車両の制御装置の一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1に示すように、車両100は、駆動源として内燃機関10とモータ30とを備えている。車両100には、モータ30として、第1MG31(MGはモータジェネレータの略。)と、第2MG32とが設けられている。
図2に示すように、内燃機関10のシリンダブロック11には、シリンダ11Aが形成されている。シリンダ11Aには、ピストン12が収容されている。ピストン12には、コネクティングロッド13が連結されている。コネクティングロッド13には、内燃機関10の出力軸であるクランクシャフト14が連結されている。シリンダブロック11の上端にはシリンダヘッド15が連結されている。シリンダ11A、ピストン12、及びシリンダヘッド15によって燃焼室16が構成されている。燃焼室16には点火プラグ17が設けられている。燃焼室16には、吸気通路18及び排気通路19が連通している。吸気通路18には、燃料噴射弁20及びスロットルバルブ26が設けられている。燃料噴射弁20には、図示しない燃料タンクから燃料が供給される。燃料噴射弁20は供給された燃料を吸気通路18に噴射する。スロットルバルブ26は、吸気通路18において燃料噴射弁20よりも吸気の流れ方向上流側に配置されている。スロットルバルブ26の開度を制御することで吸気通路18から燃焼室16に導入される吸気の流量が調節される。吸気通路18と燃焼室16との接続部には吸気バルブ21が設けられている。吸気バルブ21が開弁しているときには、吸気通路18に噴射された燃料と該吸気通路18を流れる吸気との混合気が燃焼室16に導入される。燃焼室16に導入された混合気は点火プラグ17によって点火されて燃焼する。排気通路19と燃焼室16との接続部には排気バルブ22が設けられている。燃焼室16において混合気が燃焼することにより生成された排気は、排気バルブ22が開弁しているときに排気通路19に排出される。排気通路19には、排気を浄化するための触媒23が設けられている。
内燃機関10には、クランクシャフト14の回転位相であるクランク角を検出するためのクランク角センサ24、触媒23の床温を検出するための温度センサ25、内燃機関の冷却水の水温を検出するための水温センサ27などが設けられている。
図1に示すように、内燃機関10のクランクシャフト14は、車両に搭載されている遊星ギヤ機構40に連結されている。遊星ギヤ機構40は、クランクシャフト14が連結されていて、該クランクシャフト14と共に回転するプラネタリキャリア41、プラネタリキャリア41の内周側に噛み合わされているサンギヤ42、及びプラネタリキャリア41の外周側に噛み合わされているリングギヤ43からなる。サンギヤ42には、第1MG31の回転軸が連結されていて、該回転軸はサンギヤ42と共に回転する。
リングギヤ43には、カウンタドライブギヤ44が一体回転可能に連結されている。カウンタドライブギヤ44には、カウンタドリブンギヤ45が噛み合わされている。カウンタドリブンギヤ45には、リダクションギヤ46が噛み合わされている。リダクションギヤ46には、第2MG32の回転軸が連結されていて、該回転軸はリダクションギヤ46と共に回転する。カウンタドリブンギヤ45には、ファイナルドライブギヤ47が一体回転可能に連結されている。ファイナルドライブギヤ47には、ファイナルドリブンギヤ48が噛み合わされている。ファイナルドリブンギヤ48には、差動機構50が連結されている。差動機構50には一対の車輪軸51が連結されている。各々の車輪軸51には車輪52が連結されている。また、車両100には、第1MG31及び第2MG32と電気的に接続されているバッテリ60が搭載されている。第1MG31は、内燃機関10の始動時にサンギヤ42を回転させることでクランクシャフト14を回転させる。これにより、内燃機関10の始動時にスターターとして機能する。また、内燃機関10から遊星ギヤ機構40を介して伝達される駆動力を利用して発電を行い、該発電した電力をバッテリ60に充電可能に構成されている。第1MG31は、発電した電力をバッテリ60を介さずに第2MG32に供給することも可能である。
第2MG32は、バッテリ60から供給される電力に応じて回転軸を回転させることでリダクションギヤ46を回転させる。これにより、車輪52には、内燃機関10の駆動力に加えて第2MG32の駆動力が伝達される。また、第2MG32は、内燃機関10の駆動が停止しているときに車輪52に駆動力を伝達することで、内燃機関10を駆動させることなく車両100を駆動することもできる。第2MG32は、車両100の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生ブレーキ装置としても機能する。第2MG32は、回生ブレーキ時に発電した電力をバッテリ60に充電可能に構成されている。
車両の制御装置は、内燃機関10の駆動を制御するエンジン制御部70と、該エンジン制御部70と通信可能に設けられているハイブリッド制御部80とを有している。
エンジン制御部70には、内燃機関10のクランク角センサ24、温度センサ25、及び水温センサ27などからの出力信号が入力される。ハイブリッド制御部80には、車両に搭載されている各種センサからの出力信号が入力される。各種センサとしては、例えば、車速を検出する車速センサ90、及びアクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルセンサ91などがある。ハイブリッド制御部80は、各種センサからの出力信号に基づいて車両100の走行状況や運転者の操作状況を検出する。また、ハイブリッド制御部80は、バッテリ60の充放電状況から同バッテリ60の充電率を算出する。
図3に示すように、エンジン制御部70は、機能部として、暖機開始要求判定部71、暖機中目標出力算出部72、暖機終了要求判定部73、暖機後目標出力算出部74、第1通信部75、出力制御部77、フラグ設定部78、及びフラグ判定部79を有している。
暖機開始要求判定部71は、内燃機関10における触媒23を暖機するための暖機制御の開始要求があるか否かを判定する。暖機開始要求判定部71は、温度センサ25からの出力信号に基づいて検出した触媒23の床温が活性温度未満であるときに開始要求があると判定する。活性温度は、触媒23が活性し始める温度であって、予め実験やシミュレーションによって求められて記憶されている。
暖機中目標出力算出部72は、暖機開始要求判定部71によって暖機制御の開始要求があると判定されたときに、暖機制御の実行中における内燃機関の出力目標値である暖機中目標出力を算出する。暖機中目標出力は、暖機後において設定される内燃機関の目標出力よりも低くなるように設定されている。暖機中目標出力は、本実施形態では暖機制御中において一定の値として予め実験やシミュレーションによって求められて記憶されている。
暖機終了要求判定部73は、暖機制御の終了要求があるか否かを判定する。暖機終了要求判定部73は、暖機開始要求判定部71によって開始要求があると判定された後、温度センサ25からの出力信号に基づいて検出した触媒23の床温が上記活性温度以上であるときに終了要求があると判定する。
暖機後目標出力算出部74は、暖機終了要求判定部73によって暖機制御の終了要求があると判定されたときに、暖機制御の実行後における内燃機関の出力目標値である暖機後目標出力を算出する。暖機後目標出力は、内燃機関10の暖機制御後の状態において一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)などの排出を可能な限り少なくできるように設定されている。暖機後目標出力は、予め実験やシミュレーションによって求められて記憶されている。
第1通信部75は、第1送信部75A及び第1受信部75Bを含み、ハイブリッド制御部80と通信可能に構成されている。第1送信部75Aは、ハイブリッド制御部80に信号を送信する。第1送信部75Aからハイブリッド制御部80に送信される信号としては、暖機中目標出力算出部72によって算出された暖機中目標出力に対応する信号や、暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力に対応する信号などがある。第1受信部75Bは、ハイブリッド制御部80から送信された信号を受信する。
出力制御部77は、内燃機関10の点火時期、燃料噴射量、及び吸入空気量を制御することにより、内燃機関10の出力を制御する。出力制御部77は、機能部として、点火時期算出部77A、合致判定部77B、水温算出部77C、要求出力変化量算出部77D、徐変量算出部77E、カウンタ部77F、点火時期制御部77G、燃料噴射弁制御部77H、吸気量制御部77I、及び徐変要求判定部77Jを有している。
点火時期算出部77Aは、暖機中目標出力算出部72によって算出された暖機中目標出力、及び暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力、及びハイブリッド制御部80によって設定される内燃機関10の要求出力であるエンジン側要求出力に基づいて点火時期を算出する。点火時期算出部77Aは、暖機後目標出力及びエンジン側要求出力に基づいて点火時期を算出する際には、例えば、最大トルクを得ることのできる点火時期であるMBT点となるように点火時期を算出する。一方で、点火時期算出部77Aは、暖機中目標出力に基づいて内燃機関10の点火時期を算出する際には、MBT点よりも大きく遅角側になるように点火時期を算出する。そのため、暖機中目標出力に基づいて算出される点火時期、すなわち、暖機制御中に適用される点火時期は、暖機後目標出力及びエンジン側要求出力に基づいて算出される点火時期、すなわち暖機制御を実行していないときに適用される点火時期よりも遅角側の値として算出される。
合致判定部77Bは、暖機中目標出力算出部72によって算出された暖機中目標出力と、ハイブリッド制御部80から受信したエンジン側要求出力とが合致しているか否かの判定、及び、暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力と、ハイブリッド制御部80から受信したエンジン側要求出力とが合致しているか否かの判定を行う。
水温算出部77Cは、水温センサ27からの出力信号に基づいて冷却水の水温を算出する。
要求出力変化量算出部77Dは、合致判定部77Bによって、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定された場合、暖機中目標出力算出部72によって算出された暖機中目標出力と、暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力との差を算出する。以下では、暖機中目標出力と暖機後目標出力との上記差を出力変化量という。
徐変量算出部77Eは、要求出力変化量算出部77Dによって算出された出力変化量、暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力、及び水温算出部77Cによって算出された冷却水の水温に基づいて、点火時期の徐変量を算出する。この徐変量は、点火時期を暖機中目標出力に基づいて算出される点火時期から暖機後目標出力に基づいて算出される点火時期まで進角する際における単位点火回数当たりの点火時期の進角量に相当する。徐変量算出部77Eは、図4に示す冷却水の水温と徐変量との関係を記憶したマップに基づいて、徐変量を算出する。徐変量算出部77Eは、要求出力変化量算出部77Dによって算出された出力変化量が所定量以下であり、且つ暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力が所定値以下であるときには、図4に実線で示す第1徐変量を徐変量として算出する。また、徐変量算出部77Eは、要求出力変化量算出部77Dによって算出された出力変化量が所定量を超えている場合、及び暖機後目標出力が所定値を超えている場合には、図4に一点鎖線で示す第2徐変量を徐変量として算出する。図4に示すマップでは、冷却水の水温が同一である条件において、第2徐変量が第1徐変量よりも多くなるように設定されている。そのため、暖機後目標出力が大きく、且つ暖機中目標出力から暖機後目標出力までの出力の変化量が大きいときであって、第2徐変量に基づいて徐変量が算出される場合には、第1徐変量に基づいて徐変量が算出される場合に比して徐変量が多くなり、暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期まで早期に進角されるようになる。また、第1徐変量及び第2徐変量の双方は、冷却水の水温が低いときには高いときに比べて多くなるように設定されている。これにより、冷却水温が低く、燃焼室における混合気の燃焼性が悪いときほど点火時期を早期に進角側に変更することができ、燃焼安定性を確保することが可能になる。本実施形態では、出力変化量に対する判定値である上記所定量として、例えば、暖機中目標出力の2倍の値が設定されている。また、暖機後目標出力に対する判定値である上記所定値として、例えば、暖機後において設定される内燃機関の目標出力のうち最低の目標出力よりも相応に高い値が設定されている。
カウンタ部77Fは、合致判定部77Bによって、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定されてからの経過時間を計測する。
徐変要求判定部77Jは、後述する点火時期制御部77Gが暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期になるように点火時期を制御するときに、点火時期を徐変させる点火時期徐変制御を実行するための点火時期徐変要求があるか否かを判定する。徐変要求判定部77Jは、カウンタ部77Fによって計測された上記経過時間が第1所定時間未満であるときに点火時期徐変要求があると判定する。第1所定時間は、点火時期徐変制御が開始されてから該点火時期徐変制御によって点火時期が暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期まで進角されるまでの時間よりも相応に短い時間である。
点火時期制御部77Gは、合致判定部77Bによって暖機中目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定された場合に、暖機中目標出力に基づいて算出された点火時期になるように点火時期を制御する。上述したように、暖機制御の実行中に適用される暖機中目標出力に基づいて点火時期を算出するときには、MBT点よりも大きく遅角側になるように点火時期が算出される。そのため、暖機制御を実行しているときには、暖機制御を実行していないときよりも点火時期が遅角側に制御されることとなり、これにより触媒23の早期暖機が図られる。
また、点火時期制御部77Gは、合致判定部77Bによって暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定された場合、暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期になるように点火時期を制御する。点火時期制御部77Gは、徐変要求判定部77Jによって、点火時期徐変要求があると判定されている場合、暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期になるように点火時期を制御するときに、徐変量算出部77Eによって算出された徐変量で点火時期を進角させて点火時期徐変制御を実行する。点火時期徐変制御は、合致判定部77Bによって暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定されたときから予め設定されている第1所定時間の間継続して行われることとなる。点火時期制御部77Gは、点火時期徐変制御を開始してから上記第1所定時間が経過したときに点火時期徐変制御を終了し、その後は暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期で点火時期を制御する。なお、第1所定時間は、点火時期徐変制御が終了したときに点火時期を暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期となるように制御した際、点火時期の変化によるショックが許容範囲となるように予め実験やシミュレーションによって求められて徐変要求判定部77Jに記憶されている。
燃料噴射弁制御部77Hは、暖機中目標出力算出部72によって算出された暖機中目標出力、暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力、及びハイブリッド制御部80によって設定される内燃機関10の要求出力であるエンジン側要求出力に基づいて燃料噴射弁20を制御する。燃料噴射弁制御部77Hは、点火時期制御部77Gによって設定される点火時期、及び後述する吸気量制御部77Iによって設定される吸気量に基づき、上記出力が得られるように燃料噴射量を設定する。
吸気量制御部77Iは、暖機中目標出力算出部72によって算出された暖機中目標出力、暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力、及びハイブリッド制御部80によって設定される内燃機関10の要求出力であるエンジン側要求出力に基づいてスロットルバルブ26の開度を制御する。これにより、燃焼室16に導入される吸気量が制御される。吸気量制御部77Iは、点火時期制御部77Gによって設定される点火時期に基づき、上記出力が得られるように吸気量を設定する。
出力制御部77では、合致判定部77Bによって暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致した場合、暖機後目標出力に基づいて内燃機関10の出力を制御する。この制御は、予め設定されている第2所定時間の間継続して実行される。これにより、暖機制御を実行した後には、内燃機関10の出力が暖機後目標出力で第2所定時間の間一定に制御される出力一定制御が実行される。出力一定制御を開始し始めたときには、点火時期徐変制御が行われるため、点火時期は徐々に変更される。こうした場合であっても、点火時期に合わせて暖機後目標出力が得られるように燃料噴射量や吸入空気量が設定されることから、内燃機関10の出力は出力一定制御が開始されるとすぐに暖機後目標出力に制御されることとなる。そして、出力一定制御を開始してからの経過時間が第2所定時間に達すると、出力一定制御は終了する。出力一定制御が終了すると、再度暖機制御の開始要求があるまでは、暖機中目標出力算出部72によって暖機中目標出力の算出は行われない。また、暖機後目標出力算出部74によって暖機後目標出力の算出は行われない。この場合、合致判定部77Bにおいて暖機中目標出力及び暖機後目標出力とエンジン側要求出力との合致判定が行われないことから、合致判定部77Bによって、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定されることはない。そのため、出力一定制御が終了した後、再度暖機制御の開始要求があるまでは、出力制御部77は、ハイブリッド制御部80から受信したエンジン側要求出力が得られるように内燃機関10の点火時期、燃料噴射量、及び吸入空気量を制御する。
フラグ設定部78は、出力制御部77によって点火時期徐変制御が開始されたときに、開始フラグを1に設定する。また、フラグ設定部78は、出力制御部77による点火時期徐変制御が終了したときに、開始フラグを0に設定する。
フラグ判定部79は、フラグ設定部78によって設定された開始フラグが1であるか否かを判定する。すなわち、出力制御部77によって点火時期徐変制御が実行されているか否かを判定する。
図3に示すように、ハイブリッド制御部80は、機能部として、出力設定部800、及びモータ制御部810を含んで構成されている。出力設定部800は、内燃機関10の要求出力であるエンジン側要求出力と、モータ30の要求出力であるモータ側要求出力とを、車両100において要求されている車両側要求出力が得られるように設定する。出力設定部800は、機能部として、車両要求出力算出部81、バッテリ充電率算出部82、エンジン出力設定部83、モータ側出力設定部84、及び第2通信部85を有している。
車両要求出力算出部81は、車速センサ90からの出力信号、及びアクセルペダルセンサ91からの出力信号に基づいて車両側要求出力を算出する。車両要求出力算出部81には、車速及びアクセル操作量と車両側要求出力との関係を示すマップが予め実験やシミュレーションによって求められて記憶されている。車両要求出力算出部81は、このマップに基づいて車両側要求出力をマップ演算する。
バッテリ充電率算出部82は、バッテリ60からの放電量及び充電量に基づいて、バッテリ60の充電率を算出する。
エンジン出力設定部83は、機能部として駆動出力算出部83A、エンジン側出力設定部83B、及び更新許可判定部83Cを有している。
駆動出力算出部83Aは、車両要求出力算出部81によって算出された車両側要求出力と、バッテリ充電率算出部82によって算出されたバッテリ60の充電率とに基づいて、エンジン側要求出力とモータ側要求出力とを算出する。駆動出力算出部83Aには、車両側要求出力及びバッテリ60の充電率と、エンジン側要求出力及びモータ側要求出力との関係を示すマップが予め実験やシミュレーションによって求められて記憶されている。なお、モータ側要求出力は、第1MG31及び第2MG32の双方の要求出力に関する情報が含まれている。
また、駆動出力算出部83Aは、後述する更新許可判定部83Cによって更新の許可判定がされているときには、エンジン制御部70から暖機中目標出力を受信した際に、該暖機中目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出する。また、駆動出力算出部83Aは、エンジン制御部70から暖機後目標出力を受信した際には、該暖機後目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出する。なお、エンジン制御部70から受信した暖機中目標出力、及び暖機後目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出した場合、駆動出力算出部83Aは、暖機中目標出力、及び暖機後目標出力を考慮して上記車両側要求出力が得られるようにモータ側要求出力を算出し直す。
エンジン側出力設定部83Bは、駆動出力算出部83Aによって算出されたエンジン側要求出力をエンジン側要求出力として設定する。
更新許可判定部83Cは、エンジン制御部70から暖機中目標出力に対応する信号を受信したときに、駆動出力算出部83Aにおいて、該暖機中目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出してもよいか否かの判定を行う。上述したように、暖機中目標出力は、暖機後において設定される内燃機関の目標出力よりも低くなるように設定されている。そのため、エンジン側要求出力を暖機中目標出力と同じ出力に設定した場合には、該エンジン側要求出力と車両側要求出力に基づいて算出されたモータ側要求出力とによって得られる車両の出力は、車両要求出力算出部81によって算出された車両側要求出力よりも小さくなる。そのため、車両要求出力算出部81によって算出された車両側要求出力が得られるようにするためにはモータ側要求出力を増大させる必要がある。更新許可判定部83Cは、暖機中目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出した場合、上述した車両側要求出力を得るために必要なモータ側要求出力の増量が行えるほどバッテリ60の充電率が充分ある場合に、暖機中目標出力をエンジン側要求出力として算出してもよいとの許可判定を行う。
モータ側出力設定部84は、駆動出力算出部83Aによってモータ側要求出力が算出されたときに、該モータ側要求出力をモータ側要求出力として設定する。
第2通信部85は、第2送信部85A及び第2受信部85Bを含み、エンジン制御部70と通信可能に構成されている。第2送信部85Aは、エンジン制御部70の第1受信部75Bに信号を送信する。第2送信部85Aが第1受信部75Bに送信する信号には、エンジン側出力設定部83Bによって設定されたエンジン側要求出力に対応する信号が含まれる。第2受信部85Bは、エンジン制御部70の第1送信部75Aから送信された信号を受信する。第1通信部75と第2通信部85とが通信することにより、エンジン制御部70とハイブリッド制御部80との間で信号の授受が行われる。
モータ制御部810は、モータ側出力設定部84によって設定されたモータ側要求出力に基づいて第1MG31及び第2MG32の駆動を制御する。すなわち、モータ制御部810は、第1MG31とバッテリ60との間で授受される電力の量、並びに第2MG32とバッテリ60との間で授受される電力の量を調整することで、第1MG31の出力及び第2MG32の出力がモータ側要求出力となるように制御する。
図5を参照して、エンジン制御部70が実行する内燃機関10の暖機制御に係る一連の処理の流れを説明する。この一連の処理は、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
図5に示すように、エンジン制御部70がこの一連の処理を開始するとまず、フラグ判定部79がフラグ設定部78によって設定されている開始フラグが1であるか否かを判定する(ステップS500)。開始フラグが0に設定されており、ステップS500の処理においてフラグ判定部79によって否定判定された場合(ステップS500:NO)、次に、暖機開始要求判定部71が暖機制御の開始要求があるか否かを判定する(ステップS501)。この処理において、触媒23の床温が活性温度未満であり、暖機開始要求判定部71によって暖機制御の開始要求があると判定された場合には(ステップS501:YES)、暖機中目標出力算出部72が暖機中目標出力を算出する(ステップS502)。暖機中目標出力算出部72が暖機中目標出力を算出すると、暖機中目標出力に対応する信号がハイブリッド制御部80に送信される。ハイブリッド制御部80では、更新許可判定部83Cが暖機中目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出してもよいか否かの判定を行う。バッテリ60の充電率が充分あり、暖機中目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出してもよいとの判定がなされた場合、駆動出力算出部83Aは暖機中目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出する。そして、駆動出力算出部83Aは、暖機中目標出力を考慮して、車両要求出力算出部81によって算出された車両側要求出力が得られるようにモータ側要求出力を算出し直す。これにより、エンジン側出力設定部83Bにおいて暖機中目標出力と同じ出力がエンジン側要求出力に設定され、モータ側出力設定部84において暖機中目標出力に基づいて新たに算出されたモータ側要求出力がモータ側要求出力に設定される。
第2通信部85は、エンジン側出力設定部83Bによって設定されたエンジン側要求出力に対応する信号、すなわち、エンジン制御部70から受信した暖機中目標出力に対応した信号をエンジン制御部70の第1通信部75に送信する。
エンジン制御部70では、合致判定部77Bが暖機中目標出力算出部72によって算出された暖機中目標出力と、ハイブリッド制御部80から受信したエンジン側要求出力とが合致しているか否かの判定を行う(ステップS503)。暖機中目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定された場合には(ステップS503:YES)、エンジン制御部70は、内燃機関10の出力が暖機中目標出力算出部72によって算出された暖機中目標出力となるように暖機制御を開始する(ステップS504)。暖機制御の実行中には、内燃機関の点火時期は、暖機制御を開始する前の点火時期よりも遅角側に制御される。なお、ステップS503の処理において、暖機中目標出力とエンジン側要求出力とが合致していないと判定された場合には(ステップS503:NO)、暖機中目標出力とエンジン側要求出力とが合致するまで同処理が繰り返される。なお、所定の待機時間が経過しても暖機中目標出力とエンジン側要求出力とが合致しない場合には、暖機制御を実行せずにこの一連の処理を終了する。
暖機制御を開始すると、次に暖機終了要求判定部73が暖機制御の終了要求があるか否かを判定する(ステップS505)。この処理において、暖機制御を開始してからの経過時間が短い場合には、触媒23の床温が上記活性温度以上まで昇温しておらず否定判定となる(ステップS505:NO)。この場合には、ステップS505の処理が繰り返し実行される。そして、暖機制御の開始から相応の時間が経過し、触媒23の床温が上記活性温度以上となると、暖機開始要求判定部71によって終了要求があると判定される(ステップS505:YES)。この場合、次に、徐変要求判定部77Jは、点火時期徐変要求があるか否かを判定する(ステップS506)。この処理では、終了要求が成立した直後であって、合致判定部77Bによって、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定がなされていないことから、カウンタ部77Fによる上記経過時間の計測は開始されていない。そのため、上記経過時間は第1所定時間未満となり、徐変要求判定部77Jによって点火時期徐変要求があると判定される(ステップS506:YES)。この場合には、次に、暖機後目標出力算出部74が暖機後目標出力を算出する(ステップS507)。
暖機後目標出力算出部74が暖機後目標出力を算出すると、暖機後目標出力に対応する信号がハイブリッド制御部80に送信される。暖機後目標出力に対応する信号がハイブリッド制御部80に送信されると、ハイブリッド制御部80では、駆動出力算出部83Aが受信した暖機後目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出するとともに、暖機後目標出力を考慮して、車両要求出力算出部81によって算出された車両側要求出力が得られるようにモータ側要求出力を算出し直す。これにより、エンジン側出力設定部83Bにおいて暖機後目標出力と同じ出力がエンジン側要求出力に設定され、モータ側出力設定部84において暖機後目標出力に基づいて新たに算出されたモータ側要求出力がモータ側要求出力に設定される。第2通信部85は、エンジン側出力設定部83Bによって設定されたエンジン側要求出力に対応する信号、すなわち、エンジン制御部70から受信した暖機後目標出力に対応した信号をエンジン制御部70の第1通信部75に送信する。
エンジン制御部70では、合致判定部77Bが暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力と、ハイブリッド制御部80から受信したエンジン側要求出力とが合致しているか否かの判定を行う(ステップS508)。ステップS508の処理において、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致していないと判定された場合には(ステップS508:NO)、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致するまで同処理が繰り返される。そして、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致すると(ステップS508:YES)、次に、徐変量算出部77Eが点火時期の徐変量を算出する。この処理では、要求出力変化量算出部77Dによって算出された出力変化量、暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力、及び水温算出部77Cによって算出された冷却水の水温に基づいて、点火時期の徐変量を算出する。徐変量算出部77Eはまず、図4に示すマップに記憶されている第1徐変量を用いて徐変量を算出するための適用条件が成立しているか否かを判定する(ステップS509)。要求出力変化量算出部77Dによって算出された出力変化量が所定量以下であり、且つ暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力が所定値以下であるときには、適用条件が成立していると判定される(ステップS509:YES)。この場合、ステップS510の処理に移行し、水温に基づいて算出された第1徐変量が徐変量に設定される。
また、要求出力変化量算出部77Dによって算出された出力変化量が所定量を超えている場合、及び暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力が所定値を超えている場合には、ステップS509の処理において、徐変量算出部77Eは、上記適用条件が成立していないと判定する(ステップS509:NO)。この場合、ステップS511の処理に移行し、水温に基づいて算出された第2徐変量が徐変量に設定される。
図6に示すように、こうして点火時期の徐変量が設定されると、出力制御部77は暖機制御を終了し、次に内燃機関10の出力が暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力となるように出力一定制御を開始する(ステップS512)。また、出力制御部77は、出力一定制御を開始するタイミングに合わせて点火時期徐変制御を開始する。これにより、暖機中目標出力に基づいて算出された点火時期から、暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期へと点火時期が徐々に進角側に変更される。カウンタ部77Fは、合致判定部77Bによって、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定されてからの経過時間を計測する。なお、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致してから出力一定制御が開始されるまでの時間はごく僅かであることから、カウンタ部77Fによって計測された時間は、出力一定制御が開始されてからの経過時間と等しい。
エンジン制御部70は、出力一定制御及び点火時期徐変制御を開始すると、フラグ設定部78によって開始フラグを1に設定し(ステップS513)、暖機制御に係る一連の処理を終了する。
その後、図5に示すように、エンジン制御部70が暖機制御に係る一連の処理を開始したときには、開始フラグが1に設定されていることから、ステップS500の処理において、フラグ判定部79によって肯定判定される(ステップS500:YES)。この場合、エンジン制御部70は、ステップS506の処理に移行する。そして、徐変要求判定部77Jによってカウンタ部77Fによって計測された経過時間が第1所定時間に達したか否かが判定される。出力一定制御を開始した直後は、上記経過時間が第1所定時間に達していないため、ステップS506の処理において肯定判定となる(ステップS506:YES)。そのため、以降は、上述したようにステップS507〜ステップS513の処理が繰り返し実行されて、出力一定制御及び点火時期徐変制御が継続される。その後、出力一定制御を開始してから相応の時間が経過し、上記経過時間が第1所定時間に達した場合には、ステップS506の処理において徐変要求判定部77Jによって点火時期徐変要求がないと判定される(ステップS506:NO)。この場合には、次に、図6のステップS514の処理に移行する。ステップS514の処理では、出力制御部77は点火時期徐変制御を終了する。点火時期徐変制御が終了すると、フラグ設定部78によって開始フラグが0に設定され(ステップS515)、以降は、点火時期が暖機後目標出力に基づいて設定される点火時期で制御される。その後、出力制御部77は、カウンタ部77Fによって計測された経過時間が第2所定時間に達したか否かを判定する(ステップS516)。出力一定制御を開始してから未だ第2所定時間が経過していないときには(ステップS516:NO)、ステップS516の処理が繰り返し実行され、その間は出力一定制御が続行される。その後、出力一定制御を開始してから経過時間が長くなり、上記経過時間が第2所定時間に達すると(ステップS516:YES)、出力制御部77は、出力一定制御を終了し(ステップS517)、暖機制御に係る一連の処理を終了する。エンジン制御部70は、こうして暖機制御に係る一連の処理を終了した後は、再度開始要求が成立するまでハイブリッド制御部80において設定されるエンジン側要求出力に基づいて内燃機関10の駆動を制御する。
また、暖機制御に係る一連の処理において、触媒23の床温が活性温度以上であり、暖機開始要求判定部71によって暖機制御の開始要求がないと判定された場合には、ステップS501の処理において否定判定となる(ステップS501:NO)。この場合、図5及び図6に示すように、以降の処理を行わずに、暖機制御に係る一連の処理を終了する。
本実施形態の作用効果について、図7を参照して説明する。
(1)図7(a)に示すように、タイミングt71において暖機終了要求が成立すると、エンジン制御部70は、その後に暖機制御の実行を終了して出力一定制御を実行することで、図7(b)に示すように点火時期を進角させる。
ここで、本実施形態では、エンジン制御部70は、暖機制御の実行が終了した後、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致するまでは点火時期の変更を行わないようにしているが、こうした構成との違いを明らかにするために、本実施形態の比較例として、まず暖機終了要求が成立したタイミングで点火時期の変更を行う場合を例に説明する。
暖機終了要求が成立したタイミングt71において、エンジン制御部70において暖機後目標出力が算出され、該暖機後目標出力に基づいて点火時期が算出される。図7(b)に一点鎖線で示すように、比較例の構成では、エンジン制御部70は暖機後目標出力に基づいて点火時期を算出すると、算出した点火時期となるように内燃機関10の点火時期を制御する。そのため、タイミングt71では、該タイミングt71よりも前の暖機制御中における点火時期、すなわち暖機中目標出力に基づいて算出される点火時期よりも、点火時期が進角側に変更される。これにより、図7(d)に一点鎖線で示すように、タイミングt71において内燃機関10の出力が暖機後目標出力となるように増大する。
エンジン制御部70は、暖機後目標出力を算出すると、暖機後目標出力に対応した信号をハイブリッド制御部80に送信する。ハイブリッド制御部80では、受信した暖機後目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出し、該暖機後目標出力を考慮して、算出した車両側要求出力が得られるようにモータ側要求出力を算出し直す。そして、新たに算出したモータ側要求出力をモータ側要求出力に設定してモータ30の駆動を制御する。エンジン制御部70とハイブリッド制御部80との間で信号を送受信する際には、エンジン制御部70及びハイブリッド制御部80において各々が演算処理する場合に比べて時間がかかる。そのため、エンジン制御部70において算出した暖機後目標出力に合わせてモータ30の出力を変更する場合には、図7(e)に示すように、タイミングt71よりも遅いタイミングt72においてモータ30の出力が減少することとなる。すなわち、内燃機関10の出力が変化するタイミングt71から所定の遅れ時間が経過したタイミングt72においてモータ30の出力が変化する。そのため、この比較例の構成では、図7(f)に一点鎖線で示すように、内燃機関10の出力が増大するタイミングt71において車両100の出力が車両側要求出力よりも増大され、モータ30の出力が減少するタイミングt72において車両100の出力が車両側要求出力まで減少することとなる。
これに対し、本実施形態では、図7(b)に実線で示すように、エンジン制御部70が暖機後目標出力を算出したタイミングt71では、点火時期を変更しない。そして、エンジン制御部70は、タイミングt71において暖機後目標出力に対応する信号をハイブリッド制御部80に送信した後、ハイブリッド制御部80から送信されたエンジン側要求出力と暖機後目標出力とが合致したことが合致判定部77Bによって判定されたときに、暖機後目標出力に基づいた点火時期となるように点火時期を進角させる。すなわち、エンジン制御部70は、暖機制御の実行が終了した後、合致判定部77Bが暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致したと判定するまで点火時期を変更しない。そのため、図7(b)に実線で示すように、エンジン制御部70とハイブリッド制御部80との間で信号を送受信する時間や、各制御部70,80における演算時間などを考慮して、暖機後目標出力を算出してから上記遅れ時間が経過したタイミング、すなわちモータ30の出力が変化するタイミングt72に合わせて点火時期の変更を開始できる。その結果、図7(d)に実線で示すように、タイミングt72において、点火時期の進角側への変化に伴う内燃機関10の出力の増大が生じることとなる。したがって、図7(f)に実線で示すように、暖機完了後の点火時期の変化に伴う車両100の出力変動を抑えることができる。
(2)本実施形態では、図7(c)に示すように、出力一定制御を開始したときに点火時期徐変制御を実行するようにしている。これにより、図7(b)に示すように、点火時期が、暖機中目標出力に基づいて算出された点火時期から暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期へと徐々に変更されることとなる。そのため、点火時期の急な変化を抑えて、内燃機関10の振動を抑えることにも貢献できる。
(3)本実施形態では、図7(c)に示すように、点火時期徐変制御を第1所定時間の間実行するようにしている。そのため、点火時期徐変制御を開始してから、該点火時期徐変制御により点火時期が暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期まで進角される前であって、点火時期の変化によるショックが許容範囲となるタイミングt73において、点火時期徐変制御が終了する。そしてその後は、点火時期が暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期に制御される。このように、本実施形態では、点火時期が暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期となるまで点火時期徐変制御を実行するのではなく、それよりも前のタイミングにおいて点火時期徐変制御を終了し、このときに点火時期を暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期に制御している。そのため、点火時期の変化に伴うショックの発生を抑えつつも、点火時期を暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期まで進角させる際、点火時期が暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期となるまで点火時期徐変制御を実行する場合に比して、点火時期を変更する際の時間短縮を図ることができる。
(4)徐変量算出部77Eによって徐変量を算出するときには、冷却水の水温が低いときには高いときに比べて徐変量を多くする。これにより、冷却水温に応じた燃焼室16内の燃焼性を考慮して点火時期を設定することが可能になる。そのため、点火時期を変化させたときに燃焼安定性を確保することも可能になる。
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。以下の変更例は、互いに適宜組み合わせて実施することも可能である。
・上記実施形態では、エンジン制御部70は、暖機制御の実行が終了した後、合致判定部77Bが暖機後目標出力とハイブリッド制御部80から送信されたエンジン側要求出力とが合致したと判定するまで点火時期を変更しないようにしていた。暖機制御の実行が終了した後、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致するまで暖機後目標出力に基づいた点火時期の変更を行わない構成はこうしたものに限らない。例えば、図8に示すような構成を採用することも可能である。なお、この構成では、上記実施形態におけるステップS500〜ステップS507までの処理、及びステップS509〜ステップS517までの処理と同様の処理を行っているため、これらの処理については共通の符号を付して説明を省略する。また、この構成では、上記実施形態との相違点のみを説明するため、図8には、暖機制御に係る一連の処理のうち一部の処理のみを示している。
図8に示すように、エンジン制御部70は、暖機制御に係る一連の処理において、ステップS507の処理で暖機後目標出力を算出すると、次に、ステップS808の処理に移行する。ステップS808の処理では、エンジン制御部70はステップS505の処理において暖機制御の終了要求があると判定されてからの経過時間が待機時間以上であるか否かを判定する。待機時間は、エンジン制御部70が暖機後目標出力に対応した信号をハイブリッド制御部80に送信してから、ハイブリッド制御部80において該暖機後目標出力と同じ出力がエンジン側要求出力に設定されるまでの時間に設定されている。すなわち、待機時間は、ハイブリッド制御部80においてモータ側要求出力が暖機後目標出力を考慮して設定されるまでの時間と等しい。待機時間は、予め実験やシミュレーションによって求められて記憶されている。なお、終了要求があると判定されてからの経過時間は、カウンタ部77Fによって計測するなどすればよい。そして、暖機制御の終了要求があると判定されてからの経過時間が待機時間未満である場合には(ステップS808:NO)、該経過時間が待機時間以上となるまでこの処理を繰り返し実行する。その後、終了要求があると判定されてからの経過時間が長くなり、該経過時間が待機時間以上となった場合には(ステップS808:YES)、ステップS509の処理に移行して、その後、出力一定制御及び点火時期徐変制御を実行する。この構成では、暖機制御の実行が終了した後、上記待機時間が経過するまで待ってから点火時期を変更する。したがって、こうした構成によっても、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致するまで点火時期の変更を行わない構成を実現することができる。
・徐変量算出部77Eによって徐変量を算出するときには、冷却水の水温が低いときには高いときに比べて徐変量を多くするようにしたが、この構成は適宜変更が可能である。例えば、徐変量算出部77Eは、冷却水の水温が高いときには低いときに比べて多くなるように徐変量を算出してもよい。また、徐変量を冷却水の水温に依らずに固定値として算出することも可能である。この場合であっても、第2徐変量は第1徐変量よりも大きい値とすることが望ましい。
・徐変量算出部77Eは、要求出力変化量算出部77Dによって算出された出力変化量と、暖機後目標出力算出部74によって算出された暖機後目標出力とに基づいて、第1徐変量または第2徐変量のいずれかを徐変量に設定する構成とした。徐変量の設定態様はこれに限らない。例えば、出力変化量及び冷却水の水温と、徐変量との関係を示すマップを備え、暖機後目標出力に依らずに徐変量を算出するようにしてもよい。この場合、出力変化量が大きいときほど徐変量が多くなるようにすることが望ましい。また、出力変化量と暖機後目標出力とに依らずに徐変量を設定してもよい。この場合には、暖機制御に係る一連の処理において、ステップS509,S510,S511の処理を省略できる。すなわち、徐変量算出部77Eに冷却水温と徐変量との関係を示すマップを記憶させ、ステップS508,S808の処理で肯定判定となった場合、上記マップに基づいて徐変量を算出した後、ステップS512の処理に移行するようにすればよい。
・上記実施形態では、徐変要求判定部77Jは、点火時期徐変要求があるか否かの判定を、経過時間が第1所定時間であるか否かに基づいて行った。これにより、点火時期徐変制御の実行時間を予め設定された第1所定時間に設定するようにした。この構成において、第1所定時間を点火時期の徐変量に合わせて変更することも可能である。この場合であっても、点火時期徐変制御を開始してから、該点火時期徐変制御により点火時期が暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期となる時間よりも相応に短い時間であって、点火時期徐変制御を終了したときの点火時期の変化によるショックが許容範囲となるように第1所定時間を設定することが望ましい。また、第1所定時間を設けずに、点火時期徐変制御を、点火時期が暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期となるまで実行するようにしてもよい。この場合には、徐変要求判定部77Jは、点火時期が暖機後目標出力に基づいて算出された点火時期となったときに点火時期徐変要求がないと判定すればよい。
また、点火時期徐変制御は必ずしも実行する必要はない。例えば、点火時期徐変要求の判定の前に、暖機後目標出力を算出し、徐変要求判定部77Jによって、暖機中目標出力と暖機後目標出力との出力変化量が基準量以下の場合に点火時期徐変要求があると判定するようにしてもよい。この構成では、点火時期徐変制御が、上記出力変化量が基準量以下の場合に実行され、該出力変化量が基準量を超えている場合には実行されない。基準量は、上記所定量よりも多く、例えば、暖機中目標出力の3倍の値が設定されている。このように、出力変化量が基準量を超えていて、運転者によって要求される車両の要求出力が大きいときには、点火時期徐変制御を実行せずに、内燃機関の出力を迅速に増大させることを優先させた方が望ましい場合もある。この構成のように、点火時期徐変制御を実行しない場合を含むときには、点火時期徐変要求がないと判定された後、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致することを待つことなく点火時期を変更する構成を採用してもよいし、暖機後目標出力とエンジン側要求出力とが合致したと判定するまで点火時期を変更しない構成を採用してもよい。また、徐変要求判定部77Jは、暖機後目標出力のみに基づいて、点火時期徐変要求があるか否かを判定してもよい。
・上記実施形態では、暖機制御の開始要求があると判定された後、暖機中目標出力とエンジン側要求出力とが合致していると判定されたときに暖機制御を開始するようにしたが、暖機制御の開始態様はこれに限らない。例えば、エンジン制御部70によって暖機制御の開始要求があると判定され、ハイブリッド制御部80によって暖機制御の開始が許可されたときに、エンジン制御部70が暖機制御を開始するようにしてもよい。この場合、例えば、暖機中目標出力算出部72が暖機中目標出力を算出し、暖機中目標出力に対応する信号がハイブリッド制御部80に送信されると、ハイブリッド制御部80において、更新許可判定部83Cが暖機中目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出してもよいか否かの判定を行う。そして、バッテリ60の充電率が充分あり、暖機中目標出力と同じ出力をエンジン側要求出力として算出してもよいとの許可判定がなされた場合、その許可判定に対応する信号をエンジン制御部70に送信する。エンジン制御部70は、ハイブリッド制御部80からの許可信号を受信したときに暖機制御を開始する。
・上記実施形態では、暖機制御を実行した後、暖機後目標出力に基づいて内燃機関10の出力を制御する制御を第2所定時間に亘って行うようにしていた。こうした出力一定制御は必ずしも実行する必要はない。例えば、暖機制御を実行した後、内燃機関10の出力が暖機後目標出力となった後は、内燃機関の出力を所定時間の間一定に保つことなく、ハイブリッド制御部80において設定されたエンジン側要求出力に基づいて内燃機関の駆動、すなわち点火時期などを制御することも可能である。