JP2019073008A - インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 Download PDF

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【課題】記録ヘッドの吐出口面が重力方向に対して傾いて配置された記録ヘッドからインクを吐出しても、画像の混色を抑制できるインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】色材を含有する第1インク及び第2インク;並びに、前記第1インクを吐出する第1吐出口列I及び前記第2インクを吐出する第2吐出口列IIが形成された吐出口面8aを有し、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列が重力方向において下から順に隣接して配置されるとともに、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の少なくとも一部が重複するように配置された記録ヘッド;を具備するインクジェット記録装置を使用するインクジェット記録方法であって、記録工程を有し、前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、樹脂を含有し、前記第2インク中の前記樹脂の含有量が、前記第1インク中の前記樹脂の含有量より小さいことを特徴とするインクジェット記録方法。【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
近年、インクジェット記録装置は、商業印刷分野やオフィス印刷分野で使用する機会が増えている。商業印刷分野やオフィス印刷分野においては、インクジェット記録装置の小型化が求められている。装置の小型化のため、記録ヘッドの吐出口面が重力方向に対して傾いて配置された記録ヘッドを用いることで、記録媒体の搬送距離を短くすることが検討されている(特許文献1参照)。また、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックなどの複数のインクに対応する複数の記録ヘッドを用いるのではなく、複数のインクを吐出するための複数の吐出口列を有する記録ヘッドを用いることが検討されている(特許文献2参照)。
特開2005−342982号公報 特開2008−023989号公報
本発明者らは、記録ヘッドの吐出口面が重力方向に対して傾くとともに、複数のインクを吐出するための複数の吐出口列を有する記録ヘッドを用いて、検討を行った。その結果、前記記録ヘッドからインクを吐出すると、記録される画像に混色が生ずる場合があることが判明した。
したがって、本発明の目的は、重力方向に対して傾くとともに、複数のインクを吐出するための複数の吐出口列を有する記録ヘッドからインクを吐出しても、画像の混色を抑制できるインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクジェット記録方法を使用するインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明は、色材を含有する水性インクである第1インク及び第2インク;並びに、前記第1インクを吐出する第1吐出口列及び前記第2インクを吐出する第2吐出口列が形成された吐出口面を有し、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列が重力方向において下から順に隣接して配置されるとともに、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の少なくとも一部が記録媒体の搬送方向において重複するように配置された記録ヘッド;を具備するインクジェット記録装置を使用するインクジェット記録方法であって、前記記録ヘッドの有する前記吐出口面と重力方向のなす角が0°以上90°未満となるように配置された前記記録ヘッドから、前記水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録する記録工程を有し、前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、樹脂を含有し、前記第2インク中の前記樹脂の含有量が、前記第1インク中の前記樹脂の含有量より小さいことを特徴とするインクジェット記録方法に関する。
また、本発明は、色材を含有する水性インクである第1インク及び第2インク;並びに、前記第1インクを吐出する第1吐出口列及び前記第2インクを吐出する第2吐出口列が形成された吐出口面を有し、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列が重力方向において下から順に隣接して配置されるとともに、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の少なくとも一部が記録媒体の搬送方向において重複するように配置された記録ヘッド;を具備するインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの有する前記吐出口面と重力方向のなす角が0°以上90°未満となるように配置された前記記録ヘッドから、前記水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録し、前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、樹脂を含有し、前記第2インク中の前記樹脂の含有量が、前記第1インク中の前記樹脂の含有量より小さいことを特徴とするインクジェット記録装置に関する。
本発明によれば、重力方向に対して傾くとともに、複数のインクを吐出するための複数の吐出口列を有する記録ヘッドからインクを吐出しても、画像の混色を抑制できるインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供することができる。
記録ヘッドの吐出口面と重力方向の関係を示す図であり、(a)は記録ヘッドの吐出口面と重力方向のなす角が90°である場合を示す図、(b)は前記なす角が約45°である場合を示す図、(c)は前記なす角が0°である場合を示す図である。 記録ヘッドの一例を模式的に示す図であり、(a)は記録素子基板の模式図、(b)は記録ヘッドの斜視図である。 ラインヘッドの一例を模式的に示す図であり、複数の吐出口列の配列方向において(a)は記録素子基板が千鳥状に配置(非隣接配置)されたラインヘッドの模式図、(b)は記録素子基板が直線状に配置(隣接配置)されたラインヘッドの模式図である。 インクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)は装置全体の断面図、(b)は記録ヘッド周辺の拡大図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に述べる。本発明においては、以下、水性インクは、「インク」と記載することがある。各種の物性値は、特に断りのない限り、温度25℃における値である。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を表すものとする。
図1は、記録ヘッドの吐出口面と重力方向の関係を示す図であり、(a)は記録ヘッドの吐出口面と重力方向のなす角が90°である場合を示す図、(b)は前記なす角が約45°である場合を示す図、(c)は前記なす角が0°である場合を示す図である。図1中、θは、記録ヘッド8の吐出口面8aと重力方向(図1中、矢印G)のなす角を示している。一般的なインクジェット記録方法では、図1(a)に示す通り、記録ヘッドの吐出口面と重力方向のなす角が90°、つまり吐出口面が重力方向に対して略垂直である記録ヘッドからインクを吐出して、画像を記録する。しかし、本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドの吐出口面と重力方向のなす角が0°以上90°未満、つまり吐出口面が重力方向に対して傾いて配置された記録ヘッドからインクを吐出して、画像を記録する。図1(c)に示す通り、記録ヘッドの吐出口面と重力方向のなす角が0°、つまり吐出口面が重力方向に対して略水平であってもよい。
重力方向に対して傾くとともに、複数のインクを吐出するための複数の吐出口列を有する記録ヘッドを用いると、特に、画像を連続して記録した後に吐出口から一定時間インクが吐出されない状態が続く場合、画像に混色が生ずることが判明した。その理由は以下の通りである。
画像を連続して記録すると、インクの吐出の際に溢れたインクが吐出口の周囲に付着しやすい。さらに、主インク滴の他に、付随して発生する小さなインク滴(以下、「ミスト」と記載)が増え、ミストが吐出口の周囲に付着しやすい。このように周囲にインクが付着した吐出口から一定時間インクが吐出されない状態が続くと、付着したインク中の液体成分が蒸発することで、インク中の樹脂が析出して、吐出口の周囲に凸凹が生じやすい。特に、付着したインク中の液体成分の蒸発は、高温や低湿の環境で促進される。再び画像を連続して記録すると、吐出口の周囲に生じた凸凹により、すでに吐出口の周囲にインクが付着しやすい状態であったが、インクがさらに付着しやすくなる。
吐出口の周囲にインクが付着しやすくなる現象は、吐出口面が重力方向に対して垂直である記録ヘッドからインクを吐出して画像を記録する通常のインクジェット記録方法でも生ずる現象である。その場合には、インクの混色は生じていなかった。インクの混色は、記録ヘッドの吐出口面が重力方向に対して傾いて配置された記録ヘッドを用いて画像を記録する場合に生ずる課題である。
ここでは、一例として、図1(b)に示す通り、4つの吐出口列I〜IVが形成された吐出口面を有する記録ヘッドの隣接する吐出口列I及びIIに着目して説明する。それぞれの吐出口列を形成する吐出口群は、記録媒体の搬送方向(図1(b)中、矢印A)と略直交して配置されている。記録媒体は、矢印Aの方向に搬送され、インクが吐出口列I及びIIの順で記録媒体に吐出される。
記録ヘッドの吐出口面が重力方向に対して傾いて配置された記録ヘッドを用いて画像を記録すると、吐出口列IIを構成する吐出口の周囲において、吐出口列Iの方向に向かって付着したインクに、重力方向への力が加わる。これにより、吐出口列IIを構成する吐出口の周囲において、吐出口列Iの方向に向かってインクが溜まりやすい。画像を連続して記録すると、吐出口列IIを構成する吐出口の周囲において、吐出口列Iの方向に向かってインクがさらに溜まる。そして、吐出口列IIの吐出口に形成されていたインクのメニスカスが破壊されることで、インクが溢れ、吐出口列IIから吐出するインクが吐出口面を伝って垂れてしまい、吐出口列Iに入り込む。これにより、吐出口列Iから吐出するインクが混色し、記録される画像に混色が生ずる。
さらに、記録媒体の搬送方向において、吐出口列I及び吐出口列IIの少なくとも一部が重複するように配置される記録ヘッドでは、吐出口列IIから吐出するインクが吐出口列Iに入り込みやすい。これにより、吐出口列Iから吐出するインクが混色し、記録される画像に混色が生ずる。
本発明者らは、画像の混色を抑制するために、隣接する2つの吐出口列から吐出するインク中の樹脂量の関係に着目した。樹脂の含有量が大きいインクを吐出すると、吐出口の周囲に樹脂が析出しやすい。そのため、吐出口の周囲に凸凹が生じて、インクが付着しやすい。樹脂の含有量が大きいインクを吐出する吐出口列を重力方向において上に配置すると、樹脂の含有量の大きいインクが樹脂の含有量の小さいインクに入り込む。これにより、インクが混色して、記録される画像に混色が生ずる。一方、樹脂の含有量が小さいインクを吐出しても、吐出口の周囲に樹脂が析出しにくい。そのため、吐出口の周囲に凸凹が生じにくく、吐出口にインクが付着しにくい。樹脂の含有量が小さいインクを吐出する吐出口列を重力方向において上に配置しても、樹脂の含有量の小さいインクが樹脂の含有量の大きいインクに入り込みにくい。これにより、インクが混色しにくくなり、記録される画像の混色を抑制できる。つまり、樹脂の含有量が小さいインクを吐出する吐出口列を重力方向において上に配置することで、画像の混色を抑制できる。
<インクジェット記録方法>
本発明に用いる記録ヘッドは、第1インク及び第2インクを吐出する第1吐出口列及び第2吐出口列が重力方向において下から順に隣接して配置される。さらに、第2インク中の樹脂の含有量は、第1インク中の樹脂の含有量より小さい。記録ヘッドが複数の吐出口列(第3吐出口列や第4吐出口列)を有する場合でも、隣接するそれぞれの吐出口列から吐出されるインク中の樹脂の含有量の関係を満たすことが好ましい。これにより、画像の混色を抑制できる。
また、第1インク及び第2インクは、異なる色相であってもよいし、同一の色相であってもよい。第1インク及び第2インクが異なる色相であると、記録される画像の混色が目立ちやすいが、そのような場合でも、本発明の構成を採用することで、画像の混色を抑制できる。第1インク及び第2インクの色相は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどから選択できる。異なる色相である場合、第1インク及び第2インクは、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクからなる群より選択される2種のインクの組み合わせであることが好ましい。同一の色相である場合、第1インク及び第2インクは、濃インク及び淡インクの関係となる。第1インク及び第2インクの組み合わせは、ブラックの色相を有する濃インク(ブラックインク)及びブラックの色相を有する淡インク(グレーインク)、シアンの色相を有する濃インク(シアンインク)及びシアンの色相を有する淡インク(ライトシアンインク)、並びにマゼンタの色相を有する濃インク(マゼンタインク)及びマゼンタの色相を有する淡インク(ライトマゼンタインク)からなる群より選択される1種の組み合わせであることが好ましい。
<インクジェット記録装置>
以下、図2〜4において、X方向は水平方向、Y方向はインクジェット記録装置の奥行方向、Z方向は垂直方向をそれぞれ示す。
図2は、記録ヘッドの一例を模式的に示す図であり、(a)は記録素子基板の模式図、(b)は記録ヘッドの斜視図である。記録ヘッドは、複数のインクを吐出する複数の吐出口列が形成された吐出口面を有する。なかでも、図2に示す通り、複数の吐出口列が配置された1つの記録素子基板を具備する記録ヘッドを用いることが好ましい。図2(a)は、Y方向に配列された4つの吐出口列(100a〜100d)を有する記録素子基板H1110を示している。記録ヘッドの有する吐出口面は、吐出口列を有する記録素子基板H1110を具備している面である。記録素子基板は、複数の吐出口列を有していればよい。例えば、1つの記録素子基板が4つの吐出口列を有する場合、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック(CMYK)などの4種のインクを4つの吐出口列からそれぞれ吐出する。
あるインクを吐出する吐出口で構成される吐出口列と、別のインクを吐出する吐出口で構成される吐出口列の間の距離(mm)は、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.1mm以上1.0mm以下であることがより好ましい。前記距離は、0.3mm以上1.0mm以下であることがさらに好ましい。ここで、吐出口列の間の距離とは、あるインクを吐出する各吐出口の中心をつないだ直線と、別のインクを吐出する各吐出口の中心をつないだ直線との間の距離のことである。1種のインクを吐出する吐出口列が複数存在する場合の吐出口列の間の距離とは、X方向において最も近い距離にある、あるインクを吐出する吐出口で構成される吐出口列と、別のインクを吐出する吐出口で構成される吐出口列の間の距離のことである。
吐出口列の間の距離が短いと、吐出口列を密に配置できるため、より高画質な画像を記録できるものの、吐出口から別の吐出口にインクが混色しやすいため、記録される画像の混色という課題が顕著に生ずる。そのような場合でも、本発明の構成を採用することで、画像の混色を抑制できる。
記録ヘッドの吐出口の中心を通る長径(μm)は、10μm以上50μm以下であることが好ましい。さらに、記録ヘッドから吐出するインク1滴あたりの吐出量(ng)は、8.0ng以下であることが好ましい。前記吐出量が8.0ngを超えると、インクの吐出の際にインクが溢れやすく、ミストも増えやすいため、吐出口の周囲においてインクがさらに付着しやすい。これにより、インクが混色しやすく、画像の混色を十分に抑制できない場合がある。前記吐出量(ng)は、2.0ng以上であることがより好ましい。
図2(b)は、1つの記録素子基板H1110を具備する記録ヘッド8を示している。記録ヘッドは、1つの記録素子基板を具備してもよいし、複数の記録素子基板を具備していてもよい。複数の記録素子基板を具備する記録ヘッドを用いる場合、図2におけるY方向に沿って記録媒体の幅に相当する分だけ複数の記録素子基板が配列されている記録ヘッド、いわゆるラインヘッドを用いることが好ましい。複数の記録素子基板を具備する記録ヘッドを用いる場合、記録媒体の搬送方向において、吐出口が重複するように、複数の記録素子基板を配置させることが好ましい。これにより、記録素子基板の間のつなぎ部における黒スジや白抜けを抑制することができるものの、吐出口を重複させていることで、吐出口から別の吐出口にインクが混色しやすいため、記録される画像の混色という課題が顕著に生ずる。そのような場合でも、本発明の構成を採用することで、画像の混色を抑制できる。
図3は、ラインヘッドの模式図であり、複数の吐出口列の配列方向において(a)は記録素子基板が千鳥状に配置(非隣接配置)されたラインヘッドの模式図、(b)は記録素子基板が直線状に配置(隣接配置)されたラインヘッドの模式図である。図3は、支持基板に、複数の記録素子基板H1110が配置されている。装置の小型化を図るべく、ラインヘッドの、図3におけるX方向の長さの増大を抑えるためには、複数の記録素子基板H1110が、第1吐出口列及び第2吐出口列の配列方向において、隣接して配置されるラインヘッドを用いることが好ましい。すなわち、複数の記録素子基板H1110が、直線状に配置されたラインヘッドを用いることが好ましい。さらに、記録素子基板の形状としては、平行四辺形、長方形、台形、その他形状が挙げられるが、平行四辺形であることが好ましい。
インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式などを挙げることができる。なかでも、インクを吐出する方式は、インクに熱エネルギーを付与する方式であることが好ましい。
図4は、インクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)は装置全体の断面図、(b)は記録ヘッド周辺の拡大図である。図4に示す通り、装置の小型化のため、複数種のインクに対応する複数の記録ヘッドにより画像を記録するのではなく、複数種のインクを吐出できる1つの記録ヘッドにより画像を記録できるインクジェット記録装置を用いることが好ましい。インクを吐出して画像を記録する際には、図4に示す通り、記録ヘッド8の吐出口面8aと重力方向のなす角は、0°以上90°未満となり、重力方向に対して傾いた記録ヘッド8からインクを吐出して、画像を記録する。
また、インクを吐出して画像を記録する際には、記録媒体Sと重力方向のなす角と、記録ヘッド8の吐出口面8aと重力方向のなす角との差は、±5°以下であることが好ましく、0°であることがさらに好ましい。すなわち、吐出口列Iを形成する吐出口と記録媒体Sの間の距離と、吐出口列IVを形成する吐出口と記録媒体Sの間の距離との差は、±1mm以下であることが好ましく、0mmであることがさらに好ましい。ここで、吐出口と記録媒体Sの間の距離は、吐出口の中心と、吐出口の中心から重力方向に線を延ばした場合のその線と記録媒体とが交差する位置との間の距離のことである。このように、画像を記録する際の記録媒体の搬送方向を上記の条件とすることで、X方向における記録媒体の搬送距離も短くなり、装置の小型化が可能である。X方向における記録媒体の搬送距離をより短くするために、記録ヘッドの吐出口面と重力方向のなす角は、10°以上80°以下であることが好ましく、30°以上60°以下であることがさらに好ましい。
記録ヘッド8の吐出口面8aは、プラテン9と対向している。図4において、プラテン9の平面は重力方向に対して約45°傾いており、記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように重力方向に対して約45°傾いている。インクジェット記録装置が記録動作をしていない場合、記録ヘッド8の吐出口面8aと重力方向とのなす角は、90°となる。
さらに、画像を記録する際の、記録媒体の搬送経路を説明する。図4(b)において、記録媒体Sは、第1ガイド10に案内され、用紙センサ11で記録媒体Sの先端位置が検知される。記録媒体Sは、第1搬送ローラ12とバネ付勢された拍車などで構成された第1ピンチローラ13とに挟持されながら、記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに向けて搬送される。記録領域Pでは、記録ヘッド8の有する複数の吐出口列(I〜IV)から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、第2搬送ローラ14と第2ピンチローラ15とに挟持されながら、第2ガイド16に案内されて、搬送される。画像を記録する際の記録媒体の搬送方向は、図4(b)に示す方向と逆方向でもよいが、図4(b)に示す方向であることが好ましい。すなわち、記録媒体の搬送方向において上流側に配置されている第1吐出口列(吐出口列I)は、記録媒体の搬送方向において下流側に配置されている第2吐出口列(吐出口列II)よりも重力方向において下に配置することが好ましい。また、画像を記録する際の記録媒体の搬送方向は、吐出口列I〜IVの配列方向と交差する方向であることが好ましい。
インクの吐出量のばらつきを抑制するために、画像データにもとづくインクの吐出の前に、インクを予備加熱することが好ましい。この予備加熱は、インクを吐出するための記録素子近傍に存在する加熱素子による加熱である。インクを加熱することで、インクの乾燥が促進され、かつインクの粘度が下がりやすいため、吐出口から吐出するインクが吐出口面を伝って垂れやすく、インクが混色しやすい。これにより、記録される画像の混色という課題が顕著に生ずる。そのような場合でも、本発明の構成を採用することで、画像の混色を抑制できる。
さらに、記録ヘッドの吐出口面は、撥水処理されていることが好ましい。これにより、吐出口の周囲に付着するインクと吐出口面の接触角が大きくなるため、インク滴が粒状になりやすい。そのため、吐出口面を伝って重力方向に垂れにくく、画像の混色をさらに抑制できる。
吐出口面を撥水処理するための方法としては、撥水性材料をスプレーで塗布する方法や、真空蒸着やプラズマ重合により撥水性材料を付着させるという方法などを選択することができる。形成された吐出口面の撥水性は、その部材表面における水滴の接触角を測定することにより特定することができる。水の接触角が70度以上である場合は、撥水性を有するということができ、水の接触角が90度以上である場合が好ましい。なお、水との接触角は、純水(イオン交換水)を用い、一般的な接触角計を使用して測定することができる。このような接触角計としては、例えば、自動接触角測定機(CA−W、協和界面科学製)が挙げられる。
撥水性材料としては、例えば、フッ素樹脂系の化合物が好ましく用いられる。特に、フッ素樹脂系の化合物からなる一様な樹脂膜として撥水面が形成されていることが好ましく、この樹脂膜にはニッケルなどの金属が含まれないことが好ましい。フッ素樹脂系の化合物は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、環状構造を有するフッ素樹脂、などが挙げられる。具体的には、ポリフロンPTFE(ダイキン工業製)や、テフロン(登録商標)PTFE(デュポン製)、サイトップ(旭硝子製)などを挙げることができる。さらには、その他のフッ素原子を含有する樹脂、例えば、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フッ素化アクリル樹脂、フッ素化ウレタン樹脂、フッ素化シロキサン樹脂及びそれらの変性樹脂なども用いることができる。また、撥水性材料として、珪素原子を含む化合物やシリコーン系樹脂を用いてもよい。
なかでも、高度な撥水性と耐久性が得られることから、撥水性材料として、フルオロアルキル基を有する加水分解性シラン化合物、及びカチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物の縮合物を用いることが好ましい。また、この縮合物を、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化させた樹脂を用いてもよい。これらの加水分解性シラン化合物は、その分子構造中に加水分解性基を有する。加水分解性基としてはアルコキシ基を挙げることができる。また、カチオン重合性基としては環状エーテル基、環状ビニルエーテル基などを挙げることができる。
インクジェット記録装置は、インク中の色材を凝集させる反応剤を含有する反応液を記録媒体に付与する手段を備えてもよい。反応液を記録媒体に付与する手段としては、ローラなどで記録媒体に反応液を塗布する手段、インクジェット方式の記録ヘッドから反応液を吐出する手段などが挙げられる。本発明のインクジェット記録装置は、エネルギー線の照射手段を備える必要はない。
<インク>
以下、本発明で用いるインクを構成する各成分について詳細に説明する。本発明で使用するインクは、エネルギー線の照射により重合するような化合物を含有しなくてもよい。
(色材)
インクは、色材を含有する。色材としては、染料や顔料を用いることができる。インク中の色材の含有量は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上11.0質量%以下であることがより好ましい。
染料としては、アニオン性基を有するものを用いることが好ましい。染料の具体例としては、アゾ、トリフェニルメタン、(アザ)フタロシアニン、キサンテン、アントラピリドンなどを挙げることができる。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。分散方法が異なる顔料を併用することも可能である。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。
なかでも、色材としては、顔料を用いることが好ましい。顔料として、後述するような粒子表面の疎水性の高い顔料を含有するインクも用いることができる。粒子表面の疎水性の高い顔料は、吐出口の周囲に析出した樹脂の有する疎水性ユニットに付着しやすい。そのため、吐出口の周囲は、析出した樹脂とその樹脂に付着した顔料でより凸凹が生じやすく、吐出口の周囲にインクが付着しやすい。これにより、インクが混色しやすくなると考えられるが、樹脂の含有量が相対的に小さいインクを吐出する吐出口列を重力方向において上に配置することで、上の吐出口の周囲に樹脂が析出しにくいため、顔料も付着しにくく、吐出口の周囲に凸凹が生じにくい。これにより、吐出口の周囲にインクが付着しにくいため、インクが混色しにくく、画像の混色を抑制できる。
粒子表面の疎水性の高い顔料としては、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー155などのアゾ、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209などのキナクリドン、及び複数のキナクリドンの固溶体、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4などのフタロシアニンなどが挙げられる。これらの顔料においては、アゾ、キナクリドン及び複数のキナクリドンの固溶体、フタロシアニンの順に疎水性が高くなる。ここで、インク中の色材の含有量のうち、C.I.ピグメントイエロー74、及びC.I.ピグメントイエロー155からなる群より選択される少なくとも1種の色材の含有量が50.0質量%以上であるインクは、イエローインクである。インク中の色材の含有量のうち、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、及びC.I.ピグメントレッド209からなる群より選択される少なくとも1種の顔料、又は前記顔料のうちの2種以上で形成される固溶体の含有量が50.0質量%以上であるインクは、マゼンタインクである。インク中の色材の含有量のうち、C.I.ピグメントブルー15:3、及びC.I.ピグメントブルー15:4からなる群より選択される少なくとも1種の色材の含有量が50.0質量%以上であるインクは、シアンインクである。
なかでも、隣接する2つの吐出口列から吐出するインクのうち、粒子表面の疎水性が相対的に低い顔料を含有するインクを重力方向において上に配置することが好ましい。これにより、上の吐出口の周囲に析出した樹脂に顔料が付着しにくいため、吐出口の周囲に凸凹が生じにくい。吐出口の周囲にインクが付着しにくいため、インクが混色しにくく、画像の混色をさらに抑制できる。つまり、隣接する2つの吐出口列から吐出するインクのうち、樹脂の含有量が相対的に小さく、かつ粒子表面の疎水性が相対的に低い顔料を含有するインクを重力方向において上に配置することが好ましい。
(樹脂)
各吐出口列(第1吐出口列〜第4吐出口列)から吐出する複数のインクのうち、1種のインクは、樹脂を含有する。また、複数のインクのうち、各インクは、いずれも樹脂を含有することが好ましい。
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定にする、すなわち樹脂分散剤やその補助として、(ii)記録される画像の各種特性を向上させる、などの理由でインクに添加することができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。また、樹脂は、水性媒体に水溶性樹脂として溶解した状態であってもよく、水性媒体中に樹脂粒子として分散した状態であってもよい。樹脂粒子は色材を内包するものである必要はない。なかでも、樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。
本発明において樹脂が水溶性であることとは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒径を測定しうる粒子を形成しないものであることとする。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒径を動的光散乱法により測定した場合に、粒径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、のように設定することができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、UPA−EX150、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂などが挙げられる。なかでも、樹脂は、アクリル樹脂が好ましい。
アクリル樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα−メチルスチレンの少なくとも一方のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性モノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどが挙げられる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性モノマーを重合することで形成することができる。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
樹脂は、顔料を分散させるための樹脂分散剤として用いることが好ましい。樹脂が樹脂分散剤であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、インク中の固形分量が10質量%程度になるようにインクを濃縮又は希釈した液体を12,000rpmで1時間遠心分離する。これにより、顔料の分散に寄与しない樹脂などが液層に含まれるため、顔料を含む沈降成分を回収する。この際、顔料を含む沈降成分に主成分として含まれる樹脂が、顔料の分散に寄与する樹脂(樹脂分散剤)であり、液層に主成分として含まれる樹脂が、顔料の分散に寄与しない樹脂である。
インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂として樹脂分散剤を用いる場合、色材の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量(質量%)に対する質量比率で、2.0倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
(第1水溶性有機溶剤)
樹脂を含有するインクは、比誘電率が20.0以上である第1水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。樹脂の析出を抑制して、吐出口の周囲に凸凹が生じにくいことで、吐出口の周囲にインクが溜まりにくくなり、吐出口面を伝ってインクが垂れにくい。これにより、インクの混色を抑制して、画像の混色をさらに抑制できる。第1水溶性有機溶剤の比誘電率は、45.0以下であることがさらに好ましい。第1水溶性有機溶剤の温度25℃における蒸気圧は、水よりも低いことが好ましい。
水溶性有機溶剤の比誘電率は、誘電率計(例えば、BI−870、BROOKHAVEN INSTRUMENTS CORPORATION製など)を用いて10kHzで測定することができる。温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率は、50.0質量%水溶液の比誘電率を測定し、下記式(A)から算出することができる。
εsol=2ε50%−εwater・・・(1)
εsol:温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率
ε50%:温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の50.0質量%水溶液の比誘電率
εwater:水の比誘電率
温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率を50.0質量%水溶液の比誘電率から算出する理由は、以下に示す通りである。温度25℃で固体の水溶性有機溶剤のうち、インクの構成成分となりうるものには、50.0質量%を超える高濃度水溶液の調製が困難なものがある。一方、10.0質量%以下の低濃度水溶液では水の比誘電率が支配的となり、水溶性有機溶剤の確からしい(実効的な)比誘電率の値を得ることは困難である。そこで、本発明者らが検討を行ったところ、インクに用いる温度25℃で固体の水溶性有機溶剤のほとんどが、測定対象となる水溶液を調製可能であり、かつ、算出される比誘電率も本発明の効果と整合することが判明した。以上の理由により、本発明においては50.0質量%水溶液の比誘電率から、温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率を算出して用いることとした。温度25℃で固体の水溶性有機溶剤であっても、水への溶解度が低く、50.0質量%水溶液を調製できないものについては、飽和濃度の水溶液を利用し、上記のεsolを算出する場合に準じて算出した比誘電率の値を便宜的に用いる。
第1水溶性有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール(33.1)、エチルアルコール(23.8)などの炭素数1以上4以下の1価アルコール類;1,2−プロパンジオール(28.8)、1,3−ブタンジオール(30.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、1,5−ペンタンジオール(27.0)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(23.9)などの2価アルコール類;1,2,6−ヘキサントリオール(28.5)、グリセリン(42.3)、トリメチロールプロパン(33.7)などの多価アルコール類;エチレングリコール(40.4)、ジエチレングリコール(31.7)、トリエチレングリコール(22.7)、テトラエチレングリコール(20.8)などのアルキレングリコール類;2−ピロリドン(28.8)、N−メチル−2−ピロリドン(32.0)、尿素(110.3)、エチレン尿素(49.7)、トリエタノールアミン(31.9)などの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド(48.9)などの含硫黄化合物類が挙げられる。
(水性媒体)
インクは、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、第1水溶性有機溶剤以外の水溶性有機溶剤(その他の水溶性有機溶剤)を併用することができる。その他の水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、及び含窒素化合物類などを用いることができる。また、その他の水溶性有機溶剤の1種又は2種以上をインクに含有させることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。この含有量は、第1水溶性有機溶剤を含む値である。第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、水溶性有機溶剤の合計の含有量(質量%)に対する質量比率(倍)で、0.4倍以上1.0倍以下であることが好ましい。前記比率は、0.5倍以上1.0倍以下であることがより好ましく、0.7倍以上1.0倍以下であることがさらに好ましい。
水溶性有機溶剤の具体例としては、先に挙げた特定の水溶性有機溶剤も含めると、以下に示すものなどが挙げられる(括弧内の数値は、温度25℃における比誘電率を表す)。メチルアルコール(33.1)、エチルアルコール(23.8)、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(18.3)、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1以上4以下の1価アルコール類;1,2−プロパンジオール(28.8)、1,3−ブタンジオール(30.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、1,5−ペンタンジオール(27.0)、1,2−ヘキサンジオール(14.8)、1,6−ヘキサンジオール(7.1)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(23.9)などの2価アルコール類;1,2,6−ヘキサントリオール(28.5)、グリセリン(42.3)、トリメチロールプロパン(33.7)、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類;エチレングリコール(40.4)、ジエチレングリコール(31.7)、トリエチレングリコール(22.7)、テトラエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、チオジグリコールなどのアルキレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(9.8)などのグリコールエーテル類;数平均分子量600のポリエチレングリコール(11.5)、同1,000のポリエチレングリコール(4.6)、ポリプロピレングリコールなどの数平均分子量200以上1,000以下のポリアルキレングリコール類;2−ピロリドン(28.8)、N−メチル−2−ピロリドン(32.0)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリン、尿素(110.3)、エチレン尿素(49.7)、トリエタノールアミン(31.9)などの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド(48.9)、ビス(2−ヒドロキシエチルスルホン)などの含硫黄化合物類が挙げられる。インクに含有させる水溶性有機溶剤としては、比誘電率が3.0以上であることが好ましく、温度25℃での蒸気圧が水より低いことが好ましい。
第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、樹脂の含有量(質量%)に対する質量比率(倍)で、2.5倍以上であることが好ましい。前記比率が2.5倍以上であると、樹脂に対して第1水溶性有機溶剤が大きいため、樹脂の析出を抑制できる。これにより、インクが混色しにくくなり、画像の混色をさらに抑制できる。前記比率は、50.0倍以下であることが好ましく、10.0倍以下であることがさらに好ましい。また、樹脂の含有量が小さいインク中の第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、樹脂の含有量が小さいインク中の樹脂の含有量(質量%)に対する質量比率(倍)で、3.0倍以上であることが好ましい。前記比率が3.0倍以上であると、重力方向において上に配置された吐出口の周囲で、樹脂の析出をさらに抑制できる。これにより、インクが混色しにくくなり、画像の混色をさらに抑制できる。前記比率は、10.0倍以下であることが好ましい。
さらに、樹脂の含有量が小さいインク中の顔料及び樹脂の含有量(質量%)は、樹脂の含有量が大きいインク中の顔料及び樹脂の含有量(質量%)より小さいことが好ましい。重力方向において上に配置された吐出口の周囲で、顔料や樹脂が析出しにくい。これにより、吐出口の周囲に凸凹が生じにくいため、インクが付着しにくい。そのため、インクが混色しにくくなり、画像の混色をさらに抑制できる。
(その他添加剤)
インクには、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤、及び樹脂などの種々の添加剤を含有させてもよい。なお、これらの添加剤は、一般的にインク中の含有量もかなり少なく、本発明の効果への影響も小さい。このため、本発明においては、これらの添加剤は「水溶性有機溶剤」に含めず、比誘電率を算出する対象としない。界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
(物性)
インクの混色を抑制するため、インクを吐出する際に、吐出口の周囲においてインクが付着しにくいことが重要となる。そこで、インクの発泡から吐出までに要する時間が数m秒であるので、精度よく測定可能であるごく短い寿命時間として、10m秒でのインクの動的表面張力に着目した。寿命時間10m秒でのインクの動的表面張力(mN/m)は、35mN/m以上であることが好ましい。
前記動的表面張力が35mN/m未満であると、インクの表面にその表面積を小さくするような張力が働きにくく、インクを吐出すると、吐出口の周囲においてインクが付着しやすい。これにより、吐出口から吐出するインクが吐出口面を伝って垂れやすいため、インクが混色し、記録される画像の混色を十分に抑制できない場合がある。前記動的表面張力は、48mN/m以下であることが好ましい。
インクの動的表面張力は、最大泡圧法により測定する。この方法では、測定対象の液体中にプローブ(細管)を浸し、その先端部分から押し出された気泡を放出するのに必要な最大圧力を測定して、表面張力を求める。また、寿命時間とは、プローブの先端部分から気泡が形成される際の、気泡が離れた後に新しい表面が形成されてから最大泡圧時(気泡の曲率半径とプローブの先端部分の半径が等しくなったとき)までの時間を意味する。
さらに、インクの静的表面張力(mN/m)は、30mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。インクの静的表面張力は、ウィルヘルミー法(プレート法)により測定する。表面張力の値は、界面活性剤の種類や量により適宜調整できる。
インクの温度25℃における粘度は、1.0mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましい。
以下、実施例、比較例、及び参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
顔料12.0部、樹脂を含む液体7.5部、及びイオン交換水80.5部を混合した。顔料としてはC.I.ピグメントイエロー74(Hansa yellow 5GXB、クラリアント製)を用いた。樹脂を含む液体としてはスチレン−アクリル酸共重合体(ジョンクリル680、BASF製)を、共重合体の酸価に対して0.85当量の水酸化カリウム水溶液で中和し、樹脂の含有量が20.0%である液体を用いた。この混合物を、粒径0.3mmのジルコニアビーズ85.0部を充填したバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)を用いて、水で冷やしながら3時間分散した。その後、この分散液を遠心分離処理して粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行った。前記の方法により、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液1(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液2)
顔料分散液1の調製において、樹脂を含む液体の量を15.0部、イオン交換水の量を73.0部に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液2(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が2.5%)を得た。
(顔料分散液3)
顔料分散液1の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントイエロー155(Graphtol Yellow 3GP、クラリアント製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液3(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液4)
顔料20.0g、処理剤4.0mmol、硝酸8.0mmol、及び水200.0mLを混合した。顔料としてはC.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体(Cromophtal Jet Magenta 2BC、Ciba製)、処理剤としてはp−アミノフタル酸を用いた。シルヴァーソン混合機を用い、温度25℃、6,000rpm、30分の条件で混合した。得られた混合物に、少量の水に亜硝酸カリウム8.0mmolを溶解させた水溶液をゆっくり添加した。水溶液の添加により、混合物の温度は60℃に達した。温度60℃で、混合物を1時間反応させた。その後、1.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて、混合物のpHを10に調製した。そして30分後、混合物に水20.0mLを加え、スペクトラムメンブランを用いて低分子物の除去、及び脱塩を行った。さらに、混合物を水で希釈し、自己分散顔料が含まれる顔料分散液4(顔料の含有量が10.0%)を得た。顔料分散液4には、粒子表面に−C−(COOK)基が結合している自己分散顔料が含まれていた。
(顔料分散液5)
顔料分散液1の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体(Cromophtal Jet Magenta 2BC、Ciba製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液5(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液6)
顔料分散液1の調製において、樹脂を含む液体の量を15.0部、イオン交換水の量を73.0部に変更した。さらに、顔料の種類をC.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体(Cromophtal Jet Magenta 2BC、Ciba製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液6(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が2.5%)を得た。
(顔料分散液7)
顔料分散液1の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントバイオレット19(Hostaperm Red Violet Er 02、クラリアント製))に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液7(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液8)
顔料分散液1の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントレッド122(Ink Jet Magenta E 02、BASF製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液8(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液9)
顔料分散液1の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントレッド202(Magenta RT−235−D、BASF製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液9(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液10)
顔料分散液1の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントレッド209(Hostaperm Red EG Transp、BASF製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液10(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液11)
顔料分散液1の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントブルー15:3(Hostaperm Blue B2G、クラリアント製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液11(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液12)
顔料分散液1の調製において、樹脂を含む液体の量を15.0部、イオン交換水の量を73.0部に変更した。さらに、顔料の種類をC.I.ピグメントブルー15:3(Hostaperm Blue B2G、クラリアント製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液12(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が2.5%)を得た。
(顔料分散液13)
顔料分散液1の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントブルー15:4(Heliogen Blue D7110F、BASF製)に変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液13(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が1.3%)を得た。
(顔料分散液14)
顔料分散液4の調製において、処理剤の量を1.6mmol、顔料の種類をC.I.ピグメントブルー15:3(Hostaperm Blue B2G、クラリアント製)に変更した。それ以外は、顔料分散液4の調製と同様の手順で、顔料分散液14(顔料の含有量が10.0%)を得た。顔料分散液14には、粒子表面に−C−(COOK)基が結合している自己分散顔料が含まれていた。
(顔料分散液15)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液に、温度5℃で、4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸1.6gを加えた。温度10℃以下を維持するために、アイスバスで撹拌しながら、上記で得られた溶液に、水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。15分撹拌後、比表面積が220m/gであり、DBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6.0gを加え、混合した。さらに、15分撹拌後、得られたスラリーをろ紙(標準用ろ紙No.2、アドバンテック製)でろ過し、カーボンブラックを十分に水洗し、温度110℃のオーブンで乾燥させた。得られたカーボンブラックに水を添加して、カーボンブラックの粒子表面に−C−(COONa)基が結合した自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散液(顔料の含有量が10.0%)を得た。その後、イオン交換法を用いて、顔料分散液のナトリウムイオンをカリウムイオンに置換した。
<樹脂を含む液体の調製>
(樹脂1を含む液体)
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えた四つ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル100.0部を加えた。撹拌しながら、窒素雰囲気下で温度110℃まで昇温した。このフラスコに、スチレン39.5部、メチルメタクリレート40.0部、アクリル酸20.5部を混合した液体、及び重合開始剤1.3部を3時間かけて、滴下した。ここで、使用した重合開始剤は、t−ブチルパーオキサイドである。その後、エージングを2時間行い、エチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して、固形の樹脂1を得た。この固形の樹脂に、酸価と当量の水酸化カリウム、及び適量のイオン交換水を加えて、温度80℃で中和・溶解させて、樹脂1の含有量が20.0%である樹脂1を含む液体を得た。樹脂1は、アクリル樹脂であり、ランダム共重合体だった。
(樹脂2を含む液体)
数平均分子量が2,000であるポリプロプレングリコール31.6部をメチルエチルケトンに撹拌溶解した。次いでイソホロンジイソシアネート46.9部、及びジメチロールプロピオン酸21.5部を加え、温度75℃で1時間反応させて、プレポリマー溶液を得た。得られたプレポリマー溶液を温度60℃まで冷却して、水酸化カリウム水溶液を加え、酸基を中和した。その後、温度40℃まで冷却してイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌することで乳化した。乳化後、鎖延長剤2.1部を加え、鎖延長反応を温度30℃にて12時間行った。フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)によりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで、この溶液を加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去し、樹脂2の含有量が20.0%である樹脂2を含む液体を得た。樹脂2は、ウレタン樹脂であり、ランダム共重合体だった。
(樹脂3を含む液体)
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えた四つ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル100.0部を加えた。撹拌しながら、窒素雰囲気下で温度110℃まで昇温した。このフラスコに、スチレン80.0部、ポリエチレングリコール(20.0モル付加)アクリレート20.0部を混合した液体、及び重合開始剤1.3部を3時間かけて、滴下した。ここで、使用した重合開始剤は、t−ブチルパーオキサイドである。その後、エージングを2時間行い、エチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して、固形の樹脂3を得た。この固形の樹脂に、適量のイオン交換水を加えて、温度80℃で溶解させて、樹脂3の含有量が20.0%である樹脂3を含む液体を得た。樹脂3は、ノニオン性の樹脂であり、ランダム共重合体だった。
(樹脂4を含む液体)
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えた四つ口フラスコを窒素置換した後、ジメチルホルムアミド100.0部、ペンタメチルジエチレントリアミン0.5部、スチレン5.2部、開始剤としてのクロロエチルベンゼン0.5ミリモルを加えた。撹拌しながら加熱し、温度80℃に達したところで、塩化銅(I)0.1部を加え重合を開始し、スチレンからなる疎水性ユニットを合成した。さらに、カラムクロマトグラフィーを用いてモニタリングしながら、トリメチルシリルアクリル酸4.3部を添加し重合させ、重合が完了したところで、さらにn−ブチルアクリレート2.6部を添加し重合させた。重合停止後、トリメチルシリルアクリル酸の有するカルボキシ基を、水酸化ナトリウム及びメタノール水溶液で加水分解させて、カルボン酸に変化させた。この溶液に、35.0%塩酸水溶液を2.8g加え、室温で10分撹拌し、ろ過した後、純粋で3回洗浄して固形の樹脂4を得た。得られた樹脂4をテトラヒドロフランで溶解させ、その溶液に樹脂のアニオン性基の中和率が80%となるように水酸化カリウムを加えた。さらに、適量のイオン交換水を加えて撹拌した後、減圧条件下でテトラヒドロフランを除去し、樹脂4の含有量が20.0%である樹脂4を含む液体を得た。
プロトン核磁気共鳴分光法により、カルボキシ基の化学シフトにピークが存在したことから、トリメチルシリルアクリル酸の有するカルボキシ基が加水分解さていることを確認した。樹脂4は、アクリル樹脂であり、ブロック共重合体だった。また、プロトン核磁気共鳴分光法により、各ブロックを構成する成分を分析したところ、スチレン52.4%、アクリル酸21.8%、n−ブチルアクリレート25.8%だった。
(樹脂5を含む液体)
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えた四つ口フラスコに、ラウリル硫酸ナトリウム0.3部、2−エチルヘキシルアクリレート20.8部、メチルメタクリレート62.4部、メタクリル酸16.8部を加えた。このフラスコに、5%の過流酸カリウム水溶液10.0部を3時間かけて、滴下した。その後、エージングを2時間行い、適量のイオン交換水を加えて、樹脂5の含有量が20.0%である樹脂5を含む液体を得た。
樹脂1〜4は、水溶性樹脂であり、樹脂5は、樹脂粒子だった。樹脂が水溶性であるか又は粒子であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒径を動的光散乱法により測定した場合に、粒径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。粒径を有する粒子が測定される場合は、その樹脂は樹脂粒子であると判断することができる。この際の測定条件は、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、と設定した。実施例において、粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(UPA−EX150、日機装製)を用いた。
<インクの調製>
表1に記載の各成分を混合し、十分撹拌した。その後、ポアサイズ1.2μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、インクを調製した。アセチレノールE100は、川研ファインケミカル製のノニオン性の界面活性剤である。ポリエチレングリコールに付した数値は数平均分子量を表す。括弧内に示す水溶性有機溶剤の比誘電率は、誘電率計(BI−870、BROOKHAVEN INSTRUMENTS CORPORATION製)を用いて周波数10kHzで求めた値である。
Figure 2019073008
<評価>
本発明においては、下記の評価の評価基準で、A、又はBを許容できるレベルとし、Cを許容できないレベルとした。評価結果は、表3に示す。図4に示す構成を有するインクジェット記録装置を用いて、記録素子基板を1つ有する記録ヘッドにインクを搭載した。記録ヘッドとしては、表2に記載の記録ヘッド1〜5を用いた。
表2中、記録素子基板の有する吐出口列は、図1に記載の吐出口列I〜IVに対応する。記録ヘッド1〜3、及び5の記録素子基板は、記録媒体の搬送方向において、吐出口列が重複しているものの、記録ヘッド4の記録素子基板は、記録媒体の搬送方向において、吐出口列が重複していない。さらに、記録ヘッド2は、吐出口列I〜IIIを有するものの、吐出口列IIからインクを吐出しない。
記録ヘッド1〜5は、1つの吐出口列あたりの吐出口の数は、1024個であり、1つの吐出口列あたりの吐出口の密度は、600dpiだった。また、吐出口の中心を通る長径(μm)は、20μm、隣接する吐出口列の間の距離(mm)は、0.7mmだった。さらに、記録ヘッドの吐出口面は、フルオロアルキル基を有する加水分解性シラン化合物、及びカチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物の縮合物により撥水処理されていた。
本実施例では、1/600インチ×1/600インチの単位領域に5.0ngのインク滴を3滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義し、記録媒体の搬送速度を15インチ/秒とした。吐出口列Iから吐出口列II(表3中、「I→II」)の方向に記録媒体を搬送する場合、画像を記録する際に重力方向において下から上へ記録媒体を搬送している。吐出口列IIから吐出口列I(表3中、「II→I」)の方向に記録媒体を搬送する場合、画像を記録する際に重力方向において上から下へ記録媒体を搬送している。
Figure 2019073008
(画像の混色)
温度35℃、相対湿度10%の高温低湿下で、以下の評価を行った。すべてのインクを用いて、各インクの記録デューティが均等、かつ、インクの合計の記録デューティが100%となるように複数色のベタ画像(記録媒体の搬送方向29cm×装置の奥行方向約4cm)を50枚連続で記録し、装置を1時間放置した。この連続記録、及び1時間放置の一連の動作を所定回繰り返した後、それぞれのインクを用いて、記録デューティが100%である単色のベタ画像(記録媒体の搬送方向3cm×装置の奥行方向約4cm)を記録した。得られた画像を評価用画像とした。記録媒体は、普通紙(PPC用紙PB Paper、キヤノン製)を用いた。
評価用画像を目視で観察して、画像の混色を評価した。
A:連続記録、及び1時間放置の一連の動作を40回繰り返しても、評価用画像に混色が生じなかった
B:連続記録、及び1時間放置の一連の動作を20回以上39回以下繰り返しても、評価用画像に混色が生じなかった
C:連続記録、及び1時間放置の一連の動作を20回未満繰り返すと、評価用画像に混色が生じた。
Figure 2019073008
参考例8として、記録媒体の搬送方向の上流側から順に、マゼンタインク1、及びシアンインク1に対応する2つの記録ヘッドを具備するインクジェット記録装置を用いて、画像を記録した。2つの記録ヘッドを用いたこと以外は、比較例3と同じ方法で画像を記録したところ、画像の混色は、許容できるレベルのAAランクだった。
参考例9として、記録媒体の搬送方向の上流側から順に、シアンインク1、及びマゼンタインク1に対応する2つの記録ヘッドを具備するインクジェット記録装置を用いて、画像を記録した。2つの記録ヘッドを用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で画像を記録したところ、画像の混色は、許容できるレベルのAAランクだった。

Claims (9)

  1. 色材を含有する水性インクである第1インク及び第2インク;並びに、前記第1インクを吐出する第1吐出口列及び前記第2インクを吐出する第2吐出口列が形成された吐出口面を有し、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列が重力方向において下から順に隣接して配置されるとともに、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の少なくとも一部が記録媒体の搬送方向において重複するように配置された記録ヘッド;を具備するインクジェット記録装置を使用するインクジェット記録方法であって、
    前記記録ヘッドの有する前記吐出口面と重力方向のなす角が0°以上90°未満となるように配置された前記記録ヘッドから、前記水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録する記録工程を有し、
    前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、樹脂を含有し、
    前記第2インク中の前記樹脂の含有量が、前記第1インク中の前記樹脂の含有量より小さいことを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記樹脂を含有するインクが、比誘電率が20.0以上である第1水溶性有機溶剤を含有する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記第1インクが、シアンインクであるとともに、前記色材が、C.I.ピグメントブルー15:3、及びC.I.ピグメントブルー15:4からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記第2インクが、マゼンタインクであるとともに、前記色材が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、及びC.I.ピグメントレッド209からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第1インクが、マゼンタインクであるとともに、前記色材が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、及びC.I.ピグメントレッド209からなる群より選択される少なくとも1種の顔料、又は前記顔料のうちの2種以上で形成される固溶体であり、
    前記第2インクが、イエローインクであるとともに、前記色材が、C.I.ピグメントイエロー74、及びC.I.ピグメントイエロー155からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記第1インクが、シアンインクであるとともに、前記色材が、C.I.ピグメントブルー15:3、及びC.I.ピグメントブルー15:4からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記第2インクが、イエローインクであるとともに、前記色材が、C.I.ピグメントイエロー74、及びC.I.ピグメントイエロー155からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記記録ヘッドが、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列が配置された1つの記録素子基板を具備する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記記録ヘッドが、複数の前記記録素子基板を具備する請求項6に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記記録ヘッドの具備する前記複数の記録素子基板が、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の配列方向において、隣接して配置される請求項7に記載のインクジェット記録方法。
  9. 色材を含有する水性インクである第1インク及び第2インク;並びに、前記第1インクを吐出する第1吐出口列及び前記第2インクを吐出する第2吐出口列が形成された吐出口面を有し、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列が重力方向において下から順に隣接して配置されるとともに、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の少なくとも一部が記録媒体の搬送方向において重複するように配置された記録ヘッド;を具備するインクジェット記録装置であって、
    前記記録ヘッドの有する前記吐出口面と重力方向のなす角が0°以上90°未満となるように配置された前記記録ヘッドから、前記水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録し、
    前記第1インク及び前記第2インクの少なくとも一方が、樹脂を含有し、
    前記第2インク中の前記樹脂の含有量が、前記第1インク中の前記樹脂の含有量より小さいことを特徴とするインクジェット記録装置。
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