JP2019064246A - 親水防汚コート構造およびその形成方法、測量機器 - Google Patents

親水防汚コート構造およびその形成方法、測量機器 Download PDF

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Abstract

【課題】金属のみならず樹脂表面にも適用することができ、耐久性の高い親水防汚コート構造を提供する。【解決手段】基材層と、基材層に設けられたガラスライクコート層と、ガラスライクコート層に設けられたベタイン構造体層とを有する親水防汚コート構造。親水防汚コート構造は、テトラアルコキシシランを含有する溶剤を基材表面に塗布し、アルコキシシランを加水分解してガラスライクコート層を形成し、ベタイン構造体を含有する溶剤をガラスライクコート層に塗布し、ベタイン構造体のシラン部分を加水分解してベタイン構造体層を形成する。この方法において、テトラアルコキシシランと、ベタイン構造体とを含有する溶剤を一液で塗布することもできる。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂からなる物品表面の防汚性を向上させる技術に係り、特に、親水防汚コート構造およびその形成方法、筐体に親水防汚コート構造を有する測量機器に関する。
建設現場で使用されるローテーティングレーザーや、下水管配設工事現場で使用されるパイプレーザー等の測量機器は、例えば下水管等の過酷な屋外環境で使用されるため、雨水の他、土、セメント、汚物等の汚れが測量機器に付着する問題があった。
これらの汚れを測量機器筐体から拭き取る場合、汚れ自体が除去しにくい性質であったり、セメントの場合は粒子による擦り傷が残ってしまったり、汚れに含まれる成分のシミが残ってしまう場合があった。
そのような汚れの付着を防止し、付着した場合の除去を容易にするための防汚コートとしては、従来から、例えば、ダイキン、信越化学、ダウコーニング、3Mなどで発売されている単分子撥水撥油コート原料が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
この単分子撥水撥油コート原料は、有効成分の分子中にエーテル結合を有するため、長鎖構造の分子が特定方向に配向して物品表面に単分子膜を形成する。このエーテル結合を含む単分子膜は、高い撥水角のため、物品に塗布した際の撥水撥油コート層の防汚性を向上させることが知られている。
また、エーテル結合を有さないフッ素系の撥水撥油コートとして、例えばフルオロアルキルシラン化合物等が知られている。この撥水撥油コート層は、フッ素の官能基を有するため、汚れが付着しにくく、また、エーテル結合を有するものと比較して、撥水撥油コート層を構成する分子の安定性が高く、膜の耐久性が高い。
また、特許文献3の請求項4や段落0022には、排水穴と排水穴の周囲の一部あるいは全面を親水性とすることによって、本体内に溜まった水を集めて排水する流路として機能させたレーザー墨出器が開示されている。
また、特許文献4の段落0012には、建設機械の表面塗布用塗料組成物によって、
この理由は明らかではないが、含フッ素重合体(A)に由来するフッ素樹脂のネットワークと、金属アルコキシド(B)に由来するネットワーク(例えば、シロキサン骨格のネットワーク)との両方を含む塗膜が得られること、塗膜中に含フッ素重合体(A)に由来するフッ素樹脂が存在し、このフッ素樹脂の持つ機能が担保されること、金属アルコキシド(B)の態様によっては塗膜表面に親水性であるシラノール基が存在し、汚れを水で洗い流しやすくなること等が考えられることが書かれており、段落0078には、建設機械としては、例えば、計測または測量機器が挙げられる旨書かれている。
特許第3275402号公報 特許第3433024号公報 特許第4458287号公報 特開2017−88659号公報
しかしながら、特許文献1、2に示すような従来の単分子撥水撥油コートでは、多くの物質はフッ素系官能基の撥水撥油性能によって付着を抑制されるものの、汚物等の成分の中にはフッ素系官能基の存在にも関わらず付着し落ちにくい成分も存在し、そのような成分が単分子撥水撥油コートに付着すると、その後の作業に支障をきたすという問題があった。
また、特許文献3に記載の技術では、レーザー墨出器の排水穴と排水穴の周囲の一部あるいは全面が親水性であるだけであり、レーザー墨出器の本体全面が親水処理されておらず、撥水処理されているため、例えば下水道などで汚水に本体が浸ってしまったような場合、特許文献1、2の従来の単分子撥水撥油コート同様、汚物等の一部の成分による汚れが落ちず、作業が中断するような事態になってしまう。
また、特許文献4に記載の技術では、親水性の効果を発揮させるためにOH基を使用しているが、OH基は汚れの分子と反応してしまうことがあり、親水性による防汚作用の耐久性が良くない。従って、従来技術に過ぎない。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、従来の単分子撥水撥油コートにおける汚物成分付着の問題が解決され、耐久性の高い親水コート構造およびその形成方法、筐体に親水防汚コート構造を有する測量機器を提供することを目的とする。
前記課題を解決する請求項1に記載の発明は、親水防汚コート構造であって、基材層と、前記基材層に設けられたガラスライクコート層と、前記ガラスライクコート層に設けられたベタイン構造体層とを有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基材層は樹脂層であり、表面がエッチングされたものであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、親水防汚コート構造であって、基材層と、前記基材層に設けられた塗料樹脂層と、前記塗料樹脂層に設けられたベタイン構造体層とを有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記塗料樹脂は、ポリエステル樹脂であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、親水防汚コート構造の形成方法であって、テトラアルコキシシランを含有する溶剤を基材層表面に塗布し、前記アルコキシシランを加水分解して前記基材層に前記ガラスライクコート層を形成し、ベタイン構造体を含有する溶剤を前記ガラスライクコート層に塗布し、前記ベタイン構造体のシラン部分を加水分解して前記ガラスライクコート層にベタイン構造体層を形成することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記テトラアルコキシシランを含有する溶剤は、4つの官能基が全て同一のテトラアルコキシシランと、1つの官能基が異なるテトラアルコキシシランとを含むことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の発明において、前記基材層は樹脂層であり、前記テトラアルコキシシランを含有する溶剤は前記樹脂層のエッチング成分を含有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、親水防汚コート構造の形成方法であって、テトラアルコキシシランと、ベタイン構造体とを含有する溶剤を基材層表面に塗布し、前記アルコキシシランおよび前記ベタイン構造体のシラン部分を加水分解して、前記基材層にガラスライクコート層およびベタイン構造体層を形成することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記基材層は樹脂層であり、前記溶剤は前記樹脂層のエッチング成分を含有することを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、親水防汚コート構造の形成方法であって、塗料樹脂と、ベタイン構造体とを含有する溶剤を基材層表面に塗布し、前記ベタイン構造体のシラン部分を加水分解して、前記基材層に塗料樹脂層およびベタイン構造体層を形成することを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、測量機器であって、請求項1〜4のいずれかに記載の親水防汚コート構造を樹脂製の筐体表面に有することを特徴とする。
本発明によれば、テトラアルコキシシランが縮合重合してケイ素と酸素からなるガラスライクコート層を形成し、基材のOH基とガラスライクコート層のOH基が縮合する。あるいは、基材がOH基に乏しい樹脂の場合は、溶剤にエッチング成分を含有させることにより、樹脂表面が溶解し、微細な凹凸を樹脂層表面に形成し、ガラスライクコート層が樹脂層の凹凸を介して物理的に接着される。
さらに、ベタイン構造体のシラン部分が縮合重合し、ベタイン構造体層を形成するとともに、ガラスライクコート層のOH基とも縮合してシロキサン結合を形成する。
このように、基材層とガラスライクコート層が物理的あるいは化学的に接着され、ガラスライクコート層とベタイン構造体層が化学的に結合されているので、三者の密着力が格段に向上する。これにより、最表面に突出するベタイン構造部分の親水性を長期に亘り発揮することができ、過酷な環境で使用される樹脂製筐体の親水性を向上させることができる。本発明では、従来の撥水撥油性コートとは逆の発想で防汚コートに親水性を持たせているため、一時的には汚れが付着しやすいが、コートが親水性であるため、水洗浄により水がコート表面に入り込み、容易に汚れを洗い落とすことができるという効果を奏する。
本発明の第1実施形態に係る親水防汚コート構造の形成工程を模式的に示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る親水防汚コート構造の形成工程を模式的に示す断面図である。 本発明のベタイン構造体の構造を示す図である。 第1実施形態のガラスライクコート層積層工程における化学的状態を示す模式図である。 第1実施形態のガラスライクコート層積層工程における化学的状態を示す模式図である。 第1実施形態のガラスライクコート層積層後であってベタイン構造体層積層工程における化学的状態を示す模式図である。 第1実施形態のベタイン構造体層積層後における化学的状態を示す模式図である。 第2実施形態のガラスライクコート部分+ベタイン構造体部分を有する親水層の一液積層工程における化学的状態を示す模式図である。 第2実施形態のガラスライクコート部分+ベタイン構造体部分を有する親水層の一液積層後における化学的状態を示す模式図である。 第3実施形態の塗料樹脂(ポリエステル)部分+ベタイン構造体部分を有する親水層の一液積層工程における化学的状態を示す模式図である。 第3実施形態の塗料樹脂(ポリエステル)部分+ベタイン構造体部分を有する親水層の一液積層後における化学的状態を示す模式図である。 第4実施形態のガラスライクコート層を形成する二種類のアルコキシシランの化学的状態を示す模式図である。 第4実施形態のガラスライクコート層積層後における化学的状態を示す模式図である。 第4実施形態のガラスライクコート層積層後における化学的状態を示す模式図である。 第4実施形態のガラスライクコート層積層後であってベタイン構造体層積層工程における化学的状態を示す模式図である。 第4実施形態のベタイン構造体層積層後における化学的状態を示す模式図である。 実施例および比較例の試験結果を示す写真であり、(a)は測量機器表面が下水等の汚物で汚れている状態、(b)は水で洗浄している状態を示す。 本発明の具体例であるレーザ照射装置の斜視図である。 本発明の具体例であるレーザ照射装置の斜視図である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
1.第1実施形態:ガラスライクコート層とベタイン構造体層の二液積層
(1−1.構成)
図1に、本発明の第1実施形態に係る親水防汚コート構造1を示す。また、図4〜7に、親水防汚コート構造1の各層を形成する際の化学的状態を示す。
図1(d)で符号10は、ABS等の樹脂で構成された基材であり、本発明では特に、測量機器の筐体への適用を主目的としているが、これらのみに限定されない。測量機器には、複数の下水道用パイプが直線上に配置されているかどうか検知するためのパイプレーザー機器、家屋内の水平位置等を検知するための回転レーザー機器、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)本体及び電波受発信用アンテナ、地形情報をデジタル情報で検出するためのスキャナー、稲等の農作物の発育状況を検知するための分光分析装置、地形情報を上空から撮影するためのUAV(Unmanned aerial vehicle、無人航空機、ドローン(drone)とも呼ばれる。)等の装置を含む。
エッチングされて表面にナノオーダーの微細な凹凸が形成された樹脂基材10上には、主にケイ素と酸素から構成されたガラスライクコート層11が積層されている。ガラスライクコート層11が樹脂基材10表面の微細な凹部に入り込み、アンカー効果により両者は物理的に接着された状態である。
ガラスライクコート層11上には、ベタイン構造体層12が積層されている。両層は、ガラスライクコート層11表面に存在するOH基と、ベタイン構造体層12表面(下側)に存在するOH基とが縮合し、シロキサン結合(Si−O−Si)によって化学的に結合した状態である。
ここで、「ベタイン」とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合しておらず(四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどのカチオン構造をとる)、分子全体としては電荷をもたない化合物(分子内塩)の総称であり、自然界では植物や海産物などに広く存在する物質で、食品添加物や化粧品の保湿剤として使用されている。慣用名ではこれらをベタインと総称していて、代表的な化合物としては、C11NOの化学式で表されるトリメチルグリシン、グリシンベタインが知られている。
そして、本発明における「ベタイン構造体」とは、このようなベタインを官能基としてその一部に有する化合物のことであり、その構造の一例を図3に示す。図3は、ベタイン構造としてトリメチルグリシンを採用したベタイン構造体の例であるが、本発明のベタイン構造体は、図面上方のベタイン構造部分Aと、図面下方のシラン部分Bとからなる。
図7に示すように、ベタイン構造体層12の表面(上側)には、ベタイン構造部分が配向しており、窒素原子上の正電荷と酸素原子上の負電荷に分極しており、親水性を示す。これにより、汚れの付着、汚れ成分によるシミの発生に対して水洗いして汚れを除去できる防汚性を発揮する。
(1−2.形成工程)
次に、第1実施形態の親水コート構造の形成工程を説明する。図1(a)に示すように、測量機器等の筐体である樹脂製の基材10を用意する。樹脂基材10の表面は、当初よりエンボス加工やシボ加工といった凹凸を有していても良いし、平滑であってもよい。図では、平滑な状態を図示している。
続いて、図1(b)に示すように、樹脂基材10の表面に、テトラアルコキシシランと、樹脂基材10を溶解可能な成分と、必要に応じて他の添加剤とを、これらを溶解可能な溶媒に溶解させた溶剤(以下、ガラスライクコート剤と略称する場合がある)を塗布する。
ガラスライクコート剤塗布後、静置すると、溶剤中に溶解している樹脂基材10を溶解可能な成分(エッチング成分)が、樹脂基材10の表面を浸食し、図1(c)に示すように、樹脂基材10の表面にナノオーダーの微細な凹凸を形成する。同時に、図4および5に示すように、テトラアルコキシシランのアルコキシ基どうしが大気中の湿気で加水分解されるとともに縮合重合して、ガラスライクなネットワークを形成する。図1(c)および図5に示すように、ガラスライクコート層11は、樹脂基材10の微細な凹部に入り込んだ状態で硬化し、アンカー効果により物理的に接着される。ガラスライクコート層11の表面には、テトラアルコキシシランのアルコキシ基が加水分解されて生じたOH基が多数表面に突出している。
次に、図6に示すように、ガラスライクコート層11の表面に、ベタイン構造体と、必要に応じて他の添加剤とを、これらを溶解可能な溶媒に溶解させた溶剤(以下、ベタイン構造体剤と略称する場合がある)を塗布する。
ベタイン構造体剤塗布後、静置すると、図7に示すように、ベタイン構造体のシラン部分のアルコキシ基が大気中の湿気で加水分解されて、ベタイン構造体のシラン部分どうしが縮合重合するとともに、ガラスライクコート層11から突出するOH基とも縮合して、シロキサン結合を形成する。このように、ガラスライクコート層11と、ベタイン構造体層12は、化学的に結合される。
(1−3.作用効果)
第1実施形態によれば、テトラアルコキシシランと、樹脂のエッチング成分を含有する溶剤を含有する溶剤を樹脂表面に塗布しているので、エッチング成分により樹脂表面が溶解され、ナノオーダーの微細な凹凸が樹脂層表面に形成されるとともに、テトラアルコキシシランが加水分解されて縮合重合し、ケイ素と酸素からなるガラスライクコート層を形成し、この層が樹脂層の微細な凹凸を介して物理的に接着される。
さらに、第1実施形態においては、ベタイン構造体を含有する溶剤をガラスライクコート層に塗布しているので、ベタイン構造体のシラン部分が加水分解されて縮合重合し、ベタイン構造体層を形成するとともに、ガラスライクコート層のOH基とも縮合してシロキサン結合を形成する。
このように、樹脂層とガラスライクコート層がアンカー効果により物理的に接着され、ガラスライクコート層とベタイン構造体層がシロキサン結合により化学的に結合されているので、三者の密着力が格段に向上するという効果を奏する。
2.第2実施形態:防汚層(ガラスライクコート部分とベタイン構造体部分)の一液積層
(2−1.構成)
図2に、本発明の第2実施形態に係る防汚コート構造2を示す。また、図8〜9に、防汚コート構造2の各層を形成する際の化学的状態を示す。図2(c)で符号20は、第1実施形態と同じ樹脂基材である。
エッチングされて表面にナノオーダーの微細な凹凸が形成された樹脂基材20上には、第1実施形態におけるガラスライクコート層11に相当する部分とベタイン構造体層12に相当する部分が1層の内部に形成されている防汚層21が積層されている。この防汚層21は、一液積層によって形成されていて、明確な界面を有さないが、ガラスライクコート部分とベタイン構造体部分とに分離している。防汚層21の下側に存在するガラスライクコート部分が樹脂基材20表面の微細な凹部に入り込み、アンカー効果により両者は物理的に接着された状態である。
防汚層21内では、ガラスライクコート部分由来のOH基と、ベタイン構造体のシラン部分由来のOH基とが縮合し、シロキサン結合(Si−O−Si)によって化学的に結合した状態である。
図9に示すように、防汚層21の表面(上側)には、ベタイン構造部分が配向しており、窒素原子上の正電荷と酸素原子上の負電荷に分極しており、親水性を示す。これにより、汚れの付着、汚れ成分によるシミの発生に対して水洗いによって汚れを洗浄できる防汚性を発揮する。
(2−2.形成工程)
次に、第2実施形態の防汚コート構造の形成工程を説明する。図2(a)に示すように、測量機器、眼科機器等の筐体である樹脂製の基材20を用意する。樹脂基材20の表面は、平滑な状態を図示している。
続いて、図2(b)に示すように、樹脂基材10の表面に、テトラアルコキシシランと、樹脂基材20を溶解可能な成分と、ベタイン構造体と、必要に応じて他の添加剤と、これらを溶解可能な溶媒に溶解させた溶剤(以下、一液防汚コート剤と略称する場合がある)を塗布する。
一液防汚コート剤塗布後、静置すると、溶剤中に溶解している樹脂基材20を溶解可能な成分(エッチング成分)が、樹脂基材20の表面を浸食し、図2(c)に示すように、樹脂基材20の表面にナノオーダーの微細な凹凸を形成する。
このとき、図8および9に示すように、テトラアルコキシシランのアルコキシ基どうしが大気中の湿気で加水分解されるとともに縮合重合して、ガラスライクなネットワークを形成し、同時に、ベタイン構造体のシラン部分のアルコキシ基が大気中の湿気で加水分解されて、ベタイン構造体のシラン部分どうしが縮合重合するとともに、ガラスライクコート部分由来のOH基とベタイン構造体のシラン部分由来のOH基と縮合して、シロキサン結合を形成する。
このように、ガラスライクコート部分と、ベタイン構造体部分は、防汚層21内で分離して、かつ互いにシロキサン結合で化学的に結合された状態で防汚層21が形成される。図2(c)および図8に示すように、防汚層21のガラスライクコート部分は、樹脂基材20の微細な凹部に入り込んだ状態で硬化し、アンカー効果により物理的に接着される。
一層である防汚層21の内部でガラスライクコート部分とベタイン構造体部分が上下に分離するメカニズムとしては、溶媒の蒸発に伴って溶解度パラメータが変化し、溶けきれなくなった一方の成分が優先的に析出することと、ベタイン構造部分の表面エネルギーが低く、表面側(上側)に優先的に析出することで説明される。
(2−3.作用効果)
本発明によれば、第2実施形態においてはテトラアルコキシシランと、樹脂のエッチング成分と、ベタイン構造体を含有する溶剤を樹脂表面に塗布しているので、エッチング成分により樹脂表面が溶解され、ナノオーダーの微細な凹凸が樹脂層表面に形成されるとともに、テトラアルコキシシランが加水分解されて縮合重合し、ケイ素と酸素からなるガラスライクコート部分を形成し、この部分が樹脂層の微細な凹凸を介して物理的に接着される。また、同時に、ベタイン構造体のシラン部分が加水分解されて縮合重合し、ベタイン構造体部分を形成するとともに、ガラスライクコート部分のOH基と縮合してシロキサン結合を形成する。 なお、これは、例えば上述の特許文献4に開示されているような樹脂とOH基とが縮合する場合と比較し硬度が高く、特許文献4の塗料と異なり表面の耐久性が高い。
このように、樹脂層と防汚層が物理的に接着され、防汚層内ではガラスライクコート部分とベタイン構造体部分が化学的に結合されているので、二層の密着力が格段に向上する。これにより、最表面に突出するベタイン構造部分の親水防汚性を長期に亘り発揮することができ、過酷な環境で使用される測量機器の防汚性を向上させることができる。
(第1および第2実施形態:まとめ、その他変更例)
第1実施形態および第2実施形態は、金属やガラス等と異なり表面にOH基が少なく、また、表面の活性化が困難で、親水コーティングを直接的に行うことが難しい樹脂に対して特に有効である。そのような樹脂としては、特に限定されないが、測量装置、その他の測定装置の筐体に多用されているABSが特に好ましい。
なお、第1実施形態および第2実施形態において基材が金属やガラス等のOH基が豊富な場合は、エッチング成分は不要で、ガラスライクコート層のOH基は基材のOH基と縮合して化学的に結合する。
本発明の第1実施形態におけるガラスライクコート層は、数百μm以下の厚さに形成することが好ましい。理由は厚くなるとクラックが発生しやすくなるためである。
本発明の第1実施形態におけるベタイン構造体層は、数nm〜数十nmが好ましい。
本発明の第2実施形態における防汚層は、第1実施形態と同様の範囲の厚さのガラスライクコート層+ベタイン構造体層となるように、両者の材料を配合して一度に塗布することが好ましい。
本発明のガラスライクコート剤および一液防汚コート剤に含有されるアルコキシシランとしては、ケイ素の全ての結合方向にシロキサン結合のネットワークを形成するため、4,3,2官能の物が選択され、テトラ/トリ/ジメトキシシラン、テトラ/トリ/ジエトキシシラン、テトラ/トリ/ジプロポキシシランが好ましい。溶剤中の濃度範囲は、第1実施形態では50〜99%、第2実施形態では80〜99%である。
本発明のベタイン構造体剤および一液防汚コート剤に含有されるベタイン構造体としては、図3に示すとおり、ケイ素の一つの結合方向に親水防汚性能を発揮するベタイン構造部分を有し、残りの三結合方向にシロキサン結合のネットワークを形成するため、三つのアルコキシ基を有することが要求される。
ベタイン構造部分を構成するベタインとしては、慣用名では、グリココールベタイン、α−アールレイン、ロラミンAMB−13、ルブリンC、アブロミン、グリシルベタイン、トリメチルグリココール、オキシニューリン、オキシノイリン、グリシンベタイン、リシン、トリメチルグリシン等が挙げられる。また、体系名では、2−(トリメチルアミニオ)酢酸アニオン、N,N-ジメチル−N−(カルボキシラトメチル)メタンアミニウム、トリメチルアミニオアセタート、N,N,N−トリメチルアミニオアセタート、カルボキシラトメチルトリメチルアミニウム、カルボキシラト−N,N,N−トリメチルメタンアミニウム、N,N,N−トリメチルカルボキシラトメタンアミニウム、(カルボキシラトメチル)トリメチルアミニウム、N,N−ジメチル−N−カルボキシラトメチルメタンアミニウム、α−カルボキシラト−N,N,N−トリメチルメタンアミニウム、2−オキソ−2−オキシラト−N,N,N−トリメチルエタンアミニウム、N,N,N−トリメチル−2−オキシラト−2−オキソエタンアミニウム、(トリメチルアミニオ)酢酸アニオン、(トリメチルアミニオ)アセタート、カルボキシラトメチルトリメチルアンモニウム、(2−オキソ−2−オキシラトエチル)トリメチルアミニウム、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルアミドエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン等が挙げられる。
官能基のアルキコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましい。
本発明においては、ガラスライクコート剤、ベタイン構造体剤、防汚コート剤の塗布方法は、公知の塗布法、浸漬法、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的蒸着法等が採用できるが、機器の筐体全面に施すという必要性およびコストの面から、湿式の方法が好ましい。
3.第3実施形態:防汚層(塗料部分とベタイン構造体部分)の一液積層
(3−1.構成)
図10〜11に、本発明の第3実施形態に係る防汚コート構造3の各層を形成する際の化学的状態を示す。本実施形態では、図11で符号30は、第1実施形態と同様樹脂基材とすることもでき、また、符号30をダイキャスト構造として、これら基材に直接的に塗料とベタイン構造体部分の一液塗布による防汚層を設けることもできる。
本実施形態においては、第1および第2実施形態とは異なり、ガラスライクコート層を設けず、樹脂やダイキャストの筐体に塗装をする際の塗料にベタイン構造体を混合し、1液塗布にて、塗料と親水防汚コートを形成することを特徴としている。
図11に示すように、樹脂やダイキャストからなる基材30上には、塗料樹脂部分とベタイン構造体部分が1層の内部に形成されている防汚層31が積層されている。この防汚層31は、一液積層によって形成されていて、明確な界面を有さないが、塗料樹脂部分とベタイン構造体部分とに分離している。ベタイン構造体部分のOH基の水素原子は、塗料樹脂部分の酸素原子に対して水素結合しており、これにより塗料樹脂部分とベタイン構造体部分とが密着している。
防汚層31の下側に存在する塗料樹脂部分は、基材30表面に対して密着性の良いものが選択される。図11ではポリエステル樹脂が例示されているが、これのみに限定されず、ベタイン構造体部分と水素結合して防汚層31を形成することができる塗料樹脂であれば公知のものが選択できる。
防汚層31の表面(上側)には、ベタイン構造部分が配向しており、窒素原子上の正電荷と酸素原子上の負電荷に分極しており、親水性を示す。これにより、汚れの付着、汚れ成分によるシミの発生に対して水洗いによって汚れを洗浄できる防汚性を発揮する。
(3−2.形成工程)
次に、第3実施形態の防汚コート構造の形成工程を説明する。図10に示すように、ベタイン構造部分とトリアルコキシシラン部分を有するベタイン構造体と、ポリエステル樹脂成分の混合物を用意し、必要に応じて他の添加剤と、これらを溶解可能な溶媒に溶解させた溶剤(一液防汚コート塗料)とする。続いて、基材30の表面に、この溶剤を塗布する。基材と塗料樹脂の密着性に問題がある場合は基材のエッチング成分を含有させて基材にミクロの凹凸を形成し、塗料樹脂と物理的に密着させることは第1および第2実施形態と同様である。
一液防汚コート塗料を塗布後、静置すると、図11に示すように、ポリエステル樹脂が基材30を被覆して塗料樹脂層を形成し、同時に、ベタイン構造体のシラン部分のアルコキシ基が大気中の湿気で加水分解されてヒドロキシル基となり、ポリエステル樹脂との間に水素結合を形成する。
このように、塗料樹脂層であるポリエステル樹脂部分と、親水コートであるベタイン構造体部分は、防汚層31内で分離して、かつ互いに水素結合で結合された状態で防汚層31が形成される。
一層である防汚層31の内部でポリエステル樹脂部分とベタイン構造体部分が上下に分離するメカニズムとしては、溶媒の蒸発に伴って溶解度パラメータが変化し、溶けきれなくなった一方の成分が優先的に析出することと、ベタイン構造部分の表面エネルギーが低く、表面側(上側)に優先的に析出することで説明される。
(3−3.作用効果)
本実施形態によれば、塗料成分であるポリエステル樹脂と、ベタイン構造体を含有する溶剤を基材表面に塗布しているので、ポリエステル塗料樹脂が基材に塗布されると共に、ベタイン構造体のシラン部分が加水分解されてヒドロキシル基を形成し、ベタイン構造体部分をポリエステル樹脂部分の表面に形成することができる。
このように、従来、基材に塗布していた塗料樹脂にベタイン構造体を添加することで、基材に対する塗装と、その上に形成される親水防汚コートを同時に形成することができる。
なお、ポリエステル樹脂等の塗料を基材表面に塗装した完成品に対してベタイン構造体を塗布する2液積層によっても、本実施形態と同様の親水防汚コートを形成することができる。
4.第4実施形態:ガラスライクコート層とベタイン構造体層の二液積層
(4−1.構成)
図12〜16に、本発明の第4実施形態に係る親水防汚コート構造4の各層を形成する際の化学的状態を示す。
図16に示すように、基材40上には、主にケイ素と酸素から構成されたガラスライクコート層41が積層されている。ガラスライクコート層41が基材40表面の微細な凹部に入り込み、アンカー効果により両者は物理的に接着された状態である。
ガラスライクコート層41上には、ベタイン構造体層42が積層されている。両層は、ガラスライクコート層41表面に存在するOH基と、ベタイン構造体層42表面(下側)に存在するOH基とが縮合し、シロキサン結合(Si−O−Si)によって化学的に結合した状態である。
(4−2.形成工程)
次に、第4実施形態の親水コート構造の形成工程を説明する。本実施形態では、ガラスライクコート層41を形成するために、図12に示すように、二種類のテトラアルコキシシランを含有する溶剤を用いる。二種類のうち一方はテトラアルコキシシランの4つのアルコキシ基のうち1つがOR、残りの3つがORであるもの(Si(OR)(OR)と、4つが全て同じORであるもの(Si(OR)である。ここで、ORとORは、加水分解速度がOR<ORとなるような組み合わせであれば限定されず、例えば、ORがメトキシ基であれば、ORがエトキシ基やプロポキシ基が選択される。
これらSi(OR)(ORとSi(ORを含む溶剤を樹脂の基材40に塗布すると、ORの加水分解速度の方が大きいため、Si(ORは全てのアルコキシ基が加水分解されてOH基となり、Si(OR)(ORはORを残して3つのアルコキシ基が加水分解されてOH基となる。そしてOH基が脱水縮合して、図13に示すように表面にOR基が突出したガラスライクコート層41が形成される。
続いて、加水分解速度が低いORも遅れて加水分解されてOH基となり、図14に示すように表面にOH基が突出したガラスライクコート層41が形成される。
また、本実施形態では、第1および第2実施形態同様、基材40のエッチング成分を含有させて基材40にミクロの凹凸を形成し、ガラスライクコート層41と物理的に密着させた状態を図示しているが、基材が金属やガラス等のOH基が豊富な場合は、ガラスライクコート層41のOH基と脱水縮合して化学的に結合する。
この後は、図15に示すようにガラスライクコート層41上にベタイン構造体を含む溶剤を塗布して、ベタイン構造体を加水分解および脱水縮合させ、図16に示すようにベタイン構造体層42を形成する。この過程は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
(1−3.作用効果)
第4実施形態によれば、第1および第2実施形態で説明したとおり、ケイ素と酸素からなるガラスライクコート層が基材の微細な凹凸を介して物理的に接着され、ベタイン構造体層がガラスライクコート層のOH基とも縮合してシロキサン結合を形成する。このように、基材とガラスライクコート層がアンカー効果により物理的に接着され、ガラスライクコート層とベタイン構造体層がシロキサン結合により化学的に結合されているので、三者の密着力が格段に向上するという効果を奏する。
本実施形態では、上記に加えて、ガラスライクコート層を形成するために二種類のテトラアルコキシシランを混合させているので、加水分解速度が相対的に低いOR基が特定方向に配向して最表面に突出することが優先的に起こる。そしてこのOR基が加水分解されることで生じたOH基も同様に配向して最表面に突出する。このようにすることで、1種類のアルコキシシランを用いた場合はOH基が表面に突出する場合や埋没して突出しない場合など配向方向が様々であるのに比較して、最表面にOH基をより確実に特定の配向方向に突出させることができ、続いて形成されるベタイン構造体層との密着性が改善されるという効果を奏する。
(5.具体例)
本発明の親水防汚コート構造を施す測量機器の具体例として、レーザ照射装置100について図18および19に示すとともに説明する。
レーザ照射装置100の本体部101は円筒状をしており、該本体部101は4本の支持脚110により支持される。本体部101は筒状の筐体102内部に、図示しないレーザ発振装置が上下方向、水平方向の2方向に揺動可能に設けられており、該レーザ発振装置は水平方向、鉛直方向の2方向にレーザ光線を照射する様構成されている。
本体部101の前面にはガラスで覆われた投光窓103が設けられ、該投光窓103を通して前記レーザ発振装置からのレーザ光線が照射される様になっている。
前記投光窓103の上部に受光窓104が設けられ、該受光窓104を通してターゲットからの反射レーザ光線を受光し、又リモートコントロール用の操作信号光を受光する。
前記本体部101の前面には前部脚105が設けられ、該前部脚105を介してレーザ照射装置100は立てて設置することも可能となっている。
前記本体部101の上面にはレーザ保護カバー106が設けられている。本体部101の後部は傾斜しており、傾斜面は操作パネル121を兼ねており、該操作パネル121には各種操作スイッチ122が設けられていると共に表示部130、気泡管123及び前記受光窓104と同様にリモートコントロール操作信号を受光する受光窓124が設けられている。該受光窓124は傾斜した前記操作パネル121に設けられているのでリモートコントローラにより水平方向、垂直方向のいずれの方向からも遠隔操作が可能であり、縦坑の外から地下のレーザ照射装置100に向かって遠隔操作することができる。又、前記表示部130が傾斜した操作パネル121に設けられているので同様に上方から表示内容を確認することができる。
本体部101は、ダイキャスト構造になっており、従来においては、ダイキャスト構造の表面に塗料(加飾のみ)を施して最終製品としていた。これに対して、本発明においては、塗料上に第1、2、4実施形態で説明した通りにして親水防汚コートを塗布すればよい。
あるいは、未塗装のダイキャスト構造に直接親水性塗料を塗布する際には、それが有機系塗料である場合には第3実施形態のとおりにして、塗装したい有機系塗料に本発明のベタイン構造体を含有する親水化剤を混合させればよい。無機系塗料である場合にも第3実施形態のとおりにして無機系塗料に本発明のベタイン構造体を含有する親水化剤を混合させる方法の他、ガラスライクコート層にこれを塗布してもよい。
以上、従来の塗装の上に本発明の親水防汚コートを施す形態、塗料と親水防汚コートを混合して施す形態を説明したが、これらの塗布形態は、塗布する箇所全面を同じ形態で塗布する必要は必ずしもなく、部分ごとにこれらの形態を組み合わせることができる。なお、ダイキャスト、樹脂部品ともに、量産効率とコストを考慮してスプレー塗装を行うことが好ましい。
操作パネル121以外の傾斜面や、投光窓103、投光窓104以外の本体部101の前面は、プラスチック部品からなり、塗装を介さず、直接本発明の親水防汚コートがほどこされている。
操作パネル121には、親水防汚コートのフィルム(例えば、PET等)が塗布され、そのフィルムフィルム上に親水防汚コートを塗布される。
投光窓103や投光窓104のガラスには、反射防止膜が塗布されており、その反射防止膜の上に親水防汚コートが塗布される。この親水防汚コートは、単分子構造になっており、有機系、又は無機系の単分子、または、樹脂自体が親水性のものから構成されている。
すなわち、「(1)無機系(ガラス系)」が挙げられ、シロキサン結合の分子鎖においてSi原子にヒドロキシル基が存在し、複数の分子鎖間においてヒドロキシル基が架橋してネットワークを形成する。または、「(2)有機系(水溶性ポリマー、ポリエステル等)」が挙げられ、この場合は炭素鎖にヒドロキシル基が存在し、UV照射および加熱によって架橋してネットワークを形成する。いずれも場合も3次元的に架橋構造を構成させて塗膜が硬化し、耐水耐久性が良くなる。
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明する。
測量機器の一部の製品は、下水管内に設置され使用されるため、筐体に下水の汚物等が付着し、汚れてしまう。その状況を再現するべく、実施例および比較例の測量機器筐体表面に、下水の汚物を塗布し、乾燥させた後に下水の汚物を水で流し、剥離後の外観を観察した。実施例では、ガラスライクコートである測量機器筐体表面に、本発明の第1実施形態の親水防汚コート構造を採用した。比較例では、表面は未コートのガラスライクコートのままである。
具体的には、図10(a)に示すように、1台の測量機器(パイプレーザ)の表面に左半分は実施例の親水防汚コート、右半分に比較例のガラスライクコートを施し、下水を付着させた。この下水による汚れを乾燥させた後、図10(b)に示すように水で洗浄を行った。
実施例の親水防汚コートを施した装置の部分に水を噴射すると、下水の汚物が剥離して流れた。このように、汚物の除去がしやすく、また、図10(b)に示すように、その跡も残らなかった。一方、比較例では、汚物が強く密着しており、手でふき取る必要があった。また、図10(b)に示すように、表面に汚物剥離跡が残り、悪臭も残った。
なお、親水防汚コートをしていたとしても、悪臭は残ってしまう可能性があるため、親水防汚コート中に香料を入れておくこともできる。
また、本実施例においては樹脂製の測量機器本体だけに親水防汚コートをしたが、測量作業で用いるプリズム、反射ミラーなどのガラス部材にも親水防汚コートしても同様の効果が得られた。
親水防汚コート層最表面に突出するベタイン構造部分の親水防汚性を長期に亘り発揮させることで、過酷な環境で使用される測量機器の防汚性能の耐久性を向上させることができる。
1:親水防汚コート構造
10:基材(樹脂基材)
11:ガラスライクコート層
12:ベタイン構造体層
2:親水防汚コート構造
20:基材(樹脂基材)
21:一液積層で形成された防汚層(ガラスライクコート部分+ベタイン構造体部分)
3:親水防汚コート構造
30:基材
31:一液積層で形成された防汚層(塗料樹脂部分+ベタイン構造体部分)
4:親水防汚コート構造
40:基材
41:ガラスライクコート層
42:ベタイン構造体層
100:レーザ照射装置
101:本体部
110:支持脚
102:筒状の筐体
103:投光窓
104:受光窓
105:前部脚
106:レーザ保護カバー
121:操作パネル
122:各種操作スイッチ
123:気泡管
124:受光窓
130:表示部


Claims (11)

  1. 基材層と、
    前記基材層に設けられたガラスライクコート層と、
    前記ガラスライクコート層に設けられたベタイン構造体層と
    を有することを特徴とする親水防汚コート構造。
  2. 前記基材層は樹脂層であり、表面がエッチングされたものであることを特徴とする請求項1に記載の親水防汚コート構造。
  3. 基材層と、
    前記基材層に設けられた塗料樹脂層と、
    前記塗料樹脂層に設けられたベタイン構造体層と
    を有することを特徴とする親水防汚コート構造。
  4. 前記塗料樹脂は、ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の親水防汚コート構造。
  5. 親水防汚コート構造の形成方法であって、
    テトラアルコキシシランを含有する溶剤を基材層表面に塗布し、
    前記アルコキシシランを加水分解して前記基材層にガラスライクコート層を形成し、
    ベタイン構造体を含有する溶剤を前記ガラスライクコート層に塗布し、
    前記ベタイン構造体のシラン部分を加水分解して前記ガラスライクコート層にベタイン構造体層を形成することを特徴とする親水防汚コート構造の形成方法。
  6. 前記テトラアルコキシシランを含有する溶剤は、4つの官能基が全て同一のテトラアルコキシシランと、1つの官能基が異なるテトラアルコキシシランとを含むことを特徴とする請求項5に記載の親水防汚コート構造の形成方法。
  7. 前記基材層は樹脂層であり、前記テトラアルコキシシランを含有する溶剤は前記樹脂層のエッチング成分を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の親水防汚コート構造の形成方法。
  8. 親水防汚コート構造の形成方法であって、
    テトラアルコキシシランと、ベタイン構造体とを含有する溶剤を基材層表面に塗布し、
    前記アルコキシシランおよび前記ベタイン構造体のシラン部分を加水分解して、前記基材層にガラスライクコート層およびベタイン構造体層を形成することを特徴とする親水防汚コート構造の形成方法。
  9. 前記基材層は樹脂層であり、前記溶剤は前記樹脂層のエッチング成分を含有することを特徴とする請求項8に記載の親水防汚コート構造の形成方法。
  10. 親水防汚コート構造の形成方法であって、
    塗料樹脂と、ベタイン構造体とを含有する溶剤を基材層表面に塗布し、
    前記ベタイン構造体のシラン部分を加水分解して、前記基材層に塗料樹脂層およびベタイン構造体層を形成することを特徴とする親水防汚コート構造の形成方法。
  11. 請求項1〜4に記載の親水防汚コート構造を樹脂製の筐体表面に有することを特徴とする測量機器。
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