JP2019060882A - 溶液中の内毒素の脱マスキングの方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】予め存在するが検出不能な内毒素が検出可能とされるように、組成物中の内毒素を脱マスキングする水生組成物を提供する。【解決手段】タンパク質、主鎖としてC8〜C16を有する脂肪族化合物およびLPSを含む水性組成物であって、該脂肪族化合物がアルカノールである、水性組成物。該アルカノールが非分枝1-アルカノール、好ましくは1-ドデカノールであって、該アルカノールが、メチル、エチル、プロピルおよびブチル基から選択される主鎖中の少なくとも1つの置換を有する分枝化合物である。【選択図】なし

Description

本発明は、存在するが検出不能な内毒素が検出可能とされるように、組成物、好ましくは薬学的組成物中の内毒素を脱マスキングすることに関する。具体的には、本発明は、組成物中の内毒素を脱マスキングする方法に関する。本発明はさらに、組成物中の内毒素を検出する方法に関する。本発明はさらに、組成物中の内毒素を脱マスキングするためのキットに関する。本発明はさらに、例えば、組成物中の内毒素を脱マスキングするため、内毒素と内毒素マスカーとの間の複合体から内毒素を放出させることにより、内毒素を脱マスキングできるモジュレータの使用に関する。
発明の背景
内毒素は、グラム陰性菌の細胞壁の外膜の一部である。内毒素は、生物が病原性であるか否かにかかわらず、常にグラム陰性細菌に付随している。「内毒素」という用語は時に、任意の細胞結合型の細菌毒素をいうように用いられるが、細菌学においては、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、シュードモナス菌(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)およびコレラ菌(Vibrio cholerae)のようなグラム陰性病原体の外膜に関連するリポ多糖(LPS)複合体をいうように適切に指定されている。
水性組成物中の内毒素の存在は、特に薬学的用途を意図している場合には、多くの組成物の適用を著しく脅かすおよび/または制限する厄介な問題である。これは、タンパク質産物、例えば組み換えタンパク質産物を含む組成物に特に当てはまる。天然に存在する内毒素、特にリポ多糖(lipopolysaccharides; LPS)として特徴付けられる化合物のクラスに属する内毒素は、ある種の細菌、例えばグラム陰性細菌によって産生される分子である。一般に、LPSのような内毒素は、伸長多糖O-抗原、外側コア成分および内側コア成分を含むコア抗原多糖、ならびに脂肪族アミドおよび脂肪酸エステルを含むリピドAドメインを含む。そのような内毒素はグラム陰性細菌の外膜に見出され、そこでそれらは化学的攻撃から生物を保護することで細菌の構造的完全性に寄与する。そのような内毒素は、これらの細菌の細胞膜の負電荷を増大させ、膜構造全体を安定化させるのに役立つ。そのような内毒素は、正常な動物、例えばヒトの免疫系からの強力な応答を誘発する。というのは、正常な血清が、そのような内毒素を持つ侵入性細菌病原体に対し免疫系の細胞傷害作用を通常指向するリポオリゴ糖(lipooligosaccharide; LOS)受容体を含有するからである。
LPSのような内毒素は、その起源細菌から切り離された形態でヒト血液中に存在する場合、内毒素血症を引き起こし、重症例では敗血性ショックにつながりうる。この反応は、哺乳動物の免疫系の制御不能な活性化を引き起こし、場合によっては免疫系細胞活性化の原因となるトール様受容体(toll-like receptor; TLR) 4のような炎症性メディエータを産生しうる、内毒素リピドA成分によるものである。
細菌、およびそれらが産生する内毒素はまた、遍在する。例えば、内毒素汚染物質は、実験室および医薬製剤を調製するための施設のものを含めて、給水設備のパイプおよびホースに存在することが知られている。医薬を製剤化するプロセスで用いられる発酵槽およびガラス器具のような容器の表面も、一般に汚染されている。さらに、ヒトが細菌、ゆえにその身体の内毒素を運ぶので、医薬が製剤化されるそのような施設の職員も、内毒素汚染物質の供給源となる可能性がある。
もちろん、上記に加えて、グラム陰性細菌それ自体には、とりわけ組み換え治療用タンパク質の産生において幅広い用途があり、したがってそのような治療用タンパク質を含有する水性組成物、例えば医薬製剤の内毒素汚染が、製造プロセスにおいて用いられるそのような細菌から直接生じることもあるという危険性が常に存在している。
潜在的に有害な内毒素汚染物質の混入を防ぐために、その供給源が何であれ、そのような溶液が治療目的のために投与されうる前に、そのようなタンパク質の製造プロセスにおいて用いられる全ての段階および生成物から内毒素を排除する方策が通常行われなければならない。実際、(検出可能な)内毒素の排除および/または除去ならびにその全ての痕跡がないことを検証できることは、任意の新たな治療用物質、特に細菌において産生された生成物を含有するもの、または製造プロセスにおける任意の時点で細菌と接触するものについて規制当局の承認を求める際に満たされなければならない要件のうちの1つである(例えばEMEA, Q6B, Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products; 2.1.4 Purity, Impurities and Contaminants; Contaminants; 4.1.3 Purity and impurities(非特許文献1); 2) FDA, Q6B, Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products; II.A.4. Purity, Impurities and Contaminants; IV.A.3. Purity and Impurities(非特許文献2)を参照のこと)。例えば、最終的な投与を意図した溶液を保持するおよび/または運ぶ全ての容器は、溶液との接触の前に内毒素不含とされなければならない。この目的のために発熱物質除去オーブンが用いられ、ここで、内毒素を分解するために200℃を超える温度が必要とされる。注射器またはバイアルのような一次包装材料に基づいて、内毒素レベルを1000倍まで低減するには、250℃のガラス温度および30分の保持時間が典型的である。通常、加熱によって液体を発熱物質除去することはできず、それゆえクロマトグラフィー(例えば陰イオン交換)、相抽出(例えば、Trition X-114)、ろ過(例えば限外ろ過)のような、異なる方法が用いられる。
内毒素の活性を検出するための1つの一般的なアッセイ法は、カブトガニからの血液を利用するカブトガニ変形細胞溶解物(limulus amebocyte lysate; LAL)アッセイ法である。非常に低レベルの内毒素が、酵素カスケードによる強力な増幅のため、カブトガニ溶解物による凝固を引き起こしうる。しかしながら、カブトガニの個体数が減少しているので、溶液中の内毒素の存在を検出するために代替的な、例えば組み換えC因子アッセイ法を開発する努力がなされている。そのような方法のうち最も有望なのは、内毒素捕捉のために固相を用い、LALアッセイ法での組み換え型のタンパク質、つまりC因子によるその後の検出を用いる酵素結合親和性吸着アッセイ法(enzyme-linked affinitysorbent assay)である。EndoLISA(登録商標)キットは、そのような親和性吸着アッセイ法の1つである。
しかしながら、内毒素、特にLPSのような発熱物質の存在を検出するために利用できる最良の試験でさえ、溶液中のLPSを検出できないことが多い。これは、−いかなる検出可能な内毒素も存在していない場合−内毒素不含であると合理的に考えられる溶液が、実際には、検出不能となるように単にマスキングされている内毒素を含有するという危険性を意味する。そのような溶液、例えば医薬製剤は、全ての診断的外観により、これらの溶液が内毒素不含であり、それゆえこの規制当局の要件を満たしているか、または少なくとも達成するように見えるので、規制当局の承認を(少なくとも、内毒素を含有するという理由では)阻まれないであろう。しかしながら、明らかに、そのような表面上は内毒素不含の溶液を対象に投与することは、上記のタイプの反応を引き起こす危険性がある。そのような場合、対象が上記のタイプの有害なかつ潜在的に生命を脅かす反応を既に発症した後で、そのような溶液中のマスキングされた内毒素の存在をあまりに遅くに知るかもしれない。さらに、衛生的な観点から、医薬品規制当局は、薬学的組成物にどの物質が含まれているか、そしてどの物質が含まれていないかを積極的に知ることに重きを置く。これは、最終的に、所与の組成物中の全ての成分を確実に検出する能力、および試験される全ての物質の存在と非存在の両方に関して得られた結果を考える能力に帰着する。
内毒素に関して「マスキング」および「脱マスキング」という用語は、文献においてさまざまな意味で用いられていることに留意すべきである。一方で、文献では、ある種の溶液(例えばタンパク質溶液)からの内毒素の除去を記述するために「内毒素脱マスキング」または「内毒素デマスキング」という用語を用いている。この場合、内毒素除去のための一般的な手順(例えばクロマトグラフィー)を用いる前後で、いくらかの内毒素含量が検出可能である。利用可能な技法が特定サンプルからの内毒素の完全な除去のためには不十分である場合、除去できない内毒素は「マスキングされた」内毒素といわれ; 利用可能な技法によって除去できるいずれの内毒素も「脱マスキングされる」または「デマスキングされる」内毒素といわれる。この用語のこの用法によれば、「マスキングされた」内毒素はかくして、除去できない内毒素を示し、(検出可能な)内毒素の不十分な除去を意味する。
一方で、文献ではまた、内毒素検出が不十分な場合に「内毒素マスキング」という用語を用いている。この場合、内毒素は存在するが、ほんのわずかな量の内毒素しか検出することができない、または多くの場合には、内毒素を全く検出することができない。この用語のこの用法によれば、「マスキングされた」内毒素はかくして、検出できない内毒素、またはごくわずかしか検出できない内毒素を示し、不十分な内毒素検出を意味する。
内毒素の不十分な検出は、さまざまな組成物で起こりうる。例えば、タンパク質溶液(Petsch et al., Analytical Biochemistry 259, 42-47, 1998(非特許文献3))で、医薬品(J. Chen and K. Williams, Follow-Up on Low Endotoxin Recovery in Biologics PDA Letter, Oct. 2013(非特許文献4))で、または医薬品の一般的な製剤成分(J. Reich et al., Poster: Low Endotoxin Recovery in Common Protein Formulations, 6th Workshop on Monoclonal Antibodies, Basel, Switzerland, 2013(非特許文献5); J. Reich et al., Poster: Low Endotoxin Recovery in Biologics: Case Study - Comparison of Natural Occurring Endotoxin (NOE) and Commercially Available Standard Endotoxin, PDA Annual meeting, San Antonio, USA, 2014(非特許文献6))でも起こりうる。
WO 2009/152384 A1(特許文献1)は、組成物中の成分のカテゴリを定義し、次いで各カテゴリ内の成分のリストを提供することにより、概念上の組成物を開示している。この特許文書は、タンパク質、C8〜C16アルカノールおよびLPSを含むいかなる個別化した組成物も開示していない。
同様に、WO 02/057789 A2(特許文献2)は、組成物中の成分のカテゴリを定義し、次いで各カテゴリ内の成分のリストを提供することにより、概念上の組成物を開示している。この特許文書は、タンパク質、C8〜C16アルカノールおよびLPSを含むいかなる個別化した組成物も開示していない。
EP 1 917 976 A1(特許文献3)は、特定の組成物を開示しているが、しかしタンパク質、C8〜C16アルカノールおよびLPSを含むいかなる組成物も開示していない。
かくして、特定の他の組成物成分によってマスキングされているため検出できない内毒素を含む、組成物中に存在する全ての内毒素が、検出可能とされるように脱マスキングされうる方法を提供する強い動機付けが存在している。組成物中のこれまでは検出不能であった内毒素を脱マスキングおよび/または検出する方法を提供することは、患者の安全性を促進する上で大いに助けになるであろう。そのような要求に応えることが本発明の目的である。
WO 2009/152384 A1 WO 02/057789 A2 EP 1 917 976 A1
EMEA, Q6B, Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products; 2.1.4 Purity, Impurities and Contaminants; Contaminants; 4.1.3 Purity and impurities FDA, Q6B, Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products; II.A.4. Purity, Impurities and Contaminants; IV.A.3. Purity and Impurities Petsch et al., Analytical Biochemistry 259, 42-47, 1998 J. Chen and K. Williams, Follow-Up on Low Endotoxin Recovery in Biologics PDA Letter, Oct. 2013 J. Reich et al., Poster: Low Endotoxin Recovery in Common Protein Formulations, 6th Workshop on Monoclonal Antibodies, Basel, Switzerland, 2013 J. Reich et al., Poster: Low Endotoxin Recovery in Biologics: Case Study - Comparison of Natural Occurring Endotoxin (NOE) and Commercially Available Standard Endotoxin, PDA Annual meeting, San Antonio, USA, 2014
本発明は、タンパク質と、主鎖としてC8〜C16を有し、好ましくは1つまたは複数のヘテロ原子による置換を有する脂肪族化合物とを含む水性組成物に関する。
水性組成物は、好ましくは、脂肪族化合物が添加されたタンパク質含有薬学的組成物でありうる。脂肪族化合物の添加は、LPSによる組成物の潜在的汚染の検出可能性を改善するのに役立つ。本出願の他の部分で述べられるように、LPSは、タンパク質含有組成物のいくつかの構成成分によってマスキングされているため、従来の内毒素試験による検出を免れうる。
好ましい態様によれば、脂肪族化合物は、主鎖中に少なくとも1つの置換基を有する分枝化合物であり、その置換はメチル、エチル、プロピルおよびブチル基から選択されうる。
脂肪族化合物の主鎖は、本明細書の他の箇所で定義される通りである。
さらに好ましい態様によれば、主鎖は、C8〜C16アルキル、C8〜C16アルケニルおよびC8〜C16アルキニルから選択される。主鎖は、1つもしくは複数の二重結合および/または1つもしくは複数の三重結合を含んでもよいが、飽和アルキル鎖がより好ましい態様である。
さらに好ましい態様によれば、脂肪族化合物の一部を形成しうるヘテロ原子は、O、SおよびNから選択されるが、Oが最も好ましい置換である。
さらに好ましい脂肪族化合物はアルカノールから選択され、これは好ましくは、非分枝アルカノール、より好ましくは1-アルカノールおよび最も好ましくは1-ドデカノールである。
脂肪族化合物は、LPSに、Hyglos GmbHによるEndoLISA(登録商標)のような従来の内毒素試験キットによる検出をより受けやすくさせる形態として、潜在的に混入しているLPS分子を安定化させると考えられる。
内毒素の検出をより受けやすくされうる組成物は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびそれらの任意の組み合わせから選択されうる界面活性剤を含有することが多い。そのような組成物において用いられうる好ましい界面活性剤は、
アルキル硫酸塩、好ましくはラウリル硫酸アンモニウムまたはラウリル硫酸ナトリウム(SDS); アルキル-エーテル硫酸塩、好ましくはラウレス硫酸ナトリウムまたはミレス硫酸ナトリウム; コレステロール硫酸; スルホネート、好ましくはドデシルベンゼンスルホネート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムまたはキシレンスルホネート; アルキルスルホコハク酸塩、好ましくはスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム; スルホキシド、好ましくはジデシルメチルスルホキシド(didecyl methyl sulfoxide); リン酸塩、好ましくはトリラウレス-4リン酸塩; およびカルボン酸塩、好ましくはステアリン酸ナトリウムまたはラウロイルサルコシン酸ナトリウムからなる群より選択できる陰イオン性界面活性剤;
第一級アミン; 第二級アミン; 第三級アミン; およびアルキルトリメチルアンモニウム塩(好ましくはセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB); またはセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC))のような第四アンモニウム陽イオン; 塩化セチルピリジニウム(CPC); 第四級アンモニウム界面活性剤、好ましくはトリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート(クオタニウム52); ならびに四級化ヒドロキシエチルセルロースエトキシレート(ポリクオタニウム-10)からなる群より選択できる陽イオン性界面活性剤;
ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(ポリソルベート)、好ましくはポリソルベート20 (Tween-20)、ポリソルベート40、ポリソルベート60またはポリソルベート80 (Tween-80); ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル; ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル; グルコシドアルキルエーテル; ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル; ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル; グリセロールアルキルエステル; ソルビタンアルキルエステル; ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブロック共重合体; コカミドMEA; ステロール、好ましくはコレステロール; シクロデキストリン; ポロキサマー、好ましくはプルロニックブロック重合体; ならびにコカミドDEAからなる群より選択できる非イオン性界面活性剤;
CHAPS (3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート); スルタイン、好ましくはコカミドプロピルヒドロキシスルタイン; ベタイン、好ましくはコカミドプロピルベタイン; アミノオキシド(amino oxide)、好ましくはパルミタミンオキシド、ラウリルアミンオキシド、および式中R3がC8〜C18アルキル、C8〜C18アルケニル、C8〜C18アルキニルである、一般式R3N+O-のアミンオキシドまたはレシチンからなる群より選択できる両性界面活性剤
から選択されうる。
さらに好ましい態様によれば、界面活性剤は、ポリソルベート、好ましくはポリソルベート20およびポリソルベート80、ポロキサマー、好ましくはポロキサマー188、オクトキシノール、好ましくはオクトキシノール9、アルキルアミンオキシド、好ましくはラウリルアミンオキシド、第四アンモニウム塩、好ましくはトリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート、アルキルリン酸塩、好ましくはトリラウレス-4リン酸塩、ならびにステアリン酸塩、好ましくはステアリン酸ナトリウムから選択される。
好ましい水性組成物において、タンパク質は、抗体、抗体断片、ホルモン、酵素、融合タンパク質、タンパク質結合体およびそれらの任意の組み合わせから選択され、このタンパク質は、医薬品の品質管理においてLPSが検出されないままでないように特別な注意を払わなければならない薬学的調製物の活性薬剤として頻繁に用いられる。
さらに好ましい態様において、抗体断片は、Fab、Fab'、F(ab')2およびFv、一本鎖抗体ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される。
さらに好ましい態様において、水性組成物は、上記のタンパク質であってもよい薬理活性成分に加えて、好ましくはヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンおよび/またはオボアルブミンであるアルブミンから選択されるさらなるタンパク質を含有しうる。さらなるタンパク質は、潜在的なLPS汚染を、上記のものなどの従来の内毒素試験によっていっそう検出可能にさせるのに役立ちうる。
さらに好ましい態様において、水性組成物は、カオトロピック剤、陽イオンまたはそれらの組み合わせを含みうる。同じ成分が、潜在的なLPS汚染を、Hyglos GmbHによる内毒素試験でいっそう検出しやすい形態にさせることを助長することもできる。
さらに好ましい態様によれば、カオトロピック剤は、尿素、塩化グアニジン、ブタノール、エタノール、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノールおよびチオ尿素から選択される。
さらに好ましい態様によれば、陽イオンは、好ましくはCa2+、Mg2+、Sr2+およびZn2+から選択される、二価陽イオンである。
さらに好ましい態様によれば、アルブミンであってもよいさらなるタンパク質は、0.1〜20 mg/mlの範囲の、好ましくは1〜10 mg/mlの範囲の濃度で、より好ましくは10 mg/mlの量で存在する。
さらに好ましい態様において、脂肪族化合物は0.01〜100 mMの濃度で、好ましくは0.1〜10 mMの濃度で存在する。この濃度範囲は1-アルカノール、好ましくは1-ドデカノールの場合に特に好ましい。
さらに好ましい態様において、界面活性剤は0.001〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の濃度で存在する。
さらに好ましい態様において、カオトロピック剤は1 mM〜1 M、好ましくは25〜200 mM、好ましくは10 mM〜100 mMの濃度で存在する。
さらに好ましい態様において、二価陽イオンは1〜400 mMの濃度で、好ましくは10〜200 mMの濃度で、より好ましくは50〜100 mMの濃度で存在する。
さらに好ましい態様において、組成物のpHは2〜12の範囲、好ましくはpH 5〜10の範囲である。
さらに好ましい態様において、組成物は、従来の内毒素アッセイ法において用いられる成分であるC因子タンパク質を含有する。
好ましい態様において、C因子タンパク質は組み換えC因子タンパク質である。
非常に好ましい水性組成物は、0.1〜10 mMの濃度範囲の1-アルカノール、好ましくは1-ドデカノール、0.002〜0.2重量%の濃度範囲の請求項8記載の界面活性剤、10〜200 mMの濃度範囲の二価陽イオン、好ましくはCa2+、および5〜10のpHと組み合わせて、タンパク質、好ましくは抗体を含む。
さらに非常に好ましい水性組成物は、前項において上記に示した通りであり、カオトロピック剤、好ましくは塩化グアニジンを10 mM〜100 mMの濃度範囲でさらに含む。
上記の組成物において、LPSは、存在する場合、Hyglos GmbHのEndoLisaのような従来の内毒素アッセイ法による検出を受けやすいであろう。
一開示は、内毒素マスカを含む、および該内毒素を含むことが疑われる組成物、好ましくは薬学的組成物中の内毒素を脱マスキングする方法であって、例えば、存在するなら、該内毒素と該内毒素マスカとの複合体から該内毒素を放出させることにより、該内毒素を脱マスキングできるモジュレータを該組成物に添加する段階を含む、該方法に関する。薬学的組成物は、ほとんどの場合、水性組成物であろう。
さらなる開示は、内毒素マスカを含む、および該内毒素を含むことが疑われる組成物、好ましくは薬学的組成物中の内毒素を検出する方法であって、例えば、存在するなら、該内毒素と該内毒素マスカとの複合体から該内毒素を放出させることにより、該内毒素を脱マスキングできるモジュレータを該組成物に添加する段階; および検出方法によって該内毒素を検出する段階を含む、該方法に関する。薬学的組成物は、ほとんどの場合、水性組成物であろう。
特定の態様において、上記の脱マスキングおよび/または検出する方法は、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質を組成物に添加する段階をさらに含みうる。特定の態様において、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質を、モジュレータの添加前に該溶液に添加することが好ましい。
さらなる開示は、内毒素マスカを含む、および該内毒素を含むことが疑われる組成物、好ましくは薬学的組成物中の内毒素を脱マスキングするためのキットであって、構成要素(a)および(b)が同じまたは異なる包装中に存在する、(a)例えば、該内毒素と該内毒素マスカとの複合体から該内毒素を放出させることにより、該内毒素を脱マスキングできるモジュレータ; および(b)溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質を含む、該キットに関する。
さらなる開示は、内毒素および内毒素マスカを含むことが疑われる組成物、好ましくは薬学的組成物中の内毒素を脱マスキングするため、例えば該内毒素と内毒素マスカとの複合体から内毒素を放出させることにより、内毒素を脱マスキングできるモジュレータの使用に関する。
[本発明1001]
タンパク質、主鎖としてC8〜C16を有する脂肪族化合物およびLPSを含む水性組成物であって、該脂肪族化合物がアルカノールである、水性組成物。
[本発明1002]
アルカノールが非分枝1-アルカノール、好ましくは1-ドデカノールである、本発明1001の水性組成物。
[本発明1003]
アルカノールが、メチル、エチル、プロピルおよびブチル基から選択される主鎖中の少なくとも1つの置換を有する分枝化合物である、本発明1001の水性組成物。
[本発明1004]
陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびそれらの任意の組み合わせから選択される界面活性剤を含む、本発明1001〜1003のいずれかの水性組成物。
[本発明1005]
陰イオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩、好ましくはラウリル硫酸アンモニウムまたはラウリル硫酸ナトリウム(SDS); アルキル-エーテル硫酸塩、好ましくはラウレス硫酸ナトリウムまたはミレス硫酸ナトリウム; コレステロール硫酸; スルホネート、好ましくはドデシルベンゼンスルホネート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムまたはキシレンスルホネート; アルキルスルホコハク酸塩、好ましくはスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム; スルホキシド、好ましくはドデシルメチルスルホキシド; リン酸塩、好ましくはトリラウレス-4リン酸塩; およびカルボン酸塩、好ましくはステアリン酸ナトリウムまたはラウロイルサルコシン酸ナトリウムからなる群より選択される、本発明1004の水性組成物。
[本発明1006]
陽イオン性界面活性剤が、第一級アミン; 第二級アミン; 第三級アミン; およびアルキルトリメチルアンモニウム塩(好ましくはセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB); またはセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC))のような第四アンモニウム陽イオン; 塩化セチルピリジニウム(CPC); 第四級アンモニウム界面活性剤、好ましくはトリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート(クオタニウム52); ならびに四級化ヒドロキシエチルセルロースエトキシレート(ポリクオタニウム-10)からなる群より選択される、本発明1004の水性組成物。
[本発明1007]
非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(ポリソルベート)、好ましくはポリソルベート20 (Tween-20)、ポリソルベート40、ポリソルベート60またはポリソルベート80 (Tween-80); ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル; ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル; グルコシドアルキルエーテル; ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル; ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル; グリセロールアルキルエステル; ソルビタンアルキルエステル; ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブロック共重合体; コカミドMEA; ステロール、好ましくはコレステロール; シクロデキストリン; ポロキサマー、好ましくはプルロニックブロック重合体; ならびにコカミドDEAからなる群より選択される、本発明1004の水性組成物。
[本発明1008]
両性界面活性剤が、CHAPS (3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート); スルタイン、好ましくはコカミドプロピルヒドロキシスルタイン; ベタイン、好ましくはコカミドプロピルベタイン; アミノオキシド(amino oxide)、好ましくはパルミタミンオキシド、ラウリルアミンオキシド、および式中R3がC8〜C18アルキル、C8〜C18アルケニル、C8〜C18アルキニルである、一般式R3N+O-のアミンオキシドまたはレシチンからなる群より選択される、本発明1004の水性組成物。
[本発明1009]
界面活性剤がポリソルベート20 (Tween 20)、ポリソルベート80 (Tween 80)、ポロキサマー188 (プルロニックF68)、オクトキシノール9 (トライトンX-100)、ラウリルアミンオキシド、トリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート(クオタニウム52)、トリラウレス-4リン酸塩およびステアリン酸ナトリウムから選択される、本発明1004〜1008のいずれかの水性組成物。
[本発明1010]
タンパク質が、抗体、抗体断片、ホルモン、酵素、融合タンパク質、タンパク質結合体およびそれらの任意の組み合わせから選択される、本発明1001〜1009のいずれかの水性組成物。
[本発明1011]
抗体断片が、Fab、Fab'、F(ab')2およびFv、一本鎖抗体ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される、本発明1010の水性組成物。
[本発明1012]
アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンおよび/またはオボアルブミンであるさらなるタンパク質を含有する、本発明1001〜1011のいずれかの水性組成物。
[本発明1013]
カオトロピック剤、陽イオンまたはそれらの組み合わせを含む、本発明1001〜1012のいずれかの水性組成物。
[本発明1014]
カオトロピック剤が、尿素、塩化グアニジン、ブタノール、エタノール、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノールおよびチオ尿素から選択される、本発明1013の水性組成物。
[本発明1015]
陽イオンが二価陽イオンである、本発明1013または1014の水性組成物。
[本発明1016]
二価陽イオンがCa2+、Mg2+、Sr2+およびZn2+から選択される、本発明1015の水性組成物。
[本発明1017]
さらなるタンパク質が0.1〜20 mg/ml、好ましくは1〜10 mg/mlの濃度で存在し; 脂肪族化合物が0.01〜100 mM、好ましくは0.1〜10 mMの濃度で存在し; 界面活性剤が0.001〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の濃度で存在し; かつ二価陽イオンが1〜400 mM、好ましくは10〜200 mM、より好ましくは50〜100 mMの濃度で存在する、本発明1001〜1016のいずれかの水性組成物。
[本発明1018]
1 mM〜1 M、好ましくは10 mM〜200 mMの濃度でカオトロピック剤をさらに含む、本発明1017の水性組成物。
[本発明1019]
pHがpH 2〜12、好ましくはpH 5〜10の範囲である、本発明1001〜1018のいずれかの水性組成物。
[本発明1020]
C因子タンパク質、好ましくは組み換えC因子タンパク質をさらに含有する、本発明1001〜1019のいずれかの水性組成物。
本発明の他の態様は、以下の開示から容易に明らかになるであろう。
本発明の態様による内毒素の脱マスキングの基礎をなすと考えられる機構を例示する。図1に描かれるシナリオでは、内毒素は、内毒素が埋め込まれ、かくして検出からマスキングされた界面活性剤ミセルを形成する界面活性剤(内毒素マスカとして作用しうる)によって溶液中に存在する。図1は、これらのミセルを分解し、埋め込まれた内毒素を遊離させるが、それ自体の新しいミセルを形成しない単一成分モジュレータを添加する効果を図式的に示す。界面活性剤ミセルの分解に続いて、単一成分モジュレータは次に、遊離された内毒素に対するシャペロンとして働き、それを溶液中で安定化する。個々の内毒素部分と凝集した内毒素部分との間には平衡が存在し、凝集した形態に基づいて内毒素凝集体の検出が進行する(「Aggregates are the biologically active units of endotoxins」. Mueller,M.,Lindner,B.,Kusomoto,S.,Fukase,K., Schromm,A.B. and Seydel,U. (2004) The Journal of Biological Chemistry, Vol.279, No. 25, pp. 26307-26313。パネル(a)に示される形態の内毒素は検出されにくいが、パネル(c)に示される形態の内毒素は検出可能である。図1に描かれるシナリオは、以下でさらに詳細に論じられる。 本発明のさらなる態様による内毒素の脱マスキングの基礎をなすと考えられる機構を例示する。図2に描かれるシナリオでは、内毒素は、内毒素が埋め込まれ、かくして検出からマスキングされた界面活性剤ミセルを形成する界面活性剤(内毒素マスカとして作用しうる)によって溶液中に存在する。図2は、タンパク質および非タンパク質成分を含む二成分モジュレータを添加する効果を図式的に示す。この二成分モジュレータは、内毒素が予め挿入されマスキングされていた界面活性剤ミセルを分解すると考えられる。モジュレータの非タンパク質成分は、界面活性剤ミセルの外側の内毒素を一過性に安定化するが、モジュレータのタンパク質成分は、とりわけ界面活性剤の分子を結合させることによって界面活性剤ミセルを不安定化する。図2に描かれるシナリオは、以下でさらに詳細に論じられる。 本発明のさらなる態様による内毒素の脱マスキングの基礎をなすと考えられる機構を例示する。図3に描かれるシナリオでは、内毒素は、内毒素が埋め込まれ、かくして検出からマスキングされた界面活性剤ミセルを形成する界面活性剤(内毒素マスカとして作用しうる)によって溶液中に存在する。図3は、多成分モジュレータ、および水素結合の安定性に影響を与える作用物質を添加する効果を図式的に示す。ともに、多成分モジュレータおよび水素結合の安定性に影響を与える作用物質は、もともと内毒素をマスキングしている界面活性剤ミセルを不安定化し、検出可能とされるように内毒素の凝集を促進する。図3に描かれるシナリオは、以下でさらに詳細に論じられる。 本発明のさらなる態様による内毒素の脱マスキングの基礎をなすと考えられる機構を例示する。図4に描かれるシナリオでは、内毒素は、とりわけタンパク質によって、溶液中に存在する。このタンパク質は、内毒素が安定して結合し、かくして検出からマスキングされたままでありうる結合溝を含む。図4は、予めマスキングされていた内毒素が凝集し、検出可能とされるように、多成分モジュレータを添加する効果を図式的に示す。図4に描かれるシナリオは、以下でさらに詳細に論じられる。 本発明のさらなる態様による内毒素の脱マスキングの基礎をなすと考えられる機構を例示する。図5に描かれるシナリオでは、内毒素は、タンパク質(内毒素マスカとして作用しうる)によって溶液中に存在する。このタンパク質は、内毒素が安定して結合し、かくして検出からマスキングされたままでありうる結合溝を含む。図5は、水素結合の安定性に影響を与える作用物質、ならびにタンパク質および非タンパク質成分を含む多成分モジュレータを添加する効果を図式的に示す。ともに、これらは、マスキングタンパク質との複合体中の内毒素を不安定化させ、マスキングタンパク質との複合体外の内毒素を一過性に安定化させ、遊離した内毒素の凝集を促進し、それを検出可能にする。図5に描かれるシナリオは、以下でさらに詳細に論じられる。 本発明のさらなる態様による内毒素の脱マスキングの基礎をなすと考えられる機構を例示する。図6に描かれるシナリオでは、内毒素は、タンパク質によっておよび界面活性剤によって(内毒素マスカとして作用しうる)溶液中に存在する。このタンパク質は、内毒素が安定して結合し、かくして検出からマスキングされたままでありうる結合溝を含む。さらに、界面活性剤は、安定して挿入された内毒素の分子がマスキングされている安定なミセルを形成する。図6は、水素結合の安定性に影響を与える作用物質、ならびにタンパク質および非タンパク質成分を含む多成分モジュレータを添加する効果を図式的に示す。ともに、これらは、マスキングタンパク質との複合体中のおよび/またはマスキング界面活性剤ミセル中の内毒素を不安定化させ、マスキングタンパク質との複合体外のおよび/またはマスキング界面活性剤ミセル中の内毒素を一過性に安定化させ、遊離した内毒素の凝集を促進し、それを検出可能にする。図6に描かれるシナリオは、以下でさらに詳細に論じられる。 1-ドデカノールのみの、およびBSAとともに1-ドデカノールのモジュレータシステムを用いた界面活性剤マスカ(ポリソルベート20/クエン酸塩)からの内毒素LPSの回収率を示すグラフである。 さまざまな強度のさまざまなモジュレータシステムを用いた界面活性剤マスカ・トライトンX-100からの内毒素LPSの回収率を示すグラフである。 種々のモジュレータシステムを用いたさまざまな界面活性剤マスキングシステムからの内毒素LPSの回収率を示すグラフである。 pHに応じたマスキング界面活性剤(ポリソルベート20)からの内毒素LPSの回収率を示すグラフである。 pHに応じたマスキング界面活性剤(ポリソルベート80)からの内毒素LPSの回収率を示すグラフである。 マスキングされた内毒素を含有することが疑われる当該の組成物の脱マスキングプロセスを判定および最適化するための一般化された検証スキームを示すフローチャートである。 マスキングされた内毒素を含有することが疑われる当該の組成物の脱マスキングプロセスを判定および最適化するための一般化された評価スキームを示す表である。 マスキング前および後(それぞれ図の左側棒および中央棒)、ならびに本発明の方法による脱マスキング後(図の右側棒)のLPS回収レベル(すなわち測定されたLPS活性)という観点から見た場合の、本明細書における本発明の方法の一般的な略図である。図の左側棒および中央棒はかくして、溶液中に存在する内毒素が、1つまたは複数の内毒素マスカによって検出不能とされる薬学的製剤での一般的に優勢な状況を表す。この内毒素は本発明の方法によって、再び検出可能とされることができ、すなわち、そのマスキングされた状態から「レスキュー」され、予めマスキングされていた内毒素を検出することができる。 本明細書において記述される脱マスキング方法に関連した動態を例示する一般的略図を示す。左端の活性な(すなわち凝集した、それゆえ検出可能な) LPSからマスキングされたLPS (中央底部; 凝集していない)への移行が、いくつかの代表的な内毒素について示されている。「マスキングされたLPS」に関連するエネルギーは「活性なLPS」に関連するエネルギーよりも低いため、LPSはこのマスキングされた形態で安定化されたままである。本明細書において記述される本発明の方法は、このマスキングされたLPSを効果的に不安定化させ、かくしてマスキングされたLPSのレベルを超えるレベルまでそのエネルギーを上昇させ、そこからLPSは再び、凝集した形態(略図の右端)へエネルギーを戻すことができる。再構成モジュレータは、可溶化(マスク化)形態から凝集(脱マスク化)形態へのLPSのこのレスキューを媒介する上で重要な役割を果たすものと考えられる。
全般
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的で説明的なものに過ぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。本出願において、特に別段の定めのない限り、単数形の使用は複数形を含む。本出願において、「または」の使用は、特に定めのない限り、「および/または」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」のような他の文法的形態の使用は、限定するものではない。同じ意味で、「含む(comprising)」という用語ならびに「含む(comprises)」および「含まれる(comprised)」のような他の文法的形態の使用は、限定するものではない。説明の全体を通して節の見出しは、構成のみを目的としている。それらは、その中に記述されているさまざまな態様を限定することを特に意図するものではなく、1つの小見出しの下に記述されている要素および態様は、別の小見出しの下に記述されている要素および態様と自由に組み合わせることができるものと理解されるべきである。
前述、後続の特許請求の範囲の記述において、任意の1つの態様の特徴は、任意の他の態様の特徴と組み合わせ可能であると意図される。任意の1つの態様における1つまたは複数の特徴の、任意の他の態様における1つまたは複数の特徴とのそのような組み合わせは、出願時の本出願の開示に属する。
特許、特許出願、論文、モノグラフ、書籍、条約および規制を含むがこれらに限定されない、本出願において引用される全ての文書または文書の一部は、いかなる目的のためにも参照によりその全体が本明細書に明示的に組み入れられる。
発明の詳細な説明
本発明は、タンパク質と、主鎖としてC8〜C16を有し、好ましくは1つまたは複数のヘテロ原子による置換を有する脂肪族化合物とを含む水性組成物に関する。
水性組成物は、好ましくは、脂肪族化合物が添加されたタンパク質含有薬学的組成物でありうる。脂肪族化合物の添加は、LPSによる組成物の潜在的汚染の検出可能性を改善するのに役立つ。本出願の他の部分で述べられるように、LPSは、タンパク質含有組成物のいくつかの構成成分によってマスキングされているため、従来の内毒素試験による検出を免れうる。
好ましい態様によれば、脂肪族化合物は、主鎖中に少なくとも1つの置換基を有する分枝化合物であり、その置換はメチル、エチル、プロピルおよびブチル基から選択されうる。
脂肪族化合物の主鎖は、本明細書の他の箇所で定義される通りである。
さらに好ましい態様によれば、主鎖は、C8〜C16アルキル、C8〜C16アルケニルおよびC8〜C16アルキニルから選択される。主鎖は、1つもしくは複数の二重結合および/または1つもしくは複数の三重結合を含んでもよいが、飽和アルキル鎖がより好ましい態様である。
さらに好ましい態様によれば、脂肪族化合物の一部を形成しうるヘテロ原子は、O、SおよびNから選択されるが、Oが最も好ましい置換である。
さらに好ましい脂肪族化合物はアルカノールから選択され、これは好ましくは、非分枝アルカノール、より好ましくは1-アルカノールおよび最も好ましくは1-ドデカノールである。
脂肪族化合物は、潜在的に混入しているLPS分子を、LPSがHyglos GmbHによるEndoLISA(登録商標)のような従来の内毒素試験キットにより検出されやすくなる形態として、安定化させると考えられる。
内毒素の検出をより受けやすくされうる組成物は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびそれらの任意の組み合わせから選択されうる界面活性剤を含有することが多い。そのような組成物において用いられうる好ましい界面活性剤は、
アルキル硫酸塩、好ましくはラウリル硫酸アンモニウムまたはラウリル硫酸ナトリウム(SDS); アルキル-エーテル硫酸塩、好ましくはラウレス硫酸ナトリウムまたはミレス硫酸ナトリウム; コレステロール硫酸; スルホネート、好ましくはドデシルベンゼンスルホネート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムまたはキシレンスルホネート; アルキルスルホコハク酸塩、好ましくはスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム; スルホキシド、好ましくはジデシルメチルスルホキシド; リン酸塩、好ましくはトリラウレス-4リン酸塩; およびカルボン酸塩、好ましくはステアリン酸ナトリウムまたはラウロイルサルコシン酸ナトリウムからなる群より選択できる陰イオン性界面活性剤;
第一級アミン; 第二級アミン; 第三級アミン; およびアルキルトリメチルアンモニウム塩(好ましくはセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB); またはセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC))のような第四アンモニウム陽イオン; 塩化セチルピリジニウム(CPC); 第四級アンモニウム界面活性剤、好ましくはトリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート(クオタニウム52); ならびに四級化ヒドロキシエチルセルロースエトキシレート(ポリクオタニウム-10)からなる群より選択できる陽イオン性界面活性剤;
ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(ポリソルベート)、好ましくはポリソルベート20 (Tween-20)、ポリソルベート40、ポリソルベート60またはポリソルベート80 (Tween-80); ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル; ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル; グルコシドアルキルエーテル; ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル; ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル; グリセロールアルキルエステル; ソルビタンアルキルエステル; ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブロック共重合体; コカミドMEA; ステロール、好ましくはコレステロール; シクロデキストリン; ポロキサマー、好ましくはプルロニックブロック重合体; ならびにコカミドDEAからなる群より選択できる非イオン性界面活性剤;
CHAPS (3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート); スルタイン、好ましくはコカミドプロピルヒドロキシスルタイン; ベタイン、好ましくはコカミドプロピルベタイン; アミノオキシド(amino oxide)、好ましくはパルミタミンオキシド、ラウリルアミンオキシド、および式中R3がC8〜C18アルキル、C8〜C18アルケニル、C8〜C18アルキニルである、一般式R3N+O-のアミンオキシドまたはレシチンからなる群より選択できる両性界面活性剤
から選択されうる。
さらに好ましい態様によれば、界面活性剤は、ポリソルベート、好ましくはポリソルベート20およびポリソルベート80、ポロキサマー、好ましくはポロキサマー188、オクトキシノール、好ましくはオクトキシノール9、アルキルアミンオキシド、好ましくはラウリルアミンオキシド、第四アンモニウム塩、好ましくはトリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート、アルキルリン酸塩、好ましくはトリラウレス-4リン酸塩、ならびにステアリン酸塩、好ましくはステアリン酸ナトリウムから選択される。
好ましい水性組成物において、タンパク質は、抗体、抗体断片、ホルモン、酵素、融合タンパク質、タンパク質結合体およびそれらの任意の組み合わせから選択され、このタンパク質は、医薬品の品質管理においてLPSが検出されないままでないように特別な注意を払わなければならない薬学的調製物の活性薬剤として頻繁に用いられる。
さらに好ましい態様において、抗体断片は、Fab、Fab'、F(ab')2およびFv、一本鎖抗体ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される。
さらに好ましい態様において、水性組成物は、上記のタンパク質であってもよい薬理活性成分に加えて、好ましくはヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンおよび/またはオボアルブミンであるアルブミンから選択されるさらなるタンパク質を含有しうる。さらなるタンパク質は、潜在的なLPS汚染を、上記のものなどの従来の内毒素試験によっていっそう検出可能にさせるのに役立ちうる。
さらに好ましい態様において、水性組成物は、カオトロピック剤、陽イオンまたはそれらの組み合わせを含みうる。同じ成分が、潜在的なLPS汚染を、Hyglos GmbHによる内毒素試験でいっそう検出しやすい形態にさせることを助長することもできる。
さらに好ましい態様によれば、カオトロピック剤は、尿素、塩化グアニジン、ブタノール、エタノール、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノールおよびチオ尿素から選択される。
さらに好ましい態様によれば、陽イオンは、好ましくはCa2+、Mg2+、Sr2+およびZn2+から選択される、二価陽イオンである。
さらに好ましい態様によれば、アルブミンであってもよいさらなるタンパク質は、0.1〜20 mg/mlの範囲の、好ましくは1〜10 mg/mlの範囲の濃度で、より好ましくは10 mg/mlの量で存在する。
さらに好ましい態様において、脂肪族化合物は0.01〜100 mMの濃度で、好ましくは0.1〜10 mMの濃度で存在する。この濃度範囲は1-アルカノール、好ましくは1-ドデカノールの場合に特に好ましい。
さらに好ましい態様において、界面活性剤は0.001〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の濃度で存在する。
さらに好ましい態様において、カオトロピック剤は1 mM〜1 M、好ましくは25〜200 mM、好ましくは10 mM〜100 mMの濃度で存在する。
さらに好ましい態様において、二価陽イオンは1〜400 mMの濃度で、好ましくは10〜200 mMの濃度で、より好ましくは50〜100 mMの濃度で存在する。
さらに好ましい態様において、組成物のpHは2〜12の範囲、好ましくはpH 5〜10の範囲である。
さらに好ましい態様において、組成物は、従来の内毒素アッセイ法において用いられる成分であるC因子タンパク質を含有する。
好ましい態様において、C因子タンパク質は組み換えC因子タンパク質である。
非常に好ましい水性組成物は、0.1〜10 mMの濃度範囲の1-アルカノール、好ましくは1-ドデカノール、0.002〜0.2重量%の濃度範囲の請求項8記載の界面活性剤、10〜200 mMの濃度範囲の二価陽イオン、好ましくはCa2+、および5〜10のpHと組み合わせて、タンパク質、好ましくは抗体を含む。
さらに非常に好ましい水性組成物は、前項において上記に示した通りであり、カオトロピック剤、好ましくは塩化グアニジンを10 mM〜100 mMの濃度範囲でさらに含む。
上記の組成物において、LPSは、存在する場合、Hyglos GmbHのEndoLisaのような従来の内毒素アッセイ法による検出を受けやすいであろう。
上記のように、一開示は、内毒素マスカを含む、および該内毒素を含むことが疑われる組成物、好ましくは薬学的組成物中の内毒素を脱マスキングする方法であって、例えば、存在するなら、該内毒素と該内毒素マスカとの複合体から該内毒素を放出させることにより、該内毒素を脱マスキングできるモジュレータを該組成物に添加する段階を含む、該方法に関する。薬学的組成物は、ほとんどの場合、水性組成物であろう。
さらなる開示は、内毒素マスカを含む、および該内毒素を含むことが疑われる組成物、好ましくは薬学的組成物中の内毒素を検出する方法であって、例えば、存在するなら、該内毒素と該内毒素マスカとの複合体から該内毒素を放出させることにより、該内毒素を脱マスキングできるモジュレータを該組成物に添加する段階; および検出方法によって該内毒素を検出する段階を含む、該方法に関する。薬学的組成物は、ほとんどの場合、水性組成物であろう。
内毒素
「内毒素」という用語は、細菌、特にグラム陰性細菌、すなわち内部細胞膜と細菌外膜との間に挟まれたその薄いペプチドグリカン層のため、細菌分化のグラム染色法に用いられるクリスタルバイオレット染色を保持しない、それゆえ、この方法による陽性検出を回避する細菌、の表面上に産生される分子をいう。具体的には、内毒素は、グラム陰性細菌の外膜に存在する生物学的に活性な物質である。1つの一般的なクラスの内毒素は、リポ多糖(LPS)である。本出願の目的のため、「内毒素」および「LPS」という用語は互換的に用いられる。しかしながら、本明細書の他の箇所で論じられるように、例えば異なる供給源に由来する、異なるタイプのLPSが存在すること、ならびに「内毒素」および「LPS」という用語は、これらの異なるタイプのLPSを包含するように意図されることが理解される。内毒素は、細菌の表面上に位置し、タンパク質およびリン脂質とともに、外側の細菌膜を形成する。一般的に、LPSは、異なる化学的および物理的特性を有する2つの部分: 親水性糖ドメイン(多糖)および疎水性脂質ドメイン(リピドA)から構成される。多糖において2つの異なる領域: コアオリゴ糖およびO特異的な多糖を認識することができる(M.A. Freudenberg, C. Galanos, Bacterial Lipopolysaccharides: Structure, Metabolism and Mechanisms of Action, Intern. Rev. Immunol.6, 1990)。
リピドAは高度に疎水性であり、分子の内毒素的に活性な部分である。リピドAは、典型的には、2つのホスホリル基を保有するβ-D-GlcN-(1-6)-α-D-GlcN二糖から構成される。この構造には最大4つのアシル鎖が結合している。これらの鎖は次に、種の間でその性質、数、長さ、順序および飽和状態がかなり変化しうるさらなる脂肪酸によって置換されうる。リピドAに共有結合しているのは、それ自体が形式的に内側コアと外側コアに分けることができる分子のコア部である。内側コアは、リピドAの近位にあり、3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソン酸(KDO)のような異常な糖を含む。外側コアは、細菌表面からさらに伸長し、ヘキソースおよびヘキソサミンのような、より一般的な糖からなる可能性がより高い。これには、ほとんどの場合、典型的にはまた一般的な糖から構成される、O-多糖と呼ばれる繰り返し単糖類サブユニットの重合体が結合している。しかしながら、このO-多糖は、いくつかのグラム陰性菌株において切断されているかまたは欠損していることが分かっているので、遍在しているわけではない。さらに、ある種の菌株は、他の点では十分に保存された遺伝子座に変異を保有し、O-多糖担持LPSを発現する野生型「スムース」菌株と区別するために「ラフ変異体」と呼ばれる(C. Erridge, E. Bennett-Guerrero, I. Poxton, Structure and function of lipopolysaccharides, Microbes and Infection, 2002)。内毒素、例えばLPS、および健康へのその影響に関連する豊富な情報は、書籍「Endotoxin in Health and Disease」, Helmut Brade, Steven M. Opal, Stefanie N. Vogel and David C. Morrison, 1999編, Marcel Dekker, Inc., ISBN 0-8247-1944-1刊行の中に見出すことができる。
上記のように、内毒素はさまざまな細菌供給源に由来しうる。内毒素の化学的性質は、供給源ごとにわずかに異なる場合がある。例えば、さまざまな細菌供給源に由来する内毒素は、リピドAドメインの脂肪族アミドおよび脂肪酸エステル中の脂肪族鎖の長さがわずかに異なりうる。しかしながら、供給源ごとの内毒素構造のわずかな変化にもかかわらず、本明細書において上述された同じ基本構造が全てとはいえないにしてもほとんどの内毒素に当てはまり、作用様式が類似していること、およびそれに応じて、由来の細菌種を問わず内毒素の挙動に影響を与える様式が類似していることを意味している。既知の内毒素の例としては、例えば大腸菌、例えば大腸菌O55:B5 (製品番号L2637-5MGとしてSigmaから入手できるような)または大腸菌K12; ウマ流産菌(S. abortus equi) (Acilaから製品番号1220302として入手できるような); 肺炎かん菌(Klebsiella pneumonia); モルガン菌(Morganella morganii); 腸炎エルシニア菌(Yersinia enterocolitica); 霊菌(Serratia marcescens); ナイセリア、例えば髄膜炎菌(Neisseria meningitis); アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanni); エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、例えば天然に存在する内毒素(NOE); シュードモナス菌、例えば緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa); サルモネラ菌、例えばサルモネラ菌(Salmonella enteric); 赤痢菌; インフルエンザ菌; 百日咳菌(Bordatella pertussis); およびコレラ菌(Vibrio cholerae)に由来するものが挙げられる。この一覧は単に例示的なものであり、本明細書において用いられる「内毒素」という用語を決して限定するものではないことが理解されるべきである。
内毒素マスカ
「内毒素マスカ」という用語は、内毒素を有する溶液中で、内毒素を、利用可能な検出方法によっては、例えばカブトガニ変形細胞溶解物(limulus amebocyte lysate; LAL)試験によっては検出不能にする物質をいう。典型的には、内毒素は、凝集形態として、すなわち、複数の、または少なくとも2つの内毒素部分が、静電相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用またはそれらの任意の組み合わせのような非共有相互作用によって空間的にすぐ近くにともに保持される形態として、溶液中に存在する場合に、検出可能である。しかしながら、内毒素は、内毒素が個々の内毒素分子として可溶化されるようにその活性な凝集状態が変化すると、一般的な検出システムによって測定した場合に活性がかなり低く(検出不能に)なる、すなわちマスキングされる。内毒素の個々の分子実体は、例えば、溶液中に存在する界面活性剤によって安定化されていると推定することができる。そのような界面活性剤は、個々の内毒素部分が埋め込まれ、市販されている内毒素アッセイにおいてもはやC因子と反応できない界面活性剤ミセルを形成することによって、個々の内毒素部分を安定化させると推定される。ある種のタンパク質はまた、検出不能な可溶性形態の内毒素の安定化に影響を与え、または寄与しうる。例えば、そのようなタンパク質は、個々の内毒素分子に、安定な結合に適した環境を供与し、それによって、そうでなければ検出可能な内毒素の凝集体を分解し、および/または利用可能な内毒素アッセイ法において内毒素分子がC因子と相互作用するのを防ぐ結合溝を内毒素に提示しうる。
Hyglos GmbHから入手可能なEndoLISA(登録商標)試験キットおよびLALに基づく試験のような市販の内毒素試験によって検出可能であるためには、内毒素の少なくとも2つの分子、すなわちLPSの少なくとも2つの分子は、凝集体を形成しなければならないものと考えられる。
実際に、いくつかの刊行物には、内毒素凝集体が、脱凝集された内毒素よりも有意に生物学的に活性が高いことが示されている(M. Mueller, B. Lindner, S. Kusumoto, K. Fukase, A, B. Schromm, U. Seydel, Aggregates are the biologically acitve units of endotoxin, The Journal of biological Chemistry, 2004; A. Shnyra, K. Hultenby, A. Lindberg, Role of the physical state of Salmonella Lipopolysaccharide in expression of biological and endotoxic properties, Infection and Immunity, 1993)。さらに、Tanら(N. S. Tan, M. L. P. NG, Y. H Yau, P. K. W. Chong, B Ho, J. L. Ding, Definition of endotoxin binding sites in horseshoe crab Factor C recombinant sushi proteins and neutralization of endotoxin by sushi peptides, The FASEB Journal, 2000)により記述されたC因子の活性化は、協調的結合機構として示されている。ここで、上記のように、Hyglos GmbHから入手可能なEndoLISAキットのような、カブトガニに基づく検出方法における重要な因子であるC因子の活性化には、少なくとも2つのLPS分子が必要とされる。
界面活性剤である内毒素マスカの例としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
本発明の意味において界面活性剤内毒素マスカとして機能しうる陰イオン性界面活性剤の例としては、例えばラウリル硫酸アンモニウムまたはラウリル硫酸ナトリウム(SDS)のようなアルキル硫酸塩; 例えばラウレス硫酸ナトリウムまたはミレス硫酸ナトリウムのようなアルキル-エーテル硫酸塩; コレステロール硫酸; 例えばドデシルベンゼンスルホネート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムまたはキシレンスルホネートのようなスルホネート; 例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムのようなアルキルスルホコハク酸塩; 例えばジデシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド; 例えばトリラウレス-4リン酸塩のようなリン酸塩; および例えばステアリン酸ナトリウムまたはラウロイルサルコシン酸ナトリウムのようなカルボン酸塩が挙げられる。
本発明の意味において内毒素マスカとして機能しうる陽イオン性界面活性剤の例としては、第一級アミン; 第二級アミン; 第三級アミン; および例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えばセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)またはセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC))のような第四アンモニウム陽イオン; 塩化セチルピリジニウム(CPC); 例えばトリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート(クオタニウム52)のような第四級アンモニウム界面活性剤; ならびに四級化ヒドロキシエチルセルロースエトキシレート(ポリクオタニウム-10)が挙げられる。
本発明の意味において界面活性剤内毒素マスカとして機能しうる非イオン性界面活性剤には、例えばポリソルベート20 (Tween-20)、ポリソルベート40、ポリソルベート60またはポリソルベート80 (Tween-80)のようなポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(ポリソルベート); ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル; ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル; グルコシドアルキルエーテル; ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル; ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル; グリセロールアルキルエステル; ソルビタンアルキルエステル; ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブロック共重合体; コカミドMEA; 例えばコレステロールのようなステロール; シクロデキストラン; 例えばプルロニックブロック重合体(例えばF127の場合n=200かつm=65、およびF61の場合n=4.5かつm=31で、HO-(CH2CH2O)n/2-(CH2CH(CH3)O)m-(CH2CH2O)n/2-H)のようなポロキサマーならびにコカミドDEAが含まれる。
本発明の意味において界面活性剤内毒素マスカとして機能しうる両性界面活性剤には、CHAPS (3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート); 例えばコカミドプロピルヒドロキシスルタインのような、スルタイン; 例えばコカミドプロピルベタインのような、ベタイン; 例えばパルミタミンオキシド、ラウリルアミンオキシド、および式中R3がC8〜C18アルキル、C8〜C18アルケニルまたはC8〜C18アルキニルである、一般式R3N+O-のアミンオキシドのようなアミンオキシド; ならびにレシチンが含まれる。具体的には、上記一般式R3N+O-におけるR3は、C8アルキル、C9アルキル、C10アルキル、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキル、C16アルキル、C17アルキルもしくはC18アルキル; またはC8アルケニル、C9アルケニル、C10アルケニル、C11アルケニル、C12アルケニル、C13アルケニル、C14アルケニル、C15アルケニル、C16アルケニル、C17アルケニルもしくはC18アルケニル; またはC8アルキニル、C9アルキニル、C10アルキニル、C11アルキニル、C12アルキニル、C13アルキニル、C14アルキニル、C15アルキニル、C16アルキニル、C17アルキニルもしくはC18アルキニルのいずれかでありうる。
あるいはまたは上記の内毒素マスカのいずれか(単独でまたは組み合わせで)に加えて、内毒素マスカは、薬理活性成分(API)であってもよい。このAPIは、上記の界面活性剤内毒素マスカのいずれかとともにまたはなしで溶液中に存在しうる。APIが溶液中で界面活性剤内毒素マスカとともに存在する場合、以下でさらに詳細に論じられるように、マスキング効果がさらに顕著でありえ、マスキングされた内毒素を内毒素マスカから遊離させるにはさらにストリンジェントな方策が必要でありえる。溶液中に存在する内毒素のマスキングを特に生じまたは増大しうるAPIは、タンパク質API、例えば抗体; 抗体断片; ホルモン; 酵素; 融合タンパク質; タンパク質結合体; およびそれらの任意の組み合わせである。タンパク質APIが抗体断片である場合、抗体断片は、好ましくは、Fab; Fab'; F(ab')2; Fv; 一本鎖抗体; およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されうる。タンパク質APIが抗体である場合、抗体は、好ましくは、完全ヒト抗体; 抗イディオタイプ抗体; ヒト化抗体; 二重特異性抗体; キメラ抗体; CDR移植抗体; モノクローナル抗体; ポリクローナル抗体; およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されうる。あるいはまたは上記に加えて、APIは有機小分子であってもよい。当業者は「有機小分子」または「小分子」という用語が意味することを理解している。これは、300 g/mol、400 g/mol、500 g/mol、600 g/mol、700 g/mol、800 g/mol、900 g/molまたは、好ましくは、1000 g/mol未満の分子量を有する分子である。
一般的に、内毒素マスカは、界面活性剤であろうとタンパク質であろうと、可溶化内毒素と凝集内毒素との間の平衡を、利用可能な内毒素アッセイ法によって検出できない可溶化内毒素の方向にシフトさせるという特徴を有するであろう。これが検出不可能な形態への内毒素のシフトであり、これは本明細書において「マスキング」といわれる。上述のように、内毒素が可溶化される形態は、例えば、(a)界面活性剤によって形成されたミセルの脂質層に埋め込まれている内毒素; (b)タンパク質上にもしくはタンパク質中に、例えば薬理活性成分、例えばタンパク質の表面上に形成された適切な立体的および静電的環境の適当な結合溝中に結合している内毒素; または(c)これら2つの可能性の組み合わせに関与している内毒素を含みうる。エネルギー的に凝集形態を回避するように内毒素が可溶化されるという形態にかかわらず、正味の効果は、(そうでなければ凝集され、それゆえ検出可能となるような)内毒素の個々の分子が、個々に安定化されて、この個別化(可溶化)された形態においては、検出不能となりかつ検出不能のままである、すなわちマスキングされるということである。
しかしながら、溶液中のそのような検出不能ではあるが安定化された内毒素分子は、それでもなお、対象に投与された場合に、上で概略した発熱反応および/または毒性反応の類を生み出しおよび/またはそれに寄与しうる。この危険性は、界面活性剤がないと、医薬製剤中に提供される濃度で不溶性であるような、API、例えばタンパク質APIを可溶化するために、医薬製剤が界面活性剤を含有することが多いので、医薬製剤において特に重大である。界面活性剤を含めることによってAPI、例えばタンパク質APIを可溶性にする際には、その後、この内毒素の検出に必要とされる内毒素の、まさにその凝集を、知らず知らずに破壊してしまうことが多い。したがって、内毒素マスカが界面活性剤である場合、許容される形態および濃度でAPI、例えばタンパク質APIを製剤化するために利用されるまさにその方策がまた、溶液中の内毒素をマスキングする可能性を有する。
上記のように、内毒素マスカは、タンパク質、例えばAPI自体であってもよい。このシナリオは、界面活性剤内毒素マスカの存在と併せて起こりうるし、または界面活性剤が存在しないという場合には、界面活性剤内毒素マスカの非存在下でも起こりうる。この後者の場合、API、特にタンパク質APIは、内毒素がAPIのみによってマスキングされるような、すなわち内毒素をマスキングするのにいかなる界面活性剤も必要とされないような、タンパク質上またはタンパク質中での安定な結合に十分な環境を内毒素に付与し、それを検出不能にしうる。内毒素マスカがタンパク質である場合には、このタンパク質はAPI自体であってもよく、あるいはまたはさらには、APIとは異なる溶液中のタンパク質であってもよい。一般的に、内毒素の個々の分子、例えばLPSの個々の分子を安定化させるための適切な立体的および静電的環境を有するいずれのタンパク質も、内毒素のマスキングに潜在的に影響を及ぼし、または寄与しうる。
内毒素マスカが単独で、または例えば界面活性剤内毒素マスカのようなさらなる内毒素マスカとともに、タンパク質である場合、内毒素を脱マスキングすることで、脱マスキング後に化学的に不変のタンパク質内毒素マスカが残ることが本発明の特徴である。具体的には、内毒素の脱マスキングにより、タンパク質内毒素マスカ(例えばタンパク質API)は切断されないか、または分解されない。
上述のタイプのシナリオでは、そうでなければ凝集体中に残存し、それゆえ検出可能であり続ける内毒素の個々の分子は、該タンパク質上または該タンパク質中の1つまたは複数のそのような表面位置で安定化される。界面活性剤ミセルの場合と同様に、そのような安定化は可溶化(検出不能な)内毒素と凝集(検出可能な)内毒素との間に存在する平衡を、可溶化(検出不能な)内毒素の方向にシフトさせる。上記のように、可溶化(検出不能な)形態へのこのような平衡のシフトは、溶液が界面活性剤と上記の特性を有する1つまたは複数のタンパク質の両方を含む場合に、特に顕著であることが想像されうる。というのは、そのような場合、 内毒素マスカによるその凝集体形態からの内毒素の個々の分子の安定化が、ミセル中での安定化の形態においても、タンパク質表面上での安定化の形態においてもともに起こりうるからである。そのようなシナリオでは、平衡を凝集体内毒素形態の方向へシフトさせ、ひいては検出可能にするために、よりストリンジェントな方策が必要とされうる。これらは、さらに以下の例示的なシナリオの文脈においてさらに詳細に論じられる(図1〜6)。
モジュレータ
本明細書において用いられる「モジュレータ」という用語は、単独でまたは協調して、マスキングされた内毒素を、内毒素アッセイ法(Hyglos GmbHから入手可能なEndoLISA(登録商標)検出アッセイ法のような)による検出に対して感受性にさせる1つまたは複数の化合物をいう。本明細書において用いられる「モジュレータ」という用語は、この目的を達成する単一成分と複数成分の両方を包含しうる。本明細書における以下のいくつかの例では、「モジュレータシステム」について言及するが、「モジュレータ」という用語は、協調して働くように意図された複数のモジュレータ物質を示すために用いられることもある。これは、マスキングされた内毒素を、内毒素アッセイ法によって検出可能にさせるために協調して作用する複数の物質を含む多成分モジュレータをいう。モジュレータシステムのさまざまな成分は、さまざまな理由のために、すなわち、さまざまな方法で内毒素と内毒素マスカとの複合体の安定性に影響を与えるモジュレータ物質のさまざまな機能を利用するために組み入れられうる。参照しやすいように、例えば、内毒素を脱マスキングするために単独でまたは一緒に利用されうる異なる種類のモジュレータを参照することができる:
・「破壊モジュレータ」: 「破壊モジュレータ」は、内毒素マスカと内毒素との複合体を完全にまたは部分的に分解するモジュレータである。内毒素マスカが界面活性剤であり、内毒素がマスキング界面活性剤ミセルの脂質層に挿入された可溶化形態としてマスキングされる場合、そのような界面活性剤ミセルを破壊して内毒素を遊離させるモジュレータは、破壊モジュレータといわれよう。以下でさらに詳細に論じられるように、1-ドデカノールは、そのような破壊モジュレータの1つである。破壊モジュレータ、例えば1-ドデカノール、1-デカン酸またはオクチル硫酸ナトリウム(SOS)は、有利には、脱マスキングプロセスにおいて0.01〜100 mMの濃度範囲で、好ましくは0.1〜10 mMの濃度範囲で、好ましくは10 mMの濃度で用いられうる。場合によっては、破壊モジュレータは、以下に記述する再構成モジュレータとして同時に機能することもある。
・「吸着モジュレータ」: 「吸着モジュレータ」は、可溶化されそれゆえ検出不能な形態で内毒素をそうでなければ安定化させる物質を結合する能力を有するモジュレータである。例えば、内毒素マスカが、例えばいくつかの薬学的組成物に含まれる、界面活性剤である場合、界面活性剤の分子に結合し、このようにして内毒素安定化ミセルの分解に寄与するモジュレータは、吸着モジュレータといわれよう。以下でさらに詳細に論じられるように、BSAはそのような吸着モジュレータの1つである。吸着モジュレータとして、例えば、BSAは、有利には、脱マスキングプロセスにおいて0.1〜20 mg/mLの濃度範囲で、好ましくは1〜10 mg/mLの濃度範囲で、好ましくは10 mg/mlの濃度で用いられうる。
・「置換モジュレータ」: 「置換モジュレータ」は、内毒素マスカ中または内毒素マスカ上のその安定な結合位置から内毒素の分子を完全にまたは部分的に置換する能力を有するモジュレータである。例えば、内毒素マスカがタンパク質であり、内毒素が、検出不能な形態として内毒素を安定化させるタンパク質の中または上に結合している場合、例えば疎水性相互作用によって、タンパク質の中または上の内毒素を置換する能力を有するモジュレータは、置換モジュレータといわれよう。以下でさらに詳細に論じられるように、SDSはそのような置換モジュレータの1つである。置換モジュレータ、例えばSDSは、有利には、脱マスキングプロセスにおいて0.01〜1%の濃度範囲で、好ましくは0.05〜0.5%の濃度範囲で、好ましくは0.1%の濃度で用いられうる。
・「再構成モジュレータ」: 「再構成モジュレータ」は、(例えば、上記で論じられたように、破壊モジュレータまたは置換モジュレータによる)内毒素マスカからの遊離後に内毒素を一時的に安定化し、かくして遊離され、可溶化された(検出不能な)内毒素が凝集した(検出可能な)形態をとることを助ける能力を有するモジュレータである。再構成モジュレータの助けを借りて、可溶化された内毒素は、凝集した内毒素として再構成される。以下でさらに詳細に論じられるように、1-ドデカノールはそのような再構成モジュレータの1つである。再構成モジュレータ、例えば1-ドデカノール、1-デカン酸またはオクチル硫酸ナトリウム(SOS)は、有利には、脱マスキングプロセスにおいて0.01〜100 mMの濃度範囲で、好ましくは0.1〜10 mMの濃度範囲で用いられうる。場合によっては、再構成モジュレータは、上述した、破壊モジュレータとして同時に機能することもある。
本明細書において以下で明らかになるように、上記のタイプのモジュレータは相互排他的ではない; すなわち、所定の物質が、複数の異なる種類の上記モジュレータとしての機能を有することが可能である。一例が1-ドデカノールであり、これは破壊モジュレータ(界面活性剤ミセルを分解する)および再構成モジュレータ(ミセルから遊離した内毒素を一時的に安定化させることで、それが凝集し検出可能になりうる)の両方として分類されうる。同様に、SDSは、破壊モジュレータ(別の非SDS界面活性剤の既存のミセルを分解する)および置換モジュレータ(存在しうる任意のマスキングタンパク質の中または上の結合部位から内毒素を遊離させる)として分類されうる。モジュレータのタイプに関する分類は、当該の物質が特定の組成物中で果たしている機能に依存する。しかしながら、内毒素を検出可能にさせるために可溶化形態から凝集形態への内毒素の再構成が一般に必要とされると考えられるので、モジュレータは通常、「再構成モジュレータ」として適格である少なくとも1つの成分を含む。
さらなる例として、内毒素マスカがタンパク質である場合に「置換モジュレータ」として機能する物質は、場合によっては、内毒素マスカが界面活性剤である場合には「破壊モジュレータ」として機能することもある。SDSはそのような物質の一例であり、モジュレータ成分のタイプに関するその分類は、優勢な状況に依存する。例えば、内毒素マスカがタンパク質である場合、SDSは、マスキングタンパク質の中または上に結合した内毒素を置換するのに役立つので、一般に、置換モジュレータとして機能するであろう。しかしながら、内毒素マスカが界面活性剤である場合、SDSは単独でまたは別のモジュレータ成分と一緒に、この場合はミセルを破壊することによって界面活性剤ミセルの脂質層からの内毒素の遊離を促進するので、むしろ破壊モジュレータとして機能しうる。
モジュレータは、上記の分類内の1つまたは複数の物質を含みうる。例えば、単一成分モジュレータは、1-ドデカノールのような破壊モジュレータのみを含みうる。二成分モジュレータは、1-ドデカノールのような破壊モジュレータ(再構成モジュレータとして機能する可能性もある)および、内毒素と内毒素マスカとのマスキング複合体の性質に応じて、BSAのような吸着モジュレータまたはSDSのような置換モジュレータのうちの1つの混合物を含みうる。多成分モジュレータは、1-ドデカノールのような破壊モジュレータ(再構成モジュレータとして機能する可能性もある)ならびに、内毒素と内毒素マスカとのマスキング複合体の性質に応じて、BSAのような吸着モジュレータおよびSDSのような置換モジュレータの各1つの混合物を含みうる。以下で詳細に論じられるように、選択されたモジュレータシステムの複雑さは、内毒素と内毒素マスカとの複合体の性質、およびその複合体の安定性に寄与する周囲の溶液状態に依存するであろう。上記から、内毒素の存在について分析される各新たな組成物は、マスキングされた内毒素を検出しやすくさせるために、特有のカスタマイズされたモジュレータ組成物を必要としうることが明らかである。しかし、試験される所与の組成物または製剤に適したモジュレータの同定は、以下にさらに示されるように、日常的な実験によって達成することができる。
上記のように、最も一般的な意味において、モジュレータは内毒素と内毒素マスカとの複合体を不安定化させ、内毒素マスカからの内毒素の遊離を促進すると考えられる。このようにして、モジュレータまたはモジュレータシステムは、平衡を、可溶化された(検出不能な)状態から凝集された(検出可能な)状態に効果的にシフトさせる。
本発明者らは、溶液中に存在するが検出できない内毒素は、想定の通り、内毒素が界面活性剤ミセル中に安定に可溶化され、および/または溶液中に存在するタンパク質の表面構造に結合されたままであるため、検出できないままであることを驚くべきことに見出した。この形態で個々に安定化されると、内毒素分子は検出を回避する。しかしながら、本発明者らは、可溶化された内毒素が検出可能な形態にされるように溶液状態を操作できることを見出した。場合によっては、この目的に到達するために溶液状態の複数の操作が必要とされることもあり、凝集状態に向けて平衡の所望のシフトをもたらすためにとられる方策のストリンジェンシーは、上記のように、内毒素マスカが内毒素を可溶化形態で安定化させる程度に応じて変化するであろう。しかし一般に、本明細書において記述される本発明によって行われる操作は、内毒素の平衡を可溶化状態から凝集状態にシフトさせて、それを検出できるという全体的な目的に照らして理解されるべきである。
上記を達成するために、「モジュレータ」は一般に、内毒素の脂質成分と内毒素マスカとの間の結合について競合し、かくして前者と後者との間の相互作用を弱める両親媒性分子を含む。そのような競合的結合は一般に、モジュレータシステムの少なくとも1つの成分を、内毒素の(両親媒性)脂質成分に構造的に類似する形態で提供することにより達成され、したがって前者は、内毒素マスカとの安定化した相互作用にある後者に置き換わることができる。
例えば、内毒素マスカが界面活性剤である場合、適当な破壊モジュレータは一般に、安定して挿入可能な、すなわち、両親媒性の界面活性剤分子と同様に両親媒性の内毒素脂質部分との間に挿入可能な、両親媒性化合物を含む。内毒素マスカが界面活性剤である場合、両親媒性の破壊モジュレータはそれゆえ、内毒素の可溶化形態から凝集形態への平衡の全体的なシフトにつながるいくつかの効果を並行して引き起こす。第1に、少なくとも1つの両親媒性破壊モジュレータを含むモジュレータシステムを提供することは、これらのミセルが分解されるように、界面活性剤ミセルの基礎となる親油性相互作用を破壊する。内毒素は、界面活性剤ミセルの脂質層へのその脂質成分の挿入によって予め可溶化されている(それゆえマスキングされている)ので、ミセルの分解は、この安定化力を除去し、予め埋め込まれた内毒素の遊離を引き起こす。内毒素マスカが界面活性剤であるかまたは界面活性剤を含む場合、破壊モジュレータの役割はかくして、界面活性剤ミセルを分解することである。
さらに、破壊モジュレータの両親媒性の特徴は、内毒素が上記のようにその界面活性剤ミセルから遊離されると、それを内毒素の脂質成分と会合させることもできる。両親媒性破壊モジュレータと内毒素の脂質成分とのこの相互作用は、安定化界面活性剤ミセルから遊離後の水溶液中の内毒素をシャペロンする効果を有する。この場合、破壊モジュレータは、再構成モジュレータとしての二重の機能を有するであろう。破壊モジュレータが特徴的に両親媒性である場合、それがそれ自体のミセルを形成しうる可能性があることは排除されない。しかしながら、脱マスキング効果は一般に、両親媒性破壊モジュレータがそれ自体のミセルを形成せず、可溶化され、それゆえマスキングされた内毒素の状態を別の状態と単に交換しうる場合に最大になるであろう。再構成モジュレータの重要な役割はかくして、遊離された内毒素を一時的に安定化させ(その前の、内毒素マスカとの複合体ほどではないが)、内毒素を、凝集された、それゆえ検出可能な状態へ効果的にシャペロンすることである。
このようにして溶液中で一時的にシャペロンされると、遊離した内毒素は検出可能な、それゆえ「脱マスキングされた」形態へ自由に凝集することができる。この凝集した、検出可能な形態に向けて平衡をシフトさせるためにモジュレータまたはモジュレータシステムの添加を超えて溶液状態をさらに操作する必要があるかどうかは、一般に、溶液中で優勢な状態および内毒素マスカと複合体を形成する内毒素の当初の安定性に依るであろう。
上記で既に企図された別のシナリオでは、内毒素マスカは界面活性剤ではなく、または界面活性剤のみではなく、内毒素を検出できないように、内毒素の個々の部分に安定的に結合するのに適したその表面の結合溝を有するタンパク質であっても、またはそれを含んでもよい。この場合、モジュレータに関連する同様の考察は、上記のように適用される。例えば、内毒素がタンパク質であるかまたはそれを含む場合に破壊(両親媒性)モジュレータおよび/または置換モジュレータの使用は、モジュレータが、タンパク質の親油性アミノ酸側鎖(内毒素マスカ)と内毒素の脂質成分との間に存在する親油性相互作用を破壊するという効果を有する。破壊モジュレータおよび/または置換モジュレータは、特徴が両親媒性である可能性が高いので、モジュレータは、タンパク質内の極性および/またはイオン化側鎖(内毒素マスカ)と内毒素のコアおよび/またはO-抗原多糖領域内の極性基との間に存在する静電相互作用を破壊することもできよう。これらの安定化相互作用が破壊されると、タンパク質内毒素マスカによって既にマスキングされていた内毒素はかくして、その前の、タンパク質との複合体から置換され、上記のように再構成モジュレータとの会合により凝集状態へ溶液中でシャペロンされる。
内毒素マスカがタンパク質内毒素マスカの非存在下で界面活性剤である場合について上述したように、遊離され、再構成モジュレータによりシャペロンされた内毒素は、検出可能な、それゆえ「脱マスキングされた」形態へ自由に凝集することができる。この凝集した、検出可能な内毒素形態に向けて平衡をシフトさせるためにモジュレータシステムの成分の添加を超えて溶液状態をさらに操作する必要があるかどうかは、一般に、溶液中で優勢な状態および内毒素マスカと複合体を形成する内毒素の当初の安定性に依るであろう。
モジュレータ、例えば破壊モジュレータ、置換モジュレータおよび/または再構成モジュレータは、特定の態様において、第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物を含むことができ、ここで第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物の主鎖が8〜16個の炭素原子を含む。本明細書において用いられる場合、「主鎖」という用語は、標準的なIUPAC命名法によって番号付けされた、8〜16個の炭素原子を含む第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物の最長鎖をいう。具体的には、第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物の主鎖は、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の炭素原子を含むことができる。本明細書において用いられる場合、「ヘテロ原子」という用語は、炭素以外の、第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物中の炭素原子が共有結合している任意の原子をいう。代表的なヘテロ原子は、酸素、窒素および硫黄原子を含む。さらに好ましい態様において、酸素置換脂肪族化合物は脂肪族アルコール、特に1-ドデカノールであり、これは式HO-(CH2)11-CH3によって与えられる分子である。上記のように、1-ドデカノールは、多くの場合、破壊モジュレータとして、および、全てとはいえないにしてもほとんどの場合において、再構成モジュレータとして特によく適している。
再構成モジュレータは、凝集した、検出可能な形態の内毒素を促進する上で不可欠な役割を果たすとまではいかなくても、特に重要な役割を果たすものと考えられる。再構成モジュレータは、その主鎖中に8、9、10、11、12、13、14、15または16個の炭素原子を含むヘテロ原子置換脂肪族化合物であってもよい。「主鎖」という用語は、標準的なIUPAC命名法によって番号付けされた、再構成モジュレータの最長鎖をいう。本明細書において用いられる場合、「ヘテロ原子」という用語は、炭素以外の、第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物中の炭素原子が共有結合している任意の原子をいう。代表的なヘテロ原子は、酸素、窒素および硫黄原子を含む。これは、ヘテロ原子が酸素である場合に特に適している。さらに、再構成モジュレータは分枝していてもまたは分枝していなくてもよく、分枝した変種は上記で定義した「主鎖」に沿って置換を含む。置換は、例えばメチル、エチル、プロピルおよび/またはブチルであってよい。非分枝鎖が好ましい。再構成モジュレータは、さまざまな程度まで飽和していてもよく、例えば、C8アルキル、C9アルキル、C10アルキル、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルもしくはC16アルキル部分; またはC8アルケニル、C9アルケニル、C10アルケニル、C11アルケニル、C12アルケニル、C13アルケニル、C14アルケニル、C15アルケニルもしくはC16アルケニル部分; またはC8アルキニル、C9アルキニル、C10アルキニル、C11アルキニル、C12アルキニル、C13アルキニル、C14アルキニル、C15アルキニルもしくはC16アルキニル部分を含みうる。さらに、再構成モジュレータは一重、二重および三重炭素-炭素結合の任意の混合物を含みうる。特に適した再構成モジュレータは飽和しており、すなわちC8アルキル、C9アルキル、C10アルキル、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルを含む。特に適した再構成モジュレータは、C12アルキルを含む。さらに、ヘテロ原子は、さまざまな酸化状態のものであってよい。例えば、ヘテロ原子が酸素である場合、酸素は、アルコール、アルデヒドまたはカルボン酸の形態であってもよい。再構成モジュレータとして特に適しているのは、非分枝アルカノール、特に非分枝1-アルカノールの分子である。これらの中でも、特に適しているのは、C12アルカノール、特に式HO-(CH2)11-CH3を有する1-ドデカノールである。
さらなる態様において、モジュレータシステムは、8〜16個の炭素原子を含む第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物に加えて、他の成分を含みうる。例えば、モジュレータシステムは、例えば破壊モジュレータ、置換モジュレータおよび/または再構成モジュレータとして、第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物をさらに含んでもよく、ここで第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物の主鎖が8〜16個の炭素原子を含む。第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物の「主鎖」は、第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物について上述したように定義される。具体的には、第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物の主鎖は、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の炭素原子を含むことができる。8〜16個の炭素原子を含む第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物は、8〜16個の炭素原子を含む第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物とは異なる。好ましい態様において、モジュレータの一部でありうる第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物は、酸素置換脂肪族化合物である。特定の好ましい態様において、この酸素置換脂肪族化合物は脂肪族硫酸塩であり、ここでこの脂肪族硫酸塩はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であることが特に好ましい。かくして、本発明の特に好ましい態様において、モジュレータシステムは、1-ドデカノールである第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物(例えば破壊モジュレータおよび/または再構成モジュレータとして)、ならびにSDSである第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物(さらなる破壊モジュレータおよび/または置換モジュレータとして)を含む。
さらなる態様において、上述のモジュレータシステムは、界面活性剤を結合して、該界面活性剤により形成されたミセルを分解することができるタンパク質をさらに含みうる。一般的に、結合される界面活性剤は、内毒素マスカであり(該内毒素マスカが界面活性剤であるか、または界面活性剤を含む場合)、界面活性剤に結合できるタンパク質が界面活性剤を結合する原理は、内毒素マスカとして機能するタンパク質がその表面中またはその表面上の内毒素分子の部分を隔離する、上記の原理に類似している。本態様において、界面活性剤に結合できるタンパク質は、モジュレータの一部として用いられる場合、その表面に、溶液中に存在する界面活性剤分子の一部との立体的および静電的適合性の領域も有し、これは、界面活性剤分子を結合しまたは隔離し、かくしてそれらをミセルへの関与に利用できないようにし、かくして、内毒素でありうるか、内毒素を有しうるか、または平衡を凝集形態の内毒素からシフトさせる働きをしうる任意の界面活性剤ミセルを分解するのに十分である。
本発明者らは、アルブミン分子が界面活性剤の結合で非常に優れていることを見出した。かくして、第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物のみに加えて、または第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物と組み合わせた第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物に加えて、モジュレータは、界面活性剤を結合して、該界面活性剤により形成されたミセルを分解することができるタンパク質(吸着モジュレータ)をさらに含みうることが企図される。特定の態様において、モジュレータのタンパク質成分は、アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)またはオボアルブミン(OVA)でありうる。
モジュレータは、8〜16個の炭素原子を含む第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物、8〜16個の炭素原子を含む第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物および界面活性剤を結合して、該界面活性剤により形成されたミセルを分解することができるタンパク質の各々の1つまたは複数を含みうることがさらに企図される。本発明の好ましい態様において、モジュレータは1-ドデカノールのみを含む。本発明のさらに好ましい態様において、モジュレータは1-ドデカノールおよびSDSを含む。本発明のさらに好ましい態様において、モジュレータは1-ドデカノール、SDSおよびHSAを含む。本発明のさらに好ましい態様において、モジュレータは1-ドデカノール、SDSおよびBSAを含む。
組成物
本明細書において用いられる場合、「組成物」という用語は、(少なくとも)内毒素マスカを含む混合物をいう。内毒素は、たとえ存在しても、マスキングされていれば、組成物中で検出できないままである。組成物は、好ましくは、薬学的組成物、例えば薬理活性成分またはAPIを含む組成物である。「組成物」という用語は、例えば抽出物; ワクチン; 非経口投与に適した任意の組成物、すなわちパレンタリア(parentalia); 腹腔内投与、経皮投与、皮下投与もしくは局所投与に適した任意の組成物; 血液製剤; 細胞治療溶液、例えば、インタクトな生存細胞、例えば、がん細胞と戦うことができるT細胞; 遺伝子療法溶液、例えば疾患を処置するための薬物として患者の細胞に核酸重合体を送達することができる溶液; インプラントもしくは医療装置; または例えば医療装置、インプラントもしくは充填機である対象物の表面をすすぐもしくは拭き取ることによって得られる組成物でありうる。
検出方法
本明細書において用いられる場合、「検出方法」という用語は、溶液中の内毒素を検出するのに適している方法をいう。例えば、この関連で適当な方法は、カブトガニに基づく検出方法であり、または酵素免疫測定法(ELISA)である。カブトガニでの方法は、天然由来の溶解物(J. Jorgensen, R. Smith, Perparation, Sensitivity, and Specificity of Limulus Lysate for Endotoxin Assay, Applied Microbiology, 1973)または組み換えにより調製されたC因子(J. L. Ding, B. Ho, A new era in pyrogen testing, Trends in Biotechnology, 2001)を用いることにより慣行に従って行うことができる。そのような方法のうちで最も有望なのは、内毒素の捕捉とその後のLALアッセイ法での組み換え型のタンパク質、C因子による検出のために固相を用いる、酵素結合親和性吸着アッセイ法である。EndoLISA(登録商標)キットは、そのような親和性吸着アッセイ法の1つである(H. Grallert, S. Leopoldseder, M. Schuett, P. Kurze, B. Buchberger, EndoLISA(登録商標): a novel and reliable method for endotoxin detection, Nature Methods, 2011)。EndoLISA(登録商標)検出システムは、例えば書籍Michael Rieth, October 2012, Wiley-VCH, Weinheim, ISBN 978-3-527-33087-4による「Pharmazeutische Mikrobiologie - Qualitatssicherung, Monitoring, Betriebshygiene」に記述されている。
溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質
本発明のさらなる態様によれば、上記の、内毒素を脱マスキングする方法および/または内毒素を検出する方法は、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質を組成物に添加する段階をさらに含みうる。一般に、本明細書において用いられる場合、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質は、内毒素の個々の分子または複数の分子が可溶化され、かくしてマスキングされている複合体を不安定化するように溶液状態を変化させる。
内毒素と内毒素マスカとの複合体の全てが同じものではない。特に、特定のマスキング複合体における内毒素安定化を支配するエネルギー最小は、他のマスキング複合体における内毒素安定化を支配するものとは異なる。他の全てのことが同じなら、内毒素マスカとの所与の複合体における内毒素の安定化を支配するエネルギー最小が低いほど、内毒素をその可溶化状態から遊離させることはそれだけ困難になる、すなわちモジュレータはそれだけストリンジェントでなければならない。しかし、上記のように、そのような遊離は、内毒素の検出可能な、すなわち脱マスキングされた形態への最終的な凝集における重要な段階である。かくして、内毒素と内毒素マスカとの複合体がより安定していれば、内毒素を最終的に脱マスキングするためにとられる方策はそれだけ厳密でなければならない。
内毒素と内毒素マスカとの複合体が特に安定である場合、単一成分モジュレータまたはたとえ多成分モジュレータでも、その添加が、マスキング複合体を不安定化させ、内毒素を遊離させるのに十分ではないこともある。そのような場合には、溶液状態を調整して内毒素・内毒素マスカ複合体を不安定化させることにより、内毒素の、内毒素マスカとのその複合体からの遊離を促進させることが有益でありうる。
上記のように、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質は、この目的を補助しうる。内毒素マスカとの複合体中の内毒素の安定化の大部分ではないにしても一部は、内毒素部分と内毒素マスカとの間の非共有結合性相互作用から通常は生じる。これらの相互作用は、例えば、内毒素分子の領域と内毒素マスカの分子上の領域との間の疎水性結合、イオン性結合、水素結合および/またはファンデルワールス相互作用の形態をとってもよい。これらの内毒素・内毒素マスカ相互作用の強さは、溶液中の周囲の水素結合ネットワークの影響を受けるので、逆に言うと、溶液中での水素結合の安定性に影響を与えることは、これらの相互作用の強さを調節することになる。溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質の添加はそれゆえ、内毒素と内毒素マスカとの間の非共有結合性相互作用を弱め、複合体の自由エネルギーを本質的に上昇させ、このようにしてモジュレータによる破壊をより受けやすくさせ、したがって内毒素が遊離され、検出可能とされることを助長することができる。
上記の不安定化効果の他に、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質は、内毒素脱マスキングを促進するさらなる効果を有することもある。溶液中の水素結合安定性を変化させることにより、作用物質は、内毒素マスカとの複合体からいったん遊離した内毒素部分の凝集を促進することもできる。一般に、可溶化形態と凝集形態の内毒素の間には平衡が存在するであろう。溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質は、この平衡を、凝集した(かくして検出可能な)方向にシフトさせるのに有益でありうる。適当な物質は、シャペロンされた内毒素部分を取り囲む溶液中での水素結合の安定性を減少させる傾向のある物質、および/または溶液のイオン強度を増加させ、かくして再構成モジュレータ-シャペロンされた内毒素部分をともに親油性凝集体へ推進させる傾向がある化合物である。
溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質を必ずしも添加する必要はないことに留意すべきである。そのような作用物質の添加が指示されるかどうかは、例えば、内毒素マスカとの複合体における内毒素の安定性に依り、および/または内毒素マスカからいったん遊離した内毒素部分の可溶化形態、シャペロンされた形態および凝集形態の間の平衡位置に依るであろう。例えば、より高濃度の塩を含有する溶液では、内毒素と内毒素マスカとの複合体が既に、破壊モジュレータのみで分解されるのに十分不安定でありうること、および内毒素マスカからの遊離後に溶液中に存在する内毒素部分がそれ以上の補助なしで凝集体を形成させるのに十分不安定であることが考えられる。そのような状況では、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質は、脱マスキングを達成するために必要とされないことがある。
一方で、例えば、より低濃度の塩を含有する溶液では、内毒素・内毒素マスカ複合体が、破壊モジュレータのみでそれを分解して内毒素を遊離できないような高い安定性を有するものでありうる状況、または破壊モジュレータのみで遊離されたとしても、可溶化した内毒素と凝集した内毒素との間の平衡が、可溶化形態を指向したままであり、したがって検出に必要な凝集が起こらない状況が存在しうる。そのような状況では、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質の組み入れは、検出可能な形態の内毒素に有利に働くように、複合体化および/または凝集のエネルギー機構に影響を与えることを助長しうる。
一般に、内毒素と内毒素マスカとの複合体の不安定化の程度は、溶液中の塩の量に依存し、この複合体はある程度、溶液中に存在する塩の量に直接比例して不安定化すると言うことができる。しかし、一般的には、ホフマイスターシリーズを参照することができ、それによれば、塩がカオトロピックであるほど、内毒素と内毒素マスカとの間の複合体を所与の程度まで不安定化するのに必要とされるそのような塩の量は少なくなるであろう。単に説明に役立つ実例として、内毒素と例えば100 mM CaCl2で達成可能な内毒素マスカとの複合体のほぼ同程度の不安定化を達成するために、例えば、500 mM NaClを用いることが必要でありうる。この例では、CaCl2はNaClよりもカオトロピックであるため、同程度の不安定化を達成するために必要なCaCl2は少なくなろう。
本発明の特定の態様において、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質は、カオトロピック剤、陽イオンまたはそれらの組み合わせでありうる。特定の態様において、カオトロピック剤は、尿素、塩化グアニジン、ブタノール、エタノール、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノール(例えば1-プロパノールまたは2-プロパノール、すなわちイソプロパノール)およびチオ尿素からなる群より選択されうる。特定の態様において、陽イオンは二価陽イオン、例えばCa2+、Mg2+、Sr2+および/またはZn2+である。特に好ましい二価陽イオンはCa2+である。
溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質、例えばCaCl2は、有利には、脱マスキングプロセスにおいて1〜400 mMの濃度範囲で、好ましくは10〜200 mMの濃度範囲で、好ましくは50〜100 mMの濃度範囲で用いられうる。
理論によって束縛されるわけではないが、また、溶液中で内毒素を脱マスキングし、それにより予めマスキングされていた検出不能な内毒素を検出可能にさせる、観察された有利な効果の根底にあると本発明者らが考える原理および可能な機構を単に例示するため、以下では、内毒素と、少なくとも1つの内毒素マスカを含有する所与の組成物のさらなる成分との間の相互作用のいくつかの機構について記述する。これらの機構を例示するため、図1〜6を参照する。
単一成分が破壊モジュレータおよび再構成モジュレータの両方として機能する単一成分モジュレータを用いた、界面活性剤マスカによりマスキングされた内毒素の脱マスキング
図1は、内毒素を界面活性剤ミセル中に個別化された形態でマスキングしている界面活性剤とともに溶液中に内毒素が存在するシナリオを描く。図1のパネル(a)は、そのような界面活性剤ミセルの脂質層の中に脂質尾部を介して挿入される単一の内毒素部分を示す。界面活性剤ミセルの脂質層を構成する界面活性剤分子は、パネル(a)で白丸として記号表示されている。内毒素のこの単一部分は、多量体の、凝集した形態ではなく、ミセルの脂質層中に個々の形態で安定に挿入されるので、利用可能な検出方法(例えばHyglos GmbHのEndoLISA(登録商標)アッセイ法)を用いた検出を回避する。図1のパネル(a)に示される溶液がAPIをさらに含有する薬学的製剤である場合、内毒素が溶液中に存在するにもかかわらず、内毒素不含、それゆえ投与に安全であるように見えよう。そのような表向きは内毒素不含の製剤を患者に投与することは、かくして上記の内毒素に対する危険な免疫学的かつ有害な応答のタイプを無意識のうちに誘発する危険性があろう。
図1のパネル(a)および(b)の間の平衡矢印の上に、内毒素と内毒素マスカとの間の複合体から内毒素を放出できる破壊かつ再構成モジュレータの添加が見て取れる。図1に示されるシナリオでは、この「複合体」は、その脂質成分を介して、界面活性剤ミセルの脂質層に埋め込まれた内毒素である。ここに示された破壊かつ再構成モジュレータ(破壊モジュレータおよび再構成モジュレータの両方としての能力を有する単一成分モジュレータとして用いられる両親媒性分子)は、挿入された内毒素分子を遊離させるように界面活性剤ミセルを分解するのみでなく、内毒素が内毒素マスカとのその複合体から遊離されると、その内毒素を安定化させるという二重の特性を示す。この後者の特徴は図1のパネル(b)の上部に概略的に描かれており、破壊かつ再構成モジュレータによって内毒素の分子が安定化され、したがって内毒素の分子は、これらが該モジュレータにより分解されると、ミセルの外側でシャペロンされた形態として存在できることを示している。パネル(b)の下部では、破壊(かつ再構成)モジュレータによるミセル破壊の前に、遊離された内毒素部分と界面活性剤ミセルの脂質層を予め構成していた界面活性剤の両方に関連して、破壊モジュレータが平衡状態で存在することを明らかにしている。
上記のように、本発明の1つの態様において、破壊および/または再構成モジュレータは、極性アルコールと、それに続いて炭素原子12個の飽和炭化水素尾部を有する1-ドデカノールでありうる。かくして、1-ドデカノールの立体配置も静電配置もともに、内毒素の脂質部分のものに類似しているので、1-ドデカノールは、内毒素が界面活性剤ミセルから遊離された後に効率的に、内毒素と相互作用し、それゆえ内毒素を安定化しうる。
破壊および/または再構成モジュレータとして用いるのに1-ドデカノールが特に適している別の理由は、1-ドデカノールが、両親媒性であるとはいえ、ミセルを形成しないことである。かくして、図1のパネル(a)に描かれている界面活性剤ミセルが1-ドデカノールによって破壊されると、新しいミセルのモジュレータは再形成されない。もしそうでなければこれは、内毒素を、凝集形態でなくなるように平衡をシフトさせて脱マスキングしうる。モジュレータがミセル自体を形成しないというその特徴はかくして、図1のパネル(b)に描かれているように、モジュレータの補助の下に、溶液中での内毒素の安定化に寄与する。図1に示されるシナリオでは、仮定上の優勢な溶液状態は、パネル(b)に示される内毒素のシャペロン部分とパネル(c)に示される凝集内毒素との間の平衡が既にパネル(c)の凝集体の方向にあるようなものである。内毒素の凝集形態に有利に働くため、内毒素は既に、または主に、既知の手段、例えばHyglos GmbHのEndoLISA(登録商標)試験キットによる検出に適した凝集形態にある。
全体として、図1は、界面活性剤ミセルに安定に挿入され、それゆえ界面活性剤ミセルによりマスキングされている個々の内毒素部分(可溶化されている)から、内毒素の個々の部分が検出可能になるように凝集されたシナリオへの移行を示す。パネル(a)における予めマスキングされていた内毒素はパネル(c)において脱マスキングされ、それによって内毒素を含まないとそれまでに考えられていた溶液が実際にはこの汚染物質を含有しているものと判定することが可能になる。
破壊かつ再構成モジュレータおよび吸着モジュレータ(タンパク質)を含む二成分モジュレータを用いた、界面活性剤マスカによりマスキングされた内毒素の脱マスキング
図2に描かれる最初のシナリオは図1に描かれたシナリオによく似ている: 単一分子の内毒素が界面活性剤ミセル(個々の界面活性剤分子を表す白丸の環で記号表示されている)に挿入され、かくして安定に個別化され、検出を回避するようにマスキングされている。パネル(a)と(b)との間に、破壊かつ再構成モジュレータとして同時に機能する非タンパク質成分と、吸着モジュレータとして機能するタンパク質成分の両方を含む二成分モジュレータシステムの添加が見て取れる。破壊かつ再構成モジュレータ、例えば、界面活性剤ミセルを破壊し、遊離された内毒素を安定化/再構成することを助長し、それ自体のミセルを形成させることのない1-ドデカノールは、図1について上述された通りでありうる。吸着モジュレータは、例えば、図1に描かれたものよりも安定的で、かつ破壊モジュレータのみでは所望の破壊を達成するのに十分ではない可能性がある界面活性剤ミセルの破壊を促進するためにモジュレータの一部として添加されうる。
上記で説明されたように、吸着モジュレータは、例えば、数ある中でも、ウシ血清アルブミン(BSA)またはヒト血清アルブミン(HSA)でありうる。そのようなタンパク質は、予めミセルを形成している界面活性剤の分子を表面に吸着する「分子スポンジ」として作用する能力を有する。もちろん、そのような吸着モジュレータが利用される場合、破壊かつ再構成モジュレータのような、溶液中の他の界面活性剤様の分子との間にいくらかの平衡が存在するであろう。これは、パネル(b)に示されるように、破壊かつ再構成モジュレータが、遊離した内毒素に結合した形態(パネル(b)の右側部分)、界面活性剤ミセルを予め構成していた界面活性剤に結合した形態、および(その時点で破壊された)界面活性剤ミセルからのさらなる界面活性剤とともに、吸着モジュレータの表面に結合した形態で存在する、という平衡を生じさせるものと予想されよう。
図2に示されたシナリオにおいて優勢な溶液状態の下で、マスキング界面活性剤ミセルから遊離された内毒素は、パネル(c)に示される検出可能な凝集体へと結合する。実際、図2に示される吸着モジュレータの使用は、そのような凝集体形成を促進することができる。これは、吸着モジュレータが破壊かつ再構成モジュレータの分子をその表面に結合させ、それにより、平衡がパネル(c)の凝集体に向かって右方へ推進されるように、そうでなければ内毒素を安定化しているこれらの種を溶液から除去するためであると考えられる。
全体として、図2は、界面活性剤ミセルに包埋され、そして、これらのミセル中での個々の内毒素部分の個別化のため、マスキングされたままである個々の内毒素部分から、内毒素の個々の部分が検出可能になるように凝集させられたシナリオへの移行を示す。すなわち、パネル(a)における予めマスキングされていた内毒素がパネル(c)において脱マスキングされ、それにより、(パネル(a)において)内毒素を含んでいないと以前は考えられていた溶液が実際には、この汚染物質を含有していると判定することが可能になる(パネル(c))。
溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質との組み合わせで多成分モジュレータシステムを用いた、界面活性剤マスカによりマスキングされた内毒素の脱マスキング
図1および2に描かれたシナリオでは、溶液状態は、モジュレータシステムの使用のみで、界面活性剤ミセルのマスキングを破壊するのに十分であるようなものであった。別の見方をすると、図1および2に示される界面活性剤のマスキングミセルのいずれも、破壊モジュレータのみを用いた破壊に耐えるほど安定ではなかった。さらに、図1および2の状況は、内毒素の可溶化形態と凝集形態との間の平衡が凝集形態に向かっており、したがってこの凝集形態の検出は、いかなるさらなる方策もとる必要なく、示された溶液状態の下で可能であるようなものでもあった。
次に、図3に示されるシナリオの基礎となる状況は、異なっている。ここで、内毒素の個々の分子は界面活性剤ミセルの脂質層(この場合も先と同様に個々の界面活性剤分子を表す白丸の環で記号表示されている)に挿入されているが、しかし溶液状態、マスキング界面活性剤と内毒素との相互作用の性質、またはこれらの事柄の組み合わせによろうがそうでなかろうが、パネル(a)の界面活性剤ミセルに挿入された内毒素は、図1および2の当初の状況のいずれよりも安定しており、それゆえ破壊モジュレータによる破壊に対する耐性が乏しい。いったん不安定化されると、モジュレータシステムがミセルを破壊し、挿入された内毒素を遊離させることができるよう、界面活性剤・内毒素複合体を不安定化するためにさらなる方策が必要とされる。
この目的のため、図3に示されるシナリオでは、パネル(a)と(b)の間の平衡矢印の上に付記し、かつパネル(b)のミセル・内毒素複合体とのその相互作用において示した小さな正方形で記号表示されている、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質を用いることを伴う。上記のように、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質として有用な1つの物質は、二価カルシウムである。
界面活性剤マスカとマスキングされた内毒素との間の複合体がこのようにして不安定化されることで、吸着モジュレータと置換モジュレータの両方を含むモジュレータシステムを添加して(パネル(b)と(c)の間の平衡矢印の上側を参照のこと)、既に不安定化されたマスキング界面活性剤のミセルから内毒素を移動させる。上記のように、置換モジュレータは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、つまりそれ自体が界面活性剤でありうる。それ自体界面活性剤であり、かつそれ自身の新しいミセルを形成しうる成分をモジュレータシステムが含有する可能性は、図3のパネル(c)において、点で描いた円で表され、これには内毒素が挿入されている。しかしながら、図3において優勢な状況の下では、置換モジュレータによって形成されるいかなるミセルも、パネル(a)に示されるマスキング界面活性剤によって形成されるミセルほど安定ではない。これは、少なくとも部分的には、吸着モジュレータ、例えば図3に示されるBSAが、置換モジュレータをもその表面に結合し、置換モジュレータのミセル形成集団とタンパク質結合集団との間の平衡を確立し、それにより、置換モジュレータによって形成されるいかなるミセルも効果的に不安定化するためである。
図3のパネル(c)と(d)の間の平衡矢印の上に、破壊かつ再構成モジュレータ、例えば1-ドデカノールのような非ミセル形成両親媒性種の存在が示されている。図3に示される概略図の残りの部分は、図1および2の文脈において上記で詳細に既に論じられたものと類似している。手短に言えば、図3のパネル(c)と(d)との間に示される破壊かつ再構成モジュレータは、置換モジュレータによって形成されたミセルに一過性に挿入された内毒素を遊離かつ可溶化し、それと同時に可溶化された(検出不能な)内毒素種と凝集された(検出可能な)内毒素種との間の平衡を確立する。この平衡は、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質(例えば陽イオン、好ましくは二価の陽イオンを有する塩および/またはカオトロピック剤)によって右側に(凝集形態に向かって)シフトされうる。
全体として、図3は、界面活性剤マスカのミセルとの安定な複合体からのマスキングされた内毒素分子の遊離を示す。これは、溶液中での水素結合の安定性に影響を与えてこの複合体を不安定化する作用物質と、全体としてこの複合体を破壊し、遊離された内毒素を一連のエネルギー最小を通じて凝集された、それゆえ検出可能な内毒素複合体の最終方向へとシャペロンする、多成分モジュレータとを用いる。
置換モジュレータおよび破壊かつ再構成モジュレータを含む二成分モジュレータを用いた、タンパク質マスカによりマスキングされた内毒素の脱マスキング
図4は、内毒素が溶液中のタンパク質によってマスキングされるシナリオの概略図である。これは図4のパネル(a)に示されている。図4に描かれるシナリオでは、例えば薬学的製剤中のAPIでありうるタンパク質は、内毒素を安定して結合するのに立体的にも静電的にもともに適している結合溝を呈する。このようにして、タンパク質マスカは内毒素の分子を結合し、それらを検出不能にさせる。図4のパネル(a)と(b)の間の平衡矢印の上に付記された置換モジュレータで記号表示されている、モジュレータ成分の添加は、内毒素をタンパク質マスカ上のその結合部位から移動させる。この置換モジュレータは、例えば、上記で論じられたように「8〜16個の炭素原子を含む第2のヘテロ原子置換脂肪族化合物」でありうる。置換モジュレータが、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムであるような場合、この置換モジュレータは、マスキングタンパク質の表面に結合し、内毒素の分子を該タンパク質の結合溝内のその安定な結合位置から移動させうる。これは、図4のパネル(b)の左部分に示されている。さらに、パネル(b)の右部分に点で描いた円によって記号表示されているように、置換モジュレータ成分はまた、それ自体の一過性ミセルを形成し、タンパク質マスカから遊離された内毒素を、ミセルの脂質層に安定して挿入された形態で本質的にシャペロンしうる。図4のパネル(b)に示される平衡の正確な位置は、置換モジュレータがマスキングタンパク質の表面に結合する有効性(パネル(b)の左部分)、および形成されたミセルの安定性(パネル(b)の右部分)に依る。
この平衡の正確な位置にかかわらず、重要なことは、図4のパネル(a)と(b)の間の平衡矢印の上に描かれた置換モジュレータが、マスキングタンパク質中またはマスキングタンパク質上のそのエネルギー的に安定な結合位置から内毒素を遊離させる傾向があることである。
この内毒素がマスキングタンパク質中またはマスキングタンパク質上でのそのマスキングされた状態から解放されると、内毒素の最も安定な状態が、破壊かつ再構成モジュレータによって溶液中にシャペロンされた、自由に可溶化された形態となるように、図4のパネル(b)と(c)の間の平衡矢印の上に描かれたさらなるモジュレータ成分(破壊かつ再構成モジュレータ)は、溶液中で優勢なエネルギー関係をシフトさせる。例えば、この破壊かつ再構成モジュレータは、例えば1-ドデカノールでありうる、上記で論じられたように「8〜16個の炭素原子を含む第1のヘテロ原子置換脂肪族化合物」でありうる。上記で論じられたように、この破壊かつ再構成モジュレータは、典型的には、既存のミセル(例えば置換モジュレータにより形成された; パネル(b)の右部分に示す)を破壊する特性を有するが、それ自体のミセルを形成することはない。置換モジュレータの事前のミセルがこのようにして破壊され、および破壊かつ再構成モジュレータが、対応するそれ自体のミセルを形成できないと、最もエネルギー的に安定な内毒素の形態は、破壊かつ再構成モジュレータによりシャペロンされた、図4のパネル(c)において示される可溶化形態となる。
図4の残りの部分は、図1および3で最終の平衡段階について先に論じられている通りである。手短に言えば、個々の可溶化した内毒素(パネル(c))と凝集した内毒素(パネル(d))との間に平衡が存在する。この平衡の一部として、凝集した内毒素の相当の集団が存在する限り、内毒素は、マスキングタンパク質中またはマスキングタンパク質上に安定して結合され、以前には検出されなかった場所で検出可能になる。全体として、タンパク質により個別化された形態で予めマスキングされていた内毒素は、内毒素が存在しうるエネルギー的に最も好ましい状態がその検出可能な凝集形態になるように溶液状態を調整することにより、脱マスキングされ、かつ検出可能となった。上記で論じられた前の図面の場合と同じように、ひいては、「脱マスキング」は、内毒素が個別化された(「マスキングされた」)形態として安定化されている状態から、内毒素が凝集された、かつ検出可能な(「脱マスキングされた」)状態へ平衡をシフトさせるように溶液状態を操作したことの結果である。
水素結合の安定性に影響を与える作用物質との組み合わせで、吸着モジュレータ(タンパク質)、置換モジュレータおよび破壊/再構成モジュレータを含む多成分モジュレータを用いた、タンパク質マスカによりマスキングされた内毒素の脱マスキング
図5に示される最初のシナリオは、図4に示されるシナリオに対応する: 内毒素は、組成物中に存在するタンパク質中またはタンパク質上に安定して結合されている。例えばAPIでありうる組成物中のこのタンパク質はかくして、「内毒素マスカ」として機能する。図3に描かれたシナリオとの関連で既に論じられているように、内毒素は、図5のパネル(a)において内毒素マスカと非常に安定に複合体を形成しているので、モジュレータの単純な添加のみではそれを遊離させることができない。上記の図3において、内毒素マスカは、内毒素の単一分子が非常に安定に挿入されたミセルを形成する界面活性剤であった。図5においては、内毒素マスカは、安定した内毒素結合に適した結合部位を有するタンパク質である。しかし、原理は同じままである: 界面活性剤ミセルの脂質層(図3)に挿入されるか、またはタンパク質中もしくはタンパク質上に安定して存在するかにかかわらず、内毒素は、モジュレータの単純な添加では克服できない程度に安定化され、そのような程度まで可溶化された内毒素は検出不能なままである。
図3について上記で説明されたように、内毒素と内毒素マスカとの間のこの安定な複合体は、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質、例えば塩またはカオトロピック剤、例えば二価カルシウムの添加によって不安定化することができる。水素結合の安定性に影響を与えるこの作用物質は図5において、パネル(a)と(b)との間の平衡矢印の上から始まる小さな正方形によって記号表示されている。この作用物質は、内毒素とタンパク質マスカとの間に存在すると考えられる水素結合ネットワークを破壊し、かくして内毒素をマスキングタンパク質から取り除くほどまでに、パネル(b)と(c)の間の平衡矢印の上に示されるモジュレータ成分が複合体を分解できるレベルまで、複合体の自由エネルギーを上昇させる。
図5に示されるように吸着モジュレータ(タンパク質)と置換モジュレータの両方を含むモジュレータシステムを用いると、パネル(c)に示される平衡状態に至ると考えられる。パネル(c)の左側部分には、予め結合されていた内毒素がもう奪われてしまった、マスキングタンパク質がある。溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質の分子および置換モジュレータ、例えばSDSの分子は、内毒素が前に結合していた結合部位を含む、マスキングタンパク質の表面に結合していることが示されている。この描写は、置換モジュレータがマスキングタンパク質中またはマスキングタンパク上のその安定な位置から内毒素を効果的に置換したという事実を表すことを意図している。図5のパネル(c)の中央部分は、内毒素の分子がミセルの脂質層に一過性に挿入された、置換モジュレータ(例えばSDS)により形成されうるミセルを示す。溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質の分子はまた、内毒素およびミセルに結合していることが示されており、このミセルをさらに不安定化するように作用し、そして、実際にミセルは一過性のままであること、およびエネルギー結合が最小の内毒素を呈せず、内毒素をさらなる破壊モジュレータによって取り除けないことを確実にしている。最後に、パネル(c)の右側部分は、上記で簡単に記述したように、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質および置換モジュレータの両方を表面に吸着する「分子スポンジ」として作用する吸着モジュレータ(タンパク質)を示す。これは溶液中のこれらの種を効果的に除去し、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質が除去される程度まで安定化しながら、置換モジュレータが除去される程度までパネル(c)の中央部分に示される一過性のミセルを不安定化する。しかしながら、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質の量は、一般に、マスキングタンパク質と内毒素との間の当初の複合体を不安定化するのに十分なほど多く、吸着モジュレータによる除去にもかかわらず、この作用物質が溶液中に十分残存しているので、パネル(c)に示された一過性のミセルは所望のように不安定化されるであろう。
例えば図5のパネル(c)と(d)の間の平衡矢印の上に示されるように、破壊かつ再構成モジュレータ(例えば1-ドデカノール)の使用は、挿入された内毒素の分子を遊離させるようにパネル(c)に示された一過性のミセルを破壊するであろう。上記で既に論じられたように、このようにして可溶化した内毒素(パネル(d))はその後、上記で論じられたように検出できる、再構成され、凝集された内毒素形態(パネル(e))との平衡関係に入るであろう。
溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質との組み合わせで、吸着モジュレータ(タンパク質)、置換モジュレータおよび破壊/再構成モジュレータを含む多成分モジュレータを用いた、タンパク質および界面活性剤マスカの両方によりマスキングされた内毒素の脱マスキング
多くのタンパク質API、例えば、抗体、抗体断片、ホルモン、酵素、融合タンパク質またはタンパク質結合体は、望ましくないタンパク質凝集を回避するために界面活性剤を溶液中に含めなければならないほど高濃度で製剤化され市販されている。図6に示される最初のシナリオはかくして、界面活性剤およびタンパク質(例えばAPIタンパク質)マスカの両方が存在するため、薬学的製剤の分野における最も重要な状況の1つを代表する。内毒素の分子は、界面活性剤ミセルの脂質層(この場合も先と同様に個々の界面活性剤分子を表す白丸の環で記号表示されている)に挿入されているとして、およびマスキングタンパク質中またはマスキングタンパク質上に結合されているとして示されている。実際には、これらの2つの種は、平衡状態で存在する可能性が高く、この平衡の相対的位置は、ミセル結合内毒素種またはタンパク質結合内毒素種のいずれかに向かって、それぞれの複合体の相対的安定性によって決定される。他の全てのものが等しいとすれば、より低い自由エネルギー、それゆえより大きな安定性の複合体が一般に優勢になるであろう。
図6の論考は、上記の図5のそれと類似しているが、図6のパネル(b)は、溶液中での水素結合の安定性に影響を与える作用物質によってそれぞれが不安定化される、相互に平衡状態にある内毒素のタンパク質結合種およびミセル結合種の両方を示したものであるという唯一の違いがある。吸着モジュレータおよび置換モジュレータを用いると、図6のパネル(c)に描かれた平衡状態に至る。図5のパネル(c)に関する上記の論考は、これに対応して当てはまる。自身のミセルを形成せずにパネル(c)の一過性ミセルを破壊できるさらなる破壊かつ再構成モジュレータ(パネル(c)と(d)との間の平衡矢印の上に示される)を用いることによって、内毒素を、置換モジュレータのミセル中でのその一過性に結合した状態(パネル(c)の中央部分)から解放し、上記で論じられたように内毒素の可溶性(検出不能)形態と凝集(検出可能)形態との間の平衡関係を生じさせる。前図について上記で説明されたように、パネル(d)に示される破壊かつ再構成モジュレータは、遊離した内毒素に結合した状態(パネル(d)の上部)とパネル(a)に示される界面活性剤ミセルを以前に構成していた界面活性剤(パネル(d)の下部)との間の平衡状態で示される。
上記のシナリオは、本発明者らがさまざまな状況における本発明の有利な脱マスキング効果の基礎にあると考える原理を例証することを意図していることに留意すべきである。例示的な図1〜6から、論考されたプロセスは全て平衡プロセスであること、ならびにそれに応じてモジュレータシステムの異なる成分の、または、使用される場合、水素結合の安定性に影響を与える作用物質および溶液の添加順序には前提条件がないことが明らかであろう。示された平衡はかくして、成分が溶液中に一緒に存在すればすぐに自動的に確立されよう。上記の考察において暗示し、および図2〜6において示したこれらの成分の添加の「順序」はかくして、本発明者らが本発明の有利な技術的効果の基礎にあると考える機構を単に例示するものに過ぎない。したがって、予めマスキングされていた内毒素の脱マスキングは、図2〜6によって示唆されるように、別々の時点で成分を添加することによって達成されうるが、しかし所望の脱マスキング効果は、図2〜6に描かれる成分が一度に添加された場合にも達成可能である。
最も一般的な意味で、図1〜6において上記で描いたシナリオおよび対応する論考は、本発明を実施する上で当業者にとっての一般的なガイドラインとして意図されている以下の一般的原理を例示するはずである。従来の方法により内毒素の検査で陰性と出る多くの溶液は、実際にはマスキングされた形態の内毒素を含有している。従来の方法では、内毒素をその凝集した形態として検出するため、薬学的製剤のような既存の多くの溶液が内毒素の検査で陰性と出るという事実は、必ずしも、これらの溶液が内毒素を含有しないことを意味するのではなく、それらが内毒素を検出可能な形態として含有しないことを意味している。
本発明の方法は、その最も一般的な形態では、例えば、内毒素の個々の分子を遊離させ、最終的には凝集させるように内毒素と内毒素マスカとの間の複合体を不安定化させ、かくして以前は検出不能であった内毒素を検出可能にさせることにより、内毒素の脱マスキングを可能にする。内毒素を、内毒素マスカによってマスキングされたその複合体から遊離させることは、そのような複合体を破壊するために破壊かつ再構成モジュレータを直接用いることの結果として起きることもあり、または、特に安定な複合体の場合、これらはそのようなモジュレータでもしくは多成分モジュレータシステムで不安定化され、その後、破壊されることもある。しかしながら、結合した内毒素は遊離され、正味の効果は、内毒素が安定結合した形態から、ひいては凝集しうる一過性の可溶性形態に移行するというものである。本発明の方法は、その最も広い意味では、最終的な移行が検出可能な形態の内毒素の凝集をもたらす一連の平衡を通じて、予めマスキングされた内毒素を先導するように上記の溶液状態を調整することを伴う。
本明細書において記述される方法による内毒素の脱マスキングおよび/または検出は、可溶化された(検出不能な)形態の遊離した内毒素を凝集形態(検出可能)へと最終的に再構成することに依存するので、再構成モジュレータが一般に必要となろう。この再構成モジュレータ(例えば1-ドデカノール)は一般に、それのみでミセルを形成しないが、内毒素の個々の分子を安定化させ、したがってこれらが、凝集した内毒素形態との平衡に入ることができるという特徴を有するであろう。上記から明らかなように、再構成モジュレータは、必ずしもそうである必要はないが、内毒素とマスキング界面活性剤のミセルとの間の当初の複合体および/または内毒素と置換モジュレータの一過性ミセルとの間の複合体を分解できる破壊モジュレータとしても機能することがあろう。
実施された実験および達成された結果を含む、以下の実施例は、例示のためにのみ提供されており、本発明を限定するものと解釈されない。
導入
内毒素マスキングは薬学的組成物、特に生物医薬品(biopharmaceutical drug product)における一般的な現象である。内毒素のマスキングは、いくつかの要因により推進され、最後には、医薬品中の内毒素の非検出可能性に至る、または少なくとも検出可能性の低下に至る。
1つのシナリオでは、マスキングは、薬理活性成分(API)、例えばタンパク質それ自体によって引き起こされるのではなく、製剤成分によって引き起こされる。そのような成分は、タンパク質の凝集を防ぐために添加される界面活性剤、および製品のpH調整のために添加されるクエン酸塩、リン酸塩、トリス、酢酸塩、ヒスチジン、グリシンのような緩衝物質である。
意外でもないが、マスキングの反応速度は温度により影響され、マスキングは低温でよりも高温でいっそう速く進行する。特別の定めのない限り、以下に記述される全ての実験は、室温で行われた。これは、薬理活性成分(API)の製造プロセス段階が行われることが多い温度であり、それゆえ、工業プロセスに対する、本明細書において記述された本発明の方法の適用性を評価するための最適な温度である。
実施例1: 破壊かつ再構成モジュレータ(1-ドデカノール)を単独で、およびさらなる吸着モジュレータ(BSA)とともに用いたポリソルベート20/クエン酸塩のマスキングシステムからの内毒素の脱マスキング
生物医薬製剤(biopharmaceutical formulation)にクエン酸塩およびポリソルベート20が含まれることが多いので、最初の実験にはポリソルベート20/クエン酸塩のマスキングシステムを選択した。これらの実験は、本明細書において記述される破壊かつ再構成モジュレータの添加により、マスキングされた内毒素が界面活性剤マスカとの複合体から放出されうるかどうかを判定することが意図される。
材料および方法
内毒素マスキングは以下のように行った。0.05% (w/v)のポリソルベート20を含有する10 mMクエン酸塩pH 7.5の水性アリコット1 mlを、内毒素不含のガラス試験管中で調製した。その後、10,000 EU/ml LPSストック溶液(LPS 055 B5, Sigma L2637-5MG) 10 μlを添加し、得られた溶液を1分間ボルテックスし、室温で少なくとも24時間保存した。マスキングされていないLPSを含有する陽性LPS対照として、10,000 EU/ml LPSストック溶液10 μlを内毒素不含水1 mlに添加し、混合し、マスキング調製物と同じように、しかしポリソルベート20なしでインキュベートした。LPS-水陽性対照は、以下でさらに詳細に記述される。
内毒素脱マスキングは以下のように行った。100%エタノールに溶解された1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)および内毒素不含水に溶解された100 mg/mlのBSA (吸着モジュレータ)の各々のストック溶液100 μlを添加した。1-ドデカノールおよびBSAは本明細書では、二成分モジュレータシステムの2つの成分として用いられる。単一成分モジュレータを用いたことを除いて、別個の脱マスキング実験を上記と同じように行った。この実験における単一モジュレータは、1-ドデカノール単独、すなわちBSAなしであった。1-ドデカノールストック溶液の濃度は、400、200、100、50、25、12.5および6.25 mMであった。脱マスキングのために、BSAおよび1-ドデカノールの脱マスキングストック溶液を、各添加後にボルテックスすることによって2分間混合しながら順次添加した。混合後、サンプルを室温で30分間混合せずにインキュベートした。
内毒素含量は、EndoLISA(登録商標) (Hyglos GmbH)を用いキットの使用説明書にしたがって分析された。サンプルの希釈は、内毒素不含水中で10分の1および100分の1であった。
内毒素回収率は、マスキング成分なしで水とLPSのみを含有する別個のLPS-水対照の回収の割合として計算された。いかなる内毒素マスカも存在しない場合、このLPS・水対照におけるLPSはマスキングされないはずであり、つまりこのLPS-水対照中に存在する全てのLPSが検出可能なはずである。このように、LPS-水対照は、利用されるEndoLISA(登録商標)検出キットが適切に機能してLPSを検出しているかどうか(定性対照)、および対照中に存在することが分かっている全てのLPSが実際に検出されるかどうか(定量対照)を、定性的にも定量的にも判定するための基準となる。
結果
図7および表1 (下記)の回収率データは、20〜2.5 mMの濃度のBSAおよび/または1-ドデカノールの添加により、マスキングされた内毒素を100%超の程度まで回収できることを示す。BSAが存在しない場合、100%の回収率は達成できないものの、10〜2.5 mMの1-ドデカノールの範囲内で50%を超え、5 mM 1-ドデカノールでおよそ90%の最大回収率を有する。
この実施例および以下の実施例において、100%超のLPSの回収率は、以下に照らして解釈されるべきである: LPSの活性は、LPSの形態(例えば、凝集の程度および方向性)とLPSの構造(この構造は、異なる細菌種に由来するLPSにおいてわずかに変化する)の両方に依存することが分かっている。本明細書において記述される本発明の脱マスキング方法は、LPS凝集の形態と方向性の両方を変化させる可能性を有する(実際、ともかくもLPSの脱マスキングが可能であることは、モジュレータ、特に再構成モジュレータによって促進される変化によるものである)。LPS-水対照(脱マスキングされていない)と脱マスキングされたサンプルとの間のLPS凝集の形態および方向性の変化により、場合によっては、脱マスキング後に検出された活性が、陽性LPS-水対照で測定された活性を超えることもある。これは、本明細書において記述される本発明の脱マスキング方法を行うことで、以前には存在しなかった新しいLPSが生成されることを意味するのではなく、場合によってはむしろ、本明細書において記述される本発明の脱マスキング方法を行うことで、所与の量のLPSに対する見掛けの測定活性が増加するように既存のLPSの形態を変化させることを意味する。
(表1)
Figure 2019060882
この結果は、モジュレータ1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)のみの添加によって、マスキングされた内毒素を脱マスキングできることを明らかに実証している。この結果は、さらなる吸着モジュレータ(BSA)の添加によって、この脱マスキング効果を改善できることをさらに示している。1-ドデカノールおよびBSAが二成分モジュレータとして添加されるこの後者の場合、BSAは界面活性剤を吸着し、かくして内毒素をマスキングしている界面活性剤ミセルを不安定化するのに役立ち、モジュレータ1-ドデカノールは、(破壊モジュレータとしてのその能力において)界面活性剤ミセルを破壊すること、および(再構成モジュレータとしてのその能力において)遊離した内毒素を凝集構造へ再構成することができる。BSAの非存在下でのポリソルベート20の場合、ほぼ定量的な回収が可能である(5 mM 1-ドデカノールで89%)。これは、1-ドデカノールとLPSマスキング用の界面活性剤ポリソルベート20の、アルキル鎖の長さの類似性によるものでありうる。脱マスキングは、LPSの平衡を可溶化形態から凝集形態にシフトさせると考えられるBSAの添加によって改善される(例えば図2を参照のこと)。
実施例2: 異なるアルキル鎖長のアルコールを破壊かつ再構成モジュレータとして用いたポリソルベート20/クエン酸塩のマスキングシステムからの内毒素の脱マスキング
この実験では、破壊かつ再構成モジュレータとしてさまざまなアルキルアルコールを用いることについて調べた。この実施例において記述される実験の1つの目的は、アルコールのアルキル鎖長と脱マスキング効率との関係を調べることであった。この目的のため、さまざまな濃度でのC8〜C18の炭素原子鎖長を有するアルコールの添加により脱マスキングを行った。
材料および方法
内毒素マスキングは、実施例1に記述されているように行った。1-ドデカノール(炭素12個のアルキル鎖を有する)について実施例1に記述したように、モジュレータ(破壊かつ再構成モジュレータ)として異なるアルキル鎖長(C8、C10、C12、C14、C16、C18)の非分枝1-アルコールのストック溶液を添加することによって脱マスキングを行った。ストック溶液の各々を100%エタノールに溶解した。実施例1において上述した特定の実験とは対照的に、この脱マスキング実験には他のモジュレータ成分、例えばBSAを含めなかった。内毒素濃度の分析は、EndoLISA(登録商標)キット(Hyglos GmbH)を用いて行い、その後の内毒素回収率の計算は、LPS-水対照サンプルにおけるLPSの百分率として表した。LPS-水陽性対照は、上記の実施例1で詳細に説明されている。
結果
表2 (下記)は、アルコールにおけるアルキル鎖の長さおよびアルコール濃度に応じた、脱マスキングされた内毒素の割合を示す。
(表2)
Figure 2019060882
nd = データなし
1-ドデカノールおよび1-テトラデカノールを用いて40%超の内毒素回収率、すなわち40%を超えるだけの内毒素の脱マスキングが達成された。C12およびC14を下回るまたは上回るアルキル鎖長を有するアルコールを用いた回収率は、10%を下回る。
上記の結果は、破壊かつ再構成モジュレータとして用いられるアルコールのアルキル鎖長が、理想的には内毒素におけるアシル鎖のアルキル鎖長とできるだけ近く一致すべきであることを意味する。この場合、LPSのリピドA成分におけるアシル鎖の長さはC12およびC14であり、破壊かつ再構成モジュレータとして用いられる場合には、内毒素を最も効果的に脱マスキングしたのは、その範囲内のアルキル鎖長を有する1-アルコールであった。
実施例3: 1-ドデカノールを破壊かつ再構成モジュレータとして単独で用いた、および吸着モジュレータBSAとともに用いた、さまざまな非イオン性界面活性剤のマスキングシステムからの内毒素の脱マスキング
1-ドデカノール単独でのポリソルベート20からの内毒素の脱マスキングが、マスキング界面活性剤および1-ドデカノールが同等または類似のアルキル鎖長であることによって促進されるという仮説を調べるために、異なる鎖長および異なる構造のマスキング界面活性剤を用いてさまざまな実験をデザインし、これらを次いで、固定したアルキル鎖長の破壊かつ再構成モジュレータ(C12アルキル鎖を有する、1-ドデカノール)を用いて脱マスキングした。この目的のため、マスキングされたサンプルをポリソルベート80およびトライトンX-100中で調製し、これらを続いて、異なる濃度の1-ドデカノールを用いて、1-ドデカノールまたはBSA/1-ドデカノールで脱マスキングした。
材料および方法
内毒素マスキングは以下のように行った: 0.05%のポリソルベート20、ポリソルベート80またはトライトンX-100を含有する10 mMクエン酸塩pH 7.5のアリコット1 mlを、内毒素不含のガラス試験管中で調製した。その後、10,000 EU/ml LPSストック溶液(LPS 055 B5, Sigma L2637-5MG) 10 μlを添加し、1分間ボルテックスし、室温で少なくとも24時間保存した。陽性LPS対照として、10,000 EU/ml LPSストック溶液10 μlを内毒素不含水1 mlに添加し、混合し、マスキング調製物と同じようにインキュベートした。陽性LPS-水対照は、上記の実施例1で詳細に論じられている。
脱マスキングは、実施例1に記述されているように、異なる濃度の(破壊かつ再構成モジュレータとしての) 1-ドデカノールのストック溶液の添加によって行った。各アルコールのストック溶液を100%のエタノールに溶解した。脱マスキングは、実施例1に記述されているように10 mg/mlのBSAの非存在下および存在下の両方で行った。
内毒素濃度の分析は、EndoLISA(登録商標)キット(Hyglos GmbH)を用いて行い、その後の内毒素回収率の計算は、LPS/水対照サンプルにおける内毒素の百分率として表した。
結果
表3 (下記)は、BSA (吸着モジュレータ)の非存在下または存在下での、1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)濃度に応じた、ポリソルベート20/クエン酸塩、ポリソルベート80/クエン酸塩およびトライトンX-100/クエン酸塩の各マスキングシステムからの脱マスキング後のLPSの回収率を示す。
(表3)
Figure 2019060882
nd = データなし
ポリソルベート80/クエン酸塩マスキングシステムからの1-ドデカノールによる脱マスキングは、2.5 mMの1-ドデカノールの最適濃度でおよそ30%の回収率をもたらす。BSAの存在下では、最大90%まで回収することができる。トライトンX-100マスキングシステムからの脱マスキング手法はどちらも(すなわちBSAありでもなしでも)、1-ドデカノールの濃度にかかわらず、20%未満のLPS回収率をもたらす。
かくして、ポリソルベート20マスキングシステムのようなマスキングシステムからLPSを脱マスキングするには、1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータとして)のみを用いた脱マスキングで十分である。BSA (吸着モジュレータとして)を添加してマスキング界面活性剤を吸着させることにより、ポリソルベート20およびポリソルベート80マスキングシステムにおける脱マスキング回収率が改善される。トライトンX-100システムからの脱マスキングは、BSAを1-ドデカノールとともに添加する場合でさえ、あまり効率的ではない。例えばSDSのような、さらなるモジュレータ成分(置換モジュレータとして)を添加することで、トライトン-X-100マスキング製剤からのLPSの回収率を改善するのに役立ちうる。
実施例4: 水素結合の安定性に影響を与えるカオトロピック剤およびモジュレータの添加による脱マスキング効率の増大
BSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の二重モジュレータシステムを用いたトライトンX-100マスキングシステムからのLPSの低い回収率は、トライトンX-100およびLPSによって形成された複合体の高い安定性によるものでありうる。この高い安定性は、1-ドデカノールの破壊作用およびBSAによる界面活性剤の吸着によるトライトンX-100の内毒素マスキングミセルの、所望の破壊を妨げうる。
この理由のため、本実験では、カオトロピック塩を多成分モジュレータとともに添加することによりマスキング複合体を不安定化させる可能性について調べる。さもなければ安定な界面活性剤ミセルを不安定化させることにより、1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータとして)、BSA (吸着モジュレータとして)およびSDS (置換モジュレータとして)の多成分モジュレータシステムを用いたこのミセルの破壊がひいては可能になるであろうことが期待された。
材料および方法
内毒素マスキングは以下のように行った: 0.05%トライトンX-100を含有する10 mMクエン酸塩pH 7.5のアリコット1 mlを、内毒素不含のガラス試験管中で調製した。その後、10,000 EU/ml LPSストック溶液(LPS 055 B5, Sigma L2637-5MG) 10 μlを添加し、1分間ボルテックスし、室温で少なくとも24時間保存した。陽性LPS対照として、10,000 EU/ml LPSストック溶液10 μlを内毒素不含水1 mlに添加し、混合し、マスキング調製物と同一の方法でインキュベートした。陽性LPS-水対照は、上記の実施例1で詳細に論じられている。
内毒素の脱マスキングは以下のように行った: マスキングされたサンプル1 mlに以下のストック溶液100 μlを単一成分としてまたは組み合わせとして添加した: 1 M CaCl2 (水に溶解した)、100 mg/ml BSA (水に溶解した)、1% SDS (水に溶解した)および50 mM 1-ドデカノール(100%エタノールに溶解した)。組み合わせの添加の場合、各添加の間に2分間のボルテックス段階を用いて、作用物質を順次添加した。次いで、サンプルを振盪せずに室温で30分間インキュベートした。
内毒素含量は、EndoLISA(登録商標) (Hyglos GmbH)を用いキットの使用説明書にしたがって分析された。サンプルの希釈は、内毒素不含水中で10分の1および100分の1であった。内毒素回収率は、LPS-水対照の回収の割合として計算および表した。陽性LPS-水対照は、上記の実施例1で詳細に論じられている。
結果
図8は、CaCl2 (C)、BSA (B; 吸着モジュレータ)、SDS (S; 置換モジュレータ)および1-ドデカノール(D; 破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせの添加に応じたLPS回収の割合を示す。唯一の(破壊かつ再構成)モジュレータとしての1-ドデカノールは、トリトンX-100マスキング複合体からLPSを効率的に脱マスキングしない。二成分モジュレータシステムとしてBSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)を添加することで、およそ20%の回収率が得られる。CaCl2のようなカオトロピック塩またはSDS (置換モジュレータ)のようなさらなるモジュレータをさらに添加しても、20%を超えるLPS回収率は得られない。しかしながら、CaCl2、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)を添加することで、100%超のLPS回収率が得られる。
かくして、BSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)に加えて、カオトロピック塩および界面活性剤SDSのようなさらなる置換モジュレータは、トライトンX-100マスキング複合体を壊すのに役立つ。このように、これらの4つの添加物の組み合わせは、マスキング複合体をバラバラにするように思われ、検出可能なLPSの形成を可能にする。
実施例5: さまざまなマスキングシステムからの異なる脱マスキング手法の比較
CaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノールの組み合わせを用いてトライトンX-100マスキングシステムからの効果的な脱マスキングが観察されたので、ポリソルベートマスキングシステムから始まるこの手法の脱マスキング効率に関する問題が残る。この問題に答えるため、内毒素をポリソルベート20、80およびトライトンX-100 /クエン酸塩マスキングシステムにおいてマスキングし、その後、1-ドデカノール単独; BSAおよび1-ドデカノールの組み合わせ; またはCaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノールの組み合わせを用いて脱マスキングした。これらの実験では、1-ドデカノールを破壊かつ再構成モジュレータとして用い、BSAを吸着モジュレータとして用い、SDSを置換モジュレータとして用い、CaCl2を溶液中での水素結合安定性に影響を与える作用物質として用いる。
材料および方法
内毒素マスキングは以下のように行った: 0.05%のポリソルベート20、0.05%のポリソルベート80または0.05%のトライトンX-100のいずれかを含有する10 mMクエン酸塩pH 7.5のアリコット1 mlを、内毒素不含のガラス試験管中で調製した。その後、10,000 EU/ml LPSストック溶液(LPS 055 B5, Sigma Aldrich L2637-5MG) 10 μlを添加し、1分間ボルテックスし、室温で少なくとも24時間保存した。陽性LPS対照として、10,000 EU/ml LPSストック溶液10 μlを内毒素不含水1 mlに添加し、混合し、マスキング調製物と同じようにインキュベートした。陽性LPS-水対照の機能は、上記の実施例1に記述されている通りである。
内毒素の脱マスキングは以下のように行った: 50 mM 1-ドデカノールストック溶液100 μl; または100 mg/ml BSA 100 μlおよび50 mM 1-ドデカノールストック溶液100 μl; または1 M CaCl2溶液100 μl、100 mg/ml BSA溶液100 ml、1% SDS溶液100 μlおよび50 mM 1-ドデカノール溶液100 μlのいずれかを、マスキングされたLPSを含有する溶液に添加した。組み合わせの添加の場合、各添加の間に2分間のボルテックス段階を用いて、作用物質を順次添加した。次いで、サンプルを振盪せずに室温で30分間インキュベートした。
内毒素含量は、EndoLISA(登録商標)キット(Hyglos GmbH)を用いキットの使用説明書にしたがって分析された。サンプルの希釈は、内毒素不含水中で10分の1および100分の1であった。内毒素回収率は、LPS-水対照の回収の割合として計算した。
結果
表4 (下記)および図9は、1-ドデカノール単独; BSAおよび1-ドデカノールの組み合わせ; またはCaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノール(CBSD)の組み合わせのいずれかを、さまざまな界面活性剤マスキングシステムからの脱マスキングのために用いた、LPS回収の割合を示す。
(表4)
Figure 2019060882
ポリソルベート20マスキングシステムからの効率的な(約80%)脱マスキングは、1-ドデカノール、BSA/1-ドデカノールおよびCaCl2/BSA/SDS/1-ドデカノールによって達成される。ポリソルベート80マスキングシステムの場合、BSA/1-ドデカノールおよびCaCl2/BSA/SDS/1-ドデカノールの存在下で良好な脱マスキング効率が達成される。トライトンX-100マスキングシステムの場合、CaCl2/BSA SDS/1-ドデカノールの添加により、良好なLPS回収率が得られる。
かくして、マスキング複合体の安定性に依り、さまざまな脱マスキング手法を用いて効率的な内毒素回収を達成することができる。しかしながら、CaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノールの組み合わせを含む脱マスキング手法は、用いられるマスキングシステムにかかわらず、効率的な脱マスキングを達成するその能力のために、最も普遍的な方法でありうる。本明細書において上述された実験から明らかであるように、任意の所与の製剤中のLPSを脱マスキングするのに最適な組成物は、日常的な実験によって容易に得ることができる。
実施例6: 異なる内毒素供給源からの内毒素の脱マスキング
実施例1〜5における内毒素脱マスキング実験を、大腸菌(E. coli) O55:B5の市販の高精製LPS調製物で行った。保存されたLPSリピドA部分のみが毒性の原因であり、C因子に基づく検出方法での検出可能性の原因であるので、上記の脱マスキング手法は大腸菌O55:B5以外の細菌由来のLPS調製物を用いて等しく良好に作用すると仮定することができる。しかしながら、文献には、LPSのリピドA部分のアシル鎖長の差異、および側鎖の修飾も記述されている。さらに、LPSのO糖側鎖の長さは、脱マスキング手法に潜在的に影響を与えうる。さらに、精製されたLPSおよび天然に存在する内毒素(naturally occurring endotoxin; NOE)は、その脱マスキング挙動が異なりうることを無視することはできない。これらの問題に取り組み、脱マスキング手法が大腸菌O55:B5の使用LPSに特異的であるという可能性を排除するため、異なる細菌、コア糖鎖およびO糖鎖の異なる長さならびに異なる純度由来のLPSを、さまざまな界面活性剤マスキングシステムでマスキングし、その後、1-ドデカノールのみ、BSA/1-ドデカノールまたはCaCl2/BSA/SDS/1-ドデカノールのいずれかを用いて脱マスキングした。
材料および方法
内毒素のマスキングは以下のように行った: 0.05%のポリソルベート20、0.05%のポリソルベート80または0.05%のトライトンX-100のいずれかおよび10 mMクエン酸塩pH 7.5を含有するマスキングサンプル1 mlに、異なるタイプの、および異なる供給源からのLPSサンプルを(およそ50 EU/mL)添加した。LPS供給源、タイプおよび供給業者を表5 (下記)に示す。NOEは、無菌ろ過によってLB培地中での静止期への増殖後の細菌培養上清から生成された。保存料として、0.05%のアジ化ナトリウムを添加した。凍結乾燥されたLPSを内毒素不含水に溶解した。表5〜7中で供給業者が「LMU」と表示されているLPS溶液は、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのA. Wieser博士から親切にも頂いたものであった。LPSストック溶液の内毒素含量は、EndoZyme(登録商標)キット(Hyglos GmbH)を用いて判定し、内毒素不含水中およそ5000 EU/mlのLPSのストック溶液が生成された。これらの溶液から10 μlをマスキングサンプル1 mlに添加した。その後、サンプルは、室温で7日間各LPSをマスキングさせた。
内毒素の脱マスキングは、100 mM 1-ドデカノールストック溶液100 μlの添加、もしくは100 mg/ml BSA 100 μlおよび100 mM 1-ドデカノールストック溶液100 μlの添加によって、または1 M CaCl2、100 mg/ml BSA、1% SDSおよび100 mM 1-ドデカノール溶液の各々100 μlの添加によって行った。脱マスキングおよび内毒素含量の判定は、実施例1〜5に記述されているように行った。
結果
表5〜7 (下記)は、異なる界面活性剤マスキングシステムからの異なる供給源およびタイプ由来LPSのマスキング後および脱マスキング後のLPS回収率を示す。具体的には、表5はTween20/クエン酸塩のマスキングシステムに対して得られた結果を示し; 表6はTween80/クエン酸塩のマスキングシステムに対して得られた結果を示し; および表7はトライトンX-100/クエン酸塩のマスキングシステムに対して得られた結果を示す。
(表5)
Figure 2019060882
一般的な水質汚染要因物であり、それゆえ薬学的組成物の製造のプロセスにおいて存在する可能性がより高い菌株
(表6)
Figure 2019060882
一般的な水質汚染要因物であり、それゆえ薬学的組成物の製造のプロセスにおいて存在する可能性がより高い菌株
(表7)
Figure 2019060882
一般的な水質汚染要因物であり、それゆえ薬学的組成物の製造のプロセスにおいて存在する可能性がより高い菌株
上記のデータは、さまざまなマスキングシステムから内毒素を成功裏に脱マスキングする能力が、用いられるLPSの供給源およびタイプとは無関係であることを明らかに示している。これらの結果は、本発明の脱マスキング法が種々のマスキング条件の下で、さまざまな供給源からのさまざまなタイプの内毒素に適用できる一般的な教示となることを示しているため、重要である。
実施例7: タンパク質マスキングシステムからの内毒素の脱マスキング
以前の実験では、界面活性剤マスキングシステムからのLPSの脱マスキングを調査している。しかしながら、本明細書において上述されるように、界面活性剤は、内毒素を検出からマスキングできる唯一の物質ではない。タンパク質(例えばタンパク質API)も、その構造上または構造内に内毒素が結合できる結合部位を含む場合、内毒素を検出からマスキングすることができ、かくして検出を回避することができる。本実験はそれゆえ、界面活性剤ではなくタンパク質による内毒素(LPS)のマスキングに関する。リゾチームは、内毒素を結合するその能力が公知であるため、これらの実験でマスキングタンパク質として用いた(例えばOhno & Morrison (1999). J. Biol. Chemistry 264(8), 4434-4441を参照のこと)。
材料および方法
内毒素マスキングは以下のように行った: 50 EU/mlのLPS (大腸菌O55:B5)を、1 mg/mlの鶏卵卵白リゾチーム(Sigma Aldrich)を含有する10 mMクエン酸緩衝液, pH 7.5中で7日間、室温でインキュベートした。
内毒素脱マスキングは以下のように行った: 脱マスキングは、脱マスキング試薬(先の実施例に記述されているモジュレータおよび水素結合安定性に影響を与える作用物質)のさまざまな組み合わせでの添加によって行った。具体的には、マスキングされたサンプルのアリコット1 mlに以下の脱マスキング剤100 μlを添加した: 1-ドデカノール、CaCl2、BSA、SDS。100%エタノールに溶解した1-ドデカノールを除いて、全てのストック溶液を水に溶解した。ストック溶液の添加濃度は、それぞれ100 mM 1 M CaCl2、100 mg/ml BSAおよび1% SDSであった。各添加後に2分間のボルテックス段階を用いて、さまざまな成分の順次添加により脱マスキングを行った。サンプルを次に、室温で30分間インキュベートし、その後、EndoLISA(登録商標)キット(Hyglos GmbH)を用いた分析のために内毒素不含水中で10分の1および100分の1希釈した。
結果
表8 (下記)は、添加された成分に応じたタンパク質マスカ(リゾチーム)からの脱マスキング効率を示す。
(表8)
Figure 2019060882
リゾチームによるマスキングの場合、1-ドデカノール(再構成モジュレータ)を単独でまたはモジュレータシステムのさらなる成分として支持界面活性剤(置換モジュレータ)とともに用いると、効率的に脱マスキングしない。ここで、リゾチーム-LPSマスキング複合体は、負に荷電したLPSと正に荷電したリゾチームとの間の静電相互作用のため、より安定しているようである。脱マスキングの改善は、静電相互作用をかく乱する塩の添加により達成され、それによりリゾチーム-LPS複合体をより不安定化し、モジュレータによる破壊に対するその感受性を増加させうる。この目的のため、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(再構成モジュレータ)の多成分モジュレータシステムをCaCl2とともに用いて当初のリゾチーム-LPS複合体の安定性を低下させることにより、良好な結果が得られうる。これらの成分の組み合わせは、マスキング複合体をバラバラにし、検出可能なLPS構造をもたらしうる。このモデルは、内毒素が薬学的組成物中のタンパク質、例えばタンパク質APIにより、完全にまたは部分的に、マスキングされる場合に、内毒素を脱マスキングするために用いられうる方策の一般的モデルと解釈されうる。
実施例8: 脱マスキングのためのモジュレータとしての1-アルキルアルコール以外の物質
本明細書において上述されるように、(再構成モジュレータとして用いられる) 1-アルキルアルコールは、検出可能なLPS構造の形成を促進することが分かっている。それゆえ、1-アルキルアルコール以外の他のタイプの物質が同様に検出可能な形態のLPSを促進する能力を有するかどうかを調べることが望まれた。本実施例は、検出可能なLPS構造の形成を支持することができうる1-アルキル-アルコール以外の物質のスクリーニングの結果を示す。
材料および方法
LPS (大腸菌O55:B5, Sigma) 100 EU/mlを室温で24時間、ポリソルベート20/クエン酸塩中でマスキングした。脱マスキングは、マスキングされたLPSの溶液10部へのCaCl2 (1 Mでの)、BSA (100 mg/mLでの)、SDS (1%での)および物質Xのストック溶液1部の順次添加により開始されたが、ここで「物質X」は、再構成モジュレータとしての能力を試験すべき1-アルキルアルコール以外の物質に相当した。物質Xを異なる濃度で滴定した。脱マスキング後、サンプルを内毒素不含水中で10分の1および100分の1希釈し、EndoLISA(登録商標)キット(Hyglos GmbH)を用い検出可能な内毒素について分析した。
結果
表9 (下記)は、モジュレータとして用いられた物質に応じた脱マスキング後の最大LPS回収率を示す。さらに、脱マスキングのための各物質のストック溶液の適当な濃度を示す。
(表9)
Figure 2019060882
上記から分かるように、1-アルキルアルコールは、検出可能な形態のLPSの形成を促進するための再構成モジュレータとして機能しうる化合物の唯一のクラスではない。(例えば1-デカン酸のように)酸素のさらに高い酸化状態を含む他の物質および(例えばオクチル硫酸ナトリウム(SOS)のように)酸素以外のヘテロ原子を含む他の物質も、中程度〜良好な脱マスキングを可能にしうる。
この結果から、1-アルキルアルコールと構造が類似している物質も、ある程度まで脱マスキングを支持できることが示唆される。アルカン、好ましくはC8〜C16アルカン、好ましくはC8〜C12アルカン、好ましくはC12アルカンのOH-誘導体は、LPSを、C因子に基づくアッセイ法によって検出しやすくするように最良に働くように思われる。
実施例9: 異なる供給源由来のアルブミンおよび1-ドデカノールを用いた脱マスキング
ポリソルベート80を含むマスキングされたサンプル中でのウシ血清アルブミン(BSA)の添加による脱マスキングの改善に関する検証の一部として、異なる供給源由来のアルブミンを試験した。
材料および方法
ポリソルベート80/クエン酸塩緩衝液中50 EU/mlのLPS (O55:B5)を含有するマスキングされたサンプル(1 ml)を、異なる濃度のアルブミン(ウシ血清アルブミン(BSA)、ごく少量の内毒素, Serva GmbH; ヒト血清アルブミン(ピキア酵母(Pichia pastoris)において組み換えにより産生されたHSA (Sigma Aldrich); およびオボアルブミン(Ova), EndoGrade Ovalbumin, Hyglos GmbH)を有するストック溶液100 μlの添加、および引き続いて100 mM 1-ドデカノールストック溶液100 μlの添加によって脱マスキングした。アルブミンストック溶液の濃度は、100、33、10、3.3および1 mg/mlであった。オボアルブミンの水への溶解度が低いため、オボアルブミンの100 mg/ml溶液は調製されなかった。
EndoLISA(登録商標)キット(Hyglos GmbH)を用いて検出可能なLPS含量の判定後にLPS回収率を計算した。EndoLISA(登録商標)測定のため、脱マスキングされたサンプルを、内毒素不含水中で10分の1および100分の1希釈し、その後、キットの使用説明書にしたがって測定した。
結果
表10 (下記)は、異なる供給源由来のアルブミンに応じた、ポリソルベート80/クエン酸塩マスキングシステムからの脱マスキング効率を示す。
(表10)
Figure 2019060882
nd = データなし
データから、試験した全てのアルブミンが、ポリソルベート80マスキングシステムからの脱マスキングを支持できることが明らかである。脱マスキングサンプルにおける適当な終濃度は、BSAの場合10 mg/ml、HASの場合1 mg/mlおよびオボアルブミンの場合3.3 mg/mlである。最適濃度の差は、マスキングされたサンプル中の界面活性剤に対するアルブミンの親和性の違いに起因しうる。
実施例10: 脱マスキング効率に及ぼすさまざまなカオトロピック塩の効果
物質CaCl2 (水素結合に影響を与える作用物質)、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(再構成モジュレータ)の組み合わせ(この組み合わせ全体は「CBSD」といわれる)を用いた脱マスキングは、例えばトライトンX-100によってマスキングされた場合にLPSを効率的に脱マスキングすることを上記に示した。本実験では、脱マスキング効率に及ぼすカオトロピック塩(水素結合の安定性に影響を与える作用物質)の性質の効果を調べる。この目的のため、以下の実験では、いずれの場合にも対応する塩化物塩として提示される、漸増するカオトロピック特性の塩: Na+、Mg2+およびCa2+を利用する。
材料および方法
内毒素マスキングは以下のように行った: 50 EU/mlの大腸菌LPS O55:B5を、0.05%トライトンX-100を含有する10 mMのクエン酸塩緩衝溶液(pH 7.5)中で室温にて3日間インキュベートさせることによってマスキングした。ここで、トライトンX-100は界面活性剤マスカとして機能した。
内毒素の脱マスキングは以下のように行った: 5 M塩化ナトリウム(NaCl)、1 M塩化マグネシウム(MgCl2)または1 M塩化カルシウム(CaCl2)ストック溶液のいずれか300、100、30、10、3および1 μlを、マスキングされたサンプルのアリコット1 mlに添加し、混合した。その後、他のモジュレータ成分(BSA (吸着モジュレータ)、SDS (破壊かつ置換モジュレータ)および1-ドデカノール(再構成モジュレータ)) 100 μlを実施例1〜5に記述されているように添加した。
結果
表11 (下記)は、各カオトロピック塩に応じた内毒素回収の割合および脱マスキングサンプル中での各塩の最も最適な終濃度を示す。
(表11)
Figure 2019060882
データから、試験された全ての塩が、BSA (吸着モジュレータとして)、SDS (ここでは、破壊モジュレータとして)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータとして)を含む多成分モジュレータシステムとの組み合わせでマスキング界面活性剤トライトンX-100からのLPSの効率的な脱マスキングを支持しえたことが明らかである。さらに、本明細書において上述されるように、同等な程度の脱マスキング効率を達成するために必要とされる塩の量は、カオトロピック特性の増加とともに減少した。これらの結果により、いくつかの一般的な結論を引き出すことが可能になる。第一に、内毒素と内毒素マスカとのマスキング複合体を不安定化するために塩を用いる場合、この塩のカオトロピック特性は効率的な脱マスキングを達成する上で重要な要因である。第二に、効率的な脱マスキングを達成するために必要とされる塩の量は、一般に、利用される塩のカオトロピック強度に反比例するであろう。
実施例11: 界面活性剤およびリン酸塩緩衝液を含有するサンプルからの内毒素の脱マスキング
薬理活性成分(API)としてタンパク質(例えば抗体)を含有する薬物の大部分の製剤は、クエン酸塩またはリン酸塩中でともに緩衝化されたポリソルベート20または80のような非イオン性界面活性剤を含有する。そのような製剤において、界面活性剤の濃度は、通常、各界面活性剤の臨界ミセル濃度(critical micellar concentration; CMC)を上回る。さらに、そのような製剤のpH値は、APIの最適な安定性を確保するために調整されることが多い。
上記を念頭に置いて、本実施例に記載の調査では、脱マスキング効率に及ぼすpH値の影響を調べようとした。タンパク質APIを含有する薬学的製剤において使われている状況にできるだけ近づけるために、界面活性剤ポリソルベート20およびポリソルベート80を内毒素マスカとして用い、溶液をリン酸塩緩衝化した。本明細書において上述された結果を考慮して、CaCl2 (水素結合の安定性に影響を与える作用物質としてのカオトロピック塩)、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (ここで、破壊モジュレータとして)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせを用いて脱マスキングを行った。Ca2+およびPO4 3-が非可溶性リン酸カルシウム複合体を形成する場合、2倍モル過剰のクエン酸塩, pH 7.5の添加によって塩化カルシウム溶液を安定化させた。
材料および方法
内毒素のマスキングは以下のように行った: 各々がさまざまなpH値の10 mMのリン酸塩緩衝液および0.05%のポリソルベート20またはポリソルベート80のどちらかを含有している、サンプル1 mlに、100 EU/mlの大腸菌LPS O55:B5を添加した。これらの溶液を室温で7日間インキュベートすることによりマスキングを進行させた。界面活性剤を含まないリン酸塩緩衝液のLPS含有対照サンプルを調製し、インキュベートし、マスキングサンプルと並行して測定した。
内毒素の脱マスキングは以下のように行った: CaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノールの組み合わせを、先の実施例に記述されているように各々のサンプルに添加した。リン酸カルシウム沈殿を回避するため、およびサンプルのpHを調整するため、2倍モル過剰のクエン酸塩緩衝液pH 7.5を、脱マスキング成分の添加の前に各サンプルに添加した。
マスキングされたサンプルの内毒素含量は、Hyglos GmbHのEndoZyme(登録商標)キットを用いゼロ時に、および7日後に判定した。脱マスキングされたサンプルの内毒素含量は、Hyglos GmbHのEndoLISA(登録商標)キットを用いて分析した。7日間のマスキング後および脱マスキング後のLPS回収の割合を、ゼロ時の対照サンプルを基準にして計算した。
結果
表12 (下記)ならびに図10および11は、pH値に応じた7日間のマスキング後のLPS回収の割合およびマスキングされたサンプルの脱マスキング後のLPS回収の割合を示す。
(表12)
Figure 2019060882
データから、界面活性剤を含有するリン酸塩緩衝溶液中でのマスキングはpH依存性が強いことが明らかである。4を下回るpH値では、サンプルインキュベーションの1週間後にマスキングは起こらない。4を上回るpH値では、強いマスキング効果が見られ、1%未満の、検出可能なLPS回収率をもたらす。
データからまた、実施された脱マスキング手法は、予めマスキングされた、検出不能なLPSを検出可能にすることが明確に示される。pH値およびマスキングの程度とは無関係に、100%またはそれ以上のLPSを回収すること、すなわち検出することができる。
実施例12: SDS以外の置換モジュレータを用いた脱マスキング
上記の実施例において示されるように、CaCl2/BSA/SDS/1-ドデカノールの組み合わせによって、トライトンX-100界面活性剤によりマスキングされている内毒素が効率的に脱マスキングされた。上記のいくつかの実験は、このスキームにSDSを含めて効率的な脱マスキングを達成することの重要性を示唆している。本実施例において記述される実験の目的は、SDSを用いて観察される脱マスキング効果に悪影響を及ぼすことなく、モジュレータ成分SDS (ここでは、破壊モジュレータとして)を別の界面活性剤と交換できるかどうかを調べることである。
材料および方法
内毒素のマスキングは以下のように行った: 0.05%のトライトンX-100を含有する10 mMクエン酸塩pH 7.5のアリコット1 mlを、内毒素不含のガラス試験管中で調製した。その後、10,000 EU/ml LPSストック溶液(LPS 055 B5, Sigma L2637-5MG) 10 μlを添加し、1分間ボルテックスし、室温で少なくとも24時間保存した。水中での陽性LPS対照を以下のように調製した: 10,000 EU/ml LPSストック溶液10 μlを内毒素不含水1 mlに添加し、混合し、マスキング調製物と同じようにインキュベートした。陽性LPS-水対照に関するさらなる詳細は、実施例1において示されている。
内毒素の脱マスキングは以下のように行った: 上記のように調製したLPSのマスキング溶液に、CaCl2、BSA、界面活性剤Xおよび1-ドデカノールを先の実施例に記述されているように添加したが、ここで「界面活性剤X」(破壊モジュレータ)は同一性および濃度が変えられた。以下の界面活性剤を試験した: ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(AOT)、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム(SDBS)、ポリエチレングリコール4-ノニルフェニル-3-スルホプロピルエーテルカリウム塩(PENS)およびp-キシレン-2-スルホン酸水和物(XSA)。脱マスキングを上記の実施例に記述されているように行い、内毒素含量をHyglos GmbHのEndoLISA(登録商標)キットを用いて判定し、LPS-水陽性対照を基準にしてLPS回収の割合を計算した。LPS-水陽性対照に関するさらなる詳細は、上記の実施例1に記述されている。
結果
表13は、CaCl2/BSA [界面活性剤X]/1-ドデカノール脱マスキング手法においてSDS以外の界面活性剤を用いた脱マスキング後のLPS回収の割合を示す。
(表13)
Figure 2019060882
データから、SDS以外の他の界面活性剤は、CaCl2/BSA [界面活性剤X]/1-ドデカノール脱マスキング手法における破壊モジュレータとして脱マスキングを支持できることが明らかである。さらに、1-ドデカノールが存在しない場合、界面活性剤はトライトンX-100からLPSを脱マスキングすることができなかった。上記のように、これは、1-ドデカノールが、可溶化(検出不能)状態から凝集(検出可能)状態への内毒素の移行を媒介するために不可欠でありうる再構成モジュレータとして(少なくとも)重要な役割を果たしうることを示唆している。
実施例13: マスキング界面活性剤に応じた緩衝化抗体組成物からの脱マスキング
タンパク質に基づく医薬品のうち最も一般的に使われる製剤は、リン酸塩緩衝液および非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80などを含有する。さらに、抗体は、最もよく製剤化される薬学的タンパク質製品の1つを構成する。これを念頭に置いて、本発明者らは、リン酸塩中で緩衝化された抗体であるタンパク質および界面活性剤の両方を含有するシステムにおいて内毒素を脱マスキングするのに、界面活性剤マスキングシステムまたはタンパク質マスキングシステムのための上記の脱マスキング手法が適しているかどうかを確認しようとした。これらの実験でマスキング界面活性剤としてポリソルベート20および80を選択した。というのは、これらの2つの界面活性剤が、タンパク質製剤において最も一般的に使われる界面活性剤であるためである。
材料および方法
内毒素マスキングは以下のように行った: 50 EU/mlの内毒素(大腸菌O55:B5; Sigma L2637-5MG)を、10 mMリン酸ナトリウムpH 7.5および50 mM NaClに溶解した、10 mg/mlのウシポリクローナルIgG抗体調製物を含有する抗体溶液のアリコット1 mlに添加した。その後、ポリソルベート20またはポリソルベート80のいずれかを0.05%の終濃度まで添加し、この溶液を室温で3日間インキュベートしてマスキングを行わせた。さらに、界面活性剤または抗体を含まない緩衝溶液、および抗体または各ポリソルベートのいずれかを含有する緩衝溶液を含んだ対照を調製し、マスキングサンプルと同様に処理した。各対照は、同じ量のLPSを含有していた。
脱マスキングは以下のように行った: 脱マスキングは1-ドデカノールまたはBSA/1-ドデカノールまたはCaCl2/BSA/SDS/1-ドデカノールのいずれかの添加によって行った。以下のストック溶液100 μlをサンプル溶液1 mlに添加した: CaCl2 (1 M)、BSA (100 mg/ml)、SDS (1%)および1-ドデカノール(100、10または1 mM)。さらに、サンプルに塩化カルシウムを添加する前に、終濃度200 mMのクエン酸ナトリウムpH 7.5を添加することによりリン酸カルシウム沈殿に対してサンプルを安定化させた。各添加の後に2分間の混合段階を用いて、全てのストック溶液を順次添加した。最後の成分の添加および混合の後、サンプルを室温で少なくとも30分間インキュベートした。その後、サンプルを内毒素不含水中で10分の1および100分の1希釈し、EndoLISAキット(Hyglos GmbH)を用い内毒素含量について分析した。LPS回収の割合は、(実施例1にさらに詳細に論じられている)緩衝液対照において判定された内毒素含量を基準にして計算した。
結果
表14a (下記)は室温で3日間のインキュベーション後の、水対照、界面活性剤を含まない緩衝液、抗体または界面活性剤を含有する緩衝液ならびに抗体および界面活性剤を含有する緩衝液のLPS回収の割合を示す。
(表14a)
Figure 2019060882
表14b (下記)は、ポリソルベート20または80のいずれかを含有する脱マスキング後の抗体溶液からのLPS回収の割合を示す。さらに、添加されたストック溶液の濃度を示す。
(表14b)
Figure 2019060882
データから、ポリソルベート20または80を含まない緩衝溶液が、添加されたLPSをマスキングしないことが明らかである。抗体を含有するがポリソルベートを含有しない緩衝溶液は、LPSの約55%〜70%をマスキングしており、抗体タンパク質がそれ自体のマスキング効果に寄与することを示唆している。ポリソルベートまたはポリソルベートおよび抗体を含有する緩衝溶液からのLPS回収率は、脱マスキングの方策をとらない場合、10%未満である。かくして、界面活性剤のみでなく、抗体もLPSのマスキングに関与する。
LPS、界面活性剤および抗体を含有するマスキング複合体からの脱マスキング後のLPS回収率は、1-ドデカノールのみの使用では低い(ポリソルベート80および20について、それぞれ9および17%)。BSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせを用いると、それぞれポリソルベート80および20について11および41%の中程度のLPS回収率が可能となった。CaCl2、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせを用いた脱マスキングにより、それぞれポリソルベート20および80について、マスキングされたLPSの、67%および91%の回収率が得られる。興味深いことに、脱マスキングは、1 mMの低濃度の1-ドデカノールストック溶液を用いて達成された。さらに、タンパク質を含まない界面活性剤システムからの脱マスキングとは対照的に、1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)またはBSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の使用では、50%よりも高い効率で脱マスキングされない。上記のリゾチームについて示されるように、効率的な脱マスキングは、CaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノールの存在下でのみ達成された。
実施例14: 緩衝物質に応じた、抗体およびポリソルベート20を含有する組成物からの脱マスキング
上記の実施例14で、本明細書において記述される本発明の脱マスキング手法は、界面活性剤および緩衝タンパク質(抗体)の両方を含有する脱マスキング組成物に適していることが分かった。これを考慮して、脱マスキング効率に及ぼす緩衝液の影響を調べることが次に望まれた。この目的のため、本発明者らは、pH 7.5の10 mMクエン酸塩緩衝液または10 mMリン酸塩緩衝液を選択した。というのは、これらがタンパク質製剤において最も一般的に使われる緩衝液であるためである。
材料および方法
内毒素マスキングは以下のように行った: 50 EU/mlの内毒素(大腸菌O55:B5; Sigma L2637-5MG)を、50 mM塩化ナトリウムを含有する10 mMリン酸ナトリウムまたは150 mM塩化ナトリウムを含有する10 mMクエン酸ナトリウムpH 7.5のいずれかに溶解した、10 mg/mlのウシポリクローナルIgG抗体調製物を含有する抗体溶液のアリコット1 mlに添加した。その後、ポリソルベート20を0.05%の終濃度まで添加し、サンプルを室温で3日間マスキングした。さらに、界面活性剤または抗体を含まない緩衝溶液、および抗体または各ポリソルベートのいずれかを含有する緩衝溶液を含んだ陽性対照を調製し、マスキングサンプルと同様に処理した。各陽性対照は、同じ量のLPSを含有していた。
内毒素脱マスキングは以下のように行った: 脱マスキングは1-ドデカノールまたはBSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)もしくはCaCl2、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせのいずれかの添加によって行った。以下のストック溶液の各々100 μlをサンプル溶液1 mlに順次添加した: CaCl2 (1 M)、BSA (10 mg/ml)、SDS (1%)および1-ドデカノール(100、10または1 mM)。さらに、リン酸塩緩衝液を含有するサンプルに塩化カルシウムを添加する前に、終濃度200 mMのクエン酸ナトリウムpH 7.5を添加することによりリン酸カルシウム沈殿に対して、このサンプルを安定化させた。各添加の後に2分間の混合段階を用いて、全てのストック溶液を順次添加した。最後の成分の添加および混合の後、サンプルを室温で少なくとも30分間インキュベートした。その後、サンプルを内毒素不含水中で10分の1および100分の1希釈し、EndoLISAキット(Hyglos GmbH)を用い内毒素含量について分析した。LPS回収の割合は、(実施例1にさらに詳細に論じられている)陽性対照において判定された内毒素含量を基準にして計算した。
結果
表15 (下記)はクエン酸塩またはリン酸塩のいずれかを緩衝物質として含有する、マスキング後および脱マスキング後の抗体溶液からのLPS回収の割合を示す。
(表15)
Figure 2019060882
「脱マスキング」サンプルは抗体を含有していた。
データから、抗体を含有するがポリソルベートを含有しない緩衝溶液は、LPSの60%〜70% (それぞれ、クエン酸塩緩衝液およびリン酸緩衝液について40%および約30% LPSの回収率に基づく)をマスキングすることが明らかである。ポリソルベートまたはポリソルベートおよび抗体を含有する緩衝溶液からのLPS回収率は、1%未満である。これらの場合、マスキングは、存在する緩衝液とは無関係である。
LPS、界面活性剤および抗体を含有する組成物からの脱マスキング後のLPS回収率は、1-ドデカノールのみの使用では低く(リン酸塩およびクエン酸塩について、それぞれ17%および26%)、BSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせの使用では中程度である(リン酸塩およびクエン酸塩について、それぞれ41%および49%)。CaCl2、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせを用いた脱マスキングにより、それぞれリン酸塩およびクエン酸塩について、マスキングされたLPSの、67%および87%の回収率が得られる。興味深いことに、効率的な脱マスキングのための1-ドデカノールストック溶液の必要濃度は、使われる緩衝系の間で強く異なる(抗体/界面活性剤/クエン酸塩の場合には100 mM、および抗体/界面活性剤/リン酸塩の場合には1 mM)。データから、タンパク質(抗体)および界面活性剤の両方を含む組成物中での内毒素の効果的な脱マスキングを1-ドデカノール濃度の調整によって達成できることが明示される。
実施例15: 未知の供給源由来のLPSを含有する抗体溶液のマスキングおよび脱マスキング
脱マスキングが、既知の供給源由来のLPSを含有する溶液から可能であるだけではないことを示すため、本発明者らは、LPSの供給源が未知である、LPS汚染物質を含有する市販の診断用マウスモノクローナル抗体を試験した。さらに、この抗体を、既知の抗体医薬品リツキシマブ(マブセラ(登録商標)、リツキサン(登録商標))の製剤に対応する緩衝液組成物に溶解した。
材料および方法
内毒素汚染物質の判定: pH 6.5のクエン酸塩および塩化ナトリウムを含有する溶液にマウスモノクローナル抗体(MAB 33, Roche Diagnostics)を溶解し、4℃で保存した。クエン酸塩、塩化ナトリウムおよび抗体の終濃度は、それぞれ25 mM、150 mMおよび10 mg/mlであった。抗体の可溶化直後に、EndoZyme(登録商標)およびEndoLISA(登録商標)検出キット(Hyglos GmbH)を用いて内毒素含量を分析した。判定された内毒素含量は、11 EU/mgの抗体であった。
ポリソルベート80を0.07%の終濃度まで添加し、温度を周囲条件(22℃)に上昇させることにより、LPSマスキングを開始した。その後、サンプルのアリコット1 mlを室温で3日間インキュベートして、存在する内毒素がマスキングされるようにした。
脱マスキングは以下のように行った: 脱マスキングは1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ); またはBSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせ; もしくはCaCl2、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせのいずれかの添加によって行った。以下のストック溶液の各々100 μlをサンプル溶液1 mlに順次添加した: CaCl2 (1 M)、BSA (10 mg/ml)、SDS (1%)および1-ドデカノール(100、10または1 mM)。各添加の後に2分間の混合段階を用いて、全てのストック溶液を順次添加した。最後の成分の添加および混合の後、サンプルを室温で少なくとも30分間インキュベートした。
その後、サンプルを内毒素不含水中で10分の1および100分の1希釈し、EndoLISA(登録商標) (Hyglos GmbH)を用い内毒素含量について分析した。LPS回収の割合は、ゼロ時に判定された内毒素含量を基準にして計算した。
結果
表16 (下記)は、マスキング時間、ポリソルベート80の有無および抗体/ポリソルベート80溶液からの脱マスキングに応じた内毒素回収の割合を示す。
(表16)
Figure 2019060882
「脱マスキング」サンプルは抗体を含有していた。
データから、抗体を含有するがポリソルベートを含有しない緩衝溶液は、室温でのインキュベーション3日以内にLPSの40%をマスキングすることが明らかである。しかしながら、ポリソルベート80または抗体およびポリソルベート80のいずれかを含有する緩衝液中でのインキュベーションは、4%未満の内毒素回収率をもたらす。
抗体/界面活性剤サンプルからの脱マスキングにより、1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の使用では45%; BSA (吸着モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせの使用では68%; ならびにCaCl2、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせの使用では179%の回収率が得られる。後者の場合、最良の回収率は1 mM 1-ドデカノールストック溶液を用いて達成される。
本実施例に記述の実験は、存在する場合、天然に存在する内毒素(NOE)が適当な内毒素検出システムによって検出されうることを示す。さらに、これらの実験は、そのようなNOEを本明細書において上述した方法でマスキングできること、すなわちマスキングの危険性が精製された内毒素のみでなくNOEにも当てはまることを示す。そのようなNOEを脱マスキングするための本明細書に記述の本発明の方法の能力は、NOEがマスキングされた状況へのその適用性をさらに実証し、マスキングされたNOEを脱マスキングする本発明の方法のその有効性を証明する。これらの知見は、NOEの存在下で発現されたタンパク質から製造プロセスが開始されることが多く、NOEは望ましくないタンパク質凝集を防止するための界面活性剤の組み込みによってマスキングされるという、業界で一般的な状況に関連する。全体として、ひいては、本実施例において記述される実験の結果は、本発明の方法が、製薬産業において重要な状況の下で内毒素を脱マスキングできることを実証する。
これらのデータから、脱マスキングはLPSの供給源および純度とは無関係であることも明示される。
抗体溶液中でのマスキングの3つの事例(実施例13、14および15)の全てで、マスキングは組成物中の界面活性剤成分に起因するのみでなく、ある程度は抗体自体にも起因することが分かる。最も効率的な脱マスキング手法は、CaCl2、BSA (吸着モジュレータ)、SDS (置換モジュレータ)および1-ドデカノール(破壊かつ再構成モジュレータ)の組み合わせを用いて内毒素を脱マスキングすることである。ここで、タンパク質自体が内毒素マスカとしての役割を果たすリゾチームの場合(上記の実施例7において論じられた)に類推を認めることができる。興味深いことに、全ての場合において、1-ドデカノールの濃度は、効率的な脱マスキングのために最適化されるべきである。
実施例16: 当該の新しい組成物に適用された脱マスキング手法の一般的評価
上記の実施例において示されるように、存在することが疑われるが、しかし組成物中でマスキングされている内毒素を脱マスキングするためにとられる手法の選択は、いくつかの因子に依るであろう。例えば、上記の実施例が示したように、本明細書において上記に定義の、破壊モジュレータと再構成モジュレータの役割を兼ねる単一成分モジュレータを用いて効率的な脱マスキングを達成することが可能なこともある。一方で、場合によっては、内毒素が遊離され、検出されうる凝集形態へ媒介されうるように十分に内毒素/内毒素マスカ複合体を不安定化させ、破壊させるために、どのような方策が必要とされるかに応じて、モジュレータは、2つまたは複数の成分、例えば置換モジュレータおよび/または吸着モジュレータを有するモジュレータシステムでなければならない。
上記の実施例は、本発明の根底にある概念を説明するために既知の制御された溶液状態から出発する。しかしながら、本発明の方法を当該の新しい組成物に適用する現実のシナリオでは、有意義な結果が得られる前に、本発明の方法の手法を最初に評価することが必要である。本実施例では、本発明の方法が当該の新しい組成物に対して修正されうる一般的なスキームを設定して、そのような検証に取り組む。この目的のため、最も適した脱マスキング手法に向けた最初のスクリーニングから始めて、最適な脱マスキング成分濃度の調整のためのその後の改善段階が続けて行われる、反復的な脱マスキング手法が必要である。
所与の組成物の評価プロセスの一般的記述
概して、図12は、新しい未知の組成物について本発明の方法を評価する際に通常とるであろう段階を概略的に提示したスキームを示す。
上記から明らかなように、最初にマスキングされた内毒素の最終的な検出は、この内毒素を安定に結合された(マスキングされた)形態から脱マスキングされた、それゆえ検出可能な凝集形態へ変換する能力に依る。この最終的な変換に関与するモジュレータの成分は、再構成モジュレータである。図12の第1段階は、再構成モジュレータ(例えば1-ドデカノール)の最適濃度を判定する第1段階を特定するという点で、これを反映する。次に段階2では、吸着モジュレータが含まれる場合、このモジュレータの濃度を最適化する。次に段階3では、置換モジュレータが含まれる場合、このモジュレータの濃度を最適化する。
3つの段階の全てが常に必要とされるわけではないことが強調されなければならない。当該の組成物、例えば薬学的組成物が第1段階の後にかなりの量の内毒素を含有することに既に気付いているなら、このことは、内毒素を含まないと考えられていた組成物が実際にはそうではないと結論付けるのに既に十分でありうる。
所与の組成物の評価プロセスの具体的記述
図13は、脱マスキングプロセスを選択かつ最適化するためのストック溶液の組み合わせおよび濃度を示す。脱マスキング手法は、脱マスキングにどの物質または物質の組み合わせが用いられるかに依って、異なる可能性のあるシナリオA、BおよびCに分けられる。脱マスキング手法Aは、1-ドデカノールのみがモジュレータとして用いられる脱マスキング手法を記述している。脱マスキング手法Bは、モジュレータシステムが1-ドデカノールおよびBSAから構成される脱マスキング手法を記述している。脱マスキング手法Cは、モジュレータシステムが1-ドデカノール、BSAおよびSDSから構成され、CaCl2の存在下で行われる脱マスキング手法を記述している。
手順
マスキングされたサンプル1 mlに脱マスキング成分ストック溶液100 μlを添加する。1つの成分の添加後、サンプルを2分間ボルテックスすることにより完全に混合する。その後、次の成分を添加し、混合する。全ての成分の添加およびその後の混合の後、サンプルを室温で30分超の間インキュベートする。その後、適切な内毒素試験法、例えばHyglos GmbHのEndoLISA(登録商標)キットを用い内毒素含量についてサンプルを分析する。
実施例17: 組み換えC因子アッセイ法を用いた脱マスキング内毒素の検出
この実験では、CaCl2、BSA、SDSおよびドデカノールを含む多成分モジュレータを用いた内毒素の脱マスキングの効果を調べる。マスキングされたサンプルおよび脱マスキングされたサンプルの内毒素含量を、Hyglos GmbHのEndoZyme(登録商標)キットを用いて判定した。この実験は、脱マスキングされた内毒素の検出が、異なる検出アッセイ法を用いて達成されうることを示すために行われた。
材料および方法
内毒素(大腸菌O55:B5, Sigma L2637-5MG)を、1×PBS緩衝0.05重量%ポリソルベート80または1×PBS緩衝0.05重量%ポリソルベート20を含有する溶液中で室温にて3日間マスキングした。
脱マスキングは以下のように行った: 脱マスキングはクエン酸ナトリウム、CaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノールの組み合わせによって行った。クエン酸ナトリウム150 μLおよび以下のストック溶液の各々100 μlをサンプル溶液1 mlに添加した: クエン酸ナトリウム(1.375 M pH 7.5)、CaCl2 (1 M)、BSA (10 mg/ml)、SDS (1%)および1-ドデカノール(1 mM)。1-ドデカノールを70% EtOHに可溶化した。別個のマスキング対照では、脱マスキングは行われなかった。
各添加の後に2分間の混合段階を用いて、全てのストック溶液を順次添加した。最後の成分の添加および混合の後、サンプルを室温で少なくとも30分間インキュベートした。
その後、マスキングされたサンプル(マスキング対照)および脱マスキングされたサンプルを、発熱物質除去水中で段階的に10分の1および5分の1希釈した(最終希釈50分の1)。組み換えC因子アッセイ法(EndoZyme(登録商標))を内毒素の検出に用いた。
結果
表17 (下記)は、本実施例において上記で特定された2つのマスキングシステムから回収された内毒素の、組み換えC因子アッセイ法(EndoZyme(登録商標))を用いて測定された、回収率を示す。
(表17)組み換えC因子を用いた脱マスキング内毒素の検出
Figure 2019060882
マスキング対照では、いずれのサンプルにおいても内毒素の回収は示されなかった。ポリソルベート80またはポリソルベート20中での内毒素の脱マスキングでは、陽性対照(発熱物質除去水中での内毒素含量)を基準にして、それぞれ、65%および66%の内毒素回収率が得られた。この結果から、組み換えC因子検出システム(EndoZyme(登録商標))によって検出される、クエン酸ナトリウム、CaCl2、BSA、SDSおよびドデカノールを含む多成分モジュレータを用いた内毒素の効率的な脱マスキングが示唆される。この実験は、脱マスキングされた内毒素の検出が、用いられる内毒素検出システムとは無関係であることを証明する。したがって、脱マスキングされた内毒素は、先の実施例において利用された内毒素検出システムを用いて検出することができるが、しかし先の実施例において用いられたものとは異なる内毒素検出システムを用いて検出することもできる。
実施例18: カブトガニ変形細胞溶解物(LAL)アッセイ法を用いた脱マスキング内毒素の検出
この実験では、組み換えC因子アッセイ法(EndoZyme(登録商標))とは異なる検出アッセイ法、すなわちカブトガニ変形細胞溶解物(LAL)アッセイ法を用いた脱マスキング内毒素の検出を調べる。この実験は、内毒素脱マスキングの検出が、検出アッセイ法に依らないことをさらに裏付けるために行われた。
材料および方法
内毒素(大腸菌055:B5, Sigma L2637-5MG)を、1×PBS緩衝0.05重量%ポリソルベート80または1×PBS緩衝0.05重量%ポリソルベート20を含有する溶液中で室温にて3日間マスキングした。
脱マスキングは以下のように行った: 脱マスキングはクエン酸ナトリウム、CaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノールの組み合わせによって行った。クエン酸ナトリウム150 μLおよび以下のストック溶液の各々100 μlをサンプル溶液1 mlに添加した: クエン酸ナトリウム(1.375 M pH 7.5)、CaCl2 (1 M)、BSA (10 mg/ml)、SDS (1%)および1-ドデカノール(1 mM)。1-ドデカノールを70% EtOHに可溶化した。
各添加の後に2分間の混合段階を用いて、全てのストック溶液を順次添加した。最後の成分の添加および混合の後、サンプルを室温で少なくとも30分間インキュベートした。
その後、マスキングされた(マスキング対照)および脱マスキングされたサンプルを、発熱物質除去水中で段階的に10分の1および5分の1希釈した(最終希釈50分の1)。速度論的なLALに基づく発色アッセイ法(kinetic-QCL(登録商標), Lonza)を内毒素の検出に用いた。マスキング対照は、脱マスキングなしで検出可能な内毒素含量を反映する。別個のマスキング対照では、脱マスキングは行われなかった。
結果
表18 (下記)は、本実施例において上記で特定された2つのマスキングシステムから回収された内毒素の、LALアッセイ法(kinetic QCL(登録商標), Lonza)を用いて測定された、回収率を示す。
(表18)LALアッセイ法を用いた脱マスキング
Figure 2019060882
マスキング対照では、どちらのサンプルにおいても内毒素の回収は示されなかった。ポリソルベート80またはポリソルベート20中での内毒素の脱マスキングでは、陽性対照(発熱物質除去水中での内毒素含量)を基準にして、それぞれ、96%および47%の内毒素回収率が得られた。データから、内毒素の脱マスキングをLAL検出アッセイ法で検出できること、および内毒素脱マスキングの検出が検出アッセイ法に依らないことが明示される。
実施例19: 多成分モジュレータを用いた脱マスキングのためのモジュレータとしてのアルカノール(脂肪族アルコール)のバリエーション
この実験では、さまざまなアルカノールを用いてさまざまな内毒素の脱マスキングを調べる。本実験は、多成分モジュレータにおけるさまざまなアルカノール化合物の脱マスキング効率を調べるために行われた。
材料および方法
大腸菌O55:B5由来内毒素(Sigma L2637-5MG)、ウマ流産菌由来内毒素(Acila 1220302)および肺炎かん菌(K. pneumoniae)由来内毒素(LMU)を、10 mMクエン酸ナトリウムおよび0.05重量%ポリソルベート20を含有する溶液中で室温にて3日間マスキングした。
脱マスキングは以下のように行った: 脱マスキングはクエン酸Na、CaCl2、BSA、SDSおよび1-ドデカノールの組み合わせによって行った。クエン酸ナトリウム150 μLおよび以下のストック溶液の各々100 μlをサンプル溶液1 mlに添加した: クエン酸ナトリウム(1.375 M pH 7.5)、CaCl2 (1 M)、BSA (10 mg/ml)、SDS (1%)およびある濃度の1-ドデカノール。多成分モジュレータシステムにおいて用いられるアルカノールおよびアルカノール混合物をEtOHに可溶化した; 濃度は表19a (下記)に記載されている。別個のマスキング対照では、脱マスキングは行われなかった。
各添加の後に2分間の混合段階を用いて、全てのストック溶液を順次添加した。最後の成分の添加および混合の後、サンプルを室温で少なくとも30分間インキュベートした。
(表19a)
Figure 2019060882
その後、サンプルを内毒素不含水中で10分の1および100分の1希釈し、EndoLISA(登録商標) (Hyglos GmbH)を用い内毒素含量について分析した。LPS回収の割合は、ゼロ時に判定された内毒素含量を基準にして計算した(下記表19bにまとめられている)。
結果
表19b (下記)は、表19aにおいて上記で特定されたさまざまなアルカノール(脂肪族アルコール)またはアルカノール混合物(脂肪族アルコール混合物)を利用するさまざまなマスキング手法による上記マスキングシステムからのマスキング後(マスキング対照)およびEndoLISA(登録商標)アッセイ法(Hyglos)を用いた脱マスキング後の回収率を示す。
(表19b)EndoLISA(登録商標)アッセイ法によって検出されるCa、BSA、SDSおよびさまざまなアルカノールを用いた異なる内毒素の脱マスキング
Figure 2019060882
肺炎かん菌の脱マスキングの場合、CaCl2 150 μLを添加した。
上記の結果は、肺炎かん菌の脱マスキングがオクタノール(75%の回収率)、ドデカノール(147%)、テトラデカノール(94%)およびヘキサデカノール(99%)で達成され、ならびにさまざまな組み合わせのアルカノールで達成されたことを示唆している(例えば、脱マスキング手法7および8を参照のこと)。しかしながら、デカノールによる脱マスキングは効率が悪かった(52%)。ウマ流産菌LPSの脱マスキングは、テトラデカノール(108%)、ヘキサデカノール(82%)、ドデカノール(62%)、またはさまざまな組み合わせのアルカノールを用いて最も効率的であった。大腸菌O55:B5の効果的な脱マスキングがドデカノール(76%)およびテトラドデカノール(71%)の場合に観察された。内毒素の回収は、マスキング対照の場合に観察されなかった。
これらの結果は、最も効率的な脱マスキング(内毒素の性質とは無関係な)が、ドデカノールもしくはテトラデカノールを用いて、またはドデカノールおよびテトラデカノールとさらなるアルカノール(例えばデマスキング7におけるデカノール)との組み合わせを用いて達成されたことを示唆する。これらの結果は、C12、C14および/またはC16脂肪族アルコールを有する全ての多成分モジュレータシステムが、内毒素の効率的な脱マスキングを示したことも示唆する。
効率的な脱マスキングのための脂肪アルコールのアルキル鎖長の範囲は、内毒素供給源に依るように思われる。脱マスキング効率の差異は、内毒素のリピドA部分に存在するβ-ヒドロキシ-脂肪酸のアシル鎖の長さの不均一性にある程度依存しうる。これらのアシル鎖は、細菌種間でおよび細菌種内で、C10からC28までの長さが異なりうる(Endotoxin in health and disease, H. Brade (1999)編, p98 et seq: 「Chemical structure of Lipid A: Recent advances in structural analysis of biologically active molecules」; Marcel Dekker Inc, New York)。しかしながら、最も一般的には、C14およびC16の鎖長を有するβ-ヒドロキシ-脂肪酸が、リピドAのジグルコサミンに付加される。かくして、脱マスキングは、全ての場合において、C12〜C14のアルキル鎖長を有する脂肪アルコールの存在下で最も効率的であるが、内毒素の脱マスキングはC8〜C16範囲の他のアルキル鎖長の場合にも観察される。
実施例20: 単一成分モジュレータを用いた脱マスキングのためのモジュレータとしてのアルカノール(脂肪族アルコール)のバリエーション
この実験は、付加的なモジュレータ成分の非存在下での脱マスキングに及ぼすさまざまなアルカノール(脂肪族アルコール)の効果を調べるために行われた。本実験ではかくして、単一成分モジュレータとしてさまざまなアルカノール(脂肪族アルコール)を用いた内毒素脱マスキングの効率を調べる。
材料および方法
大腸菌O55:B5内毒素(Sigma L2637-5MG)を、10 mMクエン酸ナトリウムおよび0.05重量%ポリソルベート20を含有する溶液中で室温にて3日間マスキングした。
サンプルを脱マスキングするために、サンプル(1 mL)を特定のアルカノール(すなわち脂肪族アルコール) 100 μLと混合した。単一成分モジュレータシステムにおいて用いられるアルカノールをEtOHに可溶化した。濃度を表20a (下記)に示す。
(表20a)アルカノール(脂肪族アルコール)のバリエーション
Figure 2019060882
脱マスキング剤の添加後、サンプルを30分間インキュベートし、発熱物質除去水中で10分の1および100分の1希釈した。内毒素は両方の希釈液で検出され、記載された回収率は両方の希釈液の平均回収率を反映する。マスキング対照は、マスキング後の未処理サンプルを反映し、すなわち溶液は脱マスキングされていない。EndoLISA(登録商標)アッセイ法を内毒素検出のために用いた。
結果
表20b (下記)は、表20aにおいて上記で特定された単一モジュレータシステムを用いるさまざまな脱マスキング手法においてさまざまなアルカノール(脂肪族アルコール)を利用するさまざまな脱マスキング手法により上記マスキングシステムから回収された内毒素の、EndoLISA(登録商標)アッセイ法(Hyglos)を用いて測定された、回収率を示す。
(表20b)さまざまなアルカノールを用いた脱マスキング(EndoLISA(登録商標))
Figure 2019060882
この結果から、ドデカノール(脱マスキング手法1)からなる単一成分モジュレータは大腸菌O55:B5の脱マスキングにおいて最も効率的(56%の回収率)であったが、トリデカノール(脱マスキング手法2)またはテトラデカノール(脱マスキング手法3)からなる単一成分モジュレータは、大腸菌O55:B5の回収率を低下させた(それぞれ41%および22.6%)ことが示唆される。予想通り、マスキング対照は内毒素の回収を示さなかった。要約すると、データから、単一成分モジュレータシステムとして用いられた場合、大腸菌O55:B5の脱マスキングのために最も効率的なアルカノール(脂肪族アルコール)はドデカノールであり、続いてトリデカノールおよびテトラデカノールであることが実証される。

Claims (20)

  1. タンパク質、主鎖としてC8〜C16を有する脂肪族化合物およびLPSを含む水性組成物であって、該脂肪族化合物がアルカノールである、水性組成物。
  2. アルカノールが非分枝1-アルカノール、好ましくは1-ドデカノールである、請求項1記載の水性組成物。
  3. アルカノールが、メチル、エチル、プロピルおよびブチル基から選択される主鎖中の少なくとも1つの置換を有する分枝化合物である、請求項1記載の水性組成物。
  4. 陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびそれらの任意の組み合わせから選択される界面活性剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の水性組成物。
  5. 陰イオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩、好ましくはラウリル硫酸アンモニウムまたはラウリル硫酸ナトリウム(SDS); アルキル-エーテル硫酸塩、好ましくはラウレス硫酸ナトリウムまたはミレス硫酸ナトリウム; コレステロール硫酸; スルホネート、好ましくはドデシルベンゼンスルホネート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムまたはキシレンスルホネート; アルキルスルホコハク酸塩、好ましくはスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム; スルホキシド、好ましくはドデシルメチルスルホキシド; リン酸塩、好ましくはトリラウレス-4リン酸塩; およびカルボン酸塩、好ましくはステアリン酸ナトリウムまたはラウロイルサルコシン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項4記載の水性組成物。
  6. 陽イオン性界面活性剤が、第一級アミン; 第二級アミン; 第三級アミン; およびアルキルトリメチルアンモニウム塩(好ましくはセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB); またはセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC))のような第四アンモニウム陽イオン; 塩化セチルピリジニウム(CPC); 第四級アンモニウム界面活性剤、好ましくはトリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート(クオタニウム52); ならびに四級化ヒドロキシエチルセルロースエトキシレート(ポリクオタニウム-10)からなる群より選択される、請求項4記載の水性組成物。
  7. 非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(ポリソルベート)、好ましくはポリソルベート20 (Tween-20)、ポリソルベート40、ポリソルベート60またはポリソルベート80 (Tween-80); ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル; ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル; グルコシドアルキルエーテル; ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル; ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル; グリセロールアルキルエステル; ソルビタンアルキルエステル; ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブロック共重合体; コカミドMEA; ステロール、好ましくはコレステロール; シクロデキストリン; ポロキサマー、好ましくはプルロニックブロック重合体; ならびにコカミドDEAからなる群より選択される、請求項4記載の水性組成物。
  8. 両性界面活性剤が、CHAPS (3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート); スルタイン、好ましくはコカミドプロピルヒドロキシスルタイン; ベタイン、好ましくはコカミドプロピルベタイン; アミノオキシド(amino oxide)、好ましくはパルミタミンオキシド、ラウリルアミンオキシド、および式中R3がC8〜C18アルキル、C8〜C18アルケニル、C8〜C18アルキニルである、一般式R3N+O-のアミンオキシドまたはレシチンからなる群より選択される、請求項4記載の水性組成物。
  9. 界面活性剤がポリソルベート20 (Tween 20)、ポリソルベート80 (Tween 80)、ポロキサマー188 (プルロニックF68)、オクトキシノール9 (トライトンX-100)、ラウリルアミンオキシド、トリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-オクタデシル-アンモニウムホスフェート(クオタニウム52)、トリラウレス-4リン酸塩およびステアリン酸ナトリウムから選択される、請求項4〜8のいずれか一項記載の水性組成物。
  10. タンパク質が、抗体、抗体断片、ホルモン、酵素、融合タンパク質、タンパク質結合体およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1〜9のいずれか一項記載の水性組成物。
  11. 抗体断片が、Fab、Fab'、F(ab')2およびFv、一本鎖抗体ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項10記載の水性組成物。
  12. アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンおよび/またはオボアルブミンであるさらなるタンパク質を含有する、請求項1〜11のいずれか一項記載の水性組成物。
  13. カオトロピック剤、陽イオンまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の水性組成物。
  14. カオトロピック剤が、尿素、塩化グアニジン、ブタノール、エタノール、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノールおよびチオ尿素から選択される、請求項13記載の水性組成物。
  15. 陽イオンが二価陽イオンである、請求項13または14記載の水性組成物。
  16. 二価陽イオンがCa2+、Mg2+、Sr2+およびZn2+から選択される、請求項15記載の水性組成物。
  17. さらなるタンパク質が0.1〜20 mg/ml、好ましくは1〜10 mg/mlの濃度で存在し; 脂肪族化合物が0.01〜100 mM、好ましくは0.1〜10 mMの濃度で存在し; 界面活性剤が0.001〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の濃度で存在し; かつ二価陽イオンが1〜400 mM、好ましくは10〜200 mM、より好ましくは50〜100 mMの濃度で存在する、請求項1〜16のいずれか一項記載の水性組成物。
  18. 1 mM〜1 M、好ましくは10 mM〜200 mMの濃度でカオトロピック剤をさらに含む、請求項17記載の水性組成物。
  19. pHがpH 2〜12、好ましくはpH 5〜10の範囲である、請求項1〜18のいずれか一項記載の水性組成物。
  20. C因子タンパク質、好ましくは組み換えC因子タンパク質をさらに含有する、請求項1〜19のいずれか一項記載の水性組成物。
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