポート341bを互いに分離し、流体がポート341a、341bを出入りする際に移動するように配置されている。膜341cは、図48Aおよび図48Bに示すもののような半球状シェル形状を有する等、あらゆる好適な配置を有することができる。結果として、ポンプ161によってもたらされる流れにより、平衡チャンバ341は、使用済み透析液ポート341aから入る使用済み透析液で実質的に充填され(それにより、チャンバ内のあらゆる清浄な透析液を押しのけ、清浄透析液ポート341bから清浄な透析液を排出する)かつ/または清浄透析液ポート341bから入る清浄な透析液で実質的に充填される(それにより、チャンバ内のいかなる使用済み透析液も押しのけ、使用済み透析液ポート341aから使用済み透析液を排出する)ことが可能である。平衡チャンバ341が使用済み透析液で充填されると、膜341cは、図85に示す(破線で示す)ように左側に移動し、場合によっては、平衡チャンバ341の壁と接触するように押圧される。交互に、平衡チャンバ341が清浄な透析液で充填されると、膜341cは、図85に示す(点線で示す)ように右側に移動し、場合によっては、平衡チャンバ341の壁と接触するように押圧される。
この実施形態における血液漏れセンサ343は、好適な波長または波長の組の光を(たとえば、フォトダイオードまたは他の好適な検出素子を含む)光検出器アセンブリ343bの方向で平衡チャンバ341内に放出する、(たとえば、発光ダイオード(LED:light emitting diode)を含む)発光器アセンブリ343aを含む。発光器アセンブリ343aによって放出される光は、チャンバ341内の流体における血液成分によって吸収されるかまたは他の方法で変更されるが、概して、血液のない透析液によって影響を受けず、または少なくともそれほど影響を受けないように、好適に配置することができる。たとえば、光は、色が概して緑である(たとえば、約570nmの波長を有する光を含む)可能性があり、それは、ヘモグロビンに対するおよそのピーク吸収波長である。当然ながら、他の波長または波長の組を使用して、たとえば、要求に応じて、血液成分の他の光学特性を利用することができる。この実施形態では、血液漏れセンサ343は、使用済み透析液を通過する光の減衰に基づいて、使用済み透析液における血液の存在を検出することができる。すなわち、発光器アセンブリ343aによって放出される光は、膜341cおよび使用済み透析液(または測定サイクルに応じて清浄な透析液)を通過して検出器アセンブリ343bまで進む。使用済み透析液にヘモグロビンまたは他の好適な血液成分が存在する場合、それらの成分は、検出器アセンブリ343bに達する光を吸収し、散乱し、または他の方法でその量を低減させる。使用済み透析液および清浄な透析液の容量に対する検出された光レベルを使用し、たとえば互いに比較して、使用済み透析液に血液が存在するか否かを判断することができる。
発光器アセンブリ343a(たとえば、LED)における照明素子の強度は、受取側の検出器アセンブリ343bにおいてノイズがなくかつ不明瞭でない信号強度を得るのに十分な光を提供するように制御することができる。たとえば、LED出力の強度は、コントローラがパルス幅変調を用いてLEDを通る電流を調整するようにすることによって制御することができる。これにより、血液漏れセンサ343は、光学経路が何らかの理由で劣化した場合に、最適な機能を提供し続けることができる。LEDへの電流は、チャンバ内にかつ光路内に清浄な透析液が存在するときに設定され、その後、使用済み透析液がチャンバおよび光路内に導入されるときこの値のままであり得る。電流は、検出器アセンブリ343bによって観察される強度が、清浄な透析液に対するその感度の範囲の上限に向かうように設定することができる。これにより、感度の範囲の大部分が、使用済み透析液への遷移によってもたらされる減衰を観察するために利用することができるようになる。
この例示的な実施形態では、膜341cおよび平衡チャンバ341の壁は、透明な(または少なくとも、発光器アセンブリ343aによって放出される光に対して透過性である)材料から作製されている。したがって、発光器アセンブリ343aからの光は、チャンバ壁および膜を通って検出器アセンブリ343bまで進むことができる。しかしながら、他の構成も可能である。たとえば、チャンバ壁は、不透明材料から作製することができ、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bは、発光器セクション/検出器セクションがチャンバ341の内部に露出するように、壁に埋め込む(たとえば、壁と同時成形する)ことができる。別の実施形態では、チャンバ壁は、透明な窓、光チューブ、または発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bがチャンバ341内部に露出するようにする他の経路を有するように形成することができる。
他の実施形態では、膜341cは、不透明であり、血液漏れセンサ343によって使用される光に対して透過性である膜341cの好適な位置に、1つまたは複数の窓または他の部分を含むことができる。別法として、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bは、光を膜341cに通すことなくチャンバ341の部分を通して光を伝達するように配置することができる。たとえば、第1発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343b対は、膜341cの一方の側に(たとえば、使用済み透析液側に)配置することができ、第2発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343b対は、膜341cの他方の側に(たとえば、清浄透析液側に)配置することができる。たとえば、発光器アセンブリおよび検出器アセンブリ対は、チャンバ341内で異なる光路を使用するため、上記配置は理想的ではない可能性があるが、それらの対は、血液透析システムの製造時に(たとえば、それぞれのチャンバ341部分において同一の溶液を使用して各対を用いて測定を行うことにより)、または他の時点で(患者に処置を提供する前に平衡回路143を通して清浄な透析液を循環させることによる等)、互いに対して好適に校正することができる。別の実施形態では、単一の発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343b対を使用して、たとえば、単一の発光器アセンブリ343aから膜341cの反対側に光を分割し、2つの光ビームをチャンバ341内に向ける(たとえば、「Y」字型形状を有する)好適な光パイプ構成、およびチャンバ341の反対側で2つの光ビームを受け取り、それらの光ビームを単一検出器アセンブリ343bに導く別の好適な光パイプ構成を使用することにより、光を膜341cに通すことなくチャンバ341内の血液の存在を検出することができる。
上述した実施形態では、発光器アセンブリ343aからの光は、チャンバ341の一部を横切って反対側の検出器アセンブリ343bまで進むが、他の配置も可能である。たとえば、発光器アセンブリ343aから発生する光は、チャンバ341を横切り、対向するチャンバ壁および/または膜341cの一部によって反射されることが可能であり、そのため、反射したビームは、チャンバ341の発光器アセンブリ343aと同じ側に位置する検出器アセンブリ343bまで移動する。この構成は、チャンバ341の同じ側における発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bに対する電気的接続および他の接続が可能である等の利点を提供することができる。さらにまたは別法として、透析液容量に光ビームを通過させることにより、たとえば、センサ343が比較的わずかな濃度の血液成分の存在を検出することができるようにすることにより、血液漏れセンサ343の感度を向上させることができる。
上述したように、透析液が透析装置14を通して循環するとき、ポッドポンプ161、162は、透析装置14から使用済み透析液を引き出し、使用済み透析液を、平衡チャンバ341、342を介してドレンに押し流す。すなわち、ポッドポンプ161、162は、(弁211、212、213、221、222、223、231の協働した制御により)平衡チャンバ341、342を、それら自体がポンプとして作用するように本質的に駆動し、それにより、平衡チャンバ341、342は、交互に、実質的に使用済み透析液で充填された後、清浄な透析液で実質的に充填される。血液漏れセンサ343の動作は、発光器アセンブリ343aが光を放出し、それぞれの平衡チャンバ341が使用済み透析液または清浄な透析液のいずれかによって実質的に充填されている間に、検出器アセンブリ343bが光を検出するように、タイミングをとることができる。瞬時である可能性があるこれらの段階の各々の間に、チャンバ壁と接触するように膜341cを押圧することができ、それにより、膜341cと隣接する発光器またはセンサ343a、343bとの間に流体がほどんどまたはまったくなくなる。したがって、膜341cは、チャンバ341内の血液成分レベルを検出するために使用される光に対してほとんどまたはまったく影響を与えない可能性がある。
チャンバ341が清浄な透析液で充填されている間に測定された光レベル測定値は、チャンバ341が使用済み透析液で充填されている間に測定された光レベル測定値と比較することができ、2つの間の信号の差(ある場合)を使用して、使用済み透析液に血液が含まれるか否かを判断することができる。たとえば、2つの測定信号の差が好適な閾値を超える場合、血液が存在すると判断することができ、システム制御は好適な処置を講じることができる。連続した平衡チャンバ充填動作に対して光レベル測定値を比較することにより、血液存在検出を行うことができ、または使用済み透析液に対する各光レベル測定値を、異なる格納された閾値と比較することができる。清浄な透析液で充填された平衡チャンバに対して測定された光レベル測定値の格納された測定値に対する比較を用いて、閾値を変更する(たとえば、格納された閾値を清浄な透析液に対する最新の光レベル測定値と置き換えること、または他の何らかの調整)べきであるか否かを判断することができる。一方、使用済み透析液で充填された平衡チャンバに対して測定された光レベル測定値の格納された閾値との比較を用いて、使用済み透析液において警告状態をトリガするのに十分な血液が存在するか否かを判断することができる。光測定値がいかに使用されても、システムは、清浄な透析液で充填されたときのチャンバにおける光伝達の規則的な測定によって、血液漏れセンサ343の好適な測定値識別を更新するかまたは他の方法で検証することができる。したがって、処置中にチャンバ、膜または清浄な透析液の光学特性が変化した場合、血液レベルセンサ343は、継続してこうした変化を考慮することができ、不適切なセンサ基準レベルによる血液の誤検出または他の問題を回避することができる。
上述した実施形態は、血液成分による光の吸収に基づいて血液の存在および/または不在を検出するが、他の光学的特徴または光学特性を利用することができる。たとえば、血液漏れセンサ343は、血液成分による光の散乱または反射に基づいて、(たとえば、励起照明によってもたらされる)血液成分からの発光等により、血液の存在を判断することができる。別法としてまたはさらに、血液漏れセンサ343は、光検出器以外のまたはそれに加えて他のセンサタイプを含むことができる。たとえば、平衡チャンバ341に関連する1つまたは複数のセンサは、化学検出器を用いて、たとえば、血中タンパク質を好適な受容体と結合することにより、血液成分の存在を検知することができる。したがって、本発明の態様は、血液の光学的検出に必ずしも限定されるものではなく、むしろ、使用済み透析液における血液成分の存在および/または不在を検出するためにあらゆる好適なセンサを採用することができる。
図86および図87は、血液漏れセンサ343が取り付けられた平衡チャンバ341の底面図よび左下側面斜視図を示す。平衡チャンバ341は、図47A〜図49に示すポッドの配置と同様の同じ全体的配置を有し、血液漏れセンサ343は、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343b両方を支持し、平衡チャンバ341に取り付けられる、ブラケット343cを含むことができる。図88において切り離して示すブラケット343cは、チャンバ341の一部と単一の単体部品として成形される、チャンバ341に接着または他の方法で締結される、摩擦または締り嵌めによって平衡チャンバ341と係合する等、あらゆる好適な方法で、平衡チャンバ341と係合することができる。したがって、ブラケット343cは、チャンバ341から取外し可能とすることができ、またはチャンバ341に永久的に取り付けることができる。この実施形態では、ブラケット343cは、平衡チャンバ341の環状嵌合リブ(すなわち、合わせて接合されたときに2つの半球状壁部分の間の接合部に形成されたリブ)を受け入れる一対の対向するスロット343d(図88を参照)を含む。発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bは、ブラケット343cに取り付けられ、発光領域および受光領域それぞれが、平衡チャンバ341の内部空間に対して適切に向けられ、かつ互いに適切に向けられ、たとえば、チャンバ341の両側に対角線状に対向するように、配置することができる。この実施形態では、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bは、ブラケット343cにかつ平衡チャンバ341に取り付けられ、それにより、発光領域および受光領域は、平衡チャンバ341の壁に近接してまたはそれに接触して配置することができる。必ずしも必要ではないが、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bをチャンバ壁に光学的に結合するために、グリース、接着剤等、光学的結合材料を設けることができる。これは、光損失を低減させるのに役立ち、かつ/または汚物あるいは他の物質が、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bの平衡チャンバ341との光学的連絡を妨げる可能性を阻止するのに役立つことができる。
図88に示すように、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bは、ブラケット343cに取外し可能に取り付けることができる。他の配置も可能であるが、この実施形態では、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bは、各々略平面体を含み、それは、好都合には、光学素子、電子素子および他の素子が取り付けられかつブラケット343cの対応するスロットに受け入れられる、回路基板であり得る。発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bの平面体(たとえば、回路基板)はまた、切取部も含むことができ、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bをブラケット343cと係合した状態で維持する先端側のジョグにより、可撓性またはばね状タブ343eを形成する。ばねタブを生成する切取部を含むように回路基板を製造することにより、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bをブラケット343cに確実にかつ正確に取り付けるために、それらに対して追加の部品を取り付ける必要をなくすことができる。発光器アセンブリ343aおよび/または検出器アセンブリ343bを取り除くために、ばねタブ343eを押下してジョグを解放し、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bがブラケット343cのそのスロットから取り外されるのを可能にする。この配置により、必要に応じて、損傷したかまたは他の理由で欠陥のある発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bの交換を可能にすることができる。
図示しないが、発光器アセンブリ343aおよび検出器アセンブリ343bは、所望の機能を行う必要に応じて、あらゆる好適な光学素子、電気素子または他の素子を含むことができる。たとえば、発光器アセンブリ343aは、好適なLED光源、チャンバ341内に放出された光から望ましくない光周波数を除去するフィルタ、(たとえば、放出された光に対して望ましい方法で集束させ、平行にし、分散させ、または他の方法で作用する)レンズ、電子駆動回路(PWMまたは他の技法を用いてLEDによって放出される光の強度、タイミングまたは他の特性を制御することができる回路等)、システムコントローラと通信する電子回路等を含むことができる。検出器アセンブリ343bも同様に、あらゆる好適な光検出器(フォトダイオードまたは他の光感受性デバイス)、光学フィルタおよび/またはレンズ、光センサからの信号データを平滑化し、サンプリングし、または他の方法で処理するための好適な回路、システムコントローラと通信する回路等を含むことができる。
血液漏れセンサ343は、血液があらゆる好適なレベルでヘマトクリット率を有するあらゆる好適な血液濃度を検出するように配置することができる。たとえば、血液漏れセンサ343は、透析装置から出る透析液の流量が約1L/分の割合である、ヘマトクリットが25%の血液の0.35ml/分以上(または以下)の透析装置を横切る漏れ率を検出することができるように配置することができる。したがって、一実施形態では、血液漏れセンサ343は、生理食塩水等の清浄な流体1リットル当たり約0.35mlの血液と等価である25%ヘマトクリット血液の濃度を検出するように構成される必要がある場合がある。別の実施形態では、血液漏れセンサは、流体の1L当たり約0.2mlの濃度で40%のヘマトクリットを有する血液を検出するように配置することができる。他の実施形態では、血液漏れセンサは、血液のない流体(たとえば、清浄な透析液)に関連する基準信号強度に対する所定濃度の血液を有する透析液に関連する信号強度を求めるように配置することができる。この相対的な信号強度または信号強度差は、警報状態をトリガする閾値測定値として選択することができる。基準信号強度が経時的に変化するため、警報をトリガする閾値もまた、指定された濃度での血液の存在に関連する所定の相対的な信号強度または信号強度差を維持するように変化する。いくつかの構成では、血液漏れセンサは、血液のない清浄な透析液と、血液透析機器に対して国際規格設定機関(たとえば、ANSI/AAMI−RD5−2003セクション4.2.4.7)によって指定されたものの半分未満の血液濃度を有する使用済み透析液とを確実に識別することができる。さらに、コントローラは、検出器によって受け取られる所定の最小基準信号強度を生成するために、発光素子(たとえば、LED)への電流を調整するようにプログラムすることができる。これは、検出器によって受け取られる基準信号強度が、使用済み透析液と清浄な透析液との確実な信号強度識別を可能にしないほど弱くなるのを防止するのに役立つことができる。
本発明の別の態様では、透析システムは、たとえば、処置のために透析液を作成するのに使用するために、透析システムに提供される水から空気を除去するように配置された水供給エアトラップを含むことができる。水からの空気の除去は、たとえば、透析液が適切に形成されたことを確認するために測定された伝導率または他の測定値との空気の干渉を低減させることにより、システム性能を向上させるのに役立つことができる。たとえば、透析液から解放されるかまたは他の方法で透析液に存在する空気は、透析液の伝導率測定を行うために使用される電極の間の領域に付着する可能性がある。これらの気泡により、不自然に低い伝導率測定値、または他の理由で誤った測定値がもたらされる可能性があり、それにより、システムは、透析液が適切に作成されていないと不適切に判断することになり、かつ/またはシステムが透析生成工程を不適切に調整する可能性がある。したがって、透析システムコントローラは、透析液の伝導率読取値を使用して、透析液を形成するために後に水に加えられる酸、重炭酸塩または他の原料の量を制御することができる。誤った伝導率読取値により、システムは、不適切な量のこうした原料を加える可能性があり、それによりシステムは使用できない透析液を生成し、または、システムは、誤った伝導率読取値のために不適切に作成されたものとして識別された適切な透析液を破棄する可能性がある。不適切に形成された透析液は、限外ろ過装置の下流の平衡回路における安全伝導率センサ等の別のセンサによって特定することができるが、使用できない透析液は除去され、交換透析液が作成されて供給されるため、不適切に形成された透析液は、患者処置を妨害する可能性がある。
気泡は、透析装置に供給された清浄な透析液の量を、透析装置から受け取られた使用済み透析液の量と平衡させるシステムの能力を妨害する等、同様に他の問題をもたらす可能性がある。この平衡は、たとえば、患者が透析工程中に過剰な流体を受け取らないことを確実にするために、または処置中に患者から流体を除去するようにシステムを動作させるとき、重要である可能性がある。たとえば、平行チャンバの清浄透析液側から出た後に透析装置に送達されている清浄な透析液から脱ガスする気泡は、平行チャンバの使用済み透析液側に搬送される可能性があり、それにより、最終的に、透析装置から引き出されるより多くの液体が透析装置に送達される。
上記から理解されるように、空気は、少なくとも2つのあり得る方法で、たとえば、水供給部から流れている水における気泡として、かつ/または、水で運ばれ解放されてシステムにおける混合回路内または他の場所で気泡を形成する溶存気体として、透析システムに提供される水に存在する可能性がある。本発明の態様は、システムに供給される水における気泡の除去、および/またはシステムに供給される水からの溶存空気の除去を含むことができる。したがって、本発明の態様は、気泡を除去するだけでなく、水供給部からの溶存気体も除去することができる。
1つの例示的な実施形態では、透析システムは、少なくとも水および1種の原料を結合して透析処置で使用される透析液を形成するように配置された混合回路と、水供給導管を介して混合回路に水を提供するように配置された水供給部と、水供給導管内に空気を閉じ込めるように配置された水供給エアトラップとを含むことができる。エアトラップは、水供給部(水の袋または他の容器、逆浸透ろ過システムまたは他の好適な装置等)と透析システムの混合回路との間に流体結合された水供給導管と流体連通するように設けることができる。一実施形態では、エアトラップは、エアトラップの頂部近くの入口とエアトラップの底部近くの出口とを有するチャンバを含むことができる。したがって、エアトラップは、チャンバの頂部で空気を捕捉し、チャンバの底部で出口に液体のみを放出することができ、それにより、水が水供給部から混合回路まで移動する際に水から空気を除去する。
本発明の態様は、水供給部および混合回路を含むシステムでの使用に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。たとえば、空気除去に関連する本発明の態様は、透析液供給部(処置で使用する準備ができている透析液のリザーバ等)と、透析液供給部から透析液を受け取り、透析液を透析装置に提供する他の透析液回路とを含むシステムで使用することができる。この場合、本発明の態様を使用して、透析液供給部から供給される透析液から空気を除去することができる。したがって、一態様では、透析システムは、透析処置で使用するために液体を提供するように配置された液体供給部と、液体供給部と透析システムの方向付け回路または他の透析液回路との間に流体結合された液体供給導管と、水供給導管内に空気を閉じ込めるように配置された水供給エアトラップとを含むことができる。液体供給部は、水供給部または透析液供給部とすることができ、液体を(水であっても透析液であっても)あらゆる好適な方法で提供することができる。
一実施形態では、水から溶存気体を解放する傾向がある水供給導管に、少なくともある期間中、相対的に低い圧力が存在する可能性がある。この気体は、溶解状態から解放されると、エアトラップによって捕捉され得る。たとえば、水供給部は、圧力調節器、流量制限器、排気口または水供給導管に提供される水に対して好適な供給圧力を提供する他の装置を含むことができる。さらにまたは別法として、水供給導管自体および/または他の構成要素は、たとえば、その流路、流量制限器等、好適に小さい断面サイズで構成することができ、それは、水から溶存気体を解放するのに役立つように水供給導管内に比較的低い圧力を提供するのに役立つ。
混合回路は、水供給導管から水を断続的に引き出すポンプ等、水供給導管から水を引き出す1つまたは複数のポンプを含むことができる。たとえば、混合回路は、上述したもののような1つまたは複数のポッドポンプ、往復ピストンポンプ、シリンジポンプ、または水供給導管から流体を断続的に引き出す他の装置を含むことができる。この構成により、混合回路は、水供給導管内に必ずしも一定流量を必要とすることなく、溶存気体の解放をもたらすように、水供給導管内に相対的に低い(負の)圧力を周期的にもたらすことができる。(負圧は、水供給部および/または透析システムの別の場所で水または透析液が受ける圧力未満の圧力であり得る。いくつかの実施形態では、負圧は、大気圧未満の圧力であり得る。)当然ながら、水供給導管からおよそ一定の水の引出しを可能にする混合チャンバ内のペリスタティックポンプまたは他のポンプ等、他の構成も可能である。別法として、水供給導管からの水の一定のまたはおよそ一定の引出しを可能にするように、連動する2つ以上のポッドポンプまたは他の間欠型ポンプの組を動作させることができる。(少なくともいくつかの実施形態における)混合回路のポンプとは対照的に、水供給部は、水を連続して提供するように配置することができる。水供給部は連続流量ポンプ、水道用水または他の配管接続部への接続部、水貯蔵リザーバ等を使用することによってこれを行うことができる。
エアトラップは、要件に応じて、あらゆる好適な容量の空気、たとえば最大約1.5mlまたはそれより多くの空気を閉じ込めるように配置することができる。たとえば、エアトラップは、エアトラップを通る約1200ml/分の水の流量で、最大約10ml/時の流量で空気を閉じ込めるように配置することができる。システム要件に応じて、同じかまたは異なる水流量に対する他の捕捉率を使用することができる。エアトラップ内の空気は、空気をエアトラップから水供給部内に、ドレンライン内に、または他の好適な位置に押し込むように水供給導管において流れを反転させる等、あらゆる好適な方法でパージすることができる。コントローラは、エアトラップを通るドレンラインへの逆流の分流を可能にするように、流路内の1つまたは複数の弁を作動させることができる。エアトラップの頂部にまたはその近くにエアトラップの入口を配置することは、その中の空気の大部分またはすべてが、優先的にドレンに押し込まれることを確実にするのに役立つ。別法として、エアトラップは、閉じ込められた気体を抜くように開放することができる排出ポートを有することができる。
本発明の別の態様では、透析システムを動作させる方法は、水供給導管を介して混合回路において水供給部から水を受け取るステップと、水供給導管と連通しているエアトラップにおいて水中に水を閉じ込めるステップとを含む。上述したように、水を受け取るステップは、混合回路内の1つまたは複数のポンプを使用して、水供給導管から水を引き出すことを含むことができる。たとえば、水供給導管から水を断続的に引き出すように、1つまたは複数のポンプを動作させることができる。一実施形態では、混合チャンバが水導管から水を受け取る期間の少なくとも一部の間に、エアトラップに負圧をもたらすことができる。負圧により、水中の空気が水から解放され、エアトラップに閉じ込められることが可能である。負圧は、少なくとも部分的に、水供給導管から水を引き出す混合回路の1つまたは複数のポンプによる等、あらゆる好適な方法で生成することができる。いくつかの実施形態では、弁または他の流量制御要素もまた、ポンプ動作と協働して、エアトラップ内に所望の負圧をもたらすことができる。たとえば、水供給部または水供給導管は、流量調節器、弁、または混合回路が水供給導管から水を引き出す期間中に水の流れを遅くするかまたは他の方法で調整する他の要素を含むことができる。水供給導管におけるこの流量の低減により、水供給導管内に負圧をもたらすことができる。
(水入口モジュール)
水入口モジュール12500(図141)の機能は、低温セクションの電子回路を水漏れから保護しながら、カセットシステムの水ポート30、31(図3A)を血液透析装置6001の外側の水ポート12510、12520に接続することであり得る。水入口モジュール12500は、カセットシステムの水供給部30およびドレン31に接続するための接続部12530および12531とともに、血液透析装置6001の低温セクションに配置することができる。外部ポート12510および12520は、血液透析装置6001(図144)の外部を通って延在することができる。ポートの間の管および接続部はすべて、いかなる漏れた流体もドレンスロット12510(図142)から出るように向けるカバー(図示せず)を備えたケース12540に収容される。ドレンスロットを出る水は、電子回路から離れて低温セクションの底部に集まる可能性がある。水入口モジュール12500は水検出器12560を含むことができ、水検出器12560は、ケース125410の底部の所要の距離上方に配置され、かつ凝縮液と著しい漏れとを識別することができる。
水入口モジュール12500には、限定されないが、水供給弁12560、水供給圧力調節器12560、ドレンエアインライン検出器37、または透析液タンク12570からの空気圧ラインを含む、複数の機能的要素が配置されている。水供給弁12560は、停電時に透析液回路を通る水の流れを防止することができる、通常は閉鎖されている電気機械弁であり得る。一例では、水供給弁12560は、供給ポート12510のすぐ下流に位置することができる。調節器12566は、図30〜図46に示す液体処理カセットに供給される水圧を、液体弁が対抗して閉鎖することができる圧力まで制限することができる。一例では、調節器12565は、水供給弁12560のすぐ下流に位置することができる。一例では、調節器12565および弁12560は、合わせて、かつ可撓性ラインなしに入口ポート12510に、堅固に配管することができる。ドレンエアインライン37は、p−トラップ12537の下流のドレンラインの垂直部分に位置することができる。垂直部分が続くP−トラップ12537は、気泡を収集する役割を果たし、AILセンサ37による気泡の検出可能性を向上させるために、気泡が合体するのを可能にすることができる。
低温セクションにおける電子回路を水による損傷から保護するために、外部ポート12510、12520と高温ボックスポート12530、12531との間のライン、構成要素および継手において水漏れまたは破断を検出することが重要である。水漏れが検出されると、AC処理ユニット6109は、水供給弁12560を閉鎖し、低温セクションに入る水の量を最小限にするように遮断処置を開始することができる。著しい漏れが発生した場合にのみAC処理ユニット6109に通知することも重要である。高湿度周囲環境で動作するとき、ライン12512を通る低温の水流は、ケースの底部まで移動することができる著しい量の水を凝縮させることができる。水センサ12580(図143)は、先端12581が水に浸漬されたときにAC処理ユニット6109に通知する液体レベルセンサであり得る。一例としての水センサは、米国ミネソタ州ゴールデンバレーのハネウェル・センシング・アンド・コントロール(Honewell Sensing and Control(Golden Valley,Minnesota,USA))のLLE105000センサである。水センサ12580は、ドレンスロット12550の隣の基部12541の所要の距離上方に取り付けることができる。水の漏れがドレンスロット12550から出る許容可能な流量より大きい場合、水センサ12580は水を検出することができる。より小さい漏れおよび凝縮は、水センサ12580をトリガしない可能性があるが、排出され血液透析装置6001で蒸発する。
本発明の別の態様では、透析システムは、水供給導管と流体連通する水を受け取りかつ放出するように配置されたアキュムレータを含むことができる。アキュムレータは、たとえば、水供給導管内に負圧が存在する場合に、たとえば溶存気体が水から解放されるように水供給導管内で負圧を維持するのに役立つ割合で、水供給導管内に水を放出することができる。さらに、アキュムレータは、水供給導管内に正圧が存在する場合、アキュムレータ内に水を受け取ることができるように配置することができる。したがって、アキュムレータはエアトラップとともに、たとえば、水からの溶存気体の除去に役立つように、水供給導管および/またはエアトラップにおいて負圧を少なくとも一時的に確立しかつ維持するのに役立つように協働して、使用することができる。別法として、たとえば、混合回路が水供給導管から水を引き出す間欠的に動作するポンプを含む場合、水供給導管内の圧力または流量を平滑化するのに役立つように、エアトラップなしにアキュムレータを使用することができる。
エアトラップおよび/または透析処置で使用する液体からの溶存気体の除去に関連する本発明の態様と同様に、アキュムレータに関連する本発明の態様は、処置で使用するために透析システムに提供されるいかなる液体とも使用することができる。たとえば、透析システムは、透析液供給部から透析システムの方向付け回路または他の透析液回路に透析液を提供する供給導管において、アキュムレータの使用を採用することができる。したがって、アキュムレータに関連する本発明の態様は、水供給部または混合回路を含まないが、代わりに事前に準備された透析液供給部を使用するシステムに等しく適用可能とすることができる。
一実施形態では、アキュムレータは、アキュムレータの気体側からアキュムレータの液体側を分離する可動隔壁を含むことができる。たとえば、アキュムレータは、半球形状を有しかつアキュムレータの液体側において可変容量の水を収容するように移動可能な隔壁を備えた、球状チャンバを含むことができる。アキュムレータの気体側は、大気圧に排気することができ、または他の方法で、水供給導管に所望の圧力または他の影響を与えるように、気体側に静圧または可変圧を有することができる。アキュムレータは、約27mlに等しい等、あらゆる好適なサイズの容量の水を蓄積するように配置することができる。一実施形態では、アキュムレータに蓄積することができる液体の容量は、水供給導管から水を引き出すために混合回路が使用するポッドポンプのストローク容量の約半分以上に等しくすることができる。したがって、アキュムレータは、混合回路が水供給導管から水を引き出していない期間中に、水供給導管から水を受け取りかつ保持するように配置することができ、混合回路が水供給導管から水を引き出している期間中に、水供給導管に水を供給するように配置することができる。
本発明の別の態様では、透析システムを動作させる方法は、水供給導管を介して混合回路において水供給部から水を受け取るステップと、混合回路が水供給導管から水を引き出すときにアキュムレータから水供給導管内に水を提供するステップと、混合回路が水供給導管から水を引き出さないときに、水供給導管アキュムレータに水を受け取るステップとを含む。一実施形態では、水供給部は、水供給導管から水を引き出すために混合回路によって使用される最大負圧より大きい圧力で、水供給導管に水を提供することができる。結果として、混合回路が水供給回路から水を引き出すとき、アキュムレータは供給回路に水を提供することができ、混合回路が水の引出しを停止すると、アキュムレータは、水供給部から水を受け取ることができる。この配置は、水供給回路における負圧を平滑化し、かつ/または維持するのに役立ち、たとえば、存在する場合はエアトラップに閉じ込めるために水から溶存気体を除去するのに役立つことができる。混合回路は、水供給回路から水を断続的に引き出すことができ、その場合、たとえば、混合回路は、水供給回路から水を引き出すために1つまたは複数のポッドポンプまたは他の同様の装置を含む。したがって、アキュムレータは、導管内に負圧が存在するとき(たとえば、混合回路が水供給導管から水を引き出すとき)、水供給導管に水を提供することができ、導管内に正圧が存在するとき(たとえば、混合回路が水供給部から水を引き出していないとき)、水供給導管から水を受け取ることができる。一実施形態では、水供給部は、水供給導管から水を引き出すときに混合回路によって採用される瞬時の流量未満の流量で、水供給導管に水を提供するように配置することができる。この場合、アキュムレータは、水供給部の流量不足を補うように、水供給導管に水を提供することができる。水は、アキュムレータから、水供給導管内で負圧を維持するのに役立つように提供することができ、たとえば、アキュムレータの気体側は、水供給導管に所望の総量の液体を提供するように排気することができる。
図89は、図3Aのものに非常に類似する透析システムの概略ブロック図を示し、相違は、図89のシステムが、水供給導管において水供給部30と混合回路25のポンプ180との間にアキュムレータ33およびエアトラップ32を含むということである。上述したように、この例示的な実施形態における透析システムは、エアトラップおよびアキュムレータをともに含むが、透析システムは、アキュムレータ33のみまたはエアトラップ32のみを有するように配置することができる。しかしながら、アキュムレータ33およびエアトラップ32を合わせて結合することにより、システム対して動作上の利点を提供することができる。
この実施形態では、水供給部30は、配管水ライン(たとえば、「水道用水」)に接続された逆浸透ろ過システム等のあらゆる好適な水源、水の袋あるいは他の容器および/または他のものを含むことができる。水源30は、約48.275kPa(約7psi)等、所望の圧力で、かつ/または所望の流量で、水供給導管に水を提供するように構成することができ、それにより、エアトラップ32における等、水供給導管に、所望の負圧をもたらすことができる。たとえば、ポンプ180は、たとえば、必要に応じて、透析液を作成しかつ/または原料49に水を供給するように使用するために、水供給導管から混合回路25内に水を引き込むように動作させることができる。水供給導管においてポンプ180によってもたらされる負圧は、絶対的な意味でかつ少なくとも瞬間的に、水供給導管に水を提供するために水供給部30によって提供される正圧より高い可能性がある。結果として、ポンプ180は、エアトラップ32または他の位置で所望の負圧、たとえば、大気圧未満の圧力または他の好適な基準レベル圧力を生成することができる。たとえば、好適な基準レベル圧力は、透析システムを通って流れている水または透析液が受ける最低圧力であり得る。したがって、水供給部は、水供給導管から水を引き出すために混合回路によって使用される負圧を(絶対的な意味で)下回る正圧で、水供給導管に水を提供することができる。
水供給導管内でもたらされる負圧、たとえば、大気圧未満の圧力は、水から溶存気体を解放するのに役立つことができる。システムのさまざまな構成要素が、水供給部30から通じる弁を閉鎖するかまたは他の方法で制御して水供給部からの水の流量を制御すること、水供給導管内に水量制限器または他の構成要素を設けること、ポンプ180によって引き起こされる負圧を維持するのに役立つようにアキュムレータ33の気体側を排気するかまたは他の方法で制御すること等、ポンプ180の動作と協働して、所望の負圧をもたらすことができる。たとえば、アキュムレータ33は、単一スロトークでポンプ180によって引き出される容量の約半分以上に等しい容量の水を蓄積するように構成することができる。ポンプ180の引出しストロークの前またはストローク中のいずれかの時点で、水供給部30から通じる弁を閉鎖することができ、それにより、ポンプ180は、水供給導管内に負圧を発生させることができ、アキュムレータ33から水を引き出す。(他の実施形態では、水供給部30から通じる弁は、閉鎖する必要がなく、開放したままとすることができ、流量制限器等の他の要素により、アキュムレータ33において好適な負圧を発生させることができる。)アキュムレータ33の気体側は、好適なサイズのオリフィスによって大気圧に排気することができ、それにより、空気は、アキュムレータ33においてかつエアトラップ32内である期間にわたり所望の負圧が確立され維持されるのを可能にする流量で、アキュムレータ33の気体側に入ることができる。負圧のこの持続する期間は、水中の溶存気体を溶液から引き出すのに役立つことができ、その気体は、エアトラップ32内に閉じ込めることができる。
ポンプ180が、水供給導管から水を引き出すのを停止すると、たとえば、ポンプ膜が底に達するため、水供給部30によって供給される水の正圧により、水はアキュムレータ33に流れ込むことができ、アキュムレータ33の気体側の空気が排気され、アキュムレータ33が、ポンプ180の次の引出しストロークの準備のために水で充填される。したがって、ポンプ180、水供給導管(たとえば、流量制限器、水供給導管の一部の断面サイズ等により)、アキュムレータ33および/または水供給部30(たとえば、1つまたは複数の弁、圧力調節器等を含む)は、水から除去するために溶存気体を解放するように好適な負圧を提供するように配置することができる。当然ながら、これらの要素のうちのすべてが、水供給導管内に負圧を提供するように特別に配置する必要はなく、またはさらには設ける必要がない。たとえば、アキュムレータ33を省略し、ポンプ180および水供給部30の弁または圧力調節器の動作により、エアトラップ32においてかつ/または水供給導管の他の領域において、負圧を確立することができる。他の構成では、たとえば、アキュムレータ33の気体側を好適に低い圧力にさらすことにより、負圧を提供するようにアキュムレータ33を動作させることができる。
上記開示は、主に、水供給導管内の水から溶存気体を解放することに関するが、エアトラップ32は、水供給部30から提供される水にすでに存在する気泡を閉じ込めるように機能することができる。したがって、透析システムは、空気を閉じ込めるように配置されたエアトラップ32を含むことができるが、水から溶存気体を遊離するのに役立つように、水供給導管または別の場所に負圧を確立するように必ずしも動作しない。また、本発明の態様は、処置に使用するために調製された透析液を受け取るシステムと使用することができる。たとえば、水供給部30は、調製された透析液を(たとえば、リザーバから)実際に提供することができ、システムから混合回路25をなくすことができる。したがって、供給導管の水供給部30(透析液供給部)と方向付け回路142またはシステムの他の透析液回路との間に、エアトラップ32および/またはアキュムレータ33を設けることができる。
図90〜図92は、1つの例示的な実施形態におけるエアトラップ32の側面図、底面図および断面図を示す。この実施形態でのエアトラップ32は、水供給部30に接続するための入口32aと、混合回路25に接続するための出口32bとを含む。図91に示すように、エアトラップ32は略円筒形状を有するが、円筒、ボックス等、他の形状を有するように配置することができる。エアトラップ32は、概して、入口32aが出口32bの上方に配置されるように向けることができ、それにより、エアトラップ32内に導入されるかまたはエアトラップ32内で遊離されるいかなる空気も、エアトラップ32の頂部に残ることができ、一方で、エアトラップ32の底部の空気のない水は、出口32bから出ることができる。当然ながら、入口32aおよび出口32bが同じレベルにあるかあるいは異なるレベルにある、好適なバッフルがある、蛇行流配置、または空気が出口32bに導かれるのを防止するのに役立つエアトラップの他の特徴等、他の配置も可能である。図92の断面図に示すように、エアトラップ32は、2つの部分から形成することができ、たとえば、各々は、たとえば接合部における漏れを防止するのに役立つようにOリングシールまたは他の係合を使用して互いに接合される略半球形状を有する。
エアトラップ32で収集される空気は、あらゆる好適な方法で除去することができる。たとえば、図90のエアトラップ32は、水の流れを出口32bから入口32aに反転させることにより、空気を除去することができ、それにより、空気は入口32aから出て、水供給導管内で水供給部30に向かって移動することができる。空気は、エアトラップ32にあっても水供給導管の別の場所にあっても、(たとえば、弁の好適な制御により)ドレン31に、(空気をたとえばリザーバ内に放出することができる)水供給部30に、強制的に送ることができ、または排気口あるいは他の特徴を介して放出することができる。エアトラップ32内の水の逆流は、水を水供給部30に向かって押し流すように動作を反転させる混合回路25のポンプ180によってもたらすことができる。
図89を参照すると、たとえば、コントローラは、最初に弁265および271を開放し、ポンプ280を水で充填することにより、エアトラップ32を通して周期的に反転することができる。そして、弁265を閉鎖することができ、弁266および263を開放することができる。そして、たとえば、弁270、272、274および264が閉鎖したままであることを確実にすることにより、代替的な流路を閉鎖することによって、ポンプ280のチャンバをドレンに向かって後方に送達することができる。好ましくは、98および99に示すように、エアトラップ32の入口は、アキュムレータ33の流体入口の上方に位置している。
エアトラップ32は、最大1.5mlまたはそれより多くの空気容量を閉じ込める構成等、あらゆる好適な容積を有することができる。一実施形態では、エアトラップ32は、約1200ml/分の水流量であるときに最大10ml/時の割合で空気を閉じ込めるように配置することができる。当然ながら、エアトラップ32に対して、他の空気容量および/または空気閉じ込め率を使用することができる。
図93〜図96は、アキュムレータの例示的な実施形態を示す。アキュムレータ33は、この例では、アキュムレータ33の液体側への液体側ポート33aを備えた略球状体を含む。ポート33aは水供給導管に流体結合することができ、それにより、水は、アキュムレータ33と水供給導管との間を流れることができる。図95に示すように、隔壁33dが、アキュムレータ33の液体側を気体側から分離する。アキュムレータ33の気体側ポート33bは、水がアキュムレータの液体側に流れ込んでいるかまたはそこから流れ出ているかに応じて、気体がアキュムレータ33の気体側に出入りすることができるように配置されたオリフィス33cを含む。この実施形態では、オリフィス33cは、大気圧に開放されているが、オリフィス33cは、あらゆる好適な静圧源または可変圧源と連通することができる。さらに、オリフィス33cは、要求に応じて制御可能に開閉することができる弁を含むことができる。上述したように、オリフィス33cは、エアトラップ32または水供給導管の別の場所に好適な負圧を提供するのに役立つように配置することができる。たとえば、オリフィス33cは、ポンプ180が水供給導管から水を引き出すときに、水供給導管内で負圧を維持するのに役立つように、空気が好適に低速でアキュムレータの気体側に流れ込むのを可能にするようなサイズとすることができる。他の実施形態では、アキュムレータ33自体が、たとえば水供給導管内の圧力の低下を引き起こす好適な真空にオリフィスをさらすことにより、所望の負圧を提供することができる。
いくつかの実施形態では、アキュムレータ33は、水供給導管内に負圧を提供するのに役立つように配置することができるが、そのように配置される必要はなく、代わりに、水供給導管内で相対的に一定の正圧を維持するのに役立つように機能することができる。たとえば、アキュムレータ33の気体側を正圧で充填することができ、それにより、ポンプ180が水供給導管から水を引き出すとき、アキュムレータ33は、ポート33aから水を追い出して、水供給導管内で正圧を維持するのに役立つ。
アキュムレータ33は、少なくとも27mlの水、またはポンプ180の単一ストロークによって水供給導管から引き出される容量の最大半分またはそれより多くを蓄積する能力等、あらゆる好適な容積を有することができる。当然ながら、アキュムレータは、望ましい場合、より少量またはより大量の水を蓄積するように配置することができる。また、オリフィス33cは、一実施形態では、サイズが約0.1016cm(約0.04インチ)であるが、アキュムレータ33の気体側を出入りする所望の流量を提供するように操作される制御可能弁を含む等、他のサイズまたは構成を有することができる。隔壁33dは、上述したポッドポンプの膜に対して使用されたもののような構成を有することができる。したがって、隔壁33dは、半球状シェル構成を有し、シリコーンゴム等の可撓性材料から作製することができる。この場合もまた、隔壁33は、あらゆる好適な方法で配置することができる。
図97〜図100は、図46A〜図46Eを参照して図示し記載したものと略同一であるカセットアセンブリのさまざまな図を示す。図97〜図100の実施形態と図46A〜図46Eの実施形態との間の主のな相違のうちの2つは、図97〜図100の実施形態がエアトラップ32およびアキュムレータ33を含むということである。したがって、図97〜図100のカセットアセンブリは、図89に示すもののような流路を有するように配置することができる。図97〜図100に示すように、図90〜図92に示すもののようなエアトラップ32が、カセットアセンブリの後側の外部透析液カセット600と内部透析液カセット700との間でカセットアセンブリに追加される。また、図93〜図95に示すもののようなアキュムレータ33が、内部透析液カセット700に隣接して、カセットアセンブリの右側に追加される。明確にするために、(たとえば、シリコーンゴム管によって行われる)流体接続は示していないが、エアトラップ32およびアキュムレータ33は、互いに、水供給部30にかつ(混合回路ポンプ502および504に接続するために)混合カセット500に流体結合される。さらに、図97〜図100は、平衡チャンバ706のうちの1つが、図85〜図88を参照して記載したもののような血液漏れセンサを含むことができることを示す。これらの追加および変更以外は、カセットアセンブリは、図46A〜図46Eを参照して記載したものと同様に動作する。
本発明の別の態様は、概して、システムのためのユーザインタフェースに関する。ユーザインタフェースは、患者、家族、補助する人、専門の医療提供者または保守技術者等の個人が操作して、処置オプションなどのオプションを入力し、処置プロトコル、処置の状況、装置の状況/状態および/または患者の状態に関する情報等の情報を受け取ることができる。ユーザインタフェースは、処置デバイスに取り付け、処置デバイスの1つまたは複数のプロセッサによって制御することができる。別の実施形態では、ユーザインタフェースは、処置プロトコル、処置の状況および/または患者の状態等に関するデータまたはコマンドを受信し、送信し、または送受信することができるリモートデバイスであり得る。リモートデバイスは、処置デバイスとの間でデータおよび/または命令を送信しかつ/または受信するための、光および/または電子配線、ブルートゥース(BLUETOOTH(登録商標))、RF周波数、光周波数、IR周波数、超音波周波数、磁気効果等を利用する無線通信を含む、あらゆる好適な技法によって、処置デバイスに接続することができる。場合によっては、データおよび/またはコマンドが処置デバイスまたはリモートデバイスによって受け取られるときを示すことができる、指示装置を使用することができる。リモートデバイスは、処置デバイスにデータよび/またはコマンドを入力するための、キーボード、タッチスクリーン、静電容量式入力デバイス等の入力デバイスを含むことができる。
いくつかの実施形態では、処置デバイスの1つまたは複数のプロセッサは、一意の識別コードを有することができ、リモートデバイスは、処置の一意の識別コードを読み取り学習する機能を含むことができる。別法として、ユーザは、一意の識別コードでプログラムすることができる。処置デバイスおよびリモートデバイスは、一意の識別コードを使用して、他の処置デバイスを含む他の受信機との干渉を実質的に回避することができる。
一組の実施形態では、処置デバイスは、ウェブ対応サーバに接続される1つまたは複数のプロセッサを有することができ、ユーザインタフェースデバイスは、このウェブ対応サーバ上で実行することができる。一実施形態では、デバイスは外部CPU(たとえば、GUI、グラフィカルユーザインタフェース)を使用して、インターネットプロトコルを介して処理装置内のまたは処理デバイスに接続された内蔵ウェブサーバと通信する。デバイス内部にウェブページを表示することができ、GUIは、802.11bまたは他のこうした有線あるいは無線イーサネット(登録商標)(Ethernet)等価物を介して直接通信することができる。GUIは、患者、家族、補助する人、専門の医療提供者または保守技術者等の個人が操作して、処置オプション等のオプションを入力し、処置プロトコル、処置の状況、機械の状況/状態および/または患者の状態に関する情報等の情報を受け取ることができる。
別の実施形態では、処置デバイス内のまたは処置デバイスに接続された内蔵ウェブサーバは、インターネットの適切なサイトと通信することができる。インターネットサイトは、サイトにアクセスするためにパスワードまたは他のユーザ識別を必要とする場合がある。別の実施形態では、ユーザは、ユーザおよびアクセスプロバイダのタイプに応じて異なる情報にアクセスすることができる。たとえば、患者または専門の介護者は、処置オプションおよび患者の情報に完全にアクセスすることができるが、家族は、所与の処置または処置の頻度に対する状況および残っている時間等、所定の患者の情報にアクセスすることができる。保守技術者、透析センターまたは処置デバイス提供者は、故障対策、予防保守、臨床試験等に対する他の情報にアクセスすることができる。ウェブ対応サーバを使用することにより、2人以上の個人が種々の目的で同時に患者情報にアクセスすることができる。
たとえば、有線または無線通信、インターネットプロトコルを介する、またはウェブ対応サーバを利用するインターネットサイトを通すリモートデバイスの使用により、透析センターは、各患者をより有効にモニタリングし、かつ/またはより効率的により多くの患者を同時にモニタリングすることができる。いくつかの実施形態では、リモートデバイスは、夜間の透析処置中に患者をモニタリングし、患者の状態が所定のパラメータを満たさない場合に警報を発するように、夜間モニタまたは夜間リモート警報としての役割を果たすことができる。場合によっては、リモートデバイスを使用して、患者、家族、補助する人、専門の医療提供者または保守技術者に対して警報を発することができる。これらの警報は、限定されないが、流体の漏れ、閉塞、正常なパラメータ外の温度等、いくつかの状態に対して個人に警報を発することができる。これらの警報は、可聴警報、視覚的警報および/または振動警報であり得る。
図60に、ユーザインタフェース/処置デバイスの組合せの例示的な実施形態を示す。特に、図60は、透析ユニット6001およびユーザインタフェースユニット6002を備える例示的な血液透析システム6000の斜視図を示す。この実施形態では、透析ユニット6001は、血液透析を行うために好適な構成要素を含むハウジング6004を備えている。たとえば、透析ユニット6001は、たとえば図2Aに関連して記載した、混合回路25、血流回路10、平衡回路143および外側あるいは外部透析回路142を含むことができる。透析ユニット6001はまた、システム6000の動作に対して必要なすべての患者アクセス接続部および透析液流体接続部も含むことができる。
ユーザインタフェースユニット6002は、血液透析患者等のユーザが接続部6006を介して透析ユニット6001の動作を制御するために使用することができるユーザインタフェース6003を備えている。接続部6006は、バス、無線接続、ローカルエリアネットワーク(たとえば、イーサネット(登録商標)(Ethernet)ローカルエリアネットワーク)および/または広域ネットワーク(たとえば、インターネット)による接続等のあらゆる好適なデータ接続を含むことができる。ユーザインタフェースユニット6002は、ユーザインタフェースの動作を可能にする構成要素を含むハウジング6005をさらに備えている。図60の例では、ユーザインタフェース6003は、タッチ制御および画面に提示されるグラフィカルユーザインタフェースとの対話を可能にするタッチセンシティブオーバレイを備えた表示画面を備えている。しかしながら、キーボードおよび/またはポインティングデバイス等の別個の入力機構等、他の多くのタイプのユーザインタフェースが可能である。ユーザインタフェース6002は、押しボタン、スピーカ、音声コマンドを受け取るマイクロホン等、他の機能も含むことができる。
ユーザインタフェースとの無線通信
図124〜図129は、本開示の実施形態によるタブレットとベースとの間で通信する方法1を示すフローチャート図を示す。たとえば、方法2001は、タブレットと血液透析装置との間で通信する方法であり得る。
方法2001は、有線通信を使用してペアリングプロトコルを通して無線接続を確立することにより、タブレットとベースとの間での通信を容易にすることができる。たとえば、タブレットは、ブルートゥース(BLUETOOTH(登録商標))プロトコルを用いて2つのデバイスを合わせてペアリングするために使用されるUSBケーブルを通して、ベースに物理的に接続することができ、ペアリングの後、デバイスは、ブルートゥース(BLUETOOTH(登録商標))プロトコルを用いて互いに無線で通信することができる。タブレットは、ベースに対するユーザインタフェースを提供することができる。たとえば、タブレットで実行しているインタフェースプログラムが、患者の透析処置を制御しかつ/またはモニタリングするために、血液透析装置に対するインタフェースを提供することができる。
方法2001は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されるように構成された動作可能なプロセッサ実行可能命令の組によって実施することができる。1つまたは複数のプロセッサは、ベースにかつ/またはタブレットに存在することができる。動作可能なプロセッサ実行可能命令の組は、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、ディスクメモリ、EEPROM、光ベースドライブまたは他のメモリ等、非一時的なプロセッサ可読メモリに格納することができる。メモリは、ベースに、またはタブレットに存在することができ、かつ/またはベースおよびタブレットは、各々、それぞれのメモリおよび1つまたは複数のそれぞれのプロセッサを有することができる。1つまたは複数のプロセッサは、メモリと作動的に通信して、メモリから動作可能なプロセッサ実行可能命令の組を読み出すことができる。1つまたは複数のプロセッサは、それらの命令を実行して図124〜図129の方法2001を行うことができる。
1つまたは複数のプロセッサは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、アセンブリベースのプロセッサ、MIPSプロセッサ、RISCプロセッサ、CISCプロセッサ、パラレルあるいはマルチコアプロセッサ、CPLD、PLA、FPGA、仮想プロセッサ等のうちの1つあるいは複数またはそれらの組合せであり得る。
本開示のいくつかの実施形態では、方法2001は、行為2002〜2015を含む。行為2002は、タブレットが物理的接続を通してベースに接続されているか否かを判断する。たとえば、タブレットは、ドック、ケーブル、ワイヤ、光ファイバリンク等を通して、血液透析装置に接続可能であり得る。タブレットおよび/またはベースは、タブレットおよびベースが、たとえばUSB接続を介して互いに物理的に接続されていると判断することができる。行為2003は、物理的接続を通してタブレットとベースとの間に第1通信リンクを確立する。たとえば、行為2003は、適切なソフトウェアインタフェースを確立することができ、かつ/またはタブレットとベースとの間でデータがそれらの間で通信され得るようにハンドシェイクを行うことができる。
行為2004は、必要な場合に、第1通信リンクを通してタブレット上のインタフェースプログラムを更新する。図126は、行為2004の1つの具体的な実施形態を示し、それについては後述する。行為2004は、たとえば、タブレットがインタフェースプログラムの最新バージョンを含むか否かを判断することができる。タブレットが、インタフェースプログラムの最新バージョンを含まない場合、ベースおよび/またはタブレットは、インタフェースソフトウェアの古いバージョンに置き換わる(たとえば、上書きする)インタフェースソフトウェアの最新バージョンを(たとえば、サーバから)ダウンロードする。タブレット上のインタフェースソフトウェアは、ユーザインタフェース(たとえば、タッチスクリーン、キーボードおよび/または音声コマンドを受け取るマイクロホン)と、ユーザがタブレットを使用してベースと通信する機能とを提供する。
行為2005は、第1通信リンクを使用してタブレットとベースとの間に第2通信リンクを確立する。図127は、行為2005の一実施形態を示し、それについては後述する。1つの具体的な実施形態では、行為2005は、ブルートゥース(BLUETOOTH(登録商標))プロトコルを用いてタブレットとベースとを合わせてペアリングすることにより、第2通信リンクを確立する。ペアリングの後、第2通信リンクを用いてデータを通信することができる。データは、あらゆる既知の暗号化アルゴリズムを用いて第2通信リンクによって通信することができ、対称暗号化、非対称暗号化、公開鍵インフラストラクチャ暗号化等を含むことができる。行為2006は、第2通信リンクを用いてベースからタブレットにデータを送信する。データは、ベースの処置の進行、ベースの動作および/またはベースからのあらゆるエラーメッセージに関する情報を含むことができる。行為2007は、ベースから通信されたデータに従ってタブレットにデータを表示する。行為2008は、タブレットを用いて患者の処置を初期化する。たとえば、ユーザは、ベースを使用して患者を処置するために処置パラメータ、たとえば血液透析パラメータを選択することができる。処置パラメータは、第1通信リンクまたは第2通信リンクを介して通信することができる。いくつかの実施形態では、処置パラメータは、第1通信リンクおよび第2通信リンクのうちの所定の好ましい一方を用いて通信することができる。たとえば、第2通信リンクは、第1通信リンクが利用可能でないときに処置パラメータを通信することができる。しかしながら、別の具体的な実施形態では、処置パラメータは、第2通信リンクを介して常に通信される。
行為2009において、ベースは引き続き動作する。たとえば、ベースは、血液透析装置とすることができ、タブレットは、血液透析装置に対して開始コマンドを通信する。別の例示的な実施形態では、血液透析装置の開始ボタンを押下して、患者の処置を開始することができる。さらなる実施形態では、ユーザは動作を開始する必要はなく、ベースが自動的に動作を開始する。
行為2010は、タブレットとベースとの間の物理的接続を除去する。たとえば、ユーザは、タブレットとベースとの間の物理的接続を切断するかまたは切り離すことができる。行為2011は、第2通信リンクのリンク品質値が閾値を上回る限り、タブレットとベースとの間でデータを通信する。行為2012は、リンク品質値が閾値未満となる場合に、ヘッドレス状態に入る。ヘッドレス状態については、図128および図129を参照して後述する。リンク品質値が閾値未満になると、タブレットおよびベースがともにまたは個々にヘッドレス状態に入ることができる。リンク品質値は、ブルートゥース(BLUETOOTH(登録商標))標準規格の一部とすることができ、ビット誤り率、スループットレート、信号強度に基づくことができ、または当業者には既知である任意の測定基準を使用することができる。
行為2013において、タブレットおよび/またはベースは、リンク品質値が閾値未満のままである限り、ヘッドレス状態であり続ける。行為204は、リンク品質値が所定の閾値より上に戻っているか否かを判断し、行為2015は、リンク品質値が所定閾値より上に戻った場合、ヘッドレス状態から出る。いくつかの実施形態では、タブレットまたはベースがヘッドレス状態に入ると、第1リンク品質値より大きい第2リンク品質値により、タブレットおよび/またはベースはヘッドレス状態から出る。
図126は、図124の行為2004の実施形態のフローチャート図を示す。行為2004は、行為2016〜2019を含む。行為2016は、第1通信リンクを通してタブレットからベースにインタフェースプログラムのバージョン番号を通信する。行為2017は、タブレット上のインタフェースプログラムが最新バージョンであるか否かを判断する。たとえば、ベースは、サーバと通信して、いずれのバージョン番号がインタフェースプログラムの最新バージョンであるかを判断することができる。行為2018において、ベースは、たとえば、インタフェースプログラムの更新バージョンがある場合、サーバからインタフェースプログラムの更新バージョンを検索する。行為2019は、インタフェースプログラムをインタフェースプログラムの更新バージョンで上書きする。たとえば、タブレット19は、ベースから更新されたインタフェースプログラムを検索し、先行するインタフェースプログラムを更新されたインタフェースプログラムで上書きすることができるプログラムを含むことができる。
図1Dは、図124の行為2005の実施形態のフローチャート図を示す。図127の行為2005は、行為2020〜2025を含む。行為2020は、ベースが別のタブレットとペアリングされているか否かを判断する。行為2021は、必要な場合、他のタブレットとベースとの間のあらゆるペアリングを中断する。たとえば、行為2021において、別のタブレットとベースとの間の他のいかなるペアリングも、ベースに物理的に接続されたタブレットをベースにペアリングすることができるように、中断される。行為2022において、ベースは、第1通信リンクを用いて行為2023においてベースからタブレットに通信される構成ファイルを生成する。行為2024において、タブレットは、行為2025において無線通信のためにタブレットにベースをペアリングするために使用される構成ファイルを読み出して、構成ファイルに従ってタブレットとベースとの間に第2通信リンクを確立する。
図128は、図125の行為2011の実施形態を示すフローチャート図を示す。図128の行為2011は、行為2026〜2027を含む。行為2026は、ベースとタブレットとの間のデータの通信を一時停止する。行為2027において、タブレットは、ユーザに対してタブレットをベースにより近づけるように要求するメッセージをユーザインタフェースに表示する。図129は、図125の行為2012の実施形態を示すフローチャート図を示す。図128の行為2012は、行為2027〜2028を含む。行為2027は、ベースとタブレットとの間のデータの通信を一時停止する。行為2028は、ベースがヘッドレス状態に入ったことを示す。たとえば、ベースは、インジケータ灯を点滅させ、スピーカに電子音を鳴らさせることができる。
図145A〜図145Bは、本開示の実施形態による透析装置用のユーザインタフェースを有するタブレットとともに使用する場合の透析装置の動作を示す状態図1145を示す。状態図1145は、状態1146〜1160を含む。
図145Aにおいて、状態図1145の理解を容易にするために、凡例1161を示す。凡例は、状態1146〜1160の各々に対して透析装置におけるボタン1162、1163の各々および状況表示灯1164の動作を表示し、それには、ボタン1162、1163および状況表示灯1164に対するそれぞれのバックライトLEDの動作が含まれる。さらに、凡例1161は、状態1146〜1160の各々とともに使用して、透析装置のスピーカ1165の状態を確定することができる。中に文字「A」、「B」、「C」または「D」という文字がある円を用いて、図145Aの状態を図145Bの状態に接続する。たとえば、図145Aに示す「A」と指定された円の中に通じる矢印は、図145Bにおける「A」と指定された円から続いている。すなわち、各円の中の各文字指定を用いて、一方の状態が図145Aにあり他方の状態が図145Bにある2つの状態が接続される。
上述したように、状態図1145は、ユーザインタフェースを有するタブレットとともに用いられる場合に透析装置(たとえば、血液透析装置)が存在する可能性がある状態を示す。タブレットを用いて、(1)透析装置の動作をモニタリングし、(2)透析装置の動作を制御し、(3)透析装置からエラー状態を受け取り、(4)透析装置の動作をモニタリングして何らかのエラー状態が存在するか否かを判断し、(5)透析装置の動作をモニタリングして安全でない状態が存在するか否かを判断し、(6)サーバに送信するためにエラーまたは動作パラメータを格納し、(7)透析装置に格納するために透析装置に送信するためにまたはサーバに中継するために、エラーまたは動作パラメータを格納し、(8)かつ/または処置を受けている間に患者の娯楽(たとえば、ビデオゲーム、映画、音楽またはウェブ閲覧)を提供することができる。
本開示のいくつかの実施形態では、タブレットは、冗長グラフィカルユーザインタフェース等、冗長ユーザインタフェースが結合された透析装置と使用される。本開示のさらなる実施形態では、タブレットは、グラフィカルユーザインタフェースを含み、透析装置は、ボタンおよび表示灯を含むが、グラフィカルユーザインタフェースは含まない。
状態図1145は、方法またはプロセスとして実施することができる。さらに、装置は、状態図1145の状態で存在するように構成することができる。たとえば、上述したように、図145A〜図145Bの状態図1145に従って状態1146〜1160で存在するように血液透析装置を構成することができる。
図145A〜図145Bの状態図1145は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されるように構成された動作可能なプロセッサ実行可能命令の組(たとえば、プロセッサによって実施される方法)によって実施することができる。1つまたは複数のプロセッサは、透析装置に存在することができる。動作可能なプロセッサ実行可能命令の組は、非一時的プロセッサ可読メモリ、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、ディスクメモリ、EEPROM、光ベースドライブまたは他のメモリ等のメモリに格納することができる。メモリは、透析装置に存在することができる。1つまたは複数のプロセッサは、メモリと作動的に通信してメモリから動作可能なプロセッサ実行可能命令の組を読み出すことができる。1つまたは複数のプロセッサは、それらの命令を実行して、図145A〜図145Bの状態図1145を行うことができる。
1つまたは複数のプロセッサは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、アセンブリベースのプロセッサ、MIPSプロセッサ、RISCプロセッサ、CISCプロセッサ、パラレルまたはマルチコアプロセッサ、CPLD、PLA、FPGA、仮想プロセッサ等のうちの1つあるいは複数またはそれらの何らかの組合せであり得る。
再び図145A〜図145Bを参照すると、状態1146では、透析装置は処置動作にあり、透析装置とタブレットとの間の通信が発生している。すなわち、状態1146において、透析装置は患者を処置しており、タブレットは、透析装置と十分に通信している。透析装置間の通信は、ブルートゥース(BLUETOOTH(登録商標))リンク等の無線リンクを介することができる。無線リンクのプロトコルは、透析装置とタブレットとの間のペアリングを必要とする場合がある。ペアリングは、USB接続を介する等、有線リンクを利用して構成するかまたは開始することができる。いくつかの実施形態では、無線通信は、ブルートゥース(BLUETOOTH(登録商標))LE、WiFi、ZIGBEE(登録商標)、X−bee、超広帯域通信、広帯域通信、符号分割多元接続、時分割多重化、衝突回避ありまたはなしの搬送波感知多重アクセス多重化、空間分割多重化、周波数分割多重化、回線モード無線多重化、無線統計多重化、直交周波数分割多重化等のうちの1つであり得る。
タブレットと透析装置との間の無線リンクの品質を記述するリンク品質指標が所定閾値未満になると、透析装置は状態1147に入る。状態1147では、透析装置は、患者を処置し続け、タブレットからの通信は無視する。警報が発生すると、警報が血液ポンプ停止レベル警報でない限り、状態図1145は状態1147で動作し続ける(たとえば、「ポンプ停止」レベル警報ではない警報が発生する場合、ループバック矢印1166に示すように、透析装置は状態1147に再度入る)。
リンク品質値が所定閾値より上に戻った場合、透析は状態1146に戻る。しかしながら、状態1147は、状態1148、1152、1151、1153または1154に進むことができる。ユーザが停止ボタン1163を押して5秒間保持した場合、透析装置は状態1148に入る。状態1147から出る前に処置が完了すると、透析装置は状態1152に入る(図145Bを参照)。状態1147にある間、ユーザが流体注入ボタン1162を押すと、血液透析装置は、(注入限界またはタンク限界に達した場合)状態1152に入り、またはさらなる注入流体が利用可能である(たとえば、注入限界およびタンク限界のいずれも満たされていない)場合、状態1151に入る。注入限界は、処置セッション中に患者に注入することができる流体の量に対する限界である。タンク限界は、タンクから除去することができる流体の閾値量(たとえば、約1リットル〜約1.1リットル)である。タンク限界に達した後、患者の血液への流体の注入は、返血動作を行うために十分な流体が必要であるため、可能ではない。血液ポンプ停止レベル警報が発生した場合、透析装置は、返血フラグが、返血が可能であることを示す場合は状態1153に、または返血フラグが、返血が可能でないことを示す場合は状態1154に入る。
透析装置が状態1148に入った場合、それは、患者またはユーザが(停止ボタン1163を用いて)透析装置に対して処置を停止するように要求したためである。状態1148は、透析装置に対して「トラップ」状態を形成するように状態1149および1150によって形成されたトラップへの通路である。すなわち、透析装置は、状態1148に入ると、その後、状態1149または1150のうちの一方にしか入ることができない。透析装置のリセットまたはリブートは、このトラップから出る唯一の方法である。状態1148は、患者起動フェイルセーフ(「PIF」)である。状態1148では、スピーカ1165は可聴の電子音を発する。ユーザが再度停止ボタン1163を押すと、透析装置は状態1149に入り、その場合、透析装置はPIF状態にあるが、スピーカ1165は電子音を発生していない。患者またはユーザがさらに再度停止ボタン1163を押すと、透析装置は状態1150に入り、フロントパネル灯1167をオフにする。さらに停止ボタン1163を押すことにより、透析装置は、フロントパネル灯1167を再度オンにする状態1149に戻る。
上述したように、透析装置が状態1147にあり、ユーザが流体注入ボタン1162を押すと、透析装置の膜を横切って患者の血液に入るように送達することができる追加の流体がある場合、透析装置は状態1151に入る。状態1151にある場合、注入流体が患者の血液に注入された後、透析装置は状態1147に戻る。
状態1147では、血液ポンプ停止レベル警報であるように予め設定された警報の場合、透析装置は状態1147から状態1153および1154のうちの一方に入る。透析装置は、返血フラグが、返血が可能であることを示す場合に、状態1153に入り、返血フラグが、返血が可能でないことを示す場合に、状態1154に入る。
再度状態1152を参照すると、処置が状態1147から完了した場合、またはユーザが流体注入ボタン1162を押し、かつ注入限界またはタンク限界のうちの一方に達した場合、透析装置は状態1152に入る。状態1152では、透析装置は返血動作を行う。返血動作では、透析装置の血液ポンプは停止し、流体は透析装置に注入されて、透析装置から血液を押しのけ、それにより、血液が動脈血液チューブおよび静脈血液チューブの両方を介して患者に戻される。
状態1152において返血が完了した後、透析装置は、追加の返血が可能である場合は状態1155に入り、またはさらなる返血が可能である場合は状態1156に入る。返血可能フラグを用いることにより、返血が可能であるか否かを示すことができる。
さらなる返血が可能である場合、透析装置は状態1155に入り、その時点で、ユーザがドアを閉鎖し、それにより透析装置が状態1157に入る場合、使用は、流体注入ボタン1162を押して状態1152に戻ることができる。
さらなる返血が可能ではなく、かつ透析装置が状態1152から状態1156に入る場合、フロントパネルスピーカ1165は、3分毎に3回電子音を発生して、ユーザに対して返血動作が完了したことを通知する。状態1156から、ドアが閉じられると、透析装置は状態1157に入る。ドアを閉じることにより、患者が動脈チューブまたは静脈チューブに接続されるのが防止される。
透析装置は、ユーザが流体注入ボタン1162を押して追加の返血を行う場合、状態1153から状態1152に遷移することができる。そうでない場合、透析装置は状態1153から出て状態1157に入る。
状態1154において、透析装置は、ドアが閉じられたときに状態1157に入る。透析装置が状態1157にあるとき、セルフテスト、動脈ドレンコネクタが動脈チューブに結合されている(たとえば、患者が自身からこのチューブを切断した)か否かを判断する検査、静脈ドレンコネクタが静脈チューブに結合されているか否かの検査、血液路の洗浄、流体経路の消毒等を含む、さまざまなルーチンが透析装置内で行われる。状態1157にある間、ドアが空けられると、透析装置は状態1160に入り、ドアが閉じられるまでフロントパネルスピーカ1165から連続的に電子音を発することによりドア開放警報を発し、ドアが閉められると、透析装置は状態1157に戻る。
タブレットと透析装置との間の通信リンクのリンク品質値が、状態1157にある間に所定閾値より上に戻った場合、透析装置は、タブレットと透析装置との間の通信を開始する通常の再循環動作のために、状態1159に入る。状態1159にある間、タブレットのリンク品質が再び所定閾値を下回る場合、透析装置は状態1158に入り、リンク品質が所定閾値より上に戻った場合に状態1159に再度戻ることができる。状態1158および1159は再循環動作を継続する。状態1158において、処置が依然として処置の準備をしており、ドア閉鎖信号が検出された場合、装置は状態1157に戻る。
図60の血液透析システム6000は、透析ユニット6001から遠隔でありそれに物理的に結合されたユーザインタフェースユニット6002を備えているが、多くの代替構成が可能である。たとえば、ユーザインタフェースユニット6002は、透析ユニット6001にまたはその中に取り付けることができる。便宜上、そのように取り付けられたユーザインタフェースユニット6002は、異なる場所および位置で使用するためにその取付部から移動可能であり得る。
図61は、透析ユニット6001およびユーザインタフェースユニット6002の各々に対する例示的なハードウェア構成を示す。これらの各々は、別個のCPUによって制御され、それにより、ユーザ体験ソフトウェアから時間および安全性を重視したソフトウェアを分離することができる。治療が開始すると、ユーザインタフェースコンピュータが故障するかまたは切断された場合であっても、治療を完了することができる。これは、ユーザインタフェースユニット6002によって実装されかつ透析ユニット6001の制御プロセッサに接続されたものに対して冗長ないくつかの物理的な制御ボタンおよびインジケータ灯を有することによってサポートすることができる。透析ユニット6001は、ハードウェアアクチュエータを制御する自動化コンピュータ(AC:automation computer)6106と、血液透析関連治療を送達しモニタリングするセンサ6107とを備えている。自動化コンピュータ6106は、処理ユニット6109およびコンピュータ可読媒体6110を含む制御ユニット6108を備えている。処理ユニット6109は、命令を実行し、コンピュータ可読媒体6110に格納されたデータに対して動作を行うことができる、1つまたは複数のプロセッサを備えている。データは、たとえば、患者に対して行われたかまたは行われる可能性がある血液透析工程に関する。システムアーキテクチャは、自動化コンピュータ6106に対して、ソフトウェアアクセス可能な安全センサ6107と(治療の一時停止または中断を安全に可能にする)フェイルセーフ状態を命令できる能力とを与える。並列の独立した半導体デバイスベースのシステムは、冗長安全システムを提供するためにソフトウェアによって制御されるものと同様の点検を行うことができる。これは、たとえば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)で実装することができ、それはまた、1つまたは複数の安全点検が満足されない場合、ソフトウェアシステムとは無関係にフェイルセーフ状態を命令することも可能である。処置セッション中およびその間の両方において、空気圧システム、液圧システムおよび電気システムの完全性を点検することができる。命令は、たとえば、オペレーティングシステム(たとえば、リナックス(LINUX(登録商標)))、アプリケーションプログラム、プログラムモジュールおよび/または特定のプロセスを行う他の符号化命令を含むことができる。
コンピュータ可読媒体6110は、処理ユニット6109がアクセスすることができるあらゆる利用可能な媒体を含むことができる。たとえば、コンピュータ可読媒体6110は、コンピュータ記憶媒体および/または通信媒体を含むことができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータ等の情報を格納するためにあらゆる方法または技術で実装された、揮発性および/または不揮発性メモリならびに取外し可能および/または取外し不可媒体のうちの任意の1つまたは複数を含むことができる。こうしたコンピュータ記憶媒体の例としては、限定されないが、RAM、ROM、ソリッドステートディスク、EEPROM、フラッシュメモリあるいは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタルバーサタイルディスク(DVD:digital versatile disk)あるいは他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を格納するのに使用することができかつ処理ユニット6109がアクセスすることができる他のあらゆる媒体が挙げられる。通信媒体は、典型的には、コンピュータ読取可能命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータを、搬送波または他の移送機構等の変調データ信号で具現化し、あらゆる情報配信媒体を含む。「変調データ信号」という用語は、その特性のうちの1つまたは複数が、信号に情報を符号化するように設定されまたは変更された信号を意味する。例として、通信媒体として、有線ネットワークまたは配線接続等の有線媒体、ならびに/または音響、RF、赤外線および他の無線媒体等の無線媒体を挙げることができる。
コンピュータ可読媒体6110および処理ユニット6109を含む自動化コンピュータ6106のさまざまなコンポーネントは、システムバスを介して電気的に結合することができる。システムバスは、メモリバスまたはメモリコントローラを含むいくつかのタイプのバス構造、周辺バス、および種々のバスアーキテクチャのうちのいずれかを用いるローカルバスのうちの任意のものを含むことができる。例として、こうしたアーキテクチャとしては、業界標準アーキテクチャ(ISA:Industry Standard Architecture)、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA:Micro Channel Architecture)、拡張ISA(EISA:Enhancd ISA)、ビデオ電子工学標準連合(VESA:Video Electronics Standards Associate)および周辺コンポーネントインターコネクト(PCI)を挙げることができる。
自動化コンピュータ6106は、さまざまな入力デバイスおよび/または出力デバイスを制御ユニット6108に結合することができるように、ユニバーサルシリアルバス(USB:universal serial bus)インタフェース6113をさらに含むことができる。こうした入力デバイスおよび/または出力デバイスの例としては、モニタ、スピーカ、プリンタ、キーボード、ポインティングデバイス(たとえば、マウス)、スキャナ、携帯情報端末、マイクロホンおよび他の周辺デバイスが挙げられる。USBは、周辺デバイスを接続するために使用することができるインタフェースの単に1つの例示的なタイプである。代りに他のインタフェースを使用することができる。
上述したように、透析ユニット6001は、血液透析工程を行いかつモニタリングする構成要素を含む。こうした構成要素には、センサおよびアクチュエータ6107が含まれる。制御ユニット6108をセンサおよびアクチュエータ6107に結合するために、自動化コンピュータはハードウェアインタフェース6111を含むことができる。ハードウェアインタフェース6111は、センサおよびアクチュエータ6107に入力を提供しかつそこから出力を受け取ることができる。
自動化コンピュータ6106は、コンピュータがローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)および/または広域ネットワーク(WAN:wide area network)内のもの等、ネットワーク接続デバイスに接続することができるネットワークインタフェース6112をさらに備えることができる。たとえば、ネットワークインタフェース6112により、透析ユニット6001は、イーサネット(登録商標)(Ethernet)LAN等のLANおよび/またはインターネット等のWANを含むことができ、無線でも有線でもあり得るネットワーク6114で、ユーザインタフェースユニット6002とデータを交換することができる。当然ながら、透析ユニット6001は、別法としてまたはさらに、バスまたは他のデータ接続でユーザインタフェースユニット6002とデータを交換することができる。
ユーザインタフェースユニット6002は、ユーザに情報を表示しユーザから入力を受け取るグラフィカルユーザインタフェース6115等、ユーザインタフェースを制御するユーザインタフェースコンピュータ6119を備えている。自動化コンピュータ6106と同様に、ユーザインタフェースコンピュータ6119は、処理ユニット6117およびコンピュータ可読媒体6118を有する制御ユニット6116と、USBインタフェース6121と、ネットワークインタフェース6120とを備え、それらの各々は、自動化コンピュータ6119におけるそれらの対応物と同じかまたは同様であり得る。さらに、ユーザインタフェースコンピュータ6119は、制御ユニット6116をグラフィカルユーザインタフェース6115に結合するグラフィックスインタフェース6122を含むことができる。好ましい実装形態では、ユーザインタフェースコンピュータ6119ソフトウェアは、自動化コンピュータ6106から受け取るデータを解釈するタスクが課せられるのではなく、ユーザに分かりやすいようにデータを表示するタスクが課せられる。
図62は、自動化コンピュータ6106およびユーザインタフェースコンピュータ6119それぞれの処理ユニット6109および6117において実行することができるさまざまな例示的なソフトウェアプロセスを概略的に示す。図示するプロセスは、エグゼクティブプロセスが起動しモニタリングすることができる。たとえば、AC処理ユニット6109およびUIC処理ユニット6117は、それぞれ、所要の処理ユニット内でプロセスを起動し、子プロセスの実行ステータスを判断する通信機構を提供するために、ACエグゼクティブ6201およびUICエグゼクティブ6207をそれぞれ含む。エグゼクティブが、各々、子プロセスをモニタリングして、各々が予測したように開始し実行し続けていることを確実にする。特に、ACエグゼクティブ6201およびUICエグゼクティブ6207はハングプロセスを検出することができる。子プロセスが終了するかまたは正しく機能しなくなると、各エグゼクティブプロセスは、システムが安全に動作し続けることを確実にするために、適切な措置をとることができる。これは、プロセスを終了しUICエグゼクティブ6207に通知すること、システムをシャットダウンさせること、または安全性を重視しないプロセスを再開させることを含むことができる。UICプロセッサでは、これは、オペレータに通知することと、ハードキーを用いて処置が完了するのを可能にすることとを含むことができる。ACエグゼクティブ6201およびUICエグゼクティブ6207は、リナックス(LINUX(登録商標))親子プロセス関係を使用して、子プロセスの終了に関する通知をオペレーティングシステムから受け取ることができる。これにより、異常なプロセス終了とともに、電源オフシーケンス中の予期された終了を処理することができる。自動化コンピュータ6106ならびにUICエグゼクティブ6201および6207は、それらの実行中のプロセスに関する情報を共有するために、それらの間にメッセージインタフェースを有することができる。ステータス情報は、定期的に共有することができ、それにより、プロセッサユニット6109および6117の両方においてすべてのシステムプロセスの状態を一貫して見ることができる。ACエグゼクティブ6201は、電子回路に対するウォッチドッグ信号を制御し、それにより、いずれかの子プロセスが無応答になるかまたはフェイルセーフ状態を必要とするときに、マシンをフェイルセーフ状態にすることができる。好ましくは、この制御には、入出力サーバは不要であり、この制御はハードウェアレジスタを介して直接発生することができる。
図62の例に示すように、AC処理ユニット6109は、I/Oサーバプロセス6205を含む。I/Oサーバプロセス6205は、透析ユニットのセンサおよびアクチュエータ等のハードウェアに直接アクセスし、他のプロセスが読出し動作および書込み動作を要求するのを可能にするインタフェースを提供する。たとえば、I/Oサーバプロセス6205は、マシンコントローラ6202がセンサおよびアクチュエータから読み出しかつそこに書き込むためのインタフェースを提供することができ、それにより、マシンコントローラをハードウェアの細部から隔離することができる。上述した実施形態では、マシンコントローラ6202のみが、I/Oサーバプロセス6205と通信することができる。インタフェースは、同期メッセージキューであり得る。
上述したマシンコントローラ6202は、マシン動作を制御しマシンの動作ステータスを報告するインタフェースとしての役割を果たす。特に、マシンコントローラ6202は、I/Oサーバプロセス6205を介してセンサから読み出しアクチュエータを設定するコントローラを実装している。これらのコントローラは、機能(たとえば、送出しおよび加熱)が、行われる可能性があるさまざまな血液透析治療をサポートするために種々のパラメータ(たとえば、流量、位相、圧力および温度)を用いてプログラムされるのを可能にするように設計されている。コントローラの構成は、プライミングおよび消毒等、高次のマシン機能を実施するステートマシンによって確立することができる。ステートマシンは、流路およびコントローラ設定点を、マシンの能力と後述する治療アプリケーション6203から受け取る高次のコマンドとに基づいて構成する。マシンコントローラ6202はまた、安全で有効な治療を維持するために、さまざまなセンサに対して安全クロスチェックも行うことができる。マシンのステータスおよび健康の情報は、マシンコントローラ6202によってデータベースに記録することができる。
治療アプリケーション6203は、マシンコントローラ6202に対して、血液透析工程に関する個々の動作を行うように命令することによって、患者の治療を推進する。特に、治療アプリケーション6203は、治療を実施しシステムのモードを制御するステートマシンを実行することができる。ステートマシンは、たとえば、透析液によるシステムのプライミング、患者の装置への接続、患者の消毒、患者の体内への患者の血液の返血、装置の清掃、装置の消毒、装置の部品に対する試験の実行、古いかまたは摩耗した部品の交換、および患者が自身の次の処置のために戻るのを待つことを制御する。治療アプリケーション6203は、治療動作を実施するために、マシンコントローラ6202に対してコマンドを発行し、かつステータス情報を要求する。患者、治療および装置の情報を取得するために、治療アプリケーション6203は、データベースとインタフェースして、情報にアクセスしかつ処置ステータス情報を格納することができる。治療アプリケーション6203は、後述するユーザインタフェースモデル6203プロセスにより、ユーザ選択を転送し治療ステータスをユーザインタフェースに報告を返すインタフェースとして使用することができる。治療アプリケーション6203は、処置の準備、患者の接続、透析、溶液の注入、患者の分離、再循環の準備、消毒、リンスおよび使い捨て品の交換を含むステートマシンを実装する。治療アプリケーション6203プロセスはまた、日常的な処置を準備しかつ送達する他のすべての治療アプリケーションの動作の順序付けを担当するマスタ制御モジュールも含む。
治療アプリケーション6203と同様に、ユーザインタフェース(UI:user interface)モデル6206は、AC処理ユニット6109で実行する。UIモデル6206は、システムおよび患者の現状態について記述する情報を集約し、オペレータ入力を介してシステムの状態に対する変更をサポートする。UIモデル6206は、ユーザインタフェースディスプレイを制御する基盤ソフトウェアに影響を与えることなくユーザインタフェースの内容を変更することを可能にすることにより、ユーザインタフェースディスプレイの内容を、内容に関連しない態様(たとえば、提示)から分離する。したがって、UIモデル6206に対する変更は、ユーザインタフェースによって提供される視覚的体験に影響を与えることなく行うことができる。UIモデル6206にはディスプレイは直接関連しておらず、UIモデル6206は、ユーザインタフェースユニット6002(図61)のGUI6115に対して、画面を表示し情報を戻すように命令する。たとえば、ユーザが新たな画面に移動するとき、UIモデル6206は、ユーザインタフェースユニット6002に対して、新たな画面を生成するために使用される情報を送信することができる。UIモデル6206はまた、ユーザインタフェースユニット6002から受け取られるユーザデータを確認することも可能であり、確認すると、それに基づくユーザデータまたはコマンドを治療アプリケーション6203に転送する。
ユーザインタフェースユニット6002のGUI6115(図61)に対してインタラクティブディスプレイを生成するために、UIビュープロセス6208は、ユーザインタフェースコンピュータのUIプロセッサ6117で実行する。UIビュープロセス6208は、画面の流れまたは治療状態を追跡する必要はない。代わりに、UIビュープロセス6208は、AC処理ユニット6109で実行しているUIモデル6206から、ユーザに対して処置の現状態について何を、かついかに表示するかとともに、何を入力することができるかを指定する情報を受け取ることができる。結果として、GUI6115は、システムの動作に影響を与えることなく終了し再始動することができる。さらに、GUI6115は、ユーザ入力確認することを担当する必要はない。UIビュー6208によって受け取られるすべての入力およびコマンドは、UIモデル6206に送信しそれによって確認することができる。したがって、ユーザインタフェースのすべての安全性を重視した態様は、UIモデル6206によって処理することができる。安全に関連しないプロセス等のいくつかのプロセスでは、UIモデル6206の関与は不要である。たとえば、ユーザインタフェースコンピュータのデータベースに格納された情報にアクセスすることができるために、UIモデル6206によっていかなる機能も実行される必要はない。
リモートアクセスアプリケーション6210は、同様にUIプロセッサ6117で実行して、外部機器へのインタフェースを提供する。たとえば、リモートアクセスアプリケーション6210は、ユーザが許可した場合、治療モニタリング、リモートサービス、オンライン支援および他の外部サービスのためのインタフェースを提供することができる。リモートアクセスアプリケーション6210は、リモート接続を開始し、アクセスを確認し、リモートサイトからUIモデル6206への通信をサポートすることを担当することができる。
データベースアクセスアプリケーション6209は、たとえば、ユーザインタフェースコンピュータ6119(図61)に位置することができる1つまたは複数のデータベースにデータを格納し、かつそこからデータを検索する。データベースアクセスアプリケーション6209は、記録の格納および検索を可能にし、処方箋、スケジュールおよび履歴情報等、システムが必要とする情報に対する共通のアクセス点を提供する。データベースアクセスアプリケーション6209はまた、データベースファイルを管理して、それらが定期的にバックアップされるのを確実にすることも可能である。
図62に関連して考察したように、ユーザインタフェースソフトウェアの機能は、AC処理ユニット6109とUIC処理ユニット6117との間で分割することができる。UIモデル6206およびUIコントローラ6204は、協働して、自動化コンピュータ6106においてUIデータおよび状態情報の制御を隔離することができ、それにより、UIビュー6208に対するソフトウェアおよび画面設計の変更が、ユーザインタフェースコンピュータ6119の安全性を重視しないソフトウェアのみに影響を与える。したがって、UIモデル6206は、安全性を重視したレベルで試験し実行することができるが、UIビュー6208は、安全性を重視しないプロセスとして実行することができる。
概して、ユーザインタフェースコンピュータ6119に表示される治療およびマシンの状態情報は、UIモデル6206のみからもたらされる。1つの例示的な実施形態によれば、ユーザインタフェースコンピュータ6119に表示されるすべてのデータが、UIモデル6206からもたらされ、データベース層から直接取得され、またはユーザが入力した一時的編集データである。UIビュー6208に表示されるかまたは格納される唯一のローカル状態情報は、情報のローカルレンダリングを可能にするこの一時的編集データおよび細部であり得る。このように、UIモデル6208は、すべての確認済みデータの表示を維持し制御することができる。安全に関連しないデータは、望ましい場合は、UIビュー6208によってのみ処理することができる。たとえば、表示言語の変更、または安全に関連する内容に影響を与えない他の表示の変更は、UIモデル6206にいかなる影響を与えることもなくUIビュー6208を用いて行うことができる。
図62に示すソフトウェアプロセスとそれらの処理ユニット6109および6117との関連は、上述した機能を行うソフトウェア構成の単なる一例を表すことが理解されるべきである。プロセスは、処理ユニット6109および6117および/または他のローカルプロセッサあるいはリモートプロセッサの間さまざまな代替方法で分散させることができる。さらに、血液透析システムにおいてすべてのプロセスが必要であるとは限らない可能性がある。血液透析システムの機能性を維持しながら、いくつかのプロセスを省略するかまたは変更することができる。
図62Aは、自動化コンピュータ6106およびユーザインタフェースコンピュータ6119に関連して図62に関係して上述したソフトウェアプロセスの相互作用を示す。図62に示すプロセスに加えて、図62Bは、ロギング機能を処理するACロギングプロセス6211およびUIロギングプロセス6212を示す。特に、ACロギングプロセス6211は、自動化コンピュータ6106からのメッセージがユーザインタフェースファイルシステムで生成されたログファイルにログ記録されるのを可能にするように構成することができる。ACロギングプロセス6211はまた、エンジニアリングロギングおよびブラックボックスロギングを可能にするようにも構成することができる。UIロギングプロセス6212は、自動化コンピュータ6106プロセスおよびユーザインタフェースコンピュータ6119プロセスからのシステムメッセージをログ記録してメッセージログを生成するように構成することができる。さらに、UIロギングプロセス6212は、自動化コンピュータ6106プロセスからエンジニアリングデータおよびブラックボックスデータを受け取りログ記録するように構成することができる。
ここで再び図61を参照すると、透析ユニット6001およびユーザインタフェースユニット6002に対する例示的なハードウェア構成が示されており、そこでは、透析ユニットの自動化コンピュータ6106は、センサ/アクチュエータ6107に入力を提供しかつそこから出力を受け取るハードウェアインタフェース6111を含む。代替実装形態によれば、ハードウェアインタフェースは、自動化コンピュータ6106とは別個に提供することができる。このインタフェースは、図61に関連して考察したように、代替安全システムまたは冗長安全システムを提供することができる。
図62Bは、例示的な透析ユニット6001aを示し、そこでは、センサおよびハードウェア制御信号は、センサ/アクチュエータ6107と自動化コンピュータ6106aとは別個のインタフェースボード6124との間で進む。代替実施形態では、インタフェースボード6124は、1つまたは複数のドータボードを備えたマスタボードであり得る。インタフェースボード6124は、データバス6126によってAC処理ユニット6109に接続することができる。データバスは、たとえば、低コストで高速かつ信頼性の高い接続を提供するシリアルペリフェラルインタフェース(SPI:serial peripheral interface)バスであり得る。
インタフェースボード6124は、自動化コンピュータ6106aとは無関係に安全システムを含むことができる。たとえば、インタフェースボード6124は、電気信号の組のいずれかが許容可能な範囲外である場合にフェイルセーフ状態を命令することができる。安全システムは、図62に関連して上述したAC処理ユニット6109のI/Oサーバプロセス6205によって各治療の開始時にプログラムすることができる。I/Oサーバプロセス6205は、選択されたセンサに対する値の許容可能な範囲を設定することができ、これらのセンサに対する許容可能な範囲はI/Oサーバプロセス6205に再度読み込むことにより、それらが正しく送信されかつ格納されたことを確認することができる。1つの例示的な実装形態によれば、インタフェースボード6124は、透析ユニット6001aの自動化コンピュータ6106aのみと通信して、自動化コンピュータ、UIコンピュータ6119または制御ソフトウェアの状態とは無関係に、安全でない状態が発生したときに透析ユニットがフェイルセーフ状態に入るようにする。
(FPGA安全ボード)
一実施形態では、インタフェースボード6124は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)を含む。AC処理ユニット6109のI/Oサーバプロセス6205は、選択されたセンサ信号に対する許容可能な伝導率レベルを含む患者または透析液処方に特定の制限をロードすることができる。ゲートアレイ安全システムにおける患者または透析液処方に特定の安全レベルの使用により、各患者または透析液処方に対して安全システムをカスタマイズすることができ、一方で、主システムプロセッサとは実質的に独立して動作する安全システムのロバストネス、独立性および速度を提供することができる。
インタフェースボード6124のFPGA安全システムは、以下の測定値、すなわち透析液温度および伝導率、限外ろ過流量、弁の状態、ドア、フロントパネルおよびオクルーダドアスイッチ、空気漏れ、流体漏れおよび/またはAC処理ユニット6109からの通信の不在のうちの1つまたは複数をモニタリングすることができる。FPGAは、1つまたは複数の測定値が、その予めプログラムされた許容可能な値または値の範囲を超えた場合(それは安全でない状態の存在を示す)フェイルセーフ状態に入ることができる。インタフェースボード6124のFPGA安全システムは、許容可能な範囲外にある測定値の第1組に対して患者に対する手動の返血を可能にするフェイルセーフ状態を命令することができる。さらに許容可能な範囲外であるかまたは安全でない流体状態を示す測定値の第2組に対して、インタフェースボード6124は、血液を返血することができないフェイルセーフ状態を命令することができる。FPGA安全システムの完全性は、許容可能な状態の可能な範囲外である可能性がある測定値をもたらす物理的状態にセンサをさらす動作試験を介して点検することができ、そこでは、フェイルセーフ状態に入ることが、自動コンピュータによって検証される。自動コンピュータは、所与の時間制限内で2つ以上のレジスタに書き込むことにより、FPGAをリセットすることができる。
一例では、FPGA安全システムにおいて返血なしにフェイルセーフ状態を発生させる可能性がある条件としては、限定されないが以下が挙げられる。すなわち、電動リグが、患者が接続されている7秒間に処方によって指定された正常な伝導率から約7%を超えて外れる、温度が41.5℃を超える、AIL_VenousまたはAIL_Arterialおよび患者における空気が接続され、オクルーダが200ms以内で閉鎖しない、ヘパリンBTS弁およびヘパリンバイアル弁がともに開放している、またはヘパリンBTS弁およびヘパリン空気弁がともに開放している。
FPGA安全システムは、流体(たとえば、透析液)の測定された伝導率が、デバイス内にプログラムされた処方によって事前定義された範囲(たとえば、流体の温度または透析液生成段階によって求められる許容可能な伝導率の計算された範囲)外になると、フェイルセーフ状態に入るようにプログラムすることができる。一例では、最終的な伝導率の許容可能な範囲は、13.6mS/cmから14.6mS/cmである。状態によっては、AC処理ユニット6109は、ユーザに対して、安全でない可能性がある状態について警告を発し、ユーザとともにその状態を解決するように機能することができる。AC処理ユニット6109がユーザと機能して解決する安全でない状態の一例は、血液ラインにおける空気である。FPGA安全システムは、AC処理ユニット6109が適切に反応しない場合にのみフェイルセーフ状態を開始する。血液ラインにおける空気の例では、AC処理ユニット6109は、オクルーダを閉鎖するはずである。FPGA安全システムは、閉鎖されたオクルーダを検出しない場合、フェイルセーフ状態を開始する。
実施形態では、FPGA計算は整数計算に限定され、そのため、処理速度が向上し、インタフェースボード6124のコストおよび複雑性が低減する。AC処理ユニット6109のI/Oサーバプロセス6205は、伝導率、温度および/または圧力をアナログ−デジタル(A−D)値に変換する計算を実行することを担当することができる。さまざまな伝導率、温度および/または圧力に対する等、許容可能な値は、A−D変換された整数値として格納することができる。
FPGA安全システムの安全遮断機能は、安全遮断をトリガするべき状態(フェイルセーフ状態とも呼ぶ)にセンサを意図的にさらすことにより、すべての治療の前に試験することができる。安全遮断機能の検証は、患者が接続されていない間に、AC処理ユニット6109によって行われる。一例では、AC処理ユニット6109は、患者接続状態をイエスに設定し、位置4705(図59)においてcondo_safetyセンサを通して正しい伝導率を有していない透析液からの流体を送り出し、安全モニタがフェイルセーフ状態に入ることを検証する。別の例では、AC処理ユニット6109は、患者接続状態をイエスに設定し、42度に加熱されかつ位置4705においてTemperature_Safetyセンサを通過した正しい伝導を有していない透析液を送り出し、安全モニタがフェイルセーフ状態に入ることを検証する。別の例では、AC処理ユニット6109は、患者接続状態をイエスに設定し、限外ろ過またはUFポンプ速度レジスタを60ml/時に設定し、UFポンプを120ml/時で動作させ、安全モニタがフェイルセーフ状態に入ることを検証する。いくつかのあり得る例のうちの別の1つでは、AC処理ユニット6109は、患者接続状態をイエスに設定し、両内部透析液ポンプの出口弁(すなわち、図118に示すDP_Outside1弁9255弁およびDP_Outside2弁9260)をドレンに開放し、安全モニタがフェイルセーフ状態に入ることを検証する。別の例では、AC処理ユニット6109は、患者接続状態をイエスに設定し、AIL_VenusセンサおよびAIL_Arterialセンサにおいて空気が存在することを確実にし、オクルーダを開放して設定し、安全モニタがフェイルセーフ状態に入ることを検証する。
AC処理ユニット6109は、患者が透析ユニットに接続されるときに使用するために、次の点検試験を行うかまたはFPGA安全回路を装備するために、FPGA安全回路をリセットすることができる。AC処理ユニット6109は、所与の時間枠内で2つのレジスタに書き込むことにより、FPGA安全回路をリセットすることができる。一例では、AC処理ユニット6109は、第1信号を第1値から第2値に、その後、第1値に戻るように切り換え、その間、第2信号は所与の値で一定に保持される。そして、第2信号は、所定期間内に第1値から第3値に、かつ第1値に戻るように切り換えられる。
(伝導率、温度および弁の状態点検)
加熱された透析液および部分的に混合された透析液の電気伝導率は、透析処置に関連して測定することができる。流体の伝導率は、透析液における酸、重炭酸塩よび他の添加剤の濃度を示すことができる。所与の患者または透析液処方に対する許容可能な濃度は既知である可能性があるが、電気伝導率は温度の関数として変化する。FPGA安全システムは、複数の温度に対して高い許容可能な伝導率および低い許容可能な伝導率のテーブルによってプログラムすることができる。異なる温度に対する高伝導率限界および低伝導率限界は、選択された透析液処方に対して特定であり得る。ユーザまたは臨床医は、透析液処方を選択することができ、AC処理ユニット6109は、対応する高伝導率限界および低伝導率限界をFPGAにダウンロードすることができる。これらの高伝導率限界および低伝導率限界は、計算時間および計算資源に対する需要を最小限にするために、各温度範囲に対してA−D数として格納することができる。一実施形態では、これらの温度は、約1℃離れるように選択される。温度は、伝導率センサの各々の隣で測定することができる。PFGA安全システムは、測定された伝導率を、測定された温度に対応する高い許容可能な伝導率値および低い許容可能な伝導率値と比較することができる。例示的な実装形態では、図59に関連して記載した位置4701、4702および/または4705において、媒体の電気伝導率を求めることができる。温度は、これらの位置の付近で測定することができる。
限外ろ過装置を出る透析液の温度をモニタリングすることができる。一実施形態では、この温度が、AC処理ユニット6109のI/Oサーバプロセス6205によって設定された許容可能な温度外である場合に、フェイルセーフ状態がトリガされる。フェイルセーフ状態はまた、弁の許容できない組合せが開放および/または閉鎖するように命令される場合にフェイルセーフ状態をトリガすることができる。この安全機構により、平衡回路が流体固着現象になることを防止することができ、かつ/または血液回路および透析液回路における安全でない流れを防止することができる。
FPGA安全システムは、限外ろ過ポンプを通る平均流量をモニタリングし、平均流量が高すぎる場合にフェイルセーフ状態に入るロジックを含むことができる。最大の許容される限外ろ過流量は一定とすることができ、または治療に特定あるいは患者に特定または両方に特定である、FPGAにおいてプログラム可能なパラメータのうちの1つであり得る。平均流量を計算する難題は、限外ろ過ポンプを通る流れが、断続的であり、設定された時間間隔中にのみ発生する可能性があるということである。したがって、UFポンプが駆動されるまで、累積的平均流量は非常に低い可能性がある。駆動された時点で、高い瞬時的な流量が、最大の許容される流量を急速に超える。一例では、FPGA安全システムのロジックは、レジスタを最大値(固定またはプログラム可能)で生成し、レジスタを第2中間値で初期化することによって、平均流量を計算する。レジスタ値は、限外ろ過ポンプストローク毎に1つ低減し、ポンプが起動している所定時間間隔毎に1つ増大する。レジスタ値がゼロに低下するかまたは最大値まで増大する場合、インタフェースボード6124はフェイルセーフ状態を命令することができる。
いくつかのフェイルセーフ状態は、インタフェースボード6124からのコマンドを通して実施することができる。一例では、手動の返血を伴うフェイルセーフ状態は、インタフェースボード6124により空気圧マニホールド弁6020に対してオクルーダを閉鎖するように命令し、バイナリ空気圧弁6020をオフにし、高圧弁を閉鎖して保持することによって、行うことができる。圧力分散モジュール9000における空気圧弁6020は、通常は閉鎖されるかまたは通常は開放されるように選択することができ、それにより、電源が切られた状態で、手動の返血を達成することができる。別の例では、返血なしのフェイルセーフ状態は、インタフェースボード6124により空気圧マニホールド弁6020に対してオクルーダを閉鎖するように命令し、正圧供給リザーバを(排気することにより、または正圧弁を圧力分散マニホールドの負圧弁に開放することにより)減圧し、それにより、透析液タンクが透析装置膜を横切るように透析液を押し流し血液管セット内の血液を患者に向けるように押し流すために利用することができる空気圧がないようにすることにより、行うことができる。空気圧弁はまた、返血のないフェイルセーフ状態の間、電源が落とされたままにすることができる。
図62Bはまた、透析ユニット6001a内のインタフェースボード6125に結合された緊急電源切断(EPO:Emergency Power Off)ボード6128も示す。インタフェースボード6124およびEPOボード6128は、透析ユニット6001a内にかつ自動化コンピュータ6106aとは別個に示されているが、別の構成が可能であることが理解されるべきである。EPOボード6128は、停電の場合に照明および警報を可能にするように構成することができる。特に、EPOボード6128は、電源遮断に応じてブザーを鳴らし、警告灯を照明し、かつ/またはフラッドライトを照明するように構成された、マイクロコントローラおよび組込みソフトウェアを含むことができる。こうした光および警報システムは、EPOボードに電気的に結合することができる。電源遮断時、EPOボードに対して、AC処理ユニット6109のIOサーバプロセス6205からの信号によって命令することができる。EPOボード6128の他の例示的な機能としては、AC制御ユニット6108に対して「停止」ボタンおよび「注入」ボタンの状態を報告することと、AC処理ユニット6109からのコマンドに応じて表示灯(たとえば、ボタン、警報およびフラッドライトLED)を照明することと、AC処理ユニット6109によって要求された場合にバッテリ電圧レベルを報告することとが含まれる。
図63は、ユーザインタフェースに関連する情報が、ユーザインタフェースコンピュータ6119および自動化コンピュータ6106のハードウェアコンポーネントおよびソフトウェアコンポーネントの間でいかに流れることができるかの例を示す。情報は、安全性を重視した情報がUIモデル層においてまたはそれより下方のみで処理されるように、流れ処理され得る。安全性を重視した情報は、血液透析システムの動作に関連する。たとえば、安全性を重視した情報は、透析工程の状態、グラフィカルユーザインタフェースの画面状態、および/または治療を実施するかまたはモニタリングするアルゴリズムを含むことができる。場合によっては、安全性を重視した情報は、グラフィカルユーザインタフェースによって表示することができる。こうした場合、安全性を重視した情報は、血液透析システムの動作に対して不可欠な内容を含む場合がある。ユーザインタフェースによって表示される安全性を重視しない情報は、視覚的提示に関し、血液透析システムの動作に対して不可欠ではない、ディスプレイの態様を含むことができる。
図63に示すように、図62に関連して考察したUIモデル6206、UIコントローラ6204および治療アプリケーション620は、自動化コンピュータ6106において実行する。UIビュー6208は、補助アプリケーション6301とともにユーザインタフェースコンピュータ6119で実行する。データベース6302またはそのインタフェース(たとえば、データベースサーバ)もまた、ユーザインタフェースコンピュータ6119に存在することができる。UIモデル6206は、システムおよび患者の現状態を記述する情報を集約し、グラフィカルユーザインタフェースに対して画面を表示し情報を戻すように命令する。UIモデル6206は、ユーザデータおよびコマンドを確認して、システムに対するユーザ制御を与えるために治療アプリケーションに転送する。UIモデル6206は、ユーザインタフェースの内容をディスプレイとは無関係に維持する。グラフィカルユーザインタフェースは、好ましくは、マシン状態応報を維持せず、それにより、基盤ソフトウェアに影響を与えることなく、ユーザインタフェースを変更し、または一時的に切断することができる。グラフィカルユーザインタフェースはユーザ入力を確認するのを担当しないが、さまざまな入力の範囲を制限することができ、確認は、UIモデル6206が担当する。
UIビュー6208とUIモデル6206との間の情報の流れを最初に考慮すると、後述するように、UIビューは、UIモデルのクライアントとして動作する。UIビュー6208は、UIモデル6206に対して現画面状態を要求し、UIモデルは要求に応答する。応答は、UIビュー6208の主画面状態を示す。UIモデル6206は、UIビュー6208が、ユーザが要求する詳細のレベルに従ってディスプレイ情報のさまざまなサブセットを提示することができるように十分詳細に、データおよび状態情報を発行することができる。たとえば、UIビュー6208は、UIモデル6206からの同じ情報を用いて、同じ治療状態を概要としてまたは段階式の案内として提示することができる。情報の提示は、たとえば、ユーザが選択するモード(たとえば、「熟練者」または「初心者」)に基づくことができる。UIモデル6206は、UIビュー6208に対して、UIモデルにおける現提示モード等のサブ状態情報を記録する能力を与えることができる。これにより、GUIは、ユーザインタフェースコンピュータ6119がリセットされた場合に、その以前の状態での動作を再開することができる。
UIモデル6206は、UIビュー6208から、治療を開始する要求等、ユーザ入力データおよび要求を受け入れることができる。UIビュー6208を介して提出されたいかなる情報のデータ完全性も、検証のためにUIビュー6208を介してUIモデル6206を通して提出されたデータを送信することによる等、いくつかの方法で向上させるかまたは確保することができる。すなわち、データは、UIビュー6208においてローカルで編集することができるが、受け入れられたデータは、UIモデル6206に転送して、検証されデータベース6302に記録され、かつ/または治療アプリケーション6203に送信することができる。検証は、たとえば、入力されたデータが予測された範囲内にあることを検証することを含むことができる。そして、いかなる入力された情報も、UIモデル6206によってデータベース6302から読み戻し、ユーザに表示するためにUIビュー6208に送信することができる。このプロセスを用いて、データベース6302に格納されたデータが正確であるかまたはユーザの意図に沿うことを確実にすることができる。データ完全性はまた、ユーザまたは第三者により、入力されたデータの検証を要求することによっても向上させることができる。
図63に示すように、ユーザインタフェースから受け取られた入力に応じて治療アプリケーション6203を制御し、それによりマシン状態に影響を与える直接の権限は、自動化コンピュータ6106で実行しているUIモデル/UIコントローラ6303に限定することができる。さらに、データベース6302における情報を変更する直接の権限は、UIモデル/UIコントローラ6303に限定することができる。この場合、UIビュー6208および補助アプリケーション6301は、少なくとも大部分の状況において、ログを閲覧する等の行為に対してデータベースに読取りアクセスは可能であるが、データベース6302に書込みアクセスは可能ではない。このように、安全性を重視した意味がある可能性がある行為は、自動化コンピュータ6106から隔離することができる。当然ながら、状況によっては、UIビュー6208および補助アプリケーション6301が、データベースの特定の部分に書き込むかまたはデータベースに対して安全に関連しないデータを書き込む等、データベース6302に対して限られた書込みアクセスが可能であることが望ましい場合がある。さらに、いくつかの実施形態では、UIビュー6208が治療アプリケーション6203の態様を直接制御することができることが望ましい場合がある。
上述した補助アプリケーション6301は、たとえば、ログビューワまたはドキュメントビューワを備えることができる。これらのアプリケーション6301は、ユーザインタフェースコンピュータ6119で実行し、それら自体のプロセス空間で動作することができる。しかしながら、UIビュー6208がこれらのアプリケーションを制御するのを可能にするために、補助アプリケーション6301は、UIビュー6208のクライアントであり得る。これにより、UIビュー6208は、アプリケーションと標準的に通信することができ、UIビューはこれらのプロセスをモニタリングすることができる。
UIコントローラ6204は、治療アプリケーション6203からポーリングされたデータ、ローカルタイムアウト、およびUIビュー6208から受け取られたコマンド要求またはデータに基づいて、UIビュー6208によって表示される画面の状態を判断する、テーブルベースの階層ステートマシン(HSM:hierarchical state machine)を備えることができる。図63に表すように、UIコントローラ6204は、要求に応じてデータベース6302にアクセスしてデータを書き込むことができる。UIコントローラ6204におけるHSMの状態が、UIビュー6208によって表示される画面の組の主な状態を決めることができる。
図64に、UIコントローラ6204によって、UIビュー6208によって表示される画面の状態を判断するために使用することができる例示的なHSMを、概略的に示す。図示するように、HSM6400は、ユーザインタフェースの現機能状態6402および現メニュー状態6403を含む、「通常の」(すなわち、非警報)レベルの相互作用6401の状態を判断する。図64に示すHSM6400は、単に例示的なものであり、はるかにより詳細に実施することができる。たとえば、「準備」6404と指定される状態は、「供給物収集」状態、「化学物質設置」状態、患者情報の入力および確認画面を含む、処置を準備することに関連するいくつかの状態を含むことができる。確認画面は、ユーザに対して、先行するデータ入力画面のいずれにも戻る機会を与え、それにより、「準備」状態から出る前に、不正確な情報を補正することができる。HSM6400はまた、トリガすることができる警報状態6405も示す。警報状態については、図65に関して説明する。
UIビュー6208は、警報を表示するために常に表示画面に取って代わることができる可能性がある。流体漏れ、閉塞または範囲外温度等、異常なまたは他の理由で注目すべき状態をユーザまたは他の個人に通知するべきいくつかの環境において、警報状態をトリガすることができる。警報状態が発生すると、UIコントローラ6204の状態が変化する可能性がある。図65に示すように、UIビュー6208が現状態に対してUIモデル6206をポーリングするとき、UIビューは、通常状態6501から警報情報6503を表示する警報状態6502にディスプレイビューを変更する。警報状態にあるとき、UIビュー6208は、他の情報が警報の表示を遮ることがないようにすることができる。しかしながら、警報状態の間であっても、ディスプレイは、ユーザが、さらなる情報にアクセスするために「ヘルプ」ボタンを起動させることができるように構成することができる。この場合、ヘルプ情報6504は、ビューの一部のみを覆うように配置することができる。自動化コンピュータ6106において、消音ロジック等、警報ディスプレイの安全性を重視したロジックを制御することができる。たとえば、ユーザが、警報を消音したい場合、消音要求の指示を、UIモデル/UIコントローラ6303に戻すように中継することができ、それにより、可聴警報を一時的に消音することができる。警報状態および通常状態の各々において、代替ビュー6505および6506がそれぞれ可能であり得る。
上で説明したように、警報が発生すると、通常のUIビュー状態は終了し、それにより、警報状態情報を表示することができる。画面が変化するとき、いずれかのローカル画面選択および/または編集データが喪失する可能性がある。この情報を保存することが望ましい場合、UIビュー6208は、UIモデル/UIコントローラ6303が、警報状態の直前に表示された画面(すなわち、通常状態に関する画面)に関する情報を格納するように要求することができる。警報の終了時、通常状態が変化している場合、UIビュー6208は、格納された情報を検索し、画面表示を復元することができる。さらなる利点として、この特徴を使用して、ユーザインタフェースコンピュータ6119が不注意でリセットされた場合に、先行するビューを復元することができる。
治療挙動は、別個の状態として各行為およびユーザ対話を定義する階層ステータマシンとしてモデル化され実装される。図66に示すように、治療層6601は、ユーザインタフェースモデル層6602とマシン層6603との間にある。治療層は、データを生成するとともに、データベース6604に格納されたデータを使用し、データベース6604もまたユーザインタフェースモデル層とデータを共有する。
治療層6601は、システムの状態を全体として制御し、利用可能なユーザインタフェース対話を指示する。治療層6601は、ユーザインタフェースモデル層6602によって状態/ステータス状態に関してポーリングされる。治療層6601は、ユーザの状態変化要求を受け入れ、ユーザインタフェースモデル層6602における治療設定6606から治療設定6605に切り換わる。治療層6601は、治療制御およびアプレット6608からコマンド6607を発行することにより、流体路の流れを制御する際にマシン層6603に指示する。治療層6601は、マシン層6603からのステータス情報6609をポーリングしてプロセスの状態を判断する。
データベース6604から読み出されかつデータベース6604に書き込まれる情報は、部品ステータス6610、部品履歴6611、ユーザパラメータ6612、治療限界6613、治療設定6614および治療履歴6615を含むことができる。たとえば、交換可能部品情報は、データベース6604から読み出して更新することができ、必要な流体使用および消毒情報は、データベース6604から読み出すことができる。治療層6601は、ロギングの目的で、かつ一時的な電源遮断時に回復を容易にするために、治療ステータス6616情報をデータベース6604に定期的に書き込む。治療層6601はまた、部品ステータス情報6617を用いてデータベース6604を更新する。
プロセッサ間通信はすべて、リモートプロセス呼出しとしてサーバが定義したクライアントアプリケーションプログラミングインタフェース(API:application
program interface)を介して行うことができる。治療層6601は、マシン層およびデータベースインタフェース呼出しをそれらのそれぞれのクライアントAPIを介して行うときにブロックすることができる。しかしながら、患者の治療を行っている間等、重大な機能の間は、治療層は、概して、いかなるデータベースアクセスのブロックを行わない。概して、データベースに対する重要でない更新のみが、非同期(一方向)書込みを用いて行われる。
ユーザインタフェースモデル層6602は、治療クライアントAPIを介して治療層呼出しを行うときにブロックすることができる。治療層のプロセスは、ユーザインタフェースモデル層6602等、そのクライアントより優先度が高いと考えられる。
システムは、概して少なくとも3つの方法のうちの1つで例外状態またはエラーを処理することができる。ソフトウェアにおいて検出されまたはCPUに関連付けられるシステムエラー(たとえば、メモリ障害等)は、システムの信頼性に対して疑問を投げかけフェイルセーフ状態をトリガする。治療変量が許容限界に近づくかまたはそれを超える場合、治療エラーまたは状態が発生する可能性がある。少なくとも警告または警報(ユーザ行為を必要とする事象)がトリガされ、状態がログ記録される。最後に、システム動作状態をトリガし、問題がオペレータまたは保守技術者によって報告される場合に後に検索し分析するために、データベースにログ記録することができる。
概して、マシン層6603は、治療層6601によって明示的に要求されない限り、状態を変化させない。したがって、マシン層6603は、概して、治療層6601が、現動作状態に対して有効な変更要求を行うと想定すると、治療層6601によって要求される変更に応じて、エラーを生成するべきではない。その結果、マシン層6603のコマンドエラーは許容できない可能性がある。例外は、治療層6601の相互作用の前にマシン層6603によって直接「休止−フリーズ−停止」ボタンが操作される場合である。この場合、マシン層6603は、治療層が「休止−停止−フリーズ」行為を確認するまで、いかなる後続の治療層6601コマンドも無視する。
例外事例(たとえば、血液漏れ、ライン内の空気の場合)および直交状態は、外部ユーザインタフェースモデル層6602に提示される状態を一意の現状態にすることができるように、優先することができる。複数の直交状態がユーザインタフェース状態を設定しようとする場合、概して、処理された最後の直交状態のみが提示される。予期されない例外は、フェイルセーフ状態を命令することによって処理することができる。
上で説明したように、治療層6601ソフトウェアは、マシン層6603とユーザインタフェースモデル層6602との間の状態ベースの制御層である。治療層6601がユーザインタフェースモデル層6602に提示するインタフェースおよびアクセス方法について以下に考察する。
治療層6601は、ユーザインタフェースモデル層6602からコマンド要求を受け取る状態ベースの層である。いくつかのコマンドは、いかなる状態からも有効である。他のコマンドは状態に特定であり、治療層6601は、現コマンド要求に従って動作するか否かを判断する。現状態が、コマンド要求に対して有効ではない場合、ユーザインタフェースモデル層6602からの要求は拒絶され、拒絶に対する適切な理由がクライアントに戻される。このように、安全性を重視した動作は、現状態で不適切であるコマンドから保護される。安全かつ確認済みのオペレータコマンド活動のみを処理することができる。ユーザインタフェースモデル層6602への治療層6601インタフェースは、サーバとすることができ、ユーザインタフェースモデル層6602は、標準IPCクライアント/サーバ接続方法を用いてサーバにクライアントプロセスとしてサーバにアクセスすることができる。
治療層6601とユーザインタフェースモデル層6602との間の同期は、2つの状態ベースの列挙型、すなわち「マスタ状態」および「サブ状態」に基づくことができる。マスタ状態は、現在アクティブな治療層6601のステートマシンを示す。サブ状態は、警報、ユーザ対話、または持続時間を有する治療サブ状態のすべてを識別することができる一意の状態指示を提供する。これらの状態変量は、治療ステータスメッセージで更新される。これにより、治療層6601は、いずれのアクティブなユーザ動作が「継続」のようなコマンドに応答しかつそれに対してコンテキストを提供するかを検証することができる。
ここで図66に示すマシン層6603を参照すると、図67に、マシン層の例示的な実装形態が示されている。マシンソフトウェアは、所定の動作セットを実施する能力を提供する抽象化の層である。これらの動作としては、システムのプライミング、透析の実施、消毒、廃液およびセルフテストが挙げられる。マシンソフトウェアは、所定の弁を操作し、ポンプを運転し、流路を制御し、測定を行う。マシン層の動作中、動作を妨げることなく常にステータス情報を要求することができる。
図67を参照すると、マシン層ステートマシン6701の1つの状態は、水によるプライミング済み状態6702である。この状態は、水プライミングコマンド6703を送り、水によるプライミング6704動作を完了させることによって達成される。水によるプライミング済み状態6702では、流体路は、逆浸透(RO:reverse osmosis)水で充填され、空気がパージされる。さらに、この状態を用いて、洗浄され、消毒され、流れ試験および液圧完全性試験を含むさまざまな試験が行われる。
空気充填済み状態6705を用いて、透析装置および限外ろ過装置完全性試験が行われ、部品が交換される。この状態では、システムは、実際的に可能である程度の流体を除去している可能性がある。
処置状態6706で透析処置が行われる。透析装置および限外ろ過装置のパラメータを設定するコマンド6707を送ることによって、この状態には入る。たとえば、透析パラメータ設定コマンド6707は、設置済みの使い捨てフィルタのパラメータおよび針/カテーテルのサイズを通信することができる。治療状態6706の初期状態は、透析パラメータ設定状態6708である。
透析パラメータ設定状態6708によって発行されるコマンドは、透析液源によって決まる。透析液源が袋入りの透析液である場合、透析液プライミングコマンド6711が発行され、プロセスは、透析液によるプライミング6709に直接進む。システムが重炭酸塩カートリッジおよび酸から透析液を作成している場合、接続部を検証しなければならない。この場合、化学物質点検コマンド6712が発行され、プロセスは、化学物質接続部点検状態6710に進む。乾燥試験を用いて、空の化学物質容器が接続されていることを検証することができる。湿潤試験を用いて、容器内にまったく空気が存在しないかまたは最小限にしか存在しないことを検出することにより、化学物質容器が接続されていることを検証することができる。化学物質容器に正圧または負圧をかけることにより、緩い接続部または漏れの存在を検出することができる。逆に、「バイパス点検」試験を行って、バイパスコネクタが適所にあることを検証することができる。流路内の正圧または負圧を測定して、化学物質原液容器および管またはバイパスコネクタが存在するか否かを判断することができる。正圧または負圧をかけることにより、コネクタに関連するいかなる漏れの存在も判断することができる。この状態が完了すると、透析液プライミングコマンド6711が発行され、プロセスは透析液によるプライミング6709に進む。
袋入り透析液を使用する場合、プライミングプロセスは即座に開始する。逆浸透水から透析液を作成する場合、システムは、重炭酸塩カートリッジをプライミングし、透析液の伝導率を要求されたレベルで安定化させるべきである。そして、透析液タンクを最低レベルまで充填するべきである。システムは、透析液回路のポンプを往復するように運転してカセットから空気を押し出すことにより、システム自体をプライミングする。伝導率センサに対し、それらの読取値が一貫したままであることを確実にするために、プライミング中に点検することができる。システムは、透析液を、透析装置を通り血液ループに入るように押し流すことにより、プライミングを終了する。ここでのプライミングは、血液ループからいかなる空気もパージするのに役立つように往復の流れも伴うことができる。空気をより効率的にパージするために、動脈ラインおよび静脈ラインを時々隔離することも可能である。血液ループのプライミングはまた、処置の前に透析装置に対して必要な最低リンス容量を満たす役割も果たす。このプロセスが完了すると、患者を接続することができる。
処置の開始前、流体生成パラメータ設定コマンドをマシン層6701に送ることができる。このコマンドは、透析液を作成するかまたは事前に作成された透析液を使用するために必要な情報を通信する。たとえば、以下の透析液情報を提供することができる。すなわち、重炭酸塩カートリッジのプライミング容量(ml)、重炭酸塩の容積比(mg/ml)、酸および塩添加後の目標の透析液伝導率(25℃でmS/cm)(透析液の最終組成)、および酸容量混合(ml酸/ml水)である。以下の透析液源情報を提供することができる。すなわち、逆浸透(RO)水または事前作成済みの透析液(RO/袋入り)、および事前作成済み透析液容量(ml)である。
空気圧完全性試験動作6715は、システムの空気圧装置を検証する。この動作は、漏れがないか点検し、センサを検証することができる。この動作は、独立して行うかまたはすべて連続的に行うことができる、以下の個々の試験を含むことができる。すなわち、カセット漏れ試験、圧力ポンプ試験、透析液タンク試験および弁速度試験である。これらの試験のいずれかが不合格である場合、システムが治療を開始しないようにすることができる。
カセット漏れ試験は、システムにおける全体的な空気漏れを特定し、それらがカセット内に存在するかまたはマニホールド内に存在するか否かを判断するように構成されている。カセット漏れ試験の例示的な実装形態について以下に述べる。試験の開始時、試験が正および負のコンプレッサを手動で制御することができるように、空気圧タンクコントローラが使用不可となる。最初に、弁およびポンプが正圧に開放され、一方で、負圧へのすべての経路が閉鎖される。タンクは充填され、その後、リークダウン試験を行うために電源が切られる。所定期間に所定閾値に対してシステム圧力をモニタリングすることにより、漏れを検出することができる。正のリザーバ圧力における漏れは、カセット内の漏れを反映し、それは、すべてが正圧源に開放されているためである。負のリザーバ圧力における漏れは、マニホールド内の漏れを反映し、それは、負圧源からほとんど引き出されていないためである。次に、すべての弁およびポンプが負圧に開放され、一方で、正圧に対するすべての経路が閉鎖される。タンクは再び充填され、リークダウン試験を行うために電源が切られる。この場合、負のリザーバ圧力における漏れは、カセット内の漏れを反映し、それは、すべてが負圧源に開放されているためである。正のリザーバ圧力における漏れは、マニホールド内の漏れを反映し、それは、正圧源からほとんど引き出されていないためである。そして、空気圧タンクコントローラが再度使用可能となり、流体弁が閉鎖され、ポンプが両圧力源から閉鎖される。
カセット漏れ試験はまた、正のコンプレッサおよび負のコンプレッサの空気流容量も試験する。負の空気流を試験するために、重炭酸塩ポンプ183(図3A)に関連する正の弁および負の弁が同時にまたは実質的に同時に開放される。そして、負のコンプレッサに電源が入れられている間に、負のリザーバ圧力がモニタリングされる。負圧が所定閾値を超えた場合、試験は不合格となる可能性がある。正の空気流を試験するために、ポッドポンプ161(図5)に関連する正の可変弁および排気口可変弁が、同時にまたは実質的に同時に完全開放位置まで開放される。そして、正のコンプレッサが空気圧タンクコントローラによって制御されている間に、正のリザーバ圧力がモニタリングされる。正圧が所定閾値未満である場合に、試験は不合格になる可能性がある。
定量ポンプセットは、本明細書に記載した定量ポンプの基準チャンバおよびポンプチャンバにおける空気漏れを検出するように構成されている。定量ポンプ試験の例示的な実装形態によれば、正圧源およびFMS弁を開放することにより、すべての基準チャンバおよびポンプチャンバが最初に正圧で充填される。試験は、各チャンバが所定圧力に達したことと、基準チャンバおよびポンプチャンバの圧力読取値が一致していることを検証する。次に、正圧源弁が閉鎖され、ポンプチャンバおよび基準チャンバに対して、リークダウン試験が同時にまたは略同時に行われる。負圧源弁を用いて、同じ試験を繰り返すことができる。その後、各ポンプチャンバが負圧で充填される。そして、FMS弁が閉鎖され、基準チャンバが正圧で充填される。チャンバ圧力は、それらの目標圧力に対して点検され、その後、正圧源弁が閉鎖されて、両チャンバに対するリークダウン試験が行われる。場合によっては、圧力減衰率を用いて、漏れ試験が合格しているか否かが判断される。
圧力ポンプ試験は、8つの圧力ポンプチャンバ内の空気漏れを検出するように構成されている。圧力ポンプ試験の例示的な実装形態によれば、チャンバは、最初に、低い正圧の近くまで充填され、リークダウン試験が行われる。次に、チャンバは、負圧の近くまで充填され、別のリークダウン試験が行われる。そして、内部ポンプチャンバに対するさらなるリークダウン試験が、より厳密な制約でより低い圧力にて行われる。最後に、すべてのチャンバが4つの異なる圧力に能動的に制御され、ポッドを正確に充填し制御することができることが点検される。
透析液タンク試験は、流体レベル読取値を取得するために使用される透析液タンクおよびFMS基準チャンバにおける空気漏れを検出するように構成される。透析液タンク試験の例示的な実装形態によれば、基準チャンバは、最初に、透析液タンクに関連する二方バイナリFMS弁が閉鎖位置にあって、充填される。そして、漏れ試験が行われる。次に、周囲の弁を閉鎖し、その後、基準チャンバを繰り返し充填し、透析液タンクに関連する二方バイナリFMS弁を開放することによって圧力を上昇させることにより、透析液タンクは充填される。タンクが十分に充填されると、リークダウン試験が行われる。その後、透析液タンクに関連する三方低圧排気口弁が開放され、タンクが適切に圧力を抜くことができることが検証される。
弁速度試験は、可変弁、定量ポンプ弁および選択された流体弁の開放速度を測定するように構成される。選択された流体弁の閉鎖速度も測定することができる。
液圧完全性試験動作6716は、システムにおける流体弁を検証する。特に、この動作は、流体弁の各々が適切に開閉するか否かを試験する。この動作により、不合格によって明示されるように、流体弁のいずれかが適切に動作していないことが明らかとなる場合、透析システムに対して、治療を開始しないようにすることができる。この動作は、いずれのポンプチャンバがいずれの弁を通して流体を押し流すかに基づいて、試験セットに分割される。各試験セットは、ポンプチャンバ、一組の試験弁および開放するべき一組の弁を含む。ポンプチャンバを用いて、試験経路が流体で充填される。試験弁の組は、その試験セットに対して試験対象である弁である。開放するべき弁の組は、ドレンへのまたはタンクに戻る経路を生成するために開放されたままである弁である。
この試験では、ポンプチャンバに関連する流体経路が、最初に流体(たとえば、水)でプライミングされ、ポンプチャンバが流体で充填される。そして、ポンプチャンバは加圧される。ポンピングチャンバを加圧するのに関与するステップは、たとえば、(1)ポンプチャンバに関連する弁を閉鎖することと、(2)試験対象の弁から離れる遮るものがない経路を提供するために必要ないかなる弁も、大気圧に(たとえば、ドレンへのまたはタンクに戻る)の開放することと、(3)正圧気体リザーバから所定圧力(たとえば、大気圧より600mmHg高い圧力)にポンプチャンバを加圧することと、(4)リザーバへの接続部を閉鎖することとを含むことができる。ポンプチャンバを加圧した後、閉鎖状態にある試験弁の適切な動作を検証する試験を行うことができる。特に、ポンプチャンバの圧力をモニタリングすることができ、圧力が、所定の最短減衰時間にわたって所定の最大減衰限界より大きく減衰する場合、不合格をログ記録することができる。こうした不合格は、1つまたは複数の弁が、現ポンプチャンバに流体を吐出させるように十分漏れていることを示すことができる。
次に、各試験弁に対して、開放位置にある試験弁の適切な動作を検証するように以下の試験を行うことができる。まず、上述したステップ(1)〜(4)に従って、ポンプチャンバを加圧することができ、試験弁を開放することができる。次に、ポンプチャンバの圧力をモニタリングすることができ、圧力が、所定の最大遅延時間にわたって所定の最小遅延限界未満減衰する場合、不合格をログ記録することができる。現試験弁に対してこの試験が完了すると、試験弁は閉鎖され、別の試験弁に対して試験が行われる。現試験セットのすべての弁が試験された場合、試験弁および開放された弁のすべてが閉鎖され、試験セットは完了したものとみなすことができる。
試験セットあるいはその一部のうちの1つ、いくつかあるいはすべては、空気圧完全性試験動作6716の間に試験することができる。所定の最大減衰限界、所定の最小減衰限界、所定の最小減衰時間および所定の最大減衰時間のいずれも、特定の試験セットに対応することができ、それにより、所定値は試験セット毎に変化する可能性があることが理解されるべきである。さらに、上述した動作は単に例示的なものであり、変更が可能であることが理解されるべきである。たとえば、試験弁は、開放位置および閉鎖位置の一方のみにおいて検査することができ、異なる要素を用いて不合格を判断することができる。
限外ろ過装置完全性試験動作6717は、漏れがあるか点検する限外ろ過装置の膜の圧力試験である。限外ろ過装置の入口側に空気圧がかけられる。空気圧は、空気が概して湿潤した無傷のフィルタを通過しないため、維持される。この試験は、「空気充填状態で行われ、外部透析液側を加圧しかつ経時的に圧力低下を測定することによって、限外ろ過装置を検証する。
BTS/透析装置完全性試験動作6718は、透析装置を含む血液ループの圧力試験である。この試験では、血液ループは、抗凝血剤ポンプエアフィルタ81(たとえば、図4A)から引き出される空気によって加圧され、経時的に圧力がモニタリングされる。測定された圧力低下が入力された減衰閾値未満である場合、試験は合格する。血液管、ポンプおよび透析装置がユニットとして交換されるため、この試験は、漏れの場所を判断する必要はない。
透析装置インピーダンスクリアランス動作6719は、透析装置を通る血液路が、効率的な透析治療を提供するのに十分低い抵抗を有することを検証する。インピーダンス試験を開始する前に、システムは水でプライミングされる。試験中、流れは強制的に透析装置を横切るように進められる。水が透析装置を横切って流れる際、透析装置インピーダンスの尺度を提供するポンプ圧がモニタリングされる。別法として、一定の圧力をかけることができ、一定容量がフィルタ膜を横切るのにかかる時間を測定することができる。透析液回路は、膜を通して押し流されている流体の一定の低インピーダンスの宛先を提供するように設定される。透析装置インピーダンスが高すぎる場合、不合格が報告され、透析装置は、交換する必要がある。限外ろ過装置流れ試験動作6724もまた、限外ろ過装置インピーダンスが治療に必要な流量をサポートするのに十分低いことを確実にするために行うことができる。この試験には、完全性試験の結果が有効になることを確実にするという利点がある。
透析液タンク排出状態6720は、流体の生成を停止し、幾分かの量(たとえば、3000ml)が搬送されるかまたはドレン内で空気が検出されるまで、透析液タンクの中身をドレンに送り出すように、透析液ポンプを合理的な最高速度で運転することができる。デプライミング動作6721を用いて、システムが流体でパージされ、限外ろ過装置の外側の血液チューブセットおよび透析液回路が空気で充填される。この状態を用いて、圧力減衰試験が行われて、透析装置および限外ろ過装置の完全性が検証されるとともに、流体成分が変更されユニットが搬送のために準備される。内部透析液回路は、概して、無傷の透析装置または限外ろ過装置を通して空気を送り出すことができない可能性があり、内部回路にはエアベントがない可能性があるため、デプライミングすることができない。しかしながら、内部透析液回路をデプライミングすることが必要である場合、まず、他のすべての部品を最初にデプライミングし、その後、空気がシステムに入ることができるように限外ろ過装置の頂部を除去することができる。透析液混合水ポンプ(たとえば、図89のポンプ280)を使用して、限外ろ過装置接続部から空気を引き出し、それを内部透析液回路に送達することができ、内部透析液ポンプの流路を交互にして、可能な限り多くの水をシステムから引き出すことができる。
水によるプライミング動作6722は、システムを水で充填し、空気をパージする。流体生成セクションから開始して、外部透析液、内部透析液、さらに血液ループまで移動することにより、段階的にシステムを充填することができる。この動作が行われる前に、重炭酸塩カートリッジおよび酸バッグは取り除くべきであり、バイパスコネクタは適所にあるべきである。1つの例示的な実装形態によれば、バイパスコネクタは混合回路25の重炭酸塩投入ライン、酸流れラインおよび重炭酸塩戻りラインにそれぞれ対応する3つの接続点を備えている。バイパスコネクタは、3つの接続点にそれぞれ対応する3つの平行なプロングを有している。バイパスコネクタのプロングのチャネルが、バイパスコネクタ内の共通のチャンバ内で終端する。したがって、消毒処置の間、重炭酸塩投入ライン、酸流れラインおよび重炭酸塩戻りラインはすべて相互接続され、消毒処置中にこれらの流れラインの各々の消毒を可能にする。こうしたバイパスコネクタの例示的な実施形態は、2008年8月27日出願され、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第12/199,055号明細書に記載されている「消毒コネクタ」である。
消毒/リンス状態6723を用いて、すべての流体路を通して指定された温度で逆浸透水が流される。この動作の前に、システムは、「水によるプライミング済み」状態6725にあるべきである。消毒は、この動作が高温で行われる場合に発生する。タンクは、動作の開始時に逆浸透(「RO)」水で充填される。透析液タンク内の水は、透析液回路消毒路からすべての流体生成流体路および血液管セット経路を通り透析液タンクに戻るように再循環する。再循環した水が失われる(ドレンに送られる)際、逆浸透水を加えて、透析液タンク内の最低レベルを維持することができる。別法として、好ましい実施形態では、汚染の可能性を回避するために、それ以上水は導入されない。この動作中、化学物質カートリッジは取り付けられない。
上述した透析液によるプライミング動作6709を用いて、すべての流体路を通して透析液がフラッシングされ、このシステム内のいかなる空気または水も除去される。この動作は、システムが患者接続状態6713に移ることができる前に完了しなければならない。この動作は、流体生成サブシステムを起動させ、それは、RO水を化学物質と混合し、透析液タンクレベルを維持することを担当する。タンクが満杯の75%未満である場合、そのレベルに達するまで、プライミングを遅らせることができる。タンクレベルは、好ましくは1.1リットルを超えて維持され、そうでない場合、治療を停止する信号を生成することができる。この量により、混合制御精度に対して必要な、十分な返血容量と十分に大きい平均容量とが可能になる。プライミング中、エアインラインセンサ、血液漏れセンサおよび安全システムが試験される。
患者接続状態6713では、透析治療を行うことができる。透析液リンスコマンド6714を発行する前に、血液チューブがドレン接続部に戻される。安全の目的で、患者接続済み状態6713にある間、透析液温度を抑制することができ、透析液伝導率および流量をモニタリングすることができる。
血液によるプライミング動作6726は、血液回路から透析液を除去し、それを患者の血液と置き換える。透析液は、透析液膜を横切って透析回路に引き込まれ、ドレンに破棄される。血液は、患者から血液回路に引き込まれ、膜を横切って引き出された透析液に置き換わる。したがって、BTSを占有するプライミング流体の大部分は、透析の開始時に患者に投与される必要はない。任意選択的に、患者は、この動作を取り消すことにより、プライミング流体が投与されるように選択することができる。これは、たとえば、患者が透析の開始時に追加の流体が必要である場合に望ましい可能性がある。この動作は、装置のソフトウェアを患者接続済み状態6713に遷移させ、温度限界等の安全上の制約を起動させる。
ヘパリンボーラス動作6727は、患者の相互作用を必要とすることなく、治療の前にヘパリンのボーラスを送達する。通常の透析動作の前に、かつ患者に投与される流体の量を最小限にするために、患者のバスキュラアクセスに対する短い方の経路である、動脈ラインを下って送達することができる。エアインライン状態が検出されるかまたは存在した時、任意選択的に、空気閉じ込め機構または装置を組み込んだ静脈ラインを下ってヘパリンボーラスを送達することができる。ヘパリンボーラス動作6727の前に、ヘパリンバイアル接続試験を行って、ヘパリンバイアルが血液ポンプカセットのヘパリン/薬物注入スパイクに取り付けられていることを検証することができる。
透析動作6728を用いて、患者に透析処置が施される。血液回路および透析液回路の流量は、独立して指定することができる。この動作は、時間制限があるかまたは停止コマンドで終了させることができる。例として、以下のパラメータを指定することができる。すなわち、特に、システムを通って流れる透析液が加熱され維持される温度、透析液が血液回路を通って循環する速度、基礎または維持用のヘパリンが血液回路に加えられる速度、透析液が透析液回路を通って循環する速度、および透析液が限外ろ過ポンプを通して送り出される速度である。透析中、減退ろ過装置は、治療中に内部に蓄積したいかなる気体も除去するために、周期的に「バープ(burp)」される。これは、限外ろ過装置の頂部から透析液回路までの経路を閉鎖している間に、限外ろ過装置の頂部からドレンまでの経路を開放することによって行うことができる。そして、透析装置の頂部に閉じ込められたいかなる空気もドレンにフラッシングすることができる。空気および流体をドレンに分流させるための2回以上のポンプストロークの後、弁はリセットされ、透析動作を続けることができる。
透析中、透析液の流れは、1つまたは複数の要素に基づいて自動的に調整することができる。1つのこうした要素は、残っている透析液の量であり、それは、タンク169(図3a)内の透析液と、残っている透析液原料49(図3a)から生成することができる透析液とをともに含むことができる。たとえば、現治療液流量で治療が完了する前に残りの透析液が使い尽くされたと判断された場合、残りの透析液が治療の全時間にわたって残るように速度を落とすことができる。例示的な実装形態によれば、透析システムは、実際のあるいは予測された透析液タンクレベルおよび/または透析液生成に使用された実際のあるいは予測された残りの原料に基づいて、透析液生成を調整する。透析液の流れを調整するための基礎としての役割を果たすことができる別の要素は、透析装置を詰まらせる可能性である。特に、透析液の流れはまた、治療中に透析液の詰りを最小限にするように自動的に調整することも可能である。たとえば、透析装置の繊維を詰まらせないように、透析装置を往復して横切る流れのタイミングをとりそれを平衡させることができる。透析液の流れを自動的に調整することに加えて、透析システムは、1つまたは複数の要素に基づいて透析液生成を自動的に調整することができる。
たとえば、透析液の使用の現流量または平均流量と残っている処置の予測される長さとを用いて、処置を完了するために必要な透析液の容量の推定値を計算することができる。治療を完了するために生成する必要がある追加の透析液の量を計算するために、タンク内の透析液の液量は、上で計算したように、処置を完了するために必要な透析液の容量の推定値から差し引くことができる。追加の透析液をどれくらい生成するべきかの判断は、たとえば、プロセッサが上述したアルゴリズムを適用することによって実施することができる。判断は、処置を完了するために生成する必要がある追加の透析液の量に限定されず、それは、他の何らかの動作を完了するために生成する必要がある、追加の透析液の量を対応する方法で行うことができるためである。
残っている透析液の量は、使用された透析液原料49(図3A)の量から計算することができる。治療の開始時、透析ユニットに、既知の質量の重炭酸塩粉末および酸液を含む満杯の容器を設置することができる。図3Aを参照すると、混合カセット25は、これらの化学物質をRO水に加えて透析液を作成する。幾分かのRO水は、重炭酸塩容器を通って流れて、飽和した重炭酸塩水混合物を生成する。重炭酸塩ポンプ183および酸ポンプ184は、各々、水へのこれらの化学物質の流量を正確に測定して透析液タンク169に流れ込む透析液を形成する、RMSシステムを有している。残っている化学物質の量は、推定される満杯の容器の量から2つのポンプ183、184によって送り出されたあらゆる材料を引くことによって計算することができる。ポンプ183によって除去される重炭酸塩の量は、流体が完全に飽和した混合物であると想定することによって計算することができる。使用される水の量は、水ポンプ180によるストロークの数に基づいて測定することができる。自動化コンピュータ6106(図61)は、重炭酸塩および酸の残っている量と、一単位の透析液を生成するのに必要なこれらの化学物質の量とを用いて、生成することができる透析液の残っている量を計算する。1つの例示的な実装形態によれば、化学物質の一単位当たりに生成される透析液の量は既知の数である。別法として、化学物質の一単位当たりに生成される透析液の量は、ポンプ183、184を通る化学物質の測定された流量と水ポンプ180内の水の測定された流量とから求めることができる。
電源遮断回復6733コマンドは、患者接続済み状態6713にある間に電源遮断があったことを装置のソフトウェアに通知するために送ることができる。これにより、装置のソフトウェアは強制的に患者切断済み状態になり、それにより、透析装置は適切に回復し次の処置の準備をすることができる(たとえば、再循環準備)。
溶液注入動作6729は、透析液を患者の体内に送達する。透析液は、外部透析液ポンプによって透析装置を横切るように押し流され、血液ポンプによって患者に送達される。このコマンドにより、システムは、透析を停止し、内部ポンプをフリーズさせ、外部ポンプを患者に送達する透析液で充填することにより、注入の準備をする。このコマンドを受け取った後、装置のソフトウェアは、以下のコマンドのうちの1つを予測する。すなわち、溶液注入確認(溶液注入を続ける)、溶液注入停止(溶液注入を行わず、代わりに透析を再開する)、またはコマンド停止(システムをアイドル状態に戻す)である。好ましくは、溶液注入中、血液ポンプは運転し続ける。
バックフラッシュ動作は、透析中、透析装置の膜の詰りを防止するのに役立つために、膜を横切って透析液を定期的に逆方向にフラッシングするようにプログラムすることができる。返血動作6730は、切断に備えて透析液を患者の体内に押し流して患者の血液を戻す。透析液は、外部透析液ポンプによって透析装置を横切るように押し流され、患者に送達される。これは、静脈路および動脈路両方に対して自動化される。動脈路は、送達のために血液ポンプを使用することができる。
バイパス点検動作6731は、酸容器および重炭酸塩カートリッジまたは容器に対してバイパスコネクタが存在するか点検する。好ましい実施形態では、この動作により、バイパスコネクタに真空を引いて漏れを検出する。図89を参照すると、バイパスコネクタ276の存在を検出するバイパス点検動作6731を行う例示的な方法は、透析液タンク169エアベント弁260、透析液タンク再循環弁264および消毒経路弁266を開放することによって得られる空気で重炭酸塩水ポンプ282を充填することを含むことができる。そして、ポンプチャンバを空気で充填し正に加圧することができる。そして、透析液混合水ポンプ280の中身は、透析液混合ドレン262を介してドレンに送ることができる。このステップでは、酸定量ポンプ184もまた減圧される。そして、重炭酸塩水ポンプ282、重炭酸塩カートリッジ28およびバイパスコネクタ276の間で、酸定量ポンプ184を通して(透析液混合ドレン弁262を閉鎖する)透析液混合水ポンプ280まで、流路が確立される。透析液混合水ポンプ280を大気圧に設定することにより、圧力センサ286によって測定される圧力の所定の増大は、バイパスコネクタ276が適切に設置されていることを示す。
化学物質排液動作6732は、化学物質容器の中身をドレンに空ける。好ましい実施形態では、化学物質容器の中身は、各処置の後に廃棄され、患者に対して清掃が容易になり、化学物質を再利用しようとする際のあり得る問題が阻止される。図89を参照すると、たとえば、コントローラは、酸排液状態を開始することができ、そこでは、透析液混合ポンプ280が、酸容器29からの流体を、弁262を介して排液するように送り出すことができる。これは、酸ポンプ184の弁277、278を開放し、弁274を開放し、弁271を閉鎖し、ポンプ280においてフルストロークを作動させることによって、酸ポンプ184の出口を透析液混合ポンプ280の入口として使用することにより、行うことができる。ポンプ280を充填した後、その中身は、弁277および261を閉鎖し、弁262を開放することにより、排出することができる。たとえば、圧力センサ286を使用して、空気がポンプ280によって送り出されていることを検出することにより、酸容器29が空であるか否かを判断することができる。空気のポンピング(たとえば、可撓性膜のストローク終了位置への迅速な移動)によって生成される圧力信号は、液体のポンピングによって生成される信号から、それらを識別するようにコントローラをプログラムすることができるほど十分に異なっている。この判断時、コントローラは、酸容器29が空であり、酸容器29からのさらなるポンピングを停止させることができると推測することができる。
コントローラは、重炭酸塩排液状態を開始することができ、そこでは、透析液混合ポンプ280はまた、重炭酸塩容器28からの流体を、弁262を介して排液するように送り出すことができる。これは、最初に重炭酸塩容器28の頂部を排気することで行うことができる。たとえば、重炭酸塩容器28の頂部から、重炭酸塩混合ポンプ282、透析液タンク169の弁270、266、264および260を通して、流体路を開放することができる。重炭酸塩ポンプ弁272および273を開放することができ、その後、ポンプ280は、重炭酸塩容器28の底部から流体を引き出し、弁262を介してそれを排液するように送り出すことができる。実施形態では、ポンプ280は、完全に液体が空けられたことを確実にするために、重炭酸塩容器28に収容された容量の約2倍を送り出すように設定することができる。
ドア点検動作は、血液透析装置のドアが閉鎖していることを検証し、患者が切断されていることを確実にするのに役立つ。そして、DCA点検動作は、患者が処置セッションの後にリンスおよび消毒のために、血液管セットのバスキュラアクセスコネクタを装置のDCA/DCVポートに再度差し込んだことを検証することができる。
図5および図89を参照すると、システムは、選択的にラインを加圧し圧力減衰があるかモニタリングすることにより、静脈ラインコネクタおよび動脈ラインコネクタが装置のDCA/DCVポートに再度差し込まれたことを自動的に点検することができる。たとえば、弁231、232、221、222および223を開放することができ、弁263、264、266および267を閉鎖することができ、それにより、外部透析ポンプ159は、透析液タンク169から透析装置14を通して血液流回路141内に透析液を送り出すことができる。両血液ポンプ13に流体を充填することができる。そして、透析液側の弁を閉鎖して、流体が透析装置14の血液側から透析液側に行くのを防止することができる。たとえば、透析液側で、弁211、212、213、221、222、223、231、232、241、242および210を閉鎖することができる。
静脈ライン204がそのポートに適切に差し込まれたと判断するために、管クランプ202および弁207を開放することができ、弁206を閉鎖することができる。そして、血液ポンプ弁192、193、194が閉鎖されている間に、血液ポンプ弁195を開放することができる。そして、血液ポンプチャンバ23aに対して、所定量の圧力(たとえば、約53.328kPa(400mmHg)で加圧することができる。試験は、圧力センサ197によってモニタリングされる圧力が所定速度以上で低下する場合(たとえば、1秒間にわたって約17.331kPa(約130mmHg)低下)、不合格であったとみなすことができる。そして、弁を開放し、圧力センサ197に対して圧力低下をモニタリングさせることによって、弁206の適切な動作を試験することができる(たとえば、試験は、モニタリングされた圧力が1秒間にわたって少なくとも約17.331kPa(130mmHg)低下しない場合に、不合格であるとみなした)。
動脈ライン203がそのポートに適切に差し込まれたと判断するために、両弁206および207を閉鎖することができる。そして、血液ポンプ弁193、194、195が閉鎖されている間に、血液ポンプ弁192を開放することができる。そして、血液ポンプチャンバ23bに対して、所定量の圧力(たとえば、53.328kPa(400mmHg))で加圧することができる。この試験は、圧力センサ197によってモニタリングされる圧力が所定速度以上で低下する場合(たとえば、1秒間にわたって17.331kPa(130mmHg)低下)、不合格であったとみなすことができる。そして、弁を開放し、圧力センサ196に対して圧力低下をモニタリングさせることによって、弁207の適切な動作を試験することができる(たとえば、試験は、モニタリングされた圧力が1秒間にわたって少なくとも約17.331kPa(130mmHg)低下しない場合に、不合格であるとみなした)。
さらに、透析液タンクの中身を、血液回路を通してドレンから押し出すように、血液路洗浄動作を行うことができる。リンスを用いて、透析処置の後に、血液回路および透析装置から残留血液がフラッシングされる。実施形態では、透析装置および管部品から残がいを緩ませる機械的作用を促進するために、流体内に空気が導入される。この動作中、流体生成により水を送り出すことができ、それにより、タンク内の透析液が希釈される。
透析液循環動作を用いて、患者がまだ接続されていないとき、プライミングされた後、システムにおける温度および透析液の新鮮さを維持することができる。これは、血液ポンプも運転しながら、ヒータ、限外ろ過装置を通して透析液を内部ポンプに流し、それを透析装置に通すことによって行われる。少量の透析液を常に排液するように送ることができる。
マシン層6701はまた、停止コマンド、フリーズコマンド、再開コマンドおよび遮断コマンドに応答することも可能である。停止コマンドは、装置によって行われている動作を終了する。停止コマンドが発行されると、現ポンプサイクルは完了し、その後、適切な弁が閉鎖される。ストロークが完了するため、すべての流体の計算は正確となる。弁が閉鎖され、ポンピングが完了した後、ステートマシンは、次のコマンドを待つ「アイドル」状態に戻る。このコマンドは、ステータス取得コマンド、透析パラメータ設定コマンドまたは流体パラメータ設定コマンドに影響を与えず、それは、それらが動作を開始しないためである。
フリーズコマンドにより、システムは、すべての弁をその現サイクルで閉鎖する。これには、流体生成弁も含まれる。ヒータの電源を切ることにより、内部の流体の過熱が防止される。再開コマンドがフリーズコマンドの後に発行される場合、流体容量の計算は正確になる。フリーズコマンドの後に、停止コマンドが発行され、その後、フリーズしたもの以外の動作に入る別のコマンドが発行される場合、元の状態で部分的な流体送達があった可能性があるという事実に関らず、流体容量は新たな動作に割り当てられる。現動作の状態履歴は保持されるため、「再開」コマンドを使用して動作を継続することができる。再開コマンドにより、装置は、フリーズしたコマンドを処理し続ける。遮断コマンドは、装置のソフトウェアプロセスを終了するために使用される。
図67に関連して上述した動作は、マシン層レベルにおける対応するステートマシンによって実施することができる。図67A〜図67Eに関連して、以下の動作を実行するステートマシンの例示的な実装形態について以下に述べる。すなわち、(1)透析装置インピーダンスクリアランス、(2)透析液循環、(3)ヘパリンバイアル接続試験、(4)ヘパリンボーラス投与および(5)タンク排出である。
(1)透析装置インピーダンスクリアランス
透析装置インピーダンスクリアランス動作を使用して、追加の処置を行うことに対する透析装置の適合性を示すことができる、透析装置の水透過性を測定することができる。透析装置クリアランス動作の不合格は、透析装置が詰まり、交換する必要があることを示すことができる。1つの例示的な実装形態によれば、透析装置インピーダンスクリアランス動作は、患者が接続される前に各処置に先立って行われる。2つの動作モード、すなわち、透析装置繊維膜を横切る流体の流れを点検するモードおよび中空繊維に沿った流れを点検するモードがあり得る。
動作中、水は、透析装置を横切るように強制的に流される。水が透析装置を横切って流れる際、透析装置インピーダンスの尺度を与えるポンプ圧がモニタリングされる。所定閾値を超えるインピーダンスは、透析装置を交換する必要があることを示すことができる。透析装置インピーダンスは、血液側から透析液側に流れて測定される。試験を準備するために、血液ポンプの両チャンバは水で充填され、内部透析液ポンプの両チャンバは、中身がドレンに空けられる。図67Aは、図67に関連して記載した透析装置インピーダンスクリアランス動作6719の例示的な実装形態を示す。
図67Aを参照すると、動作は、アイドル状態6734から実行状態6735に遷移する。アイドル状態になると、試験は開始状態6736に遷移する。開始状態6736は、外部ポンプ、内部ポンプおよび血液ポンプを構成する。
次に、血液ポンプ充填6738状態が、血液ポンプを充填することができるように弁を設定する。第1血液ポンプチャンバが、外部透析液ポンプからの水で充填され、外部透析ポンプは、外部透析液流体路を通して透析液を送り出すために使用される。そして、第2血液ポンプチャンバが、外部透析液ポンプからの水で充填される。各チャンバは、個別に充填され、外部ポンプから内部ポンプを通って血液ポンプまで経路が開放される。
内部透析液ポンプ排出状態6739では、流路に基づいて(たとえば、透析装置繊維を横切って)弁が設定される。内部透析液ポンプ1排出状態6739aでは、第1内部透析液ポンプの中身がドレンに空けられる。同様に、内部透析液ポンプ2排出状態6739aでは、第2内部透析液ポンプの中身がドレンに空けられる。
透析装置インピーダンスクリアランス試験を行うために、血液ポンプは、各チャンバの水を、透析装置を横切って内部透析液ポンプチャンバに押し流す。内部透析液ポンプチャンバは、排出を開始し、この試験中に雰囲気に排気され、そのため、チャンバは、透析装置の透析液側で大気圧を示す。各血液ポンプチャンバは、所定圧力を用いて水を吐出し、ストローク終了をモニタリングして流量を求める。各チャンバは、1つの圧力/流量データ点を提供し、追加のデータ点を得るためにプロセスが繰り返される。
第1血液ポンプチャンバ流れ試験状態6740では、流路に基づいて弁が設定される。流路が透析装置繊維を横切る場合、内部透析液ポンプはドレンに開放される。流路が透析装置に沿う場合、流路は、血液管セットドレンに開放される。状態6740aでは、第1血液ポンプチャンバが吐出される。チャンバがアイドル状態となると、試験データが計算される。そして、状態6740aは、血液ポンプ充填6738状態に戻るように遷移し、それにより、第2血液ポンプチャンバを試験することができる。
第2血液ポンプチャンバ流れ試験状態6741では、流路に基づいて弁が設定される。この場合もまた、流路が透析装置繊維を横切る場合、内部透析ポンプがドレンに開放される。流路が透析装置に沿う場合、流路は、血液管セットドレンに開放される。状態6741aにおいて、第2血液ポンプチャンバが吐出される。チャンバがアイドル状態となると、試験データが計算される。状態は、試験データから平均し合格/不合格状態を判断する前に、試験を通して全体として何回の合格が必要であるか(たとえば、9回の合格)点検する。試験を再度行う必要がある場合、動作は、血液ポンプ充填6738状態に遷移する。試験が完了した場合、平均インピーダンスが計算され、動作は停止状態6742に遷移する。
動作をフリーズさせるように、フリーズコマンド6743が治療層から命令される。このコマンドは、実行状態6735において処理される。フリーズ状態6744は、運転しているポンプを休止させ、この動作で使用される弁を閉鎖する。ポンプおよび弁の状態は、フリーズコマンド6743に応答して保存される必要はなく、それは、動作が再開するとき、試験および点検動作を再始動することができるためである。
フリーズ状態から動作を再開するように、再開コマンド6745が治療層から命令される。このコマンドは、動作を再開状態6746に遷移させる。上述したように、動作が再開するとき、試験が再度新しく開始するように、透析装置インピーダンスクリアランス動作を再始動することができる。
試験を終了するように、停止コマンド6747が治療層から命令される。この状態はまた、動作の最後に呼び出され、それにより、すべてのポンプが停止されすべての弁が閉鎖されることが確実になる。特に、この状態は、流体生成、外部ポンプ、内部ポンプおよび血液ポンプを停止させる。そして、状態は、ポンプがアイドルになるのを待ち、アイドル状態6734に遷移する前に動作弁を閉鎖する。
(2)透析液循環
透析システムが透析液でプライミングされると、ユーザは、システムに接続することができる。ユーザが接続するのを待つ間、透析システムは、透析液を循環させて、透析液を温かい状態で維持し、血液管セットから発生するいかなる空気も除去することができる。システムは、血液回路を、所定速度(たとえば、200mL/分)で通常の治療流に対して逆方向に血液回路を送り出し、別の所定速度(たとえば、100mL/分)で新鮮透析液をタンクから血液管セットに送り出すことにより、透析液をリフレッシュすることができる。血液回路における逆方向の流れにより、透析液から発生するいかなる空気も、動脈ラインと静脈ラインとの間のエアトラップに移動するように促進される。未使用の透析液を血液管セットドレンまで送り出すことにより、プライミング液全体をリフレッシュする。
図67Bは、図67に関連して記載した透析液循環動作に対応することができる透析液循環動作6748の例示的な実装形態を示す。図67Bを参照すると、動作の初期状態はアイドル状態6749である。透析液循環マシンコマンド6750に応答して、動作は実行状態6751に遷移する。実行状態6751は、停止コマンド6752およびフリーズコマンド6762をキャッチする。実行状態6751は、この動作のすべての動作コード(たとえば、開始、フリーズ等)に対する最上状態である。実行状態6751の下の開始状態6754は、実行中の動作コードすべてに対する上位状態である。
1つの例示的な実装形態によれば、透析液を循環させることができる4つの異なる経路がある。これらの経路は、以下の通りである。(1)血液管システム内にある希釈血液が循環し温かい状態であるのを維持するために使用される「希釈血液路」、(2)血液管セットおよびユーザに押し出す内部ポンプにおいて新鮮透析液を維持するために使用される「透析液路」、(3)血液サンプル用の血液管セットを循環しタンク内の流体を新鮮に保つために使用される「血液サンプル路」および(4)タンク内の流体を新鮮に保つために使用される「タンク路」である。
開始状態6754から、動作はタンクレベル点検状態6755に遷移する。この状態は、外部ポンプが停止されていることを確実にし、透析液が透析液路を通って循環している場合、血液ポンプが停止されていることも確実にする。タンクレベル点検状態6755は、タンクFMS読出しを開始し、タンクが満杯になるのを待つ。
透析液路のみに関連して使用されるポンプ待機状態6756は、血液ポンプ1が満杯になり、血液ポンプ2が空になるように、血液ポンプを待機させる。
同様に、透析液再循環状態6757は、透析液路のみに関連して使用される。この状態は、内部ポンプの底部を通る血液管セットまでの流路を使用する。血液ポンプは、外部ポンプ充填ストロークに従ってポンプが同期したままであり得るように駆動されるチャンバレベルである。流体生成動作がタンクレベル読出しを要求する場合、透析液再循環状態6757は、タンクレベル点検状態6755に遷移することができる。
透析液再循環状態6757はまた、透析システムへのユーザ接続に関連する態様もモニタリングすることができる。たとえば、この状態は、システムが所定温度にあるときを治療層に通知することができる。したがって、治療層は、システムに接続したいユーザに対して、システムがまだ所定温度に達していない場合に望ましい程度に温かくないことを通知することができる。さらに、この状態は、たとえば、伝導率が範囲外であるかまたは温度が高すぎる場合に、ユーザが接続されないことを確実する点検を行うことができる。点検のうちの1つが不合格である場合、動作は停止状態6758に遷移する。
透析液が血液サンプル路または希釈血液路を通って循環している場合、透析液循環動作6748の後に患者を接続することができる。安全点検を行うことができ、マシン層は、点検が不合格である場合に、アプリケーションにフリーズコマンドを送り、治療層に通知することができる。たとえば、温度または透析液伝導率等のモニタリングされているセンサが範囲外となる場合、フリーズコマンドを発行することができ、治療層に通知することができる。そして、治療層は、ユーザに通知し、かつ/またはユーザに対し装置から切断するように指示することができる。
タンク内に新鮮透析液を維持するために、限外ろ過装置プライミング液再循環状態6759が使用される。特に、この状態は、血液サンプル路に関連して使用され、それにより、血液ポンプが血液サンプルに対して循環している間に、新鮮透析液がタンク内に維持される。この場合、透析液は、内部ポンプに到達するべきではない。
内部ポンプおよびタンク内で新鮮透析液を維持するために、内部ポンプ限外ろ過装置プライミング液排液リフレッシュ状態6760が使用される。この状態は、希釈血液路に関連して使用され、透析液が停滞しないように血液ポンプを逆方向に運転する。この状態はまた、タンク路に関連して使用され、タンクおよび内部ポンプ内で新鮮透析液を維持する。
実行状態6751で処理されるフリーズコマンド6762は、治療層から動作をフリーズさせるために命令される。フリーズ状態6761は、血液ポンプおよび外部ポンプをフリーズさせる。フリーズ状態6753は、再開コマンド6761または停止コマンド6752によって出ることができる。この動作中、ユーザを透析システムに接続することができることを示す患者接続フラグが設定されている場合、マシン層は、マシンフリーズ状態6753aに遷移することによりそれ自体をフリーズさせることができる。この状態は、治療層が、動作を治療フリーズ状態6753cに遷移させる別のフリーズコマンド6753bを送るまで、すべてのコマンドを無視する。同様に、マシン層ではなく治療層がフリーズコマンドを送る場合、動作は治療フリーズ状態6753cに遷移する。
治療フリーズ状態6753cから処理することができる再開コマンド6761は、治療層から、フリーズ状態から動作を再開するために命令される。このコマンドは、ポンプを再開させ、動作をその先行する保存された状態に遷移させる。治療層から、透析液の再循環を停止する停止状態6758が命令され、その状態は、実行状態6751において処理される。停止状態6758は、血液ポンプおよび外部ポンプを停止する。そして、ポンプがアイドル状態になるのを待ち、動作弁を閉鎖する。完了すると、動作はアイドル状態6749に遷移する。
(3)ヘパリンバイアル接続試験
本明細書において考察するように、バイアルが血液ポンプカセットのヘパリン/薬物注入スパイクに取り付けられていることを検証する、ヘパリンバイアル接続試験もまた行うことができる。患者は、通常、この動作中は接続されていない。図67Cは、ヘパリンバイアル点検動作の例示的な実装形態を示す。本出願を通して、「ヘパリン」および「抗凝血剤」という用語は、同義で使用される。「ヘパリン」に対する言及は、その特定の抗凝血剤に限定されないことが理解されるべきである。それは、別の抗凝血剤で好適に置き換えることができる例示的な抗凝血剤を指す。
ヘパリンバイアル点検動作6763の初期状態はアイドル状態6764である。ヘパリンバイアル点検マシンコマンド6765に応答して、動作は実行状態6766に遷移する。実行状態6766は、停止コマンド6767およびフリーズコマンド6768をキャッチする。実行状態6766は、この動作のすべての動作コード(たとえば、開始、フリーズ、停止)に対する最上状態である。実行状態6766の下の開始状態6769は、実行中の動作コードのすべてに対する最上状態である。開始状態6769は、抗凝血剤ポンプ(たとえば、抗凝血剤ポンプ80)を停止する。
バイアル点検状態6770は、血液管セットドレンに対して流路を開放し、抗凝血剤ポンプに対して、抗凝血剤(たとえば、ヘパリン)バイアルを点検するように命令する。ヘパリンポンプが完了すると、状態は、バイアルが検出されているか否かを点検し、検出されていない場合、不合格を記録する。
フリーズコマンド6768は、動作をフリーズさせるために治療層から命令される。このコマンドは、実行状態6766において処理される。フリーズ状態6771は、抗凝血剤ポンプをフリーズさせる。フリーズ状態6771は、再開コマンドまたは停止コマンド6767によって出ることができる。
再開コマンドは、フリーズ状態から動作を再開するために治療層から命令される。このコマンドは、動作を開始状態6769に遷移させ、開始状態6769は、抗凝血剤バイアルに対する点検を再開する。
停止状態6772は、試験を終了するために治療層から命令される。この状態もまた、動作の最後に呼び出され、抗凝血剤ポンプ等のすべてのポンプが停止されることを確実にする。そして、状態は、ポンプがアイドル状態になるのを待ち、アイドル状態6764に遷移する前に動作弁を閉鎖する。動作が終了する前に停止状態6767が呼び出される場合、動作は不合格になる。
図67Cには示さない抗凝血剤バイアルの他の点検もまた行うことができる。たとえば、システムは、(1)空の抗凝血剤バイアル、(2)閉塞した抗凝血剤バイアル、(3)過剰な抗凝血剤バイアルの送達、(4)抗凝血剤ポンプ弁における漏れおよび/または(5)抗凝血剤バイアル内部の過剰な圧力があるか点検することができる。
治療中に空の抗凝血剤バイアルが検出された場合、システムは、抗凝血剤ポンプの動作を停止させ、患者に警告することができる。これにより、抗凝血剤ポンプが血流に空気を加えることが防止される。同様に、治療中に抗凝血剤バイアルが閉塞した場合、システムは、抗凝血剤ポンプの動作を停止させて、患者に警告する。
患者に送達される抗凝血剤が、特定の量(たとえば、1mLを超える量)規定された値を超過する場合、システムは、強制切断および返血を行うことができる。これにより、たとえばデータ破損が隔離されるために、装置のサブシステムが抗凝血剤送達を誤って行うリスクが軽減される。場合によっては、たとえば、抗凝血剤ボーラスが安全でない可能性がある場合、患者にいかなる抗凝血剤も送達する前に、返血なしの強制切断を発生させることができる。
抗凝血剤ポンプ弁のいずれかが、閉鎖状態にある間にかつ患者が接続されている間に流体を漏らす場合、システムは、返血なしの強制切断を行うことができる。これにより、抗凝血剤がバイアルから血流内に制御されずに引き込まれるリスクが軽減する。この点検は、患者が接続されている治療中、頻繁に行うことができる。
抗凝血剤バイアル内部の圧力が、治療中に所定閾値(たとえば、大気圧より約6.666kPa(50mmHg高い値)を上回るように観察された場合、システムは、返血なしにの強制切断を行うことができる。バイアル圧力は、基礎量送達ストロークに対して充填しているときに観察することができる。この点検は、患者を安全でない適応外の使用から保護することができる。
(4)ヘパリンボーラス投与
ヘパリンボーラス動作は、処置を開始する前に患者にヘパリンボーラスを投与することを担当する。従来、ヘパリンボーラスは、看護師によりシリンジを介してアクセスライン内に投与される。有利には、ヘパリンボーラス動作により、看護師または他の個人による介入なしに、ヘパリンボーラスを透析システム自体によって送達することができる。図67Dは、図67に関連して記載したヘパリンボーラス動作6727の例示的な実装形態を示す。
図67Dを参照すると、動作は、アイドル状態6773から実行状態6774に遷移し、その後、開始状態6775に遷移し、最後に、透析装置空気除去状態6776に遷移する。透析装置空気除去状態6776は、透析装置の頂部において空気を減ずる。そうするために、血液ポンプの両チャンバは、透析液ドレンを下って吐出される。空気整定時間により、減じられる前の空気が一体となるのが促進される。左の血液チャンバ(すなわち、チャンバ2)は透析液で充填される。そして、この透析液は、血液ポンプの頂部を越えて右の血液チャンバ(すなわち、チャンバ1)内に移送される。外部ポンプチャンバは流体で満杯のままであり、それにより、外部ポンプチャンバを用いて、空気減少の後に血液ポンプチャンバ2を迅速に充填することができる。
次に、ヘパリン用の血液ポンプチャンバ2準備状態6777は、血液ポンプチャンバ2を大気圧に設定する。これを行うために、チャンバは、0.0の圧力にまで吐出される。これは、ヘパリンポンプが、ヘパリン引出し状態6778においてボーラス容量を血液ポンプチャンバ2に送り込むことができるように行われる。透析液による血液ポンプチャンバ2充填状態6779は、血液ポンプチャンバ2内に残っているものに透析液を充填し、それにより、既知の容量を患者に送り出すことができる。
一実装形態によれば、ボーラスは、患者のバスキュラアクセスまで静脈ラインより短い経路である動脈ラインを下って送達される。短い方の経路である結果、動脈ラインが使用されるときに患者に送達されその後除去される必要がある流体が少なくなる。動脈ラインを下るボーラス送達状態6780は、両血液ポンプチャンバを、動脈ラインを下って患者まで吐出させる。ボーラスを収容する血液ポンプチャンバ2が最初に吐出される。次に、血液ポンプチャンバ2は、外部透析液ポンプからの透析液で充填され、血液ポンプチャンバ2が吐出される。正味の結果として、規定されたヘパリン、または合計約56mLの流体を収容する2つの満杯の血液ポンプチャンバが患者に与えられることになる。
動脈ボーラス送達中に空気が検出される場合、または患者によって静脈送達が選択される場合、ボーラスを、静脈ラインを下って交互に送達することができ、静脈ラインは、空気閉じ込め機構または装置を組み込んでいる。静脈ラインを下るボーラス送達状態6781は、まず、ボーラスを収容する血液ポンプチャンバ2を吐出させ、次に、血液ポンプチャンバ1を、静脈ラインを下って透析装置に向かって吐出させる。ボーラスの残りは、外部ポンプの設定された容量の透析液(たとえば、200mL)によって透析装置を横切って静脈ラインを下って追い出される。外部ポンプは、始動する前、「待機させる」必要がある可能性があり、それは、チャンバを透析液で充填することにより、両チャンバが吐出する状態におかれる可能性があるためである。ポンプ待機状態6782は、血液ポンプおよび外部ポンプを待機させ、それにより、一方のチャンバが満杯であり、他方が空になる。
高温時のドレンへの外部透析液ポンプ運転状態6783は、透析液が患者に送達するには高温になり過ぎた場合に使用される。こうした場合、透析液ドレンを下って(限外ろ過装置プライミング路を通して)経路が開放される。透析液の温度が範囲内に戻り、ヒータが冷却されると、動作はその先行する状態に戻るように遷移する。
フリーズコマンド6784は、動作をフリーズさせるために治療層から命令される。このコマンドは、実行状態6774において処理される。フリーズ状態6785は、血液ポンプおよび外部ポンプをフリーズさせる。フリーズ状態6785からの唯一の出口は、再開コマンド6786または停止コマンド6787である。
ヘパリンボーラス動作中に患者が接続されているため、安全システムが使用可能である。マシン層は、患者接続済み点検をモニタリングし、治療層に合格または不合格の結果を通知する。ヘパリンボーラス動作中に患者切断が検出される場合、マシン層自体がフリーズする可能性がある。これが発生する場合、動作は、マシンフリーズ状態6785aに遷移する。治療層が、アルゴリズムを治療フリーズ状態6785cに遷移させる別のフリーズコマンド6785bを送るまで、動作はこの状態であり続ける。
再開コマンド6786は、フリーズ状態から動作を再開するために治療層から命令される。治療フリーズ状態6785cにおいて処理されるこのコマンドにより、ポンプは再開し、動作は動作を継続するために保存された状態に遷移する。
マシン層は、空気センサにおいて空気を認識すると、動作が空気を患者に送達するのを防止するフリーズコマンドを送る。動脈ライン送達中に空気が検出される場合、チャンバは強制的にアイドル状態になり、ヘパリンボーラスの残りは、静脈ラインを下って送達される。
停止状態6788は、治療層から、または動作が完了したとき自動的に命令される。すべてのポンプが停止され、弁が閉鎖されると、アイドル状態6773への遷移が発生する。
(5)タンク排出
タンク排出動作は、流体タンクの中身(たとえば、透析液、水および/またはクエン酸)を排液するために使用される。たとえば、タンク排出動作を用いて、透析液タンク169を排液することができる。流体は、タンクから出て透析液ドレンを下るように送り出される。この動作は、処置が完了した後、患者が透析システムに接続されていないときに行うことができる。図67Eは、図67に関連して記載したタンク排出動作6720の例示的な実装形態を示す。
図67Eを参照すると、動作は、アイドル状態6789から実行状態6790に遷移する。開始状態6791は実行状態6790の下にある。流体生成および外部ポンプがアイドル状態となると、開始状態6791はタンク排出状態6792に遷移する。
タンク排出状態6792は、閉塞を検出することができるように外部ポンプを構成し、タンクが空であるときを知ることができる。限外ろ過プライミングラインを介して透析液ドレンを下って流路が開放される。1つの例示的な実装形態によれば、ポンプは、1000.0mL/分の流量で開始し、タンクを空にするために合計40ストローク(たとえば、2リットル)で汲み出される。閉塞が検出された場合、ポンプを停止することができる。タンク排出状態6792に続き、動作は、さらなる数ストローク汲出し状態6793に遷移する。
さらなる数ストローク汲出し状態6793を使用して、タンクが空であることが確実になる。透析液ドレンを下る限外ろ過装置プライミングラインである、タンク排出状態6792で使用される同じ流路が、この状態で使用される。1つの例示的な実装形態によれば、外部ポンプは、合計10ストロークに対して、600.0mL/分の流量で開始する。流体タンクが空であると推定されるため、ドレンラインに空気があると予測される。ドレンエアインラインセンサを使用して、空気の存在が検出される。空気が検出された場合、タンク排出動作6792は合格する。空気が検出されない場合、タンク排出動作6792は不合格である。不合格は、ドレンラインが閉塞されており、それにより、タンクが空になっておらず、またはドレンエアインラインセンサが機能していないことを示すことができる。
フリーズコマンド6798に応答して、フリーズ状態6794は、外部ポンプをフリーズさせる。この状態は、再開コマンド6795または停止コマンド6796のいずれかによって出ることができる。再開コマンド6795は、フリーズ状態から動作を再開させる。特に、外部ポンプが再始動され、開始状態6791を出たときに保存された状態に遷移する。停止状態6797は、外部ポンプを停止し、外部ポンプがアイドル状態になるのを待ち、動作弁を閉鎖させる。そして、動作はアイドル状態6789に遷移する。タンク排出動作の停止が早すぎた場合、動作は不合格になる。
ここで、図62および図63に示す治療アプリケーションに注目する。図62および図63に関連して示し記載する治療アプリケーション6203は、マシンコントローラおよびI/Oサーバプロセスによって実施される治療を実施するステートマシンを実行する。ステートマシンは、治療準備、患者接続、透析、溶液注入、患者切断、再循環準備、消毒、リンスおよび使い捨て品交換等の機能を実行することができる。治療アプリケーション6203はまた、日常的な処置を準備し施す他のすべての治療アプリケーションの活動の順序付けを担当するマスタ制御モジュールも備えている。
図62および図63を参照すると、治療アプリケーション6203は、UIモデル6206が治療を開始し、停止し、構成するとともに、治療ステータスを報告するのを可能にするインタフェースを提供する。治療アプリケーション6203はまた、マシンコントローラともインタフェースする。特に、治療アプリケーション6203は、治療動作を実施するために、マシンコントローラに対してコマンドを発行しステータスを要求する。患者、治療および装置の情報にアクセスするために、治療アプリケーション6203はデータベース6302とインタフェースする。それはまた、このインタフェースを使用して治療ステータス情報を格納する。
以下、治療アプリケーション6203の個々のアプリケーションについて記載する。これらのアプリケーションは、(1)再循環準備、(2)血液路洗浄、(3)消毒、(4)エンドトキシンリンス、(5)処置準備、(6)患者接続(7)透析、(8)溶液注入、(9)返血、(10)サンプル採取、(11)部品交換および(12)化学物質設置である。
(1)再循環準備
図68は、再循環準備アプリケーションの例示的な実装形態を示す。再循環準備アプリケーションは、システムを再循環に対して準備する。再循環を開始する前に、システムは、ドアが閉鎖されていることを確認する。これにより、システムは、洗浄および消毒を適切に行うことができるが、患者が不注意で切断され損ねないことも確実になる。
次に、システムは、ユーザに対して、化学物質原液カートリッジを取り外して廃棄するように促す。システムは、まず、取外し時にいかなるこぼれも最小限にするように、あらゆる残っている化学物質を排出する。ユーザは、自身のカートリッジを即座に取り外したい場合、この排出ステップをバイパスするように選択することができる。カートリッジが取り外され廃棄されると、ユーザは、化学物質バイパスコネクタを設置することにより、システムを再循環に対して準備する。
化学物質カートリッジ排出および取外し中、システムは、圧力試験を同時に行うことにより、オペレータが、ヘパリンコネクタへのバイアルの設置等、血液管セット(BTS:blood tubing set)を適切に接続したことを確実にする。このように、オペレータに、いかなる問題も存在する間に通知し、オペレータはそれを是正することができる。そして、システムは、再循環の残りを無人で適切にやり通すことができる。キンク、クランプの閉鎖または血塊がないことを確実にするために、BTSのさまざまな部分を逐次加圧することによって、試験が行われる。透析装置が湿潤した後、BTS全体および透析装置を空気で加圧し、血液管、血液管接続部、透析装置または透析装置接続部における漏れを示す閾値圧力減衰値をモニタリングすることによってもまた、BTS完全性を点検することができる。消毒ポートもまた点検されて、静脈ラインおよび動脈ラインがそれらのポートに確実にロックされていることが確認される。これらの試験のいずれかが不合格である場合、ユーザに対して具体的な不合格を通知し、それをいかに是正するかに関して指示することができる。試験は、すべてが合格するまで繰り返される。
透析装置および血液管セットが、処置または消毒の使用限界に達するか、またはオペレータがそれらを交換するように選択した場合、それらを再循環の前に交換することができる。限外ろ過装置が、限外ろ過装置の膜間圧力(TMP:transmembrane pressure)またはインピーダンス試験限界を超過し、その消毒使用限界に達し、またはオペレータがそれを交換するように選択した場合、限外ろ過装置を、再循環の前に交換することができる。これらの部品を交換するために、ユーザは、図78に関連して記載する部品交換アプリケーションを呼び出すことができる。
図68を参照すると、再循環準備アプリケーション6801が示されている。モニタリング状態6802が、休止要求6803または透析液漏れ6804あるかモニタリングする。さらにこの状態6802の間、システムは、ドアが閉鎖されていることを確認する。ドアが閉鎖されているという事実は、患者が現在装置に接続されていないことを意味する。この点検は、ドア点検中状態6805において行われる。ドアが閉鎖されている場合、プロセスは、治療後データ入力状態6806に進む。
治療後データ入力状態6806は、患者/オペレータに対して、種々の治療後データを入力するように促すことができる。システムは、治療前データが入力されたことを示す場合、オペレータ/患者に対して治療後データを入力するように促す。以下の治療後データを要求することができる。すなわち、治療後体重、血圧および脈拍数である。これらの入力からの情報は、治療報告情報のシステムログに含めることができる。さらに、システムは、再循環プロセスを継続するために、この情報を入力が入力されることを必要としない。システムが、治療後データが入力されなかったことを示す場合、システムは、オペレータ/患者に対して治療後データを入力するように促さない。
供給源およびドレン点検状態6807は、入口水源およびドレンが適切に接続されていることを確認する。これにより、システムが適切に再循環を行うことができることが確実になる。供給源およびドレン点検回復状態6808は、オペレータに対して、同様に検出された供給源/ドレン障害に関する情報および要求された是正措置を提供する。たとえば、ユーザに対して、入口水源またはドレンが適切に設置されていないことを通知することができ、問題を是正する方法を指示することができる。
化学物質原液除去およびBTS点検状態6809は、2つの動作を同時に実行する。両方の動作の完了により、システムは、再循環動作を継続することができる。この状態の間に行われる動作は、化学物質原液の廃棄および除去とBTS接続部の点検とである。BTSおよび透析装置の交換もまた、この時点で評価される。第1動作では、化学物質原液存在点検状態6810が、化学物質が存在するか否かを検出して次のステップを判断する。特に、空気完全性試験を使用することにより、システムは、化学物質原液容器の存在を検出することができる。これは、たとえば、重炭酸塩カートリッジに対して、重炭酸塩化学物質カートリッジ28内部の空気に負圧または真空をかけ、水ポンプ280と流体連通している間にカートリッジ28を隔離し、ポンプ280内の圧力をモニタリングしてカートリッジ28が負圧を保持することができるか否かを判断することによって行うことができる。(負圧をかけることは、カートリッジ接続部の完全性を試験するとき、カートリッジ接続部が緩い場合に化学物質の意図されない外部への漏れを回避するために、正圧より好ましい可能性がある)。
たとえば、図89を参照し、バイパスコネクタ276が存在しないものと想定すると、(重炭酸塩の飽和溶液を生成するために重炭酸塩カートリッジ28に水を提供する)重炭酸塩水ポンプ282内に空気を導入するための経路は、透析液タンク排気口弁260、透析液タンク再循環弁264、消毒路弁266、および重炭酸塩水ポンプ282の入口弁270を開放することによって生成することができる。透析液タンク入口弁261、透析液ドレン弁262、水入口弁265および限外ろ過装置プライミング弁267を閉鎖することによって、経路を隔離することができる。そして、ポンピングチャンバを空気で充填するために、重炭酸塩水ポンプ282を作動させることができる。そして、重炭酸塩水ポンプ282の入口弁270を閉鎖することができる。そして、重炭酸塩水ポンプ282内の圧力を大気圧に設定することができる。次に、透析液混合ポンプ280の入口弁271を閉鎖することができ、重炭酸塩定量ポンプ183の入口弁273および透析液混合ドレン弁262が開放される。そして、透析液混合ポンプ280への入口弁等、重炭酸塩定量ポンプ183出口弁272を使用することにより、空気を重炭酸塩カートリッジ28からドレンに送り出すことができる。重炭酸塩カートリッジ28内の圧力の低下は、重炭酸塩水ポンプ282に接続された圧力変換器284によってモニタリングすることができる。所定の負圧が発生した場合、透析液混合ポンプ280の出口弁274を閉鎖することができ、ポンプの電源を切ることができる。そして、圧力変換器284を使用して、重炭酸塩水ポンプ282のポンプチャンバおよび重炭酸塩カートリッジ28内の圧力をモニタリングすることができ、それにより、生成された真空が保持されることが確実になる。そうでない場合、コントローラにより、警報状態をトリガすることができ、ユーザに指示するために、グラフィカルユーザインタフェースに適切なメッセージを提供することができる。
化学物質排液状態6811では、システムは、容器からあらゆる化学物質原液を排出するために必要な動作を行う。その目的は、容器の除去および廃棄をより清潔にかつ容易にし、廃棄物を可能な限り少なくすることである。ユーザに対して、排出をバイパスするように選択することができることを促すことができる。化学物質原液除去状態6812は、ユーザに対し、化学物質原液を除去し化学物質バイパスドアを閉鎖する指示を提供し、指示を提供することができる。指示には、化学物質原液ポートを有効に消毒することができるようにいかに装置を構成するかを含めることができる。BTS点検待ち状態6813は、化学物質廃棄および除去動作に対する終点である。システムは、他の同時に行われる動作が完了するまで、この状態にあり続ける。
化学物質原液除去およびBTS点検状態6809によって実行される第2動作を参照すると、BTS点検状態6814中、システムは、BTSおよび透析装置の交換が必要であるか否かを評価する。オペレータが透析装置およびBTSの交換を選択するのを可能にするオプションもまた表示することができる。このオプションは、透析装置の凝固ステータスに関するデータ入力を含むことができ、化学物質原液除去およびBTS点検状態6809が完了するまで、ユーザに対して利用可能であり続けることができる。BTSおよび透析装置の交換が必要とされずかつ要求されない場合、システムは、BTSが再循環のために適切に接続されていることを確実にし、その後、凝固を防止するようにBTS流体を再循環させる。BTS接続試験6815は、BTSが再循環のために適切に接続されていることを確認する。これは、患者コネクタがそれらの消毒ポートに適切に設置されていることと、クランプが開放されBTSにキンクが生じていないことと、BTSが空気検出器およびオクルーダに適切に設置されていることとを確実にすることを含むことができる。接続回復状態6816は、ユーザに対して、検出された障害とともに、必要な是正措置に関する情報を提供する。たとえば、ユーザに対して、BTSが適切に設置されていないことを通知することができ、ユーザは具体的な問題を示すことができる。通知は、BTS接続試験6815からの不合格コードに基づいて行うべき是正措置を含むことができる。処置セッションの後にリンスおよび消毒のために、患者が血液管セットのバスキュラアクセスコネクタを、装置のDCA/DCVポートに再度差し込んだことを検証するために、DC接続試験を行うことができる。バイアルが血管ポンプカセットのヘパリン/薬物注入スパイクに取り付けられていることを検証するために、ヘパリンバイアル接続試験も行うことができる。これにより、消毒流体は、バイアルを出入りし、プロセスにおいてバイアルスパイクおよびヘパリン流体路を洗浄することができることが確実になる。
BTS流体再循環状態6817は、BTSにおける流体の再循環を開始して、残留患者血液が停滞し血塊を形成するのを防止する。システムは、システムが、BTS接続部が消毒ポートに適切に挿入されていることを検出した場合にのみ、このプロセスを行うことができるように、構成することができる。化学物質原液除去待ち状態6818は、同時に行われている他の動作が完了するのを可能にする待ち状態として作用する。システムが化学物質原液除去が完了したことを示すと、システムは継続する。
いずれの部品が交換されているかに関わらず、部品交換点検状態6819は、部品交換のための遷移点として作用することができる。それはまた、限外ろ過装置交換が必要であるか否かも評価する。限外ろ過装置が、そのTMP試験限界を超過したかまたはその消毒使用限界に達した場合、限外ろ過装置交換を要求することができる。BTSおよび透析装置の交換が必要であることが先に判断されたか、またはユーザによって要求された場合、BTSおよび透析装置を交換するべきである。いずれかの交換が要求された場合、このデータは、休止状態6820に転送され、そこで、部品交換6821が活動を実行する。交換プロセスが、システムおよびオペレータによって完了すると、再循環準備アプリケーションが再開する。
最終ドア点検状態6822は、ドアの最終点検を行って、ドアが依然として閉鎖されていることを確認する。これは、装置が再循環するのを妨げる可能性がある、あらゆる不要な警報を防止するように意図されている。ドア開放回復状態6823は、患者に対してドアが開放していることを通知し、ユーザに対してドアを閉鎖するように促す。
休止状態6820は、動作を停止させて、患者に追加の活動を行うように選択させることができる。休止のための停止状態6824は、すべての装置の動作を停止させる。たとえば、状態は、すべての流れを停止することができる。休止メニュー状態6825により、患者は、追加の活動を行うように選択することができ、その状態は、以下のオプション、すなわち、部品交換6821、遮断6826、電力待機6827および再循環準備再開6828を表示することができる。
透析液漏れ警報状態6829は、動作を停止し、ユーザに対して、透析液漏れが検出されたことを通知する。漏れ解決状態6830は、ユーザが漏れを解消し、それがユーザから示されるのを待つ。
(2)血液路洗浄
次に、消毒の前に経路から血液および透析液を除去する方法を行うことができる。治療で残された残留血液および透析液は、消毒を行うまえに透析ユニットからリンスされる。消毒プロセスによって後の除去がより困難になるため、これらの物質を除去することが望ましい。さらに、残留血液および透析液は、細菌源であるため、除去することが望ましい。複数回の再使用により可能な限りその性能の劣化が少ないように、透析装置を有効に洗浄するように特に注意することができる。
血液経路および透析経路の洗浄は、一定量の流体をそれらの経路にフラッシングし、その流体をドレンに向けることによって、行うことができる。血液経路に血液および血塊が存在するため、透析液経路の洗浄より血液経路の洗浄の方が、より労力を必要とし、より完璧さが求められる可能性がある。血塊は、通常、透析装置の静脈ヘッダおよび動脈ヘッダに付着し、その遷移を塞ぐことによって透析装置の効率を低下させる可能性がある。動脈ヘッダおよび静脈ヘッダを洗浄することは、それらの大きい容量が、血塊が移動することができる流れの低い空間をもたらすため、困難である可能性がある。透析装置のヘッダからこれらの残留血塊を除去するために、最初にそれらを緩めるかまたは移動させることが望ましい。これは、流量を増大させるかまたは最大にすることにより、乱流を生成するかまたは最大限にしながら、流体を、透析装置を通りかつそれを横切るように押し流すことによって行うことができる。BTSに空気を追加し、血塊または他の残がいを緩めるために機械的作用を増大させるように空気含有液体を循環させることによっても、乱流または流れの他の乱れをもたらすことができる。各血液ポンプチャンバを個々に制御することによってBTS内部の流体を往復して移動させることによって、血塊を緩めることも可能である。この場合、内部透析液ポンプおよびBTSドレンは閉鎖され、血液チャンバ1(血液ポンプポッドのうちの1つ)に流体を吐出させ、血液チャンバ2(他方の血液ポンプチャンバ)を充填する。両方がアイドル状態となると、血液チャンバ1が充填され、血液チャンバ2が吐出する。このサイクルは、複数回(たとえば、およそ20サイクル)繰り返すことができる。BTS内に空気を導入するために、抗凝血剤ポンプ80によって空気を抗凝血剤エアフィルタ(図4Aのフィルタ81を参照)を通るように引き出し、その後、血液ポンプ23の一方または両方に提供することができる。たとえば、ポンプ80とエアフィルタ81との間の弁を開放することができ、ポンプ80を操作して、ポンプ80と抗凝血剤源11との間の弁によりポンプ80内に空気を引き込むことができ、主血液回路を閉鎖することができる。その後、ポンプ80とエアフィルタ81との間の弁を閉鎖することができ、ポンプ80と主血液回路との間の弁を開放して、ポンプが、空気をポンプ23のうちの一方またはBTSの他の部分に吐出するようにすることができる。BTSに導入された空気によって押しのけられたBTS内のいかなる流体も、ドレン31に排出することができる。ポンプ23の一方または両方に空気が導入されることにより、その後、血液ポンプ23を、指定された速度および方向(たとえば、逆方向に500ml/分)で複数サイクル(たとえば、40サイクル)運転することができる。
図69Aおよび図69Bは、血液路洗浄アプリケーションの例示的な実装形態を示す。図69Aを参照すると、血液路洗浄6901は、プロセス全体の動作を調整する最上位レベル状態である。この状態は、ステートマシンのデータ処理要素と同時に実行する。この状態中、治療で残された残留血液および透析液は、マシンからリンスされる。アプリケーションに対して関連するデータの更新は、ステートマシンのデータ処理要素によって処理される。休止および透析液漏れモニタリング状態6902は、いくつかの障害を監視し、要求を休止する。透析液漏れモニタリングを要求することができる。警報モニタリング状態6903は、いくつかの障害を監視する。完全血液側閉塞モニタリングが要求され、入口水モニタリングが可能になる。透析液による動脈ラインフラッシング状態6904は、治療で残された残留透析液の一部を取得し、それを、動脈ラインを通りドレンに出るようにフラッシングする。血液管セット(BTS)に水を送る前に透析液等の生理的流体で血液をフラッシングすることは、血液が水にさらされたときに発生する溶血および泡立ちを最小限にするために行うことができる。血液が泡立つと、通常、洗浄がより困難になる。同様に、状態6919において静脈ラインを透析液でフラッシングすることができる。タンク排出状態6905は、いかなる残留透析液も、それをドレンに送ることにより透析液タンクから除去する。流体生成プライミング状態6906は、リンスに備えて流体生成モジュールを水でプライミングする。流路プライミング状態6907は、リンスに備えて流路全体を水でプライミングする。流体生成停止状態6908は、リンスに備えて流路全体を水でプライミングし、液体生成を停止する。
図69Bに示す経路リンス状態6909は、残留血液および透析液をシステムからフラッシングするために、流体経路全体をリンスする。この状態はまた、流体生成も開始する。図69Bを参照すると、再循環状態6910は、流体を血液回路および透析回路両方で再循環させる。血液回路排液−動脈状態6911は、動脈血液回路ラインを通してドレンに流体をフラッシングする。血液回路排液−静脈状態6912は、静脈血液回路ラインを通してドレンに流体をフラッシングする。BTSに水を送る前に透析液等の生理的流体で血液をフラッシングすることは、血液が水にさらされたときに発生する溶血および泡立ちを最小限にするために行われる。
(ターボ洗浄特徴)
洗浄流体(たとえば、水)が流体流路内で往復するように押し流される「スイッシング(swishing)」処置により、流路からの残がい(たとえば、血液成分またはタンパク質物質)の移動を促進することができる。スイッシング処置は、システムコントローラに対して、受取側すなわち下流ポンプに負圧をかけ吐出側すなわち上流ポンプに正圧をかけるように仕向けることにより、流路内の増大する圧力勾配を使用することによって、さらに改善することができる。実施形態では、カセットハウジング一対の往復容積移送式ポンプにおいて、接続された管セットにおいて、他のあらゆる接続された部品において、流体流路を洗浄するために使用される水の流速は、(ポンピングチャンバから流体が空けられた)受取側すなわち下流ポンプの隔壁に負の空気圧をかけ、その後、(ポンピングチャンバが流体で充填された)吐出側または下流ポンプの隔壁に正の空気圧をかけることにより、増大させることができる。流路内の弁は、上流ポンプがその流体変化を、負圧下にある下流ポンプに最終的に送るように配置されている。この時間中、所望の洗浄路を画定する流路内の弁は開放しており、他の流路内の弁は閉鎖されたままである。ポンプに対する正圧および負圧の印加を反転させて、流体を往復して「スイッシング」し洗浄の有効性を向上させるために、一方のポンプから他方のポンプへの高圧流体逆流をもたらすことができる。このサイクルは、洗浄プロセスの妥当性を確実にするために所定回数繰り返すことができる。代替実施形態では、ポンプ入口弁および出口弁が閉鎖されている間に、下流ポンプに負圧をかけ、上流ポンプに正圧をかけ、その後、洗浄されるように意図されている流路に対応する弁を開放することにより、増大した圧力勾配をもたらすことができる。
図69Cを参照すると、血液ポンプカセット13から残がいまたはタンパク質物質を移動させるために、システムコントローラは、血液ポンプカセット13の出口弁193、195または入口弁192、194を含む隔離された流路を確立することができる。ポンプチャンバのうちの1つに存在する流体は、下流ポンプの隔壁に負圧をかけ、上流ポンプの隔壁に正圧をかけることにより、増大した圧力勾配を用いて、2つのポンプの間で往復してスイッシングさせることができる。そして、圧力勾配を反転させることにより、洗浄されている流路に沿った交互の方向において流速の上昇を可能にすることができる。
たとえば、出口路400を洗浄するために、血液ポンプカセット13の入口弁192、194および透析装置に通じる流路を閉鎖することにより、流路が生成される。透析装置に通じる流路は、複数の方法で閉鎖することができ、そのうちの1つは、動脈ラインおよび静脈ラインオクルーダ202を起動させ、内部透析液ポンプに関連する弁(たとえば、弁232、242)および限外ろ過ポンプに関連する弁(たとえば、弁210)を閉鎖し、平衡チャンバに関連する弁(たとえば、弁231、241)を閉鎖することにより、透析装置を通る流れを閉鎖することによって行われる。システムコントローラは、上記さまざまな弁の開閉を制御することができ、それにより、たとえば、ポンプ23aに負の空気圧をかけるように仕向け、最終的に、ポンプ23bに正の空気圧をかけるように仕向けることができる。実施形態では、負圧(または真空)が最初にかけられ、ポンプ23aの完全に拡張した隔壁に張力をかける。短時間(たとえば、洗浄される流路を通るポンプ23aの隔壁からの負圧の完全な発生を可能にするために約1秒間)の後、空気圧マニホールド弁供給ポンプ23bを作動させて、流体が充填されたポンプ23bの完全に後退した隔壁に対して正圧を供給することができる。ポンプ23aに対する既存の負圧が、選択された流路内の圧力差を拡大し、ポンプ23bは、選択された経路400を通して高い乱流を生成しその中のあらゆる残がいの移動も促進しながら、そのチャンバの流体をポンプ23aのポンピングチャンバに迅速に吐出する。下流ポンプに対する負圧の印加と上流ポンプに対する正圧の印加との間の時間遅延は、特に、上流ポンプと下流ポンプとの間の流体路の長さによって決まる可能性がある。そして、コントローラは、ポンプ23b内の流体がポンプ23aに移送されると、ポンプ23aおよび23bに対する正圧および負圧の印加を反転させることができる。この例では、コントローラは、ポンプ23bの隔壁に対して負圧を加え、短い遅延(たとえば、1秒間)を追加し、その後、ポンプ23aの隔壁に正圧をかけて、増大した圧力差の下で経路400に沿って流れを反転させる。このサイクルは、経路400の完全な洗流しを確実にするために数回繰り返すことができる。
そして、経路400において移動した残がいは、動脈ライン203または静脈ライン204を介してドレンに送ることができる。好ましくは、最初に、いかなる残がいの大きい断片もドレンに向かう途中で透析装置14を通過しないように、最初にライン203が使用される。洗流し処置からの残留流体を含むいずれのポンプ23aまたは23bも、流体をライン408に、そこから203そのポンプの入口弁192または194を介して吐出することができる。そして、ポンプ23aおよび23bは、透析装置14を介して透析液タンク169から水で再充填することができ、その後、この水は、事前に選択された回数排液するために繰り返されるリンスに使用される。これは、コントローラが、弁231および/または241の開放と、水を透析液タンク169から引き出し透析装置14を通して流路402まで送り出す外部透析液ポンプセット159の起動を指示することにより、行うことができる。図69Cに示す図示する実施形態では、各リンスが動脈ライン203を介して排液するために、コントローラは、オクルーダ202を開放し、静脈ライン弁206を閉鎖し、ドレン弁207を開放するようにプログラムされる。当然ながら、弁の具体的な開閉は、血液透析流路がいかなる構造であるかと、弁がどこに配置されているかとによって変化する可能性がある。
排液する追加のリンスは、任意選択的に、ライン404を介して透析装置14に対し、ライン406を介して、その後、静脈ライン204に対して行うことができる。この場合、ポンプ23aおよび23bは、適切な弁の開閉を通して、透析液タンク169から透析装置14を通る水によってプライミングすることができる。そして、両ポンプ23aおよび23bは、入口弁192、194を閉鎖し、弁193、195を開放し、透析液側の適切な弁を閉鎖することによって透析装置14の膜を横切る流れを閉鎖し、オクルーダ202、静脈ライン弁206およびドレン弁207を開放することによって、静脈ライン204に流体を吐出することができる。この手順は、事前選択された回数繰り返すことができる。
図69Dに示すように、流路402を洗浄する処置は、流路400に使用されたものと等価な処置に従うことができ、この場合は、コントローラに対して、出口弁193、195の閉鎖および入口弁192、194の開放を指示させる。ポンプ23aおよび23bの間の往復するスイッシング処置は、圧力勾配を交互の方向において増大させるために、それぞれのポンプに交互に負圧および正圧をかけることによって可能にすることができる。流路402内の流体の高圧スイッシングに続いて、動脈ライン203を介する排液のためのリンスは、上述したように所定回数行うことができる。任意選択的に、排液のためのリンスはまた、上述したものと同様の処置に従って、静脈ライン204を介して行うことができる。
高圧洗浄処置はまた、動脈管および静脈管、ならびに透析装置14およびエアトラップ19等のあらゆる取り付けられた部品にも適用することができる。図69Eに示すように、一方のポンプの入口路と反対側のポンプの出口路とを備える流路により、動脈血液管203、408および静脈血液管204、404、406全体に関与する高圧下での往復するスイッシング処置が可能になる。この場合、コントローラにドレン弁207を閉鎖させ静脈ライン弁206を開放させることによって、回路が完成する。ポンプ23aまたは23bの入口路は、反対側のポンプ23bまたは23aの出口路もまた選択される限り、選択することができる。図69Eに示す例では、ポンプ23aの入口路およびポンプ23の出口路が選択されている。別法として、ポンプ23bの入口路およびポンプ23aの出口路を選択することができる。静脈ライン204を介する排液するためのリンスに対して記載した処置と同様に、透析装置14を通る透析液回路への流れは、透析装置14の透析液回路側の流路内の適切な弁の閉鎖によって阻止される。流路400および402の洗浄に対して上述したように、上流ポンプ23aまたは23bは、その隔壁が後退位置にあって、チャンバが洗浄流体(たとえば、水)で満杯である状態で充填されており、反対側の下流ポンプ23bまたは23aは、その隔壁が拡張位置にあって空である。コントローラは、最初に、適切な弁(たとえば、図69Eにおける弁193、194および207等)を閉鎖して、下流隔壁に負圧をかけるように仕向け、その後、上流隔壁に正圧をかけるように仕向ける。コントローラは、その後、正の空気圧および負の空気圧の印加を切り替えて、高圧下で選択された流路を通る流体流を反転させる。静脈ラインおよび動脈ラインの適切な量の洗浄を行うように、サイクルを所定回数繰り返すことができる。最後に、上述したリンス処置中に、静脈ラインおよび動脈ラインを排液するようにリンスすることができる。
透析回路排液状態6913は、血液管セットにおいて流体を再循環させている間に、流体を透析液回路から排液するようにフラッシングする。流体準備回路排液状態6914は、血液管セットにおいて液体を逆方向に再循環させている間に、流体を流体準備回路から排液するようにフラッシングする。UFTR再循環状態6915は、血液管セットにおいて流体を再循環させながら、限外ろ過装置フラッシュポートを通して流体を再循環させる。流体は、任意選択的に、透析液タンクにまたはドレンに再循環させることができる。流体を透析液タンクに再循環させるか否かを選択する際、1つの考慮事項は、この状態で費やされる時間の量であり、それは、透析液が古くなると、その特性(pH等)のうちのいくつかが変化する可能性があり、それにより、システムが、新鮮透析液の連続した生成を優先して、流体をドレンに仕向けるように促進される可能性がある。透析液タンク上位状態6916は、透析液タンクを満杯レベルで維持する。タンク内の流体レベルを上下に循環させることが、タンクをリンスするように作用する。透析液タンク下位状態6917は、透析液タンクを略空レベルで維持する。
この段階でまたは消毒の開始近くで、血液ポンプカセットの定量ポンプ(たとえば、ヘパリンポンプ)に対して、薬物(たとえば、ヘパリン)容器を空にするように指示することができる。薬物は、透析液または水で置き換えることができるが、好ましくは、容器は、消毒中に消毒流体の滴注および引出しに備えて空気で充填される。薬物がヘパリンである場合、処置セッションの後に容器またはバイアルに残っているあらゆる残留ヘパリンを、この段階でBTS内に空けることができる。血液路洗浄または消毒中に残留ヘパリンを、BTSを通して循環させることは、血塊形成を低減し、したがって、洗浄プロセスの効率を向上させるのに役立つことができる。別法として、ヘパリンをドレンに廃棄することができる。
再び図69Aを参照すると、リンス停止状態6918は、リンスプロセスを停止する。完了状態6920は、透析液タンクを空にすることによってアプリケーションを終了する。閉塞回復状態6921は、システムによって検出されたあらゆる閉塞の是正を処理する。閉塞警報状態6922は、血液路洗浄6901を停止し、患者に対して閉塞があることを通知する。閉塞解決状態6923は、患者が閉塞を解消するのを待つ。
入口水回復状態6924は、システムが検出したあらゆる入口水閉塞の是正を処理することができる。入口水警報状態6925は、血液路洗浄6901を停止し、患者に対して、入ってくる水に問題があることを通知する。透析液タンク充填状態6926は、透析液タンクを充填しようとする。休止状態6927は、動作を停止させる。さらに、患者は、追加の活動を行うように選択することができる。休止のための停止状態6928は、装置の動作のすべてを停止させる。休止メニュー状態6929により、患者は追加の活動を行うように選択することができる。以下のオプションを表示することができる。すなわち、サンプル(ROサンプル)採取6930、部品交換6931、電力待機6932、遮断6933および動作継続6934である。
透析液漏れ警報状態6935は、動作を停止し、患者に対して透析漏れが検出されたことを通知する。漏れ解決状態6936は、患者が漏れを解消するのを待ち、GUIに継続ボタンが表示されるようにすることができる。
(3)消毒
再循環準備および血液路の洗浄に続き、消毒アプリケーションが、流体経路の消毒を実施することができる。消毒は、不溶解性の特質である流体を提供するために行われる。この目標を達成するために、消毒プロセスは、増殖性細菌細胞、真菌、およびすべての小ウイルスまたは非脂質性ウイルスすべてを死滅させることができる。装置は一般に1人の患者に専用であるため、消毒プロセスがウイルス性の汚染を排除することは必須ではない。患者間で装置を切り替えるには、このプロセスを越えるステップが必要である可能性がある。消毒は、すべての流体経路を一定温度にし、その温度を最短時間保持することによって行うことができる。たとえば、透析装置、血液処置セット、限外ろ過装置および透析液セットを通して循環する水は、およそ1時間、85℃±5℃の温度まで加熱される可能性がある。高水準の消毒には、温水低温殺菌が好適である可能性がある。温水低温殺菌に対する例示的な条件は、最低約30分間、およそ68℃の温度を含む可能性がある。消毒状態は、システムのあらゆる箇所で温度をモニタリングすることができ、センサが、たとえば85℃および75℃等、所定温度閾値で、目標温度を約1℃超えるまで消毒を遅らせる。この状態は、さまざまな箇所で温度をモニタリングし、いずれかのセンサが、たとえば連続した10秒間を超えて目標温度を下回る場合、流体加熱を増大させる措置をとる。
消毒中に流体が通されるさまざまな回路は、たとえば、システムのすべての所望の部分が好適な期間、好適な温度に達するのを確実にするのに役立つように、システムからエンドトキシンおよび他の残がいをフラッシングするのに役立つように、次の処置に対してシステムを用意するのに役立つように等、あらゆる好適な方法で配置することができる。1つの例示的な実施形態では、図3Aを参照すると、消毒中の流体の主な流路は以下を含むことができる。
− 水供給部30およびドレン31から混合回路25のポンプ180まで通じる水供給導管、− ポンプ180から重炭酸塩ポンプ183、原料49(消毒の場合原料49の代わりに、3つのラインを原料49に出入りするように流体接続するコネクタが設けられる)、酸ポンプ184および重炭酸塩水供給ポンプ(図3Aでは下部ポンプ180(図24Bにおけるポンプ282))、− ポンプ180から透析液タンク169までの透析液供給ライン、− 透析液タンク169から外部透析液ポンプ159およびヒータ72を通る限外ろ過装置73までのライン、− 限外ろ過装置73から透析液回路143および透析装置14の平衡チャンバに通じるライン、− 透析装置14から内部透析液ポンプ15およびバイパスポンプ35を通るドレン31および水供給部30までのライン、ならびに
− 静脈および動脈患者導管67が方向付け回路142に接続された血流回路141全体。
消毒中、流体は、主流路を連続して循環させることができ、幾分かの量の消毒液は、任意選択的に、たとえばエンドトキシンおよび他の物質のパージに役立ちかつシステムの追加の流れ回路の消毒に役立つように、ドレン31に向けられる。しかしながら、いくつかの実施形態では、消毒中、いかなる液体もシステムから出ず、かつシステムに入らない。代わりに、消毒の前または後に、洗浄またはリンス動作中、液体をドレン31に向けることができる。たとえば、液体は、たとえば図17Cに示すように、消毒の前、消毒中または消毒の後、液体を静脈および動脈患者導管67からドレン31に向けることができる。さらに、混合回路25から透析液タンク169まで流れる液体は、少なくとも部分的に(図23に示すような)経路48に沿って向けることができ、かつ/または液体は、要求に応じて消毒中に限外ろ過装置73から(同様に図23に示すような)経路731に沿って向けることができる。これらの二次経路を通る流れは断続的である可能性があるが、消毒中に流体が移動する回路は、図23において太線で示す回路を含むことができる。
主消毒流路内に流れをもたらすために、水混合ポンプ(図24Aのポンプ280を参照)を除く混合回路25のポンプ、方向付け回路142のポンプ、透析液回路143のバイパスポンプ35、および血液回路141の血液ポンプ13のすべてが、連続的に延びることができる。水混合ポンプ280および内部透析液ポンプ15は、主消毒流路を通して連続した流れに適応するように、完全に開放したままである可能性がある。さらに、たとえば、透析液回路143の平衡チャンバを出入りする流れをもたらすために、システム内に所望の流れをもたらすように、さまざまな弁が開閉される。流れはまた、これらの流路が消毒流体を受け取るのを可能にするように好適な弁制御により経路48および731内で可能にすることができる。水混合ポンプ280が通常開放したままである可能性があるが、消毒流体が、設けられる場合はアキュムレータ33(図89を参照)を出入りして流れることを確実にするために、好適な弁制御とともにポンプ280を働かすことができる。
方向付け回路142のヒータを通る流れにより、ヒータ72は、液体を、消毒に好適な温度まで、たとえば85℃±5℃まで加熱することができる。制御システムは、たとえば、システムの一部が、消毒を行うために十分な期間、好適に高い温度にさらされるのを確実にするのに役立つように、複数の位置で流体または他のシステム構成要素の温度をモニタリングすることができる。たとえば、水混合ポンプ280すぐ下流の温度、酸のための水/重炭酸塩との混合チャンバにおける温度、限外ろ過装置における温度、および/または静脈および動脈導管67が接続されているフロントパネル接続部における温度をモニタリングすることができる。一実施形態では、これらの温度のいずれかが、約5℃を超えて、互いに対して(または他の何らかの基準に対して)変化する場合、システムは、ユーザに対して問題を警告する、消毒プロセスを停止する、温度変動をもたらす問題を特定しようとする等、好適な措置をとることができる。温度変動は、1つまたは複数のシステム構成要素における流れが好適な高さおよび低さではないことを示し、それは、ポンプ、弁または他の誤動作、流れラインにおける詰りあるいはキンクまたは他の問題によってもたらされる可能性がある。所望の数のシステム位置における温度が、主流路における流体温度に対する85℃およびシステムフロントパネル温度に対する75℃等の閾値を超過した場合、システムは、時間累算を開始し、1時間等の所望の時間が経過するまで消毒を継続することができる。消毒プロセスにおける任意の時点で、1つまたは複数の位置における温度が、主流路における流体温度に対する76.5℃またはシステムフロントパネルにおける温度に対する67.5℃未満等、特定の値未満に低下した場合、システムは、消毒を継続しない、修理または他の是正が行われかつシステムが適切に消毒プロセスを完了するまでシステムのその先の使用を阻止する、ユーザへの通知等、好適な措置をとることができる。同様に、いずれかのシステム温度が、100℃等、特定の値を超過した場合、システムは、消毒を継続しない、システム修理の前にシステムのその先の使用を阻止する等、好適な措置をとることができる。
上述したように、消毒の前に、消毒中に、かつ/または消毒の後に、(たとえば、図4Aに示す)抗凝血剤バイアル11を空にすることができる。さらに、たとえばバイアル11内の温度を所望のレベルまで上昇させるのに役立つように、消毒プロセス中に、抗凝血剤バイアル11内に消毒液を導入することができる。バイアル11を空にすることは、バイアル11に加圧するようにバイアル11内に空気を押し込み、その後、圧力を解放して、圧力によってバイアル11内のいかなる液体もスパイク201から強制的に出るようにすることにより、行うことができる。バイアル内の圧力を、たとえば大気圧未満に低下させ、バイアル内に液体を流し込むことによって、バイアル内に消毒液を導入することができる。その後、バイアル11から消毒液を空けることができる。
図70Aおよび図70Bは、消毒アプリケーションの例示的な実装形態を示す。図70Aは、消毒状態7001を示し、それにより、消毒ユニットはそれ自体を消毒することができる。データハンドラ初期化状態7002は、データベースからのデータ値の読出しを処理する。値は、以下のテーブルにあり得る。すなわち、機器、透析装置使用および再使用、限外ろ過装置使用および再使用、血液管セット使用および再使用、消毒、満了および治療流れ図である。データハンドラ更新完了状態7003は、消毒が完了すると、データベース内のデータ値の更新を処理する。アイドル状態7004の間、消毒履歴消去7005の実行時、消毒状態7001の履歴が消去される。消毒開始7006は、プロセスをアクティブ状態7007に遷移させる。アクティブ状態7007は、消毒停止7008があるか監視する。消毒停止7008は、プロセスをアイドル状態7004に戻るように遷移させる。モニタリング状態7009は、透析ユニットのドアの開放、閉塞および透析ユニットの動作の休止7011に対する要求があるか監視する。ユーザが休止7011を要求した場合、アプリケーションは休止状態7010に進む。
モニタリング状態7009では、タンク充填状態7012は、逆浸透(RO)水生成を開始し、流路をプライミングする前にタンクを充填する。流路プライミング状態7013は、消毒に備えて流路全体を水でプライミングする。流路消毒状態7014は、装置の消毒を監督し、それが完了したときを判断する。流路消毒状態7014は、流れを開始し、透析液回路と同様に血液回路において流体を再循環させる。すべての温度センサが、目標温度の少なくとも1℃を超えて、または別の態様では、選択された連続した分単位の時間にわたってヒータにおける閾値温度(たとえば、95℃)以上のままであるとき、消毒は完了したとみなすことができる。当然ながら、代替パラメータを用いて、消毒を完了したとみなすことができる。こうした判断が行われるとき、消毒完了7015イベントが生成される。ウォームアップ状態7016は、さまざまな箇所において温度をモニタリングし、透析ユニットのいくつかの部分が加熱されるのを待つ。すべての温度センサが、目標温度を少なくとも1℃上回ると、流路目標温度7017イベントを生成することができる。温度保持状態7018は、さまざまな箇所で温度をモニタリングし、モニタリングされた温度が低下し過ぎた場合、措置をとる。たとえば、いずれかのセンサの温度が、連続した10秒間を超えて、目標温度を下回ると、流路目標温度未満7019イベントを生成することができる。別法として他のパラメータを使用することができる。タンク排出状態7020は、透析液タンクを空にする。このように、ドレンラインは、消毒の最終ラウンドを受ける。さらに、タンク排出終了状態により、その先のアプリケーションが既知のタンクレベルで開始することができる。完了状態7021は、消毒の完了状態である。
閉塞停止中状態7022は、すべての流れを停止し、ユーザに対し閉塞が検出されたことを通知する。閉塞状態7023は、ユーザが、閉塞が解消したことを示すのを待つ。ユーザが、問題が是正されたことを示すと、ユーザOK7024イベントが受け入れられる。ドア開放停止中状態7034は、すべての流れを停止する。ドア開放状態7025は、ユーザに対して、透析ユニットのドアを閉鎖するように促す。ユーザが、ドアが閉鎖されたことを示すと、ユーザOKイベント7026が受け入れられる。
ここで図70Bを参照して、休止挙動について考察する。停止待ち休止状態7027は、すべての動作が停止するのを待つ。装置が停止されると、イベント7028が生成される。ユーザ選択待ち休止状態7029は、ユーザに対して、次のステップを選択するように促し、ユーザがしたいことを選択するのを待つ。患者には、以下のオプションがある。すなわち、ROサンプル採取7030、電力待機7031および遮断7032である。ユーザROサンプル採取状態7030は、ユーザがROサンプルを採取する間待ち、電力待機状態7031は、電力待機を待ち、遮断状態は遮断を待つ。ユーザはまた、動作再開オプションを選択して、再開要求済みイベント7033(図70A)を生成することができる。
(4)エンドトキシンリンス
流体経路の消毒に続き、エンドトキシンリンスアプリケーションを介して、経路からエンドトキシンおよび死滅したバイオフィルムをリンスすることができる。エンドトキシンは、細菌の外側細胞壁の一部であり、細菌が死滅するときに放出される。バイオフィルムは、利用可能な表面に付着する微生物の複合的な集合体である。消毒プロセスは生きているバイオフィルム細菌を死滅させるが、エンドトキシンを含むすべてのバイオマス成分を除去することはできない。
死滅したバイオフィルムおよびエンドトキシンを除去するために、一定量の流体が一定流量で流路を通してフラッシングされる。このアプリケーションは、各管セグメントをそのセグメントの保持容量の少なくとも3倍の容量でリンスするように設計されているが、他の実装形態も可能である。1つの例示的な実装形態によれば、死滅したバイオフィルムは、少なくとも100のレイノルズ数を達成するために除去することができる。別の例示的な実装形態によれば、200以上のレイノルズ数を達成するようにエンドトキシンリンスアプリケーションを設計することができる。
図71は、エンドトキシンリンスアプリケーションの例示的な実装形態を示す。エンドトキシンリンスアプリケーション7101において、水によるプライミング状態7102が、消毒を完了したばかりのシステムに新鮮低温逆浸透水を導入する。流体回路リンス7103は、システムのすべての流体ラインをリンスするように設計されている。再循環状態7104は、流体生成、流体調製、再循環器、透析装置、血液回路およびアクセスラインを逆浸透水でフラッシングする。これらの回路のフラッシングは、消毒が完了した後にシステムに残っているエンドトキシンおよびバイオフィルムをシステムからリンスする。
残っている状態の各々は、いくつかのセグメントが排液されるのを可能にする流路の代替経路である。後続する状態は、時間の割合または送達される流体の割合に対して行われる。透析液回路排液7105状態は、血液管セットにおいて血液を再循環させながら、流体を透析液回路からドレンにフラッシングする。流体準備回路排液状態7106は、血液管セットにおいて流体を逆方向に再循環させながら、流体を流体準備回路からドレンにフラッシングする。限外ろ過装置再循環状態7107は、血液管セットにおいて流体を循環させながら、限外ろ過装置フラッシュポートを通して流体を再循環させる。血液回路排液状態7108は、流体を、血液回路を通してドレンにフラッシングする。透析液タンク上位状態7109は、透析液タンクを満杯レベルで維持する。タンク内で流体レベルを上下に循環させることが、タンクをリンスするように作用する。透析液タンク下位状態7110は、透析液タンクを略空レベルで維持する。
タンク排出状態7111は、透析液タンクからのいかなる残留透析液も、それをドレンに送ることによって除去する。閉塞回復状態7112は、ユーザに対し、閉塞が検出されたが、いかなる流れも停止しないことを通知する。休止状態7113は、動作を停止させる。さらに、患者は、追加の活動を行うように選択することができる。患者には以下のオプションがある。すなわち、部品(限外ろ過装置または透析装置/血液管セット)交換、サンプル(ROサンプル)採取、再循環再開、電力待機および遮断である。
(5)治療準備
治療準備アプリケーションは、透析セッションを行うようにシステムを準備する一連の動作を行う。このアプリケーションの間、化学物質原液が設置され、溶解し、混合されて、規定された透析液組成物が生成される。システムはまた、限外ろ過装置、透析装置および血管管セットとともに、重要な弁、ポンプおよび空気圧系統の完全性も試験する。新鮮透析液を使用して、システムが完全にプライミングされ、その後、血液管セットおよび透析装置がフラッシングされる。さらにこのアプリケーションの間、透析装置のクリアランスおよび限外ろ過装置の膜間圧力が試験され、電気的オフセットによりトリガ状態をシミュレーションすることにより、保護システムが自己試験される。
ユーザが、透析セッションの開始を要求すると、システムは、ユーザがあらゆるスケジューリングされたサンプルを収集するのを可能にする。ユーザはまた、自身の処方された化学物質原液カートリッジを設置するように促される。あり得るユーザのエラーを軽減するために、システムは、ユーザに対し、ユーザの化学物質原液カートリッジがユーザの処方箋に一致していることを検証するように促す。さらに、システムは、カートリッジが存在し適切に設置されていることを、ユーザがそうであることを示すと、確実にするように点検する。
逆浸透水が粉末化学物質に加えられ、それらは一様に溶解するように撹拌される。粉末化学物質が溶解すると、それらは酸原液と混合され、完成した透析液の伝導率が予測された伝導率に対して点検される。許容可能な透析液は透析液タンクに送られ、許容できない透析液はドレンに送られる。
透析液が混合されている間、一連の完全性試験が行われる。各場合において、試験対象の部品が加圧され、その後隔離され、その間、圧力減衰が経時的に測定される。圧力の逃げが早すぎる場合、部品は試験に不合格となり、交換するべきである。透析装置、血液管セットおよび限外ろ過装置は、一般にユーザによって交換されるが、他の品目は一般にサービススタッフによって交換される。血液ラインクランプの機能性が検証されて、危険が検出されたときに、システムが患者を装置から適切に分離することができることを確実にする。限外ろ過装置の日常的な完全性試験が望ましく、それは繰り返される熱消毒および高圧流によりフィルタの繊維が損傷する可能性があるためである。限外ろ過装置が完全性試験に不合格となる場合、透析装置および血液管セットを含む下流に、エンドトキシンが存在する可能性がある。したがって、この場合、3つの部品すべてを交換するべきである。次に、透析装置および血液管セットの日常的な完全性試験が望ましく、それは、繰り返される処置および熱消毒によりこれらの使い捨て品が損傷する可能性があるためである。破損した透析装置繊維により、血液が透析装置の血液側からシステム内に漏れ出る、かつ/またはエンドトキシンが透析装置の透析液側から血液に入るのを防止する透析装置の能力を損なう可能性がある。
重要な弁、ポンプ、空気圧系統およびさまざまな交換可能なカートリッジは、圧力試験および真空試験を用いて試験される。圧力または真空のいずれかを、試験される部品に送り、その後隔離することができ、その間に、圧力減衰が経時的に測定される。圧力の逃げが早すぎる場合、その部品は試験に不合格となり、それは交換するべきであることを示す。
システムは、新鮮透析液によってプライミングされる。透析装置クリアランスが測定されて、その溶質除去性能が許容可能であるか否かが判断される。透析装置が再使用される際、繊維に、血塊およびバイオフィルムが詰まる可能性があり、それにより、溶質移送(拡散および対流)に利用可能な有効表面積が低減する。これが起こる際、血液から毒素を「除去する(clear)」透析装置の能力が低下する(そのため、クリアランスという用語を用いる)。クリアランス値が、許容可能な規定された割合を超えて低下した場合、オペレータに通知することができ、治療の完了の後に交換を行うことができる。
限外ろ過装置膜間圧力(TMP)を日常的に試験して、それが最大動作限界を超えないことを確実にすることができる。TMP限界は、通常、限外ろ過装置の繊維またはハウジングに対する損傷を防止するために使用される製造業者の規格であり、そのような損傷により、外部への漏れがあるかまたはエンドトキシンが限外ろ過装置を横切ることになる可能性がある。時間の経過により、限外ろ過装置は、バイオフィルムおよび他の残がいによって徐々に詰まり、それにより、その繊維を横切る圧力低下が増大する。TMP試験は、限外ろ過装置を通して使用される最大システム流量を送り、圧力低下を測定する。圧力低下が最大動作限界を超過した場合、限外ろ過装置は、治療が完了した後に交換するべきである。
透析装置および血液管セットにおける逆浸透水は、溶血を防止するために治療の前に生理的流体と交換するべきである。さらに、初回透析症候群−1(FUS−1)を防止するために、治療の前に透析装置に存在する可能性がある残留エチレンオキシド(ETO)をフラッシングして除去するべきである。透析液は微生物増殖培地であるため、セットにおける停滞時間を低減させるために、血液管プライミングはアプリケーションプロセスの後の方で行われる。
保護システム自己試験を行うことができる。これは、安全でない状況をシミュレーションするために安全センサにオフセットをもたらし、その後、各保護システムが意図されたように反応することを確認することによって達成される。
図72は、治療準備アプリケーションの例示的な実装形態を示す。図72を参照すると、治療準備アプリケーション7201の状態が記載されている。化学物質原液交換7202状態は、ユーザが、透析液を調製するプロセスを開始するために化学物質原液を接続するのを可能にするように必要な動作を行う。この状態は、装置が化学物質原液を受け取る用意ができているときを示す。また、この間、システムは、化学物質原液容器が存在しかつ適切に接続されていることを検証する。化学物質設置状態7203の間、システムは、用意ができていることを示す場合に、ユーザに対し化学物質原液を設置するように促す。促す内容には、設置を行う方法に関する指示も含まれる。システムは、化学物質原液がカートリッジ形態であってもボトル形態であってもそれを設置するための指示プロンプトを表示することができる。オペレータは、ユーザインタフェースを用いて自身の処方を示すことにより、設置を確認することができる。化学物質存在試験7204は、化学物質がシステムに適切に設置されたか否かを検出する。システムは、化学物質が設置されたか否かを検出するために存在センサを使用することにより、化学物質が設置されたことを検証することができる。システムがカートリッジが存在しないことを示す場合、システムは、接続回復7205に遷移する。さらに、システムは、化学物質バイパスドアが開放されているか否かをモニタリングし、それは、化学物質管が接続されていることを意味する。化学物質容器に真空を引いて化学物質追加ポートが雰囲気に開放していないことを確認することにより、接続部もまた検証することができる。接続回復7205は、システムが、化学物質原液が適切に設置されていないことを検出した場合、ユーザ対話を処理する。この回復は、システムが化学物質原液の存在を検出することができないか、または真空完全性試験が不合格となる場合にのみ、行う必要がある。システムが化学物質原液が適切に設置されていないことを示す場合、システムは、ユーザに対し、化学物質が適切に設置され、すべての接続部が確実に締結されていることを検証するように指示する。そして、システムは、ユーザが、接続部が点検され、システムが再び化学物質存在試験7204を行うのを可能にすることを示すのを待つ。
化学物質存在試験7204が適切に完了すると、システムは、化学物質溶解および完全性試験7206に遷移する。化学物質溶解および完全性試験状態7206の間、システムは、規定された透析液処方を実現するように、化学物質原液を溶解し結合するプロセスを開始する。さらに、この状態は、特定の部品の日常的な完全性試験を行う。透析液調製の動作および完全性試験を実施する動作は、時間をより効率的に使用するためにシステムによって同時に行われる。
完全性試験状態7207は、限外ろ過装置、血液管セットおよび透析装置ならびに透析液回路の完全性試験を処理する。限外ろ過装置(UFTR:Ultrafilter)完全性試験7208は、限外ろ過装置の完全性を検証する。ハウジング内の水が強制的に出され、その後、空気が加圧され外側から線維に対して保持される。許容可能な減衰限界が超過した場合、フィルタは交換するべきである。この状態の間、UFTR完全性試験が、試験が不合格であったという指示を返す場合、システムは、この情報をユーザに中継する。ユーザは、部品交換への遷移を介してUFTRを交換するように指示される。新たな限外ろ過装置の設置が完了すると、システムは、完全性試験を再度行い、通常の動作を再開する。血液管セット(BTS)/透析装置完全性試験サブ状態7209は、血液管セットおよび透析装置の完全性を試験するように意図されている。これは、圧力を発生させ、その後、減衰を測定することによって達成される。透析装置/血液管セットが完全性試験に不合格となると、ユーザに対し、透析装置および血液管セットを交換するように通知される。この状態の間、システムがBTSおよび/または透析装置完全性に対して不合格ステータスを返す場合、システムは、オペレータに対して、BTSおよび/または透析装置完全性試験が不合格であったことを通知する。ユーザには、部品交換オプションを通してこれらの部品を交換するための情報が提供され、かつユーザは交換することが可能になる。部品が交換されると、システムは完全性試験を再度行う。望ましい場合、弁/ポンプ/空気圧系統完全性状態7210中に、全体的なシステム完全性試験を行うことができる。
完全性試験不合格回復状態7211は、完全性試験中に特定されたあらゆる完全性試験不合格を処理する指示を提供する。システムが、完全性試験不合格があったことを示す場合、ユーザに対してシステムにより、不合格とともにいずれの部品が不合格であったかが通知される。そして、ユーザは、交換を行うために必要な措置を行うことができる。新たな部品が設置されたことをユーザが示すと、システムは通常の動作を再開する。
透析液によるシステムプライミング7212は、透析液によってシステムをプライミングするために必要な措置を行う。この状態は、透析液によるプライミング7213、透析装置クリアランス状態7214、限外ろ過装置膜間圧力(UFTR TMP)状態7215およびETOプライミングフラッシング状態7216を含む。透析液によるプライミング状態7213は、化学的生成を開始し、透析液によってシステムをプライミングする。透析液クリアランス状態7214は、所与の流量および温度条件の下で透析装置膜を横切ることができる、尿素クリアランスの代用として使用されるナトリウムクリアランスの量を定量化する。UFTR TMP状態7215は、最大システム流量で限外ろ装置を横切る膜間圧力(TMP)を測定して、それが指定された最大限外ろ過装置TMPを超過しないことを確実にする。UFTR TMPが許容可能な限界を超過する場合、システムは、その通常動作継続することができる。ユーザに対して、TMP試験の不合格のために限外ろ過装置(UFTR)を交換する必要があることと、再循環準備中に交換が行われることとが通知される。ETOプライミングフラッシング状態7216は、浸出した可能性があるエチレンオキシド(ETO)を透析装置からフラッシングする。
サンプル通知状態7217中、システムは、患者または臨床担当者によっていずれかのサンプルが事前にスケジュールされていたか否かを特定する。この状態はまた、オペレータに対して、スケジュールされたサンプルも通知する。以下が、オペレータが収集するように通知される可能性があるサンプルである。すなわち、血液サンプル、塩素サンプル/試験、クロラミンサンプル/試験およびRO水サンプルである。サンプル実施状態7218の間、システムは、ユーザに対して、採取されるようにスケジュールされたサンプルがあることを通知する。この状態の間、ユーザには、これらのサンプルの採取を受け入れるかまたは断る機会がある。システムは、スケジュールされたサンプルがあるか否かを評価する。システムが、スケジュールされたサンプルがあることを示し、かつユーザがサンプルを行うように選択した場合、システムは、休止7219に担当を移し、そこで、サンプルの各々が処理される。
システムは、患者が装置に接続される前に、保護システムの自己試験を可能にする状態を生成する。保護システム試験の不合格が検出されると、保護システム試験状態7220は、適用可能な場合は是正措置を開始する。患者を接続する前に以下の保護システムを試験することができる。すなわち、空気検出(静脈および動脈)、透析液伝導率、透析液温度、血液漏れ試験、流体漏れ試験およびドア開放である。これは、保護システムがトリガする条件をシミュレーションするようにセンサの各々をオフセットすることによって行うことができる。システムは、適切な保護システムが開始したことを確認する。
保護システム試験不合格回復7221は、自己試験のうちの1つが不合格ステータスを返す場合にトリガされる。保護システム試験7222のすべてが完了したときに、この状態に入る。透析液伝導率保護システム試験、透析液温度保護システム試験、血液漏れ保護システム試験および流体漏れ保護システム試験のうちのいずれかが不合格ステータスを返す場合、オペレータに対して、動作を継続することができないことを指示することができる。空気検出保護システム試験またはドア保護システム試験のいずれかが不合格ステータスを返す場合、オペレータに対して、不合格に関連する是正措置を行うように指示することができる。
(6)患者接続
処置準備に続き、患者がシステムに接続され、体外血液管回路が血液でプライミングされる。少なくとも2つのプライミング処方オプションがあり、すなわち、第1方法は、「プライミング液廃棄」(またはプライミング液戻りなし)であり、そこでは、血液が体外回路に導入される際に、透析液プライミング液が装置内に引き込まれる。第2方法は、「プライミング戻りあり」であり、そこでは、血液が体外回路に導入される際に、透析液プライミング液が患者に与えられる。これらの2つの方法の選択は、プライミングプロセス中に患者がどれくらいの容量を除去したいかと、それらの静脈アクセスがそこから引き出される流体に耐えられるか否かとによって決まる。
プライミング液廃棄の場合、プライミング液がドレンに廃棄される際に、血液は、患者の動脈アクセス部位および静脈アクセス部位から装置内に同時に引き込まれる。このプライミング法は好ましいことが多く、それは、患者は、通常、容量を過剰に搭載して透析処置を開始し、したがって、追加の流体を受け取ることなくプライミングを行うことを希望するためである。ユーザは、そのアクセスが静脈ラインを上る逆流に耐えることができない場合、プライミング方法をプライミング戻りありに切り替えるように選択することができる。動脈流量および静脈流量は、血液の波面が透析装置の繊維の内側にちょうど接触するように可能な限り一致させることができる。プライミングプロセス中に血液が限外ろ過される場合に発生する可能性がある局所的な血液濃縮を避けるために、体外回路を意図的にわずかに「プライミング不足(underpriming)」にすることができる。
プライミング戻りありの場合、血液は動脈ラインを引き上げられ、プライミング液は、静脈ラインを下って患者まで移動する。このプライミング方法は、アクセスがプライミング液廃棄に使用される静脈ラインを上る逆流に耐えることができない患者、または血液量減少に影響を受け易い患者に対して、処方することができる。患者が急激な血液量の喪失に耐えられない場合、この方法によって患者はプライミング中に自身の血液量を維持することができる。
さらに、患者は、依然として追加の容量を必要とする場合、接続されている間はいつでも溶液注入を開始することができる。特に、血液量減少に影響を受け易い患者の場合、わずかに余分な流体を用いて処置を開始するように選択することができる。
いずれのプライミング方法においても、オペレータは、いつでもプライミング血液流量を変更することができる。しかしながら、いかなる変更も、後続する処置に対する規定された設定に対して影響を与えない。アクセス部位障害および圧力/流量の問題は、処置の開始において共通であり、したがって、オペレータは、プライミング中に血液流量を低下させることを希望する可能性がある。
透析装置および血液管セットは、透析装置製造業者の説明書に一致するようにすでにフラッシングされているが、透析装置内が流体により停滞している場合に透析装置から滅菌剤がさらに浸出することに関する業界における問題がある。したがって、透析装置が長時間停滞している場合、再フラッシングすることができる。
図73A〜図73Dは、患者接続アプリケーションの例示的な実装形態を示す。図73Aを参照すると、患者接続アプリケーション7301の接続およびプライミング状態7302により、患者は、スケジュールされている場合にプライミングサンプルを採取し、装置に接続し、血液管セットを血液でプライミングすることができる。接続およびプライミング状態7302内では、接続状態7303は、プライミングサンプルを採取することと、装置に接続することとを含む。この状態の間、システムは、プライミング液が終了したか否かを判断することができる。新品の透析装置の場合、プライミング液は、透析装置および血液管セットの最後のフラッシングからおよそ15分後に終了する。少なくとも1回熱消毒した透析装置の場合、プライミング液は、透析装置および血液管セットの最後のフラッシングからおよそ30分後に終了することができる。
透析装置内が流体によって停滞している場合、透析装置から滅菌剤が浸出することに関して業界における問題がある。したがって、透析装置の前回のフラッシングが、新しい透析装置の場合は15分前、1回または複数回消毒されている透析装置の場合は30分前に行われた場合、透析装置を再度フラッシングすることができる。このフラッシングにより、初回透析症候群−1(FUS−1)を防止するために、BTSに存在する可能性のあるいかなるエチレンオキシド(ETO)も除去される。新品の透析装置と1回または複数回熱消毒された透析装置との間の時間に差がある根拠は、新品の透析装置の方が、多くのETOが浸出する可能性が高いということである。使用済み透析装置には、残留ETOはほとんどまたはまったくない。
収集決定状態7304は、いくつかのデータベース項目に基づいて、プライミングサンプルがスケジュールされているか否かを判断する。装置への接続状態7305は、患者に対して、患者の体重を入力し装置に接続するように促す。状態は、患者が接続されていることを示すまで待つ。状態は、接続手順と患者の体重を入力する手段とを示すメッセージをポストする。ヘパリンが処方されている場合、状態はまた、患者に対して、ヘパリンバイアルをポンプに装填するように促す。
プライミングサンプル収集状態7306は、患者がプライミングサンプルを収集するのを可能にする。プライミング液サンプルを用いて、透析装置および血液管セットをプライミングするために使用された透析液流体の微生物評価が行われる。プライミングサンプル収集状態7306において、サンプル促進状態7307は、患者に対してプライミングサンプルを収集するように促す。サンプル送達状態7308は、透析装置を横切って静脈ラインに流体を押し流し、患者に対してプライミング溶液のサンプルを提供する。いつでも、患者がサンプル収集を終了するのを可能にする通知を患者に提供することができる。
プライミング液サンプルに対する許容可能な容量は、たとえば、500mlであり得る。通常、微生物評価には、150mlのサンプルが必要である。滅菌サンプル収集では、概して、サンプルを採取する前に幾分かの流体が廃棄物容器に流れ込むことが必要である。500mlの最大容量によって、最初のサンプルが汚染された場合に、ユーザが追加のサンプルを採取することがも可能である。サンプル収集時間に対する要求は、およそ30秒間以下であり得る。150mlサンプルを取得するために、静脈ラインからの所望の流量は、300ml/分であり得る。血液によるプライミングに備えて、透析液を規定された温度まで加熱することができる。患者が、血液管セットに透析液プライミング液を受けるように選択した場合、それは快適な温度となる。
収集停止状態7309は、流体の流れを停止し、装置の停止が完了するのを待つ。サンプル容量限界に達することによるか、または患者の要求によってこの状態に入る。装置が停止したとき、収集停止済みイベント7310がトリガされ、収集停止済み状態7311に遷移する。収集停止済み状態7311は、患者が、接続に進む用意ができていることを示すのを待つ。別法として、患者は、追加のサンプル収集を要求することができる。
再プライミング状態7312は、患者が血液管セットを再接続しドアを閉鎖することを確実にする。そして、透析液および血液管セットが再フラッシングされる。ドア閉鎖状態7313は、ユーザに対してドアを閉鎖するように促す。図73Bを参照すると、ドア停止待ち状態7315は、停止コマンドを発行し、装置が停止するのを待つ。ドアユーザ待ち状態7316は、ユーザまたは検出器のいずれかが、ドアが閉鎖されていることを示すため、共通のモニタリングアプリケーションが、ドアが閉鎖されていることを示すのを待つ。血液管セット再プライミング中状態7314は、不活動状態の期間中に浸出した可能性があるいかなる残留ETOを再フラッシングする。
再び図73Aを参照すると、透析液生成回復状態7317は、透析液温度が規格外であるシナリオから装置が回復するのを可能にする。たとえば、透析液の温度が規定温度の1℃以内になると、プロセスは再プライミング状態7312に遷移することができる。
血液によるプライミング状態7318は、プライミング液戻りあり7319方法またはプライミング液戻りなし7320方法のいずれかを用いて、血液管セットおよび透析液をプライミングする。血液漏れが検出された場合、警報イベントが生成される。プライミング液戻りなし状態7319は、血液を動脈ラインおよび静脈ライン両方に引き上げ、透析液を、透析装置を通してドレンまで下るように移動させることによって、血液管セットをプライミングする。システムは、状態中いつでも、プライミング戻りあり7320を選択するか、またはプライミング血液流量を変更することができることを患者に通知することができる。動脈プライミング率は、規定項目であり、患者が変更することができる。血液管セットおよび透析装置容積は、透析装置の流束量が経時的に低減することを反映するため、かつ血液濃縮を避けるために、公称値よりわずかに小さい可能性がある。プライミング液戻りなしモニタリング7321は、プライミングプロセスのステータスを点検することにより、血液管セットのプライミングをモニタリングする。
プライミング液廃棄停止7322状態は、流体を停止し、装置停止が完了するのを待つ。装置が停止したとき、廃棄停止済みイベント7323がトリガされ、それによりプライミング液戻りあり7320に遷移する。プライミング戻りあり状態7320は、血液を動脈ラインに引き上げ、透析液を、静脈ラインを下って患者まで移動させることにより、血液管セットをプライミングする。動脈空気をモニタリングすることができる。患者に対して、この状態中いつでもプライミング血液流量を変更することができることを通知することができる。プライミング液戻りあり開始状態7324は、血液管のプライミングを開始する。血液が、動脈ラインに引き上げられている間、プライミング液は、静脈ラインを通して患者に与えられる。割合は規定項目であり、患者が変更することができる。プライミング液戻りありモニタリング状態7325は、送り出される総容量を累算し、それを透析装置および血液管セットにおける総容積と比較することによって、血液管セットのプライミングをモニタリングする。送り出される容量が総透析装置および血液回路容積より大きい場合、プライミングは完了する。患者が、プライミング液戻りなし7319を開始した場合、その状態の間に送り出される量は、この状態に繰り越される。患者に対して、処置を開始することができるときが通知される。患者が、処置を開始する用意ができていることを示す場合、患者接続アプリケーションが停止され、透析アプリケーションが開始される。
図73cに示す空気回復状態7326は、ユーザが血液管セットへの空気侵入から復帰するのを可能にする。空気停止待ち状態7327は、流れが停止するのを待つ。空気ユーザ待ち状態7328は、共通のモニタリングアプリケーションが、警報が解消されていることを示すのを待つ。
閉塞回復状態7329は、ユーザに対して、閉塞が検出されたがいかなる流れも停止しないことを通知する。閉塞回復状態7329では、閉塞停止待ち状態は、停止コマンドを発行し、装置が停止するのを待つ。閉塞ユーザ待ち状態は、共通のモニタリングアプリケーションが、閉塞が解消されていることを示すのを待つ。
図73dを参照すると、休止状態7330が詳細に示されている。休止状態7330は動作を停止させる。さらに、患者は、追加の活動を行うように選択することができる。特に、患者には以下のオプションがあり得る。すなわち、ROサンプル採取、活動再開、返血、切断、電力待機および遮断である。休止状態7330が履歴を有していないため、ステートマシンは、停止機能を発行する休止停止待ち7331に遷移する。この場合もまた、患者が動作を再開するように選択した場合、プロセスは収集およびプライミング状態7302に戻り、その状態は、履歴機構を介して以前のサブ状態に差し向ける。ユーザが休止ボタンを選択した場合、ユーザ休止要求イベント7332を送ることができ、それにより、患者接続ステートマシンが休止に遷移し、その後、初期状態の休止停止待ち状態に遷移する。装置が停止されると、ステートマシンは休止ユーザ選択待ち7334に遷移する。ユーザが再開を選択すると、ユーザ再開要求イベント7333が受け入れられる。
患者が、部品交換アプリケーション7335等の別のアプリケーションを実行するように選択した場合、マスタ制御部は、患者接続停止イベント7336をトリガし、それにより、患者接続ステートマシンはアイドル状態7337に遷移する。装置が停止されると、ステートマシンは、休止ユーザ選択待ち7334に遷移する。たとえば、ユーザが再開ボタンを押すことにより、ユーザ再開要求イベント7333がトリガされると、ステートマシンは、接続およびプライミング7302に戻るように遷移し、その状態およびそのサブ状態内の履歴に従って再開する。
再び図73Aを参照すると、回復不能警報7340状態は、患者に対して、回復不能警報があることを通知する。現アプリケーションが停止し、患者に対して、警報を確認した後にシステムから切断するように指示することができる。
(7)透析
透析ユニットに接続した後、透析治療を患者に施すことができる。透析治療は、拡散、順方向限外ろ過および逆方向ろ過(対流)を使用して、患者の血液から毒素および過剰な流体を除去する。さらに、治療中の凝固を防止するために、血液にヘパリンを投与することができる。
拡散は、半透膜を通して患者の血液を透析液にさらすことによって達成される。血液は、患者の動脈アクセスから引き出して患者の静脈アクセスに戻すことができる。同時に、逆浸透水および化学物質原液から新鮮透析液を生成し、規定された温度まで加熱し、使用済み透析液がドレンに送られる間に、透析装置の透析液側に送達することができる。血液を透析液内に移動させることにより、透析装置膜における濃度勾配により、さまざまな分子サイズの毒素が平衡化される。規定された血液および透析液流量設定ならびにそれらの精度は、所望の量および割合の毒素除去を行うために重要である。血液および透析液の流れは、すべての箇所において濃度勾配を最大化するために向流であり、それにより、発生する拡散の量が増大する。拡散はまた、透析装置に送達される透析液が再循環されたものより新鮮であるという事実によっても促進される。送達される透析治療投与量に影響を与える可能性があるさらなる要因としては、患者のサイズ、規定された治療期間、透析装置の有効表面積および透析装置クリアランスが挙げられる。
順方向限外ろ過により、患者の血液から過剰な流体が除去される。規定された流体容量は、透析装置の透析液側に相対的に低い圧力を発生させることによって除去され、それにより、血液から流体が引き抜かれる。限外ろ過速度は、除去される規定された流体流量を使用して計算され、また、プライミングプロセス、バックフラッシュプロセスおよび返血プロセス中に患者に送達されるあらゆる透析液容量も考慮する。
逆方向ろ過またはバックフラッシュは、順方向限外ろ過の逆である。透析装置の血液側から透析液側に流体を引き抜く代わりに、流体は、透析液側から血液側に押し流される。このプロセスは、血液管および透析装置内の血塊形成を防止するのに役立ち、それにより、より小さいヘパリン投与を可能にし、透析装置の耐用年数を延ばし、透析装置洗浄および再使用を容易にすることができる。バックフラッシュには、対流を通してより優れた溶質除去を促進するというさらなる利点がある。拡散と同様に、対流は、血液から毒素を除去する。しかしながら、濃度勾配に依存する拡散とは異なり、対流は、溶質を搬送するために透析装置を横切る流体の能動的な移動に依存する。バックフラッシュは、流路の血液部分および透析液部分の同期によって制御される。血液側と透析液側との間の位相を変更することにより、わずかな増分で透析装置を横切る流体が一定してかつ繰り返しシフトする。流体のシフトにより、透析液は血液回路に押し流され、その後、引きもどされるが、正味の限外ろ過はもたらさない。
透析が行われている間、ヘパリンを投与することができる。この投与は、流体の一連の1つまたは複数のボーラスとして、または連続して処理することができる。患者はまた、予期されない凝固が発生した場合に、ヘパリン追加の1つまたは複数のボーラスを受け取るように選択することも可能である。
図74Aおよび図74Bは、透析アプリケーションの例示的な実装形態を示す。図74Aを参照すると、透析状態7401は、透析治療全体につながる動作を調整する最上位状態である。この状態は、ステータマシンのデータ処理要素と同時に実行する。この状態の間、透析液が生成され、透析液タンクに適切な緩衝機構が維持される。透析アプリケーションに関連するデータの更新は、ステートマシンのデータ処理要素によって処理される。
透析アプリケーションのアクティブ状態7402では、すべての透析関連処理が行われる。残っている透析時間が経過すると、透析は完了する。モニタリング状態7403は、処置を行うことができるように血液および透析液の流量を開始することを担当する。血液漏れモニタリングおよび空気モニタリングを要求することができ、限外ろ過モニタリングを可能にすることができる。初期血液流状態7404は、患者が処置を開始する前に自身のアクセスを点検するために、血液ポンプを低速で開始する。血液および透析液流開始状態7405は、血液流量を規定された流量まで増大させる。それはまた、透析液タンクからの流体を加熱し、それを透析装置の周囲で分流させることにより、透析液の流れも開始する。
透析およびUF制御状態7406は、血液透析の実施を担当する。透析は、限外ろ過およびヘパリン投与とともに行われる。透析液温度が許容可能限界内にない場合、透析液温度警報を生成することができる。完全血液側閉塞モニタリングを要求することができ、部分的血液側閉塞モニタリングを停止するように要求することができる。定常状態透析状態7407は、透析装置を通して血液および透析液を循環させることにより、透析を行う。それはまた、所定治療関連情報も収集する。部分的閉塞状態7408は、ユーザに対して、閉塞が検出されたがいかなる流れも停止しないことを通知する。ヘパリン投与状態7409は、規定された速度でヘパリンを投与する。ヘパリンは、送達されたヘパリンの量が規定された量に等しいか、または患者が、ヘパリン送達が停止されるように要求した場合に停止される。ヘパリンボーラス状態7410は、ヘパリンのボーラスを送達する。
限外ろ過状態7411は限外ろ過を行う。限外ろ過速度は、除去する必要がある流体の量を治療に残っている時間で割ることによって求められる。目標限外ろ過容量が、現ろ過容量から500mlを超えて異なる場合、限外ろ過警報をもたらすことができる。以下のうちのいずれかが真である場合、限外ろ過を停止することができる。すなわち、(1)限外ろ過の量が、除去する必要がある規定された容量+返血容量+プライミング容量以上である、または(2)患者が限外ろ過を停止するように要求し、限外ろ過の量が返血容量+プライミング量以上である。
限外ろ過(「UF」)ポンプの実際のストロークを予期されたストロークの数と比較して限外ろ過の目標容量を達成するために、計数アルゴリズムを使用することができる。予期されるストロークの数は、限外ろ過の要求された容量および速度に基づいて同期させることができる。ポンプの実際のストロークは、コントローラに対して限外ろ過ポンプの弁の状態をモニタリングさせることによって計数することができる。一実装形態では、実際のストロークが安全閾値を超えて予測されたストロークを超過した場合、装置を安全状態にすることができる。実際のストロークが閾値量、予測されたストロークを下回る場合、ポンプ流量を増大させるかまたは持続時間を延長することにより、治療セッションが所望の限外ろ過量に達しなくなるのを回避することができる。
血液および透析液再循環状態7412は、透析液の温度を処置限界にするために、透析液を透析装置にバイパスさせて、血液および透析液を再循環させる。
閉塞停止状態7413は、血液流量が低下し過ぎた場合に血液の流れを停止して、ユーザに対して、問題があることを通知する。閉塞状態7414において閉塞が検出されない場合、装置は、初期血液流量状態7404を続ける。
空気回復停止中状態7415は、ユーザに対して、血液管セットへの空気侵入が発生したことを通知し、機能が停止するのを待つ。空気回復状態7416により、ユーザは、血液管セットへの空気侵入から回復することができる。
モニタリング休止状態7417は、装置の休止および休止メニューオプションの表示を担当する。図74Bを参照すると、モニタリング停止中状態7418は、装置を停止し、休止ボタンが押されたという視覚的フィードバックをユーザに与える。モニタリング休止オプション状態7419は、休止メニューオプションのすべてを表示する。切断モニタリングアプリケーション7420は、その状態においてマスタ制御部によって停止されるのを待つ。溶液注入モニタリングアプリケーション7421は、その状態において、マスタ制御部によって停止されるのを待つ。サンプル採取モニタリングアプリケーション7422は、その状態において、マスタ制御部によって停止されるのを待つ。電力待機モニタリングアプリケーション7423は、その状態で、マスタ制御部によって停止されるのを待つ。遮断モニタリングアプリケーション7424は、その状態で、マスタ制御部によって停止されるのを待つ。
再び図74Aを参照すると、データハンドラ初期化状態7425は、透析アプリケーションに対する関連するすべてのデータの初期化を担当する。この初期化が完了すると、データハンドラ初期化状態7425は、透析開始OKイベント7426を生成して、アプリケーションが開始の用意ができていることをマスタ制御部に示す。データ更新状態7427は、透析アプリケーションに対する最新の値および関連するすべてのデータの維持を担当する。
(8)溶液注入
低血圧イベントを抑制するために、システムは、患者にボーラス容量の流体を送達することができる。システムが処置中に患者から流体容量を取り除く際、患者の全身の血圧の予期しない低下が発生する可能性がある。この低血圧イベントは、患者にめまい、失神、またはさらには深刻な合併症を引き起こす可能性がある。これらの結果を防止するために、ユーザは、溶液注入を要求するだけでよい。そして、システムは、超高純度透析液の規定されたボーラスを送達することができる。
ユーザが、溶液注入を要求すると、血液ポンプは、凝固を防止するように運転したままにすることができる。溶液注入アプリケーションは、注入液を送達するために十分な透析液容量が利用可能であるか否か、かつ患者の血液を返血するために十分な予備容量がまだあるか否かを評価する。それらがない場合、ユーザに対して、注入が可能ではないことを通知することができ、返血を選択するかまたは治療を再開するように指示することができる。十分な透析液がある場合、注入を開始する前に、ユーザに対して、短いカウントダウンを表示することができる。溶液注入は、1回ボタンを押すことによって可能であるため、ユーザは誤ってボタンを押している可能性がある。この遅延により、ユーザに、注入を開始する前に取り消す機会が与えられる。
遅延に続き、新鮮で加熱された透析液流体が、透析装置を横切り静脈ラインを下って患者に送られる。同時に、血液ポンプが低速で正転運転されて、血液の循環を継続し凝固を防止する。可能な限り迅速に置換液を送達するために、注入に使用される流量は、大部分の患者のアクセスおよび血管系が適度に耐えられる程度に高速である。流量が高すぎることにより、血液管セット内に高圧がもたらされ、注入液送達の厄介な中断に至る可能性がある。さらに、注入液流量は、看護師が他の装置において低血圧発現を抑制するように吊るすことができる生理食塩水バッグからの流れと近似する。
規定された溶液注入容量が送達された後、患者に低血圧の状態が続いている場合、患者は、十分な透析液容量が利用可能である限り、相対的に小さい追加のボーラスを注入するように選択することができる。患者がこのアプリケーションから出て先の活動(たとえば、患者接続または透析)に戻ると、溶液注入に対する後続する要求は、完全な規定された溶液注入容量に対するものであり得る。
図75A〜図75Eは、溶液注入アプリケーションの例示的な実装形態を示す。図75Aを参照すると、溶液注入7501は、溶液注入の送達に至る動作を調整する最上位状態である。この状態は、ステートマシンのデータ処理要素と同時に実行する。溶液注入アプリケーションに関連するデータの更新は、ステートマシンのデータ処理要素によって処理される。アイドル状態7502は、他のすべてのシステム処理中の溶液注入アプリケーションの状態である。溶液注入開始イベント7503を受け取ると、溶液注入アプリケーションはアクティブ状態7504に遷移する。溶液注入アプリケーションは、アクティブ状態に遷移しているときに開始したことを示す。溶液注入履歴消去イベント7505を受け取ると、溶液注入アプリケーションは、履歴を消去し、アイドル状態7502にあり続ける。溶液注入アプリケーションのアクティブ状態7504の間、送達される溶液注入容量が設定される。
モニタリング状態7506は、血液漏れ7507、動脈および静脈空気7508ならびに閉塞7509等、共通の危険要因があるか監視する。モニタリング状態7506は、モニタリングプロセスにイベントを送ることによってモニタリングを開始し、休止または他の中断によって停止された場合に透析液生成を開始する。
取消可能性のための遅延状態7510により、患者は、選択した場合に溶液注入を取り消すことができる。遅延(たとえば、3秒間)の間、ユーザインタフェースは、ユーザに対し、注入が開始するまでの時間および注入を取り消すことができることについて、更新する視覚的指示を与えることができる。取消なしに遅延が経過した場合、遅延完了7511が発生する。
流体送達評価状態7512は、要求された注入液を送達するために十分な透析液が利用可能であるか否かを評価する。流体注入中状態で与えられる溶液注入容量も計算する。流体利用不可状態7513は、患者に対して、要求された注入を行うために十分な流体がないことを通知する。患者が応答する間、血液ポンプは循環し続ける。十分な流体がある場合、循環停止状態7514は、溶液注入を開始することができるように血液の循環を停止する。
流体注入中最上位状態7515は、溶液注入マシン層コマンドが実行している間にアプリケーションの挙動をカプセル化する。溶液注入動作は、超高純度透析液を、透析装置を横切って静脈ラインを下って患者まで押し流す。透析液は、透析装置を横切るように押し流される前に加熱される。同時に、血液ポンプが低速で正転運転されて血液の凝固を最小限にする。注入されるために残っている流体の容量は、この状態の間に更新することができる。この容量を表す静的変数は、流体送達評価状態7512において最初に設定され、その後、この状態で、容量がマシン層ステータス変数、すなわち透析液回路容積に蓄積される際に更新される。注入される容量は、送達された容量分だけ減らされるはずである。規格外透析液温度7516イベントが発生した場合、透析液温度回復状態7517に遷移する。注入するべき容量が、中断および再入のために25ml未満である場合、ポンプ停止済みイベント7518を即座に発行することができ、いかなる注入液も与えるべきではない。
注入開始状態7519では、溶液注入マシン層コマンドが開始される。注入される容量は、容量が送達されると連続的に更新され、それにより、注入がいつ開始または再開しても正しい容量が入力される。マシン層ステータスが、コマンドが開始されたことを示す場合、SI開始済みイベント7520が発行されて次の状態に遷移する。
透析液温度回復状態7517は、装置が、透析液温度が規格外である状況から回復するのを可能にする。温度がその許容可能な範囲に戻るかモニタリングされながら、透析液は、ドレンに直接送られる。透析液の温度が、たとえば連続5回の読取りで目標範囲内にある場合、回復は完了し、透析液温度回復済みイベント7521が発行される。
完了最上位状態7522は、凝固を防止するために血液循環を開始し、患者が、追加の注入を希望すること、または注入を終えることのいずれかを示すのを待つ。この最上位状態内のいずれかの状態の間に休止が発生した場合、休止状態7523は循環を停止する。休止から戻ると、循環は再開し、ユーザに対して、追加のボーラスが必要であるか否かが再度尋ねられる。応答待ち状態7524は、患者が、追加の注入を希望すること、または注入を終えることのいずれかを示すのを待つ。さらなる注入が望まれない場合、このアプリケーションは終了する。患者に対して、ユーザインタフェースにより、溶液注入が完了し、追加のボーラス注入を行うオプションがあることが通知される。ユーザが、追加の注入が必要であることを示した場合、100mlに等しい量を送達するようにローカル変数の溶液注入容量を設定して、流体送達評価状態7512に遷移することができる。
図75Bを参照すると、空気回復状態7525は、ユーザが血液管セットへの空気侵入から回復するのを可能にする。マシン層流体送達機能が停止され、ユーザに対して、空気が存在することが通知され、アプリケーションは、ユーザが、空気が除去され、かつセンサが空気を検出しないことを示すまで、この状態であり続ける。ステートマシン履歴は、アプリケーションを、中断された状態に戻す。空気停止待ち状態7526に続き、空気ユーザ待ち状態7527は、ユーザに対して、血液管内に空気が存在することを通知し、空気を除去する指示を提供し、その後、ユーザが、空気が存在しなくなったことを示すのを待つ。ユーザが、空気が除去されたことを示すと、アプリケーションは、空気再点検状態7528に遷移する。
図75Cを参照すると、閉塞回復状態7529は、ユーザに対して、閉塞が検出されたことを通知し、ユーザが応答するのを待つ。閉塞停止待ち状態7530に続き、閉塞ユーザ待ち状態7531は、ユーザに対して、血液管内に閉塞が存在することを通知し、閉塞を除去する指示を提供し、その後、ユーザが、閉塞が存在しなくなったことを示すのを待つ。
図75Dを参照すると、休止状態7523は動作を停止させる。さらに、患者は、追加の活動を行うように選択することができる。休止動作が終了し、ユーザがこのアプリケーションを再開するように選択すると、履歴機構はこのアプリケーションを中断された状態に戻す。休止停止待ち状態7532に続き、停止ユーザ選択待ち状態7533は、ユーザに対してオプションを提示し、ユーザがオプションを選択するのを待つ。特に、以下のオプションを提示することができる。すなわち、返血7534、患者切断7535、治療再開7536、治療中断7537、電力待機7538および溶液注入再開7539である。
図75Eを参照すると、血液漏れ状態7540は、状態7541において現動作を停止し、患者に対して、状態7542において回復不可能な警報があることを通知する。
(9)返血
返血アプリケーションは、患者の血液を戻し、患者を体外回路からの切断を通して誘導するプロセスを実施する。このプロセスは、治療の最後に行われる。規定された透析時間が経過すると、ユーザが要求する場合はいつでも、またはシステムが危険要因を検出することにより、治療は終了することができる。
患者が、自身の血液が返血されることを要求した場合、システムは、後述するように透析液タンクのFMS読取を強制して、その実際の透析液レベルを確認する。次に、システムは、患者に血液を戻すために、透析装置を横切って新鮮加熱された超高純度透析液を送り始める。同時に、血液ポンプが低速で逆転運転され、それにより、動脈ラインおよび静脈ライン両方が同時に空けられる。規定された返血容量は、血液管セットおよび透析装置の総容積に、患者アクセスをフラッシングし管ラインから略すべての血液痕跡を除去するようにリンスするための追加の透析液容量を足した容量を含む。
この容量が送達された後、ユーザは、追加のより小さい返血ボーラスを注入するように選択することができる。これは、患者の低血圧感覚を抑制し、かつ/または管に残っている目に見える血液痕跡を戻すように行うことができる。ユーザは、たとえば、送達された追加のボーラス容量全体が500mLに達するまで、50mL増分で追加の返血ボーラスを要求することができる。限界は、流体の過装填に至るオペレータの誤用を防止するように選択することができる。さらに、返血流体送達は、新鮮透析液の利用可能性によって制限され得る。
返血を可能な限り迅速に完了するために、使用される流量は、大部分の患者のアクセスおよび血管系が適度に耐えられる程度に高速であり得る。流量が高すぎることにより、血液管セットに高圧がもたらされ、返血プロセスの厄介な中断に至る可能性がある。さらに、流量は、看護師が他の装置において血液を返血するために吊り下げる可能性がある生理食塩水バッグからの流れを近似することができる。
血液ポンプ13(図4A)および透析装置14の頂部に閉じ込められる空気は、いかなる流体も動脈ライン82に沿って患者に向かって押し戻すことができる前に、分離されなければならない。システムは、血液ポッドポンプのうちの一方(たとえば、上部ポンプ23)にこの空気を収集してそのポッドを隔離しながら、他方の血液ポッドポンプ(たとえば、下部ポンプ23)を用いて動脈ライン82を通して透析液を戻すように流すことにより、血液ポンプ13および透析装置ヘッダ14に閉じ込められたいかなる空気も隔離する。別法として、空気は、下部血液ポッドポンプ23に収集され、上部ポンプ23を用いて、動脈ライン82を通して透析液が戻るように流される。空気を収集して隔離するステップは、1)上部血液ポンプチャンバ23および下部血液ポンプチャンバ23両方を透析装置14に向かって吐出させる(これにより、血液ポンプ23内の空気がすべて強制的に透析装置14に送られ、透析装置14ではその頂部に集まる)、2)透析装置から液体およびいかなる空気も引き戻すことにより、第1血液ポッドポンプ23を充填し、3)第1血液ポッドポンプ23内の液体およびいかなる空気も2つの入口弁192および194(図89)を通して送り出すことにより、第2血液ポッドポンプ23を充填し(このステップは、第1ポッドポンプ23内のいかなる空気も透析装置からの空気とともに第2ポッドポンプ23内に押し流す)、4)第2ポッドポンプ23内のいかなる収集された空気も、第2ポッドポンプ23を満杯のままにして、第2ポッドポンプの入口弁194および出口弁195を閉鎖することにより、隔離し、5)第1血液ポッドポンプのみを使用して、動脈血液ラインを介して患者に流体を押し流す。
エアインライン検出器33aが動脈ライン内の空気を検出した場合、オペレータに通知され、返血は、静脈ラインのみを下って継続し、そこでは、空気をエアトラップ19によって閉じ込めることができる。
図76Aおよび図76Bは、返血アプリケーションの例示的な実施を示す。図76Aを参照すると、返血アプリケーション7601のアクティブ状態7602は、返血処理が発生する状態である。状態7602は、アイドル7604に遷移する際に返血停止済みイベント7603を生成する。
図76Bを参照すると、モニタリング状態7605は、休止要求7606、血液管セット内の静脈空気7607、透析液漏れ7608および透析液生成問題7609があるかモニタリングする。
流体投与状態7610は、注入液を投与し、閉塞、限界範囲外の透析液温度、利用不可能な流体状態および限界範囲外の入口水があるかモニタリングする。動脈および静脈注入状態7611は、透析装置を横切るように超高純度透析液を押し流す。透析液は、透析装置を横切るように押し流される前に加熱することができる。動脈空気および静脈空気は、エアインライン検出器33a、33b(図89)によってモニタリングすることができる。動脈空気回復状態7612は、動脈空気警報からの回復を処理する。A&V注入停止状態7613は、注入を停止し、警報をGUIにポストする。動脈空気解決状態7614は、ユーザが、静脈のみの返血で継続する用意ができていることを示すのを待つ。静脈注入状態7615は、透析装置を横切って超高純度透析液を押し流す。この場合もまた、透析液は、透析装置を横切るように押し流される前に加熱することができる。
(治療および限外ろ過プロファイル)
限外ろ過(UF:Ultrafiltration)は、浸透圧または空気圧いずれかの膜間圧力勾配が存在する場合に透析装置の半透膜を横切って血液から水を除去するプロセスであると考えることができる。それは、透析中に患者の体内から除去される流体の正味の量の尺度である。通常、透析液を受け取る腎不全の患者は、幾分かの程度の流体過装填(患者の「ウェットウェイト(wet weight)」によって明らかである)で処置セッションを開始し、処置の最後までに患者の「ドライウェイト(dry weight)」(正常血液量状態を表す体重)を達成するという目標がある。UFは、透析液流入路を介する透析装置内への正味流体流を超過する、透析液流出路を介する透析装置から出る正味流体流の量として、測定することができる。システムコントローラは、透析治療の計画された持続時間にわたって、規定された正味の患者流体除去目標を満足するように、UF流量を調整することができる。一般に、透析の目標は、患者をその目標体重(患者の特定の身体的特性および医学的測特性に基づいて確立された「ドライ」ウェイト)に戻すことがである。UF流量は、主に、血液ポンプが透析装置を通して血液を循環させているときに、UFポンプが透析装置から流体を引き出す速度によって決まる。UFポンプの活動は、概して、内部透析液ポンプおよび外部透析液ポンプによって制御される、透析装置を通る透析液全体の流れとは独立している。UF流速には、各処置セッションに対して安全上限がある可能性があり、さらに、処置中に透析装置膜の血液側における過剰な血液濃縮を回避するために、動作上限があり得る。さらに、臨床医は、最大FU速度を制限するために、臨床的理由で処方箋を変更することができる。たとえば、平均UF流量は、透析装置を通る血液流量の約10%以下に設定することができる。一方、最大瞬間UF流速は、透析処置中に発生する可能性がある限外ろ過におけるさまざまな中断のために、幾分か高い(たとえば、瞬間血液流量の約15%)可能性がある。第1近似では、UFポンプ目標は、所望の流体除去の量に、治療の最後に患者に返血するために用いられる透析液または他の電解溶液の容量を足し、患者の血液が血液透析装置のこれらの部品に引き込まれているときに処置の開始時に血液回路(血液管、透析装置、血液ポンプ、エアトラップ等)から廃棄されたプライミング液の容量を引いた量であるとみなすことができる。UFポンプ目標はまた、処置中の流体注入(ヘパリンなどのIV薬物投与、経口流体摂取、IV溶液注入等)を考慮するように上方調整するか、または処置中の流体損失(たとえば、胃腸または泌尿器の流体損失等)を考慮して下方調整することも可能である。返血容量は、血液回路を透析液で充填し、任意選択的に追加の公称返血容量を追加することにより、患者の血液の略すべてを患者の循環に戻するのに十分であるべきである。
システムコントローラは、UFポンプ目標を推定された処置時間で割ることにより、UFポンプ流量を設定することができる。いくつかの実施形態では、UFポンプ流量は、規定された最大UFポンプ流量、血液ポンプ流量とともに、内部透析液ポンプおよび外部透析液ポンプを介して透析装置を通って流れる透析液の利用可能な流量によって制限することができる。
さらに、いくつかの実施形態では、システムコントローラは、透析および限外ろ過における計画された周期的休止を考慮するように、UFポンプ流量を調整することができる。たとえば、1つまたは複数のコントローラが血液透析装置の部品に対して保守機能を行うことができるように、透析液を周期的に一時停止することができる。一態様では、血液透析システムは、インライン限外ろ過装置から空気をパージするため、システムの弁に対して完全性点検を行うため、かつタンク内の透析液の正確な計算を確実にするように透析液タンクのFMSベースの容量測定を行うために、外部透析液ポンプまたは内部透析液ポンプの50〜100のポンプストローク毎に透析を休止するようにプログラムすることができる。このプロセス中、外部ポンプ、内部ポンプおよびUFポンプを停止させることができ、その間、血液ポンプは、透析装置の血液側で血液を送り出し続ける。これらの保守機能は、通常、数秒間から数分間またはそれ以上かかる可能性がある。たとえば、システムが、透析の再開の前に追加の透析液を生成し透析タンクに配置するべきであると判断した場合、保守処理の持続時間は、場合によってはより長くなる可能性がある。システムコントローラは、可変保守期間とともに、UFポンプ目標を満足させるようにUFポンプ流量を調整するために処置中の計画された将来の保守期間を、遡及的に考慮することができる。
実施形態では、血液透析システムはまた、透析装置の膜を通る透析液の定期的なバックフラッシュも行うことができる。定期的なバックフラッシュは、たとえば、タンパク質または他の残がいが透析装置膜に蓄積しないようにし、その動作寿命を維持するかまたは延長するために、有用であり得る。さらに、バックフラッシュ機能は、対流ろ過(たとえば、血液透析ろ過等)においてハイフラックス透析装置の使用を可能にすることができ、そこでは、高UF流量を用いて、透析装置膜を横切る(対流または他の機構を通る)より大きい溶質の流れが促進される。バックフラッシュは、たとえば、透析装置の透析液流出路における適切な弁を閉鎖しながら、内部透析液ポンプおよび平衡回路をバイパスし、外部透析液ポンプに対して所定量の新鮮透析液(たとえば、約100ml〜200mlの流体)を、透析装置の透析液入口を介して透析装置内に押し流させることによって、行うことができる。コントローラは、たとえば、透析処置セッション中に10分〜40分毎に、バックフラッシュ動作を行うようにプログラムすることができる。UFポンプ流量は、バックフラッシュ間で、定義された期間にわたり、バックフラッシュされる量に、限外ろ過の所定基本流量を維持するための流体の量を足したものを回復するように、調整することができる。コントローラは、処置中に所定間隔でバックフラッシュを行うようにプログラムすることができ、好ましくは、コントローラは、バックフラッシュの前にバックフラッシュ動作に必要な流体をUFポンプに引き出させるようにプログラムされている。任意選択的に、UFポンプが、バックフラッシュ処置が行われるようにスケジュールされている時点までその予測されたポンプ容量を満たさなかった場合、バックフラッシュ処置を遅らせることができる。任意選択的に、各バックフラッシュ処置のタイミングは、バックフラッシュ動作の間の間隔が相対的に一定なままであるように、最後に行われたバックフラッシュから所定時間間隔でリセットすることができる。
実施形態では、患者から受け取られる流体の量が、いつでも所定閾容量を超過する場合、またはコントローラが、次のバックフラッシュ期間内に上記量が超過することになると予測する場合、バックフラッシュを終了することができる。たとえば、コントローラは、現速度で限外ろ過される容量が、次のバックフラッシュ動作の前に閾値量を超過する可能性があるか否かを推定することができる。別の実施形態では、コントローラは、バックフラッシュ処置が治療の予測された終了の前の所定時間内に行われる場合に、バックフラッシュ処置を終了することができる。たとえば、コントローラは、バックフラッシュが、予測された治療の終了のバックフラッシュ時間の50%の範囲内で発生する場合に、バックフラッシュを終了するようにプログラムすることができる。
一実施形態では、ユーザは、血液透析装置のユーザインタフェースを介して溶液注入を要求することができる。溶液注入は、システムコントローラが透析液膜を横切って患者に送達することができる所定容量の透析液として特徴付けることができる。ユーザは、透析処置の過程の間に2回以上の溶液注入を要求しかつ得ることができる。実施形態では、ユーザがユーザインタフェースデバイス(たとえば、タッチセンシティブグラフィカルユーザインタフェース)で溶液注入を要求する入力により、コントローラは、UFポンプ目標をすでに送り出された量にリセットし、残りのUFポンプ流量をゼロに設定するように自動的にトリガされる。ユーザが、溶液注入要求を通して流体を取得した場合、注入された容量は、UFポンプ目標、またはユーザが除去するように計画した流体の量から差し引くことができる。一態様では、ユーザには、UFポンプ目標を元のUFポンプ目標にリセットするオプションがあり、それは、コントローラにより、最初に計画された流体の容量に溶液注入の量を足した量を患者から除去するコマンドとして解釈することができる。この場合、UFポンプ流量は、溶液注入を通して注入された追加の流体を最終的に除去するように調整される。任意選択的に、ユーザは、UFポンプ目標を、元のUFポンプ目標から注入された量を引いた値に設定することができる。この任意選択的なモードにより、ユーザは、治療中に溶液注入から得られる流体の容量を維持することができる。
内部透析液ポンプおよびUFポンプの電源を切り、外部透析液ポンプを用いて透析液膜を横切るように透析液流体を押し流すことによって、バックフラッシュおよび溶液注入の両方を行うことができる。好ましい実施形態では、静脈血液ラインを通して患者の体内に押し流されている透析液の量を最大限にするために、溶液注入中に血液ポンプの出口弁を閉鎖することができる。対照的に、バックフラッシュされている透析液の容量を使い切るのに役立つように、バックフラッシュ処置中に血液ポンプの出口弁を開放したまま維持することが好ましい場合がある。
別の実施形態では、ユーザは処置中いつでも新たなUFポンプ目標を入力することができ、たとえば、処置中に消費する可能性がある液体に対して、または薬物の静脈内注入のために、または予期されない胃腸あるいは泌尿器の流体損失のために調整することができる。そして、システムコントローラは、残りの治療時間が経過する前に、新たなUFポンプ目標を達成するように、UFポンプ流量を再計算し、かつリセットすることができる。新たなUFポンプ目標が、すでに送り出された限外ろ過容量以下である場合、処置セッションの残りの間、UFポンプを停止させることができる。
さらに、システムコントローラは、計画されていないユーザへの流体の追加またはユーザからの流体の喪失が発生したときに、UFポンプ流量を自動的に調整するようにプログラムすることができる。たとえば、システムコントローラは、処置の開始時にヘパリンボーラスが投与されるときの患者への所定量の流体の注入を考慮するようにプログラムすることができる。この流体の量は、概して、ヘパリンが血液ポンプに入る位置と、血液管が接続された静脈内カテーテルとの間の血液管および血液ポンプ導管の容積の関数である。概して、患者への最も直接的な経路は、動脈血液管を介し、一実施形態では、この容積は、およそ65ccであり得る。しかしながら、動脈管のエアインライン検出器において空気が検出される場合、システムコントローラは、この経路を介して血液ポンプがヘパリンを注入するのを停止し、血液ポンプに対して血液ポンプに向かって流体(および空気)を引き戻させ、その後、ヘパリンが静脈管を介して患者に投与されるように血液ポンプ弁を構成するようにプログラムすることができる。一実施形態では、血液ポンプから患者への静脈管経路は、透析装置の血液側容積とともに、血液回路のエアトラップの容積を含む。この場合、ヘパリンのボーラスを患者に送達するために必要な流体の容量は、動脈管経路を介するより、著しく大きい可能性がある。(一実施形態では、この静脈経路は、ヘパリンボーラスをユーザに送達するために260cc程度の流体を必要とする可能性がある)。したがって、システムコントローラは、ヘパリンボーラスに対して代替的な静脈管経路が使用される場合、UFポンプ目標を元の目標より大きく調整するようにプログラムすることができる。
いくつかの実施形態では、保守期間は、透析液ポンプストロークの数に従ってタイミングがとられ、したがって、それらの数は、透析装置を通る透析液流量とともに、計画された総処置時間に応じて増減する可能性がある。透析液流量は、患者毎に異なる可能性があり、達成可能な血液流量、透析液の生成および蓄積速度、および患者が所望する透析治療の持続時間の関数であり得る。システムコントローラは、実際の処置の時間を求めるためにこれらの遅延の数および長さの予期された累積的効果を計算し、それに従ってUFポンプ流量を調整することができる。実施形態では、コントローラは、UFポンプ目標が予期された治療の最後の前に達成されることを確実にするために、UFポンプ流量を、計算された基礎流量に追加の係数を足した値(たとえば、基礎流量より約5%〜10%高い流量)に設定するようにプログラムすることができる。最大UFポンプ流量に達した場合、コントローラは、計画された総処置時間を増大させ、そのため、グラフィカルユーザインタフェースにおけるメッセージまたは他の警告を介してユーザに通知することができる。
さらに、システムコントローラは、透析および限外ろ過における予期されない休止を考慮するようにUFポンプ流量を調整することができる。たとえば、限外ろ過装置から出る透析液のモニタリングされた温度が所定範囲(たとえば、約41℃を超える範囲)外である場合、透析液のモニタリングされた温度が指定された範囲に戻るまで、外部透析液ポンプの出力をドレンにまたは透析液タンクに分流させることができる。この時間中、システムは、内部透析液ポンプおよびUFポンプが休止し、内部ポンプ弁が閉鎖される状態(たとえば、「高温分流」状態)に入ることができる。さらに、システムは、透析液注入に対するユーザの要求により、透析処置を休止するユーザの要求により、または発生する可能性がある警報状態(たとえば、エアインライン検出または流体漏れ)によりもたらされる透析のあらゆる休止を考慮することができる。溶液注入に対する要求により、システムに対して、注入の後に透析液タンクレベルの保守チェックを受けるように促すことができる。したがって、溶液注入状態は、透析治療において追加の遅延をトリガすることができる。透析処置におけるこれらの休止または他の休止のいずれかに続き、システムコントローラは、最初に計算されたUFポンプ目標を満足させるために、透析の再開時にUFポンプ流量を調整することができる。
実施形態では、システムコントローラは、定期的にUF再評価を行って、UFポンプ流量を調整するように、かつUFポンプ目標を達成することができるように、残りの治療時間とともに残りのUFポンプ容量を治療中に定期的に(たとえば、約20分間毎に)再計算させることができる。残りの治療時間は、たとえば、透析液の1回または複数回の一時停止の累積的持続時間が最小値を超過したために、延長することができる。実施形態では、UF再評価は、およそ20分間隔で発生するようにプログラムすることができる。再評価時、コントローラは、(1)UFポンプによってすでに送り出された流体の量、(2)(最初に入力されたものとしてであっても処置中にユーザによって更新されたものとしてであっても)UFポンプ目標および(3)残りの治療時間を追跡している。このデータから、コントローラは、UFポンプ流量を(上述した5%〜10%の追加のマージンがあってもなくても)調整して、UFポンプ目標が治療の最後までに達成されることを確実にする。UFポンプ目標が達成されると、システムは、さらなる限外ろ過およびバックフラッシュを終了することができる。
しかしながら、利用可能な総処置時間は、他のシステム制約によりまたは医学的制約により、制限される可能性がある。たとえば、合併症のリスクを低減させるために、総処置時間は、透析処置セッションの開始から約10時間まで、かつ(逆浸透水等)何かが血液透析システム内に導入された時点から約16時間に制限される可能性がある。計算された治療時間が最大に近づくと、システムコントローラは、デフォルトで低下したUFポンプ目標になり、そのため、グラフィカルユーザインタフェースを介してユーザに通知することができる。
したがって、透析処置中、システムは、1)ユーザが、UFポンプ目標をすでに除去されたUF容量まで下方修正する場合は、限外ろ過を停止する、2)ユーザが、最大許容可能なUFポンプ流量に達することができるものを上回るようにUFポンプ目標を変更する場合、計画された総処置時間を延長し、3)ユーザが、計画された処置時間を短くする場合は、UFポンプ目標に達するようにUFポンプ流量を上方調整し、または最大UFポンプ流量に達した場合はUFポンプ目標を下方に変更し、4)(UFポンプ目標が後にユーザによってリセットされない限り)さらなる限外ろ過を一時停止するユーザのコマンドに応じて、UFポンプ目標を実際に除去されたUF容量にリセットし、5)溶液注入に対するユーザのコマンドに応じて、UFポンプ目標を、(UFポンプ目標が後にユーザによってリセットされない限り)実際に除去されたUF容量から溶液注入容量を引いた値にリセットする
ようにプログラムすることができる。
図76Cは、典型的な透析の過程の間に透析装置を横切る流体移動の例を示す。この例では、患者は、400ccの除去するべき正味の流体の目標容量(400)を入力している。処置の開始時、血液が患者から血液回路内に引き込まれる際に、血液回路内のプライミング液の一部がドレンに廃棄される。時間ゼロにおけるシステムは、透析装置の血液側からおよそ130ccのプライミング流体(402)を自動的に引き出し、血液回路に患者の血液を装填する。プライミング液廃棄容量は、(特に)血液回路部品(管、透析装置、血液ポンプ、エアトラップ等)のホールドアップ容量から、透析装置における過剰な血液濃縮を防止するための安全係数を引いた値の関数である。血液回路内の患者の血液の幾分かの希釈は、プライミング液廃棄動作を通してあり得る複雑化を回避するために許容可能であり得る。たとえば、血液回路のホールドアップ容量は、約257ccであり得るが、プライミング液廃棄容量は約130ccのみである可能性がある。治療の最後に、コントローラは、血液回路部品のホールドアップ容量全体におよそ等しい透析液の容量(たとえば、この場合は約257ccを押し流して血液回路内の血液を患者に戻るように移動させるように、外部透析液ポンプを指示することができる。任意選択的に、血液回路の赤血球の大部分が患者に戻ることを確実にするために、透析装置膜を通してより大量の流体を返血することができる。たとえば、約100ccの追加の公称返血値を押し通すことができる。したがって、実施形態では、約357ccになる透析液の総返血容量は、外部透析液ポンプにより、治療の最後に透析液膜を通して血液側に押し流すことができる(404)。この場合、UFポンプ目標(408)は、357ccの返血容量のうちの227cc(406)のみを含み、それは、処置の開始時、残りの130cc(404)は、廃棄された初期プライミング液容量(402)によって考慮されているためである。(血液回路部品の容積、廃棄されるプライミング容量の量、および処置の最後に患者の血球の略完全な戻りを確実にするために選択された公称返血容量の関数である)これらの所定条件から、システムコントローラは、約630ccのUFポンプ目標(408)を計算することができ、それは、この場合、患者が除去したい流体(400cc)に、最初に廃棄されたプライミング容量(約227cc)によって考慮されない返血動作において戻された流体の部分を足した和である。このように、透析処置の最後に、処置の最後に計画された返血容量からプライミング液廃棄を通してすでに除去された量(402)を引いた量を考慮するために、十分な量の限外ろ過が行われている。したがって、システムコントローラは、(この例では、およそ120分間である)予期された総処置時間にわたってUFポンプ目標に達するために必要なUFポンプ流量を計算し設定することができる。この実施形態では、処置の開始時に廃棄されたプライミング容量と処置の最後に再注入された返血容量とは、UFポンプではなく外部透析ポンプによって行われる。他の実施形態では、UFポンプを用いて、これらの作業のうちのいくつかまたはすべてを行うことができる。
図76Dは、透析装置膜を通しての定期的なバックフラッシュを含む処置の過程の間の透析装置を横切る流体移動を示す。この例では、除去するように予測された正味の流体は1000cc(410)であり、廃棄されるプライミング容量は約130cc(412)であり、返血容量は約357cc(414)である。図示する例では、外部透析液ポンプは、処置中、約30分毎に、ある量の透析液(416)(たとえば、およそ200cc)を、透析装置膜を横切って押し戻す。この場合、各バックフラッシュ動作(たとえば、416)には、以下のバックフラッシュを考慮するのに十分なUFポンピング(たとえば417)が続く。一態様では、システムコントローラは、初期UFポンプ流量(420)を、[基礎UFポンプ流量]+[予期されたバックフラッシュ容量÷バックフラッシュ期間]として計算することができる。基礎UFポンプ流量は、[患者から除去される流体の容量(410)+処置の最後における返血容量(414)−処置の開始時の破棄されたプライミング容量(412)]÷[総処置時間]として計算することができる。(任意選択的に、この基礎UFポンプ流量に基礎流量の2%〜10%等のマージンを加算して、処置の終了前の限外ろ過の完了を確実にすることができる)。一実施形態では、処置の終了前、システムコントローラは、患者から除去された流体が、いつでも流体除去目標(410)から返血容量(414)を引いた値を超過しないことを確実にするために十分早期の時点(418)でバックフラッシュを終了するようにプログラムすることができる。別法として、コントローラは、流体除去目標(410)を超過する量に返血容量(414)を足してプライミング液廃棄容量(412)を引いた量でいつでも流体が患者から除去されるのを防止するようにプログラムすることができる。最後のバックフラッシュ動作の後、コントローラは、マージンを加えても加えなくても、UFポンプ流量(422)を上記のように計算した基礎UFポンプ流量に調整することができる。別法として、コントローラは、UFポンプ目標(424)と最後のバックフラッシュ動作(418)の時点まで実際に送り出されたUF容量との間の差を計算し、この量を残りの処置時間で割ることができる。コントローラは、UFポンプ目標(424)を、患者流体除去目標(410)にバックフラッシュの総容量(この例では、およそ1600cc)を足し、返血容量(414)を足し、プライミング液廃棄容量(412)を引いた量として計算することができる。そして、この量を残りの処置時間(424における処置終了時間から418におけるバックフラッシュ終了時間を引いた時間)で割ることにより、終りのUFポンプ流量(422)を計算することができる。
図76Eは、ユーザが治療に対する200ccの40分間の溶液注入を要求し、20分間の遅延の後に限外ろ過の再開を要求する、治療の過程の間における透析装置を横切る流体移動を示す。このシナリオでは、ユーザは、元のUFポンプ目標の再確立を要求し、そこでは、コントローラは、UFポンプに対して、血液区画から、処置が終了した時点まで溶液注入に等しい量を回収させるようにプログラムされている。この例では、患者の流体除去目標は、400cc(426)に設定されている。処置の開始時、予期されたUFポンプ目標は約630cc(428)(すなわち、400ccの流体除去目標に約357ccの返血容量を足して約130ccのプライミング液廃棄容量を引いた量)である。しかしながら、40分の時点で、ユーザは、200cc(430)の溶液注入を開始する。本発明の一実施形態では、コントローラは、さらなるUFポンピングを停止させるようにプログラムされる。ユーザには、最初に意図されたUFポンプ目標を再度確立するオプションがあり、この例では、ユーザは、処置における60分の時点でそれを行う。任意選択的に、ユーザは、限外ろ過の再開のために代替的なUFポンプ目標を、それがまだ達成されていない限り、かつ最大許容可能なUFポンプ流量が超過されない限り、選択することができる。元のUFポンプ目標をユーザが入力することに応じて、コントローラは、一実施形態では、元のUFポンプ目標に40分の時点で注入された溶液の量を足した量を含む総容量の限外ろ過を行うようにプログラムすることができる。このシナリオの下でUFポンプ流量を設定するために、たとえば、コントローラは、UFポンプ目標(630cc)に注入された容量(すなわち、200cc)を加えることにより、処置の最後に830cc(432)の新たなUFポンプ目標をもたらすことができる。そして、新たなUFポンプ流量(434)は、新たなUFポンプ目標(432)から治療の再開時において累積されたUFポンプ容量(436)を引いて、推定された残りの処置時間で割った量として計算することができる。
他の実施形態では、システムコントローラは、一時的なまたは予測されない透析の一次停止に追いつくようにUFポンプ流量を定期的に調整することができ、巻き返し期間は、(処方箋または他の方法で設定された最大UFポンプ流量によって決まる)次のスケジュールされた保守休止の前に発生するようにプログラムすることができる。また、バックフラッシュが可能となる場合、コントローラは、利用可能な残りの限外ろ過容量に応じてバックフラッシュの数を適応的に低減させることができる。たとば、限外ろ過容量に対する上限は、患者による正味の流体損失を、最終的な返血容量に患者の流体損失目標を足した量またはそれをわずかに超える量で維持するために、患者の流体損失目標にバックフラッシュ容量の合計を足し、返血容量を足した量のわずか数パーセント上回るように設定することができる。
他の実施形態では、システムコントローラは、処置中にUFポンプ量を変更するようにプログラムすることができる。たとえば、コントローラは、UFポンプ流量を、治療の開始時(患者は、比較的流体が過装填されており、相対的に高い流量の流体除去を快適に維持することができると想定される時点)、相対的に高いUFポンプ流量を設定し、治療の過程においてUFポンプ流量を後に低減させて、治療の最後までUFポンプ目標を満足させるのに十分な平均UFポンプ流量を維持するように、プログラムすることができる。他の場合では、より複雑な限外ろ過のパターンが望ましい場合があり、コントローラは、UFポンプ目標を設定するときにこうしたパターンに適応するようにプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、特定の患者に対して、患者の医師によって最初に設定されいつでも変更可能である患者の処方箋パラメータの一部として、UFポンプ流量プロファイルを個別化することができる。
図76Fは、透析処置セッションの結果を要約するグラフィカルユーザインタフェースにおける表示に対する例示的な画面ビューである。処置の最後、システムコントローラは、総透析時間440と、(最終体重に反映される)患者が喪失した流体の総量444と、あらゆる調整の後の最終UFポンプ目標446と、実際の限外ろ過の量448と、血液回路のプライミング容量および公称返血量を考慮するために処置の最後に患者に送達された流体の容量450と、限外ろ過のあらゆる正味の調整452と、注入されるかまたは引き出された流体の対応する量454とを記録する(かつ表示することができる)。患者に対する好都合な基準点を提供するために、患者の開始体重442も表示することができる。この要約情報は、患者および/または患者の医師が患者の次の透析処置を計画するのに役立つことができる。
透析液タンク空警報状態7616は、返血を停止し、患者に対して、返血を継続するために十分な透析液がないことを通知する。GUIに対して、透析液タンク不十分警報をポストすることができる。流体生成は、停止されている場合、再開することができる。流体待ち状態7617は、流体が利用可能になるのを待つ。透析タンク容量が所定レベル、たとえば300mlに達すると、透析液タンク充填済みイベント7618を生成することができる。タンクが、選択された期間、たとえば2分間で所与のレベルに達していない場合、エラーイベントを生成することができる。
少なくとも2つの独立した測定方法を使用することにより、透析液タンク内の液体容量確定の精度を向上させることができる。たとえば、1つの方法は、タンクに液体を吐出するポンプチャンバストロークの数を計数し、タンクから流体を引き出すポンプチャンバストロークの数を差し引く。各ポンプストロークが、既知の一定量を移動すると想定すると、タンク内の累積した正味の液体容量を追跡することができる。例示的な第2方法は、リザーバから基準チャンバを充填し、結果としての圧力を測定し、その後、基準チャンバを透析タンクに排気することによって、FMS測定値を取得することを含む。そして、タンクと基準チャンバとの間の等化された圧力から、透析液タンク内の空気の容量を計算することができる。例示的な第3方法は、基準チャンバを所定圧力に充填し、その後、基準チャンバを透析液タンクに排気することによって、FMS測定値を取得することを含む。そしてタンクと基準チャンバとの間の等化した圧力から、透析液タンク内の空気の容量を計算することができる。FMSベースの方法によってより正確な結果をもたらすことができるが、それはより時間がかかる可能性もある。したがって、システムコントローラに対して、ポンプストローク計算によりタンク容量を継続的に追跡させ、ポンプストローク計算の精度を常時検証するようにFMS測定を定期的に行わせることが望ましい場合がある。これらの方法のうちの一方または両方を適用するコントローラは、このデータを用いて、流体をタンクに加えるべきかまたはタンクから除去するべきかと、流体レベルが、安全に治療を継続するために必要であるとみなされる最低レベル未満であるか否かを判断することができる。
以下のセクションは、容器に送り込まれるかまたは容器から送り出される既知の容量を計数する第1方法と、改善されたFMS測定を用いる第2方法とによって、容器内の透析液の容量を測定する方法について記載する。改善されたFM測定を定期的に使用して、必要な場合は第1方法が補正される。改善されたFMS方法は、FMS圧力低下および容器内の気体容量に関連する方程式の形式を想定する。一実施形態では、方程式の内容は、容器の校正された充填中に測定されたFMS圧力低下および測定された容量に相関される。
ポンプストローク計算は、流体をタンク内外に吐出することができるポンプをポーリングし、完了したストロークを連続的に考慮し、閉塞による不完全なストロークを差し引くことによって動作する。混合ポンプ180(図3A)ならびに重炭酸塩ポンプ183および酸ポンプ184により、新たな流体を透析液タンクに供給することができ、タンク169への流出弁155が開放しているものとして示され、混合ドレン弁154が閉鎖されているものとして示される場合に、ポンプストロークを記録することができる。I/Oサブシステムを介して弁状態を読み取ることにより、弁の状態をモニタリングすることができ、またはより単純な構成では、マシンレベルで実行されている特定の動作に従って、弁状態を推定することができる。透析液ドレン弁151が開放し、タンク再循環弁152および消毒弁153が閉鎖されているとき、流体を、外部透析液ポンプ159によって透析タンクから除去することができる。流体はまた、消毒経路が開放している(タンク再循環弁152および透析液ドレン弁151が閉鎖されており、消毒弁153および混合ドレン弁154が開放している)とき、外部透析液ポンプ159によっても除去される。ポンプ180、159に対して、ストロークが完了したかポーリングすることができ、チャンバ充填閉塞が検出された場合、ストロークを差し引くことができる。例示的な第2方法では、混合ポンプ180による不完全なストロークは差し引かれるが、透析液ポンプ159によるすべての不完全なストロークはフルストロークとして計数される。不完全なストロークは、測定されたタンクレベルを低く偏らせるために、充填側においてのみ差し引かれ、そのため、透析液タンクは、空になるより過充填される可能性が高い。ポンプのいずれかにより閉塞が検出されると、ポンプストローク計算値に対して、疑わしいかまたは無効であるものとしてフラグを立てることができ、独立した方法、たとえばFMS方法を用いて、タンク容量測定値を取得することができる。
透析液タンク内の空気(したがって液体)容量を測定するFMS方法は、ボイルの法則に基づく。基準空間が加圧され、その後、閉鎖した透析液タンク内に排気され、その後、基準容量およびタンク空気容量を結合することによって達成される最終的な圧力から容量が計算される。この方法は、タンクと連通する弁の閉鎖の遅延または不完全な閉鎖のために、または圧力下のタンクの物理的な歪みのために、何らかのエラーが生じやすい。測定値はまた、実質的な時間もかかる可能性があり、透析のための透析液送達の効率が低下する可能性がある。したがって、従来のFMS方程式P1V1=P2V2が使用される場合、透析液タンクおよび弁の物理的な特性のうちのいくつかが測定誤差をもたらす可能性があり、たとえば、この方程式をシステムのモデルとして使用する測定において、透析液タンクの歪みが誤差をもたらす可能性がある。
3次方程式を用いることによって、FMS測定方法を改善することができ、それは、50%〜75%の目標タンク流体レベルで容量確定の精度を向上させることができる。こうした方程式は、いくつかの形式をとることができ、実験的に導出された圧力−容量データを、3次方程式によって定義される曲線に当てはめることに基づく。透析液タンク内の容量の測定は、たとえば、タンクを徐々に充填し、各増分でタンクに対してFMS測定を行うことによって、校正することができる。データ点が収集され、その後、FMSデータをタンク内の実際の流体容量に相関させる数学的モデルを生成することができる。たとえば、コントローラは、タンクを空にし、その後、7回の300ml容量の液体で徐々に充填して、各増分充填によりFMS容量測定を行う、「AutoCal」または他の校正関数を実行することができる。そして、これらの測定値は、ベクトルの形式で、たとえば、観察された容量と予期された容量との間の誤差を最小限にするように最小二乗アルゴリズムを用いる3次方程式に対する係数を計算する関数に入力することができる。そして、この関数は、ハードドライブまたはシステムメモリの校正データファイルに格納される3次FMS方程式で使用される係数を更新することができる。したがって、校正中に求められた係数値を含む3次方程式を、FMS測定圧力差値とともに使用して、透析タンク内の液体の容量を求めることができる。
1つの例示的な実施形態では、FMS測定は、一次透析液タンクレベル確定には使用されず、それは、その測定は、実行するのにおよそ20秒間かかり、すべてのポンプストロークに対してこの測定を行うことにより、ポンプ容量が低下する可能性があるためである。代わりに、透析液タンク内の透析液の容量の一次確定は、タンク内に透析液を配置するために使用されるポンプストロークの数と、タンクから透析液を除去するために使用されるポンプストロークの数との計算に基づいて計算される。さらに、FMSを用いて、透析タンク内の透析液の容量を、たとえば、処置中に約20分毎に、または透析液タンク内に配置された透析液の100回のポンプストローク毎におよそ1回、測定する。透析液容量のFMS確定は、透析タンクを出入りする透析液のポンプストロークの数の計算によって予測された容量と比較される。測定された容量とポンプストローク計算からの容量との差が、閾値量(たとえば、100ml)を超える場合、エラーが返され、治療を中断することができる。差がより小さい(たとえば、100ml未満である)場合、計算容量は、新たに測定された値に調整されかつ更新され、治療を継続することができる。
上述したように、この実施形態では、3次方程式を用いて、透析液タンク内の容量が求められる。3次方程式に対する係数は、校正関数の間に、タンクに既知の量の液体を提供し、複数の測定された圧力差に対して液体容量を有効にプロットし、既知の液体容量および測定された圧力差を表す曲線と計算された容量および測定された圧力差を表す曲線との間の誤差を、3次方程式を用いて最小限にすることにより、求められる。一例では、追加の一定量(たとえば、150mlまたは300ml)の液体が透析液タンク内に配置される度に、圧力測定値を取得することができ、そこでは、校正プロセスは、透析液タンク容量の典型的な動作範囲(たとえば、2リットルタンクの1リットルと2リットルとの間)に制限される。各容量ステップにおいて測定されるFMS圧力差がプロットされ、各ステップにおける既知の容量/圧力差と各ステップにおいて3次方程式を用いて計算された容量/圧力差との間の誤差の平方和が最小化されて、校正データファイルに格納され透析液タンク内の液体容量のその後のFMS確定で使用される3次方程式の係数が求められる。たとえば、この場合もまた透析液タンクを既知の容量の液体で充填し、FMS圧力測定および3次方程式を用いて液体容量を測定し、既知の容量および確定された容量を比較することによって、係数の精度を点検することができる。既知の容量と確定された容量との差が閾値未満である、たとえば、5%以下の差である場合、校正プロセスが正確に行われ、3次方程式のための係数が正確な測定のために使用され得ると、判断することができる。
1つの例示的な実施形態では、校正関数を行い3次関数に対して係数を求めるために、システムは、最初に、透析液タンクを空にし、7回の間隔でタンクに300ml量の液体を加える。各300ml間隔の後、システムは、透析液タンクのFMS圧力差測定を行い、たとえば、タンクが加圧基準チャンバに流体結合される前に、かつされた後に、圧力差を求める。これらの測定値は、ベクトルの形式で、7回の充填間隔の各々に対して既知の容量を画定する曲線を密に近似する3次方程式に対して、最小二乗適合曲線に対する係数を計算する関数に入力される。
この例示的な実施形態では、3次方程式f(x)は、式1に示されており、
式中、f(x)は、測定されたFMS圧力差に基づいて透析液タンク内の計算された流体容量を与え、xは、測定されたFMS圧力差であり、a、b、cおよびdは、校正プロセスのために求められる係数である。(透析タンク内の液体容量は、総タンク容量から気体容量を減じた値に等しいことに留意されたい。したがって、タンク内の気体容量を求めることにより、タンク内の液体容量が求められる。)
各測定されたFMS圧力差に対して実際の流体容量に対する3次方程式の最小二乗適合を得るために、既知の容量/測定圧力差曲線に関連する3次方程式f(x)の誤差[ε]が求められかつ最小化される。誤差を最小化する解は、3次方程式に対する係数a、b、cおよびdである。式(2)は、この実施形態において誤差εを与える。
式中、yは既知の液体容量であり、xiは、基準チャンバに結合される前の透析液タンクの初期圧力と、基準チャンバに結合された後の最終的な圧力との間の測定された圧力差(すなわち、FMS圧力差)であり、iは現反復であり、nはインスタンスの総数である。式1のf(x)に対する3次関数を式2に挿入することにより、式3が得られる。
最小誤差を見つけるために、誤差関数の偏微分が、各係数に関して取得され、式4に示すように各係数に等しく設定される。
式3を式4に代入した後、式5は以下のようになる。
偏微分から、式6に示すように、以下の線形方程式の組がもたらされる。
式7に示すように、式6の線形方程式は行列に入れられる。
式8に示すように、式7から拡大行列が形成される。
最小二乗適合関数は、式8の拡大行列を用いて、3次方程式の係数を解く。特に、AutoCal関数は、まず、2つのベクトルを宣言し、各充填および測定間隔に対して、それらのベクトルに、測定された圧力差および既知の容量値を入力する。そして、AutoCalは、行列を作成するinputMatrix関数と、その行列に対して結果ベクトルを作成するmakeResutVector関数と、それら2つを結合して拡大行列にするaugmentedMatrix関数と、拡大行列を三角行列(各列に1つのピボットしかない行列)に簡約化するtriangularMatrix関数と、三角行列をその階段形式(各行および列に1つのピボットしかない行列)に簡約化するreduceEchelonForm関数と、計算された係数を更新し表示するcoefficients関数とを呼び出すleastSquareFit関数を呼び出す。inputMatrixおよびmakeResultVectorは、圧力差および容量値を入力する前に加算を行い、最終拡大行列のみが数字を有するようにする。
leastSquareFit関数によって呼び出されるこれらの動作のうちのいくつかは、同様により小さい関数を呼び出す。すなわち、inputMatrixはsumVectorPowerを呼び出し、triangularMatrixはswapRows、normalizeRow、subtractRowsおよびabsoluteValueを呼び出し、reduceEchelonFormはbackwardsMultiplyを呼び出す。inputMatrixは、行列に和項を入力する。makeResultVectorは、拡大行列に対する結果ベクトルに和項を入力する。augmentedMatrixは、4×4行列および結果ベクトルを拡大行列に変換する。triangularMatrixは、拡大行列を三角行列に簡約化する。reduceEchelonFormは、逆方向乗算によって三角行列を階段形式に簡約化する。coefficientsは、デフォルト係数を新たな係数に更新し、それらを表示する。sumVectorPowerは、所望のパワーに上昇したベクトルの要素の加算を実行する。swapRowsは、それらの要素を行列において2つの行からスワップする。normalizeRowは、行列のすべての要素を第1要素によって行列に分割し、その要素を1に等しくする。substractRowsは、1つの行の要素を別の行の対応する要素から差し引く。absoluteValueは、数字の絶対値を返す。backwardsMultiplyは、行のうちの1つに必要な整数を掛けた後1つの行を別の行から差し引き、それにより、減算により行の要素のうちの1つを等しくする。
係数a、b、cおよびdに対する値を求めると、制御システムは、測定されたFMS圧力差とともに3次方程式f(x)を用いて、透析液タンク内の液体容量を求めることができる。すなわち、所与のFMS測定値に対して、式1のf(x)は、校正プロセスで求められたa、b、cおよびdに対する値を用いて液体容量を計算する。
閉塞警報状態7619は、返血を停止し、たとえばGUIに閉塞警報をポストすることによって、患者に対し、閉塞があることを通知する。閉塞解決状態7620は、患者が閉塞を解消するのを待つ。
透析温度警報状態7621は、返血を停止し、たとえばGUIに対して温度警報をポストすることによって、患者に対し、透析温度が範囲外であることを通知する。透析液再循環状態7622によって、装置は、透析温度が規格外であるシナリオから回復する。同時に、血液は、凝固を防止するように循環し続けることができる。この状態では、装置が限界を範囲内にしようとする際に、透析液を直接ドレンに送ることができる。
入口水高温警報状態7623は、返血を停止し、たとえばGUIに対して入口水温度高温警報をポストすることにより、患者に対し、装置に入ってくる水が高温過ぎることを通知する。この状態は、高温の水をドレンに分流させて、水が公称温度に達するのを待つ。
待ち状態7624は、返血と切断との間の遷移を処理するように意図されている。この状態は、本質的にシステムをアイドル状態にする。返血と切断との間の遷移を処理することに加えて、この状態はまた、追加のボーラス注入を行う能力も制御する。ユーザ待ち状態7625は、ユーザが、追加の返血を要求するか、またはこのプロセスを終えたことを示すのを待つ。患者が、返血を終わらせたことを示す場合、返血を終了するイベントを生成することができる。
静脈空気警報状態7626は、返血を停止し、患者に対し、静脈空気が検出されたことを通知する。静脈空気解決状態7627は、患者が気泡を解消し、それが患者から示されるのを待つ。
透析液漏れ警報状態7628は、動作を停止し、患者に対し、透析液漏れが検出されたことを通知する。透析液漏れ警報をGUIにポストすることができる。漏れ解決状態7629は、患者が漏れを解消し、それが患者から示されるのを待つ。
透析液生成警報状態7630は、動作を停止し、患者に対し、透析液漏れが検出されたことを通知する。透析液生成警報をGUIにポストすることができる。返血終了状態7631は、患者が警報を確認するのを待つ。警報が確認されると、返血を終了するイベントを生成することができる。
休止メニュー状態7632は、患者が追加の活動を行うように選択するのを可能にする。患者により、以下のオプションを表示し選択することができる。すなわち、患者接続、電力待機および遮断である。
(10)サンプル採取
サンプル採取アプリケーションは、オペレータに対し、いくつかの流体サンプルを採取することができるようにする。透析治療を安全にかつ有効に施すために、実験室分析のために、透析液および逆浸透水のサンプルを定期的に収集する必要がある場合がある。このアプリケーションは、ユーザが、収集に好都合な場所にサンプリング用の流体を提示することによりこれらのサンプルをより容易に収集することができるようにする。
透析液サンプル収集の場合、透析液は、透析装置を通して循環する。逆浸透(RO)サンプル収集の場合、逆浸透システムが、電源が入れられ、所定量の時間、フラッシングされて、逆浸透水の生成を開始する。そして、ユーザは、これらの流れを利用することによってサンプルを収集するように促される。
図77は、サンプル採取アプリケーションの例示的な実装形態を示す。サンプル採取アプリケーション7701の透析液サンプル評価状態7702は、透析液サンプルがスケジュールされているか否かを判断する。透析液サンプル開始状態7703は、透析液の流れを開始し、患者がサンプルを採取するのを可能にする。ROサンプル評価状態7704は、逆浸透サンプルがスケジュールされているか否かを判断する。RO生成開始状態7705は、ROサンプルに備えてRO生成を開始する。タイマにより、逆浸透膜を十分にフラッシングすることができ、それにより、水質が許容可能になる。ROサンプル収集状態7706は、患者がROサンプルを収集するのを可能にする。
ユーザによる血液サンプルの収集は、治療中または治療の最後に行われる可能性がある。一構成では、システムは、血液セットにおいて約100ml/分の血液流量を設定することができ、一方で、限外ろ過ポンプ流量および透析液ポンプ流量をゼロに設定することができる。任意選択的に、この時間の間、透析液生成は所定流量で継続して新鮮透析液を維持することができ、透析液タンクへの新鮮透析液の追加を用いて、透析液タンクから、かつ外部透析液回路からドレンに送られる等価な量の透析液を置き換えることができる。(11)部品交換
部品交換アプリケーションは、いくつかの部品がその耐用年数に達したときにユーザがそれら部品を交換することができるようにする。図78は、部品交換アプリケーションの例示的な実装形態を示す。
アプリケーション7801の部品交換要求状態7802は、いずれの部品を交換するべきかを示し、ユーザが、追加の交換を要求するのを可能にする。流路デプライミング状態7803は、ある場合は装置のいずれの部分をデプライミングする必要があるかを判断する。血液側排液評価状態7804は、血液側を排液する必要があるか否かを判断する。透析装置および血液管セットが交換を必要とする可能性がある種々の方法を評価する。透析装置および血液管セットを交換する必要があるが、完全に凝固が発生していない場合、状態は、それらから流体を排液することを要求することができる。透析液側排液評価状態7805は、透析液側を排液する必要があるか否かを判断する。透析液側部品が交換を必要とする可能性がある種々の方法を評価し、必要である場合、状態は、それらから流体を排液することを要求する。透析液タンク排出状態7806は、透析液タンクからあらゆる残留透析液または逆浸透水をドレンに送ることによって除去する。タンク排出コマンドが完了すると、タンク空7807イベントが発せられる。透析液側排液中状態7808は、限外ろ過装置から流体を除去する。
透析装置交換評価状態7809は、透析装置および血液管セットが交換を必要とするか否かを判断する。透析装置交換状態7810は、患者に対して段階的に透析装置(および血液管セット)を交換させる。たとえば、透析装置を交換するための指示を表示することができる。ユーザが、透析装置が交換されたことを示すと、透析装置交換済みイベントを発することができる。限外ろ過装置交換評価状態7811は、限外ろ過装置が交換を必要とするか否かを判断する。限外ろ過装置交換状態7812は、患者に対して限外ろ過装置交換を段階的に行わせる。ドレンカセット交換中状態7813は、患者に対して限外ろ過装置交換を段階的に行わせる。たとえば、ドレンカセットを交換する指示を表示することができる。ユーザが、ドレンカセットが交換されたことを示すと、ドレンカセット交換済みイベント7814を発することができる。透析液カートリッジ交換評価中状態7815は、透析液カートリッジが交換を必要とするか否かを判断する。たとえば、透析液カートリッジを交換する指示を表示することができる。ユーザが、交換を完了したことを示すと、部品交換済みイベント7816を発することができる。
透析装置接続部評価状態7817は、透析装置および血液管セットの接続部が試験を必要とするか否かを判断する。透析装置点検中状態7818は、透析装置が正しく交換されており、接続部に漏れがないことを確実にすることができる。透析装置点検に問題がない場合、透析装置点検OKイベント7819を発することができる。透析装置接続部修正中状態7820は、患者が間違って配置された接続部を是正するのを可能にする。たとえば、透析装置接続部を修正する指示を表示することができる。限外ろ過装置接続部評価状態7821は、透析装置および血液管セットの接続部が試験を必要とするか否かを判断する。限外ろ過装置接続部修正中状態7822は、患者が間違って配置された接続部を是正するのを可能にする。たとえば、限外ろ過装置接続部を修正する指示を表示することができる。限外ろ過装置点検7823に問題がない場合、限外ろ過装置点検OKイベント7824が発せられる。ドレンカセット接続部評価中状態7825は、ドレンカセットの接続部が試験を必要とするか否かを判断する。ドレン接続部修正中7826状態は、患者が間違って配置された接続部を是正するのを可能にする。ドレンカセット接続部を修正する指示を表示することができる。透析液カートリッジ点検中状態7827は、透析液カートリッジが正しく交換されており、接続部に漏れがないことを確実にする。透析液カートリッジ点検に問題がない場合、接続部点検済みイベント7828を発することができる。透析液カートリッジ接続部修正中状態7829は、患者が間違って配置された接続部を是正するのを可能にする。
(12)化学物質設置
化学物質設置アプリケーションは、ユーザが透析液生成に備えて化学物質原液を設置するのを可能にする。透析液は、逆浸透水で希釈される化学物質原液から作成される。化学物質原液は、透析液生成前に、ただし再循環中ではなく、装置に接続される。装置は、それらの設置に続いて化学物質原液の接続を点検する。化学物質原液が装置に適切に接続されていない場合、ユーザには、この状況を是正する機会がある。
図79Aおよび図79Bは、化学物質設置アプリケーションの例示的な実装形態を示す。アプリケーション7901のアクティブ状態7902は、化学物質設置処理が行われている状態である。この状態は、アイドル状態7904に遷移する際に化学物質設置停止済みイベント7903を生成する。
図79Bを参照すると、新たな原液設置状態7905は、ユーザに対して、化学物質原液容器を交換するように促す。接続確保試験7906は、化学物質がシステムに適切に設置されたか否かを検出する。接続回復状態7907は、システムが、化学物質原液が適切に設置されていないことを検出した場合に、ユーザ対話を処理する。システムは、ユーザに対して、化学物質が適切に設置されすべての接続部が確実に締結されていることを検証するように通知することができる。化学物質希釈状態7908は、化学物質バッグに水を充填して化学物質を希釈する。透析液生成開始状態7909は、透析液生成の開始を担当する。
透析液漏れ警報状態7910は、動作を停止し、ユーザに対し、透析液漏れが検出されたことを通知する。漏れ解決状態7911は、ユーザが漏れを解消し、それをユーザから示されるのを待つ。
再び図79Aを参照すると、データハンドラ初期化状態7912は、化学物質設置用のデータ項目の初期化を担当する。この初期化を完了すると、化学物質設置開始OKイベント7913を生成して、化学物質設置が起動の用意ができていることを示す。データ更新状態7914は、治療処方箋および配合等、化学物質設置用のデータ項目の最新データ値を維持することを担当する。
本明細書に記載する血液透析システム実施形態では、複数の特徴または属性が望ましい可能性がある。これらの特徴または属性は、たとえば、自動化、安全性、使いやすさ、ユーザインタフェース、治療プログラミング、処方データ、患者入力データ、概要データおよび/または治療表示データに関連することができる。血液透析システムの実施形態の例示的な特徴または属性について以下に説明する。さまざまな特徴あるいは属性またはこうした特徴または属性の組合せは、本明細書で説明する血液透析システムの実施形態に組み込むことができる。しかしながら、こうした特徴および属性は、システムに必須ではない場合もある。したがって、記載した特徴または属性をいくつかの状況では1つまたは複数の血液透析システムの実施形態に有利に組み込むことができるが、血液透析システムは、記載した特徴または属性のいずれも含む必要はなく、システムはこうした特徴または属性の包含に限定されるものではない。
システムの自動化の例示的な特徴または属性についてまず説明する。本明細書に記載した血液透析システムの実施形態は、患者が立位、座位および/または横臥の姿勢からシステムを操作する、かつ/または処置を受けることができるように設計することができる。本明細書に記載したように、血液透析システムは、処置前の血液セットおよび透析液経路のプライミング、リンスおよび消毒、限外ろ過装置および透析装置の完全性試験、プライミング液戻りありまたはプライミング液廃棄のいずれかの動作による血液の血液セットへのプライミング、および処置の終わりにおける血液の返血を含む複数の機能を自動的に行うことができる。血液透析システムは、返血の完了時に血液セット内における残留赤血球を最小限にすることができ、処置毎の赤血球損失が従来の週に3回の血液透析処置に対する処置毎の赤血球損失以下であることを確実にすることができる。血液透析システムは、プライミングが開始された時点から返血が完了するまでいつでも、要求があると溶液注入を自動的にうことができる。処置装置は、処置中に自動的にヘパリンを送達することができる。血液透析システムは、患者の血圧および体重を自動的に記録することができる。これは、外部のスタンドアロン型のセンサモジュールとの無線通信を使用することによって行うことができる。血液透析システムは、部品が正しく装填されたこと、および正しくかつ十分な消耗品(すなわち、溶液、原液等)が接続されていることを確認することができる。血液透析システムは、血液処置セットが正しく装填されていることを検証することができる。
血液透析システムは、透析装置の性能を試験しかつ監視する際に、透析装置の再利用に関するFDA(アメリカ食品医薬品局)およびAAMI(Association for the Advancemen of Medical Instrumentation)のガイドラインに準拠することができる。血液透析システムは、処置時の準備時間を短縮するために患者が次の処置をスケジュールするのを可能にすることができる。血液透析システムは、処置中30分以下の間、返血しながらユーザを安全に一時的に切断する特徴を提供することができる。別法として、血液透析システムは、ユーザが、ユーザへの血液の返血なしに一時的に切断するのを可能にすることができる。動脈ラインおよび静脈ラインからの切断時、ユーザは、パススルーコネクタを介して動脈ラインを静脈ラインに接続することができる。そして、システムは、血液セットにおいて血液を循環させ、透析液ポンプを休止し、切断期間の持続時間にわたってヘパリン注入を休止することができる。血液透析システムは、医療専門家が一時的切断の特徴を使用不可にことができるようにすることができる。血液透析システムは、中断(すなわち、警報)に至る可能性がある状態を防止するかまたは自己解決を試みることによって、治療の中断を最小限にすることができる。
次に、例示的な安全機能および属性について説明する。血液透析は、一定の安全基準を満たすように設計することができる。たとえば、血液透析システムは、血液透析装置に対するAAMIおよびIEC(国際電気標準会議)の関係するすべての安全要件を満たし、外側露出面が動作中にIEC−60601−1標準規格に示されているレベル未満に留まるように設計することができる。また、透析システムのユーザインタフェースは、安全制御機能を確実にすることができる。たとえば、血液透析システムは、患者が処置中いつでも治療および返血を終了する機構を提供することができる。また、回復不可能な警報が発生した場合、または電源が遮断された場合でも、患者が自身の血液を返血する方法を提供することができる。ユーザは、1回ボタンを押すことにより動作中いつでも機器を安全な状態にする(すなわち、すべての機器活動を休止する)ことも可能である。
本明細書に記載したように、気泡は患者対して危険である可能性がある。したがって、血液透析システムは、20マイクロリットル以上の大きさの気泡が患者に達しないように構成することができる。血液透析システムは、1マイクロリットル以上の気泡の流れが蓄積して30秒以内に合計20マイクロリットルを超えるとき、警報をトリガすることができる。さらに、血液透析システムは、3マイクロリットル以上の気泡の流れが蓄積して30秒以内に合計で20マイクロリットルを超えるとき、警報をトリガすることができる。
血液透析システムは、複数の安全検出機能を含むことができる。たとえば、血液透析システムは、静脈針の抜けを検出する機能を含むかまたはそれとインタフェースすることができる。血液透析システムは、透析装置の膜を横切る血液の通過を検出することができる。血液透析システムはまた、装置の範囲内に含まれる血液回路の部分から滴漏れも検出し、ユーザに警告することができる。さらに、患者がさらされる血液回路の流体は、「注入用透析液」の品質であり得る。
血液透析システムは、さまざまな身体的能力および精神的能力の患者に使用可能であるように設計することができる。たとえば、血液透析システムのユーザインタフェースは、網膜症および神経障害を患う透析オペレータに適合可能であり、色盲者にも読取可能であり得る。特に、ユーザインタフェースに表示される重大な情報を、視力0.28(20/70)のユーザが約0.91メートル(3フィート)の距離から見えることが可能であり、ユーザインタフェースに表示される重大でない情報を、視力0.28(20/70)のユーザが約0.61メートル(2フィート)の距離から見えることが可能である。血液透析システムのユーザインタフェースは小学5年生の読解レベルのオペレータが理解できるように直観的であるように設計することができる。さらに、血液透析システムは、治療中を含め片手で操作されるように設計することができる。これは、アクセス部位に針が存在するために片腕を動かせない患者を補助する。
ユーザインタフェースは、柔軟かつ機能的であるようにも設計することができる。たとえば、血液透析システムのユーザインタフェースは、はね/こぼれに耐性があり、動作を劣化させることなく、以下の洗浄液で洗浄可能である。すなわち、ふき取り用の1:10で希釈した5.25%の次亜塩素酸ナトリウム漂白剤、ふき取り用の加速化過酸化水素(バイロックステックインコーポレイテッド(Virox Tech Inc)製)、およびふき取り用のPDIサニ−クロスプラス(Sani−Cloth Plus)である。
照明は、ユーザによって制御可能であるか、またはいくつかの要素に基づいて制御可能であり得る。たとえば、血液透析システムに、ユーザインタフェースを減光し、要求によってまたは自動的に、他のすべての発光を最小限にする機構を設けることができる。さらに、停止ボタンなどの安全性を重視したコントロールを配置するために必要なものを除いて、すべての発光源の電源を切ることができる。停電時、患者が自身の血液ラインおよびアクセスを扱うのをサポートするように、血液セットおよび透析装置の照明を設けることができる。血液透析システムは、コントロールとのユーザ対話が必要な場合に、適切なコントロールに照明を提供することができる。これは薄暗い環境で治療を行うときに必要なコントロールをユーザが見つけるのに役立つ。
本明細書で考察したように、透析システムの使用中、警報をトリガすることができる。血液透析システムは、警報状態の可聴指示および視覚的表示を提供することができる。さらに、血液透析システムは、警報状態の重要性を識別することができる。血液透析システムの音声能力は、たとえば、警報状況または警告状況のために広範囲の周波数および音量を可能にすることができ、それはユーザが調整可能であり得る。血液透析システムは、ユーザがアラーム音を消すことができるようにすることができる。血液透析システムは、グラフィカルユーザインタフェースに加えて、警報および警告を喚起する視覚的インジケータを有することができる。たとえば、血液透析システムは、「ライトポール」、または全方向でかなりの距離(たとえば、約6.10メートル(20フィート))から見ることのできるような他の視覚的警報インジケータを生成することができる。
血液透析システムのグラフィカルユーザインタフェースは、警報のあり得る原因と、警報が是正可能であるか否かを説明することができる。警報が是正可能である場合、血液透析システムのユーザインタフェースは、ユーザをアラームの解決に対して誘導することができる。血液透析システムは、サービスまたは医療専門家を呼ぶべき時に関して指示を与えることも可能である。
ユーザインタフェースおよびラベリングは、複数の異なる言語および代替的な文字セットをサポートすることができる。さらに、血液透析システムは、サポートされる言語での音声ガイダンスを提供することができる。可能な場合、正しい接続を容易にするように、接続部に対して記号を入れるかまたは色分けすることができる。
血液透析システムのユーザインタフェースは、ユーザに治療の終了時に通知を受け取るオプションを提供することができ、ユーザが治療の終了時に関係する処置データを検討するのを可能にすることができる。
血液透析システムは素人に対して操作が容易でありかつ使いやすいことが望ましい可能性がある。血液透析システムのユーザインタフェースおよび工業設計は、装置に家庭用製品のような見た目および風合いを可能にし、単純なインタフェースをもたせることができる。患者が行う操作は、画面上にグラフィカルにシミュレーションすることができる。適切に訓練を受けた患者は、治療を要求してから10分以内に処置を開始することができる。血液透析システムのユーザインタフェースは、上級のユーザにクイックナビゲーションを提供しつつも、初心者のユーザを激励し誘導するのに役立つ、「初心者」モードおよび「上級者」モードに構成可能であり得る。
血液透析システムは、ユーザが過失および間違いから、たとえば、ユーザインタフェースのバックナビゲーションまたはアンドゥ機能を使用して復帰するのを可能にすることができる。さらに、血液透析システムのユーザインタフェースは、ヘルプを得るのに必要なユーザの時間および労力を最小限にすることができる。血液透析システムは、医療専門家向けの訓練マニュアル、患者向けの訓練マニュアルおよび操作マニュアルを提供することができる。
血液透析システム、装置の医療専門家用ローカライゼーションをサポートすることができ、これは、テキスト要素の表示言語の設定、時間の設定、およびパラメータの単位(すなわち、ポンドまたはキログラム)の設定から構成されている。血液透析システムは、患者の処方の医療専門家用構成をサポートし、これには患者の目標体重、許容可能な治療構成(すなわち、短時間連日、長時間処置)および関連する血液の流量の設定、各治療構成(すなわち、短時間連日、長時間処置)毎に透析液の流量および時間または透析液の容量および時間のいずれかを設定する柔軟性、規定されたヘパリンのプロトコル、最大限外ろ過速度、透析液の組成、透析装置の識別、溶液注入ボーラスのサイズおよび限界、動脈および静脈の血圧限界、返血容量、およびプライミング方法(プライミング液戻りまたはプライミング液廃棄)が含まれる。血液透析システムは、患者による各処方パラメータの調整を防止するオプションを提供し、患者による処方パラメータの調整に上限/下限を設けることができる。
血液透析システムは、患者の処方箋の手動入力および電子的入力をサポートすることができる。血液透析システムは、各治療のために手動で入力する必要のある情報量を最小限にするように設計することができる。
装置は、治療の開始時点に、患者に以下の入力の提供を要求することができる。すなわち、治療の種類(たとえば、短時間連日、長時間)および透析前の体重である。治療前および治療中、血液透析システムは、ユーザが治療終了時間を調整するのを可能にすることができる。血液透析システムは治療前および治療完了後の両方で、座位および/または立位の患者が血圧を入力することができるようにすることができる。
装置は、確認のために、処置の開始前に、概要画面に少なくとも以下の計算されたパラメータを表示することができる。すなわち、治療の持続時間/終了時間および患者の最終体重である。血液透析システムは、治療前および治療中にユーザが治療の最終体重を調整するのを可能にすることができる。さらに、治療前および治療中に、血液透析システムは、ユーザが、治療の終了時間/治療の持続時間を調整するのを可能にすることができる。
警報またはユーザによる要求に取って代わられない限り、血液透析システムは、常に以下の情報を表示することができる。すなわち、現時点でのシステムの状態(すなわち、プライミング、治療等)、現時点での血液の流量、現時点での患者体重と目標の患者体重、累積治療時間および治療終了時間、ならびに送達されるヘパリンの容量である。関連する血圧モニタ(カフ)を使用する場合、血液透析システムは、測定が行われた後の5分間、新たな血圧測定値を表示することができる。血液透析システムは、要求時に、実際の血流に関するリアルタイムフィードバックを表示することができる。これにより、最適な血流のための針の調整が容易になる。要求時、血液透析システムは、ユーザが以下の情報を見る手段を提供することができる。すなわち、透析液の伝導率および流量、最新の血圧測定値、現時点での限外ろ過除去速度、注入された累積ボーラス容量、透析液の温度、現時点での動脈および静脈ポンプの圧力、および処理された血液容量である。
以下は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。2007年2月27日に出願され、「血液透析システムおよび方法(Hemodialysis System and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/903,582号明細書、2007年2月27日に出願され、「血液透析システムおよび方法(Hemodialysis System and Methods)」と題する米国仮特許出願第60/904,024号明細書、2007年4月13日に出願され、「熱交換システム、装置および方法(Heat Exchange Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,213号明細書、2007年4月13日に出願され、「流体ポンプシステム、装置および方法(Fluid Pumping Sytems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,212号明細書、2007年4月13日に出願され、「熱および伝導率感知システム、装置および方法(Thermal and Conductivity Sensing Systems,Devices and Methods)」と題する米国特許出願第11/787,112号明細書、2007年10月12日に出願され、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,680号明細書、2007年10月12日に出願され、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,712号明細書、2007年10月12日に出願され、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,787号明細書、2007年10月12日に出願され、「ポンプカセット(Pumping Cassette)」と題する米国特許出願第11/871,793号明細書、および2007年10月12日に出願され、「カセットシステム統合装置(Cassette System Integrated Apparatus)」と題する米国特許出願第11/871,803号明細書である。さらに、以下は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。「圧力測定フロー制御システム(Pressure−Measurement Flow Control
System)」と題する、1989年2月28日に発行された米国特許第4,808,161号明細書、「強化された圧力測定フロー制御システム(Enhanced Pressure−Measurement Flow Control System)」と題する1989年5月2日に発行された米国特許第4,826,482号明細書、「強化された圧力測定フロー制御システム(Enhanced Pressure−Measurement Flow Control System)」と題する、1990年12月11日に発行された米国特許第4,976,162号明細書、「取り外し可能な流体インタフェースを備えた弁システム(Valve System with Removable Fluid Interface)」と題する、1992年2月18日に発行された米国特許第5,088,515号明細書、および「流体の分配および重力流を真似るポンプカセットを採用する腹膜透析システム(Peritoneal Dialysis Systems Employing a Liquid Distribution and Pumping Cassette that Emulates Gravity Flow)」と題する、1994年9月27日に発行された米国特許第5,350,357号明細書である。また、全体として参照により本明細書に組み込まれるのは、「センサ装置システム、デバイスおよび方法(Sensor Apparatus Systems,Devices and Methods)」と題する、2008年2月27日に出願された米国特許出願第12/038,474号明細書、「カセットシステム統合装置(Cassette System Integrated Apparatus)」と題する、2008年2月27日に出願された米国特許出願第12/038,648号明細書、および「血液透析システムおよび方法(Hemodialysis Systems and Methods)」と題する、2008年2月27日に出願された米国特許出願第12/072,908号明細書である。
さらに、以下は、全体として参照により本明細書に組み込まれ、かつ本願と同一の日に出願されている。「医療注入システム用オクルーダ(Occluder for a Medical Infusion System)」と題する米国特許出願第12/198,947号明細書、「可搬型血液透析システム用筐体(Enclosure for a Portable Hemodialysis System)」と題する米国特許出願第12/199,055号明細書、「血液透析システム用の透析装置カートリッジ取付装置(Dialyzer Cartridge Mounting Arrangement for a Hemodialysis System)」と題する米国特許出願第12/199,062号明細書、「可搬型血液透析システム用モジュール式アセンブリ(Modular Assembly for a Portable Hemodialysis System)」と題する米国特許出願第12/199,068号明細書、「血液透析システム用血液回路アセンブリ(Blood Circuit Assembly for a Hemodialysis System)」と題する米国特許出願第12/199,077号明細書、「医療注入装置用エアトラップ(Air Trap
for a Medical Infusion Device)」と題する米国特許出願第12/199,166号明細書、「医療注入装置用血液ラインコネクタ(Blood Line Connector for a Medical Infusion Device)」と題する米国特許出願第12/199,176号明細書、「血液透析システム用試薬供給(Reagent Supply for a Hemodialysis System)」と題する米国特許出願第12/199,196号明細書、および「血液透析システムおよび方法(Hemodialysis System and Methods)」と題する2008年8月27日に出願された米国特許出願第12/199,452号明細書である。
本明細書において、本発明の複数の実施形態について記載し、かつ例示したが、当業者は、機能を実施し、かつ/または結果および/あるいは本明細書に記載した1つまたは複数の利点を得るための、他の様々の手段および/または構成を容易に想定し、こうした変形/変更の各々は、本発明の範囲内にあると考えられる。より全体的には、当業者は、本明細書に記載したすべてのパラメータ、寸法、材料および構成が例示的であるように意図されており、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途によって決まることを認識するであろう。当業者は、本明細書に記載した発明の具体的な実施形態の多くの均等物を理解し、または単なる日常的な実験を使用して認識することができるであろう。したがって、上述した実施形態は単なる例として提示されるものであり、本発明が、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内において、具体的に記載され、かつ請求項に係るものとは異なるように実施され得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載された個別の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に関する。さらに、こうした特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の2つ以上の任意の組合せが、こうした特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに一貫していなくても、本発明の範囲内に含まれる。
本明細書において定義され、かつ使用されるようなすべての定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれる文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味に対して優先するものであることが理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲において使用する不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、明確に別段の指示がない限り、「少なくとも1つの」を意味するように理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または」という句は、結合された要素、すなわち、場合によっては結合して存在し、他の場合には分離して存在するような要素の「いずれかまたは両方」を意味するものと理解されるべきである。「および/または」で列挙される複数の要素は、同様に、すなわち、結合された要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。他の要素は、任意選択的に、「および/または」の節によって具体的に特定される要素以外に存在することが可能であり、これは、具体的に特定されたそれらの要素に関係するか無関係であるかに関わらない。したがって、限定されない例として、「備える(comprising)」等の限定的でない言語とともに使用される場合、「Aおよび/またはB」に対する言及は、一実施形態では、Aのみ(任意選択的に、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意選択的に、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびB両方(任意選択的に、他の要素を含む)等を指すことができる。
本明細書および特許請求の範囲において使用される「または」は、上記で定義したように「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。たとえば、列挙された要素を分けるときに、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、複数の要素または列挙された要素の、少なくとも1つ、ただし2つ以上、ならびに任意選択的に、列挙されていない要素をさらに含むものとして理解されるべきである。「〜のうちの1つのみ」または「〜のうちの厳密に1つ」等、または請求項において使用される場合は、「から構成される」等の反対の意味を明確に示す用途のみが、複数の要素や列挙された要素のうちの1つの要素を厳密に含むこと指す。一般に、本明細書において使用する「または」は、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、または「〜のうちの厳密に1つ」等の排他的な用語が先行する場合に、排他的な代替物(すなわち「一方または他方であるが両方ではない」)を示すものと解釈されるべきである。特許請求の範囲において使用される場合、「本質的に〜から構成される」は、特許法の分野において使用されるような通常の意味を有するものとする。
本明細書および特許請求の範囲において使用される、1つまたは複数の要素の列挙に関して、「少なくとも1つ」という句は、列挙された要素のうちの任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味し、必ずしも具体的に列挙された要素の少なくとも1つの各要素を含み、かつ羅列された要素の任意の組合せを排除するものではないことが理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つの」という句が示す、列挙された要素の中で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関係していてもしていなくても、任意選択的に存在する可能性あがることも可能にする。したがって、限定しない例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」または同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、任意選択的に2つ以上Aを含み、Bは存在しない(かつ任意選択的にB以外の要素を含む)少なくとも1つを指し、別の実施形態では、任意選択的に2つ以上Bを含み、Aは存在しない(かつ、任意選択的にA以外の要素を含む)少なくとも1つを示し、さらに別の実施形態では、任意選択的に2つ以上Aを含む少なくとも1つ、および任意選択的に2つ以上Bを含む(かつ任意で他の要素を含む)少なくとも1つ等を示す。
明確に別段の指示がない限りは、2つ以上のステップや行為を含む、請求項に記載されたあらゆる方法において、その方法のステップまたは行為の順序は必ずしもその方法のそれらステップまたは行為が列挙されている順序に限定されるものではないこともまた理解されるべきである。
特許請求の範囲において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「支持する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「〜から構成される(composed of)」等の移行句は、限定的でない、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味することが理解されるべきである。「〜から構成される」および「〜から実質的に構成される」という移行句のみが、特許審査手続きに関する米国特許庁便覧セクション2111.03に規定されるように、それぞれ限定的または半限定的な移行句である。