JP2019077095A - 積層体及び吸音材 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄くても高い吸音性能、特に1000Hz前後の低周波数での高吸音性を有し、高い断熱性能を持ち、自立性がある、樹脂発泡成形体を基材とする積層体及び該積層体からなる吸音材の提供。【解決手段】繊維集合体を含む面材と、連通空隙を有する樹脂発泡成形体を含む基材とを含む積層体であって、面材は平均繊維径が10μm以下であるメルトブローン繊維と該繊維中に分散され、表面の少なくとも一部で該繊維に溶融接着し、表面の少なくとも一部が該繊維の融点より低い融点を持つ樹脂で形成されているバインダー繊維とを含み、ソリィディティ、単位面積あたりの重量(目付け)が特定の範囲内にあり、基材は樹脂の密度と樹脂発泡粒子の真密度の比、樹脂発泡粒子の真密度と樹脂発泡粒子の嵩密度の比が特定の範囲内にある樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であり、融着した樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有し、空隙率、厚みが特定の範囲内にある積層体。【選択図】図4

Description

本発明は、積層体及び該積層体からなる吸音材に関する。詳細には、特殊形状の発泡樹脂粒子を融合させ成形して得られる樹脂発泡成形体を含む基材と繊維集合体を含む面材とを含む、吸音性能に優れた積層体及び該積層体からなる吸音材に関する。
樹脂発泡材は、従来の中実の樹脂材料や金属材料を代替する材料として、自動車や電子機器の部材、容器の構造材料として使用されている。これらの樹脂発泡材の特長として低密度、高断熱性、緩衝性があり、主にこれらの特性が有効に利用されている。
特に自動車においては、アイドリングストップ後のエンジンの再起動時に省エネルギーの観点からエンジンルームが冷えないように断熱性を持たせるために、断熱材等でエンジンを囲むエンジンカプセル化の動きがある。また、加速騒音を低減することに対して近年要求が高まっており、音を発生するエンジンルーム内の吸音対策が求められ、エンジンを囲うエンジンカプセル化や音を発するポンプ等を囲う動きがある。しかしながら、エンジンルーム内は高温であり、耐熱性が要求されるとともに、非常にスペースが狭く、自立した吸音材でなければ、走行中の振動によりエンジンに密着する場合があり、その場合、吸音材が熱により劣化、溶融するおそれがある。また、音源からの距離が変化するため、初期の吸音性能を維持することが出来ない。更に、エンジンルーム内はエンジンやポンプ等から発する低音や地面からの転がり音のエンジンルーム内反響といった1,000Hz前後の低周波数領域の騒音が多く発せられているが、従来の吸音材では吸音性能が不十分であり、断熱性と吸音性、遮音性をもった樹脂発泡材の利用が期待されている。
樹脂発泡材に期待される特性として断熱性が挙げられるが、一方で吸音性、遮音性に関しては、利用範囲が従来限られたものであった。
その理由としては、吸音性、遮音性は発泡体全般に発現する特性ではなく、気泡構造に依存し、発泡体構造の隣接する気泡が樹脂の隔壁で隔てられた構造である独立気泡構造の発泡体は剛性、機械強度に優れる一方で吸音、遮音性能が非常に低いのに対して、気泡の隔壁が破壊又は消失した連通気泡構造の発泡体は吸音、遮音性能に優れる一方で剛性、機械強度に劣るというように、各性質が互いに相反する傾向があり、それらの両立が困難な点が挙げられる。
連通気泡型の樹脂発泡体の例としてはウレタン樹脂、メラミン樹脂が有り、主な用途は、流体を吸収するスポンジ用途や柔軟性、衝撃吸収性を利用した緩衝材用途である。これらは吸音性に優れるため、無機材料と比較して軽量な吸音材としても広く使用されるが、剛性が低いため、自立した構造材料としてではなく主に他の構造材との積層した積層材として使用されている。
発泡体の主な製造方法としては、ビーズ発泡成形法、押出発泡成形法が有り、ビーズ発泡成形法は、樹脂粒子を予備的に発泡させて得られた粒状の樹脂発泡粒子を所望の形状の成形用型内に充填した後、樹脂発泡粒子の熱膨張による融着により成形品を形成させる機構により成形させる方法であって、押出発泡成形法と比較した利点として様々な複雑な3次元形状の発泡体製品が高生産性で製造可能な点、切削加工で発生する材料ロスの発生が無い点、及び成形用金型が低コストで製造可能な点が挙げられ、種々の構造部材用発泡材の成形方法として特に好ましい方法である。しかしビーズ発泡成形法の発泡成形プロセスは、気泡セルが樹脂膜で隔てられた独立気泡であり、気泡の膨張に起因する発泡粒子間の相互に融着する機構によるため、通常得られる発泡体の気泡構造は基本的に独立気泡構造となるため、吸音性能に劣るのが一般的である。
一方、以下に例示するように、ビーズ発泡成形法により発泡体内に連続した空隙構造、すなわち、連通空隙構造を設けた発泡体及びその製造方法が提案され、吸音性発泡材として使用できることが知られている。
特許文献1には、柱状ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が配向のない不規則な方向に位置させた状態で相互に融着した、連通空隙を持つ成形体が記載されている。
特許文献2には、特定の嵩密度、真密度の関係を満足し、形状パラメーターが特定条件を満足する熱可塑性樹脂発泡粒子に、物理発泡材を含浸させて空隙構造を持つ粒状の樹脂発泡粒子を型内発泡してなる連通した空隙を有する熱可塑性樹脂発泡成形体が記載されており、透水性、吸音性に優れると記載されている。
特許文献3には、樹脂発泡粒子の多数個が隣接する樹脂発泡粒子表面の一部で面接合し、全体容積に対して15〜40%の容積空隙率を有して一体化させた吸音体が記載されている。
特許文献4には、筒状形状のポリオレフィン系樹脂の樹脂発泡粒子の3次元的形状、サイズ、樹脂発泡粒子の嵩密度と真密度の関係を特定範囲とした樹脂発泡粒子を融着一体化することにより、透水性に優れたポリオレフィン系発泡体を生成する技術が開示されている。
特許文献5には、空隙率、及び嵩密度を特定の範囲とした、中空円筒樹脂発泡粒子を型内発泡することにより広い周波数範囲で優れた吸音性を有する成形体が記載されている。
特許文献6には、予備発泡前の発泡剤の樹脂粒子への含浸状態を制御し、鼓形状の熱可塑性樹脂発泡粒子を製造後、型内で発泡融着させ空隙を持つ発泡体を製造する方法が記載されている。
以上の特許文献1〜6のように、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の汎用樹脂について、連通空隙を形成する粒状発泡体を融着させて形成された発泡体の吸音効果発現を示唆する先行文献は存在する。その他の一般的樹脂においては、空隙構造を導入した発泡成形体及びその製造技術は未確立と考えられ、特にエンジンルーム内で用いられる、汎用樹脂以外の樹脂、例えば、耐熱変形性、耐溶剤性、難燃性等の優れた機能を持ついわゆるエンジニアリング樹脂を材料とする連通空隙を形成する樹脂発泡粒子及びそれを融着させて形成された連通空隙を有する発泡成形体の製造技術、発泡成形体の吸音性能は知られていないのが現状であった。
一方、吸音性能の高い防音材として、複数の材料を積層させた積層体が知られており、以下にその例を挙げる。
特許文献7には、微細孔を有する合成樹脂層からなる表皮部が不織布又は連続樹脂発泡体からなる基材の少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接被着されてなる積層体が記載されている。基材としては、連続樹脂発泡体として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の発泡体又は架橋発泡体が挙げられており、吸音性の点で好ましい基材の例として、軟質ウレタンフォームが挙げられている。
特許文献8には、繊維系吸音層、遮音層、発泡樹脂系吸音層の順に積層させた防音材が記載され、繊維系吸音層としては、低融点ポリエステル、細綿ポリステル、ポリエステル、ウール、アクリル、コットン等の繊維類を反毛材としてバインダー繊維でフェルト化した反毛フェルトが挙げられ、繊維系吸音層の存在下に発泡樹脂系吸音層を形成させる際に中間層として、遮音層を形成させると記載されている。
特許文献9に記載の複合吸音材は、木綿繊維を含む不織布層の片面に発泡樹脂層を積層した積層体であり、木綿繊維を含む不織布層の例としては、木綿繊維と熱接着性繊維とを構成繊維とし、これらの繊維が混合してなるもので、木綿繊維以外の繊維としてポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、レーヨン等の化学繊維、麻、羊毛、絹等の天然繊維が挙げられている。
特許文献10に記載されている積層体は、短繊維不織布と合成樹脂フィルムからなる吸音フィルム層とが積層されたものであり、不織布の片面に20〜60μ厚みのポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂のフィルムを積層するものである。
特許文献11には、メルトブローン繊維とメルトブローン繊維に溶融接着しているバインダー繊維とを有した通気抵抗膜を、吸音材の音源側表面上もしくはその上部に積層した吸音性積層部材が記載されている。
特許文献12には、多数の連通孔を有する硬質の合成樹脂板の一方の面に遮音シート、他方の面に多孔シートを積層した防音パネルが記載されており、合成樹脂板の基材樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル系樹脂等であって、耐熱性が低いもの又は熱硬化性樹脂に限られる。
特許文献13に記載されている表皮付き発泡成型体は、通気性を有さないか通気性に乏しい素材からなる表皮材又は外面側が織布、不織布からなる表皮材を金型内に装着後、金型内に熱可塑性樹脂発泡体からなる粒子、チップ状物、粉砕物を充填し、該発泡体を融着させるとともに発泡体と表皮材とを融着一体化させる方法により得られる積層体である。
特開平3−224727号公報 特開平7−137063号公報 特開平7−168577号公報 特開平8−108441号公報 特開平10−329220号公報 特開2000−302909号公報 特開2008−146001号公報 特開2009−226675号公報 実案3186731号公報 特開2015−174398号公報 特開2009−57663号公報 特開平10−183811号公報 特開平11−207759号公報
特許文献1に記載の成形体は、樹脂発泡粒子の形状が細長く、金型内に発泡粒子を充填する際に充填不良を引き起こし易い点、成形体の空隙率と成形体の融着強度のバランスを取りにくい点等の問題が有り、実用化することは難しかった。
特許文献2に例示されている発泡体は、エチレンプロピレンランダムポリマー及び低密度ポリエチレンの中空及び十字型断面の粒状発泡体により空隙を形成させた発泡体であり、空隙構造の吸音材だけでは吸音性能としては不十分である。
特許文献3に記載の発泡体は、樹脂発泡粒子の表面に該粒子の軟化温度より低い温度で熱接着し得る接着用樹脂を添着することにより製造されるが、樹脂発泡粒子に対して熱接着性樹脂を添着させる工程が必要となり生産性が低下するほか、樹脂発泡粒子間に空隙をもたせるため、樹脂発泡粒子同士の融着面の面積が限られるため、強度と空隙率のバランスにおいて十分でなかった。また、吸音性能を得るための発泡体の構造は示されていない。
特許文献4には吸音材としての構造と性能の関係に関する開示はない。
特許文献5に記載の成型体の吸音性能は不十分であり、成形体の厚みを必要とするほか、機械強度等、物性についても不十分である。
特許文献6の発泡体は、樹脂発泡粒子の形状が鼓形に限られるため発泡成形体の空隙の構造に制限が大きく、発泡剤の樹脂発泡粒子への含浸状態の制御が難しい欠点が有った。
以上から、特許文献1〜6に記載の発泡体の微細構造と吸音性能の関係は不十分であり、特に連通した空隙の構造の特定と空隙を形成する発泡粒子の構造としてどのような形状が適するかについて開示されていない。
また、特許文献7に記載の発泡体の構造は微細孔のみで、吸音性能としては不十分であった。用途としても車両用内装として貼り付け材が提案されており、吸音性を主目的としておらず、吸音性能が不十分な発泡体も多く含まれている。
特許文献8は、基材層として選択可能な樹脂が限られるとともに、注型反応硬化を用いた製法によるため、生産性は低いと考えられる。
特許文献9は、基材となる発泡樹脂層として発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンが記載されているが、発泡体には吸音性能がなく、軽量化を目的としているため、複合体としての吸音性能も不十分であった。
特許文献10では、振動を利用するため、使い方や設置のされ方で吸音性能が大きく変化し、安定しない。
特許文献11に記載の吸音材としては、フェルト、ウレタンが用いられており、吸音性能は、高周波数帯の性能は良いが、低周波数帯での性能は不十分であった。
特許文献12の多孔シートは合成樹脂板の表面保護のため不織布が積層されることが記載されているが、吸音効果を想定したものではなく、具体的例示はない。また遮音シートは樹脂シートであり、不織布ではない。したがって、多数の連通孔を有する硬質合成樹脂板を基材とする積層体の吸音効果については、不十分である。
特許文献13は、粒子の形状を選ぶ事によって空間率の高い状態とする事により型内成形を可能とするものであって、表皮材として外面側が不織布からなる表皮材が記載されているが、連通孔を有する熱可塑性発泡体と不織布の積層体については何ら記載されておらず、具体的例示はポリプロピレン系熱可塑性エラストマー等の樹脂シートのみである事からも積層による吸音効果は不十分である。
また、近年、吸音性能、特に自動車のエンジンルーム等で要求されている1000Hz前後の低周波数領域で更に優れる薄い構造体が求められているのが現状である。
本発明が解決しようとする課題は、薄くても高い吸音性能、特に1000Hz前後の低周波数での高吸音性を有し、高い断熱性能を持ち、自立性がある、樹脂発泡成形体を基材とする積層体及び該積層体からなる吸音材を提供することである。
本発明者は、課題解決のため鋭意検討した結果、驚くべきことに特定形状を有する樹脂発泡粒子を加熱融着させるプロセスで形成された特定構造の連通空隙を有する新規な樹脂発泡成形体を含む基材と、特定の面材とを含む事により、従来不可能であった薄い構造体であっても高吸音性能を示すことを見出した。特に、連通空隙を有する樹脂発泡成形体だけでは中、高周波数領域しか吸音性能が発現しないが、特定の面材を含むことにより、自動車のエンジンルームで特に要求されている、1000Hz前後の低周波数領域に厚みを大きく変えずに吸音性能をシフトすることを見出した。更には、特定範囲の表面張力を持つ熱可塑性樹脂を原料樹脂として選択することにより、機械強度、耐熱性、耐熱変形性、難燃性、耐溶剤性、剛性から選ばれる性能と一層高度な吸音性能を併せ持った自立型の積層吸音構造材となり得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
繊維集合体を含む面材(I)と、
連通空隙を有する樹脂発泡成形体を含む基材(II)とを含む積層体であって、
前記繊維集合体は、平均繊維径が10μm以下であるメルトブローン繊維と、前記メルトブローン繊維中に分散され、表面の少なくとも一部で前記メルトブローン繊維に溶融接着し、前記表面の少なくとも一部が前記メルトブローン繊維の融点より低い融点を持つ樹脂で形成されているバインダー繊維とを含み、ソリィディティが5%以上50%未満で、単位面積あたりの重量(目付け)が50〜1500g/mであり、
前記樹脂発泡成形体は、樹脂を含む樹脂発泡粒子であって、前記樹脂の密度ρと前記樹脂発泡粒子の真密度ρとの比ρ/ρが2〜20であり、前記樹脂発泡粒子の真密度ρと前記樹脂発泡粒子の嵩密度ρとの比ρ/ρが1.5〜4.0である前記樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であり、融着した前記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有し、空隙率が15〜80%であり、
厚みが5〜80mmであることを特徴とする、積層体。
[2]
前記樹脂発泡粒子が凹外形部を有する樹脂発泡体粒子を含む、[1]に記載の積層体。
[3]
前記樹脂発泡粒子の平均粒子径が1.0〜4.0mmである、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]
前記樹脂発泡成形体が、20℃における表面張力が37〜60mN/mの熱可塑性樹脂を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]
前記面材(I)の厚みが0.1〜5.0mmである、[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]
前記面材(I)の通気度が0.1〜25cc/(cm・sec)である、[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]
前記メルトブローン繊維は、180℃以上の融点を有するポリエステル系樹脂又はポリアミド樹脂の繊維を含み、
前記バインダー繊維は、少なくとも一部が、融点が90℃以上180℃未満であるステープルファイバーである、[1]〜[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]
前記バインダー繊維は、単位面積あたりの重量が1〜40g/mである、[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]
前記バインダー繊維は、芯鞘構造を有し、鞘部分のみが溶融する、[1]〜[8]のいずれかに記載の積層体。
[10]
自立型防音材である、[1]〜[9]のいずれかに記載の積層体。
[11]
[1]〜[10]のいずれかに記載の積層体からなることを特徴とする、吸音材。
本発明によれば、薄くても高い吸音性能、特に1000Hz前後の低周波数での高吸音性を有し、高い断熱性能を持ち、自立性がある、樹脂発泡成形体を基材とする積層体及び該積層体からなる吸音材を提供することができる。
本実施形態の積層体に用いる樹脂発泡粒子の断面図の一例を示す図である。 本実施形態の積層体に用いる樹脂発泡粒子の斜視図である。 実施例1〜18で用いた異形押し出しダイの吐出口形状、及び得られた樹脂発泡粒子の凹外形部を示す断面図を示す図である。 本実施形態の積層体の周波数と垂直入射吸音率との関係を示す図である。 本実施形態の比較例の積層体の周波数と垂直入射吸音率との関係を示す図である。
[積層体]
本実施形態の積層体は、繊維集合体を含む面材(I)と、連通空隙を有する樹脂発泡成形体を含む基材(II)とを含む積層体であって、前記繊維集合体は、平均繊維径が10μm以下であるメルトブローン繊維と、前記メルトブローン繊維中に分散され、表面の少なくとも一部で前記メルトブローン繊維に溶融接着し、前記表面の少なくとも一部が前記メルトブローン繊維の融点より低い融点を持つ樹脂で形成されているバインダー繊維とを含み、ソリィディティが5%以上50%未満で、単位面積あたりの重量(目付け)が50〜1500g/mであり、前記樹脂発泡成形体は、樹脂を含む樹脂発泡粒子であって、前記樹脂の密度ρと前記樹脂発泡粒子の真密度ρとの比ρ/ρが2〜20であり、前記樹脂発泡粒子の真密度ρと前記樹脂発泡粒子の嵩密度ρとの比ρ/ρが1.5〜4.0である前記樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であり、融着した前記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有し、空隙率が15〜80%であり、厚みが5〜80mmであることを特徴とする、積層体である。
本実施形態の積層体は、面材(I)、基材(II)以外にも、ガスバリア層、帯電防止層、表面硬化層、電磁遮蔽層、滑剤層、導電性層、誘電体層、電気絶縁層、防曇層、磁性体層、印刷層、加飾層等の他の層を含んでいてもよい。また、基材(II)に対して面材(I)の反対面に、意匠性を付与するために最表面に鏡面やシボ面をもつ樹脂層を設けてもよい。中でも、吸音性能に一層優れる観点から、面材(I)と、基材(II)とのみからなることが好ましい。
本実施形態の積層体の厚みは、吸音性能、剛性、強度と軽量性のバランスに優れる観点から、5〜80mmであり、10〜50mmであることが好ましく、より好ましくは12〜30mmである。
(基材(II))
本実施形態の積層体を形成する、連通空隙を有する樹脂発泡成形体を含む基材(II)について以下に説明する。上記連通空隙を有する樹脂発泡成形体は、下記のように樹脂発泡粒子を融合成形する事により得られる樹脂発泡成形体であることが好ましい。
上記基材(II)は、上記樹脂発泡成形体を含む。中でも、上記樹脂発泡成形体のみからなることが好ましい。上記基材(II)は、上記樹脂発泡成形体以外に、無機又は有機の粒子、難燃剤、安定剤等の添加剤を含む樹脂層を含んでいてもよい。
上記基材(II)の厚みは、吸音性能、剛性、強度と軽量性のバランスに優れる観点から、2〜79.9mmであることが好ましく、より好ましくは3〜49.9mm、更に好ましくは5〜29.9mmである。
−樹脂発泡粒子−
上記樹脂発泡粒子は、凹外形部を有する樹脂発泡粒子(少なくとも一方の方向から見た外形において、凹形状部を有する樹脂発泡粒子)であることが好ましい。
なお、本明細書において凹外形部を有するとは、樹脂発泡粒子の正射影像が凹図形となる正射影像が得られる方向が存在することを意味する。また、本明細書において凹図形とは、凹図形となる正射影像図形の外表面上の2点間を結んだ線分の少なくとも一部(好ましくは全線分)が樹脂発泡粒子の外部領域を通る線分となる2点を選ぶことが可能であることを言う。凹図形の例を図1に示す。
また、上記凹外形部は、発泡時に形成される発泡気泡と異なる構造である。
上記凹外形部は、一個でも複数個でも良い。
上記凹外形部は、上記樹脂発泡粒子の表面を連結する一個又は複数個の貫通孔であっても良いし、粒子を貫通しない一個又は複数個の凹部であっても良いし、一個又は複数個の貫通孔及び一個又は複数個の凹部が混在していても良い。ここで、貫通孔とは、樹脂発泡粒子外表面に形成された2つの穴を結ぶ空洞であってよく、該空洞が映る正射影像において、該空洞が樹脂発泡粒子に囲まれている正射影像(空洞が樹脂発泡粒子内に孤立した空洞を形成する正射影像)が得られる構造としてよい。
上記樹脂発泡粒子において、上記凹部としては、凹部が確認できる正射影像において、上記樹脂発泡粒子が占める領域に対する、該凹部に少なくとも2点以上で外接する直線と樹脂発泡粒子の外表面とで囲まれた領域Aの割合(領域A/樹脂発泡粒子が占める領域)が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。中でも、凹部の最深部を含む正射影像において、上記範囲を満たすことが好ましい。ここで、凹部の最深部は、凹部に少なくとも2点以上で外接する直線の垂線の凹部外表面との交点までの距離が最も長くなる部分としてもよい。
凹外形部が貫通孔の場合は、樹脂発泡粒子の貫通孔が確認できる正射影像において、貫通孔の面積が、樹脂発泡粒子の正射影像の全面積に対して、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。中でも、樹脂発泡粒子の貫通孔の面積が最も大きくなる正射影像において、上記範囲を満たすことが好ましい。また、上記貫通孔は、貫通する空洞形状が確認できる断面において、該断面上の樹脂発泡粒子の全面積に対して、空洞形状の面積が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。上記貫通孔は、空洞形状の面積が上記を満たす断面が少なくとも一面以上あることが好ましく、全断面で上記範囲を満たすことがより好ましい。
上記凹外形部が、上記の凹部の条件及び/又は上記貫通孔の条件を満足するように樹脂発泡粒子の形状を選択することにより、融着成形後の樹脂発泡成形体の連通空隙(連続する空隙、連通する空隙)を良好に形成させることができる。
上記樹脂発泡粒子の凹外形部は貫通孔であっても貫通孔でなくとも良いが、樹脂発泡粒子は凹部を有する形状であることが特に好ましい。凹部を有する形状をとることにより従来の樹脂発泡粒子にはなかった充填状態が有られ、成形後に得られる樹脂発泡成形体の連通空隙の構造を吸音性能、機械的強度の両方に特に優れたバランスを実現することができる。
上記凹部を有する形状として特に優れた形状は、樹脂発泡粒子に溝状凹部を設けた構造が挙げられ、樹脂発泡成形体製造時に樹脂発泡粒子間を熱融着させる際に溝状凹部が隣接する樹脂発泡粒子がかみ合った充填状態となり接合されることにより、樹脂発泡粒子間の接合面積が大きく強度の高い樹脂発泡成形体を形成すると同時に、隣接する樹脂発泡粒子の溝が連結された形態で接合される場合に樹脂発泡粒子間にわたる空隙、すなわち連通空隙が形成される。
上記溝状凹部としては、例えば、中空の略円の一部を切り取った形状(C形状、U形状等)の断面(図1)を重ねた形状(図2(a)(b))、中空の略多角形(三角形、四角形等)の一部を切り取った断面(図1)を重ねた形状等が挙げられる。ここで、上記中空の略円及び中空の略多角形における中空とは、略円であってもよいし、略多角形であってもよいが、中空を囲む形状と同一形状であることが好ましい。また、上記中空の形状の中心と、上記中空を囲む形状の中心とが重なる形状(例えば、同心円等)ことが好ましい。
上記凹部の例としては、例えば、一定の厚みを持つ円盤形状を湾曲させた鞍状の形状、円盤を面外方向に湾曲又は折り曲げて形成される形状、円筒状の外側面に単一又は複数の凹部を設けた構造等が挙げられる。粒子の形状のうち、製造の容易性が有り、生産性に優れ、形状を制御し易い点で特に好ましい粒子形状の例として、円柱からその外径より小さい外径を有する共通の軸を持つ同じ高さの円柱を切除した円筒の、軸方向から見て一定の角度以内の部分を切り出し切除した形状(図2)等が挙げられる。以下ではこの形状をC型断面部分円筒状と呼び、この形状をもとに小変形させた実質的に同形状の形状であっても樹脂発泡成形体に同等の空隙を形成させることが可能であり、上記条件を満足すれば本発明の範囲内として利用可能である。図2に、切り出し切除する部分の大きさが異なるC型断面部分円筒状の好ましい例を挙げる。
上記凹部は、樹脂発泡粒子の特定の一方向に対して断面を連続して形成した場合に、同じ形状であることが好ましい。例えば、図2に示すように、樹脂発泡粒子の一方向(図2の上下方向、押出方向)に対する断面における凹部の形状と、該一方向にずらして形成した異なる断面における凹部形状とが同じであることが好ましい。
上記樹脂発泡粒子が凹外形部を持つことは光学顕微鏡により樹脂発泡粒子の透過画像を粒子の観察方向を変えながら観察し判定することにより確認することができる。
上記樹脂発泡粒子において、樹脂発泡粒子に含まれる樹脂の密度ρと樹脂発泡粒子の真密度ρとの比ρ/ρが2〜20であることが必要であり、好ましくは2.2〜18、より好ましくは2.5〜15である。ρ/ρが2未満であると吸音性能発現が十分でなく、20を超えると機械的強度が低下し好ましくない。
上記樹脂発泡粒子において、樹脂発泡粒子の真密度ρと樹脂発泡粒子の嵩密度ρとの比ρ/ρが1.5〜4.0であることが必要であり、好ましくは1.8〜3.5、より好ましくは2〜3である。ρ/ρが1.5未満であると吸音性能が十分でなく、4.0を超えると機械的強度が低下し好ましくない。
本明細書において嵩密度ρとは、所定重量Mの樹脂発泡粒子をその重量Mにおける樹脂発泡粒子の嵩体積Vで除した値M/Vであり、真密度ρとは所定重量Mの樹脂発泡粒子をその重量Mにおける樹脂発泡粒子の真体積Vで除した値M/Vである。上記嵩体積Vとは、上記所定重量Mの樹脂発泡粒子をメスシリンダー内に充填してメスシリンダーを振動させ、その体積が恒量に達した時の目盛りを読んだ値を指す。また真体積Vとは、上記所定重量Mの樹脂発泡粒子を、樹脂発泡粒子を溶解しない液体の入ったメスシリンダー中に沈めた時に上記液体の増量した部分の体積をいう。
樹脂の密度ρとは、発泡前の原料樹脂の密度であり、水没法により重計を使用して測定される密度である。
本明細書においてρ、ρ、ρはすべて、20℃、0.10MPaの環境下において測定し得られた値を意味するものとする。
上記樹脂発泡粒子の平均粒子径は、100gの樹脂発泡粒子をJIS Z8801で規定される標準ふるいを用いた分級法により測定することができる。上記樹脂発泡粒子の平均粒子径は1.0〜4.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.0mmである。平均粒子径が1.0mm未満であると製造工程での取り扱いが難しく、4.0mmを超えると複雑な成形品の表面精度が低下する傾向が現れ好ましくない。
なお、本実施形態の樹脂発泡粒子の形状は、特に限定されず、様々な形状として良い。
上記樹脂発泡粒子の製造方法としては、熱可塑性樹脂の熱可塑性を利用した方法、固体状態の粒子の切削等の後加工による方法等が可能であり、粒子に所望の外形を付与できる方法であれば適用可能である。その中で生産性に優れ、安定した形状の粒子が製造可能な方法として、特殊形状の吐出断面を設けたダイを使用した異形押し出し法が好適に使用できる。特殊形状の吐出断面を設けたダイを有する押出機により熱可塑性樹脂を溶融押し出し、ストランドカット又はアンダーウォーターカット等工業的に通常使用されている方法によりペレタイズして得られたペレットを発泡させ樹脂発泡粒子を得る方法、及び押し出し機に発泡剤をバレル途中から注入し吐出と同時に発泡させ、冷却後、アンダーウォーターカット又はストランドカットし樹脂発泡粒子を直接得る方法、押出機内で溶融させ所望の断面形状を有するダイスから押し出し、冷却後ペレタイザーにより所定の長さに切断することにより基材樹脂ペレットを製造し、該基材樹脂ペレットに発泡剤を含浸させ、加熱することにより所定の発泡倍率で発泡させる方法、等従来公知の方法を任意に応用して製造することができる。
上記樹脂発泡粒子は樹脂を含む。上記樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリフェニレンオキサイドとポリスチレンとのブレンド又はグラフトポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、後塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン又はプロピレンと塩化ビニルのコポリマー等の塩化ビニル系重合体、ポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、単独及び共重合ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、単独及び共重合ポリエステル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メタクリルイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、チーグラー触媒又はメタロセン触媒等を用いて重合されたポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリエチレン系樹脂が、それぞれ単独であるいは混合して用いられる。
上記樹脂としては、20℃における表面張力が37〜60mN/mであることが好ましく、より好ましくは38〜55mN/mである。表面張力が上記範囲内であれば、力学的強度の高い吸音性の樹脂発泡成形体が得られ、特に好ましい。
樹脂の表面張力は、JISK6768「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」記載の方法において温度を20℃に変更した方法により測定される値を用いる。
特に好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル系樹脂、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂)等で表面張力が上記範囲内である熱可塑性樹脂が挙げられ、中でも、耐熱性、耐薬品、耐溶剤性に優れ、高耐熱発泡構造材料用途に適した樹脂としてポリアミド樹脂、耐熱性、高温剛性に優れた樹脂としては、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル−ポリスチレンアロイ樹脂)が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂は、無架橋の状態で用いても良いが。パーオキサイドや放射線等により架橋させて用いても良い。
上記樹脂発泡粒子は必要に応じて、通常の配合剤、たとえば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料、顔料等の着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、タルク、炭カル等の無機充填剤等を目的に応じて含んでいてもよい。
上記難燃剤としては、臭素系、リン系等の難燃剤が使用可能であり、上記酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系等の酸化防止剤が使用可能であり、上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系等の光安定剤が使用可能である。
上記樹脂発泡粒子の平均気泡径を調節する必要がある場合は、気泡調整剤を添加してもよい。気泡調整剤としては、無機造核剤には、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレー、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等があり、その使用量は通常、樹脂発泡粒子の原料全量に対して、0.005〜2質量部を添加する。
上記樹脂発泡粒子の製造時に用いる発泡剤としては、揮発性発泡剤等が挙げられる。上記揮発性発泡剤としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の鎖状又は環状低級脂肪族炭化水素類、ジシクロジフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、1−クロロ−1、1−ジフルオロエタン、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、空気、二酸化炭素等の無機ガス系発泡剤等が挙げられる。
−発泡成形体−
上記樹脂発泡成形体は、上記樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体である。即ち、本実施形態の樹脂発泡成形体は、少なくとも2個以上の上記樹脂発泡粒子が互いに融着した部分を少なくとも有する成形体である。融着した樹脂発泡粒子間には融着した部分及び空隙部がある。
上記樹脂発泡成形体は、上述のとおり融着した上記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有し、空隙率は、10〜80%であり、好ましくは12〜70%、より好ましくは15〜60%である。
上記空隙率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記樹脂発泡成形体において、上記樹脂発泡粒子が、樹脂発泡成形体全体に占める割合が、98質量%以上であれば実質的に凹外形部を持つ樹脂発泡粒子の性能が得られるため好ましい。
上記樹脂発泡成形体は、上記樹脂発泡粒子の集合体が相互に融着して得られる成形体であって、樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有することが必要である。本明細書において「連続した空隙部」とは、融着している樹脂発泡粒子間に相互に連続した空隙部が形成された結果として、樹脂発泡成形体の相対する2面間(2表面間)に連続した空隙が生じ流体が流動可能な状態となっていることを意味する。上記樹脂発泡成形体は、少なくとも一方向に連続した空隙部を有することが好ましく、厚み方向に連続した空隙部を有することが好ましい。上記連通空隙としては、厚み10mmの平板状樹脂発泡成形体試料を用いて、国際規格ISO9053に規定されているAC法により測定される単位長さ流れ抵抗が200,000N・s/m以下であることが好ましく、より好ましくは150,000N・s/m以下である。
上記樹脂発泡成形体は、熱伝導率が0.025〜0.060W/m・Kであることが好ましく、より好ましくは0.027〜0.057W/m・K、更に好ましくは0.030〜0.055W/m・Kである。樹脂発泡成形体の熱伝導率が0.025W/m・K未満であると、空隙率が高くなりすぎているため、発泡体の強度が不足する結果となり、0.060W/m・K超であると、断熱性が低く、熱エネルギーロスが大きくなる可能性がある。
上記熱伝導率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記樹脂発泡成形体の融着強度は、JIS K6767Aに基づいて引っ張り強度を測定し、樹脂発泡成形体の破断伸度(%)から評価する。破断伸度は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上である。破断伸度が1%未満であると、エンジンルームに設置した際に、走行中の振動や、動力系の振動で樹脂発泡成形体が破損となる可能性がある。
上記樹脂発泡成形体の製造は、上記樹脂発泡粒子を閉鎖した金型内に充填、発泡させて得るが、密閉し得ない金型内に充填して加熱し、樹脂発泡粒子相互を融着させる方法が採用してもよい。樹脂種と成形条件によっては汎用の型内発泡自動成形機を使用することができる。
凹外形部を持つ樹脂発泡粒子と、凹外形部を持たない楕円球状、円柱状、多角柱状等樹脂発泡粒子として一般的な形状の粒子を任意の比率で混合使用して樹脂発泡成形体を製造することにより所望の吸音性能、機械的強度のバランスを調整することができる。
本実施形態の樹脂発泡成形体のみでも高い吸音率を示すが、吸音パターンは2000Hz前後にピークをもつパターンとなり、自動車のエンジンルーム等で特に要求される1000Hz前後での吸音性能は低い。この樹脂発泡成形体に、本実施形態の繊維集合体からなる面材(I)を積層することで、吸音ピークを1000〜1500Hzあたりにピークシフトさせるとともに吸音ピークの低下を抑制することが出来るため、1000Hz前後での吸音性を発現することが可能となる。図4は、後述する実施例における周波数と垂直入射吸音率との関係を示す。
[面材(I)]
次に本実施形態の積層体を形成する繊維集合体を含む面材(I)について以下に説明する。
上記面材(I)は、上記繊維集合体を含む。中でも、上記繊維集合体のみからなることが好ましい。上記面材(I)は、上記繊維集合体以外に、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料、顔料等の着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、タルク、炭カル等の無機充填剤等を含む樹脂相を含んでいてもよい。また、面材(I)には、着色、撥水性、難燃性等を付与する目的で、染色等の着色加工、フッソ樹脂等の撥水加工、りん系等の難燃剤加工等の機能付与加工をしてもよい。
上記面材(I)の厚みとしては、0.1〜5.0mmが好ましく、より好ましくは0.1〜4.0mm、更に好ましくは0.2〜4.0mmである。5.0mm以下であると軽量化の点及び断熱性の点で好ましく、0.1mm以上だと、面材(I)の強度が十分に得られる。
上記面材(I)の通気度は、0.1〜25cc/(cm・sec)であることが好ましく、より好ましくは1〜20cc/(cm・sec)、更に好ましくは3〜15cc/(cm・sec)である。面材(I)の通気度が0.1cc/(cm・sec)未満であると、熱伝導率が高くなり、断熱性能が低下するために好ましくない。通気度が25cc/(cm・sec)を超えると、吸音性能における低周波数帯への吸音性能のシフトが不十分のために好ましくない。
通気度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
−繊維集合体−
上記繊維集合体は、平均繊維径が10μm以下であるメルトブローン繊維と、メルトブローン繊維中に分散され、表面の少なくとも一部でメルトブローン繊維に溶融接着し、前記表面の少なくとも一部が前記メルトブローン繊維の融点より低い融点を持つ樹脂で形成されているバインダー繊維とを含み、ソリディティが5%以上50%未満で、単位面積あたりの重量(目付け)が50〜1500g/mであることを特徴とする。
上記繊維集合体は、面材(I)として基材(II)の表面に直接あるいは間接に積層して使用できるもので、薄い面材(I)を基材(II)の音源側に積層等の方法で結合することで、基材(II)がもつ吸音性能を低下させずに吸音性能を全体に低周波数側にシフトすることが出来る。
上記繊維集合体の厚みは、5mm以下であることが好ましい。また、繊維集合体の強度を得るために、厚みが0.1mm以上であることが好ましい。
上記繊維集合体の目付けは、50〜1500g/mであり、好ましくは70〜1200g/m、より好ましくは100〜1000g/mである。上記目付けが50g/m未満であると、面材(I)が薄くなりすぎて十分な強度が得られない可能性がある。繊維集合体の目付けが1500g/m以内であると、厚みや軽量の観点からよい。
上記繊維集合体の目付けは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記繊維集合体の嵩密度は、0.10〜1.0g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.12〜0.90g/cm、更に好ましくは0.15〜0.80g/cmである。上記嵩密度が0.10g/cm未満であると積層体の吸音性能が低下し、繊維集合体の嵩密度が1.0g/cmを超えると、緻密性が増大し、面材と基材の密着安定性が低下する。
上記繊維集合体の嵩密度は、繊維集合体の目付を厚みで割ることにより求められ、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記繊維集合体のソリディティは、5%以上50%未満であり、好ましくは7〜47%、より好ましくは10〜45%である、上記ソリディティが5%未満であると、吸音性能における低周波数帯への吸音性能のシフトが不十分となり、50%を超えると熱伝導率が高くなるため、断熱性能が低下する可能性がある。
上記繊維集合体のソリディティは、下記式のように、繊維集合体の嵩密度pを繊維集合体を構成する材料の密度qで割ることによって求められる値であり、百分率で示される。ソリディティは、繊維集合体内の充填性、機密性及び通気性等の指標となる。密度qは、原料供給メーカーより提供された、メルトブローン繊維及びバインダー繊維の各原材料密度を基に、繊維集合体に用いたメルトブローン繊維の質量比とバインダー繊維の質量比とを用いて求めることが出来る。
ソリディティ=(嵩密度p/材料の密度q)×100
ソリディティの調整は、種々の方法が可能であるが、代表的には、後述するように、繊維集合体の製造時において、繊維集合体の圧縮による厚みの調整により行うことが可能である。
上記繊維集合体の通気度は、主に目付けとソリディティの値で調整されるため、目付けが同じ場合、ソリディティを高くするほど、通気度膜中の空隙率が下がり、より低い通気度を得ることが出来る。例えば、目付けが50g/mでソリディティが10%の場合、通気度としては30cc/(cm・sec)以下の値を得ることが出来る。ソリディティは15%以上、更には18%以上に調整することも可能である。また、ソリディティが一定の場合、目付けを重くすることで通気度を下げることができる。しかし、通気度が2cc/(cm・sec)以下となると、吸音率の低下が大きくなる可能性がある。したがって、例えば目付けが250g/mである場合、ソリディティは15%以下とすることが出来、一方目付けが150g/mである場合、ソリディティを20%以上にすることが出来る。
上記繊維集合体の通気度は、0.1〜25cc/(cm・sec)であることが好ましく、より好ましくは0.2〜25cc/(cm・sec)、更に好ましくは0.3〜25cc/(cm・sec)である。繊維集合体の通気度が0.1cc/(cm・sec)未満であると低周波数側に吸音率はシフトするが、繊維集合体表面で音の反射が生じ、全体的に吸音率が低下してしまうために好ましくない。通気度が25cc/(cm・sec)を超えると、繊維集合体を積層する効果が少なく好ましくない。
上記繊維集合体の通気度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記繊維集合体は、メルトブローン繊維中に、バインダー繊維が分散され、溶融接着されているため、メルトブローン繊維構造が固定され、安定した通気度を示す。メルトブローン繊維とバインダー繊維との溶融接着は、繊維集合体を20回振った時にメルトブローン繊維とバインダー繊維とが均一に存在するか、メルトブローン繊維とバインダー繊維とが分離するかを目視することにより、確認することができる。
上記繊維集合体は、熱伝導率が0.02〜0.15W/m・Kであることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.1W/m・Kである。繊維集合体の熱伝導率が0.02W/m・K未満であると、吸音性能が不十分となり、0.15W/m・K超であると、断熱性能が不十分で熱エネルギーロスが大きくなる可能性がある。
上記熱伝導率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
−メルトブローン繊維−
上記メルトブローン繊維を構成する樹脂としては、メルトブローン法により極細繊維に紡糸加工できるもので、バインダー繊維のメルトブローン繊維に溶融接着する部分よりも融点が高いものであれば限定されない。なお、このメルトブローン法とは、樹脂原料を溶融し、ノズルから押し出された繊維状樹脂に高温の気流を吹き付けることで繊維径をより細く加工する方法をいう。
上記メルトブローン繊維を構成する樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン1,4−シクロヘキサンジメタノール(PCT)、ポリ乳酸(PLA)及び/又はポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル、ポリアセテート、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性高分子が挙げられる。このうちコスト面や加工のしやすさ等から、PETやPP、ポリアミドが使用できる。更に、軽量化の観点からは、より比重が軽いPPが使用できる。
なお、後工程で、例えば本実施形態の繊維集合体を基材(II)の表面に積層する方法として、熱プレス等の高温工程を使用する場合は、比較的高い融点を有する繊維をメルトブローン繊維として使用することができる。高融点繊維としては、180℃以上の融点を持つものを使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂繊維や、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂繊維等が挙げられる。
なお、使用する高融点メルトブローン繊維原料は、単一材料のみならず、複数の樹脂材料を混合して使用してもよい。
メルトブローン繊維の平均繊維径は、10μm以下であり、好ましくは0.5〜8μm、より好ましくは0.5〜5μmである。メルトブローン繊維の平均繊維径が10μm超であると、断熱性能が不十分となる可能性がある。例えばメルトブローン紡糸方法によれば、このような超極細繊維の作製が可能である。超極細繊維とすることで、同じ単位面積あたりの重量でより複雑で微細な孔径の繊維構造が形成されるため、低い通気度が得られる。
なお、ここで「平均繊維径」とは、繊維の長軸に垂直な断面における繊維径の平均を一般にいうものとする。正確には、SEM等の顕微鏡写真を撮影し、撮影像から求めた幾何学繊維径を測定できる。この幾何学的繊維径の測定方法は、例えば国際公開第2004/046443号に開示される測定方法を使用できる。
−バインダー繊維−
上記バインダー繊維は、表面の少なくとも一部でメルトブローン繊維に溶融接着し、前記表面の少なくとも一部がメルトブローン繊維の融点より低い融点を有する樹脂で形成されている繊維である。
メルトブローン繊維に溶融接着する低融点部分の融点は、メルトブローン繊維の融点より10℃以上低いものが好ましく、より好ましくは15〜150℃低いもの、更に好ましくは20〜100℃低いものである。上記融点の差が10℃未満である場合、十分な溶融接着が行われない可能性がある。
また、自動車エンジンルーム用の吸音材として使用する場合等、耐環境試験に耐えうるため、バインダー繊維の低融点部分の融点は、90℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上である。また、メルトブローン繊維との溶融接着の観点から、180℃未満であることが好ましく、より好ましくは175℃以下、更に好ましくは170℃以下である。
バインダー繊維の上記低融点部分を構成する樹脂として、例えば、低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が使用できる。例えば、メルトブローン繊維として、融点が220℃近傍のポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用する場合、バインダー繊維としては、表面の融点が110℃の低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)等が使用できる。
バインダー繊維は、繊維状であればよく、その断面径や長さは特に限定されないが、メルトブローン繊維中における分散性を上げるためには、短繊維であることが好ましい。例えば、紡糸された繊維を裁断することで製造される繊維長10mm〜100mmのステープルファイバーを使用できる。繊維状のバインダーは、メルトブローン繊維との接触密度が少なくとも一部で高いため、効率良く繊維間の溶融接着が可能であり、必要なバインダー繊維量を抑制できる。
バインダー繊維は、全体が均一な融点を持つ材質である必要はなく、少なくとも表面に低融点部分を備えるものであればよい。
例えば、芯鞘構造の繊維で、芯部が高融点(例えば、融点230〜300℃)成分で、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂繊維や、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66等のポリアミド系樹脂繊維等であり、鞘部分が低融点(例えば、融点90℃以上180℃未満、芯の高融点成分よりも140〜210℃融点が低い成分等)成分で低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等であるものも使用できる。芯部の平均繊維径は、5〜20μmであることが好ましく、鞘部分の厚みは5〜20μmであることが好ましい。このような芯鞘構造の繊維を使用すれば、メルトブローン繊維と混合された際、低融点の鞘部分のみが溶融し、芯部は、メルトブローン繊維とともに繊維として残存し、メルトブローン繊維の特性を阻害することなく通気度を低下させることが可能となる。
バインダー繊維の低融点部分を構成する合成樹脂繊維の融点と、その他の部分を構成する合成樹脂繊維の融点との差は、10℃以上である事が好ましい。部分的に溶融できるバインダー繊維は、溶融されることでメルトブローン繊維間を接着し、メルトブローン繊維の通気度をより下げる効果を有する。また、メルトブローン繊維構造を固定できるため、通気度の安定性を高め、ハンドリングを容易にできる。
バインダー繊維の単位面積あたりの重量(目付け)は、1〜40g/mであることが好ましく、より好ましくは5〜35g/mである。1g/m未満の場合、バインダーの量が不足する可能性があり、メルトブローン繊維構造を十分に溶融接着し安定に固定することができず、使用中に厚みが回復しやすいため、通気度を一定に維持できない可能性がある。一方、バインダー繊維が40g/mを超えると、メルトブローン繊維による通気度を下げる効果が薄れる可能性がある。
上記繊維集合体の製造方法は、例えば、まず、メルトブローン繊維とバインダー繊維とを混合し、単位面積あたりの重量が50〜1500g/mである混合ウェブを形成する。この工程では、通常のメルトブローンプロセスが使用可能であり、吹き出されたメルトブローン繊維を含む気流に直接合流するようにバインダー繊維を吹きつけて、メルトブローン繊維の間に実質的に均一にバインダー繊維が分散された混合ウェブを形成する。
なお、バインダー繊維は、例えばリッケンロール等の回転体で開繊され、高圧のエアーによって吹き付けられる。バインダー繊維の分散性を上げるには、比較的短い繊維が好ましい。また、単位面積あたりの重量は、高圧エアー気流に噴き込む各繊維量で調整できる。
なお、混合ウェブの作製方法としては、上述する方法に限られず、例えば米国特許第4813948号明細書に開示されている以下の方法を使用することもできる。すなわち、まず、メルトブローンプロセスでメルトブローン繊維ウェブを形成し、これにバインダー繊維をブレンドするとともに、リッカーリン等のロール状の開繊装置に供給し、更に空気積層して、混合ウェブを形成することもできる。また、バインダーを加える前にメルトブローン繊維ウェブの界面活性剤等を噴霧することもできる。
次に、得られた混合ウェブを、少なくともバインダー繊維が溶融する温度で加熱するとともに、混合ウェブを厚み方向上下から加圧し、圧縮する。加熱方法は限定されず、ランプを用いる方法やヒータを用いる方法等種々の方法が使用可能である。また、加圧方法もプレス機、あるいは加圧ローラー等のいずれの方法を使用することもできる。予め所定温度に加熱した混合ウェブを加圧してもよいし、一般的なカレンダー工程を使用し、加熱と加圧を同時に行ってもよい。加熱温度は、バインダー繊維が溶融するが、メルトブローン繊維は溶融しない温度条件で行う。なお、バインダー繊維の溶融は、全体が溶融する必要はなく、繊維構造を接着固定できるものなら部分溶融でかまわない。芯鞘構造のバインダーを使用する場合は、鞘部のみが溶融する条件で使用してもよい。
こうして、加熱及び加圧工程により、混合ウェブはソリディティが5%以上となるよう調整される。これらのソリィディティの調整により、繊維集合体が得られる。
なお、上記方法において、ソリィディティ及び通気度の調整は、主に、加圧時の混合ウェブの厚みで調整できる。すなわち、例えば加圧ローラーのギャップの調整により容易に通気度の調整が可能である。例えば、その結果、本実施形態の繊維集合体の厚みは、3mm以下、2mm以下もしくは1mm以下の極めて薄いものに加工できる。
また、溶融したバインダー繊維は、繊維構造を強固に固定するため、種々の変形や加工によっても、通気度特性を安定に維持できる。
こうして得られた繊維集合体を、フェルトやウレタンフォーム等の吸音材に積層して吸音積層部材として使用する場合、例えば、吸音材と繊維集合体とを積層する際に、接着剤等で固定する、もしくはバインダー繊維量の調整により熱圧着で固定する等の方法も可能であり、また所定のパターンにカットする際に、あるいはカットした後に、その端部を熱圧着で一体化する等の方法も使用できる。
次に本実施形態の積層体における、面材(I)と基材(II)の積層方式について説明する。
繊維集合体を含む面材(I)の片面に樹脂発泡成形体を含む基材(II)を積層する手段としては、熱接着による方法の他、接着剤を介して積層一体化する方法等も挙げられるが、接着剤を用いることなく、面材(I)と基材(II)とを単に重ね合わせて積層体(複合吸音材)とすることが好ましい。接着剤を用いないことにより、面材(I)と基材(II)との間には通気性を確実に確保することができ、安定した吸音性能を維持できる。このように、単に重ね合わせて積層する場合は、所定のフレーム(枠)に嵌め込み、少なくとも端部を固定することにより一体化するとよい。接着剤を介して積層一体化する場合は、接着剤を部分的に配置することによって、通気性を確保するとよい。接着剤が膜を形成して接着剤層となり、通気性が損なわれると、面材(I)から基材(II)への音の侵入が阻害され、吸音性能が低下する恐れがある。このように部分的に接着剤を存在させる方法としては、パウダー状や繊維状の熱接着剤を用いるとよい。また、面材(I)と基材(II)とを基材(II)の表面周囲、側面、又は裏面周囲で固定して、空気層を介して面材(I)を基材(II)に装備してもよい。また、基材(II)において、繊維集合積層体等の面材(I)側の面となる基材(II)表面を加熱溶融させ、繊維集合積層体等の面材(I)と貼り合わせる方法により接着一体化することもできる。
面材(I)と基材(II)との熱接着による積層法の具体例としては、面材(I)に含まれる繊維、及び基材(II)に含まれる樹脂が軟化又は融解する加熱雰囲気下で、ネット、ロール等で加熱、加圧して接着する熱接着方法;面材及び/基材にホットメルト系の粉末、接着剤等を、スプレー式、ロール式等で塗布させ、加熱処理すること等接合する接着方法;低融点繊維を含む不織布、くもの巣状の不織布、テープヤーンクロス、ホトメルト系フィルム、メッシュ等のシート状物を介在させて接着する接着性シート方法、タッカーや釘等を打ち込むことで固定する方法;等が挙げられる。接着は面であっても、複数の点で接着されていてもよい。
本実施形態において、面材(I)として、2枚以上の繊維集合積層体を重ねる場合には、個々の繊維集合積層体を逐次に積層する方法又は、2枚以上の繊維集合積層体を同時に積層する事もできる。
本実施形態の積層体(複合吸音材)は、繊維集合体を含む面材(I)側を音の入射側に位置するように設置して使用する。繊維集合体を含む面材(I)側を音の入射側に位置することにより、吸音性能を有効に向上させる事ができる。
本実施形態の積層体は、基材(II)が2000Hz前後に吸音ピークをもつ吸音性能をもち、面材(I)も吸音性能をもっているが、基材(II)に面材(I)を積層することで、基材(II)の2000Hz前後の吸音ピークが、吸音率の低下を抑制しながら、1000〜1500Hz付近にピークをシフトすることが可能となり、1000Hzでの高い吸音性を発現することが可能となり、自動車のエンジンルーム等で発生する1000Hz付近の低周波数の騒音を抑制することが可能となる。
本実施形態の積層体の1000Hzにおける吸音率は、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.40以上である。
上記吸音率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の積層体は、熱エネルギー損失が230.0W/m・hr以下であることが好ましく、より好ましくは225.0W/m・hr以下、更に好ましくは210.0W/m・hr以下である。積層体の熱エネルギー損失が230W/m・hr超であると、積層体に囲まれた内側の熱が外部に出てしまうこととなり、例えば、アイドリングストップでエンジンが停止した場合に、エンジンが冷めてしまうため、再起動時に余分なエネルギーが必要となるため、ガソリン、ディーゼルの燃費が悪くなる可能性がある。
上記熱エネルギー損失は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の積層体は、種々の騒音を遮蔽する部材、例えば自動車等の車両用エンジンルーム内の防音部材等として用いることができる。特に基材として硬質の熱可塑性樹脂を選択する事等により、他の部材を更に積層することなく、本実施形態の積層体だけで自立可能な自立型防音材として用いることができる。
以下実施例により本発明の実施態様を説明する。ただし、本発明の範囲は実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
(1)樹脂の密度ρ(g/cm
発泡前の樹脂の質量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cm)を測定し、W/V(g/cm)を樹脂の密度とした。
(2)樹脂発泡粒子の真密度ρ(g/cm
樹脂発泡粒子の質量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cm)を測定し、W/V(g/cm)を樹脂発泡粒子の真密度とした。
比重計により予備発泡後の樹脂原料ペレットの密度を測定した。
(3)樹脂発泡粒子の嵩密度ρ(g/cm
樹脂発泡粒子100gをメスシリンダーに入れ振動させその体積が恒量に達した時平坦化させた上面の目盛りを読んだ値として嵩体積V(cm)、樹脂発泡粒子を入れたメスシリンダーの質量W(g)とメスシリンダーの質量W(g)を測定し、下式により求めた。
ρ=[W−W]/V
(4)樹脂発泡粒子の平均粒子径D(mm)
100gの樹脂発泡粒子をJIS Z8801で規定される、呼び寸法がd=5.6mm、d=4.75mm、d=4mm、d=3.35mm、d=2.36mm、d=1.7mm、d=1.4mm、d=1mmである標準ふるいを用いて分級を行い、ふるいdを通過して、ふるいdi+1で止まる粒子の重量割合をX、全粒子集合体の平均粒子径Dを次式により求めた。
D=ΣX(d・di+11/2
(iは1〜7の整数を表す)
(5)樹脂発泡成形体の空隙率(%)
以下の式より、樹脂発泡成形体の空隙率を求めた。
樹脂発泡成形体の空隙率(%)=[(B−C)/B]×100
但し、B:樹脂発泡成形体の見掛け体積(cm)、C:樹脂発泡成形体の真の体積(cm)であり、見掛け体積は成形体の外形寸法から算出される体積、真の体積Cは成形体の空隙部を除いた実体積をそれぞれ意味する。真の体積Cは樹脂発泡成形体を液体(例えばアルコール)中に沈めた時の増量した体積を測定することにより得られる。
(6)連続した空隙部の有無
単位長さ流れ抵抗の測定から以下のように判定した。
単位長さ流れ抵抗値の測定方法としては、国際標準規格ISO9053のAC法を適用して日本音響エンジニアリング(株)製、流れ抵抗測定システムAirReSys型を使用して測定した。すなわち、厚み10mmの平板状樹脂発泡成形体試料を用い、流速F=0.5mm/sの一様流中の流れる状態で材料表裏面の差圧P(Pa)を測定し、その差圧と材料厚みt(m)からP/(t・F)(N・s/m)として求めた。単位長さ流れ抵抗値が200,000N・s/m以下の場合を連続した空隙部有り(○)、200,000N・s/mを超える場合を連続した空隙部無し(×)と評価した。
(7)融着強度
JIS K6767Aに基づき引っ張り強度を測定し、樹脂発泡成形体の破断伸度が2%以上の場合を融着強度に優れる(◎)、破断伸度が1%以上2%未満の場合2を融着強度が良好(〇)、破断伸度が1%未満の場合を融着強度が劣る(×)と評価した。
(8)メルトブローン繊維とバインダー繊維との溶融接着
メルトブローン繊維とバインダー繊維との溶融接着は、繊維集合体を20回振った後、目視での確認により、メルトブローン繊維とバインダー繊維とが均一に存在する場合を○、メルトブローン繊維とバインダー繊維とが分離する場合を×として、評価した。
(9)面材(繊維集合体)の目付け(g/m
JIS L−1913「一般不織布試験方法」の単位面積当たりの質量(ISO法)の記載の方法に従って評価した値を面材の目付けとした。
(10)面材(繊維集合体)の嵩密度(g/cm)及びソリディティ(%)
JIS L−1913「一般不織布試験方法」の厚さ(ISO法)の記載の方法に従って平均厚み評価し、上記(9)の面材の目付けの値から、(面材の嵩密度)=(面材の目付け)/(厚み)として面材の嵩密度を求めた。
また、下記式のように、上記で求めた面材の嵩密度pを、繊維集合体を構成する材料の密度qで割ることによって面材のソリディティを求めた。
ソリディティ=(嵩密度p/材料の密度q)×100
(11)面材(メルトブローン繊維)の平均繊維径(μm)
各実施例のウェブ試験片のSEM顕微鏡写真の画像解析によって繊維の「平均幾何直径」を測定した。ウェブ試験片から1cm×1cmの試験片を切り出し、直接、走査型電子顕微鏡の試料台に取り付けた。試験片を載せた試料台を走査顕微鏡中に挿入し、低真空モードで20KVの加速電圧、15mmの作動距離、及び0°試料チルトを用いてが画像観察を行った。500倍及び1000倍倍率で撮られた反射電子画像を用いて繊維直径を測定した。各試料の電子顕微鏡写真において、明らかにメルトブローン繊維と思われる5〜10本の繊維を任意に選択し、その繊維直径を測定した。なお、メルトブローン繊維を使用していない試料片については、適宜、測定対象の繊維を選択し、その繊維径を同様な方法で測定した。
(12)面材(繊維集合体)の通気度(cc/(cm・sec))
JIS L−1096「織物及び編物の生地試験方法」記載の方法に従って測定した。
(13)積層体の吸音特性及び1000Hzでの吸音率
JIS A1405−2に基づき垂直入射吸音率を測定した。厚さ30mmの平板状樹脂発泡成形体を作製し直径41mm、厚さ30mmの円盤を切り出し、サンプル裏側に直接アルミでできた剛体をおいて日本音響エンジニアリング社製垂直入射吸音率測定システムWinZacMTX型により、周波数160〜5000Hzにおける垂直入射吸音率を20℃において測定した。200、250Hz、315Hz、400Hz、500Hz、630Hz、800Hz、1000Hz、1250Hz、1600Hz、2000Hzの11点を中心周波数とする1/3オクターブ帯の吸音率を測定し11帯の平均吸音率のうち、吸音率30%以上の周波数が5点以上ある場合を吸音特性に優れる(◎)、吸音率30%以上の周波数が3点以上4点以下の場合を吸音特性が良好(〇)、吸音率30%以上の周波数が2点以下の場合を吸音特性が劣る(×)として評価した。また、その中でも1000Hzでの吸音率を測定した。1000Hzでの吸音率を評価した。
(14)熱伝導率(W/m・K)及び熱エネルギー損失(W/m・hr)
製造例及び実施例の試験片を単独もしくは重ねあわせて30×30×厚み10mmを準備し、ISO22007−6に基づき、アイフェイズ製Mobile−10を用いて各試験片の厚み方向の熱伝導率を測定した。次に、各試験片1m×1mのサイズを準備し、高温側1m×1mの片面側の環境温度を100℃とし、その対面の環境温度を20℃とし、20℃側の試験片の面の表面温度を測定し、JIS A9501に基づき熱エネルギー損失を計算した。なお、試験片が単層の場合は表裏がないが、積層の場合は繊維集合体側を100℃の環境側になるよう設置し測定した。
(15)自立性(たわみ性)
1m角、基材の厚み20mm+実施例及び比較例で使用した各面材の厚みのサンプルを片持ちで保持し、たわみ量を評価した。目に見えてたわみが発生するサンプルを劣る(×)とし、明確なたわみが見られないサンプルを良好(〇)とした。
[樹脂発泡成形体の製造例1(A−1)]
ポリアミド6樹脂(UBEナイロン「1022B」、宇部興産製、20℃における表面張力46mN/m)を、押出し機を用いて溶融し、図3(a1)記載の断面形状の異形押し出しダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、平均粒子径1.4mmのペレットを得た。得られたペレットを10℃の圧力釜に投入し、4MPaの炭酸ガスを吹き込み3時間吸収させた。次いで炭酸ガス含浸ミニペレットを発泡装置に移し、240℃の空気を20秒間吹き込み、ポリアミド樹脂発泡粒子の集合体を得た。得られたポリアミド樹脂発泡粒子の集合体に含まれるポリアミド樹脂発泡粒子の平均粒子径は2.0mmであった。ポリアミド樹脂発泡粒子を切断し観察したところ、ポリアミド樹脂発泡粒子には独立気泡が切断面一面にまんべんなく多数形成されていた。ポリアミド樹脂発泡粒子の断面は図3(a2)に記した形状で凹外形部を有していた。
得られたポリアミド樹脂発泡粒子集合体を再度圧力釜に入れ、10℃にて4MPaの炭酸ガスを3時間吸収させた。次いでこの炭酸ガスを含浸したポリアミド樹脂発泡粒子を型内発泡成形装置のキャビティが1m×1m×厚みが20mmの金型内に充填し、230℃の空気を30秒間吹き込み、ポリアミド樹脂発泡粒子同士が融着した1m角で厚みが20mmの樹脂発泡成形体A−1を得た。樹脂発泡成形体の発泡倍率は7.5倍であった。樹脂発泡成形体を切断し観察したところ、セル径が200〜400μmである独立気泡を多数有するポリアミド樹脂発泡粒子の集合体が形成されていた。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持つことが確認された。ポリアミド樹脂発泡粒子及び樹脂発泡成形体の評価結果を表1中に記す。
[樹脂発泡成形体の製造例2〜5(A−2〜A−5)]
ポリフェニレンエーテル系樹脂(商品名:ザイロンTYPE S201A、旭化成(株)製、20℃における表面張力40mN/m)を60質量%、非ハロゲン系難燃剤(ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)(BBP))を18質量%、ゴム濃度が6質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)10質量%(基材樹脂中のゴム成分含有量は0.6質量%)及び汎用ポリスチレン樹脂(PS)(商品名:GP685、PSジャパン(株)製)を12質量%加え、押出機にて加熱溶融混練の図3記載の異形押し出しダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、ペレットを得た。特開平4−372630号公報の実施例1に記載の方法に準じ、基材樹脂としての上記ペレットを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として二酸化炭素(気体)を注入し、圧力3.2MPa、温度11℃の条件下で3時間かけて基材樹脂としてのペレットに対して二酸化炭素を7質量%含浸させ、基材樹脂ペレットを発泡炉内で攪拌させながら加圧水蒸気により発泡させた。得られた樹脂発泡粒子の概形を図3に示す。
なお、図3(b1)が製造例2、図3(c1)が製造例3、図3(d1)が製造例4、図3(e1)が製造例5、のダイ吐出口の断面形状である。また、図3(b2)が製造例2、図3(c2)が製造例3、図3(d2)が製造例4、図3(e2)が製造例5、の樹脂発泡粒子の断面である。
得られた樹脂発泡粒子を耐圧容器に移し、圧縮空気により内圧を0.5MPaまで1時間かけて昇圧し、その後0.5MPaで8時間保持し、加圧処理を施した。これを、型内発泡成形装置の水蒸気孔を有する製造例1で用いた金型内に充填し、加圧水蒸気0.35MPaで加熱して樹脂発泡粒子を相互に膨張・融着させた後、冷却し、成形金型より取り出し、樹脂発泡成形体A−2〜A−5を得た。なお、製造例2の樹脂発泡粒子から得られた樹脂発泡成形体がA−2、製造例3の樹脂発泡粒子から得られた樹脂発泡成形体がA−3、製造例4の樹脂発泡粒子から得られた樹脂発泡成形体がA−4、製造例5の樹脂発泡粒子から得られた樹脂発泡成形体がA−5である。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持つことが確認された。樹脂発泡粒子及び樹脂発泡成形体の評価結果を表1中に記す。
[樹脂発泡成形体の製造例6(A−6)]
エチレングリコールとイソフタル酸とテレフタル酸の重縮合体(イソフタル酸含有率2質量%、20℃における表面張力43mN/m)100重量部と、ピロメリット酸二無水物0.3重量部と、炭酸ナトリウム0.03重量部、との混合物を押出機により270〜290℃溶融、混練しながらバレルの途中に発泡剤としてブタンを混合物に対して1.0質量%の割合で注入し、図3(f1)記載の異形押出しダイを通して予備発泡させたのち、直ちに冷却水槽で冷却しペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂発泡粒子を製造した。得られた樹脂発泡粒子の断面は、図3(f2)であった。
得られた樹脂発泡粒子の嵩密度は0.14g/cm、平均粒子径は1.5mmであった。
上記の樹脂発泡粒子を密閉容器に入れ、炭酸ガスを0.49MPaの圧力で圧入して4時間、保持したのち、密閉容器から取り出した樹脂発泡粒子を直ちに、型内発泡成形機の金型内に充填して型締めし、型内に、ゲージ圧0.02MPaのスチームを10秒間、ついでゲージ圧0.06MPaのスチームを20秒間導入し、120秒間保熱したのち水冷して、樹脂発泡粒子同士が融着した樹脂発泡成形体A−6を得た。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持つことが確認された。樹脂発泡粒子及び樹脂発泡成形体の評価結果を表1中に記す。
[樹脂発泡成形体の製造例7〜9(B−1〜B−3)]
押出し機の異形押し出しダイを通常の中空部のない円形断面ダイに変える以外は、それぞれ製造例1、2、6と同様の条件で、樹脂発泡粒子及び樹脂発泡成形体B−1、B−2、B−3を得た。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持たないことが確認された。樹脂発泡粒子及び樹脂発泡成形体の評価結果を表1中に記す。
Figure 2019077095
[繊維集合体の製造例1(F−1)]
メルトブローン繊維として、PBT樹脂(製品名DURANEX PBT 2002(ウィンテックポリマー社製、融点224℃)をメルトブローンプロセスで、繊維径5μmのメルトブローン繊維を単位面積あたりの重量120g/mになるように紡糸するとともに、バインダー繊維として、帝人テトロン TJ04C2(帝人ファイバー社製)の芯鞘構造からなるバインダーファイバを使用した。芯部分が融点260℃のPET、鞘部分が融点110℃の低融点PETからなり、平均繊維径が2.2デニール、繊維長が38mmであった。このバインダーファイバ5g/mを上記メルトブローン繊維が吹き出された直後の繊維流に合流するように吹き付け、総単位面積あたりの重量125g/mの混合ウェブを作製した。この混合ウェブを110℃に加温したローラーを用いて潰し、厚み0.5mmの繊維集合体を得た。この通気度膜のソリディティは18%であった。繊維集合体の評価結果を表2中に記す。
[繊維集合体の製造例2(F−2)、製造例3(F−3)]
表2に記載の含有割合となるようにし、加熱圧縮の条件を適宜調整したほかは、製造例1(F−1)と同様にして不織布を調製し、繊維集合体を得た。繊維集合体の評価結果を表2に示す。
[繊維集合体の製造例4(G−1)]
バインダー繊維を混合せず、メルトブローン繊維のみからしたほかは、製造例1(F−1)と同様にして単位面積あたりの重量を138g/m、厚みを2.9mmの繊維集合体を作製した。繊維集合体の評価結果を表2に示す。
[繊維集合体の製造例5(G−2)]
バインダー繊維30g/mをメルトブローン繊維に混合したほかは、製造例1(F−1)と同様にして単位面積あたりの重量が375g/m、厚みが2mmの繊維集合体を作製した。この繊維集合体のソリディティは3.7%であった。繊維集合体の評価結果を表2に示す。
[繊維集合体の製造例6(H−1)]
メルトブローン繊維として、ポリプロピレン(サンアロマー社製、融点170℃)を使用し、エクストルーダーによりメルトブローンダイから、繊維径2.9μmのメルトブローン繊維を、単位面積あたりの重量137g/mになるように紡糸した。メルトブローン繊維が紡糸された直後のウェブに合流するように、芯材としてポリエチレンテレフタレート、鞘材として芯材より融点の低いポリエチレンテレフタレート系コポリマーを有する芯鞘構造(ユニチカ社製メルティ4080、繊度:6.6dtex、繊維長:32mm)を有するバインダー繊維460g/mを混合させ、総単位面積あたりの重量が597g/mである混合ウェブを作製した。バインダー繊維の芯材の融点は255℃であり、鞘部の融点は110℃である。この混合ウェブを137℃、10MPaの条件下で60秒加熱圧縮し、厚み1.8mmの不織布(1)を得た。このようにして不織布(1)一層からなる繊維集合体を得た。なお、メルトブローン繊維の比重は0.91g/cmであり、バインダー繊維の比重は1.38g/cmであった。繊維集合体の評価結果を表2に示す。
[繊維集合体の製造例7〜11(H−2〜H−6)]
表2に記載の含有割合となるようにし、加熱圧縮の条件を適宜調整したほかは、製造例6(H−1)と同様にして不織布を調製し、繊維集合体を得た。繊維集合体の評価結果を表2に示す。
Figure 2019077095
[実施例1〜18]
表3に示すとおり、面材(I)として表2記載の繊維集合体、基材(II)として表1記載の樹脂発泡成形体を使用し、繊維集合体と樹脂発泡成形体とが重なるようにセットし、周囲のみをタッカーで留めて固定し、積層体を得た。積層体の面材(I)側を音源とした吸音特性及び面材(I)側を高温側とした熱エネルギー損失、自立性(たわみ性)を評価した。評価結果を表3に示す。
Figure 2019077095
Figure 2019077095
また、樹脂発泡体A−1、A−2のみのサンプル、繊維集合体F−1を4枚積層したサンプル、繊維集合体F−3が1枚のみのサンプル、樹脂発泡成形体A−1に繊維集合体F−1を4枚積層した実施例1、樹脂発泡成形体A−2に繊維集合体F−1を4枚積層した実施例3、及び樹脂発泡成形体A−2に繊維集合体F−3を1枚積層した実施例5の周波数と垂直入射吸音率とのグラフを図4に示す。このように、樹脂発泡体A−1、A−2のみでは、1500〜2000Hzに吸音ピークを示し、繊維集合体F−1を4枚積層したサンプル、繊維集合体F−3が1枚のみのサンプルでは、2500Hzに吸音ピークを示し、いずれも1000Hzでの吸音性能は低いが、実施例1、3、及び5では、各樹脂発泡成形体に各繊維集合体を積層させることで、吸音ピークが1000〜1500Hzにシフトし、1000Hzでの吸音率は0.3以上となった。
[比較例1〜3、6〜8]
表4に示すとおり、面材(I)として表2記載の繊維集合体、基材(II)として表1記載の樹脂発泡成形体を使用し、繊維集合体と樹脂発泡成形体とが重なるようにセットし、周囲のみをタッカーで留めて固定し、積層体を得た。実施例同様に積層体の吸音特性、熱エネルギー損失、及び自立性(たわみ性)を評価した。評価結果を表4に示す。
樹脂発泡体B−2のみのサンプル、繊維集合体F−1を4枚積層したサンプル、及び樹脂発泡成形体B−2に繊維集合体F−1を4枚積層した比較例2の周波数と垂直入射吸音率とのグラフを図5に示す。このように、樹脂発泡体B−2のみは、周波数域全体で低い吸音性能であり、繊維集合体F−1を4枚積層したサンプルは、2500Hzに吸音ピークを示し、いずれも1000Hzでの吸音性能は低かった。また、樹脂発泡成形体B−2に繊維集合体F−1を4枚積層させても、比較例2では、吸音ピークは1500〜2000Hzまでしかシフトせず、1000Hzでの吸音率は0.3未満となった。
[比較例4,5]
表4に示すとおり、繊維集合体の枚数を増やして厚みを約20mm相当にして基材を用いずにサンプルを作製し、吸音特性、熱エネルギー損失、及び自立性(たわみ性)を評価した。評価結果を表4に示す。
Figure 2019077095
実施例1〜18はいずれも、吸音特性に優れ、1,000Hzでの吸音率が0.30以上と高い吸音性能を示した。また、断熱性能を表す熱エネルギー損失においてもいずれも200W/m/hr以下の高い断熱性能を示した。
一方比較例1〜3は、樹脂発泡粒子が、凹外形部を有する粒子(少なくとも一方の方向から見た外形において、凹形状部を有する発泡粒子)もしくは貫通した穴を有する筒状粒子ではないことも要因となって連通空隙が少なく、得られた積層体の吸音性能及び1,000Hzの吸音率も0.3未満であり良くない結果であった。また、樹脂発泡層がない繊維集合体のみから構成されている比較例4,5は、比較例4では吸音性能は不十分であり、比較例5では吸音性能はよいが、熱エネルギー損失が高いため断熱性能が低くよくなかった。また、比較例4,5ともに繊維集合体のみのため自立性が低く、たわみが大きいため、音源からの距離にむらが生じることが発生するためよくない結果となった。比較例6,7ともに繊維集合体のソリディティが低いため、通気度が高く、高周波数側の吸音性能はよいが、低周波数側の1,000Hzの吸音率は低い結果となった。また、比較例8は繊維集合体のソリディティが高いため、通気度が低く、全体的に吸音率は低くなり、1,000Hzの吸音率も低い結果となった。また、断熱性能も実施例3〜10と比較して良くない結果となった。
本実施形態の基材と面材とを含む積層体は、薄くても高い吸音性能を有し、なおかつ高い断熱性能をもった、高吸音性能の積層体である。
本実施形態の積層体の用途例としては、軽量性と静音化が求められる自動車、電車、汽車等の車両及び航空機等の駆動騒音低減に使用される部材が挙げられ、特に自立性と耐熱変形性と断熱性が要求される自動車エンジンルーム内のエンジンカバー、エンジンカプセル、エンジンルームフード、変速機ケーシング、吸音カバー、電気自動車用モーターのケーシング、吸音カバー等に特に好適に使用できる。
更に本実施形態の積層体は、静音化が求められるエアコン等の空調機器、冷凍機、ヒートポンプ等や、ダクト等の風路を形成する部分、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、掃除機等の各種家庭用電気製品、プリンター、コピー機、FAX等のOA機器、の他壁材芯材、床材心材等の建築用資材にも好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 繊維集合体を含む面材(I)と、
    連通空隙を有する樹脂発泡成形体を含む基材(II)とを含む積層体であって、
    前記繊維集合体は、平均繊維径が10μm以下であるメルトブローン繊維と、前記メルトブローン繊維中に分散され、表面の少なくとも一部で前記メルトブローン繊維に溶融接着し、前記表面の少なくとも一部が前記メルトブローン繊維の融点より低い融点を持つ樹脂で形成されているバインダー繊維とを含み、ソリィディティが5%以上50%未満で、単位面積あたりの重量(目付け)が50〜1500g/mであり、
    前記樹脂発泡成形体は、樹脂を含む樹脂発泡粒子であって、前記樹脂の密度ρと前記樹脂発泡粒子の真密度ρとの比ρ/ρが2〜20であり、前記樹脂発泡粒子の真密度ρと前記樹脂発泡粒子の嵩密度ρとの比ρ/ρが1.5〜4.0である前記樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であり、融着した前記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有し、空隙率が15〜80%であり、
    厚みが5〜80mmであることを特徴とする、積層体。
  2. 前記樹脂発泡粒子が凹外形部を有する樹脂発泡体粒子を含む、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記樹脂発泡粒子の平均粒子径が1.0〜4.0mmである、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記樹脂発泡成形体が、20℃における表面張力が37〜60mN/mの熱可塑性樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
  5. 前記面材(I)の厚みが0.1〜5.0mmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
  6. 前記面材(I)の通気度が0.1〜25cc/(cm・sec)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
  7. 前記メルトブローン繊維は、180℃以上の融点を有するポリエステル系樹脂又はポリアミド樹脂の繊維を含み、
    前記バインダー繊維は、少なくとも一部が、融点が90℃以上180℃未満であるステープルファイバーである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層体。
  8. 前記バインダー繊維は、単位面積あたりの重量が1〜40g/mである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体。
  9. 前記バインダー繊維は、芯鞘構造を有し、鞘部分のみが溶融する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層体。
  10. 自立型防音材である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層体。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層体からなることを特徴とする、吸音材。
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