JP2019068753A - タンパク質固定用担体、複合体、及びそれらの製造方法。 - Google Patents

タンパク質固定用担体、複合体、及びそれらの製造方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】固定されるタンパク質の活性を十分に発揮し得るタンパク質固定用担体等を提供する。【解決手段】 セルロースによって形成されたセルロースナノファイバーを備え、下記(a)〜(c)を満たす、タンパク質のアミノ基を固定化するためのものである、タンパク質固定用担体:(a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位に特定のエステル構造を有する、(b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、(c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。【選択図】 なし

Description

本発明は、タンパク質固定用担体、複合体、及びそれらの製造方法に関する。
近年、酵素を用いたバイオリアクターや、バイオセンサー等の開発が盛んになってきている。
これらの開発においては、担体にタンパク質を固定した複合体が用いられている。
例えば、固定されたタンパク質が酵素である場合には、この複合体を用いることによって、反応を受ける被処理物を酵素反応によって分解することが可能となる。
より具体的には、例えば、酵素がグルコアミラーゼといった炭水化物分解酵素である場合には、上記複合体を用いることによって、例えば酒造工程において、米に含まれるデンプンを分解することが可能となる。また、例えば、酵素がトリプシンといったタンパク質分解酵素である場合には、上記複合体を用いることによって、プロテオーム解析技術において被処理物であるタンパク質を分解することが可能となる。
このような複合体を形成するための担体として、セルロース繊維を用いる技術が提案されている(特許文献1〜3参照)。
特許第5734106号公報 特開平8−33708号公報 特許第5781321号公報
しかし、特許文献1〜3のような技術では、担体に固定されたタンパク質の活性が十分に発揮されているとはいい難い。
また、このような単体を簡便に製造することも要望されている。
上記事情に鑑み、本発明は、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮することができ、しかも、製造が簡便なタンパク質固定用担体、これを用いた複合体、及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
本発明に係るタンパク質固定用担体は、
セルロースによって形成されたセルロースナノファイバーを備え、
前記セルロースナノファイバーは、下記(a)〜(c)を満たし、且つ、タンパク質のアミノ基を固定化するためのものである。
(a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位に下記一般式(1)で表されるエステル構造を有する、
Figure 2019068753
(b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、
(c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。
かかる構成によれば、タンパク質固定用担体が、上記特定の置換基を有する特定のセルロースナノファイバーを備えることよって、タンパク質と接触させ、上記置換基からスクシンイミド基を除去させ、末端に残ったアルキルカルボキシ基をタンパク質のアミノ基と共有結合させることが可能となる。
この結合によってタンパク質を固定することによって、タンパク質固定用担体とタンパク質との複合体を形成することができる。
そして、このように形成された複合体は、他のセルロースナノファイバーを備えた担体を用いて形成された複合体よりも、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
上記セルロースナノファイバーは、数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000であり、しかも、セルロースのグルコースユニットのC6位が上記一般式(1)で表されるエステル構造を有することによって、セルロースユニット中に上記特定のエステル構造が置換基として多く導入されることが可能となる。これによって、タンパク質をより多く固定化することが可能となると共に、他のセルロースナノファイバーに比べて、高い分散安定性を有することが可能となる。よって、固定化されたタンパク質と、該タンパク質によって処理される対象物(基質等)との親和性が低下せず、高い活性を発現することが可能となる。
このように、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮し得る。
上記のように、上記固定用担体は、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮することができ、しかも、製造が簡便である。
上記構成のタンパク質固定用担体においては、
前記エステル構造のモル数が、前記セルロースのグルコースユニットのC6位の炭素の全モル数に対して25%以上であってもよい。
かかる構成によれば、エステル構造のモル数が、セルロースのグルコースユニットのC6位の炭素の全モル数に対して25%以上であることによって、後に行われるタンパク質との接触において、タンパク質のアミノ基とアミド結合の形成による固定化量を増大することと、酵素活性をより保持することとが可能となる。また、タンパク質固定用担体は、より製造が簡便なものとなる。
上記構成のタンパク質固定用担体においては、
固液分離されることが可能であってもよい。
かかる構成によれば、タンパク質固定用担体が、固液分離されることが可能であることによって、製造時においては、反応溶媒から容易に回収され易いものとなる。また、製造後、溶媒中に分散されて使用された際には、使用後、該溶媒から分離され、回収されることができる。よって、効率的に回収されるものとなる。また、回収された後、溶媒によって洗浄されることも可能となるため、再使用も可能となる。
そして、このような担体を用いて形成された複合体は、反応溶媒からの分離や、使用後の洗浄により、不純物や未反応のタンパク質を低減でき、また、複合体の凝集や自己消化を低減できるため、他のセルロースナノファイバーを有する担体を用いて形成された複合体よりも、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
上記構成のタンパク質固定用担体においては、
前記タンパク質が酵素であってもよい。
かかる構成によれば、固定するタンパク質が酵素であることによって、酒造工程におけるデンプンの分解工程での使用やプロテオーム解析におけるタンパク質のペプチドやアミノ酸への分解工程への使用が可能となる。
また、このような用途に使用される酵素を固定できることによって、酵素が固定された担体が、上記用途に使用された後、ろ過操作を行うことによって分離、回収、及び再利用が可能になるため、効率的に使用されることが可能となる。
さらに、酵素は、失活や変性を起こし易いが、かかる酵素を固定することによって、酵素が失活や変性を起こし難くなるため、その分、長期にわたって酵素活性を保持することが可能となる。
加えて、酵素が固定された固定化担体をカラムクロマトグラフィー用充填剤として用いることができ、これによって、カラムクロマトグラフィーの固定相として利用することが可能となる。
このように、タンパク質固定化担体が、より有用なものとなる。
上記構成のタンパク質固定用担体においては、
前記酵素が、タンパク質分解酵素、または、炭水化物分解酵素であってもよい。
ここで、タンパク質分解酵素は、プロテオーム解析において、タンパク質をペプチドやアミノ酸に分解する分解工程に利用されているが、かかるタンパク質分解酵素は、タンパク質を分解するがゆえ、タンパク質酵素自身をも分解し、その結果、経時的な失活や変性を起こすおそれがある。例えば、トリプシンは、自己消化性を有するがゆえ、経時的な失活や変性を起こし易い。
しかし、このようなタンパク質分解酵素が、上記タンパク質固定用担体に固定されることによって、タンパク質分解自身が自身を分解することを抑制することが可能になるため、その分、分解活性を保持することが可能になる。
一方、炭水化物分解酵素は、食品加工工程におけるデンプンの糖化に利用されている。例えば、グルコアミラーゼといった炭水化物分解酵素は、自己分解性は有しないものの、加工工程後の食品に混入するおそれがある。食品に混入すると、望ましくない異物として扱われるおそれがある。
しかし、このような炭水化物分解酵素が、上記タンパク質固定用担体に固定されることによって、食品加工工程に使用された後、炭水化物分解酵素をろ過操作によって分離、回収することが可能となるため、食品中への炭水化物分解酵素の混入を抑制することが可能となる。
本発明に係る複合体は、
前記タンパク質固定用担体にタンパク質が固定されてなる複合体であって、
前記タンパク質固定用担体の前記置換基からスクシンイミド基が除去されて末端となったアルキルカルボキシ基に、タンパク質のアミノ基が共有結合されてなり、固液分離されることが可能である。
かかる構成によれば、上記タンパク質固定用担体のアルキルカルボキシ基にタンパク質のアミノ基が共有結合されて固定されていることによって、他のセルロースナノファイバーを有する担体に固定されている場合よりも、該タンパク質の活性が高いものとなる。
また、上記タンパク質固定用担体とタンパク質との結合が共有結合であることによって、その結合が、緩衝液のpH、塩濃度、イオン強度の影響を受け難いため、固定(結合)されたタンパク質が脱着や溶出を起こし難い。よって、固定されたタンパク質が、溶出や洗浄に耐えることが可能となるため、タンパク質が固定された状態で上記タンパク質固定用担体を繰り返し使用することが可能となり、その結果、耐久性が向上する。
ここで、上記タンパク質固定用担体とタンパク質との結合が、共有結合以外の結合である場合、すなわち、例えば、イオン結合や生物学的親和性(アフィニティー)による結合である場合には、緩衝液のpHや塩濃度の影響を受け易いため、タンパク質を十分に結合できる条件が制限されるため、条件によってはタンパク質の脱着や溶出が生じ易くなるおそれがある。また、例えば、疎水性相互作用による結合である場合には、疎水性の高いタンパク質を結合し易いものの、共有結合と比べて結合力が弱く、十分に結合させることができるタンパク質の種類が限定されるため、幅広いタンパク質を結合できる(一般性が十分である)とはいい難い。
しかし、上記タンパク質固定用担体とタンパク質との結合が共有結合であることによって、幅広い種類のタンパク質を、より十分に上記タンパク質固定用担体に結合させることが可能となる。
また、複合体が、固液分離されることが可能であることによって、製造時においては、反応溶媒から容易に回収され易いものとなる。また、製造後、溶媒中に分散されて使用された際には、使用後、該溶媒から分離され、回収されることができる。よって、効率的に回収されるものとなる。また、回収された後、溶媒によって洗浄されることも可能となるため、再使用されることも可能となる。
そして、このような複合体は、反応溶媒からの分離や、使用後の洗浄により、不純物や未反応のタンパク質を低減でき、また、複合体の凝集や自己消化を低減できるため、他のセルロースナノファイバーを有する担体を備えた複合体よりも、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
従って、固定されたタンパク質の活性を十分に発揮することができ、しかも、製造が簡便である。
上記構成の複合体においては、
前記タンパク質固定用担体に固定された前記タンパク質の量が、前記セルロースの質量当たり、10mg/g以上であってもよい。
かかる構成によれば、タンパク質固定用担体に固定されたタンパク質の量が、セルロースの質量当たり、10mg/g以上であることによって、タンパク質が固定された複合体の質量当たりの活性がより高いものとなるため、その分、処理の対象物に対して少量の複合体を適用することによって、酵素活性を発現し得る。よって、複合体に固定されたタンパク質の活性がより高いものとなる。例えば、固定されたタンパク質と、該タンパク質によって処理される対象物との相互作用や反応点が増大し、反応が促進されるため、タンパク質の活性が高いものとなる。
上記構成の複合体においては、
前記共有結合が、アミド結合であってもよい。
かかる構成によれば、アルカリ、酸、水による分解や加水分解を受けにくく、耐久性を発現できるという利点がある。
本発明に係るタンパク質固定用担体の製造方法は、
前記タンパク質固定用担体の製造方法であって、
セルロースをN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化させて、アルキルカルボキシ基を有するセルロースナノファイバーを得る工程と、
前記アルキルカルボキシ基を有するセルロースナノファイバーと、凝縮剤と、スクシンイミド化合物とを反応させる工程と、
前記反応させる工程で得られた反応懸濁液を固液分離する工程とを行うことによって、
下記(a)〜(c)を満たし、且つ、タンパク質のアミノ基を固定化するためのセルロースナノファイバーを備えたタンパク質固定用担体を製造する。
(a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位が下記一般式(1)で表されるエステル構造を有する。
Figure 2019068753
(b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、
(c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が、3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。
かかる構成によれば、上記特定の置換基を有する特定のセルロースナノファイバーを備えたタンパク質固定用担体を、簡便に製造し得る。
このようにして製造されたタンパク質固定用担体は、上記特定の置換基を有する特定のセルロースナノファイバーを備えることよって、タンパク質と接触させ、上記置換基からスクシンイミド基を除去させ、末端に残ったアルキルカルボキシ基をタンパク質のアミノ基と共有結合させることが可能となる。
この結合によってタンパク質を固定することによって、タンパク質固定用担体とタンパク質との複合体を形成することができる。
また、上記反応させる工程で得られた反応懸濁液を固液分離する工程を行うことによって、固形分としてのタンパク質固定用担体を得ることができるので、簡便である。また、分離されたタンパク質固定用担体を洗浄することも可能となる。
そして、このように形成された複合体は、反応溶媒からの分離や洗浄により、不純物や未反応のタンパク質を低減でき、複合体の凝集や自己消化を低減できるため、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
また、製造されたセルロースナノファイバーは、数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000であり、しかも、グルコースユニットのC6位が上記一般式(1)で表されるエステル構造を有することによって、セルロースユニット中に上記特定のエステル構造が置換基として多く導入することが可能となる。これによって、タンパク質をより多く固定化することが可能となると共に、他のセルロースナノファイバーに比べて、高い分散安定性を有することが可能となる。よって、固定化されたタンパク質と、該タンパク質によって処理される対象物(基質等)との親和性が低下せず、高い活性を発現することが可能となる。
このように、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮し得るタンパク質固定用担体を、簡便に製造し得る。
本発明に係る複合体の製造方法は、
前記複合体の製造方法であって、
前記タンパク質固定用担体の製造方法における前記反応させる工程で得られた反応懸濁液中で、該反応懸濁液に含まれるタンパク質固定用担体の前記置換基からスクシンイミド基を除去し、末端となったアルキルカルボキシ基に、タンパク質のアミノ基を共有結合させる工程と、
前記反応懸濁液を固液分離する工程とを備える。
かかる構成によれば、上記特定のタンパク質固定用担体にタンパク質が固定されてなる複合体を、簡便に製造し得る。
このように製造された複合体は、上記タンパク質固定用担体のアルキルカルボキシ基にタンパク質のアミノ基が共有結合されて固定され、固液分離することが可能なものであるため、反応溶媒からの分離や洗浄により、不純物や未反応のタンパク質を低減でき、複合体の凝集や自己消化を低減できる。よって、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
また、複合体に含まれる担体が有するセルロースナノファイバーは、上記の通り、数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000であり、しかも、グルコースユニットのC6位が上記一般式(1)で表されるエステル構造を有することによって、タンパク質をより多く固定化することが可能となると共に、他のセルロースナノファイバーに比べて、高い分散安定性を有することが可能である。よって、他のセルロースナノファイバーを有する担体に固定されている場合よりも、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
このように、固定されたタンパク質の活性を十分に発揮し得る複合体を、簡便に製造し得る。
以上の通り、本発明によれば、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮することができ、しかも、製造が簡便なタンパク質固定用担体、これを用いた複合体、及びそれらの製造方法が提供される。
本発明の一実施形態のタンパク質固定用担体を得る反応を示す図 本発明の一実施形態の複合体を得る反応を示す図 比較例1におけるスキーム1の反応を示す図 比較例1におけるスキーム2の反応を示す図 比較例1におけるスキーム3の反応を示す図 比較例1におけるスキーム4の反応を示す図 基質濃度と酵素活性量との関係を示すグラフ pHと活性率との関係を示すグラフ 温度と活性率との関係を示すグラフ
以下、本発明のタンパク質固定用担体、これを用いた複合体、及びそれらの製造方法の実施の形態について説明する。
まず、タンパク質固定用担体及びその製造方法について説明する。
本実施形態のタンパク質固定用担体は、
セルロースによって形成されたセルロースナノファイバーを備え、
前記セルロースナノファイバーは、下記(a)〜(c)を満たし、且つ、タンパク質のアミノ基を固定化するためのものである、タンパク質固定用担体:
(a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位に下記一般式(1)で表されるエステル構造を有する。
Figure 2019068753
(b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、
(c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。
以下、本実施形態のタンパク質固定用担体に備えられた上記特定のセルロースナノファイバーを、固定化用セルロースナノファイバーという場合がある。
上記固定化用セルロースナノファイバーは、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位にカルボキシ基を有するセルロース(以下、アニオン変性セルロースという場合がある。)を用いて形成されたセルロースナノファイバーである。
より具体的には、上記固定化用セルロースナノファイバーは、上記アニオン変性セルロースナノファイバーを原料として、上記一般式(1)で表される置換基を有するように、上記カルボキシ基にスクシンイミド基が結合されてなるセルロースナノファイバーである。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、N−オキシル化合物を触媒とする酸化法によるカルボキシ基を有する。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、カルボキシ基の他に、アルデヒド基及びケトン基の少なくともいずれかを有していてもよい。
N−オキシル化合物を触媒とする酸化法では、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化が行われる。N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いる酸化は、針葉樹由来のクラフトパルプ等の天然セルロースを、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TEMPO)等のN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化する方法である。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーを形成するためのセルロース(セルロース原料)としては、硝酸セルロース、硫酸化セルロース、リン酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
上記N−オキシル化合物を触媒とする酸化法によるカルボキシ基を含有するアニオン変性セルロースは、セルロースI型結晶構造を有する。
すなわち、上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料を表面酸化し、微細化して形成された繊維である。
天然セルロースの生合成の過程においては、ほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構成するが、上記ミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、その水酸基(セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基)の一部が酸化され、少なくともカルボキシ基に変換され、任意に、アルデヒド基及びケトン基の少なくともいずれかに変換される。
ここで、上記アニオン変性されたセルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定によって得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークを持つことから同定することができる。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーにおいては、カルボキシ基の含量が1.2〜2.5mmol/gであることが好ましい。
また、上記アニオン変性セルロースナノファイバーがアルデヒド基及びケトン基の少なくともいずれかを有する場合において、該アルデヒド基やケトン基の含有量が高い場合、凝縮剤(縮合剤)及びスクシンイミド化合物を用いる活性エステル化が促進されず、所望の固定化担体を得ることが困難となる。また、アルデヒド基やケトン基はタンパク質のアミノ基と結合してシッフ塩基を副生する可能性や、酵素活性を阻害する可能性がある。この点を考慮すれば、セミカルバジド法による測定でのアルデヒド基とケトン基の合計含量が0.3mmol/g以下であり、フェーリング試薬によるアルデヒド基の検出が認められないものが好ましい。アルデヒド基とケトン基の合計含量が0.3mmol/g以下であることによって、所望の固定化担体を得易くなり、また、シッフ塩基の副生や酵素活性の阻害を抑制し得る。
カルボキシ基量が小さ過ぎると、スクシンイミド基が結合された上記固定用セルロースナノファイバーの沈降や凝集が生じる場合があり、カルボキシ基量が大き過ぎると、上記固定用セルロースナノファイバーの水溶性が強くなり過ぎるおそれがある。
これに対し、カルボキシ基の含量(カルボキシ基量)が1.2〜2.5mmol/gの範囲であることによって、上記固定用セルロースナノファイバーの沈降や凝集を抑制することができ、また、水溶性が強くなり過ぎることも抑制し得る。
かかる観点を考慮すれば、カルボキシ基の含量(カルボキシ基量)が1.5〜2.0mmol/gであることがより好ましい。
カルボキシ基量の測定は、例えば、乾燥質量を精秤した上記アニオン変性セルロースナノファイバー試料と水とを用いて0.5〜1質量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行うことによって測定される。測定は、pHが約11になるまで続けられる。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記式(数式1)に従いカルボキシ基量が求められる。
カルボキシ基量(mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース質量(g)〕・・・(数式1)
なお、カルボキシ基量の調整は、上記酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を制御することによって行われる。
セミカルバジド法による、アルデヒド基とケトン基との合計含量の測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、乾燥させた上記アニオン変性セルロースナノファイバー試料に、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうする。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌する。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記式(数式2)に従って、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めることができる。なお、セミカルバジドは、アルデヒド基やケトン基と反応しシッフ塩基(イミン)を形成するが、カルボキシ基とは反応しないことから、上記測定により、アルデヒド基とケトン基のみを定量できると考えられる。
カルボニル基量(mmol/g)=(D−B)×f×〔0.125/w〕・・・(数式2)
D:サンプルの滴定量(ml)
B:空試験の滴定量(ml)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター(−)
w:試料量(g)
上記アニオン変性セルロースナノファイバーにおいては、その繊維表面上のセルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的に酸化変性されて、カルボキシ基、及び、任意にアルデヒド基及びケトン基の少なくともいずれかとなっている。このアニオン変性セルロースナノファイバーの表面上のグルコースユニットにおけるC6位の水酸基のみが選択的に酸化されているか否かは、例えば、13C−NMRチャートによって確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりにカルボキシ基等に由来するピーク(178ppmのピークはカルボキシ基に由来するピーク)が現れる。このようにして、グルコース単位のC6位水酸基のみがカルボキシ基等に酸化されていることを確認することができる。
また、上記アニオン変性セルロースナノファイバーにおけるアルデヒド基の検出は、例えば、フェーリング試薬により行うこともできる。すなわち、例えば、乾燥させた試料に、フェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液と、硫酸銅五水和物水溶液)を加えた後、80℃で1時間加熱したとき、上澄みが青色、セルロースナノファイバーが紺色を呈するものは、アルデヒド基が検出されなかったと判断することができ、上澄みが黄色、セルロースナノファイバーが赤色を呈するものは、アルデヒド基が検出されたと判断することができる。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーが、上記酸化反応によって生じたアルデヒド基およびケトン基の少なくともいずれかを有する場合には、これらアルデヒド基及びケトン基が、還元剤により還元されたものであることが好ましい。上記アニオン変性セルロースを含有する上記固定用セルロースナノファイバーを容易に得ることができるようになるからである。また、かかる観点から、上記還元剤による還元が、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)によるものであることが、より好ましい。
上記一般式(1)において、nは0以上の整数である。nは、ナノファイバー形状が保持される程度の範囲であればよく、特に限定されない。例えば、nは0であってもよく、1であってもよく、2であってもよく、3以上の整数であってもよい。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、3nm〜1000nmの数平均繊維径を有する繊維状のセルロースであってもよい。アニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、上記の範囲内であれば、特に限定されない。例えば、その数平均粒子径は、3nm以上、10nm以上、20nm以上、50nm以上であってもよく、1000nm以下、500nm以下、400nm以下、200nm以下、100nm以下、80nm以下であってもよい。また、それらの組み合わせであってもよい。アニオン変性セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、例えば、10〜1000でもよく、50〜1000でもよく、100〜1000でもよい。
アニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000nmであると、これに応じて、上記固定用セルロースナノファイバーの数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000となり易くなる。
なお、アニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径が3nmよりも小さい場合、これに応じて、上記固定用セルロースナノファイバーの数平均繊維径も3nmよりも小さくなる。これに起因して、上記固定用セルロースナノファイバーを製造する際、該固定用セルロースナノファイバーが溶媒中に高度に分散するおそれがあり、この場合、遠心分離が困難になるおそれがある。また、該固定用セルロースナノファイバーが本質的に分散媒体に溶解してしまう場合があり、この場合、ろ過による分離、洗浄が困難になるおそれがある。これら遠心分離、ろ過といった分取が困難になると、収率が低下し、固定用セルロースナノファイバーの機能を十分に発現させることが困難となる。一方、アニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径が1000nmよりも大きい場合、これに応じて、上記固定用セルロースナノファイバーの数平均繊維径も1000nmよりも大きくなる。この場合、遠心分離やろ過による回収を行ない易くなるものの、溶媒中での分散安定性が低下し、沈殿などが生じ得るおそれがある。また、アニオン変性セルロースナノファイバーの平均アスペクト比が10未満であると、分散安定性が低下する恐れがある。
従って、アニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、上記固定用セルロースナノファイバーの分散安定性が低下せず、遠心分離やろ過による固液分離や回収や洗浄などの操作性を損なわない程度であることが望ましく、この観点から、上記のように3nm〜1000nmが好ましい。また、同様の観点から、アニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、10〜1000が好ましい。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、例えば、以下の方法で測定することができる。すなわち、セルロースナノファイバーを親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2質量%ウラニルアセテート水溶液でネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、セルロースナノファイバーの短幅の方の数平均幅、及び、長幅の方の数平均幅を観察する。その際に、得られた画像(TEM像)内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の短い方の幅(短幅)繊維径、及び、長い方の幅(長幅)の値を読み取り(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)、得られた値の平均値(数平均幅)を算出する。このようにして、短幅の数平均幅と、長幅の数平均幅とを算出する。これらの値を用いて平均アスペクト比を下記式に従って算出することができる。
平均アスペクト比=長幅の方の数平均幅(nm)/短幅の方の数平均幅(nm)
なお、上記固定用セルロースナノファイバーの平均アスペクト比も、同様にして測定される。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、以下のようにして測定される値である。
すなわち、固形分率で0.05〜0.1質量%の上記アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径のアニオン変性セルロースナノファイバーが含まれる場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の短い方の幅(短幅)繊維径の値を読み取り(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)、得られた値の平均値(数平均幅)を算出する。このようにして得られた短幅の数平均幅のデータを、数平均繊維径として算出する。
なお、上記固定用セルロースナノファイバーの数平均繊維径も、同様にして測定される。
上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、例えば、(1)酸化反応工程、(2)還元工程、(3)精製工程、(4)分散工程(微細化処理工程)等を行うことによって製造することができる。
(1)酸化反応工程
天然セルロースとN−オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。
上記天然セルロースは、植物、動物、バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロースを意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース(BC)、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロース等を挙げることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプから単離されたセルロースが好ましく、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプから単離されたセルロースが、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため、より好ましい。また、単離、精製の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用すると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤し易い状態であるため、反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため、より好ましい。
上記反応における天然セルロースの分散媒体は水であり、反応水溶液中の天然セルロース濃度は、試薬(天然セルロース)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の質量に対して約5質量%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
上記N−オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物が挙げられる。上記N−オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4−アセトアミド−TEMPOが好ましい。上記N−オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1〜4mmol/l、さらに好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。
上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、反応速度の点から、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが好ましい。
上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N−オキシル化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
上記反応水溶液のpHは約8〜11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4〜40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、特に温度の制御は必要としない。所望のカルボキシ基量等を得るためには、共酸化剤の添加量と反応時間により、酸化の程度を制御する。通常、反応時間は約5〜120分、長くとも240分以内に完了する。
(2)還元工程
上記アニオン変性セルロースナノファイバーの製造においては、上記酸化反応後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。具体的には、酸化反応後の微細酸化セルロースを精製水に分散し、水分散体のpHを約10に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。本実施形態に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH、NaBHCN、NaBH等があげられる。なかでも、コストや利用可能性の点から、NaBHが好ましい。
還元剤の量は、微細酸化セルロースを基準として、0.1〜4質量%の範囲が好ましく、特に好ましくは1〜3質量%の範囲である。反応は、室温または室温より若干高い温度で、通常、10分〜10時間、好ましくは30分〜2時間行う。
上記の反応終了後、各種の酸によって反応混合物のpHを約2に調整し、精製水をふりかけながら遠心分離機で固液分離を行い、ケーキ状の微細酸化セルロースを得る。固液分離は濾液の電気伝導度が5mS/m以下となるまで行う。
(3)精製工程
つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。反応物としての繊維(反応物繊維)は、通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過とを繰り返すことによって、高純度(99質量%以上)の反応物繊維と、水との分散体とする。
上記精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても差し支えない。このようにして得られる反応物繊維の水分散体は、絞った状態で固形分(セルロース)濃度としておよそ10質量%〜50質量%の範囲にある。この後の分散工程を考慮すると、50質量%よりも高い固形分濃度とすると、分散に極めて高いエネルギーが必要となることから好ましくない。
(4)分散工程(微細化処理工程)
上記精製工程にて得られる水を含浸した反応物繊維(水分散体)を、例えば塩基を適量添加し、分散媒体中に分散させて、分散処理を行う。添加される塩基の種類は、分散工程や後に続く酵素の固定化に影響を与えないものであればよく、特に限定されるものではない。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロース繊維の分散体を得ることができる。塩基の添加量は、特に限定されるものではないが、微細化処理されたセルロース繊維の水分散体が分散媒体中に均一に分散されるような添加量が望ましい。また、塩基の添加量が少ないと、後に続く酵素の固定化や固定化酵素の活性評価において、固定化酵素が沈殿や凝集し、その結果、酵素活性が低下する可能性があるため、かかる酵素活性の低下を抑制すべく、固定化酵素が均一に分散されるような添加量が望ましい。その後、上記セルロース繊維の分散体を乾燥することによって、上記アニオン変性セルロースナノファイバーを得ることができ、このアニオン変性セルロースナノファイバーが、スクシンイミド基との結合に用いられる。なお、上記セルロース繊維の分散体を乾燥することなく、分散体の状態で、上記アニオン変性セルロースナノファイバーをスクシンイミド基との結合に用いてもよい。
このようなアニオン変性セルロースナノファイバーとしては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、レオクリスタ(第一製薬工業株式会社製)等が挙げられる。
カルボキシ基は、カチオンと塩を形成していてもよい。
上記固定用セルロースナノファイバーは、上記(1)〜(4)で得られたアニオン変性セルロースナノファイバーに、(5)アニオン基にスクシンイミド基を結合させるスクシンイミド基導入工程、及び、(6)反応懸濁液を固液分離する分離工程を行うことによって、製造することができる。以下、(5)、(6)の工程を説明する。
(5)スクシンイミド基導入工程
(4)で得られたアニオン変性セルロースナノファイバーにおける、各セルロースのグルコースユニットのC6位のカルボキシ基を、凝縮剤(縮合剤)及びスクシンイミド化合物と反応させることによって、上記一般式(1)で表される置換基がグルースユニットのC6位に存在することになる。すなわち、グルコースユニットのC6位が上記一般式(1)で表されるエステル構造である上記固定用セルロースナノファイバーを得る。
具体的には、例えば、図1に示すように、上記アニオン変性セルロースナノファイバーと、触媒としての凝縮剤と、スクシンイミド化合物とを、室温で1時間反応させることによって、上記固定用セルロースナノファイバーを得る。
凝縮剤としては、1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)及びその塩酸塩、N,N’−ジメチルカルボジイミド(DIC)、1−シクロヘキシル−3−(2− モルホリノエチル)カルボジイミド及びそれらのトルエンスルホン酸塩、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド及びそのメチオジド、N,N’−ジシクロへキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物が挙げられる。なお、凝縮剤は、単独使用の他、2種以上の混合物として使用することができる。
この反応は、アルカリ条件下で行うことが好ましい。例えば、水酸化ナトリウムを添加することによって、アルカリ条件下とすることができる。
スクシンイミド化合物としては、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド等が挙げられる。反応生成物は、緩衝液等で適宜洗浄してもよい。緩衝液としては、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)−塩酸緩衝液、4−(2−ヒドロキシエチル)−1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)緩衝液等が挙げられる。
上記スクシンイミド基導入工程によって、上記C6位のカルボキシ基とスクシンイミド化合物とが反応して活性エステルが生成される。この活性エステルは、タンパク質のアミノ基と共有結合することができるため、この共有結合によって、本実施形態のタンパク質固定用担体は、タンパク質と結合することが可能となる。
この点では、上記スクシンイミド基導入工程で行う反応は、活性エステル化反応に相当する。
(6)分離工程
上記スクシンイミド導入工程(すなわち、各セルロースのグルコースユニットのC6位のカルボキシ基を、凝縮剤(縮合剤)及びスクシンイミド化合物と反応させる工程)で得られた反応懸濁液を固液分離する。固液分離する方法としては、遠心分離や、ろ過等が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
上記スクシンイミド基が導入されて得られた上記固定用セルロースナノファイバーは、水や、水と有機溶媒の混合溶液等の分散媒体と混合されてもよい。すなわち、本実施形態のタンパク質固定用担体は、上記固定用セルロースナノファイバーは、水や、水と有機溶媒の混合溶液等の分散媒体とを備えていてもよい。
上記の通り、本実施形態のタンパク質固定用担体の製造方法は、
前記タンパク質固定用担体の製造方法であって、
セルロースをN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化させて、アルキルカルボキシ基を有するセルロースナノファイバー(アニオン変性セルロースナノファイバー)を得る工程と、
前記アルキルカルボキシ基を有するセルロースナノファイバーと、カルボジイミド化合物と、スクシンイミド化合物とを反応させる工程と、
前記反応させる工程で得られた反応懸濁液を固液分離する工程とを行うことによって、
下記(a)〜(c)を満たし、且つ、タンパク質のアミノ基を固定化するためのセルロースナノファイバー(固定用セルロースナノファイバー)を備えたタンパク質固定用担体を製造する方法である。
(a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位に下記一般式(1)で表されるエステル構造を有する、
Figure 2019068753
(b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、
(c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が、3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。
本実施形態のタンパク質固定用担体は、上記固定用セルロースナノファイバー及び分酸媒体の他、本発明の効果を損なわない範囲内で、分酸剤、可塑剤、有機溶媒、防腐剤、消泡剤、増粘剤、潤滑剤、無機塩といった従来公知の添加材が、必要に応じて適宜に配合されてもよい。
本実施形態のタンパク質固定用担体においては、タンパク質として、酵素、ペプチド、ポリペプチド、抗原、ポリクロナール抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、抗体フラグメント(たとえば、F(ab)、F(ab’)2、およびFvフラグメント)、プロテインA、プロテインGなどや、糖タンパク質、核酸(DNA、RNAなど)、グリカン、小有機分子、細胞、ウイルス、細菌、プローブ、レセプター分子などを固定化することが可能であるが、本実施形態においては、上記タンパク質が酵素であることが好ましい。
酵素としては、タンパク質分解酵素、脂肪分解酵素、酸化酵素、炭水化物分解酵素などが挙げられる。
なお、本実施形態のタンパク質固定用担体には、タンパク質が固定されることに加えて、さらに、タンパク質以外の物質が固定されてもよい。
上記酵素が、タンパク質分解酵素、または、炭水化物分解酵素であることが好ましい。
タンパク質分解酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、レンネット、エラスターゼ、パパイン、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、アルカリプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、グルタミナーゼなどのプロテアーゼ類が挙げられる。
炭水化物分解酵素としては、グルコアミラーゼ、サッカラーゼ、マルターゼ、ラクターゼ、デキストラナーゼ、アミロプルラナーゼ、グルカナーゼ等が挙げられる。
また、本実施形態のタンパク質固定用担体は、固液分離されることが可能であってもよい。すなわち、水に不溶な成分として、固液分離されることが可能であってもよい。
次に、本実施形態の複合体及びその製造方法について、説明する。
本実施形態の複合体は、
本実施形態のタンパク質固定用担体にタンパク質が固定されてなる複合体であって、
上記タンパク質固定用担体の上記置換基からスクシンイミド基が除去されて末端となったアルキルカルボキシ基に、タンパク質のアミノ基が共有結合されてなり、固液分離されることが可能である。
本実施形態の複合体においては、上記共有結合が、アミド結合であることが好ましい。
かかる構成によれば、アルカリ、酸、水による分解や加水分解を受けにくく、耐久性を発現できるという利点がある。
本実施形態の複合体は、例えば、図2に示すスキームのようにして、形成される。
すなわち、本実施形態のタンパク質固定用担体に、グルコアミラーゼとMES緩衝液とを加え、インキュベータを用いて4℃で24時間振とうすることによって、上記固定用セルロースナノファイバーにおけるグルコースユニットのC6位のカルボキシ基とグルコアミラーゼのアミノ基とを共有結合(図2ではアミド結合)させる。その後、かかる共有結合の反応懸濁液を固液分離することによって、本実施形態の複合体を得る。
すなわち、本実施形態の複合体の製造方法は、本実施形態のタンパク質固定用担体の製造方法における前記反応させる工程で得られた反応懸濁液中で、該反応懸濁液に含まれるタンパク質固定用担体の前記置換基からスクシンイミド基を除去し、末端となったアルキルカルボキシ基に、タンパク質のアミノ基を共有結合させる工程と、
前記反応懸濁液を固液分離する工程とを備える。
固液分離する方法としては、遠心分離や、ろ過等が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
本実施形態の複合体の製造方法においては、上記した通り、上記共有結合がアミド結合であることが好ましい。
以上の通り、本実施形態のタンパク質固定用担体は、
セルロースによって形成されたセルロースナノファイバーを備え、
前記セルロースナノファイバーは、下記(a)〜(c)を満たし、且つ、タンパク質のアミノ基を固定化するためのものである。
(a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位に下記一般式(1)で表されるエステル構造を有する、
Figure 2019068753
(b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、
(c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。
かかる構成によれば、タンパク質固定用担体が、上記特定の置換基を有する特定のセルロースナノファイバーを備えることよって、タンパク質と接触させ、上記置換基からスクシンイミド基を除去させ、末端に残ったアルキルカルボキシ基をタンパク質のアミノ基と共有結合させることが可能となる。
この結合によってタンパク質を固定することによって、タンパク質固定用担体とタンパク質との複合体を形成することができる。
そして、このように形成された複合体は、他のセルロースナノファイバーを備えた担体を用いて形成された複合体よりも、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
上記セルロースナノファイバーは、数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000であり、しかも、セルロースのグルコースユニットのC6位が上記一般式(1)で表されるエステル構造を有することによって、セルロースユニット中に上記特定のエステル構造が置換基として多く導入されることが可能となる。これによって、タンパク質をより多く固定化することが可能となると共に、他のセルロースナノファイバーに比べて、高い分散安定性を有することが可能となる。よって、固定化されたタンパク質と、該タンパク質によって処理される対象物(基質等)との親和性が低下せず、高い活性を発現することが可能となる。
このように、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮し得る。
上記のように、上記固定用担体は、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮することができ、しかも、製造が簡便である。
ここで、アニオン変性されていない(未変性)セルロースナノファイバーを用いてタンパク質固定用担体を製造しようとすると、後述する実施例で示すように、図3〜図5のスキーム1〜3で示される3つの反応を行う必要がある。
これに対して、本実施形態のように、上記アニオン変性セルロースナノファイバーを用いてタンパク質固定用担体を製造する場合には、図1及び図2に示す2つの反応を行えばよい。
よって、本実施形態のタンパク質固定用担体の方が、製造が簡便である。
また、本実施形態の上記アニオン変性セルロースナノファイバーを用いて製造されたタンパク質固定用担体の方が、未変性セルロースナノファイバーを用いて製造されたタンパク質固定用担体よりも、タンパク質が固定されたとき、固定されたタンパク質の活性をより十分に発揮させ得る。
本実施形態のタンパク質固定用担体においては、
前記エステル構造のモル数が、前記セルロースのグルコースユニットのC6位の炭素の全モル数に対して25%以上であってもよい。
かかる構成によれば、エステル構造のモル数が、セルロースのグルコースユニットのC6位の炭素の全モル数に対して25%以上であることによって、後に行われるタンパク質との接触において、タンパク質のアミノ基とアミド結合の形成による固定化量を増大することと、酵素活性をより保持することとが可能となる。また、タンパク質固定用担体は、より製造が簡便なものとなる。
本実施形態のタンパク質固定用担体においては、
固液分離されることが可能であってもよい。
かかる構成によれば、タンパク質固定用担体が、固液分離されることが可能であることによって、製造時においては、反応溶媒から容易に回収され易いものとなる。また、製造後、溶媒中に分散されて使用された際には、使用後、該溶媒から分離され、回収されることができる。よって、効率的に回収されるものとなる。また、回収された後、溶媒によって洗浄されることも可能となるため、再使用も可能となる。
そして、このような担体を用いて形成された複合体は、反応溶媒からの分離や、使用後の洗浄により、不純物や未反応のタンパク質を低減でき、また、複合体の凝集や自己消化を低減できるため、他のセルロースナノファイバーを備えた担体を用いて形成された複合体よりも、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
本実施形態のタンパク質固定用担体においては、
前記タンパク質が酵素であってもよい。
かかる構成によれば、固定するタンパク質が酵素であることによって、酒造工程におけるデンプンの分解工程での使用やプロテオーム解析におけるタンパク質のペプチドやアミノ酸への分解工程への使用が可能となる。
また、このような用途に使用される酵素を固定できることによって、酵素が固定された担体が、上記用途に使用された後、ろ過操作を行うことによって分離、回収、及び再利用が可能になるため、効率的に使用されることが可能となる。
さらに、酵素は、失活や変性を起こし易いが、かかる酵素を固定することによって、酵素が失活や変性を起こし難くなるため、その分、長期にわたって酵素活性を保持することが可能となる。
加えて、酵素が固定された固定化担体をカラムクロマトグラフィー用充填剤として用いることができ、これによって、カラムクロマトグラフィーの固定相として利用することが可能となる。
このように、タンパク質固定化担体が、より有用なものとなる。
本実施形態のタンパク質固定用担体においては、
前記酵素が、タンパク質分解酵素、または、炭水化物分解酵素であってもよい。
ここで、タンパク質分解酵素は、プロテオーム解析において、タンパク質をペプチドやアミノ酸に分解する分解工程に利用されているが、かかるタンパク質分解酵素は、タンパク質を分解するがゆえ、タンパク質酵素自身をも分解し、その結果、経時的な失活や変性を起こすおそれがある。例えば、トリプシンは、自己消化性を有するがゆえ、経時的な失活や変性を起こし易い。
しかし、このようなタンパク質分解酵素が、上記タンパク質固定用担体に固定されることによって、タンパク質分解自身が自身を分解することを抑制することが可能になるため、その分、分解活性を保持することが可能になる。
一方、炭水化物分解酵素は、食品加工工程におけるデンプンの糖化に利用されている。例えば、グルコアミラーゼといった炭水化物分解酵素は、自己分解性は有しないものの、加工工程後の食品に混入するおそれがある。食品に混入すると、望ましくない異物として扱われるおそれがある。
しかし、このような炭水化物分解酵素が、上記タンパク質固定用担体に固定されることによって、食品加工工程に使用された後、炭水化物分解酵素をろ過操作によって分離、回収することが可能となるため、食品中への炭水化物分解酵素の混入を抑制することが可能となる。
本実施形態の複合体は、
前記タンパク質固定用担体にタンパク質が固定されてなる複合体であって、
前記タンパク質固定用担体の前記置換基からスクシンイミド基が除去されて末端となったアルキルカルボキシ基に、タンパク質のアミノ基が共有結合されてなり、固液分離されることが可能である。
かかる構成によれば、上記タンパク質固定用担体のアルキルカルボキシ基にタンパク質のアミノ基が共有結合されて固定されていることによって、他のセルロースナノファイバーを有する担体に固定されている場合よりも、該タンパク質の活性が高いものとなる。
また、上記タンパク質固定用担体とタンパク質との結合が共有結合であることによって、その結合が、緩衝液のpH、塩濃度、イオン強度の影響を受け難いため、固定(結合)されたタンパク質が脱着や溶出を起こし難い。よって、固定されたタンパク質が、溶出や洗浄に耐えることが可能となるため、タンパク質が固定された状態で上記タンパク質固定用担体を繰り返し使用することが可能となり、その結果、耐久性が向上する。
ここで、上記タンパク質固定用担体とタンパク質との結合が、共有結合以外の結合である場合、すなわち、例えば、イオン結合や生物学的親和性(アフィニティー)による結合である場合には、緩衝液のpHや塩濃度の影響を受け易いため、タンパク質を十分に結合できる条件が制限されるため、条件によってはタンパク質の脱着や溶出が生じ易くなるおそれがある。また、例えば、疎水性相互作用による結合である場合には、疎水性の高いタンパク質を結合し易いものの、共有結合と比べて結合力が弱く、十分に結合させることができるタンパク質の種類が限定されるため、幅広いタンパク質を結合できる(一般性が十分である)とはいい難い。
しかし、上記タンパク質固定用担体とタンパク質との結合が共有結合であることによって、幅広い種類のタンパク質を、より十分に上記タンパク質固定用担体に結合させることが可能となる。
また、複合体が、固液分離されることが可能であることによって、製造時においては、反応溶媒から容易に回収され易いものとなる。また、製造後、溶媒中に分散されて使用された際には、使用後、該溶媒から分離され、回収されることができる。よって、効率的に回収されるものとなる。また、回収された後、溶媒によって洗浄されることも可能となるため、再使用されることも可能となる。
そして、このような担体を用いて作製された複合体は、反応溶媒からの分離や、使用後の洗浄により、不純物や未反応のタンパク質を低減でき、また、複合体の凝集や自己消化を低減できるため、他のセルロースナノファイバーを備えた担体を用いて形成された複合体よりも、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
従って、固定されたタンパク質の活性を十分に発揮することができ、しかも、製造が簡便である。
本実施形態の複合体においては、
前記タンパク質固定用担体に固定された前記タンパク質の量が、前記セルロースの質量当たり、10mg/g以上であってもよい。
かかる構成によれば、タンパク質固定用担体に固定されたタンパク質の量が、セルロースの質量当たり、10mg/g以上であることによって、タンパク質が固定された複合体の質量当たりの活性がより高いものとなるため、その分、処理の対象物に対して少量の複合体を適用することによって、酵素活性を発現し得る。よって、複合体に固定されたタンパク質の活性がより高いものとなる。例えば、固定されたタンパク質と、該タンパク質によって処理される対象物との相互作用や反応点が増大し、反応が促進されるため、タンパク質の活性が高いものとなる。
本実施形態の複合体においては、
前記共有結合が、アミド結合であってもよい。
かかる構成によれば、アルカリ、酸、水による分解や加水分解を受けにくく、耐久性を発現できるという利点がある。
本実施形態のタンパク質固定用担体の製造方法は、
前記タンパク質固定用担体の製造方法であって、
セルロースをN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化させて、アルキルカルボキシ基を有するセルロースナノファイバーを得る工程と、
前記アルキルカルボキシ基を有するセルロースナノファイバーと、凝縮剤と、スクシンイミド化合物とを反応させる工程と、
前記反応させる工程で得られた反応懸濁液を固液分離する工程とを行うことによって、
下記(a)〜(c)を満たし、且つ、タンパク質のアミノ基を固定化するためのセルロースナノファイバーを備えたタンパク質固定用担体を製造する。
(a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位が下記一般式(1)で表されるエステル構造を有する。
Figure 2019068753
(b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、
(c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が、3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。
かかる構成によれば、上記特定の置換基を有する特定のセルロースナノファイバーを備えたタンパク質固定用担体を、簡便に製造し得る。
このようにして製造されたタンパク質固定用担体は、上記特定の置換基を有する特定のセルロースナノファイバーを備えることよって、タンパク質と接触させ、上記置換基からスクシンイミド基を除去させ、末端に残ったアルキルカルボキシ基をタンパク質のアミノ基と共有結合させることが可能となる。
この結合によってタンパク質を固定することによって、タンパク質固定用担体とタンパク質との複合体を形成することができる。
また、上記反応させる工程で得られた反応懸濁液を固液分離する工程を行うことによって、固形分としてのタンパク質固定用担体を得ることができるので、簡便である。また、分離されたタンパク質固定用担体を洗浄することも可能となる。
そして、このように形成された複合体は、反応溶媒からの分離や洗浄により、不純物や未反応のタンパク質を低減でき、複合体の凝集や自己消化を低減できるため、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
また、製造されたセルロースナノファイバーは、数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000であり、しかも、グルコースユニットのC6位が上記一般式(1)で表されるエステル構造を有することによって、セルロースユニット中に上記特定のエステル構造が置換基として多く導入することが可能となる。これによって、タンパク質をより多く固定化することが可能となると共に、他のセルロースナノファイバーに比べて、高い分散安定性を有することが可能となる。よって、固定化されたタンパク質と、該タンパク質によって処理される対象物(基質等)との親和性が低下せず、高い活性を発現することが可能となる。
このように、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮し得るタンパク質固定用担体を、簡便に製造し得る。
本実施形態の複合体の製造方法は、
前記複合体の製造方法であって、
前記タンパク質固定用担体の製造方法における前記反応させる工程で得られた反応懸濁液中で、該反応懸濁液に含まれるタンパク質固定用担体の前記置換基からスクシンイミド基を除去し、末端となったアルキルカルボキシ基に、タンパク質のアミノ基を共有結合させる工程と、
前記反応懸濁液を固液分離する工程とを備える。
かかる構成によれば、上記特定のタンパク質固定用担体にタンパク質が固定されてなる複合体を、簡便に製造し得る。
このように製造された複合体は、上記タンパク質固定用担体のアルキルカルボキシ基にタンパク質のアミノ基が共有結合されて固定され、固液分離することが可能なものであるため、反応溶媒からの分離や洗浄により、不純物や未反応のタンパク質を低減でき、複合体の凝集や自己消化を低減できる。よって、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
また、複合体に含まれるセルロースナノファイバーは、上記の通り、数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000であり、しかも、グルコースユニットのC6位が上記一般式(1)で表されるエステル構造を有することによって、タンパク質をより多く固定化することが可能となると共に、他のセルロースナノファイバーに比べて、高い分散安定性を有することが可能である。よって、他のセルロースナノファイバーを有する担体に固定されている場合よりも、固定されたタンパク質の活性が高いものとなる。
このように、固定されたタンパク質の活性を十分に発揮し得る複合体を、簡便に製造し得る。
以上の通り、本実施形態によれば、固定されるタンパク質の活性を十分に発揮することができ、しかも、製造が簡便なタンパク質固定用担体、これを用いた複合体、及びそれらの製造方法が提供される。
本実施形態のタンパク質固定用担体、複合体、及びそれらの製造方法は、例えば、食品加工工程におけるバイオリアクター、醸造、酒造における糖化用固定化酵素、バイオセンサー、カラムクロマトグラフィー用充填剤、プロテオーム解析用充填剤、生物学的検査、診断デバイスおよびチップ等といった用途に好適に使用することができる。
例えば、本実施形態の複合体は、カラム等に充填して、上記の用途等に用いられ得る。
また、固定されたタンパク質が酵素であり、該酵素が例えばタンパク質分解酵素である場合には、例えば、バイオ医薬品の開発等のためのプロテオーム解析技術に適用され得る。
該酵素が例えば炭水化物分解酵素である場合には、例えば、食品加工、日本酒の醸造等の食品製造技術に適用され得る。
本実施形態のタンパク質固定用担体、複合体、及び、それらの製造方法は、上記の通りであるが、本発明のタンパク質固定用担体、複合体、及び、それらの製造方法は、上記実施形態に特に限定されるものではない。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「%」とあるのは、特に限定のない限り質量基準を意味する。
〔セルロース水分散体B1の製造〕
(1)酸化工程
TEMPOを0.5g(0.08mmol/g)と、臭化ナトリウムを5.0g(1.215mmol/g)とを、精製水1600gに溶解させ、10℃に冷却した。この溶液に、乾燥質量で200g相当分の漂白針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を分散させた後、12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、固形分換算で15.0g(5mmol/g)加えて反応を開始した。反応の進行に伴ってpHが低下するので、24%NaOH水溶液を適宜加えながらpH=10〜10.5となるように調整し、2.0時間反応させた。
(2)還元工程
得られた反応物を遠心分離機で固液分離した後、精製水を加えて固形分濃度4%に調整した。その後、24%NaOH水溶液によってスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃に設定してNaBHを0.3g(0.2mmol/g)を加え、2時間反応させた。
(3)精製工程
得られた反応物に1M HClを添加してpHを2に調整した後、ガラスフィルターによってろ過した。その後、充分な量のイオン交換水による水洗、ろ過を行い、得られたろ液の電気伝導度を測定した。水洗を繰り返しても、ろ液の電気伝導度に変化がなくなった時点で、精製工程を終了した。このようにして、水を含んだ固形分量20%のアニオン変性セルロース繊維を得た。
(4)分散工程
得られたアニオン変性セルロース繊維に水と水酸化ナトリウムとを適量加えて固形分量2%のスラリーとし、高圧ホモジナイザーを用いて、150MPaで2パスの微細化処理を行って、アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散体(セルロース水分散体)B1を得た。
後述する方法で測定したところ、得られたセルロース水分散体B1のカルボキシ基の含有量は1.97mmol/g、カルボニル基の含有量は0.10mmol/gであり、一方、アルデヒド基の検出は認められなかった。セルロース水分散体B1が含有するアニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径は4nm、平均アスペクト比は、280であった。該変性セルロースナノファイバーが含有するセルロースの結晶構造は、I型結晶構造が「あり」であった。また、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに、178ppmに、カルボキシ基に由来するピークが現れていた。よって、グルコース単位のC6位水酸基のみがカルボキシ基等に酸化されていることが確認された。
〔セルロース水分散体B2の製造〕
分散工程において、高圧ホモジナイザーの代わりに、ホモミキサー(プライミクス株式会社)を用い、12000回転で10分間、微細化処理すること以外は、セルロース水分散体B1の製造と同様にして、セルロース水分散体B2を得た。
後述する方法で測定したところ、得られたセルロース水分散体B2が含有するアニオン変性セルロースナノファイバーのカルボキシ基の含有量は1.97mmol/g、カルボニル基の含有量は0.10mmol/gであり、一方、アルデヒド基の検出は認められなかった。セルロース水分散体B2が含有するが含有するアニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径は400nm、平均アスペクト比は、20であった。該アニオン変性セルロースナノファイバーが含有するセルロースの結晶構造はI型結晶構造が「あり」であった。また、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシ基に由来するピークが現れていた。よって、グルコース単位のC6位水酸基のみがカルボキシ基等に酸化されていることが確認された。
製造したアニオン変性セルロースナノファイバー(セルロース水分散体B1またはB2)を試料として、下記のようにして各特性を測定した。
〔カルボキシ基量の測定〕
試料0.25gを水に分散させた水分散体60mlを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが約11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記式(数式1)に従いカルボキシ基量を求めた。
カルボキシ基量(mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース質量(g)〕・・・(数式1)
〔カルボニル基量の測定(セミカルバジド法)〕
試料を約0.2g(乾燥質量)精秤し、これに、リン酸緩衝液によってpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした。次いで、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液を5ml加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記式(数式2)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
カルボニル基量(mmol/g)=(D−B)×f×〔0.125/w〕 ・・・(数式2)
D:サンプルの滴定量(ml)
B:空試験の滴定量(ml)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター(−)
w:試料量(g)
〔アルデヒド基の検出〕
試料を0.4g精秤し、日本薬局方に従って調製したフェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶液5mlと、硫酸銅五水和物水溶液5mlと)を加えた後、80℃で1時間加熱した。そして、上澄みが青色、試料部分(固形分)が紺色を呈するものは、アルデヒド基が検出されなかったと判断し、「なし」と評価した。また、上澄みが黄色、試料部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基が検出されたと判断し、「あり」と評価した。
〔数平均繊維径〕
セルロース水分散体の数平均繊維径を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM−1400)を用いて観察した。すなわち、試料を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテート水溶液でネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径を算出した。
〔平均アスペクト比〕
セルロース水分散体の平均アスペクト比を、以下のようにして測定した。すなわち、試料を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2質量%ウラニルアセテート水溶液でネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、アニオン変性セルロースナノファイバーの短い方の幅(短幅)の数平均幅、及び、長い方の幅(長幅)の数平均幅を観察し、これらの値から、先に述べた方法に従い、平均アスペクト比を算出した。
〔結晶構造〕
X線回折装置(リガク社製、RINT−Ultima3)を用いて、試料の回折プロファイルを測定し、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
〔C6位に対する選択的な酸化〕
試料表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にカルボキシ基等に酸化されているかどうかについて、13C−NMRチャートで確認した。
(1)実施例1
アニオン変性セルロースナノファイバーにおけるセルロースのグルコースユニットのC6位のカルボキシ基にスクシンイミド基を結合させて、タンパク質固定用担体を製造し、得られたタンパク質固定用担体にタンパク質を固定して複合体を製造した。詳細は、以下の通りである。
(1−1)用いたアニオン変性セルロースナノファイバー
アニオン変性セルロースナノファイバーとして、セルロース水分散体B1を用いた。
(1−2)タンパク質固定用担体の製造
下記の原料を用いた。
セルロース水分散体B1
EDAC(1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、和光純薬工業株式会社製)
NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド、和光純薬工業株式会社製)
図1に示すように、セルロース水分散体B1の活性化エステル化を行った。
50mLの三角フラスコにセルロース水分散体B1を20.17g(湿重量)、16mmolのNHS水溶液を20mL、16mmoLのEDAC水溶液を20mL加え、マグネティックスターラー(200rpm)を用いて室温で1時間撹拌した。これによって、セルロース水分散体B1のセルロースにおけるグルコースユニットのC6位のカルボキシ基とNHSとをエステル反応させて、該C6位に活性化エステルを有するセルロースナノファイバー(活性化エステル化セルロースナノファイバー)である、タンパク質固定用担体を生成させた。
得られた反応懸濁液を遠心分離機で10000rpm、15分間遠心分離し、上澄液をデカンテーションで回収し、残渣をMES緩衝液で2回洗浄した後、回収することによって、洗浄されたタンパク質固定用担体(セルロースC6位活性エステル担体)を得た。セルロースC6位活性エステル担体は、上記遠心分離条件により簡便に分離、洗浄できた。
(1−3)タンパク質固定用担体とタンパク質との複合体の製造
下記原料を用いた。
上記タンパク質固定用担体の製造で製造されたセルロースC6位活性エステル担体
水酸化ナトリウム(NaOH)(ナカライテスク株式会社)
MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)(株式会社同仁化学研究所製)
グルコアミラーゼ(東京化成工業株式会社製)
図2に示すように、セルロースC6位活性エステル担体にグルコアミラーゼを固定させた。
上記で得られたセルロースC6位活性エステル担体を、上記とは別の三角フラスコに入れ、1000μg/mLのグルコアミラーゼ−MES緩衝液を20mL加え、インキュベータを用いて4℃、100rpmの条件で24時間振とうして、セルロースC6位活性エステル担体のグルコースユニットのC6位の活性エステルとグルコアミラーゼ(タンパク質)とをアミド化反応させて、セルロースC6位活性エステル担体とグルコアミラーゼとの複合体を生成させた。なお、MES緩衝液は、下記の方法で調製した。
得られた反応懸濁液を遠心分離機で10000rpm、15分間遠心分離し、上澄液をデカンテーションで回収し、洗浄した後、残渣として、上記複合体を得た。セルロースC6位活性エステル担体とグルコアミラーゼとの複合体は、上記遠心分離条件により簡便に分離でき、洗浄により、所望の複合体が得られた。
得られた複合体を純水中に冷保存(4℃)し、後述する酵素活性の評価に用いた。
一方、上澄液を、後述する酵素固定量の決定に用いた。
[MES緩衝液の調製方法]
下記表1の分量で、0.05MのMES水溶液、及び、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を調製した後、得られたMES水溶液300mLに、得られた水酸化ナトリウム溶液を徐々に加え(目安は120mL)、pHメーターでpH6.0に調整した。
Figure 2019068753
(2)実施例2
実施例1で得られたセルロースC6位活性エステル担体を用い、この担体に、グルコアミラーゼに代えてトリプシン(ブタ膵臓由来、和光純薬工業株式会社製)を固定して複合体を製造し、後述するように、評価した。
セルロースC6位活性エステル担体へのトリプシンの固定は、以下のようにして行った。
実施例1で得られたセルロースC6位活性エステル担体を、上記とは別の三角フラスコに入れ、1000μg/mLのトリプシン−MES緩衝液を50mL加え、インキュベータを用いて4℃、100rpmの条件で24時間振とうして、セルロースC6位活性エステル担体のグルコースユニットのC6位の活性エステルと、トリプシンとをアミド化反応させて、セルロースC6位活性エステル担体とトリプシンとの複合体を生成させた。得られた反応懸濁液を遠心分離機で10000rpm、15分間遠心分離し、上澄液をデカンテーションで回収し、残渣として、上記複合体を得た。得られた複合体を洗浄した後、純水中に冷保存(4℃)し、後述する酵素活性の評価に用いた。
一方、上澄液を、後述する酵素固定量の決定に用いた。
このようにして、セルロースC6位活性エステル担体とトリプシンとの複合体を製造した。
(3)実施例3
セルロース分散体B2を用いること以外は、実施例1と同様の手順により、タンパク質固定用担体にトリプシンを固定化し、タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体を製造した。セルロース分散体B2のセルロースC6位活性エステル担体は、実施例1及び2のセルロース水分散体B1のセルロースC6位活性エステル担体よりも数平均繊維径が大きいため、実施例1及び2と同等の遠心分離条件により、実施例1及び2に比べて、セルロース由来の残渣を分離、回収でき、洗浄できた。また、セルロースC6位活性エステル担体とトリプシンとの複合体は、上記遠心分離条件により、実施例1および2の複合体に比べて、後述するように、反応懸濁液から、より簡便に分離、回収、洗浄でき、洗浄することにより、所望の複合体が得られた。
(4)比較例1
グルコースユニットのC6位がアニオン変性されていない(未変性)セルロースナノファイバーを用いて、そのセルロースのグルコースユニットのC6位の水酸基にエピクロロヒドリンを反応させ、続いて、グルタミン酸ナトリウムを反応させ、次いで、スクシンイミド基を結合させて、タンパク質固定用担体を製造した。また、得られたタンパク質固定用担体にタンパク質を固定して複合体を製造した。詳細は、以下の通りである。
(4−1)未変性セルロースナノファイバー
未変性セルロースナノファイバーとして、セリッシュKY−100S(未変性セルロースナノファイバー、ダイセルファインケム株式会社製)を用いた。
用いたセリッシュKY−100Sの各特性は、下記の通りであった。
数平均繊維径:100nm
平均アスペクト比:5000
結晶構造:I型結晶構造が「あり」
(4−2)タンパク質固定用担体の製造
下記原料を用いた。
セリッシュKY−100S
水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)
エピクロルヒドリン(和光純薬株式会社製)
ホウ酸(HBO)(ナカライテスク株式会社製)
塩化カリウム(KCl)(キシダ化学株式会社製)
(スキーム1)未変性セルロースナノファイバーの活性化エポキシ化
図3に示すように、未変性セルロースファイバーの活性化エポキシ化を行った。
500mLのセパラブルフラスコに、湿潤状態の未変性セルロースナノファイバーを20.1g(湿質量)、5%の水酸化ナトリウム水溶液を100mL加え、マグネティックスターラー(200rpm)を用いて30℃の水浴中で1時間撹拌した。さらに、エピクロロヒドリンを100mL加え、さらに30℃の水浴中で2時間撹拌して、グルコースユニットのC6位に活性化エポキシを有するセルロースナノファイバーを生成させた。
得られたセルロースナノファイバーをシルクでろ過し、エピクロロヒドリンの臭いがなくなるまで、純水で洗浄した。
その後、100mMのホウ酸緩衝液を用いて洗浄した。なお、ホウ酸緩衝液は、下記の方法で調製した。
得られた活性化エポキシ化セルロースナノファイバー(スキーム1のセルロースナノファイバー)を、直ちに、次のスキーム(グルタミン酸ナトリウムによる修飾)に用いた。
[ホウ酸緩衝液の調製方法]
下記表2の配合で、塩化カリウムが添加されたホウ酸水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液とを調製した後、得られたホウ酸水溶液629mLに、得られた水酸化ナトリウム溶液を徐々に加え(目安は120mL)、pHメーターでpH9.0に調整した。
Figure 2019068753
(スキーム2)スキーム1のセルロースナノファイバーの、グルタミン酸ナトリウムによる修飾
図4に示すように、スキーム1のセルロースナノファイバーの、グルタミン酸による修飾を行った。
スキーム1で得られたエポキシ化セルロースナノファイバーと、グルタミン酸ナトリウムとを用いて、エポキシ化セルロースナノファイバーとグルタミン酸ナトリウムとの複合体を製造した。
下記原料を用いた。
スキーム1のセルロースナノファイバー(スキーム1で製造)
L(+)−グルタミン酸ナトリウム (和光純薬工業株式会社製)
水酸化ナトリウム(NaOH)(ナカライテスク株式会社製)
200mLの三角フラスコに、グルタミン酸ナトリウムを9.36g、0.01Mの水酸化ナトリウム水溶液を100mL加え、グルタミン酸ナトリウムを溶解させた。
さらに、スキーム1のセルロースナノファイバーを加え、インキュベータを用いて30℃、200rpmで、24時間振とうして、グルタミン酸ナトリウムで修飾されたセルロースナノファイバー(スキーム2のセルロースナノファイバー)を生成させた。
得られたセルロースナノファイバーをシルクでろ過し、純水で洗浄した後、次のスキーム(活性化エステル化)に用いた。
(スキーム3)スキーム2のセルロースナノファイバーの活性化エステル化
図5に示すように、スキーム2のセルロースナノファイバーの、活性化エステル化を行った。
スキーム2のセルロースナノファイバーと、EDACと、NHSとを用いて、スキーム2のセルロースナノファイバーのカルボキシ基(COONa)にNHSを結合させた、活性エステル化セルロースナノファイバーを製造した。
下記原料を用いた。
スキーム2のセルロースナノファイバー(スキーム2で製造)
EDAC(1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド和光純薬工業株式会社製)
NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド、和光純薬工業株式会社製)
塩化ナトリウム(NaCl)(ナカライテスク株式会社製)
水酸化ナトリウム(NaOH)(ナカライテスク株式会社製)
MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)(株式会社同仁化学研究所製)
スキーム2のセルロースナノファイバーを、1.5MのNaCl水溶液、0.1MのNaOH水溶液、50mMのMES緩衝液で洗浄した。なお、MES緩衝液は、前述した方法で調製した。
50mLの三角フラスコに、スキーム2のセルロースナノファイバー、12mmolのEDAC水溶液を20mL、12mmolのNHS水溶液を20mL加え、マグネティックスターラーを用いて室温、200rpmで、1時間撹拌して、スキーム2のカルボキシ基(COONa)が活性エステル化されたセルロースナノファイバーを生成させた。
得られた反応懸濁液からセルロースナノファイバー(スキーム3のセルロースナノファイバー)を、吸引ろ過し、純水で洗浄し、その後、MES緩衝液で洗浄した後、回収することにより、タンパク質固定用担体として、グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース−活性エステル担体を得、直ちに、次のスキームに用いた。
(スキーム4)グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース-活性エステル担体へのグルコアミラーゼの固定
図6に示すように、グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース-活性エステル担体へのグルコアミラーゼの固定を行った。
グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース−活性エステル担体と、グルコアミラーゼとを用いて、グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース-活性エステル担体の活性化エステルとグルコアミラーゼのアミノ基とをアミド化反応させて、グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース-活性エステル担体にグルコアミラーゼを固定した。
下記原料を用いた。
グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース−活性エステル担体(スキーム3で製造)
グルコアミラーゼ(東京化成工業株式会社製)
MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)(株式会社同仁化学研究所製)
水酸化ナトリウム(NaOH)(ナカライテスク株式会社製)
塩化ナトリウム(NaCl)(ナカライテスク株式会社製)
50mLの三角フラスコに、グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース−活性エステル担体、1000μg/mLのグルコアミラーゼ−MES緩衝液を20mL加え、インキュベータを用いて4℃、200rpmで24時間振とうして、グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース−活性エステル担体の活性化エステルとグルコアミラーゼのアミノ基とをアミド化反応させて、グルタミン酸ナトリウム修飾セルロース−活性エステル担体とグルコアミラーゼとの複合体を製造した。
得られた反応懸濁液から複合体をろ取し、50mMのMES緩衝液で洗浄した後、純水で洗浄し、純水中で冷保存(4℃)し、後述する酵素活性の評価に用いた。
一方、ろ液を、後述する酵素固定量の決定に用いた。
(5)比較例2
グルコースユニットのC6位がアニオン変性されていない(未変性)セルロースナノファイバーを用いて、そのセルロースのグルコースユニットのC6位の水酸基にエピクロロヒドリンを反応させエポキシ基を導入して、タンパク質固定用担体を製造し、得られたタンパク質固定用担体にタンパク質を固定して複合体を製造した。詳細は、以下の通りである。
タンパク質固定用担体として、比較例1の活性化エポキシ化セルロースナノファイバー(エポキシ基修飾セルロース担体)を得た後、直ちに、上記とは別の三角フラスコに入れ、1000μg/mLのグルコアミラーゼ−MES緩衝液を20mL加え、インキュベータを用いて4℃、200rpmで24時間振とうして、エポキシ基修飾セルロース担体とグルコアミラーゼとの複合体を製造した。
得られた反応懸濁液から複合体をろ取し、50mMのMES緩衝液で洗浄した後、純水で洗浄し、純水中で冷保存(4℃)し、後述する酵素活性の評価に用いた。
一方、ろ液を、後述する酵素固定量の決定に用いた。
(6)比較例3
タンパク質として、トリプシンを用いること以外は、比較例1と同様の手順により、タンパク質固定用担体にトリプシンを固定化し、タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体を製造した。詳細は、以下の通りである。
タンパク質固定用担体として、比較例1のグルタミン酸修飾セルロース−活性エステル担体を用い、上記とは別の三角フラスコに入れ、1000μg/mLのトリプシン−MES緩衝液を50mL加え、インキュベータを用いて4℃、100rpmの条件で24時間振とうして、グルタミン酸修飾セルロース-活性エステル担体のグルコースユニットのC6位の活性エステルとトリプシンとをアミド化反応させて、グルタミン酸修飾セルロース−活性エステル担体とトリプシンとの複合体を生成させた。得られた反応懸濁液を遠心分離機で10000rpm、15分間遠心分離し、上澄液をデカンテーションで回収し、残渣として、上記複合体を得た。得られた複合体を洗浄後、純水中に冷保存(4℃)し、後述する酵素活性の評価に用いた。
一方、上澄液を、後述する酵素固定量の決定に用いた。
(7)比較例4
タンパク質として、トリプシンを用いること以外は、比較例2と同等の手順により、タンパク質固定用担体にトリプシンを固定化し、タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体を製造した。詳細は、以下の通りである。
比較例2のエポキシ基修飾セルロース担体を用い、上記とは別の三角フラスコに入れ、1000μg/mLのトリプシン−MES緩衝液を50mL加え、インキュベータを用いて4℃、200rpmで24時間振とうして、エポキシ基修飾セルロース担体とトリプシンとの複合体を製造した。
得られた反応懸濁液から複合体をろ取し、50mMのMES緩衝液で洗浄した後、純水で洗浄し、純水中で冷保存(4℃)し、後述する酵素活性の評価に用いた。
一方、ろ液を、後述する酵素固定量の決定に用いた。
(8)比較例5
グルコースユニットのC6位がアニオン変性されたセルロースを用いて形成されたアニオン変性セルロースビーズをタンパク質固定用担体として用い、タンパク質固定用担体にトリプシンを固定化し、タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体を製造した。該セルロースビーズとして、C6位にCHOCHCOOHを有するセルファインC−500(JNC株式会社製)を用いた(平均粒径:40〜130μm)。
詳細は、以下の通りである。
(8−1)アニオン変性セルロースビーズとタンパク質との複合体の製造
下記原料を用いた。
セルファインC−500(JNC株式会社製)
EDAC(1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド和光純薬工業株式会社製)
NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド、和光純薬工業株式会社製)
塩化ナトリウム(NaCl)(ナカライテスク株式会社製)
水酸化ナトリウム(NaOH)(ナカライテスク株式会社製)
MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)(株式会社同仁化学研究所製)
セルファインC−500の活性化エステル化を行った。
50mLの三角フラスコにセルファインC−500を12.00g、0.6MのNHS水溶液を20mL、0.6MのEDAC水溶液を20mL加え、マグネティックスターラー(200rpm)を用いて室温で1時間撹拌した。これによって、セルファインC−500のカルボキシ基とNHSとをエステル反応させて、活性化エステルを有するセルロースビーズ(活性化エステル化セルロースビーズ)である、タンパク質固定用担体を生成させた。
得られた反応懸濁液を遠心分離機で10000rpm、15分間遠心分離し、上澄液をデカンテーションで回収し、残渣をMES緩衝液で2回洗浄した後、回収することによって、洗浄されたタンパク質固定用担体として、カルボキシメチル化セルロース-活性エステル担体を得た。
上記で得られたカルボキシメチル化セルロース-活性エステル担体を、上記とは別の三角フラスコに入れ、500μg/mLのグルコアミラーゼ−MES緩衝液を20mL加え、インキュベータを用いて4℃、100rpmの条件で24時間振とうして、カルボキシメチル化セルロース-活性エステル担体の活性エステルとグルコアミラーゼとをアミド化反応させて、カルボキシメチル化セルロース−活性エステル担体とグルコアミラーゼとの複合体を生成させた。
得られた反応懸濁液を遠心分離機で10000rpm、15分間遠心分離し、上澄液をデカンテーションで回収し、残渣として、上記複合体を得た。
得られた複合体を洗浄した後、純水中に冷保存(4℃)し、後述する酵素活性の評価に用いた。一方、上澄液を、後述する酵素固定量の決定に用いた。
(9)比較例6
タンパク質として、トリプシンを用いること以外は、比較例5と同等の手順により、タンパク質固定用担体にトリプシンを固定化し、タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体を製造した。
詳細は、以下の通りである。
比較例5で得られたカルボキシメチル化セルロース−活性エステル担体を、上記とは別の三角フラスコに入れ、1000μg/mLのトリプシン−MES緩衝液を20mL加え、インキュベータを用いて4℃、100rpmの条件で24時間振とうして、カルボキシメチル化セルロース-活性エステル担体の活性エステルとトリプシンとをアミド化反応させて、カルボキシメチル化セルロース−活性エステル担体とトリプシンとの複合体を生成させた。
得られた反応懸濁液を遠心分離機で10000rpm、15分間遠心分離し、上澄液をデカンテーションで回収し、残渣として、上記複合体を得た。
得られた複合体を洗浄後、純水中に冷保存(4℃)し、後述する酵素活性の評価に用いた。一方、上澄液を、後述する酵素固定量の決定に用いた。
(10)比較例7
グルコースユニットのC6位に水酸基を有する未変性セルロースを用いて形成された未変性セルロースビーズをタンパク質固定用担体として用い、タンパク質固定用担体にグルコアミラーゼを固定化し、タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体を製造した。該セルロースビーズとして、セルファインGC−15(JNC株式会社製)を用いた(平均粒径:50〜125μm)。
(10−1)未変性セルロースビーズとタンパク質との複合体の製造
下記原料を用いた。
セルファインGC−15(JNC株式会社製)
エピクロロヒドリン(和光純薬工業株式会社製)
水酸化ナトリウム(NaOH)(ナカライテスク株式会社製)
セルファインGC−15にエポキシ基を導入した。
50mLの三角フラスコに湿潤状態のセルファインGC−15を16.00g、5%水酸化ナトリウムホウ酸緩衝液を100mLを入れ、30℃で1時間撹拌(200rpm)後、エピクロロヒドリンを160mL加え、さらに30℃で2時間撹拌した(200rpm)。得られたエポキシ化セルロース粒子をシルク上で濾過し、エピクロロヒドリンの臭いがなくなるまで超純水で洗浄し、その後、メタノールを用いて洗浄することにより、タンパク質固定用担体として、エポキシ基修飾セルロースビーズを得た。50mL三角フラスコにエポキシ基修飾セルロースビーズと500μg/mLのグルコアミラーゼを含有するホウ酸緩衝液を20mL入れ、インキュベータによって4℃、200rpmで1時間撹拌することによって、エポキシ基修飾セルロースビーズとタンパク質との複合体を得た。得られた複合体を濾過し、100mMホウ酸緩衝で3回洗浄した後、超純水で3回洗浄し、複合体粒子を超純水中で冷保存した。
(11)比較例8
タンパク質固定用担体を用いることなく、グルコアミラーゼのみを用いて、後述するように、グルコアミラーゼの酵素活性を評価した。
(12)比較例9
タンパク質固定用担体を用いることなく、トリプシンのみを用いて、後述するように、トリプシンの酵素活性を評価した。
(13)評価
実施例1〜3、及び比較例1〜7について酵素固定(酵素修飾)量、実施例1〜3、及び比較例1〜9について酵素活性、実施例1及び比較例1、2、5、8についてpHに対する活性率、実施例1及び比較例1、5、8について温度に対する活性率を、以下のように測定した。
〔酵素固定(酵素修飾)量〕
Bradford法を用いて、複合体のグルコアミラーゼ及びトリプシン固定(修飾)量を測定した。
Bradford法とは、クマシーブリリアントブルー(CBB、構造式を下記に示す。)がタンパク質に吸着することでCBB溶液の吸光度が465nmから595nmに移行することを利用した定量方法である。
このBradford法を用い、実施例1〜3及び比較例1〜7においてタンパク質固定用担体にグルコアミラーゼ及びトリプシンを固定する反応を行ったとき、反応液中に残存したグルコアミラーゼ及びトリプシンの濃度を調べることによって、タンパク質固定用担体に固定されたグルコアミラーゼ及びトリプシンの量(固定量)を決定した。
Figure 2019068753
Bradford法を用いた反応液(被検液)中の残存グルコアミラーゼ及びトリプシン濃度の測定は、プロテインアッセイCBB溶液(5倍濃縮)のマイクロプレートアッセイ法に従って行った。以下の試薬を用いた。
被検液:反応液(実施例1〜3、及び、比較例1〜7においてタンパク質固定用担体にグルコアミラーゼ及びトリプシンを固定したときの反応懸濁液をろ過して得られたろ液)
プロテインアッセイCBB溶液(5倍濃縮)(ナカライテスク株式会社製)
マイクロプレートに、被検液を160mL、プロテインアッセイCBB溶液を40mL加えた。
得られた混合液を、マイクロプレートリーダー(BioTek SYNERGY社製)を用いて30℃で10分間撹拌した後、撹拌後の混合液の吸光度(595nm)を測定した。
ブランク(純水)の吸光度を測定し、この測定結果に対する被検液の吸光度の測定結果の差を、被検液の吸光度とした。
また、MES緩衝液またはホウ酸緩衝液にグルコアミラーゼ及びトリプシンを溶解させ、グルコアミラーゼ及びトリプシンの濃度を3.9、7.8、31.25、62.5、125、250、500mg/mLに調整した標準液を調製し、各標準液の吸光度(595nm)を上記と同様に測定し、横軸をグルコアミラーゼ及びトリプシン濃度、縦軸を吸光度とした検量線を作成した。
この検量線を用いて、被検液のグルコアミラーゼ及びトリプシン濃度を算出した。
結果を表5、表6に示す。
〔酵素活性〕
(1)ソモギ−ネルソン法によるグルコアミラーゼの活性評価
ソモギ−ネルソン(Somogyi−Nelson)法は、銅試薬による還元糖の定量法であり、ネルソンの発色試薬を用いて、最終的に吸光度を測定する方法である。
このソモギ−ネルソン法を用い、実施例1、及び比較例1、2、5の複合体を試料として用いて可溶性デンプン(基質)を分解させてグルコースを生成させ、生成したグルコースの銅による還元反応を行った後、吸光度(660nm)を測定した。比較例8のグルコアミラーゼ(複合体を用いない)を試料として用いて、同様にして、可溶性デンプンを分解させて、吸光度(660nm)を測定した(比較例8)。
以下の試薬を用いた。
可溶性でんぷん(和光純薬工業株式会社製)
ソモギ液(和光純薬工業株式会社製)
ネルソン液(和光純薬工業株式会社製)
リン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)
リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)
グルコース(和光純薬工業株式会社製)
試験管に、デンプン溶液を1mL、pH6.87のリン酸緩衝液を1mL加え、40℃の恒温槽内で10分間温浸した。
50mg/mLとなるように調製した試料と水との混合液を1mL加えて、きっちり10分間反応させた。
10分後、直ちに、沸騰水中で熱失活させた。
得られた分解反応液1mLと、ソモギ液1mLとを他の試験管に加え、下記の条件で、沸騰水中で20分間銅による還元反応を行った。
(反応条件)
酵素濃度:50mg/mL、反応時間:10min
反応温度:40℃、pH6.87
反応後、氷水で急冷した後、ネルソン液を1mL加えて30分間静置した。
得られた還元反応液に22mLの純水を加えて25mLにフィルアップし、さらに15分間静置し、吸光度(660nm)を測定した。ブランクとして純水の吸光度を測定した。
分解反応液の代わりに400、300、200、100、50、25mg/mLのグルコース水溶液についても、上記と同様、還元反応から吸光度測定までの操作を行い、横軸をグルコース濃度、縦軸を吸光度としたグルコース検量線を作成した。
この検量線から、希釈された還元反応液のグルコース濃度を算出した。
算出したグルコース濃度から下記式(数式3)を用いて、グルコアミラーゼの酵素活性量(1Unit(U)、すなわち、1分間に1mgのグルコースを遊離した力価)を算出した。
Figure 2019068753
(2)Michaelis Menten kineticsによるグルコアミラーゼの酵素活性評価
実施例1、及び比較例1、2、5で得られた複合体の濃度が50mg/mLとなるように、各複合体を水に添加した。比較例3については、グルコアミラーゼの濃度が50mg/mLとなるようにグルコアミラーゼを水に添加した。
一方、各濃度(0.0625、0.125、0.25、0.5、1、2、3、4%)の基質(可溶性でんぷん)に対する酵素活性を、前述した「ソモギ−ネルソン法によるグルコアミラーゼの活性評価」に従って測定し、複合体に固定されたグルコアミラーゼ(実施例1、及び比較例1、2、5)、及び、固定されてないグルコアミラーゼ(比較例8)について、下記式(数式4)に示すMichaelis Menten kineticsを、下記式(数式5)に示すHanes Woolf plotを用いて調べた。結果を図7、表5、表6に示し、算出したMichaelis Menten kineticsの係数を表3に示す。 なお、図7において、実施例1をCNF(RH)−GA、比較例1をCNF(Celish)−GA、比較例8をFree GAと示す。
Figure 2019068753
Figure 2019068753
Figure 2019068753
(3)遊離チロシン量の定量によるトリプシンの酵素活性評価
タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体、およびトリプシンの酵素活性評価を、タンパク質によって処理する対象物(基質)としてカゼインを用い、カゼインと37℃で10分間反応させ、反応停止剤としてトリクロロ酢酸を用い、反応を停止させた後、遊離したチロシンの量を定量することにより、行った。
詳細は、以下の通りである。
以下の試薬を用い、40mg/mLのカゼイン溶液を調製した。
カゼイン(乳由来、和光純薬工業株式会社製)
リン酸水素二ナトリウム・12水(和光純薬工業株式会社製)
クエン酸一水和物(ナカライテスク株式会社製)
100mL三角フラスコにカゼインを2g、0.2Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を30mL加え、65〜70℃の水浴中でカゼインを溶解させた。得られた溶液をpH7.0のMcllvaine緩衝液(0.2mol/Lリン酸2水素ナトリウム水溶液と0.1mol/Lクエン酸水溶液とを用いてpHを調整)で50mLにメスアップし、これにより、40mg/mLのカゼイン溶液を得た。
得られた40mg/mLのカゼイン溶液と、以下の試薬とを用い、タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体、およびトリプシンの酵素活性を評価した。
トリクロロ酢酸(和光純薬工業株式会社製)
炭酸ナトリウム(片山化学工業株式会社製)
Folin試薬(ナカライテスク株式会社製)
20mL三角フラスコに超純水を1mL、カゼイン溶液を1mLを入れ、37℃に設定したインキュベータ内にて、200rpmで10分間撹拌した。タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体を1mL加え、200rpmで10分間、反応させた後、トリクロロ酢酸3mLを加えて反応を停止(白色沈殿の発生)させ、30分間、200rpmで撹拌した。トリクロロ酢酸の投入によって生成した、沈殿物を含む溶液を、シリンダーで回収した後、80μmのフィルター(ADVANTEC DISMIC−25cs、CelluloseAcetate 0.80μm)によって沈殿物を除去し、反応溶液を試験管に回収した。回収した反応溶液を30μL、炭酸ナトリウム水溶液を150μL、1.8倍希釈Folin試薬を30μL、マイクロプレートに投入した。このマイクロプレートを37℃、30分間静置した後、反応溶液の750nmの吸光度(実測値)を測定した。一方、反応溶液の代わりにブランクとして超純水を用いて、上記と同様の操作を行い、ブランクの750nmの吸光度を測定した。このブランクの吸光度と反応溶液の吸光度(実測値)との差を、反応溶液の吸光度(測定結果)とした。この反応溶液の吸光度から、下記の作成方法によって作成したチロシンの検量線を用いて、チロシン濃度を算出した。そして、下記式(数式6)によって、タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体、およびトリプシンの酵素活性量(1Unit(U)=1分間に1μgのチロシンを遊離した力価)を計算した。
Figure 2019068753
チロシンの検量線を、以下のようにして作成した。
上記タンパク質固定用担体とトリプシンとの複合体、およびトリプシンの酵素活性操作において、反応溶液の代わりに、100、50、25、12.5、6.25μg/mLのチロシン溶液を用いて上記と同様の操作を行い、横軸にチロシン濃度、縦軸に吸光度(ブランクの吸光度を差し引いたもの)としたチロシンの検量線を作成した。
(4)Michaelis‐Menten kineticsによるトリプシンの酵素活性の評価
以下の手順により、酵素活性を評価した。
実施例2、3、比較例3、4、6、7の複合体、及び、タンパク質固定用担体に固定されてないトリプシン(比較例9)について、各濃度(1.875mg/mL〜40mg/mL)のカゼインに対する活性(遊離チロシン量)を、前述した「遊離チロシン量の定量によるトリプシンの酵素活性評価」に従って測定し、上記式(数式4)のMichaelis−Menten kinetics、上記式(数式5)のHanes−Woolf plotを用いて調べた。結果を表5、表6に示す。
〔pHに対する活性率〕
実施例1及び比較例1、2、5の複合体について、pHに対する酵素活性(活性率)を調べた。
一方、固定されていないグルコアミラーゼ(比較例8)についても、同様にして、pHに対する酵素活性を測定した。
用いた試薬
0.1M酢酸(ナカライテスク株式会社製)
酢酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)
塩化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)
リン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)
リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)
トリス(SERVA製)
0.1M塩酸(和光純薬工業株式会社製)
可溶性でんぷん(和光純薬工業株式会社製)
ソモギ液(和光純薬工業株式会社製)
ネルソン液(和光純薬工業株式会社製)
リン酸(和光純薬工業株式会社製)
グルコアミラーゼ(東京化成工業株式会社製)
pH2〜9の緩衝液を、下記表4に示す配合に純水を加えることによって、各100mLずつ調製した。
実施例1及び比較例1、2、5の複合体について、他の条件を変更することなく、pHのみをpH2.0〜9.0の範囲で変更して、下記反応条件で、前述した「ソモギ−ネルソン法によるグルコアミラーゼの活性評価」に従って酵素活性を測定した。
一方、固定されていないグルコアミラーゼ(比較例8)についても、同様にして、各pHでの酵素活性を測定した。
酵素濃度:50mg/mL、基質濃度:3%
反応時間:10min、反応温度:40℃
吸光度(660nm)の測定結果から酵素活性を求め、横軸をpH、縦軸を酵素の活性率としたグラフを図8、表5、表6に示す。図8には、実施例1及び比較例1、8の結果を示す。図8では、最も高い酵素活性の値を100%とし、この値に対する百分率を、酵素の活性率として示す。なお、図8において、実施例1をCNF(RH)−GA、比較例1をCNF(Celish)−GA、比較例8をFree GAと示す。
Figure 2019068753
〔温度に対する活性率〕
実施例1及び比較例1、5の複合体について、各温度での酵素の活性率を測定した。
固定されていないグルコアミラーゼ(比較例8)についても、同様にして、各温度での酵素の活性率を測定した。
用いた試薬
pH4の酢酸緩衝液(前述した[pHに対する活性率]で調製したもの)
pH5の酢酸緩衝液(前述した[pHに対する活性率]で調製したもの)
可溶性でんぷん(和光純薬工業株式会社製)
ソモギ液(和光純薬工業株式会社製)
ネルソン液(和光純薬工業株式会社製)
グルコアミラーゼ(東京化成工業株式会社製)
実施例1及び比較例1、5の複合体について、他の条件を変更することなく、反応温度のみを20、25、30、40、50、60、70、80℃と変化させて、下記反応条件で、それぞれ前述した「ソモギ−ネルソン法によるグルコアミラーゼの活性評価」に従って酵素活性を測定した。
一方、固定されていないグルコアミラーゼ(比較例8)についても、同様にして、各温度での酵素活性を測定した。
酵素濃度:50mg/mL、基質濃度:3%
反応時間:10min
pH:実施例1及び比較例1、5についてはpH5.0、比較例8についてはpH4.0
吸光度(660nm)の測定結果から酵素活性を求め、横軸をpH、縦軸を酵素の活性率としたグラフを図9、表5、表6に示す。図9には、実施例1及び比較例1の結果を示す。図9では、最も高い酵素活性の値を100%とし、この値に対する百分率を、酵素の活性率として示す。なお、図9において、実施例1をCNF(RH)−GA、比較例8をFree GAと示す。
Figure 2019068753
Figure 2019068753
〔遠心分離による固液分離評価〕
実施例1〜3においてセルロースC6位活性エステル担体を製造する際に得られた反応懸濁液から、10000rpm、15分間の遠心分離により、セルロースC6位活性エステル担体を、水に不溶な固形成分として固液分離し、その分離の程度を下記のように評価した。なお、実施例2の反応懸濁液としては、実施例1の反応懸濁液が用いられている。
同様に、実施例1〜3においてセルロースC6位活性エステル担体と、グルコアミラーゼまたはトリプシンとの複合体を製造する際に得られた反応懸濁液から、10000rpm、15分間の遠心分離により、複合体を、水に不溶な固形成分として固液分離し、その分離の程度を下記のように評価した。
分離の程度は、遠心分離を行った後に、水に不溶な固形成分が分離された状態を目視にて確認し、下記判定基準により評価した。結果を表7に示す。
・判定基準
水に不溶な成分が下層に堆積し、この下層の堆積物と、上層の上澄み液との間に、明確な境界が認められ、上澄み液をデカンテーションできる場合を、極めて良好であるとして、「◎」と表す。
水に不溶な成分が下層に堆積し、この下層の堆積物と、上層の上澄み液との間に、濁りがあり、明確な境界は認められないものの、上澄み液はデカンテーションできる場合を、良好であるとして、「○」と表す。
Figure 2019068753
上記の通り、実施例は、幅広いpH、幅広い温度で、タンパク質を固定していない場合よりも、タンパク質の活性をより十分に発揮させ得ることがわかった。また、実施例のセルロースナノファイバーは、比較例のセルロースビーズよりも、多くのタンパク質を固定し得ることがわかった。また、実施例のセルロースC6位活性エステル担体及び複合体は、十分良好に固液分離できることがわかった。

Claims (10)

  1. セルロースによって形成されたセルロースナノファイバーを備え、
    前記セルロースナノファイバーは、下記(a)〜(c)を満たし、且つ、タンパク質のアミノ基を固定化するためのものである、タンパク質固定用担体:
    (a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位に下記一般式(1)で表されるエステル構造を有する、
    Figure 2019068753
    (b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、
    (c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。
  2. 前記エステル構造のモル数が、前記セルロースのグルコースユニットのC6位の炭素の全モル数に対して25%以上である、請求項1に記載のタンパク質固定用担体。
  3. 固液分離されることが可能である、請求項1または2に記載のタンパク質固定用担体。
  4. 前記タンパク質が酵素である、請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質固定用担体。
  5. 前記酵素が、タンパク質分解酵素、または、炭水化物分解酵素である、請求項4に記載のタンパク質固定用担体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質固定用担体にタンパク質が固定されてなる複合体であって、
    前記タンパク質固定用担体の前記置換基からスクシンイミド基が除去されて末端となったアルキルカルボキシ基に、タンパク質のアミノ基が共有結合されてなり、固液分離されることが可能である、複合体。
  7. 前記タンパク質固定用担体に固定された前記タンパク質の量が、前記セルロースの質量当たり、10mg/g以上である、請求項6に記載の複合体。
  8. 前記共有結合が、アミド結合である、請求項6または7に記載の複合体。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質固定用担体の製造方法であって、
    セルロースをN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化させて、アルキルカルボキシ基を有するセルロースナノファイバーを得る工程と、
    前記アルキルカルボキシ基を有するセルロースナノファイバーと、凝縮剤と、スクシンイミド化合物とを反応させる工程と、
    前記反応させる工程で得られた反応懸濁液を固液分離する工程とを行うことによって、
    下記(a)〜(c)を満たし、且つ、タンパク質のアミノ基を固定化するためのセルロースナノファイバーを備えたタンパク質固定用担体を製造する、タンパク質固定用担体の製造方法:
    (a)前記セルロースが、そのグルコースユニットのC6位に下記一般式(1)で表されるエステル構造を有する、
    Figure 2019068753
    (b)前記セルロースが、セルロースI型結晶構造を有する、
    (c)前記セルロースナノファイバーの数平均繊維径が、3〜1000nm、平均アスペクト比が10〜1000である。
  10. 請求項6〜8のいずれかに記載の複合体の製造方法であって、
    請求項9に記載のタンパク質固定用担体の製造方法における前記反応させる工程で得られた反応懸濁液中で、該反応懸濁液に含まれるタンパク質固定用担体の前記置換基からスクシンイミド基を除去し、末端となったアルキルカルボキシ基に、タンパク質のアミノ基を共有結合させる工程と、
    前記反応懸濁液を固液分離する工程とを備えた、複合体の製造方法。
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