以下、本発明に係る車両用衝撃吸収装置を具体化した第1実施形態乃至第4実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本発明に係る車両用衝撃吸収装置を具体化した第1実施形態について図1乃至図10に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1〜図5は、本発明の第1実施形態の概略構成を示す。第1実施形態は、自動車用フロントバンパ部分に本発明の車両用衝撃吸収装置を適用した例を示す。各図中、矢印により自動車に搭載した状態における装置の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
図1に示すように、衝突荷重受部材であるフロントバンパのバンパリインフォースメント1は、車体構造部材として、車体左右に配置された各フロントメンバ2L、2Rの前端に固定されている。従って、車両衝突時にフロントバンパに加えられる衝突荷重は、バンパリインフォースメント1を介して各フロントメンバ2L、2Rで受け止められる。
図2及び図3に示すように、フロントメンバ2Lの前端部には、本発明の特徴部分である衝撃吸収ユニット10が備えられている。ここではフロントメンバ2Lのみを図示し、フロントメンバ2Rの図示を省略しているが、各フロントメンバ2L、2Rは同一構造の衝撃吸収ユニット10を備えている。衝撃吸収ユニット10は、中心部に膨張体11を備え、膨張体11の前端にバンパリインフォースメント1が固定されている。
膨張体11は、共に円筒容器状の受容カップ11a及び摺動カップ11bが組み合わされて成る。受容カップ11aは、その底部が後述の伸縮部材15を介してバンパリインフォースメント1に固定され、受容カップ11aの開口111(図4参照)が後方、即ちフロントメンバ2Lの基端方向に向けられている。また、摺動カップ11bは、その底部が容器14の底部に固定され、その開口121(図5参照)が受容カップ11aの開口111に対向する方向に設けられている。
摺動カップ11bは、受容カップ11a内に摺動自在に挿入されて両者間に一つの空間11cを形成している。そして、摺動カップ11bの受容カップ11a内への挿入量の変化により空間11cの容積が変化される。尚、受容カップ11aの底部が容器14の底部に固定され、摺動カップ11bの底部がバンパリインフォースメント1に固定されてもよい。
図3及び図4に示すように、円筒容器状の受容カップ11aの側壁(外周面)112には、両側縁が軸方向に平行な平面視矩形状の一対の係合孔113a、113bが、受容カップ11aの開口111寄りの部分に、軸方向(摺動方向)に沿って同一直線上に所定間隔で形成されている。この一対の係合孔113a、113bは、後述のように、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了するまで、つまり、受容カップ11a内への摺動カップ11bの挿入量が最小となり、空間11cの容積が最大となるまで、円筒容器状の摺動カップ11bの側壁(外周面)122(図5参照)によって閉じられる。
図3及び図5に示すように、円筒容器状の摺動カップ11bの側壁(外周面)122には、一対の係合片123a、123bを形成するための平面視コの字状の一対の係合片用切り込み線125a、125bが、摺動カップ11bの開口121寄りの部分に、それぞれ全厚さに渡って切り込まれている。一対の係合片用切り込み線125a、125bは、軸方向(摺動方向)に沿って同一直線上に所定間隔で配置されている。
図5に示すように、摺動カップ11bの開口121側に設けられた平面視コの字状の係合片用切り込み線125aは、開口121側に開放されている。一方、摺動カップ11bの底部126側に設けられた平面視コの字状の係合片用切り込み線125bは、底部126側に開放されている。従って、一対の係合片用切り込み線125a、125bは、軸方向(摺動方向)に沿って互いに反対方向に向かって開放されている。尚、平面視コの字状の係合片用切り込み線125aが底部126側に開放され、平面視コの字状の係合片用切り込み線125bが開口121側に開放されるように、それぞれ全厚さに渡って切り込まれているようにしてもよい。
一対の係合片用切り込み線125a、125bは、後述のように、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際、つまり、受容カップ11a内への摺動カップ11bの挿入量が最小となり、空間11cの容積が最大となった際に、受容カップ11aの一対の係合孔113a、113bに対向する各位置に形成されている(図7参照)。また、一対の係合片用切り込み線125a、125bは、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際に、それぞれが対向する一対の係合孔113a、113bよりも、少し小さい形状に形成されている。
この結果、後述のように、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際に、両側縁が軸方向に平行な平面視矩形状の一対の係合片123a、123bが、その軸方向(摺動方向)側の一側縁部を中心に外方へ折れ曲がって、軸方向(摺動方向)に沿って互いに反対方向に向かって突出して、対向する一対の係合孔113a、113bに押し込まれる(図7参照)。つまり、摺動カップ11bの係合片123aは、底部126側方向に向かって外方へ突出し、受容カップ11aの係合孔113aに押し込まれる(図7参照)。また、摺動カップ11bの係合片123bは、開口121側方向に向かって外方へ突出し、受容カップ11aの係合孔113bに押し込まれる(図7参照)。
図3及び図5に示すように、摺動カップ11bの底部126の内側面には、流体供給手段としてのインフレータ12が固定されている。インフレータ12は、乗員保護用エアバッグ装置に用いられるインフレータと同様の公知もので、車両の衝突直前に点火されてガス12a(本発明の流体に相当する。)を発生するように構成されている。従って、インフレータ12がガス12aを発生すると、図6に矢印131で示すように、受容カップ11aが摺動カップ11bに対して前方に摺動して、バンパリインフォースメント1を前方に移動させる。
図3に示すように、膨張体11は、円筒状の容器14内に収容されている。容器14の開口141は、膨張体11が膨張するのを妨げないように膨張体11の膨張方向、即ちインフレータ12のガス12aの発生に伴い受容カップ11aが移動する方向を開放している。また、容器14の開口141には、全周に渡ってフランジ部14aが形成されている。一方、フロントメンバ2Lの前端には、フロントメンバ2Lの開口を、中心部を除いて被うようにトップメンバ21が固定されている。そして、そのトップメンバ21の開口周縁部に容器14のフランジ部14aが溶接、接着等によって接合されている。従って、容器14はフロントメンバ2L内に保持され、摺動カップ11bは、容器14を介してフロントメンバ2Lに固定されている。
以上のように容器14内に膨張体11が収容されているため、膨張体11及びインフレータ12を容器14によりサブアッシー化することができる。従って、部品としての取扱い性をよくすることができ、車体への組付け作業性をよくすることができる。また、容器14は、インフレータ12がガスを発生したとき、その反力を摺動カップ11bを介して底部に受ける。底部で受けた反力は、フランジ部14aを介してフロントメンバ2Lに伝達される。従って、ボルト等の固定手段を用いて上記反力を受ける場合に比べて固定の信頼性を高めることができる。
図3に示すように、容器14のフランジ部14aとバンパリインフォースメント1との間は、伸縮部材15により連結されている。伸縮部材15は、金属製の薄板で出来た有底円筒体であり、その一側面と一側面とが対向するように途中で折り返されて成る。そして、折り返し位置15aに対して伸縮部材(円筒体)15の底部15b及び端部15cが同じ側に位置するように構成されている。伸縮部材15の底部15bは、バンパリインフォースメント1と受容カップ11aとの間に固定され、端部15cは、フランジ部14aの前面側に固定されている。また、伸縮部材15の折り返し位置15aは、容器14の内壁に沿って配置されている。図6に示すように、バンパリインフォースメント1が前方に移動すると、伸縮部材15の底部15bも前方に移動するため、伸縮部材15の折り返し位置15aは前方に移動して、伸縮部材15の前後方向寸法を長くする。即ち、伸縮部材15の一側面と一側面との対向面積を小さくする。
以上のように、膨張体11が収縮した状態と膨張した状態とに変化すると、伸縮部材15は折り返し位置15aが移動することにより伸縮される。そのため、伸縮部材15が蛇腹構造を備える場合に比べて、伸縮部材15の占有スペースは小さくて済む。従って、容器14内で膨張体11を大きくすることができる。換言すると、衝撃吸収ユニット10の外形を小さくし、小型化を図ることができる。
容器14と伸縮部材15の組合せは、本発明のカバー体13を構成している。従って、膨張体11が膨張するとき、並びに衝突荷重を受けて膨張体11が収縮されるとき、カバー体13の伸縮部材15は同期して変形する。そのため、衝突荷重を受けて膨張体11が収縮されるときのエネルギ吸収量を大きくすることができる。
次に、インフレータ12がガス12aを発生した場合について図6及び図7に基づいて説明する。図6は、インフレータ12がガス12aを発生し、膨張体11を成す受容カップ11aが前方に摺動して、バンパリインフォースメント1が前方に移動する様子を示している。図7は、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の移動が完了した状態を示している。
図6に示すように、バンパリインフォースメント1の移動に伴って、伸縮部材15の折り返し位置15aも前方に移動している。このようにバンパリインフォースメント1、即ちバンパが前方に移動することにより、衝突に備えた状態となる。なお、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の移動が完了した状態は、本発明における「受容カップ内への摺動カップの挿入量が最小となり、前記空間の容積が最大となる前記衝突荷重受部材の最大移動位置」に相当する。
そして、図6に示すように、インフレータ12がガス12aを発生し、受容カップ11aが前方に摺動して、受容カップ11aの係合孔113aが、摺動カップ11bの係合片123bに対向する。そのため、係合片123bは、インフレータ12が発生するガス12aの内圧によって、開口121側方向に向かって、つまり、前方側に向かって(図6中、左方向に向かって)外方へ折り曲げられる。しかし、直後に前方へ摺動する受容カップ11aの側壁112によって、当該係合片123bは内方へ、再度押し込まれる。
続いて、図7に示すように、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際、つまり、受容カップ11a内への摺動カップ11bの挿入量が最小となり、空間11cの容積が最大となった際に、受容カップ11aの係合孔113aが、摺動カップ11bの係合片123aに対向し、且つ、受容カップ11aの係合孔113bが、摺動カップ11bの係合片123bに対向する。また、伸縮部材15の折り返し位置15bは、前方に移動して容器14の開口141に達し、伸縮部材15は底部15bを有する円筒状に変形し、前方への伸長が終了する。
その結果、図7、図8の上段に示すように、平面視矩形状の一対の係合片123a、123bが、インフレータ12が発生するガス12aの内圧によって、その軸方向(摺動方向)側の一側縁部を中心に外方へ折れ曲がって、軸方向(摺動方向)に沿って互いに反対方向に向かって突出して、対向する一対の係合孔113a、113bにそれぞれ押し込まれる。
詳細には、摺動カップ11bの係合片123aは、底部126側方向に向かって、つまり、後方側に向かって(図7中、右方向に向かって)外方へ折り曲げられて突出し、受容カップ11aの係合孔113aに押し込まれる。また、摺動カップ11bの係合片123bは、開口121側方向に向かって、つまり、前方側に向かって(図7中、左方向に向かって)外方へ折り曲げられて突出し、受容カップ11aの係合孔113bに押し込まれる。
これにより、図7、図8の上段に示すように、一対の係合片123a、123bが、外方へ折り曲げられて、対向する一対の係合孔113a、113bにそれぞれ押し込まれることによって、摺動カップ11bの側壁122に、一対の係合孔113a、113bに連通する一対の内圧解放孔127a、127bが形成される。その結果、インフレータ12が発生する空間11c内のガス12aが、一対の内圧解放孔127a、127bと一対の係合孔113a,113bを介して、膨張体11の外部へ流出して排出されるため、受容カップ11aの前方への移動が停止する。
また、図8の下段に示すように、空間11c内のガス12aの内圧によって、一対の係合片123a、123bが、外方へ折り曲げられて、一対の係合孔113a、113bに押し込まれた後、受容カップ11aは僅かに前方へ移動する。その結果、係合孔113aの開口111側の側縁部が、係合片123aに衝突して係合するため、受容カップ11aの前方への移動を確実に停止させることができる。つまり、バンパリインフォースメント1の前方への移動を確実に停止させることができる。
その後、図9に示すように、バンパに衝突物体が衝突すると、バンパ及びバンパリインフォースメント1が、後方へ押される、つまり、矢印132方向へ押される。そのため、膨張体11を成す受容カップ11aが後方に摺動される。このとき、受容カップ11aと摺動カップ11bとの間の空間11c内に残っているガス12aは、一対の内圧解放孔127a、127bと一対の係合孔113a、113bを介して、膨張体11の外部へ流出して排出される。
また、受容カップ11aが後方へ僅かに移動すると、係合孔113bの前方側の側縁部、つまり、受容カップ11aの底部側の側縁部が、係合片123bに衝突して係合するため、受容カップ11aの係合孔113bの後方への移動が停止される。また、受容カップ11aの係合孔113aに押し込まれた係合片123aは、後方へ摺動する受容カップ11aの側壁112によって、摺動カップ11bの内方側へ、再度押し込まれる。
この結果、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112は、バンパリインフォースメント1によって後方へ(矢印132方向へ)押されるため、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に座屈変形する。従って、図10に示すように、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112は、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って座屈変形して蛇腹状に収縮され、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。これにより、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112が蛇腹状に収縮する間に、衝突エネルギが吸収され衝突に伴う衝撃が緩和される。
また、同時に、図9及び図10に示すように、伸縮部材15もバンパリインフォースメント1によって後方へ(矢印132方向へ)押されるため、衝突荷重を受けて折り返し位置15aが容器14の内壁に沿って後方に移動して、収縮され、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。従って、伸縮部材15の収縮によっても衝突エネルギは吸収され、受容カップ11aの側壁112の蛇腹状の座屈変形による分と合わせてエネルギ吸収量が増大される。
以上のように、第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10では、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際に、一対の係合片123a、123bが、外方へ折り曲げられて、対向する一対の係合孔113a、113bにそれぞれ押し込まれ、一対の内圧解放孔127a、127bが形成される。これにより、インフレータ12が発生する空間11c内のガス12aが、一対の内圧解放孔127a、127bと一対の係合孔113a,113bを介して、膨張体11の外部へ流出して排出され、受容カップ11aの前方への移動を停止することができる。更に、係合孔113aの開口111側の側縁部が、係合片123aに衝突して係合するため、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動を確実に停止させることができる。
その後、衝突荷重によって受容カップ11aが後方へ移動すると、係合孔113bの前方側の側縁部が、係合片123bに衝突して係合する。その結果、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112が、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に座屈変形して収縮され、バンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。これにより、衝突直前にバンパ及びバンパリインフォースメント1を衝突方向へ突出させると共に、衝突エネルギを吸収する機構を、受容カップ11aの一対の係合孔113a、113b、摺動カップ11bの一対の係合片123a、123b、及び、インフレータ12で構成される簡易な構造とし、安価な構成にすることができる。
また、バンパリインフォースメント1の後方への移動に伴って、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112が蛇腹状に収縮することによって、衝突エネルギが吸収され、衝突に伴う衝撃を緩和できる。更に、バンパリインフォースメント1の後方への移動に伴って、伸縮部材15の折り返し位置15aが、容器14の内壁に沿って後方に移動して、伸縮部材15も収縮され、衝突エネルギが吸収されるため、エネルギ吸収量を大きくすることができる。ここで、受容カップ11aの一対の係合孔113a、113bと、摺動カップ11bの一対の係合片123a、123bが、係合手段の一例として機能する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る衝撃吸収ユニット31等の構成について図11乃至図14に基づいて説明する。尚、図1乃至図10に示す上記第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等の構成と同一符号は、上記第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
この第2実施形態に係る衝撃吸収ユニット31等の構成は、第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等とほぼ同じ構成である。また、第2実施形態に係る衝撃吸収ユニット31の制御構成及び制御処理は、第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10の制御構成及び制御処理とほぼ同じである。但し、第2実施形態に係る衝撃吸収ユニット31は、前記膨張体11の「摺動カップ11b」に替えて、図11に示す「摺動カップ32」を備えている点で異なっている。その他の点は、第2実施形態も第1実施形態と同一であり、同一の部分についての再度の説明は省略する。
摺動カップ32の構成について図11に基づいて説明する。図11は、図5に対応している。図11に示すように、円筒容器状の摺動カップ32の側壁(外周面)122には、上記摺動カップ11bと同様に、一対の係合片123a、123bを形成するための平面視コの字状の一対の係合片用切り込み線125a、125bが、摺動カップ11bの開口121寄りの部分に、それぞれ全厚さに渡って切り込まれている。一対の係合片用切り込み線125a、125bは、軸方向(摺動方向)に沿って同一直線上に所定間隔で配置されている。
但し、一対の係合片123a、123bのうち、開口121側方向に向かって外方へ突出し、受容カップ11aの係合孔113bに押し込まれる係合片123bは、その先端部分の径方向外側面に、側壁122の外周面から所定高さ(例えば、高さ10mm)外方へ突出する突出部151が形成されている。この突出部151は、係合片123bの周方向全幅に渡って形成され、先端側は側壁122の外周面と同一高さで、後方側へ徐々に高くなった後、徐々に低くなって側壁122の外周面と同一高さになる側面視略三角形状に形成されている。尚、突出部151は、側面視略三角形状に限らず、側面視円弧状、側面視略半円形状等に形成されてもよい。
このため、図12に示すように、受容カップ11a内に摺動カップ32が摺動自在に挿入された場合には、係合片123bの突出部151は、径方向先端部が、受容カップ11aの側壁112の内面に摺動可能に当接するため、当該係合片123bは、先端部が摺動カップ32の内方へ少し撓んでいる。また、インフレータ12がガス12aを発生し、受容カップ11aが前方に摺動して、受容カップ11aの係合孔113aが、摺動カップ32の係合片123bに対向した場合には、係合片123bは、インフレータ12が発生するガス12aの内圧によって、外方へ折り曲げられる。しかし、直後に前方へ摺動する受容カップ11aの側壁112によって、当該係合片123bは内方へ、再度押し込まれる。
次に、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際、つまり、受容カップ11a内への摺動カップ11bの挿入量が最小となり、空間11cの容積が最大となった際について、図13に基づいて説明する。図13は、図8に対応している。図13の上段に示すように、受容カップ11aの係合孔113aが、摺動カップ11bの係合片123aに対向し、且つ、受容カップ11aの係合孔113bが、摺動カップ11bの係合片123bに対向する。
その結果、図13の上段に示すように、平面視矩形状の一対の係合片123a、123bが、インフレータ12が発生するガス12aの内圧によって、その軸方向(摺動方向)側の一側縁部を中心に外方へ折れ曲がって、軸方向(摺動方向)に沿って互いに反対方向に向かって突出して、対向する一対の係合孔113a、113bにそれぞれ押し込まれる。
これにより、図13の上段に示すように、一対の係合片123a、123bが、外方へ折り曲げられて、対向する一対の係合孔113a、113bにそれぞれ押し込まれることによって、摺動カップ32の側壁122に、一対の係合孔113a、113bに連通する一対の内圧解放孔127a、127bが形成される。その結果、インフレータ12が発生する空間11c内のガス12aが、一対の内圧解放孔127a、127bと一対の係合孔113a,113bを介して、膨張体11の外部へ流出して排出されるため、受容カップ11aの前方への移動が停止する。
また、図13の下段に示すように、空間11c内のガス12aの内圧によって、一対の係合片123a、123bが、外方へ折り曲げられて、一対の係合孔113a、113bに押し込まれた後、受容カップ11aは僅かに前方へ移動する。その結果、係合孔113aの開口111側の側縁部が、係合片123aに衝突して係合するため、受容カップ11aの前方への移動を確実に停止させることができる。つまり、バンパリインフォースメント1の前方への移動を確実に停止させることができる。
その後、図14の上段に示すように、バンパに衝突物体が衝突すると、バンパ及びバンパリインフォースメント1が、後方へ押される。そのため、膨張体11を成す受容カップ11aが後方に、つまり、矢印133方向へ摺動される。また、受容カップ11aが後方へ僅かに移動すると、係合孔113bの前方側の側縁部、つまり、受容カップ11aの底部側の側縁部が、係合片123bに衝突して係合するため、受容カップ11aの係合孔113bの後方への移動が停止される。また、受容カップ11aの係合孔113aに押し込まれた係合片123aは、後方へ摺動する受容カップ11aの側壁112によって、摺動カップ11bの内方側へ、再度押し込まれる。
この結果、図14の下段に示すように、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112は、バンパリインフォースメント1によって後方へ(矢印133方向へ)押され、係合片123bを更に後方へ側面視略U字状に折り曲げて、容器14の内壁に沿って座屈変形する。このとき、側面視略U字状に折り曲げられた係合片123bの突出部151は、摺動カップ32の側壁122に当接するため、当該係合片123bの上端部が係合孔113bよりも外方へ突出する。
これにより、係合片123bが後方へ側面視略U字状に折り曲げられても、係合孔113bの前方側の側縁部、つまり、受容カップ11aの底部側の側縁部が、係合片123bに衝突して係合した状態を確実に維持することができる。その結果、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112は、バンパリインフォースメント1によって後方へ(矢印132方向へ)押されるため、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に座屈変形する。従って、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112は、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って座屈変形して蛇腹状に収縮され、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する(図10参照)。
以上詳細に説明した通り、第2実施形態に係る衝撃吸収ユニット31では、第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10が奏する効果に加えて、摺動カップ32の係合片123bが後方へ側面視略U字状に折り曲げられても、係合孔113bの前方側の側縁部と係合片123bとの係合を維持することができる。これにより、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112が蛇腹状に収縮することによって、衝突エネルギが吸収され、衝突に伴う衝撃を確実に緩和できる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る衝撃吸収ユニット41等の構成について図15乃至図20に基づいて説明する。尚、図1乃至図10に示す上記第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等の構成と同一符号は、上記第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
この第3実施形態に係る衝撃吸収ユニット41等の構成は、第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等とほぼ同じ構成である。また、第3実施形態に係る衝撃吸収ユニット41の制御構成及び制御処理は、第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10の制御構成及び制御処理とほぼ同じである。但し、第3実施形態に係る衝撃吸収ユニット41は、前記膨張体11に替えて、図15に示す「膨張体42」を備えている点で異なっている。その他の点は、第3実施形態も第1実施形態と同一であり、同一の部分についての再度の説明は省略する。
膨張体42の構成について図15及び図16に基づいて説明する。図15に示すように、膨張体42の構成は、膨張体11の構成とほぼ同じ構成である。但し、受容カップ11aに替えて、受容カップ43を用いている点で異なっている。また、摺動カップ11bの底部126の内側面には、インフレータ12に加えて、排出手段としての排気弁48が固定されている点で異なっている。
図15及び図16に示すように、円筒容器状の受容カップ43の側壁(外周面)112には、第1実施形態に係る一対の係合孔113a、113bに替えて、内方に開口するとともに外方へ略箱体状に膨出する一対の係合凹部45a、45bが、形成されている。この一対の係合凹部45a、45bは、受容カップ43の開口111寄りの部分に、軸方向(摺動方向)に沿って同一直線上に所定間隔で形成されている。具体的には、一対の係合凹部45a、45bは、両側縁が軸方向に平行な平面視矩形状の各開口部46a、46bの周縁部から全周に渡って外方へ所定高さ膨出した平面視矩形状の略箱体状に形成されている。各開口部46a、46bは、第1実施形態に係る一対の係合孔113a、113bとほぼ同じ形状の平面視矩形状に形成されている。
この一対の係合凹部45a、45bの各開口部46a、46bは、後述のように、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了するまで、つまり、受容カップ43内への摺動カップ11bの挿入量が最小となり、空間11cの容積が最大となるまで、円筒容器状の摺動カップ11bの側壁(外周面)122(図17参照)によって閉じられる。
図15に示すように、摺動カップ11bの底部126の内側面には、インフレータ12に加えて、排出手段としての排気弁48(特願2017−129133号の明細書に記載される「排気弁」と同一構成のものである。)が固定されている。この排気弁48は、膨張体42の空間11c内でインフレータ12が発生するガス12aの内圧が、予め設定した所定圧力以上となると大気開放となるように構成されている。
具体的には、排気弁48は中空の箱体であり、摺動カップ11bの底部126の内面に当接する面には、貫通孔48bが穿設され、その反対側の面には、脆弱部48aが形成されている。脆弱部48aは、膨張体42の空間11c内の内圧が所定圧力以上となると破断されるように構成されている。また、排気弁48の貫通孔48bに対向して摺動カップ11bの底部126及び容器14の底部には、各貫通孔126a、14bが形成されている。これにより、脆弱部48aが破断されたときには、これらの各貫通孔48b、126a、14bを介して、膨張体42の空間11c内のガス12aが外部に排出され、大気開放となる。
次に、インフレータ12がガス12aを発生した場合について図17及び図18に基づいて説明する。図17は、インフレータ12がガス12aを発生し、膨張体42を成す受容カップ43が前方に摺動して、バンパリインフォースメント1が前方に移動する様子を示している。図18は、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の移動が完了した状態を示している。
図17に示すように、バンパリインフォースメント1の移動に伴って、伸縮部材15の折り返し位置15aも前方に移動している。このようにバンパリインフォースメント1、即ちバンパが前方に移動することにより、衝突に備えた状態となる。なお、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の移動が完了した状態は、本発明における「受容カップ内への摺動カップの挿入量が最小となり、前記空間の容積が最大となる前記衝突荷重受部材の最大移動位置」に相当する。
そして、図17に示すように、インフレータ12がガス12aを発生し、受容カップ43が前方に摺動して、受容カップ43の係合凹部45aが、摺動カップ11bの係合片123bに対向する。そのため、係合片123bは、インフレータ12が発生するガス12aの内圧によって、開口121側方向に向かって、つまり、前方側に向かって(図17中、左方向に向かって)外方へ折り曲げられる。しかし、直後に前方へ摺動する受容カップ43の側壁112によって、当該係合片123bは内方へ、再度押し込まれる。
続いて、図18に示すように、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際、つまり、受容カップ43内への摺動カップ11bの挿入量が最小となり、空間11cの容積が最大となった際に、受容カップ43の係合凹部45aが、摺動カップ11bの係合片123aに対向し、且つ、受容カップ43の係合孔凹部45bが、摺動カップ11bの係合片123bに対向する。また、伸縮部材15の折り返し位置15bは、前方に移動して容器14の開口141に達し、伸縮部材15は底部15bを有する円筒状に変形し、前方への伸長が終了する。
その結果、図18に示すように、平面視矩形状の一対の係合片123a、123bが、インフレータ12が発生するガス12aの内圧によって、その軸方向(摺動方向)側の一側縁部を中心に外方へ折れ曲がって、軸方向(摺動方向)に沿って互いに反対方向に向かって突出して、対向する一対の係合凹部45a、45b内にそれぞれ押し込まれる。
詳細には、摺動カップ11bの係合片123aは、底部126側方向に向かって、つまり、後方側に向かって(図18中、右方向に向かって)外方へ折り曲げられて突出し、受容カップ43の係合凹部45aの開口部46a内に押し込まれる。また、摺動カップ11bの係合片123bは、開口121側方向に向かって、つまり、前方側に向かって(図18中、左方向に向かって)外方へ折り曲げられて突出し、受容カップ43の係合凹部45bの開口部46b内に押し込まれる。
これにより、膨張体42の空間11c内のガス12aの内圧によって、一対の係合123a、123bが、外方へ折り曲げられて、一対の係合凹部45a、45bの各開口部46a、46b内に押し込まれた後、受容カップ43は僅かに前方へ移動する。その結果、係合凹部45aの開口111側の側縁部が、係合片123aに衝突して係合するため、受容カップ43の前方への移動を停止させることができる。つまり、バンパリインフォースメント1の前方への移動を停止させることができる。
また、受容カップ43の前方への移動が停止されるため、膨張体42の空間11c内の内圧が所定圧力以上となり、排気弁48の脆弱部48aが破断される。その結果、破断された排気弁48の脆弱部48a、排気弁48の貫通孔48b、摺動カップ11bの底部126に形成された貫通孔126a、及び容器14の底部に形成された貫通孔14bを介して、膨張体42の空間11c内のガス12aが外部へ排出され、大気開放となる。これにより、受容カップ43の前方への移動を確実に停止させることができる。つまり、バンパリインフォースメント1の前方への移動を確実に停止させることができる。
その後、図19に示すように、バンパに衝突物体が衝突すると、バンパ及びバンパリインフォースメント1が、後方へ押される、つまり、矢印136方向へ押される。そのため、膨張体42を成す受容カップ43が後方に摺動される。このとき、受容カップ43と摺動カップ11bとの間の空間11c内に残っているガス12aは、破断された脆弱部48a、排気弁48の貫通孔48b、摺動カップ11bの底部126に形成された貫通孔126a、及び容器14の底部に形成された貫通孔14bを介して、外部へ排出される。
また、受容カップ43が後方へ僅かに移動すると、係合凹部45bの前方側の側縁部、つまり、受容カップ43の底部側の側縁部が、係合片123bに衝突して係合するため、受容カップ43の係合凹部45bの後方への移動が停止される。また、受容カップ43の係合凹部45a内に押し込まれた係合片123aは、後方へ摺動する受容カップ43の側壁112によって、摺動カップ11bの内方側へ、再度押し込まれる。
この結果、受容カップ43の係合凹部45bよりも前方側の側壁112は、バンパリインフォースメント1によって後方へ(矢印136方向へ)押されるため、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に座屈変形する。従って、図20に示すように、受容カップ43の係合凹部45bよりも前方側の側壁112は、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って座屈変形して蛇腹状に収縮され、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。これにより、受容カップ43の係合凹部45bよりも前方側の側壁112が蛇腹状に収縮する間に、衝突エネルギが吸収され衝突に伴う衝撃が緩和される。
また、同時に、図19及び図20に示すように、伸縮部材15もバンパリインフォースメント1によって後方へ(矢印136方向へ)押されるため、衝突荷重を受けて折り返し位置15aが容器14の内壁に沿って後方に移動して、収縮され、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。従って、伸縮部材15の収縮によっても衝突エネルギは吸収され、受容カップ43の側壁112の蛇腹状の座屈変形による分と合わせてエネルギ吸収量が増大される。
以上のように、第3実施形態に係る衝撃吸収ユニット41では、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際に、一対の係合片123a、123bが、外方へ折り曲げられて、対向する一対の係合凹部45a、45bにそれぞれ押し込まれる。そして、係合凹部45aの開口111側の側縁部が、係合片123aに衝突して係合するため、受容カップ43の前方への移動を停止することができる。
更に、膨張体42の空間11c内の内圧が所定圧力以上となり、排気弁48の脆弱部48aが破断される。その結果、破断された排気弁48の脆弱部48a、貫通孔48b、摺動カップ11bの底部126及び容器14の底部に形成された各貫通孔126a、14bを介して、膨張体42の空間11c内のガス12aが外部へ排出され、大気開放となる。これにより、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の前方への移動を確実に停止させることができる。
その後、衝突荷重によって受容カップ43が後方へ移動すると、係合凹部45bの前方側の側縁部が、係合片123bに衝突して係合する。その結果、受容カップ43の係合凹部45bよりも前方側の側壁112が、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に座屈変形して収縮され、バンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。これにより、衝突直前にバンパ及びバンパリインフォースメント1を衝突方向へ突出させると共に、衝突エネルギを吸収する機構を、受容カップ43の一対の係合凹部45a、45b、摺動カップ11bの一対の係合片123a、123b、インフレータ12、及び、排気弁48で構成される簡易な構造とし、安価な構成にすることができる。
また、バンパリインフォースメント1の後方への移動に伴って、受容カップ43の係合凹部45bよりも前方側の側壁112が蛇腹状に収縮することによって、衝突エネルギが吸収され、衝突に伴う衝撃を緩和できる。更に、バンパリインフォースメント1の後方への移動に伴って、伸縮部材15の折り返し位置15aが、容器14の内壁に沿って後方に移動して、伸縮部材15も収縮され、衝突エネルギが吸収されるため、エネルギ吸収量を大きくすることができる。ここで、受容カップ43の一対の係合凹部45a、45bと、摺動カップ11bの一対の係合片123a、123bが、係合手段の一例として機能する。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る衝撃吸収ユニット51等の構成について図21乃至図27に基づいて説明する。尚、図1乃至図10に示す上記第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等の構成と同一符号は、上記第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
この第4実施形態に係る衝撃吸収ユニット51等の構成は、第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10等とほぼ同じ構成である。また、第4実施形態に係る衝撃吸収ユニット51の制御構成及び制御処理は、第1実施形態に係る衝撃吸収ユニット10の制御構成及び制御処理とほぼ同じである。但し、第4実施形態に係る衝撃吸収ユニット51は、前記膨張体11に替えて、図21に示す「膨張体52」を備えている点で異なっている。その他の点は、第4実施形態も第1実施形態と同一であり、同一の部分についての再度の説明は省略する。
膨張体52の構成について図21乃至図23に基づいて説明する。図21に示すように、膨張体52の構成は、膨張体11の構成とほぼ同じ構成である。但し、受容カップ11aに替えて、円筒容器状の受容カップ53を用いると共に、摺動カップ11bに替えて円筒容器状の摺動カップ55を用いている点で異なっている。また、摺動カップ55の底部126の内側面には、インフレータ12に加えて、排出手段としての上記第3実施形態に係る排気弁48が固定されている点で異なっている。
図21及び図22に示すように、円筒容器状の受容カップ53の側壁(外周面)112には、第1実施形態に係る一対の係合孔113a、113bに替えて、内方に開口するとともに外方へ膨出する軸方向(摺動方向)に長い平面視縦長矩形状の縦長係合凹部53aが、受容カップ53の開口111寄りの部分に形成されている。この縦長係合凹部53aは、両側縁が軸方向に平行な平面視縦長矩形状の縦長開口部53bの周縁部から全周に渡って外方へ所定高さ膨出した平面視矩形状の略箱体状に形成されている。縦長開口部53bの周方向の幅は、第1実施形態に係る一対の係合孔113a、113bの周方向の幅とほぼ同じ幅に形成されている。
また、縦長開口部53bの軸方向(摺動方向)の長さは、受容カップ53内への摺動カップ55の挿入量が最大から最小になるまでのバンパリインフォースメント1の前後方向の移動距離にほぼ等しい長さに形成されている。更に、縦長開口部53bは、受容カップ53内への摺動カップ55の挿入量が最小となるまで、摺動カップ55の側壁(外周面)161(図23参照)によって閉じられる(図25参照)。尚、縦長開口部53bの軸方向(摺動方向)の長さは、受容カップ53内への摺動カップ55の挿入量が最大から最小になるまでのバンパリインフォースメント1の前後方向の移動距離以上の長さに形成されてもよい。
また、縦長係合凹部53aは、開口111側の端部、つまり、バンパリインフォースメント1に対して反対側の端部に、軸方向(摺動方向)に対して直交する方向、つまり、周方向に沿って全幅に渡って内方へ所定高さ突出する断面略U字状の段部53cが形成されている。この段部53cと縦長係合凹部53aの開口111側の側縁部とによって断面略U字状の係止溝53dが、周方向全幅に渡って形成されている。尚、図22に示すように、平面視縦長矩形状の縦長係合凹部53aは、受容カップ53の開口111側端部に形成された平面視縦長矩形状の切り欠き溝にレーザ溶接、接着等によって接合するようにしてもよい。
図21及び図23に示すように、円筒容器状の摺動カップ55は、第1実施形態に係る摺動カップ11bの側壁122よりも少し長い側壁161を有している。摺動カップ55の側壁161には、受容カップ53内への摺動カップ55の挿入量が最大になった際に、縦長係合凹部53aの開口111に対して反対側の側縁部、つまり、バンパリインフォースメント1側の側縁部に対向する位置に、周方向に沿って断面略U字状で外方へ所定高さ膨出した係合凸部55aが設けられている。係合凸部55aの周方向長さは、第1実施形態に係る一対の係合片123a、123bの周方向の幅に等しい長さに形成されている。また、係合凸部55aの断面形状は、受容カップ53の係止溝53dの断面形状にほぼ等しい断面略U字状に形成されている。
従って、図21に示すように、摺動カップ55は、係合凸部55aが受容カップ53の縦長係合凹部53a内に嵌入された状態で、受容カップ11a内に摺動自在に挿入されて両者間に一つの空間11cを形成している。また、受容カップ53内への摺動カップ55の挿入量が最大になった際に、係合凸部55aは、縦長係合凹部53aのバンパリインフォースメント1側の側縁部の近傍に位置している、又は、バンパリインフォースメント1側の側縁部に接している。そして、後述のように、受容カップ53内への摺動カップ55の挿入量が最小になった際に、係合凸部55aが係止溝53d内に嵌入されるように構成されている(図25参照)。
図21及び図23に示すように、摺動カップ55の底部126の内側面には、インフレータ12に加えて、排出手段としての第3実施形態に係る排気弁48が固定されている。排気弁48は中空の箱体であり、摺動カップ55の底部126の内面に当接する面には、貫通孔48bが穿設され、その反対側の面には、脆弱部48aが形成されている。脆弱部48aは、膨張体52の空間11c内の内圧が所定圧力以上となると破断されるように構成されている。また、排気弁48の貫通孔48bに対向して摺動カップ55の底部126及び容器14の底部には、各貫通孔126a、14bが形成されている。これにより、脆弱部48aが破断されたときには、これらの各貫通孔48b、126a、14bを介して、膨張体52の空間11c内のガス12aが外部に排出され、大気開放となる。
次に、インフレータ12がガス12aを発生した場合について図24及び図25に基づいて説明する。図24は、インフレータ12がガス12aを発生し、膨張体52を成す受容カップ53が前方に摺動して、バンパリインフォースメント1が前方に移動する様子を示している。図25は、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1の移動が完了した状態を示している。
図24に示すように、バンパリインフォースメント1の移動に伴って、伸縮部材15の折り返し位置15aも前方に移動している。このようにバンパリインフォースメント1、即ちバンパが前方に移動することにより、衝突に備えた状態となる。なお、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1の移動が完了した状態は、本発明における「受容カップ内への摺動カップの挿入量が最小となり、前記空間の容積が最大となる前記衝突荷重受部材の最大移動位置」に相当する。
また、図24に示すように、インフレータ12がガス12aを発生し、受容カップ53が前方に摺動して、摺動カップ55の係合凸部55aが縦長係合凹部53a内を摺動移動する。そして、摺動カップ55の係合凸部55aが、縦長係合凹部53aの段部53cに当接した後、更に、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1は前方へ移動する。このため、図25に示すように、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際、つまり、受容カップ53内への摺動カップ55の挿入量が最小となり、空間11cの容積が最大となった際に、摺動カップ55の係合凸部55aは、縦長係合凹部53aの後端部に形成された係止溝53d内に嵌入される。
また、伸縮部材15の折り返し位置15bは、前方に移動して容器14の開口141に達し、伸縮部材15は底部15bを有する円筒状に変形し、前方への伸長が終了する。その結果、摺動カップ55の係合凸部55aが、受容カップ53の縦長係合凹部53aの係止溝53dに嵌入されて係合するため、受容カップ53の前方への移動を停止させることができる。つまり、バンパリインフォースメント1の前方への移動を停止させることができる。
また、受容カップ53の前方への移動が停止されるため、膨張体52の空間11c内の内圧が所定圧力以上となり、排気弁48の脆弱部48aが破断される。その結果、破断された排気弁48の脆弱部48a、排気弁48の貫通孔48b、摺動カップ55の底部126に形成された貫通孔126a、及び容器14の底部に形成された貫通孔14bを介して、膨張体52の空間11c内のガス12aが外部へ排出され、大気開放となる。これにより、受容カップ53の前方への移動を確実に停止させることができる。つまり、バンパリインフォースメント1の前方への移動を確実に停止させることができる。
その後、図26に示すように、バンパに衝突物体が衝突すると、バンパ及びバンパリインフォースメント1が、後方へ押される、つまり、矢印138方向へ押される。そのため、膨張体52を成す受容カップ53が後方に摺動される。このとき、受容カップ53と摺動カップ55との間の空間11c内に残っているガス12aは、破断された脆弱部48a、排気弁48の貫通孔48b、摺動カップ55の底部126に形成された貫通孔126a、及び容器14の底部に形成された貫通孔14bを介して、外部へ排出される。
また、摺動カップ55の係合凸部55aは、受容カップ53の縦長係合凹部53aの係止溝53dに係合しているため、受容カップ53の縦長係合凹部53aの後方への移動が停止される。この結果、受容カップ53の縦長係合凹部53aの係止溝53dよりも前方側の側壁112は、バンパリインフォースメント1によって後方へ(矢印138方向へ)押されるため、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に座屈変形する。
従って、図27に示すように、受容カップ53の縦長係合凹部53aの係止溝53dよりも前方側の側壁112は、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って座屈変形して蛇腹状に収縮され、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。これにより、受容カップ53の縦長係合凹部53aの係止溝53dよりも前方側の側壁112が蛇腹状に収縮する間に、衝突エネルギが吸収され衝突に伴う衝撃が緩和される。
また、同時に、図26及び図27に示すように、伸縮部材15もバンパリインフォースメント1によって後方へ(矢印138方向へ)押されるため、衝突荷重を受けて折り返し位置15aが容器14の内壁に沿って後方に移動して、収縮され、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。従って、伸縮部材15の収縮によっても衝突エネルギは吸収され、受容カップ53の側壁112の蛇腹状の座屈変形による分と合わせてエネルギ吸収量が増大される。
以上のように、第4実施形態に係る衝撃吸収ユニット51では、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1の前方への移動が完了した際に、摺動カップ55の係合凸部55aは、受容カップ53の縦長係合凹部53aの段部53cを乗り越えて、係止溝53dに嵌入される。この結果、摺動カップ55の係合凸部55aが、受容カップ53の縦長係合凹部53aの係止溝53dに係合するため、受容カップ53の前方への移動を停止することができる。
更に、膨張体52の空間11c内の内圧が所定圧力以上となり、排気弁48の脆弱部48aが破断される。その結果、破断された排気弁48の脆弱部48a、貫通孔48b、摺動カップ55の底部126及び容器14の底部に形成された各貫通孔126a、14bを介して、膨張体52の空間11c内のガス12aが外部へ排出され、大気開放となる。これにより、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1の前方への移動を確実に停止させることができる。
その後、衝突荷重によって受容カップ53が後方へ移動すると、縦長係合凹部53aの係止溝53dに摺動カップ55の係合凸部55aが係合しているため、受容カップ53の係止溝53dよりも前方側の側壁112が、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に座屈変形して収縮され、バンパリインフォースメント1の後方への移動が完了する。これにより、衝突直前にバンパ及びバンパリインフォースメント1を衝突方向へ突出させると共に、衝突エネルギを吸収する機構を、受容カップ53の縦長係合凹部53a、摺動カップ55の係合凸部55a、インフレータ12、及び、排気弁48で構成される簡易な構造とし、安価な構成にすることができる。
また、バンパリインフォースメント1の後方への移動に伴って、受容カップ53の係止溝53dよりも前方側の側壁112が蛇腹状に収縮することによって、衝突エネルギが吸収され、衝突に伴う衝撃を緩和できる。更に、バンパリインフォースメント1の後方への移動に伴って、伸縮部材15の折り返し位置15aが、容器14の内壁に沿って後方に移動して、伸縮部材15も収縮され、衝突エネルギが吸収されるため、エネルギ吸収量を大きくすることができる。ここで、受容カップ53の縦長係合凹部53aと、摺動カップ55の係合凸部55aが、係合手段の一例として機能する。
尚、本発明は前記第1実施形態乃至第4実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
(A)例えば、上記第1実施形態及び第2実施形態に係る一対の係合片123a、123bと、一対の係合孔113a、113bは、軸方向(摺動方向)に沿って同一直線上に所定間隔で配置されているが、係合片123aと係合孔113a、係合片123bと係合孔113bの各組み合わせは、互いに周方向に所定角度ずれて配置されるようにしてもよい。これにより、上記第1実施形態及び第2実施形態に係る各衝撃吸収ユニット10、31と同じ効果を奏することができる。
また、上記第3実施形態に係る一対の係合片123a、123bと、一対の係合凹部45a、45bは、軸方向(摺動方向)に沿って同一直線上に所定間隔で配置されているが、係合片123aと係合凹部45a、係合片123bと係合凹部45bの各組み合わせは、互いに周方向に所定角度ずれて配置されるようにしてもよい。これにより、上記第3実施形態に係る衝撃吸収ユニット41と同じ効果を奏することができる。
(B)また、例えば、上記第1実施形態及び第2実施形態に係る一対の係合片123a、123bと、一対の係合孔113a、113bは、受容カップ11aと摺動カップ11bのそれぞれの周方向の一個所に設けたが、周方向の複数個所に設けてもよい。これにより、受容カップ11a及びバンパリインフォースメント1の前方への移動を更に確実に停止させることができる。また、受容カップ11aの係合孔113bよりも前方側の側壁112を、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に更に確実に座屈変形させて収縮させることができ、衝突エネルギを効率的に吸収することができる。
(C)また、例えば、上記第3実施形態に係る一対の係合片123a、123bと、一対の係合凹部45a、45bは、受容カップ43と摺動カップ11bのそれぞれの周方向の一個所に設けたが、周方向の複数個所に設けてもよい。これにより、受容カップ43及びバンパリインフォースメント1の前方への移動を更に確実に停止させることができる。また、受容カップ43の係合凹部45bよりも前方側の側壁112を、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に更に確実に座屈変形させて収縮させることができ、衝突エネルギを効率的に吸収することができる。
(D)また、例えば、上記第4実施形態に係る縦長係合凹部53aと係合凸部55aは、受容カップ53と摺動カップ55のそれぞれの周方向の一個所に設けたが、周方向の複数個所に設けてもよい。これにより、受容カップ53及びバンパリインフォースメント1の前方への移動を更に確実に停止させることができる。また、受容カップ53の縦長係合凹部53aの係止溝53dよりも前方側の側壁112を、衝突荷重を受けて容器14の内壁に沿って蛇腹状に更に確実に座屈変形させて収縮させることができ、衝突エネルギを効率的に吸収することができる。
(E)また、例えば、前記第1実施形態乃至第4実施形態に係る各受容カップ11a、43、53、各摺動カップ11b、32、55、容器14、カバー体13等を円筒形状としたが、断面三角形、四角形、五角形等の角筒形状としてもよい。これにより、各受容カップ11a、43、53と、各摺動カップ11b、32、55間の周方向の回転ずれを抑止することができる。
(F)また、前記第1実施形態乃至第4実施形態では、本発明を自動車に適用したが、自動車以外の各種車両に適用してもよい。また、前記第1実施形態乃至第4実施形態では、各衝撃吸収ユニット10、31、41、51を2つ組み合わせて使用したが、1つのみで使用してもよいし、3つ以上を組み合わせて使用してもよい。