本発明は、流体が貯留されるタンクのタンク本体に接続された流体通路に逆止弁を設けた構成に対して用いられる逆止弁開放治具において、タンク本体に対する流体通路の接続部の構成等に起因して逆止弁へのアクセスが制限された構成においても、逆止弁を開弁状態に保持することを可能とするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態では、流体が貯溜されるタンクとして、液体燃料であるガソリンを貯溜する自動車の燃料タンク1を例にとって説明する。図1に示すように、燃料タンク1は、燃料Fが貯溜されるタンク本体2と、タンク本体2に接続された流体通路としての燃料供給通路3とを有する。
タンク本体2は、タンク本体2の上部を構成するアッパーシェル部4と、タンク本体2の下部を構成するロアシェル部5とを有し、これらのシェル部による上下分割構造を有する。アッパーシェル部4およびロアシェル部5は、それぞれ射出成形により成形された樹脂製の部材である。タンク本体2を構成する樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)やPOM(ポリアセタール)等がある。なお、タンク本体2は全体的に金属製の部材により構成されたものであってもよい。
アッパーシェル部4およびロアシェル部5は、それぞれの周縁部に全周的に外側に向けて形成されたフランジ部4a,5a同士の融着等により互いに固定されている。アッパーシェル部4の一隅部に形成された斜面部4bに、燃料供給通路3を接続するための開口部2aが形成されている。
燃料供給通路3は、外部から燃料タンク1内への給油管路であり、タンク本体2の開口部2aを貫通した状態でタンク本体2に固定された接続部材6と、接続部材6に接続された燃料供給管であるインレット管7とを有する。インレット管7の上流側には、燃料キャップで開閉される給油口(図示略)が設けられる。
接続部材6は、図1および図2に示すように、全体として略筒状の部材であり、その筒軸方向の中央部に拡径状(鍔状)のフランジ部6aを有する。接続部材6は、フランジ部6aよりも一側(図2において右側)の筒状部分を本体筒部11とし、フランジ部6aよりも他側(図2において左側)の筒状部分を、インレット管7の接続を受ける管接続部12とする。
具体的には、図3に示すように、接続部材6は、フランジ部6aおよび管接続部12をなすアウタパイプ13と、本体筒部11をなすインナパイプ14とを有する。アウタパイプ13およびインナパイプ14は、樹脂製あるいは金属製の部材であり、互いに同軸心状の位置関係で固定され、一体的な接続部材6を構成する。
アウタパイプ13は、管接続部12をなす円筒状部13aと、この円筒状部13aの筒軸方向一端側に設けられフランジ部6aをなす鍔状部13bとを有する一体の部材である。インナパイプ14は、アウタパイプ13の円筒状部13aと略同径の円筒状の部材である。インナパイプ14は、筒軸方向の一端側(図3において左側)の開口端部14aを、アウタパイプ13の鍔状部13b側に形成された嵌合凹部13cに嵌合させ、圧入等によりアウタパイプ13に固定されている。
管接続部12は、その外周面に、管接続部12の筒軸方向について凹凸をなす複数の突条12aを有する。そして、インレット管7は、燃料供給の流れにおける下流側の端部に管接続部12を先端側から挿入させることで、接続部材6に接続される。ここで、管接続部12は、インレット管7に対して圧入されており、この圧入構造により、インレット管7と接続部材6との接続部の密閉性が確保されている。このように、インレット管7は、接続部材6を介してタンク本体2に接続される。
接続部材6は、図1に示すように、タンク本体2に対し、開口部2aが形成された斜面部4bの外側にフランジ部6aを位置させるとともに、本体筒部11の大部分をタンク本体2内に突出させた状態で取り付けられる。つまり、接続部材6は、本体筒部11の一側(管接続部12側と反対側)の開口部をタンク本体2内に位置させた状態で、フランジ部6aを斜面部4bに固定させることで、タンク本体2に取り付けられる。そして、接続部材6の内部空間、つまり互いに連通している本体筒部11および管接続部12の内部空間が、タンク本体2の内部空間に連通し、インレット管7を経て供給された燃料のタンク本体2内に対する給油通路となる。
以上のような接続部材6において、タンク本体2内に位置する本体筒部11に、燃料タンク1内に供給される燃料の逆流を防止するための逆止弁20が設けられている。
逆止弁20について、図2および図3を用いて説明する。なお、以下の説明では、逆止弁20が設けられた接続部材6において、その筒軸方向についてタンク本体2側となる本体筒部11側(図2および図3において右側)を前側とし、その反対側(図2および図3において左側)を後側とする。
図2および図3に示すように、逆止弁20は、本体筒部11の前側(下流側)の開口部を開閉するように設けられた弁体21と、本体筒部11をなすインナパイプ14に対して弁体21を移動可能に支持する弁支持部22と、弁支持部22に対して弁体21を所定の方向に付勢する付勢部材としての付勢ばね23とを有する。
本体筒部11の前端部、つまりタンク本体2内に臨む開口端部には、本体筒部11の内径および外径を拡径させた拡径開口部11aが形成されている。本体筒部11は、拡径開口部11aにより、前側の開口端部を、本体筒部11の大部分をなす円筒部11bに対して段差状に拡径している。
弁体21は、本体筒部11の前側の開口部を開閉させる略円板状の弁本体部21aと、弁本体部21aの後側の中央部から延出した直線棒状の軸部21bとを有する。弁体21は、例えばPOM(ポリアセタール)等の樹脂により形成された樹脂製の部材である。
弁本体部21aは、前側を開口させた円筒状の弁筒部21cと、弁筒部21cの後側の端部の外周部から径方向外側に鍔状に突設された円形状の外形を有する板状の弁板部21dと、弁筒部21cの後側を塞ぐとともに前側から後側にかけて徐々に縮径する略テーパ状の後壁部21eとを有する。後壁部21eの頂部から、軸部21bが後側に向けて直線状に延伸している。
弁本体部21aは、本体筒部11の拡径開口部11a内から、本体筒部11の前側の開口部を閉じる。詳細には、本体筒部11においては、拡径開口部11aにより本体筒部11の内周側に形成された段差部に、円筒部11bの前側を延長させた態様で、前側に突出した円環状の突条部分である弁座11cが形成されている。そして、弁本体部21aは、弁座11cに対して前側から弁板部21dを当接させることで、本体筒部11の前側の開口部を閉じる。したがって、拡径開口部11aの内側に開口する円筒部11bの前側の開口部が、本体筒部11において弁体21により開閉される開口部となる。
このような弁本体部21aの構成において、弁筒部21cの外径は、本体筒部11の円筒部11bの内径よりも小さく、また、弁板部21dの外径は、円筒部11bの外径(弁座11cの外径)よりも大きく、拡径開口部11aの内径よりも小さい。また、弁本体部21aが弁板部21dを弁座11cに当接させた状態、つまり弁体21の閉弁状態において、弁筒部21cの前部は、拡径開口部11aの開口端から突出している。
軸部21bは、本体筒部11の円筒部11b内に位置し、本体筒部11の中心軸に沿うように延伸している。軸部21bは、円筒部11bの長さと略同じ長さを有し、弁体21の閉弁状態において、後端部を、インナパイプ14の後側の端部近傍に位置させる。
弁支持部22は、弁体21を、本体筒部11に対して、本体筒部11の筒軸方向、つまり軸部21bの延設方向に沿って移動可能に支持する。弁支持部22は、円筒部11b内において前側寄りの位置において、円筒部11bの内周面11dから径方向の内側に向けて突設されている。弁支持部22は、本体筒部11をなすインナパイプ14の一部として形成されている。
弁支持部22は、本体筒部11の中心軸方向視で本体筒部11の中央部に設けられた筒状のガイド筒部22aと、本体筒部11の内周面11dに対してガイド筒部22aを支持する複数の支持板部22bとを有する。ガイド筒部22aは、その内周面によりガイド孔22cを形成する部分であり、ガイド孔22cの中心軸を本体筒部11の中心軸に一致させるように設けられている。支持板部22bは、本体筒部11の内周面11dから本体筒部11の径方向に沿って突出した矩形平板状の部分であり、本体筒部11の中心軸方向視で本体筒部11の径方向に直交する方向を板厚方向とする。図示は省略するが、支持板部22bは、本体筒部11の周方向について等角度間隔で複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。
弁支持部22は、ガイド孔22cに弁体21の軸部21bを貫通させた状態で、弁体21を軸部21bの延伸方向、つまり本体筒部11の筒軸方向に沿って移動可能に支持する。これにより、弁体21は、本体筒部11に対してその筒軸方向に沿って往復移動可能となる(図3、矢印X1参照)。
付勢ばね23は、コイルばねであり、弁体21の軸部21bの、ガイド筒部22aからの後側への突出部分を貫通させた状態で設けられている。付勢ばね23の後端部は、軸部21bの後端部において拡径部21fにより形成されたばね受面21gに当接支持され、付勢ばね23の前端部は、ガイド筒部22aの後側の端面22dに当接支持されている。
付勢ばね23は、弁体21を、逆止弁20が閉弁状態となる方向に付勢する。つまり、付勢ばね23は、圧縮状態でガイド筒部22aと拡径部21fとの間に介在し、弁体21を前側から後側に向かう方向(図3において左方向)に付勢する。
以上のように、本実施形態に係る接続部材6は、逆止弁20が組み込まれた逆止弁組立体として構成されている。このような構成において、通常、付勢ばね23による弁体21に対する付勢作用により、弁板部21dが弁座11cに圧接しており、逆止弁20は閉弁状態となっている。そして、タンク本体2内に燃料が供給される際は、インレット管7から接続部材6内に流入した燃料の圧力によって、弁体21が付勢ばね23の付勢力に抗して付勢ばね23を圧縮させ、前側(下流側)に移動する。これにより、弁板部21dが弁座11cから離間し(図3の二点鎖線で示す弁体21参照)、本体筒部11の前側の開口部が開放状態となり、逆止弁20が開弁状態となる。これにより、本体筒部11の前側の開口部から、タンク本体2内に燃料が供給される。逆止弁20の開弁状態において、弁体21は、弁本体部21aを全体的に本体筒部11の前側の開口部から露出させる。
また、本実施形態の燃料タンク1において、燃料供給通路3内には、図1および図4に示すように、燃料タンク1内の燃料の盗難防止のため、燃料タンク1内への燃料吸引用のパイプ等の挿入を制限する通路制限部25が設けられている。通路制限部25は、インレット管7内において、接続部材6の直上流側の位置に設けられている。通路制限部25は、インレット管7内の所定の部位に配置された通路制限部材としてのメッシュ体26を設けることにより構成されている。
メッシュ体26は、樹脂製あるいは金属製の部材であり、円板状あるいは円筒状の外形を有する。メッシュ体26は、インレット管7内において、接続部材6の管接続部12に対して上流側に隣接した位置に、管接続部12とともにインレット管7に対して圧入されて固定されている。したがって、メッシュ体26の外周面26xは、インレット管7の内周面7aに圧接した状態となっている。
メッシュ体26は、図4に示すように、メッシュ体26の外形をなす円筒状の外枠部26aと、外枠部26aに対して同心状に設けられた円筒状の内枠部26bと、内枠部26bの内側において内枠部26bに対して同心状に設けられた円筒状の中央筒部26cとを有する。また、メッシュ体26は、外枠部26aと内枠部26bとを繋ぐ複数の外側連繋部26dを有する。外側連繋部26dは、メッシュ体26の中心軸方向視で直線状をなす板状あるいは棒状の部分であり、周方向に等角度間隔で3箇所に設けられている。また、メッシュ体26は、内枠部26bと中央筒部26cとを繋ぐ複数の内側連繋部26eを有する。内側連繋部26eは、メッシュ体26の中心軸方向視で直線状をなす板状あるいは棒状の部分であり、互いに反対側の2箇所に設けられている。
このように、通路制限部25は、インレット管7の通路断面視となる軸心方向視で円周に沿う曲線状あるいは直線状をなす複数の線状部分を有するメッシュ体26を設けることで、インレット管7の通路断面を複数に分割してインレット管7内の通路面積を制限している。これにより、燃料供給通路3からタンク本体2内へのアクセスが制限され、燃料タンク1内の燃料を吸い取るためのパイプ等の挿入が規制される。なお、図4に示すメッシュ体26の構成はあくまでも一例であり、メッシュ体26としては、インレット管7内の通路面積を制限することができるものであればその構成は特に限定されない。
以上のような構成を備えた燃料タンク1は、高気密性のタンクであり、車体への燃料タンク1の搭載に際し、燃料タンク1の漏れの有無を確認する漏れ検査が事前に行われる。本実施形態では、燃料タンク1の漏れ検査として、検出用の気体であるヘリウム(He)を燃料タンク内に置換・封入し、その検出用の気体の漏れをリークディテクタにより検出する方式の検査(ヘリウムリークテスト)が行われる。
ここで、本実施形態に係る燃料タンク1の漏れ検査を行うための検査装置の装置構成および検査方法の一例について、図5を用いて説明する。
図5に示すように、検査装置30は、検査対象となるワークとしての燃料タンク1を収容するチャンバ31と、チャンバ31内の真空引きを行うためのチャンバ用真空ポンプ32と、燃料タンク1内にヘリウムを供給するためのヘリウム供給装置33と、燃料タンク1内の真空引きを行うためのタンク用真空ポンプ34と、チャンバ31内のヘリウムを検出するリークディテクタ35と、リークディテクタ35内の真空引きを行うためのディテクタ用真空ポンプ36とを備える。また、検査装置30は、各部を制御するための制御装置(図示略)を備える。
チャンバ31は、ワーク(燃料タンク1)の検査を行う部屋である。チャンバ31には、チャンバ31内に対するワークの出し入れを行うための開閉扉が設けられている。チャンバ31に対しては、チャンバ31の開閉扉からワークの出し入れを行うため、シリンダ機構等により移動可能な移動テーブル(図示略)が設けられている。
チャンバ用真空ポンプ32は、チャンバ31内に連通するチャンバ真空引き用配管部37によりチャンバ31に連通接続されている。チャンバ真空引き用配管部37には、チャンバ真空引き用配管部37内を大気開放させる大気開放弁38が設けられている。
ヘリウム供給装置33は、燃料タンク1の燃料供給通路3および燃料供給通路3に連通接続されたヘリウム供給用配管部39を介して、タンク本体2に連通接続されている。ヘリウム供給用配管部39には、ヘリウム供給用配管部39内部の気体通路を開閉させる開閉弁40が設けられている。
燃料タンク1の漏れ検査での燃料タンク1の真空引きにおいては、検査時間短縮の観点等から、他の配管構造と比べて管径(流路面積)が大きい燃料供給通路3が、真空引き用の排気通路として用いられる。このため、タンク用真空ポンプ34は、燃料タンク1の燃料供給通路3および燃料供給通路3に連通接続されたタンク真空引き用配管部41を介して、タンク本体2に連通接続されている。タンク真空引き用配管部41には、タンク真空引き用配管部41内を大気開放させる大気開放弁42が設けられている。なお、ヘリウム供給用配管部39およびタンク真空引き用配管部41は、燃料タンク1側において合流配管部43により互いに合流しており、合流配管部43は、後述するように燃料供給通路3に取り付けられる逆止弁開放治具51を含む治具ユニット50介して、燃料供給通路3に連通接続されている。
リークディテクタ35は、チャンバ31内に連通するディテクタ用配管部44によりチャンバ31に連通接続されている。ディテクタ用配管部44には、チャンバ真空引き用配管部37内部の気体通路を開閉させる開閉弁45が設けられている。リークディテクタ35には、ディテクタ真空引き用配管部46を介して、ディテクタ用真空ポンプ36が接続されている。ディテクタ用真空ポンプ36により、リークディテクタ35においてヘリウムが導入される空間部分であるテストポートが真空に排気される。
検査装置30が備える大気開放弁38、開閉弁40、大気開放弁42および開閉弁45は、それぞれ電磁弁等の弁機構であり、これらの弁の開閉動作は制御装置により制御される。
以上のような構成を備えた検査装置30による燃料タンク1の漏れ検査の検査手順について説明する。
まず、ワークとしての燃料タンク1において、タンク本体2内に連通する各種配管構造等が密栓されタンク内が密閉状態とされる。そして、燃料タンク1に対して、ヘリウム供給装置33およびタンク用真空ポンプ34が接続される。
次に、検査装置30の装置起動後、移動テーブル上にセットされた燃料タンク1が、シリンダ機構等による移動テーブルの動作によりチャンバ31内に引き込まれ、チャンバ31の開閉扉が閉じ、チャンバ31内が密閉状態とされる。
続いて、チャンバ用真空ポンプ32によるチャンバ31内の真空引き、およびタンク用真空ポンプ34によるタンク本体2内の真空引きが行われる。ここで、圧力変動によるタンク本体2の変形を防ぐため、チャンバ31内の圧力とタンク本体2内の圧力との差圧の監視が行われる。
チャンバ31の真空引きの過程において、チャンバ31内の圧力が所定の値に到達すると、ヘリウムの検出性を良くすることを目的として、チャンバ31内に対する窒素パージが行われる。これにより、チャンバ31内の気体が窒素に置き換えられる。
チャンバ31内に対する窒素パージの後、引き続きチャンバ用真空ポンプ32によるチャンバ31内の真空引きが行われ、チャンバ31内の圧力および燃料タンク1内の圧力がそれぞれ所定の圧力に到達すると、ヘリウム供給装置33による燃料タンク1内へのヘリウムの封入が開始される。
燃料タンク1内へのヘリウム封入の開始から所定の時間が経過した後、リークディテクタ35によるヘリウム漏れ量の測定が行われる。
リークディテクタ35による測定が完了した後、大気開放弁38,42によるチャンバ31内および燃料タンク1内の大気開放が行われ、チャンバ31内および燃料タンク1内の圧力が大気圧に戻される。
その後、チャンバ31の開閉扉が開き、シリンダ機構等による移動テーブルの動作により、チャンバ31内の燃料タンク1がチャンバ31外へと出される。燃料タンク1の取出し後、例えば所定の操作部に設けられた取出し完了ボタンを押すことで、検査装置30の各部は検査開始時の状態(原位置)に戻る。
なお、以上のような燃料タンク1の漏れ検査を行うための検査装置の装置構成および検査方法は、あくまでも一例であり、上述した内容に限定されるものではない。
上述したような燃料タンク1の漏れ検査での燃料タンク1の真空引きにおいては、タンク用真空ポンプ34による真空引きの作用を得るため、燃料供給通路3の下流側の開口部に設けられた逆止弁20を開放した状態(開弁状態)に保持する必要がある。
燃料タンク1の漏れ検査においては、燃料タンク1の気密性確保の観点等から、接続部材6に対するインレット管7の接続部分が漏れ検査の対象に含まれるように、インレット管7が接続部材6に接続されている状態で漏れ検査が行われる。また、燃料供給通路3においては、逆止弁20よりも上流側の位置に、通路面積を制限する通路制限部25が設けられている。このような状況下で燃料タンク1の真空引きにおいて逆止弁20を開弁状態に保持するため、本実施形態に係る逆止弁開放治具51が用いられる。つまり、本実施形態に係る逆止弁開放治具51は、燃料タンク1の漏れ検査用の逆止弁開弁保持治具である。
図5および図6に示すように、本実施形態に係る逆止弁開放治具51は、治具ユニット50の一部として設けられ、タンク本体2とタンク用真空ポンプ34との間の配管経路において、燃料供給通路3を構成するインレット管7と合流配管部43との間に取り付けられる。
図6に示すように、治具ユニット50は、その一部をインレット管7に対して上流側から挿入させることで、インレット管7に接続される。一方、治具ユニット50は、全体として配管構造をなし、合流配管部43の分岐側と反対側の端部の接続を受ける。これにより、ヘリウム供給装置33は、ヘリウム供給用配管部39、合流配管部43、治具ユニット50、インレット管7および接続部材6を介して、タンク本体2に接続される。また、タンク用真空ポンプ34は、タンク真空引き用配管部41、合流配管部43、治具ユニット50、インレット管7および接続部材6を介して、タンク本体2に接続される。
本実施形態に係る治具ユニット50について、図6から図13を用いて説明する。図7、図10および図11に示すように、治具ユニット50は、本実施形態に係る逆止弁開放治具51と、インレット管7に装着されるインレット管装着具52と、逆止弁開放治具51が装着される治具装着具53とを有する。つまり、治具ユニット50は、逆止弁開放治具51を含み、インレット管装着具52および治具装着具53とともに一体的なユニットとして構成されている。
逆止弁開放治具51は、燃料が貯留される燃料タンク1のタンク本体2に接続された燃料供給通路3に設けられた逆止弁20を開弁状態に保持するための治具である。逆止弁開放治具51は、治具本体部61と、治具本体部61に設けられ逆止弁20を開弁状態に保持する弁体押圧部としてのワイヤ部62とを備える。なお、以下の説明では、治具ユニット50において、その長手方向についてインレット管7に挿入される側(図8において右側)を前側、その反対側(図8おいて左側)を後側とする。
治具本体部61は、図11および図12に示すように、前後方向を筒軸方向とする略筒状の部材であるワイヤ支持体63により構成されている。ワイヤ支持体63は、その筒軸方向の中間部分をなす筒状中間部64と、筒状中間部64の前側に設けられワイヤ支持体63の前部をなす前縮径部65と、筒状中間部64の後側に設けられワイヤ支持体63の後部をなす後縮径部66とを有する。
ワイヤ支持体63は、その内部空間67の前後両端を開口させた筒状体である。内部空間67は、主に前縮径部65の内周面により形成されワイヤ支持体63の前側に開口した円筒状の前空間部67aと、筒状中間部64および後縮径部66の内周面により形成されワイヤ支持体63の後側に開口した後空間部67bとからなる。後空間部67bは、前空間部67aに対して径を大とする拡径空間部である。
筒状中間部64は、前縮径部65と後縮径部66との間の部分であって、ワイヤ支持体63における最大外径部分である。筒状中間部64は、筒軸方向の略全体にわたって一定の外径を有し、円筒面状の外周面64aを有する。
前縮径部65は、筒状中間部64に対する縮径部であり、筒状中間部64から前方に向けて突出した管状の部分である。ワイヤ支持体63の前側からの軸方向視において、前縮径部65の周囲には、筒状中間部64の前端面として、円環状をなす段差面64bが形成されている。
本実施形態に係る治具本体部61において、前縮径部65が、燃料供給通路3を構成する配管部材であるインレット管7に装着されるための装着部となる。本実施形態では、治具本体部61は、前縮径部65により、インレット管装着具52を介して、インレット管7に装着される。なお、治具本体部61とインレット管装着具52との取付構造については後述する。
後縮径部66は、筒状中間部64に対する縮径部であり、筒状中間部64から後側にかけて外径を段階的に縮径させた筒状の部分である。詳細には、後縮径部66は、筒状中間部64から後側にかけて順に、第1縮径部66a、第2縮径部66bおよび第3縮径部66cを有する。第1縮径部66aの外周面には、雄ネジ部66dが形成されている。雄ネジ部66dは、逆止弁開放治具51と治具装着具53との連結に用いられる。
ワイヤ部62は、治具本体部61に設けられており、治具本体部61から前方に延出した線状の部分である。ワイヤ部62は、その基端部(後端部)を、ワイヤ支持体63の前縮径部65内に挿入させた状態で、ワイヤ支持体63に固定支持されている。
具体的には、ワイヤ支持体63において、前縮径部65の内周部における先端側の部分には、ワイヤ部62の基端部を貫通させる支持孔65aが形成されている。支持孔65aは、前縮径部65の周壁の下端部の上側に設けられた支持孔形成部65bにより形成されている。支持孔65aを貫通したワイヤ部62の基端部において、支持孔65aの前後両側の部位には、拡径状の止め部62aが設けられており、これら前後の止め部62aにより、ワイヤ部62が前縮径部65に対して位置決めされた状態で固定支持されている。
このように、ワイヤ部62は、治具本体部61に対して、前縮径部65の内周面65cに沿う位置、つまり前縮径部65内において前縮径部65の周壁に沿う位置に設けられており、治具本体部61の(前縮径部65の)中心線に対して偏心した位置に固定されている。
ワイヤ部62は、治具本体部61がインレット管装着具52を介してインレット管7に装着された状態で、インレット管7内から逆止弁20の弁体21を押圧することで、逆止弁20を開弁状態に保持する。したがって、ワイヤ部62は、燃料供給通路3に対して逆止弁開放治具51が装着された状態において、インレット管7内を通って先端部を弁体21に対して上流側から当接させて弁体21に押圧作用し、逆止弁20が開弁状態となるような長さを有する(図6参照)。
本実施形態では、治具本体部61からのワイヤ部62の前方への延出長さは、治具本体部61の前後方向の長さの3〜4倍の長さである。なお、ワイヤ部62の詳細については後述する。
インレット管装着具52は、インレット管7の上流側の端部に装着されるとともに逆止弁開放治具51に装着されることで、逆止弁開放治具51とインレット管7とを互いに連通状態で連結させる連結介装部材として機能する。インレット管装着具52は、その構成部材として、インレット管7に挿入される挿入管部材71と、挿入管部材71の後端側に設けられた筒状の連結部材72と、連結部材72を貫通したフランジ部材73とを有する。
挿入管部材71は、前端部において前後方向に対して傾斜状の開口端面をなす前端開口部71aを有する直線状の管状部材である。挿入管部材71の基端部(後端部)の外周面には、挿入管部材71の軸方向について凹凸をなす凹凸部71bが形成されている。挿入管部材71は、前端開口部71a側から、インレット管7の上流側の端部が凹凸部71bに達するまで、インレット管7の上流部に挿入され、凹凸部71bによりインレット管7に圧入される。
連結部材72は、挿入管部材71の後側に連続するように挿入管部材71に取り付けられた略筒状の部材である。連結部材72は、前半部において、内径を後半部の内径よりも縮径させた被挿嵌部72aを有する。
フランジ部材73は、連結部材72の被挿嵌部72aの内径と略同じ寸法の外径を有する前後開放の筒状部73aと、筒状部73aの後側に形成され、筒状部73aに対して内径および外径を拡径させ後側を開放させた鍔状のフランジ部73bとを有する管状の部材である。フランジ部材73は、筒状部73aを、連結部材72に対して後側から被挿嵌部72aに挿嵌させ、前方に向けて連結部材72を貫通し、前部を挿入管部材71内に位置させた状態で、連結部材72に固定されている。なお、フランジ部73bの内径は、ワイヤ支持体63の筒状中間部64の外径よりも大きい。
インレット管装着具52に対して、逆止弁開放治具51は、後側から前縮径部65をフランジ部材73の筒状部73a内に挿入させた状態で連結固定されている。前縮径部65の筒状部73aに対する挿入部は、連結部材72が有する図示せぬ締結機構部により筒状部73aが外周側から締め付けられ、連結部材72とフランジ部材73とが互いに固定される。ここで、前縮径部65の外周面部には、前縮径部65の軸方向について間隔を隔てた2箇所に外周溝65dが形成されており、これらの外周溝65dにOリング74が外嵌されている。これにより、前縮径部65の外周面と筒状部73aの内周面との間における密閉性が確保されている。
逆止弁開放治具51とインレット管装着具52の連結状態において、治具本体部61は、ワイヤ支持体63の前端部を、フランジ部73b内に位置させ、段差面64bを、フランジ部73bの前壁73cに接触させている。つまり、上記連結状態において、筒状中間部64の段差面64bと連結部材72の後端面72bとの間に、フランジ部73bの前壁73cが介在する。
また、逆止弁開放治具51とインレット管装着具52の連結部においては、抜止め部材75が取り付けられている。抜止め部材75は、治具ユニット50の正面視(逆止弁開放治具51の軸方向視)および側面視のそれぞれにおいて門状(逆「U」字状)の外形をなす部材である。抜止め部材75は、平面視略矩形状の天面部75aと、この天面部75aの四隅部から下方に向けて延伸した脚部75bとを有し、これらの部分により、その前後両側に、治具ユニット50の正面視で逆「U」字状をなす前後凹部75cが形成されており、左右両側に、治具ユニット50の側面視で逆「U」字状をなす左右凹部75dが形成されている。
抜止め部材75は、逆止弁開放治具51とインレット管装着具52の連結部を跨ぐように上側から取り付けられて、逆止弁開放治具51およびインレット管装着具52それぞれに対して所定の部位に係合し、この連結部における抜けを防止する。なお、逆止弁開放治具51におけるワイヤ支持体63の外周面64aの左右両側には、抜止め部材75の係合を受ける部分として、左右方向外側を向く平面をなす切欠き状の凹部64cが形成されている(図12参照)。
治具装着具53は、逆止弁開放治具51の装着を受けるとともに合流配管部43の接続を受けることで、逆止弁開放治具51と合流配管部43とを互いに連通状態で連結させる連結介装部材として機能する。治具装着具53は、その構成部材として、前後方向を筒軸方向とする略筒状の筒状基部81と、平面視で筒状基部81を囲んだ状態で筒状基部81を支持するとともに逆止弁開放治具51の装着を受ける支持フレーム部82とを有する。
筒状基部81は、逆止弁開放治具51を構成する治具本体部61の筒状中間部64と略同じ外径を有し、開口部81aにより前側を開口させた略筒状の部材である。筒状基部81は、その筒軸方向に垂直な前端面81bを有する。前端面81bからは、後端部が開口部81aに挿嵌固定されたガイド筒81cが前方に向けて突設されている。
筒状基部81の周壁の下部には、筒状基部81の内部空間と連通する接続口81dが開口している。接続口81dを介して筒状基部81内に連通するように、合流配管部43の分岐側と反対側の端部が筒状基部81に接続固定される。合流配管部43は、その開口端部を接続口81dに対向させるように、ボルト等の固定具等により、筒状基部81の周壁に対して外周側から固定される。
また、筒状基部81には、図示せぬ圧力センサにより、治具ユニット50内の圧力を検出するための細長い検出管部81eが設けられている。検出管部81eは、筒状基部81内において後部から前方に延伸し、前側の開口部81aから前方に向けて突出している。
支持フレーム部82は、その前部をなす連結筒部83と、連結筒部83の後側に設けられた外枠部84とを有する。
連結筒部83は、八角柱状の外形を有するとともに内周面を円筒状に沿わせた略筒状の部分である。連結筒部83の前端部の内周面は段差状に縮径しており、この縮径内周面には、雌ネジ部83aが形成されている。雌ネジ部83aは、逆止弁開放治具51の雄ネジ部66dに螺合する面部である。
外枠部84は、連結筒部83の後端部から左右両側に張り出した縦壁部84aと、縦壁部84aの左右両側から後方に向けて延出し、前後方向に延伸した幅狭板状の横フレーム部84bとを有する。左右の横フレーム部84b間に、筒状基部81が位置する。
筒状基部81は、その前端部を、支持フレーム部82の連結筒部83に対して後側から挿入させた状態で、支持フレーム部82に取り付けられている。連結筒部83内において、筒状基部81の前側には、筒状のシールゴム85が設けられている。シールゴム85は、連結筒部83内に嵌め込まれ、筒状基部81の前端面81bと、連結筒部83の内周面部において雌ネジ部83aをなす縮径部による段差面83bとの間に介装されている。シールゴム85の内周面部85aは、逆止弁開放治具51における後縮径部66の段階的に縮径した外周面形状と符合するように、前側から後側にかけて段階的に縮径させた段差状の内周面形状を有する。
また、治具装着具53は、筒状基部81の後側に設けられた圧着レバー86の操作により、筒状基部81および支持フレーム部82が前後方向に相対移動するように構成されている。筒状基部81および支持フレーム部82が互いに近付く方向に相対移動することで、連結筒部83内において筒状基部81と支持フレーム部82との間に介装されたシールゴム85が前後方向に圧縮される。圧着レバー86は、左右の横フレーム部84bの後端部間に架設された回動軸87を中心に回動操作されるように設けられている。
以上のような構成を備えた治具装着具53に対し、前側から逆止弁開放治具51が装着される。逆止弁開放治具51は、治具本体部61の後縮径部66を、支持フレーム部82の連結筒部83の前方開口部から連結筒部83内のシールゴム85に挿嵌させるとともに、連結筒部83の雌ネジ部83aと後縮径部66の雄ネジ部66dとの螺合作用により、支持フレーム部82に固定される。ここで、ガイド筒81cが、治具本体部61の内部空間67の後側の開口から後空間部67b内に挿入され、治具本体部61が治具装着具53に対して位置決め支持される。
そして、圧着レバー86の操作によって、筒状基部81が支持フレーム部82に対して前後方向に近付く方向に相対移動し、シールゴム85が圧縮される。これにより、逆止弁開放治具51と治具装着具53との接続部、つまりワイヤ支持体63と筒状基部81と連結筒部83との接続部が密閉される。
以上のように、互いに連結される逆止弁開放治具51、インレット管装着具52および治具装着具53により、一体的な治具ユニット50が構成されている。治具ユニット50は、逆止弁開放治具51、インレット管装着具52および治具装着具53のそれぞれを構成する筒状あるいは管状の部分を同軸心配置させた状態で、全体として略筒状の構造体を構成する。
そして、治具ユニット50における略筒状の構造体部分は、燃料タンク1に対するタンク用真空ポンプ34による真空引きの用の経路、およびヘリウム供給装置33によるヘリウム供給用の経路としての内部経路を構成する。具体的には、治具ユニット50の内部経路は、燃料タンク1側から順に、挿入管部材71の前端開口部71aから、挿入管部材71、フランジ部材73、治具本体部61、および筒状基部81それぞれの内部空間を経て、筒状基部81の接続口81dに至る経路である。
また、治具ユニット50の各構成要素に着目すると、検査装置30において、インレット管装着具52は、インレット管7に装着された燃料タンク1側の構成であり、治具装着具53は、合流配管部43に取り付けられた設備側の構成であるといえる。すなわち、検査装置30において、治具ユニット50は、燃料タンク1側の構成であるインレット管装着具52と、設備側の構成である治具装着具53とが、逆止弁開放治具51を介して互いに連通接続された接続部をなす構成であるといえる。したがって、燃料タンク1とタンク用真空ポンプ34との間の配管経路において逆止弁開放治具51を取り付ける際には、例えば、インレット管7に予め取り付けられたインレット管装着具52と、合流配管部43に予め取り付けられた治具装着具53とのそれぞれに逆止弁開放治具51を装着することで、逆止弁開放治具51がセットされる。
以上のような構成を備えた本実施形態の治具ユニット50において、逆止弁開放治具51は、インレット管装着具52を介してインレット管7に装着されることで、ワイヤ部62により、逆止弁20の弁体21を内側から押圧し、逆止弁20を開弁状態に保持する。このように逆止弁20の弁体21に押圧作用するワイヤ部62について、詳細に説明する。
ワイヤ部62は、上記のとおり治具本体部61から前方に延出した線状の部分であって、治具本体部61から延出したフレキシブルなワイヤ本体部91と、ワイヤ本体部91の先端側に設けられワイヤ本体部91よりも剛性が高い棒状の押圧棒部92とを有する。
ワイヤ本体部91は、ワイヤ部62の先端部以外の大部分をなす線状の部分であり、ワイヤ部62を、非直線状の(湾曲した)インレット管7の管路形状に沿わせるように可撓性および弾性を有し、撓み変形する(図8、図9、二点鎖線参照)。ワイヤ本体部91を構成する部材としては、例えば金属製のワイヤロープが用いられる。具体的には、ワイヤ本体部91は、例えば、複数本の鋼線を撚より合わせた子綱を、さらに所定の芯材周りに複数本撚り合わせた鋼策により構成されている。
ワイヤ本体部91の材質は、例えば、ステンレス鋼系の材料やスチール等である。さらに、ワイヤ本体部91としては、金属製のワイヤロープに、例えば樹脂材料によるコーティング被膜を施したものであってもよい。ワイヤ本体部91の構成材としては、例えば、自転車のブレーキワイヤのインナワイヤの類が用いられる。ただし、ワイヤ本体部91の材質は、ワイヤ部62において所望の可撓性や強度が得られるものであれば、例えば樹脂等、金属以外のものであってもよい。
押圧棒部92は、ワイヤ部62の先端部をなす直線棒状の部分であり、ワイヤ本体部91の先端側に、ワイヤ部62を前方に延長させるように設けられている。押圧棒部92は、ワイヤ本体部91よりも剛性が高い部分であって、基本的には、可撓性を有するワイヤ本体部91に対して非可撓性の部分である。押圧棒部92を構成する部材としては、例えば、金属製の棒状体が用いられる。
押圧棒部92の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼系の材料やスチールやアルミニウム等である。ただし、押圧棒部92の材質は、ワイヤ部62において所望の強度(剛性)が得られるものであれば、例えば樹脂等、金属以外のものであってもよい。また、ワイヤ部62の先端部がインレット管7の内周面に接触することによる傷等を防止するため、押圧棒部92の先端部は、半球状の丸め形状部92aとなっている。
ワイヤ部62の長さは、インレット管7の上流側の端部から逆止弁20の弁体21までの経路長等に応じて適宜設定される。本実施形態では、押圧棒部92の長さL2(図10参照)は約50mmであり、この長さL2は、ワイヤ部62の治具本体部61からの延出長さL1の約1/8の長さである。ただし、ワイヤ部62の全体の長さやワイヤ本体部91と押圧棒部92との長さ比は特に限定されるものではない。
また、ワイヤ部62において、押圧棒部92の径(外径)は、ワイヤ本体部91の径(外径)よりも大きい。すなわち、図10に示すように、ワイヤ部62は、押圧棒部92の径D2がワイヤ本体部91の径D1よりも大きくなるように構成されている。
具体的には、例えば、ワイヤ本体部91の径D1は、2〜3mmであり、押圧棒部92の径D2は、3〜4mmである。そして、これらの数値範囲において、押圧棒部92の径D2がワイヤ本体部91の径D1よりも大きくなるように、ワイヤ本体部91および押圧棒部92それぞれの径寸法が適宜選定される。
以上のような構成を備えたワイヤ部62は、逆止弁開放治具51がインレット管装着具52を介してインレット管7に装着されることで、次のようにして逆止弁20に作用する。
すなわち、図6に示すように、インレット管装着具52の挿入管部材71の先端開口部から前方に延出したワイヤ部62は、可撓性を有するワイヤ本体部91の変形により、インレット管7の管路形状に対応して所定の形状に沿って適宜湾曲しながらインレット管7内を通り、先端の押圧棒部92からメッシュ体26の空間部を抜けて管接続部12側から接続部材6内に入る。ここで、ワイヤ部62は、本体筒部11において中心軸部に位置する弁体21の軸部21bとの干渉等を避ける観点から、接続部材6に対して、その中心軸部から偏心した位置に挿入される。このため、ワイヤ部62は、メッシュ体26に対しては、外枠部26aと内枠部26bとの間において外側連繋部26dにより周方向に仕切られた外周側空間部26fのいずれかを貫通するように挿入される(図4参照)。
そして、ワイヤ部62は、本体筒部11内において逆止弁20の弁体21を支持する複数の弁支持部22間を抜け、弁体21に対して、弁本体部21aの弁板部21dの後面に当接し、付勢ばね23の付勢力に抗して、弁体21を開弁方向に押圧作用する。これにより、弁体21が弁本体部21aを本体筒部11から突出させ(矢印Y1参照)、逆止弁20が開弁状態となり、タンク本体2内と燃料供給通路3内とが互いに連通した状態となる。
このようなワイヤ部62の逆止弁20に対する作用態様を踏まえ、ワイヤ部62のワイヤ本体部91および押圧棒部92それぞれの径寸法の選定の一例について説明する。
ワイヤ部62は、逆止弁20に作用するまでの過程で、上述のとおりメッシュ体26に対してその外周側の空間部分である外周側空間部26fを貫通する。そこで、外周側空間部26fの径方向の寸法(以下「メッシュ幅」という。)E1(図4参照)に基づいて、ワイヤ部62の径寸法が選定される。ここで説明するワイヤ部62の径寸法の選定例では、メッシュ幅E1を4mmとする。
図14に示すグラフは、ワイヤ部62の径(mm)と、ワイヤ部62が通過可能なメッシュ幅(mm)(の最小値)との関係の一例を表したものである。図14に示すグラフからわかるように、ワイヤ部62が通過可能なメッシュ幅は、ワイヤ部62の径に対して0.2〜0.4mm程度大きい寸法である。
ワイヤ部62において、ワイヤ本体部91が細過ぎる場合、十分な剛性が得られず、ワイヤ部62が燃料供給通路3の通路内で座屈等して引っ掛かり、弁体21に達する前に通路内で止まってしまう場合がある。こうしたワイヤ部62の引掛りが生じた場合、検査装置30による漏れ検査においてその都度設備を止めて逆止弁開放治具51を装着し直す必要がある。また、ワイヤ部62の引掛りは、燃料供給通路3の内部で生じることから、外部から目視することができない。タンク本体2内における弁体21の動作についても同様である。このため、逆止弁開放治具51をインレット管7に装着することで、ワイヤ部62が燃料供給通路3内で引っ掛かることなく、ワイヤ部62を確実に弁体21に作用させる必要がある。
そこで、図14のグラフに示すように、この選定例においては、実験の結果、ワイヤ本体部91の径D1が2.5mm以上あれば、ワイヤ部62について燃料供給通路3の通路内における引掛りを防止すべく十分な剛性を得ることができることがわかった。一方で、4mmのメッシュ幅E1に対して、ワイヤ部62を円滑に貫通させる観点からは、ワイヤ部62はなるべく細い方が好ましい。そこで、この選定例では、ワイヤ本体部91の径D1を2.5mmとした(図14、符号P1参照)。
また、押圧棒部92は弁体21に押圧作用する部分であることから、押圧棒部92についてはワイヤ本体部91よりも高い剛性が必要とされるため、押圧棒部92は、ワイヤ本体部91よりも太い部分とした。そして、この選定例では、図14のグラフより、4mmのメッシュ幅E1に対して、通過可能なワイヤ部62の径(符合Dx参照)は、約3.7mmであることから、若干余裕を見て、押圧棒部92の径D2を3.5mmとした(図14、符号P2参照)。
以上のような本実施形態に係る逆止弁開放治具51によれば、燃料タンク1のタンク本体2に接続された燃料供給通路3に逆止弁20を設けた構成において、タンク本体2に対する燃料供給通路3の接続部の構成によって逆止弁20までのアクセス経路が長く非直線的であったり、燃料供給通路3における逆止弁20の上流側の位置に通路面積を制限する通路制限部25が設けられていたりしても、逆止弁20を開放状態に保持することができる。
すなわち、本実施形態に係る燃料タンク1の漏れ検査においては、上述のとおり接続部材6にインレット管7が接続された状態で検査が行われることから、インレット管7により、逆止弁20の配設位置に対して上流側の開口部(インレット管7の上流側の開口部)から逆止弁20までの距離が長くなり、また、逆止弁20までのアクセス経路も非直線的となる。また、燃料供給通路3において、逆止弁20よりも上流側の位置に設けられたメッシュ体26により、通路面積が制限されている。そこで、本実施形態に係る逆止弁開放治具51によれば、ワイヤ部62により、インレット管7の管路形状に沿いながら、燃料供給通路3の通路面積を制限するメッシュ体26を容易に通過することができるので、逆止弁20を開弁するために弁体21に対して確実に作用することができる。
このように、本実施形態に係る逆止弁開放治具51によれば、治具先端にワイヤ部62を採用することで、インレット管7等の部品形状への追従と、経路内の障害物(メッシュ体26)の回避とが可能となり、メッシュ体26や逆止弁20の構成部材を破壊することなく、逆止弁20を開放することができる。
また、本実施形態に係る逆止弁開放治具51は、逆止弁20を開弁状態に保持する弁体押圧部として、治具本体部61から延出した線状の部分であるワイヤ部62を有する。このような構成によれば、逆止弁20までの長い管路や湾曲した管路形状に容易に対応することができ、通路制限部25の通過も容易となるので、より確実に逆止弁20を開弁状態とすることができる。
また、本実施形態に係るワイヤ部62は、ワイヤ部62の大部分をなすワイヤ本体部91と、ワイヤ本体部91の先端側に設けられた押圧棒部92とを有する。すなわち、ワイヤ部62は、その先端部に、逆止弁開放用の棒として弁体21に作用する押圧棒部92を有するとともに、インレット管7内を通過する際に内周面7aに接触しても引っ掛からない弾性力を持ったワイヤ本体部91を有し、全体としてメッシュ体26の形状をかわせる径の通線ワイヤとして機能する。このような構成によれば、ワイヤ本体部91の可撓性・弾性によってインレット管7の管路形状に柔軟に追従することができるとともに、比較的剛性が高い押圧棒部92により、弁体21を付勢ばね23の付勢力に抗して開弁方向に移動させるために十分な押圧作用を容易に得ることが可能となる。
また、本実施形態に係るワイヤ部62において、押圧棒部92は、ワイヤ本体部91よりも大きな径を有する。このような構成によれば、押圧棒部92の剛性を容易に高くすることができるので、ワイヤ部62の燃料供給通路3内における通過性を向上させることができ、逆止弁20を開弁させるための弁体21に対する押圧作用を確実に得ることができる。
特に、上述したワイヤ部62の径の選定例のように、ワイヤ本体部91および押圧棒部92の各部の径が、メッシュ体26のメッシュ幅E1に基づいて選定された寸法であることから、燃料供給通路3の管内におけるワイヤ部62の引掛りを防止し、通路制限部25において良好な通過性を得ながら、弁体21に対する押圧作用を確実に得ることができる。
また、本実施形態の逆止弁開放治具51によれば、ワイヤ部62の構成により、インレット管装着具52を介した逆止弁開放治具51のインレット管7に対する装着が完了したことが、逆止弁20が開弁状態となったことの確認となる。すなわち、例えば燃料供給通路3内でワイヤ部62が座屈したりワイヤ部62の引掛りが生じたりした場合、ワイヤ部62が妨げとなり、逆止弁開放治具51を正常にインレット管7に装着することができない状態となる。このように、本実施形態の逆止弁開放治具51によれば、外部から目視できない逆止弁20の状況を、逆止弁開放治具51の装着具合によって間接的に把握することが可能となる。
また、本実施形態の逆止弁開放治具51は、インレット管装着具52および治具装着具53とともに、燃料供給通路3と合流配管部43とを繋ぐ治具ユニット50を構成する。このような構成によれば、タンク本体2とタンク用真空ポンプ34との間の配管経路において、逆止弁開放治具51を容易かつ確実に装着することができる。また、ワイヤ部62は逆止弁開放治具51の使用回数が重なると摩耗する部分であり、交換が必要となる場合があるが、インレット管装着具52から逆止弁開放治具51を取り外すことで、容易にワイヤ部62を交換することが可能となる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る逆止弁開放治具は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態において、逆止弁20は、弁本体部21aを本体筒部11の下流側の開口部から出没させる弁体21を、本体筒部11内に設けられた弁支持部22により移動可能に支持する構成のものであるが、逆止弁20の構成は特に限定されるものではない。逆止弁としては、燃料供給通路3の内部側から押圧されることで逆止弁を開弁状態とするように移動する弁体を備える構成のものであれば、本発明は適用可能である。
また、逆止弁開放治具51が有する弁体押圧部は、上述した実施形態の線状のワイヤ部62に限定されることなく、例えば筒状の部分等の他の形状部分であってもよく、その素材も特に限定されるものではない。ただし、弁体押圧部(ワイヤ部62)の素材に関しては、耐久性や樹脂同士の摩耗による摩耗粉の落下等を考慮すると、弁体押圧部はステンレス鋼系の材料やスチール等の金属材料からなるものであることが好ましい。