JP2019067625A - 二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、(COONa)3−トリオキソトリアンギュレン又は(COOLi)3−トリオキソトリアンギュレンをナトリウムイオン電池用活物質又はリチウムイオン電池用活物質とする技術が開示されている。
本開示は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本開示の目的は、添加剤を含まない活物質のみの電極層を用いて充放電可能な二次電池を提供することである。
(上記式(1)中、Xは水素、ハロゲンまたは1価の有機基から選ばれ、互いに同一でも異なっていても良い。また、上記式(1)中、実線及び破線からなる二重線は非局在化した二重結合を表しており、黒丸で示される不対電子は、この非局在化した二重結合中に存在する。)
本開示においては、下記式(1)に示されるTOT化合物の薄膜が、電極層(正極及び負極のうち少なくともいずれか1つ)に含まれる。TOT化合物の薄膜は、正極側の活物質層(正極活物質層)として含まれていてもよいし、後述するように、負極側の活物質層(負極活物質層)として含まれていてもよい。
基材は、積層体の積層方向、すなわち、正極、電解質層及び負極が積み重なる方向に対し、垂直な面方向を有していてもよい。この場合、基材上に成膜されたTOT化合物薄膜の膜厚方向は、積層体の積層方向に平行となる。
基材は、二次電池1つにつき1つのみ含まれていてもよく、二次電池1つにつき2以上の基材が含まれていてもよい。二次電池中に2以上の基材が含まれる場合には、これらの基材の面方向は同一又は平行であることが好ましい。また、基材は、二次電池中の1つの部材のみに含まれていてもよく、二次電池中の異なる部材にそれぞれ含まれていてもよい。
図1に示す実施形態以外の例としては、固体電解質層を基材とし、固体電解質層の少なくとも一方の面上にTOT化合物を含む正極活物質層が形成されている例が挙げられる。
図4は、TOT化合物のπ平面が積層方向に平行となる二次電池の断面模式図である。図4中の積層体20は、TOT化合物2aの向き以外は、図1中の積層体10と同じ構成である。なお、図1及び図4において、TOT化合物2aを示す楕円の長径方向はπ平面方向を意味し、当該楕円の短径方向はπ平面に垂直な方向を意味するものとする。図4においては、当該楕円の長径方向が、正極2’、電解質層3及び負極1が積み重なる方向(積層方向)に平行であり、これは、TOT化合物2aのπ平面が積層体20の積層方向に対し平行であることを意味する。
積層体20は、正極活物質層2A’中に、π平面が積層方向に対し平行となるようにTOT化合物2aを含む。これは、TOT化合物2aのπ平面が、基材(正極集電体2B等)の面方向に対して垂直な配向であることを意味する。基材に対するこのような配向を、以下、edge−on配向という。
後述する実施例において示すように、このようなedge−on配向を有するTOT化合物2aの薄膜は、レート特性に劣り、かつエネルギー密度も低い(比較例1)。その理由は以下の通りである。TOT化合物は、そのπ平面に垂直な分子スタック方向の導電性に優れる一方、そのπ平面に平行な方向の導電性は劣る。このため、edge−on配向を有するTOT化合物薄膜は、その積層体の積層方向に平行な導電性に劣るため、レート特性に劣る。また、その導電性の低さのためにTOT化合物薄膜の膜厚を厚くできない結果、当該薄膜のエネルギー密度を高くすることは難しい。
積層体10は、正極活物質層2A中に、π平面が積層方向に対し垂直となるようにTOT化合物2aを含む。これは、TOT化合物2aのπ平面が、基材(正極集電体2B等)の面方向に対して平行な配向であることを意味する。基材に対するこのような配向を、以下、face−on配向という。
後述する実施例において示すように、このようなface−on配向を有するTOT化合物2aの薄膜は、レート特性に優れ、かつ高いエネルギー密度を有する(実施例1)。その理由の詳細は明らかではないが、おそらく、TOT化合物のπ平面同士の重なり合い(π−πスタッキング)を利用して、電子及びイオンがスムーズに導通することにより、正極活物質層2A中において優れたイオン伝導性と導電性が両立するためであると推測される。
二次電池においてレート特性を向上させるためには、活物質層中におけるイオン伝導性と導電性を両立させることが必要である。一般的に、芳香族化合物を含む薄膜において、π平面が薄膜の面方向に対し平行となるように当該芳香族化合物が配向した場合、当該薄膜は、膜厚方向におけるイオン伝導性に劣ると考えられている。しかし、このような従来の技術常識に反し、本研究者らは、上記式(1)に示されるTOT化合物のπ平面が、積層体の積層方向に対し垂直となる配向を有する薄膜を活物質層として用いることにより、優れたイオン伝導性と導電性を両立させることが可能なことを見出した。
TOT化合物のπ平面が積層体の積層方向に対し垂直となるように制御する方法は、特に限定されない。例えば、真空蒸着法によりTOT化合物の薄膜を基材表面に形成する場合には、TOT化合物のπ平面と相互作用が生じやすい基材を選ぶことにより、当該π平面を基材に対してface−on配向させることができる。
ここで、TOT化合物のπ平面と相互作用が生じやすい基材としては、例えば、グラファイトシートが挙げられる。真空蒸着の初期段階において、グラファイトシートの有する炭素六角網面の一部がTOT化合物のπ平面とπ−π相互作用を起こす結果、π平面の向きがグラファイトシートの面方向に平行となるようにTOT化合物が1分子蒸着する。その1分子の上から次々とTOT化合物分子が蒸着する結果、得られる薄膜は、π平面が積層体の積層方向に対し垂直となるようにTOT化合物が積み重なったものとなる。
グラファイトシート以外の基材としては、例えば、グラフェン膜、多層グラフェン膜、グラフェン膜又は多層グラフェン膜を表面に形成させたポリマーフィルム、グラフェン膜又は多層グラフェン膜を表面に形成させた金属箔等が挙げられる。
一方、TOT化合物のedge−on配向は、(c)In−Plane XRDスペクトルにおいてピークAが観測されることにより確認することができる。例えば、後述する図5C(In−Plane XRDスペクトル)においては、ピークAが観測される。ただし、後述するH3TOT中性ラジカル薄膜(比較製造例1)ではOut−of−Plane XRDスペクトルにおいてピークが観測されない(図5B参照)。したがって、当該薄膜における積層方向の周期性(結晶性)は低いものと考えられる。また、TOT化合物のface−on配向及びedge−on配向について、統一的な見解は得られていない。なお、H3TOTと基材との間の相互作用が弱い場合、得られるH3TOT中性ラジカル薄膜がedge−on配向となる傾向があるため、H3TOT中性ラジカル薄膜はface−on配向しにくい傾向があると考えられる。
導電化材の材料としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料を挙げることができる。さらに、炭素材料としては、具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブを挙げることができる。
バインダの材料としては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着剤、及び、スチレンブタジエンゴム等のゴム系結着剤等を挙げることができる。
固体電解質材料としては、所望のイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化物固体電解質材料、硫化物固体電解質材料を挙げることができる。なお、固体電解質材料の具体例として、後述する「3.電解質層」において述べる材料を採用できる。
本開示においては、TOT化合物の薄膜が負極活物質層であってもよい。この場合、TOT化合物の薄膜の特性やその配向性は、正極活物質がTOT化合物である場合と同様である。負極集電体が基材となり、TOT化合物の薄膜が負極集電体の少なくとも一方の面上に堆積していてもよい。負極集電体の材料としては、例えばステンレススチール、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン及びカーボン等を挙げることができる。また、固体電解質層が基材となり、TOT化合物の薄膜が固体電解質層の少なくとも一方の面上に堆積していてもよい。
一方、TOT化合物が正極活物質である場合、負極活物質として一般的な活物質を用いることができる。この場合、負極活物質として、上述したTOT化合物や正極活物質よりも電位が低い活物質を用いる必要がある。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、リチウム元素を含有する金属酸化物、リチウム元素を含有する金属硫化物、リチウム元素を含有する金属窒化物、リチウムイオンをドープした炭素材料を用いることが好ましい。
本開示における電解質層は、正極及び負極の間に存在する層である。電解質層に含まれる電解質を介して、正極活物質と負極活物質との間のイオン伝導が進行する。
電解質層は、それ自体が基材となっていてもよく、又は基材を備えていてもよい。電解質層自体が基材となる例としては、前記TOT化合物の薄膜が一方の面上に形成された固体電解質層が挙げられる。この場合、当該薄膜は正極活物質層又は負極活物質層として機能する。
電解質層の形態は、特に限定されるものではなく、液体電解質層、ゲル電解質層、固体電解質層等を挙げることができる。
本開示の二次電池は、正極及び負極の間に、セパレータを備えていても良い。より安全性の高い電池を得ることができるからである。
本開示の二次電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、二次電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、一般的な二次電池における製造方法と同様である。
[製造例1]
(1)トリオキソトリアンギュレン中性ラジカルの合成
容器に、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(1.61g)、及び溶媒としてジクロロメタン(120mL)を加えた。さらに、この容器に、トリオキソトリアンギュレン(H3TOT)のテトラブチルアンモニウム塩(2.00g)をジクロロメタン(120mL)に溶かした溶液を滴下し、室温で1時間攪拌した。容器中の析出物を吸引ろ過し、得られた固体を塩化メチレン及びテトラヒドロフランで洗浄した後、真空乾燥させた結果、トリオキソトリアンギュレン中性ラジカル(上記式(1)中のXがいずれも水素であるラジカル)が得られた(収量:1.00g)。以下、この中性ラジカルをH3TOT中性ラジカルという場合がある。
グラファイトシート(厚さ:25μm)をポリイミドテープでガラス板に貼り付け、このグラファイトシートを基材とした。
上記H3TOT中性ラジカル(109mg)を、直径10mmのアルミナるつぼに入れ、このアルミナるつぼを真空蒸着機内にセットした。また、グラファイトシート基材を、そのグラファイト面がアルミナるつぼと向かい合い、かつそのグラファイト面が水平となるように設置した。その後、真空蒸着機内を2×10−3Paに減圧し、抵抗加熱によってアルミナるつぼを加熱することにより、H3TOT中性ラジカルの薄膜をグラファイトシート基材表面に真空蒸着した。
上記製造例1と同様に、H3TOT中性ラジカルを合成した。
アルミ箔表面に酸化インジウムスズ(ITO)を100nmの膜厚でスパッタリング成膜した。このITO薄膜を基材とした。
上記H3TOT中性ラジカル(101mg)を、直径10mmのアルミナるつぼに入れ、このアルミナるつぼを真空蒸着機内にセットした。ITO基材を、そのITO面がアルミナるつぼと向かい合い、かつそのITO面が水平となるように設置した。その後、真空蒸着機内を2×10−3Paに減圧し、抵抗加熱によってアルミナるつぼを加熱することにより、H3TOT中性ラジカルの薄膜をITO基材表面に真空蒸着した。
上記製造例1で合成したH3TOT中性ラジカル(0.66mg)を、直径10mmのアルミナるつぼに入れ、このアルミナるつぼを真空蒸着機内にセットした。また、基材となるガラス基板を、そのガラス基板面がアルミナるつぼと向かい合い、かつそのガラス基板面が水平となるように設置した。その後、真空蒸着機内を2×10−3Paに減圧し、抵抗加熱によってアルミナるつぼを加熱することにより、H3TOT中性ラジカルの薄膜をガラス基板表面に真空蒸着した。
このH3TOT中性ラジカル薄膜はXRD測定よりedge−on配向を取ることが明らかとなった。すなわち、基板に対してH3TOTのπ平面が垂直になるように、H3TOTの微結晶が基板上で集合体を形成している。
さらに、H3TOT中性ラジカル薄膜上に金を真空蒸着して金電極の櫛形パターンを形成した後、150℃で5時間アニーリングを行った。段差計により測定したH3TOT中性ラジカル薄膜の膜厚は237nmであった。薄膜の電気伝導度を櫛形電極で測定したところ、2.5×10−2S/cmであった。
上記製造例1で合成したH3TOT中性ラジカル(6.6mg)を、直径10mmのアルミナるつぼに入れ、このアルミナるつぼを真空蒸着機内にセットした。また、ITOが0.2mm幅でパターニングされたガラス基板(基材)を、そのガラス基板面がアルミナるつぼと向かい合い、かつそのガラス基板面が水平となるように設置した。その後、真空蒸着機内を2×10−3Paに減圧し、抵抗加熱によってアルミナるつぼを加熱することにより、H3TOT中性ラジカルの薄膜をガラス基板表面に真空蒸着した。
このH3TOT中性ラジカル薄膜はXRD測定よりedge−on配向を取ることが明らかとなった。
さらに、H3TOT中性ラジカル薄膜上にITOと直角になるように金を0.2mm幅で真空蒸着した後、150℃で5時間アニーリングを行った。段差計により測定したH3TOT中性ラジカル薄膜の膜厚は2.15μmであった。ITO−Au電極間の電気伝導度を櫛形電極で測定したところ、6.0×10−5S/cmであった。
製造例1及び比較製造例1に係るH3TOT中性ラジカル薄膜について、Out−of−Plane測定、及びIn−Plane測定による各XRD分析を行い、薄膜の配向性を調べた。
詳細な測定条件は以下の通りである。
X線回折測定装置 SmartLab(リガク製)
測定範囲 2θ=2〜60°
測定間隔 0.02°
走査速度 1°/min
測定電圧 45kV
測定電流 200mA
図2Cは、製造例1に係るH3TOT中性ラジカル薄膜のIn−Plane XRDスペクトルである。図2Cには、2θ=9.8°、17.0°、19.5°及び26.0°にそれぞれピークが現れている。これらのピークは、いずれも、H3TOT中性ラジカルのπ−πスタッキングにより形成される一次元カラム構造のパッキングにおける、当該一次元カラム構造の延伸方向に対して略垂直な方向の周期構造に由来するピークである。図2Cには、2θ=27.2°のピークもわずかに観測されるが、その強度は極めて小さい。
以上の考察より、製造例1に係る薄膜においては、TOT中性ラジカルのπ平面が、グラファイトシート基材の面方向に対して水平な配向(face−on配向)をとることが分かる。
図5Cは、比較製造例1に係るH3TOT中性ラジカル薄膜のIn−Plane XRDスペクトルである。図5Cには、2θ=9.8°、17.0°、19.5°、26.0°及び27.2°にそれぞれピークが現れている。このうち、2θ=27.2°のピークは、H3TOT中性ラジカルのπ平面の積層に由来するピークである。また、2θ=9.8°、17.0°、19.5°及び26.0°のピークは、いずれも、H3TOT中性ラジカルのπ−πスタッキングにより形成される一次元カラム構造のパッキングにおける、当該一次元カラム構造の延伸方向に対して略垂直な方向の周期構造に由来するピークである。
以上の考察より、比較製造例1に係る薄膜においては、TOT中性ラジカルのπ平面が、ITO基材の面方向に対して垂直な配向(edge−on配向)をとることが分かる。
参考製造例1に係るH3TOT中性ラジカル薄膜の電気伝導度、及び参考製造例2に係るH3TOT中性ラジカル薄膜についてのITO−Au電極間の電気伝導度を測定した。
電気伝導度は二端子法で端子間に−1Vから1Vまでの電圧を掃引した際の電流を測定することにより求めた。電気伝導度の測定にはピコアンメータ(型番6487、ケースレーインスツルメンツ社製)を用いた。
ここで、参考製造例1の電気伝導の経路においては、基材に対して平行に存在する一次元カラム構造のみならず、抵抗となる粒界が数多く存在すると考えられる。このような粒界は、製造例1のH3TOT中性ラジカル薄膜には存在しないと考えられる。したがって、製造例1の電気伝導度は参考製造例1の電気伝導度よりも大きいと予測される。
以上より、face−on配向の薄膜(製造例1)は、edge−on配向の薄膜(比較製造例1)よりも、少なくとも導電性が420倍高いといえる。
製造例1に係る薄膜は、基材としてグラファイトシートを用いている。そのため、グラファイトシートのπ平面、すなわち(0001)面上に、H3TOT中性ラジカルのπ平面が水平配向しながら膜成長し、その結果、得られる薄膜はface−on配向となると考えられる。
その一方、比較製造例1に係る薄膜は、基材としてITOを用いている。そのため、当該薄膜と基材との間にface−on配向を生じさせる相互作用が存在しない結果、得られる薄膜はedge−on配向となると考えられる。他に考えられる理由は以下の通りである。ITO基材中の金属原子(インジウム又はスズ)が、H3TOT中性ラジカル中の酸素と相互作用を起こすことにより、ITO基材表面に対しH3TOT中性ラジカルのπ平面が垂直に立ち上がり、その状態のH3TOT中性ラジカルを起点として膜成長が始まるため、得られる薄膜はedge−on配向となると考えられる。
このように、真空蒸着の際の基材を適切に選択することにより、得られる薄膜の配向性を制御できる結果、膜厚方向の導電性を飛躍的に向上させることができると考えられる。
[実施例1]
以下の材料を用いて二次電池を製造した。
正極:製造例1に係るH3TOT中性ラジカル薄膜(face−on配向、平均膜厚:800nm)
負極:Li金属
電解質:1M LiPF6、EC/DMC/EMC電解液
セパレータ:ポリオレフィン系(PP/PE/PP)の多孔質膜
評価セル:CR2032型コイン電池
正極を、比較製造例1に係るH3TOT中性ラジカル薄膜(edge−on配向、平均膜厚:800nm)に替えたこと以外は、実施例1と同様の材料を用いて、二次電池を製造した。
実施例1及び比較例1の二次電池について、下記条件により充放電測定を行い、電池特性を評価した。各電流密度について、充電と放電を3回ずつ繰り返した。
上下限電圧:4.0V−1.0V
評価温度:25℃
電流密度:10μA/cm2と100μA/cm2
まず、電流密度が10μA/cm2の場合について検討する。図3から分かるように、電流密度が10μA/cm2の場合、実施例1の二次電池は、充電容量及び放電容量がいずれも50μAh近傍である。これに対し、図6から分かるように、電流密度が10μA/cm2の場合、比較例1の二次電池は、放電容量が充電容量よりも10μAh程度高い。図6は以下の結果を意味する。比較製造例1に係るH3TOT中性ラジカル薄膜(edge−on配向)は、H3TOT中性ラジカルの積層方向の導電性が小さいため、充放電時の過電圧が大きい。したがって、当該薄膜を含む比較例1の二次電池は、上限電圧4.0Vに早く到達してしまうため、充電容量が放電容量よりも小さくなる。
以上の結果から、H3TOT中性ラジカル薄膜を正極活物質層として含む二次電池について、H3TOT中性ラジカルが基材に対しface−on配向となる場合(すなわち、H3TOT中性ラジカルのπ平面が積層体の積層方向に対し垂直な配向となる場合。実施例1)には、H3TOT中性ラジカルが基材に対しedge−on配向となる場合(すなわち、H3TOT中性ラジカルのπ平面が積層体の積層方向に対し平行な配向となる場合。比較例1)と比較して、レート特性に優れることが実証された。また、face−on配向を有するH3TOT中性ラジカル薄膜の膜厚方向の導電性が、edge−on配向を有するH3TOT中性ラジカル薄膜の膜厚方向の導電性よりも優れることが、レート特性向上の理由であることが実証された。
さらに、face−on配向を有するH3TOT中性ラジカル薄膜を含む二次電池(実施例1)は、TOT化合物を含む従来の二次電池よりも高いエネルギー密度を有することが証明された。これは、正極活物質層がH3TOT中性ラジカル薄膜からなるものであり、導電化材やバインダを含まないためである。
このように、H3TOT中性ラジカルのπ平面が積層体の積層方向に対し垂直となる配向を有する薄膜を活物質層として含むことにより、添加剤を含まない活物質のみの電極層を用いて充放電可能な二次電池が得られることが実証された。
2,2’ 正極
2A,2A’ 正極活物質層
2a トリオキソトリアンギュレン中性ラジカル化合物
2B 正極集電体
3 電解質層
10,20 積層体
Claims (1)
- 正極、電解質層及び負極を含む積層体を備える二次電池であって、
前記正極及び負極のうち少なくともいずれか1つは、下記式(1)に示されるトリオキソトリアンギュレン中性ラジカル化合物が、該トリオキソトリアンギュレン中性ラジカル化合物のπ平面が前記積層体の積層方向に対し垂直となる配向を有する薄膜を、活物質層として含むことを特徴とする、二次電池。
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