JP2019074058A - 圧縮機、及び、これを備える冷凍サイクル装置 - Google Patents

圧縮機、及び、これを備える冷凍サイクル装置 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑油の流出を抑制しつつ、固定部材への伝熱を抑制する圧縮機等を提供する。【解決手段】圧縮機10は、吸込室Kを介して吸い込まれるガス状の冷媒を圧縮室Hで圧縮し、圧縮した冷媒を吐出口Nを介して吐出する圧縮機構部Gと、吐出口Nを覆うように配置されるカバー9と、殻状の密閉容器8と、を備える。圧縮機構部Gは、吐出口Nが設けられる固定スクロール1と、その移動によって固定スクロール1との間に圧縮室Hを形成する旋回スクロール2と、を有している。そして、カバー9と固定スクロール1との間に所定の隙間Qが設けられ、さらに、カバー9と固定スクロール1との締結に伴う接触箇所が複数箇所に散在している。【選択図】図1

Description

本発明は、圧縮機等に関する。
空気調和機や冷凍機の他、給湯機といった冷凍サイクル装置に用いられる圧縮機には、摺動部の潤滑性を高め、また、圧縮室のシール性を高めるための潤滑油が封入されている。この潤滑油が冷凍サイクルの他の機器(例えば、熱交換器)に流入すると、圧縮機の潤滑不足を招き、また、冷凍サイクルの効率の低下を招く。そこで、圧縮機からの潤滑油の流出を抑制する技術として、例えば、以下の特許文献1が知られている。
すなわち、特許文献1には、「…固定スクロール2の上部は、固定上部壁2wで周囲を囲まれている。その上面を固定上部カバー200で覆い、カバーねじ200aで固定することにより、噴出室120が形成される」ことが記載されている。
特開2016-217167号公報
特許文献1に記載の技術では、前記した固定上部カバーが平板状を呈しており、この固定上部カバーと固定スクロールとが広範囲で接触している。このような構成では、吐出口を介して吐出された高温の冷媒の熱が、固定スクロール(固定部材)の周縁付近に伝熱しやすくなる。その結果、吸込側の冷媒の温度が上昇し、場合によっては、冷凍サイクルの効率の低下を招く可能性がある。
そこで、本発明は、潤滑油の流出を抑制しつつ、固定部材への伝熱を抑制する圧縮機等を提供することを課題とする。
前した課題を解決するために、本発明は、吐出口を覆うように配置されるカバーと固定部材との間に所定の隙間が設けられ、さらに、前記カバーと前記固定部材との締結に伴う接触箇所が複数箇所に散在していることを特徴とする。
本発明によれば、潤滑油の流出を抑制しつつ、固定部材への伝熱を抑制する圧縮機等を提供できる。
本発明の第1実施形態に係る圧縮機の縦断面図である。 本発明の第1実施形態に係る圧縮機の横断面図である。 本発明の第1実施形態に係る圧縮機のカバーの斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る圧縮機の固定スクロール及びカバーの斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る圧縮機の固定スクロール及びカバーの斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る圧縮機のカバーの斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る圧縮機の吸込パイプ及び吐出パイプの位置を示す平面図である。 本発明の第3実施形態に係る圧縮機のカバーの斜視図である。 本発明の第4実施形態に係る空気調和機の冷媒回路の説明図である。
≪第1実施形態≫
以下では、一例として、密閉容器8(図1参照)の上部に吐出パイプPbが設置されたスクロール式の圧縮機10について説明する。
<圧縮機の構成>
図1は、第1実施形態に係る圧縮機10の縦断面図である。
図1に示す圧縮機10は、固定スクロール1と旋回スクロール2との間の圧縮室Hにおいて、ガス状の冷媒を圧縮する機器である。図1に示すように、圧縮機10は、固定スクロール1及び旋回スクロール2を含む圧縮機構部Gを備えるとともに、電動機7、密閉容器8、カバー9等を備えている。
圧縮機構部Gは、吸込室Kを介して吸い込まれるガス状の冷媒を圧縮室Hで圧縮し、圧縮した冷媒を吐出口Nを介して吐出する機構である。圧縮機構部Gは、固定スクロール1と、旋回スクロール2と、を備え、密閉容器8内の上部空間に配置されている。
固定スクロール1は、密閉容器8内に固定されている「固定部材」である。固定スクロール1は、台板1aと、この台板1aに立設された渦巻状のラップ1bと、を有している。
旋回スクロール2は、その移動によって固定スクロール1との間に圧縮室Hを形成する「移動部材」である。旋回スクロール2は、固定スクロール1に対向した状態で、旋回自在に配置されている。旋回スクロール2は、台板2aと、この台板2aに立設された渦巻状のラップ2bと、を有している。
図2は、第1実施形態に係る圧縮機10の横断面図(図1のII−II線における横断面図)である。
図2に示すように、固定スクロール1が有する渦巻状のラップ1bと、旋回スクロール2が有する渦巻状のラップ2bと、が噛み合った状態にすることで、ラップ1b,2bの間に圧縮室Hが形成されるようになっている。前記した圧縮室Hは、冷媒を圧縮するための空間であり、旋回スクロール2のラップ2bの外線側に形成されるとともに、このラップ2bの内線側にも形成される。
再び、図1に戻って説明を続ける。
図1に示すフレーム3は、旋回スクロール2を支持する部材であり、固定スクロール1にボルトBで締結されている。
クランク軸4は、電動機7の駆動によって回転する軸であり、主軸受5a及び下軸受5bによって、回転自在に支持されている。図1に示すように、クランク軸4は、主軸4aと、偏心部4bと、を備えている。
主軸4aは、電動機7の回転子7bに同軸で固定されている。偏心部4bは、主軸4aに対して偏心しながら回転する軸であり、主軸4aと一体形成されている。この偏心部4bは、旋回スクロール2の背面側(下側)の旋回軸受5cに嵌合している。そして、偏心部4bが偏心しながら回転することによって、旋回スクロール2が旋回するようになっている。なお、クランク軸4の内部には、主軸受5a、下軸受5b、旋回軸受5c等に潤滑油を導く給油流路4cが形成されている。
旋回スクロール2とフレーム3との間には、オルダムリング6が配置されている。オルダムリング6は、偏心部4bの偏心回転を受けて、旋回スクロール2を自転させることなく旋回させる輪状部材である。このオルダムリング6は、旋回スクロール2の下面に形成された溝(図示せず)に装着されるとともに、フレーム3の上面に形成された溝(図示せず)に装着されている。
電動機7は、主軸4aを回転させる駆動源であり、フレーム3の下側に配置されている。図1に示すように、電動機7は、固定子7aと、回転子7bと、を備えている。固定子7aは、圧入や溶接等によって、密閉容器8の内周壁に固定されている。回転子7bは、固定子7a内において回転自在に配置されている。
密閉容器8は、圧縮機構部G、フレーム3、クランク軸4、オルダムリング6、電動機7、カバー9を収容する殻状の容器であり、略密閉された状態になっている。この密閉容器8には、圧縮機10の潤滑性やシール性を高めるための潤滑油が封入されている。なお、潤滑油は、密閉容器8の底部(ドットで示した領域J)に貯留されている。密閉容器8は、円筒状のケース8aと、このケース8aの上部に溶接される蓋チャンバ8bと、ケース8aの下部に溶接される底チャンバ8cと、を備えている。
図1に示す吸込パイプPaは、圧縮機構部Gの吸込室Kに冷媒を導く管であり、密閉容器8の蓋チャンバ8bに設置されている。なお、吸込室Kは、圧縮機構部Gにおいて冷媒を一時的に貯留するための空間である。
電動機7の駆動によって旋回スクロール2が旋回すると、吸込パイプPaを介してガス状の冷媒が吸込室Kに導かれる。そして、旋回スクロール2の旋回に伴って、次々に形成される圧縮室H(図2参照)の容積が縮小することで、冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出口Nを介して吐出される。なお、吐出口Nは、圧縮室Hで圧縮された冷媒を吐出するための孔であり、平面視において固定スクロール1の中心付近に設けられている。
図1に示す吐出パイプPbは、吐出口Nを介して吐出された冷媒が通流する管であり、密閉容器8の蓋チャンバ8bに設置されている。吐出パイプPbを介して圧縮機10から吐出された冷媒は、例えば、凝縮器(図示せず)、膨張弁(図示せず)、及び蒸発器(図示せず)を順次に介して冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)で循環し、さらに、吸込パイプPaを介して圧縮機10に戻るようになっている。
図1に示すカバー9は、吐出口Nを介して吐出された冷媒を自身に衝突させることで、冷媒に混在している潤滑油を分離するための板であり、概ね円板状を呈している。カバー9は、固定スクロール1の上側において吐出口Nを覆うように配置され、固定スクロール1にボルトD(図4参照)で締結されている。なお、前記した「覆う」という文言は、平面視において、カバー9の占める領域が、吐出口Nの領域を含んでいる(つまり、吐出口Nがカバー9で隠れている)ことを意味している。また、カバー9と固定スクロール1との間には、所定の隙間Qが設けられている。
このようなカバー9を設けることで、吐出口Nを介して吐出された冷媒(潤滑油が混在している冷媒)がカバー9に衝突するため、潤滑油の分離が促される。したがって、潤滑油が圧縮機10の外部に流出することを抑制し、ひいては、凝縮器(図示せず)や蒸発器(図示せず)での熱交換を効率的に行うことができる。また、潤滑油の流出を抑制することで、冷凍サイクルを構成する配管(図示せず)内の圧力損失が低減される。これによって、冷凍サイクルの高効率化を図ることができる。
図3は、カバー9の斜視図である。
図3に示すように、カバー9は、平板状(円板状)の平板部9aと、この平板部9aの周縁付近に設けられる3つの凹部9bと、が一体成形された構成になっている。平板部9aは、潤滑油が混在しているガス状の冷媒を自身に衝突させることで、潤滑油を分離させる(つまり、潤滑油を自身に付着させる)機能を有している。平板部9aには、吸込パイプPaへの干渉を防ぐための切欠Vが形成されている。
3つの凹部9bは、固定スクロール1(図4参照)とカバー9との接触箇所であり、平板部9aよりも下側(固定スクロール1側)に凹んでいる。これらの凹部9bには、それぞれ、ボルト挿通孔hが形成されている。そして、ボルト挿通孔hに挿通されたボルトD(図4参照)によって、固定スクロール1(図4参照)とカバー9とが締結されるようになっている。
図3に示す例では、カバー9の周縁付近に3つの凹部9bが設けられ、また、周方向において略等間隔で(約120°間隔で)凹部9bが設けられている。これによって、固定スクロール1(図4参照)に対してカバー9を強固に固定できる。
図4は、固定スクロール1及びカバー9の斜視図である。
図4に示す例では、固定スクロール1の台板1aの外周壁と、カバー9の周縁と、が略面一になっている。また、カバー9と固定スクロール1との間に所定の隙間Qが設けられ、さらに、カバー9と固定スクロール1との締結に伴う接触箇所(凹部9b)が3箇所に散在している。
なお、図4に示す例では、接触箇所である凹部9b以外の領域では、カバー9が固定スクロール1に接触していない。つまり、カバー9と固定スクロール1との接触面積が、比較的小さい。したがって、吐出口N(図1参照)を介して吐出された冷媒の熱でカバー9が高温になったとしても、固定スクロール1の周縁付近の吸込室K(図1参照)や吸込パイプPaへの伝熱を抑制できる。その結果、吸込室K等を通流する比較的低温の冷媒が、カバー9の熱で温められることを抑制し、ひいては、冷凍サイクルの効率の低下を抑制できる。
なお、カバー9に衝突した冷媒が旋回流として径方向外向きに流出するように、固定スクロール1の上面に所定形状の溝1cを形成してもよい。また、カバー9の周縁付近において、前記した隙間Qの幅(固定スクロール1とカバー9との間の上下方向の距離)が、周方向で異なっていることが好ましい。図4に示す例では、周方向において、溝1cの付近では隙間Qの幅が比較的長くなっており、また、それ以外の領域では隙間Qの幅が比較的短くなっている。
これによって、溝1c付近では冷媒の流速が比較的大きくなり、また、溝1c以外の領域では冷媒の流速が比較的小さくなる。このように冷媒の流速に変化をつけることで、冷媒に混在している潤滑油が分離されやすくなる。さらに具体的に説明すると、溝1cを介して流出した冷媒が密閉容器8(図1参照)の内周壁に勢いよく衝突することで、潤滑油の分離が促される。また、溝1c以外の領域を通過する冷媒は、その流速が比較的小さいため、潤滑油の分子がカバー9の裏面に衝突する頻度が高められる。これによって、前記した各領域の双方において、潤滑油の分離が促される。
<効果>
第1実施形態によれば、吐出口N(図1参照)を介して吐出された冷媒がカバー9に衝突するため、冷媒に混在している潤滑油を適切に分離できる。これによって、圧縮機10における各機器の潤滑性を向上させ、また、圧縮室Hのシール性を維持できる。また、冷凍サイクルを構成する熱交換器(凝縮器や蒸発器:図示せず)に潤滑油が流れ込むことを抑制し、ひいては、冷凍サイクルの効率の低下を抑制できる。
さらに、カバー9と固定スクロール1との間に所定の隙間Q(図4参照)が設けられ、カバー9と固定スクロール1との接触箇所(凹部9b)が3箇所に散在している。これによって、圧縮された冷媒の熱でカバー9が高温になっても、カバー9から固定スクロール1への伝熱を抑制できる。したがって、吸込室K等(図1参照)を通流する比較的低温の冷媒の温度上昇を抑制し、ひいては、冷凍サイクルの効率の低下を抑制できる。
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、吸込パイプPa(図5参照)の付近でカバー9Aが固定スクロール1に密着するように、カバー9Aに段差が設けられている点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
図5は、第2実施形態に係る圧縮機の固定スクロール1及びカバー9Aの斜視図である。
図5に示すように、カバー9Aは、平板部9aと、凹部9bと、密着部9cと、接続部9dと、が一体成形された構成になっている。そして、凹部9bに形成されたボルト挿通孔h1と、密着部9cに形成された2つのボルト挿通孔h2,h3と、の計3箇所において、カバー9Aが固定スクロール1にボルトDで締結されている。ボルト挿通孔h1,h2,h3は、周方向において略等間隔(約120°間隔)になるように、カバー9Aの周縁付近に設けられている。
図5に示すように、カバー9Aの平板部9aと固定スクロール1との間に所定の隙間Qが設けられ、さらに、カバー9Aと固定スクロール1との締結に伴う接触箇所が2箇所(凹部9b及び密着部9c)に散在している。
このようにカバー9Aを構成することで、後記するように、吸込パイプPa等への伝熱を抑制しつつ、冷媒に混在している潤滑油を適切に分離できる。次に、カバー9Aの各構成について詳細に説明する。
図6は、カバー9Aの斜視図である。
図6に示す平板部9aは、ガス状の冷媒を自身に衝突させることで、冷媒に混在している潤滑油を分離させる(つまり、潤滑油を自身に付着させる)部分であり、板状を呈している。
凹部9bは、固定スクロール1とカバー9Aとの接触箇所の一つであり、平板部9aよりも下側(固定スクロール1側)に凹んでいる。
密着部9cは、固定スクロール1の台板1aの上面に密着(接触)する板状の部分である。密着部9cは、前記したボルト挿通孔h1,h2の位置を含むように、平面視で所定形状に形成されている。また、密着部9cには、吸込パイプPa(図5参照)への干渉を防ぐための切欠Vが形成されている。
接続部9dは、平板部9aと密着部9cとを接続するための縦壁である。そして、固定スクロール1(図5参照)に密着する密着部9cと、固定スクロール1との間で所定の隙間Q(図5参照)を有する平板部9aと、が接続部9dを介して一体成形されている。
別の観点から説明すると、カバー9Aは、次に説明する「第1領域」(密着部9c)と、「第2領域」(平板部9a、凹部9b、及び接続部9d)と、を有している。「第1領域」は、吸込パイプPaの付近に設けられて、固定スクロール1に接触している領域である。また、「第2領域」は、カバー9Aの「第1領域」以外の領域である。この「第2領域」には、所定の隙間Qが設けられた部分(平板部9a及び接続部9d)が含まれている。
このような構成によれば、次のような効果が奏される。すなわち、圧縮された高温の冷媒が平板部9aに衝突し、さらに、平板部9aと固定スクロール1との間の隙間Qを介して径方向に流れ出る。ここで、吸込パイプPaの付近では、カバー9Aと固定スクロール1とが密着しているため、圧縮された高温の冷媒が吸込パイプPaに直接当たることがない。したがって、吸込パイプPaを通流する比較的低温の冷媒の温度上昇を抑制し、ひいては、冷凍サイクルの効率の低減を抑制できる。
図7は、吸込パイプPa及び吐出パイプPbの位置を示す平面図である。
なお、図7では、密閉容器8の蓋チャンバ8b(図1参照)や、3つのボルトD(図5参照)の図示を省略している。また、図7では、吸込パイプPaを二点鎖線で図示し、吐出パイプPbを破線で図示している。
図7に示すように、カバー9Aは、平面視において円形状を呈し、3つの締結箇所(ボルト挿通孔h1,h2,h3)で固定スクロール1に締結されている。そして、円形状のカバー9Aの中心Oを基準として、このカバー9Aの周縁の一部(中心角θに対応する部分)を円弧とする所定の扇形領域S(ドットで示した領域)内に、平面視での吐出パイプPbの設置箇所が存在している。なお、中心角θが180°以上の場合も「扇形」に含まれるものとする。
扇形領域Sの輪郭を構成する一対の線分L1,L2は、周方向において吸込パイプPaの両側に設けられたボルト挿通孔h1,h2(一対の締結箇所)を通っている。より詳しく説明すると、一方の線分L1は、周方向において吸込パイプPaの一方側に設けられたボルト挿通孔h1を通っている。また、他方の線分L2は、周方向において吸込パイプPaの他方側に設けられたボルト挿通孔h2を通っている。
また、扇形領域Sは、前記した「第2領域」内の凹部9bに設けられたボルト挿通孔h3(別の締結箇所)を含んでいる。さらに、平面視での吐出パイプPbの設置箇所は、扇形領域S内に存在するとともに、ボルト挿通孔h1,h2(一対の締結箇所)、及びボルト挿通孔h3(別の締結箇所)の3点を通る円Cの内部に存在している。
このような構成によれば、カバー9Aの平板部9aと固定スクロール1との間の隙間Qを介して、径方向(吸込パイプPaとは反対側、つまり、凹部9bの側)に流れ出た冷媒は、密閉容器8の内周壁に衝突した後、密閉容器8の天井に向かって上昇する。ここで、吐出パイプPbの設置箇所は、前記したように、円Cの内部(つまり、平面視でカバー9Aの中心付近)に存在している。したがって、密閉容器8の天井に冷媒が当たって潤滑油がさらに分離された後、吐出パイプPbに冷媒が流入する。これによって、冷媒に混在している潤滑油の分離がさらに促される。
また、平面視において吐出パイプPbは扇形領域Sの内部に設置されているが、吸込パイプPaは扇形領域Sの外部に設置されている。ここで、隙間Qを通流する高温の冷媒の径方向外向きの流れに着目すると、平板部9aの円弧状の周縁付近を通った冷媒は、密閉容器8の内周壁に向かうが、吸込パイプPaの方に向かうことはない。なぜなら、接続部9dで冷媒の流れが堰き止められるからである。これによって、平板部9aと固定スクロール1との間の隙間Qを介して吐出された高温の冷媒が、吸込パイプPaに直接当たることを抑制できる。したがって、吸込パイプPaを通流する冷媒の温度上昇を抑制できる。
<効果>
第2実施形態によれば、吸込パイプPaの付近では、カバー9Aが固定スクロール1に密着している(図5参照)。これによって、カバー9Aと固定スクロール1との間の隙間Qを通流する冷媒が吸込パイプPaに直接当たることを抑制できる。したがって、吸込パイプPaを通流する冷媒の温度上昇を抑制できる。
また、平面視において、前記した扇形領域S内に吐出パイプPbが設置されている(図7参照)。したがって、隙間Qを介して流れ出た冷媒が、吸込パイプPaに直接当たらずに、吐出パイプPbに流入する。これによって、吸込パイプPaを通流する冷媒の温度上昇を抑制できる。
また、吐出パイプPbは、ボルト挿通孔h1,h2,h3を通る円Cの内部に設けられている。したがって、隙間Qを介して径方向に流れ出た冷媒が、密閉容器8の内周壁や天井に衝突しやすくなるため、潤滑油の分離が促される。
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、カバー9B(図8参照)に複数の溝9eが形成されている点が、第2実施形態とは異なっているが、その他については第2実施形態と同様である。したがって、第2実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
図8は、第3実施形態に係る圧縮機のカバー9Bの斜視図である。
図8に示すように、カバー9Bは、吐出口N(図1参照)を介して自身に衝突した冷媒の流れが旋回流となるように、複数の溝9eを有している。より具体的に説明すると、平板部9aの周縁から中心付近に向けて、平面視で曲線状を呈する5つの溝9eが形成されている。
このような溝9eを設けることで、吐出口N(図1参照)を介してカバー9Bに衝突した冷媒の流れが、旋回流になりやすくなる。したがって、例えば、密閉容器8の内周壁に冷媒が衝突した際、潤滑油が第2実施形態よりもさらに分離されやすくなる。すなわち、質量の比較的大きな液滴(潤滑油)は、その慣性力によって直進しやすい(つまり、曲がりにくい)ため、ガス状の冷媒よりも旋回半径が大きくなって、分離されやすくなる。
<効果>
第3実施形態によれば、前記したように、カバー9Bに形成された5つの溝9eによって、冷媒の流れが旋回流になるため、潤滑油の分離が促される。これによって、圧縮機の摺動部(例えば、各軸受)での摩擦が抑制され、また、圧縮室H(図1参照)のシール性を維持できる。また、冷凍サイクルを構成する熱交換器(凝縮器や蒸発器:図示せず)に潤滑油が流れ込むことを抑制し、ひいては、冷凍サイクルの効率の低下を抑制できる。
≪第4実施形態≫
第4実施形態では、第1実施形態で説明した圧縮機10(図1参照)を備える空気調和機W(冷凍サイクル装置:図9参照)について説明する。
図9は、空気調和機Wの冷媒回路Fの説明図である。
なお、図9の実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。
また、図9の破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
空気調和機Wは、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)で冷媒を循環させることによって、空調を行う機器である。図9に示すように、空気調和機Wは、圧縮機10と、室外熱交換器20と、室外ファン30と、膨張弁40と、四方弁50と、室内熱交換器60と、室内ファン70と、を備えている。
図9に示す例では、圧縮機10、室外熱交換器20、室外ファン30、膨張弁40、及び四方弁50が、室外機Woに設けられている。一方、室内熱交換器60及び室内ファン70は、室内機Wiに設けられている。
圧縮機10は、ガス状の冷媒を圧縮する機器であり、第1実施形態(図1参照)と同様の構成を備えている。
室外熱交換器20は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室外ファン30から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。
室外ファン30は、室外ファンモータ31の駆動によって、室外熱交換器20に外気を送り込むファンであり、室外熱交換器20の付近に設置されている。
室内熱交換器60は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室内ファン70から送り込まれる室内空気(空調対象空間の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。
室内ファン70は、室内ファンモータ71の駆動によって、室内熱交換器60に室内空気を送り込むファンであり、室内熱交換器60の付近に設置されている。
膨張弁40は、「凝縮器」(室外熱交換器20及び室内熱交換器60の一方)で凝縮した冷媒を減圧する機能を有している。なお、膨張弁40によって減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器20及び室内熱交換器60の他方)に導かれる。
四方弁50は、空気調和機Wの運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。例えば、冷房運転時(図9の破線矢印を参照)には、圧縮機10、室外熱交換器20(凝縮器)、膨張弁40、及び室内熱交換器60(蒸発器)が、四方弁50を介して環状に順次接続されてなる冷媒回路Fにおいて、冷凍サイクルで冷媒が循環する。
また、暖房運転時(図9の実線矢印を参照)には、圧縮機10、室内熱交換器60(凝縮器)、膨張弁40、及び室外熱交換器20(蒸発器)が、四方弁50を介して環状に順次接続されてなる冷媒回路Fにおいて、冷凍サイクルで冷媒が循環する。
このように、圧縮機10、「凝縮器」、膨張弁40、及び「蒸発器」を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環するようになっている。なお、圧縮機10、室外ファン30、膨張弁40、室内ファン70等の機器は、不図示の制御装置からの指令に基づいて駆動する。
<効果>
第4実施形態によれば、圧縮機10からの潤滑油の流出を抑制することで、運転効率の高い空気調和機Wを提供できる。
≪変形例≫
以上、本発明に係る圧縮機10等について各実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、吐出パイプPb(図1参照)の設置箇所が、密閉容器8の蓋チャンバ8b(図1参照)の中央付近である構成について説明したが、これに限らない。例えば、吐出パイプPbを蓋チャンバ8bの別の箇所に設置してもよいし、また、ケース8a(図1参照)に設置してもよい。
また、第1実施形態では、カバー9と固定スクロール1との締結に伴う接触箇所が3箇所である構成(図4参照)について説明し、第2、第3実施形態では、前記した接触箇所が2箇所(図5、図8参照)である構成について説明したが、これに限らない。すなわち、前記した接触箇所が4箇所以上であってもよい。つまり、前記した接触箇所が、複数箇所に散在している構成であればよい。
また、第1実施形態では、カバー9の周縁付近において、カバー9と固定スクロール1との間の隙間Qの幅が周方向で異なっている構成(図4参照)について説明したが、これに限らない。すなわち、隙間Qの幅が周方向で均一であってもよい。このような構成でも、カバー9から固定スクロール1への伝熱を抑制しつつ、冷媒に混在している潤滑油を適切に分離できる。なお、第2、第3実施形態についても同様のことがいえる。
また、第2実施形態では、吐出パイプPb(図7参照)の設置箇所が扇形領域Sの内部に存在するとともに、ボルト挿通孔h1,h2,h3の3点を通る円Cの内部に存在する構成について説明したが、これに限らない。例えば、吐出パイプPbの設置箇所が扇形領域Sの内部に存在するとともに、円Cの外部に存在する構成にしてもよい。このような構成でも、平板部9aと固定スクロール1との間の隙間Qを介して流れ出た高温の冷媒が、吸込パイプPaに直接当たることを抑制できる。
また、例えば、吐出パイプPbの設置箇所が扇形領域Sの外部に存在するとともに、円Cの内部に存在する構成にしてもよい。このような構成でも、密閉容器8の天井に冷媒が当たって潤滑油が分離されやすくなる。
また、各実施形態では、圧縮機10がスクロール式の圧縮機である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、ロータリ式等の別タイプの圧縮機にも適用できる。
また、各実施形態は、適宜に組み合わせることが可能である。例えば、第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせ、カバー9が3つの凹部9b(図3参照)を有するとともに(第1実施形態)、冷媒の流れを旋回流にするための複数の溝9e(図8参照)を有する構成にしてもよい(第3実施形態)。また、第2実施形態又は第3実施形態で説明した圧縮機を用いて、空気調和機を構成することも可能である。
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
1 固定スクロール(固定部材)
2 旋回スクロール(移動部材)
3 フレーム
4 クランク軸
6 オルダムリング
7 電動機
8 密閉容器
8a ケース
9,9A,9B カバー
9a 平板部(第2領域)
9b 凹部(接触箇所、第2領域)
9c 密着部(接触箇所、第1領域)
9d 接続部(第2領域)
9e 溝
10 圧縮機
20 室外熱交換器(凝縮器、蒸発器)
30 室外ファン
40 膨張弁
50 四方弁
60 室内熱交換器(蒸発器、凝縮器)
70 室内ファン
C 円
F 冷媒回路
G 圧縮機構部
H 圧縮室
K 吸込室
L1,L2 線分(一対の線分)
N 吐出口
O 中心
Pa 吸込パイプ
Pb 吐出パイプ
Q 隙間
S 扇形領域
W 空気調和機(冷凍サイクル装置)
h1,h2 ボルト挿通孔(一対の締結箇所)
h3 ボルト挿通孔(別の締結箇所)

Claims (7)

  1. 吸込室を介して吸い込まれるガス状の冷媒を圧縮室で圧縮し、圧縮した冷媒を吐出口を介して吐出する圧縮機構部と、
    前記吐出口を覆うように配置されるカバーと、
    少なくとも前記圧縮機構部及び前記カバーを収容し、潤滑油が封入される殻状の密閉容器と、を備え、
    前記圧縮機構部は、前記吐出口が設けられる固定部材と、その移動によって前記固定部材との間に前記圧縮室を形成する移動部材と、を有し、
    前記カバーと前記固定部材との間に所定の隙間が設けられ、さらに、前記カバーと前記固定部材との締結に伴う接触箇所が複数箇所に散在していること
    を特徴とする圧縮機。
  2. 前記密閉容器に設置され、前記吸込室に冷媒を導く吸込パイプを備え、
    前記カバーは、
    前記吸込パイプの付近に設けられて、前記固定部材に接触している第1領域と、
    前記カバーの前記第1領域以外の領域である第2領域と、を有し、
    前記第2領域には、前記所定の隙間が設けられた部分が含まれていること
    を特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記密閉容器に設置され、前記吐出口を介して吐出された冷媒が通流する吐出パイプを備え、
    平面視において円形状を呈する前記カバーが、少なくとも3つの締結箇所で前記固定部材に締結されており、
    円形状の前記カバーの中心を基準として、前記カバーの周縁の一部を円弧とする所定の扇形領域内に、平面視での前記吐出パイプの設置箇所が存在し、
    前記扇形領域の輪郭を構成する一対の線分は、周方向において前記吸込パイプの両側に設けられた一対の締結箇所を通っており、
    前記扇形領域は、前記第2領域内の別の締結箇所を含んでいること
    を特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
  4. 平面視での前記吐出パイプの設置箇所は、前記扇形領域内に存在するとともに、前記一対の締結箇所、及び前記別の締結箇所の3点を通る円の内部に存在していること
    を特徴とする請求項3に記載の圧縮機。
  5. 前記カバーの周縁付近において、前記所定の隙間の幅が、周方向で異なっていること
    を特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  6. 前記カバーは、前記吐出口を介して自身に衝突した冷媒の流れが旋回流となるように、複数の溝を有していること
    を特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の圧縮機を備えるとともに、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を備え、
    前記圧縮機、前記凝縮器、前記膨張弁、及び前記蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環すること
    を特徴とする冷凍サイクル装置。
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