次に、本発明の一実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。
本実施形態のヒートポンプ式温調システムの全体概略構成を図1に示す。図1において、このヒートポンプ式温調システム100は、室外に設置されるヒートポンプ熱源機としての室外機1と、この室外機1に対し冷温水往き管2及び冷温水戻り管3を介して接続されて室内に設置される、複数の室内端末機(この例では、輻射式端末機である冷温水パネル51及び床暖房パネル52と強制対流式端末機であるファンコイルユニット53との3つ)とを有する。
前記冷温水パネル51は、前記室外機1で加熱された温水または冷却された冷水を用いて、室内空気に対し放熱または吸熱を行い、室内の暖房又は冷房を行う。
前記床暖房パネル52は、前記室外機1で加熱された温水を用いて、室内空気に対し放熱を行い、室内の暖房を行う。
前記ファンコイルユニット53は、その内部に、熱交換器(図示せず)、送風ファン(図示せず)、熱動弁V3、室内温度を検出する室内温度センサ(図示せず)、ファンコイルユニット53内を流通する温水または冷水の温度を検出する水温センサ(図示せず)、及び端末制御部29等を備えている。端末制御部29は、ファンコイルユニット53内部の前記室内温度センサの信号や端末用リモコン装置RC(後述)からの信号を受け、前記送風ファンや前記熱動弁V3の駆動を制御する。これにより、ファンコイルユニット53は、前記室外機1で加熱された温水または冷却された冷水を、内部の前記熱交換器に通水させると共に、前記送風ファンを駆動させて室内空気と熱交換させ、室内の暖房または冷房を行う。
このとき、前記冷温水パネル51はA室、B室、C室からなる3室構造のうち前記A室に配置されており、前記床暖房パネル52は前記B室に配置されており、前記ファンコイルユニット53は前記C室に配置されている。そして、前記室外機1から延びる前記冷温水往き管2の途中に1つの往きヘッダ91が設けられており、冷温水往き管2のうち前記往きヘッダ91より上流側部分は、1つの共通往き管2Aとして構成され、前記室外機1からの冷温水が供給される。そして、冷温水往き管2のうち前記往きヘッダ91より下流側部分2Bは、複数(この例では3つ)の往き管、すなわち、前記冷温水パネル51への往き管2B1と、前記床暖房パネル52への往き管2B2と、前記ファンコイルユニット53への往き管2B3と、に分岐する形で前記往きヘッダ91に接続されている。
同様に、前記室外機1へと延びる前記冷温水戻り管3の途中に1つの戻りヘッダ92が設けられており、冷温水戻り管3のうち前記戻りヘッダ92より上流側部分3Bは、複数(この例では3つ)の戻り管、すなわち、前記冷温水パネル51からの戻り管3B1と、前記床暖房パネル52からの戻り管3B2と、前記ファンコイルユニット53からの戻り管3B3と、に分かれている。そして、冷温水戻り管3のうち前記戻りヘッダ92より下流側部分は、1つの共通戻り管3Aとして構成され(すなわち分岐された戻り管3B1,3B2,3B3が共通戻り管3Aの上流側に集結する形で戻りヘッダ92に接続されている)、前記戻り管3B1,3B2,3B3を介し導入された冷温水を前記室外機1へと戻す。
そして、前記冷温水パネル51への往き管2B1、前記床暖房パネル52への往き管2B2には、熱動弁コントローラCVからの駆動信号により各往き管を開閉可能な複数(この例では2つ)の熱動弁V1,V2がそれぞれ設けられている。この例では、前記A室には、前記冷温水パネル51、床暖房パネル52、前記ファンコイルユニット53の暖房及び冷房運転(但し床暖房パネル52は暖房のみ。以下同様)操作を行うための、設定リモコンとしてのメインリモコン装置RMと、前記冷温水パネル51の暖房及び冷房運転操作を行うための端末用リモコン装置RAとが設けられている。また、前記B室には前記床暖房パネル52の放熱(暖房)運転操作を行うための端末用リモコン装置RBが設けられている。また、この例では、前記C室に、前記ファンコイルユニット53を遠隔制御するためのワイヤレス式の端末用リモコン装置RCが設けられている。なお、前記の端末用リモコン装置RA,RBそれぞれに、前記メインリモコン装置RMと同等の機能を付加し、当該メインリモコン装置RMを省略しても良い。その場合、以下に記載するメインリモコン装置RMの機能を、各端末用リモコン装置RA,RBが備えることになる。そしてこの場合、前記端末用リモコン装置RA,RBが、それぞれ前記設定リモコンに相当している。
前記メインリモコン装置RMは、ユーザの操作に対応して制御信号SS1を出力する。この制御信号SS1は、前記室外機1の制御を行う室外機制御部(後述)へと入力され、これによって前記共通往き管2Aへ供給される冷温水の流量や温度等が制御されるとともに、さらにこれに対応して前記室外機制御部から前記熱動弁コントローラCVに制御信号SS2が出力され、これに応じて熱動弁コントローラCVから出力される制御信号S1,S2によって各熱動弁V1,V2の開閉動作が制御可能である。また、前記端末用リモコン装置RAでの操作に対応して出力される制御信号Saは前記熱動弁コントローラCVへと入力され、これに応じて熱動弁コントローラCVから出力される制御信号S1によって前記熱動弁V1の開閉動作が制御可能である。また、前記端末用リモコン装置RBでの操作に対応して出力される制御信号Sbは前記熱動弁コントローラCVへと入力され、これに応じて熱動弁コントローラCVから出力される制御信号S2によって前記熱動弁V2の開閉動作が制御可能である。
一方、前記冷温水パネル51からの戻り管3B1、及び、前記床暖房パネル52からの戻り管3B2には、戻り温度検出手段としての戻り温度センサ54,55がそれぞれ設けられている。これら戻り温度センサ54,55は、対応する戻り管3B1,3B2における温水又は冷水の温度(戻り温度)をそれぞれ検出し、検出結果を表す検出信号を前記熱動弁コントローラCVへと出力する。
熱動弁コントローラCVは、前記メインリモコン装置RM及び前記端末用リモコン装置RA,RBの操作に対応しつつ、前記戻り温度センサ54,55により検出される前記戻り温度に基づき、前記熱動弁V1,V2の開閉制御を行う(詳細は後述)。これにより、ユーザは、リモコン装置RM,RA,RBを適宜に操作することで前記冷温水パネル51及び床暖房パネル52の運転状態を制御可能となる。
前記端末用リモコン装置RCは、ファンコイルユニット53に室内を暖房する暖房運転を行わせるための暖房指示手段としての暖房スイッチ24と、ファンコイルユニット53に室内を冷房する冷房運転を行わせるための冷房指示手段としての冷房スイッチ25と、ファンコイルユニット53の運転を停止させる停止スイッチ26と、室内温度を設定する室内温度設定スイッチ27と、室内の設定温度や運転状態を表示する表示部28とを備え、前記端末制御部29に対し通信可能に接続されている。
なお、前記のようにファンコイルユニット53を端末用リモコン装置RCによって操作する構成には限られない。すなわち、ファンコイルユニット53自体に、前記端末用リモコン装置RCのスイッチと同等の機能を有するスイッチや表示部を設け、端末用リモコン装置RCを省略しても良い。この場合、そのファンコイルユニット53のスイッチ等がユーザにより操作されることで運転開始の指示がなされると、前記端末制御部29がその指示信号を受信し、室外機制御部CUに対し後述の温水要求信号(または後述の冷水要求信号)SCを出力する。同様に、ファンコイルユニット53の前記スイッチ等を用いてユーザによる停止指示操作がなされることで、前記端末制御部29は室外機制御部CUに対し暖房運転(または冷房運転)の後述の停止要求信号を出力する。なお、後述の温水ルームヒータ等、他の強制対流式端末機の場合も同様である。
次に、前記メインリモコン装置RMの詳細について、説明する。
図2に、前記メインリモコン装置RMの外観を示す。メインリモコン装置RMには、表示部250と、前記室外機1と前記室内端末機(この例では、冷温水パネル51、床暖房パネル52の2つ)の運転開始・停止を指示するための「運転/停止」ボタン253と、前記室内端末機に対しタイマーによる運転を指示するための「タイマー」ボタン254と、前記室内端末機の運転態様(冷房・暖房や通常モード・セーブモード等)の切替を指示する「運転切替」ボタン255と、画面表示を1つ前の画面に戻すための「戻る」ボタン257と、「メニュー/決定」ボタン258と、上下左右方向への十字キー259と、が備えられている。なお、前記「運転/停止」ボタン253、前記「タイマー」ボタン254、前記「運転切替」ボタン255、前記「戻る」ボタン257と、及び、前記「メニュー/決定」ボタン258を、以下適宜、単に「操作ボタン253等」と称し、さらにこれら操作ボタン253等と前記十字キー259とを総称して、単に「操作部259等」と称する。なお、図示を省略しているが、メインリモコン装置RMには、CPUや記憶手段としてのメモリ等が内蔵されている。
前記表示部250は、前記CPUの制御により、各種画面を切り替えて表示することができる。図示の例では、表示部250には、温水・冷水の温度設定や冷房・暖房切替等を含む、前記温調システム100全体に係わる設定を行うための設定画面200が表示されている。この設定画面200は、中央に配置され、前記温調システム100全体の運転状態を表す運転状態表示領域200Aと、右端に配置され、前記室外機1から温調システム100全体に供給される冷温水の温度設定(ユーザが前記操作部259等を用いて設定可能)を表示する温度設定表示領域200Bと、を備えている。
図示の例では、前記運転状態表示領域200Aには、前記室外機1から温水が供給され温調システム100全体として暖房運転が行われている状態を表す「温水暖房 運転中」の表示がなされている。また前記温度設定表示領域200Bには、暖房用にユーザが予め(可変に)設定した温水の設定温度「40℃」が表示されている。なお、マークMについては後述する。
次に、前記室外機1の概略的なシステム構成を図3(a)に示す。図3(a)において、室外機1は、例えばHFCなどの合成化合ガスを冷媒として循環させ室外での吸放熱を行う冷媒循環回路21と、例えば不凍液などを冷温水として循環させ前記複数の室内端末機(この例では、冷温水パネル51、床暖房パネル52、ファンコイルユニット53)での吸放熱を行う(前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3からなる)冷温水循環回路22と、の間における熱交換を行う、ヒートポンプ型の熱源機である。
すなわち、前記冷媒循環回路21は、前記室外機1に備えられた、前記冷媒の循環方向を切り替える四方弁6と、前記冷媒を圧縮する圧縮機7と、前記冷媒と外気との熱交換を行う室外熱交換器8(空気熱交換器に相当)と、前記冷媒を減圧膨張させる膨張弁9と、前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3を循環する前記冷温水と前記冷媒との熱交換を行う水−冷媒熱交換器11(水熱交換器に相当)とを、冷媒配管15で接続して形成されている。なお、前記冷媒配管15で互いに接続された前記四方弁6、前記圧縮機7、前記室外熱交換器8、前記膨張弁9によってヒートポンプ装置が構成されている。また、前記室外熱交換器8に送風する室外ファン10がさらに設けられている。
前記四方弁6は4つのポートを備える弁であり、(前記冷媒配管15の一部を構成する)冷媒主経路15a用の2つのポートのそれぞれに対して、(前記冷媒配管15の一部を構成する)他の冷媒副経路15b用の2つのポートのいずれに接続するかを切り替える。冷媒副経路15b用の2つのポートどうしはループ状に配置された冷媒副経路15bで接続されており、この冷媒副経路15b上に前記圧縮機7が設けられている。
前記圧縮機7は、低圧ガス状態の冷媒を昇圧して高圧ガス状態にするとともに、室外機1内における冷媒配管15全体の冷媒を循環させるポンプとしても機能する。なお、前記圧縮機7の吐出側における前記冷媒副経路15bには、吐出温度センサ55が設けられ、圧縮機7から吐出される冷媒の温度(冷媒吐出温度)を検出し、検出結果を表す検出信号を後述の室外機制御部CUへと出力する。
また、前記四方弁6の冷媒主経路15a用の2つのポートどうしは、ループ状に配置された前記冷媒主経路15aで接続されており、この冷媒主経路15a上に前記室外熱交換器8、前記膨張弁9、及び前記水−冷媒熱交換器11が順に(図3(a)に示す例では冷媒主経路15a左回りの順に)設けられている。
前記室外熱交換器8は、その内部を通過する液体状態の前記冷媒の温度が室外の外気温度より低い場合は外気の熱を冷媒に吸熱してガス状態に蒸発させる蒸発器として機能する。また、その内部を通過するガス状態の前記冷媒の温度が室外の外気温度より高い場合は、その冷媒の熱を放熱して液体状態に凝縮させる凝縮器として機能する(後述の図3(b)参照)。
前記室外ファン10は、前記室外熱交換器8に対して送風することで、室外熱交換器8の性能を向上させる。
前記膨張弁9は、高圧液体状態の前記冷媒を減圧膨張させて低圧液体状態とするよう機能する。
水−冷媒熱交換器11は、前記のように冷媒主経路15aに接続されてその内部に冷媒を通過させるとともに、前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3にも接続されてその内部に冷温水を通過させる。水−冷媒熱交換器11の内部を通過するガス状態の冷媒の温度が冷温水の温度より高い場合は、冷媒に対してその熱を冷温水に放熱し液体状態に凝縮させる凝縮器として機能する。また、水−冷媒熱交換器11の内部を通過する液体状態の冷媒の温度が前記冷温水の温度より低い場合は、冷媒に対して冷温水の熱を吸熱しガス状態に蒸発させる蒸発器として機能する(後述の図3(b)参照)。
一方、前記冷温水循環回路22は、前記室外機1に備えられた、前記水−冷媒熱交換器11、前記冷温水に循環圧力を加える循環ポンプ12、及びシスターンタンク13と、前記複数の室内端末機(この例では、冷温水パネル51、床暖房パネル52、ファンコイルユニット53の3つ)を、前記冷温水往き管2(詳細には共通往き管2A)及び前記冷温水戻り管3(詳細には共通戻り管3A)で接続して形成されている。
前記水−冷媒熱交換器11は、前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3に接続されており、前記冷温水戻り管3上に、前記シスターンタンク13及び前記循環ポンプ12が設けられている。
前記シスターンタンク13は、キャビテーションなどで冷温水中に生じた気泡の分離(気水分離機能)と、前記冷温水循環回路22における膨張冷温水の吸収及び冷温水の補給を行う。
前記循環ポンプ12は、前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3全体に冷温水を循環させるよう機能する。
なお、前記水−冷媒熱交換器11の出口側の前記冷温水往き管2(詳細には共通往き管2A)には、実往き温度検出手段としての往き温度センサ56が設けられ、共通往き管2Aにおける温水又は冷水の温度(実往き温度)を検出し、検出結果を表す検出信号を後述の室外機制御部CUへと出力する。
そして、室外機1は、当該室外機1の制御を行う室外機制御部CU(熱源制御部に相当)を備えている。この室外機制御部CUは、主にCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータで構成されている。室外機制御部CUと前記メインリモコン装置RMとの間は、双方向通信線で接続されており、信号のやりとりを相互に行うことができる(図1参照)。これにより、室外機制御部CUは、図1に示すように、前記メインリモコン装置RMからの前記制御信号SS1に基づいて室外機1全体の制御を行う(詳細は後述)とともに、対応する前記制御信号SS2を前記熱動弁コントローラCVに出力する。
一方、室外機制御部CUと前記端末制御部29との間は、例えば、端末制御部29からの信号を一方向に伝える端末制御線(いわゆるE−con通信線)で接続されている(図1参照)。例えば前記端末用リモコン装置RCの前記暖房スイッチ24(又は前記冷房スイッチ25)がユーザにより操作され運転開始の指示がなされると、端末制御部29は、その指示信号を受信する。そして、受信した指示信号に応じて、端末制御部29は、室外機制御部CUに対し、暖房運転に関連する温水要求信号(または冷房運転に関連する冷水要求信号)SCを出力する。なお、前記運転開始された後当該暖房又は冷房を停止する際には、ユーザによる適宜の停止指示操作(例えば前記暖房スイッチ24又は冷房スイッチ25が再度押される、若しくは別途設けた停止スイッチが押される、等)がなされることで、端末制御部29は、室外機制御部CUに対し、暖房運転(または冷房運転)の停止要求信号(図示省略)を出力する。
上記構成の冷媒循環回路21において、前記圧縮機7は冷媒副経路15b上において一方向に冷媒を循環させるものであり、前記四方弁6の切り替えによって冷媒主経路15a上の冷媒の循環方向を制御する。前記図3(a)は暖房運転時の循環方向を示しており、圧縮機7から吐出した冷媒が水−冷媒熱交換器11、膨張弁9、室外熱交換器8の順で流通する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の冷媒が前記圧縮機7で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、前記水−冷媒熱交換器11(凝縮器として機能)において前記冷温水戻り管3からの温水に熱を放出しながら高圧の液体に変化する。こうして液体になった冷媒は前記膨張弁9で減圧されて低圧の液体となり蒸発しやすい状態となる。その後、低圧の液体が前記室外熱交換器8(蒸発器として機能)において蒸発してガスに変化することで外気から吸熱する。そして冷媒は、低温・低圧のガスとして再び前記圧縮機7へと戻る。
このとき、前記のようにして水−冷媒熱交換器11で加熱された温水は、冷温水往き管2から前記複数の室内端末機(前記の例では、冷温水パネル51、床暖房パネル52、ファンコイルユニット53の3つ)に供給されて室内空気に対し放熱して室内を加温し、その後に前記シスターンタンク13を通過して再び前記循環ポンプ12へ戻る。以上のような冷媒循環回路21の冷凍サイクルと冷温水循環回路22との間で熱交換を行うことにより、室内空気の温度を上げる暖房運転が行われる。
一方、前記図3(b)は冷房運転時の循環方向を示しており、圧縮機7から吐出した冷媒が室外熱交換器8、膨張弁9、水−冷媒熱交換器11の順で流通する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の冷媒が前記圧縮機7で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、前記室外熱交換器8(凝縮器として機能)において前記室外ファン10の送風で冷却されることで外気に熱を放出しながら高圧の液体に変化する。こうして液体になった冷媒は前記膨張弁9で減圧されて低圧の液体となり蒸発しやすい状態となる。その後、低圧の液体が前記水−冷媒熱交換器11(蒸発器として機能)において蒸発してガスに変化することで前記冷温水戻り管3からの冷水から吸熱を行う。そして冷媒は、低温・低圧のガスとして再び前記圧縮機7へと戻る。
このとき、前記のようにして水−冷媒熱交換器11で冷却された冷水は、冷温水往き管2から複数の室内端末機(この場合は、冷温水パネル51及びファンコイルユニット53の2つ。前記熱動弁V2の閉止制御により床暖房パネル52は冷水供給対象から除かれる)に供給されて室内空気から吸熱して室内を冷却し、その後に前記シスターンタンク13を通過して再び前記循環ポンプ12へ戻る。以上のような冷媒循環回路21の冷凍サイクルと冷温水循環回路22との間で熱交換を行うことにより、室内空気の温度を下げる冷房運転が行われる。
次に、前記室外機制御部CUの主たる機能的構成を図4により説明する。
図4に示すように、前記室外機制御部CUは、圧縮機制御手段としての圧縮機制御部61と、膨張弁制御手段としての膨張弁制御部62とを機能的に備えている。
圧縮機制御部61は、前記往き温度センサ56により検出された温水又は冷水の前記実往き温度に応じて、前記圧縮機7の回転数を制御する。特にこの例では、圧縮機制御部61は、前記往き温度センサ56により検出される前記実往き温度が、例えば前記メインリモコン装置RMにおける前記操作部259等の操作に対応して設定(詳細は省略)される所望の目標温度(目標往き温度)となるように、前記圧縮機7の回転数を制御する。
膨張弁制御部62は、前記吐出温度センサ55により検出された前記冷媒吐出温度に応じて、前記膨張弁9の弁開度を制御する。特にこの例では、膨張弁制御部62は、吐出温度センサ55により検出される前記冷媒吐出温度が、例えば前記メインリモコン装置RMの操作に対応して適宜に設定(詳細は省略)される適宜の目標吐出温度となるように、前記膨張弁9の弁開度を制御する。
ここで、前記ファンコイルユニット53は強制対流式の端末機であって、前記した内部の熱交換器に流れた温水の温熱(又は冷水の冷熱)を前記送風ファンによって端末機の外に取り出す構造である。その結果、温熱や冷熱を輻射伝熱によって端末機外に供給する輻射式端末機である、前記冷温水パネル51及び前記床暖房パネル52に比べて、暖房時にはより高い温度が必要になり、冷房時にはより低い温度が必要となる。
したがって、前記温調システム100のように、前記強制対流式端末機の前記ファンコイルユニット53と前記輻射式端末機の前記冷温水パネル51及び前記床暖房パネル52とが混在して運転される場合、暖房時の温水の温度を高くかつ冷房時の温度を低くすることでファンコイルユニット53による快適性を確保することができる。しかしながらこの場合、室外機1の効率が低下し、さらにヒートポンプ式であることから消費電力も高くなる。逆に、冷温水パネル51や床暖房パネル52に合わせて暖房時の温水の温度を前記のように高くしないようにすると、前記室外機1の効率は向上するものの、ファンコイルユニット53による快適性は損なわれる。
本実施形態では、上記に鑑みて、ファンコイルユニット53が運転される場合と運転されない場合とで、前記目標往き温度の値を変える(この例では特に、運転される場合には、前記目標往き温度を補正する)。以下、その手法の詳細を、図5〜図9のフローチャートを用いて順を追って説明する。
<暖房時の制御>
まず、暖房運転時の圧縮機制御部61による制御手順を図5(a)のフローチャートに示す。図5(a)において、まずステップS5で、圧縮機制御部61は、後述の温水設定温度の補正を表すフラグFを0に初期化する。その後、ステップS10に移る。
ステップS10では、圧縮機制御部61は、前記室外機1が運転開始状態となったか否かを判定する。具体的には、運転開始状態とは、例えば、前記メインリモコン装置RMや前記端末用リモコン装置RA,RB,RCを介しユーザによる適宜の室外機1の運転開始操作がなされることで停止状態から起動される場合、若しくは、運転停止後から再起動して室外機1の運転が再び開始される場合(詳細は後述)、である。運転開始状態となるまではステップS10の判定が満たされず(S10:NO)ループ待機し、運転開始状態となるとステップS10の判定が満たされ(S10:YES)、ステップS15に移る。
ステップS15では、圧縮機制御部61は、室外機1が運転終了状態となったか否かを判定する。すなわち、後述のような回転数の制御の下で暖房運転を行って暖房負荷が小さくなると、前記室外機1を動作させずとも、前記戻り温度センサ54,55で検出される前記戻り温度がいずれも前記目標戻り温度以上に達する場合がある。この場合は、前記室外機制御部CUによる公知の制御により室外機1が停止され、待機状態となる(すなわち、いったん室外機1の運転が終了される)。ステップS15では、圧縮機制御部61は、室外機1がこの待機状態となったか否かを判定するものである。運転終了状態(すなわち待機状態)となっていた場合はステップS15の判定が満たされ(S15:YES)、このフローを終了する。一方、運転終了状態(すなわち待機状態)となっていない間はステップS15の判定は満たされず(S15:NO)、ステップS100に移る。
ステップS100では、メインリモコン装置RMで前記操作部259等の操作により適宜に設定された温水の設定温度に応じ前記目標往き温度を設定する、温水目標温度設定処理を行う(詳細は後述)。このステップS100が完了したら、ステップS20に移る。
ステップS20では、圧縮機制御部61は、この時点で前記往き温度センサ56から検出された前記実往き温度が、前記ステップS100で設定された前記目標往き温度を下回っているか否かを判定する。往き温度が目標往き温度を下回っている場合、判定が満たされ(S20:YES)、ステップS25に移る。
ステップS25では、圧縮機制御部61は、前記圧縮機7の回転数を増大する。その後、前記ステップS15に戻って同様の手順を繰り返す。
一方、前記ステップS20の判定において、前記実往き温度が前記目標往き温度以上である場合、判定は満たされず(S20:NO)、ステップS30に移る。
ステップS30では、圧縮機制御部61は、前記圧縮機7の回転数を低減する。その後、前記ステップS15に戻って同様の手順を繰り返す。
以上のようにして、ステップS20、ステップS25、及びステップS30の処理により、前記実往き温度が前記目標往き温度に一致するよう圧縮機7の回転数を制御する、往き温度制御が行われる。
次に、前記ステップS100の詳細手順を、図6により説明する。
図6において、圧縮機制御部61は、まず、ステップS105で、通常モード及びパワフルモードのうち、前記パワフルモードが選択されているか否か、を判定する。すなわち、本実施形態の温調システム100では、前記のように目標往き温度を補正するパワフルモード(補正実行モードに相当)と、当該補正を行わない通常モード(補正不実行モードに相当)とが、予め選択可能に用意されている。このステップS105では、前記操作部259等を用いた適宜のモード選択操作(モード切替手段に相当)により、上記パワフルモードが選択されているか否か、が判定される。通常モードが選択されていればステップS105の判定が満たされず(S105:NO)、後述のステップS135に移る。
ステップS135では、圧縮機制御部61は、温水の設定温度(この場合は、メインリモコン装置RMで前記操作部259等の操作により適宜に設定された温度に対し後述の補正を行わない、そのままの値。前記図2に示した例では40℃)に基づき、公知の手法(設定温度に対し目標往き温度を一意的に決定できる)により、対応する前記目標往き温度を算出する。その後、図5の前記ステップS20へ移り、以降、ステップS20→ステップS25又はステップS30→ステップS15→ステップS105→ステップS135→・・のように繰り返すことで、目標往き温度と実往き温度との大小に応じた圧縮機回転数増減を実行する。
一方、ステップS105で、パワフルモードが選択されていれば判定が満たされ(S105:YES)ステップS110に移る。
ステップS110では、上記フラグFが1であるか否かを判定する。後述するステップS130でF=1とされるまではF=0のままであり判定が満たされず(S110:NO)、ステップS115へ移る。
ステップS115では、前記ファンコイルユニット53の運転要求があったか否か(言い換えれば前記端末制御部29から前記温水要求信号SCがあったか否か)を判定する。ファンコイルユニット53の運転要求があるまでは判定が満たされず(S115:NO)、ステップS135に移る。なお、このステップS115を実行する圧縮機制御部61が、各請求項記載の運転要求判定手段として機能する。
ステップS135では、圧縮機制御部61は、前記同様、後述の補正を行わない温水の設定温度に基づき、対応する前記目標往き温度を算出する。その後、図5の前記ステップS20へ移り、以降、ステップS20→ステップS25又はステップS30→ステップS15→ステップS105→ステップS110→ステップS115→ステップS135→・・のように繰り返すことで、目標往き温度と実往き温度との大小に応じた圧縮機回転数増減を実行する。
上記繰り返しの間に、ファンコイルユニット53の運転要求があったら、ステップS115の判定が満たされ(S115:YES)、ステップS120に移る。
ステップS120では、圧縮機制御部61は、前記床暖房パネル52が運転中であるか否かを判定する。この判定は、例えば前記端末用リモコン装置RBから出力される前記制御信号Sb、若しくは、前記熱動弁コントローラCVから熱動弁V2への制御信号S2を室外機制御部CUが取得(但し図1における図示は省略している)し、その取得結果に基づいて行う等の、公知の手法で行えば足りる。なお、このステップS120を実行する圧縮機制御部61が、各請求項記載の床暖房判定手段として機能する。
前記床暖房パネル52が運転中であった場合は、判定が満たされ(S120:YES)、後述のステップS125における前記設定温度の高温側への補正を行うことなく、前記ステップS135に移り、前記同様、(補正なしの)温水の設定温度に対応した目標往き温度を算出する。この技術的意義は、以下の通りである。すなわち、一般に、床暖房パネルは、その特殊性として、ユーザの身体とパネルとが接触する若しくは極至近距離に存在する設置態様となる。このため、前記のような高温側への補正を行うと、床暖房パネルが高温となることによるユーザへの悪影響が懸念される。そこで、前記のように床暖房パネル52の運転中においては、ステップS135において、補正を行わないままの前記設定温度に基づき目標往き温度を算出するものである。その後は、前記と同様、図5の前記ステップS20に移り、以降、同様の手順を繰り返す。
一方、前記ステップS120において、床暖房パネル52が運転されていない場合は判定が満たされず(S120:NO)、ステップS125に移る。ステップS125では、前記圧縮機制御部61は、前記温水の設定温度(メインリモコン装置RMで前記操作部259等の操作により適宜に設定された温度)に対し、所定の補正値を加えることで、高温側への補正を行う。
この補正に用いられる前記補正値の決定方法の一例を、図7(a)に示す。図7(a)は横軸に前記温水の設定温度(図中は「リモコン設定温度」と表記。以下同様)を取り、縦軸に、設定温度の各値に対応した前記補正値を取って表している。この例では、温水の前記設定温度の範囲として、30℃〜60℃の範囲で設定される場合を想定している。図示のように、前記設定温度が30℃の場合は前記補正値は15℃に決定される(すなわち補正後の設定温度は45℃となる)。その後、前記設定温度が上がるにつれて前記補正値は直線的に小さくなり、前記設定温度が40℃で前記補正値は7.5℃(補正後の値は47.5℃)、前記設定温度が50℃になると前記補正値は0(補正後の値は50℃)に決定される。その後、50℃以上60℃以下の範囲では補正値は前記と変わらず、引き続き0に決定される。なお、このように前記設定温度に対し可変に設定される補正値は、各請求項記載の第2温度補正値に相当している。
一方、図7(b)は、前記補正値の決定方法の別の例を示している。この例でも前記同様、前記設定温度が30℃〜60℃の範囲で設定される場合を想定している。図示のように、この場合は、前記設定温度が30℃以上60℃以下の全範囲にわたって、補正値が一律に固定値(この例では10℃)に決定される。なお、このように前記設定温度に対し固定的に設定される補正値は、各請求項記載の第1温度補正値に相当している。
図6に戻り、以上のようにしてステップS125での前記設定温度の補正を行ったら、ステップS130に移る。ステップS130では、圧縮機制御部61は、前記フラグFを、補正が行われたことに対応した1とした後、前述のステップS135に移る。ステップS135では、前記したように、圧縮機制御部61は、温水の設定温度に基づき対応する前記目標往き温度を算出するが、前記のようにステップS125で補正が行われていることから、この場合はその補正後の設定温度を用いて、前記目標往き温度を算出する。
その後は、前記と同様、図5の前記ステップS20に移り、以降、ステップS20→ステップS25又はステップS30→ステップS15→ステップS105を経て、前記のようにステップS130でF=1となっていることから、ステップS110の判定が満たされて、ステップS140に移る。
ステップS140では、圧縮機制御部61は、前記のようにファンコイルユニット53の運転要求があった後に、ファンコイルユニット53の停止要求があったか否か(言い換えれば前記端末制御部29からの前記停止要求信号があったか否か)を判定する。なお、このステップS140を実行する圧縮機制御部61が、各請求項記載の停止要求判定手段として機能する。ファンコイルユニット53の停止要求があるまでは判定が満たされず(S140:NO)、ステップS145に移り、圧縮機制御部61は、前記ステップS125と同様の、前記設定温度に対する高温側への補正を(引き続き)行う。なお、このステップS145及び前記ステップS125を実行する圧縮機制御部61が、各請求項記載の温度補正手段として機能する。その後、前記ステップS135に移って、圧縮機制御部61は、前記同様に、補正後の設定温度を用いて、前記目標往き温度を算出する。その後、図5の前記ステップS20に移り、以降、ステップS20→ステップS25又はステップS30→ステップS15→ステップS105→ステップS110→ステップS140→ステップS145→ステップS135→・・のように繰り返すことで、目標往き温度と実往き温度との大小に応じた圧縮機回転数増減を実行する。
上記繰り返しの間に、ファンコイルユニット53の停止要求があったら、ステップS140の判定が満たされ(S140:YES)、ステップS150に移る。
ステップS150では、圧縮機制御部61は、上記フラグFを再び0に戻した後、ステップS135に移る。ステップS135では、前記したように、圧縮機制御部61は、温水の設定温度に基づき対応する前記目標往き温度を算出するが、前記ステップS145のような補正が行われなくなることから、この場合は再び前記補正なしのままの設定温度を用いて、前記目標往き温度を算出し、以降、同様の手順を繰り返す。
なお、前記のようにパワフルモードが選択されてかつステップS125及びステップS145で前記設定温度の補正が継続して行われている間(言い換えればステップS125で前記補正を行いステップS130でF=1とした後、その後ステップS140の判定が満たされてステップS150でF=0に戻すまでの間)は、図2に示すように、メインリモコン装置RMの表示部250に表示される前記設定画面200に、当該補正が実行されていることをユーザに報知するための前記のマークM(補正表示手段に相当)が表示される。
またこのとき、前記設定画面200の前記温度設定表示領域200Bには、前記のようにマークMが表示されている前記設定温度に対する前記補正の実行時においても、補正なしの状態の前記設定温度(ユーザにより前記操作部259等の操作により適宜に設定されたもの)を表示する。言い換えれば、前記温度設定表示領域200Bは、前記設定温度に対する前記補正の実行時においても前記補正の不実行時においても、同じ内容の前記補正なしの前記設定温度を表示するものである(温度表示手段に相当)。
次に、暖房運転時の膨張弁制御部62による制御手順を図5(b)のフローチャートに示す。図5(b)において、まずステップS60で、膨張弁制御部62は、前記図5(a)のステップS10と同様にして、前記室外機1が運転開始状態となったか否かを判定する。運転開始状態となるまではステップS60の判定が満たされず(S60:NO)ループ待機し、運転開始状態となるとステップS60の判定が満たされ(S60:YES)、ステップS65に移る。
ステップS65では、膨張弁制御部62は、前記図5(a)のステップS15と同様にして、前記室外機1が運転終了状態となったか否かを判定する。運転終了状態(すなわち待機状態)となっていた場合はステップS65の判定が満たされ(S65:YES)、このフローを終了する。一方、運転終了状態(すなわち待機状態)となっていない間はステップS65の判定は満たされず(S65:NO)、ステップS70に移る。
ステップS70では、膨張弁制御部62は、この時点で前記吐出温度センサ55から検出された前記冷媒吐出温度が前記目標吐出温度を下回っているか否かを判定する。冷媒吐出温度が目標吐出温度を下回っている場合、判定が満たされ(S70:YES)、ステップS75に移る。
ステップS75では、膨張弁制御部62は、前記膨張弁9の弁開度を減少させる。その後、前記ステップS65に戻って同様の手順を繰り返す。
一方、前記ステップS70の判定において、前記冷媒吐出温度が前記目標吐出温度以上である場合、判定は満たされず(S70:NO)、ステップS80に移る。
ステップS80では、膨張弁制御部62は、前記膨張弁9の弁開度を増大させる。その後、前記ステップS65に戻って同様の手順を繰り返す。
以上のようにして、ステップS70、ステップS75、及びステップS80の処理により、前記冷媒吐出温度が前記目標吐出温度に一致するよう膨張弁9の弁開度を制御する、冷媒吐出温度制御が行われる。
<冷房時の制御>
次に、冷房運転時の圧縮機制御部61による制御手順を図8(a)のフローチャートに示す。図8(a)に示すように、このフローでは、まず、前記図5(a)のフローにおけるステップS20が、不等号の向きが逆になったステップS20Aに置き換えられている。すなわちステップS20Aでは、圧縮機制御部61は、この時点で前記往き温度センサ56から検出された前記実往き温度が前記目標往き温度を上回っているか否かを判定する。往き温度が目標往き温度を上回っている場合は判定が満たされ(S20A:YES)て前記ステップS25に移り、前記実往き温度が前記目標往き温度以下である場合は判定は満たされず(S20A:NO)、ステップS30に移る。また、このフローでは、前記図5(a)のフローにおける、温水目標温度設定処理を実行するステップS100に代えて、冷水目標温度設定処理を実行するステップS100Aが設けられる(詳細は後述)。上記以外の手順は前記図5(a)と同様であり、説明を省略する。
次に、前記ステップS100Aの詳細手順を、図9により説明する。前記図6と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
図9において、圧縮機制御部61は、まず、前記同様のステップS105で前記パワフルモードが選択されているか否か、を判定する。通常モードが選択されていればステップS105の判定が満たされず(S105:NO)、後述のステップS135に移り、圧縮機制御部61は、冷水の設定温度(この場合は、メインリモコン装置RMで前記操作部259等の操作により適宜に設定された温度に対し後述の補正を行わない、そのままの値)に基づき、前記同様の公知の手法により、対応する前記目標往き温度を算出する。その後、図8の前記ステップS20Aへ移り、以降、ステップS20A→ステップS25又はステップS30→ステップS15→ステップS105→ステップS135→・・のように繰り返すことで、目標往き温度と実往き温度との大小に応じた圧縮機回転数増減を実行する。
一方、ステップS105で、パワフルモードが選択されていれば判定が満たされ(S105:YES)、前記同様のステップS110に移り、圧縮機制御部61は、フラグFが1であるか否かを判定し、前記同様、F=0のままで判定が満たされない(S110:NO)場合は、ステップS115へ移る。
ステップS115では、圧縮機制御部61は、前記同様、前記ファンコイルユニット53の運転要求があったか否か(言い換えれば前記端末制御部29から前記冷水要求信号SCがあったか否か)を判定する。ファンコイルユニット53の運転要求があるまでは判定が満たされず(S115:NO)、ステップS135に移り、圧縮機制御部61は、後述の補正を行わない冷水温水の設定温度に基づき、対応する前記目標往き温度を算出する。その後、図8の前記ステップS20Aへ移り、以降、ステップS20A→ステップS25又はステップS30→ステップS15→ステップS105→ステップS110→ステップS115→ステップS135→・・のように繰り返すことで、目標往き温度と実往き温度との大小に応じた圧縮機回転数増減を実行する。
上記繰り返しの間に、ファンコイルユニット53の運転要求があったら、ステップS115の判定が満たされ(S115:YES)、新たに設けたステップS125Aに移る。
ステップS125Aでは、前記圧縮機制御部61は、前記冷水の設定温度(メインリモコン装置RMで前記操作部259等の操作により適宜に設定された温度)から、所定の補正値を減じることで、低温側への補正を行う。
この補正に用いられる前記補正値の決定方法の一例を、前記図7(a)に対応する図10(a)に示す。縦軸・横軸は、前記図7(a)及び図7(b)と同様である。この例では、冷水の前記設定温度の範囲として、6℃〜20℃の範囲で設定される場合を想定している。図示のように、前記設定温度が6℃の場合は前記補正値は0℃に決定される(すなわち補正後の設定温度は6℃となる)。その後、前記設定温度が上がるにつれて前記補正値は直線的に大きくなり、前記設定温度が10℃で前記補正値は2.9℃(補正後の値は7.1℃)、前記設定温度が15℃で前記補正値は6.4℃(補正後の値は8.6℃)、前記設定温度が20℃になると前記補正値は10℃(補正後の値は10℃)に決定される。なお、前記同様、このように前記設定温度に対し可変に設定される補正値は、各請求項記載の第2温度補正値に相当している。
一方、図10(b)は、前記補正値の決定方法の別の例を示している。この例でも前記同様、前記設定温度が6℃〜20℃の範囲で設定される場合を想定している。図示のように、この場合は、前記設定温度が6℃以上20℃以下の全範囲にわたって、補正値が一律に固定値(この例では5℃)に決定される。なお、前記同様、このように前記設定温度に対し固定的に設定される補正値は、各請求項記載の第1温度補正値に相当している。
図9に戻り、以上のようにしてステップS125Aでの前記設定温度の補正が完了したら、圧縮機制御部61は、図6と同様のステップS130で前記フラグF=1とした後、前記ステップS135に移る。ステップS135では、前記と同様、前記のようにステップS125Aで補正が行われていることから、圧縮機制御部61はこの場合はその補正後の設定温度を用いて、前記目標往き温度を算出する。その後は、前記と同様、図8の前記ステップS20A→ステップS25又はステップS30→ステップS15→ステップS105を経て、前記のようにステップS130でF=1となっていることから、ステップS110の判定が満たされて、ステップS140に移る。
ステップS140では、図6と同様、圧縮機制御部61は、ファンコイルユニット53の停止要求があったか否か(言い換えれば前記端末制御部29からの前記停止要求信号があったか否か)を判定する。停止要求があるまでは判定が満たされず(S140:NO)、ステップS145Aに移り、圧縮機制御部61は、前記ステップS125Aと同様の、前記設定温度に対する低温側への補正を(引き続き)行う。なお、このステップS145A及び前記ステップS125Aを実行する圧縮機制御部61もまた、各請求項記載の温度補正手段として機能する。その後、前記ステップS135に移って、圧縮機制御部61は、前記同様に、補正後の設定温度を用いて、前記目標往き温度を算出する。その後、図8の前記ステップS20A→ステップS25又はステップS30→ステップS15→ステップS105→ステップS110→ステップS140→ステップS145A→ステップS135→・・のように繰り返すことで、目標往き温度と実往き温度との大小に応じた圧縮機回転数増減を実行する。
上記繰り返しの間に、ファンコイルユニット53の停止要求があったら、ステップS140の判定が満たされ(S140:YES)、ステップS150に移り、図6と同様、上記フラグFが0に戻された後、ステップS135に移る。ステップS135では、前記したように、圧縮機制御部61は、冷水の設定温度に基づき対応する前記目標往き温度を算出するが、前記ステップS145Aのような補正が行われなくなることから、この場合は再び前記補正なしのままの設定温度を用いて、前記目標往き温度を算出し、以降、同様の手順を繰り返す。
また、冷房運転時の膨張弁制御部62による制御手順を図8(b)のフローチャートに示す。図8(b)に示すように、このフローでは、全手順の内容が前記図5(b)のフローと同一となることから、説明を省略する。
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の温調システム100によれば、強制対流式端末機である前記ファンコイルユニット53の運転要求が発せられたことを契機に、メインリモコン装置RMにおいてユーザにより設定された温水・冷水の前記設定温度を補正し、補正後の設定温度により室外機1の動作を制御される(図6のステップS125、ステップS145、図9のステップS125A、ステップS145A参照)。したがって、ファンコイルユニット53が運転されるときには、前記補正により暖房時の温水の温度を高くかつ冷房時の温度を低くすることでファンコイルユニット53による快適性を確保しつつ、ファンコイルユニット53が運転されないときには、輻射式端末機である前記冷温水パネル51及び床暖房パネル52に合わせて暖房時の温水の温度を低めかつ冷房時の冷水の温度を高めにして室外機1の効率を向上することができる。この結果、室外機1の効率低下の抑制とファンコイルユニット53による快適性とを両立することができる。
また、本実施形態では特に、前記ファンコイルユニット53が運転されるときに、前記補正によって、暖房時の温水の温度を高くかつ冷房時の冷水の温度を低くする。これにより、強制対流式端末機であるファンコイルユニット53による快適性を確保することができる。
また、本実施形態では特に、補正により快適性を確保しつつ前記ファンコイルユニット53の運転を行うとともに、当該ファンコイルユニット53の運転が終了するときには、輻射式端末機である冷温水パネル51や床暖房パネル52に合わせて前記補正を終了する。これにより、室外機1の効率を向上することができる。
また、本実施形態では特に、前記補正の際、前記設定温度に拘わらず固定的に定められる温度補正値(図7(b)、図10(b)参照)、若しくは、前記設定温度に応じて可変に定められる温度補正値(図7(a)、図10(a)参照)、を用いて、当該設定温度の補正が行われる。これにより、固定的に定められた温度補正値を用いる場合は、簡易な制御で補正を行うことができ、可変に定められる温度補正値を用いる場合は、きめ細かく精度の良い補正を行うことができる。
また、本実施形態では特に、ファンコイルユニット53の運転要求が発せられている場合であっても、床暖房パネル52が運転されている場合には、前記設定温度の補正を行わない(図6のステップS120参照)。これにより、床暖房パネル52が高温となることによるユーザの身体への悪影響を確実に防止することができる。
また、本実施形態では特に、前記室外機1が、圧縮機7、膨張弁9、室外熱交換器8を備えたヒートポンプ装置と、水−冷媒熱交換器11と、を備えるヒートポンプ熱源機である。このように、ヒートポンプ式の室外機1が用いられる場合であっても、強制対流式端末機である前記ファンコイルユニット53の運転時に前記補正を行い、室外機1の効率低下の抑制とファンコイルユニット53による快適性とを両立することができる。
また、本実施形態では特に、前記温度設定表示領域200Bでは、前記設定温度に対する前記補正の有無にかかわらず、(補正が施されることのない)前記設定温度を表示する。これにより、ユーザに前記補正が行われていることを特に意識させることなく、室外機1の効率低下の抑制とファンコイルユニット53による快適性とを両立を図ることができる。
また、本実施形態では特に、前記設定温度の補正を行う前記パワフルモードと、当該補正を行わない通常モードとを切り替え可能に備える。これにより、ユーザの用途や好みに応じて、補正実行運転・補正不実行運転を使い分けることができる。
また、本実施形態では特に、メインリモコン装置RMにおいて、前記パワフルモードに切り替えられ、かつ、前記設定温度の補正が実行されている間は、対応するマークMが前記設定画面200において表示される。これにより、補正実行運転中であることをユーザに確実に報知することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、輻射式端末機として、冷温水パネル51及び床暖房パネル52を例にとって説明したが、これに限られず、主として輻射伝熱を行う、例えば暖房パネル、ラジエータ、コンベクター等を用いてもよい。
また、上記実施形態では、熱源機として、熱源側熱交換器としての室外熱交換器8に冷媒を通じる一方で外気を送風する室外ファン10を有し、熱源としての外気と前記冷媒とが熱交換される、空気熱源式のヒートポンプである前記室外機1を使用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、熱源機を、熱源側熱交換器に対して水や不凍液が供給されそれらの液体と冷媒とが当該熱源側熱交換器において熱交換する構成のものとしてもよい。
また、地中又は比較的大容量の水源中に熱源側熱交換器を設け、この熱源側熱交換器で前記地中又は前記水源と冷媒とが熱交換する構成のものとしてもよい。さらには、前記地中又は前記水源の熱を用いたヒートポンプ回路と空気熱を用いた別のヒートポンプ回路とを備えた複合熱源型の構成としてもよい。
さらには、熱源側熱交換器において前記冷媒と熱交換できるものであれば、前記液体や前記外気や前記水源に代えて、それ以外のもの(例えば、発煙、排煙、各種高温ガス等を含む気体や、熱砂、塵埃、各種粒子等を含む流動固体)を熱源側熱交換器に通じたり、太陽光、反射光、その他輻射等による熱を熱源側熱交換器に供給して用いる構成としても良い。
さらに、上記実施形態では、室内端末機として、1台の強制対流式端末機(この例ではファンコイルユニット53)、1台の輻射式端末機(この例では冷温水パネル51)、1台の床暖房パネル52、の合計3台が冷温水システム100に備えられている場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、少なくとも1台の強制対流式端末機(上記ファンコイルユニットに限られず、温水ルームヒータ等の他の端末機でもよい)と少なくとも1台の輻射式端末機とが備えられていれば足り、例えば、1台の冷温水パネル51と1台のファンコイルユニット53とが備えられる構成でもよいし、2台の冷温水パネル51と1台のファンコイルユニット53とが備えられる構成でもよいし、2台以上の冷温水パネル51及び2台以上のファンコイルユニット53が接続される構成でも良い。いずれにしても、少なくとも1台の強制対流式端末機が運転されるときに前記設定温度の補正を行うことで、前述と同様の効果を得ることができる。