以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による給電システム1の構成を示す概略図である。給電システム1は、母線(高圧母線)2、商用電源3、発電装置5、遮断器4、6、配電線Da、Db、Dc、Dd、De、遮断器11a、11b、11c、11d、11e、負荷13a、13b、13c、13d、13e、電力計14a、14b、14c、14d、14e、制御部20および記憶部30を含んで構成される。図1では、電力の流れを実線で、信号の流れを破線の矢印で示している。
母線2は、変電所などの電力施設内における共通線である。商用電源3は、遮断器4を介して母線2に接続され、母線2に電力を供給する。遮断器4は、商用電源3と母線2との電気的な接続を開閉する。発電装置5は、例えば、コージェネレーションシステムなどの分散型の発電装置である。発電装置5は、遮断器6を介して母線2に接続され、母線2に電力を供給する。遮断器6は、発電装置5と母線2との電気的な接続を開閉する。
母線2には、複数の配電線Da、Db、Dc、Dd、Deが並列に接続されている。配電線Daは、遮断器11aを介して負荷13aに接続される。配電線Dbは、遮断器11bを介して負荷13bに接続される。配電線Dcは、遮断器11cを介して負荷13cに接続される。配電線Ddは、遮断器11dを介して負荷13dに接続される。配電線Deは、遮断器11eを介して負荷13eに接続される。
配電線Da、Db、Dc、Dd、Deを区別しない場合、配電線Dと表記する。遮断器11a、11b、11c、11d、11eを区別しないときは、遮断器11と表記する。負荷13a、13b、13c、13d、13eを区別しないときは、負荷13と表記する。
配電線Dには、商用電源3および発電装置5から母線2を介して電力が供給される。配電線Dに供給された電力は、遮断器11を介して負荷13に供給される。負荷13は、例えば、需要家において電力を消費する様々な機器である。
遮断器11は、配電線Dの途中に挿入されており、負荷13への電力の供給および遮断を切り替える。具体的には、遮断器11は、配電線Dにおける母線2側の配電線Dに接続される第1接点(図示略)と、配電線Dにおける負荷13側の配電線Dに接続される第2接点(図示略)とを含んで構成される。第1接点と第2接点との間が閉じられると、母線2側の配電線Dと負荷13側の配電線Dとが電気的に接続され、負荷13へ電力が供給される。第1接点と第2接点との間が開かれると、母線2側の配電線Dと負荷13側の配電線Dとの電気的な接続が切れ、負荷13への電力の供給が遮断される。遮断器11の第1接点および第2接点間を閉じる(オンする)ことを投入と呼ぶ。遮断器11の第1接点および第2接点間を開く(オフする)ことを遮断と呼ぶ。
配電線Daには電力計14aが設けられており、配電線Dbには電力計14bが設けられており、配電線Dcには電力計14cが設けられており、配電線Ddには電力計14dが設けられており、配電線Deには電力計14eが設けられている。電力計14a、14b、14c、14d、14eを区別しないときは、電力計14と表記する。電力計14は、配電線Dを通る電力を測定することで、間接的に、負荷13において消費される消費電力の瞬時値を測定する。
制御部20は、CPU、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成される。制御部20は、ROMに格納されたプログラムを実行することで、消費電力取得部21、発電電力取得部22、配電線選別部23および遮断器制御部24として機能する。
消費電力取得部21は、電力計14によって測定される負荷13の消費電力の瞬時値を所定の周期(例えば、10秒間隔など)で取得する。発電電力取得部22は、発電装置5の発電電力の瞬時値を所定の周期(例えば、10秒間隔など)で取得する。
配電線選別部23は、消費電力取得部21が取得した負荷13の消費電力と発電電力取得部22が取得した発電電力とを用いて、配電線Dを、生き残り配電線と遮断配電線とに予め選別する。生き残り配電線は、商用電源3に停電が発生したと仮定した場合に、発電装置5によって電力の供給を維持させる配電線Dのことである。遮断配電線は、商用電源3に停電が発生したと仮定した場合に、商用電源3と発電装置5との両方ともから電力の供給を遮断させる配電線Dのことである。配電線選別部23は、生き残り配電線と遮断配電線との選別を所定の周期(例えば、10秒間隔など)で繰り返し行う。従って、生き残り配電線および遮断配電線は、所定の周期で更新されることになる。生き残り配電線および遮断配電線の選別については、動作の説明において詳述する。
遮断器制御部24は、商用電源3に停電が発生した場合、配電線選別部23によって予め選別された生き残り配電線に対応する遮断器11の投入状態を維持しつつ(遮断させず)、配電線選別部23によって予め選別された遮断配電線に対応する遮断器11を遮断させる。また、遮断器制御部24は、遮断配電線に対応する遮断器11の遮断とほぼ同時に、商用電源3と母線2との間の遮断器4を開く。
記憶部30は、例えば、不揮発性記憶装置である。記憶部30には、配電線選別部23による選別結果である生き残り配電線を示す情報および遮断配電線を示す情報が随時(所定の周期で)格納される。また、記憶部30は、商用電源3に停電が発生した場合、遮断器制御部24によって、記憶部30から、配電線選別部23が直前に選別した生き残り配電線を示す情報および遮断配電線を示す情報が読み出される。遮断器制御部24は、記憶部30から読み出した生き残り配電線および遮断配電線に従って遮断器11の開閉を行う。
次に、給電システム1の動作を説明する。図2は、配電線選別部23の動作の流れを示すフローチャートである。図3は、配電線選別部23の動作を説明するための説明図である。
給電システム1では、配電線Dに予め優先順位が設定されている。ここでは、図3(a)に示す優先情報のように、配電線Dの各々を示す配電線番号に予め優先順位が関連付けられている。図3(a)の優先情報では、優先順位を示す数字が若いほど、優先順位が高いことを示す。例えば、重要な負荷13が接続される配電線Dに、高い優先順位が設定される。優先情報は、例えば、記憶部30に予め格納されている。また、配電線番号には、配電線Dの各々に設けられた遮断器11を示す情報が予め関連付けられている。
配電線選別部23は、起動すると、まず、優先順位を示す変数である優先順位変数k、および、生き残り配電線を通じて電力が供給される負荷13の消費電力の合計値である生き残り電力合計値Wsの初期設定を行う(S100)。具体的には、配電線選別部23は、初期値として、優先順位変数kを1とし、生き残り電力合計値Wsを0kWとする。
次に、配電線選別部23は、発電電力取得部22によって取得された発電装置5の発電電力を参照し、生き残り電力の上限値を設定する(S110)。生き残り電力の上限値は、発電装置5が自立運転に移行した際に供給可能な電力の上限値であり、発電装置5の現在の発電電力と発電装置5の性能として予め規定されている許容負荷変動とから決められる。許容負荷変動は、発電装置5が背負う負荷の変動の許容範囲、すなわち、負荷変動による発電装置5の発電電力の変化の許容範囲である。例えば、定格出力2500kWの発電装置5が発電電力1500kWで運転しており、許容負荷変動が発電電力の±20%である場合、発電装置5は、発電電力1500kWの状態から発電電力1800kW(+20%)の状態および発電電力1200kW(−20%)の状態への変化が許容される。すなわち、発電電力1500kWで連系運転している状態において、発電装置5が自立運転に移行した際に供給可能な電力の上限値は、発電装置5の発電電力(1500kW)に増加方向の許容負荷変動(+20%)を示す電力(300kW)を加算した値である1800kWとなる。また、この状態において、発電装置5が自立運転に移行した際に供給可能な電力の下限値(生き残り電力の下限値)は、発電装置5の発電電力(1500kW)から減少方向の許容負荷変動(−20%)を示す電力(300kW)を減算した値である1200kWとなる。
なお、生き残り電力の上限値および下限値は、発電電力の±20%である場合に限らない。例えば、生き残り電力の上限値から下限値の範囲は、発電電力の0%(すなわち、現在の発電電力の値)から発電電力の−20%の間であってもよい。この場合、現在の発電電力(例えば、1500kW)を生き残り電力の上限値に設定すればよい。また、生き残り電力の上限値および下限値は、発電装置5のガスエンジンの特性が将来の技術革新で向上するなどにしたがって変えてもよい。
給電システム1では、例えば、発電装置5の発電電力と、許容負荷変動と、生き残り電力の上限値と、生き残り電力の下限値とが関連付けられたテーブルが記憶部30に格納されている。配電線選別部23は、このテーブルを参照し、発電電力取得部22によって得られた発電電力に対応する生き残り電力の上限値を決定する。
次に、配電線選別部23は、生き残り電力合計値Wsに消費電力Wkを加算した値が、生き残り電力の上限値以下であるか否かを判定する(S120)。消費電力Wkは、優先順位が優先順位変数k番目の配電線Dに接続された負荷13の消費電力を示す。例えば、消費電力W1(k=1)は、優先順位が1番目の配電線Dに接続された負荷13の消費電力である。生き残り電力合計値Wsに消費電力Wkを加算した値が、生き残り電力の上限値以下である場合(S120におけるYES)、配電線選別部23は、優先順位変数k番目の配電線Dを生き残り配電線に決定する(S130)。一方、生き残り電力合計値Wsに消費電力Wkを加算した値が、生き残り電力の上限値を超える場合(S120におけるNO)、配電線選別部23は、優先順位変数k番目の配電線Dを遮断配電線に決定する(S140)。生き残り電力の上限値が1800kWに設定された例において、具体的に説明する。
消費電力取得部21によって取得された結果、図3(b)に示すように、優先順位が1番目の配電線Dbに接続される負荷13bの消費電力W1(k=1)が900kWであり、優先順位が2番目の配電線Deに接続される負荷13eの消費電力W2(k=2)が400kWであり、優先順位が3番目の配電線Daに接続される負荷13aの消費電力W3(k=3)が600kWであり、優先順位が4番目の配電線Dcに接続される負荷13cの消費電力W4(k=4)が700kWであり、優先順位が5番目の配電線Ddに接続される負荷13dの消費電力W5(k=5)が300kWであったとする。
優先順位変数kが1の場合、生き残り電力合計値Ws(0kW)に消費電力W1(900kW)を加算した値は、900kWであり、生き残り電力の上限値(1800kW)以下である。このため、配電線選別部23は、優先順位が1番目の配電線Dbを生き残り配電線に決定する。
次に、配電線選別部23は、生き残り電力合計値Wsを更新する(S150)。具体的には、配電線選別部23は、現時点の生き残り電力合計値Ws(例えば、0kW)に、優先順位変数k番目の消費電力Wk(例えば、900kW)を加算した値を、新たな生き残り電力合計値Ws(例えば、900kW)に決定する。例えば、配電線選別部23は、生き残り電力合計値Wsを0kWから900kWに更新する。
次に、配電線選別部23は、優先順位変数kをインクリメントする(S160)。例えば、配電線選別部23は、優先順位変数kを1から2に更新する。
次に、配電線選別部23は、すべての配電線Dについて生き残り配電線および遮断配電線の選別が完了したか否かを判定する(S170)。具体的には、配電線選別部23は、優先順位変数kが配電線数よりも大きいか否かを判定する。配電線選別部23は、優先順位変数kが配電線数よりも大きい場合、選別が完了したとして(S170におけるYES)、ステップS180に処理を移す。一方、配電線選別部23は、優先順位変数kが配電線数以下の場合、選別が完了していないとして(S170におけるNO)、ステップS120に処理を移す。
優先順位変数kが2の場合、配電線数(5)以下であるため(S170におけるNO)、配電線選別部23は、ステップS120の処理に戻る。
ステップS120において、優先順位変数kが2の場合、生き残り電力合計値Ws(900kW)に消費電力W2(400kW)を加算した値は、1300kWであり、生き残り電力の上限値(1800kW)以下である(S120におけるYES)。このため、配電線選別部23は、優先順位が2番目の配電線Deを生き残り配電線に決定する(S130)。
配電線選別部23は、生き残り電力合計値Wsを900kWから1300kWに更新する(S150)。生き残り電力合計値Wsが1300kWの場合、生き残り電力合計値Wsは、生き残り電力の上限値(1800kW)と下限値(1200kW)との間の範囲に収まることとなる。配電線選別部23は、優先順位変数kを2から3に更新する(S160)。優先順位変数kが3の場合、配電線数(5)以下であるため(S170におけるNO)、配電線選別部23は、ステップS120の処理に戻る。
ステップS120において、優先順位変数kが3の場合、生き残り電力合計値Ws(1300kW)に消費電力W3(600kW)を加算した値は、1900kWであり、生き残り電力の上限値(1800kW)を超える(S120におけるNO)。このため、配電線選別部23は、優先順位が3番目の配電線Daを遮断配電線に決定する(S140)。
遮断配電線に決定した後、配電線選別部23は、優先順位変数kを3から4に更新する(S160)。優先順位変数kが4の場合、配電線数(5)以下であるため(S170におけるNO)、配電線選別部23は、ステップS120の処理に戻る。
ステップS120において、優先順位変数kが4の場合、生き残り電力合計値Ws(1300kW)に消費電力W4(700kW)を加算した値は、2000kWであり、生き残り電力の上限値(1800kW)を超える(S120におけるNO)。このため、配電線選別部23は、優先順位が4番目の配電線Dcを遮断配電線に決定する(S140)。
遮断配電線に決定した後、配電線選別部23は、優先順位変数kを4から5に更新する(S160)。優先順位変数kが5の場合、配電線数(5)以下であるため(S170におけるNO)、配電線選別部23は、ステップS120の処理に戻る。
ステップS120において、優先順位変数kが5の場合、生き残り電力合計値Ws(1300kW)に消費電力W5(300kW)を加算した値は、1600kWであり、生き残り電力の上限値(1800kW)以下である(S120におけるYES)。このため、配電線選別部23は、優先順位が5番目の配電線Ddを生き残り配電線に決定する(S130)。
配電線選別部23は、生き残り電力合計値Wsを1300kWから1600kWに更新する(S150)。生き残り電力合計値Wsが1600kWの場合、生き残り電力合計値Wsは、生き残り電力の上限値(1800kW)と下限値(1200kW)との間の範囲に収まることとなる。配電線選別部23は、優先順位変数kを5から6に更新する(S160)。優先順位変数kが6の場合、配電線数(5)よりも大きいため、選別が完了したとして(S170におけるYES)、配電線選別部23は、ステップS180の処理に移る。
選別の完了後(S170におけるYES)、配電線選別部23は、選別結果である生き残り配電線を示す情報および遮断配電線を示す情報を記憶部30に格納し(S180)、一連の処理を終了する。例えば、配電線選別部23は、図3(c)に示すように、生き残り配電線に決定した配電線Db、De、Ddの配電線番号に、生き残り配電線を示すフラグを付与し、遮断配電線に決定した配電線Da、Dcの配電線番号に、遮断配電線を示すフラグを付与して記憶部30に格納する。
このように、配電線選別部23は、電力計14によって得られた消費電力Wkを、優先順位の高い配電線Dから順に生き残り電力の上限値を超えない範囲で積算し、この積算に供された配電線Dを生き残り配電線に決定する一方、この積算に供されなかった配電線Dを遮断配電線に決定する。給電システム1では、配電線Dを生き残り配電線と遮断配電線とに予め選別して記憶部30に格納することで、商用電源3が停電した時のために準備しておく。また、配電線選別部23は、図2の一連の処理を所定の周期で繰り返し実行することで、生き残り配電線および遮断配電線を、逐次、更新する。
図4は、生き残り配電線および遮断配電線の更新の一例について説明する説明図である。図4は、優先順位が1番目の配電線Dbを通じて電力が供給される負荷13bの消費電力W1が900kWから800kWに変化した場合を示す。
図4の場合、消費電力W1〜W3を積算した生き残り電力合計値Wsが1800kWとなり、生き残り電力の上限値(1800kW)以内となる。このため、配電線選別部23は、優先順位が1番目の配電線Db、優先順位が2番目の配電線De、優先順位が3番目の配電線Daを生き残り配電線に決定し、それ以外の配電線Dc、配電線Ddを遮断配電線に決定する。そして、配電線選別部23は、配電線Db、De、Daの配電線番号に生き残り配電線を示すフラグを付与し、配電線Dc、Ddの配電線番号に遮断配電線を示すフラグを付与して記憶部30に格納する。このようにして、生き残り配電線および遮断配電線が更新される。
図5は、遮断器制御部24の動作の流れを示すフローチャートである。遮断器制御部24は、記憶部30から、生き残り配電線を示す情報および遮断配電線を示す情報を読み出す(S200)。なお、図5では、生き残り配電線の読出しの表記を省略している。
次に、遮断器制御部24は、商用電源3の停電によって、商用電源3からの電力の供給が絶たれたか否かを判定する(S210)。商用電源3からの電力の供給が絶たれていない場合(S210におけるNO)、遮断器制御部24は、ステップS200の処理に戻る。すなわち、遮断器制御部24は、商用電源3からの電力の供給が絶たれるまで(すなわち、商用電源3に停電が発生するまで)、所定の周期でステップS200の処理を繰り返し、停電の発生に備えて待機する。
商用電源3からの電力の供給が絶たれると(S210におけるYES)、遮断器制御部24は、遮断配電線に接続される負荷13を切り離す(S220)。具体的には、まず、遮断器制御部24は、読み出した生き残り配電線を示す情報によって示される配電線Dに対応する遮断器11に、投入状態を維持する指示(生き残り指示)を送信する。この生き残り指示を受信した遮断器11は、投入状態を維持する。なお、遮断器制御部24は、遮断器11に信号を送信しないことで、遮断器11の投入状態を維持するとしてもよい。
一方、遮断器制御部24は、読み出した遮断配電線を示す情報によって示される配電線Dに対応する遮断器11に、遮断させる指示(遮断指示)を送信する。この遮断指示を送信する遮断器11が複数ある場合には、それら遮断器11に、ほぼ同時に遮断指示を送信する。遮断指示を受信した遮断器11は、遮断される。これにより、遮断指示を受信した遮断器11に繋がる負荷13が母線2から切り離される。また、遮断器制御部24は、遮断器11への遮断指示とほぼ同時に、遮断器4に遮断指示を送信して遮断器4を遮断させる。
図3の例では、遮断器制御部24は、遮断配電線を示すフラグが付与された配電線Da、Dcに対応する遮断器11a、11cに遮断指示を送信するとともに、遮断器4に遮断指示を送信する。これにより、遮断器11a、11cに繋がる負荷13a、13cが母線2から切り離される。その結果、母線2には、消費電力W1が900kWの負荷13b、消費電力W2が400kWの負荷13e、消費電力W5が300kWの負荷13dが継続して電気的に接続される(生き残る)こととなる。
母線2に継続して電気的に接続される負荷13b、13d、13eの電力の合計値(生き残り電力合計値Ws)は、1600kWであり、発電装置5が自立運転に移行した際に供給可能な電力の上限値(1800kW)と下限値(1200kW)との間の範囲に収まる。このため、発電装置5は、商用電源3に停電が発生して自立運転に移行した際に、発電電力が1500kWから、上限値と下限値との範囲内の1600kWに変化するだけで、負荷13b、13d、13eへの発電電力の供給を継続することができる。
以上のように、本実施形態の給電システム1は、負荷13の消費電力を優先順位の高い配電線Dから順に上限値を超えない範囲で積算することで、配電線Dを生き残り配電線と遮断配電線とに予め選別しておく。
従って、給電システム1によれば、商用電源3の停電時においても、電力の供給を継続すべき負荷13を即座に特定し、そのような負荷13に適切に電力を供給することができ、電力が供給されない期間を発生させないようにすることが可能となる。例えば、すべての負荷13の消費電力Wkの合計値が発電装置5の発電電力よりも大きい場合、給電システム1では、すべての負荷13の中の一部の負荷13を即座に特定することができる。
また、給電システム1では、生き残り配電線の選別を、優先順位の高い順に行っている。これにより、給電システム1では、優先順位の高い配電線Dに接続される負荷13を優先して生き残らせることができる。給電システム1では、重要な負荷13が接続される配電線Dほど優先順位が高く設定される。このため、給電システム1では、停電時に、重要な負荷13を生き残らせることができる。その結果、給電システム1では、商用電源3の停電の影響が重要な負荷13にまで波及することを防止することができる。
また、給電システム1では、負荷13の消費電力Wkを、生き残り電力の上限値を超えない範囲で積算している。このため、給電システム1では、上限値のぎりぎりまで、生き残り配電線を選別することができる。また、給電システム1では、すべての負荷13の消費電力Wkを、積算の対象にしている。このため、給電システム1では、生き残り配電線を漏れなく選別することができる。
また、給電システム1では、予め決定した遮断配電線に対応する遮断器11を停電の発生時に開くことで、連系運転から自立運転に移行した際の発電装置5が背負う負荷の変動を許容負荷変動の範囲内に収めることができる。このため、給電システム1は、停電の発生時に発電装置5がトリップして停止することを防止することができる。
また、給電システム1は、負荷13の消費電力、発電装置5の発電電力、配電線Dの優先順位に応じて、切り離す負荷13を柔軟に切り替えることができる。ここで、比較例として、生き残り配電線と遮断配電線とを予め固定して決定しておき、生き残り配電線のグループと遮断配電線のグループとを遮断器で接続し、停電の発生時にその遮断器を開いて固定された生き残り配電線への電力供給を維持する給電システムが考えられる。この比較例の給電システムでは、システムの構築後は生き残り配電線および遮断配電線を変更することができなく、負荷13の消費電力などが変化した場合には、発電装置5が停止するおそれがある。これに対し、本実施形態の給電システム1は、システムの構築後において生き残り配電線および遮断配電線を柔軟に切り替えることができるため、負荷13の消費電力などが変化しても、発電装置5を停止させることなく電力の供給を維持させることができる。
また、給電システム1では、生き残り配電線および遮断配電線が所定の周期で更新される。このため、給電システム1は、負荷13の消費電力が時間の経過とともに変化したとしても、その変化が直ぐに反映された消費電力に応じて適切な遮断配電線に対応する遮断器11を開くことができる。
また、給電システム1では、消費電力の積算が完了する前に生き残り電力合計値Wsが上限値と下限値との間の範囲に収まったとしても、消費電力の積算が可能か否かの判定が、すべての配電線Dについて完了するまで継続される。これにより、給電システム1では、上限値と下限値との間の範囲の、より上限値に近い生き残り電力合計値Ws分の配電線Dが生き残り配電線に決定される。このため、給電システム1は、生き残り電力合計値Wsが上限値と下限値との間の範囲に収まった時点で消費電力の積算を終了する態様に比べ、より多くの負荷13への電力の供給を維持させることができる。
なお、上記の配電線選別部23は、上限値を超えない範囲での消費電力の積算をすべての配電線Dについて完了するまで継続していた。しかし、消費電力の積算の態様は、この例に限らない。例えば、配電線選別部23は、生き残り電力合計値Wsが上限値と下限値との間の範囲に収まった時点で消費電力の積算を終了し、それ以降の優先順位変数kに対応する配電線Dを遮断配電線に決定してもよい。
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態による給電システム1の配電線選別部23の動作の流れを示すフローチャートである。図7は、配電線選別部23の動作を説明する説明図である。第2実施形態の給電システム1は、生き残り配電線および遮断配電線の具体的な決定方法が第1実施形態と異なる。
給電システム1では、配電線Dの異なる組み合わせで構成される複数の配電線列が設定されている。図7(a)では、配電線列は、配電線番号の組み合わせで表記されている。配電線Dには予め優先順位が設定されているため、配電線列は、配電線Dの優先順位を組み合わせたものにも対応する。また、配電線列には、優先順位が設定されている。図7(a)では、行が上段の配電線列ほど、行が下段の配電線列に比べ、優先順位が高いことを示す。例えば、重要な負荷13が接続される配電線Dによって構成される配電線列に、高い優先順位が設定される。
配電線選別部23は、起動すると、まず、配電線列の優先順位を示す優先順位変数jの初期設定を行う(S300)。具体的には、配電線選別部23は、優先順位変数jを1とする。
次に、配電線選別部23は、生き残り電力の上限値を設定する(S310)。生き残り電力の上限値は、第1実施形態のそれと同様である。
次に、配電線選別部23は、すべての配電線列について、配電線列毎の消費電力合計値WTjを算出する(S320)。消費電力合計値WTjは、優先順位がj番目の配電線列において、その配電線列を構成する配電線Dの負荷13の消費電力の合計値を示す。例えば、図7(b)に示すように、配電線選別部23は、優先順位が1番目の配電線列を構成する配電線Db、De、Da、Dc、Ddの負荷13b、13e、13a、13c、13dの消費電力の合計値WT1(2900kW)を算出し、以下同様にして、すべての配電線列についての消費電力合計値WTjを算出する。
次に、配電線選別部23は、消費電力合計値WTjが生き残り電力の上限値以下であるか否かを判定する(S330)。消費電力合計値WTjが生き残り電力の上限値を超える場合(S330におけるNO)、配電線選別部23は、優先順位変数jをインクリメントし(S340)、再び、消費電力合計値WTjが生き残り電力の上限値以下であるか否かを判定する(S330)。すなわち、配電線選別部23は、消費電力合計値WTjが生き残り電力の上限値以下になるまで、優先順位変数jを増加させて配電線列の優先順位を下げていく。
消費電力合計値WTjが生き残り電力の上限値以下である場合(S330におけるYES)、配電線選別部23は、そのステップS330を満たしたときの配電線列を構成する配電線Dを生き残り配電線に決定する(S350)。すなわち、ステップS330を最初に満たした配電線列の配電線Dが生き残り配電線となる。例えば、図7(b)に示すように、配電線列の優先順位変数jを1からインクリメントしていき、配電線Db、De、Daから構成される配電線列についての消費電力合計値WTj(1600kW)が、最初に、生き残り電力の上限値(1800kW)以下となったとする。この場合、配電線Db、De、Daが生き残り配電線に決定される。
次に、配電線選別部23は、ステップS350で決定した生き残り配電線以外の配電線Dを遮断配電線に決定し(S360)、一連の処理を終了する。例えば、配電線Db、De、Daが生き残り配電線に決定された場合、配電線Dc、Ddが遮断配電線に決定される。
また、第2実施形態の配電線選別部23は、第1実施形態と同様に、図6の一連の処理を所定の周期(例えば、10秒間隔)で繰り返し実行することで、生き残り配電線および遮断配電線を、逐次、更新する。
以上のように、第2実施形態の給電システム1の配電線選別部23は、配電線列毎に消費電力合計値WTjを算出し、その合計値が上限値を超えない範囲で、最も優先順位が高い配電線列を構成する配電線Dを生き残り配電線に決定し、生き残り配電線に決定されなかった配電線Dを遮断配電線に決定する。
第2実施形態の給電システム1によれば、商用電源3の停電時においても、電力の供給を継続すべき負荷13を即座に特定し、そのような負荷13に適切に電力を供給することができ、電力が供給されない期間を発生させないようにすることが可能となる。例えば、負荷13の消費電力Wkの合計値が発電装置5の発電電力よりも大きい場合、給電システム1では、すべての負荷13の中の一部の負荷13を即座に特定することができる。
また、第2実施形態の給電システム1によれば、優先順位の高い配電線列を構成する配電線Dに接続される負荷13を優先して生き残らせることができる。また、第2実施形態の給電システム1によれば、停電時に、重要な負荷13を生き残らせることができる。
また、第2実施形態の給電システム1では、すべての配電線Dを配電線列の対象としている。このため、第2実施形態の給電システム1によれば、生き残り配電線を漏れなく選別することができる。
また、第2実施形態の給電システム1によれば、停電の発生時に発電装置5がトリップして停止することを防止することができる。
また、第2実施形態の給電システム1によれば、生き残り配電線および遮断配電線を柔軟に切り替えることができるため、負荷13の消費電力などが変化しても、発電装置5を停止させることなく電力の供給を維持させることができる。
また、第2実施形態の給電システム1によれば、負荷13の消費電力が時間の経過とともに変化したとしても、その変化が直ぐに反映された消費電力に応じて適切な遮断配電線に対応する遮断器11を開くことができる。
また、第2実施形態の給電システム1は、第1実施形態に比べ、配電線選別部23の処理負荷を低減することができる。
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態による給電システム1の配電線選別部23の動作の流れを示すフローチャートである。
第1実施形態の給電システム1では、生き残り配電線および遮断配電線の選別が完了したときの生き残り電力合計値Wsが、結果として、生き残り電力の上限値と下限値との間の範囲に収まっていた。しかし、第1実施形態の給電システム1では、選別が完了したときの生き残り電力合計値Wsが、生き残り電力の下限値を下回るおそれがある。
そこで、第3実施形態の給電システム1は、選別が完了したときの生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の上限値と下限値との間の範囲に収まらない場合(具体的には、下限値を下回る場合)、選別が完了したときの生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の上限値と下限値との間の範囲に収まるように、発電装置5の発電電力を変化させる。
第3実施形態の配電線選別部23は、起動すると、配電線Dの選別を行う(S400)。この配電線Dの選別の処理は、第1実施形態における図2のフローチャートに示す一連の処理と同じである。
次に、配電線選別部23は、配電線Dの選別が完了したときの生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の下限値以上であるか否かを判定する(S410)。生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の下限値以上である場合(S410におけるYES)、配電線選別部23は、生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の上限値と下限値との間の範囲に収まっているため、一連の処理を終了する。
生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の下限値を下回る場合(S410におけるNO)、配電線選別部23は、発電装置5の発電電力が所定値だけ上昇すると仮定して、発電電力を設定する(S420)。例えば、配電線選別部23は、現在の発電電力(1500kW)に所定値(例えば、100kW)を加算して、新たな発電電力(1600kW)を決定する。この際、配電線選別部23は、現在の発電電力から新たな発電電力への変化量が許容負荷変動の範囲内になるように新たな発電電力を決定する。
次に、配電線選別部23は、ステップS420の新たな発電電力を用いて、配電線Dの選別を行う(S430)。この配電線Dの選別の処理は、発電電力がステップS420の新たな発電電力である点を除き、第1実施形態における図2のフローチャートに示す一連の処理と同じである。
ステップS430において、発電電力がステップS420の新たな発電電力であるため、生き残り電力の上限値および下限値は、新たな発電電力を基準とした値となる。具体的には、新たな発電電力、生き残り電力の上限値および下限値は、ステップS400の発電電力に比べ、増加方向にシフトした値となる。このように生き残り電力の上限値等が変わるため、ステップS430における配電線Dの選別結果は、ステップS400における配電線Dの選別結果から変わることがある。選別結果が変わることで、選別が完了したときの生き残り電力合計値Wsが、生き残り電力の上限値と下限値との間の範囲に収まる可能性が増加する。
次に、配電線選別部23は、配電線Dの選別が完了したときの生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の下限値以上であるか否かを判定する(S440)。生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の下限値を下回る場合(S440におけるNO)、配電線選別部23は、ステップS420の処理に戻る。これにより、配電線選別部23は、新たな発電電力を更新して(S420)、配電線Dの選別を再び行うこととなる(S430)。
ステップS440において、生き残り電力合計値Wsが生き残り電力の下限値以上である場合(ステップS440におけるYES)、配電線選別部23は、発電装置5の実際の発電電力を、ステップS420で設定した発電電力に変化させる指示(発電電力変更指示)を発電装置5に送信し(S450)、一連の処理を終了する。発電電力変更指示を受信した発電装置5は、発電電力変更指示が示す発電電力となるように、例えば、コージェネレーションシステムにおける燃料の流量などを変える。
このように、第3実施形態の給電システム1は、生き残り電力合計値Wsを生き残り電力の上限値と下限値との間の範囲に確実に収めることができる。したがって、第3実施形態の給電システム1は、第1実施形態に比べ、停電が発生して発電装置5が自立運転に移行した際に、発電装置5がトリップして停止することを、より確実に防止することができる。
なお、ステップS400、S430の配電線Dの選別の処理は、第1実施形態における図2のフローチャートに示す一連の処理に限らず、第2実施形態における図6のフローチャートに示す一連の処理であってもよい。
また、第3実施形態の配電線選別部23は、現在の発電電力に、予め設定された所定値を加算して新たな発電電力を決定していた。しかし、発電電力を変化させる態様は、これに限らず、配電線選別部23は、発電電力の変化量を算出し、算出した変化量分だけ発電電力を変化させてもよい。例えば、現在の発電電力が1500kWであり、生き残り電力の上限値が1800kWであり、生き残り電力の下限値が1200kWであるとする。また、選別後の生き残り電力合計値Wsが1000kWであるとする。配電線選別部23は、遮断配電線に選別された配電線Dに接続される負荷13の消費電力Wkの中から最小の消費電力Wk(例えば、900kW)を選択する。配電線選別部23は、選別後の生き残り電力合計値Ws(1000kW)に、選択した最小の消費電力Wk(900kW)を加算する。配電線選別部23は、加算後の電力(1900kW)から生き残り電力の上限値(1800kW)を減算する。配電線選別部23は、減算後の電力(100kW)を発電電力の変化量に決定する。配電線選別部23は、現在の発電電力(1500kW)と決定した変化量(100kW)とを加算した電力(1600kW)へ、発電装置5の発電電力を変化させる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上記各実施形態の給電システム1では、5本の配電線Dが母線2に接続されていた。しかし、母線2に接続される配電線Dの数は、これに限らない。また、上記各実施形態の給電システム1において、配電線Dに接続される負荷13は、1個の機器に限らず、複数の機器であってもよい。
また、コンピュータを配電線選別部23や遮断器制御部24などとして機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
なお、本明細書の給電システム1の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理される必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。