JP2019052366A - フィルム状焼成材料、及び支持シート付フィルム状焼成材料 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、半導体素子から発生した熱の放熱のため、半導体素子の周りにヒートシンクが取り付けられる場合もある。しかし、ヒートシンクと半導体素子との間の接合部での熱伝導性が良好でなければ、効率的な放熱が妨げられてしまう。
ところで、焼成材料は、例えば半導体ウエハをダイシングにより個片化したチップと基板との焼結接合に使用される。また、フィルム状の焼成材料の一方の側(表面)に支持シートを設ければ、半導体ウエハをチップに個片化する際に使用するダイシングシートとして使用することができる。さらに、ブレード等を用いて半導体ウエハと一緒に個片化することでチップと同形のフィルム状焼成材料として加工することができる。
フィルム状の焼成材料の脆さを解消するためには、フィルム状の焼成材料を柔らかくすればよいが、柔軟性が高すぎるとダイシング時にフィルム状の焼成材料が振動してチップ同士がぶつかりやすくなり、チップの表面や側面においてチップ欠け(チッピング)が発生しやすくなる。
このように、ウエハ汚染の防止とチップ欠けの防止はトレードオフの関係にあるため、ウエハ汚染とチップ欠けの両方を抑制することは困難であった。
[1] 焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料であって、
焼結性金属粒子の含有量が15〜98質量%であり、バインダー成分の含有量が2〜50質量%であり、
60℃における引張弾性率が4.0〜10.0MPaであり、60℃における破断伸度が500%以上である、フィルム状焼成材料。
[2] 23℃における引張弾性率が5.0〜20.0MPaであり、23℃における破断伸度が300%以上である、[1]に記載のフィルム状焼成材料。
[3] 焼成前のフィルム状焼成材料を構成する成分のうち、金属粒子を除いた成分のガラス転移温度が30〜70℃である、[1]又は[2]に記載のフィルム状焼成材料。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルム状焼成材料と、前記フィルム状焼成材料の少なくとも一方の側に設けられた支持シートと、を備えた支持シート付フィルム状焼成材料。
[5] 前記支持シートが、基材フィルム上に粘着剤層が設けられたものであり、
前記粘着剤層上に、前記フィルム状焼成材料が設けられている、[4]に記載の支持シート付フィルム状焼成材料。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
本実施形態のフィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料であって、焼結性金属粒子の含有量が15〜98質量%であり、バインダー成分の含有量が2〜50質量%であり、60℃における引張弾性率が4.0〜10.0MPaであり、60℃における破断伸度が500%以上である。
図1は、本実施形態のフィルム状焼成材料を模式的に示す断面図である。フィルム状焼成材料1は、焼結性金属粒子10及びバインダー成分20を含有している。
なお、本明細書においては、フィルム状焼成材料の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料、構成材料の配合比、及び厚さの少なくとも一つが互いに異なる」ことを意味する。
ここで、「フィルム状焼成材料の厚さ」とは、フィルム状焼成材料全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるフィルム状焼成材料の厚さとは、フィルム状焼成材料を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
フィルム状焼成材料は、剥離フィルム上に積層された状態で提供することができる。使用する際には、剥離フィルムを剥がし、フィルム状焼成材料を焼結接合させる対象物上に配置すればよい。剥離フィルムはフィルム状焼成材料の損傷や汚れ付着を防ぐための保護フィルムとしての機能も有する。剥離フィルムは、フィルム状焼成材料の少なくとも一方の側に設けられていればよく、フィルム状焼成材料の両方の側に設けられてよい。
焼結性金属粒子は、フィルム状焼成材料の焼成として金属粒子の融点以上の温度で加熱処理されることで粒子同士が溶融・結合して焼結体を形成可能な金属粒子である。焼結体を形成することで、フィルム状焼成材料とそれに接して焼成された物品とを焼結接合させることが可能である。具体的には、フィルム状焼成材料を介してチップと基板とを焼結接合させることが可能である。
フィルム状焼成材料が含む焼結性金属粒子の粒子径は、電子顕微鏡で観察された金属粒子の粒子径の、投影面積円相当径が100nm以下の粒子に対して求めた粒子径の数平均が、0.1〜95nmであってよく、0.3〜50nmであってよく、0.5〜30nmであってよい。なお、測定対象の金属粒子は、1つのフィルム状焼成材料あたり無作為に選ばれた100個以上とする。
粒子径100nm以下の金属粒子と、粒子径が100nmを超える非焼結性の金属粒子とは、互いに同一の金属種であってもよく、互いに異なる金属種であってもよい。例えば、粒子径100nm以下の金属粒子が銀粒子であり、粒子径が100nmを超える非焼結性の金属粒子が銀又は酸化銀粒子であってもよい。例えば、粒子径100nm以下の金属粒子が銀又は酸化銀粒子であり、粒子径が100nmを超える非焼結性の金属粒子が銅又は酸化銅粒子であってもよい。
焼結性金属粒子及び/又は非焼結性の金属粒子の表面に有機物が被覆されている場合、焼結性金属粒子及び非焼結性の金属粒子の質量は、被覆物を含んだ値とする。
バインダー成分が配合されることで、焼成材料をフィルム状に成形でき、焼成前のフィルム状焼成材料に粘着性を付与することができる。バインダー成分は、フィルム状焼成材料の焼成として加熱処理されることで熱分解される熱分解性であってよい。
バインダー成分は特に限定されるものではないが、バインダー成分の好適な一例として、樹脂が挙げられる。樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸、セルロース誘導体の重合物等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂には、(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、(メタ)アクリレート化合物の2種以上の共重合体、(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。
ここでいう「由来」とは、前記モノマーが重合するのに必要な構造の変化を受けたことを意味する。
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、などを挙げることができる。アルキル(メタ)アクリレート又はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましい(メタ)アクリレート化合物として、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び2−エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
アクリル樹脂としては、メタクリレートが好ましい。バインダー成分がメタクリレート由来の構成単位を含有することで、比較的低温で焼成することができ、焼結後に充分な接着強度を得るための条件を容易に満たすことができる。
なお、本明細書において、「質量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)
(式中、Tgはバインダー成分を構成する樹脂のガラス転移温度であり、Tg1,Tg2,…Tgmはバインダー成分を構成する樹脂の原料となる各単量体のホモポリマーのガラス転移温度であり、W1,W2,…Wmは各単量体の質量分率である。ただし、W1+W2+…+Wm=1である。)
前記Foxの式における各単量体のホモポリマーのガラス転移温度は、高分子データ・ハンドブック又は粘着ハンドブック記載の値を用いることができる。
バインダー成分は、焼成前のバインダー成分の総質量(100質量%)に対し、焼成後の質量が10質量%以下となるものであってよく、5質量%以下となるものであってよく、3質量%以下となるものであってよい。
本実施形態のフィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子、バインダー成分、及びその他の添加剤からなるものであってもよく、これらの含有量(質量%)の和は100質量%となってよい。
本実施形態のフィルム状焼成材料が非焼結性の金属粒子を含む場合には、フィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子、非焼結性の金属粒子、バインダー成分、及びその他の添加剤からなるものであってもよく、これらの含有量(質量%)の和は100質量%となってよい。
本実施形態のフィルム状焼成材料は、60℃における引張弾性率が4.0〜10.0MPaのものである。60℃における引張弾性率は4.5〜5.5MPaが好ましい。本実施形態のフィルム状焼成材料の、23℃における引張弾性率は5.0〜20.0MPaが好ましく、6.0〜18.0MPaがより好ましい。60℃又は23℃における引張弾性率が上記範囲内であることで、フィルム状焼成材料の外力による変形量が小さく、且つ靱性を備えたものとなる。特に、引張弾性率が上記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料が脆くなりにくく、ダイシング時のウエハ汚染を抑制できる。一方、引張弾性率が上記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料が柔らかくなりすぎず、ダイシング時のチップ欠けを抑制できる。
なお、本実施形態において60℃における引張弾性率及び後述の破断伸度を規定した理由は、ブレードダイシング時の摩擦熱により、フィルム状焼成材料が60℃程度までに加熱されることを考慮したものであるが、実際のダイシング時におけるフィルム状焼成材料の温度が60℃に限定されることはない。また、本実施形態において23℃における引張弾性率及び後述の破断伸度を規定した理由は、23℃での測定が容易であることを考慮したものであり、実際のダイシング時におけるフィルム状焼成材料の温度が23℃であることを意味するものではない。
幅が10mmであり、長さが20mmであり、厚さが200μmであるフィルム状焼成材料を試験片とし、この試験片を23℃、又は60℃に加温し、引張速度50mm/分、チャック間距離10mmで引っ張ったときの荷重と伸び量を測定する。伸度が0〜5%の領域の引っ張り応力の傾きから引張弾性率を求める。
本実施形態のフィルム状焼成材料は、60℃における破断伸度が500%以上のものである。60℃における破断伸度は600%以上が好ましい。本実施形態のフィルム状焼成材料の、23℃における破断伸度は300%以上が好ましく、400%以上がより好ましい。60℃又は23℃における破断伸度が上記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料が脆くなりにくく、ダイシング時のウエハ汚染を抑制できる。
フィルム状焼成材料の60℃における破断伸度は、3000%以下が好ましく、23℃における破断伸度は、2500%以下が好ましい。
幅が10mmであり、長さが20mmであり、厚さが200μmであるフィルム状焼成材料を試験片とし、この試験片を23℃、又は60℃に加温し、引張速度50mm/分、チャック間距離10mmで引っ張ったときの伸び量を測定する。試験片が破断したときの伸び量から破断伸度を求める。
本実施形態のフィルム状焼成材料は、焼成前のフィルム状焼成材料を構成する成分のうち、金属粒子(焼結性金属粒子及び非焼結性の金属粒子)を除いた成分のガラス転移温度(以下、「金属粒子以外の焼成材料のTg」ともいう。)が30〜70℃であることが好ましく、40〜60℃がより好ましい。金属粒子以外の焼成材料のTgが上記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料が脆くなりにくく、ダイシング時のウエハ汚染をより抑制できる。一方、金属粒子以外の焼成材料のTgが上記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料が柔らかくなりすぎず、ダイシング時のチップ欠けをより抑制できる。
フィルム状焼成材料から金属粒子を分離したものについて、動的機械分析装置を用いて貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”を測定し、これらの比(E”/E’)であるtanδを温度に対してプロットし、tanδの極大を示す温度を焼成材料のTgとする。
フィルム状焼成材料から金属粒子と、金属粒子を除いた成分との分離する方法は、後述の実施例に記載した通りである。
支持シート付フィルム状焼成材料の詳細は、後述する。
フィルム状焼成材料は、その構成材料を含有する焼成材料組成物を用いて形成できる。例えば、フィルム状焼成材料の形成対象面に、フィルム状焼成材料を構成するための各成分及び溶媒を含む焼成材料組成物を塗工又は印刷し、必要に応じて溶媒を揮発させることで、目的とする部位にフィルム状焼成材料を形成できる。
フィルム状焼成材料の形成対象面としては、剥離フィルムの表面が挙げられる。
沸点が350℃を上回ると、印刷後の揮発乾燥にて溶媒が揮発しにくくなり、所望の形状を確保することが困難となったり、焼成時に溶媒がフィルム内に残存してしまい、接合接着性を劣化させたりする可能性がある。沸点が65℃を下回ると印刷時に揮発してしまい、厚さの安定性が損なわれてしまう恐れがある。沸点が200〜350℃の溶媒を用いれば、印刷時の溶媒の揮発による粘度上昇を抑えることができ、印刷適性を得ることができる。
フィルム状焼成材料が円形である場合、円の面積は、3.5〜1,600cm2であってよく、85〜1,400cm2であってよい。フィルム状焼成材料が矩形である場合、矩形の面積は、0.01〜25cm2であってよく、0.25〜9cm2であってよい。 特に、焼成材料組成物を印刷すれば、所望の形状のフィルム状焼成材料を形成しやすい。
本実施形態の支持シート付フィルム状焼成材料は、上述したフィルム状焼成材料と、前記フィルム状焼成材料の少なくとも一方の側(表面)に設けられた支持シートと、を備える。前記支持シートは、基材フィルム上の全面もしくは外周部に粘着剤層が設けられたものであり、前記粘着剤層上に、前記フィルム状焼成材料が設けられていることが好ましい。前記フィルム状焼成材料は、粘着剤層に直接接触して設けられてもよく、基材フィルムに直接接触して設けられてもよい。本形態をとることで、半導体ウエハをチップに個片化する際に使用するダイシングシートとして使用することができる。且つブレード等を用いて半導体ウエハと一緒に個片化することでチップと同形のフィルム状焼成材料として加工することができ、且つフィルム状焼成材料付チップを製造することができる。
基材フィルム3としては、特に限定されず、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE),エチレン・プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンフィルム、アイオノマー等からなるフィルムなどが用いられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両者を含む意味で用いる。
また支持シートに対してより高い耐熱性が求められる場合には、基材フィルム3としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルムや放射線・放電等による改質フィルムも用いることができる。基材フィルムは上記フィルムの積層体であってもよい。
支持シート2は、少なくともその外周部に粘着部を有する。粘着部は、支持シート付フィルム状焼成材料100a,100bの外周部において、リングフレーム5を一時的に固定する機能を有し、所要の工程後にはリングフレーム5が剥離可能であることが好ましい。したがって、粘着剤層4には、弱粘着性のものを使用してもよいし、エネルギー線照射により粘着力が低下するエネルギー線硬化性のものを使用してもよい。再剥離性粘着剤層は、公知の種々の粘着剤(例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルエーテル系などの汎用粘着剤、表面凹凸のある粘着剤、エネルギー線硬化型粘着剤、熱膨張成分含有粘着剤等)により形成できる。
支持シート付フィルム状焼成材料は、外周部に粘着部を有する支持シートの内周部にフィルム状焼成材料が剥離可能に仮着されてなる。図2で示した構成例では、支持シート付フィルム状焼成材料100aは、基材フィルム3と粘着剤層4とからなる支持シート2の内周部にフィルム状焼成材料1が剥離可能に積層され、支持シート2の外周部に粘着剤層4が露出している。この構成例では、支持シート2よりも小径のフィルム状焼成材料1が、支持シート2の粘着剤層4上に同心円状に剥離可能に積層されていることが好ましい。
前記支持シート付フィルム状焼成材料は、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。
例えば、基材フィルム上に粘着剤層又はフィルム状焼成材料を積層する場合には、剥離フィルム上に、これを構成するための成分及び溶媒を含有する粘着剤組成物又は焼成材料組成物を塗工又は印刷し、必要に応じて乾燥させ溶媒を揮発させてフィルム状とすることで、剥離フィルム上に粘着剤層又はフィルム状焼成材料をあらかじめ形成しておき、この形成済みの粘着剤層又はフィルム状焼成材料の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、基材フィルムの表面と貼り合わせればよい。このとき、粘着剤組成物又は焼成材料組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工又は印刷することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
次に本発明に係る支持シート付フィルム状焼成材料の利用方法について、該焼成材料をチップ付基板の製造に適用した場合を例にとって説明する。
工程(2):フィルム状焼成材料と、支持シートとを剥離し、フィルム状焼成材料付チップを得る工程、
工程(3):基板の表面に、フィルム状焼成材料付チップを貼付する工程、
工程(4):フィルム状焼成材料を焼成し、チップと基板とを接合する工程。
半導体ウエハはシリコンウエハ及びシリコンカーバイドウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。半導体ウエハの表面には、回路が形成されていてもよい。ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、半導体ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚さは特に限定はされないが、通常は20〜500μm程度である。その後、必要に応じ、裏面研削時に生じた破砕層を除去する。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。
なお、表面に回路が形成された半導体ウエハを個片化したもの(チップ)を特に、素子又は半導体素子ともいう。
次いでフィルム状焼成材料を焼成し、基板とチップとを焼結接合する。このとき、フィルム状焼成材料付チップのフィルム状焼成材料の露出面を、基板に貼付けておけば、フィルム状焼成材料を介してチップと前記基板とを焼結接合できる。
<焼成材料組成物の製造>
焼成材料組成物の製造に用いた成分を以下に示す。ここでは、粒子径100nm以下の金属粒子について「焼結性金属粒子」と表記している。
・アルコナノ銀ペーストANP−1(有機被覆複合銀ナノペースト、応用ナノ粒子研究所社製:アルコール誘導体被覆銀粒子、金属含有量70質量%以上、平均粒径100nm以下の銀粒子(焼結性金属粒子)60質量%以上)
・アルコナノ銀ペーストANP−4(有機被覆複合銀ナノペースト、応用ナノ粒子研究所社製:アルコール誘導体被覆銀粒子、金属含有量80質量%以上、平均粒径100nm以下の銀粒子(焼結性金属粒子)25質量%以上)
・アクリル重合体1(2−エチルヘキシルメタクリレート重合体、質量平均分子量260,000、L−0818、日本合成化学社製、MEK希釈品、固形分58.4質量%、Tg:−10℃)
・アクリル重合体2(2−エチルヘキシルメタクリレート/n−ブチルアクリレート共重合体、共重合質量比率40/60、質量平均分子量280,000、L−0818B、日本合成化学社製、MEK希釈品、固形分60.0質量%、Tg:−30℃)
・アクリル重合体3(2−エチルヘキシルメタクリレート/アクリル酸/ter−ブチルメタクリレート共重合体、共重合質量比率47/15/38、質量平均分子量280,000、L−0818C、日本合成化学社製、MEK希釈品、固形分60.0質量%、Tg:41℃)
なお、アクリル重合体1〜3のTgは、Foxの式を用いた計算値である。
剥離フィルム(厚さ38μm、SP−PET381031、リンテック社製)の片面に、上記で得られた焼成材料組成物を塗工し、110℃10分間乾燥させることで、表1に示す厚さを有する、フィルム状焼成材料を得た。
上記で得られたフィルム状焼成材料を剥離フィルムと共に直径153mmの円形状にカットした。
実施例1〜2及び比較例1〜3では、厚さ70μmの基材フィルム上に厚さ10μmの粘着剤層が積層された支持シートとして、ダイシングシート(Adwill G−011、リンテック社製)を用い、該ダイシングシートの粘着剤層面に円形状にカットしたフィルム状焼成材料を貼付し、基材フィルム上に粘着剤層を有するダイシングシート(支持シート)の上に、円形のフィルム状焼成材料と剥離フィルムが積層された支持シート付フィルム状焼成材料を得た。
実施例3では、基材フィルムからなる支持シートとして、ポリプロピレンからなる層と、エチレン−メタクリル酸共重合物からなる層とがこの順に積層されたダイシングシート(HUSL1302、アキレス社製)を用い、該ダイシングシートのポリプロピレンからなる層面に円形状にカットしたフィルム状焼成材料を貼付し、さらに両面に粘着材層を有する両面テープ(G−01DF、リンテック社製)の外径がリングフレーム外径と略同じで、内径がフィルム状焼成材の外径より大きいリング形状にカットされたものを、フィルム状焼成材料の外周部に貼付し、さらにこれの上に保護フィルムとして剥離フィルムを貼付した。これにより基材フィルムからなるダイシングシート(支持シート)の上に、円形のフィルム状焼成材料とフィルム状焼成材料の外側にリングフレーム保持用の両面テープが積層され、さらに全面に剥離フィルムが積層された支持シート付フィルム状焼成材料を得た。
焼成前のフィルム状焼成材料と、重量で約10倍量の有機溶媒とを混合した後にこれを焼結性金属粒子及び非焼結性の金属粒子が沈降するまで、約30分間、静置した。この上澄み液をシリンジで抜き取り、120℃10分間乾燥した後の残留物を回収することで、フィルム状焼成材料から焼結性金属粒子及び非焼結性の金属粒子を除いた成分を分取した。
上記で得られたフィルム状焼成材料について、下記項目を測定及び評価した。
JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器(テクロック社製、製品名「PG−02」)を用いてフィルム状焼成材料の厚さを測定した。
剥離フィルムを剥がしたフィルム状焼成材料を厚さが200μmとなるように複数積層し、さらに幅10mm、長さ20mmとなるように切断したものを引張弾性率及び破断伸度測定用の試験片とした。
得られた試験片をチャック間距離が10mmとなるように万能型引張試験機(インストロン社製、5581型試験機)の所定の箇所に固定した。23℃での引張弾性率及び破断伸度を測定する場合は、23℃で、引張速度50mm/分で試験片を引っ張ったときの荷重と伸び量を測定した。60℃での引張弾性率及び破断伸度を測定する場合は、付帯された加熱炉にて試験片を60℃に加温し、引張速度50mm/分で試験片を引っ張ったときの荷重と伸び量を測定した。伸度が0〜5%の領域の引っ張り応力の傾きから引張弾性率[MPa]を求めた。また、試験片が破断したときの伸び量から破断伸度[%]を求めた。結果を表1に示す。
上記の方法でフィルム状焼成材料から焼結性金属粒子及び非焼結性の金属粒子を除いた成分を分離した。
焼成前のフィルム状焼成材料を構成する成分のうち、金属粒子を除いた成分をMEK(メチルエチルケトン)に溶融し、剥離処理が施されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗工し、乾燥させてMEKを揮発させることにより、ガラス転移温度測定用のフィルムを作製した。
得られたガラス転移温度測定用のフィルムについて、動的機械分析装置(TAインスツルメンツ社製、製品名「DMA Q800」)を用い、昇温速度10℃/分の条件で150℃まで昇温し、貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”を測定し、これらの比(E”/E’)であるtanδを温度に対してプロットした。tanδの極大を示す温度を、焼成前のフィルム状焼成材料を構成する成分のうち、金属粒子を除いた成分のガラス転移温度とした。結果を表1に示す。
表面を算術平均粗さ(Ra)が0.02μm以下になるまでケミカルメカニカルポリッシュ処理したシリコンウエハ(科学技術研究所社製、直径:150mm、厚さ:150μm)を粘着対象の被着体として準備した。
支持シート付フィルム状焼成材料から剥離フィルムを剥がし、露出したフィルム状焼成材料側の面を、テープマウンター(Adwill RAD2500、リンテック社製)を用いて、シリコンウエハの処理面に貼付し、チップ欠け及びウエハ汚染評価用の試験片を得た。
得られた試験片をダイシング用リングフレーム(ディスコ社製)に装着し、ダイシング装置(DFD−651、ディスコ社製)を用いて、以下の条件でダイシングを行った。ダイシング後のチップ及びシリコンウエハを実体顕微鏡にて観察した。個片化された各チップについて、1辺が10μm以上の大きさの割れ又は欠けの有無を確認した。また、シリコンウエハ表面へのフィルム状焼成材料の削りカスの付着の有無を確認した。結果を表1に示す。
<各種条件>
・ダイシングブレード:NBC−ZH2050−SE27HECC、ディスコ社製
・ブレード厚さ:0.03mm
・刃出し量:0.76mm
・ブレード回転数:40,000rpm
・切断速度:40mm/秒
・切削水量:1.0L/分
・切削水温度:20℃
・切り込み条件:シリコンウエハとともに、支持シートの基材フィルムがフィルム状焼成材料側の表面より20μmの深さまで切り込まれるように実施した。
・ダイシング条件:各チップが5mm×5mmとなるように実施した。
2 支持シート
3 基材フィルム
4 粘着剤層
5 リングフレーム
10 焼結性金属粒子
20 バインダー成分
100a 支持シート付フィルム状焼成材料
100b 支持シート付フィルム状焼成材料
Claims (5)
- 焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有するフィルム状焼成材料であって、
焼結性金属粒子の含有量が15〜98質量%であり、バインダー成分の含有量が2〜50質量%であり、
60℃における引張弾性率が4.0〜10.0MPaであり、60℃における破断伸度が500%以上である、フィルム状焼成材料。 - 23℃における引張弾性率が5.0〜20.0MPaであり、23℃における破断伸度が300%以上である、請求項1に記載のフィルム状焼成材料。
- 焼成前のフィルム状焼成材料を構成する成分のうち、金属粒子を除いた成分のガラス転移温度が30〜70℃である、請求項1又は2に記載のフィルム状焼成材料。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム状焼成材料と、前記フィルム状焼成材料の少なくとも一方の側に設けられた支持シートと、を備えた支持シート付フィルム状焼成材料。
- 前記支持シートが、基材フィルム上に粘着剤層が設けられたものであり、
前記粘着剤層上に、前記フィルム状焼成材料が設けられている、請求項4に記載の支持シート付フィルム状焼成材料。
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