JP2019049228A - ロケットモータ - Google Patents

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英次郎 沖園
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【課題】固体推進薬に形成する内孔の設計自由度が高く、発射衝撃が印加されても固体推進薬の破損を防止できる内面燃焼方式の固体ロケットモータを提供すること。【解決手段】本発明のロケットモータは、ノズルを有する燃焼室と、上記燃焼室内に固体推進薬を備える。そして、上記固体推進薬の内部に焼尽緩衝材を有し、上記焼尽緩衝材を上記ノズルからロケットモータの機軸方向に延伸して配置しており、発射加速度による固体推進薬の破損を防止できる。【選択図】図1

Description

本発明は、ロケットモータに係り、更に詳細には、射程距離を伸ばすために砲弾等に使用される噴進弾に関する。
固体ロケットモータは、燃焼室内部において固体推進薬の燃焼により発生した燃焼ガスを後方のノズルから噴射し、その反動で推進力を得るものである。
固体ロケットモータの燃焼方式としては、ノズルに近い部分から固体推進薬が徐々に燃える端面燃焼方式と、ノズルから機軸方向に内孔を有し、内側から外側に向けて固体推進薬が燃焼する内面燃焼方式とがあり、上記内面燃焼方式が一般的である。
上記端面燃焼方式は、燃焼面積が一定であり一定の推進力が得られる一方、内面燃焼方式では内孔の形状により燃焼面積を変化させることができ、推進力の大きさと燃焼時間とを調節することができる。
固体ロケットモータを噴進弾(Rocket Assisted Projectile:RAP)に用いることが、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている。
米国特許3698321号明細書 米国特許3628457号明細書
しかしながら、上記内面燃焼方式の固体ロケットモータを、噴進弾に使用すると、火砲から発射する際、発射加速度によって固体推進薬が機軸方向に圧縮されて、固体推進薬が内孔方向に過度に変形し、局部的に歪が生じて固体推進薬が破損してしまう。
このような、固体ロケットモータを砲弾に搭載する場合は、発射加速度を低減するために初速を抑えることや、内孔に中央支持管を設けて固体推進薬の変形を抑制したり、固体推進薬を分割して固体推進薬の長さと直径の比(L/D)を小さくしたりして固体推進薬にかかる荷重を緩和する必要が生じる。また、固体推進薬に形成する内孔を単一の円筒形とすることで応力集中を防止する。
したがって、推進力や燃焼時間の設計自由度が制限されてしまい、効率的な射程延伸や飛しょう速度の増大が困難となる。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内孔の設計自由度が高く、発射衝撃が印加されても固体推進薬の破損を防止できる内面燃焼方式の固体ロケットモータを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、燃焼室内部の固体推進薬に焼尽緩衝材を挿入し、発射直後に火砲の発射ガス等によって上記焼尽緩衝材を燃焼させて固体推進薬に内孔を形成することで、発射衝撃による固体推進薬の破損を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題は、以下の本発明により解決される。
(1)ノズルを有する燃焼室と、
上記燃焼室内に固体推進薬を備えるロケットモータであって、
上記固体推進薬の内部に焼尽緩衝材を有し、
上記焼尽緩衝材を、上記ノズルからロケットモータの機軸方向に延伸して配置していることを特徴とするロケットモータ。
(2)上記焼尽緩衝材の形状が、機軸方向と直交する方向の断面形状が星形であることを特徴とする上記第(1)項に記載のロケットモータ。
(3)上記焼尽緩衝材が、燃焼室のノズルとは反対側の他端に達していることを特徴とする上記第(1)項又は上記第(2)項に記載のロケットモータ。
(4)上記焼尽緩衝材が、機軸方向に連通する空洞を有することを特徴とする上記第(1)項〜上記第(3)項のいずれか1つの項に記載のロケットモータ。
(5)上記焼尽緩衝材が、60度千鳥配列の多孔構造又はハニカム構造を有することを特徴とする上記第(4)項に記載のロケットモータ。
(6)上記焼尽緩衝材が固体推進薬に点火するものであることを特徴とする上記第(1)項〜上記第(5)項のいずれか1つの項に記載のロケットモータ。
(7)上記上記第(1)項〜上記第(6)項のいずれか1つの項に記載のロケットモータを製造する方法であって、
燃焼室内に焼尽緩衝材を配置し、上記焼尽緩衝材を中子として固体推進薬を燃焼室内に注入することを特徴とするロケットモータの製造方法。
本発明によれば、固体推進薬内部の焼尽緩衝材を発射直後に燃焼させて固体推進薬に内孔を形成することとしたため、発射衝撃による固体推進薬の破損を防止でき、内孔の設計自由度が高い固体ロケットモータを提供することができる。
本発明のロケットモータの機軸方向の概略断面図である。 本発明のロケットモータを備える噴進弾を発射するときの状態を説明する図である。 図1のロケットモータのA−A’概略断面図である。
本発明のロケットモータについて詳細に説明する。
上記ロケットモータMは、図1に示すように、ノズル11を有する燃焼室1と上記燃焼室1内に固体推進薬2を備え、上記固体推進薬2の内部に焼尽緩衝材3を有し、上記焼尽緩衝材3を上記ノズル11からロケットモータの機軸方向に延伸して配置している。
そして、ロケットモータMを備えた噴進弾は、図2に示すように発射薬41とともに火砲4に装填され、図2(A)に示すように、外力としての発射薬の燃焼圧力によって発射される。
このとき、噴進弾には図2中に大きい矢印で示す大きな加速度が生じ、ロケットモータMの固体推進薬には、図2中に小さい矢印で示す圧縮荷重が加わり、この圧縮荷重によりノズル側ほど機軸方向と直交する方向に拡がるように変形させる力が作用する。
しかし、本発明のロケットモータMは、固体推進薬2の内部に焼尽緩衝材3を有しているため、上記の変形させる力に抗して固体推進薬2を拘束し固体推進薬2の変形を防止する。
そして、火砲から発射された後に、上記焼尽緩衝材を燃焼消滅させて図2(B)に示すように、固体推進薬の内部に内孔を形成し、上記焼尽緩衝材の燃焼によって固体推進薬を内面から燃焼させ、発生する高温・高圧ガスを、上記内孔を通じて噴射して推進力を得る。
<焼尽緩衝材>
上記焼尽緩衝材は、燃焼室のノズルからロケットモータの機軸方向に延伸して配置され、ロケットモータを搭載する砲弾等を火砲から発射する際には、ロケットモータ内の固体推進薬を支えて上記固体推進薬の過度な変形を防止し、火砲から発射された後には、速やかに燃焼消滅して上記固体推進薬に内孔を形成するものである。
上記焼尽緩衝材が、固体推進薬内に挿入されていることで固体推進薬内部に隙間がなく、火砲から発射する際に固体推進薬に発射加速度が作用しても、上記のように、固体推進薬が上記焼尽緩衝材に支えられて固体推進薬に機軸方向の力しか加わらないため、局部的な歪が生じず固体推進薬の破損が防止される。
したがって、本発明のロケットモータは、発射加速度による固体推進薬の過度な変形が防止されているため、局部的な歪の発生を考慮せずに用途に合わせて内孔の形状を設計することができる。
また、固体推進薬の過度な変形が防止されるため、砲弾等の発射加速度を抑える必要がないのに加えて、上記焼尽緩衝材は、瞬時に燃焼してガスを発生して推進力を発生するため、焼尽緩衝材の重量による射程距離の短縮や発射速度の低減は生じ難い。
固体推進薬に形成する内孔の形状は、上記焼尽緩衝材の形状によって制御することができ、上記焼尽緩衝材の形状は、必要とする推進力の大きさや燃焼時間に応じて決めることができる。
具体的には、焼尽緩衝材の効果により固体推進薬の内孔形状を複雑にしても発射衝撃に抗堪し得る構造が可能となり、固体推進薬が燃焼する表面積を調整することで、短時間に大きな推進力を得ることができ、逆に長時間、低い推進力を維持することもできる。
上記焼尽緩衝材の機軸方向と直交する方向の断面形状は、図3に示すように、円形、六角形、星形等、どのような形状であってもよいが、機軸を中心として放射状に拡がる星形であると、形成する内孔の表面積を大きくすることができ、短時間に大きな推進力を得ることができる。
また、発射加速度による応力はノズル側が大きくなるため、固体推進薬の破損が生じ易いノズル側に焼尽緩衝材があれば、必ずしも、燃焼室内の固体推進薬を貫いてノズルから、該ノズルとは反対側の他端まで延伸している必要はないが、焼尽緩衝材が、燃焼室の他端に達していると、固体推進薬を充填する際に焼尽緩衝材を中子として使用することができ、ロケットモータの製造性が向上する。
上記焼尽緩衝材は、図3に示すように、内部に機軸方向に連通する空洞31を有することが好ましい。焼尽緩衝材が空洞31を有することで、焼尽緩衝材自体の燃焼時間が短くなり瞬時に内孔を形成できる。
つまり、火砲の発射ガスや点火装置からのガスが上記空洞に導かれて、焼尽緩衝材がその端面からだけでなく内面側からも燃焼が進むため短時間で焼尽する。
上記連通する空洞31の数は、特に制限はなく、一つでも、7孔、19孔、37孔等の複数でも構わないが、上記空洞により60度千鳥の多孔構造又はハニカム構造が形成されていることが好ましい。
焼尽緩衝材が60度千鳥の多孔構造又はハニカム構造であると、焼尽緩衝材の強度を損なわずに、焼尽緩衝材の構造部分を薄くしたり、後述する粘結剤を減らして燃焼剤を多くしたりすることができ、焼尽緩衝材自体の燃焼速度を速くして、素早く内孔を形成することができる。
上記焼尽緩衝材の孔と孔を隔てる板厚は、1mm〜3mmであることが好ましい。上記厚さの範囲であると、焼尽緩衝材の剛性と燃焼時間とを両立できる。
なお、本発明において構造部分とは、後述する燃焼剤と添加剤等で構成された燃焼する部位であり、空洞以外の部位をいう。
上記焼尽緩衝材は、燃焼時間が短く、瞬時に燃焼して内孔を形成すると共に、固体推進薬の破損を抑制できればよく、燃焼剤と、粘結剤、安定剤等の添加剤とを含有する。
上記燃焼剤としては、ニトロセルロースやセルロイド等を使用できる。
上記焼尽緩衝材中の燃焼剤は、発射加速度や焼尽緩衝材の形状等にもよるが45質量%〜80質量%であることが好ましい。燃焼成分が多いと粘結剤が少なくなって、焼尽緩衝材の剛性が低くなることがあり、燃焼剤が少ないと燃焼性が低下することがある。
上記粘結材としては、ニトロセルロース等に対して化学的に安定な、スチレンブタジエンラテックスやウレタン樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。上記焼尽緩衝材中の粘結剤は、15質量%〜50質量%であることが好ましい。
また、上記安定剤としては、例えば、ジエチルジフェニル尿素、メチルジフェニル尿素、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、ヒドロキノン、フェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。
上記焼尽緩衝材は、燃焼剤と添加剤とを混合した材料を、熱等により軟化させ、圧伸成形、射出成形、押し出し成形等で成形できる。
また、焼尽緩衝材は、表膠で被覆して固体推進薬の点火を遅らせることで、点火のタイミングを調整することもできる。
上記表膠としては、硝酸カリウム、硫酸カリウム、氷晶石、炭酸水素ナトリウム、過塩素酸カリウム、および硝酸バリウム等の無機物を挙げることができる。
上記焼尽緩衝材は、火砲の発射ガス又はロケットモータMに搭載された図示しない点火装置により燃焼させることができるが、火砲の発射ガスにより燃焼させることで、省スペース化・軽量化することができる。
<燃焼室>
燃焼室は、内面に断熱材が接着されて内部に固体推進薬を収納するものであり、その一端部にノズルを備える。上記ノズルは固体推進薬が燃焼することで生じる高温・高圧ガスを噴射する。
<固体推進薬>
上記固体推進薬としては、従来公知の固体推進薬を使用することができ、例えば、コンポジット推進薬を使用できる。
<ロケットモータの製造>
本発明のロケットモータは、燃焼室内に焼尽緩衝材を配置し、該燃焼室に固体推進薬を流し込む直填式で製造できる。本発明においては、上記焼尽緩衝材を注型用の中子として使用することができ、固体推進薬に内孔を形成する中子の引抜工程を省くことができる。
以上、本発明のロケットモータを、火砲から打ち出されるRAP弾等に搭載されるロケットモータを例に説明したが、本発明のロケットモータは火砲から発射する砲弾だけでなく、ロケットモータを複数段有するロケットの2段目、3段目等、上段のロケットモータにも好適に適用できる。
1 燃焼室
11 ノズル
12 断熱材
2 固体推進薬
3 焼尽緩衝材
31 空洞
4 火砲
41 発射薬
M ロケットモータ

Claims (7)

  1. ノズルを有する燃焼室と、
    上記燃焼室内に固体推進薬を備えるロケットモータであって、
    上記固体推進薬の内部に焼尽緩衝材を有し、
    上記焼尽緩衝材を、上記ノズルからロケットモータの機軸方向に延伸して配置していることを特徴とするロケットモータ。
  2. 上記焼尽緩衝材の形状が、機軸方向と直交する方向の断面形状が星形であることを特徴とする請求項1に記載のロケットモータ。
  3. 上記焼尽緩衝材が、燃焼室のノズルとは反対側の他端に達していることを特徴とする請求項1又は2に記載のロケットモータ。
  4. 上記焼尽緩衝材が、機軸方向に連通する空洞を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のロケットモータ。
  5. 上記焼尽緩衝材が、60度千鳥の多孔構造又はハニカム構造を有することを特徴とする請求項4に記載のロケットモータ。
  6. 上記焼尽緩衝材が固体推進薬に点火するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のロケットモータ。
  7. 上記請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のロケットモータを製造する方法であって、
    燃焼室内に焼尽緩衝材を配置し、上記焼尽緩衝材を中子として固体推進薬を燃焼室内に注入することを特徴とするロケットモータの製造方法。
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