JP2019059056A - ガスバリア性積層体および包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、この無機物層は摩擦等に対して弱く、このようなガスバリア性積層体は、後加工の印刷時、ラミネート時または内容物の充填時に、擦れや伸びにより無機物層にクラックが入りガスバリア性が低下することがある。
そのため、ガスバリア性材料として、ガスバリア層として有機物層を用いた積層体も用いられている。
このようなガスバリア性積層体に関する技術としては、たとえば、特許文献1(特開2005−225940号公報)および特許文献2(特開2013−10857号公報)に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、このようなガスバリア性フィルムは高湿度条件下においても低湿度条件下と同様の優れたガスバリア性を有すると記載されている。
特許文献2には、このようなガスバリア性フィルムはボイル処理後もガスバリア性、特に酸素遮断性に優れ、かつ可撓性、透明性、耐湿性、耐薬品性等に優れると記載されている。
[1]
基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性重合体層と、
を含むガスバリア性積層体であって、
当該ガスバリア性積層体を、以下の条件1にてゲルボ処理した後、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料、および、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料の20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度が、いずれも、150mL/(m2・day・MPa)以下である、ガスバリア性積層体。
(条件1)ゲルボフレックステスター(テスター産業社製)を用い、雰囲気温度23±2℃、50±5%RHの条件で、10回屈曲処理。
(条件2)高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理。
[2]
前記基材層と前記ガスバリア性重合体層との間に無機物層が設けられている、上記[1]に記載のガスバリア性積層体。
[3]
前記無機物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物により形成されたものである、上記[2]に記載のガスバリア性積層体。
[4]
前記ガスバリア性重合体層がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなる、上記[1]乃至[3]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[5]
前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、
(B/A)で示されるアミド結合の面積比率が0.400以下である、上記[4]に記載のガスバリア性積層体。
[6]
前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をCとしたとき、
(C/A)で示されるカルボン酸の面積比率が0.150以上0.280以下である、上記[4]または[5]に記載のガスバリア性積層体。
[7]
前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
(D/A)で示されるカルボン酸塩の面積比率が0.300以上0.600以下である、上記[4]乃至[6]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[8]
((前記混合物中の前記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))が、100/70以上100/40以下である、上記[4]乃至[7]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[9]
前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含む、上記[4]乃至[8]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[10]
前記ポリアミン化合物が、ポリエチレンイミンを含む、上記[4]乃至[9]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[11]
前記ガスバリア性重合体層の厚さが、0.01μm以上0.45μm以下である、上記[1]乃至[10]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[12]
上記[1]乃至[11]のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体を含む包装体。
図1は、本実施形態におけるガスバリア性積層体100の構成を模式的に示す断面図である。
図1において、ガスバリア性積層体100は、基材層101と、基材層101の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性重合体層103と、を含む。
また、図2に示すように、ガスバリア性積層体100において、無機物層102が基材層101とガスバリア性重合体層103との間にさらに積層されていてもよい。これにより、酸素バリア性をさらに向上させることができる。
(条件1)ゲルボフレックステスター(テスター産業社製)を用い、雰囲気温度23±2℃、50±5%RHの条件で、10回屈曲処理。
(条件2)高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理。
ガスバリア性積層体100を、上記条件1にてゲルボ処理した後、上記条件2にてレトルト処理して得られた試料、および、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料の20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度は、いずれも、150mL/(m2・day・MPa)以下であり、好ましくは140mL/(m2・day・MPa)以下、より好ましくは135mL/(m2・day・MPa)以下、さらに好ましくは100mL/(m2・day・MPa)以下である。
また、上記酸素透過度の下限は0mL/(m2・day・MPa)以上であるが、たとえば10mL/(m2・day・MPa)以上であってもよい。
上記酸素透過度が特定の範囲にあるガスバリア性積層体100は、たとえば、ガスバリア性重合体層103の材料として特定のものを選択するとともに、その製造条件を制御することにより得ることができる。さらに具体的には、上記条件1にてゲルボ処理した後、上記条件2にてレトルト処理して得られた試料の20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度が特定の範囲にあるガスバリア性積層体100を提供するための設計指針として、ガスバリア性重合体層103がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなる層である構成とするとともに、ガスバリア性重合体層103の加熱方法、加熱温度および加熱時間として特定の条件を選択することが挙げられる。
なお、以下においては、ガスバリア性重合体層103がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物(以下、上記混合物を「ガスバリア用塗材」とも呼ぶ。)を加熱硬化してなる層である構成を例に説明する。
ここで、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなる層とは、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物のアミド架橋体により構成された層を意味する。
ガスバリア性重合体層103は、たとえばポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなるものである。
かかるガスバリア性重合体層103においては、赤外線吸収スペクトルにおける未反応のカルボン酸のνC=Oに基づく吸収が1700cm-1付近にみられ、架橋構造であるアミド結合のνC=Oに基づく吸収が1630〜1685cm-1付近にみられ、カルボン酸塩のνC=Oに基づく吸収が1540〜1560cm-1付近にみられる。
すなわち、ガスバリア性重合体層103の赤外線吸収スペクトルにおける吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積Aは、カルボン酸とアミド結合とカルボン酸塩の合計量の指標を表す。吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積Bは、アミド結合の存在量の指標を表す。吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積Cは、未反応のカルボン酸の存在量の指標を表す。また、1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積Dは、カルボン酸塩、すなわちカルボキシル基とアミノ基のイオン架橋の存在量の指標を表していると考えられる。
まず、ガスバリア性重合体層103から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出す。次いで、そのガスバリア性重合体層103の表面の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(1)〜(4)で上記全ピーク面積A〜Dを算出する。
(1)1780cm-1と1493cm-1の吸光度を直線(N)で結び、吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光スペクトルとNで囲まれる面積を全ピーク面積Aとする。
(2)1690cm-1の吸光度(Q)から垂直に直線(O)を下ろし、NとOの交差点をPとし、1598cm-1の吸光度(R)から垂直に直線(S)を下ろし、NとSの交差点をTとし、吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと直線S、点T、直線N、点P、直線O、吸光度Q、吸光度Rで囲まれる面積を全ピーク面積Bとする。
(3)吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度Q、直線O、点P、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Cとする。
(4)吸収帯1493cm−1以上1598cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度R、直線S、点T、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Dとする。
次いで、上記の方法で求めた面積から面積比(C/A)、(B/A)および(D/A)を求める。
なお、本実施形態において、赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、たとえば、日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm-1、積算回数100回の条件でおこなうことができる。
このようなガスバリア性積層体100がレトルト処理後や屈曲(ゲルボ)処理後の酸素バリア性に優れる理由は必ずしも明らかではないが、ガスバリア重合体層中に形成されたアミド結合により緻密かつ強固な膜構造にすることができるためと推察される。
また、上記面積比率(B/A)は、耐ゲルボ性の維持等の観点から、好ましくは0.460以下であり、より好ましくは0.400以下、さらに好ましくは0.395以下、さらにより好ましくは0.390以下である。
また、上記面積比率(C/A)は、耐ゲルボ性および酸素バリア性の向上等の観点から、好ましくは0.280以下であり、より好ましくは0.275以下、さらに好ましくは0.270以下である。
また、上記面積比率(D/A)は、耐ゲルボ性低下の防止等の観点から、好ましくは0.600以下であり、より好ましくは0.585以下、さらに好ましくは0.580以下である。
また、基材層101との安定的な接着を得る観点から、ガスバリア性重合体層103の厚さは、好ましくは0.45μm以下であり、より好ましくは0.4μm以下である。
本実施形態において、ガスバリア性重合体層103がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなる層であるとき、ガスバリア性重合体層103の製造方法は、たとえば以下の工程を含む。
(工程1)基材層101に設けられた無機物層102に、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を塗工し、塗工層を得る工程。
(工程2)塗工層を加熱し、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性重合体層103を形成する工程。
以下、工程1および工程2についてさらに具体的に説明する。
工程1は、基材層101上の無機物層102に、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物に塗工し、塗工層を得る工程である。
まず、上記混合物すなわちガスバリア用塗材を構成するポリカルボン酸およびポリアミン化合物について説明する。
本実施形態において、ポリカルボン酸は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸、3−ヘキセン酸、3−ヘキセン二酸等のα,β−不飽和カルボン酸の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられる。また、上記α,β−不飽和カルボン酸と、エチルエステル等のエステル類、エチレン等のオレフィン類等との共重合体であってもよい。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸の単独重合体またはこれらの共重合体が好ましく、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体から選択される一種または二種以上の重合体であることがより好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸から選択される少なくとも一種の重合体であることがさらに好ましく、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体から選択される少なくとも一種の重合体であることがよりいっそう好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の単独重合体、アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリアクリル酸は、重合体100質量%中に、アクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
また、本実施形態において、ポリメタクリル酸とは、メタクリル酸の単独重合体、メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリメタクリル酸は、重合体100質量%中に、メタクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
ここで、本実施形態において、ポリカルボン酸の分子量はポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本実施形態において、ポリアミン化合物は、主鎖あるいは側鎖あるいは末端にアミノ基を2つ以上有するポリマーである。ポリアミン化合物として、具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(トリメチレンイミン)等の脂肪族系ポリアミン類;ポリリジン、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類;等が挙げられる。また、ポリアミン化合物は、アミノ基の一部を変性したポリアミンでもよい。良好なガスバリア性を得る観点から、ポリアミン化合物は、好ましくはポリエチレンイミンである。
ここで、本実施形態において、ポリアミン化合物の分子量は沸点上昇法や粘度法を用いて測定することができる。
本実施形態において、
((ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))は、ガスバリア性重合体層103のガスバリア性および生産性を向上させる観点から、好ましくは100/40以下であり、より好ましくは100/45以下、さらに好ましくは100/50以下である。
また、同様の観点から、((ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))は、好ましくは100/70以上であり、好ましくは100/65以上であり、より好ましくは100/60以上である。
まず、ポリカルボン酸に、塩基を加えることによりポリカルボン酸のカルボキシ基を完全にまたは部分的に中和する。次いで、カルボキシ基を完全にまたは部分的に中和したポリカルボン酸にポリアミン化合物を添加する。このような手順でポリカルボン酸およびポリアミン化合物を混合することにより、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の凝集物の生成を抑制でき、均一なガスバリア用塗材を得ることができる。これにより、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
部分中和物は、ポリカルボン酸の水溶液に塩基を添加することにより調製するが、ポリカルボン酸と塩基の量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。本実施形態においてはポリカルボン酸の塩基による中和度は、ポリアミン化合物のアミノ基との中和反応に起因するゲル化を十分に抑制する観点から、好ましくは30〜100当量%であり、より好ましくは40〜100当量%、さらに好ましくは50〜100当量%である。
揮発性塩基としては、たとえば、アンモニア、モルホリン、アルキルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルモノホリン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の三級アミンまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。良好なガスバリア性を得る観点から、アンモニア水溶液が好ましい。
不揮発性塩基としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類を挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル等を挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、たとえば、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、たとえば、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤としては、たとえば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤としては、たとえば、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
ガスバリア用塗材を基材層101に塗布する方法は、限定されず、通常の方法を用いることができる。たとえば、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター、アプリケーター等種々公知の塗工機を用いて塗工する方法が挙げられる。
また、得られるガスバリア性積層体100がカールすることを抑制する観点、および、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進める観点から、ウエット厚みは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、よりいっそう好ましくは30μm以下である。
また、加熱処理後のガスバリア性重合体層103の厚さの具体例は前述したとおりである。
工程2は、塗工層を加熱し、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性重合体層を形成する工程である。
このときの加熱処理の方法・温度・時間を採用として、ガスバリア用塗材の塗工量、加熱処理に使用する装置の種類、加熱処理温度、加熱処理時間等の各因子を高度に制御して組み合わせることが重要となる。たとえば、基材層101の無機物層102の側にガスバリア用塗材をウエット厚みが0.05〜300μmになるように塗布し、公知の加熱処理に使用する装置により、加熱して乾燥する。
乾燥、加熱処理する方法は、本実施形態におけるガスバリア性重合体層103を形成できれば限定されないが、ガスバリア用塗材を硬化させられるもの、硬化したガスバリア用塗材を加熱できる方法であればよい。
加熱手段の具体例として、熱風乾燥器、熱風オーブン、ドライヤー等の対流伝熱によるもの、加熱ロール等の伝導伝熱によるもの、赤外線、遠赤外線・近赤外線のヒーター等の電磁波を用いる輻射伝熱によるもの、マイクロ波等内部発熱によるものが挙げられる。
乾燥、加熱処理に使用する装置としては製造効率の観点から乾燥と加熱処理の双方を行える装置が好ましい。その中でも具体的には乾燥、加熱、アニーリング等の種々の目的に利用できるという観点から熱風オーブンを用いることが好ましく、また、フィルムへの熱伝導効率に優れているという観点から加熱ロールを用いることが好ましい。また、乾燥、加熱処理に使用する方法を適宜組み合わせてもよい。熱風オーブンと加熱ロールを併用してもよく、たとえば、熱風オーブンでガスバリア用塗材を乾燥後、加熱ロールで加熱処理を行えば加熱処理工程が短時間となり製造効率の観点から好ましい。また、熱風オーブンのみで乾燥と加熱処理を行うことが好ましい。
なお、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進める観点から、加熱処理温度および加熱処理時間はガスバリア用塗材のウエット厚みに応じて調整することが重要である。
工程2において、塗工層の加熱処理の前に乾燥をおこなう場合、乾燥温度:60〜150℃、乾燥時間:1秒〜60秒の条件で乾燥をおこなうことが望ましい。
なお、酸素透過度は、JIS K 7126に準じ、温度20±2℃、湿度90±5%RHの条件で測定する。
本実施形態においては、ガスバリア性積層体100の基材層101とガスバリア性重合体層103との間にガスバリア性向上の観点から無機物層102が設けられていることが好ましい。無機物層102を設けることによりガスバリア性重合体層103の構成とあいまって、よりいっそう優れたレトルト処理後の耐屈曲性およびガスバリア性が得られる。また、無機物層102とアミド架橋を有するガスバリア性重合体層103とは層間の接着性に優れるため、ガスバリア性積層体100への外的な変形に対してガスバリア性重合体層103は安定した接着状態を保つことができる。
無機物層102を構成する無機物としては、たとえば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、弗化物、または酸窒化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
蛍光X線分析装置ZSXPrimusII(リガク社製)を用いて、本実施形態のガスバリア性積層体100の酸化アルミニウム層に対し、上記酸化アルミニウム層を構成するアルミニウムのKα線を測定し、得られた蛍光X線強度をKα線強度P(kcps)とすることができる。
上記Kα線強度Qは、たとえば、以下の方法により得られる。
まず、酸素の導入はおこなわずに、本実施形態のガスバリア性積層体100における酸化アルミニウム層と同じ製造条件で、基材層上にアルミニウムにより構成されたアルミニウム層を形成する。次いで、蛍光X線分析装置ZSXPrimusII(リガク社製)を用いて、得られたアルミニウム層に対し、上記アルミニウム層を構成するアルミニウムのKα線を測定し、得られた蛍光X線強度をQ(kcps)とすることができる。
ここで、上記Kα線強度RおよびSは、上記Kα線強度PおよびQと同様の方法により測定することができる。
本実施形態において、無機物層102の厚さは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
これらの結合反応を迅速におこなうには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
基材層101は、たとえば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または紙等の有機質材料により形成されており、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂から選択される少なくとも一方を含むことが好ましい。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上がより好ましい。
また、熱可塑性樹脂により形成された基材層101は、ガスバリア性積層体100の用途に応じて、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
さらに、ガスバリア性重合体層103との接着性を改良するために、基材層101に表面処理をおこなってもよい。具体的には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理等の表面活性化処理をおこなってもよい。
本実施形態において、高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理した後の、ガスバリア性積層体100全体の酸素透過度は、良好なガスバリア性を得る観点から、好ましくは200mL/(m2・day・MPa)以下、より好ましくは150mL/(m2・day・MPa)以下、さらに好ましくは120mL/(m2・day・MPa)以下、さらにより好ましくは100mL/(m2・day・MPa)以下である。
ガスバリア性積層体100において、基材層101と、ガスバリア性重合体層103または無機物層102との接着性を向上させる観点から、基材層101上にアンダーコート層がさらに積層されていてもよい。基材層101と、ガスバリア性重合体層103または無機物層102との間にアンダーコート層を設けることによりガスバリア性重合体層103の追従性がさらに向上し外的な変形が加えられてもガスバリア性積層体100においてガスバリア性重合体層103はより安定的な接着状態を保つことができる。
上記アンダーコート層としては、たとえば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン系樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種または二種以上により構成されていることが好ましい。
接着剤層は、公知の接着剤を含むものであればよい。接着剤としては、有機チタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性シリコーン樹脂およびアルキルチタネート、ポリエステル系ポリブタジエン等から組成されているラミネート接着剤、または一液型、二液型のポリオールと多価イソシアネート、水系ウレタン、アイオノマー等が挙げられる。または、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂等を主原料とした水性接着剤を用いてもよい。
また、ガスバリア性積層体の用途に応じて、接着剤に硬化剤、シランカップリング剤等の他の添加物を添加してもよい。ガスバリア性積層体の用途が、レトルト等の熱水処理に用いられるものである場合、耐熱性や耐水性の観点から、ポリウレタン系接着剤に代表されるドライラミネート用接着剤が好ましく、溶剤系の二液硬化タイプのポリウレタン系接着剤がより好ましい。
また、本実施形態における包装体は、ガスバリア性積層体100を含む。
また、本実施形態のガスバリア性積層体100は、変形力の負荷に対する耐久性、すなわち耐ゲルボ性に優れており酸素バリア性等が低下しにくいことから、たとえば、フィルムに変形力の負荷がかかった後でも当該フィルムに高いバリア性能が要求される、真空断熱用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成社製、製品名:アロンA−30、30%水溶液、分子量:1×105)の混合物に精製水を添加して10%溶液にしたポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
(溶液(Y)の作製)
ポリエチレンイミン(和光純薬工業社製、製品名:ポリエチレンイミン、平均分子量:約1×104)に精製水を添加して10%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、そのコロナ処理された面に、高周波誘導加熱方式により、アルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、厚さ8nmの酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。
さらに上記混合液の固形分濃度が2.5質量%になるように精製水を添加し、均一溶液になるまで撹拌したのちに、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王社製、商品名:エマルゲン120)を混合液の固形分に対して0.3質量%となるように混合し、溶液(V)を調製した。
得られたガスバリア性積層フィルムについて、後述の方法で評価用多層フィルムの作製および評価をおこなった。評価結果を表1にあわせて示す。
熱風乾燥器による熱処理条件を210℃、7秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、酸化アルミニウムを蒸着せずに当該コロナ処理された面に得られた溶液(V)を塗布したこと、および、熱風乾燥器による熱処理条件を210℃、81秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)からなる基材をガスバリア性フィルムとし、実施例1に準じて評価用多層フィルムの作製および評価をおこなった。
実施例3において、熱風乾燥器による熱処理条件を210℃、54秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
実施例3において、熱風乾燥器による熱処理条件を210℃、43秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
実施例3において、熱風乾燥器による熱処理条件を210℃、26秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
実施例3において、熱風乾燥器による熱処理条件を210℃、13秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
実施例3において、熱風乾燥器による熱処理条件を210℃、6秒間とした他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
(1)厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、商品名:T.U.X. FCS)の片面に、エステル系接着剤(ポリエステル系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA310):12質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA3):1質量部および酢酸エチル:7質量部)を塗布した。乾燥後、実施例で得られた酸化アルミニウム蒸着PETフィルムにおいては蒸着面側、実施例および比較例で得られたアミド架橋膜積層フィルムにおいてはアミド架橋膜面側と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム1(レトルト前の物性測定用試料)を得た。
上記で得られた多層フィルム1または2を無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように、203mm×279mmの長方形に切断し、長方形の短辺の裏と表を10mm幅の両面テープで接着し筒状にした後、筒の両端をゲルボフレックステスター(テスター産業製)の円状の金具にそれぞれ固定する。装着された筒状のフィルムは、雰囲気温度23℃、50%RHの条件でストローク:152mm、ひねり:440度の条件で、往復運動を40回/minの速度で10往復行い、ゲルボ処理後の多層フィルムを得た。
上記(2)または(3)で得られた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を70cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋を作成し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理をおこなった。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後の多層フィルムを得た。
(IR面積比)
上記(1)で得られた多層フィルムについて、赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)をおこなった。日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm−1、積算回数100回の条件で測定した。得られた吸収スペクトを前述した方法で解析し、全ピーク面積A〜Dを算出した。そして、全ピーク面積A〜Dから面積比(B/A)、(C/A)、(D/A)を求めた。
以下の4種の多層フィルムについて、モコン社製OX−TRAN2/21を用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定した。
(i)上記(1)で得られた多層フィルム:ゲルボ前、レトルト前
(ii)上記(2)で得られた多層フィルムをレトルト処理したもの:ゲルボ前、レトルト後
(iii)上記(1)で得られた多層フィルムをゲルボ処理したもの:ゲルボ後、レトルト前
(iv)上記(2)で得られた多層フィルムをゲルボ処理した後、レトルト処理したもの:ゲルボ後、レトルト後
レトルト処理およびゲルボ処理の条件は、上述した(4)および(3)のとおりである。
101 基材層
102 無機物層
103 ガスバリア性重合体層
Claims (12)
- 基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性重合体層と、
を含むガスバリア性積層体であって、
当該ガスバリア性積層体を、以下の条件1にてゲルボ処理した後、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料、および、以下の条件2にてレトルト処理して得られた試料の20±2℃、90±5%RHでの酸素透過度が、いずれも、150mL/(m2・day・MPa)以下である、ガスバリア性積層体。
(条件1)ゲルボフレックステスター(テスター産業社製)を用い、雰囲気温度23±2℃、50±5%RHの条件で、10回屈曲処理。
(条件2)高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理。 - 前記基材層と前記ガスバリア性重合体層との間に無機物層が設けられている、請求項1に記載のガスバリア性積層体。
- 前記無機物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物により形成されたものである、請求項2に記載のガスバリア性積層体。
- 前記ガスバリア性重合体層がポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなる、請求項1乃至3いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、
(B/A)で示されるアミド結合の面積比率が0.400以下である、請求項4に記載のガスバリア性積層体。 - 前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をCとしたとき、
(C/A)で示されるカルボン酸の面積比率が0.150以上0.280以下である、請求項4または5に記載のガスバリア性積層体。 - 前記ガスバリア性重合体層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
(D/A)で示されるカルボン酸塩の面積比率が0.300以上0.600以下である、請求項4乃至6いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。 - ((前記混合物中の前記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))が、100/70以上100/40以下である、請求項4乃至7いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含む、請求項4乃至8いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記ポリアミン化合物が、ポリエチレンイミンを含む、請求項4乃至9いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記ガスバリア性重合体層の厚さが、0.01μm以上0.45μm以下である、請求項1乃至10いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 請求項1乃至11のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体を含む包装体。
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