JP2020111600A - 液状医薬組成物の体内動態を予測する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ヒトでの薬物の吸収性が予測することができれば非常に有益である(非特許文献6など)
。また、生体分子ゼータ電位は、荷電表面との静電的相互作用の程度の1つの指標である
ことが知られている(非特許文献7)。
際に得られる成分1の体内動態を予測又は評価する方法を提供することである。また、成
分1を含有する液状組成物を哺乳動物に皮下投与した際に得られる薬物動態学的パラメー
タを良好にするための、液状組成物に対する処理や調製法を提供することである。さらに
、哺乳動物に皮下投与した際に優れた薬物動態学的パラメータを示す、成分1を含有する
液状組成物を提供することである。さらには、成分1を含有する液状組成物における成分
1のゼータ電位の絶対値を低下させる方法やゼータ電位の絶対値が低下した成分1を含む
液状組成物を提供することである。
トグラフィーに適用して得られる成分1の溶出結果に基づいて、当該各組成物を哺乳動物
に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータおよび/またはその優劣を予測
する方法である。本方法を実施することにより、実験動物を用いた試験や臨床試験など負
荷やコストの高い試験を実施することなく、同組成物が示す体内動態を予測し得る。
トグラフィーに適用して得られる成分1の溶出結果に基づいて、当該各組成物を評価又は
スクリーニングする方法である。本方法は、実験動物を用いた試験や臨床試験などと比べ
て負荷やコストが低くかつ簡便に薬剤の候補品等を評価又は選抜等し得る。
減少させる工程を含む、同組成物の処理又は調製法である。また、本発明の一態様は、成
分1を含有する液状組成物に緩衝剤を含ませないことを特徴とする、同組成物の処理又は
調製法である。これらの方法を実施することにより、同組成物を哺乳動物に皮下投与して
得られる成分1の薬物動態学的パラメータを良好にし、又は、良好な組成物を調製するこ
とができる。
らに、本発明の一態様は、緩衝剤を含有せず、成分1を含有する、液状組成物である。こ
れらの組成物は、同組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラ
メータが優れている。
対値を低下させる方法、ゼータ電位の絶対値が低下した液状組成物の調製法、及び、ゼー
タ電位の絶対値が低下した液状組成物である。本液状組成物は、例えば、溶液中の成分1
の吸収・分離プロセスに対してゼータ電位が与える影響評価などに関して重要な示唆を与
えると考えられる。
[1]
以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物aを哺乳動物に皮下投与
して得られる成分1の薬物動態学的パラメータを予測する方法;
(1)液状組成物aをイオン交換樹脂と接触させ、その溶出液を回収する工程;
(2)緩衝液bをイオン交換樹脂と接触させ、その溶出液を回収する一連の工程を単位工
程として、単位工程を1回又は2回以上繰り返し実施する工程;
(3)回収された各溶出液における成分1を測定する工程;
(4)回収された各溶出液の中で成分1量が最大である溶出液を特定又は推定する、及び
/又は、成分1の溶出が最大となるまでに溶出した各溶出液の総量を特定又は推定する工
程。
[2]
薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的
生物学的利用率である、前記[1]に記載の方法。
[3]
イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
(2)においてイオン交換樹脂に接触させる緩衝液bの容量が、(1)においてイオン
交換樹脂に接触させる液状組成物aの容量と等量である、前記[1]〜[3]のいずれか
に記載の方法。
[5]
哺乳動物がヒトである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、前記[1]〜[5]のいずれか
に記載の方法。
[7]
液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物で
あり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータがAUC(血漿中濃度−時間曲線
下面積)であり、さらに、(5)の工程を含む、前記[6]に記載の予測方法;
(5)(4)で推定された成分1の溶出が最大となるまでに溶出した溶出液量(成分1溶
出容量)が0.8〜1.2(mL)の場合には、AUCは390〜560(pg・hr/
mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出
容量が1.2(mL)の場合には、AUCは230〜280(pg・hr/mL)、その
部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出容量が1.2
〜1.6(mL)の場合には、AUCは190〜380(pg・hr/mL)、その部分
範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。
[8]
液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物で
あり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータが絶対的生物学的利用率であり、
さらに、(5)の工程を含む、前記[6]に記載の予測方法;
(5)(4)で推定された成分1の溶出が最大となるまでに溶出した溶出液量(成分1溶
出容量)が0.8〜1.2(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は110〜150
(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1溶出
容量が1.2(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は約70(%)と予測し、成分
1溶出容量が1.2〜1.6(mL)の場合には、絶対的生物学的利用率は60〜100
(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する工程。
[9]
以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物1、液状組成物2、・・
・・・、液状組成物n(ただし、nは2以上の整数)それぞれを哺乳動物に皮下投与して
得られる成分1の薬物動態学的パラメータの優劣を予測する方法;
(1)前記液状組成物それぞれをカラム法によるイオン交換クロマトグラフィーに適用し
、成分1溶出時間及び/又は成分1溶出液量を決定又は推定する工程;
(2)成分1溶出時間又は成分1溶出液量がより短い又は少ない液状組成物は、同組成物
を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータがより優れている、
と予測する工程。
[10]
以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物1、液状組成物2、・・
・・・、液状組成物n(ただし、nは2以上の整数)それぞれを哺乳動物に皮下投与して
得られる成分1の薬物動態学的パラメータの優劣を予測する方法;
(1)前記液状組成物それぞれをバッチ法によるイオン交換クロマトグラフィーに適用し
、成分1回収率(%)を算出する工程;
(2)成分1回収率(%)がより大きい液状組成物は、同組成物を哺乳動物に皮下投与し
て得られる成分1の薬物動態学的パラメータがより優れている、と予測する工程。
[11]
薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的
生物学的利用率である、前記[9]又は[10]に記載の方法。
[12]
イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、前記[9]〜[11]のいずれかに記載の
方法。
[13]
哺乳動物がヒトである、前記[9]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、前記[9]〜[13]のいずれ
かに記載の方法。
[15]
以下の工程を含む、薬効成分(成分1)を含有する液状組成物aを哺乳動物に皮下投与
して得られる成分1の薬物動態学的パラメータを予測する方法;
(1)液状組成物aとイオン交換樹脂を懸濁させ、その上清を回収する工程;
(2)成分1の回収率(%)を算出する工程。
[16]
薬物動態学的パラメータが、AUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)及び/又は絶対的
生物学的利用率である、前記[15]に記載の方法。
[17]
イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、前記[15]又は[16]に記載の方法。
[18]
哺乳動物がヒトである、前記[15]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
薬効成分(成分1)がテリパラチド又はその塩である、前記[15]〜[18]のいず
れかに記載の方法。
[20]
液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物で
あり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータがAUC(血漿中濃度−時間曲線
下面積)であり、さらに、(3)の工程を含む、前記[19]に記載の予測方法;
(3)回収率が80%以上である場合、AUCは390〜560(pg・hr/mL)、
その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、回収率が40〜80
%未満である場合、AUCは190〜380(pg・hr/mL)、その部分範囲、又は
それらの範囲における特定数値であると予測する工程。
[21]
液状組成物aが1回あたりの投与量として成分1を28.2μg含有する液状組成物で
あり、哺乳動物がヒトであり、薬物動態学的パラメータが絶対的生物学的利用率であり、
さらに、(3)の工程を含む、前記[19]に記載の予測方法;
(3)回収率が80%以上である場合、絶対的生物学的利用率は110〜150(%)、
その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、回収率が40〜80
%未満である場合、絶対的生物学的利用率は60〜100(%)、その部分範囲、又はそ
れらの範囲における特定数値であると予測する工程。
[22]
テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状組成物をヒトに皮下投与して得られ
る成分1の生物学的利用率及び/又はAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を向上させ
る方法であって、同組成物における成分1が示す有効表面電荷を減少させる手段を含む方
法。
[23]
テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状組成物をヒトに皮下投与して得られ
る成分1の生物学的利用率及び/又はAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を向上させ
る方法であって、同組成物に緩衝剤を含ませないことを特徴とする方法。
[24]
テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する皮下投与用液状組成物の調製方法であっ
て、前記[1]〜[23]のいずれかに記載の方法を実施する工程を含む、調製方法。
[25]
テリパラチド又はその塩(成分1)を含有するヒト皮下投与用液状医薬組成物(ただし
、凍結乾燥組成物からの再構成されてなる液状医薬組成物は除く)であって、成分1の有
効表面電荷が、以下の条件1)〜条件3)全てを満たすバッチ法による陽イオン交換クロ
マトグラフィーを適用した際に得られる成分1の回収率が50%以上となるように調節さ
れていることを特徴とする、ヒト皮下投与用液状医薬組成物;
条件1)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交
換樹脂である;
条件2)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂の洗浄及び/又は平
衡化に用いる緩衝液がPBS(pH7.4)である;
条件3)陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換樹脂と接触させるヒト皮
下投与用液状医薬組成物の容量比率が1:50〜100である。
[26]
pHが4.2以上である、前記[25]に記載のヒト皮下投与用液状医薬組成物。
[27]
テリパラチド又はその塩(成分1)、及び、L−メチオニン、塩化ナトリウム、L−ア
ルギニン又はその塩、及び、シュークロースからなる群より選択される1以上の成分(成
分2)を含有する液状組成物であって、pHが3.0〜5.0である液状組成物。
[28]
さらに、酢酸緩衝剤を含有する、前記[27]に記載の液状組成物。
[29]
成分1:成分2が1:0.5〜50(質量比)である、前記[27]又は[28]に記
載の液状組成物。
[30]
pHが3.0〜5.0である条件下、テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液
状組成物において、L−メチオニン、塩化ナトリウム、L−アルギニン又はその塩、及び
、シュークロースからなる群より選択される1以上の成分(成分2)を含有せしめる工程
を含む、成分1のゼータ電位の絶対値を低下させる方法。
ことができる。
施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形
態で実施することが可能である。
(1)薬効成分(成分1)
本発明において、薬効成分は特に限定されず、ヒトを含む哺乳動物などに対して、治療
、予防、診断等に有効な成分であることができる。薬効成分の構造も特に限定されず、低
分子化合物、ペプチド、抗体、核酸化合物、多糖類などであることができる。薬効成分と
して、PTH(1−84)、PTH(1−84)の部分ペプチド又は類縁体であってPT
H(1−84)の同等又は類似の生理活性を有する成分であることが好ましく、テリパラ
チド又はその塩であることがさらに好ましい。
(1−84)のアミノ酸配列において、N末端側からみて第1番目から第34番目までの
アミノ酸残基からなる部分アミノ酸配列で示されるペプチドである。
テリパラチドは塩の形態であることもできる。テリパラチド塩として、テリパラチドと1
種又は2種以上の揮発性有機酸とによって形成される任意の塩が挙げられる。テリパラチ
ドと揮発性有機酸とが塩を形成する際の両者の比率は、当該塩を形成する限りにおいて特
に限定されない。揮発性有機酸として、酢酸が好ましい。即ち、本発明におけるテリパラ
チドの塩としては、テリパラチド酢酸塩を好ましく例示できる。
pIの測定は、自体公知の方法(例えばHPLCや電気泳動などを用いた方法)により実
施可能である。一般的に、テリパラチド又はその塩のpIは、8.3〜8.4であること
が知られている。
液状組成物の溶媒は、水性溶媒でも非水性溶媒でもよいが、水性溶媒であることが好ま
しい。水性溶媒は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、無機塩・有機塩、緩衝剤、
添加剤等の各種の成分を含有していてもよい。このような成分として、例えば、二糖類(
例:ショ糖)、無機塩である塩酸塩又はナトリウム塩(例:塩化ナトリウム)、中性アミ
ノ酸(例:L−メチオニン)、及び、糖アルコール(例:D−マンニトール)を挙げるこ
とができる。水性溶媒として、注射用水や生理的食塩水を好ましく例示できる。
る。
、PTH(1−84)の部分ペプチド又は類縁体であってPTH(1−84)と同等又は
類似の生理活性を有する成分(例:テリパラチド又はその塩)である場合、好適には以下
を例示できる。即ち、下限としては10μg以上であることが好ましく、20μg以上、
25μg以上、27μg以上、更には28μg以上であることがより好ましい。また、上
限としては100μg以下であることが好ましく、50μg以下、40μg以下、35μ
g以下、更には、30μg以下であることがより好ましい。
、28.2μg又は29.2μgであることが好ましい。成分1がテリパラチド酢酸塩の
場合は、酢酸量を加味した量が例示でき、テリパラチド五酢酸の場合は、テリパラチド酢
酸塩として、成分1の含有量は30.3μg又は31.3μgであることが好ましい。
がPTH(1−84)、PTH(1−84)の部分ペプチド又は類縁体であってPTH(
1−84)と同等又は類似の生理活性を有する成分(例:テリパラチド又はその塩)であ
る場合、好適には以下を例示できる。即ち、下限としては25μg以上、27μg以上、
更には28μg以上であることがより好ましい。また、上限としては35μg以下、30
μg以下、更には29μg以下であることがより好ましい。
リパラチドとして28.2μgであることが好ましい。成分1がテリパラチド酢酸塩の場
合は、酢酸量を加味した量が例示でき、テリパラチド五酢酸の場合は、テリパラチド酢酸
塩として、成分1の1回投与当たりの投与量は30.3μgであることが好ましい。
その塩である場合、好適には以下を例示できる。即ち、テリパラチド換算で、下限として
は50μg/mL以上であることが好ましく、70μg/mL以上、100μg/mL以
上、100μg/mL超、110μg/mL以上、更には120μg/mL以上であるこ
とがより好ましい。また、テリパラチド換算で、上限としては500μg/mL以下であ
ることが好ましく、250μg/mL以下、250μg/mL未満、200μg/mL以
下、180μg/mL以下、更には160μg/mL以下であることがより好ましい。中
でも、141μg/mLを最も好ましく例示できる。
例えば非特許文献3〜5等に記載の方法)。
皮下投与用液状医薬組成物とすることが好ましく、ヒト皮下投与用液状医薬組成物とする
ことがさらに好ましい。液状医薬組成物の製造法は特に限定されないが、例えば、秤量し
た各原料を注射用水などに溶解させ、溶解液を濾過滅菌することにより製造することがで
きる。注射用水は、一般的に、発熱性物質(エンドトキシン)試験に適合した滅菌精製水
として理解され、蒸留法により製造された注射用水は、注射用蒸留水と称呼される場合も
ある。
本発明は、一態様として、成分1を含む1又は2種以上の液状組成物をイオン交換クロ
マトグラフィーに適用して得られる成分1の溶出結果に基づいて、当該各組成物を哺乳動
物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータおよび/またはその優劣を予
測する方法を提供する。
または、本発明は、一態様として、成分1を含有する1又は2種以上の液状組成物をイ
オン交換クロマトグラフィーに適用して得られる成分1の溶出結果に基づいて、当該各組
成物を評価又はスクリーニングする方法を提供する。
本発明において、クロマトグラフィーの種類は特に限定されないが、カラム法やバッチ
法であることが好ましい。カラム法とは、イオン交換樹脂を充填したカラムに対して試料
を通じる方法であり、バッチ法とは、カラム充填されていないイオン交換樹脂に対して試
料を接触させ、次いで、溶液とイオン交換樹脂を分離する方法である。クロマトグラフィ
ーは、陽イオン交換クロマトグラフィーであってもよく、陰イオン交換クロマトグラフィ
ーであってもよいが、陽イオン交換クロマトグラフィーであることが好ましい。
限されないが、例えば、成分1がペプチド又はタンパク質である場合において、陽イオン
交換クロマトグラフィーに用いる緩衝液のpHが皮下組織のpHを模倣する6〜8である
ことが好ましいことを考慮して、用いる緩衝液のpHがそのpIより低い場合には陽イオ
ン交換クロマトグラフィーを選択することが好ましく、用いる緩衝液のpHがそのpIよ
り高い場合には陰イオン交換クロマトグラフィーを選択することが好ましい。
ているpH範囲を考慮して、成分1のpIがその安定なpH範囲の上限より大きい場合に
は、陽イオン交換クロマトグラフィーを選択することが好ましく、成分1のpIがその安
定なpH範囲の下限より小さい場合には、陰イオン交換クロマトグラフィーを選択するこ
とが好ましい。
る緩衝液、成分1のpI、成分1の安定なpH範囲などを考慮して、陽イオン交換体と陰
イオン交換体を適宜選択することができる。
陰イオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂でも、弱塩基性陰イオン交換樹脂でも
よく、例えば、官能基として、トリメチルアンモニウム基、ジメチルエタノールアンモニ
ウム基、一〜二級アミノ基等を有し、母体構造(担体)として、スチレン系やアクリル系
などを有する樹脂であることができる。陰イオン交換樹脂として、強塩基性陰イオン交換
樹脂を好ましく例示できる。
、例えば、官能基として、−SO3 −、−COO−、−N(CH2COO−)2等を有し
、母体構造(担体)として、スチレン系やアガロース系などを有する樹脂であることがで
きる。陽イオン交換樹脂として、強酸性陽イオン交換樹脂を好ましく挙げることができる
。
(担体)に導入される具体的な官能基として、スルホメチル基(−CH2−SO3 −)や
スルホプロピル基(−CH2−CH2−CH2−SO3 −)を好ましく例示できる。スチ
レン系の母体構造(担体)として、スチレン及びジビニルベンゼンの共重合体で形成され
る粒状ポリマーを好ましく例示できる。
を例示でき、中でも30μm以上が好ましい。上限としては、例えば200μm以下を例
示でき、中でも150μm以下が好ましい。平均粒子径としてとりわけ65μmが好まし
い。イオン交換樹脂の平均細孔径も特に制限されないが、1〜200nmが好ましく、1
00nmがさらに好ましい。イオン交換樹脂は多孔性であっても非孔性であってもよい。
陽イオン交換樹脂として、例えば、TOYOPEARL(登録商標) SP-650M(東ソー株式会社製
)を好ましく例示できる。
填する方法も特に限定されず、例えば、イオン交換樹脂を洗浄・活性化した後、スラリー
状態でカラムに充填するなどの手順で、カラムにイオン交換樹脂を充填することができる
。あるいは、プレカラムパックと称されるイオン交換樹脂充填済みのカラムを購入して利
用することもできる。
組成や用量及びイオン交換樹脂の有効交換量等に応じて適宜決めることができる。カラム
法において、使用するカラムのサイズは、イオン交換樹脂の量などに基づいて、適宜に決
め得る。
クロマトグラフィーに供される成分1含有液状組成物(試料)は、1又は2種類以上の
成分1含有液状組成物であることができる。例えば、成分1の濃度、pH、各種添加剤な
どが互いに異なる複数種類の成分1含有液状医薬組成物をクロマトグラフィーに供し得る
。クロマトグラフィーに2種類以上の成分1含有液状組成物を供する場合には、それぞれ
の組成物を分けてクロマトグラフィーに供することが好ましい。
前述の通り、クロマトグラフィーは、例えば、カラムクロマトグラフィー(カラム法に
よるクロマトグラフィー)であってもよく、バッチクロマトグラフィー(バッチ法による
クロマトグラフィー)であってもよい。
緩衝液等によって洗浄及び/又は平衡化しておくことが好ましい。洗浄及び/又は平衡化
に用いる緩衝液は特に限定されないが、皮下組織内を模倣するpHとして、同緩衝液のp
Hは6〜8程度であることが好ましい。緩衝液として、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(
Phosphate buffered saline;PBS)、リン酸緩衝液、HEPES(4-(2-hydroxyethyl
) -1-piperazineethanesulfonic acid)緩衝液、トリス緩衝生理食塩水(Tris-buffered
saline;TBS)などを利用し得る。緩衝液の濃度は特に限定されないが、10〜200
mMの範囲であることができる。
カラムクロマトグラフィーに成分1含有液状組成物を適用する場合の工程として、例え
ば、1)イオン交換樹脂の緩衝液による平衡化、2)イオン交換樹脂と成分1含有液状組
成物の接触、3)溶出、4)成分1量の測定、5)成分1溶出時間/成分1溶出液量の決
定又は推定、といった手順を例示することができる。
前述の方法により緩衝液を用いてイオン交換樹脂を平衡化し得る。
イオン交換樹脂と成分1含有液状組成物の接触前に、成分1含有液状組成物をイオン交
換樹脂の平衡化に用いた緩衝液で透析等して組成物中の成分1以外の成分や溶媒を緩衝液
で置き換えることも可能である。ただし、前述のように、成分1の濃度、pH、各種添加
剤などが互いに異なる複数種類の成分1含有液状医薬組成物をクロマトグラフィーに供す
る場合には、このような置き換え処理を実施しないことが好ましい。接触させる樹脂と組
成物の容量比率は特に限定されないが、樹脂容量:組成物容量=1:0.1〜100であ
ることができ、1:0.5〜50、1:0.8〜8、1:0.9〜3であることが好まし
く、あるいは、1:0.5〜1(すなわち、接触させる組成物の液量を樹脂容量の半量か
ら同量とする。)こともでき、中でも、1:0.5、すなわち接触させる組成物の液量を
樹脂容量の半量とすることが最も好ましい。
イオン交換樹脂と成分1含有液状組成物の接触後に成分1を含有する又は含有しない溶
液が溶出し得る。その溶出前に又は後に溶出用緩衝液をイオン交換樹脂と接触させ、その
後に、成分1を含有する又は含有しない溶液が溶出し得る。ここでの溶出は、このような
全ての溶出態様を包含し得る。
成の緩衝液であることができる。溶出の過程において、徐々に(グラジエント法)もしく
は段階的に(ステップワイズ法)溶出用緩衝液の組成やpHを変化させ得る。溶出用緩衝
液は、手動でイオン交換樹脂に添加することもでき、送液ポンプを用いてイオン交換樹脂
に添加し得る。
液をイオン交換樹脂と接触させ、その溶出液を回収するといった一連の工程を1回又は2
回以上繰り返して溶出を行い得る。
度であることができる。イオン交換樹脂容量と溶出用緩衝液に係る所定液量の比率は特に
限定されないが、1:0.1〜100であることができ、1:0.5〜50、1:0.8
〜8、1:0.9〜3であることが好ましく、あるいは、1:0.5〜1(すなわち、接
触させる溶出用緩衝液の液量を樹脂容量の半量から同量とする。)こともでき、中でも、
1:0.5、すなわち接触させる溶出用緩衝液に係る所定液量をイオン交換樹脂容量の半
量とすることが最も好ましい。
容量と同一数値であっても異なる数値であってもよい。前記のとおり、所定液量の溶出用
緩衝液をイオン交換樹脂と接触させ、その溶出液を回収するといった一連の工程を1回又
は2回以上繰り返して溶出を行う場合、その所定液量の溶出用緩衝液の容量は成分1含有
液状組成物(試料)の容量と同等であることが好ましい。
とができる。
回収した各溶出液に含まれる成分1量/濃度を測定する方法は特に限定されず、生理活
性測定法、吸光光度法、免疫学的測定法など自体公知の方法をもって測定することができ
る。
成分1溶出時間は、カラムを素通りした溶出液の溶出時間をゼロとし、成分1のピーク
(最大量/最大濃度)が溶出するまでに経過した時間であることができる。例えば、緩衝
液の送液用ポンプ、成分1含有液状組成物である試料を注入するインジェクタ、イオン交
換樹脂が充填されているカラム、及び、カラムから溶出した成分を検出する検出器からな
るシステムを本発明において利用することによって、成分1溶出時間を決定又は推定し得
る。
出液の総量として特定又は推定し得る。例えば、成分1のピーク(最大量/最大濃度)が
溶出するまでに、カラムに添加した成分1含有液状組成物の液量と溶出用緩衝液の液量の
合計量として特定又は推定することができる。
して成分1含有液状組成物である試料1mLを添加し、その溶出液を回収し(1番目の回
収液を回収)、さらに、PBS1mLを同カラムに滴下して溶出液を回収する一連の工程
を5回繰り返して実施した(2〜6番目の回収液を回収)結果、各溶出液の中で成分1量
が最大である溶出液が3番目の回収液であると決定又は推定した際、成分1溶出液量を3
mLと決定又は推定することができる。
減量した場合に、回収されるであろう各溶出液の中で成分1量が最大である溶出液が6〜
8番目となり得ると判断される場合には、成分1溶出容量を3mLとせずに、3〜4mL
と一定の幅をもたせて決定又は推定することもできる。
バッチクロマトグラフィーに成分1含有液状組成物を適用する場合の工程として、例え
ば、1)陽イオン交換樹脂の緩衝液による平衡化、2)イオン交換樹脂と成分1含有液状
組成物(試料)の懸濁、3)上清の回収、4)成分1量の測定、5)成分1回収率の算出
、といった手順を例示することができる。
前述の方法によりイオン交換樹脂を平衡化することができる。
懸濁の方法は特に限定されないが、一定時間(1分〜30分程度)手やシェーカーなど
で撹拌させて懸濁させ得る。懸濁させる樹脂と組成物の容量比率は特に限定されないが、
樹脂用量:組成物用量=1:1〜200であることができ、1:20〜150、1:30
〜120、1:40〜110、1:50〜100、又は、1:60〜70であることが好
ましい。
前記懸濁液が樹脂と溶液に概ね分離するまで待って、上清を回収することができる。あ
るいは、懸濁液を濾過して樹脂と溶液を分離させ得る。
前述の成分1量測定法により回収液中の成分1量(成分1の溶出結果)を測定すること
ができる。
成分1回収率は、クロマトグラフィーに適用された成分1含有液状組成物(すなわち、
イオン交換樹脂と懸濁させた成分1含有液状組成物の試料)に含まれる成分1の量をaと
し、回収液に含まれる成分1の含有量をbとすると、(b/a)×100(%)として、
算出され得る。
1又は2種以上の成分1含有液状組成物をそれぞれクロマトグラフィーに適用して得ら
れた成分1の溶出結果に基づいて、当該各組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分
1の薬物動態学的パラメータおよび/またはその優劣を予測し得る。または、同溶出結果
に基づいて、当該各組成物を評価又はスクリーニングし得る。
て、前述の成分1溶出時間、成分1溶出液量、及び、成分1回収率が挙げられる。
、最高血漿中濃度(Cmax)、血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)、及び生物学的
利用率(%)などが例示される。AUCとしては、特に限定されるものではないが、例え
ばAUCinf(無限大時間までの血漿中濃度−時間曲線下面積)、AUClast(最終観察
時間までの血漿中濃度−時間曲線下面積)、及び反復投与時の1投与間隔で得られるAU
Cτ(時間ゼロから投与間隔時間τまでの血漿中濃度−時間曲線下面積)等が挙げられる
。
もヒトが最も好ましく挙げられる。
こでは、本願実施例で示された成分1の溶出結果に基づく予測方法の例を説明する。なお
、実施例の試験結果を下記表1〜3に示す。
タ予測を行い得る。
成分1溶出液量が0.8〜1.2(mL)である場合、AUCは390〜560(pg
・hr/mL)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成
分1溶出液量が1.2(mL)である場合、AUCは230〜280(pg・hr/mL
)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、及び、成分1溶
出液量が1.2〜1.6(mL)である場合、AUCは190〜380(pg・hr/m
L)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する。
成分1溶出液量が0.8〜1.2(mL)である場合、絶対的生物学的利用率は110
〜150(%)、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成
分1溶出液量が1.2(mL)である場合、絶対的生物学的利用率は約70%であると予
測し、成分1溶出液量が1.2〜1.6(mL)である場合、絶対的生物学的利用率は6
0〜100%、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する。
成分1回収率が80%以上である場合、AUCは390〜560(pg・hr/mL)
、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1回収率が4
0〜80%未満である場合、AUCは190〜380pg・hr/mL)、その部分範囲
、又はそれらの範囲における特定数値であると予測する。
成分1回収率が80%以上である場合、絶対的生物学的利用率は110〜150(%)
、その部分範囲、又はそれらの範囲における特定数値であると予測し、成分1回収率が4
0〜80%未満である場合、絶対的生物学的利用率は60〜100%、その部分範囲、又
はそれらの範囲における特定数値であると予測する。
液状組成物n(nは2以上の整数))を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動
態学的パラメータの優劣を、各組成物をクロマトグラフィーに適用して得られた成分1の
溶出結果に基づいて、予測し得る。
得られる成分1の薬物動態学的パラメータが、(成分1溶出時間がより長い液状組成物を
哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータと比較して)より優れ
ていると予測し得る。
皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータが、(成分1溶出液量がより大き
い液状組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータと比較
して)より優れていると予測し得る。
下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータが、(成分1回収率がより小さい液
状組成物を哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態学的パラメータと比較して
)より優れていると予測し得る。
がより大きい組成物はその数値がより小さい組成物と比べて、絶対的生物学的利用率(%
)の観点で優れている。薬物動態学的パラメータがAUCである場合、その数値がより大
きい組成物はその数値がより小さい組成物と比べて、AUCの観点で優れている。このよ
うな予測の結果、複数の成分1含有液状組成物(液状組成物1、液状組成物2、・・・・
・、液状組成物n(nは2以上の整数))に対して、最も薬物動態学的パラメータが優れ
ているであろうと予測される液状組成物、その次に薬物動態学的パラメータが優れている
であろうと予測される液状組成物、・・・・、最も薬物動態学的パラメータが劣っている
であろうと予測される液状組成物というように、n種類の液状組成物間で予測される薬物
動態学的パラメータの優劣を決定し得る。
本発明の一態様は、成分1を含有する液状組成物における成分1が示す有効表面電荷を
減少させる工程を含む、同組成物の処理又は調製法を提供する。
徴とする、同組成物の処理又は調製法である。
1の薬物動態学的パラメータを良好にし、又は、良好な組成物を調製することができる。
である。また、本発明の一態様は、緩衝剤を含有しない、成分1を含有する液状医薬組成
物である。これらの組成物は、それを哺乳動物に皮下投与して得られる成分1の薬物動態
学的パラメータが優れている。組成物に緩衝剤を含有させないことで、組成物中の成分1
の皮下投与による体内動態が良好となる仕組みは定かではないが、その非含有によって、
例えば、成分1の有効表面電荷又は成分1と皮下組織の静電的相互作用のいずれか或いは
両方が小さくなることによって動態が良好化するといったメカニズムを考え得る。
成分1は、多種類のイオン性のアミノ酸残基を含み、正の電荷と負の電荷の両方を分子
表面に持ち得る。成分1が示す有効表面電荷は、このような分子表面に存在する電荷の総
和として理解され得る。アミノ酸の荷電状態はpHによって変化することから、成分1の
有効表面電荷もpHによって変動する。
て計測され得る。
成分1が示す有効表面電荷を減少させる手段は特に限定されないが、例えば、成分1を
含有するpHを大きくすることによって有効表面電荷は減少する。pHの範囲は特に限定
されないが、pHを4.2以上、4.5以上、又は、4.6以上とする手段であることが
でき、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、又は、4.7以下とする手段
であることができる。
ここで緩衝剤の種類は特に問わないが、例えば、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、ホウ
酸、リン酸、炭酸及びその塩を挙げることができる。なお、緩衝剤が液状医薬組成物に微
量含まれていたとしても、成分1の分解などに起因する経時的なpH変動を抑制できない
場合には、緩衝剤は液状医薬組成物に含まれていないと見做し得る。
本発明に係る液状医薬組成物として、成分1を含有するヒト皮下投与用液状医薬組成物
であって、成分1の有効表面電荷が、バッチ法による陽イオン交換クロマトグラフィーを
適用した際に得られる成分1の回収率が50%以上、より好ましくは70%以上、最も好
ましくは80%以上となるように調節されていることを特徴とする、ヒト皮下投与用液状
医薬組成物を挙げることができる。ここで、成分1の回収率の上限は、特に限定されない
が、理論上は、100%となる。
様を含んでもよく、凍結乾燥組成物から再構成されてなる液状医薬組成物ではなくてもよ
い。すなわち、成分1を含有する凍結乾燥組成物を用時に生理的食塩水等に溶解(再溶解
)させて調製させて液状医薬組成物であってもよく、凍結乾燥製剤を経ない組成物(予め
液剤化された組成物)であってもよい。
しい。陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる樹脂も前述の通りであるが、ここでは、
強酸性陽イオン交換樹脂であることが好ましい。イオン交換樹脂の洗浄及び/又は平衡化
に用いる緩衝液も前述の通りであるが、ここでは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であ
ることが好ましく、そのpHは7.4であることが好ましい。イオン交換樹脂と成分1含
有液状医薬製剤の接触比率(容量比率)は、1:50〜100であることが好ましい。
ゼータ電位とは、溶液中に存在する微粒子の表面電荷として理解されており、より正確
には、溶液中に存在する微粒子のまわりに形成される電気二重層中のすべり面の電位とし
て定義される。また、一般的には、高いゼータ電位(負又は正)を有するコロイドは電気
的に安定化されており、低いゼータ電位を有するコロイドは互いの反発力が弱くその結果
凝集する傾向が高い。
対値を低下させる方法である。本方法によって、ゼータ電位の絶対値が低下した液状組成
物を調製することが可能となる。そして、本液状組成物は、例えば、溶液中の成分1の吸
収・分離プロセスに対してゼータ電位が与える影響評価などに関して重要な示唆を与える
と考えられる。
き、例えば、光散乱電気泳動法(ELS)によって溶液中の粒子の電気泳動移動度を測定
し、その移動度をゼータ電位に変換することによって、ゼータ電位を得ることができる(
特許文献6など)。このような装置として、例えば、マルバーン社のゼータサイザーシリ
ーズを挙げることできる。
において、単糖類、二糖類、糖アルコール、アミノ酸又はその塩、無機塩、のうちすくな
くとも1の成分(成分2)を含有せしめる工程を含む方法であり得る。成分2として、例
えば、二糖類および無機塩の組み合わせを好ましく例示できる。
である状態(pH)を意味する。pHが酸性〜中性である条件下はこの限りにおいて特に
限定されないが、pHの下限としては、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以
上であることができ、中でも4.0以上であることが好ましい。pHの上限としては、8
.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下であることが
でき、中でも、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがさらに好まし
い。
二糖類として、シュークロース(ショ糖)、マルトース、ラクトースを例示できる。アミ
ノ酸又は塩は特に限定されないが、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸、又はこれらの塩が好
ましく例示される。中性アミノ酸の中でも、含硫アミノ酸がさらに好ましく、メチオニン
(好ましくはL−メチオニン)が最も好ましい。塩基性アミノ酸の中でもアルギニン(好
ましくはL−アルギニン)が好ましく例示され得る。アミノ酸の塩も特に限定されないが
、塩基性アミノ酸の塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、亜硫酸水素酸塩、酢酸塩、クエ
ン酸塩、又は、炭酸塩であることができ、塩酸塩が最も好ましい。無機塩は特に限定され
ないが、塩酸塩又はナトリウム塩であることが好ましく、塩化ナトリウムが最も好ましい
。糖アルコールは特に限定されないが、例えば、マンにトールを例示できる。
ノ酸又はその塩、無機塩、糖アルコールのうち少なくとも1の成分(成分2)を含有し、
pHが酸性〜中性(例えばpH3.0〜5.0)である液状組成物を挙げることができる
。斯かる組成物における成分1と成分2との比率は特に制限されないが、成分1:成分2
の質量比が通常1:0.5〜50であることが好ましい。また、斯かる組成物は、更に酢
酸緩衝剤を含有することが好ましい。成分2として糖アルコールを用いる場合、成分1量
に対して成分2量は、8倍量又はそれ以下、好ましくは5倍量又はそれ以下、最も好まし
くは3倍量又はそれ以下、であることができる。
束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施す
ることが可能である。
として表記する場合もある。
(1)処方1〜8:
下記表4に従って処方1〜8を調製した。
加剤を注射用水と共に混合し、全量3000mLの溶液aを調製した。1600mLの溶
液aに対してテリパラチド酢酸塩(テリパラチドとして282mg)を溶解させて薬液a
を調製した。その後、薬液aに対して希釈した塩酸を添加することで表中「pH」欄に記
載のpHに調整後、前記の溶液aを用いて全量2000mLの処方を調製した。
填されたアンプル(処方アンプル製剤)を製造した。
各処方の組成は表中「最終含有量」欄に記載の通りである。
市販のテリパラチド製剤(「テリボン皮下注用56.5μg」旭化成ファーマ社製;非
特許文献1)に日局生理食塩液0.45mLを加え溶解して得られる薬液をシリンジで0
.2mL取り、処方9を調製し、処方9を充填したシリンジを処方9製剤として利用した
。なお、処方9は、その容量が0.2mLであり、1回当たりの投与量としてテリパラチ
ド酢酸塩をテリパラチド換算で28.2μg含有する処方である。
市販のテリパラチド製剤(「テリボン皮下注用56.5μg」旭化成ファーマ社製;非
特許文献1)に日局生理食塩液1.0mLを加え溶解して得られる処方10を調製し、処
方10を充填したシリンジを処方10製剤として利用した。なお、処方10は、その容量
が0.89mLであり、1回当たりの投与量としてテリパラチド酢酸塩をテリパラチド換
算で63.5μg含有する処方である。
下記表5に従って、処方11を調製した。
加剤を注射用水と共に混合し、全量3000gの溶液aを調製した。2480gの溶液a
に対してテリパラチド酢酸塩(テリパラチドとして352.5mg)を溶解し、溶液aを
用いて全量を2500gとし、処方11を調製した。
11を充填したシリンジを処方11製剤として利用した。
下記表6に従って、処方12〜15を調製した。
と注射用水を混合し、その混合液に「テリパラチド添加量」欄に記載の用量のテリパラチ
ド酢酸塩溶液(テリパラチドとして2820μg/mL)を添加し、約19mLの薬液a
を調製した。ここで、各添加剤溶液及びテリパラチド酢酸塩溶液それぞれの溶媒を注射用
水とした。さらに、その薬液aに対して、表中「pH調整剤」欄に記載のpH調整剤を添
加することで表中「pH」欄に記載のpHに調整し、20mLの各処方を調製した。
よって、各処方が充填されたプラスチック製バイアルを製造し、ラット薬物動態試験に供
した。
各処方の組成は表中「最終含有量」欄に記載の通りである。
下記表7に従って、処方16〜23を調製した。
溶液を注射用水を用いて調製した。4.5mLの添加剤溶液に対してテリパラチド酢酸塩
(テリパラチドとして91.769mg)を溶解させて薬液aを調製した。その後、薬液
aに対して塩酸を添加することで表中「pH」欄に記載のpHに調製後、注射用水を用い
て全量5mLの処方を調製した。
下記表8に従って処方24〜30を調製した。
の薬液をそれぞれ調製し、塩酸または水酸化ナトリウムを用いてそのpHを4.1に調整
した。その後、2.5mLの薬液aと2.5mLの薬液bを混合することで各処方を作製
した。
下記表9に従って、処方31〜32を調製した。
各処方の具体的調製法は次の通りである。
欄に記載の各添加剤溶液および注射用水を用いてそのテリパラチドを溶解した後、その溶
解液を注射用水で1000μLにメスアップすることで調製した。
記載の各添加剤溶液および注射用水440μLを用いてそのテリパラチドを溶解した後、
その溶解液に表中「pH調節剤」及び「pH」欄の記載に沿ってpH調整を実施後、注射
用水で1000μLにメスアップすることで調製した。
下記表10に従って処方33〜40を調製した。
加剤(ただし、L−メチオニンは、予備溶解されてなるL−メチオニン溶液)を注射用水
と共に混合し、テリパラチド酢酸塩(テリパラチドとして1425.6mg)を加え、全
量9.5kgの薬液aを調製した。その後、薬液aに対して希釈した塩酸を添加すること
で表中「pH」欄に記載のpHに調整後、注射用水を用いて全量10.10kgの処方を
調製した。
が充填されたアンプル(処方製剤)を製造し、ヒト薬物動態試験に供した。処方製剤は、
その処方容量が0.2mLであり、1回当たりの投与量としてテリパラチド酢酸塩をテリ
パラチド換算で28.2μg含有する処方が充填された製剤である。
(1)試験1:
(1−1)方法:
アニオン樹脂であるTOYOPEARL(登録商標)SP-650Mを約0.8mL採取し、0.8mL
のエンプティスピンカラムに充填した。その後、PBS(pH7.4)にて樹脂の平衡化
を実施した。そして、前述の処方12〜15、処方9、及び処方11それぞれを0.8m
L滴下し、溶出液を回収した。そして、PBS(pH7.4)を0.8mLずつ滴下して
は回収する作業を繰り返した。回収した各薬液に含まれるテリパラチド含量をHPLCに
より測定した。
比較し、酢酸緩衝剤を含まない処方(処方12及び処方9の計2処方)は、上記の分離系
において早く溶出する(テリパラチドの溶出ピーク時間が短い)ことが分かった。
(2−1)方法:
アニオン樹脂であるTOYOPEARL(登録商標)SP-650Mを約0.8mL採取し、0.8mL
のエンプティスピンカラムに充填した。その後、PBS(pH7.4)にて樹脂の平衡化
を実施した。そして、前述の処方1〜8、処方9、及び処方11それぞれを0.4mL滴
下し、溶出液を回収した。そして、PBS(pH7.4)を0.4mLずつ滴下しては回
収する作業を繰り返した。回収した各薬液に含まれるテリパラチド含量をHPLCにより
測定した。
られた処方群とほぼ同一の処方群(処方1、2、5、6、8)は、残りの処方群とほぼ同
一の処方群(処方3、4、7)と比べて、テリパラチドの溶出時間(テリパラチドピーク
時間)がより短いことが分かった。
回収試験)):
(1)方法:
アニオン樹脂であるTOYOPEARL(登録商標)SP−650Mを約0.015m
Lマイクロチューブに採取し、PBS(pH7.4)にて樹脂の洗浄を行った。その後、
処方1〜9、及び11をそれぞれ1mLマイクロチューブに添加し、樹脂と懸濁させた後
に、上清のみを回収し、HPLCによりテリパラチドの回収率を測定した。
られた処方群とほぼ同一の処方群(処方1、2、5、6、8)は試験対象とした場合には
、テリパラチド回収率が80%以上となり、残りの処方群とほぼ同一の処方群(処方3、
4、7)を試験対象とした場合には、テリパラチド回収率が40〜80%未満(より具体
的には、50%未満)となった。
なかった処方11を試験対象とした場合には、テリパラチド回収率が40〜80%未満(
より具体的には、50%未満)となった。
(1)試験1:
(1−1)方法:
前述の処方24〜32それぞれを用いてゼータ電位評価試験を実施した。
ータ電位を測定した。測定装置として、動的光散乱測定装置(Zetasizer Nano ZS,Malve
rn Instruments Ltd)を用いた。
加えていない処方(処方24)における帯電粒子(テリパラチド)の滑り面の電位である
ゼータ電位は32.2mVであること、及び、所定の添加剤の処方への添加によってゼー
タ電位の絶対値を低下させ得ることが分かった。
(2−1)方法:
前述の処方16〜23を用いてゼータ電位評価試験を実施した。具体的には、自体公知
の電気泳動光散乱測定法によって各処方に分散する帯電粒子のゼータ電位を測定した。測
定装置として、動的光散乱測定装置(Zetasizer Nano ZS,Malvern Instruments Ltd)を
用いた。
(1)ヒト薬物動態試験(1):
(1−1)方法:
前述の処方10〜11製剤を用いてヒト薬物動態試験(1)を実施した。
0を腹部に単回皮下投与したときの薬物動態パラメータを、処方11を上腕部に皮下投与
したときと比較した。
、2、3、4、6時間後に採取した血液試料で測定した。血漿中テリパラチド濃度から、
モデルによらない方法により薬物動態パラメータAUClast、AUCinfおよびC
maxを被験者ごとに算出した。
血漿中濃度−時間曲線下面積
(ヒト薬物動態試験 試験(2)におけるAUClastも同一定義)
AUCinf = 線形台形法 (linear trapezoidal rule) による無限大時間までの血漿
中濃度-時間曲線下面積
(ヒト薬物動態試験 試験(2)におけるAUCinfも同一定義)
Cmax = 最高血漿中濃度
(ヒト薬物動態試験 試験(2)におけるCmaxも同一定義)
方11の比と95%信頼区間を以下の手法で算出した。対数変換したAUClast、A
UCinfおよびCmaxについて、被験者(順序群内)を変量効果とし、順序群、製剤
(処方10〜11製剤)を固定効果とおいて、混合効果モデルによる分散分析法を用いて
解析した。推定した製剤の差と95%信頼区間を指数変換し、各処方の比と信頼区間の形
で示した。
(2−1)方法:
前述の処方33〜40、及び、処方10それぞれを用いてヒト薬物動態試験(2)を実
施した。
に単回皮下投与して得られた薬物動態パラメータを、処方10を上腕部に皮下投与して得
られた薬物動態パラメータと比較することにより、実施した。
をコホート2とした。コホートごとに、12例を無作為に、3例ずつ4群に割り付けた。
下記表17で示される投与計画に従って、処方33〜40及び処方10を被験者に投与し
た。
った事実を意味する。各期に1回投与され、各期の日数は本試験の目的に沿って適切に設
定された。
、3、4、6時間後に採取した血液試料を用いて測定された。血漿中テリパラチド濃度か
ら、モデルによらない方法により薬物動態パラメータAUClast、AUCinfおよ
びCmaxを被験者ごとに算出した。
3〜40の比と95%信頼区間を以下の手法で算出した。まず、算出したAUClast
、AUCinfおよびCmaxを対数変換し、次に、対数変換したAUClast、AU
CinfおよびCmaxについて、被験者(順序群内)を変量効果とし、順序群、処方を
固定効果とおいて、混合効果モデルによる分散分析法を用いて解析した。推定した各処方
の差と95%信頼区間を指数変換し、各処方の比と信頼区間の形で示した。
実施して得られたAUCinf(11.4ng・min/mL)、及び、前述の処方33
〜40で算出されたAUCinfを用いて、血漿中テリパラチドの絶対的生物学的利用率
(%)を下記数1に従って推算した。
(1)方法:
前述の処方12〜15それぞれを用いてラット薬物動態試験を実施した。
.2μg/頭の用量で皮下投与し、投与後5、15、30、60、120、180分、あ
るいは、投与後5、15、30、45、60、90分の時点において鎖骨下静脈より採血
した。PK試験は、5試験(試験1〜5)に分けて実施した。動物は各試験で2〜5匹用
いた。
ラチド濃度をELISA法(High Sensitivity Human PTH(1-34) ELISA kit、Immutopics
Inc.)により測定した。測定により得られた血漿中テリパラチド濃度に基づき、血漿中
濃度−時間曲線下面積(AUC)を算出した。
発等することができる。本発明は医薬品産業において極めて有用である。
Claims (5)
- テリパラチド酢酸塩(成分1)、並びに、メチオニン、塩化ナトリウム、アルギニン又はその塩、及び、シュークロースからなる群より選択される1以上の成分(成分2)を含有する液状医薬組成物であって、pHが4.1〜5.0であり、1回投与当たりの成分1含有量がテリパラチド換算で28.2μgである、液状医薬組成物。
- 成分2として、メチオニンと塩化ナトリウムを含む、請求項1記載の液状医薬組成物。
- 成分2として、メチオニンとシュークロースを含む、請求項1記載の液状医薬組成物。
- 成分2として、塩化ナトリウムとシュークロースを含む、請求項1記載の液状医薬組成物。
- さらにマンニトールを含む、請求項1〜4いずれか記載の液状医薬組成物。
Priority Applications (1)
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