ジャーナル軸受において、軸受パッドには、回転軸との摩擦抵抗を減らすために、回転軸の回転中、油(潤滑油)の供給が行われる。この点について、本発明者らが検討したところ、油の供給量(給油量)が不足した場合、回転軸の回転に伴って回転軸と軸受パッドとの間に入り込む油に、気泡(ボイド)が入り込み易くなることがわかった。そして、回転軸と軸受パッドとの間に気泡が入り込めば、空気が圧縮性の流体であることから、入り込んだ気泡は回転軸と軸受パッドとの間で押し潰されると考えられる。
特に、回転軸と軸受パッドとの間に入り込む気泡の量は経時的に変化すると考えられる。従って、回転軸と軸受パッドとの間に入り込む気泡の量が経時的に変化すれば、回転軸と軸受パッドとの間で圧力分布に経時的な揺らぎが生じることになる。その結果、非同期成分による軸振動が発生し易くなる。
しかし、気泡の入り込みに起因する軸振動の発生については、上記の特許文献1に記載の技術では考慮されていない。そのため、特許文献1に記載の技術では、気泡の入り込みに起因する軸振動の抑制という観点では、依然として課題がある。
本発明の少なくとも一実施形態は、回転軸と軸受パッドとの間への気泡の入り込みに起因する軸振動の発生を抑制可能なジャーナル軸受の給油量調節装置、ジャーナル軸受装置、回転機械、及び、ジャーナル軸受の給油量調節方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るジャーナル軸受の給油量調節装置は、筐体と、当該筐体の内部に設けられる少なくとも一つの軸受パッドと、を有するジャーナル軸受の給油量を調節するための装置であって、前記少なくとも一つの軸受パッドに油を供給する少なくとも一つの給油ユニットによる給油量を調節するための少なくとも一つの給油量調節部と、前記ジャーナル軸受によって支持される回転軸の振動の大きさ、又は、前記筐体の内圧のうちの少なくとも一方の情報を検出するための少なくとも一つのセンサと、前記少なくとも一つのセンサによって検出された情報に基づき、前記少なくとも一つの給油ユニットによる給油量を調節するように前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するための制御装置と、を備える。
上記(1)の構成によれば、回転軸と軸受パッドとの間に入り込んだ気泡と軸振動との間に成立する上記のような関係を踏まえ、給油量を調節して気泡の入り込みを抑制することで、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。また、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制するために適切な量での給油を行うことができるため、過剰な油による圧力損失の増大を抑制し、回転軸の効率的な回転を行うことができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記少なくとも一つのセンサは、前記回転軸の振動の大きさを検出するための少なくとも一つの振動検出センサを含み、前記制御装置は、前記少なくとも一つの振動検出センサにより検出された前記振動の大きさが許容範囲を逸脱したときに、前記少なくとも一つのセンサにより検出された前記情報に基づき、前記少なくとも一つの軸受パッドへの給油量を増やすよう前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するように構成される。
上記(2)の構成によれば、振動が大きくなって許容範囲を逸脱した場合に給油量を増加させて、回転軸と軸受パッドとの間に気泡が入り込むことを抑制することができる。これにより、回転軸と軸受パッドとの間での圧力分布の揺らぎを抑制し、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記少なくとも一つのセンサは、前記筐体の内圧を検出するための少なくとも一つの内圧センサを含み、前記制御装置は、前記少なくとも一つの内圧センサにより検出された内圧に基づき、前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するように構成される。
上記(3)の構成によれば、内圧が変化して回転軸と軸受パッドとの間に気泡が入り込み易くなった場合に、給油量の調節を行うことができる。即ち、筐体の内圧が変化し、変化した内圧によって外部から筐体への空気の入り込み易さが変化すれば、筐体内部において回転軸と軸受パッドとの間への空気の入り込み易さも変化する。そこで、内圧が変化した場合に給油量の調節を行うことで、回転軸と軸受パッドとの間への気泡の入り込みを抑制し、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れか一の構成において、前記少なくとも一つのセンサは、前記回転軸の振動の大きさを検出するための少なくとも一つの振動検出センサと、前記筐体の内圧を検出するための少なくとも一つの内圧センサと、を含み、前記制御装置は、前記少なくとも一つの振動検出センサにより検出された振動の大きさが予め定められた振動閾値以上という第1判定条件、又は、前記少なくとも一つの内圧センサにより検出された内圧が予め定められた内圧閾値以下という第2判定条件のうち少なくとも一つの判定条件を満たしたときに、前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するように構成される。
上記(4)の構成によれば、軸振動の大きさが無視できない程度となった場合、又は、筐体の内圧が低過ぎる結果気泡が回転軸と軸受パッドとの間に入り込み易くなった場合に、回転軸と軸受パッドとの間への気泡の入り込みを抑制することができる。これにより、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、前記内圧閾値は大気圧以上の値である。
上記(5)の構成によれば、給油量の調節により、油への気泡の入り込みのリスクを効果的に低減することができる。即ち、筐体の内圧が例えば大気圧未満(負圧)となることで空気が筐体の内部に流れ込み易くなるため、回転軸と軸受パッドとの間に気泡が入り込み易くなるが、このような場合に給油量の調節を行うことで、気泡が入り込みにくくすることができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の何れか一の構成において、前記少なくとも一つのセンサは、前記回転軸の振動の大きさを検出するための少なくとも一つの振動検出センサを含み、前記制御装置は、前記回転軸の回転周波数以下の周波数を抽出するローパスフィルタを備え、当該ローパスフィルタによって抽出された前記回転軸の回転周波数より低い任意の周波数以下の振動レベルに基づき、前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するように構成される。
上記(6)の構成によれば、回転軸の固有周波数を除去することができるため、回転軸と軸受パッドとの間に入り込んだ気泡に由来する非同期成分による軸振動を精度良く検出することができる。これにより、給油量を適切に調節し、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の何れか一の構成において、前記制御装置は、前記少なくとも一つのセンサにより検出された値に基づいて、前記少なくとも一つのセンサにより検出される値が目標値に近づくように前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するように構成された少なくとも一つのフィードバック制御部を含む。
上記(7)の構成によれば、振動又は内圧のうちの少なくとも一方が目標値から外れてしまった場合(例えば、振動が大き過ぎる、内圧が小さ過ぎる等)、センサにより検出された値に基づいて目標値に近づけることができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の何れか一の構成において、前記回転軸の回転数、前記回転軸の負荷の大きさ、又は、前記ジャーナル軸受に対する前記回転軸の面圧のうちの少なくとも一つの第2の情報を検出するための少なくとも一つの第2のセンサを備える。
上記(8)の構成によれば、上記のセンサにより検出される振動及び内圧のような回転軸の状態のほか、回転軸の回転数、回転軸の負荷の大きさ、回転軸の面圧のような他の状態を把握することができる。
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、前記制御装置は、前記少なくとも一つのセンサにより検出された前記情報に基づき、前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するための少なくとも一つのフィードバック制御部と、前記少なくとも一つのセンサにより検出された前記情報、又は、前記第2のセンサにより検出された前記第2の情報のうちの少なくとも一つの情報に基づいて前記少なくとも一つのフィードバック制御部の制御用パラメータを修正するための少なくとも一つのパラメータ修正部と、を備える。
上記(9)の構成によれば、回転数の違い、負荷の違い、面圧の違い等の回転軸の状態に応じてフィードバック制御の制御用パラメータを変更することができる。このため、例えば、ジャーナル軸受を備える蒸気タービンにおいて、蒸気量が変化した場合、回転軸の回転数が変化した場合等においても、給油量を精度良く決定することができる。
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、前記制御装置は、前記少なくとも一つのセンサにより検出された前記情報に基づき、前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するための少なくとも一つのフィードバック制御部と、前記少なくとも一つのセンサにより検出された前記情報、又は、前記第2のセンサにより検出された前記第2の情報のうちの少なくとも一つの情報と、当該少なくとも一つの情報に基づいて前記フィードバック制御部により制御された給油量とを記録するための少なくとも一つの記録部と、当該記録部に記録された値を重回帰分析して回帰式を導出するための少なくとも一つの回帰式導出部と、当該回帰式導出部により導出された回帰式と、前記少なくとも一つのセンサにより検出された前記情報、又は、前記第2のセンサにより検出された前記第2の情報のうちの少なくとも一つの情報とに基づいて給油量を算出するための少なくとも一つの給油量算出部と、を備え、前記制御装置は、当該少なくとも一つの給油量算出部において算出された給油量となるように、前記少なくとも一つの給油量調節部を制御するように構成される。
上記(10)の構成によれば、回転数の違い、負荷の違い、面圧の違い等の回転軸の状態が異なる場合の給油量を学習し、給油量の学習結果に基づいて給油量を決定することができる。これにより、回転軸の状態が変わり、状態が変わる前の運転条件によっては軸振動が大きくなることがあっても、その軸振動が大きくなる前に給油量を調節することができる。これにより、回転軸の状態と連動した適切な給油量調節を行うことができる。
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(10)の何れか一の構成において、前記少なくとも一つの軸受パッドは、前記回転軸の下半領域に配置された第1軸受パッド及び第2軸受パッドを含み、前記少なくとも一つの給油ユニットは、前記少なくとも一つの軸受パッドのうちの前記回転軸の回転方向において最上流側に配置された前記第1軸受パッドに給油する第1給油ユニットと、前記第1軸受パッドからみて下流側に配置された前記第2軸受パッドに給油する第2給油ユニットと、を含み、前記制御装置は、少なくとも前記第1給油ユニットによる前記第1軸受パッドへの給油量を制御するように構成される。
上記(11)の構成によれば、最も上流側に配置された軸受パッドへの給油量を調節することができる。このため、キャリーオーバ油の影響を特に受け易い第1軸受パッドへの給油量を調節することができる。これにより、最も上流側に配置された軸受パッドと回転軸との間への気泡の入り込みを抑制し、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(11)の何れか一の構成において、前記少なくとも一つの軸受パッドは、前記回転軸の下半領域に配置された第1軸受パッド及び第2軸受パッドを含み、前記少なくとも一つの給油ユニットは、前記少なくとも一つの軸受パッドのうちの前記回転軸の回転方向において最上流側に配置された前記第1軸受パッドに給油する第1給油ユニットと、前記第1軸受パッドからみて下流側に配置された前記第2軸受パッドに給油する第2給油ユニットと、を含み、前記第1給油ユニットに油を供給する第1オイルラインと、当該第1オイルラインとは独立して設けられ、前記第2給油ユニットに油を供給する第2オイルラインと、を備え、前記少なくとも一つの給油量調節部は、前記第1オイルラインを通じた前記第1給油ユニットによる給油量を、前記第2オイルラインを通じた前記第2給油ユニットによる給油量から独立して調節可能に構成される。
上記(12)の構成によれば、第1オイルラインに接続される第1給油ユニットによる給油と、第1オイルラインから独立した第2オイルラインに接続される第2給油ユニットによる給油とを、お互いの影響なく独立して行うことができる。これにより、第1給油ユニットと第2給油ユニットとのそれぞれにおいて、精密な給油量制御を行うことができる。また、軸受パッドごとに給油量を変更することができるため、給油量の削減を図り、摩擦損失を小さくすることができる。
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(12)の何れか一の構成において、前記少なくとも一つの軸受パッドは、前記回転軸の下半領域に配置された第1軸受パッド及び第2軸受パッドを含み、前記少なくとも一つのセンサは、前記筐体の内圧を検出するための少なくとも一つの内圧センサを含み、当該少なくとも一つの内圧センサは、前記少なくとも一つの軸受パッドのうちの前記回転軸の回転方向において最上流側に配置された前記第1軸受パッドの上流側に配置される。
上記(13)の構成によれば、給油量が低下した場合に、ロータ自重等を支持するためにより多くの油を軸受パッドに引き込もうとした際の軸受内の圧力低下を検出することができる。中でも、第2軸受パッドは第1軸受パッドからのキャリーオーバ油が流入するため油が不足しにくいが、第1軸受パッドでは給油量の低下による影響が大きい。そのため、第1軸受パッドの上流側の圧力に基づいて給油量を調節することで、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(13)の何れか一の構成において、前記少なくとも一つの軸受パッドは、前記回転軸の下半領域に配置された第1軸受パッド及び第2軸受パッドを含み、前記少なくとも一つのセンサは、前記筐体の内圧を検出するための少なくとも一つの内圧センサを含み、当該少なくとも一つの内圧センサは、前記第1軸受パッドと前記第2軸受パッドとの間に配置される。
上記(14)の構成によれば、第1軸受パッドと第2軸受パッドとの間における既存の空間に内圧センサを配置することができ、空間の有効活用を図ることができる。
(15)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(14)の何れか一の構成において、前記筐体は、前記少なくとも一つの軸受パッドを支持するキャリアリングと、前記回転軸の軸方向において前記少なくとも一つの軸受パッドの両側に設けられた一対のサイドプレートと、前記キャリアリングの上半領域に設けられ、前記回転軸の外周面のうち上側領域を覆うように設けられたガイドメタルと、を備え、前記少なくとも一つのセンサは、前記筐体の内圧を検出するための少なくとも一つの内圧センサを含み、当該内圧センサは、前記回転軸と前記キャリアリングと前記一対のサイドプレートのうちの一方のサイドプレートと前記ガイドメタルとにより囲まれて形成される空間に配置される。
上記(15)の構成によれば、筐体の内部において、回転軸の回転の妨げとならない部位にセンサを配置することができる。
(16)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(15)の何れか一の構成において、前記少なくとも一つの給油量調節部は開度調節可能なバルブを含む。
上記(16)の構成によれば、簡便な設備で給油量を調節することができる。
(17)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(16)の何れか一の構成において、前記少なくとも一つの軸受パッドは、前記回転軸の下半領域に配置された第1軸受パッド及び第2軸受パッドを含み、前記ジャーナル軸受は直接潤滑式のジャーナル軸受を含む。
上記(17)の構成によれば、上半領域のキャリーオーバ油に気泡が入り込んだ場合であっても、給油量を調節することで、回転軸と軸受パッドへの気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
(18)幾つかの実施形態に係るジャーナル軸受装置は、上記(1)〜(17)の何れか1項に記載のジャーナル軸受の給油量調節装置と、ジャーナル軸受と、を備える。
上記(18)の構成によれば、軸振動を抑えて回転軸を安定して回転可能なジャーナル軸受装置とすることができる。
(19)幾つかの実施形態に係る回転機械は、上記(18)に記載のジャーナル軸受装置と、前記ジャーナル軸受により支持される回転軸と、を備える。
上記(19)の構成によれば、軸振動を抑えて回転軸を安定して回転可能な回転機械とすることができる。
(20)幾つかの実施形態に係るジャーナル軸受の給油量調節方法は、筐体と、当該筐体の内部に設けられる少なくとも一つの軸受パッドと、を有するジャーナル軸受の給油量を調節するための方法であって、前記ジャーナル軸受によって支持される回転軸の振動の大きさ、又は、前記筐体の内圧のうちの少なくとも一つの情報を検出するための少なくとも一つのセンサによって、前記振動の大きさ又は前記内圧の少なくとも一つの情報を検出する状態検出ステップと、当該状態検出ステップにおいて検出された前記情報に基づいて、前記少なくとも一つの軸受パッドに油を供給するための少なくとも一つの給油ユニットによる給油量を調節するよう、制御装置によって少なくとも一つの給油量調節部を制御する給油量調節ステップと、を含む。
上記(20)の構成によれば、回転軸と軸受パッドとの間に入り込んだ気泡と軸振動との間に成立する上記のような関係を踏まえ、給油量を調節して気泡の入り込みを抑制することで、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、回転軸と軸受パッドとの間への気泡の入り込みに起因する軸振動の発生を抑制可能なジャーナル軸受の給油量調節装置、ジャーナル軸受装置、回転機械、及び、ジャーナル軸受の給油量調節方法を提供することができる。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、以下に実施形態として記載されている内容又は図面に記載されている内容は、あくまでも例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、任意に変更することができる。また、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、一実施形態に係る給油量調節装置100とジャーナル軸受10とを備えるジャーナル軸受装置200の模式図であって、ジャーナル軸受10の軸方向断面図である。給油量調節装置100は、ジャーナル軸受10の給油量を調節するための装置であるが、図1では、図示の簡略化のために図示していない。図示はしないが、蒸気タービン、圧縮機等の回転機械は、ジャーナル軸受装置200と、ジャーナル軸受10により支持される回転軸2とを備えて構成される。
一実施形態の説明において、「軸方向」は、ジャーナル軸受10に支持される回転軸2の中心軸線Pの方向であり、「径方向」は回転軸2の半径方向であり、「周方向」は回転軸2の周方向である。なお、「周方向」は、キャリアリング11(上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13)の周方向であってもよいし、サイドプレート17,18の周方向であってもよい。さらに、本実施形態において「上流側」又は「下流側」とは、回転軸2の回転方向における上流側又は下流側のことをいう。
一実施形態において、ジャーナル軸受10は、潤滑方式(給油方式)として直接潤滑方式を採用している。そして、回転軸2の下半領域には、最上流に配置された軸受パッド30(第1軸受パッド)、及び、最下流に配置された軸受パッド32(第2軸受パッド)の2つの軸受パッドが配置されている。従って、ジャーナル軸受10は、直接潤滑式の2パッド軸受である。直接潤滑式の2パッド軸受に給油量調節装置100を適用することで、上半領域のキャリーオーバ油に気泡が入り込んだ場合であっても、軸受パッド30,32への給油量を調節し、回転軸と軸受パッドへの気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。ジャーナル軸受10は、例えば、ティルティングパッド軸受である。
以下、図示されるジャーナル軸受10について例示的に説明するが、本実施形態に係るジャーナル軸受10はこの構成に限定されるものではない。例えば、他の実施形態においては、キャリアリング11の下半領域に3個以上の軸受パッドが取り付けられた構成であってもよい。その場合においても、複数の軸受パッドのうち最上流側に位置する軸受パッドを最上流パッドといい、最下流側に位置する軸受パッドを最下流パッドという。また、キャリアリング11の下半領域に1個の軸受パッドが取り付けられた構成であってもよい。この場合には、最上流側に位置する軸受パッドと最下流側に位置する軸受パッドとが一致する。
幾つかの実施形態において、ジャーナル軸受10は、キャリアリング11と、複数の軸受パッド30,32(軸受パッド32については図1では図示しない)と、一対のサイドプレート17,18とを備える。複数の軸受パッド30,32は、キャリアリング11の下半領域の内周側に設けられ、回転軸2を下方から支持するように構成されたものである。一対のサイドプレート17,18は、回転軸2の軸方向における複数の軸受パッド30,32の両側に設けられたものである。
キャリアリング11は、軸受ケーシング(図示しない)に支持されており、上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13を含んで構成される。上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13は、それぞれ、軸方向に直交する断面が半円弧状となるような内周面及び外周面を有している。これらのうち、下半部キャリアリング13(キャリアリング11)には、軸受パッド30,32が支持されている。
なお、図示される例では、キャリアリング11が上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13に分割された構成を示しているが、キャリアリング11は一体構造であってもよいし、3以上に分割された構成であってもよい。また、図示されない他の構成のキャリアリング11においても、中心軸線Pを通る水平面より上方側の領域を上方領域といい、下方側の領域を下方領域という。
キャリアリング11の軸方向の両端側には、回転軸2の外周に沿って、一対のサイドプレート17,18が配置されている。サイドプレート17,18は、円板状に形成されており、中央に回転軸2が貫通する穴が形成されている。これらのサイドプレート17,18によって、図2等を参照しながら後記する給油ユニット25,26,27から供給される油の外部への漏出を適度に抑制することができる。
上半部キャリアリング12には、主として回転軸2の跳ね上がりを上方から押さえ込むために、内周面にガイドメタル(半円環軸受部)20,21が取り付けられている。具体的には、上半部キャリアリング12(キャリアリング11の上半領域)の軸方向の両端側で且つサイドプレート17,18よりも軸方向において内側に、一対のガイドメタル20,21が取り付けられている。また、ガイドメタル20,21は、回転軸2の外周面のうち上側領域を覆うように設けられている。ガイドメタル20,21は、半円形状に形成されている。
このように、上半部キャリアリング12の内周側にガイドメタル20,21が設けられることで、ガイドメタル20,21によって回転軸2の跳ね上がりを押さえ込むことができる。これにより、回転軸2の跳ね上がりによる部品の破損等を防止することができる。なお、キャリアリング11が、上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13に分割された構造ではなく一体構造である場合、又は3以上に分割された構造である場合、ガイドメタル20,21は、キャリアリング11の上半領域に設けられていればよい。
ガイドメタル20,21は、サイドプレート17,18から離間して配置されている。また、サイドプレート17,18において、回転軸2の近傍は窪んでいる。そして、回転軸2と、上半部キャリアリング12(キャリアリング11)と、サイドプレート17(一対のサイドプレート17,18のうちの一方)と、ガイドメタル21とにより囲まれることで、空間43が形成されている。なお、この空間43には、内圧センサ106(図1では図示しない)が配置されている。内圧センサ106については、図2、図3等を参照しながら後記する。
サイドプレート17,18の内周面と回転軸2の外周面との間には、隙間(サイドプレート隙間)42が設けられている。また、ガイドメタル20,21の内周面と回転軸2の外周面との間にも、同様に隙間(ガイドメタル隙間)44が設けられている。これらの隙間42,44が設けられていることで、サイドプレート17,18及びガイドメタル20,21と、回転軸2との接触を防止することができる。
サイドプレート18の外側には、ジャーナル軸受10によって支持される回転軸2の振動(軸振動)の大きさを検出するためのギャップセンサ104(振動検出センサ)が配置されている。なお、ギャップセンサ104は、後記する空間43の内部に配置されていてもよい。ギャップセンサ104を使用した軸振動の大きさの検出の具体的方法としては、例えば、JIS B 0910:1999、ISO 7919−1:1996等で規定される方法を適用することができる。このギャップセンサ104は、図1において破線で示す電気信号線105により、後記する制御装置101に接続されている。ギャップセンサ104による検出値(軸振動の大きさ)に基づく制御装置101による制御は、図4等を参照しながら後記する。
図2は、図1のA−A線断面図である。下半部キャリアリング13の内周面には、軸受パッド30,32が下半部キャリアリング13の内周面に沿って設けられる。そして、回転軸2は、軸受パッド30,32により下方から支えられている。軸受パッド30,32は、それぞれ、ピボット(図示しない)によって揺動可能に、下半部キャリアリング13の内周面に支持される。
なお、キャリアリング11が、上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13に分割された構造ではなく一体構造である場合、あるいは3以上に分割された構造である場合、軸受パッド30,32は、キャリアリング11の下半領域に設けられていればよい。
下半部キャリアリング13には、3つの給油ユニット25,26,27が設けられている。給油ユニット25,26,27は、軸受パッド30,32に給油を行うためのもであり、それぞれ給油ノズル25a,26a,27aを備えている。なお、給油ユニットは、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
回転軸2が図2において矢印Sに示すように時計回りに回転する場合、回転軸2の回転方向において、上流側から、給油ユニット25、給油ユニット26及び給油ユニット27の順でこれらが配置される。これらの給油ユニット25,26,27のうち、給油ユニット25は、最上流に配置された軸受パッド30よりも上流側に配置されている。また、給油ユニット26は、最上流の軸受パッド30の下流側、かつ、最下流に配置された軸受パッド32の上流側に配置されている。さらに、給油ユニット27は、最下流に配置された軸受パッド32の下流側に配置されている。
給油ユニット25は、上記のように、軸受パッド30の上流側に配置されている。そのため、給油ユニット25の給油ノズル25aを通じて油(潤滑油)が噴出されると、噴出された油は軸受パッド30に流れる。そして、回転軸2が矢印Sの方向に回転していることで、油は、回転軸2と軸受パッド30との間に入り込む。なお、回転軸2と軸受パッド30との間に入り込み、軸受パッド30の下流側から出てきた油は、一部は落下し、残部は回転軸2と軸受パッド32との間に配置込む。
また、給油ユニット26は、上記のように、軸受パッド30の下流側、かつ、軸受パッド32の上流側に配置されている。そのため、給油ユニット26の給油ノズル26aを通じて油が噴出されると、噴出された油は軸受パッド30の下流側及び軸受パッド32の上流側に流れる。そして、回転軸2が矢印Sの方向に回転していることで、油は、回転軸2と軸受パッド32との間に入り込む。なお、回転軸2と軸受パッド32との間には、上記のように、上流側の軸受パッド30から出てきた油(即ち、持ち込みの油)も入り込む。
給油ユニット27は、上記のように、軸受パッド32の下流側に配置されている。そのため、給油ユニット27の給油ノズル27aを通じて油が噴出されると、噴出された油は軸受パッド32の下流側に流れる。また、これとともに、噴出された油は回転軸2の表面に付着する。そして、回転軸2が矢印Sの方向に回転していることで、油は、回転軸2の上半領域に付着して軸受パッド30に到達する。なお、給油ユニット27により供給された油、及び、軸受パッド32から出てきた油であって、回転軸2の上半領域を通って軸受パッド30に到達する油のことを、キャリーオーバ油という。
軸受パッド30,32は、上記のように、回転軸2の下半領域に配置されている。そして、軸受パッド30,32のうちの回転軸2の回転方向において最上流側に配置された軸受パッド30(第1軸受パッド)には、給油ユニット25(第1給油ユニット)により、給油される。また、軸受パッド30からみて下流側に配置された軸受パッド32(第2軸受パッド)には、給油ユニット26(第2給油ユニット)により給油される。そして、一実施形態では、後記する制御装置101は、少なくとも、給油ユニット25による軸受パッド30への給油量を制御するようになっている。
このように、最も上流側に配置された軸受パッド30への給油量を調節することで、キャリーオーバ油の影響を特に受け易い軸受パッド30への給油量を調節することができる。これにより、最も上流側に配置された軸受パッド30と回転軸2との間への気泡の入り込みを抑制し、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
給油ユニット25,26,27は、それぞれオイルライン122,123,124に接続される。オイルライン122,123,124は、ポンプ121を介して、油を貯留するオイルタンク120に接続される。そして、オイルタンク120に貯留された油が、オイルライン122,123,124のうちの少なくとも一つを通流することで、給油ユニット25,26,27の給油ノズル25a,26a,27aから噴出される。具体的には、給油ユニット25による給油は、オイルライン122を通流した油により行われる。また、給油ユニット26による給油は、オイルライン122と、オイルライン122から分岐したオイルライン123とを通流した油により行われる。さらに、給油ユニット27による給油は、オイルライン122と、オイルライン122から分岐したオイルライン123と、オイルライン123から分岐したオイルライン124とを通流することで行われる。
オイルライン122の途中には、軸受パッド30,32に油を供給するための給油ユニット25,26,27による給油量を調節するためのバルブ102(給油量調節部)が設けられている。バルブ102は、モータ103の駆動により開度調節可能になっている。バルブ102により給油量を調節することで、簡便な設備で給油量を調節することができる。そして、バルブ102の開度が調節されることで、オイルライン122,123,124を通流する油の量が調節され、給油ユニット25,26,27による給油量が調節されるようになっている。
モータ103の駆動制御(即ち、給油ユニット25,26,27による給油量の調節)は、制御装置101により行われる。制御装置101とモータ103とは、図2において破線矢印で示す電気信号線108により接続されている。そして、制御装置101からの電気信号がモータ103に伝達されることで、モータ103の駆動が行われ、給油量が調節されるようになっている。
制御装置101による給油量の調節は、電気信号線105を介して接続されたギャップセンサ104(図1参照)、及び、電気信号線107を介して接続された内圧センサ1に06により検出された値に基づいて行われるようになっている。具体的な制御の内容については、図4等を参照しながら後記する。
ここで、制御装置101に接続される内圧センサ106の位置について説明する。
図3は、図1のB−B線断面図である。内圧センサ106は、サイドプレート17,18とキャリアリング11とにより構成される筐体の内部の圧力(即ち筐体の内圧)を検出するものである。具体的には、内圧センサ106は、上記のように、回転軸2と、上半部キャリアリング12と、サイドプレート17と、ガイドメタル21とにより囲まれて形成された空間43に配置されている。空間43に内圧センサ106が配置されていることで、回転軸2の回転の妨げとならない位置に内圧センサ106を配置することができる。なお、軸受パッド30,32は、この筐体の内部に設けられている。
また、内圧センサ106は、回転軸2の下半領域に配置された軸受パッド30,32のうち、回転軸2の回転方向において最上流側に配置された軸受パッド30(第1軸受パッド、図3において二点鎖線で図示)の上流側に配置されている。内圧センサ106が軸受パッド30の上流側に配置されていることで、給油量が低下した場合に、ロータ自重等を支持するためにより多くの油を軸受パッド30,32に引き込もうとした際の軸受内の圧力低下を検出することができる。中でも、軸受パッド32は軸受パッド30からのキャリーオーバ油が流入するため油が不足しにくいが、軸受パッド30では給油量の低下による影響が大きい。そのため、軸受パッド30の上流側の圧力に基づいて給油量を調節することで、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
ただし、内圧センサ106は、軸受パッド30(第1軸受パッド)と軸受パッド32(第2軸受パッド)との間に配置されることもできる。これにより、軸受パッド30と軸受パッド32との間における既存の空間に内圧センサ106を配置することができ、空間の有効活用を図ることができる。
図4は、一実施形態に係る給油量調節装置100に備えられる制御装置101の構成を示すブロック図である。制御装置101は、ギャップセンサ104及び内圧センサ106(いずれか一方のみでもよい)によって検出された振動の大きさ及び内圧(いずれか一方のみでもよい)に基づき、給油ユニット25,26,27による給油量を調節するようにバルブ102を制御するためのものである。
制御装置101は、インターフェイス(I/F)101aと、振動取得部101bと、内圧取得部101cと、条件判定部101dと、PID制御部101eとを備える。
インターフェイス101aは、上記のギャップセンサ104及び内圧センサ16に接続される電気信号線105,107と繋がるものである。
振動取得部101bは、ギャップセンサ104により検出された軸振動の大きさをインターフェイス101aを介して取得し、後記する条件判定部101dに伝達するものである。また、図示はしないが、振動取得部101bは、回転軸2の回転周波数以下の周波数を抽出するローパスフィルタを有している。そして、振動取得部101bは、当該ローパスフィルタによって抽出された回転軸2の回転周波数より低い任意の周波数以下の振動レベルを、回転軸2の軸振動として条件判定部101d及びPID制御部101eに送信するようになっている。従って、振動取得部101bを備える制御装置101では、ローパスフィルタによって抽出された回転軸2の回転周波数より低い任意の周波数以下の振動レベルに基づきバルブ102の開度が調節されるようになっている。
回転軸2の回転周波数以下の周波数を抽出するローパスフィルタを有することで、回転軸2の固有周波数を除去することができる。このため、回転軸2と軸受パッド30,32との間に入り込んだ気泡に由来する非同期成分による軸振動を精度良く検出することができる。この結果、給油量を適切に調節し、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
内圧取得部101cは、内圧センサ16により検出された内圧をインターフェイス101aを介して取得し、後記する条件判定部101dに伝達するものである。
条件判定部101dは、取得された軸振動の大きさ及び内圧(ギャップセンサ104及び内圧センサ106によって検出された情報)に基づいて、給油量調節の必要性を判定するものである。
PID制御部101e(フィードバック制御部)は、条件判定部101dにより給油量を調節する必要があると判定された場合に、軸振動の大きさ又は内圧のうちの少なくとも一方の情報(ギャップセンサ104及び内圧センサ106によって検出された情報)に基づいて給油量を調節するものである。PID制御部101eによる給油量の調節は、PID制御部101eがバルブ102(図2参照)の開度をPID制御(フィードバック制御)することで行われる。
具体的には、PID制御部101eは、ギャップセンサ104又は内圧センサ106のうちの少なくとも一つのセンサにより検出された情報に基づいて、これらのセンサにより検出される値が目標値に近づくようにバルブ102を制御する。バルブ102の開度をフィードバック制御することで、振動又は内圧のうちの少なくとも一方が目標値から外れてしまった場合(例えば、振動が大き過ぎる、内圧が小さ過ぎる等)、センサにより検出された値に基づいて目標値に近づけることができる。
なお、制御装置101は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Didk Drive)、制御回路等を備え、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
図5は、一実施形態に係る給油量調節装置100に備えられる制御装置101のブロック図である。また、図6は、軸振動に基づいて給油量調節を行う際のフローチャートである。以下、図5及び図6を参照しながら、軸振動の大きさ及び内圧に基づいて給油量を調節する際の流れについて説明する。回転軸2(図1参照)の回転中、振動取得部101b及び内圧取得部101cは、それぞれ、インターフェイス101a(図4参照)を通じ、回転軸2の軸振動の大きさ及び空間43(図1参照)の内圧を取得している(ステップS1、S2、状態検出ステップ)。そして、取得された軸振動の大きさ及び内圧に関する情報は、条件判定部101dに入力される。
なお、取得された軸振動の大きさに関する情報は、上記のように条件判定部101dに入力されるほか、電気信号線(図示しない)を通じてPID制御部101eにも向かう。しかし、条件判定部101dは、給油量を調節すべきではないと判定しているときには(詳細は後記する)、PID制御部101eに向かう情報を無効化する信号(無効化信号)を当該情報に送信している。従って、この時点では、軸振動の大きさに関する情報は、PID制御部101eに向かうものの、PID制御部101eには入力されない。そして、条件判定部101dは、給油量を調節すべきと判定したときに無効化信号の送信を停止し、これにより、軸振動の大きさに関する情報がPID制御部101eに入力される。
条件判定部101dは、入力された軸振動の大きさ及び内圧が給油量を調節する条件を満たしているか否かを判定する。具体的には、条件判定部101dは、軸振動の大きさが予め定められた振動閾値以上(第1判定条件)、かつ、内圧が予め定められた内圧閾値以下(第2判定条件)の場合に、給油量を調節すべきであると判定する(ステップS3)。これらの条件に基づいて判定することで、軸振動の大きさが無視できない程度となった場合、又は、筐体の内圧が低過ぎる結果気泡が回転軸2と軸受パッド30,32との間に入り込み易くなった場合に、回転軸2と軸受パッド30,32との間への気泡の入り込みを抑制することができる。これにより、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。なお、ここでは双方の条件が満たされたときに給油量が調節されるようにしたが、いずれか一方のみの条件が満たされたときに給油量が調節されるようにしてもよい。
特に、第1判定条件として、ギャップセンサ104により検出された軸振動の大きさが許容範囲を逸脱した(即ち振動閾値以上)ときに、ギャップセンサ104又は内圧センサ106のうちの少なくとも一つのセンサにより検出された情報に基づいて、バルブ102を調節し、軸受パッド30,32への給油量が調節される(詳細は後記するが、給油量を増加させるように、バルブ102が調節される)。そして、軸振動の大きさが許容範囲を逸脱したときに給油量を増加させることで、軸振動が大きくなって許容範囲を逸脱した場合に給油量を増加させて、回転軸2と軸受パッド30,32との間に気泡が入り込むことを抑制することができる。これにより、回転軸2と軸受パッド30,32との間での圧力分布の揺らぎを抑制し、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
第1判定条件を構成する「振動閾値」とは、許容可能な振動の大きさのことをいう。振動閾値は、ジャーナル軸受10の用途等に応じて、管理者、使用者等が任意に決定をすることができる。
また、第2判定条件として、内圧センサ106により検出された内圧に基づきバルブ102を調節、給油量を調節することで、内圧が変化して回転軸2と軸受パッド30,32との間に気泡が入り込み易くなった場合に、給油量の調節を行うことができる。即ち、筐体の内圧が変化し、変化した内圧によって外部から筐体への空気の入り込み易さが変化すれば、筐体内部において回転軸2と軸受パッド30,32との間への空気の入り込み易さも変化する。そこで、内圧が変化した場合に給油量の調節を行うことで、回転軸2と軸受パッド30,32との間への気泡の入り込みを抑制し、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができる。
第2判定条件を構成する「内圧閾値」とは、空間43(図1参照)の内圧が内圧閾値以下となったときに空気を空間43に吸い込みやすくなる結果、回転軸2と軸受パッド30との間に気泡が入り込み易くなる内圧のことをいう。圧閾値は、空間43の大きさ、回転軸2及び軸受パッド30の大きさ等に応じて、管理者、使用者等が任意に決定をすることができる。
内圧閾値は、例えば大気圧以上の値に設定することができる。具体的には例えば、内圧閾値が大気圧である場合には、空間43が負圧になって外部の圧力(大気圧)よりも低くなったとき、「内圧閾値以下」との条件が満たされるものとする。内圧閾値が大気圧以上の値に設定されることで、給油量の調節により、油への気泡の入り込みのリスクを効果的に低減することができる。即ち、筐体の内圧が例えば大気圧未満(負圧)となることで空気が筐体の内部に流れ込み易くなるため、回転軸2と軸受パッド30,32との間に気泡が入り込み易くなるが、このような場合に給油量の調節を行うことで、気泡が入り込みにくくすることができる。
条件判定部101dによる条件判定の結果、上記条件を満たし、給油量を調節すべきであると判定された場合(ステップS3でYes)、条件判定部101dは、振動取得部101bからPID制御部101eに向かう、軸振動の大きさに関する情報を有効化する。これにより、軸振動の大きさに関する情報がPID制御部101eに入力される。そして、PID制御部101eは、入力された軸振動の大きさに関する情報に基づき、給油量の調節を行う(ステップS4、給油量調節ステップ)。具体的には、PID制御部101eは、軸振動の大きさを監視しながら給油量を増加するようにバルブ102の開度を調節する。そして、PID制御部101eは、軸振動の大きさが振動閾値よりも小さくなるまで、給油量を増加する。PID制御部101eは、軸振動の大きさが振動閾値よりも小さくなった時点でバルブ102の開度を固定し、給油量が一定に維持される。
なお、条件判定部101dによる条件判定の結果、上記条件を満たさず、給油量を調節すべきはないと判定された場合(ステップS3でNo)、引き続き、軸振動及び内圧を取得する(ステップS1、S2)。また、このとき、条件判定部101dは、PID制御部101eに向かう情報を無効化する信号を当該情報に引き続き送信する。
このフローでは、上記のように、軸振動の大きさが振動閾値以上(第1判定条件)、かつ、内圧が内圧閾値以下(第2判定条件)の場合に、給油量が調節される。具体的には、軸振動の大きさを測定しつつ給油量を増やし(バルブ102(図2参照)の開度を大きくし)、軸振動の大きさが振動閾値よりも小さくなるようにバルブ102の開度が調整される。即ち、内圧が低いと(内圧閾値以下)、上記のように気泡が油に入り込み易い。そこで、給油量を増やすことで、気泡の入り込みを抑制することができる。これにより、内圧が低い場合であっても、気泡の入り込みに伴う軸振動が抑制され、ギャップセンサ104により検出される軸振動が小さくなる。このため、軸振動が大きくなった場合でも、給油量を調節することで、軸振動を抑制することができる。
図7は、一実施形態に係る給油量調節装置100に備えられる制御装置101のブロック図である。また、図8は、内圧に基づいて給油量調節を行う際のフローチャートである。上記の図5及び図6を参照しながら説明した例では、軸振動の大きさに基づいて給油量を調節していた。しかし、以下において図7及び図8を参照しながら説明するように、基準内圧(油量調整の閾値)からの内圧の変動(内圧変動量)に基づいて給油量調節を行うようにすることができる。
回転軸2(図1参照)の回転中、振動取得部101b及び内圧取得部101cは、それぞれ、回転軸2の軸振動の大きさ及び空間43(図1参照)の内圧を取得している(ステップS1、S2)。そして、取得された軸振動の大きさに関する情報は、条件判定部101dに入力される。
一方、内圧取得部101cは、取得された内圧と、基準内圧(油量調整の閾値)との差分(即ち内圧変動量)を算出する。そして、ここで算出された内圧変動量は、内圧に関する情報として、電気信号線(図示しない)を通じてPID制御部101eにも向かう。しかし、条件判定部101dは、給油量を調節すべきではないと判定しているときには(詳細は後記する)、PID制御部101eに向かう情報を無効化する信号(無効化信号)を当該情報に送信している。従って、この時点では、内圧に関する情報は、PID制御部101eに向かうものの、PID制御部101eには入力されない。そして、条件判定部101dは、給油量を調節すべきと判定したときに無効化信号の送信を停止し、これにより、内圧に関する情報がPID制御部101eに入力される。
条件判定部101dは、入力された軸振動の大きさが給油量を調節する条件を満たしているか否かを判定する。具体的には、条件判定部101dは、軸振動の大きさが振動閾値以上の場合には、給油量を調節すべきであるとの判定をする(ステップS5)。ここでいう「振動閾値」とは、上記の図6を参照しながら説明したフローと同じく、許容可能な振動の大きさのことをいう。
条件判定部101dによる条件判定の結果、上記条件を満たし、給油量を調節すべきであると判定された場合(ステップS5でYes)、条件判定部101dは、内圧取得部101cからPID制御部101eに向かう、内圧に関する情報を有効化する。これにより、内圧に関する情報がPID制御部101eに入力される。そして、PID制御部101eは、入力された内圧に関する情報(内圧変動量)に基づき、給油量の調節を行う(ステップS6)。
具体的には、PID制御部101eは、内圧の変動に基づいて給油量の調節を行う。ここで、軸振動が振動閾値以上であるが、その軸振動の増大がジャーナル軸受10に由来する原因以外の原因に基づく場合には、内圧の変動は小さいままと考えられる。そのため、内圧の変動が内圧変動閾値以下である場合には、軸振動の増大はジャーナル軸受10に起因するものではないと考え、給油量の調節は行われない。なお、この場合には、回転軸2の回転が停止される。
また、内圧の変動に基づく給油量調節を行うか否かの判断基準となる「内圧変動閾値」とは、内圧の変動の振れ幅のことであり、その振れ幅が大き過ぎる(内圧変動閾値を超える)場合には、気泡の入り込みが生じ易くなる。従って、軸振動が振動閾値以上であり、かつ、内圧の変動が内圧変動閾値を超える場合には、軸振動の増大は内圧の変動に伴う気泡の入り込みに起因するものと考えられる。そこで、この場合には、給油量の調節が行われる。具体的には、給油量を増加するようにバルブ102に指令が送信される。これにより、軸受パッド30への給油量が増加され、回転軸2と軸受パッド30との間への気泡の入り込みを抑制することができる。
なお、条件判定部101dによる条件判定の結果、上記条件を満たさず、給油量を調節すべきはないと判定された場合(ステップS5でNo)、引き続き、軸振動及び内圧を取得する(ステップS1、S2)。また、このとき、条件判定部101dは、PID制御部101eに向かう情報を無効化する信号(無効化信号)を当該情報に引き続き送信する。
このフローでは、上記のように、軸振動の大きさが振動閾値以上の場合に、内圧変動に基づいて給油量が調節される。具体的には、内圧変動が大きい場合には、空間43への空気の流れ込みが生じ易く、回転軸2と軸受パッド30との間に気泡が入り込み易くなる。そこで、この場合には、給油量を増加させることで、気泡の入り込みを抑制することができる。これにより、気泡の入り込みに伴う軸振動を抑制することができ、ギャップセンサ104により検出される軸振動が小さくなる。このため、軸振動が大きくなった場合でも、給油量を調節することで、軸振動を抑制することができる。
なお、上記の図5〜図8を参照しながら説明した例では、軸振動及び内圧の双方の情報を使用して給油量を調節したが、いずれか一方のみの情報を使用して給油量を調節するようにしてもよい。
図9は、運転状態に応じてPID制御用パラメータを修正する際のブロック図である。上記の図4等に示したPID制御部101eでは、比例ゲイン(Kp)、積分ゲイン(Ki)及び微分ゲイン(Kd)のそれぞれの制御用パラメータは固定されており、図6等に示すフローに先立って予め決定されていた。しかし、制御用パラメータが固定されていると、例えば回転軸2の回転数が異なる場合に、給油量が多過ぎたり少な過ぎたりして、給油を適切に行うことができない可能性がある。また、例えば、軸振動の大きさが目標値Vtargetになるまで長時間がかかる可能性もある。
そこで、図9に示す例では、回転軸2の状態(回転軸2の回転数、回転軸2の負荷の大きさ、及び前記ジャーナル軸受10に対する回転軸2の面圧(いずれか1つ又は2つであってもよい))に応じて、制御用パラメータが変更されている。なお、ここでいう負荷とは、例えば蒸気タービンを回転させる蒸気の量である。回転軸2の状態に応じて制御用パラメータを変更することで、例えば、ジャーナル軸受10を備える蒸気タービンにおいて、蒸気量が変化して回転軸2の回転数が変化したような場合においても、給油量を精度良く決定することができる。
なお、回転軸2の回転数、回転軸2の負荷の大きさ、及び前記ジャーナル軸受10に対する回転軸2の面圧(これらを総称して「第2の情報」という)は、任意のセンサ(第2のセンサ)により検出することができる。そして、第2のセンサが備えられていることで、上記のギャップセンサ104及び内圧センサ106により検出される振動及び内圧のような回転軸2の状態のほか、回転軸2の回転数、回転軸2の負荷の大きさ、回転軸2の面圧のような他の状態を把握することができる。
軸振動の大きさの目標値Vtargetが決定されると、決定された目標値Vtargetとなるように、PID制御部101eはバルブ102の開度を調整する。これにより、軸受パッド30(図1参照)への給油量が調節され、回転軸2と軸受パッド30との間への気泡の入り込みが抑制される。この結果、軸振動の大きさが抑制され、軸振動の大きさが低下して目標値Vtargetに近づく。
次いで、PID制御部101eにおいて決定された給油量と、ジャーナル軸受10の伝達関数101rと、回転軸2の状態とに基づいて、軸振動の大きさの予測値Vestimateが見積もられる。そして、PID制御部101eによるバルブ102の開度調整後(即ち給油量調節の後)、ジャーナル軸受10の回転軸2の振動の大きさの実測値Vmeasureと、上記の予測値Vestimateとがパラメータ修正部101pにおいて比較される。このパラメータ修正部101pは、ギャップセンサ104及び内圧センサ106により検出された情報、及び、第2のセンサにより検出された第2の情報の双方の情報(いずれか一つでもよい)に基づいてPID制御部101eの制御用パラメータを修正するためのものである。
そして、パラメータ修正部101pは、予測値Vestimateと実測値Vmeasureとの偏差が小さくなるように、制御用パラメータを修正する。具体的な修正方法としては、例えば、予め記憶された、偏差と制御用パラメータとの関係を規定したゲインテーブルから、偏差の大きさに対応する制御用パラメータを読み出すようにすることができる。
パラメータ修正部101pにおいて修正された制御用パラメータは、PID制御部101e(フィードバック制御部)に送信される。そして、PID制御部101eは、受信した制御用パラメータに基づいて、自身に記憶された制御用パラメータを修正する。修正後には、PID制御部101eは、修正された制御用パラメータを用いて、バルブ102の開度調整を行う。これにより、軸受パッド30,32に適切な給油を行って、軸振動を抑制することができる。
図10は、回転軸の状態に応じた給油量を学習し、学習した内容に基づいて給油量を決定する制御装置101Bのブロック図である。上記の例では、ギャップセンサ104(図1参照)により検出された軸振動の大きさ等の情報に基づいて給油量のフィードバック制御が行われていた。しかし、給油量は、回転軸2の状態(回転数、負荷、面圧)に応じた給油量を学習して、学習した給油量に基づいて給油量を推測し、推測された給油量となるように調節することもできる。
制御装置101Bは、上記の制御装置101と同じく、インターフェイス101aと、振動取得部101bと、内圧取得部101cと、条件判定部101dと、PID制御部101e(フィードバック制御部)とを備える。なお、PID制御部101eに代えて、任意のフィードバック制御装置を使用することもできる。そして、制御装置101Bは、これらのほかにも、さらに、回転数取得部101fと、負荷取得部101gと、面圧取得部101hと、給油量取得部101jと、回帰式導出部101kと、給油量算出部101mと、バルブ調節部101nと、記録部101qとを備える。
回転数取得部101fは、回転軸2の回転数を取得するものである。回転数取得部101fには、インターフェイス101aを介して、回転数検出センサ(第2のセンサ、図示しない)が接続される。なお、回転数取得部101fにより取得された回転数は、後記する記録部101qに記憶される。
負荷取得部101gは、回転軸2の負荷の大きさを取得するものである。負荷の大きさは、インターフェイス101aを介して、負荷検出センサ(第2のセンサ、図示しない)が接続される。なお、負荷取得部101gにより取得された負荷は、後記する記録部101qに記憶される。
面圧取得部101hは、ジャーナル軸受10に対する回転軸2の面圧を取得するものである。面圧取得部101hには、インターフェイス101aを介して、面圧検出センサ(第2のセンサ、図示しない)が接続される。なお、面圧取得部101hにより取得された面圧は、後記する記録部101qに記憶される。
給油量取得部101jは、給油ユニット25,26,27(図2参照)による軸受パッド30,32(図2参照)への給油量を取得するものである。給油量取得部101jには、インターフェイス101aを介して、流量センサ(図示しない)が接続される。なお、給油量取得部101jにより取得された給油量は、後記する記録部101qに記憶される。
回帰式導出部101kは、上記の軸振動の大きさ、内圧、回転数、負荷の大きさ及び面圧並びに給油量を重回帰分析して、回帰式を導出するものである。この回帰式では、説明変数は軸振動の大きさ、内圧、回転数、負荷の大きさ及び面圧であり、目的変数は給油量である。なお、回帰式導出部101kにより導出された回帰式は、後記する記録部101qに記憶される。
給油量算出部101mは、回帰式導出部101kにより導出された回帰式と、ギャップセンサ104及び内圧センサ106により検出された情報(軸振動の大きさ及び内圧)、及び、上記第2のセンサにより検出された第2の情報(回転数、負荷の大きさ及び面圧)とに基づいて給油量を算出するものである。
バルブ調節部101nは、給油量算出部101mにおいて算出された給油量となるようにバルブ102(図2参照)の開度を調節するものである。
記録部101qは、取得された軸振動の大きさ、内圧、回転数、負荷の大きさ、面圧及び給油量、並びに、導出された回帰式を記憶するものである。
なお、制御装置101Bは、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Didk Drive)、制御回路等を備え、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
図11は、回転軸の状態に応じた給油量を学習し、学習した内容に基づいて給油量を決定する際のフローチャートである。まず、振動取得部101b、内圧取得部101c、回転数取得部101f、負荷取得部101g及び面圧取得部101hは、それぞれ、軸振動の大きさ、内圧、回転数、負荷の大きさ、及び面圧の各情報を取得し、記録部101qに記録する(ステップS11)。また、条件判定部101d及びPID制御部101eは、取得した軸振動の大きさ及び内圧に基づき、図5等に示したフローに沿って給油量を調節する(ステップS12)。そして、給油量取得部101jは、調節された給油量を記録部101qに記録する(ステップS12)。
次いで、回帰式導出部101kは、記録部101qに記録された軸振動の大きさ、内圧、回転数、負荷の大きさ、及び面圧を説明変数とし、給油量を目的変数として、重回帰分析を実行する(ステップS13)。そして、回帰式導出部101kは回帰式を導出し、記録部101qに記録する(ステップS13)。
回帰式が導出された後には、軸振動の大きさ、内圧、回転数、負荷の大きさ、及び面圧の各情報が取得された際(ステップS14)、給油量算出部101mは、これらの情報と回帰式とに基づいて、給油量を算出する(ステップS15)。そして、バルブ調節部101nは、給油量算出部101mによって算出された給油量となるように、バルブ102(図2参照)の開度を調節する(ステップS16)。これにより、学習結果に基づいて、給油量が調節される。そして、一定時間ごと(例えば数秒〜数分ごと)ごとに回帰式を使用し、給油量が調節される。
以上のようにすることで、学習した給油量に基づいて給油量を推測し、推測された給油量となるように給油量を調節することで、回転数の違い、負荷の違い、面圧の違い等の回転軸2の状態が異なる場合の給油量を学習し、給油量の学習結果に基づいて給油量を決定することができる。これにより、回転軸2の状態が変わり、状態側が変わる前の運転条件によっては軸振動が大きくなることがあっても、その軸振動が大きくなる前に給油量を調節することができる。これにより、回転軸2の状態と連動した適切な給油量調節を行うことができる。
また、回帰式を使用した給油量の調節タイミングよりも長い時間ごと(例えば数時間ごと)に、それまでに記録部101qに蓄積された情報に基づき、再度回帰式の導出を行うことができる。そして、再度導出された回帰式に基づいて給油量の算出を行うことで、より正確な給油量で給油を行うことができる。
図12は、他の実施形態に係る給油量調節装置100とジャーナル軸受10とを備えるジャーナル軸受装置201の模式図であって、ジャーナル軸受の軸方向断面図である。上記の図2を参照しながら説明した例では、オイルライン122と、オイルライン122から分岐したオイルライン123,124の合計3系統により、給油が行われていた。そして、オイルライン122,123,124のそれぞれを通流する油は、オイルライン122の最も上流に設けられたバルブ102により一括して調節されていた。従って、バルブ102の調節により、全ての給油ユニット25,26,27による給油量が調節されていた。
しかし、この図12に示す例では、軸受パッド30(第1軸受パッド)の上流に配置された給油ユニット25(第1給油ユニット)による給油量のみが調節されている。一方で、給油ユニット26(第2給油ユニット)による軸受パッド32(第2軸受パッド)への給油量の調整は行われないようになっている。即ち、給油ユニット25に油を供給するオイルライン122(第1オイルライン)は、分岐せずに給油ユニット25に接続されている。
一方で、給油ユニット26に油を供給するオイルライン123(第2オイルライン)は、オイルライン122とは独立して設けられ、給油ユニット26に接続されている。このオイルライン123には、油を供給するポンプ131と、開度を固定したバルブ132とが設けられている。さらに、オイルライン123には、供給する油を貯留するオイルタンク130が接続されている。また、オイルライン123から分岐してオイルライン124が設けられ、オイルライン124には給油ユニット25が設けられている。
そして、給油ユニット25に接続されるオイルライン122には、上記のように、ポンプ121及び開度調節可能なバルブ102が設けられている。一方で、給油ユニット26に接続されるオイルライン123にもポンプ131及びバルブ132が設けられているが、このバルブ132の開度は固定である。そのため、オイルライン122に設けられたバルブ122、及び、オイルライン123に設けられたバルブ132は、オイルライン122を通じた給油ユニット25による給油量を、オイルライン123を通じた給油ユニット25による給油量から独立して調節可能に構成されている。
オイルライン122とオイルライン123とが独立していることで、オイルライン122に接続される給油ユニット25による給油と、オイルライン122から独立したオイルライン123に接続される給油ユニット26による給油とを、お互いの影響なく独立して行うことができる。これにより、給油ユニット25と給油ユニット26とのそれぞれにおいて、精密な給油量制御を行うことができる。また、軸受パッド30,32ごとに給油量を変更することができるため、給油量の削減を図り、圧力損失を小さくすることができる。