JP2019060866A - 液状医薬組成物の体内動態を予測する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物aを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータを予測する方法;
(1)液状組成物aをイオン交換樹脂と接触させ、その溶出液を回収する工程;
(2)緩衝液bをイオン交換樹脂と接触させ、その溶出液を回収する一連の工程を単位工程として、単位工程を1回又は2回以上繰り返し実施する工程;
(3)回収された各溶出液における成分1を測定する工程;
(4)回収された各溶出液の中で成分1量が最大である溶出液を特定又は推定する、及び/又は、成分1の溶出が最大となるまでに溶出した各溶出液の総量を特定又は推定する工程。
[2]
薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的生物学的利用率である、前記[1]に記載の方法。
[3]
イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
(2)においてイオン交換樹脂に接触させる緩衝液bの容量が、(1)においてイオン交換樹脂に接触させる液状組成物aの容量と等量である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
哺乳動物がヒトである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物であり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータがAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)であり、さらに、(5)の工程を含む、前記[6]に記載の予測方法;
(5)(4)で推定された成分1の溶出が最大となるまでに溶出した溶出液量(成分1溶出容量)が0.8〜1.2(mL)の場合には、AUCは390〜560(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出容量が1.2(mL)の場合には、AUCは230〜280(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出容量が1.2〜1.6(mL)の場合には、AUCは190〜380(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。
[8]
液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物であり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータが絶対的生物学的利用率であり、さらに、(5)の工程を含む、前記[6]に記載の予測方法;
(5)(4)で推定された成分1の溶出が最大となるまでに溶出した溶出液量(成分1溶出容量)が0.8〜1.2(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は110〜150(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出容量が1.2(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は約70(%)と予測し、成分1溶出容量が1.2〜1.6(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は60〜100(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。
[9]
以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物1、液状組成物2、・・・・・、液状組成物n(ただし、nは2以上の整数)それぞれを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータの優劣を予測する方法;
(1)前記液状組成物それぞれをカラム法によるイオン交換クロマトグラフィーに適用し、成分1溶出時間及び/又は成分1溶出液量を決定又は推定する工程;
(2)成分1溶出時間又は成分1溶出液量がより短い又は少ない液状組成物は、同組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータがより優れている、と予測する工程。
[10]
以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物1、液状組成物2、・・・・・、液状組成物n(ただし、nは2以上の整数)それぞれを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータの優劣を予測する方法;
(1)前記液状組成物それぞれをバッチ法によるイオン交換クロマトグラフィーに適用し、成分1回収率(%)を算出する工程;
(2)成分1回収率(%)がより大きい液状組成物は、同組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータがより優れている、と予測する工程。
[11]
薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的生物学的利用率である、前記[9]又は[10]に記載の方法。
[12]
イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、前記[9]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
哺乳動物がヒトである、前記[9]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、前記[9]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物aを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータを予測する方法;
(1)液状組成物aとイオン交換樹脂を懸濁させ、その上清を回収する工程;
(2)成分1の回収率(%)を算出する工程。
[16]
薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的生物学的利用率である、前記[15]に記載の方法。
[17]
イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、前記[15]又は[16]に記載の方法。
[18]
哺乳動物がヒトである、前記[15]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、前記[15]〜[18]のいずれかに記載の方法。
[20]
液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物であり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータがAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)であり、さらに、(3)の工程を含む、前記[19]に記載の予測方法;
(3)回収率が80%以上である場合、AUCは390〜560(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、回収率が40〜80%未満である場合、AUCは190〜380(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。
[21]
液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物であり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータが絶対的生物学的利用率であり、さらに、(3)の工程を含む、前記[19]に記載の予測方法;
(3)回収率が80%以上である場合、絶対的生物学的利用率は110〜150(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、回収率が40〜80%未満である場合、絶対的生物学的利用率は60〜100(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。
[22]
テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状組成物をヒトに皮下投与して得られる成分1の生物学的利用率及び/又はAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を向上させる方法であって、同組成物における成分1が示す有効表面電荷を減少させる手段を含む方法。
[23]
テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状組成物をヒトに皮下投与して得られる成分1の生物学的利用率及び/又はAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を向上させる方法であって、同組成物に緩衝剤を含ませないことを特徴とする方法。
[24]
テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する皮下投与用液状組成物の調製方法であって、前記[1]〜[23]のいずれかに記載の方法を実施する工程を含む、調製方法。
[25]
テリパラチド又はその塩(成分1)を含有するヒト皮下投与用液状医薬組成物(ただし、凍結乾燥組成物からの再構成されてなる液状医薬組成物は除く)であって、成分1の有効表面電荷が、以下の条件1)〜条件3)全てを満たすバッチ法による陽イオン交換クロマトグラフィーを適用した際に得られる成分1の回収率が50%以上となるように調節されていることを特徴とする、ヒト皮下投与用液状医薬組成物;
条件1)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交換樹脂である;
条件2)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂の洗浄及び/又は平衡化に用いる緩衝液がPBS(pH7.4)である;
条件3)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂と接触させるヒト皮下投与用液状医薬組成物の容量比率が1:50〜100である。
[26]
pHが4.2以上である、前記[25]に記載のヒト皮下投与用液状医薬組成物。
[27]
テリパラチド又はその塩(成分1)、及び、L−メチオニン、塩化ナトリウム、L−アルギニン又はその塩、及び、シュークロースからなる群より選択される1以上の成分(成分2)を含有する液状組成物であって、pHが3.0〜5.0である液状組成物。
[28]
さらに、酢酸緩衝剤を含有する、前記[27]に記載の液状組成物。
[29]
成分1:成分2が1:0.5〜50(質量比)である、前記[27]又は[28]に記載の液状組成物。
[30]
pHが3.0〜5.0である条件下、テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状組成物において、L−メチオニン、塩化ナトリウム、L−アルギニン又はその塩、及び、シュークロースからなる群より選択される1以上の成分(成分2)を含有せしめる工程を含む、成分1のゼータ電位の絶対値を低下させる方法。
(1)薬効成分(成分1)
本発明において、薬効成分は特に限定されず、ヒトを含む哺乳動物などに対して、治療、予防、診断等に有効な成分であることができる。薬効成分の構造も特に限定されず、低分子化合物、ペプチド、抗体、核酸化合物、多糖類などであることができる。薬効成分として、PTH(1−84)、PTH(1−84)の部分ペプチド又は類縁体であってPTH(1−84)の同等又は類似の生理活性を有する成分であることが好ましく、テリパラチド又はその塩であることがさらに好ましい。
液状組成物の溶媒は、水性溶媒でも非水性溶媒でもよいが、水性溶媒であることが好ましい。水性溶媒は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、無機塩・有機塩、緩衝剤、添加剤等の各種の成分を含有していてもよい。このような成分として、例えば、二糖類(例:ショ糖)、無機塩である塩酸塩又はナトリウム塩(例:塩化ナトリウム)、中性アミノ酸(例:L−メチオニン)、及び、糖アルコール(例:D−マンニトール)を挙げることができる。水性溶媒として、注射用水や生理的食塩水を好ましく例示できる。
本発明は、一態様として、成分1を含む1又は2種以上の液状組成物をイオン交換クロマトグラフィーに適用して得られる成分1の溶出結果に基づいて、当該各組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータおよび/またはその優劣を予測する方法を提供する。
または、本発明は、一態様として、成分1を含有する1又は2種以上の液状組成物をイオン交換クロマトグラフィーに適用して得られる成分1の溶出結果に基づいて、当該各組成物を評価又はスクリーニングする方法を提供する。
本発明において、クロマトグラフィーの種類は特に限定されないが、カラム法やバッチ法であることが好ましい。カラム法とは、イオン交換樹脂を充填したカラムに対して試料を通じる方法であり、バッチ法とは、カラム充填されていないイオン交換樹脂に対して試料を接触させ、次いで、溶液とイオン交換樹脂を分離する方法である。クロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーであってもよく、陰イオン交換クロマトグラフィーであってもよいが、陽イオン交換クロマトグラフィーであることが好ましい。
陰イオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂でも、弱塩基性陰イオン交換樹脂でもよく、例えば、官能基として、トリメチルアンモニウム基、ジメチルエタノールアンモニウム基、一〜二級アミノ基等を有し、母体構造(担体)として、スチレン系やアクリル系などを有する樹脂であることができる。陰イオン交換樹脂として、強塩基性陰イオン交換樹脂を好ましく例示できる。
クロマトグラフィーに供される成分1含有液状組成物(試料)は、1又は2種類以上の成分1含有液状組成物であることができる。例えば、成分1の濃度、pH、各種添加剤などが互いに異なる複数種類の成分1含有液状医薬組成物をクロマトグラフィーに供し得る。クロマトグラフィーに2種類以上の成分1含有液状組成物を供する場合には、それぞれの組成物を分けてクロマトグラフィーに供することが好ましい。
前述の通り、クロマトグラフィーは、例えば、カラムクロマトグラフィー(カラム法によるクロマトグラフィー)であってもよく、バッチクロマトグラフィー(バッチ法によるクロマトグラフィー)であってもよい。
カラムクロマトグラフィーに成分1含有液状組成物を適用する場合の工程として、例えば、1)イオン交換樹脂の緩衝液による平衡化、2)イオン交換樹脂と成分1含有液状組成物の接触、3)溶出、4)成分1量の測定、5)成分1溶出時間/成分1溶出液量の決定又は推定、といった手順を例示することができる。
前述の方法により緩衝液を用いてイオン交換樹脂を平衡化し得る。
イオン交換樹脂と成分1含有液状組成物の接触前に、成分1含有液状組成物をイオン交換樹脂の平衡化に用いた緩衝液で透析等して組成物中の成分1以外の成分や溶媒を緩衝液で置き換えることも可能である。ただし、前述のように、成分1の濃度、pH、各種添加剤などが互いに異なる複数種類の成分1含有液状医薬組成物をクロマトグラフィーに供する場合には、このような置き換え処理を実施しないことが好ましい。接触させる樹脂と組成物の容量比率は特に限定されないが、樹脂容量:組成物容量=1:0.1〜100であることができ、1:0.5〜50、1:0.8〜8、1:0.9〜3であることが好ましく、あるいは、1:0.5〜1(すなわち、接触させる組成物の液量を樹脂容量の半量から同量とする。)こともでき、中でも、1:0.5、すなわち接触させる組成物の液量を樹脂容量の半量とすることが最も好ましい。
イオン交換樹脂と成分1含有液状組成物の接触後に成分1を含有する又は含有しない溶液が溶出し得る。その溶出前に又は後に溶出用緩衝液をイオン交換樹脂と接触させ、その後に、成分1を含有する又は含有しない溶液が溶出し得る。ここでの溶出は、このような全ての溶出態様を包含し得る。
回収した各溶出液に含まれる成分1量/濃度を測定する方法は特に限定されず、生理活性測定法、吸光光度法、免疫学的測定法など自体公知の方法をもって測定することができる。
成分1溶出時間は、カラムを素通りした溶出液の溶出時間をゼロとし、成分1のピーク(最大量/最大濃度)が溶出するまでに経過した時間であることができる。例えば、緩衝液の送液用ポンプ、成分1含有液状組成物である試料を注入するインジェクタ、イオン交換樹脂が充填されているカラム、及び、カラムから溶出した成分を検出する検出器からなるシステムを本発明において利用することによって、成分1溶出時間を決定又は推定し得る。
バッチクロマトグラフィーに成分1含有液状組成物を適用する場合の工程として、例えば、1)陽イオン交換樹脂の緩衝液による平衡化、2)イオン交換樹脂と成分1含有液状組成物(試料)の懸濁、3)上清の回収、4)成分1量の測定、5)成分1回収率の算出、といった手順を例示することができる。
前述の方法によりイオン交換樹脂を平衡化することができる。
懸濁の方法は特に限定されないが、一定時間(1分〜30分程度)手やシェーカーなどで撹拌させて懸濁させ得る。懸濁させる樹脂と組成物の容量比率は特に限定されないが、樹脂用量:組成物用量=1:1〜200であることができ、1:20〜150、1:30〜120、1:40〜110、1:50〜100、又は、1:60〜70であることが好ましい。
前記懸濁液が樹脂と溶液に概ね分離するまで待って、上清を回収することができる。あるいは、懸濁液を濾過して樹脂と溶液を分離させ得る。
前述の成分1量測定法により回収液中の成分1量(成分1の溶出結果)を測定することができる。
成分1回収率は、クロマトグラフィーに適用された成分1含有液状組成物(すなわち、イオン交換樹脂と懸濁させた成分1含有液状組成物の試料)に含まれる成分1の量をaとし、回収液に含まれる成分1の含有量をbとすると、(b/a)×100(%)として、算出され得る。
1又は2種以上の成分1含有液状組成物をそれぞれクロマトグラフィーに適用して得られた成分1の溶出結果に基づいて、当該各組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータおよび/またはその優劣を予測し得る。または、同溶出結果に基づいて、当該各組成物を評価又はスクリーニングし得る。
成分1溶出液量が0.8〜1.2(mL)である場合、AUCは390〜560(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出液量が1.2(mL)である場合、AUCは230〜280(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、及び、成分1溶出液量が1.2〜1.6(mL)である場合、AUCは190〜380(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する。
成分1溶出液量が0.8〜1.2(mL)である場合、絶対的生物学的利用率は110〜150(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出液量が1.2(mL)である場合、絶対的生物学的利用率は約70%であると予測し、成分1溶出液量が1.2〜1.6(mL)である場合、絶対的生物学的利用率は60〜100%、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する。
成分1回収率が80%以上である場合、AUCは390〜560(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1回収率が40〜80%未満である場合、AUCは190〜380pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する。
成分1回収率が80%以上である場合、絶対的生物学的利用率は110〜150(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1回収率が40〜80%未満である場合、絶対的生物学的利用率は60〜100%、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する。
本発明の一態様は、成分1を含有する液状組成物における成分1が示す有効表面電荷を減少させる工程を含む、同組成物の処理又は調製法を提供する。
成分1は、多種類のイオン性のアミノ酸残基を含み、正の電荷と負の電荷の両方を分子表面に持ち得る。成分1が示す有効表面電荷は、このような分子表面に存在する電荷の総和として理解され得る。アミノ酸の荷電状態はpHによって変化することから、成分1の有効表面電荷もpHによって変動する。
成分1が示す有効表面電荷を減少させる手段は特に限定されないが、例えば、成分1を含有するpHを大きくすることによって有効表面電荷は減少する。pHの範囲は特に限定されないが、pHを4.2以上、4.5以上、又は、4.6以上とする手段であることができ、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、又は、4.7以下とする手段であることができる。
ここで緩衝剤の種類は特に問わないが、例えば、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、ホウ酸、リン酸、炭酸及びその塩を挙げることができる。なお、緩衝剤が液状医薬組成物に微量含まれていたとしても、成分1の分解などに起因する経時的なpH変動を抑制できない場合には、緩衝剤は液状医薬組成物に含まれていないと見做し得る。
本発明に係る液状医薬組成物として、成分1を含有するヒト皮下投与用液状医薬組成物であって、成分1の有効表面電荷が、バッチ法による陽イオン交換クロマトグラフィーを適用した際に得られる成分1の回収率が50%以上、より好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上となるように調節されていることを特徴とする、ヒト皮下投与用液状医薬組成物を挙げることができる。ここで、成分1の回収率の上限は、特に限定されないが、理論上は、100%となる。
ゼータ電位とは、溶液中に存在する微粒子の表面電荷として理解されており、より正確には、溶液中に存在する微粒子のまわりに形成される電気二重層中のすべり面の電位として定義される。また、一般的には、高いゼータ電位(負又は正)を有するコロイドは電気的に安定化されており、低いゼータ電位を有するコロイドは互いの反発力が弱くその結果凝集する傾向が高い。
(1)処方1〜8:
下記表4に従って処方1〜8を調製した。
各処方の組成は表中「最終含有量」欄に記載の通りである。
市販のテリパラチド製剤(「テリボン皮下注用56.5μg」旭化成ファーマ社製;非特許文献1)に日局生理食塩液0.45mLを加え溶解して得られる薬液をシリンジで0.2mL取り、処方9を調製し、処方9を充填したシリンジを処方9製剤として利用した。なお、処方9は、その容量が0.2mLであり、1回当たりの投与量としてテリパラチド酢酸塩をテリパラチド換算で28.2μg含有する処方である。
市販のテリパラチド製剤(「テリボン皮下注用56.5μg」旭化成ファーマ社製;非特許文献1)に日局生理食塩液1.0mLを加え溶解して得られる処方10を調製し、処方10を充填したシリンジを処方10製剤として利用した。なお、処方10は、その容量が0.89mLであり、1回当たりの投与量としてテリパラチド酢酸塩をテリパラチド換算で63.5μg含有する処方である。
下記表5に従って、処方11を調製した。
下記表6に従って、処方12〜15を調製した。
各処方の組成は表中「最終含有量」欄に記載の通りである。
下記表7に従って、処方16〜23を調製した。
下記表8に従って処方24〜30を調製した。
下記表9に従って、処方31〜32を調製した。
各処方の具体的調製法は次の通りである。
下記表10に従って処方33〜40を調製した。
(1)試験1:
(1−1)方法:
アニオン樹脂であるTOYOPEARL(登録商標)SP-650Mを約0.8mL採取し、0.8mLのエンプティスピンカラムに充填した。その後、PBS(pH7.4)にて樹脂の平衡化を実施した。そして、前述の処方12〜15、処方9、及び処方11それぞれを0.8mL滴下し、溶出液を回収した。そして、PBS(pH7.4)を0.8mLずつ滴下しては回収する作業を繰り返した。回収した各薬液に含まれるテリパラチド含量をHPLCにより測定した。
(2−1)方法:
アニオン樹脂であるTOYOPEARL(登録商標)SP-650Mを約0.8mL採取し、0.8mLのエンプティスピンカラムに充填した。その後、PBS(pH7.4)にて樹脂の平衡化を実施した。そして、前述の処方1〜8、処方9、及び処方11それぞれを0.4mL滴下し、溶出液を回収した。そして、PBS(pH7.4)を0.4mLずつ滴下しては回収する作業を繰り返した。回収した各薬液に含まれるテリパラチド含量をHPLCにより測定した。
(1)方法:
アニオン樹脂であるTOYOPEARL(登録商標)SP−650Mを約0.015mLマイクロチューブに採取し、PBS(pH7.4)にて樹脂の洗浄を行った。その後、処方1〜9、及び11をそれぞれ1mLマイクロチューブに添加し、樹脂と懸濁させた後に、上清のみを回収し、HPLCによりテリパラチドの回収率を測定した。
(1)試験1:
(1−1)方法:
前述の処方24〜32それぞれを用いてゼータ電位評価試験を実施した。
(2−1)方法:
前述の処方16〜23を用いてゼータ電位評価試験を実施した。具体的には、自体公知の電気泳動光散乱測定法によって各処方に分散する帯電粒子のゼータ電位を測定した。測定装置として、動的光散乱測定装置(Zetasizer Nano ZS,Malvern Instruments Ltd)を用いた。
(1)ヒト薬物動態試験(1):
(1−1)方法:
前述の処方10〜11製剤を用いてヒト薬物動態試験(1)を実施した。
(ヒト薬物動態試験 試験(2)におけるAUClastも同一定義)
AUCinf = 線形台形法 (linear trapezoidal rule) による無限大時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積
(ヒト薬物動態試験 試験(2)におけるAUCinfも同一定義)
Cmax = 最高血漿中濃度
(ヒト薬物動態試験 試験(2)におけるCmaxも同一定義)
(2−1)方法:
前述の処方33〜40、及び、処方10それぞれを用いてヒト薬物動態試験(2)を実施した。
(1)方法:
前述の処方12〜15それぞれを用いてラット薬物動態試験を実施した。
Claims (30)
- 以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物aを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータを予測する方法;
(1)液状組成物aをイオン交換樹脂と接触させ、その溶出液を回収する工程;
(2)緩衝液bをイオン交換樹脂と接触させ、その溶出液を回収する一連の工程を単位工程として、単位工程を1回又は2回以上繰り返し実施する工程;
(3)回収された各溶出液における成分1を測定する工程;
(4)回収された各溶出液の中で成分1量が最大である溶出液を特定又は推定する、及び/又は、成分1の溶出が最大となるまでに溶出した各溶出液の総量を特定又は推定する工程。 - 薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的生物学的利用率である、請求項1に記載の方法。
- イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、請求項1又は2に記載の方法。
- (2)においてイオン交換樹脂に接触させる緩衝液bの容量が、(1)においてイオン交換樹脂に接触させる液状組成物aの容量と等量である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物であり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータがAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)であり、さらに、(5)の工程を含む、請求項6に記載の予測方法;
(5)(4)で推定された成分1の溶出が最大となるまでに溶出した溶出液量(成分1溶出容量)が0.8〜1.2(mL)の場合には、AUCは390〜560(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出容量が1.2(mL)の場合には、AUCは230〜280(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出容量が1.2〜1.6(mL)の場合には、AUCは190〜380(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。 - 液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物であり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータが絶対的生物学的利用率であり、さらに、(5)の工程を含む、請求項6に記載の予測方法;
(5)(4)で推定された成分1の溶出が最大となるまでに溶出した溶出液量(成分1溶出容量)が0.8〜1.2(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は110〜150(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出容量が1.2(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は約70(%)と予測し、成分1溶出容量が1.2〜1.6(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は60〜100(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。 - 以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物1、液状組成物2、・・・・・、液状組成物n(ただし、nは2以上の整数)それぞれを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータの優劣を予測する方法;
(1)前記液状組成物それぞれをカラム法によるイオン交換クロマトグラフィーに適用し、成分1溶出時間及び/又は成分1溶出液量を決定又は推定する工程;
(2)成分1溶出時間又は成分1溶出液量がより短い又は少ない液状組成物は、同組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータがより優れている、と予測する工程。 - 以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物1、液状組成物2、・・・・・、液状組成物n(ただし、nは2以上の整数)それぞれを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータの優劣を予測する方法;
(1)前記液状組成物それぞれをバッチ法によるイオン交換クロマトグラフィーに適用し、成分1回収率(%)を算出する工程;
(2)成分1回収率(%)がより大きい液状組成物は、同組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータがより優れている、と予測する工程。 - 薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的生物学的利用率である、請求項9又は10に記載の方法。
- イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物aを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータを予測する方法;
(1)液状組成物aとイオン交換樹脂を懸濁させ、その上清を回収する工程
(2)成分1の回収率(%)を算出する工程。 - 薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的生物学的利用率である、請求項15に記載の方法。
- イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、請求項15又は16に記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
- 液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物であり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータがAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)であり、さらに、(3)の工程を含む、請求項19に記載の予測方法;
(3)回収率が80%以上である場合、AUCは390〜560(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、回収率が40〜80%未満である場合、AUCは190〜380(pg・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。 - 液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物であり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータが絶対的生物学的利用率であり、さらに、(3)の工程を含む、請求項19に記載の予測方法;
(3)回収率が80%以上である場合、絶対的生物学的利用率は110〜150(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、回収率が40〜80%未満である場合、絶対的生物学的利用率は60〜100(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。 - テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状組成物をヒトに皮下投与して得られる成分1の生物学的利用率及び/又はAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を向上させる方法であって、同組成物における成分1が示す有効表面電荷を減少させる手段を含む方法。
- テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状組成物をヒトに皮下投与して得られる成分1の生物学的利用率及び/又はAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を向上させる方法であって、同組成物に緩衝剤を含ませないことを特徴とする方法。
- テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する皮下投与用液状組成物の調製方法であって、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法を実施する工程を含む、調製方法。
- テリパラチド又はその塩(成分1)を含有するヒト皮下投与用液状医薬組成物(ただし、凍結乾燥組成物からの再構成されてなる液状医薬組成物は除く)であって、成分1の有効表面電荷が、以下の条件1)〜条件3)全てを満たすバッチ法による陽イオン交換クロマトグラフィーを適用した際に得られる成分1の回収率が50%以上となるように調節されていることを特徴とする、ヒト皮下投与用液状医薬組成物;
条件1)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交換樹脂である;
条件2)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂の洗浄及び/又は平衡化に用いる緩衝液がPBS(pH7.4)である;
条件3)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂と接触させるヒト皮下投与用液状医薬組成物の容量比率が1:50〜100である。 - pHが4.2以上である、請求項25に記載のヒト皮下投与用液状医薬組成物。
- テリパラチド又はその塩(成分1)、及び、メチオニン、塩化ナトリウム、アルギニン又はその塩、及び、シュークロースからなる群より選択される1以上の成分(成分2)を含有する液状組成物であって、pHが3.0〜5.0である液状組成物。
- さらに、酢酸緩衝剤を含有する、請求項27に記載の液状組成物。
- 成分1:成分2が1:0.5〜50(質量比)である、請求項27又は28に記載の液状組成物。
- pHが3.0〜5.0である条件下、テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状組成物において、メチオニン、塩化ナトリウム、アルギニン又はその塩、及び、シュークロースからなる群より選択される1以上の成分(成分2)を含有せしめる工程を含む、成分1のゼータ電位の絶対値を低下させる方法。
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