JP2019068309A - 弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサ - Google Patents

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中村  健太郎
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Abstract

【課題】スプリアスおよび特性劣化を抑制すること。【解決手段】カット角が120°以上140°以下の範囲にある回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である圧電基板10と、前記圧電基板上に設けられ、弾性波を励振するIDTと、前記IDTを覆うように前記圧電基板上に設けられた弗素元素を含む酸化シリコン膜14と、前記IDTと前記酸化シリコン膜との間、前記酸化シリコン膜内、および前記酸化シリコン膜上の少なくとも一か所に、平面視において前記IDTの少なくとも一部に重なり設けられ、前記酸化シリコン膜の音響インピーダンスより高い音響インピーダンスおよび前記酸化シリコン膜の音速より速い音速を有する1または複数の誘電体膜15と、を備える弾性波デバイス。【選択図】図12

Description

本発明は、弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えばIDTを有する弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
高周波フィルタに用いられるレイリー波を用いた弾性波デバイスとして、カット角が128°近傍の回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム(LiNbO)基板上にIDT(Interdigital Transducer)を有する弾性表面波共振器が知られている。IDTを覆うように圧電基板上に酸化シリコン(SiO)膜を設けることが知られている。圧電基板の弾性率の温度係数は負であるのに対し、酸化シリコンの弾性率の温度係数は正である。このため、IDTを覆うように酸化シリコン膜を設けることにより、温度特性が向上する。IDTを覆う酸化シリコン膜に弗素元素を添加することが知られている(例えば特許文献1から3)。
特開2013−55371号公報 特開2013−85189号公報 特開2005−260296号公報
レイリー波を用いた弾性表面波共振器のIDTを覆うように弗素元素を添加した酸化シリコン膜を設けたときに、弗素元素の濃度を高くすると、周波数温度特性(TCF:Temperature Coefficient of Frequency)は0に近くなる。しかし、SH波(リーキー波)に起因した不要波(スプリアス)が生じる。酸化シリコン膜内の弗素元素の濃度を高くしかつスプリアスを低減しようとすると、弾性表面波共振器およびこれを用いたフィルタの特性が劣化してしまう。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、スプリアスおよび特性劣化を抑制することを目的とする。
本発明は、カット角が120°以上140°以下の範囲にある回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、弾性波を励振するIDTと、前記IDTを覆うように前記圧電基板上に設けられた弗素元素を含む酸化シリコン膜と、前記IDTと前記酸化シリコン膜との間、前記酸化シリコン膜内、および前記酸化シリコン膜上の少なくとも一か所に、平面視において前記IDTの少なくとも一部に重なり設けられ、前記酸化シリコン膜の音響インピーダンスより高い音響インピーダンスおよび前記酸化シリコン膜の音速より速い音速を有する1または複数の誘電体膜と、を備える弾性波デバイスである。
上記構成において、前記酸化シリコン膜の弗素元素の濃度は3原子%以上である構成とすることができる。
上記構成において、前記酸化シリコン膜の弗素元素の濃度は4.9原子%以上である構成とすることができる。
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、弾性波としてレイリー波を励振するIDTと、前記IDTを覆うように前記圧電基板上に設けられた弗素元素を含む酸化シリコン膜と、前記IDTと前記酸化シリコン膜との間、前記酸化シリコン膜内、および前記酸化シリコン膜上の少なくとも一か所に、平面視において前記IDTの少なくとも一部に重なり設けられ、前記酸化シリコン膜の音響インピーダンスより高い音響インピーダンスおよび前記酸化シリコン膜の音速より速い音速を有する1または複数の絶縁膜と、を備える弾性波デバイスである。
上記構成において、前記誘電体膜は、炭化シリコン膜、窒化アルミニウム膜または酸化アルミニウム膜である構成とすることができる。
上記構成において、前記誘電体膜の膜厚は前記酸化シリコン膜の膜厚より小さい構成とすることができる。
上記構成において、前記誘電体膜は、複数設けられている構成とすることができる。
上記構成において、前記酸化シリコン膜上に設けられ、前記酸化シリコン膜の音速より遅い音速を有する質量負荷膜を備える構成とすることができる。
本発明は、上記弾性波デバイスを含むフィルタである。
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
本発明によれば、スプリアスおよび特性劣化を抑制することができる。
図1(a)は、比較例および実施例に係る弾性波共振器の平面図、図1(b)および図1(c)は、図1(a)のB−B断面図およびC−C断面図である。 図2は、比較例における弾性表面波共振器の断面図である。 図3は、実験1の各特性を示す図である。 図4(a)および図4(b)は、実験1における反射特性のスミスチャートおよび周波数に対するQ値を示す図である。 図5は、酸化シリコン膜の弗素濃度に対する音響インピーダンスおよび横波音速を示す図である。 図6は、実験2の各特性を示す図である。 図7(a)および図7(b)は、実験2における反射特性のスミスチャートおよび周波数に対するQ値を示す図である。 図8は、実験3の各特性を示す図である。 図9(a)および図9(b)は、実験3における反射特性のスミスチャートおよび周波数に対するQ値を示す図である。 図10(a)および図10(b)は、シミュレーション1におけるRu膜の膜厚に対するΔTCVおよびレイリー波のkを示す図である。 図11(a)および図11(b)は、シミュレーション1におけるRu膜の膜厚に対するSBW(ストップバンド幅)およびSH波のkを示す図である。 図12(a)および図12(b)は、実施例1およびその変形例1に係る弾性波共振器の断面図であり、 図13(a)および図13(b)は、シミュレーション2における誘電体膜の膜厚に対するΔTCVおよびレイリー波のkを示す図である。 図14(a)および図14(b)は、シミュレーション2における誘電体膜の膜厚に対するSBWおよびSH波のkを示す図である。 図15(a)および図15(b)は、シミュレーション3における誘電体膜の膜厚に対するΔTCVおよびレイリー波のkを示す図である。 図16(a)および図16(b)は、シミュレーション3における誘電体膜の膜厚に対するSBWおよびSH波のkを示す図である。 図17(a)および図17(b)は、実施例1の変形例2および3に係る弾性表面波共振器の断面図である。 図18(a)および図18(b)は、実施例1の変形例4および5に係る弾性表面波共振器の断面図である。 図19(a)は、実施例2に係るフィルタの平面図、図19(b)は、図19(a)のA−A断面図である。 図20は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
図1(a)は、比較例および実施例に係る弾性波共振器の平面図、図1(b)および図1(c)は、図1(a)のB−B断面図およびC−C断面図である。図1(a)において、酸化シリコン膜、誘電体膜および質量負荷膜は図示を省略している。図1(c)において、誘電体膜の図示を省略している。弾性波の伝搬方向(すなわち電極指の配列方向)をX方向、電極指の延伸方向をY方向、圧電基板の上面の法線方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、圧電基板10の結晶方位のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向とは必ずしも対応しない。
図1(a)から図1(c)に示すように、圧電基板10上にIDT24および反射器26が形成されている。IDT24および反射器26は、圧電基板10に形成された金属膜12により形成される。IDT24は、対向する一対の櫛歯電極20を備える。櫛歯電極20は、複数の電極指21(櫛歯)と、複数の電極指21が接続されたバスバー22を備える。一対の櫛歯電極20は、少なくとも一部において電極指21がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。
一対の櫛歯電極20の電極指21が交差する領域が交差領域50である。交差領域50において電極指21が励振する弾性波は、主に電極指21の配列方向(X方向)に伝搬する。同じ櫛歯電極20における電極指21のピッチλがほぼ弾性波の波長となる。交差領域50のうち電極指21が延伸するY方向の中央が中央領域52である。中央領域52の両端に設けられた領域がエッジ領域54である。一方の櫛歯電極20の電極指21の先端と他方の櫛歯電極20のバスバー22との間の領域がギャップ領域56である。ダミー電極指が設けられている場合、ギャップ領域は電極指の先端とダミー電極指の先端の間の領域である。バスバー22の領域がバスバー領域58である。
圧電基板10上に電極指21を覆うように酸化シリコン膜14が設けられている。酸化シリコン膜14の上面は、特性向上のためエッチバックまたはCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化されている。
酸化シリコン膜14上に質量負荷膜16が設けられている。エッジ領域54に設けられた質量負荷膜16は中央領域52に設けられた質量負荷膜16より厚い。これにより、ピストンモード特性を実現でき、横モードスプリアスを抑制できる。バスバー領域58の少なくとも一部の質量負荷膜16を中央領域52の質量負荷膜16より厚くすることで、横モードスプリアスをより抑制できる。
圧電基板10は、回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。ニオブ酸リチウム基板は、回転Yカット角が127.86°においてレイリー波の電気機械結合係数が最大となる。Campbell&Jones法を用いシミュレーションすると、回転Yカット角が120°から140°の範囲ではレイリー波の電気機械結合係数はSH波(リーキー波)の電気機械結合係数より大きくなる。よって、レイリー波が主モードとなり、SH波は不要波となる。レイリー波を主モードとする場合、回転Yカット角は120°以上かつ140°以下が好ましい。また、127.86°に対し製造上のばらつきを考慮し、回転Yカット角は126°以上かつ130°以下が好ましい。
金属膜12は、例えば銅を主成分とする膜である。酸化シリコン膜14は、温度補償膜であり、弗素等の元素が添加されている。酸化シリコン膜14の弾性率の温度係数は正であり、圧電基板10の弾性率の温度係数と逆符号である。これにより、共振周波数等のTCFの絶対値を小さくできる。
質量負荷膜16は、例えば弾性表面波の音速より横波音速が遅い材料からなる。質量負荷膜16は、例えば酸化タンタル(TaまたはTaO)膜または酸化ニオブ(NbまたはNbO)膜、酸化テルル、酸化タングステン膜、酸化チタン膜または弗素元素を添加した酸化シリコン等の絶縁膜または金属膜を用いることができる。質量負荷膜16の密度は誘電体膜15より大きいことが好ましい。これにより、質量負荷膜16を薄くできる。
[実験1]
酸化シリコン膜14に弗素元素を添加すると、酸化シリコン膜14の弾性率の温度係数をより大きくできる。これにより、温度補償性能を向上させることができる。このため、弗素元素を添加した酸化シリコン膜14を用いると、無添加の酸化シリコン膜14に比べ薄くても同等のTCFを実現できる。酸化シリコン膜14をスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)または真空蒸着法を用い形成すると、粘性損失が大きくなる。このため、酸化シリコン膜14が厚くなると、弾性波の損失が大きくなり、フィルタの損失が大きくなる。弗素元素を添加した酸化シリコン膜14を用いると、小さい膜厚で同程度の温度特性を実現できるため、弾性波の損失を抑制できる。
レイリー波を主モードとする弾性表面波共振器に弗素元素を添加した酸化シリコン膜14を用いたサンプルを作製した。図2は、比較例における弾性表面波共振器の断面図であり、図1(a)のA−A断面図である。図2に示すように、圧電基板10上に電極指21が設けられている。電極指21は、圧電基板10側からRu(ルテニウム)膜12a、Cu(銅)膜12bおよびCr(クロム)膜12cが積層された金属膜12より形成されている。金属膜12を覆うように保護膜18が設けられている。保護膜18は銅の酸化シリコン膜14への拡散を抑制するための膜である。保護膜18を覆うように酸化シリコン膜14が設けられている。酸化シリコン膜14上に質量負荷膜16が設けられている。
その他の作製条件は以下である。
IDT24:アポタイズ型
ピッチλ:2μm
電極指21対数:55対
開口長:34λ
圧電基板10:127°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板
Ru膜12aの膜厚:0.005λ(10nm)
Cu膜12bの膜厚:0.0655λ(131nm)
Cr膜12cの膜厚:0.0045λ(9nm)
保護膜18:膜厚が0.01λ(20nm)の窒化シリコン膜
酸化シリコン膜14:電極指21上の膜厚は0.225λ(450nm)
質量負荷膜16:膜厚が0.0035λ(7nm)の酸化ニオブ
ピストンモード構造でなく、質量負荷膜16の膜厚は一様である。
酸化シリコン膜14の弗素濃度(弗素元素の濃度)は以下とした。
比較例1:0.0原子%
比較例2:1.7原子%
比較例3:3.0原子%
比較例4:4.9原子%
比較例1の酸化シリコン膜14は弗素元素を添加していない。比較例1では、SH不要波が抑制されるように、圧電基板10のYカット角および電極指21の構造を最適化している。
図3は、実験1の各特性を示す図である。F濃度は酸化シリコン膜14内の弗素濃度、frは共振周波数、kは電気気化器結合係数、SBWはストップバンド幅、Qaveは共振周波数frと反共振周波数faとの間のQ値の平均値、ΔQaveは比較例1との差、ΔTCF(fa)は反共振周波数faの周波数温度係数の比較例1との差である。弗素濃度は、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)のSi−Fピークにより同定した。比較例4のQaveはスプリアスが大きいため算出しなかった。
図3に示すように、弗素濃度を高くすると、ΔTCF(fa)が大きくなる。比較例1のTCF(fa)は約−20ppm/℃であり、弗素濃度を4.9原子%とすると酸化シリコン膜14を薄くしてもΔTCF(fa)をほぼ0にできる。Q値は弗素濃度が高くなると若干高くなる。弗素濃度を高くすると酸化シリコン膜14を薄くできるため、粘性損失による損失を低下できる。よって、より低損失が可能となる。しかしながら、電気機械結合係数kおよびストップバンド幅SBWが小さくなる。kおよびSBWが小さくなると広帯域のフィルタの設計が難しくなる。
図4(a)および図4(b)は、実験1における反射特性のスミスチャートおよび周波数に対するQ値を示す図である。図4(a)に示すように、酸化シリコン膜14に弗素元素を添加していない比較例1ではスプリアスがほとんど観察されない。これは、SH波起因のスプリアスを抑制できるように圧電基板10のYカット角および電極指21の構造を最適化しているためである。弗素濃度が3.0原子%の比較例3では小さなスプリアス60が生じる。弗素濃度が4.9原子%の比較例4では、大きなスプリアス60が生じる。アポタイズ型では、ピストンモード構造としなくとも横モードスプリアスは抑制される。図4(a)のスプリアス60はSH波によるものである。
図4(b)に示すように、比較例1から3のQ値は同程度である。なお、比較例4はスプリアスが大きいため図示していない。
実験1では、酸化シリコン膜14に弗素元素を添加することにより、薄い酸化シリコン膜14により温度補償効果が得られる。また、Q値が同等もしくは向上する。しかしながら、電気機械結合係数kおよびストップバンド幅SBWが小さくなる。また、SH波に起因したスプリアスが大きくなる。
SH波に起因したスプリアスは、酸化シリコン膜14の膜厚、電極指21の構造および圧電基板10のYカット角に依存する。よって、これらを最適化することでSH波スプリアスを小さくできる。実験1では、比較例1においてSH波スプリアスが小さくなるように最適化されている。酸化シリコン膜14に弗素元素を添加すると、酸化シリコン膜14のヤング率および密度等の音響特性が変化する。これにより、比較例2から4では、SH波を小さくする最適条件が比較例1からシフトしたと考えられる。特に、弗素濃度が3原子%以上となるとSH波のスプリアスが大きくなる。
表1は、酸化シリコン膜14の弗素濃度が0.0原子%、1.7原子%、3.0原子%および4.9原子%のときのヤング率、密度、音響インピーダンスおよび横波音速を示す表である。
Figure 2019068309
図5は、酸化シリコン膜の弗素濃度に対する音響インピーダンスおよび横波音速を示す図である。表1および図5に示すように、酸化シリコン膜14内の弗素濃度が高くなると、ヤング率、密度、音響インピーダンスおよび横波音速が小さくなる。
そこで、酸化シリコン膜14に弗素元素を3原子%以上添加した場合にSH波に起因したスプリアスを抑制するように電極指21の電極構造および圧電基板10のYカット角を最適化した。
[実験2]
実験2では、酸化シリコン膜14の弗素濃度を3原子%とし、SH波に起因したスプリアスが小さくなるように、圧電基板10のYカット角および電極構造を最適化した。
作製条件は以下である。
IDT24:正規型
ピッチλ:2μm
電極指21対数:100対
開口長:20λ
圧電基板10:回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板
Ru膜12aの膜厚:0.005λ(10nm)
Cu膜12bの膜厚:図6
Cr膜12cの膜厚:0.0045λ(9nm)
保護膜18:膜厚が0.01λ(20nm)の窒化シリコン膜
酸化シリコン膜14:電極指21上の膜厚は0.225λ(450nm)
質量負荷膜16:酸化タンタル、中央領域52の膜厚が0.0015λ(3nm)、エッジ領域54の膜厚が0.0135λ(27nm)のピストンモード構造
エッジ領域54幅:0.7λ(1.4μm)
無添加の酸化シリコン膜14を比較例5とした。比較例6から8は酸化シリコン膜14の弗素濃度を3原子%とした。比較例5から8のYカット角を以下とし、Cu膜12bの膜厚をSH不要波が発生しないように薄くした。
比較例5:Yカット角:127°、Cu膜厚:0.0655λ(131nm)
比較例6:Yカット角:127.86°、Cu膜厚:0.055λ(110nm)
比較例7:Yカット角:129°、Cu膜厚:0.06λ(120nm)
比較例8:Yカット角:130°、Cu膜厚:0.0655λ(131nm)
図6は、実験2の各特性を示す図である。ΔQaveは比較例5との差、ΔTCF(fa)は反共振周波数faの周波数温度係数の比較例5との差である。その他の項目は図3と同じである。
図7(a)および図7(b)は、実験2における反射特性のスミスチャートおよび周波数に対するQ値を示す図である。図7(a)に示すように、比較例6から8では、範囲61のようにSH波スプリアスおよび範囲62のように横モードスプリアスが抑制されている。SH波スプリアスが抑制されているのは、Yカット角およびCu膜厚をSH不要波が抑制できるように最適化したためである。横モードスプリアスが抑制されているのは、ピストンモード構造としたためである。このように、比較例6−8では、比較例5と同様にスプリアスが抑制されている。図7(b)に示すように、比較例8は比較例5に比べQ値は同程度である。
図6のように、比較例6から8では、ΔTCF(fa)は10.7ppm/℃から12.7ppm/℃であり、比較例5に比べTCFが改善する。比較例5のTCFは−20ppm/℃であり、比較例6−8ではTCFを半分以下にできる。比較例6は比較例5に比べQ値およびストップバンド幅SBWが小さい。これは、Cu膜厚が小さくなったためと考えられる。比較例7は比較例5と比べQ値が同程度であるがストップバンド幅SBWは小さい。
図6および図7(b)のように、比較例8は比較例5に比べ、電気機械結合係数k、Q値、ストップバンド幅SBWおよびスプリアスを同程度とできる。これは、比較例8のCu膜12bの膜厚が比較例5と同程度のためと考えられる。
実験2によれば、酸化シリコン膜14に弗素濃度を3原子%として、Yカット角およびCu膜厚をSH不要波が抑制できるように最適化する。これにより、電気機械結合係数k、Q値、ストップバンド幅SBWおよびスプリアスを、比較例5と同程度にでき、かつTCFを改善できる。
[実験3]
実験2よりさらに酸化シリコン膜14の弗素濃度が4.9原子%のときに、実験2と同様に、特性が弗素を添加しない比較例5と同等でTCFを小さくできないか検討した。
作製条件は以下である。
IDT24:正規型
ピッチλ:2μm
電極指21対数:100対
開口長:20λ
圧電基板10:回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板
Ru膜12aの膜厚:0.005λ(10nm)
Cu膜12bの膜厚:図8
Cr膜12cの膜厚:0.0045λ(9nm)
保護膜18:膜厚が0.01λ(20nm)の窒化シリコン膜
酸化シリコン膜14:電極指21上の膜厚は図8
質量負荷膜16:酸化タンタル、中央領域52の膜厚が0.0015λ(3nm)、エッジ領域54の膜厚が0.0135λ(27nm)のピストンモード構造
エッジ領域54幅:0.7λ(1.4μm)
比較例9では、TCFをより小さくするため、酸化シリコン膜14の弗素濃度を4.9原子%とした。SH不要波を抑制するためYカット角を130°、Cu膜12bを0.045λとした。さらに、酸化シリコン膜14による粘性損失を抑制するため、酸化シリコン膜14の膜厚を0.15λとした。
図8は、実験3の各特性を示す図である。各項目は図6と同じである。図9(a)および図9(b)は、実験3における反射特性のスミスチャートおよび周波数に対するQ値を示す図である。図9(a)に示すように、比較例9では、酸化シリコン膜14に弗素元素を4.9原子%添加しても比較例5と同様に、範囲61のようにSH波に起因したスプリアスは抑制され、範囲62のように横モードスプリアスは抑制されている。SH波スプリアスが抑制されているのは、Yカット角およびCu膜厚をSH不要波が抑制できるように最適化したためである。図9(b)に示すように、比較例9は比較例5に比べ矢印63aのようにQ値が低下し、矢印63bのようにストップバンド幅は60MHz狭くなっている。
図8のように、比較例9では、酸化シリコン膜14を33%薄くしてもΔTCF(fa)が14.1ppm/℃と大きい。これにより、比較例9では比較例6から8よりTCFをより改善できる。電気機械結合係数kも比較例5より約1%大きくなった。一方、Q値は比較例5より約300低下した。これは、Cu膜12bが薄くなり電極指21の直列抵抗が増加したためと考えられる。さらに、電極指21が薄くなり弾性表面波の反射率が低下したため、ストップバンド幅SBWが約60MHz狭くなっている。SBWが狭くなったことにより、反射器26からの弾性波の漏れが増加しQ値がより低下したと考えられる。
実験3では、よりTCFを改善するため、酸化シリコン膜14の弗素濃度を高くし、SH不要波を抑制するため、Yカット角を130°およびCu膜12bの膜厚を0.045λ(90nm)とした。その結果、TCFは改善し、SH波スプリアスは抑制された。しかし、Cu膜12bが薄くなったためQ値およびストップバンド幅SBWが劣化した。
[シミュレーション1]
実験3の比較例9からCu膜12bの膜厚を比較例5と同程度の0.065λ(130nm)とし、Ru膜12aの膜厚および酸化シリコン膜14の膜厚を変化させた。Ru膜12aは音響インピーダンスが高いため、厚くすることでストップバンド幅SBWが大きくなることが期待できる。反共振周波数における音速の温度依存係数(TCV:Temperature Coefficient of Velocity)TCV(fa)、レイリー波の電気機械結合係数k、ストップバンド幅SBWおよびSH波の電気機械結合係数kを有限要素法を用いシミュレーションした。ΔTCV(fa)は、比較例5との差であり、ΔTCF(fa)に相当する。ストップバンド幅SBW[%]は、SBW[MHz]を共振周波数fr[MHz]と反共振周波数fa[MHz]の平均値で規格化し百分率(%)で表したものであり、以下の式で算出した。
SBW[%]=SBW[MHz]/((fr+fa)/2)×100 [%]
シミュレーション条件は以下である。
ピッチλ:2μm
圧電基板10:130°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板
Cu膜12bの膜厚:0.065λ(130nm)
Cr膜12cの膜厚:0.0045λ(9nm)
保護膜18:膜厚が0.01λ(20nm)の窒化シリコン膜
酸化シリコン膜14の弗素濃度:4.9原子%
質量負荷膜16:無
図10(a)から図11(b)は、シミュレーション1におけるRu膜の膜厚に対するΔTCV(fa)、レイリー波のk、SBWおよびSH波のkを示す図である。各図の破線64は、目標を示している。
図10(a)に示すように、Ru膜12aの膜厚(Ru膜厚)が小さくなるとΔTCV(fa)は大きくなる。酸化シリコン膜14の膜厚(SiOF膜厚)が大きくなるとΔTCV(fa)は大きくなる。破線64のように、比較例5よりTCV(fa)を10ppm/℃以上改善することが目標である。酸化シリコン膜14の膜厚を350nm(0.175λ)以上とすると、ΔTCV(fa)を10ppm/℃以上にできる。
図10(b)に示すように、Ru膜厚が大きくなるとレイリー波のkは大きくなる。SiOF膜厚が小さくなるとレイリー波のkは大きくなる。Ru膜厚が10nm(0.005λ)以上、SiOF膜厚が300nm(0.15λ)以上でレイリー波のkは目標の8.9%以上となる。
図11(a)に示すように、Ru膜厚が大きくなるとSBW(ストップバンド幅)は大きくなる。Ru膜厚が約25nm(0.0125λ)以上でSBWは目標の8.7%以上となる。
図11(b)に示すように、Ru膜厚が大きくなるとSH波のkは大きくなる。SiOF膜厚が小さくなるとSH波のkは大きくなる。SH波スプリアスを抑制するためには、SH波のkの目標は0.1%以下、好ましくは0.006%以下である。SH波のkの目標を0.006%以下とすると、全ての条件で満足していない。
シミュレーション1のように、TCFを改善するため酸化シリコン膜14の弗素濃度を4.9%とし、Q値およびSBWを低下させないためCu膜12bの膜厚を130nm(0.065λ)とし、SH不要波を抑制しやすいようにYカット角を130°とした。Ru膜12aの膜厚および酸化シリコン膜14の膜厚を変化させた。しかし、Ru膜12aの膜厚を大きくすると、ストップバンド幅SBWは大きくなるが、SH波のkが大きくなりSH波スプリアスを抑制できない。酸化シリコン膜14の膜厚を小さくすると、SH波のkを小さくできるが、ΔTCV(fa)は小さくなる。また、レイリー波のkが小さくなる。このように、全てを満足することはできない。
図12(a)および図12(b)は、実施例1およびその変形例1に係る弾性波共振器の断面図であり、図1(a)のA−A断面図に相当する。図12(a)に示すように、酸化シリコン膜14と質量負荷膜16との間に誘電体膜15が設けられている。図12(b)に示すように、保護膜18と酸化シリコン膜14との間に誘電体膜15が設けられている。その他の構成は図1(a)から図2と同じであり説明を省略する。
実験3およびシミュレーション1において、酸化シリコン膜14の弗素濃度を4.9原子%とすると、SH波スプリアスの抑制と特性とを満足できない理由は、表1および図5のように、酸化シリコン膜14に弗素元素を添加すると、音響インピーダンスが低くなり、かつ横波音速が遅くなるためと考えられる。そこで、図12(a)の実施例1のように、弗素元素を添加した酸化シリコン膜14上に音響インピーダンスが高くかつ音速の速い誘電体膜15を設ける。図12(b)の実施例1の変形例1のように、保護膜18と弗素元素を添加した酸化シリコン膜14との間に誘電体膜15を設ける。これにより、弗素元素を添加していない酸化シリコン膜14と同程度にSH波スプリアスの抑制と特性との両方を満足できるのではないかと考えた。
表2は、各種誘電体材料のヤング率、密度、音響インピーダンスおよび横波音速を示す表である。
Figure 2019068309
表2に示すように、炭化シリコン(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化シリコン(SiN)、酸化ニオブ(NbO)、酸化タンタル(TaO)および酸化タングステン(WO)は、酸化シリコン(SiO)より音響インピーダンスが大きい。SiC、AlN、AlおよびSiNはSiOより横波音速が速い。NbO、TaOおよびWOは、酸化シリコンSiOより横波音速が遅い。
表3は、弗素濃度が4.9原子%の酸化シリコン膜14の膜厚を0.225λとし、誘電体膜15の膜厚を表3としたときの等価音響インピーダンスおよび等価横波音速を示す図である。
Figure 2019068309
等価音響インピーダンスZEQおよび等価横波音速VEQは、弗素元素を添加した酸化シリコン膜14の音響インピーダンス、横波音速および膜厚をそれぞれZ、Vおよびtとし、誘電体膜15の音響インピーダンス、横波音速および膜厚をZ、Vおよびtとしたとき、それぞれ以下の式で表される。
EQ={(t×Z)+(t×Z)}/(t+t
EQ={(t×V)+(t×V)}/(t+t
表3に示すように、SiC、AlN、AlおよびSiNでは等価音響インピーダンスZEQをSiOの音響インピーダンスと同程度とする。このとき、等価横波音速VEQとSiOの横波音速との差は、10%以下である。一方、NbO、TaOおよびWOでは、等価音響インピーダンスZEQをSiOと同程度とすると、等価横波音速VEQはSiOの横波音速より10%以上遅くなる。このように、誘電体膜15としては、SiC、AlN、AlおよびSiNが好ましい。SiOより音響インピーダンスが高く音速が速い材料として、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボンまたは酸化亜鉛(ZnO)を用いてもよい。
[シミュレーション2]
そこで、実施例1の図12(a)の構造において、誘電体膜15をSiC、AlN、AlおよびSiNとし、誘電体膜15の膜厚を変え、有限要素法を用いシミュレーションを行った。
シミュレーション条件は以下である。
ピッチλ:2μm
圧電基板10:130°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板
Ru膜12aの膜厚:0.00125(25nm)
Cu膜12bの膜厚:0.065λ(130nm)
Cr膜12cの膜厚:0.0045λ(9nm)
保護膜18:膜厚が0.01λ(20nm)の窒化シリコン膜
酸化シリコン膜14の弗素濃度:4.9原子%
酸化シリコン膜14の膜厚:0.225λ(450nm)
誘電体膜15:表3の膜厚
質量負荷膜16:無
誘電体膜15の膜厚は酸化シリコン膜14の膜厚より十分小さいため、シミュレーション2では誘電体膜15の弾性率の温度係数は考慮していない。
図13(a)から図14(b)は、シミュレーション2における誘電体膜の膜厚に対するΔTCV(fa)、レイリー波のk、SBWおよびSH波のkを示す図である。各図の破線64は、目標を示している。破線65aから65cは、図14(b)において、SH波のkが最も小さくなる誘電体膜15の膜厚である。破線65aはSiC、破線65bはAlNおよびAl、破線65cはSiNに対応する。
図13(a)に示すように、いずれの誘電体膜15においてもΔTCV(fa)は目標である10ppm/℃より大きい。図13(b)に示すように、誘電体膜15の膜厚が大きくなるとレイリー波のkは小さくなる。誘電体膜15の膜厚が約40nm以下のとき、レイリー波のkは目標である8.9%以上となる。図14(a)に示すように、誘電体膜15の膜厚が約80nm以下では、ストップバンド幅SBWは目標である8.7%以上となる。
図14(b)に示すように、誘電体膜15がSiC膜では、誘電体膜15の膜厚が約32nmのときにSH波のkは目標より小さくなる。誘電体膜15がAlN膜またはAl膜では、誘電体膜15の膜厚が約48nmのときにSH波のkは目標より小さくなる。誘電体膜15がSiN膜では、誘電体膜15の膜厚が約95nmのときにSH波のkは目標より小さくなる。
図13(a)から図14(b)のように、誘電体膜15がSiC膜のとき、誘電体膜15の膜厚を約32nmとすると、ΔTCV(fa)、レイリー波のk、ストップバンド幅SBWおよびSH波のkは目標より改善する。誘電体膜15がAlN膜またはAl膜のとき、誘電体膜15の膜厚を約48nmとすると、ΔTCV(fa)、ストップバンド幅SBWおよびSH波のkは目標より改善する。レイリー波のkは目標程度である。誘電体膜15がSiN膜のとき、誘電体膜15の膜厚を約95nmとすると、ΔTCV(fa)およびSH波のkは目標より改善する。レイリー波のkおよびストップバンド幅SBWは目標よりやや悪くなる。
[シミュレーション3]
実施例1の変形例1の図12(b)の構造において、誘電体膜15をSiC、AlN、AlおよびSiNとし、誘電体膜15の膜厚を変え、有限要素法を用いシミュレーションを行った。
シミュレーション条件は誘電体膜15が保護膜18と酸化シリコン膜14との間に設けられている以外はシミュレーション2と同じである。
図15(a)から図16(b)は、シミュレーション3における誘電体膜の膜厚に対するΔTCV(fa)、レイリー波のk、SBWおよびSH波のkを示す図である。各図の破線64は、目標を示している。破線65aから65cは、図16(b)において、SH波のkが最も小さくなる誘電体膜15の膜厚である。破線65aはSiC、破線65bはAlNおよびAl、破線65cはSiNに対応する。
図15(a)に示すように、いずれの誘電体膜15においてもΔTCV(fa)は目標である10ppm/℃より大きい。図15(b)に示すように、誘電体膜15の膜厚が大きくなるとレイリー波のkは小さくなる。誘電体膜15の膜厚が約80nm以下のとき、レイリー波のkは目標である8.9%以上となる。図16(a)に示すように、誘電体膜15の膜厚が約60nm以下では、ストップバンド幅SBWは目標である8.7%以上となる。
図16(b)に示すように、誘電体膜15がSiC膜では、誘電体膜15の膜厚が約10nmのときにSH波のkは目標より小さくなる。誘電体膜15がAlN膜またはAl膜では、誘電体膜15の膜厚が約28nmのときにSH波のkは目標より小さくなる。誘電体膜15がSiN膜では、誘電体膜15の膜厚が約90nmのときにSH波のkは目標より小さくなる。
図15(a)から図16(b)のように、誘電体膜15がSiC膜のとき、誘電体膜15の膜厚を約10nmとすると、ΔTCV(fa)、レイリー波のkおよびSH波のkは目標より改善する。ストップバンド幅SBWは目標程度である。誘電体膜15がAlN膜またはAl膜のとき、誘電体膜15の膜厚を約28nmとすると、ΔTCV(fa)、レイリー波のkおよびSH波のkは目標より改善する。ストップバンド幅SBWは目標程度である。誘電体膜15がSiN膜のとき、誘電体膜15の膜厚を約90nmとすると、ΔTCV(fa)およびSH波のkは目標より改善する。レイリー波のkはほぼ目標であり、ストップバンド幅SBWは目標よりやや悪くなる。
シミュレーション2および3のように、実施例1およびその変形例1では、誘電体膜15を設けることで、周波数温度係数を0の絶対値を小さくし、SH波スプリアスを抑制し、かつ特性の劣化を抑制できる。
[実施例1の変形例]
図17(a)から図18(b)は、実施例1の変形例2から5に係る弾性表面波共振器の断面図である。図17(a)に示すように、誘電体膜15は酸化シリコン膜14内に挿入されていてもよい。図17(b)に示すように、誘電体膜15は、酸化シリコン膜14内に複数層挿入されていてもよい。すなわち、誘電体膜15と酸化シリコン膜14とが交互に設けられていてもよい。図18(a)に示すように、誘電体膜15は、電極指21に対応する凹凸を有してもよい。図18(b)に示すように、誘電体膜15は、電極指21と酸化シリコン膜14の間、酸化シリコン膜14内および酸化シリコン膜14上に設けられていてもよい。
図17(b)から図18(b)のように、誘電体膜15を複数層設けると、酸化シリコン膜14内の音響特性の偏りが小さくなる。これにより、酸化シリコン膜14内を伝搬する弾性波の損失を抑制できる。
実施例1およびその変形例によれば、圧電基板10は、カット角が120°以上140°以下の範囲にある回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。これにより、圧電基板10上に設けられたIDT24は、弾性波としてレイリー波を励振する。酸化シリコン膜14は、弗素元素を含み、IDT24を覆うように圧電基板10上に設けられている。これにより、TCFを0に近づけることができる。しかし、酸化シリコン膜14に弗素元素を添加すると、SH波スプリアスが発生しかつ特性が劣化する。
そこで、酸化シリコン膜14の音響インピーダンスより高い音響インピーダンスおよび酸化シリコン膜14の音速より速い音速を有する1または複数の誘電体膜15を、IDT24と酸化シリコン膜14との間、酸化シリコン膜14内、および酸化シリコン膜14上の少なくとも一か所に、平面視においてIDT24の少なくとも一部に重なるように設ける。これにより、TCFを0に近づけることができ、かつSH波スプリアスおよび特性の劣化を抑制できる。
実験1から3およびシミュレーション1のように、酸化シリコン膜14の弗素元素の濃度が3原子%以上となると、Yカット角および電極指構造の調整では、SH波スプリアスおよび特性の劣化を抑制することが難しい。よって、誘電体膜15を設けることが好ましい。酸化シリコン膜14の弗素元素の濃度は4.9原子%以上であることが好ましく、7原子%以上がより好ましい。酸化シリコン膜14の弗素元素の濃度は20原子%以下が好ましく、15原子%以下がより好ましい。
圧電基板10として、カット角が120°以上140°以下の範囲にある回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板を例に説明したが、IDT24が弾性波としてレイリー波を励振するような圧電基板10であればよい。
誘電体膜15の音響インピーダンスは、弗素等の元素を添加していない酸化シリコン(SiO)の音響インピーダンスより高く、かつ誘電体膜15の音速は、弗素等の元素を添加していない酸化シリコン(SiO)の音速より速いことが好ましい。
シミュレーション2および3のように、誘電体膜15としては、窒化シリコン膜より、炭化シリコン膜、窒化アルミニウム膜または酸化アルミニウム膜が好ましい。表2を参照すると、SiNが含まれず、SiC、AlNおよびAlが含まれる、誘電体膜15の音響インピーダンスの範囲としては、弗素等の元素を添加していない酸化シリコン(SiO)の音響インピーダンスの1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。また、誘電体膜15の音速は、弗素等の元素を添加していない酸化シリコン(SiO)の音速ンピーダンスの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。
誘電体膜15が厚くなると、誘電体膜15の弾性率の温度係数の影響が大きくなる。よって、誘電体膜15の膜厚は酸化シリコン膜14の膜厚より小さいことが好ましく、酸化シリコン膜14の膜厚の1/3以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましい。
酸化シリコン膜14および誘電体膜15の等価音響インピーダンスZEQを無添加の酸化シリコン膜の音響インピーダンスと同程度とする。これにより、無添加の酸化シリコン膜において、SH波スプリアスと特性とを最適化した構造を用いTCFをより小さくできる。
図17(b)から図18(b)のように、誘電体膜15を複数設けることにより、酸化シリコン膜14内の音響特性の偏りを小さくできる。
酸化シリコン膜14上に、酸化シリコン膜14の音速より遅い音速を有する質量負荷膜16を設ける。例えば、図1(c)のように、エッジ領域54の質量負荷膜16を中央領域52の質量負荷膜16より厚くする。これにより、ピストンモードを実現できる。
実施例2は、実施例1およびその変形例の弾性波共振器を用いたフィルタおよびデュプレクサの例である。図19(a)は、実施例2に係るフィルタの平面図、図19(b)は、図19(a)のA−A断面図である。図19(a)および図19(b)に示すように、圧電基板10上に、弾性表面波共振器30、配線32およびパッド34が設けられている。弾性表面波共振器30は、IDT24および反射器26を有する。配線32は、弾性表面波共振器同士を電気的に接続し、弾性表面波共振器30とパッド34とを電気的に接続する。パッド34にはバンプ36が設けられている。弾性表面波共振器30上には酸化シリコン膜14、誘電体膜15および質量負荷膜16が設けられている。
弾性表面波共振器30は、直列共振器S1からS3並びに並列共振器P1およびP2を含む。パッド34は信号端子T1およびT2並びにグランド端子Tgを含む。信号端子T1とT2との間に直列共振器S1からS3が直列に、並列共振器P1およびP2が並列に接続されている。1または複数の直列共振器S1からS3および1または複数の並列共振器P1およびP2の少なくとも1つに実施例1およびその変形例の弾性表面波共振器30を用いることができる。ラダー型フィルタの共振器の個数等は適宜設定できる。また、多重モードフィルタに実施例1およびその変形例の弾性表面波共振器を用いてもよい。
酸化シリコン膜14の膜厚が同じ場合、通過帯域の低周波側の肩は高周波側の肩とで温度特性が異なる。レイリー波を用いたラダー型フィルタでは、低周波側の肩のTCFは高周波側の肩のTCFより5〜10ppm/℃マイナスとなる。このため、高周波側の肩のTCFを0付近としても低周波側の肩のTCFは−10ppm/℃となってしまう。そこで、図19(b)のように、並列共振器P1およびP2の酸化シリコン膜14を直列共振器S1からS3の酸化シリコン膜14より厚くする。これにより、高周波側および低周波側の肩のTCFをともに0付近とする。さらに、並列共振器P1およびP2の誘電体膜15を直列共振器S1からS3の誘電体膜15より薄くする。これにより、並列共振器P1およびP2並びに直列共振器S1からS3ともにSH波スプリアスを抑制できる。
図20は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。図20に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
フィルタは実施例1およびその変形例の弾性波共振器を含む。これにより、TCFが小さく、SH波スプリアスに起因したリップルを抑制でき、かつフィルタ特性の劣化を抑制できる。また、送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方を実施例1およびその変形例の弾性波共振器を含むフィルタとすることができる。マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10 圧電基板
12 金属膜
14 酸化シリコン膜
15 誘電体膜
16 質量負荷膜
18 保護膜
21 電極指
24 IDT
26 反射器
30 弾性表面波共振器
40 送信フィルタ
42 受信フィルタ

Claims (10)

  1. カット角が120°以上140°以下の範囲にある回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である圧電基板と、
    前記圧電基板上に設けられ、弾性波を励振するIDTと、
    前記IDTを覆うように前記圧電基板上に設けられた弗素元素を含む酸化シリコン膜と、
    前記IDTと前記酸化シリコン膜との間、前記酸化シリコン膜内、および前記酸化シリコン膜上の少なくとも一か所に、平面視において前記IDTの少なくとも一部に重なり設けられ、前記酸化シリコン膜の音響インピーダンスより高い音響インピーダンスおよび前記酸化シリコン膜の音速より速い音速を有する1または複数の誘電体膜と、
    を備える弾性波デバイス。
  2. 前記酸化シリコン膜の弗素元素の濃度は3原子%以上である請求項1に記載の弾性波デバイス。
  3. 前記酸化シリコン膜の弗素元素の濃度は4.9原子%以上である請求項1に記載の弾性波デバイス。
  4. 圧電基板と、
    前記圧電基板上に設けられ、弾性波としてレイリー波を励振するIDTと、
    前記IDTを覆うように前記圧電基板上に設けられた弗素元素を含む酸化シリコン膜と、
    前記IDTと前記酸化シリコン膜との間、前記酸化シリコン膜内、および前記酸化シリコン膜上の少なくとも一か所に、平面視において前記IDTの少なくとも一部に重なり設けられ、前記酸化シリコン膜の音響インピーダンスより高い音響インピーダンスおよび前記酸化シリコン膜の音速より速い音速を有する1または複数の絶縁膜と、
    を備える弾性波デバイス。
  5. 前記誘電体膜は、炭化シリコン膜、窒化アルミニウム膜または酸化アルミニウム膜である請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  6. 前記誘電体膜の膜厚は前記酸化シリコン膜の膜厚より小さい請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  7. 前記誘電体膜は、複数設けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  8. 前記酸化シリコン膜上に設けられ、前記酸化シリコン膜の音速より遅い音速を有する質量負荷膜を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
  10. 請求項9に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
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