RSVワクチンを開発するための以前の失敗に終わった努力は、主として、RSV−FもしくはRSV−G 膜糖タンパク質またはその両方を用いたワクチン接種に焦点を当てていたが、本発明者らは、RSV膜糖タンパク質の少なくとも1つの抗原決定基と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも1つの抗原決定基とを発現する組換えワクシニアウイルスアンカラ(MVA)のワクチン接種が、より良好な保護を誘導することを発見した。また、そのような構築物は、鼻腔内経路によって適用されると、皮下適用と比較した場合、またはWyattらによって使用された筋肉内投与経路と比較した場合でも、ほぼ完ぺきな無菌免疫を誘導する[L.S.Wyatt et al.(2000)]。候補RSV ワクチンを鼻腔内に投与することによって、筋肉内投与と比較して強化された保護を得ることができる。
RSV FもしくはRSV G膜糖タンパク質のいずれか(または両方)(例えば、MVA−mBN199B)を発現する組換えMVA、あるいはRSV膜糖タンパク質の少なくとも1つの抗原決定基と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも1つの抗原決定基とを発現する組換えMVA(例えば、MVA−mBN201B)では、本発明者らは、曝露後4日目に肺におけるRSVの複製を観察しなかったが、RSVゲノムは、なおもRT−qPCRによって検出可能であった。RSV膜糖タンパク質の少なくとも1つの抗原決定基と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも1つの抗原決定基とを発現する組換えMVA(例えば、MVA−mBN201B)は、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基に対してより強いCD8+T細胞応答を誘導したため、それらは、より良好な保護と、RT−qPCRによって検出可能なRSVウイルス負荷のより大きな減少を誘導した。鼻腔内経路によるそのような組換えウイルスの投与はさらに、そのような構築物が皮下投与された場合には見られない応答である粘膜免疫応答およびIgA抗体分泌を誘導したため、それらは、ほぼ完全な無菌免疫(RSVウイルス負荷がRT−qPCRによってほとんど検出不能である)を誘導した。
FI−RSVとは対照的に、そのような構築物は、良好な抗体応答を生成するバランスの取れたTh1−免疫応答、およびRSV抗原に特異的な強い細胞性免疫応答を誘導する。良好なIgA抗体応答の誘導に加えて、従来の皮下投与から得られるものよりもさらに高いIgG抗体レベルを生成するワクチンの鼻腔内投与により、保護が改善され、体重損失が減少した。しかしながら、細胞性免疫応答の大きさは、投与経路とは無関係である。興味深いことに、本発明者らは、RSV投与によって誘導されたT細胞応答と同様の、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列とを発現する組換えMVA(例えば、RSV F、G、N、およびM2タンパク質を発現するMVA−mBN201B)によって誘導されるT細胞応答のパターンを、かなり高くはあったが、観察した。
したがって、第1の態様において、本発明は、RSウイルス(RSV)膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列とを含む、組換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)を提供する。
改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)
MVAは、Vaccination Institute(Ankara,Turkey)で何年も維持され、ヒトのワクチン接種のための基盤として使用されていた皮膚ワクシニア株アンカラのニワトリ胚線維芽細胞で570を超える連続継代によって産生される[漿尿膜ワクシニアウイルスアンカラウイルス、CVA;検討にはMayr et al.(1975),Infection 3,6−14を参照]。しかしながら、ワクシニアウイルスに関連したワクチン接種後の合併症が重症であることが多いため、より弱毒化された、より安全な天然痘ワクチンを作製しようとするいくつかの試みがあった。
1960〜1974の期間中、Anton Mayr教授が、CEF細胞において570を超える連続継代によりCVAを弱毒化することに成功した[Mayr et al.(1975)].様々な動物モデルにおいて、得られたMVAが非病原性であることが示された[Mayr,A.&Danner,K.(1978),Dev.Biol.Stand.41:225−234]。天然痘前ワクチンとしてのMVAの初期開発の一環として、ワクシニアによる有害反応のリスクがある対象において、Lister Elstreeと併用してMVA−517を用いた臨床試験が行われた[Stickl(1974),Prev.Med.3:97−101;Stickl and Hochstein−Mintzel(1971),Munich Med.Wochenschr.113:1149−1153]。1976年に、MVA−571原種(571番目の継代に相当する)に由来するMVAが、2段階の非経口天然痘ワクチン接種プログラムにおける予備刺激ワクチンとしてドイツで登録された。続いて、大半が1〜3歳の小児である約120,000人の白人個体にMVA−572を使用した:対象の多くはワクシニアに関連する合併症のリスクが高い集団内であったが、重度の副作用は報告されなかった(Mayr et al.(1978),Zentralbl.Bacteriol.(B)167:375−390)。MVA−572は、European Collection of Animal Cell CulturesにECACC V94012707として受託された。
MVAを弱毒化するために用いられた継代の結果として、CEF細胞における継代数に応じて多くの異なる株または単離株が存在する。例えば、MVA−572は、天然痘撲滅プログラムの間にドイツで使用され、MVA−575は、動物用ワクチンとして広く使用された。MVA−575は、2000年12月7日に、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC)に受託番号V00120707で受託された。初代ニワトリ胚線維芽細胞上でCVAを連続繁殖することにより(570を超える継代)、弱毒化CVA−ウイルスMVA(改変ワクシニアウイルスアンカラ)を得た。
1970年代に、Mayrらが、MVA はヒトおよび哺乳動物において高度に弱毒化され、非病原性であることを証明したが、一部の研究者は、哺乳類細胞株およびヒト細胞株において残存複製が起こる可能性があるため、MVAが完全には弱毒化されないと報告している[Blanchard et al.(1998),J Gen Virol 79:1159−1167;Carroll&Moss(1997),Virology 238:198−211;U.S.Pat.No.5,185,146;Ambrosini et al.(1999),J Neurosci Res 55:569]。使用されたウイルスは、その特性、特に種々の細胞株におけるそれらの成長挙動が、本質的に異なるため、これらの刊行物で報告された結果は、様々な既知のMVA株を用いて得られたものであると推察される。そのような残存複製は、ヒトにおける使用に関連した安全性の懸念を含む種々の理由から望ましくない。
より安全な製品、例えばワクチンまたは医薬品を開発するために、強化された安全性プロファイルを有するMVAの株がBavarian Nordicによって開発された:MVAは、Bavarian Nordicによってさらに継代され、MVA−BNと命名されている。MVAおよびMVA−BNは、祖先CVAウイルスと比較してゲノムの約15%(6つの領域から31kb)を欠損している。この欠失は、多くの病原性および宿主範囲遺伝子、ならびにA型封入体の遺伝子に影響を与える。継代583に相当するMVA−BNの試料は、2000年8月30日に、European Collection of Cell Cultures(ECACC)で番号V00083008の下に受託された。
MVA−BNは、ウイルスによってコードされる遺伝子が非常に効率的に発現されるヒト細胞に付着して、該細胞内に進入することができる。しかしながら、子孫ウイルスの構築および放出は起こらない。MVA−BNは、初代ニワトリ胚線維芽(CEF)細胞に強く適合されており、ヒト細胞中では複製しない。ヒト細胞中では、ウイルス遺伝子は発現されるが、感染性ウイルスは生成されない。MVA−BNは、米国のCenters for Disease Control and Preventionによってバイオセイフティーレベル1の生物として分類されている。MVA−BNおよび誘導体の調製物は、多くの種類の動物、および免疫不全の個体を含む2000人を超えるヒト対象に投与されてきた。全てのワクチン接種は、一般的に安全であり、良好な忍容性を示すことが証明されている。その高度な弱毒化および病原性の低下にもかかわらず、前臨床試験において、MVA−BNは、MVAゲノム内にクローニングされた遺伝子によってコードされるワクチンおよび異種遺伝子産物に対して、液性免疫応答および細胞性免疫応答の両方を誘発することが示されている[E.Harrer et al.(2005),Antivir.Ther.10(2):285−300;A.Cosma et al.(2003),Vaccine 22(1):21−9;M.Di Nicola et al.(2003),Hum.Gene Ther.14(14):1347−1360;M.Di Nicola et al.(2004),Clin.Cancer Res.,10(16):5381−5390]。
MVAの「誘導体」または「変異体」は、本明細書に記載のMVAと本質的に同じ複製特徴を示すが、それらのゲノムの1つ以上の部分で相違を示すウイルスを指す。MVA−BNおよびMVA−BNの誘導体または変異体は、ヒトおよびマウス(たとえ重度に免疫抑制されたマウスであっても)においてin vivoで繁殖的に複製することができない。より具体的には、MVA−BNまたはMVA−BNの誘導体もしくは変異体は、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)においても繁殖的に複製する能力を有するが、ヒトケラチノサイト細胞株HaCat[Boukamp et al(1988),J Cell Biol 106:761−771]、ヒトの骨の骨肉腫細胞株143B(ECACC番号91112502)、ヒト胚性腎臓細胞株293(ECACC番号85120602)、およびヒト頚部腺癌細胞株HeLa(ATCC番号CCL−2)において繁殖的に複製する能力を有しないことが好ましい。さらに、MVA−BNの誘導体または変異体は、Hela細胞およびHaCaT細胞株におけるMVA−575よりも少なくとも2倍少ない、より好ましくは3倍少ないウイルス複製率を有する。MVA変異体のこれらの特性に関する試験およびアッセイは、国際特許公開WO 02/42480(米国特許第2003/0206926号)および国際特許公開WO 03/048184(米国特許第2006/0159699号)に記載されている(両方とも、参照により本明細書に組み込まれる)。
ウイルスの増殖または複製は、通常、「複製率」と称される、最初に細胞を感染させるためにもともと使用した量(入力値)に対する感染細胞から生成されたウイルス(出力値)の比率として表される。複製率「1」は、感染細胞から生成されたウイルスの量が、細胞を感染させるために最初に使用した量と同じである複製状態を定義し、感染細胞がウイルスの感染および繁殖を許容することを意味する。対照的に、1未満の複製率、すなわち、入力レベルと比較した出力レベルの減少は、繁殖的複製の欠如、ひいてはウイルスの弱毒化を示唆する。
MVAに基づくワクチンの利点は、それらの安全性プロファイルおよび大規模ワクチン生成の利用可能性を含む。前臨床試験によって、MVA−BNが、他のMVA株と比較して優れた弱毒化および有効性を示すことが明らかになっている(国際特許公開WO02/42480)。MVA−BN株のさらなる特性は、DNA予備刺激/ワクシニアウイルス追加免疫計画と比較した時に、ワクシニアウイルス予備刺激/ワクシニアウイルス追加免疫計画において実質的に同じレベルの免疫を誘導する能力である。
本明細書において最も好ましい実施形態である組換えMVA−BNウイルスは、哺乳類細胞におけるそれらの複製欠損性およびそれらの十分に確立された非病原性のために、安全であると考えられる。さらに、その有効性に加えて、産業規模での製造可能性が有益であり得る。その上、MVAに基づくワクチンは、複数の異種抗原を送達することができ、液性免疫と細胞性免疫の同時誘導を可能にする。
別の態様において、組換えウイルスを作製するのに好適なMVAウイルス株は、株MVA−572、MVA−575、または任意の同様に弱毒化されたMVA株であり得る。また、欠失型漿尿膜ワクシニアウイルスアンカラ(dCVA)等の変異MVAも好適であり得る。dCVAは、MVAゲノムのdel I、del II、del III、del IV、del V、およびdel VI欠失部位を含む。これらの部位は、複数の異種配列の挿入に特に有用である。dCVAは、ヒト細胞株(ヒト293、143B、およびMRC−5細胞株等)において繁殖的に複製することができ(10を超える増幅率)、ウイルスに基づくワクチン接種戦略に有用なさらなる突然変異により最適化を可能にする(国際特許公開WO 2011/092029を参照)。
定義
「抗原決定基」という用語は、宿主の免疫系を刺激して、細胞応答および/または液性抗体応答のいずれかの抗原特異的免疫応答を起こす任意の分子を指す。抗原決定基は、宿主においてなおも免疫応答を誘発し、抗原の一部を形成するタンパク質、ポリペプチド、抗原タンパク質断片、抗原、およびエピトープ;例えば、グリコシル化タンパク質、ポリペプチド、抗原タンパク質断片、抗原およびエピトープを含む、タンパク質、ポリペプチド、ならびに抗原タンパク質断片、抗原およびエピトープの相同体または変異体;そしてそのような分子をコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。したがって、タンパク質、ポリペプチド、抗原タンパク質断片、抗原およびエピトープは、特定の天然ヌクレオチドまたはアミノ酸配列に限定されないが、天然の配列と同一な配列、ならびに欠失、付加、挿入、および置換等の天然の配列に対する修飾を包含する。
好ましくは、そのような相同体または変異体は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のレベルで、参照タンパク質、ポリペプチド、抗原タンパク質断片、抗原およびエピトープと、少なくとも約50%、少なくとも約60%または65%、少なくとも約70%または75%、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より典型的には、少なくとも約90%、91%、92%、93%、または94%、さらにより典型的には、少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%、最も典型的には、少なくとも約99%の同一性を有する。相同体または変異体という用語はまた、切断した、欠失させた、もしくは別様に修飾したヌクレオチドまたはタンパク質配列、例えば、(1)全長RSV−FもしくはRSV−Gタンパク質のシグナルペプチドならびに膜貫通および/もしくは細胞質ドメインを欠損した、対応するRSV−FもしくはRSV−Gタンパク質の可溶形態をコードするRSV−FもしくはRSV−Gヌクレオチド配列、(2)全長RSV−M2もしくはRSV−Nタンパク質の欠失させた、切断した、もしくは別様に変異させた型をコードするRSV−M2もしくはRSV−Nヌクレオチド配列、(3)全長RSV−FもしくはRSV−Gタンパク質のシグナルペプチドならびに膜貫通ドメインおよび/もしくは細胞質ドメインを欠損した、RSV−FもしくはRSV−Gタンパク質の可溶形態、または(4)全長RSV−M2もしくはRSV−Nタンパク質の欠失させた、切断した、もしくは別様に変異させた型を包含する。
核酸とアミノ酸との間の配列同一性を決定するための技術は、当該技術分野で既知である。2つ以上の配列の「パーセント同一性」を決定することにより、それらを比較することができる。2つの配列のパーセント同一性は、核酸またはアミノ酸配列であろうと、整列させた2つの配列間の正確な一致の数を、より短い配列の長さで除して、100を乗じたものである。
本明細書に記載のタンパク質、ポリペプチド、抗原タンパク質断片、抗原およびエピトープに対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大パーセント配列同一性を達成するために、配列を整列させ、必要であればギャップを導入した後に、参照配列(すなわち、それが由来するタンパク質、ポリペプチド、抗原タンパク質断片、抗原またはエピトープ)中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義され、いずれの保存的置換も配列同一性の一部であるとは見なされない。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当該技術分野の技術の範囲内の種々の方法で、例えば、BLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して得ることができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
同じことが「ヌクレオチド配列同一性パーセント(%)」にも準用される。
例えば、核酸配列に適切なアライメントは、Smith and Waterman,(1981),Advances in Applied Mathematics 2:482−489の局所相同性アルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353−358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAによって開発されたスコアリングマトリックスを使用してアミノ酸配列に適用し、Gribskov(1986),Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763によって正規化することができる。配列のパーセント同一性を決定するためのこのアルゴリズムの例示的な実装は、「BestFit」ユーティリティアプリケーション内のGenetics Computer Group(Madison,Wis.)によって提供される。この方法のためのデフォルトパラメータは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual,Version 8(1995)(available from Genetics Computer Group,Madison,Wis.)に記載されている。本発明の文脈においてパーセント同一性を確立する好ましい方法は、University of Edinburgh,developed by John F.Collins and Shane S.Sturrok,and distributed by IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,Calif)に著作権があるプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一連のパッケージから、Smith−Watermanアルゴリズムを用いることができ、スコア表にデフォルトパラメータが使用される(例えば、ギャップオープンペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ1、およびギャップ6)。作成されたデータから、「一致」の値が「配列同一性」を反映する。配列間のパーセント同一性または類似性を計算するための他の好適なプログラムは、当該技術分野で一般的に知られており、例えば、別のアライメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いて使用されるBLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメータを用いて使用することができる:遺伝コード=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50 配列;分別=HIGH SCORE;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swiss タンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスに見出すことができる:http://http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/。
本明細書で使用される場合、「異種」遺伝子、核酸、抗原、またはタンパク質は、野生型ポックスウイルスゲノムには存在しない核酸またはアミノ酸配列(例えば、MVA)であると理解される。当業者は、MVA等のポックスウイルスに存在する場合、「異種遺伝子」は、宿主細胞への組換えポックスウイルスの投与後、対応する異種遺伝子産物として、すなわち、「異種抗原」および/または「異種タンパク質」として発現されるような様式で、ポックスウイルスゲノム中に組み入れられるべきであることを理解する。発現は、通常、ポックスウイルスに感染した細胞における発現を可能にする調節要素に異種遺伝子を作動可能に連結することによって達成される。好ましくは、調節要素は、天然または合成ポックスウイルスプロモーターを含む。
本明細書で使用される「無菌免疫」は、RT−qPCR等の高感度検出法が適用される場合に検出可能なRSV ゲノムの非存在下における保護免疫を意味する。
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上そうではないと明らかに指示のない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されなければならない。したがって、例えば、「エピトープ(an epitope)」への言及は、1つ以上のエピトープを含み、「方法(the method)」への言及は、変更することができるか、または本明細書に記載の方法で置き換えることができる、当業者に既知の均等のステップおよび方法への言及を含む。
別途指定のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連のあらゆる要素を指すと理解されたい。当業者は、日常的な実験を用いるだけで、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識もしくは確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明に包含されることが企図される。
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈上、別途要求のない限り、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」等の変化形は、記載される整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を包含するが、任意の他の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を除外しないことを意味すると理解されたい。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(containing)」もしくは「含む(including)」という用語に置き換えることができるか、または、本明細書で使用される場合、時には「有する」という用語に置き換えることができる。前述の用語(含む(comprising)、含む(containing)、含む(including)、有する)のいずれも、あまり好まれないが、本発明の態様または実施形態の文脈において本明細書で使用される場合はいつも、「〜からなる」という用語に置き換えることができる。
本明細書で使用される場合、「〜からなる」は、特許請求の範囲の構成要件に規定されていないあらゆる要素、ステップ、または成分も除外する。本明細書で使用される場合、「〜から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しない材料またはステップを除外しない。
本明細書で使用される場合、列挙される複数の要素の間の「および/または」という接続語は、個々の選択肢および組み合わせた選択肢の両方を包含すると解釈されたい。例えば、2つの要素が「および/または」によって結合される場合、最初の選択肢は、第2の要素を含まない第1の要素の適用性に言及する。第2の選択肢は、第1の要素を含まない第2の要素の適用性に言及する。第3の選択肢は、第1の要素および第2の要素の一緒の適用性に言及する。これらの選択肢のいずれも、本明細書で使用される「および/または」という用語の意味の範囲内に属し、従って、その要件を満たすと理解されたい。選択肢のうちの1つより多くの同時適用性もまた、「および/または」という用語の意味の範囲内に属し、従って、その要件を満たすと理解されたい。
RSVのヌクレオチド配列およびタンパク質
本明細書で述べるRSV遺伝子は、たとえ、株または分離株間で遺伝子の正確な配列および/またはゲノムの位置が異なる可能性がある場合であっても、任意のRSV株または分離株の対応するタンパク質をコードする遺伝子、またはその遺伝子の相同体もしくは変異体を指す。
同様に、本明細書で述べるRSVタンパク質は、上で定義した対応するタンパク質遺伝子によってコードされ、かつ発現されるタンパク質、またはそのタンパク質の相同体もしくは変異体を指す。
例として、本明細書において交換可能に使用される場合、「Fタンパク質遺伝子」、「F糖タンパク質遺伝子」、「RSV Fタンパク質遺伝子」、「RSV F糖タンパク質遺伝子」、またはF遺伝子」という用語は、たとえ、株または分離株間でFタンパク質遺伝子の正確な配列および/またはゲノムの位置が異なる可能性がある場合であっても、任意のRSV株または分離株の膜貫通融合糖タンパク質をコードする遺伝子、またはその遺伝子の相同体もしくは変異体を指す。例えば、RSVのA2株において、F(A2)タンパク質遺伝子は、GenBank 受入番号M11486で番号付けされたヌクレオチド5601〜7499(エンドポイントを含む)を含む。F(A2)タンパク質遺伝子は、GenBank 受入番号 M11486で番号付けされたヌクレオチド5614〜7338(エンドポイントを含む)に及ぶ読み取り枠(ORF)をコードするタンパク質をさらに含む。RSV A2からのFタンパク質遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号28に記載される。
また、上で定義したRSV Fタンパク質遺伝子によってコードされ、かつ発現される重度にグリコシル化された膜貫通 融合糖タンパク質、またはそのタンパク質の相同体もしくは変異体を指す「Fタンパク質」、「F糖タンパク質」、「RSV Fタンパク質」、「RSV F糖タンパク質」、または「F」という用語も、本明細書において交換可能に使用される。RSV A2からのFタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号29に記載される。RSV(A2)Fタンパク質は、シグナルペプチド、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインを含む(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot 受入番号 P03420を参照)。RSV A2 Fタンパク質のシグナルペプチドは、配列番号29のアミノ酸1〜21;配列番号29のアミノ酸1〜529または配列番号29のアミノ酸22〜529からなるRSV A2 Fタンパク質の細胞外ドメイン;配列番号29のアミノ酸530〜550からなるRSV A2 Fタンパク質の膜貫通ドメイン;および配列番号29のアミノ酸551−574からなるRSV A2 Fタンパク質の細胞質ドメインからなる。
同様に、「Gタンパク質遺伝子」、「G糖タンパク質遺伝子」、「RSV Gタンパク質遺伝子」、「RSV G糖タンパク質遺伝子」、または「G遺伝子」という用語も、本明細書において交換可能に使用される。例えば、RSVのA2株において、G(A2)タンパク質遺伝子は、GenBank 受入番号M11486で番号付けされたヌクレオチド4626〜5543(エンドポイントを含む)を含む。G(A2)タンパク質遺伝子は、GenBank 受入番号 M11486で番号付けされたヌクレオチド4641〜5537(エンドポイントを含む)に及ぶ読み取り枠(ORF)をコードするタンパク質をさらに含む。RSV A2からのGタンパク質遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号30に記載される。
「Gタンパク質」、「G糖タンパク質」、「RSV Gタンパク質」、「RSV G糖タンパク質」、または「G」という用語は、重度にグリコシル化された膜貫通付着糖タンパク質、またはそのタンパク質の相同体もしくは変異体を指す。RSV A2からのGタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号31に記載される。RSV A2 Gタンパク質は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインを含む(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot 受入番号 P03423を参照)。RSV A2 Gタンパク質の細胞外ドメインは、配列番号31のアミノ酸67〜298;配列番号31のアミノ酸38〜66からなるRSV A2 Gタンパク質の膜貫通ドメイン;および配列番号31のアミノ酸1〜37からなるRSV A2 Gタンパク質の細胞質ドメインからなる。
また、「M2タンパク質遺伝子」、「M2ヌクレオカプシドタンパク質遺伝子」、「RSV M2タンパク質遺伝子」、「RSV M2 マトリックスタンパク質遺伝子」、「RSV M2ヌクレオカプシドタンパク質遺伝子」、または「M2 gene」という用語も、本明細書において交換可能に使用される。例えば、RSVのA2株において、M2(A2)タンパク質遺伝子は、GenBank 受入番号M11486で番号付けされたヌクレオチド7550〜8506(エンドポイント含む)を含む。M2(A2)タンパク質遺伝子は、GenBank 受入番号 M11486で番号付けされたヌクレオチド7559〜8143(エンドポイントを含む)に及ぶ読み取り枠(ORF)をコードするタンパク質をさらに含む。RSV A2からのM2タンパク質遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号32に記載される。
「M2タンパク質」、「M2ヌクレオカプシドタンパク質」、「RSV M2タンパク質」、「RSV M2ヌクレオカプシドタンパク質」、「RSV M2マトリックスタンパク質」、または「M2」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。RSV A2からのM2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号33に記載される(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot 受入番号 P04545を参照)。
また、「Nタンパク質遺伝子」、「Nヌクレオカプシドタンパク質遺伝子」、「RSV Nタンパク質遺伝子」、「RSV Nヌクレオカプシドタンパク質遺伝子」、または「N gene」という用語も、交換可能に使用されてもよい。例えば、RSVのA2株において、N(A2)タンパク質遺伝子は、GenBank 受入番号M11486で番号付けされたヌクレオチド1081〜−2277(エンドポイントを含む)を含む。N(A2)タンパク質遺伝子は、GenBank 受入番号 M11486で番号付けされたヌクレオチド 1096〜2271(エンドポイントを含む)に及ぶ読み取り枠(ORF)をコードするタンパク質をさらに含む。RSV A2からのNタンパク質遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号34に記載される。
RSV A2からの(本明細書において交換可能に使用される用語である)「Nタンパク質」、「Nヌクレオカプシドタンパク質」、「RSV Nタンパク質」、「RSV Nヌクレオカプシドタンパク質」、または「N」のアミノ酸配列は、配列番号35に記載される(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot 受入番号 P03418を参照)。
本発明の特定の実施形態
特定の実施形態において、組換えMVAは、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列を発現する。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV F抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV G抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV F抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、RSV G抗原決定基は、RSV株A2に由来する。
特定の実施形態において、組換えMVAは、各々がRSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする2つの異種ヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基は、RSV F抗原決定基であり、RSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基は、RSV G抗原決定基である。特定の実施形態において、RSV F抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、RSV G抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、RSV F抗原決定基およびRSV G抗原決定基の両方が、RSV株A2に由来し得る。
特定の実施形態において、組換えMVAは、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列とを発現する。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV F抗原決定基をコードし、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV M2抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV F抗原決定基をコードし、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV N抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV G抗原決定基をコードし、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV M2抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV G抗原決定基をコードし、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV N抗原決定基をコードする。
特定の実施形態において、組換えMVAは、各々がRSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする2つの異種ヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基は、RSV F抗原決定基であり、RSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基は、RSV G抗原決定基である。特定の実施形態において、組換えMVAは、各々がRSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする2つの異種ヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列とを含む。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基は、RSV F抗原決定基であり、RSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基は、RSV G抗原決定基であり、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基は、RSV M2抗原決定基である。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基は、RSV F抗原決定基であり、RSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基は、RSV G抗原決定基であり、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基は、RSV N抗原決定基である。特定の実施形態において、RSV F抗原決定基およびRSV G抗原決定基の両方が、RSV株A2に由来し得る。
特定の実施形態において、組換えMVAは、各々がRSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする2つの異種ヌクレオチド配列と、各々がRSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする2つの異種ヌクレオチド配列とを含む。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基は、RSV F抗原決定基であり、RSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基は、RSV G抗原決定基であり、RSVヌクレオカプシドタンパク質の第1の抗原決定基は、RSV M2抗原決定基であり、RSVヌクレオカプシドタンパク質の第2の抗原決定基は、RSV N抗原決定基である。特定の実施形態において、RSV F抗原決定基および RSV G抗原決定基の両方が、RSV株A2に由来する。
特定の実施形態において、組換えMVAは、各々がRSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする3つの異種ヌクレオチド配列と、各々がRSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする2つの異種ヌクレオチド配列とを含む。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基は、RSV F抗原決定基であり、RSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基は、RSV G抗原決定基であり、RSVヌクレオカプシドタンパク質の第1の抗原決定基は、RSV M2抗原決定基であり、RSVヌクレオカプシドタンパク質の第2の抗原決定基は、RSV N抗原決定基である。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基およびRSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基の両方が、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第3の抗原決定基は、RSV F抗原決定基である。
特定の実施形態において、組換えMVAは、各々がRSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする4つの異種ヌクレオチド配列と、各々がRSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする2つの異種ヌクレオチド配列とを含む。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基は、RSV F抗原決定基であり、RSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基は、RSV G抗原決定基であり、RSVヌクレオカプシドタンパク質の第1の抗原決定基は、RSV M2抗原決定基であり、RSVヌクレオカプシドタンパク質の第2の抗原決定基は、RSV N抗原決定基である。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第1の抗原決定基およびRSV膜糖タンパク質の第2の抗原決定基の両方が、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第3の抗原決定基は、RSV F抗原決定基である。特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の第4の抗原決定基は、RSV G抗原決定基である。
特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV F抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV F抗原決定基は、全長である。特定の実施形態において、RSV F抗原決定基は、切断型である。特定の実施形態において、RSV F抗原決定基は、変異体RSV F抗原決定基である。特定の実施形態において、全長、切断型、または変異体RSV F抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、全長RSV(A2)F抗原決定基は、配列番号29のアミノ酸配列をコードする配列番号28のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、変異体RSV(A2)F抗原決定基は、配列番号4のアミノ酸配列をコードする配列番号3のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、切断型RSV(A2)F抗原決定基は、全長RSV(A2)F抗原決定基の細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを欠損する。特定の実施形態において、切断型RSV(A2)F抗原決定基は、配列番号16のアミノ酸配列をコードする配列番号15のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、全長、切断型、または変異体RSV F抗原決定基は、RSV株ALongに由来する。特定の実施形態において、変異体RSV(ALong)F抗原決定基は、配列番号6のアミノ酸配列をコードする配列番号5のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、切断型RSV(ALong)F抗原決定基は、全長RSV(ALong)F抗原決定基の細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを欠損する。
特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV G抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV G抗原決定基は、全長である。特定の実施形態において、RSV G抗原決定基は、切断型である。特定の実施形態において、RSV G抗原決定基は、変異体RSV G抗原決定基である。特定の実施形態において、全長、切断型、または変異体RSV G抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、全長RSV(A2)G抗原決定基は、配列番号2のアミノ酸配列をコードする配列番号1のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、切断型RSV(A2)G抗原決定基は、全長RSV(A2)G抗原決定基の細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを欠損する。特定の実施形態において、全長、切断型、または変異体RSV G抗原決定基は、RSV株Bに由来する。特定の実施形態において、切断型RSV(B)G抗原決定基は、全長RSV(B)G抗原決定基の細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを欠損する。特定の実施形態において、切断型RSV(B)G抗原決定基は、配列番号8のアミノ酸配列をコードする配列番号7のヌクレオチド配列を含む。
特定の実施形態において、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV M2抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV M2抗原決定基は、全長である。特定の実施形態において、RSV M2抗原決定基は、切断型である。特定の実施形態において、RSV M2抗原決定基は、変異体RSV M2抗原決定基である。特定の実施形態において、全長、切断型、または変異体RSV M2抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、RSV(A2)M2抗原決定基は、配列番号33のアミノ酸配列をコードする配列番号32のヌクレオチド配列を含む。
特定の実施形態において、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、RSV N抗原決定基をコードする。特定の実施形態において、RSV N抗原決定基は、全長である。特定の実施形態において、RSV N抗原決定基は、切断型である。特定の実施形態において、RSV N抗原決定基は、変異体 RSV N抗原決定基である。特定の実施形態において、全長、切断型、または変異体RSV N抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、RSV(A2)N抗原決定基は、配列番号35のアミノ酸配列をコードする配列番号34のヌクレオチド配列を含む。
特定の実施形態において、RSV N抗原決定基およびRSV M2抗原決定基の両方が、単一の読み取り枠によってコードされ、自己切断プロテアーゼドメインによって分離される。特定の実施形態において、RSV M2抗原決定基は、全長である。特定の実施形態において、RSV M2抗原決定基は、切断型である。特定の実施形態において、RSV M2抗原決定基は、変異体RSV M2抗原決定基である。特定の実施形態において、全長、切断型、または変異体RSV M2抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、RSV N抗原決定基は、全長である。特定の実施形態において、RSV N抗原決定基は、切断型である。特定の実施形態において、RSV N抗原決定基は、変異体RSV N抗原決定基である。特定の実施形態において、全長、切断型、または変異体RSV N抗原決定基は、RSV株A2に由来する。特定の実施形態において、自己切断プロテアーゼドメインは、口蹄疫ウイルスに由来する。特定の実施形態において、自己切断プロテアーゼドメインは、口蹄疫ウイルスからのプロテアーゼ2A断片であり、配列番号12のアミノ酸配列をコードする配列番号11のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、RSV N抗原決定基およびRSV M2抗原決定基をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、配列番号18のアミノ酸配列をコードする配列番号17のヌクレオチド配列を含む。
MVAの組込み部位
特定の実施形態において、RSV膜糖タンパク質の1つ以上の抗原決定基と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の1つ以上の抗原決定基とをコードする異種ヌクレオチド配列が、MVAゲノムまたはMVA−BNゲノムの様々な挿入部位に組み入れられる。RSVタンパク質の1つ以上の抗原決定基をコードする異種ヌクレオチド配列は、図1に示すように、別個の転写単位として、または融合遺伝子として、組換えMVAに挿入することができる。
特定の実施形態において、異種RSVヌクレオチド配列は、MVAの1つ以上の遺伝子間領域(IGR)に挿入される。IGRは、IGR07/08、IGR44/45、IGR64/65、IGR88/89、IGR136/137、およびIGR148/149、好ましくは、IGR64/65、IGR88/89、および/またはIGR148/149から選択されてもよい。異種RSVヌクレオチド配列は、付加的にまたは代替的に、MVAの自然に存在する欠失部位I、II、II、IV、V、またはVIのうちの1つ以上に挿入されてもよい。特定の実施形態において、組込み部位のうちの5つ、4つ、3つ、または2つ未満は、異種RSVヌクレオチド配列を含む。
異種RSVヌクレオチド配列を含むMVAの挿入部位の数は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれより多くてもよい。組換えMVAは、4つ、3つ、2つ、またはそれよりも少ない挿入部位に挿入される異種RSVヌクレオチド配列を含むことができるが、好ましくは2つの挿入部位が使用される。特定の実施形態において、3つの挿入部位が使用される。好ましくは、組換えMVAは、2つまたは3つの挿入部位に挿入される少なくとも4つ、5つ、6つ、または7つのヌクレオチド配列を含む。
本明細書に提供される組換えMVAウイルスは、当該技術分野で既知の常法によって作製することができる。組換えポックスウイルスを得るための、または異種ヌクレオチド配列をポックスウイルスゲノムに挿入するための方法は、当業者に周知である。例えば、標準的な分子生物学技術のための方法、例えば、DNAのクローニング、DNAおよびRNAの単離、ウェスタンブロット分析、RT−PCRおよびPCR増幅技術等は、Molecular Cloning,A laboratory Manual(2nd Ed.)[J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載され、ウイルスを取り扱うおよび操作するための技術は、Virology Methods Manual[B.W.J.Mahy et al.(eds.),Academic Press(1996)]に記載されている。同様に、MVAの取り扱い、操作、および遺伝子操作のための技術およびノウハウは、Molecular Virology:A Practical Approach[A.J.Davison&R.M.Elliott(Eds.),The Practical Approach Series,IRL Press at Oxford University Press,Oxford,UK(1993)(例えば、Chapter 9:Expression of genes by Vaccinia virus vectorsを参照)]およびCurrent Protocols in Molecular Biology[John Wiley&Son,Inc.(1998)(例えば、Chapter 16,Section IV:Expression of proteins in mammalian cells using vaccinia viral vectorを参照)]に記載されている。
本明細書に開示される種々の組換えMVAの作製のために、異なる方法が適用可能であり得る。ウイルスに挿入されるヌクレオチド配列は、MVAのDNAのセクションに相同的なDNAが挿入されている大腸菌プラスミド構築物内に配置されてもよい。別途、挿入されるDNA配列は、プロモーターに連結されてもよい。プロモーター−遺伝子結合が、非本質的遺伝子座を含有するMVA DNAの領域に隣接するDNA配列に相同的なDNAと両端で隣接するように、プロモーター−遺伝子結合は、プラスミド構築物中に位置付けられてもよい。結果として生じるプラスミド構築物は、大腸菌内で繁殖させることにより増幅させ、単離することができる。挿入されるDNA遺伝子配列を含有する単離したプラスミドは、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)の細胞培養物にトランスフェクトすることができ、同時に培養物をMVAに感染させる。プラスミド中の相同的MVA DNAとウイルスゲノムとの間の組換えは、それぞれ、外来DNA配列の存在によって修飾されたMVAを作製することができる。
好ましい実施形態によれば、好適な細胞培養物の細胞、例えば、CEF細胞を、ポックスウイルスに感染させることができる。続いて、好ましくは、ポックスウイルス発現制御要素の転写制御下で、外来遺伝子(単数または複数)を含む第1のプラスミドベクターで感染細胞をトランスフェクトすることができる。上で説明したように、プラスミドベクターはまた、ポックスウイルスゲノムの選択された部分への外来配列の挿入を指示することができる配列を含む。任意選択的に、プラスミドベクターはまた、ポックスウイルスプロモーターに作動可能に連結されたマーカーおよび/または選択遺伝子を含むカセットを含有する。好適なマーカーまたは選択遺伝子は、例えば、緑色蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、ネオマイシン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ、または他のマーカーをコードする遺伝子である。選択またはマーカーカセットの使用は、作製された組換えポックスウイルスの同定および単離を単純化する。しかしながら、組換えポックスウイルスは、PCR技術によっても同定することができる。その後、さらなる細胞を上述のように得られた組換えポックスウイルスに感染させ、第2の外来遺伝子(単数または複数)を含む第2のベクターでトランスフェクトすることができる。この遺伝子をポックスウイルスゲノムの異なる挿入部位に投入することができる場合、第2のベクターもまた、ポックスウイルスのゲノムへの第2の外来遺伝子(単数または複数)の組込みを指示するポックスウイルス−相同的配列において異なる。相同的組換えを行った後、2つ以上の外来遺伝子を含む組換えウイルスを単離することができる。組換えウイルスにさらなる外来遺伝子を導入するために、前のステップで感染のために単離した組換えウイルスをすることによって、およびトランスフェクションのためにさらなる外来遺伝子(単数または複数)を含むさらなるベクターを使用することによって、感染およびトランスフェクションのステップを繰り返すことができる。
代替として、上述の感染およびトランスフェクションのステップは入れ替え可能である、すなわち、好適な細胞を、最初に外来遺伝子を含むプラスミドベクターによりトランスフェクトし、次いでポックスウイルスに感染させることができる。さらなる代替案として、各外来遺伝子を異なるウイルスに導入し、1つの細胞を得られた全ての組換えウイルスに同時感染させ、全ての外来遺伝子を含む組換えについてスクリーニングすることも可能である。3つ目の代替案は、DNAゲノムと外来配列のin vitroでの連結、およびヘルパーウイルスを用いた組換えワクシニアウイルスDNAゲノムの再構成である。4つ目の代替案は、細菌人工染色体(BAC)としてクローニングしたワクシニアウイルスゲノムと、ワクシニアウイルスゲノム内の所望の組込み部位に隣接する配列に相同的なDNA配列と隣接する直鎖状配列との間の、大腸菌または別の細菌種における相同的組換えである。
RSV遺伝子の発現
一実施形態において、異種RSVヌクレオチド配列のうちの1つ、それ以上、または全ての発現は、1つ以上のポックスウイルスプロモーターの制御下にある。特定の実施形態において、ポックスウイルスプロモーターは、Pr7.5プロモーター、ハイブリッド初期/後期プロモーター、PrSプロモーター、合成もしくは天然の初期もしくは後期プロモーター、または牛痘ウイルスATIプロモーターである。特定の実施形態において、ポックスウイルスプロモーターは、PrSプロモーター(配列番号39)、Pr7.5プロモーター(配列番号40)、PrSynIImプロモーター(配列番号41)、PrLE1プロモーター(配列番号42)、およびPrH5mプロモーター(配列番号43[L.S.Wyatt et al.(1996),ワクチン14(15):1451−1458])からなる群から選択される。特定の実施形態において、ポックスウイルスプロモーターは、PrSプロモーター(配列番号39)である。特定の実施形態において、ポックスウイルスプロモーターは、Pr7.5プロモーター(配列番号40)である。特定の実施形態において、ポックスウイルスプロモーターは、PrSynIImプロモーター(配列番号41)である。特定の実施形態において、ポックスウイルスプロモーターは、PrLE1プロモーター(配列番号42)である。特定の実施形態において、ポックスウイルスプロモーターは、PrH5mプロモーター(配列番号43)である。
異種RSVヌクレオチド配列(単数または複数)は、単一転写単位として発現されてもよい。例えば、異種RSVヌクレオチド配列は、ワクシニアウイルスプロモーターに作動可能に連結されてもよく、かつ/またはワクシニアウイルス転写ターミネーターに連結されてもよい。特定の実施形態において、1つ以上の異種RSVヌクレオチド配列は、融合タンパク質として発現される。融合タンパク質はさらに、ペプチダーゼの認識部位または異種自己切断ペプチド配列を含むことができる。異種自己切断ペプチド配列は、口蹄疫ウイルスからの2Aペプチダーゼであってもよい。
特定の実施形態において、「転写単位」は、MVAゲノム内の挿入部位に単独で挿入されるが、他の転写単位(複数可)とともにMVAゲノム内の挿入部位に挿入されてもよい。「転写単位」は、MVAゲノム内に自然に存在せず(すなわち、異種、外因性、または外来性である)、感染細胞における転写が可能である。
好ましくは、組換えMVAは、MVAゲノムに挿入される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くの転写単位を含む。特定の実施形態において、組換えMVAは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くの転写単位によってコードされるRSVタンパク質を安定に発現する。特定の実施形態において、組換えMVAは、MVAゲノム内の1つ、2つ、3つ、またはそれより多くの挿入部位でMVAゲノムに挿入される2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くの転写単位を含む。
RSVワクチンおよび薬学的組成物
本明細書に記載のMVA−BNを含む組換えMVAウイルスは、高度に複製が制限されており、ひいては高度に弱毒化されているため、それらは、ヒトおよび免疫不全のヒトさえも含む幅広い哺乳動物の治療の理想的な候補である。したがって、活性医薬物質ならびに薬学的組成物およびワクチンとして使用するための本発明による組換えMVAを本明細書に提供し、全て、ヒトを含む生きた動物の体内に免疫応答を誘導することを目的とする。
このために、組換えMVA、ワクチン、または薬学的組成物は、104〜109 TCID50/ml、105〜5×108 TCID50/ml、106〜108 TCID50/ml、または107〜108 TCID50/mlの濃度範囲で溶液中に製剤化される。ヒトのための好ましい用量は、106 TCID50、107 TCID50、108 TCID50、または5x108 TCID50の用量を含む106〜109TCID50を含む。
本明細書に提供される薬学的組成物は、一般的に、1つ以上の薬学的に許容されるおよび/または承認される担体、添加剤、抗生物質、保存剤、アジュバント、希釈剤、および/または安定剤を含み得る。そのような補助物質は、水、食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等であってもよい。好適な担体は、典型的には、大きな、緩徐に代謝される分子、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集物等である。
ワクチンの調製のために、本明細書に提供される組換えMVAウイルスを生理学的に許容される形態に変換することができる。これは、H.Stickl et al.,Dtsch.med.Wschr.99:2386−2392(1974)によって記載されるように、天然痘に対するワクチン接種に使用されたポックスウイルスワクチンの調製における経験に基づいて行うことができる。
例えば、精製したウイルスは、5x108 TCID50/mlの力価で−80oCで保存することができ、約10mM Tris、140mM NaCl(pH7.7)中に製剤化することができる。ワクチン注射の調製のために、例えば、102〜108または102〜109粒子のウイルスを、アンプル、好ましくは、ガラスアンプル中で、2%ペプトンおよび1%ヒトアルブミンの存在下、100mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)中で凍結乾燥することができる。代替として、製剤中にウイルスを滴下で凍結乾燥することによって、ワクチン注射を生成することもできる。この製剤は、マンニトール、デキストラン、砂糖、グリシン、ラクトース、もしくはポリビニルピロリドン等のさらなる添加剤、またはin vivo投与に好適な他の補助剤、例えば、抗酸化剤もしくは不活性ガス、安定剤もしくは組換えタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)等を含有することができる。次いで、ガラスアンプルを密封し、4℃〜室温で数ヶ月間保存することができる。しかしながら、必要性がない限り、アンプルは、20℃未満の温度で保存されることが好ましい。
ワクチン接種または治療のために、水溶液、好ましくは生理食塩水またはTris緩衝液中に凍結乾燥物を溶解し、全身的または局所的のいずれかで、すなわち、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内、または当業者に既知の他の投与経路で、投与することができる。投与様式、用量、および投与回数は、当業者によって既知の様式で最適化され得る。しかしながら、最も一般的には、患者は、最初のワクチン接種の注射から約1ヶ月〜6週間後に2回目の注射の接種を受ける。
組換えMVAウイルスを含むキット
本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれか1つ以上を含むキットも本明細書に提供される。キットは、RSV感染症のリスクがある対象に組換えMVAを投与するための指示と一緒に、組換えMVAの1つまたは複数の容器またはバイアルを含むことができる。特定の実施形態において、対象はヒトである。指示は、組換えMVAが単回投与または複数回投与(すなわち、2回、3回、4回等)で対象に投与されることを示し得る。特定の実施形態において、指示は、組換えMVAウイルスが、1回目(予備刺激)および2回目(追加免疫)の投与でナイーブまたは非ナイーブな対象に投与されることを示す。
さらに、1回目の投与(予備刺激)のための第1のバイアルまたは容器中、および2回目の投与(追加免疫)のための第2のバイアルまたは容器中に組換えMVAウイルスを含むキットが提供される。キットはまた、3回目、4回目、またはさらなる投与(追加免疫)のための第3、第4、またはさらなるバイアルまたは容器中に組換えMVAを含んでもよい。
組換えMVAウイルの方法および使用
対象動物を免疫する方法、ならびに対象動物を免疫する方法において使用するための組換えMVA、および対象動物を免疫するための薬物またはワクチンの調製における本明細書に提供される組換えMVAの使用もまた、本明細書に提供される。特定の実施形態において、動物は哺乳動物である。特定の実施形態において、哺乳動物は、ラット、ウサギ、ブタ、マウス、またはヒトであり、方法は、本明細書に提供される組換えMVAのうちのいずれか1つ以上の用量を対象に投与することを含む。
対象は、好ましくはヒトであり、成人であってもよく、成人は、免疫不全であり得る。特定の実施形態において、成人は、50、55、60、65、70、75、80、または85歳である。他の実施形態において、対象の年齢は、5歳未満、3歳未満、2歳未満、15ヶ月未満、12ヶ月未満、9ヶ月未満、6ヶ月未満、または3ヶ月未満である。また、対象の年齢は、0〜3ヶ月、3〜6ヶ月、6〜9ヶ月、9〜12ヶ月、1〜2年、または2〜5年の範囲であってもよい。
特定の実施形態において、本明細書に提供される組換えMVAのうちのいずれかが、106〜109 TCID50の用量で、106〜5×108 TCID50、または107〜108 TCID50の用量で対象に投与される。本明細書に提供される組換えMVAは、106、107 TCID50、108、または5×108 TCID50の用量で対象に投与されてもよい。特定の実施形態において、本明細書に提供される組換えMVAのうちのいずれかが、107 TCID50、108、または5×108 TCID50の用量で対象に投与される。
本明細書に提供される組換えMVAは、単回投与、または複数回投与(すなわち、2回、3回、4回等)で対象に投与される。特定の実施形態において、組換えMVAは、1回目(予備刺激)および2回目(追加免疫)の投与で投与される。特定の実施形態において、第1の用量は、107〜108 TCID50の組換えMVAウイルスを含み、第2の用量は、107〜108 TCID50を組換えMVAウイルスを含む。
組換えMVAは、全身的もしくは局所的に、非経口的に、皮下に、静脈内に、筋肉内に、または鼻腔内に、このましくは皮下にまたは鼻腔内に投与することができる。組換えMVAはまた、当業者に既知のいずれか他の投与経路によって投与されてもよい。
別の態様において、RSV感染症を診断する方法、および対象にRSV感染症再発のリスクがあるかどうかを決定する方法が、本明細書に提供される:それらは、特に、新生児、1〜6歳の小児、および/または高齢者にとって重大な脅威となり得る。
本発明者らは、RSV感染症を診断する現在の方法は、不正確な結果を提供する可能性があることを発見した。例えば、RSVに対する抗体を検出するイムノアッセイ、またはウイルスプラークアッセイは、感染症再発のリスクがある個体を必ずしも正確に同定するとは限らない。実際に、本発明者らは、たとえ個体から採取された試料がウイルスプラークアッセイで陰性の結果を示したとしても[例えば、W.Olszewska et al.,2004.を参照]、より感度の高い方法では感染性RSV粒子がなおも存在することが示される場合もあるため、そのような結果が、時には偽陰性であり得ることを観察した。事実、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)等の方法では、対象が、本当にRSVに感染している可能性があるかどうか、感染再発のリスクがあるか、または実際に、ワクチン接種を受けた対象がRSVに対する無菌免疫を獲得したかどうかを確認する必要がある。ワクチン接種後の再感染は、時として死をもたらす重篤な疾患を引き起こす場合があるため、この判定は非常に重要である。
したがって、特定の実施形態において、対象から採取した試料がRSVゲノムを含有するかどうかを定量的に決定することを含み、RSVゲノムの存在は、RSVへの再感染の可能性を示唆する、対象にRSV感染症の再発のリスクがあるかどうかを決定する方法が提供される。特定の実施形態において、対象から採取した試料がRSVゲノムを含有するかどうかの定量的な決定は、qRT−PCRによって行われる。
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、個体、細胞株、組織培養、またはポリヌクレオチドおよびポリペプチドまたはその一部を含有する他の源から採取された任意の生体試料を指す。生体試料は、例えば、臨床試験または他の実験試験に参加している対象から採取された臨床試料を含む、RSVを含有することが判明したおよび/または疑われる体液(例えば、血液、血清、血漿、尿、滑液、脊髄液、気管支肺胞洗浄(BAL)等)および体組織を含む。哺乳動物から組織生検および体液を採取するための方法は、当該技術分野で周知である。特定の実施形態において、生体試料はRSV核酸を含む。
本明細書において交換可能に使用される場合、「RT−qPCR」または「qRT−PCR」という用語は、「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」として知られる方法を指す。いくつかの場合において、この方法は、動力学的ポリメラーゼ連鎖反応(KPCR)と称されてもよい。
特定の実施形態において、対象から採取した試料がRSVゲノムを含有するかどうかを定量的に決定することを含み、RSVゲノムの存在は、対象がRSVに対する無菌免疫を獲得していないことを示唆する、対象がRSVに対する無菌免疫を獲得したかどうかを決定する方法が本明細書に提供される。本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれか1つを対象に鼻腔内投与することを含む、RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象を免疫する方法もまた、本明細書に提供される。付加的にまたは代替的に、本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれか1つは、RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象を免疫する方法において使用するために提供され、該方法は、本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれか1つを対象に鼻腔内投与することを含む。RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象を免疫するための薬物および/またはワクチンの調製における本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれかの使用もまた本明細書に提供され、薬物またはワクチンは、鼻腔内投与される。
特定の実施形態において、本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれかを対象に鼻腔内投与することを含む、RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象においてRSVに対する無菌免疫を誘導する方法が、本明細書に提供される。RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象においてRSVに対する無菌免疫を誘導する方法において使用するための本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれか1つもまた本明細書に提供され、該方法は、本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれか1つを対象に鼻腔内投与することを含む。付加的にまたは代替的に、RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象においてRSVに対する無菌免疫を誘導するための薬物および/またはワクチンの調製における、本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれかの使用が本明細書に提供され、薬物またはワクチンは鼻腔内投与される。
本発明の特定の実施形態は、以下の項目も含む:
1.筋肉内投与は除外される、鼻腔内投与によってRSV感染症を治療または予防するための、少なくとも1つのRSウイルス(RSV)膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列を含む、組換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)。
2.薬学的組成物および/またはワクチンの調製のための、少なくとも1つのRSウイルス(RSV)膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列を含む組換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)の使用であって、薬学的組成物および/またはワクチンは鼻腔内投与され、筋肉内投与は除外される、使用。
3.ヒトを含む対象をRSV感染症に対して免疫する方法であって、RSウイルス(RSV)膜糖タンパク質の少なくとも1つの抗原決定基をコードするヌクレオチド配列を含む組換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)を、ヒトを含む対象に鼻腔内投与することを含み、筋肉内投与は除外される、方法。
4.鼻腔内投与のみを含む、項目1に記載の組換えMVA、項目2に記載の使用、および/または項目3に記載の方法。
5.皮下投与を含む、項目1に記載の組換えMVA、項目2に記載の使用、および/または項目3に記載の方法。
6.組換えMVAは、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、項目1もしくは4〜5のいずれか1つの記載の組換えMVA、項目2、4、もしくは5のいずれか1つに記載の使用、および/または項目3〜5のいずれか1つの方法。
7.RSウイルス(RSV)膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドの抗原決定基をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、を含む、組換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)。
8.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV F抗原決定基をコードする、項目1〜7のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
9.RSV F膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をさらに含む、項目1〜8のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
10.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、全長RSV F膜糖タンパク質をコードする、項目1〜9のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
11.RSV F膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV株A、好ましくはA2および/またはAlongに由来する、項目8〜10のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
12.RSV F膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4のアミノ酸配列 をコードするヌクレオチド配列を含む、項目8〜11のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
13.RSV F膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列配列は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む、項目8〜12のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
14.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、切断型RSV F膜糖タンパク質をコードする、項目1〜13のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
15.切断型RSV F膜糖タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、RSV株A、好ましくはAlongに由来する、項目14に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
16.切断型RSV F膜糖タンパク質は、膜貫通ドメインを欠損する、項目14または15に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
17.切断型RSV F膜糖タンパク質は、細胞質ドメインを欠損する、項目14〜16のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
18.RSV F膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、項目8〜17のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
19.RSV F膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド配列を含む、項目8〜18のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
20.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする、前記項目のいずれかに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
21.RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をさらに含む、項目1〜20のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
22.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、全長RSV G膜糖タンパク質をコードする、項目1〜21のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
23.RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV株A、好ましくは株A2、および/またはBに由来する、項目20〜22のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
24.RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、項目20〜23のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
25.RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む、項目20〜24のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
26.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、切断型RSV G膜糖タンパク質をコードする、項目1〜25のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
27.切断型RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV株Bに由来する、項目26に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
28.切断型RSV G膜糖タンパク質は、膜貫通ドメインを欠損する、項目26または27に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
29.切断型RSV G膜糖タンパク質は、細胞質ドメインを欠損する、項目26〜28のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
30.RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、配列番号8のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、項目20〜29のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
31.RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、配列番号7のヌクレオチド配列を含む、項目20〜30のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
32.RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV Nヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする、項目6〜31のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
33.RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基をコードする、項目6〜32のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
34.RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、全長タンパク質をコードする、項目6〜33のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
35.RSV Nヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV株A、好ましくは株A2に由来する、項目32〜34のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
36.RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列は、RSV N ヌクレオカプシドおよびRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基をコードする、項目32〜35のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
37.RSV N ヌクレオカプシドおよびRSV M2マトリックスタンパク質の両方の抗原決定基は、単一の読み取り枠によってコードされる、項目36に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
38.RSV N ヌクレオカプシドおよびRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基は、自己切断プロテアーゼドメインによって分離される、項目36または37に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
39.自己切断プロテアーゼドメイン配列は、口蹄疫ウイルスに由来する、項目38に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
40.自己切断プロテアーゼドメイン配列は、プロテアーゼ2A断片配列である、項目38または39に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
41.自己切断プロテアーゼドメイン配列は、配列番号12のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、項目38〜40のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
42.自己切断プロテアーゼドメインは、配列番号11のヌクレオチド配列を含む、項目38〜41のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
43.単一の読み取り枠は、配列番号18のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、項目37〜42のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
44.単一の読み取り枠は、配列番号17のヌクレオチド配列を含む、項目37〜43のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
45.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする1つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする1つのヌクレオチド配列とを含む、前記項目のいずれかに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
46.RSV F膜糖タンパク質およびRSV Nヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基を含む、項目45に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
47. RSV F膜糖タンパク質およびRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基を含む、項目45に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
48.RSV G膜糖タンパク質およびRSV Nヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基を含む、項目45に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
49.RSV G膜糖タンパク質およびRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基を含む、項目45に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
50.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする1つのヌクレオチド配列とを含む、項目1〜44のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
51.RSV Fおよび/またはG膜糖タンパク質ならびにRSV Nヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基を含む、項目50に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
52.RSV Fおよび/またはG膜糖タンパク質ならびにRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基を含む、項目50に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
53.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列とを含む、項目1〜44のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
54.RSV Fおよび/またはG膜糖タンパク質の抗原決定基と、RSV Nヌクレオカプシドおよび/またはM2マトリックスタンパク質の抗原決定基とをコードするヌクレオチド配列を含む、項目53に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
55.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする3つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列とを含む、項目1〜44のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
56.2つのRSV F膜糖タンパク質および/または1つのRSV G膜糖タンパク質の抗原決定基と、RSV Nヌクレオカプシドタンパク質および/またはRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基とを含む、項目55に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
57.2つのRSV G膜糖タンパク質および/または1つのRSV F膜糖タンパク質の抗原決定基と、RSV Nヌクレオカプシドタンパク質および/またはRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基とを含む、項目55に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
58.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする4つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする1つのヌクレオチド配列とを含む、項目1〜44のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
59.2つのRSV F膜糖タンパク質および/または2つのRSV G膜糖タンパク質の抗原決定基とRSV Nヌクレオカプシドタンパク質またはRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基とを含む、項目58に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
60.RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする4つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列とを含む、項目1〜44のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
61.2つのRSV F膜糖タンパク質および/または2つのRSV G膜糖タンパク質の抗原決定基と、RSV Nヌクレオカプシドタンパク質および/またはRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基とを含む、項目60に記載の組換えMVA、使用および/または方法。
62. 組換えMVAを作製するために使用されるMVAは、MVA−BNまたはその誘導体である、項目1〜61のいずれか1つに記載の組換えMVA、使用および/または方法。
63.活性医薬物質として使用するための、項目1または4〜62のいずれか1つに記載の組換えMVA。
64.項目1または4〜63のいずれか1つの記載の組換えMVA、任意選択的に薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む、薬学的組成物および/またはワクチン。65.薬学的組成物および/またはワクチンの調製のための、項目1または4〜63のいずれか1つの記載の組換えMVAの使用。
66.RSV感染症を治療または予防するための、項目6〜63のいずれか1つに記載の組換えMVA、項目64の薬学的組成物および/もしくはワクチン、ならびに/または項目2、4〜6、8〜62、もしくは65のいずれか1つに記載の使用。
67.項目1、4〜63もしくは66のいずれか1つに記載の組換えMVAならびに/または項目64〜66に記載の薬学的組成物および/もしくはワクチンを、ヒトを含む対象に投与することを含む、ヒトを含む対象をRSV感染症に対して免疫する方法。
68.組換えMVAは、107〜109 TCID50の用量で投与されるかまたは投与されるべきである、項目1、4〜63もしくは66のいずれか1つに記載の組換えMVA、項目64〜66に記載の薬学的組成物および/もしくはワクチン、項目2、4〜6、8〜62、65もしくは66のいずれか1つに記載の使用、ならびに/または項目3〜6、8〜62もしくは67のいずれか1つに記載の方法。
69.組換えMVAは、鼻腔内投与および/または皮下投与されるかまたはされるべきである、項目5〜68のいずれか1つに記載の組換えMVA、薬学的組成物および/もしくはワクチン、使用ならびに/または方法。
70.組換えMVAは、ヒトを含む免疫学的にナイーブなまたは免疫学的に成熟な対象に、単回投与または複数回投与で投与されるかまたは投与されるべきである、項目1〜69のいずれか1つに記載の組換えMVA、薬学的組成物および/もしくはワクチン、使用ならびに/または方法。
71.2歳を上回るヒトを含む対象に投与するための、項目1〜70のいずれか1つに記載の組換えMVA、薬学的組成物および/もしくはワクチン、使用ならびに/または方法。
72.2歳未満のヒトを含む対象に投与するための、項目1〜70のいずれか1つに記載の組換えMVA、薬学的組成物および/もしくはワクチン、使用ならびに/または方法。73.項目1、4〜63、66または68〜72のいずれか1つに記載の組換えMVAの1つまたは複数のバイアルと、RSV感染症のリスクがある対象にウイルスを投与するための指示とを含む、キット。
74.1回目の投与(予備刺激)のための第1のバイアルまたは容器中、および2回目の投与(追加免疫)のための第2のバイアルまたは容器中に組換えMVAを含む、項目1、4〜63、66もしくは68〜72のいずれか1つに記載の組換えMVAを含むキット、および/または項目73に記載のキット。
75.3回目、4回目、またはさらなる投与(追加免疫)のための第3、第4、またはさらなるバイアルまたは容器中に組換えMVAを含む、項目73または74に記載のキット。
76.項目1、4〜63または66のいずれか1つに記載の組換えMVAを含む、細胞。77.以下のステップを含む、項目1、4〜63、66または68〜72のいずれか1つに従って組換えMVAを作製する方法:
(a)宿主細胞をMVAウイルスに感染させるステップ、
(b)感染細胞を、RSV抗原決定基をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターでトランスフェクトするステップであって、前記ヌクレオチド配列は、MVAウイルスゲノムへのヌクレオチド配列の組込みを指示することが可能なゲノムMVAウイルス配列をさらに含む、ステップ、
(c)作製された組換えMVAウイルスを同定、単離、および任意選択的に精製するステップ。
78.項目77に記載の方法に従って作製される、組換えMVA。
79.以下のステップを含む、いずれか1つの項目1、4〜63、66もしくは68〜72に従って組換えMVAを生成するため、および/または前記組換えMVAのゲノムから発現される抗原決定基を生成するための方法:
(a)宿主細胞を、項目1、4〜63、66もしくは項目68〜72のいずれか1つに記載の組換えMVAに感染させるステップ、または該細胞を組換えMVAの組換えDNAでトランスフェクトするステップ、
(b)感染またはトランスフェクトされた細胞を培養するステップ、
(c)前記細胞からMVAおよび/または抗原決定基を単離するステップ。
80.項目79の方法によって得られた、組換えMVAおよび/または抗原決定基。
81.対象がRSV感染症再発のリスクがあるかどうかを決定する方法であって、RT−qPCRにより前記対象から採取した試料中にRSVが存在するかどうかを決定し、RSVの存在は、RSV感染症再発の存在を示唆する、方法。
82.対象がRSVに対する無菌免疫を獲得したかどうかを決定する方法であって、RT−qPCRにより前記対象から採取した試料中にRSVが存在するかどうかを決定し、RSVの存在は、対象がRSVに対する無菌免疫を獲得していないことを示唆する、方法。83.項目82に記載の方法によってRSVに対する無菌免疫を獲得していないと診断された対象を免疫する方法であって、項目1、4〜63、66、68〜72、78もしくは80のいずれか1つに記載の組換えMVA、および/または項目64、66もしくは68〜72のいずれか1つに記載の薬学的組成物および/もしくはワクチンを対象に鼻腔内投与することを含む、方法。
84.項目82に記載の方法によってRSVに対する無菌免疫を獲得していないと診断された対象を免疫する方法(前記方法は、前記組換えMVAを対象に鼻腔内投与することを含む)において使用するための、項目1、4〜63、66、68〜72、78もしくは80のいずれか1つに記載の組換えMVA、および/または項目64、66もしくは68〜72のいずれか1つに記載の薬学的組成物および/もしくはワクチン。
85.項目82に記載の方法によってRSVに対する無菌免疫を獲得していないと診断された対象を免疫するための薬学的組成物および/またはワクチンの調製のための、項目1、4〜63、66、68〜72、78または80のいずれか1つに記載の組換えMVAの使用であって、薬学的組成物および/またはワクチンは、鼻腔内投与のためである、使用。
86.項目82に記載の方法によってRSVに対する無菌免疫を獲得していないと診断された対象において無菌免疫を誘導する方法であって、項目1、4〜63、66、68〜72、78もしくは80のいずれか1つに記載の組換えMVA、および/または項目64、66もしくは68〜72のいずれか1つに記載の薬学的組成物および/もしくはワクチンを対象に鼻腔内投与することを含む、方法。
87.項目82に記載の方法によってRSVに対する無菌免疫を獲得していないと診断された対象において無菌免疫を誘導する方法(前記方法は、前記組換えMVAを対象に鼻腔内投与することを含む)において使用するための、項目1、4〜63、66、68〜72、78もしくは80のいずれか1つに記載の組換えMVA、および/または項目64、66もしくは68〜72のいずれか1つに記載の薬学的組成物および/もしくはワクチン。88.項目82に記載の方法によってRSVに対する無菌免疫を獲得していないと診断された対象において無菌免疫を誘導するための薬学的組成物および/またはワクチンの調製のための、項目1、4〜63、66、68〜72、78もしくは80のいずれか1つに記載の組換えMVAの使用であって、薬学的組成物またはワクチンは、鼻腔内投与のためである、使用。
上記の一般的および詳細な説明は、例示的および説明的であるに過ぎず、請求される本発明を制限または限定するものではないことを理解されたい。本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の種々の実施形態を例示し、説明とともに、本発明の主旨を説明する役割を果たす。
試験した組換えMVA−構築物、MVA−mBN199B、MVA−mBN201B、MVA−mBN201BΔM2、MVA−mBN294B、MVA−mBN295B、およびMVA−mBN330Bにおいて使用した異種RSV遺伝子を示す。
IBL Hamburgに基づくELISAによって測定された血清RSV特異的IgG応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2で、マウスを2回または3回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。血清を1/100に希釈し、RSV FおよびGタンパク質でコーティングしたプレートを使用するIBL Hamburgキットに基づくRSV特異的IgG ELISAを用いて分析した。
連続希釈後、IBL Hamburgに基づくELISAによって測定された血清RSV特異的IgG応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2で、マウスを2回または3回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。血清を希釈し(1/100、1/200、および1/400)、RSV FおよびGタンパク質でコーティングしたプレートを使用するIBL Hamburgキットに基づくRSV特異的IgG ELISAを用いて分析した。
Fタンパク質のみでコーティングしたプレートを使用するIBL Hamburgに基づくELISAによって測定された血清RSV特異的IgG応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2で、マウスを2回または3回sc免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。血漿を1/100に希釈し、RSV Fタンパク質のみでコーティングしたプレートを使用するIBL Hamburgキットに基づくRSV特異的IgG ELISAを用いて分析した。
Serionに基づくELISAによって測定された血清RSV特異的IgG応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2のいずれかで、マウスを2回または3回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。血清を希釈し(1/100)、RSV溶解物でコーティングしたプレートを使用するSerionキットに基づくRSV特異的IgG ELISAを用いて分析した。
気管支肺胞洗浄(BAL)液および血清中でIBL Hamburgに基づくELISAによって測定されたRSV特異的IgA対IgG応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2で、マウスを2回または3回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。血清およびBAL液を希釈し(1/100)、RSV FおよびGタンパク質でコーティングしたプレートを用いたIBL Hamburgキットに基づくRSV特異的IgGまたはIgA ELISAを使用して分析した。
ELISPOTによって測定されたRSV F−、RSV G−、およびRSV M2特異的T細胞応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2のいずれかで、マウスを2回または3回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。48日目に脾臓を単離し、3つの異なるRSV F特異的ペプチド(RSV−1(配列番号19)、RSV−2(配列番号20)、およびRSV−3(配列番号21)、1つのRSV G特異的ペプチド(RSV−4(配列番号22))、1つのRSV M2特異的ペプチド(RSV−9(配列番号27))、またはMVA−BNで脾細胞を再刺激した。IFNγ分泌細胞をELISPOTにより検出した。実施例に説明するように刺激指数を算出した。
RSV(A2)による曝露後の相対的な体重減少を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2で、マウスを2回または3回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。次いで、49日目に、マウスを106pfuのRSV(A2)に曝露した。曝露日から毎日体重を監視した。曝露日の体重を相対的体重変化の割合を算出するための基準として用いた。
プラークアッセイによって測定された肺内のRSV負荷を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2で、マウスを2回または3回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。次いで、49日目に、マウスを106pfuのRSV(A2)に曝露した。4日後、肺を単離し、プラークアッセイによりRSV負荷(肺当たりのpfu)を決定した。
RT−qPCRによって測定された肺内のRSV負荷を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN201BDM2で、マウスを2回または3回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。次いで、49日目に、マウスを106pfuのRSV A2に曝露した。4日後、肺を単離し、RT−qPCRによってRSV負荷(観察されたL遺伝子コピー数に基づいて推定される)を決定した。
ELISAによって測定されたRSV(A2)曝露後4日目の気管支肺胞洗浄(BAL)中のIL4レベルを示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199BもしくはMVA−mBN201Bで、マウスを2回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。次いで、マウスを106pfuのRSV A2に曝露した。4日後、1mlのPBSで肺を洗浄し、ELISAによってBAL中のIL4レベルを決定した。(n.d.=検出不能)
ELISAによって測定されたRSV(A2)曝露後4日目の気管支肺胞洗浄(BAL)中のIL5レベルを示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199BもしくはMVA−mBN201Bで、マウスを2回(scまたはin)免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。次いで、マウスを106pfuのRSV A2に曝露した。4日後、1mlのPBSで肺を洗浄し、ELISAによってBAL中のIL5レベルを決定した。(n.d.=検出不能)
Serionに基づくELISAによって測定された血清RSV特異的IgG応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN294Aのいずれかで、3週間開けて2回マウスをsc免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。最後の免疫化の2週間後に採取した群当たり5匹のマウスの血清を希釈し、RSV溶解物でコーティングしたプレートを使用するSerionキットに基づくRSV特異的IgG ELISAを用いて分析した。
PRNTによって測定された血清RSV特異的中和抗体応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN294Aのいずれかで、3週間開けて2回マウスをsc免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。PRNTによって分析した、最後の免疫化の2週間後に採取した群当たり5匹のマウスの血清。
ELISPOTによって測定されたRSV FおよびRSV M2特異的T細胞応答を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN294Aのいずれかで、3週間開けて2回マウスをsc免疫した。106pfuのRSVで対照マウスを2回in免疫した。34日目に脾臓を単離し、1つのRSV F特異的ペプチド(RSV−2(配列番号20)、1つのRSV M2特異的ペプチド(RSV−9(配列番号27))、またはMVA−BNで脾細胞を再刺激した。IFNγ分泌細胞をELISPOTにより検出した。実施例に説明するように刺激指数を算出した。
プラークアッセイによって測定された肺内のRSV負荷を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN294Aのいずれかで、3週間開けて2回マウスをsc免疫した。対照マウスを106 pfuのRSVで2回in免疫したか、または50μlのFI−RSVでim免疫した。次いで、49日目に、マウスを106pfuのRSV(A2)に曝露した。4日後、肺を単離し、プラークアッセイによりRSV負荷(肺当たりのpfu)を決定した。
RT−qPCRによって測定された肺内のRSV負荷を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN294Aのいずれかで、3週間開けて2回マウスをsc免疫した。対照マウスを106 pfuのRSVで2回in免疫したか、または50μlのFI−RSVでim免疫した。次いで、49日目に、マウスを106pfuのRSV A2に曝露した。4日後、肺を単離し、RT−qPCRによってRSV負荷(観察されたL遺伝子コピー数に基づいて推定される)を決定した。
RSV(A2)曝露後4日目の気管支肺胞洗浄(BAL)液中の好酸球および好中球の浸潤を示す。TBSまたは1×108 TCID50のMVA−mBN199B、MVA−mBN201B、もしくはMVA−mBN294Aのいずれかで、3週間開けて2回マウスをsc免疫した。対照マウスを106 pfuのRSVで2回in免疫したか、または50μlのFI−RSVでim免疫した。次いで、マウスを106pfuのRSV A2に曝露した。4日後、1mlのPBSで肺を洗浄し、BAL液中の好酸球および好中球の割合を決定した。
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヒト RSV(hRSV)株A2からの全長Gタンパク質をコードするDNA配列である(GenBank受入番号M11486)。
配列番号2は、hRSV株A2からの全長Gタンパク質をコードするアミノ酸配列である(GenBank受入番号M11486)。
配列番号3は、hRSV株A2からの全長Fタンパク質(BN変異体)をコードするDNA配列である。
配列番号4は、hRSV株A2からの全長Fタンパク質(BN変異体)をコードするアミノ酸配列である。
配列番号5は、hRSV株ALongからの全長Fタンパク質(BN変異体)をコードするDNA配列である。
配列番号6は、hRSV株ALongからの全長Fタンパク質(BN変異体)をコードするアミノ酸配列である。
配列番号7は、hRSV株Bからの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠損した切断Gタンパク質をコードするDNA配列である(GenBank受入番号P20896)。
配列番号8は、hRSV株Bからの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠損した切断Gタンパク質をコードするアミノ酸配列である(GenBank受入番号P20896)。
配列番号9は、hRSV株A2からの停止コドンを欠損したNタンパク質をコードするDNA配列である(Genbank受入番号M11486)。
配列番号10は、hRSV株A2からの停止コドンを欠損したNタンパク質をコードするアミノ酸配列である(Genbank受入番号M11486)。
配列番号11は、開始コドンおよび停止コドンの両方を欠損した口蹄疫ウイルスからのプロテアーゼ2Aの断片をコードするDNA配列である。
配列番号12は、開始コドンおよび停止コドンの両方を欠損した口蹄疫ウイルスからのプロテアーゼ2Aの断片をコードするアミノ酸配列である。
配列番号13は、hRSV株A2からの開始コドンを欠損した全長M2タンパク質をコードするDNA配列である(GenBank受入番号M11486)。
配列番号14は、hRSV株A2からの開始コドンを欠損した全長M2タンパク質をコードするアミノ酸配列である(GenBank受入番号M11486)。
配列番号15は、hRSV株A2からの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠損した切断Fタンパク質(BN変異体)をコードするDNA配列であるGenBank受入番号M11486)。
配列番号16は、hRSV株A2からの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠損した切断Fタンパク質(BN変異体)をコードするアミノ酸配列である(GenBank受入番号M11486)。
配列番号17は、停止コドンhRSV株A2を欠損したNタンパク質をコードするDNA配列(Genbank受入番号M11486)+開始コドンおよび停止コドンの両方を欠損した口蹄疫ウイルスからのプロテアーゼ2A断片をコードするDNA配列+hRSV株A2からの開始コドンを欠損した全長M2タンパク質をコードするDNA配列(GenBank受入番号M11486)である。
配列番号18は、hRSV株A2からのNタンパク質のアミノ酸配列(Genbank受入番号M11486)+開始コドンを欠損した口蹄疫ウイルスからのプロテアーゼ2A断片のアミノ酸配+hRSV株A2からの開始コドンを欠損した全長M2タンパク質のアミノ酸配列(GenBank受入番号M11486)である。
配列番号19は、RSV Fタンパク質に由来するRSV−1ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号20は、RSV Fタンパク質に由来するRSV−2ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号21は、RSV Fタンパク質に由来するRSV−3ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号22は、RSV Gタンパク質に由来するRSV−4ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号23は、RSV Gタンパク質に由来するRSV−5ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号24は、RSV Gタンパク質に由来するRSV−6ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号25は、RSV Gタンパク質に由来するRSV−7ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号26は、RSV Gタンパク質に由来するRSV−8ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号27は、RSV M2タンパク質に由来するRSV−9ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号28は、hRSV株A2からの全長Fタンパク質をコードするDNA配列である。
配列番号29は、hRSV株A2からの全長Fタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号30は、hRSV株A2からの全長Gタンパク質をコードするDNA配列である。
配列番号31は、hRSV株A2からの全長Gタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号32は、hRSV株A2からの全長M2タンパク質をコードするDNA配列である。
配列番号33は、hRSV株A2からの全長M2タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号34は、hRSV株A2からの全長Nタンパク質をコードするDNA配列である。
配列番号35は、hRSV株A2からの全長Nタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号36は、RT−qPCRに使用されるプライマー1である。
配列番号37は、RT−qPCRに使用されるプライマー2である。
配列番号38は、RT−qPCRに使用されるプローブ6である。
配列番号39は、PrSプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号40は、Pr7.5プロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号41は、PrSynIImプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号42は、PrLE1プロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号43は、PrH5mプロモーターのヌクレオチド配列である。
実施例
実施例1:組換えMVAの構築
組換えMVAの作製は、組換えMVAを選択するための選択マーカーを使用したCEF細胞における相同的組換えを介して、示されるプロモーター(図1)と一緒にRSVコード配列をMVAゲノムに挿入することによって行われた。挿入部位としての遺伝子間領域(IGRs)の使用については、国際特許公開WO 03/097845に記載されている。選択マーカーを欠失させるために、相同的組換えの第2のステップを用いた。
MVA−BN(登録商標)ウイルスを、IGR88/89にRSV−A2−GおよびRSV−F−A2_BNの遺伝子を含有する組換えMVA−mBN199Bを作製するための出発材料として用いた。MVA−mBN199のPreMaster材料を、後述のMVA−mBN201Bを作製するための出発材料として用いた。
IGR88/89への挿入(MVA−mBN199B):
RSV−A2−Gのコード配列は、RSV−A2株糖タンパク質Gの天然に存在する配列に基づいている。融合タンパク質RSV−F−A2 BNのコード配列も、RSV−A2株に基づいているが、Bavarian Nordicによって修飾された。両方の挿入遺伝子は、ヒト適合化コドンの使用頻度を用いてGeneartにより合成され、組換えプラスミドのクローニングに用いられた。RSV−A2−Gのタンパク質配列は、GenBank配列P03423.1に対して100%の同一性を示す。RSV−F−A2 BNのタンパク質配列は、103位における1つの単一アミノ酸交換(PからA)のために、GenBank配列P03420.1に対して99%の同一性を示すのみである。
IGR148/149への挿入(MVA−mBN201B):
RSV−N−A2およびRSV−M2−A2のコード配列は、それぞれのRSV−A2株糖タンパク質の自然に存在する配列に基づいている。両方の遺伝子は、単一プロモーターの制御下で2つの別個の天然タンパク質の発現を可能にする2A自己切断ペプチド配列によって接続される[M.D.Ryan et al.(1991),J.Gen.Virol.72(Pt 11):2727−2732]。RSV−G(B)およびRSV−F A long BN のコード配列を切断して膜貫通ドメインを除去し、発現されたタンパク質を分泌することができるようにした。挿入した全ての遺伝子は、最適なコドン使用頻度を用いてGeneartにより合成され、組換えプラスミドのクローニングに用いられた。RSV−N−A2およびRSV−M2−A2のタンパク質配列は、GenBank配列P03418.1およびP04545.1に対してそれぞれ100%の同一性を示す。切断型RSV−G(B)のタンパク質配列は、GenBank配列P20896.1に対して100%の同一性を示す。切断型RSV−F A long BNのコード配列は、R.P.Du et al.(1994)Biotechnology(N Y)12(8):813−818に記載されるように、RSV−Fタンパク質の最初の526個のアミノ酸を含有するように設計した。
MVA−mBN210BΔM2のM2(A2)中の欠失変異体:
MVA−mBN210BΔM2は、M2(A2)遺伝子の12番目のコドンに欠失変異体を含むため、機能的M2を発現することができない。この欠失は、2つのアミノ酸スレオニンおよびアラニンの、M2(A2)の最初の11個のアミノ酸への付加、続いて転写の停止(UGA停止コドン)を引き起こす。
実施例2:RSV Fタンパク質、RSV Gタンパク質、RSV Nタンパク質、およびRSV M2タンパク質を発現する組換えMVAワクチンの免疫原性および有効性
ワクチン候補MVA−mBN199Bは、RSVの糖タンパク質(G)および融合(F)タンパク質をコードし、MVA−mBN201BDM2およびMVA−mBN201Bは、全長FおよびGタンパク質に加えてFおよびGの切断型、ヌクレオカプシドタンパク質(N)、ならびにMVA−mBN201Bの場合はRSVのマトリックスタンパク質(M2)も発現する(図1を参照)。この実験の目的は、皮下(sc)または鼻腔内(in)投与経路を介した2回または3回の免疫化後に、MVA−mBN199Bと比較してMVA−mBN201BΔM2およびMVA−mBN201Bの免疫原性および保護効果を分析することであった。
BALB/cマウスにおけるRSV(A2)曝露モデルを使用して、これらの構築物の有効性を試験した。MVA−mBN199BまたはMVA−mBN201Bを用いた2回の免疫化は、皮下に適用された時は、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT−qPCR)によって判断されるような部分的な保護を提供し、鼻腔内経路によって適用された時は、ほぼ完全な保護を提供した。MVA−mBN201Bによって提供された保護は、MVA−mBN199Bによって提供された保護よりも良好であった。2つの構築物によって誘導された液性免疫応答に差は認められなかったが、T細胞応答には大きな差が観察された。MVA−mBN199Bが良好なRSV F特異的細胞応答を誘導したのに対し、MVA−mBN201Bでは、強いM2特異的T細胞応答、およびMVA−mBN199Bと比較してより顕著なG特異的応答が観察された。皮下および鼻腔内免疫化後に誘導されたIgGおよびT細胞応答は類似しており、鼻腔内免疫化によって得られたほぼ完全な無菌免疫は、粘膜感染部位におけるRSV特異的IgAの誘導および分泌と相関している可能性が高い。MVA−mBN201BDM2の場合、M2特異的T細胞応答の欠如は、MVA−mBN201Bと比較して低い保護と相関しており、MVA−mBN199Bと同様の保護をもたらした。
試験デザイン
1×108 TCID50のMVA−mBN199B(群3、4、および5)、1×108 TCID50 MVA−mBN201B(群6、7、および8)、または1×108 TCID50 MVA−mBN201BΔM2(群9)で、マウスを皮下(sc)または鼻腔内(in)処理した。表1に従って、2回(群3、4、6、7、および9)または3回(群5および8)のいずれかでマウスを処理した。表7に従って、2つの対照群をTBSで(sc)(群1)、またはRSVで(in)(群2)2回処理した。免疫化または曝露の前日および屠殺日に、血液を採取した。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により、RSV特異的IgGの力価を測定した。48日目に、マウスの半数を屠殺した。それらの脾臓を摘出し、免疫吸着スポット法(ELISPOT)によるRSV特異的T細胞応答の分析のために調製した。49日目に、残りのマウスを106 pfuのRSV A2に曝露した(in)。曝露日から開始して、外観および体重を毎日監視した。曝露後4日目に、高用量のケタミン−キシラジンの注射によりマウスを屠殺し、最終採血を行った。肺洗浄後、肺を摘出し、プラークアッセイおよびRT−qPCRによりRSV負荷を分析した。
試験スケジュール.生存段階のスケジュールを表2に要約する。
材料および方法
実験動物.Janvier(Route des Chenes Secs、F−53940 Le Genest−Saint−Isle,France)から48匹の7週齢のメスBALB/cJ Rj(H−2d)マウスを入手した。全てのマウスは、特定の病原体を有していなかった。
飼育.試験は、Bavarian Nordic−Martinsreidにある動物施設の117号室で行われた。このユニットに、温度20〜24℃および相対湿度40%〜70%で濾過吸気を提供した。部屋は、14時間の明期および10時間の暗期のサイクルで人工的に照明した。試験馴化期間は、15日であった。床面積530cm2の透明なSealSafe(商標)ケージ(H Temp[ポリスルホン]ケージType II L(欧州標準))に動物を収容した。H−Temp SealSafe(商標)蓋でケージを覆った。ケージごとに別個にHEPA濾過空気を提供するSLIMLine(商標)循環ユニットを装備したTECNIPLAST−IVC SealSafe(商標)システム内にケージを設置した。週に1回、動物の寝床を交換した。
食餌および水.マウスには、照射した維持食餌(SSNIFF R/M−H(照射済み)V1534−727)および水(121℃で20分間加圧滅菌済み)を自由に摂取させた。
処理前の手順:動物の識別.各ケージ内の動物を個別に識別するために、標準的手順に従って耳パンチを行った。
組み入れ/除外試験.標準的手順に従って組み入れ/除外試験を行った。
事前採血としての血液試料採取.標準的手順に従った顔面静脈穿刺により、約150μlの血液試料を採取した。標準的手順に従ってさらに処理するために、血液試料を実験室に移した。
処理手順:試験物1〜3および参照物の調製および投与試験物および参照物の調製および投与は、クラスII微生物学的安全キャビネット(HERAsafe(登録商標)/クラスII型H、Kendro)内で標準的手順に従って行われた。端的に述べると、sc投与の場合、組換えMVAをTBSに希釈し、2×108 TCID50/mlの濃度の作業溶液を得た。標準的手順に従って、500μl中1×108 TCID50をsc注射した。in投与の場合、組換えMVAをTBSに希釈し、2×109 TCID50/mlの濃度の作業溶液を得た。標準的手順に従って、50μlの希釈ウイルスを麻酔(キシラジン/ケタミン)下のマウスの片方の鼻孔内に投与した。標準的手順に従って、500μlのTBSをsc投与した。
試験物4/曝露ウイルスの調製および投与.RSV原液バイアルを解凍し、ウイルスの不安定性のためにできるだけ迅速に使用した(氷上で最長15分)。ウイルスは、常に氷上に維持し、標準的手順に従って鼻腔内経路により麻酔下(キシラジン/ケタミン)のマウスを100μlのニートウイルス溶液に曝露するために直ちに使用した。
処理後の手順:
体重.体重標準的手順に従って、曝露日から屠殺するまで、毎日体重を監視した。
血液試料採取.標準的手順に従って、眼球後または顔面静脈穿刺により血液試料(約150μl)を採取した(詳細については表1および2を参照のこと)。標準的手順に従ってさらに処理するために、血液試料を実験室に移した。
安楽死.48日目に、頸椎脱臼によりマウスの半数の屠殺を行った。53日目に、腹腔内注射により2倍用量のケタミン−キシラジンを残りのマウスに投与し、腹腔内の大動脈を切断することにより安楽死を行った。
脾臓摘出.脾臓を無菌的に摘出した。標準的手順に従って、培地を充填した試験管にそれらを入れた。これらの試験管は、標準的手順に従って動物施設に搬入され、次いで搬出された。
肺洗浄および肺摘出.肺に1mlのPBSを4回流すことにより、気管支肺胞洗浄(BAL)液を採取した。次いで、肺を摘出し、後のプラークアッセイおよびRNA抽出のために、2等分して液体窒素中で瞬間凍結した。
分析:血液試料の処理および血清の保存.実験室に移した後、標準的手順に従って血液試料を処理して血清にした。調製後、分析のために必要となるまで、血清を−20℃(±5℃)で保存した。
血清試料からのRSV特異的抗体力価の分析.改良されたELISAキット(Serion ELISA classic、カタログ番号ESR113G)を使用して、全ての血清試料からRSV特異的IgGの総ELISA力価を決定した:キットとともに供給されるアルカリホスファターゼコンジュゲート抗ヒトIgG抗体の代わりに、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Serotecカタログ番号103004)を二次抗体として使用した。
改良されたELISAキットを使用して、全ての血清試料およびBAL液からRSV−F/G特異的IgGのELISA力価を決定した(IBL−Hamburg 参照番号RE56881)。キットとともに供給されるPODコンジュゲート抗ヒトIgG抗体の代わりに、HRPコンジュゲートヒツジ抗マウスIgG(参照番号BN−687−95/96、Serotecカタログ番号AAC10P)を二次抗体として使用した。
改良されたELISAキット(IBL−Hamburg参照番号RE56881の試薬およびRSV(Fタンパク質)IgGマイクロタイターストリップ、参照番号RE56692)を使用して、群4および7以外の48日目の血清試料からRSV−F特異的IgGのELISA力価を決定した。キット内に提供されるPODコンジュゲート抗ヒトIgG抗体の代わりに、HRPコンジュゲートヒツジ抗マウスIgG(参照番号BN−687−95/96、Serotecカタログ番号AAC10P)を二次抗体として使用した。
改良されたELISAキット(IBL−Hamburg Ref.RE56881)を使用して、それぞれ、48日目および53日目の試料から、血清およびBAL液中のRSV特異的IgAのELISA力価を決定した:キット内に提供されるPODコンジュゲート抗ヒトIgG抗体の代わりに、HRPコンジュゲートヒツジ抗マウスIgA(参照番号BN−687−95/96、Serotecカタログ番号STAR137P)を使用した。
脾細胞からのRSV特異的細胞性免疫応答の分析.最後の投与から2週間後、他の箇所に記載するように、特異的ペプチドで脾細胞を再刺激し(例えば、S.M.Varga et al.(2000);S.Johnstone et al.(2004);S.Jiang et al.,(2002);and A.B.Kulkarni et al.,J.Virol.67(7):4086−4092(1993)を参照)、ELISPOTアッセイにより脾細胞からのIFNγ放出を検出することにより、RSV F−、RSV G−、およびRSV M2特異的細胞応答を決定した。
ELISPOTアッセイ法.Mouse IFN−Gamma−Kit(BD Biosciences、カタログ番号551083)をELISPOTアッセイに使用した。アッセイは、製造者の指示に従って行われた。端的に述べると、脾細胞単離の前日に、プレートを捕捉抗体でコーティングした。単離後、細胞をELISPOTプレートに移し、異なるペプチド(表3を参照)で20時間37℃で刺激した。検出抗体を使用してIFNγの産生を検出した。製造者の指示に従ってBD(商標) ELISPOT AEC Substrate Set(BD Biosciences、カタログ番号551951)を使用して、プレートを展開した。
ELISPOTによる刺激計画.すべての条件を2通り試験した。RSV−1、RSV−2、RSV−3、RSV−4、およびRSV−5ペプチド(表3を参照)を最終濃度5μg/ml(1μg/ウェル)で使用して、ウェル当たり5×105および2.5×105個の脾細胞を刺激した。MVA(免疫化対照)を感染効率(MOI)10で使用してウェル当たり5×105および2.5×105個の脾細胞を刺激し、コンカナバリンA(ConA[陽性対照])を最終濃度0.5μg/mlで使用して2.5×105個の脾細胞を刺激した。陰性対照として、5×105個の脾細胞を培地のみ(Glutamax、ペニシリン、ストレプトマイシン、10%ウシ胎仔血清、および105 M s−メルカプトエタノールを補充したRPMI−1640)で培養した。
BAL液および肺の分析.染色の問題のために、BALの細胞の特徴付けは不可能であった。RSVプラークアッセイおよびRT−qPCRにより細胞試料中のRSV負荷を決定した。
RSVプラークアッセイ.French Pressを使用して、瞬間凍結した肺の各反片を1mlの冷培地中でホモジナイズした(7%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地)。短期間の遠心分離後、試験管2本分の各上清を、48ウェル平底プレート中で増殖させたVero細胞単層上に2倍連続希釈で滴定した。6日後、単層を洗浄し、1%ホルムアルデヒドで固定した。24時間後、0.04% Neutral Redで単層を染色し、プラークを数えた。
RSVのRT−qPCRホモジナイズした100μlの肺組織を直ちに取り出し、QiagenのRNeasy(登録商標)Mini Kit(カタログ番号74104)を使用してRNAを単離した。Applied BiosystemsのHigh Capacity RNA−to−cDNA Kit(カタログ番号4387406)を使用して逆転写反応を行った。Applied BiosystemsのUniversal PCR Master Mix(カタログ番号4352042)と、3つのプライマー:(1)プライマー1(5’−GAA CTC AGT GTA GGT AGA ATG TTT GCA−3’;配列番号36);(2)プライマー2(5’−TTC AGC TAT CAT TTT CTC TGC CAA T−3’;配列番号37);および(3)プローブ6(5’−TTT GAA CCT GTC TGA ACA TTC CCG GTT−3’;(配列番号38)の混合物とを使用して、サーマルサイクラー内で以下のパラメータを用いて、RSV L遺伝子に特異的なPCRを行った:(1)50℃で2分間;(2)95℃で10分間;(3)(95℃で15秒、60℃で1分)を45サイクル。コピー数は、RSV L遺伝子の断片を含有するpMISC202プラスミドベクターの標準曲線から決定した。Applied Biosystems(カタログ番号4351315)のVIC/MGB標識プローブを使用したマウスβアクチンに対する同様の反応を、入力cDNAの内部対照として用いた。
試験の文書化.生存段階の個々のステップの間に全ての情報を収集するために、生存段階のフロー図を用意した。さらに、マウスまたはケージに特有な情報を、対応するケージカードに記録した。ケージカードは、試験の原データとは見なされないが、Upper Bavariaの政府からの要求であった。
分析段階の個々のステップの間に全ての情報を収集するために、分析段階のフロー図を用意した。アッセイは、アッセイ特有の試験記録またはLaboratory Note Booksに文書化した;相互参照は、分析段階のフロー図中に文書化した。原データを含む全てのアッセイ文書は、標準的手順に従って見直された。さらに、標準的手順に従って血清試料のための試料追跡シートを用意した。
データ処理.標準的手順によるさらなる分析のために原データをExcelファイルに転送した。
ELISA.Excelを使用して、ODの平均値および平均の標準誤差を算出した。
ELISPOT.製造者の指示にしたがって、CTLリーダーを用いてELISPOTプレートを読み取った。ウェルごとにスポット形成細胞(SFC)の数を決定し、さらなる評価のためにExcelファイルに転送した。ウェル当たり5×105および2.5×105個の細胞を用いたインキュベーションから、ウェルごとに1×106個の脾細胞当たりのスポットの数を算出した。陰性対照の平均を算出し、マウス1匹当たりの平均値を算出する前に各個々の値から差し引いて、マウス1匹当たりの刺激指数(SI)値を得た(IFNをγ放出する脾細胞のペプチド特異的な周期)。
ペプチド刺激の場合、数えきれないほど多くのスポットがあった場合、またはRSVで免疫した動物の場合を除いて、5×105および2.5×105個の細胞を含むウェルからSIを得た。これらの場合、2.5×105の濃度のみを用いた。MVA−BN刺激の場合、数えきれないほど多くのスポットがあった場合を除いて、5×105個を含むウェルからSIを得た。その場合、2.5×105の濃度のみを用いた。個々の動物についてSIを決定した後、SIの平均値(1×106個の脾細胞当たりのSFC)および平均値の標準誤差(SEM)を群ごとに算出した。
体重変化.RSV曝露前の個々の体重値(グラム表示)を基準値として採用した。これらの基準値を用いて、曝露後の各監視時点での個々の動物の体重変化(%表示)および群の平均体重変化をMicrosoft Excelを使用して算出した。
RSVプラークアッセイ.計数可能なウイルス希釈液が最も多い3つのウェル内のプラークの数を数えた。希釈因子によって調整されたプラークの平均数に、次いで10を乗じて溶液の力価をpfu/mlで得、最終的に2を乗じて肺当たりの力価を得た。
RSVのRT−qPCR.Applied BiosystemsのABI 7500(カタログ番号4351107)を使用してリアルタイムでPCR増幅を測定し、Applied Biosystemsから供給されたSystem Softwareを使用して分析した。全ての値は、L遺伝子の標準値と比較し、試料ごとにマウスβアクチンに正規化した。
結果
液性免疫応答の分析:血清試料からのRSV特異的IgG抗体応答の分析.最初に、組換えRSV FおよびGタンパク質のみでコーティングしたプレートを使用するIBL−Hamburgキットに基づくELISAにより、血清を分析した(図2および図3)。図2に示すように、単回免疫化後、免疫化に用いた経路(scまたはin)に関係なく、3つ全ての構築物(MVA−mBN199B、MVA−mBN201BDM2、およびMVA−mBN201B)で同様のRSV特異的IgG応答(0.870〜1.347の範囲のOD)が観察された。2回目の免疫化が、抗体応答に2.0倍から3.5倍近くの増加をもたらしたのに対し(2.627〜3.407の範囲のOD)、3回目のsc注射は、B細胞応答にわずかな影響を及ぼしたに過ぎず、2回目の免疫化後のODと比較して約0.500OD単位の増加をもたらした。組換えRSV Fタンパク質のみでコーティングしたプレートを使用するIBL Hamburgキットに基づくELISAでも同様の結果が得られた(図4)。
血清の連続希釈(1/100、1/200、および1/400)後、RSV FおよびRSV G特異的ELISAの結果は、MVA−mBN201BΔM2およびMVA−mBN201Bによる切断RSV Fタンパク質および切断RSV Gタンパク質のさらなる発現にもかかわらず、MVA−mBN199B、MVA−mBN201BΔM2、およびMVA−mBN201Bは、同様のRSV Fおよび RSV G特異的IgG応答を誘導したことを示した(図3)。構築物を用いた2回のsc免疫化後、B細胞応答は、RSV単独(陽性対照)による免疫化と比較してなおもより低かった。RSVの2回のin適用によって誘導される抗体応答のレベルに達するには、MVA−mBN構築物を用いた3回目のsc免疫化が必要であった。対照的に、IBL Hamburgキットに基づくELISAにより分析した場合、MVA−mBN199BおよびMVA−mBN201Bを用いた2回のin免疫化は、RSV単独の2回の免疫化、またはMVA−mBN199B、MVA−mBN201BΔM2、および MVA−mBN201Bを用いた3回のsc免疫化と同様のB細胞応答を誘導した(図3)。
RSV溶解物でコーティングしたプレートを使用するSerionキットに基づくELISAにより再び血清を分析した場合、MVA−mBN199B、MVA−mBN201BΔM2、およびMVA−mBN201Bの間に差は認められなかった。2回目および3回目の免疫化の間、またはscおよびin投与経路の間にも差は観察されなかった。また、応答は全て、RSVの2回のin適用によって誘導された抗体応答よりも低かった(図5)。
RSV特異的IgA抗体応答の分析.曝露後4日目(53日目)に、BAL液中のRSV FおよびRSV G特異的IgAを(IBL Hamburgキットに基づいて)測定した。加えて、ELISAによるRSV FおよびRSV G特異的IgGについてもBALおよび血清を分析した。その結果を、曝露(48日目)の直前に血清中で得られた結果と比較して図6に示す。
予想されたように、IgA応答は、RSV、MVA−mBN199B、およびMVA−mBN201Bのin適用後のみに検出された。IgGは、BAL中にも検出することができたが、IgAは、in適用後により高いレベルで検出された。適用経路に関係なく、IgAの血清レベルは、IgGレベルよりもはるかに低かった。
RSV特異的細胞性免疫応答の分析.最後の免疫化の2週間後、ELISPOTにより脾臓のT細胞応答を分析した(図7)。inまたはsc経路により投与されたMVA−mBN199Bは、強いRSV−F特異的T細胞応答を誘導した。この免疫応答は、主に、RSV−M2の非存在下で免疫優性であるRSV−F特異的ペプチドRSV−2に対するものであった。応答は、2回目のsc免疫化後、106個の脾細胞当たり約2000スポットであり、3回目のsc注射または2回目の鼻腔内適用後は、約4000スポットであった。RSVの鼻腔内適用に対する応答と同様に、MVA−mBN199Bによる免疫化後にペプチドRSV−4に対する低いG特異的応答が検出され(106個の脾細胞当たり約500スポット)、予想されたように、MVA−mBN199Bは、M2特異的T細胞を誘導しなかった。M2ペプチドは、マウスにおけるRSVの免疫優性ペプチドである。結果的に、RSVによる鼻腔内免疫化は、106個の脾細胞当たり約1000スポットを超える良好なM2特異的T細胞応答を誘導し、F特異的T細胞応答はほぼ全く誘導しなかった。
MVA−mBN199Bと同様に、MVA−mBN201Bは強いT細胞応答を誘導したが、それはM2が優勢であった(投与回数または投与経路に関係なく、106個の脾細胞当たり約4000スポット超)。MVA−mBN201Bによって誘導されたG特異的応答でさえ、MVA−mBN199BまたはRSVによって誘導されたG特異的応答より少なくとも3倍高かった。MVA−mBN199Bとは対照的に、MVA−mBN201Bによって誘導されたF特異的応答は、RSV−2ペプチドで106個の脾細胞当たり600スポット未満とはるかに低かった。
RSV A2株によるRSV曝露.最後の免疫化の2週間後、マウスを106 pfuのRSV(A2)に鼻腔内曝露した。体重を毎日監視した。曝露後4日目に、マウスを屠殺した。1mlのPBSで肺を洗浄した後、肺を摘出し、上述のように実施したプラークアッセイおよびRT−qPCRにより肺内のRSV負荷を決定した。
体重変化.おそらくは麻酔のためまたはin曝露自体のために、曝露後1日目に、全てのマウスに体重減少が見られた(図8)。TBSで処理したマウスは、RSV曝露後4日目に著しく体重が減少し始めた。対照的に、3回目にRSVを鼻腔内投与したマウスは、体重減少を示さなかった。曝露後4日目に、MVA−mBN199B、MVA−mBN201B、またはMVA−mBN201BDM2でsc免疫した全てのマウスは、体重が約20%減少した。そのような体重減少については、以前にOlszewska et al.によって記載されている(Vaccine 23:215(2004))。しかしながら、我々のRT−qPCRの結果(図10)は、それが、一次RSV感染の通常のクリアランスと比較して、ワクチンで予備刺激されたCTL応答によるより良好な保護および肺からのより早期のRSV排除と相関することを示している。in適用した場合、MVA−mBN201Bで免疫したマウスは、曝露後2日目にsc免疫化マウスと同様の体重減少を示したが、sc経路と比較して肺内のRSV負荷が低いため、曝露後4日目には回復した(図10)。RSVで免疫した群と同様に、MVA−mBN199Bでin免疫したマウスも体重減少を示さなかった。
プラークアッセイによって測定されたRSV負荷.曝露後4日目に、非免疫マウスに平均して肺当たり57671pfuが検出された(図9)。RSVで免疫した対照群と同様に、2回のscまたはin適用後、MVA−mBN199B、MVA−mBN201B、またはMVA−mBN201BΔM2で免疫した動物の肺にRSV A2プラークは検出されなかった。
定量的リアルタイムPCRによって測定されたRSV負荷.RT−qPCRによっても肺内のRSV負荷を分析した(図10)。ワクチン接種したいずれのマウスにも、プラークアッセイによってRSVは検出されなかったが、MVA−mBN199Bで3回免疫したマウスにおいてRSVゲノムがなおも検出可能であった。MVA−mBN199Bによる3回の免疫化後、RSV負荷は、TBS対照群と比較して38倍低かった。MVA−mBN199Bによる3回の免疫化後、RSVゲノムも検出可能であったが、負荷は、TBS対照群と比較して158倍低かった。2回免疫したマウスと3回免疫したマウスの間に大きな差は認められなかった。興味深いことに、MVA−mBN201Bで観察されたRSV負荷の減少は、MVA−mBN199Bに相当するM2の非存在下でのMVA−mBN201BΔM2のワクチン接種後には観察されなかった。
MVA−mBN201Bによるin免疫化後、RSVで処理した群で得られたものに匹敵するほぼ完全な保護が観察されたが、5匹のマウスのうち1匹において、L遺伝子の数個のコピーがなおも観察可能であった。MVA−mBN199Bによる鼻腔内免疫化も、RSV負荷の強い減少を誘導したが、4匹のマウスのうちの3匹になおもL遺伝子が検出された。
考察および結論
MVA−mBN201Bは、MVA−mBN199B構築物にも含まれる全長RSV FおよびGタンパク質に加えて、RSV FおよびGタンパク質の切断型を発現するが、MVA−mBN201Bは、同様の規模の液性免疫応答を誘導した。RSV FおよびGのELISAと比較してRSV FのみのELISAにおいて測定された同様に良好な応答によって判断されるように、両方の構築物が、主にRSV Fタンパク質に対する抗体応答を誘導した。2回のin適用後の抗体レベルは、2回のsc適用後よりも高かった。2回のin適用によって誘導される抗体応答レベルに達するには、3回目のsc適用が必要であった。対照的に、sc経路対in経路、または2回対3回のsc適用を用いて誘導したT細胞応答に大きな差は認められなかった。しかしながら、MVA−mBN199Bが良好なRSV F特異的細胞応答を誘導したのに対し、MVA−mBN201Bでは強いM2特異的T細胞応答が観察された。MVA−mBN201Bによって誘導されたRSV G特異的応答も、MVA−mBN199Bと比較してより顕著であった。MVA−mBN201Bによって誘導されたT細胞応答のパターンは、RSV免疫化によって誘導されたT細胞応答に類似していたが、はるかにより高かった。
投与経路または投与回数に関係なく、両方の構築物がRSV(A2)による曝露からマウスを保護し、複製ウイルスは肺から回収できなかった。しかしながら、以前に観察されたように、MVA−mBN199BまたはMVA−mBN201Bによるsc免疫化は、無菌免疫(すなわち、標的とする感染性因子が体内から排除された後でも続く免疫)をもたらさなかった。MVA−mBN199BまたはMVA−mBN201Bのsc適用により免疫したマウスの肺内ゲノムRSV負荷(ウイルスRNAポリメラーゼ(L)遺伝子のレベルによって測定される)は、有意に減少したものの、定量的RT−PCRによってなおも検出可能であり、3回目のsc免疫化は、そのRSV特異的IgGレベルの増加にもかかわらず、ウイルス負荷に有益な影響を与えなかった。RSV Lタンパク質発現の低下は、MVA−mBN201Bによるワクチン接種後にMVA−mBN199Bと比較してやや顕著であったが、RSVゲノム負荷は、MVA−mBN199Bと同様にMVA−mBN201Bをワクチン接種した動物よりも、MVA−mBN201BΔM2をワクチン接種した動物においてより高かったため、それは、M2特異的CD8+T細胞応答の増加に起因していたのかもしれない。
MVA−mBN199BまたはMVA−mBN201Bの2回のin適用後、もう少しで無菌免疫が得られそうであった。この観察は、粘膜感染部位におけるRSV特異的IgAの誘導および分泌と相関していた。
実施例3:FI−RSVと比較した、RSV Fタンパク質、RSV Gタンパク質、RSV Nタンパク質、およびRSV M2タンパク質を発現する組換えMVAワクチンの安全性
ワクチン候補MVA−mBN199Bは、RSVの糖タンパク質(G)および融合(F)タンパク質をコードし、MVA−mBN201Bは、RSVの全長タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質(N)、およびマトリックスタンパク質(M2)に加えてFおよびGの切断型を発現する(図1を参照)。これらの実験の目的は、皮下(sc)または鼻腔内(in)投与経路による2回の免疫化後に、MVA−mBN199BおよびMVA−mBN201Bの安全性をFI−RSVと比較して分析することであった。
BALB/cマウスにおけるRSV(A2)曝露モデルを使用して、これらの構築物の安全性を試験した。MVA−mBN199BまたはMVA−mBN201Bを用いた2回の免疫化は、RSV(A2)への曝露後に、FI−RSVと比較してBALにおけるIL4およびIL5の分泌増加を誘導しなかった。
試験デザイン
表xに従って、1×108 TCID50のMVA−mBN199B(群3および4)、1×108 TCID50 MVA−mBN201B(群5および6)で、3週間開けて2回マウスを皮下(sc)または鼻腔内(in)処理した。表xに従って、3つの対照群を2回、TBSで(sc)処理するか(群1)、またはRSVでin処理するか(群2)、または30μgのFI−RSVでim処理(群7)した。35日目に、マウスを106 pfuのRSV A2に曝露(in)した。曝露後4日目に、高用量のケタミン−キシラジンの注射によりマウスを屠殺し、最終採血を行った。肺洗浄後、ELISAによりBAL中のIL4およびIL5レベルを分析した。
試験スケジュール.生存段階のスケジュールを表yに要約する。
材料および方法
実験動物.Janvier(Route des Chenes Secs、F−53940 Le Genest−Saint−Isle,France)から7週齢のメスBALB/cJ Rj(H−2d)マウスを入手した。全てのマウスは、特定の病原体を有していなかった。
飼育.試験は、Bavarian Nordic−Martinsreidにある動物施設の117号室で行われた。このユニットに、温度20〜24℃および相対湿度40%〜70%で濾過吸気を提供した。部屋は、14時間の明期および10時間の暗期のサイクルで人工的に照明した。試験馴化期間は、15日であった。床面積530cm2の透明なSealSafe(商標)ケージ(H Temp[ポリスルホン]ケージ Type II L(欧州標準))に動物を収容した。H−Temp SealSafe(商標)蓋でケージを覆った。ケージごとに別個にHEPA濾過空気を提供するSLIMLine(商標)循環ユニットを装備したTECNIPLAST−IVC SealSafe(商標)システム内にケージを設置した。週に1回、動物の寝床を交換した。
食餌および水.マウスには、照射した維持食餌(SSNIFF R/M−H(照射済み)V1534−727)および水(121℃で20分間加圧滅菌済み)を自由に摂取させた。
処理前の手順:動物の識別.各ケージ内の動物を個別に識別するために、標準的手順に従って耳パンチを行った。
組み入れ/除外試験.標準的手順に従って組み入れ/除外試験を行った。
事前採血のための血液試料採取.標準的手順に従った顔面静脈穿刺により、約150μlの血液試料を採取した。標準的手順に従ってさらに処理するために、血液試料を実験室に移した。
処理手順:試験物および参照物の調製および投与。試験物および参照物の調製および投与は、クラスII微生物学的安全キャビネット(HERAsafe(登録商標)/クラスII型H、Kendro)内で標準的手順に従って行われた。端的に述べると、sc投与の場合、組換えMVAをTBSに希釈し、2×108 TCID50/mlの濃度の作業溶液を得た。標準的手順に従って、500μl中1×108 TCID50をsc注射した。in投与の場合、組換えMVAをTBSに希釈し、2×109 TCID50/mlの濃度の作業溶液を得た。標準的手順に従って、50μlの希釈ウイルスを麻酔(キシラジン/ケタミン)下のマウスの片方の鼻孔内に投与した。標準的手順に従って、500μlのTBSをsc投与した。
RSV(A2)ウイルスの調製および投与.RSV原液バイアルを解凍し、ウイルスの不安定性のためにできるだけ迅速に使用した(氷上で最長15分)。ウイルスは、常に氷上に維持し、標準的手順に従って鼻腔内経路により麻酔下(キシラジン/ケタミン)のマウスを100μlのニートウイルス溶液に曝露するために直ちに使用した。
FI−RSVの調製および投与.40μl中30μgのFI−RSVを筋肉内注射した。
安楽死.35日目に、腹腔内注射により2倍用量のケタミン−キシラジンを残りのマウスに投与し、腹腔内の大動脈を切断することにより安楽死を行った。
肺洗浄.肺に1mlのPBSを4回流すことにより、気管支肺胞洗浄(BAL)液を採取した。
分析
市販のELISAキット(eBIOSCIENCE Cat N°BMS613のmIL4 PLATINUM ELISAおよびeBIOSCIENCE Cat N°88−7054−22のREADY−SET−GO MIL−5 ELISA)を使用して、気管支肺胞洗浄(BAL)上清中のIL−4およびIL−5のレベルを測定した。
試験の文書化.生存段階の個々のステップの間に全ての情報を収集するために、生存段階のフロー図を用意した。さらに、マウスまたはケージに特有な情報を、対応するケージカードに記録した。ケージカードは、試験の原データとは見なされないが、Upper Bavariaの政府からの要求であった。
分析段階の個々のステップの間に全ての情報を収集するために、分析段階のフロー図を用意した。アッセイは、アッセイ特有の試験記録またはLaboratory Note Booksに文書化した;相互参照は、分析段階のフロー図中に文書化した。原データを含む全てのアッセイ文書は、標準的手順に従って見直された。さらに、標準的手順に従って血清試料のための試料追跡シートを用意した。
データ処理.標準的手順によるさらなる分析のために原データをExcelファイルに転送した。
ELISA.サイトカインの濃度は、それぞれのELISAキットの標準曲線から決定した。
結果
FI−RSVで観察されたようなIL−4(図11)およびIL−5(図12)産生の増加は、MVA−mBN199BまたはMVA−mBN201Bの場合には観察されなかった。MVA−mBN199BまたはMVA−mBN201Bでマウスをin免疫した時、両方のサイトカインは検出レベル未満であった。
考察および結論
Th2応答によって評価されるように、MVA−mBN199BおよびMVA−mBN201Bのどちらとも、FI−RSVと比較して重篤な疾患を誘導しなかった。
実施例4:RSV Fタンパク質、RSV Gタンパク質、RSV Nタンパク質、およびRSV M2タンパク質を発現する異なる組換えMVAワクチンの免疫原性、有効性、および安全性の比較.
ワクチン候補MVA−mBN199Bは、RSVの糖タンパク質(G)および融合(F)タンパク質をコードし、MVA−mBN201Bは、RSVの全長タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質(N)、およびマトリックスタンパク質(M2)に加えてFおよびGの切断型を発現し、MVA−mBN294Bは、RSVの1つのFおよび2つの2G全長タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質(N)、およびマトリックスタンパク質(M2)を発現する(図1を参照)。MVA−mBN294Aは、なおも1つのクローニングカセットを有するMVA−mBN294Bのクローニングにおける中間産物である。このクローニングカセットは、導入遺伝子の発現またはトランスジェニックタンパク質の免疫原性特性のいずれにも影響しない。これらの実験の目的は、皮下(sc)投与経路による2回の免疫化後に、MVA−mBN294Aの免疫原性、有効性、および安全性をMVA−mBN199BおよびMVA−mBN201Bと比較して分析することであった。
BALB/cマウスにおけるRSV(A2)曝露モデルを使用して、これらの構築物の免疫原性、有効性、および安全性を試験した。MVA−mBN201Bと比較したMVA−mBN294A(MVA−mBN294Bと同等)における変化にもかかわらず、それが同様のB細胞およびT細胞応答を誘導し、同様の保護を提供したことを確認した。この実験は、RSV膜糖タンパク質(FまたはG)の少なくとも1つの抗原決定基、およびRSVヌクレオカプシドタンパク質(NまたはM2)の少なくとも1つの抗原決定基を発現するいずれの構築物(MVA−mBN201BまたはMVA−mBN294A)も、RSV膜糖タンパク質の抗原決定基のみを発現する構築物(MVA−mBN199B)よりも良好な保護を誘導することを示している。
試験デザイン
表6に従って、予備刺激−追加免疫スケジュール(0日目および21日目)において、1x108 TCID50のMVA−mBN294A、MVA−mBN199B、またはMVA−mBN201Bをマウスにワクチン接種(sc)した。表6に従って、TBSまたはRSV−A2で対照群を2回皮下処理した。表6に従って、ホルマリン不活化(FI)−RSVを1回または2回筋肉内(im)注射した。
各免疫化の前日および曝露の前日、ならびに屠殺日に、血液を採取した。34日目に、群1〜5の5匹の動物について、RSV特異的IgGの力価およびRSV特異的中和抗体の力価を、それぞれ、ELISAおよびPRNTにより決定した。
34日目に、致死量のケタミン−キシラジンの注射および最終採血により数匹の(表6)マウスを屠殺した。脾臓を摘出し、ELISPOTによるRSV特異的T細胞応答の分析のために調製した。
35日目に、残りのマウスを(表6)を106 pfuのRSV−A2に曝露した。曝露後4日目に、致死量のケタミン−キシラジンの注射によりマウスを屠殺し、最終採血を行った。肺洗浄後、肺を摘出し、プラークアッセイおよびRT−qPCRによりRSV負荷を分析した。気管支肺胞洗浄(BAL)液中の細胞浸潤およびサイトカインレベルを分析した。
試験スケジュール.生存段階のスケジュールを表7に要約する。
材料および方法
実験動物.Janvier(Route des Chenes Secs、F−53940 Le Genest−Saint−Isle,France)から7週齢のメスBALB/cJ Rj(H−2d)マウスを入手した。全てのマウスは、特定の病原体を有していなかった。
飼育.試験は、Bavarian Nordic−Martinsreidにある動物施設の117号室で行われた。このユニットに、温度20〜24℃および相対湿度40%〜70%で濾過吸気を提供した。部屋は、14時間の明期および10時間の暗期のサイクルで人工的に照明した。試験馴化期間は、15日であった。床面積530cm2の透明なSealSafe(商標)ケージ(H Temp[ポリスルホン]ケージ Type II L(欧州標準))に動物を収容した。H−Temp SealSafe(商標)蓋でケージを覆った。ケージごとに別個にHEPA濾過空気を提供するSLIMLine(商標)循環ユニットを装備したTECNIPLAST−IVC SealSafe(商標)システム内にケージを設置した。週に1回、動物の寝床を交換した。
食餌および水.マウスには、照射した維持食餌(SSNIFF R/M−H(照射済み)V1534−727)および水(121℃で20分間加圧滅菌済み)を自由に摂取させた。
処理前の手順:
動物の識.別各ケージ内の動物を個別に識別するために、標準的手順に従って耳パンチを行った。
組み入れ/除外試験.標準的手順に従って組み入れ/除外試験を行った。
事前採血のための血液試料採取.標準的手順に従った顔面静脈穿刺により、約150μlの血液試料を採取した。標準的手順に従ってさらに処理するために、血液試料を実験室に移した。
処理手順:試験物および参照物の調製および投与。試験物および参照物の調製および投与は、クラスII微生物学的安全キャビネット(HERAsafe(登録商標)/クラスII型H、Kendro)内で標準的手順に従って行われた。端的に述べると、sc投与の場合、組換えMVAをTBSに希釈し、2×108 TCID50/mlの濃度の作業溶液を得た。標準的手順に従って、500μl中1×108 TCID50をsc注射した。標準的手順に従って、500μlのTBSをsc投与した。
RSV(A2)ウイルスの調製および投与.RSV原液バイアルを解凍し、ウイルスの不安定性のためにできるだけ迅速に使用した(氷上で最長15分)。ウイルスは、常に氷上に維持し、標準的手順に従って鼻腔内経路により麻酔下(キシラジン/ケタミン)のマウスを100μlのニートウイルス溶液に曝露するために直ちに使用した。
FI−RSVの調製および投与:50μlのFI−RSVをim適用した。
処理後の手順:
血液試料採取.標準的手順に従って、眼球後または顔面静脈の穿刺により血液試料(約150μl)を採取した(詳細については表7を参照)。標準的手順に従ってさらに処理するために、血液試料を実験室に移した。
安楽死.腹腔内注射により2倍用量のケタミン−キシラジンをマウスに投与し、腹腔内の大動脈を切断することにより安楽死を行った。
脾臓摘出.脾臓を無菌的に摘出した。標準的手順に従って、培地を充填した試験管にそれらを入れた。これらの試験管は、標準的手順に従って動物施設に搬入され、次いで搬出された。
肺洗浄および肺摘出.肺に1mlのPBSを4回流すことにより、気管支肺胞洗浄(BAL)液を採取した。次いで、肺を摘出し、後のプラークアッセイおよびRNA抽出のために、2等分して液体窒素中で瞬間凍結した。
分析:
血液試料の処理および血清の保存.実験室に移した後、標準的手順に従って血液試料を処理して血清にした。調製後、分析のために必要となるまで、血清を−20℃(±5℃)で保存した。
血清試料からのRSV特異的抗体力価の分析.改良されたELISAキット(Serion ELISA classic、カタログ番号ESR113G)を使用して、全ての血清試料からRSV特異的IgGの総ELISA力価を決定した:キットとともに供給されるアルカリホスファターゼコンジュゲート抗ヒトIgG抗体の代わりに、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Serotecカタログ番号103004)を二次抗体として使用した。
血清試料からのRSV特異的中和抗体の力価の分析.端的に述べると、試験血清の2倍連続希釈液を調製し、定義された数のRSVプラーク形成単位(pfu)を血清希釈液に加えた。36℃(±2℃)および5% CO2(±1%)で185分のインキュベーション後、Vero細胞を含む予め播種したプレートに加えた。2日後、プレートを固定し、RSV特異的抗体の混合物で免疫染色し、プラークを数えた。
脾細胞からのRSV特異的細胞性免疫応答の分析.最後の投与から2週間後、他の箇所に記載するように、特異的ペプチドで脾細胞を再刺激し、ELISPOTアッセイにより脾細胞からのIFNγ放出を検出することにより、RSV FおよびRSV M2特異的細胞応答を決定した。
ELISPOTアッセイ法.Mouse IFN−Gamma−Kit(BD Biosciences、カタログ番号551083)をELISPOTアッセイに使用した。アッセイは、製造者の指示に従って行われた。端的に述べると、脾細胞単離の前日に、プレートを捕捉抗体でコーティングした。単離後、細胞をELISPOTプレートに移し、異なるペプチド(表3を参照)で20時間37℃で刺激した。検出抗体を使用してIFNγの産生を検出した。製造者の指示に従ってBD(商標)ELISPOT AEC Substrate Set(BD Biosciences、カタログ番号551951)を使用して、プレートを展開した。
ELISPOTによる刺激計画.すべての条件を2通り試験した。RSV−2およびRSV−5ペプチド(表8を参照)を最終濃度5μg/ml(1μg/ウェル)で使用して、ウェル当たり5×105および2.5×105個の脾細胞を刺激した。MVA(免疫化対照)を感染効率(MOI)10で使用してウェル当たり5×105および2.5×105個の脾細胞を刺激し、コンカナバリンA(ConA[陽性対照])を最終濃度0.5μg/mlで使用して2.5×105個の脾細胞を刺激した。陰性対照として、5×105個の脾細胞を培地のみ(Glutamax、ペニシリン、ストレプトマイシン、10%ウシ胎仔血清、および105 M s−メルカプトエタノールを補充したRPMI−1640)で培養した。
BAL液の分析:
100μlのBAL液をサイトスピンで遠心分離する(800rpm、5分)ことにより、2つのスライドを調製した。スライドを一晩乾燥させ、次いで染色した。顕微鏡によりスライドを分析して、好酸球および好中球の割合を決定した。次いで、残りのBALを遠心分離した(12,000rpm、5分)。調製後、BAL上清を分析まで−20℃(±5℃)で保存した。市販のELISAキット(eBIOSCIENCE Cat N°BMS613のmIL4 PLATINUM ELISA およびeBIOSCIENCE Cat N°88−7054−22のREADY−SET−GO MIL−5 ELISA)を使用して、気管支肺胞洗浄(BAL)上清中のIL−4およびIL−5のレベルを測定した。
肺内のRSV負荷の分析
RSV プラークアッセイおよびRT−qPCRにより細胞試料中のRSV負荷を決定した。
RSVプラークアッセイ.French Pressを使用して、瞬間凍結した肺の各反片を1mlの冷培地中でホモジナイズした(7%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地)。短期間の遠心分離後、試験管2本分の各上清を、48ウェル平底プレート中で増殖させたVero細胞単層上に2倍連続希釈で滴定した。6日後、単層を洗浄し、1%ホルムアルデヒドで固定した。24時間後、0.04% Neutral Redで単層を染色し、プラークを数えた。
RSVのRT−qPCR.ホモジナイズした100μlの肺組織を直ちに取り出し、QiagenのRNeasy(登録商標)Mini Kit(カタログ番号74104)を使用してRNAを単離した。Applied BiosystemsのHigh Capacity RNA−to−cDNA Kit(カタログ番号4387406)を使用して逆転写反応を行った。Applied BiosystemsのUniversal PCR Master Mix(カタログ番号4352042)と、3つのプライマー: (1)プライマー 1(5’−GAA CTC AGT GTA GGT AGA ATG TTT GCA−3’;配列番号36);(2)プライマー2(5’−TTC AGC TAT CAT TTT CTC TGC CAA T−3’;配列番号37);および(3)プローブ6(5’−TTT GAA CCT GTC TGA ACA TTC CCG GTT−3’;(配列番号38)の混合物を使用して、サーマルサイクラー内で以下のパラメータを用いて、RSV L遺伝子に特異的なPCRを行った:(1)50℃で2分間;(2)95℃で10分間;(3)(95℃で15秒、60℃で1分)を45サイクル。コピー数は、RSV L遺伝子の断片を含有するpMISC202プラスミドベクターの標準曲線から決定した。Applied Biosystems(カタログ番号4351315)のVIC/MGB標識プローブを使用したマウスβアクチンに対する同様の反応を、入力cDNAの内部対照として用いた。
試験の文書化.
生存段階の個々のステップの間に全ての情報を収集するために、生存段階のフロー図を用意した。さらに、マウスまたはケージに特有な情報を、対応するケージカードに記録した。ケージカードは、試験の原データとは見なされないが、Upper Bavariaの政府からの要求であった。
分析段階の個々のステップの間に全ての情報を収集するために、分析段階のフロー図を用意した。アッセイは、アッセイ特有の試験記録またはLaboratory Note Booksに文書化した;相互参照は、分析段階のフロー図中に文書化した。原データを含む全てのアッセイ文書は、標準的手順に従って見直された。さらに、標準的手順に従って血清試料のための試料追跡シートを用意した。
データ処理.標準的手順によるさらなる分析のために原データをExcelファイルに転送した。
ELISA.Excelを使用して、ODの平均値および平均の標準誤差を算出した。
PRNT.プラークをマクロに移し、標準的手順に従ってPRNT力価を算出した。
ELISPOT.製造者の指示にしたがって、CTLリーダーを用いてELISPOTプレートを読み取った。ウェルごとにスポット形成細胞(SFC)の数を決定し、さらなる評価のためにExcelファイルに転送した。ウェル当たり5×105および2.5×105個の細胞を用いたインキュベーションから、ウェルごとに1×106個の脾細胞当たりのスポットの数を算出した。陰性対照の平均を算出し、マウス1匹当たりの平均値を算出する前に各個々の値から差し引いて、マウス1匹当たりの刺激指数(SI)値を得た(IFNをγ放出する脾細胞のペプチド特異的な周期)。
ペプチド刺激の場合、数えきれないほど多くのスポットがあった場合、またはRSVで免疫した動物の場合を除いて、5×105および2.5×105個の細胞を含むウェルからSIを得た。これらの場合、2.5×105の濃度のみを用いた。MVA−BN刺激の場合、数えきれないほど多くのスポットがあった場合を除いて、5×105個を含むウェルからSIを得た。その場合、2.5×105の濃度のみを用いた。個々の動物についてSIを決定した後、SIの平均値(1×106個の脾細胞当たりのSFC)および平均値の標準誤差(SEM)を群ごとに算出した。
RSVプラークアッセイ.計数可能なウイルス希釈液が最も多い3つのウェル内のプラークの数を数えた。希釈因子によって調整されたプラークの平均数に、次いで10を乗じて溶液の力価をpfu/mlで得、最終的に2を乗じて肺当たりの力価を得た。
RSVのRT−qPCR.Applied BiosystemsのABI 7500(カタログ番号4351107)を使用してリアルタイムでPCR増幅を測定し、Applied Biosystemsから供給されたSystem Softwareを使用して分析した。全ての値は、L遺伝子の標準値と比較し、試料ごとにマウスβアクチンに正規化した。
サイトカインのELISA.サイトカインの濃度は、それぞれのELISAキットの標準曲線から決定した。
結果
液性免疫応答の分析:
RSV特異的IgG応答(ELISA、図13)およびRSV特異的中和抗体応答(PRNT、図14)の両方について、3つの構築物(MVA−mBN199B、MVA−mBN201B、およびMVA−mBN294A)の間にいずれの差も観察されなかった。
細胞性免疫応答の分析:
予想されたように、MVA−mBN294Aは、MVA−mBN201Bと同様のT細胞応答パターンを有し(図15)、M2 T細胞応答が優勢であるFおよびM2の両方に特異的な応答を誘導する。対照的に、MVA−mBN199Bは、F特異的応答を誘導したのみであったが、MVA−mBN201BおよびMVA−mBN294Aよりも高いレベルであった。
肺内のRSV負荷の分析:
RSV A2株によるRSV.曝露最後の免疫化の2週間後、マウスを106 pfuのRSV(A2)に鼻腔内曝露した。曝露後4日目に、マウスを屠殺した。1mlのPBSで肺を洗浄した後、肺を摘出し、上述のように実施したプラークアッセイおよびRT−qPCRにより肺内のRSV負荷を決定した。
プラークアッセイによって測定されたRSV負荷.曝露後4日目に、非免疫マウスに平均して肺当たり29842pfuが検出された(図16)。RSVで免疫した対照群と同様に、2回のsc適用後、MVA−mBN199B、MVA−mBN201B、またはMVA−mBN294Aで免疫した動物の肺にRSV A2プラークは検出されなかった。
定量的リアルタイムPCRによって測定されたRSV負荷.RT−qPCRによっても肺内のRSV負荷を分析した(図17)。ワクチン接種したいずれのマウスにも、プラークアッセイによってRSVは検出されなかったが、MVA−mBN199B、MVA−mBN201B、またはMVA−mBN294Aで2回sc免疫したマウスにおいてRSVゲノムがなおも検出可能であった。MVA−mBN199Bの場合、RSV負荷は、TBS対照群と比較して45倍低かった。MVA−mBN201BおよびMVA−mBN294Aの場合もRSVゲノムが検出可能であったが、MVA−mBN199Bと比較すると負荷が大きく減少され、TBS対照群と比較して、それぞれ、416倍および281倍低かった。
重篤な疾患の徴候の分析
実施例3に記載した実験に使用したFI−RSVのバッチとは対照的に、この試験に使用した新しいバッチは、IL−4またはIL−5の産生にはいずれの増加も示さなかった。しかしながら、我々は、このバッチを用いて、FI−RSVに関する重篤な疾患の主な特徴であるBAL液中の好酸球および好中球の浸潤を検出することができた。MVA−mBN199B、MVA−mBN201B、およびMVA−mBN294Aで重篤な疾患の徴候が検出可能であった。
考察および結論
MVA−mBN294A(MVA−mBN294Bと同等)とMVA−mBN201Bとの間の差にもかかわらず、どちらも同様のB細胞およびT細胞応答を誘導し、重篤な疾患を誘発することなく同様の保護を提供する。どちらの構築物も、膜糖タンパク質(FおよびG)の抗原決定基のみを発現したMVA−mBN199Bよりも良好な保護を誘導した。
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書に開示される本発明の実践から、当業者に明らかとなるであろう。本明細書および実施例は、例示的なものに過ぎないと見なされることが意図され、本発明の真の範囲および主旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
特定の実施形態において、本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれかを対象に鼻腔内投与することを含む、RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象においてRSVに対する無菌免疫を誘導する方法が、本明細書に提供される。RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象においてRSVに対する無菌免疫を誘導する方法において使用するための本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれか1つもまた本明細書に提供され、該方法は、本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれか1つを対象に鼻腔内投与することを含む。付加的にまたは代替的に、RSVに対する無菌免疫を獲得していない対象においてRSVに対する無菌免疫を誘導するための薬物および/またはワクチンの調製における、本明細書に記載の組換えMVAのうちのいずれかの使用が本明細書に提供され、薬物またはワクチンは鼻腔内投与される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.筋肉内投与は除外される、鼻腔内投与によってRSV感染症を治療または予防するための、少なくとも1つのRSウイルス(RSV)膜糖タンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列を含む、組換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)。
2.鼻腔内投与のみを含む、上記1に記載の組換えMVA。
3.前記組換えMVAは、RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、上記1または2に記載の組換えMVA。
4.RSウイルス(RSV)膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドの抗原決定基をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、を含む、組換え改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)。
5.前記RSV膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする前記ヌクレオチド配列は、RSV Fおよび/またはRSV Gの抗原決定基をコードする、上記1〜4のいずれか1項に記載の組換えMVA。
6.RSVヌクレオカプシドタンパク質の抗原決定基をコードする前記ヌクレオチド配列は、前記RSV N ヌクレオカプシドおよび/またRSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基をコードする、上記3〜5のいずれか1項に記載の組換えMVA。
7.RSV膜糖タンパク質、好ましくは、前記RSV Fまたは前記RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする1つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質、好ましくは前記RSV Nまたは前記RSV M2タンパク質の抗原決定基をコードする1つのヌクレオチド配列と、を含む、前記上記のいずれかに記載の組換えMVA。
8.RSV膜糖タンパク質、好ましくは前記RSV Fおよび/または前記RSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質、好ましくは前記RSV Nヌクレオカプシドまたは前記RSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基をコードする1つのヌクレオチド配列と、を含む、上記1〜6のいずれか1項に記載の組換えMVA。
9.RSV膜糖タンパク質、好ましくはRSV Fおよび/またはRSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質、好ましくはRSV Nおよび/または前記RSV M2タンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列と、を含む、上記1〜6のいずれか1項に記載の組換えMVA。
10.RSV膜糖タンパク質、好ましくは、2つのRSV F膜糖タンパク質および/もしくは1つのRSV G膜糖タンパク質、または2つのRSV G膜糖タンパク質および/もしくは1つのRSV F膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする3つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質、好ましくは前記RSV Nヌクレオカプシドおよび/または前記RSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列と、を含む、上記1〜6のいずれか1項に記載の組換えMVA。11.RSV膜糖タンパク質、好ましくは2つのRSV F膜糖タンパク質および/または2つのRSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする4つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質、好ましくは、前記RSV Nヌクレオカプシドまたは前記RSV M2マトリックスタンパク質の抗原決定基をコードする1つのヌクレオチド配列と、を含む、上記1〜6のいずれか1項に記載の組換えMVA。
12.RSV膜糖タンパク質、好ましくは2つのRSV F膜糖タンパク質および/または2つのRSV G膜糖タンパク質の抗原決定基をコードする4つのヌクレオチド配列と、RSVヌクレオカプシドタンパク質、好ましくは前記RSV Nおよび/または前記RSV M2タンパク質の抗原決定基をコードする2つのヌクレオチド配列と、を含む、上記1〜6のいずれか1項に記載の組換えMVA。
13.対象がRSV感染症再発のリスクがあるかどうかを決定する方法であって、RT−qPCRにより前記対象から採取した試料中にRSVが存在するかどうかを決定し、RSVの存在は、RSV感染症再発の存在を示唆する、方法。
14.対象がRSVに対する無菌免疫を獲得したかどうかを決定する方法であって、RT−qPCRにより前記対象から採取した試料中にRSVが存在するかどうかを決定し、RSVの存在は、対象がRSVに対する無菌免疫を獲得していないことを示唆する、方法。15.上記14に記載の方法によってRSVに対する無菌免疫を獲得していないと診断された対象を免疫し、かつ/または前記対象において無菌免疫を誘導する方法であって、前記方法は前記組換えMVAの前記対象への鼻腔内投与を含む、上記1〜12のいずれか1項に記載の組換えMVA。