JP2019052352A - 摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 軸受装置の起動時に摺動層の表面に割れ等の損傷が発生することを防止することが可能な摺動部材を提供する。【解決手段】 摺動層3中の固体潤滑剤5の体積割合を10〜35%とし、且つ、摺動層3中の固体潤滑剤5の全体積に対する摺動面側領域31に分散した固体潤滑剤5の体積割合を20〜40%とすることで、界面側領域32に比べて、摺動面側領域31の強度(変形抵抗)が大きくなる。このため、摺動部材1が用いられる軸受装置の起動時には、相手部材の表面と摺動層3の摺動面30が直接接触した状態での摺動が起こっても、界面側領域32に弾性変形が生じることになる。したがって、摺動面側領域31の摺動面30付近の銅合金4が摺動方向に過度に弾性変形することが抑制され、摺動面30に割れ等の損傷が発生することを防止することができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、裏金層と、銅合金および固体潤滑剤からなる摺動層とを備えた摺動部材に関する。
従来、鉄道の分岐器に用いられる分岐器用床板として、レールを載置固定する床板本体と、この床板本体に設けられ、レールに接離されるトングレールが摺動される平板形状の摺動部材とを備えたものが知られている。このような分岐器用床板等の摺動部材としては、裏金層上に含油焼結合金層を形成した摺動部材が用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、分岐器用床板として含油焼結合金層を形成した摺動部材を用いた場合、その含油焼結合金層に定期的に潤滑油を注油する必要があり、使用には非常な労力を要するという問題がある。
また、分岐器用床板の摺動部材としては、摺動部材への注油作業の廃止あるいは注油作業回数の低減のため、裏金層と、金属中に黒鉛等の固体潤滑剤を分散させた摺動層からなるものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平5−255905号公報 特開2014−136899号公報 特開2000−309807号公報
ところで、鉄道の分岐器に用いられる分岐器用床板は、常に、摺動部材の摺動面と相手部材であるトングレールの摺動面とが直接接触している。このため、摺動部材が用いられる軸受装置の起動時等においては、相手部材の摺動面と摺動部材の摺動面とが直接接触した状態での摺動が起こる。そして、このような状態での摺動が起こると、相手部材に接する摺動部材の摺動面付近の合金は、相手部材に引きずられて、相手部材の移動方向(摺動方向)への弾性変形が生じることになる。このような状況では、特許文献3のように、分岐器用床板の摺動部材として、摺動層の合金中に固体潤滑剤の粒子を均一に分散させたものを用いた場合、摺動面付近の合金の弾性変形量が大きくなり、摺動層の表面に割れ等の損傷が発生する虞が大きくなる。
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、軸受装置の起動時に摺動層の表面に割れ等の損傷が発生することを防止することが可能な摺動部材を提供することにある。
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、 裏金層上に摺動層が設けられた摺動部材において、前記摺動層は、1〜15質量%の錫、残部が銅および不可避不純物からなる銅合金と、該銅合金中に分散した固体潤滑剤とからなり、該固体潤滑剤は、前記摺動層の10〜35%の体積割合を有し、前記摺動層の摺動面に垂直である断面組織において、前記摺動面から前記裏金層との界面に向かって前記摺動層の厚さの50%の領域を摺動面側領域としたとき、前記摺動層中の前記固体潤滑剤の全体積に対する前記摺動面側領域に分散した固体潤滑剤の体積割合が20〜40%であることを特徴とする。
請求項2に係る発明においては、請求項1記載の摺動部材において、前記銅合金は、さらに、0.1〜1質量%のP、15〜60質量%のNi、0.1〜30質量%のPb、0.1〜16質量%のBi、0.1〜10質量%のAg、0.1〜10質量%のFeから選択される1種以上を含むことを特徴とする。
請求項3に係る発明においては、請求項1または請求項2記載の摺動部材において、前記固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素から選択される1種以上であることを特徴とする。
請求項1に係る発明においては、摺動層中の固体潤滑剤の全体積に対する摺動面側領域に分散した固体潤滑剤の体積割合が20〜40%であり、界面側領域(界面から摺動面に向かって摺動層の厚さの50%までの領域)に比べて、摺動面側領域の強度(変形抵抗)が大きくなる。このため、摺動部材が用いられる軸受装置の起動時には、相手部材の表面と摺動層の摺動面が直接接触した状態での摺動が起こっても、界面側領域に弾性変形が生じることになる。したがって、摺動面側領域の摺動面付近の銅合金が摺動方向に過度に弾性変形することが抑制され、摺動面に割れ等の損傷が発生することを防止することができる。
また、銅合金には、強度を高めるために1〜15質量%の錫を含有しているが、錫の含有量が1質量%未満の場合には、銅合金の強度を高める効果が不十分となる。一方、錫の含有量が15質量%を超えると、銅合金が脆くなりすぎる。
また、摺動層中の固体潤滑剤の体積割合は、10〜35%としているが、固体潤滑剤の体積割合が10%未満の場合には、摺動層の摺動面側領域中の固体潤滑剤の体積割合が少なくなりすぎて、摺動層の摺動特性(低摩擦化)を高める効果が不十分となる。一方、固体潤滑剤の体積割合が35%を超えると、摺動層の界面側領域中の固体潤滑剤の体積割合が多くなりすぎて、摺動層の強度が低くなりすぎる。
また、摺動層中の固体潤滑剤の全体積に対する摺動面側領域に分散した固体潤滑剤の体積割合が20%未満の場合には、摺動面側領域と界面側領域の強度(変形抵抗)の差が大きすぎて、摺動層が負荷を受けたときに、界面側領域が過度に弾性変形してしまい、界面側領域の内部で割れが発生することがある。一方、摺動層中の固体潤滑剤の全体積に対する摺動面側領域に分散した固体潤滑剤の体積割合が40%を超えると、摺動面側領域と界面側領域の強度(変形抵抗)の差が小さすぎて、上記の効果が得られない。
また、請求項2に係る発明のように、銅合金は、さらに、0.1〜1質量%のP、15〜60質量%のNi、0.1〜30質量%のPb、0.1〜16質量%のBi、0.1〜10質量%のAg、0.1〜10質量%のFeから選択される1種以上を含むことが好ましい。銅合金にP、Ni、Ag、Feのいずれか1種以上を含有した場合には、摺動層を強化することができ、銅合金にNi、Pbのいずれか1種以上を含有した場合には、摺動層の焼付き性を向上させることができる。
また、請求項3に係る発明のように、固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素から選択される1種以上であることが好ましい。このような固体潤滑剤を用いることで、摺動層の摺動特性(低摩擦化)を高めることができる。
摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を示す模式図である。 表面部を有する裏金層を用いた場合における摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を示す模式図である。 摺動部材の製造手順を説明するための図である。 摺動部材の製造時の原材料粉の流れを説明するための図である。 摺動部材の製造時の原材料粉に固体潤滑剤が分散した状態を示す図である。 裏金層の表面の凹凸を小さくした場合における摺動部材の製造時の原材料粉の流れを説明するための図である。 裏金層の表面の凹凸を大きくした場合における摺動部材の製造時の原材料粉の流れを説明するための図である。
本実施形態に係る摺動部材1について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る摺動部材1の摺動面30に垂直方向の断面を示す模式図である。
図1に示すように、摺動部材1は、裏金層2上に、摺動層3が設けられている。また、摺動層3は、銅合金4に10〜35体積%の固体潤滑剤5が分散されており、銅合金4は、1〜15質量%の錫と、残部が銅および不可避不純物からなる。
摺動層3の銅合金4には、強度を高めるために1〜15質量%の錫を含有させる。錫の含有量が1質量%未満の場合には、銅合金4の強度を高める効果が不十分となる。一方、錫の含有量が15質量%を超えると、銅合金4が脆くなりすぎる。
摺動層3の銅合金4は、さらに、15〜60質量のNi、0.1〜1質量%のP、0.1〜30質量%のPb、0.1〜16質量%のBi、0.1〜10質量%のAg、0.1〜10質量%のFeから選択される1種以上を含むようにすることができる。また、摺動層3の銅合金4は、さらに、セラミックスや、金属間化合物等の硬質粒子を含むようにすることもできる。
摺動層3中の固体潤滑剤5の割合は、10〜35体積%としているが、固体潤滑剤5の割合が10体積%未満の場合には、摺動層3の後述する摺動面側領域31中の固体潤滑剤5の体積割合が少なくなりすぎて、摺動層3の摺動特性(低摩擦化)を高める効果が不十分となる。一方、固体潤滑剤5の割合が35体積%を超えると、摺動層3の後述する界面側領域32中の固体潤滑剤5の体積割合が多くなりすぎて、摺動層3の強度が低くなりすぎる。
固体潤滑剤5は、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素から選択される1種以上であることが好ましい。
摺動層3の厚さ(摺動面30から摺動層3と裏金層2との界面33までの間である摺動面30に垂直方向の距離)は、0.8〜3mmとすることが好ましい。
摺動部材1の摺動面30に垂直である断面組織において、摺動層3の厚さをTとし、摺動層3の摺動面30から界面33に向かって厚さTの50%までの距離にある領域を「摺動面側領域31」、界面33から摺動面30に向かって厚さTの50%までの距離にある領域を「界面側領域32」、と区分すると、摺動層3中の固体潤滑剤5の全体積に対する摺動面側領域31に分散する固体潤滑剤5の体積割合は、20〜40%となっている。
摺動層3の摺動面側領域31は、摺動層3中の固体潤滑剤5の全体積に対する固体潤滑剤5の体積割合が20〜40%であり、界面側領域32中に分散した固体潤滑剤5の体積割合である60〜80%に比べて小さいため、界面側領域32に比べて強度(変形抵抗)が大きくなる。これに対し、界面側領域32は、摺動面側領域31に比べて強度(変形抵抗)が小さくなり、変形を起こしやすくなる。
上記したように、摺動面側領域31の強度(変形抵抗)が界面側領域32に比べて大きいため、摺動部材1が用いられる軸受装置の起動時には、相手部材の表面と摺動層3の摺動面30が直接接触した状態での摺動が起こっても、界面側領域32に弾性変形が生じることになる。このため、摺動面側領域31の摺動面30付近の銅合金4が摺動方向に過度に弾性変形することが抑制され、摺動面30に割れ等の損傷が発生することを防止することができる。
以上の機構により、本発明に係る摺動部材1は、その摺動部材1が用いられる軸受装置の起動直後に、摺動面30と相手部材の表面が直接接触した状況であっても、摺動層3の表面に割れ等の損傷が発生することを防止することができる。
以上の本発明の構成とは異なり、摺動層全体を通じて固体潤滑剤の割合が同じになるように分散、すなわち均一に分散させた従来の摺動部材を用いた場合、軸受装置の起動直後に、摺動部材の摺動面と相手部材が直接接触するような状況では、相手部材に接する摺動層の表面付近の銅合金は、相手部材の表面に引きずられて、相手部材の移動方向(摺動方向)への弾性変形量が大きくなり、摺動層の表面に割れ等の損傷が発生し、摩耗が起こりやすい。
また、上記したように、摺動層3の摺動面側領域31は、摺動層3中の固体潤滑剤5の全体積に対する固体潤滑剤5の体積割合が20〜40%であることが好ましいが、その固体潤滑剤5の体積割合が30〜40%であることがより好ましい。
また、本発明の構成とは異なり、摺動層3の摺動面側領域31において、摺動層3中の固体潤滑剤5の全体積に対する固体潤滑剤5の体積割合が20%未満の場合には、摺動面側領域31と界面側領域32の強度(変形抵抗)の差が大きすぎて、摺動層3が負荷を受けたときに、界面側領域32が過度に弾性変形してしまい、界面側領域32の内部で割れが発生することがある。一方、摺動層3の摺動面側領域31において、摺動層3中の固体潤滑剤5の全体積に対する固体潤滑剤5の体積割合が40%を超える場合には、摺動面側領域31と界面側領域32の強度(変形抵抗)の差が小さすぎて、上記の効果が得られない。
なお、図2に示すように、裏金層2は、摺動層3との界面となる表面において、焼結法や電気メッキ法等によりニッケルまたは銅、あるいは、ニッケルと銅からなる合金による表面部6を有してもよい。図2は、表面部6を有する裏金層2を用いた場合における摺動部材1の摺動面30に垂直方向の断面を示す模式図である。このように、裏金層2の表面に表面部6を設けることにより、摺動層3と裏金層2の接合強度を高めることができる。
上記に説明した摺動部材1について、製造工程に沿って以下に詳細に説明する。
(1)銅合金原材料の準備
銅合金4の原材料としては、アトマイズ法により作成した組成が1〜15質量%の錫、残部が銅である銅合金粉を用いることができる。また、組成が1〜15質量%の錫、残部が銅となるように調整されたアトマイズ法または電解法等により作成した銅粉と錫粉の混合銅合金粉を用いてもよい。また、銅合金粉や混合銅合金粉は、さらに、0.1〜1質量%のP、15〜60質量%のNi、0.1〜30質量%のPb、0.1〜16質量%のBi、0.1〜10質量%のAg、0.1〜10質量%のFeから選択される1種以上を含む組成であってもよい。
(2)固体潤滑剤原材料の準備
固体潤滑剤5の原材料としては、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素から選択される1種以上を用いることができる。また、固体潤滑剤5の原材料は、平均粒径が100〜350μmであることが好ましい。
(3)裏金
裏金層2(帯鋼9)としては、炭素の含有量が0.1〜0.6質量%の炭素を含む亜共析鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、高張力鋼、マルエージング鋼等の鉄合金や銅合金を用いることができる。また、裏金層2の表面には、機械加工等で最大高さ(ISO4287―1997)がRz20〜100μmの凹凸を設けるようにする。なお、凹凸方向は、任意の方向とする。また、図2に示すように、裏金層2は、摺動層3との界面となる表面において、焼結法や電気メッキ法等によりニッケルまたは銅、あるいは、ニッケルと銅からなる合金による表面部6を有してもよい。このような構成では、表面部6の厚さは、1〜50μmとし、表面部6の形成後の表面にRz20〜100μmの凹凸を設けるようにする。
(4)組織制御
図3には、本実施形態に係る摺動部材1の製造工程を概略的に示す。図3に示すように、アンコイラー7からコイラー13に向けて帯鋼9(裏金層2)を移動する過程で、まず、銅合金粉と固体潤滑剤5を混合した原材料粉8を帯鋼9(裏金層2)に散布する。そして、帯鋼9(裏金層2)に散布された原材料粉8は、帯鋼9(裏金層2)に対して所定の間隔に設定したライナー10との間で所定の厚みにライニングされ、1次焼結、1次圧延、2次焼結、2次圧延を順次行い、所定の厚さに仕上げる。
より詳細には、銅合金粉と固体潤滑剤5を混合した原材料粉8として、銅合金粉の平均粒径は、1〜63μmとし、固体潤滑剤5の平均粒径は、銅合金粉の平均粒径より大きくする必要がある。また、固体潤滑剤5の形状は、球状や塊状であってもよいが、鱗片状や偏平状のほうが好ましい。このような原材料粉8を、接着層を被着した裏金層2上に所定厚さに均一に散布する。
また、図4に示すように、原材料粉8がライナー10に接触したときには、裏金層2とライナー10との間で対流が発生する。そして、図5(a)に示すように、裏金層2の表面粗さがRz20〜100μmである場合、原材料粉8がライナー10を通過する前には、原材料粉8に固体潤滑剤5が均一に分散しているのに対し、図5(b)に示すように、原材料粉8がライナー10を通過した後には、対流した原材料粉8のうち粒径が大きい固体潤滑剤5が裏金層2の表面の凹凸に引っ掛かり、摺動面側領域31と比べて界面側領域32に密集している。その後、焼結工程や圧延工程が行われるが、焼結工程や圧延工程では、固体潤滑剤5が摺動側領域31に移動することがなく、焼結工程や圧延工程後の摺動層3にも、固体潤滑剤5が摺動面側領域31と比べて界面側領域32に多く分布することとなる。
なお、図6に示すように、裏金層2の表面粗さがRz20μm未満である場合、原材料粉8がライナー10を通過する際に、固体潤滑剤5が裏金層2の表面の凹凸に引っ掛からず、摺動面側領域31と比べて界面側領域32での固体潤滑剤5の割合を大きくすることができない。一方、図7に示すように、裏金層2の表面粗さがRz100μmを超えると、原材料粉8がライナー10を通過する際に、裏金層2の表面の凹部に固体潤滑剤5と一緒に銅合金粉を巻き込んでしまい、摺動面側領域31と比べて界面側領域32での固体潤滑剤5の割合を大きくすることができない。
そして、原材料粉8がライナー10を通過した後には、1次焼結として焼結炉11を用い、還元雰囲気中で800〜1000℃の温度で10〜30分間焼結し、粉末同士の焼結と裏金層2への接合を行って焼結合金層を形成する。その後、1次圧延として圧延機12を用い、ロールにより圧延して焼結合金層の緻密化と厚さ調整を行う。そして、緻密化と裏金層2への接合強度を高めるために、再度、還元雰囲気中で800〜1000℃の温度で10〜30分間焼結すること(2次焼結)とロールによる圧延(2次圧延)とを繰り返し行う。
従来の摺動部材1の製造工程では、摺動層3との界面となる表面が平滑である裏金層2が用いられている。このような平滑な裏金層2を用いると、その表面に凹凸がないため、原材料粉8がライナー10を通過する際に、固体潤滑剤5が裏金層2の表面に引っ掛からず、摺動面側領域31と比べて界面側領域32での固体潤滑剤5の割合を大きくすることができない。また、摺動層3との界面となる裏金層2の表面に固体潤滑剤5を含まない多孔質金属部を有している場合には、その多孔質金属部の凹凸が100μmを超えるため、原材料粉8がライナー10を通過する際に、固体潤滑剤5と一緒に銅合金粉を巻き込んでしまい、摺動面側領域31と比べて界面側領域32での固体潤滑剤5の割合を大きくすることができない。
次に、摺動層3における摺動面側領域31と、界面側領域32との区分方法について説明する。まず、電子顕微鏡を用いて摺動部材1の摺動面30に垂直方向である断面の複数箇所(例えば5箇所)の電子像を200倍で撮影する。なお、電子像の撮影倍率は200倍に限定されないで、他の倍率に変更してもよい。この撮影画像を用い、摺動層1の摺動面30に垂直となる方向の厚さTを求める。また、摺動面30の任意の位置から裏金層2側へ向かって厚さTの50%の長さ(1/2×T)となる位置に、摺動面30に対し平行な仮想線CLを描く。そして、摺動層3の摺動面30から仮想線CLまでの間を摺動面側領域31とし、摺動層3の裏金層2との界面33から仮想線CLまでの間を界面側領域32とする。
また、摺動層3中の固体潤滑剤5の全体積に対する摺動面側領域31に分散した固体潤滑剤5の体積割合の測定方法について説明する。上記の手法で得られた電子像の撮影画像を用い、一般的な画像解析手法(例えば、解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、撮影画像における摺動層3中の固体潤滑剤5の合計面積、及び摺動面側領域31に分散した固体潤滑剤5の合計面積を測定し、それらの測定値から、摺動層3中の固体潤滑剤5の全面積に対する摺動面側領域31に分散した固体潤滑剤5の面積割合を算出する。なお、この面積割合は、体積割合に相当する。
次に、本実施形態に係る裏金層2および摺動層3を有する摺動部材1について、実施例1〜16および比較例17〜21を以下に示すとおり作製した。実施例1〜16および比較例17〜21の摺動部材1の摺動層3の組成は、表1に示すとおりである。実施例1〜16では、アトマイズ法にて製作した銅合金粉と固体潤滑剤5を一般的な混合機を用いて混合し、表1の成分比率となるようにして、表1の「裏金層表面粗さRz(μm)」欄に示す凹凸を表面に設けた裏金層2に散布し、焼結、圧延を繰り返して摺動部材1を製造した。また、この摺動材料1を板状に加工し、試験片を作製した。
比較例17,18では、裏金層2の表面における凹凸の大きさを変更した後、上述した実施例の作製方法と同手法にて、表1の成分比率となるように摺動材料1を製造した。また、この摺動材料1を板状に加工し、試験片を作製した。
比較例19では、銅合金粉をアトマイズ法にて、表1の成分となるように作製した。そして、作製した銅合金粉と固体潤滑剤5を一般的な混合機を用いて混合し、表1の成分比率となるようにして、表面に凹凸を設けた裏金層2に散布し、焼結、圧延を繰り返して摺動部材1を製造した。また、この摺動材料1を板状に加工し、試験片を作製した。
比較例20,21では、銅合金粉と固体潤滑剤5の混合比を表1の成分となるように混合し、上述した実施例の作製方法と同手法にて、表1の成分比率となるように摺動材料1を製造した。また、この摺動材料1を板状に加工し、試験片を作製した。
また、実施例1〜16および比較例17〜21について、表2の条件で往復摺動試験を行った。その結果を表1に示す。また、割れ発生の有無は、往復摺動試験後の摺動層3の外観より判別した。
実施例1〜16は、摺動層3の表面に割れが発生していない。また、摺動層3の表面での割れの発生を抑制した結果、摩耗量も小さくなっている。これは、摺動層3中の固体潤滑剤5の体積割合が10〜35%であり、且つ、摺動層3中の固体潤滑剤5の全体積に対する摺動面側領域31に分散した固体潤滑剤5の体積割合が20〜40%であることで、摺動面側領域31の強度(変形抵抗)が界面側領域32に比べて大きく、摺動面側領域31の摺動面30付近の銅合金4が摺動方向に過度に弾性変形することが抑制されるためである。
実施例6は、実施例1と比較し、裏金層2の表面粗さをRz20μmと小さくしたが、実施例1と同様、摺動層3の表面に割れが発生していない。また、実施例7は、実施例1と比較し、裏金層2の表面粗さをRz100μmと大きくしたが、実施例1と同様、摺動層3の表面に割れが発生していない。
実施例8は、固体潤滑剤5として黒鉛を含有した実施例1と比較し、固体潤滑剤5としてMoSを含有しているが、実施例1と同様、摺動層3の表面に割れが発生していない。
実施例9は、実施例1と比較し、銅合金を強化させるSnを15質量%と多く含有しているが、実施例1と同様、摺動層3の表面に割れが発生していない。また、摺動層3が強化されることで、実施例1よりも摩耗量が低下している。
実施例10〜13,16は、実施例1と比較し、銅合金を強化させるP、Ni、Fe、Agから選択される1種以上を含有しているが、実施例1と同様、摺動層3の表面に割れが発生していない。また、摺動層3が強化されることで、実施例1よりも摩耗量が低下している。
実施例14,15は、実施例1と比較し、焼付き性を向上させるPb、Biをそれぞれ含有しているが、実施例1と同様、摺動層3の表面に割れが発生していない。
比較例17は、実施例1と比較し、裏金層2の表面粗さをRz20μm未満と小さくしたため、上述したように、原材料粉がライナー10を通過する際に、固体潤滑剤5が裏金層2の表面の凹凸に引っ掛からず、摺動面側領域31と比べて界面側領域32での固体潤滑剤5の割合を大きくすることができない。このため、摺動試験時において、摺動面側領域31の摺動面30付近の銅合金4が摺動方向に過度に弾性変形してしまい、摺動層3の表面に割れが発生している。また、摺動層3の表面に割れが発生した結果、摩耗量も大きくなっている。
比較例18は、実施例1と比較し、裏金層2の表面粗さがRz100μmを超えるため、上述したように、原材料粉がライナー10を通過する際に、裏金層2の表面の凹部に固体潤滑剤5と一緒に銅合金粉を巻き込んでしまい、摺動面側領域31と比べて界面側領域32での固体潤滑剤5の割合を大きくすることができない。このため、摺動試験時において、摺動面側領域31の摺動面30付近の銅合金4が摺動方向に過度に弾性変形してしまい、摺動層3の表面に割れが発生している。また、摺動層3の表面に割れが発生した結果、摩耗量も大きくなっている。
比較例19は、実施例1と比較し、銅合金を強化させるSnを含有していないため、摺動層3の強度が低くなり、摺動層3の表面に割れが発生している。また、摺動層3の表面に割れが発生した結果、摩耗量も大きくなっている。
比較例20は、実施例1と比較し、摺動層3中の固体潤滑剤5の体積割合を10%未満と少なくしたため、摺動層3の摺動特性(低摩擦化)を高める効果が不十分となり、摺動層3の表面に割れが発生している。一方、比較例21は、実施例1と比較し、摺動層3中の固体潤滑剤5の体積割合が35%を超えるため、摺動層3の界面側領域32中の固体潤滑剤5の体積割合が多くなりすぎて、摺動層3の強度が低くなりすぎ、摺動層3の表面に割れが発生している。また、摺動層3の表面に割れが発生した結果、摩耗量も大きくなっている。
本発明の摺動部材1は、鉄道の分岐器に用いられる分岐器用床板等の平板形状の摺動部材に限定されないで、各種軸受の回転軸のラジアル方向負荷を支承する円筒形状のジャーナル軸受や、回転軸の軸線方向負荷を支承する任意の形状のスラスト軸受に適用することができる。
1 摺動部材
2 裏金層
3 摺動層
4 銅合金
5 固体潤滑剤
6 表面部
7 アンコイラー
8 原材料粉
9 帯鋼
10 ライナー
11 焼結炉
12 圧延機
13 コイラー
30 摺動面
31 摺動面側領域
32 界面側領域
33 界面

Claims (3)

  1. 裏金層上に摺動層が設けられた摺動部材において、
    前記摺動層は、1〜15質量%の錫、残部が銅および不可避不純物からなる銅合金と、該銅合金中に分散した固体潤滑剤とからなり、該固体潤滑剤は、前記摺動層の10〜35%の体積割合を有し、
    前記摺動層の摺動面に垂直である断面組織において、前記摺動面から前記裏金層との界面に向かって前記摺動層の厚さの50%の領域を摺動面側領域としたとき、前記摺動層中の前記固体潤滑剤の全体積に対する前記摺動面側領域に分散した固体潤滑剤の体積割合が20〜40%であることを特徴とする摺動部材。
  2. 前記銅合金は、さらに、0.1〜1質量%のP、15〜60質量%のNi、0.1〜30質量%のPb、0.1〜16質量%のBi、0.1〜10質量%のAg、0.1〜10質量%のFeから選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
  3. 前記固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の摺動部材。
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