JP2019059810A - シリル化ポリプロピレン及びその製造方法と、このシリル化ポリプロピレンを含む樹脂組成物 - Google Patents

シリル化ポリプロピレン及びその製造方法と、このシリル化ポリプロピレンを含む樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリプロピレン材料との親和性が高く、表面改質効果にも優れるシリル化ポリプロピレンを、低コストでエネルギー効率よくかつブロック構造の選択性高く製造する方法の提供。【解決手段】(a)片末端不飽和結合を有するポリプロピレンと、(b)下記構造単位(I)及び構造単位(II)を有するシロキサンコポリマーとを反応させてシリル化ポリプロピレンを製造する方法。(a)ポリプロピレンは長鎖分岐構造を有しかつ下記(i)〜(v)の特性を有する、方法。特性(i):MFR=0.1〜30.0g/10分、特性(ii):Mw/Mn=3.0〜10.0、かつMz/Mw=2.5〜10.0、特性(iii):溶融張力(MT)(単位:g)は、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはMT≧15、特性(iv):分岐指数g’=0.30以上1.00未満、特性(v):プロピレン単位3連鎖のmm分率=95%以上【選択図】なし

Description

本発明は、特定の構造を有するシリル化ポリプロピレン及びその製造方法と、このシリル化ポリプロピレンと熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物に関する。
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンは、優れた機械強度を有しながら加工性、耐薬品性、電気的性質にも優れ、また軽量かつ安価であるため、生活部材や工業部材等の用途に幅広く用いられている。
ポリオレフィンに対して改善が望まれている特性として、特に撥水性、撥油性、防汚性、非接着性などの表面特性がある。これらの性能については、トイレタリーや食品などの生活産業材料分野において、また防汚性などが要求される医療用衛生材料分野において、特にその改良が期待されている。
一方で、ポリオレフィン材料には、ガス透過性の改良も望まれている。例えば青果物の包装材料の分野においては、特に透明性に優れ、見栄えの良いポリプロピレンフィルムが多く使用されているが、ガス透過性が低いため、農産物の鮮度保持に悪影響を与えることが知られており、良好な透明性と良好なガス透過性を両立するポリプロピレン材料が望まれている。
また、産業用、医療用の酸素富化膜の用途においては、従来シリコーン樹脂が酸素透過性及び分離比に優れた材料として知られているが、シリコーン樹脂は機械的強度が劣る欠点がある。この問題点を解決するため、シリコーンなどのガス透過性の高い非多孔性の超薄層部と、これを機械的に支持するポリプロピレンの多孔質部を張り合わせた複合膜も開発されている。しかし、これらの複合膜は高コストになる傾向があり、さほど実用化されていない。そこで、機械強度に優れた材料(例えばポリプロピレン)との付加品で、単独での成形が可能な、機械強度とコストに優れた材料の開発が望まれている。
ポリオレフィンに対して各種改質剤を添加することで、単独では不足している機械特性や、表面特性などの向上を図る場合がある。しかしながら、改質しようとするポリオレフィンと改質剤との親和性が低い場合には、その改質効果は十分ではないだけでなく、かえって透明性や機械特性など他の特性を悪化させる懸念がある。
例えば、ポリオレフィンの撥水性、撥油性、防汚性、非接着性などの表面特性、およびガス透過性を改良する方法として、高分子量のシリコーンをポリオレフィンに添加して成形、加工する手法が知られており、すでに製品として市販もされているが、一般にポリオレフィンとシリコーンの親和性は低く、シリコーンの添加でかえって透明性や機械特性など他の特性を悪化させる懸念があり、その使用は限定される。また、その親和性の低さから添加したシリコーンは材料の表面へ容易に浮き出るため、シリコーンによるガス透過性は容易に失われてしまう。また表面への物理的な接触によってシリコーンが容易に表面から除去されてしまうことから、その表面改質性も容易に失われ、長く表面改質効果を維持することは困難であった。特に接触した物質にシリコーンが付着、移行してしまうことから、プリント配線基板、とりわけ銅回路の汚染が懸念される電子材料への使用は禁忌とされている。
こうした問題を改良するため、ポリオレフィンとシリコーンのブロック共重合体を改質剤として用いることが知られている。また、このようなブロック共重合体の製造例として、例えば、ポリオレフィンの末端不飽和結合へのヒドロシリコーンによるヒドロシリル化の適用が公知である。
例えば、特許文献1には、ポリプロピレンおよびポリシランの分枝コポリマーを、溶融相ヒドロシリル化を含んだ手順によって製造する手法が開示されている。しかしこの手法は具体的には反応の過程においてラジカル分解により生成した不飽和ポリマーの末端不飽和基をシリル化する手法であり、その反応制御性は低く、特定の構造を有するブロック共重合体の製造には適さない。また得られたブロック共重合体の表面改質性能、およびガス透過性については全く記載がない。
特許文献2には、低分子量ポリエチレンオリゴマーとハイドロジェンシリコーンとを反応させて得られるシリコーンポリエチレンワックスが開示されているが、得られたブロック共重合体の表面改質性能、およびガス透過性については全く記載がない。
また特許文献3には、ビニル基含有化合物、特に末端にビニル基を有する低分子量のポリエチレンとケイ素化合物との反応によって得られるシリル化ポリオレフィンを含有する組成物から形成される成形体が開示されており、このシリル化ポリオレフィンをポリプロピレンに添加することで耐摩耗性、及びガス透過性が改善されることが示されている。しかしその改良効果は不十分であり、特に透明性の悪化も発生しており、ポリプロピレン改質向けの添加剤としての使用は難しい。
特許文献4には、少なくとの1つのオルガノシロキサンブロックと少なくとも1つのポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体が開示されているが、本開示技術は特に溶液コーティング可能な程度に分子量を制御することに着眼しており、実際ポリウレタンフィルムへの塗布コーティングによる表面改質効果について具体例が開示されているのみで、ポリプロピレンの表面改質性能については記載がなく、またその製造には特殊な置換基や反応性の低い置換基を使用しており、効率の良い製造手法とは言えず、実際に期待通りの構造のブロック共重合体が選択的に得られるとの記載もなされていない。
特許文献5には、末端にビニル基を有するマクロモノマーとポリアルキルヒドロシロキサンとの反応生成物が開示され、特に反応点を多く有するシロキサンに着眼し、非常に分岐の発達したポリマーのレオロジー特性についての技術が開示されているが、得られたブロック共重合体の表面改質性能、およびガス透過性については全く記載がなく、実際、当該技術における材料は表面改質性能が低いことが明らかになっている。
特表2002−522604号公報 特開2004−196883号公報 国際公報第2012/098865号 特表2015−536376号公報 国際公報第2014/047482号
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、工業的に重要性の高いポリプロピレン等の熱可塑性樹脂との親和性が従来の改質剤に比べて高く、かつ表面改質効果にも優れるシリル化ポリプロピレンであって、低コストで、エネルギー効率よく、かつブロック構造の選択性高く製造することができるシリル化ポリプロピレン及びその製造方法と、このシリル化ポリプロピレンと熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の片末端不飽和結合を有するポリプロピレンに対し、特定の構造を有するシロキサンコポリマーを付加させることにより、上記課題を達成しうることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は以下の[1]〜[13]の通りである。
[1] (a)片末端不飽和結合を有するポリプロピレンと、(b)下記式(I)で表される構造単位(以下「構造単位(I)」と称す。)及び下記式(II)で表される構造単位(以下「構造単位(II)」と称す。)を有するシロキサンコポリマーとを反応させてシリル化ポリプロピレンを得る、シリル化ポリプロピレンの製造方法であって、
(a)のポリプロピレンが、長鎖分岐構造を有し、かつ下記(i)〜(v)の特性を有することを特徴とするシリル化ポリプロピレンの製造方法。
特性(i):MFRが0.1〜30.0g/10分
特性(ii):Mw/Mnが3.0〜10.0、かつMz/Mwが2.5〜10.0
特性(iii):溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはMT≧15
特性(iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満
特性(v):プロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
Figure 2019059810
(式(I),(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)
[2] 前記(a)のポリプロピレンにおける片末端不飽和結合がビニル基である、[1]に記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
[3] 前記(b)のシロキサンコポリマーにおけるR〜Rがメチル基である、[1]又は[2]に記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
[4] 前記(b)のシロキサンコポリマーにおける構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}のモル比率が0.8以下である、[1]ないし[3]のいずれかに記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
[5] 白金触媒存在下で前記(a)のポリプロピレンと前記(b)のシロキサンコポリマーを反応させる、[1]ないし[4]のいずれかに記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
[6] 前記(a)のポリプロピレンが、下記一般式(3)で表される遷移金属化合物を触媒として用いて製造されたものである、[1]ないし[5]のいずれかに記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
Figure 2019059810
(式(3)中、R15およびR16は、それぞれ独立して、炭素数4〜16の、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を含有する複素環基を表し、R17およびR18は、それぞれ独立して、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基、およびハロゲン原子から選ばれる基を置換基として有するアリール基、または炭素数6〜16の、窒素原子、酸素原子、もしくは硫黄原子を含有する複素環基を表し、X12およびY12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q12は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表す。)
[7] (a)片末端不飽和結合を有するポリプロピレンと、(b)下記式(I)で表される構造単位(以下「構造単位(I)」と称す。)及び下記式(II)で表される構造単位(以下「構造単位(II)」と称す。)を有するシロキサンコポリマーとの反応物であるシリル化ポリプロピレンであって、
(a)のポリプロピレンが、長鎖分岐構造を有し、かつ下記(i)〜(v)の特性を有することを特徴とするシリル化ポリプロピレン。
特性(i):MFRが0.1〜30.0g/10分
特性(ii):Mw/Mnが3.0〜10.0、かつMz/Mwが2.5〜10.0
特性(iii):溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはMT≧15
特性(iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満
特性(v):プロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
Figure 2019059810
(式(I),(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)
[8] 前記(a)のポリプロピレンにおける片末端不飽和結合がビニル基である、[7]に記載のシリル化ポリプロピレン。
[9] 前記(b)のシロキサンコポリマーにおけるR〜Rがメチル基である、[7]又は[8]に記載のシリル化ポリプロピレン。
[10] 前記(b)のシロキサンコポリマーにおける構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}のモル比率が0.8以下である、[7]ないし[9]のいずれかに記載のシリル化ポリプロピレン。
[11] (A)[7]ないし[10]のいずれかに記載のシリル化ポリプロピレン、及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物。
[12] 前記(B)熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である、[11]に記載の樹脂組成物。
[13] 前記(B)熱可塑性樹脂100重量部に対して、前記(A)シリル化ポリプロピレンを0.01〜10,000重量部含有する、[11]又は[12]に記載の樹脂組成物。
本発明によれば、従来の改質剤に比べてポリプロピレン等の熱可塑性樹脂と親和性が高く、かつ表面改質効果の高いシリコーン−ポリプロピレンブロック共重合体であるシリル化ポリプロピレンを、低コストでエネルギー効率よく、かつブロック構造の選択性高く製造することができ、このシリル化ポリプロピレンを用いて、透明性等のポリプロピレン等の熱可塑性樹脂本来の特性を損なうことなく、防汚性等の表面特性を効果的に改善することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
〔シリル化ポリプロピレン〕
本発明のシリル化ポリプロピレンは、(a)片末端不飽和結合を有するポリプロピレンと、(b)下記式(I)で表される構造単位(以下「構造単位(I)」と称す。)及び下記式(II)で表される構造単位(以下「構造単位(II)」と称す。)を有するシロキサンコポリマーとを反応させてなり、(a)のポリプロピレンが、長鎖分岐構造を有し、かつ下記(i)〜(v)の特性を有することを特徴とする。
特性(i):MFRが0.1〜30.0g/10分
特性(ii):Mw/Mnが3.0〜10.0、かつMz/Mwが2.5〜10.0
特性(iii):溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはMT≧15
特性(iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満
特性(v):プロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
Figure 2019059810
(式(I),(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)
[(a)片末端不飽和結合を有するポリプロピレン]
<片末端不飽和結合>
本発明において、(a)片末端不飽和結合を有するポリプロピレン(以下、「片末端不飽和ポリプロピレン」という)は、ポリプロピレン構造の少なくとも1つの末端に不飽和結合を有し、かつ、少なくとも1つの末端に不飽和結合を有さない(即ち、飽和結合を有する。)ものである。直鎖ポリプロピレンの場合、2つの末端のうち、1つの末端にのみ不飽和結合を有する。分岐ポリプロピレンの場合は、3以上の末端のうち、少なくとも1つの末端に不飽和結合を有し、かつ、少なくとも1つの末端に不飽和結合を有さない。
片末端不飽和結合としては、ビニリデン基、ビニレン基、ビニル基等が挙げられるが、好ましくはビニリデン基、ビニル基であり、より好ましくはビニル基である。
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、好ましくは下記の一般式(1)で表される。
Figure 2019059810
(式(1)中、PPはポリプロピレン構造を表し、Rは水素原子又はメチル基である。)
上記一般式(1)中、Rは、変性反応の効率や選択性の観点から、好ましくは水素原子である。
<末端不飽和結合率>
(a)片末端不飽和ポリプロピレンの末端不飽和結合率(%)は、13C−NMRとH−NMR測定結果より以下の式に基づいて求めることができる。
末端不飽和結合率(%)=不飽和結合末端数/開始末端数
=不飽和結合末端数/{(全末端数−長鎖分岐数)/2}
全末端数
=i−ブチル末端数+n−プロピル末端数+n−ブチル末端数+2,3−ジメチルブチル末端数+ビニル末端数+ビニリデン末端数+ビニレン末端数
不飽和結合末端数=ビニル末端数+ビニリデン末端数+ビニレン末端数
13C−NMR測定から求めるもの)
イソブチル末端数/プロピレンモノマー1,000個
=1000×(22.52,23.79,25.76,47.42ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
Sααは、H.N.Chengによる「Macromolecules 1984,17,1950」の表記法に従う。
n−プロピル末端数/プロピレンモノマー1,000個
=1000×(14.47,30.48,39.64ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
n−ブチル末端数/プロピレンモノマー1,000個
=1000×(14.11,23.21,36.90ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
2,3−ジメチルブチル末端数/プロピレンモノマー1,000個
=1000×(16.23,17.66,36.42,42.99ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
長鎖分岐数/プロピレンモノマー1,000個
=1000×(31.60,44.00,44.69ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
H−NMR測定から求めるもの)
ビニル末端数/プロピレンモノマー1,000個
=2000×(4.9−5.1,5.7−5.9ppm領域のビニルシグナルの積分値)/(3.0−0.2ppm領域の主鎖由来のシグナルの積分値)
ビニリデン末端数/プロピレンモノマー1,000個
=3000×(4.69,4.74ppmのビニリデンシグナルの積分値)/(3.0−0.2ppm領域の主鎖由来のシグナルの積分値)
ビニレン末端数/プロピレンモノマー1,000個
=3000×(5.3−5.5ppm領域のビニレンシグナルの積分値)/(3.0−0.2ppm領域の主鎖由来のシグナルの積分値)
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンの末端不飽和結合率は、90%以上が好ましく、より好ましくは92%以上であり、更に好ましくは95%以上である。末端不飽和結合率が高い程、シリル化ポリプロピレンの収量が増加し、低コストで、エネルギー効率よく、かつブロック構造のシリル化ポリプロピレンを高い選択性で製造することができる。
なお、(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、剛性および耐熱性を阻害しない限り、ポリプロピレン側鎖を持つ、分岐型の片末端不飽和ポリプロピレンであってもよい。
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、本発明の効果が損なわれない範囲で、主鎖中にプロピレン以外のコモノマー、例えば、エチレンや1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン、その他のコモノマーに由来するセグメントを含んでいても良いが、製造されるシリル化ポリプロピレン及びそれを含む樹脂組成物の耐熱性や粘弾性等の機械的特性の観点から、好ましくはプロピレンの単独重合体が用いられる。
<長鎖分岐構造>
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、長鎖分岐構造を有することが好ましい。
長鎖分岐構造については、Macromol.Chem.Phys.2003,vol.204,1738に詳細な説明があるが、以下の通りである。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレンは、下記構造式(X)に示すような特定の分岐構造を有する。構造式(X)において、Ca、Cb、Ccは、分岐炭素に隣接するメチレン炭素を示し、Cbrは、分岐鎖の根元のメチン炭素を示し、P、P、Pは、ポリプロピレン残基を示す。
、P、Pは、それ自体の中に、構造式(X)に記載されたCbrとは、別の分岐炭素(Cbr)を含有することもあり得る。
Figure 2019059810
このような分岐構造は、13C−NMR分析により同定される。各ピークの帰属は、Macromolecules,Vol.35、No.10.2002年、3839−3842頁の記載を参考にすることができる。すなわち、43.9〜44.1ppm,44.5〜44.7ppm及び44.7〜44.9ppmに、それぞれ1つ、合計3つのメチレン炭素(Ca、Cb、Cc)が観測され、31.5〜31.7ppmにメチン炭素(Cbr)が観測される。上記の31.5〜31.7ppmに観測されるメチン炭素を、以下、分岐メチン炭素(Cbr)と略称することがある。
分岐メチン炭素Cbrに近接する3つのメチレン炭素が、ジアステレオトピックに非等価に3本に分かれて観測されることが特徴である。
13C−NMRで帰属されるこのような分岐鎖は、ポリプロピレンの主鎖から分岐した炭素数5以上のポリプロピレン残基を示し、それと炭素数4以下の分岐とは、分岐炭素のピーク位置が異なることにより、区別できるので、本発明においては、この分岐メチン炭素のピークが確認されることにより、長鎖分岐構造の有無を判断することができる。
なお、本発明における13C−NMRの測定方法については、下記の通りである。
13C−NMR測定方法)
試料200mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ溶解し、13C−NMR測定を行う。
13C−NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて行う。
試料の温度120℃、プロトン完全デカップリング法で測定を実施する。その他の条件は以下の通りである。
パルス角:90°
パルス間隔:4秒
積算回数:20000回
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とした。
44ppm付近のピークを使用して長鎖分岐量を算出することができる。
<特性(i):MFR>
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30.0g/10分、好ましくは0.3〜20.0g/10分、さらに好ましくは0.5〜10.0g/10分である。MFRが上記下限値を下回るものは、流動性不足となり、押出成形に対して押出機の負荷が高すぎるなどの問題が生じ、一方、上記上限値を上回るものは、溶融張力不足により、高溶融張力材としての特性が乏しくなり、高温での押出ラミネート成形ができなくなってしまう。
なお、MFRは、ISO 1133:1997に準拠して測定したもので、単位はg/10分である。具体的な測定方法は実施例の項に記載される通りである。
<特性(ii):分子量分布>
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、分子量分布が比較的広いことが好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる分子量分布Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が3.0〜10.0、好ましくは3.5〜8.0、より好ましくは4.1〜6.0の範囲である。
さらに、分子量分布の広さをより顕著に表すパラメータとして、Mz/Mw(ここで、MzはZ平均分子量である)が2.5〜10.0、好ましくは2.8〜8.0、より好ましくは3.0〜6.0の範囲である。
分子量分布の広いものほど押出成形加工性が向上するが、Mw/MnおよびMz/Mwがこの範囲にあるものは、押出成形加工性に、特に優れるものである。
なお、Mn、Mw、Mzの定義は、「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算可能である。
GPCの具体的な測定法は、以下の通りである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
Mw/Mnを3.0〜10.0、Mz/Mwを2.5〜10.0にするには、プロピレン重合の温度や圧力条件を変えるか、または、最も一般的な手法としては、水素等の連鎖移動剤をプロピレン重合時に添加する方法により、容易に調整を行なうことができる。さらに、後述する触媒の種類、触媒を2種以上使用する場合は、その量比を変えることで制御することができる。
なお、本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンの数平均分子量(Mn)は、製造されるシリル化ポリプロピレン及びそれを含む樹脂組成物の耐熱性や粘弾性等の機械的特性の観点から、通常8,000以上、好ましくは9,000以上、より好ましくは10,000以上である。またその数平均分子量は、通常200,000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下であり、更に好ましくは70,000以下である。(a)片末端不飽和ポリプロピレンの数平均分子量が上記上限値以下であると、(a)片末端不飽和ポリプロピレンの機械物性とシリル化ポリプロピレンの物性を両立し易い。(a)片末端不飽和ポリプロピレンの数平均分子量が上記下限値以上であると、シリル化ポリプロピレンの製造が容易である。
<特性(iii):溶融張力(MT)>
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、溶融張力(MT)(単位:g)が
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7
又は
MT≧15
である。
ここでMTは、(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm、シリンダー径:9.55mm、シリンダー押出速度:20mm/分、引き取り速度:4.0m/分、温度:230℃の条件で、測定したときの溶融張力を表し、単位はグラムである。ただし、試料のMTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。また、MFRの測定条件、単位は、前述の通りである。
この規定は、長鎖分岐構造を有する(a)片末端不飽和ポリプロピレンが充分な溶融張力を有するための指標であり、一般に、MTは、MFRと相関を有していることから、MFRとの関係式によって記述している。
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.9
又は
MT≧15
であることが好ましく、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+1.1
又は
MT≧15
であることがより好ましい。
(a)片末端不飽和ポリプロピレンのMTの上限値については、これを特に設ける必要は無いが、MTが40gを超えるような場合には、上記測定法では、引き取り速度が著しく遅くなり、測定が困難となる。このような場合は、樹脂の延展性も低下しているものと考えられるため、好ましくは40g以下、より好ましくは35g以下、さらに好ましくは30g以下である。
上記のMTの条件を満たすためには、(a)片末端不飽和ポリプロピレンの長鎖分岐量を増大させて、溶融張力を高くすればよく、後述する好ましい触媒の選択やその組み合わせ、およびその量比、ならびに予備重合条件を制御して長鎖分岐を多く導入することにより可能となる。
<特性(iv):分岐指数g’>
長鎖分岐構造を有する(a)片末端不飽和ポリプロピレンが分岐を有することの直接的な指標として、分岐指数g’を挙げることができる。g’は、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]lin によって与えられ、長鎖分岐構造が存在すると、1よりも小さな値をとる。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に、記載されており、当業者にとって公知の指標である。
g’は、例えば、下記に記すような光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが100万の時に、g’が0.30以上1.00未満であり、好ましくは0.55以上0.98以下、より好ましくは0.75以上0.96以下、更に好ましくは0.78以上0.95以下である。
以下に詳細に記述するとおり、本発明に係る長鎖分岐構造を有する(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、その重合機構から、分子構造としては、櫛型鎖が生成すると考えられ、g’が0.30未満であると、主鎖が少なく側鎖の割合が極めて多いこととなり、このような場合には、溶融張力が向上しなかったり、ゲルが生成するおそれがある。一方、g’が1.00である場合には、これは分岐が存在しないことを意味し、溶融張力が不足しやすくなる傾向にあり、ネックインが大きくなるおそれがある。
なお、g’の下限値が上記の値であると好ましいのは、以下の理由による。
「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering vol.2」(John Wiley & Sons 1985 p.485)によると、櫛型ポリマーのg’値は、以下の式で表されている。
Figure 2019059810
ここで、gは、ポリマーの回転半径比で定義される分岐指数であり、εは、分岐鎖の形状と溶媒によって決まる定数で、同文献のp.487のTable3によれば、良溶媒中の櫛型鎖では、おおよそ0.7〜1.0程度の値が報告されている。λは、櫛型鎖における主鎖の割合、pは、平均の分岐数である。
この式によると、櫛型鎖であれば、分岐数が極めて大きくなる、すなわち、pが無限大の極限で、g’=gε=λεとなり、λεの値以下にはならないことになり、一般に下限値が存在することになる。
一方、電子線照射や過酸化物変成の場合において生じると考えられる、従来公知のランダム分岐鎖の式は、同文献の485ページ 式(19)で与えられており、これによると、ランダム分岐鎖では、分岐点が多くなるにつれ、g’およびg値は、特に下限値が存在することなく、単調に減少する。
つまり、本発明において、g’値に下限値があるということは、本発明に用いる長鎖分岐構造を有する(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、櫛型鎖に近い構造を有しているということを意味しており、これにより、電子線照射や過酸化物変成によって生成されるランダム分岐鎖との区別が、より明確となる。
また、g’が上記の範囲にある櫛型鎖に近い構造を有する分岐状ポリマーにおいては、290℃以上の高温で混練した際や、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さいため、押出ラミネート成形性の低下(ネックイン増大や低速引取りでのレゾナンス現象発生)が生じにくいため、好ましい。
具体的なg’の算出方法は、以下の通りである。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社製のAlliance GPCV2000を用いる。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社製GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterizat
ion−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science
Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
(分岐指数(g’)の算出)
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐構造が導入されると、同じ分子量の線状のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐構造が導入されるに従い、同じ分子量の線状ポリマーの極限粘度([η]lin)に対する分岐状ポリマーの極限粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)は、小さくなっていく。
したがって、分岐指数(g’=[η]br/[η]lin)が1より小さい値になる場合には、長鎖分岐構造を有することを意味する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標)グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
分岐指数g’を0.30以上、1.00未満にするには、長鎖分岐を多く導入することにより達成され、後述する好ましい触媒の選択やその組み合わせ、およびその量比、ならびに予備重合条件を制御して重合することで可能となる。
<特性(v):プロピレン単位3連鎖のmm分率>
本発明で用いる長鎖分岐構造を有する(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、立体規則性の高い構造を有するものが好ましい。ポリプロピレンの立体規則性の高さを表す因子として、「トライアッド分率」が用いられる。トライアッドはポリプロピレンの隣り合う側鎖メチル基の相対的配置の連続性を示すもので、この値が高ければ高いほど、立体規則性が高いと解釈される。メソトライアッド(mm)分率とは、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる3個のプロピレンモノマー単位が連続してメソ結合している連鎖の中心のプロピレン単位の、全プロピレン単位に対する割合を百分率で表したものである。トライアッドは通常、13C−NMRにおけるメチル基のシグナルによって決定することができる。ピークの帰属は例えば、A.Zambelli等による「Macromorecules 1975,8,687」で提案されたピークの帰属に従い、決定することができる。
以下に、mm分率決定のより具体的な方法を述べる。
プロピレン単位を中心として頭−尾結合した3連鎖の中心プロピレンのメチル基に由来するピークは、その立体配置に応じて、以下の3つの領域に生じる。
mm:約24.3〜約21.1ppm
mr:約21.2〜約20.5ppm
rr:約20.5〜約19.8ppm
各領域の化学シフト範囲は、分子量や、共重合体組成により若干シフトするが、上記3領域の識別は、容易である。
ここで、mm、mrおよびrrは、それぞれ下記の構造で表される。
Figure 2019059810
mm分率は、以下の数式で算出される。
mm分率=mm領域のピーク面積/(mm領域のピーク面積+mr領域のピーク面積+
rr領域のピーク面積)×100 [%]
本発明で用いる長鎖分岐構造を有する(a)片末端不飽和ポリプロピレンは、13C−NMRによって得られるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上の立体規則性を有するものである。前述の通り、mm分率は、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合であるので、上限は100%である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど高度に制御されていることを意味する。mm分率がこの値より小さいと、製品の弾性率が低下し、押出ラミネート積層体の表面耐傷付き性付与効果に劣る傾向にある。
従って、本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンのmm分率は95%以上であり、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上である。
13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率の測定法の詳細は、以下の通りである。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
・フリップ角:90度
・パルス間隔:10秒
・共鳴周波数:100MHz以上
・積算回数:10,000回以上
・観測域:−20ppmから179ppm
・データポイント数:32768
mm分率の解析は、前記の条件により測定された13C−NMRスペクトルを用いて行う。
スペクトルの帰属は、Macromolecules,8巻,687頁(1975年)やPolymer,30巻,1350頁(1989年)を参考に行う。
なお、mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に詳細に記載されており、本発明においても、この方法に従って行うものとする。
(a)片末端不飽和ポリプロピレンのmm分率を95%以上にするには、高結晶性の重合体を達成する重合触媒により可能であり、後述する好ましい触媒を使用して重合することで可能となる。
<融点(Tm)>
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンの融点(Tm)は、特に限定されるものではないが、製造されるシリル化ポリプロピレン及びそれを含む樹脂組成物の耐熱性や粘弾性等の機械的特性の観点から、高い方が好ましく、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり、その上限は、通常170℃以下である。
なお、(a)片末端不飽和ポリプロピレンの融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって求められる。
具体的な測定方法は後述の実施例の項に記載する。
<その他の特性>
本発明に係る長鎖分岐構造を有する(a)片末端不飽和ポリプロピレンの更なる付加的特徴として、歪み速度0.1s−1での伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax(0.1))が好ましくは6.0以上であることが挙げられる。
歪硬化度(λmax(0.1))は、溶融時強度を表す指標であり、この値が大きいと、溶融張力が向上する効果がある。その結果、例えば押出温度290℃以上の押出ラミネート成形においても、溶融張力が保持されるため、ネックインの低減効果が得られるばかりでなく、溶融膜に均一に応力が伝搬するために、レゾナンス現象と称されるフィルム厚みの不均一現象やエッジ部の伸縮による不安定現象が抑制される。この歪硬化度が6.0以上であると、十分な押出ラミネート成形性向上効果が発現し、好ましくは8.0以上である。
歪硬化度:λmax(0.1)の算出方法の詳細を以下に記す。
温度180℃、歪み速度=0.1−1の場合の伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度ηE(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。
具体的には、まず、伸長粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては、伸長粘度の測定データは離散的であることを考慮し、種々の平均法を利用する。たとえば隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法等が挙げられる。
伸長粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり、次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には、一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸長粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは、低歪み領域では時間と共に減少傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸長粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。そこで歪み量が0.1〜2.5程度の範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めて、その点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿
する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηEの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmax(0.1)と定義する。
なお、伸長粘度の具体的な測定条件は、後述の実施例の項に記載する通りである。
<(a)片末端不飽和ポリプロピレンの製造方法>
本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンを製造する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の末端不飽和ポリプロピレンの製造方法を適宜用いることができる。従来技術には、熱分解やラジカル分解によって分子鎖の切断によってポリプロピレン分子の片末端、乃至両末端に不飽和結合を導入する技術も知られているが、本発明で用いる(a)片末端不飽和ポリプロピレンの末端不飽和結合は、分子量制御のしやすさ、末端プロピレンの純度の向上等の理由により、熱分解法を用いずにポリプロピレンの末端に導入されたものであることが好ましい。より具体的には、触媒として遷移金属化合物を用いたプロピレンの配位重合によって製造され、重合終了末端が高い割合でビニル基となる手法が経済的な観点から好ましい。
例えばステレオリジッドなC2対称架橋メタロセン触媒を用い、高温下でプロピレンを重合することによりβ−メチル基脱離反応が頻発することを利用し、末端にビニル基を導入する方法(例えば特表2001−525461号公報)、特定の部位に嵩高い置換基を有する錯体を用いることにより、または特定の部位に複素環基を有する錯体を用いることにより、比較的低温でのβメチル脱離反応の頻度を高めることで高い立体規則性を保ちながら製造する方法(例えば特開平11−349634号公報、特開2009−299045号公報等)、アイソタクチック構造選択的メタロセン触媒によるプロピレン中、塩化ビニルなど脱離しやすい官能基を持つビニルコモノマーを共重合させ、このコモノマーが挿入と同時にβ官能基脱離を起こし選択的に末端ビニル基を持つマクロモノマーを製造する方法(Gaynor,S.G.Macromolecules 2003,36,4692−4698)や、プロピレンの2,1−挿入が優先するプロピレン重合触媒(例えば、ピリジルジイミン鉄(II)錯体に代表されるような後周期遷移金属錯体)を用いて、比較的困難なβ−メチル基脱離過程を経ることなく、β−水素脱離を経て末端ビニル基を導入する方法(Brookhart,M.et.al.Macromolecules 1999,32,2120)等を挙げることができる。
これらの製造方法のうち、特定の部位に複素環基を有する錯体を触媒として用いることにより、比較的低温でのβメチル脱離反応の頻度を高めることで高い立体規則性を保ちながら製造する方法(例えば、特開2009−299045号公報)が、高立体規則性と高ビニル選択性の両立の観点から好ましく、特に、下記一般式(2)で表される遷移金属化合物を触媒として用いて製造する方法がより好ましい。
Figure 2019059810
(式(2)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数4〜16の、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を含有する複素環基を示す。また、R13およびR14は、それぞれ独立して、炭素数6〜16の、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ホウ素原子、およびリン原子から選ばれる少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよい置換基で置換されていてもよいアリール基、または炭素数6〜16の、窒素原子、酸素原子、もしくは硫黄原子を含有する複素環基を表す。X11およびY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q11は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表す。)
上記R11およびR12の炭素数4〜16の、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を含有する複素環基は、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、または置換された2−フルフリル基であり、より好ましくは置換された2−フリル基である。
これは、複素環基上に適当な大きさの置換基を導入することにより、複素環と遷移金属上の配位場、成長ポリマー鎖との相対的な位置関係を適切にすることができ、末端にビニル基を高選択的に導入した末端不飽和ポリプロピレンを得ることができることによる。
置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、および置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14は、炭素数6〜16の、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ホウ素原子、およびリン原子から選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含有してもよい置換基で置換されていてもよいアリール基、または炭素数6〜16の、窒素原子、酸素原子、もしくは硫黄原子を含有する複素環基であるが、特に、R13とR14を、より嵩高くすることで、より立体規則性が高く、異種結合の少ない末端不飽和ポリプロピレンを得ることができる。
そこで、R13およびR14は、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン原子を置換基として有するアリール基が好ましく、そのようなR13およびR14の具体例としては、4−イソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、2,3―ジメチルフェニル基、3,5―ジ−t−ブチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基である。
また、R13およびR14としては、更に好ましくは、炭素数6〜16になる範囲で、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン原子を置換基として有するフェニル基である。また更に、その置換される位置は、フェニル基上の4位が好ましい。そのようなR13およびR14の具体例としては、4−イソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ビフェニリル基、4−クロロフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基である。また、R13とR14が互いに同一である場合が好ましい。
一般式(2)中、X11およびY11は、補助配位子である。したがって、この目的が達成される限りX11とY11の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表す。
一般式(2)中、Q11は、2つの五員環を結合する、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、および炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基、またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
なお、前記一般式(2)で表される遷移金属化合物は、通常、後述する共触媒と組み合わせて用いられる。好ましくは有機アルミニウムオキシ化合物、触媒前駆体と反応してこれをカチオンに変換することが可能なイオン性化合物、ルイス酸、イオン交換性層状ケイ酸塩などが共触媒として用いられ、特に好ましくは有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状ケイ酸塩が用いられる。また上記組み合わせにおいて、さらに有機アルミニウム化合物を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(2)で表される遷移金属化合物の中でも、下記一般式(3)で表される遷移金属化合物が、トルエンなどの芳香族炭化水素系の有機溶媒に対する溶解性が良好であり、遷移金属化合物の精製や触媒調製における取扱いの観点から好ましい。
Figure 2019059810
(式(3)中、R15およびR16は、それぞれ独立して、炭素数4〜16の、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を含有する複素環基を表し、R17およびR18は、それぞれ独立して、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基、およびハロゲン原子から選ばれる基を置換基として有するアリール基、または炭素数6〜16の、窒素原子、酸素原子、もしくは硫黄原子を含有する複素環基を表し、X12およびY12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q12は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表す。)
置換基で置換されていてもよいの製造方法としては、制限はされないが、前述の通り、経済的な観点でプロピレンの配位重合によって製造することが好ましい。その重合条件は目的物が得られる範囲において特に制約はなく、溶液重合、スラリー重合、実質的に溶媒を使用しない液相無溶媒重合(バルク重合)、気相重合、溶融重合などが使用可能であり、また連続重合、回分式重合および、いわゆる多段重合を採用してもよい。
重合温度、重合圧力および重合時間にも特に制限はないが、通常は、生産性や末端ビニル基の選択性を考慮して、適宜設定を行うことができる。
重合温度としては、通常0℃以上、好ましくは30℃以上、更に好ましくは50℃以上、特に好ましくは70℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは100℃以下の範囲である。重合圧力としては、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上、また、通常100MPa以下、好ましくは20MPa以下、更に好ましくは5MPa以下の範囲である。
上記の方法で製造した場合、得られる末端不飽和ポリプロピレン分子の末端は、通常は、重合反応の開始末端がアルキル基、重合反応の終了末端が高い確率でビニル基になるため好ましい。なおこの場合、マクロモノマー分子の両方の末端がビニル基になる可能性は、通常極めて低くなる。
[(b)シロキサンコポリマー]
本発明で用いる(b)シロキサンコポリマーは、下記構造単位(I)及び構造単位(II)を有するシロキサンコポリマーである。
Figure 2019059810
(式(I),(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)
式(I),(II)中、R〜Rは、それぞれが独立に、炭素数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基であり、特にメチル基であることが好ましい。
本発明で用いる(b)シロキサンコポリマーは、上記構造単位(I)と(II)を含む。構造単位(I)は上述の(a)片末端不飽和ポリプロピレンとの反応に必要な構造単位である。構造単位(II)はシリル化で期待される撥水性、撥油性、防汚性、接着性などの表面特性や、ガス透過性に優れた性質を示すために必要な構造単位である。本発明で用いる(b)シロキサンコポリマーとしては、構造単位(I)は末端不飽和ポリプロピレンとの反応に必要な量含まれていればよく、構造単位(I)は多すぎない方が好ましい。構造単位(I)が多くなり過ぎる場合、(a)片末端不飽和ポリプロピレンと(b)シロキサンコポリマーとの反応中に副反応を併発する場合が多くなり、選択性の観点で好ましくない。一方で構造単位(II)は、シリル化で期待される性質を高めるためには、多い方が好ましい。
そのような観点から、本発明で用いる(b)シロキサンコポリマーは、好ましくは、構造単位(I)及び構造単位(II)の合計(個数)に占める構造単位(I)(個数)の割合、構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}が0.8以下であることが好ましい。
なお、ここでそれぞれの構造単位(I)と(II)の個数を算出する方法は以下のとおりである。
まず、構造単位(I)(個)と構造単位(II)(個)は、以下の式(4)の関係にある。
シロキサンコポリマーの数平均分子量Mn(g/mol)
=両末端部位の分子量+構造単位(I)(個)×構造単位(I)の分子量+構造単位(II)(個)×構造単位(II)の分子量 ・・・(4)
構造単位(I)(個)は、それぞれのシロキサンコポリマーのSi−H反応基置換比率(mmol/g)から計算することができる。構造単位(II)(個)を計算するためには、シロキサンコポリマーの数平均分子量Mnと、両末端部位の分子量、構造単位(I)の分子量、構造単位(II)の分子量が必要となる。ここでは、簡易的に、両末端部位の置換基、R〜Rが、いずれもメチル基の場合について説明する。両末端部位、構造単位(I)、構造単位(II)の分子量は、それぞれ[a]、[b]、[c]で示される構造単位の分子量として表すことができる。それらの構造に対応する分子量は、Mn[a]=162.38、Mn[b]=60.13、Mn[c]=74.15となる。
Figure 2019059810
一方、シロキサンコポリマーの数平均分子量(Mn)については、それぞれのシロキサンコポリマーの25℃における動粘度(cSt)ηを用い、Barryの式logη=1.00+0.0123×Mn0.5(J.Appl.Physics,1946,17,1020)を用いて計算することができる。ここでηは25℃における動粘度(cSt)、Mnは数平均分子量である。
このMnと、構造単位(I)(個)、両末端部位、構造単位(I)、構造単位(II)の分子量を式(3)に代入することで、構造単位(II)(個)を計算することができる。
構造単位(I)と(II)の個数は、構造単位(I)と(II)の仕込み量からも計算できる。
本発明で用いる(b)シロキサンコポリマーは、構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}の比率が、0.6以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.4以下であり、一方、この比率は通常0.01以上、好ましくは0.05以上である。上記範囲では、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂との親和性とシリル化による効果を、バランスよく得やすい傾向がある。
本発明で用いる(b)シロキサンコポリマーの25℃における動粘度ηは、通常1cSt以上であり、好ましくは5cSt以上であり、より好ましくは10cSt以上であり、特に好ましくは50cSt以上である。動粘度が上記下限以上であると、(b)シロキサンコポリマーの分子量が十分に大きく、その分構造単位(II)を多く保有することになり、撥水性、撥油性、防汚性、接着性などの表面特性や、ガス透過性の効果が大きくなる。
本発明で用いる(b)シロキサンコポリマーの数平均分子量(Mn)の範囲は、通常500以上であり、好ましくは1000以上である。動粘度と同様の理由で、(b)シロキサンコポリマーの分子量が大きいほど、撥水性、撥油性、防汚性、接着性などの表面特性や、ガス透過性の効果が大きくなるが、(b)シロキサンコポリマーの数平均分子量(Mn)の上限は通常20000以下である。ここで、(b)シロキサンコポリマーの数平均分子量は、前述の通り、25℃における動粘度(cSt)ηを用い、Barryの式logη=1.00+0.0123×Mn0.5(J.Appl.Physics,1946,17,1020)を用いて計算することができる。
本発明に好適な(b)シロキサンコポリマーの市販品としては、後掲の実施例において使用したNusil Technology社製「XL−116」の他、以下のようなものが挙げられる。なお、以下において、各々のシロキサンコポリマーについて、構造単位(I)(個)と構造単位(II)(個)から、構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}を計算した結果も併記した。
Nusil Technology社製、製品名「XL−110」
メチルヒドロシロキサンジメチルシロキサンコポリマー
数平均分子量:1,047
動粘度(25℃):4cSt
Si−H反応基置換比率:7.0mmol/g
屈折率:1.40
構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}:0.55
Nusil Technology社製、製品名「XL−115」
メチルヒドロシロキサンジメチルシロキサンコポリマー
数平均分子量:3,229
動粘度(25℃):50cSt
Si−H反応基置換比率:4.2mmol/g
屈折率:1.40
構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}:0.31
[(a)片末端不飽和ポリプロピレンと(b)シロキサンコポリマーとの反応]
本発明における(a)片末端不飽和ポリプロピレンの(b)シロキサンコポリマーによるヒドロシリル化反応においては、その一つの態様において、遷移金属錯体の触媒を使用する。この触媒としては、周期律表第8〜10族の遷移金属錯体が好ましく、例えば、白金錯体、ロジウム錯体、コバルト錯体、パラジウム錯体及びニッケル錯体などが挙げられる。本発明においては、これらのうち白金触媒を用いることが好ましく、中でも塩化白金酸及び白金オレフィン錯体などの白金錯体を用いることが好ましい。触媒の使用量は、(a)片末端不飽和ポリプロピレンに対して、金属換算量として通常0.1〜1000重量ppm程度、好ましくは1〜500重量ppm、特に好ましくは5〜100重量ppmである。
(a)片末端不飽和ポリプロピレンと(b)シロキサンコポリマーの仕込み比率(モル比)は通常1:0.1〜30、好ましくは1:0.5〜10である。(a)片末端不飽和ポリプロピレンと(b)シロキサンコポリマーが1:1で反応したシリル化ポリプロピレンを得るためには、(a)片末端不飽和ポリプロピレンよりも(b)シロキサンコポリマーを過剰に仕込む必要がある。
ヒドロシリル化反応は、溶融状態で行ってもよく、溶液状態で行ってもよい(以下、それぞれ「溶融反応」及び「溶液反応」と称することがある。)。溶融反応の場合、反応温度は、(a)片末端不飽和ポリプロピレンの溶融温度以上とすることを要し、通常100〜250℃程度、好ましくは150〜200℃である。溶液反応の場合、反応温度は、通常−30〜150℃程度、好ましくは30〜140℃である。反応時間は、1分〜20時間程度である。ヒドロシリル化反応は、通常、常圧において行うが、加圧下で行ってもよい。
上記溶融反応には、典型的な加工処理装置(例えば押出機、バッチミキサー及びホットプレスなど)を用いることができる。反応は回分式で行っても連続式で行ってもよい。この溶融反応は、(a)片末端不飽和ポリプロピレンの溶融相で行う。この場合、(a)片末端不飽和ポリプロピレンと(b)シロキサンコポリマーと触媒である遷移金属錯体は、反応前に混合してもよく、反応器に逐次的に添加してもよい。
上記溶液反応においては、反応装置に特に制限はないが、例えば、回分式又は連続式の攪拌装置を有する槽型反応基などを使用することができる。溶液反応において用いる反応溶媒としては、炭化水素溶媒か、エーテル系溶媒などが挙げられる。炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びデカンなどの飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンなどの飽和脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。溶媒としては、炭化水素溶媒が好ましく、より好ましくは飽和脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素である。
溶媒の使用量は、(a)片末端不飽和ポリプロピレンと(b)シロキサンコポリマーが溶解している状態となる量であればよく、特に制限ないが、通常、(a)片末端不飽和ポリプロピレンと(b)シロキサンコポリマーの合計の濃度を5〜50重量%とする量であり、好ましくは10〜40重量%とする量である。
このようにして得られる本発明のシリル化ポリプロピレンのシリコーン含有量は、1〜50重量%、特に2〜45重量%、とりわけ3〜40重量%であることが好ましい。シリコーン含有量が上記下限以上であれば(b)シロキサンコポリマーによる改善効果を十分に得ることができ、上記上限以下であれば、熱可塑性樹脂との良好な相溶性が得られる。
また、本発明のシリル化ポリプロピレンの数平均分子量(Mn)は70,000〜105,000、特に75,000〜110,000であることが好ましく、分子量分布(Mw/Mn)は2.0〜4.2、特に2.5〜3.7であることが好ましく、融点(Tm)は125〜170℃、特に140〜160℃であることが好ましい。ここで、シリル化ポリプロピレンの分子量(Mw、Mn)、融点は、前述の(a)片末端不飽和ポリプロピレンにおけると同様の方法で測定することができる。
[シリル化ポリプロピレンの用途]
本発明のシリル化ポリプロピレンは、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂の改質、特にポリプロピレン材料の撥水性、撥油性、防汚性、接着性などの表面特性の改質、または極性樹脂を含む各種樹脂との相溶化、あるいは各種無機材料との複合化による機械物性の改良などに好適に使用することができる。
また、本発明のシリル化ポリプロピレンは、単独成形体として、ポリプロピレン同様の耐熱性、透明性、成形加工性を有しながら、シリコーンとしての撥水性、防汚性、離型性、ガス透過性などを有する特異な物性を有する材料として、各種用途に使用することができる。例えばその優れたガス透過性によって、酸素富化膜などの気体分離膜にも好適であり、またその優れた透明性によって、青果物などの食品等を包む包装材料にも好適である。
〔樹脂組成物〕
既存の樹脂の機械物性等の改良を目的とし、上記の本発明のシリル化ポリプロピレンを用いて、各種樹脂との組成物として使用することができる。
本発明の樹脂組成物は、(A)シリル化ポリプロピレン、(B)熱可塑性樹脂、及び任意にその他の成分を含有する樹脂組成物であり、以下(B)熱可塑性樹脂及び、その他の成分の詳細について記述する。
<(B)熱可塑性樹脂>
本発明で用いられる(B)熱可塑性樹脂は特に制限はなく、例えばポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂はそれぞれ1種単独で使用することもでき、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でもポリオレフィン樹脂が好ましく用いられる。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂は特に制限はなく、従来公知のポリオレフィン樹脂を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体などが挙げられる。中でも、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物においては、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、(A)シリル化ポリオレフィン、(B)熱可塑性樹脂以外の樹脂や添加剤等を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組み合わせと比率で併用しても良い。
(B)熱可塑性樹脂以外の樹脂としては、具体的には、例えば、ポリオレフィン樹脂に包含されないポリオレフィン類;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂等や各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、添加剤等としては、各種の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、造核剤、可塑剤、衝撃改良剤、相溶化剤、消泡剤、増粘剤、架橋剤、界面活性剤、滑剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、着色剤、無機結晶核剤等が挙げられる。
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が環境面で好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
造核剤としては、ソルビトール化合物及びその金属塩;安息香酸及びその金属塩;燐酸エステル金属塩;エチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスアクリル酸アミド、エチレンビスアクリル酸アミド、ヘキサメチレンビス−9,10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9,10−ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N’,N’’−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等のアミド化合物などが挙げられる。また、無機結晶核剤としては、タルク、カオリン、シリカ等が挙げられる。
本発明における樹脂組成物にこれら「その他の成分」を用いる場合、その含有量は限定されないが、樹脂組成物中に、通常0.01重量%以上、好ましくは0.2重量%以上で、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下であることが望ましい。
<樹脂組成物の配合割合>
樹脂組成物を構成する(A)シリル化ポリプロピレンと(B)熱可塑性樹脂との含有割合は限定されないが、(B)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(A)シリル化ポリプロピレンを、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上含有し、一方、通常10,000重量部以下、好ましくは1,000重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下で含有する。(A)シリル化ポリプロピレンの含有割合が前記下限値未満の場合は、樹脂組成物の均一性が低下する傾向がある。一方、(A)シリル化ポリプロピレンの含有割合が前記上限値を超過する場合は、樹脂組成物の機械的強度が低下する場合がある。
<樹脂組成物の調製>
(A)シリル化ポリプロピレンと(B)熱可塑性樹脂とを含有する本発明の樹脂組成物を用いて成形体とする場合、上述の各成分を原料として配合し、そのまま成形して成形体として得ることもできるが、予めこれらを混合して本発明の樹脂組成物を製造し、該樹脂組成物を成形して成形体とすることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上述の各成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。その混合方法は、原料成分が均一に分散混合できれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分布した組成物を得ることができる。
より均一な混合・分散のためには、所定量の上記原料成分を溶融混合することが好ましい。具体的には、例えば、樹脂組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱したり、全原料成分等を順次溶融させながら混合したりしてもよい。更には、上述の各成分のうち一部のみを樹脂組成物としておき、この樹脂組成物と他の成分とを配合して樹脂組成物の成形に供してもよい。
混合方法や混合条件は、各原料成分等が均一に混合されれば特に制限は無いが、生産性の点からは、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて原料を混合し、単軸押出機や二軸押出機のような連続混練機及びミルロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機で溶融混練する方法が好ましい。溶融混合時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150〜250℃で行う場合が多い。
<用途>
本発明の樹脂組成物の用途としては特に制限はないが、その優れた透明性、防汚性等の表面性状、ガス透過性等から、各種食品や飲料、医薬・医療品、化粧品、衣料、文具及びその他産業資材や工業資材等の包装用途に、好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
[評価方法]
<片末端不飽和ポリプロピレンの数平均分子量の測定>
試料約20(mg)をポリマーラボラトリー社製高温GPC用前処理装置PL−SP260VS用のバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHTを含有するo−ジクロロベンゼン(BHT濃度=0.5g/L)を加え、ポリマー濃度が0.1(重量%)になるように調製した。ポリマーを上記高温GPC用前処理装置PL−SP260VSで135℃に加熱して溶解させ、グラスフィルターにて濾過して試料を調製した。なお、このGPC測定において、グラスフィルターに捕捉されたポリマーはなかった。
次に、カラムとして、東ソー社製TSKgel GMH−HT(30cm×4本)およびRI検出器を装着したウォーターズ社製V2000を使用してGPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液注入量:524.5(μl)、カラム温度:135℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン、流量:1.0(ml/min)を採用した。分子量の算出は、以下のように行った。すなわち、標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびポリプロピレンの粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、該校正曲線に基づいて分子量の算出を行った。
なお、粘度式としては、[η]=K×Mαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38×10、α=0.70を使用し、ポリプロピレンに対しては、K=1.03×10、α=0.78を使用した。
<片末端不飽和ポリプロピレンの末端不飽和結合率の測定>
前述の方法で末端不飽和結合率(末端ビニル率)を測定した。
<片末端不飽和ポリプロピレンのNMR測定>
試料200〜300mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のNMR装置AVANCEIII400を用いた。
H−NMRの測定は試料の温度80℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回とした。
13C−NMRの測定は試料の温度80℃、パルス角90°、パルス間隔51.5秒、積算回数1024回とし、逆ゲートデカップリング法で測定した。
<片末端不飽和ポリプロピレンの融点(Tm)の測定>
Perkin Elmer社製PYRIS Diamond DSC示差走査熱量測定装置を使用して、試料(約5mg)を210℃で5分間融解後、10℃/分の速度で−20℃まで降温し、−20℃で5分保持した後に、10℃/分の速度で210℃まで昇温することにより融解曲線を得た。降温段階における主発熱ピークのピークトップ温度を結晶化温度Tcとした。また、融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとした。
<片末端不飽和ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)の測定>
ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠して測定した。単位はg/10分である。
<片末端不飽和ポリプロピレンの分子量(Mw,Mn,Mz)と分子量分布(Mw/Mn、(Mz/Mw)の測定>
前述した方法に従って、GPC測定により求めた。
<片末端不飽和ポリプロピレンの溶融張力(MT)の測定>
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。単位はグラム(g)である。
<片末端不飽和ポリプロピレンの分岐指数g’の測定>
前述した方法に従って、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCによって求めた。
<片末端不飽和ポリプロピレンのmm分率の測定>
前述した方法に従って、日本電子社製、GSX−400、FT−NMRを用い、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に記載の方法で測定した。単位は%である。
<片末端不飽和ポリプロピレンの伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax(0.1)の測定>
伸長粘度の測定を、以下の条件で行った。
・装置:Rheometorics社製Ares
・冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
・測定温度:180℃
・歪み速度:0.1/sec
・試験片の作成:プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成する。
λmax(0.1)の算出方法の詳細は、前述した通りである。
[使用樹脂]
<シロキサンコポリマー>
Nusil Technology社製、製品名「XL−116」
メチルヒドロシロキサンジメチルシロキサンコポリマー
数平均分子量:6,610
動粘度(25℃):100cSt
Si−H反応基置換比率:0.9mmol/g
屈折率:1.40
上記シロキサンコポリマーにおいて、構造単位(I)(個)と構造単位(II)(個)から、構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}を計算した結果、0.07であった。
[製造例1:片末端不飽和ポリプロピレンの製造]
<触媒の合成>
(1)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)400gを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーに蒸留水4,000g加えた後に濾過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4L加えた後に濾過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、濾過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃で2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
(2)触媒調製及び予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上で得られた化学処理スメクタイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム50mmol(濃度143mg/mLのヘプタン溶液)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(210μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(90μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
先ほどの化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム0.84mmol(濃度143mg/mLのヘプタン溶液)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後、更にトリイソブチルアルミニウム0.36mmol(濃度143mg/mLのヘプタン溶液)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にした後、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム12mmol(濃度143mg/mLのヘプタン溶液)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒52.8gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.64であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
<重合>
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40kgを導入した。これに水素4.4リットル(標準状態の体積として)、トリイソブチルアルミニウム0.12mol(濃度50g/Lのヘプタン溶液)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで、予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、16.5kgの重合体パウダー(以下、「PP−1」という)を得た。
触媒活性は、6880(g−PP/g−cat)であった。MFRは1.0g/10分であった。
<ペレットの製造>
重合体パウダー(PP−1)を、二軸押出機にて溶融混練して、片末端不飽和ポリプロピレンのペレット(X−1)を得た。
なお、二軸押出機には、テクノベル社製KZW−25を用い、スクリュー回転数は400RPM、混練温度は、ホッパー下から80、160、210、230(以降、ダイス出口まで同温度)℃設定とした。
このペレット(X−1)について、末端不飽和結合率、MFR、融点(Tm)、13C−NMR、GPC、分岐指数g’、溶融張力(MT)、伸長粘度(歪硬化度(λmax(0.1))の評価を行った。評価結果を表1に示した。
Figure 2019059810
[シリル化ポリプロピレンの製造]
<実施例1>
メカニカルスターラー付き500mLセパラブルフラスコに、上記製造例1で得られた、片末端不飽和ポリプロピレン(Mn66,600、100g、1.5mmol)とシロキサンコポリマーXL−116(Mn6,610、11.25g、1.73mmol)と脱水トルエン625mLを加え、15分間窒素バブリングした。その後、100℃まで昇温し、均一に撹拌した後に、Gelest Inc.社製 白金触媒SIP6831.2(白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液、白金含有量:2.1〜2.4重量%、0.015mL)を投入し、100℃で2.5時間撹拌した。その後、ヘプタンを375mL添加して85℃まで降温し、イソプロパノール(500mL)を撹拌しながら添加してポリマーを析出させた。その後さらにイソプロパノールを500mL加え室温まで冷却した。析出したポリマーは濾過により回収し、ヘプタン(1000mL×2回)、さらにアセトン(1000mL×2回)で洗浄した。得られたポリマーは70℃で減圧乾燥した(収量103.9g)。
H NMR測定の結果、末端ビニル基が消失したことを確認した。また、GPC測定より、分子量が増大したことを確認しており、これらの結果を合わせてヒドロシリル化反応が進行し、シロキサンコポリマーとポリプロピレンが結合したことが明らかとなった。
原料の片末端不飽和ポリプロピレンと得られたシリル化ポリプロピレンの重量変化率より求めたこのシリル化ポリプロピレンのシリコーン含有量は3.9重量%で、その物性は以下の通りであった。
Mn:102,000
Mw/Mn:3.24
Tm:151.3℃
[樹脂組成物の評価]
樹脂組成物の評価には下記の原料と材料を用いた。
<(A)シリル化ポリプロピレン>
(A)−1:実施例1で得られたシリル化ポリプロピレン
<(B)熱可塑性樹脂>
(B)−1:ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、製品名ノバテックFW4B:プロピレン・エチレン・ブテン共重合体、MFR(230℃、荷重2.16kg)7g/10分、密度0.90g/cm、エチレン含有量1.5重量%、ブテン含有量2.3重量%)
<離型剤>
(C)−1:(比較例用):ダウコーニング社製シリコーンコンセントレートBY27−001、(MFR15g/10分)
(C)−2:(比較例用):以下の方法で製造した脂肪酸ビスアミド
ベヘン酸(C2143COOH、東京化成工業社製、純度95%以上)115.6重量部を窒素雰囲気下140℃で融解し、そこにエチレンジアミン(和光純薬工業社製、純度99%以上)10重量部を添加した。添加後160℃まで加熱し、6時間反応を行った。反応中に生成した水分等はディーンスターク管を用いて分離除去した。反応後、室温まで冷却した後、キシレン1320重量部を添加し160℃に加熱して1時間攪拌して溶解させた。その後室温まで冷却して生成物を析出させ、これを濾別後、アセトン1600重量部中に分散させ再度濾別した。得られた生成物を80℃で12時間減圧乾燥し、ベヘニン酸ビスアミドを主成分とする脂肪酸ビスアミド(C−2)116.4重量部を得た。
<粘着層>
粘着テープ:幅25mmに切断したアクリル系粘着剤各テープ(日東電工株式会社製、No.31B)
[実施例2〜4、比較例1〜4]
<離型フィルムの製膜>
表2に示す各成分を表2に示す配合割合で用い、二軸押出機「KZW15TWIN−45MG−NH」(株式会社テクノベル製)にて220℃で混練し、Tダイを使用して下記条件でフィルム成形を行い、厚み50μmの離型フィルムを製膜した。得られた離型フィルムを用い、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
<離型力評価>
上記で製造した離型フィルムを、押出方向(MD方向)に幅30mmの長方形に切断し、その離型層側の面に上記粘着テープの粘着剤面を合わせた後、重さ2kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、評価用試験片とした。評価用試験片を室温で1時間放置後、離型層と粘着層との界面を引張速度300mm/分で180°方向に引き剥がす際に要する力(5個の試料の平均値)を測定し、これを「離型力(N/15mm)」とした。この値は小さいものが好ましい。
<残留接着力>
上記で製造した積層体(離型フィルム)の中央部分を、押出方向に幅30mmの長方形に切断し、その離型層側の面に上記の粘着テープの粘着剤面を合わせた後、重さ2kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、評価用試験片とした。評価用試験片を室温で1時間放置後、離型層と粘着層との界面を引張速
度300mm/分で180°方向に引き剥がす際に要する力(5個の試料の平均値)を測定し、これを「離型力(N/mm)」とした。
次いで、引き剥がした評価用試験片のうち粘着層側を、ステンレス(SUS)板の上面に貼り付け(粘着テープの粘着剤面をステンレス板に貼付)、重さ2kgのゴムローラーを1往復させて圧着した。室温で1時間放置後、ステンレス板と粘着テープとの界面を引張速度300mm/分で180°方向に引き剥がすのに要する力(5個の試料の平均値)を測定し、評価1で測定した離型力で除し、これを「残留接着力」とした。この値は大きいものが好ましい。
<ポリプロピレンに対するヒートシール強度>
実施例2〜4または比較例1〜4で得られたフィルムを幅15mmにカットしたものを、比較例4で得られた(B)−1のみからなる厚さ0.3mmのシートと重ね合せ、圧力0.2MPa、時間1.0秒、シール温度を140℃から180℃まで20℃毎に変更した条件にてそれぞれヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行った。試験片の該加熱接着部分を、引張試験機((株)エー・アンド・ディ社製、テンシロン万能試験機(RTG1225))を用いて、剥離速度300mm/分、180°剥離にて剥離強度を測定した。接着面で剥離せず材料破壊となったものを「材破」と表記した。
<透明性>
実施例2〜4または比較例1〜4で得られたフィルムを日本電色工業社製ヘイズメータNDH2000を用い、HAZE及び全光線透過率を測定した。
<防汚性>
実施例2〜4または比較例1〜4で得られたフィルムを10cm角にカットしたものに、市販されている醤油及びケチャップをフィルム表面に滴下後、日本製紙クレシア社製キムワイプを用いて表面の液滴を拭き取った。拭き取り後のフィルム表面外観を目視で確認し、下記基準で防汚性の評価を行った。
◎:汚れを完全に拭き取れる。
○:汚れをほぼ完全に拭き取れる。
△:汚れがわずかに残る。
×:汚れが残る。
また、実施例2〜4または比較例1〜4で得られたフィルムに、ゼブラ社製マッキーケア極細を用いて文字を書き、インクのはじき具合を目視で確認し、下記基準で防汚性の評価を行った。
◎:インクを完全にはじく。
○:インクをほぼ完全にはじく。
△:インクをあまりはじかない。
×:インクをはじかずインクがしみる。
Figure 2019059810
表2の結果から、実施例2〜4では、シリル化ポリプロピレンの配合量を変化させたいずれの場合も離型性、防汚性、透明性に優れていた。一方、離型剤を配合していない比較例1は透明性に優れるが、離型性、残留接着性、防汚性がいずれも劣るものであり、離型剤として(C)−1を用いた比較例3、4では、配合量を増やすと離型性が向上するが、残留接着力や透明性が悪化した。
また、離型剤として(C)−2を用いた比較例2では、離型性、透明性には優れていたが、防汚性に劣ることが確認された。

Claims (13)

  1. (a)片末端不飽和結合を有するポリプロピレンと、(b)下記式(I)で表される構造単位(以下「構造単位(I)」と称す。)及び下記式(II)で表される構造単位(以下「構造単位(II)」と称す。)を有するシロキサンコポリマーとを反応させてシリル化ポリプロピレンを得る、シリル化ポリプロピレンの製造方法であって、
    (a)のポリプロピレンが、長鎖分岐構造を有し、かつ下記(i)〜(v)の特性を有することを特徴とするシリル化ポリプロピレンの製造方法。
    特性(i):MFRが0.1〜30.0g/10分
    特性(ii):Mw/Mnが3.0〜10.0、かつMz/Mwが2.5〜10.0
    特性(iii):溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはMT≧15
    特性(iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満
    特性(v):プロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
    Figure 2019059810
    (式(I),(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)
  2. 前記(a)のポリプロピレンにおける片末端不飽和結合がビニル基である、請求項1に記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
  3. 前記(b)のシロキサンコポリマーにおけるR〜Rがメチル基である、請求項1又は2に記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
  4. 前記(b)のシロキサンコポリマーにおける構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}のモル比率が0.8以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
  5. 白金触媒存在下で前記(a)のポリプロピレンと前記(b)のシロキサンコポリマーを反応させる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
  6. 前記(a)のポリプロピレンが、下記一般式(3)で表される遷移金属化合物を触媒として用いて製造されたものである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシリル化ポリプロピレンの製造方法。
    Figure 2019059810
    (式(3)中、R15およびR16は、それぞれ独立して、炭素数4〜16の、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を含有する複素環基を表し、R17およびR18は、それぞれ独立して、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基、およびハロゲン原子から選ばれる基を置換基として有するアリール基、または炭素数6〜16の、窒素原子、酸素原子、もしくは硫黄原子を含有する複素環基を表し、X12およびY12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q12は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表す。)
  7. (a)片末端不飽和結合を有するポリプロピレンと、(b)下記式(I)で表される構造単位(以下「構造単位(I)」と称す。)及び下記式(II)で表される構造単位(以下「構造単位(II)」と称す。)を有するシロキサンコポリマーとの反応物であるシリル化ポリプロピレンであって、
    (a)のポリプロピレンが、長鎖分岐構造を有し、かつ下記(i)〜(v)の特性を有することを特徴とするシリル化ポリプロピレン。
    特性(i):MFRが0.1〜30.0g/10分
    特性(ii):Mw/Mnが3.0〜10.0、かつMz/Mwが2.5〜10.0
    特性(iii):溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはMT≧15
    特性(iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満
    特性(v):プロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
    Figure 2019059810
    (式(I),(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)
  8. 前記(a)のポリプロピレンにおける片末端不飽和結合がビニル基である、請求項7に記載のシリル化ポリプロピレン。
  9. 前記(b)のシロキサンコポリマーにおけるR〜Rがメチル基である、請求項7又は8に記載のシリル化ポリプロピレン。
  10. 前記(b)のシロキサンコポリマーにおける構造単位(I)/{構造単位(I)+構造単位(II)}のモル比率が0.8以下である、請求項7ないし9のいずれか1項に記載のシリル化ポリプロピレン。
  11. (A)請求項7ないし10のいずれか1項に記載のシリル化ポリプロピレン、及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物。
  12. 前記(B)熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である、請求項11に記載の樹脂組成物。
  13. 前記(B)熱可塑性樹脂100重量部に対して、前記(A)シリル化ポリプロピレンを0.01〜10,000重量部含有する、請求項11又は12に記載の樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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