JP2019056076A - 厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物 Download PDF

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秀行 片木
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Itaru Yamaura
格 山浦
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Dong-Cheol Kang
東哲 姜
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Hiroyuki Takahashi
裕之 高橋
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Mitsuo Togawa
光生 戸川
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真司 天沼
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Abstract

【課題】硬化物としたときに厚銅回路から発せられる熱を効果的に放熱可能なエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物は、式(I−0)で表されるメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、を含有する。前記メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂における結晶相から液晶相に相転移する相転移温度が140℃以下である、樹脂組成物。前記メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、フェノール化合物とメソゲン骨格を有するエポキシ化合物との反応物を含む、樹脂組成物。

(R〜Rは夫々独立にH又はC1〜3のアルキル基)
【選択図】なし

Description

本発明は、厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物に関する。
電子機器の使用環境の多様化に伴い、回路基板の電流容量の増大(大電流化)が求められている。回路基板を大電流化する方法として、予め回路の状態に加工された金属部材を用いて大電流用回路(厚銅回路等)を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。大電流回路では、必要に応じて、回路間の絶縁性を確保するための絶縁性樹脂等が使用される。
特開2014−99574号公報 特開2001−36201号公報 特開平8−222838号公報
大電流用回路には高発熱が伴うことから、回路基板のさらなる高放熱性が要求される。本発明は上記事情に鑑み、硬化物としたときに厚銅回路から発せられる熱を効果的に放熱可能なエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、を含有する厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
<2> 前記メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂における結晶相から液晶相に相転移する相転移温度が140℃以下である、<1>に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
<3> 前記メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、フェノール化合物と、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物との反応物を含む、<1>又は<2>に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
<4> 前記メソゲン骨格を有するエポキシ化合物が、下記一般式(I−0)で表される化合物を含む<3>に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
(一般式(I−0)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
<5> エポキシ樹脂組成物の固形分の全体積に対して60体積%〜95体積%の無機充填材をさらに含む、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
<6> トランスファー成形法により成形可能である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
本発明によれば、硬化物としたときに厚銅回路から発せられる熱を効果的に放熱可能なエポキシ樹脂組成物が提供される。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の示差走査熱量(DSC)測定で得られるグラフの一例を示す図である。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
<厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物>
本開示の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物(以下、単にエポキシ樹脂組成物ともいう)は、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、を含有する。本開示のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分をさらに含有していてもよい。本開示のエポキシ樹脂組成物によれば、硬化後に高熱伝導性を発揮することが可能となり、厚銅回路から発せられる熱を効果的に放熱可能となる。その理由は明らかではないが、後述のようにメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂が、硬化したときに高い熱伝導性を発揮するためと考えられる。
以下、本開示のエポキシ樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
−メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂−
エポキシ樹脂組成物は、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を含有する。メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、メソゲン骨格を有しないエポキシ樹脂をさらに含有していてもよく、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂のみを用いてもよい。エポキシ樹脂組成物におけるメソゲン骨格を有しないエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の全量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂として、メソゲン骨格を有しないエポキシ樹脂をさらに含有する場合、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の全量に対するメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
本開示において「メソゲン骨格」とは、液晶性を発現する可能性のある分子構造を示す。具体的には、ビフェニル骨格、フェニルベンゾエート骨格、シクロヘキシルベンソエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、これらの誘導体等が挙げられる。メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、硬化時に高次構造を形成し易く、硬化させた場合に、より高い熱伝導率を達成できる傾向にある。
ここで、高次構造とは、その構成要素がミクロに配列している状態のことであり、例えば、結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造が存在しているか否かは、偏光顕微鏡での観察によって容易に判断することが可能である。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉模様が見られる場合は高次構造が存在していると判断できる。
高次構造は、通常では樹脂中に島状に存在しており、ドメイン構造を形成している。そして、ドメイン構造を形成している島のそれぞれを高次構造体という。高次構造体を構成する構造単位同士は、一般的には共有結合で結合されている。
メソゲン骨格に由来する規則性の高い高次構造には、ネマチック構造、スメクチック構造等がある。ネマチック構造は分子長軸が一様な方向に向いており、配向秩序のみを持つ液晶構造である。これに対して、スメクチック構造は配向秩序に加えて一次元の位置の秩序を持ち、一定周期の層構造を有する液晶構造である。また、スメクチック構造の同一の周期の構造内部では、層構造の周期の方向が一様である。すなわち、分子の秩序性は、ネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高い。秩序性の高い高次構造が硬化物中に形成されると、熱伝導の媒体であるフォノンが散乱するのを抑制することができる。このため、ネマチック構造よりもスメクチック構造の方が、熱伝導性が高くなる。
すなわち、分子の秩序性はネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高く、硬化物の熱伝導性もスメクチック構造を示す場合の方が高くなる。メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は硬化剤と反応してスメクチック構造を形成することで、硬化物としたときに高い熱伝導性を発揮できると考えられる。
エポキシ樹脂組成物を用いてスメクチック構造が形成されているか否かは、下記の方法により判断することができる。
CuKα1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θが0.5°〜30°の範囲で、X線解析装置(例えば、株式会社リガク製)を用いてX線回折測定を行う。2θが1°〜10°の範囲に回折ピークが存在する場合には、周期構造がスメクチック構造を含んでいると判断される。なお、メソゲン構造に由来する規則性の高い高次構造を有する場合には、2θが1°〜30°の範囲に回折ピークが現れる。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、ハンドリング性及び硬化物としたときの熱伝導性を両立する観点からは、150g/eq〜500g/eqであることが好ましく、150g/eq〜450g/eqであることがより好ましく、200g/eq〜450g/eqであることが更に好ましく、230g/eq〜400g/eqであることが特に好ましく、250g/eq〜370g/eqであることが極めて好ましい。エポキシ当量が150g/eq以上であると、エポキシ樹脂の結晶性が高くなりすぎないため、ハンドリング性が低下しにくい傾向にある。一方、エポキシ当量が500g/eq以下であると、エポキシ樹脂の架橋密度が低下しにくいため、硬化物としたときの熱伝導性が高くなる傾向にある。
エポキシ当量は、JIS K7236:2009に準拠して過塩素酸滴定法により測定する。
また、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定における数平均分子量(Mn)は、ハンドリング性及び硬化物としたときの熱伝導性を両立する観点からは、400〜2500であることが好ましく、450〜2000であることがより好ましく、500〜1800であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂のMnが400以上であると、エポキシ樹脂の結晶性が高くなりすぎないため、ハンドリング性が低下しにくい傾向にある。エポキシ樹脂のMnが2500以下であると、エポキシ樹脂の架橋密度が低下しにくいため、硬化物としたときの熱伝導性が高くなる傾向にある。
本開示におけるGPC測定は、分析用GPCカラムとして東ソー株式会社製「G2000HXL」及び「3000HXL」を使用し、移動相にはテトラヒドロフランを用い、試料濃度を0.2質量%とし、流速を1.0ml/minとして測定を行う。ポリスチレン標準サンプルを用いて検量線を作成し、ポリスチレン換算値でMnを計算する。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を含んでもよく、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を重合させた反応物を含んでもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を重合させた反応物としては、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物同士の反応物であっても、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の一部を硬化剤等により部分的に反応させたプレポリマーの状態であってもよい。プレポリマー化に用いる硬化剤は、エポキシ樹脂組成物に含有させる硬化剤と同じものであっても、異なるものであってもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を一部重合させると成形性が向上する場合がある。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物は、1種類単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の具体例は、例えば、特許第4118691号公報に記載されている。以下に、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の具体例を示すが、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物はこれらに限定されない。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物としては、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−ベンゼン、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート等が挙げられる。これらのエポキシ化合物の中でも、熱伝導率を向上させる観点から、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−ベンゼン及び4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエートからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
さらに樹脂組成物の流動性向上の観点から、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物は、結晶相から液晶相に相転移する際、単独では秩序性が低いネマチック構造を形成するが、プレポリマー化すると、より秩序性の高いスメクチック構造を形成するエポキシ化合物であることが好ましい。このようなエポキシ化合物として、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物は、下記一般式(I−0)で表される化合物を含むことが好ましい。
一般式(I−0)で示される化合物の中でも、下記一般式(I−1)で表される化合物が好ましい。
一般式(I−0)及び一般式(I−1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
一般式(I−0)及び一般式(I−1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
さらに、R〜Rのうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個全てが水素原子であることがさらに好ましい。R〜Rのいずれかが炭素数1〜3のアルキル基の場合、R及びRの少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂における、結晶相から液晶相に相転移する相転移温度は、140℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂としてメソゲン骨格を有し相転移温度が140℃以下のエポキシ樹脂を用いると、硬化したときにより高い熱伝導性を発揮する傾向にある。この理由は明らかではないが、エポキシ樹脂組成物を作製する際にエポキシ樹脂が溶融しやすくなり、そのため混合によりエポキシ樹脂組成物が均質化しやすくなり、結果、液晶相の生成に関して偏りが抑えられるためと考えられる。
相転移温度は、示差走査熱量(DSC)測定装置(例えば、パーキンエルマー製、Pyris1)を用いて測定することができる。具体的には、昇温速度20℃/分、測定温度範囲25℃〜350℃、流量20±5ml/minの窒素雰囲気下の条件で、アルミパンに密閉した3mg〜5mgの試料の示差走査熱量測定を行い、相転移に伴うエネルギー変化(吸熱反応)が起こる温度として測定される。この測定で得られるグラフの一例を図1に示す。図1に現れる吸熱反応ピークの温度を相転移温度とする。
一般的に、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物は相転移温度が高い傾向にある。特に、秩序性の高いスメクチック構造を有するエポキシ化合物は相転移温度が高い傾向にある。ここで、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を、硬化剤等により部分的に反応させてプレポリマー化することにより、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の相転移温度を140℃以下とすることが可能となる。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物は、相転移温度が140℃以下であっても、140℃を超えていてもよい。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物のプレポリマー化に用いる硬化剤として、フェノール化合物及びアミン化合物が挙げられる。すなわち、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、フェノール化合物と、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物との反応物を含んでもよく、アミン化合物と、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物との反応物を含んでもよい。フェノール化合物としては、1つのベンゼン環に2個の水酸基を置換基として有する2価フェノール化合物(以下、単に2価フェノール化合物ともいう)、1つのベンゼン環に3個の水酸基を置換基として有する3価フェノール化合物(以下、単に3価フェノール化合物ともいう)等が挙げられる。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物のプレポリマー化に2価フェノール化合物を用いることは、エポキシ樹脂の分子量、熱伝導率、及びガラス転移温度(Tg)の制御の観点から好ましい。
また、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と2価フェノール化合物とを部分的に反応させてプレポリマー化すると、相転移温度を下げることが可能となる。そのため、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の相転移温度が140℃を超えていても使いこなすことが容易となる。一般に、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は相転移温度が高いため、相転移温度を下げることができる化合物を用いてプレポリマー化する手法は有益である。
2価フェノール化合物としては、例えば、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ビフェノール、4,3’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール及びこれらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、ベンゼン環に炭素数1〜8のアルキル基等が置換した化合物が挙げられる。これらの2価フェノール化合物の中でも、熱伝導率を向上させる観点から、ヒドロキノン又は4,4’−ビフェノールを用いることが好ましい。ヒドロキノン及び4,4’−ビフェノールは2つの水酸基がパラ位の位置関係となるように置換されている構造であるため、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と反応させて得られるプレポリマー化されたエポキシ樹脂は直線的な構造となる。このため、分子のスタッキング性が高く、高次構造を形成し易いと考えられる。2価フェノール化合物は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物のプレポリマー化に3価フェノール化合物を用いることは、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の低軟化点化と高次構造形成能の保持とを好適に図りつつ、硬化物としたときのガラス転移温度(Tg)を高めることができる点で好ましい。
3価フェノール化合物としては、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、エポキシポリマーを用いた硬化物の熱伝導性を向上させる点から、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
以下に、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂が、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物とフェノール化合物との反応物である場合の、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の合成方法を説明する。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、例えば、合成溶媒中にメソゲン骨格を有するエポキシ化合物、フェノール化合物、及び反応触媒を溶解し、熱をかけながら撹拌することによって合成することができる。合成溶媒を使用せず、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物とフェノール化合物とを溶融して反応させることでもメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を合成することも可能である。この場合、エポキシ樹脂が溶融する温度まで高温にして反応を行う。安全性の観点からは、合成溶媒を使用する合成法が好ましい。
例えば、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と2価フェノール化合物との反応物を合成する場合、2価フェノール化合物のフェノール性水酸基の当量数と、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ基の当量数と、の比(エポキシ基の当量数/フェノール性水酸基の当量数)は、100/1〜100/100であってよく、100/10〜100/50であることが好ましく、100/10〜100/40であることがより好ましく、100/10〜100/30であることがさらに好ましい。
また、例えば、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と3価フェノール化合物との反応物を合成する場合、3価フェノール化合物のフェノール性水酸基の当量数と、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ基の当量数と、の比(エポキシ基の当量数/フェノール性水酸基の当量数)は、100/1〜100/100であってよく、エポキシ樹脂組成物の流動性並びに硬化物の耐熱性及び熱伝導率の観点からは、100/10〜100/50であることが好ましく、100/10〜100/40であることがより好ましく、100/10〜100/30であることがさらに好ましい。3価フェノール化合物のフェノール性水酸基の当量数と、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ基の当量数と、の比(エポキシ基の当量数/フェノール性水酸基の当量数)を100/10以下とすることで得られるエポキシポリマーの軟化点の上昇を抑制できる傾向にあり、Ep/Phを100/50以上とすることで、架橋点密度の低下による硬化物の耐熱性の悪化を抑制し、かつ硬化物の熱伝導性の低下を抑制できる傾向にある。
合成溶媒としては、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物とフェノール化合物との反応が進行するために必要な温度に加温できる溶媒であれば特に制限されない。具体例としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
合成溶媒の量は、反応温度において、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物、フェノール化合物、及び反応触媒を全て溶解できる量であることが好ましい。反応前の原料種類、溶媒種類等によって溶解性が異なるが、仕込み固形分濃度を20質量%〜60質量%とすることが好ましい。このような合成溶媒の量とすると、合成後の樹脂溶液粘度として好ましい範囲となる傾向にある。
反応触媒の種類は特に限定されず、反応速度、反応温度、貯蔵安定性等の観点から適切なものを選択することができる。反応触媒の具体例としては、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは1種類単独でも、2種類以上を併用してもよい。中でも、耐熱性の観点から、有機ホスフィン化合物;有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物(1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等)、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;及び有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物(テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等)との錯体;からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
有機ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
反応触媒の量は特に制限されない。反応速度及び貯蔵安定性の観点から、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物とフェノール化合物の合計質量に対して0.1質量%〜3.0質量%であることが好ましく、0.5質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物とフェノール化合物との反応物は、少量スケールであればガラス製のフラスコを使用し、大量スケールであればステンレス製の合成釜を使用して合成することができる。具体的な合成方法は、例えば以下の通りである。まず、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物をフラスコ又は合成釜に投入し、合成溶媒を入れ、オイルバス又は熱媒により反応温度まで加温し、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を溶解する。そこにフェノール化合物を投入し、合成溶媒中で充分溶解したことを確認した後に反応触媒を投入し、反応を開始する。反応時間の後に反応溶液を取り出せば、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物とフェノール化合物との反応物溶液が得られる。また、フラスコ内又は合成釜内において、加温条件のもと減圧下で合成溶媒を留去すれば、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物とフェノール化合物との反応物が室温(例えば、25℃)下で固体として得られる。
反応温度は、反応触媒の存在下でエポキシ基とフェノール性水酸基との反応が進行する温度であれば制限されず、例えば、100℃〜180℃の範囲が好ましく、120℃〜170℃の範囲がより好ましい。反応温度を100℃以上とすることで、反応が完結するまでの時間をより短くできる傾向にある。一方、反応温度を180℃以下とすることで、ゲル化が抑えられる傾向にある。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、プレポリマー化されたエポキシ樹脂として、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体を含むことが好ましい。メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体に加えて、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物(単量体)、及びメソゲン骨格を有するエポキシ化合物の多量体からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体及び多量体は、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂同士の反応物であっても、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を硬化剤等により反応させた反応物であってもよい。二量体化及び多量体化に用いる硬化剤は、エポキシ樹脂組成物に含有させる硬化剤と同じものであっても、異なるものであってもよい。
分子構造中にメソゲン骨格を有するエポキシ化合物は一般的に結晶化し易く、汎用のエポキシ化合物と比較して溶融温度が高い傾向にある。しかし、そのようなエポキシ化合物を一部重合させて二量体とすることで結晶化が抑制される。その結果、ハンドリング性が向上する傾向にある。
エポキシ化合物の二量体化又は多量体化に用いる硬化剤としては、例えば、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物のプレポリマー化に用いる硬化剤として上述したフェノール化合物及びアミン化合物が挙げられ、その具体例も上述したものと同様である。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂がメソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体を含む場合、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂全量に占める、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体の割合は、15質量%〜28質量%であることが好ましく、20質量%〜27質量%であることがより好ましく、22質量%〜25質量%であることがさらに好ましい。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体の割合が15質量%以上であると、柔軟性等のハンドリング性に優れる傾向にある。また、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体の割合が28質量%以下であると、硬化物としたときに架橋密度の低下が抑えられ、得られる硬化物の熱伝導性及びガラス転移温度(Tg)が高く維持される傾向にある。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂全量に占めるメソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体の割合は、逆相クロマトグラフィー(Reversed Phase Liquid Chromatography、RPLC)測定によって求めることができる。
本開示におけるRPLC測定は、分析用RPLCカラムとして関東化学株式会社製「Mightysil RP−18」を使用し、グラジエント法を用いて、溶離液の混合比(体積基準)をアセトニトリル/テトラヒドロフラン/水=20/5/75からアセトニトリル/テトラヒドロフラン=80/20(開始から20分)を経てアセトニトリル/テトラヒドロフラン=50/50(開始から35分)に連続的に変化させて行う。また、流速を1.0ml/minとする。本開示では、280nmの波長における吸光度を検出し、検出された全てのピークの総面積を100とし、それぞれ該当するピークにおける面積の比率を求め、その値をエポキシ樹脂における各化合物の含有率[質量%]とする。
なかでも、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体として、上記一般式(I−0)で表される化合物の二量体(以下、「特定二量体化合物」ともいう)を含むことが好ましい。特定二量体化合物は、一般式(I−0)で表される化合物の二量体であることから、1分子中に下記一般式(I)で表される構造単位を2つ有する。
一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
さらに、R〜Rのうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個全てが水素原子であることがさらに好ましい。R〜Rのいずれかが炭素数1〜3のアルキル基の場合、R及びRの少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
特定二量体化合物は、下記一般式(IA)で表される構造単位及び下記一般式(IB)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも一つの構造単位を有することが好ましい。
一般式(IA)及び一般式(IB)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは0〜4の整数を示す。
一般式(IA)及び一般式(IB)におけるR〜Rの具体例は、一般式(I)におけるR〜Rと同様であり、その好ましい範囲も同様である。
一般式(IA)及び一般式(IB)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を示し、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
一般式(IA)及び一般式(IB)中、nは0〜4の整数を示し、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。つまり、一般式(IA)及び一般式(IB)においてRを付されたベンゼン環は、2個〜4個の水素原子を有することが好ましく、3個又は4個の水素原子を有することがより好ましく、4個の水素原子を有することがさらに好ましい。
一般式(IA)で表される構造単位は、下記一般式(IA−1)で表される構造単位及び下記一般式(IA−2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも一つの構造単位を含むことが好ましく、下記一般式(IA−1)で表される構造単位を含むことがより好ましい。
一般式(IB)で表される構造単位は、下記一般式(IB−1)で表される構造単位及び下記一般式(IB−2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも一つの構造単位を含むことが好ましく、下記一般式(IB−1)で表される構造単位を含むことがより好ましい。
一般式(IA−1)、一般式(IA−2)、一般式(IB−1)及び一般式(IB−2)におけるR〜R及びnの具体例は、一般式(IA)及び一般式(IB)におけるR〜R及びnと同様であり、その好ましい範囲も同様である。
特定二量体化合物の具体例としては、下記一般式(II−A)で表される化合物、下記一般式(II−B)で表される化合物、下記一般式(II−C)で表される化合物等が挙げられる。特定二量体化合物は、下記一般式(II−A)で表される化合物、下記一般式(II−B)で表される化合物及び下記一般式(II−C)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
一般式(II−A)、一般式(II−B)及び一般式(II−C)におけるR〜R及びnの具体例は、一般式(IA)及び一般式(IB)におけるR〜R及びnと同様であり、その好ましい範囲も同様である。
一般式(II−A)で表される化合物は、下記一般式(II−A−1)で表される化合物及び下記一般式(II−A−2)で表される化合物を含むことが好ましく、下記一般式(II−A−1)で表される化合物を含むことがより好ましい。
一般式(II−B)で表される化合物は、下記一般式(II−B−1)で表される化合物及び下記一般式(II−B−2)で表される化合物を含むことが好ましく、下記一般式(II−B−1)で表される化合物を含むことがより好ましい。
一般式(II−C)で表される化合物は、下記一般式(II−C−1)で表される化合物及び下記一般式(II−C−2)で表される化合物を含むことが好ましく、下記一般式(II−C−1)で表される化合物を含むことがより好ましい。
一般式(II−A−1)、一般式(II−A−2)、一般式(II−B−1)、一般式(II−B−2)、一般式(II−C−1)及び一般式(II−C−2)におけるR〜R及びnの具体例は、一般式(IA)及び一般式(IB)におけるR〜R及びnと同様であり、その好ましい範囲も同様である。
特定二量体化合物は、一般式(II−A−1)で表される化合物、一般式(II−B−1)で表される化合物及び一般式(II−C−1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
これら特定二量体化合物の構造は、エポキシ樹脂を合成する際に使用する上記一般式(I−0)で表される化合物と、フェノール化合物等の硬化剤と、の反応より得られると推定される構造の分子量と、UVスペクトル検出器及びマススペクトル検出器を備える液体クロマトグラフを用いて実施される液体クロマトグラフィーにより求めた目的化合物の分子量とを照合させることで決定することができる。
液体クロマトグラフィーでは、例えば、分析用カラムとして株式会社日立製作所製「LaChrom II C18」を使用し、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、1.0ml/minの流速で測定する。UVスペクトル検出器では、280nmの波長における吸光度を検出する。マススペクトル検出器では、2700Vのイオン化電圧で検出する。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体に加えて、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の多量体をさらに含んでもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の多量体における、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の構造単位の数は3以上であり、平均値として5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の多量体としては、一般式(I−0)で表される化合物の多量体(以下、「特定多量体化合物」ともいう)が挙げられる。特定多量体化合物は、一般式(I−0)で表される化合物の多量体であり、1分子中に一般式(I)で表される構造単位を3つ以上有する。特定多量体化合物における一般式(I)で表される構造単位の数は、平均値として5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
特定多量体化合物は、前述の一般式(IA)で表される構造単位及び一般式(IB)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも一つの構造単位を有する特定多量体化合物であることが好ましい。
特定多量体化合物における一般式(IA)で表される構造単位は、一般式(IA−1)で表される構造単位及び下記一般式(IA−2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも一つの構造単位を含むことが好ましく、一般式(IA−1)で表される構造単位を含むことがより好ましい。
特定多量体化合物における一般式(IB)で表される構造単位は、一般式(IB−1)で表される構造単位及び一般式(IB−2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも一つの構造単位を含むことが好ましく、一般式(IB−1)で表される構造単位を含むことがより好ましい。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体に加えて、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物(単量体)をさらに含んでもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂が、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体に加えて、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を含む場合、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂全量に占める、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の割合は、57質量%〜80質量%であることが好ましく、59質量%〜74質量%であることがより好ましく、62質量%〜70質量%であることがさらに好ましい。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の割合が57質量%以上であると、硬化物としたときに、架橋密度が低下しにくく、熱伝導性及びTgに優れる傾向にある。一方、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の割合が80質量%以下であると、柔軟性等のハンドリング性に優れる傾向にある。
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物としては、一般式(I−0)で表される化合物等、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物として前述した化合物が挙げられる。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂が、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物の二量体を含む場合、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、例えば、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物、フェノール化合物、及び反応触媒を合成溶媒中に溶解し、加熱しながら撹拌して合成することができる。具体的な合成方法の例は、「メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂がメソゲン骨格を有するエポキシ化合物とフェノール化合物との反応物である場合のメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の合成方法」として前述した通りである。
−硬化剤−
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含有する。硬化剤としては、当分野で通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。硬化剤としては、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤、その他イミダゾール等の潜在性硬化剤などが挙げられる。耐熱性及び密着性の観点からは、アミン系硬化剤又はフェノール系硬化剤が好ましい。保存安定性の観点からは、フェノール系硬化剤が好ましい。また、高靭性の硬化物を得る観点からは、アミン系硬化剤が好ましい。硬化剤は1種を単独で用いても、2種類以上を併用して用いてもよい。
フェノール系硬化剤としては、通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。例えば、フェノール化合物、及びフェノール化合物をノボラック化したフェノール樹脂を用いることができる。フェノール系硬化剤は1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
フェノール化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能のフェノール化合物;カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能のフェノール化合物;1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能のフェノール化合物;などが挙げられる。また、フェノール樹脂としては、これらフェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂が挙げられる。
フェノール系硬化剤としては、熱伝導性の観点から、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能のフェノール化合物、又は2官能のフェノール化合物をメチレン鎖で連結したフェノールノボラック樹脂であることが好ましく、耐熱性の観点から、2官能のフェノール化合物をメチレン鎖で連結したフェノールノボラック樹脂であることがより好ましい。
フェノールノボラック樹脂としては、クレゾールノボラック樹脂、カテコールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ヒドロキノンノボラック樹脂等の1種類のフェノール化合物をノボラック化した樹脂;カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、レゾルシノールヒドロキノンノボラック樹脂等の2種類以上のフェノール化合物をノボラック化した樹脂;などを挙げることができる。
フェノール系硬化剤としてフェノールノボラック樹脂が用いられる場合、下記一般式(II−1)及び下記一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物を含むことが好ましい。

一般式(II−1)及び一般式(II−2)において、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rで表されるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基(但し、Rがアルキル基の場合を除く)、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等を挙げることができる。mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、mが2の場合、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。mはそれぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。また、nはそれぞれ独立に、1〜7の整数を表す。
一般式(II−1)及び一般式(II−2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R及びRで表されるアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基(但し、R又はRがアルキル基の場合を除く)、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等を挙げることができる。
一般式(II−1)及び(II−2)中のR及びRとしては、保存安定性と熱伝導性の観点から、水素原子、アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物がレゾルシノール以外のフェノール化合物に由来する部分構造を含む場合、レゾルシノール以外のフェノール化合物に由来する部分構造としては、熱伝導性及び接着性の観点から、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種類に由来する部分構造であることが好ましく、カテコール及びヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種類に由来する部分構造であることがより好ましい。
一般式(II−2)で表される構造単位を有する化合物がカテコール以外のフェノール化合物に由来する部分構造を含む場合、カテコール以外のフェノール化合物に由来する部分構造としては、熱伝導性及び接着性の観点から、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種類に由来する部分構造であることが好ましく、レゾルシノール及びヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種類に由来する部分構造であることがより好ましい。
ここで、フェノール化合物に由来する部分構造とは、フェノール化合物のベンゼン環部分から1個又は2個の水素原子を取り除いて構成される1価又は2価の基を意味する。なお、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
また、一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物において、レゾルシノールに由来する部分構造の含有比率については特に制限はない。弾性率の観点から、一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物の全質量に対するレゾルシノールに由来する部分構造の含有比率が55質量%以上であることが好ましく、硬化物のガラス転移温度(Tg)及び線膨張率の観点から、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、熱伝導性の観点から、90質量%以上であることが特に好ましい。
また、一般式(II−2)で表される構造単位を有する化合物において、カテコールに由来する部分構造の含有比率については特に制限はない。弾性率の観点から、一般式(II−2)で表される構造単位を有する化合物の全質量に対するカテコールに由来する部分構造の含有比率が55質量%以上であることが好ましく、硬化物のガラス転移温度(Tg)及び線膨張率の観点から、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、熱伝導性の観点から、90質量%以上であることが特に好ましい。
一般式(II−1)及び一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物の分子量は特に制限されない。流動性の観点から、数平均分子量(Mn)としては、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、350〜1500であることが更に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)としては、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、400〜1500であることが更に好ましい。これらMn及びMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた通常の方法により測定される。
一般式(II−1)及び一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物の水酸基当量は特に制限されない。耐熱性に関与する架橋密度の観点から、水酸基当量は平均値で50g/eq〜150g/eqであることが好ましく、50g/eq〜120g/eqであることがより好ましく、55g/eq〜120g/eqであることが更に好ましい。なお、水酸基当量は、JIS K0070:1992に準拠して測定された値をいう。
フェノール系硬化剤として一般式(II−1)及び一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物が用いられる場合、フェノール系硬化剤に占める一般式(II−1)及び一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
フェノール系硬化剤としてフェノールノボラック樹脂が用いられる場合、フェノールノボラック樹脂が、下記一般式(III−1)〜下記一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物を含むことも好ましい。




一般式(III−1)〜一般式(III−4)中、m及びnはそれぞれ独立に、正の整数を表し、m又はnが付されたそれぞれの構造単位の数を表す。また、Arはそれぞれ独立に、下記一般式(III−a)又は下記一般式(III−b)で表される基を表す。

一般式(III−a)及び一般式(III−b)中、R11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は水酸基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物は、2価のフェノール化合物をノボラック化する製造方法によって副生成物として生成可能なものである。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造は、フェノールノボラック樹脂の主鎖骨格として含まれていてもよく、又はフェノールノボラック樹脂の側鎖の一部として含まれていてもよい。さらに、一般式(III−1)〜一般式(III−4)のいずれか1つで表される部分構造を構成するそれぞれの構造単位は、ランダムに含まれていてもよいし、規則的に含まれていてもよいし、ブロック状に含まれていてもよい。
また、一般式(III−1)〜一般式(III−4)において、水酸基の置換位置は芳香族環上であれば特に制限されない
一般式(III−1)〜一般式(III−4)のそれぞれについて、複数存在するArは全て同一の原子団であってもよいし、2種類以上の原子団を含んでいてもよい。なお、Arはそれぞれ独立に、一般式(III−a)又は一般式(III−b)で表される基を表す。
一般式(III−a)及び一般式(III−b)におけるR11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は水酸基を表し、熱伝導性の観点から水酸基であることが好ましい。また、R11及びR14の置換位置は特に制限されない。
また、一般式(III−a)におけるR12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R12及びR13における炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基が挙げられる。また、一般式(III−a)におけるR12及びR13の置換位置は特に制限されない。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)におけるArは、より優れた熱伝導性を達成する観点から、ジヒドロキシベンゼンに由来する基(一般式(III−a)においてR11が水酸基であって、R12及びR13が水素原子である基)、及びジヒドロキシナフタレンに由来する基(一般式(III−b)においてR14が水酸基である基)からなる群より選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
ここで、「ジヒドロキシベンゼンに由来する基」とは、ジヒドロキシベンゼンの芳香環部分から水素原子を2つ取り除いて構成される2価の基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に制限されない。また、「ジヒドロキシナフタレンに由来する基」についても同様の意味である。
また、エポキシ樹脂組成物の生産性及び流動性の観点からは、Arはジヒドロキシベンゼンに由来する基であることがより好ましく、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)に由来する基及び1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)に由来する基からなる群より選ばれる少なくとも1種類であることが更に好ましい。特に、熱伝導性を特に高める観点から、Arとして少なくともレゾルシノールに由来する基を含むことが好ましい。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物がレゾルシノールに由来する構造単位を含む場合、レゾルシノールに由来する構造単位の含有率は、弾性率の観点から、一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の総重量中において55質量%以上であることが好ましく、硬化物のTgと線膨張率の観点から、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、熱伝導性の観点から、90質量%以上であることが特に好ましい。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)におけるm及びnについては、流動性の観点からm/n=20/1〜1/5であることが好ましく、20/1〜5/1であることがより好ましく、20/1〜10/1であることが更に好ましい。また、(m+n)は、流動性の観点から20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。なお、(m+n)の下限値は特に制限されない。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物は、特にArが置換又は非置換のジヒドロキシベンゼンに由来する基及び置換又は非置換のジヒドロキシナフタレンに由来する基の少なくともいずれか1種類である場合、これらを単純にノボラック化したフェノール樹脂等と比較して、その合成が容易であり、軟化点の低い硬化剤が得られる傾向にある。したがって、このようなフェノール樹脂を硬化剤として含むことで、エポキシ樹脂組成物の製造及び取り扱いが容易になる等の利点がある。
なお、フェノールノボラック樹脂が上記一般式(III−1)〜上記一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される部分構造を有するか否かは、電界脱離イオン化質量分析法(FD−MS)によってそのフラグメント成分として上記一般式(III−1)〜上記一般式(III−4)のいずれかで表わされる部分構造に相当する成分が含まれるか否かによって判断することができる。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の分子量は特に制限されない。流動性の観点から、数平均分子量(Mn)として2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、350〜1500であることが更に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)としては2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、400〜1500であることが更に好ましい。これらMn及びMwは、GPCを用いた通常の方法により測定される。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の水酸基当量は特に制限されない。耐熱性に関与する架橋密度の観点から、水酸基当量は平均値で50g/eq〜150g/eqであることが好ましく、50g/eq〜120g/eqであることがより好ましく、55g/eq〜120g/eqであることが更に好ましい。
フェノール系硬化剤として一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物が用いられる場合、フェノール系硬化剤に占める一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
フェノール系硬化剤として一般式(II−1)及び一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物又は一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物が用いられる場合、フェノール系硬化剤は、一般式(II−1)及び一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物又は一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物を構成するフェノール化合物であるモノマーを含んでいてもよい。フェノール化合物であるモノマーの含有比率(以下、「モノマー含有比率」ともいう)としては特に制限されない。熱伝導性及び成形性の観点から、フェノール系硬化剤中、5質量%〜80質量%であることが好ましく、15質量%〜60質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることが更に好ましい。
モノマー含有比率が80質量%以下であることで、硬化反応の際に架橋に寄与しないモノマーが少なくなり、架橋した高分子量体が多くなるため、より高密度な架橋構造が形成され、熱伝導性が向上する傾向にある。また、5質量%以上であることで、成形の際に流動し易いため、無機充填材との密着性がより向上し、より優れた熱伝導性と耐熱性が達成できる傾向にある。
アミン系硬化剤としては、通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、市販されているものであってもよい。アミン系硬化剤は1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。中でも、耐熱性の観点からは、ベンゼン環又はナフタレン環を有するアミン系硬化剤を用いることが好ましく、ベンゼン環上又はナフタレン環上にアミノ基を有するアミン系硬化剤を用いることがより好ましい。また、硬化性の観点からは、2個以上のアミノ基を有する多官能のアミン系硬化剤を用いることが好ましい。
アミン系硬化剤を用いてメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を硬化させると、高靭性を有する硬化物が得られる傾向にある。
アミン系硬化剤として、例えば、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4,4’−トリアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、トリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアート、1,4−ジアミノナフタレン、及び1,8−ジアミノナフタレンが挙げられる。耐熱性、保存安定性等の観点からは、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンが好ましい。
硬化剤の含有量は特に制限されない。
例えば、硬化剤としてフェノール系硬化剤を用いる場合、フェノール系硬化剤に含有されるフェノール性水酸基の活性水素の当量数(フェノール性水酸基の当量数)と、エポキシ樹脂に含有されるエポキシ基の当量数との比(フェノール性水酸基の当量数/エポキシ基の当量数)が0.5〜2.0となることが好ましく、0.8〜1.2となることがより好ましい。
また、例えば、硬化剤としてアミン系硬化剤を用いる場合、効率的に硬化反応を行う観点からは、アミン系硬化剤の活性水素の当量数と、エポキシ樹脂のエポキシ基の当量数との比(活性水素の当量数/エポキシ基の当量数)が、0.3〜3.0であることが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ましい。
−無機充填材−
エポキシ樹脂組成物は、無機充填材を含んでもよい。
無機充填材を含むことにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物は、熱伝導性がより向上する。無機充填材は、絶縁性であることが好ましい。本開示において無機充填材の「絶縁性」とは、数百ボルト〜数千ボルト程度の電圧をかけても無機充填材自体が電流を流さない性質のことをいい、電子に占有された最もエネルギー準位の高い価電子帯からその上にある次のバンド(伝導帯)までが大きなエネルギーギャップで隔てられているために有する性質である。
無機充填材の材質としては、具体的には、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。中でも、流動性、熱伝導性及び電気絶縁性の観点から、酸化マグネシウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。また、流動性を妨げない範囲で、窒化ホウ素、シリカ、窒化アルミニウム等をさらに含有してもよい。
無機充填材に占める、酸化マグネシウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種の無機充填材の合計割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
無機充填材の形状は特に限定されず、例えば、粉状、球状、繊維状等が挙げられる。成形時の流動性及び金型摩耗性の点からは、球形が好ましい。
無機充填材は1種を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。なお、「無機充填材を2種類以上併用する」とは、例えば、同じ成分で平均粒子径が異なる無機充填材を2種類以上用いる場合、平均粒子径が同じで成分の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合並びに平均粒子径及び種類の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合が挙げられる。
無機充填材は、横軸に粒子径を、縦軸に頻度をとった粒度分布曲線を描いた場合に単一のピークを有していてもよく、複数のピークを有していてもよい。粒度分布曲線が複数のピークを有する無機充填材を用いることで、無機充填材の充填性が向上し、硬化物の熱伝導性が向上する。
無機充填材が粒度分布曲線を描いたときに単一のピークを有する場合、無機充填材の重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する体積平均粒子径(D50)は、熱伝導性の観点から、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.1μm〜70μmであることがより好ましい。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定され、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター製、LS230)を用いて測定することができる。
また、粒度分布曲線が複数のピークを有する無機充填材は、例えば、異なる体積平均粒子径を有する2種類以上の無機充填材を組み合わせることで構成できる。
エポキシ樹脂組成物中の無機充填材の含有率は特に制限されない。熱伝導性、成形性、機械強度等の観点から、エポキシ樹脂組成物の固形分の全体積を100体積%とした場合に、無機充填材の含有率は、60体積%〜95体積%であることが好ましく、70体積%〜85体積%であることがより好ましい。無機充填材の含有率が60体積%以上であると、より高い熱伝導性を達成することができる傾向にある。一方、無機充填材の含有率が95体積%以下であると、成形性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
なお、本開示においてエポキシ樹脂組成物の固形分とは、エポキシ樹脂組成物から揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。
エポキシ樹脂組成物中の無機充填材の含有率(体積%)は、次式により求めた値とする。
無機充填材含有率(体積%)=(Cw/Cd)/{(Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd)+(Ew/Ed)+(Fw/Fd)}×100
ここで、各変数は以下の通りである。
Aw:エポキシ樹脂の質量組成比(質量%)
Bw:硬化剤の質量組成比(質量%)
Cw:必要に応じて用いられる無機充填材の質量組成比(質量%)
Dw:必要に応じて用いられる硬化促進剤の質量組成比(質量%)
Ew:必要に応じて用いられるシランカップリング剤の質量組成比(質量%)
Fw:必要に応じて用いられるその他の成分の質量組成比(質量%)
Ad:エポキシ樹脂の比重
Bd:硬化剤の比重
Cd:必要に応じて用いられる無機充填材の比重
Dd:必要に応じて用いられる硬化促進剤の比重
Ed:必要に応じて用いられるシランカップリング剤の比重
Fd:必要に応じて用いられるその他の成分の比重
−硬化促進剤−
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含有してもよい。
硬化剤と共に硬化促進剤を併用することで、エポキシ樹脂組成物をさらに充分に硬化させることができる。硬化促進剤の種類及び配合量は特に限定されず、反応速度、反応温度、保管性等の観点から、適切なものを選択することができる。硬化促進剤は1種を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、有機ホスフィン化合物;有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物(1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等)、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;及び有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物(テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等)との錯体;からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
有機ホスフィン化合物としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、エポキシ樹脂組成物中の硬化促進剤の含有率は特に制限されない。流動性及び成形性の観点からは、硬化促進剤の含有率は、エポキシ樹脂と硬化剤の合計質量に対して0.1質量%〜1.5質量%であることが好ましく、0.2質量%〜1質量%であることがより好ましい。
−シランカップリング剤−
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてシランカップリング剤を含有してもよい。エポキシ樹脂組成物がシランカップリング剤を含むと、無機充填材の表面とその周りを取り囲むエポキシ樹脂との間で相互作用を生じさせ、流動性が向上し、高熱伝導化が達成され、さらには水分の浸入を妨げることにより絶縁信頼性が向上する傾向にある。
シランカップリング剤の種類は特に制限されず、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。中でも、フェニル基を有するシランカップリング剤が好ましい。フェニル基を含有するシランカップリング剤は、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂と相互作用しやすい。このため、エポキシ樹脂組成物がフェニル基を含有するシランカップリング剤を含有することで、硬化物としたときに、より優れた熱伝導性が達成される傾向にある。
フェニル基を含有するシランカップリング剤の種類は特に限定されない。フェニル基を有するシランカップリング剤の具体例としては、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアニリノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアニリノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルイミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルイミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトシキシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。フェニル基を含有するシランカップリング剤は1種類単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。フェニル基を含有するシランカップリング剤は市販品を用いてもよい。
シランカップリング剤全体に占めるフェニル基を有するシランカップリング剤の割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
無機充填材の表面とその周りを取り囲むエポキシ樹脂を接近させ、優れた熱伝導率を達成する観点からは、ケイ素原子(Si)にフェニル基が直接結合しているシランカップリング剤を含むことがより好ましい。
フェニル基を有するシランカップリング剤に占める、ケイ素原子(Si)にフェニル基が直接結合しているシランカップリング剤の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
エポキシ樹脂組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤は、無機充填材の表面に付着した状態で存在していても、無機充填材の表面に付着しない状態で存在していても、双方が混在していてもよい。
シランカップリング剤の少なくとも一部が無機充填材の表面に付着している場合、無機充填材の比表面積あたりのシランカップリング剤由来のケイ素原子の付着量は、5.0×10−6モル/m〜10.0×10−6モル/mが好ましく、5.5×10−6モル/m〜9.5×10−6モル/mがより好ましく、6.0×10−6モル/m〜9.0×10−6モル/mが更に好ましい。
無機充填材の比表面積あたりのシランカップリング剤由来のケイ素原子の被覆量の測定方法は、以下の通りである。
まず、無機充填材の比表面積の測定法としては、主にBET法が適用される。BET法とは、窒素(N)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)等の不活性気体分子を固体粒子に吸着させ、吸着した気体分子の量から固体粒子の比表面積を測定する気体吸着法である。比表面積の測定は、比表面積細孔分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター製、SA3100)を用いて行うことができる。
さらに、無機充填材の表面に存在するシランカップリング剤由来のケイ素原子を定量する。定量方法としては、29Si CP/MAS(Cross-Polarization/Magic angle spinning)固体NMR(核磁気共鳴)が挙げられる。核磁気共鳴装置(例えば、日本電子株式会社製、JNM−ECA700)は高い分解能を有するため、エポキシ樹脂組成物が無機充填材としてシリカを含む場合でも、無機充填材としてのシリカ由来のケイ素原子と、シランカップリング剤由来のケイ素原子とを区別することが可能である。
エポキシ樹脂組成物がシランカップリング剤由来のケイ素原子以外のケイ素原子を含まない場合は、蛍光X線分析装置(例えば、株式会社リガク製、Supermini200)によってもシランカップリング剤由来のケイ素原子を定量することができる。
上述のようにして得られた無機充填材の比表面積と、無機充填材の表面に存在するシランカップリング剤由来のケイ素原子の量とに基づき、無機充填材の比表面積あたりのシランカップリング剤由来のケイ素原子の被覆量が算出される。
上記測定を行うにあたり、エポキシ樹脂組成物に含まれている無機充填材は、例えば、以下に挙げる方法によってエポキシ樹脂組成物から取り出すことができる。
(1)エポキシ樹脂組成物を磁気製のるつぼに入れ、マッフル炉等で加熱(例えば600℃)して樹脂成分を燃焼させる。
(2)エポキシ樹脂組成物の樹脂成分を適当な溶媒に溶解させて無機充填材をろ過により回収し、乾燥させる。
エポキシ樹脂組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤のエポキシ樹脂組成物への添加方法は、特に制限はない。具体的には、エポキシ樹脂、無機充填材等の他の材料を混合する際にシランカップリング剤も添加するインテグラル法、少量の樹脂にシランカップリング剤を混合した後、これを無機充填材等の他の材料と混合するマスターバッチ法、エポキシ樹脂等の他の材料と混合する前に、無機充填材とシランカップリング剤とを混合して予め無機充填材の表面にシランカップリング剤を処理する前処理法などがある。前処理法としては、シランカップリング剤の原液又は溶液を無機充填材とともに高速撹拌により分散させて処理する乾式法、シランカップリング剤の希薄溶液で無機充填材をスラリー化したり、無機充填材にシランカップリング剤を浸漬したりすることで無機充填材表面にシランカップリング剤処理を施す湿式法等が挙げられる。
−その他の成分−
エポキシ樹脂組成物には、上述した成分に加え、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、酸化型及び非酸化型のポリオレフィン、カルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸、ステアリン酸等の離型剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤、グラスファイバー等の補強材などが挙げられる。その他の成分は、それぞれ、1種類単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
エポキシ樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、成分をミキサー等によって充分混合した後、溶融混練し、冷却し、粉砕する方法が挙げられる。溶融混練は、予め70℃〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で行うことができる。エポキシ樹脂組成物は、成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると使いやすい。
<エポキシ樹脂組成物の状態>
エポキシ樹脂組成物は、A−ステージ状態にあることが好ましい。エポキシ樹脂組成物がA−ステージ状態にあると、エポキシ樹脂組成物を熱処理して硬化する際に、エポキシ樹脂組成物がB−ステージ状態にある場合に比較してエポキシ樹脂と硬化剤との間の硬化反応の際に生ずる反応熱量が多くなり、硬化反応が進行しやすくなる。本開示において、A−ステージ及びB−ステージなる用語の定義は、JIS K 6800:1985による。
エポキシ樹脂組成物がA−ステージ状態にあるか否かは、下記基準により判断される。
エポキシ樹脂組成物を、当該エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂が可溶な有機溶媒(テトラヒドロフラン、アセトン等)に投入し、一定時間経過後に残存する無機充填材等をろ過によりろ別する。ろ別により得られた残渣の乾燥後の質量と、高温処理後の灰分の質量と、の差が±0.5質量%以内であれば、エポキシ樹脂組成物がA−ステージ状態であったと判断される。灰分の質量は、JIS K 7250−1:2006の規定に準じて測定し算出される。
または、予めA−ステージ状態と判明したエポキシ樹脂組成物の一定質量あたりの反応熱を示差走査熱量測定装置(DSC、例えば、パーキンエルマー製、Pyris1)により測定し、基準値とする。その後調製したエポキシ樹脂組成物の一定質量あたりの反応熱の測定値と、前記基準値との差が±5%以内であればA−ステージ状態であったと判断される。
エポキシ樹脂組成物がA−ステージ状態にある場合、A−ステージ状態のエポキシ樹脂組成物を180℃で1時間加熱した後の質量減少率が0.1質量%以下であることが好ましい。A−ステージ状態のエポキシ樹脂組成物を180℃で1時間加熱した後の質量減少率が0.1質量%以下であるということは、A−ステージ状態のエポキシ樹脂組成物が所謂「無溶剤型」のエポキシ樹脂組成物であることを意味する。エポキシ樹脂組成物が無溶剤型であると、乾燥工程を経ることなくエポキシ樹脂組成物の成形物を得ることが可能となり、成形物又は成形硬化物を得るための工程を簡略化できる。
本開示のエポキシ樹脂組成物はトランスファー成形法によって成形可能であることが好ましい。
<保護材付き厚銅回路>
本開示のエポキシ樹脂組成物は、厚銅回路の間の空間に配置して厚銅回路の保護材として適用することができる。以下、本開示のエポキシ樹脂組成物を適用することができる保護材付き厚銅回路の一例を説明する。
保護材付き厚銅回路は、厚銅回路と、前記厚銅回路の間の空間に配置される保護材と、を有する。保護材付き厚銅回路は、必要に応じてその他の構成を有していてもよい。保護材付き厚銅回路は、例えば、絶縁層を介して金属基板に配置して回路基板とすることができる。
本開示において厚銅回路とは、銅板を予め回路の状態に加工したものをいう。厚銅回路は購入したものであっても、作製したものであってもよい。厚銅回路の厚さは特に制限されず、これを用いて製造される回路基板の用途等によって適宜選択することができる。回路基板の大電流化の観点からは、厚銅回路の厚さは350μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、1000μm以上であることがさらに好ましい。容積及び重量の観点からは、厚銅回路の厚さは、例えば、3000μm以下であってよい。
厚銅回路の場所によって上記の値が異なる場合は、任意に選択した5箇所で得られた測定値の算術平均値を上記の値としてもよい。
上記回路の厚さは回路自体の厚さを意味し、隣接する部材に回路の一部が埋め込まれている場合は埋め込まれている部分の厚さも回路の厚さに含まれる。
厚銅回路における回路の幅及び長さは特に制限されず、これを用いて製造される回路基板の用途等に応じて選択できる。例えば、350μm〜70000μmの範囲から選択できる。
厚銅回路は、例えば、金属板を所望の形状の回路の状態に加工することで得られる。加工の方法は特に制限されず、打抜き、切削等の公知の方法から選択できる。
本開示のエポキシ樹脂組成物又はその硬化物を用いた保護材は、厚銅回路の間の空間に配置される。本開示において「厚銅回路の間の空間」とは、回路の状態に加工された1又は複数の厚銅回路を所望の位置に配置したときの、1又は複数の厚銅回路に挟まれた内側の空間を表す。保護材は必要に応じて厚銅回路の外縁部に配置されていてもよい。
厚銅回路において、回路の間の空間に配置される保護材の割合は、厚銅回路の形状、回路基板の作製条件等によって異なり、特に制限されない。保護材は、厚銅回路の間の空間の全てに配置されていても、空間の一部に配置されていてもよい。絶縁信頼性をより向上させる観点からは、厚銅回路の間の空間全体の容積に占める保護材の割合が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
保護材の厚さは、厚銅回路の厚さと同じであっても異なってもよい。厚銅回路の厚さの80%以上〜120%以下であることが好ましく、90%以上〜110%以下であることがより好ましく、95%以上〜105%以下であることがさらに好ましい。保護材の場所によって上記の値が異なる場合は、任意に選択した5箇所で得られた測定値の算術平均値を上記の値としてもよい。
厚銅回路の取り扱い性の観点からは、保護材は厚銅回路と一体化した状態である(保護材付き厚銅回路を一枚のシートとして扱うことができる)ことが好ましい。例えば、保護材付き厚銅回路における保護材が、厚銅回路の間の空間から外縁部まで連続して設けられた状態であることが好ましい。保護材付き厚銅回路における厚銅回路と保護材が一体化した状態であると、得られる厚銅回路の絶縁信頼性及び耐湿信頼性に優れ、沿面放電、部分放電、トラッキング、マイグレーション等の発生が抑制される傾向にある。
厚銅回路の空間に保護材を配置する方法は特に制限されない。例えば、粉末等の固体状の樹脂材料を用いる方法として押出成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、インサート成形方法等が挙げられ、液状の樹脂材料を用いる方法として注型法、塗布法、印刷法、埋め込み法等が挙げられる。厚銅回路の空間に保護材を配置する際は、厚銅回路を樹脂シート等の仮基材上に配置してもよい。特に、トランスファー成形法により保護材を配置する場合、空隙なくエポキシ樹脂組成物を配置することができ、厚銅回路との密着性が向上する。そのため、絶縁信頼性が向上する傾向にあり、好ましい。
成形時の金型の温度は、150℃〜200℃としてもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂として、メソゲン骨格を有し且つ結晶相から液晶相に相転移する相転移温度が140℃以下のメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を使用する場合、金型の温度はメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の相転移温度以上150℃以下とすることが好ましく、140℃以下とすることがさらに好ましい。メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の相転移温度以上であると成形時にメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂が充分に溶融して成形しやすくなり、150℃以下であると成形物の熱伝導率に優れる傾向がある。
エポキシ樹脂組成物の成形物は、CuKα線を用いたX線回折法で得られるX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有することが好ましい。このような回折ピークを有する成形物は、高次構造の中でも特に秩序性の高いスメクチック構造が形成されており、熱伝導性に優れる。
なお、本開示におけるCuKα線を用いたX線回折測定の詳細は以下の通りである。
〔測定条件〕
使用装置:薄膜構造評価用X線回折装置ATX−G(株式会社リガク製)
X線種類:CuKα
走査モード:2θ/ω
出力:50kV、300mA
S1スリット:幅0.2mm、高さ:10mm
S2スリット:幅0.2mm、高さ:10mm
RSスリット:幅0.2mm、高さ:10mm
測定範囲:2θ=2.0°〜4.5°
サンプリング幅:0.01°
エポキシ樹脂組成物は成形後、金型から外した状態の成形物をそのまま使用してもよく、必要に応じてオーブン等で加熱することにより後硬化してから使用してもよい。
成形物を加熱により後硬化すると、成形硬化物が得られる。成形物の加熱条件は、エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂、硬化剤等の種類及び量に応じて適宜選択することができる。例えば、成形物の加熱温度は130℃〜200℃が好ましく、150℃〜180℃がより好ましい。成形物の加熱時間は、1時間〜10時間が好ましく、2時間〜6時間がより好ましい。
成形硬化物は、後硬化前の成形物と同様に、CuKα線を用いたX線回折法で得られるX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが3.0°〜3.5°の範囲に回折ピークを有することが好ましい。このことは、成形物中で形成された秩序性の高いスメクチック構造が、加熱による後硬化後も維持され、熱伝導性に優れた成形硬化物を得られることを表している。
保護材付き厚銅回路の用途は特に制限されず、産業用機器等の分野で好適に使用できる。
次に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<エポキシ樹脂組成物の調製>
以下に、エポキシ樹脂組成物の調製に使用した材料を示す。
<エポキシ樹脂>
・エポキシ樹脂1:エポキシ樹脂モノマー
(trans−4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、特許第5471975号公報参照)
・エポキシ樹脂2の合成:エポキシ樹脂プレポリマー(HQ1.3)
フラスコ内にエポキシ樹脂1(エポキシ樹脂モノマー)を50g量り取り、80gのシクロヘキサノン溶媒中に窒素を導入しながら撹拌し、160℃のオイルバスに浸漬しエポキシ樹脂1(エポキシ樹脂モノマー)を溶解する。2価フェノールとしてヒドロキノン1.3gと反応触媒としてトリフェニルホスフィン0.5gを添加し、160℃の温度で加熱し反応を開始する。5時間加熱を継続した後に反応溶液からシクロヘキサノンを減圧留去し、エポキシ樹脂2(HQ1.3)を得た。なお、このエポキシ樹脂プレポリマーには、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ樹脂モノマーが含まれている。
・エポキシ樹脂3の合成:エポキシ樹脂プレポリマー(HQ2.5)
エポキシ樹脂2の合成方法と同様の操作にて、ヒドロキノンの量を2.5gに変更し、エポキシ樹脂3(HQ2.5)を合成した。
・エポキシ樹脂4の合成:エポキシ樹脂プレポリマー(BP2.5)
エポキシ樹脂2の合成方法と同様の操作にて、2価フェノールとしてヒドロキノンを4,4’−ビフェノール5.2gに変更し、エポキシ樹脂4(BP2.5)を合成した。
<硬化剤>
・硬化剤1:カテコールレゾルシノールノボラック樹脂(A4、日立化成株式会社製)
<硬化促進剤>
・トリフェニルホスフィン(TPP、和光純薬工業株式会社製)
<カップリング剤>
・N−フェニルアミノトリメトキシシラン(KBM−573、信越化学工業株式会社製)
<離型剤>
・モンタン酸エステル(リコワックスE、クラリアントジャパン株式会社製)
<無機充填材>
・アルミナ組成1(マイクロン株式会社製のAL35−63(平均粒子径50μm)、AL35−45(平均粒子径20μm)、及びAX3−32(平均粒子径4μm)の組合せ)
・アルミナ組成2(住友化学株式会社製のAA18(平均粒子径18μm)、AA3(平均粒子径3μm)、及びAA04(平均粒子径0.4μm)の組合せ)
アルミナ組成1及び2は、3峰を混合したものを使用した。
<エポキシ樹脂の相転移温度の測定>
上記で得られたエポキシ樹脂1〜4について、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社、Pyris1)を用いて測定した。昇温速度20℃/分、測定温度範囲25℃〜350℃、流量20±5ml/minの窒素雰囲気下の条件で、アルミパンに密閉した3mg〜5mgの試料の示差走査熱量測定を行い、相転移に伴うエネルギー変化が起こる温度(吸熱反応ピークの温度)を相転移温度とした。エポキシ樹脂1〜4の融点を以下に示す。
エポキシ樹脂1:145℃
エポキシ樹脂2:135℃
エポキシ樹脂3:124℃
エポキシ樹脂4:確認できず
エポキシ樹脂4では、エポキシ樹脂モノマーがエポキシ樹脂プレポリマーと相溶し、結晶として存在していないため、融点は確認できなかった。但し、プレポリマー化しているため、エポキシ樹脂4の融点はエポキシ樹脂1より低いと推測される。
<エポキシ樹脂組成物の調製>
表1に示す配合組成で、ヘンシェルミキサにより予備混合を行った後に、ロール分散によりエポキシ樹脂組成物を調製した。なお、エポキシ樹脂と硬化剤の比率は、それぞれの材料の当量比が1:1になるようにした。無機充填材の体積分率は78体積%に固定した。表1中、○は該当する成分が含まれることを表し、空欄は該当する成分が含まれていないことを表す。
<流動性の評価>
流動性の評価は、スパイラルフロー試験により行った。EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いてエポキシ樹脂組成物を成形し、エポキシ樹脂組成物の成形物の流動距離(cm)を測定した。エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件下で行った。また、流動性は10cm以下をC、10cm以上〜50cm未満をB、50cm以上をAとした。
<高温接着性の評価>
高温接着性の評価は、以下の手順により行った。Cu基板上に金型温度180℃、成形圧力7MPa、硬化時間300秒間の条件でトランスファー成形を行い、厚さ0.4mmの硬化物を得た。これを280℃に加熱したホットプレート上で15分間静置した。冷却後の外観及び超音波映像装置(SAT)を用いて観察し、剥離が発生したものをC、剥離がなかったものをAとした。
<熱伝導率の評価>
熱伝導率の評価は、下記により行った。金型温度180℃、成形圧力7MPa、硬化時間300秒間の条件でトランスファー成形を行い、3mm厚の金型形状の硬化物を得た。硬化物の熱拡散率を熱拡散率測定装置(NETZSCH社製、LFA467)を用いて測定し、比重と比熱を乗算した値を熱伝導率とした。
熱伝導率は6W/(m・K)以上7W/(m・K)未満をB、7W/(m・K)以上9W/(m・K)未満をA、9W/(m・K)以上をAAとした。6W/(m・K)以上(評価がB以上)であると、厚銅回路充填用に適用可能と判断できる。
比重はアルキメデス法により測定し、3.2〜3.3の範囲であった。
比熱はDSC法により測定した。
表1の特性結果が示すように、いずれの実施例も優れた熱伝導率を有し、厚銅回路の放熱に好適に適用可能であることがわかった。また、プレポリマー体のフェノール変性比率が増加するとともに、流動性が向上し、それに伴い高温接着性も向上した。これは、被着体との接着性が向上したためと考えられる。さらに、無機充填材としてアルミナ組成2を用いた場合、熱伝導率、高温接着性、及び流動性がいずれも向上していた。

Claims (6)

  1. メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、を含有する厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
  2. 前記メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂における結晶相から液晶相に相転移する相転移温度が140℃以下である、請求項1に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
  3. 前記メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、フェノール化合物と、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物との反応物を含む、請求項1又は請求項2に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
  4. 前記メソゲン骨格を有するエポキシ化合物が、下記一般式(I−0)で表される化合物を含む請求項3に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。


    (一般式(I−0)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
  5. エポキシ樹脂組成物の固形分の全体積に対して60体積%〜95体積%の無機充填材をさらに含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
  6. トランスファー成形法により成形可能である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の厚銅回路充填用エポキシ樹脂組成物。
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