JP2019044961A - 釘 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量で錆が発生せず、水や湿気等に対する形態の安定性に優れ、また、耐久性及び強度に優れた釘を提供する。【解決手段】釘10は、強化繊維とエポキシ樹脂とを含む繊維強化樹脂材を用いて得られた釘である。繊維強化樹脂材を構成するエポキシ樹脂は、熱可塑性エポキシ樹脂であるとよい。また、熱可塑性エポキシ樹脂は、反応型のエポキシ樹脂であるとよい。【選択図】図1
Description
本発明は、釘に関し、特に、強化繊維に樹脂を付与した釘に関する。
従来から、家、椅子、棚等の木造構造物を中心に、部材(木材等)同士を接合するための締結部材として釘が用いられている。釘は、一般的には、金属製であるが、竹製または木製の釘も知られている。
釘は、ネジに比べて引き抜きに対する強度(引抜強度)が小さいが、多数の釘を用いることで、2つの部材の接合部に対して大きな引抜強度を与えることができる。
しかしながら、金属製の釘の場合、大量の釘を用いて、例えば木材同士を接合して木造構造物を作製すると、木造構造物が重くなってしまう。また、金属製の釘は、持ち運びの負荷が大きく、また、結露等が発生しやすいため、接合している木材の腐食の原因となることがある。しかも、金属製の釘は、錆も発生しやすく、接合部の強度低下にもつながるおそれがある。
一方、木製または竹製の釘は、軽量で結露等の発生もないが、木または竹の素材そのものの機械的強度が小さいため、大きな力が加わる箇所では使用できない。また、木製または竹製の釘は、木または竹が腐敗して、釘そのものが継時的に消滅してしまうこともある。
そこで、軽量で錆が発生しない締結部材として、熱可塑性樹脂、具体的にはポリアミド樹脂にガラス繊維を含有させた樹脂組成物を用いた釘が知られている(特許文献1)。
しかしながら、ポリアミド樹脂を用いた釘では、仮に吸湿性を抑えたものであったとしても、やはり吸湿性が高い。このため、ポリアミド樹脂を用いた釘によって2つの部材同士を接合すると、雨等で濡れたり使用環境の湿度変化の影響を受けたりして、釘が収縮及び膨張を繰り返し、この結果、釘が緩んでいくという問題がある。しかも、ポリアミド樹脂を用いた釘では、耐久性及び強度の面で十分な効果を発揮することもできない。
本発明は、軽量で錆が発生せず、水や湿気等に対する形態の安定性に優れ、また、耐久性及び強度に優れた釘を提供することを課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明をするに至った。具体的には、本発明は、例えば、以下の構成である。
本発明に係る釘は、強化繊維とエポキシ樹脂とを含む繊維強化樹脂材を用いて成形されたものである。
さらに、本発明に係る釘では、前記エポキシ樹脂が、熱可塑性エポキシ樹脂であるとよい。
さらに、本発明に係る釘では、前記熱可塑性エポキシ樹脂が、反応型のエポキシ樹脂であるとよい。
さらに、本発明に係る釘は、前記強化繊維の束を編成した三次元繊維構造体を含むとよい。
さらに、本発明に係る釘では、前記強化繊維が、筒状の組紐または編物であるとよい。
さらに、本発明に係る釘では、短冊状の前記繊維強化樹脂材が3次元にランダムに積層されているとよい。
さらに、本発明に係る釘では、前記強化繊維の長さが、1mm超であるとよい。
さらに、本発明に係る釘では、前記釘の胴部を構成する前記強化繊維が、当該強化繊維の軸方向と前記釘の長さ方向とが並行するように配置されているとよい。
さらに、本発明に係る釘では、前記釘の繊維体積率が、20〜80%であるとよい。
本発明によれば、軽量で錆が発生せず、水や湿気等に対する形態の安定性に優れ、また、耐久性及び強度に優れた釘を実現できる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示す。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状および材料等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
本実施の形態に係る釘は、強化繊維とエポキシ樹脂とを含む繊維強化樹脂材を用いて成形されたものである。具体的には、釘は、強化繊維にエポキシ樹脂を付与した繊維強化樹脂材を用いて成形されたものである。本実施の形態における釘に用いられるエポキシ樹脂は、熱可塑性エポキシ樹脂及び熱硬化性エポキシ樹脂のいずれであってもよいが、以下で説明する通り、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
また、図1に示すように、以下の実施の形態における釘10は、頭部1、首部2、胴部3及び先端部4を有する丸くぎ(N釘)に準じたものである。図1の(a)は、実施の形態に係る釘10の上面図であり、図1の(b)は、同釘10の側面図である。
なお、本実施の形態における釘の種類は、丸くぎに限るものではなく、せっこうボード用釘、シージングボード用釘、PN釘、自動釘打ち機用釘、和釘、犬釘、目釘、コンクリート釘、または、五寸釘等の種々の釘に準じたものを用いてもよい。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る釘について説明する。
まず、実施の形態1に係る釘について説明する。
本実施の形態に係る釘は、強化繊維の束を編成した三次元繊維構造体の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸した繊維強化樹脂材を加工することにより成形されたものである。
また、釘の長さ方向が、三次元繊維構造体の長さ方向となるように、当該三次元繊維構造体が配置されている。
本実施の形態に係る釘の頭部の形状は、例えば、平頭フラット、平頭網目付き、丸頭、皿頭網目付き、半丸頭、変形頭、ケーシング頭、カップ頭などであるが、特に限定されるものではない。
また、本実施の形態における釘は、頭部、首部、胴部及び先端部を有するが、これに限定されるものではなく、少なくとも胴部及び/又は先端部を有しており、例えば、頭部の無い釘であっても良いし、首部の無い釘であっても良いし、胴部の無い釘であっても良いし、先端部の無い釘であっても良いし、頭部及び首部の無い釘であっても良いし、頭部、首部及び先端部の無い釘であっても良いし、頭部、首部及び胴部の無い釘などであっても良い。
本実施の形態に係る釘の胴部は、例えば、スムース、スクリュー、リング、バーブなどであるが、特に限定されるものではない。
また、釘の頭部の一部に凸部がある場合及び/又はスクリューやリングなどの釘の胴部の一部に凸部がある場合には、その凸部にも熱可塑性エポキシ樹脂が含まれているとよく、凸部にはさらに強化繊維が含まれているとよい。なお、凸部は、スクリューまたはリング等の凹凸によるもの限るものではなく、その他には、二重頭釘等のように胴部の一部から側方全周にフランンジ状に突出する凸部、または、胴部の側方の一部のみから側方に突起状に突出する凸部等であってもよい。なお、図1に示される釘10において、胴部3には凸部が形成されていない。
釘の頭部及び/又は胴部に存在する強化繊維は、三次元繊維構造体を構成する強化繊維であり、長繊維であるとよい。この頭部及び/又は胴部に存在する強化繊維が三次元繊維構造体を構成する強化繊維の一部であって、三次元繊維構造体を構成する強化繊維が長繊維であることより、頭部及び胴部の各々における強化繊維あるいは頭部と胴部との互いの強化繊維が交絡しながら繋がるので、頭部及び胴部のせん断強度が大きくなり、金槌にて頭部をたたいたとき及び2つの部材同士を接合したときに優れた強さを有する釘が得られる。特に、胴部に凸部が存在する場合、胴部の凸部に存在する強化繊維が三次元繊維構造体を構成する強化繊維の一部であって、三次元繊維構造体を構成する強化繊維が長繊維であることより、胴部の本体部の強化繊維と胴部の凸部の強化繊維と強化繊維とが互いに交絡しながら繋がるので、胴部のせん断強度が一層大きくなる。
また、熱可塑性エポキシ樹脂は、ナイロン樹脂等の他の樹脂に比べて含水率が低いので、釘を構成する繊維強化樹脂材に熱可塑性エポキシ樹脂を用いることにより、水に触れたり湿度が高かったりする場合の湿潤状態とその逆の乾燥状態とが繰り返されるような環境に晒されて釘が収縮と膨張を繰り返すことで釘が変形して2つの部材の接合部の接合強度が低下してしまうことを抑制できる。これにより、釘を用いて2つの部材を接合したとしても、釘が緩んで2つの部材の接合強度が低下することを抑制できる。また、含水率が低い熱可塑性エポキシ樹脂を用いることで、耐久性及び強度に優れた釘を得ることができる。
また、釘を構成する繊維強化樹脂材に熱可塑性エポキシ樹脂を用いることにより、頭部、首部、胴部及び先端部を形成する際に、繊維強化樹脂材を加熱し加圧することにより、容易に釘の形状に形成することができる。また、胴部に凸部があっても容易に釘の形状にすることができる。
しかも、繊維強化樹脂材に用いられる樹脂として反応型の熱可塑性エポキシ樹脂を用いることで、強化繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸し、また、強化繊維も熱可塑性エポキシ樹脂とともに、頭部、首部、胴部(胴部の凸部)及び先端部に移動し易くなり、耐久性及び強度に優れた釘を形成することができる。また、釘の胴部に存在する強化繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が入り込んでいるため、釘自体の強度にも優れている。
本実施の形態に係る釘の繊維体積率(Vf値)は、20〜80%であるとよい。好ましくは、釘の繊維体積率は、40%〜70%であり、さらに50〜60%であるとよい。釘の繊維体積率が前記下限値(例えば20%)を下回ると釘の頭部及び/又は胴部に凸部がある場合には当該凸部は熱可塑性エポキシ樹脂のみとなるおそれがあり、得られる釘の引張強さが低下するおそれがある。また、釘の繊維体積率が前記上限値(例えば80%)を上回ると、釘の頭部及び/又は胴部を成形する際に強化繊維が切断されるおそれがあり、この場合も、得られる釘の引張強さが低下するおそれがある。
なお、本実施の形態に係る釘を木材やせっこうボード等などの柔らかい部材の接合に用いる場合、釘の頭部及び/又は胴部に凸部がある場合には当該凸部は、強化繊維を含まずに熱可塑性エポキシ樹脂のみによって構成されていてもよい。その理由は、熱可塑性エポキシ樹脂自体が強度に優れており、さらに、熱可塑性エポキシ樹脂と強化繊維(特に炭素繊維)との接着性が強固になっているためである。これにより、木材のように接合される部材の強度がさほど強くない場合には、釘の頭部及び/又は胴部の凸部に強化繊維が含まれていない釘を用いても問題なく接合することができる。
なお、釘の繊維体積率を示すVf値は、以下の式1で求めることができる。
Vf値(%)=(W−ρ3×V)/[(ρ2−ρ3)×V]×100・・・式1
式1において、Wは釘の質量(g)、Vは釘の体積(cm3)、ρ2は、釘に用いられる強化繊維の密度(g/cm3)、ρ3は、釘に用いられる樹脂の密度(g/cm3)を表している。なお、釘に用いられる樹脂とは、繊維強化樹脂材を構成する樹脂が熱可塑性エポキシ樹脂のみである場合は、熱可塑性エポキシ樹脂のことであるが、繊維強化樹脂材を構成する樹脂が熱可塑性エポキシ樹脂以外の樹脂も含む場合は、熱可塑性エポキシ樹脂だけではなく、熱可塑性エポキシ樹脂以外の樹脂も加えた樹脂全体のことである。
本実施の形態における釘では、繊維強化樹脂材に含まれる強化繊維が、組紐状に組まれながらおおよそ釘の長さ方向に配列しているため、特に引張強さに優れている。例えば、本実施の形態における釘において、JIS Z2241に準じて測定を行ったときの引張強さは、400MPa以上であるとよく、より好ましくは450MPa以上である。引張強さの上限は、特に限定されるものではないが、1000MPa程度である。
なお、釘の長さ、太さ、及び、形状は、目的とする用途や強度に応じて、任意のものとすることができる。
また、釘の一部が他の材料によって形成されていてもよい。例えば、頭部のみ、頭部及び首部、または、胴部及び先端部などを、鉄などの鋼製としてもよい。また、鋼製の先端部の胴部側に凹部を形成し、当該凹部に繊維強化樹脂材を挿入したキャップ方式及び/又は接着剤を用いて、鋼製の先端部と繊維強化樹脂材とを接合するなどしたものであってもよい。
以下、本実施の形態における釘に用いられる強化繊維及び熱可塑性エポキシ樹脂、また、強化繊維と熱可塑性エポキシ樹脂とからなる繊維強化樹脂材等について、詳細に説明する。
<強化繊維>
まず、本実施の形態における釘に用いられる強化繊維について説明する。
まず、本実施の形態における釘に用いられる強化繊維について説明する。
強化繊維としては、無機繊維、有機繊維、または、これらを複合して用いたものが挙げられる。具体的には、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイト繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、または、ポリビニルアルコール(PVA繊維)等が挙げられる。
軽量で強度が大きいとの観点からは、強化繊維として炭素繊維を用いることが好ましい。炭素繊維は、PAN系またはピッチ系等のものを用いることができるが、特に限定されるものではない。この中でも、強度と弾性率とのバランスの観点からは、強化繊維としてPAN系の炭素繊維を用いることが好ましい。
また、強化繊維は、連続した長繊維であるとよい。この場合、高い強度の観点では、長繊維である強化繊維の長さは、釘の長さや太さにもよるが、釘の全長と同等もしくはそれ以上であるとよい。なお、強化繊維は、少なくとも釘の頭部の高さ及び/又は胴部の太さよりも長いとよい。
強化繊維は、複数束ねたものがよい。作業性や得られる釘の強度の観点からは、強化繊維の単繊維を100本以上束ねたものが好ましく、より好ましくは、強化繊維の単繊維を1000本以上束ねるとよい。強化繊維の単繊維の本数の上限は、特に限定されるものではないが、目的とする釘の大きさ(太さや長さなど)や求められる引張強さなどの強度に応じて適宜選択すればよい。例えば、強化繊維の単繊維を6000万本束ねたものなどであってもよい。
具体的には、強化繊維の束として、例えば炭素繊維メーカーから供給される炭素繊維の単繊維を、1000本(1K)束ねた製品、3000本(3K)束ねた製品、6000本(6K)束ねた製品、12000本(12K)束ねた製品、24000本(24K)束ねた製品、40000本(40K)束ねた製品、50000本(50K)束ねた製品、または、60000本(60K)束ねた製品等を用いることができる。また、強化繊維の束として、東レ株式会社製のトレカ(登録商標)糸(T700SC−24000等)の炭素繊維の束、三菱ケミカル株式会社製のパイロフィル(登録商標)の炭素繊維の束、東邦テナックス株式会社(2018年4月1日より帝人株式会社に統合)のテナックス(登録商標)の炭素繊維の束、または、さらにこれらのものを複数本束ねたものを用いることができる。また、これらの炭素繊維の束は、開繊処理等を行わずにドラム等に巻かれた状態の炭素繊維の束をそのまま用いることができるので、生産性に優れている。なお、炭素繊維の束は、開繊処理を行ったものであってもよい。また、炭素繊維の束は、無撚糸、有撚糸、または、解燃糸であってもよいが、熱可塑性エポキシ樹脂を強化繊維の束の内部にまで入り込ませるとの観点からは、無撚糸であるとよい。
<熱可塑性エポキシ樹脂>
次に、本実施の形態における釘に用いられる熱可塑性エポキシ樹脂について説明する。
次に、本実施の形態における釘に用いられる熱可塑性エポキシ樹脂について説明する。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、好ましくは、硬化剤や触媒、重合開始剤、重合促進剤等の添加剤が添加されていたり加熱したりすることにより硬化等の反応が開始または反応が促進等されて硬化する反応型樹脂であるとよく、さらに、硬化した後も熱可塑性を有するものであるとよい。したがって、熱可塑性エポキシ樹脂としては、硬化後も加熱及び/又は加圧処理により形態を変化させることができるように、つまり釘が成形された後も加熱及び/又は加圧処理により形態を変化させることができるように、分子構造が直鎖状のものを用いることが好ましい。
このような熱可塑性エポキシ樹脂を用いることにより、強化繊維と熱可塑性エポキシ樹脂とからなる繊維強化樹脂材を作製した後は、この繊維強化樹脂材を用いて任意の時期に任意の形状の釘を製造することができる。これにより、釘の完成品としての在庫リスクを低減することができる。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲で、熱可塑性エポキシ樹脂に他の熱可塑性樹脂を配合したものを用いて、繊維強化樹脂材を作製してもよい。
このような反応型の熱可塑性エポキシ樹脂は、硬化剤で硬化させる前は、常温で液状であったり、または、溶剤により溶解あるいは分散させた状態であったりするので、繊維強化樹脂材を作製する際に、熱可塑性エポキシ樹脂を強化繊維の束の内部にまで容易に含浸させることができる。これにより、繊維強化樹脂材においては強化繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が存在しているため、強化繊維と熱可塑性エポキシ樹脂とが十分に絡み合った状態(例えば、接触し合った又は強固に密着した状態)になっている。このため、本実施の形態における釘は、優れた強度を有する。特に強化繊維として炭素繊維を用い、エポキシ樹脂として反応型の熱可塑性エポキシ樹脂を用いたものは、炭素繊維と熱可塑性エポキシ樹脂との親和性が優れるため、炭素繊維と熱可塑性エポキシ樹脂との界面での接着性が高く、また、エポキシ樹脂が炭素繊維の束の内部にまで入り込み、より優れた強度を有する。
また、反応型の熱可塑性エポキシ樹脂を用いた繊維強化樹脂材は、加熱及び/又は加圧処理時に熱可塑性エポキシ樹脂が移動し易くなるとともに強化繊維も移動し易くなるので、所定の形状の釘、例えば、頭部及び/又は胴部に凹部や凸部が存在する場合、凹部や凸部などを容易に形成することができる。つまり、成形性に優れる。
また、反応型の熱可塑性エポキシ樹脂をはじめとして反応型の熱可塑性樹脂は、加熱溶融させて使用する未反応型の熱可塑性樹脂に比べて、反応前の熱可塑性樹脂の分子量が小さく流動性が高く、反応後に例えば数平均分子量で1万以上ないし3万以上に高分子化させたり架橋の状態を調整したりすることが可能であり、また、強度、可撓性または熱変形性の調整も可能である。
一方、熱により溶融して用いられる熱可塑性樹脂は、一般的には、薄い炭素繊維の束を用いた織物であっても織物内部への含浸が容易ではなく、特に、本実施の形態のように強化繊維が密に存在する三次元繊維構造体に付与する場合には、三次元繊維構造体の表面近辺のみに熱可塑性樹脂が存在するに留まる。これに対して、本実施の形態のように、反応型の熱可塑性エポキシ樹脂を用いることにより、強化繊維が密に存在する三次元繊維構造体であっても、三次元繊維構造体の内部の奥にまで流動性に優れた低分子量の熱可塑性エポキシ樹脂を含浸させた後で、エポキシ樹脂を反応させて高分子化することができるため、得られる釘では、釘の内部、さらに、釘の内部深くにある強化繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂を含浸させることができる。
なお、熱可塑性樹脂は、反応後に化学構造が変わる場合もあり、例えば、熱可塑性エポキシ樹脂は、反応後にフェノキシ樹脂になる。つまり、本実施の形態における反応型の熱可塑性エポキシ樹脂については、反応後にフェノキシ樹脂になるものも含む。
また、本発明実施の目的を逸脱しない範囲で、熱可塑性エポキシ樹脂に、熱硬化性樹脂が配合されていてもよい。
なお、釘に用いられる樹脂が熱硬化性樹脂のみで構成されている場合、樹脂を硬化させた後は、頭部等を成形する際に加熱による成形ができないため、削り出しが必要となる。このため、製造が煩雑になるばかりか、炭素繊維が切断され、得られる釘の強度が十分ではなくなってしまう。また、強化繊維に付与した熱硬化性樹脂を硬化させることなく保管しておいて任意の時期に釘に成形する場合、熱硬化性樹脂を硬化させるまでの間、繊維強化樹脂材を冷凍または冷蔵保存する必要があり、保管の負担が大きくなってしまう。
<三次元繊維構造体>
次に、本実施の形態における釘に用いられる強化繊維の三次元繊維構造体について説明する。
次に、本実施の形態における釘に用いられる強化繊維の三次元繊維構造体について説明する。
本実施の形態における強化繊維の三次元繊維構造体とは、強化繊維の束を複数本、撚り合せたり編んだ、組んだりしたもの、あるいは、紐状の組紐や編物にしたもの等をいう。三次元繊維構造体は、好ましくは、紐状の組紐や編物等であって中央部が空洞でないもの、つまり構造体が筒状ではなくて中実のものであることが特に好ましい。一例として、全ての強化繊維の束が斜向方向に配向され、かつ、強化繊維の束同志が交絡しながら立体形状に編成された三次元編組構造体、あるいは、糸束の配向方向が全て斜向方向をなす糸束だけでなく、斜向成分の強化繊維の束と編組軸方向へ配向された強化繊維の束とが混在されているような三次元編組構造体等が挙げられる。なお、特開平1−259932号公報、特開昭62−250258号公報、米国特許第4,312,261号明細書には、三次元繊維構造体についての形状や製造方法が記載されており、これらの文献に開示された三次元繊維構造体を適宜用いることができる。
また、筒状の三次元繊維構造体を用いてもよいが、この場合、筒部の中に他の強化繊維または強化繊維複合材を配置するとよい。これにより、筒状の三次元繊維構造体であっても、高い強度を有する強化繊維を得ることができる。
筒状の三次元繊維構造体については、複数の強化繊維の束を用いて製紐機を利用することにより、筒状の組紐からなる三次元繊維構造体を製造することができる。また、1つまたは複数の強化繊維の束を用いて丸編機等を利用することにより、筒状の編紐からなる三次元繊維構造体を製造することができる。また、このような製紐時または編立時において、他の強化繊維または強化繊維複合材を芯とし、その周りを強化繊維の束で組み上げまたは編立してもよいし、筒状の組紐や編物とした後に、その筒状の中空部に、他の強化繊維または強化繊維複合材を挿入してもよい。
また、本実施の形態における三次元繊維構造体の長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、丸断面、楕円断面、三角断面、四角断面、五角断面または六角断面等の多角形であるが、特に限定されるものではない。
また、三次元繊維構造体の前記断面の径(太さ)については、目的とする釘の大きさに合わせて任意に設定すればよい。また、三次元繊維構造体の長さは、特に限定されるものではない。当該繊維構造体を用いて得られる釘の場合は、引張強さの観点より、当該三次元繊維構造体の長さは、当該釘の長さとほぼ同程度であることが好ましい。
<繊維強化樹脂材A>
次に、本実施の形態における釘を構成する繊維強化樹脂材について説明する。
次に、本実施の形態における釘を構成する繊維強化樹脂材について説明する。
本実施の形態における繊維強化樹脂材は、上記の強化繊維の三次元繊維構造体の内部にまで、また、上記の三次元繊維構造体を構成する強化繊維の束の中まで、熱可塑性エポキシ樹脂を含浸させて得られたものである。この場合、強化繊維の束を構成する1本1本の繊維の間にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸していることが好ましい。
繊維強化樹脂材の形状は、棒状であり、長さ方向に垂直な断面の形状は、例えば、丸断面、楕円断面、三角断面、四角断面、五角断面または六角断面等の多角形であるが、特に限定されるものではない。
また、繊維強化樹脂材の前記断面の径(太さ)については、目的とする釘の大きさに合わせて任意に設定すればよい。また、繊維強化樹脂材の長さは、特に限定されるものではない。引張強さの観点より、当該繊維強化樹脂材の長さは、成形される釘の長さとほぼ同程度であることが好ましい。また、当該繊維強化樹脂材の長さと釘の長さとがほぼ同程度である場合、当該繊維強化樹脂材の長さに比べ当該繊維強化樹脂材を構成する強化繊維の長さ及び強化繊維の束の長さは長くなる。
<釘の製造方法>
次に、本実施の形態に係る釘の製造方法の一例について説明する。なお、本実施の形態に係る釘の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
次に、本実施の形態に係る釘の製造方法の一例について説明する。なお、本実施の形態に係る釘の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
本実施の形態に係る釘を製造する際、まず、強化繊維の三次元繊維構造体を準備する。三次元繊維構造体の製造方法は、前記の通りである。
次に、三次元繊維構造体に対して熱可塑性エポキシ樹脂を付与することで、三次元繊維構造体に熱可塑性エポキシ樹脂を含浸させる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂溶液を用いて、三次元繊維構造体に熱可塑性エポキシ樹脂を含浸させる。
熱可塑性エポキシ樹脂溶液は、反応型の熱可塑性エポキシ樹脂と、当該熱可塑性エポキシ樹脂を溶解または分散するための溶剤と、硬化剤とを少なくとも含んでいるとよい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂溶液とは、溶剤に溶質が完全に溶解した溶液だけではなく、エマルジョンやディスパージョンであってもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂溶液に含まれる溶剤としては、水、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、セルソルブ、または、アノン等が挙げられる。
また、熱可塑性エポキシ樹脂溶液に含まれる硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、ケティミン、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、イミダゾール、3級アミンなどのアミン系化合物、リン酸化合物、酸無水物系化合物、メルカプタン系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、または、ルイス酸錯化合物等が挙げられる。
また、熱可塑性エポキシ樹脂溶液には、その他に、触媒、重合開始剤、重合促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、増粘剤、乳化剤、分散剤等の添加剤が、本発明の目的を逸脱しない範囲で添加されていてもよい。
本実施の形態において、熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度は、5〜1000mPa・sであるとよい。熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度が5mPa・s以上であれば、三次元繊維構造体に十分な量の熱可塑性エポキシ樹脂を容易に付与することができる。また、熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度は、三次元繊維構造体への熱可塑性エポキシ樹脂の付与量の観点から、好ましくは、10mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上であるとよい。また、熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度が1000mP・s以下であれば、三次元繊維構造体を構成する強化繊維(例えば炭素繊維)の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂を容易に浸透させることができる。また、熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度は、より好ましくは500mPa・s以下、さらには200mPa・s以下であるとよい。
三次元繊維構造体の熱可塑性エポキシ樹脂の付与方法としては、熱可塑性エポキシ樹脂溶液に三次元繊維構造体を浸漬させるディップ法、浸漬した後にマングル等で絞るディップニップ法、熱可塑性エポキシ樹脂溶液をキスロールやグラビアロール等に付着させて当該キスロール等から三次元繊維構造体に熱可塑性エポキシ樹脂を転写する転写法、または、霧状の熱可塑性エポキシ樹脂溶液を強化繊維の束に付与するスプレー法等が挙げられる。また、ディップ法、転写法、スプレー法等では、熱可塑性エポキシ樹脂溶液が付着した三次元繊維構造体を、ダイスやロール等と接触させることにより三次元繊維構造体および炭素繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂を押し込んだり、余分な熱可塑性エポキシ樹脂を除去したりすることで、三次元繊維構造体への熱可塑性エポキシ樹脂の付与量を調整することができる。
また、釘が上述した好ましいVf値となるように、三次元繊維構造体への熱可塑性エポキシ樹脂溶液の付与量を調整したり、溶剤の配合比によって熱可塑性エポキシ樹脂溶液中の熱可塑性エポキシ樹脂の付与量を調整したりするとよい。
本実施の形態では、三次元繊維構造体を構成する強化繊維として炭素繊維の束を用い、また、比較的に粘度が低い熱可塑性エポキシ樹脂溶液を用いているため、炭素繊維の束の内部の奥にまで熱可塑性エポキシ樹脂を浸透させることができる。
三次元繊維構造体に熱可塑性エポキシ樹脂を付与した後は、乾燥及び/又は熱処理を行うとよい。乾燥と熱処理とは同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。なお、繊維強化樹脂材を得る段階においては、熱可塑性エポキシ樹脂を完全に反応させてしまって繊維強化樹脂材として完成させてもよいが、ある程度で熱可塑性エポキシ樹脂の反応が止まった(もしくは反応速度が低下した)状態にとどめて、これを繊維強化樹脂材とし、釘に成形するときに、あるいは、成形した後に、熱可塑性エポキシ樹脂を完全に反応させてもよい。
三次元繊維構造体に付与した熱可塑性エポキシ樹脂を乾燥させるときの温度または熱処理するときの温度は、熱可塑性エポキシ樹脂、硬化剤または溶剤にもよるが、乾燥の場合は40〜120℃で1分〜1時間程度行うことがよく、熱処理の場合は120℃〜250℃で1分から1時間程度行うとよい。より好ましくは、乾燥は、50〜100℃で10分〜30分で行うとよく、熱処理は、120℃〜180℃で3分〜40分で行うとよい。このような条件の範囲は、得られる繊維強化樹脂材の品位及び生産性の観点から好ましい。
このようにして、紐状であった三次元繊維構造体に熱可塑性エポキシ樹脂が含浸した棒状の繊維強化樹脂材を得ることができる。
次に、製造対象の釘の形状の型を用いて、繊維強化樹脂材を加熱及び/又は加圧し、釘を形成する。その後、冷却させた後、型(金型)から取り出して不要部分を切断し、バリ等が生じた場合にはバリ等を取り除くことで、製造対象とする釘を得ることができる。なお、釘の先端部については、型から取り出した後に先端部の一部を切断したり削ったりなどして成形してもよい。
繊維強化樹脂材を加熱及び加圧する方法としては、金型プレス法、オートクレーブ法、加熱・冷間プレス法等が挙げられる。また、これらの方法とインサート成形法等とを組みわせてもよい。
繊維強化樹脂材の加熱時の温度は例えば150〜400℃程度である。また、繊維強化樹脂材の加圧時の圧力は例えば1〜500MPa程度であり、加圧時間は例えば1分〜24時間程度である。なお、繊維強化樹脂材を加圧する際は、真空状態で加圧するとよい。また、加熱及び/又は加圧する前に予備加熱を行ってもよい。
また、釘の先端部が狭くなるような形状の板状の金型2枚を加熱して、その2枚の板状の金型の間に棒状の繊維強化樹脂材を挟んで加圧しながら2枚の板状の金型の相対位置をずらして棒状の繊維強化樹脂材を転がすことにより、釘を形成することも可能である。生産性の観点からは、このような製造方法を用いることが好ましい。
また、繊維強化樹脂材を釘の形状の型で成形する前に、正確に成形できるように、一度、繊維強化樹脂材を加熱及び/又は加圧する等して目的とする製造対象の釘の大きさに近い円柱状等の形状に予備成形してもよい。また、この加熱及び/又は加圧する前に予備加熱を行ってもよい。
また、三次元繊維構造体に熱可塑性エポキシ樹脂溶液を付与した直後の熱処理時に釘形状が形成された金型を用いて加圧も同時に行い、三次元繊維構造体を釘に成形してもよい。
本実施の形態における釘は、引張強さ等の強度に優れ、また、湿潤状態と乾燥状態が繰り返される環境であっても形態の安定性や耐久性に優れている。これにより、住宅や家具、橋等など、木材、せっこうボードまたはコンクリート等の種々の部材を接合する際に、金属製の釘及び竹製の釘等に代えて、本実施の形態における釘を用いることが可能である。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る釘について説明する。
次に、実施の形態2に係る釘について説明する。
本実施の形態に係る釘は、強化繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸した短冊状の繊維強化樹脂材を積層させることで形成されたものである。この場合、当該繊維強化樹脂材を構成する強化繊維の束は3次元にランダムに積層されていてもよいし、釘の長さ方向、幅方向又は周方向などの一つの方向あるいは複数の方向に方向性を持たせて積層されていても良いし、3次元にランダムな状態と方向性を持たせた状態とが組み合わされた状態で積層されていてもよい。
また、本実施の形態に係る釘では、上記実施の形態1に係る釘と同様に、釘の頭部の形状は、平頭フラット、平頭網目付き、丸頭、皿頭網目付き、半丸頭、変形頭、ケーシング頭、カップ頭などであるが、特に限定されるものではない。
なお、本実施の形態における釘は、実施の形態1と同様に、頭部、首部、胴部及び先端部を有するが、これに限定されるものではなく、少なくとも胴部及び/又は先端部を有する。したがって、本実施の形態における釘は、実施の形態1と同様に、頭部の無い釘であっても良いし、首部の無い釘であっても良いし、胴部の無い釘であっても良いし、先端部の無い釘であっても良いし、頭部及び首部の無い釘であっても良いし、頭部、首部及び先端部の無い釘であっても良いし、頭部、首部及び胴部の無い釘などであっても良い。
また、本実施の形態の釘の胴部は、上記実施の形態1に係る釘と同様に、スムース、スクリュー、リング、バーブなどであるが、特に限定されるものではない。
なお、釘の頭部及び/又はスクリューなどのように胴部の表面に凸部がある場合には、凸部にも熱可塑性エポキシ樹脂が含まれているとよく、凸部にはさらに強化繊維が含まれているとよい。
釘の頭部及び/又は胴部に存在する強化繊維は、短冊状の繊維強化樹脂材に含まれている強化繊維である。このように、頭部及び/又は胴部に存在する強化繊維が短冊状の強化繊維の束を構成するものであり、また、好ましい形態では短冊状の繊維強化樹脂材を構成する強化繊維の束が繊維強化樹脂材中で3次元にランダムに積層されていることで、頭部及び胴部の各々における強化繊維あるいは頭部と胴部との互いの強化繊維が交絡しながら複合されるので、優れた靱性を有するとともに、頭部及び胴部のせん断強度にも優れている。これにより、優れた引張強さを有する釘を得ることができる。特に、胴部に凸部が存在する場合、胴部の凸部に存在する強化繊維が短冊状の強化繊維の束を構成するものであって、短冊状の繊維強化樹脂材が繊維強化樹脂材中で3次元にランダムに積層されていることで、釘の胴部の本体部の強化繊維と胴部の凸部の強化繊維とが交絡しながら複合されるので、より靱性が向上し、胴部のせん断強度が一層向上する。
また、本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、釘を構成する繊維強化樹脂材に熱可塑性エポキシ樹脂が用いられているので、湿潤状態と乾燥状態とが繰り返されるような環境であっても釘が変形することを抑制できる。これにより、釘を用いて2つの部材を接合したとしても、釘が緩んで2つの部材の接合強度が低下することを抑えることができる。また、耐久性及び強度に優れた釘を得ることができる。
また、釘に用いられている繊維強化樹脂材に熱可塑性エポキシ樹脂を用いていることにより、釘を形成する際に、繊維強化樹脂材を加熱し加圧することにより、容易に釘の形状に形成することができる。
しかも、繊維強化樹脂材の強化繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸しているため、繊維強化樹脂材の加熱及び/又は加圧時に熱可塑性エポキシ樹脂とともに強化繊維も頭部及び胴部の凸部に移動し易くなる。
また、釘の胴部の本体部に存在する強化繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が入り込んでいるため、繊維強化樹脂材の加熱/加圧時に熱可塑性エポキシ樹脂とともに強化繊維も頭部及び胴部の凸部に移動し易くなり、また、釘自体の強度にも優れている。
このような釘の繊維体積率(Vf値)は、20〜80%であるとよい。好ましくは、釘の繊維体積率は、40%〜70%であり、より好ましくは50〜60%である。釘の繊維体積率が前記下限値(例えば20%)を下回ると頭部や胴部に凸部がある場合には当該凸部が熱可塑性エポキシ樹脂のみとなるおそれがあり、得られる釘の引張強さが低下するおそれがある。また、釘の繊維体積率が前記上限値(例えば80%)を上回ると、頭部や胴部を成形する際に、頭部や胴部の強化繊維が切断されるおそれがあり、この場合も、得られる釘の引張強さが低下するおそれがある。
本実施の形態における釘も、実施の形態1と同様に引張強さに優れており、金型を用いたプレス法で形成された釘では、引張強さは、150MPa以上であるとよく、より好ましくは200MPa以上である。また、射出成形法やトランスファー成形法などで製造された釘では、引張強さは、80Mpa以上であるとよく、より好ましくは100MPa以上である。射出成形法やトランスファー成形法などで製造された釘の引張強さを向上させる場合には、インサート成形法も組み合わせるとよい。例えば、上記実施の形態1の三次元繊維構造体(中実状や筒状)、繊維強化樹脂材A及び本実施の形態の形態に係る短冊状の繊維強化樹脂材の中で、型の幅よりも細いものであって、型の長さとほぼ同等の線状や棒状等の繊維強化樹脂材(少なくとも射出成型法やトランスファー成形法で注入される熱可塑性樹脂に含まれる強化繊維の長さよりも長いもの)の繊維軸方向を釘の長さ方向にあわせて型に配置した後、射出成型用又はトランスファー成形用の樹脂を型に注入する方法が挙げられる。なお、インサート成形法において、筒状の三次元繊維構造物を型に配置した場合には、当該筒の中に射出成形用又はトランスファー成形用の樹脂を注入してもよい。また、釘を木材を接合するために使用する場合、釘の引張強さは80MPa以上であればよい。なお、釘の引張強さの上限は、用途によって定めればよいが、例えば500MPa程度である。また、インサート成形法と組みわせて釘を製造した場合には、釘の引張強さの上限は1000MPa程度である。
また、釘の頭部及び胴部の凹部や凸部について、頭部の高さ、頭部の大きさ、頭部の形状、または、胴部の凹部や凸部の高さ(低さ)、凸部や凹部のピッチ、長さ、および、太さは、目的とする用途や強度に応じて、任意のものとすることができる。
<短冊状の繊維強化樹脂材>
ここで、本実施の形態における釘を作製する際に用いられる短冊状の繊維強化樹脂材について説明する。
ここで、本実施の形態における釘を作製する際に用いられる短冊状の繊維強化樹脂材について説明する。
本実施の形態における短冊状の繊維強化樹脂材は、一方向に配列された強化繊維の束に、熱可塑性エポキシ樹脂が含浸されたものである。具体的には、強化繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸されている。
短冊状の繊維強化樹脂材の形状は、長尺矩形で薄片状のいわゆる短冊の形状に限るものではなく、一の方向(長さ方向となる)に長く、一の方向と異なる他の方向(幅方向及び厚み方向)に短い長尺状(棒状)のものを含み、また、このような長尺状のものに限らずに、長さ方向の長さと幅方向及び/又は厚み方向の長さとが同じものも含み、さらには、このような形状のものであってかつ厚さが部分的に異なるものも含む。一例として、短冊状の繊維強化樹脂材の形状は、いわゆる短冊状、円柱状、角柱状、チップ状、線状、針状または、座布団状等であるが、これに限るものではない。
また、短冊状の繊維強化樹脂材の長さと繊維強化樹脂材に含まれる強化繊維の長さとは略同一であるとよい。
短冊状の繊維強化樹脂材及び強化繊維の長さは、製造される釘の大きさによって長さの上限がほぼ決定されるが、一例として、1mm超、500mm以下程度である。短冊状の繊維強化樹脂材及び強化繊維の長さは、5mm以上であるとよく、より好ましくは10mm以上である。繊維強化樹脂材及び強化繊維の長さが1mm未満度であると、釘の頭部及び/又は胴部に凸部がある場合には当該凸部に含まれる強化繊維が釘の胴部の本体部に存在する強化繊維と絡むことができず、得られる釘の頭部及び/又は胴部の凸部の強度が小さくなるおそれがある。
<繊維強化樹脂材B>
次に、本実施の形態における釘を構成する繊維強化樹脂材について説明する。
次に、本実施の形態における釘を構成する繊維強化樹脂材について説明する。
本実施の形態における繊維強化樹脂材は、上記の短冊状の繊維強化樹脂材を積層させることで形成されたものである。この場合、短冊状の繊維強化樹脂材を構成する強化繊維の束は、3次元にランダムに積層されていてもよいし、釘の長さ方向、幅方向、周方向などの一つの方向あるいは複数の方向に方向性を持たせて積層されていてもよいし、3次元にランダムな状態と方向性を持たせた状態とが組み合わされた状態で積層されていてもよい。
ここで、短冊状の繊維強化樹脂材を構成する強化繊維の束が3次元にランダムに積層しているとは、複数本の強化繊維を一方向に配列することにより得られた短冊状の強化繊維の束が複数、各束の繊維軸方向がランダムに配置され、かつ、当該複数の強化繊維の束が重なり合うように積層されている状態のものをいい、より具体的には、複数の短冊状の強化繊維の束が、各束の各側面(繊維強化樹脂材が円柱状の場合も便宜的に側面という。)において互いの束の繊維軸方向がランダムとなるように部分的に重なり合うように、かつ、各束が釘の長さ方向に対してランダムに少なくとも僅かに傾斜して相互に折り重なって積層されている状態のものをいう。
このように、強化繊維の束が3次元にランダムに積層している短冊状の繊維強化樹脂材に含まれる当初一方向に配列された強化繊維の束やこれを構成する強化繊維は、曲がっていたり蛇行したり広がったりしていてもよい。特に、加熱及び/又は加圧されて形成された釘では、成形体の凹凸形状、強化繊維及びその束同士の交絡によって強化繊維そのものまたは強化繊維の束が曲がったり蛇行したりする形状のものが存在する。また、短冊状の強化繊維の束が3次元にランダムに積層されたもの、という概念には、このように強化繊維や強化繊維の束が加圧等によって曲がったり蛇行したり広がったりして変形した状態のものも含まれる。
なお、前記の状態であれば、釘の長さ方向に対して、短冊状の繊維強化樹脂材を構成する強化繊維の長さ方向の多くが、結果としてほぼ同じ方向になった場合でも3次元にランダムに積層しているという概念に含まれる。
また、短冊状の繊維強化樹脂材が、長さ方向、幅方向、周方向などに方向性を持たせて積層されているとは、複数本の強化繊維を一方向に配列することにより得られた短冊状の強化繊維の束が複数、その束を構成する強化繊維の繊維軸方向が同一方向にそろって積層されており、その繊維軸方向が、得られる釘の長さ方向、幅方向、周方向など特定の方向にあるものをいう。
例えば、一方向に長い釘であれば、その釘の長さ方向と短冊状の繊維強化樹脂材を構成する(短冊状の強化繊維の束を構成する)強化繊維の軸方向を合わせて配置すれば、得られる釘はその長さ方向に対する引張強さが向上する。この場合、強化繊維の長さは、釘の長さとほぼ同等のものが引張強さ向上の観点からは好ましい。また、釘の長さよりも短い短冊状の繊維強化樹脂材を用いる場合には、釘の引張り強さを向上させるとの観点から、強化繊維の繊維軸方向をそろえつつ、強化繊維の束同士が部分的に重なり合うように配置することが好ましい。
また、釘の長さ方向と短冊状の繊維強化樹脂材を構成する(短冊状の強化繊維の束を構成する)強化繊維の軸方向とがほぼ垂直交わるように配置すれば、得られる釘の引張強さは低下するおそれがある。
また、釘の胴部の周方向に沿うように、短冊状の繊維強化樹脂材を構成する(短冊状の強化繊維の束を構成する)強化繊維の繊維軸方向を合わせ、かつ、より好ましくは繊維軸方向に部分的に強化繊維が重なるように配置すれば、得られる釘の割れに対する強度が向上する。
また、複数の方向に方向性を持たせた状態を組み合わせて積層されているとは、釘の長さ方向と、短冊状の繊維強化樹脂材を構成する(短冊状の強化繊維の束を構成する)強化繊維の軸方向とを合わせて配置すると共にその長さ方向と短冊状の繊維強化樹脂材を構成する(短冊状の強化繊維の束を構成する)強化繊維の軸方向とが交わるように配置するものなどが挙げられる。このような構成とすることにより、得られる成形体の複数の方向や特定の部分の強度を向上させることができる。
また、3次元にランダムな状態と方向性を持たせた状態とを組み合わせるなどして積層されているとは、上記の短冊状の強化繊維の束が3次元にランダムに積層している状態と、長さ方向、幅方向、周方向などに方向性を持たせて積層している状態、また、複数の方向に方向性を持たせた状態とを組み合わせて積層されている状態が、釘の中で混在してものをいう。このような構成とすることにより、釘の全体的な強度が優れている上に、特定の部分の強度を補強することが可能となる。
本実施の形態で用いられる熱可塑性エポキシ樹脂および強化繊維については、上記実施の形態1で用いられる熱可塑性エポキシ樹脂および強化繊維と同様である。
<釘の製造方法>
次に、本実施の形態に係る釘の製造方法の一例について説明する。なお、本実施の形態に係る釘の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
次に、本実施の形態に係る釘の製造方法の一例について説明する。なお、本実施の形態に係る釘の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
本実施の形態に係る釘を製造する際、まず、短冊状の繊維強化樹脂材を準備する。
短冊状の繊維強化樹脂材は、次のようにして作製することができる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂溶液を用いて強化繊維の束に熱可塑性エポキシ樹脂を付与することで強化繊維の束に熱可塑性エポキシ樹脂を含浸させ、得られた繊維強化樹脂材を任意の長さにカットすることで短冊状の繊維強化樹脂材を得ることができる。なお、熱可塑性エポキシ樹脂溶液やその付与方法等は、実施の形態1と同様である。
次に、製造対象の釘の形状の型の上に短冊状の繊維強化樹脂材をランダムに積層し、加熱及び/又は加圧し、釘を形成する。その後、冷却させた後、型から取り出し不要部分を切断し、バリ等が生じた場合にはバリ等を取り除くことで、製造対象の釘を得ることができる。なお、釘の先端部については、型から取り出した後に先端部の一部を切断したり削ったりなどして成形してもよい。また、加熱及び/又は加圧する前に予備加熱を行ってもよい。
また、短冊状の繊維強化樹脂材を釘の形状の型で成形する前に、頭部及び/又は胴部の凹部や凸部が正確に成形できるように、一度、繊維強化樹脂材を加熱及び/又は加圧する等して円柱状等の形状に予備成形してもよい。また、加熱及び/又は加圧する前に予備加熱を行ってもよい。
短冊状の繊維強化樹脂材を加熱及び加圧する方法としては、実施の形態1と同様に、金型プレス法、オートクレーブ法、加熱・冷間プレス法等が挙げられる。
繊維強化樹脂材の加熱時の温度は例えば150〜400℃程度である。また、繊維強化樹脂材の加圧時の圧力は例えば1〜500MPa程度であり、加圧時間は例えば1分〜24時間程度である。なお、繊維強化樹脂材を加圧する際は、真空状態で加圧するとよい。
また、釘の先端部が狭くなるような形状の板状の金型2枚を加熱して、その2枚の板状の金型の間に棒状の繊維強化樹脂材を挟んで加圧しながら2枚の板状の金型の相対位置をずらして棒状の繊維強化樹脂材を転がすことにより、釘を形成することも可能である。この場合は、短冊状の繊維強化樹脂材を円柱状等に予備成形したものを用いるとよい。
また、短冊状の繊維強化樹脂材を加熱及び加圧するのではなく、他の製造方法として、射出成形法、トランスファー成形法やこれらにインサート成形法を組み合わせた方法を用いて釘を成形してもよい。射出成形法等を用いる場合には、短冊状の繊維強化樹脂材を射出成形機等に投入し、加熱して短冊状の繊維強化樹脂材を溶融し、型に射出等することで、釘を製造することができる。射出成形法を用いて釘を製造する場合には、釘のVf値は、10%〜60%であるとよく、より好ましくは20%〜50%である。トランスファー成形法を用いて釘を製造する場合には、釘のVf値は、10%〜80%であるとよく、より好ましくは30%〜70%である。
釘のVf値が上記下限値(例えば10%)よりも小さいと、得られる釘の強度が小さくなる。一方、釘のVf値が上記上限値(例えば60%)を超えると、射出成形機に投入された短冊状の繊維強化樹脂材に含まれる強化繊維が切断され、得られる釘の強度が小さくなるおそれがある。トランスファー成形機では、上記上限値(例えば80%)を超えるとトランスファー成形機内で詰まりが発生するおそれがある。
また、射出成形法を用いる場合、短冊状の繊維強化樹脂材(強化繊維の束)の長さは、1mm超20mm以下程度がよく、より好ましくは3mm以上15mm以下である。短冊状の繊維強化樹脂材(強化繊維の束)の長さが上記下限値(例えば1mm)よりも短いと、得られる釘の強度が小さくなるおそれがある。一方、短冊状の繊維強化樹脂材(強化繊維の束)の長さが上記上限値(例えば20mm)を超えると、射出成形機の中で、詰まりが発生したり、短冊状の繊維強化樹脂材に含まれる強化繊維が射出成形機の中で切断されたりするおそれがある。また、トランスファー成形法を用いる場合には、短冊状の繊維強化樹脂材(強化繊維の束)の長さは特に限定されるものではなく、射出成型法よりも長いものを用いることができる。トランスファー成形装置のプランジャーの大きさにもよるが、短冊状の繊維強化樹脂材(強化繊維の束)の長さの上限は100mm、200mm、また、それ以上であってもよい。なお、短冊状の繊維強化樹脂材(強化繊維の束)の長さの下限は、射出成型法と同様である。
本実施の形態に係る短冊状の繊維強化樹脂材を用いることで、様々な形状の釘を製造することが可能である。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る釘について説明する。
次に、実施の形態3に係る釘について説明する。
本実施の形態に係る釘は、上記実施の形態2において、特に、一方向に配列した炭素繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸した繊維強化樹脂材を加工することにより成形されたものであり、かつ釘の胴部を構成する炭素繊維が、当該強化繊維の軸方向と前記釘の長さ方向とが並行するように配置されたものである。そのため、本実施の形態に係る釘は、引張強さ及び生産性に優れ、炭素繊維複合材を産業用として用いる際の最大の課題であるコストダウンに対し、大きな効果を発揮することができる。
具体的には、本実施の形態に係る釘は、釘の胴部を成形する強化繊維の軸方向が釘の長さ方向に揃うように強化繊維が配列することにより構成されている。
なお、本実施の形態において、この相違点以外は、実施の形態1、2と同様である。
<繊維強化樹脂材>
本実施の形態に係る繊維強化樹脂材は、一方向に配列した炭素繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸したものである。実施の形態2では、繊維強化樹脂材Bが、短冊状であって、当該短冊状の繊維強化樹脂材が三次元ランダムに積層できる長さであったのに対して、本実施の形態では、繊維強化樹脂材の長さが釘の長さとほぼ同等である。なお、本実施の形態において、釘の一部が他の材料によって形成されている場合には、釘の繊維強化樹脂材が使用されている部分の長さと繊維強化樹脂材の長さとがほぼ同等である。
本実施の形態に係る繊維強化樹脂材は、一方向に配列した炭素繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸したものである。実施の形態2では、繊維強化樹脂材Bが、短冊状であって、当該短冊状の繊維強化樹脂材が三次元ランダムに積層できる長さであったのに対して、本実施の形態では、繊維強化樹脂材の長さが釘の長さとほぼ同等である。なお、本実施の形態において、釘の一部が他の材料によって形成されている場合には、釘の繊維強化樹脂材が使用されている部分の長さと繊維強化樹脂材の長さとがほぼ同等である。
また、繊維強化樹脂材の長さは前記の通りであるが、繊維強化樹脂材の太さは、得られる釘の胴部の太さと同等であってもよいし、釘の胴部の太さよりも細いものであってもよい。胴部の太さよりも細い繊維強化樹脂材を用いる場合には、当該繊維強化樹脂材を長さ方向を合わせて複数本束ね、釘の胴部を成形する強化繊維が一方向に配列するようにしてもよい。
したがって、繊維強化樹脂材の形状は、一の方向(長さ方向となる)に長く、一の方向と異なる他の方向(幅方向及び厚み方向)に短い長尺状(棒状)のものであり、いわゆる短冊状、円柱状、角柱状、線状または針状等であるが、これに限るものではない。
また、繊維強化樹脂材の長さと繊維強化樹脂材に含まれる強化繊維の長さとは略同一であるとよい。
繊維強化樹脂材及び強化繊維の長さは、製造される釘の大きさによって長さの下限及び上限がほぼ決定されるが、一例として、1mm超、1000mm以下程度である。
なお、本実施の形態で用いられる熱可塑性エポキシ樹脂及び強化繊維については、上記実施の形態1で用いられる熱可塑性エポキシ樹脂及び強化繊維と同様である。
<釘の製造方法>
次に、本実施の形態に係る釘の製造方法の一例について説明する。なお、本実施の形態に係る釘の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
次に、本実施の形態に係る釘の製造方法の一例について説明する。なお、本実施の形態に係る釘の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
本実施の形態に係る釘を製造する際、まず、繊維強化樹脂材を準備する。
繊維強化樹脂材は、上記実施の形態2の短冊状の繊維強化樹脂材において、カットする長さが目的とする釘の長さ、または、釘において当該繊維強化樹脂材が使用される部分の長さとほぼ同等の長さにカットする以外は、実施の形態2と同様である。
そして、次に釘の形状の型の上に、釘の長さ方向に、釘の胴部を形成する炭素繊維が配列されるように、一方向に配列した炭素繊維の束の内部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が含浸した繊維強化樹脂材を1または複数積層し、加熱及び/又は加圧し、釘を形成する。その後、冷却させた後、型から取り出し不要部分を切断し、バリ等が生じた場合にはバリ等を取り除くことで、製造対象の釘を得ることができる。なお、釘の先端部については、型から取り出した後に先端部の一部を切断したり削ったりなどして成形してもよい。また、加熱及び/又は加圧前に予備加熱を行ってもよい。
また、繊維強化樹脂材を釘の形状の型で成形する前に、頭部及び胴部の凹部や凸部が正確に成形できるように、一度、繊維強化樹脂材を加熱及び/又は加圧する等して円柱状等の形状に予備成形してもよい。また、加熱及び/又は加圧前に予備加熱を行ってもよい。
本実施の形態において、繊維強化樹脂材を加熱及び加圧する方法としては、実施の形態1と同様に、金型プレス法、オートクレーブ法、加熱・冷間プレス法等が挙げられる。
繊維強化樹脂材の加熱時の温度は例えば150〜400℃程度である。また、繊維強化樹脂材の加圧時の圧力は例えば1〜500MPa程度であり、加圧時間は例えば1分〜24時間程度である。なお、繊維強化樹脂材を加圧する際は、真空状態で加圧するとよい。
また、釘の先端部が狭くなるような形状などの板状の金型2枚を加熱して、その2枚の板状の金型の間に棒状の繊維強化樹脂材を挟んで加圧しながら2枚の板状の金型の相対位置をずらして棒状の繊維強化樹脂材を転がすことにより、釘を形成することも可能である。この場合は、短冊状の繊維強化樹脂材を円柱状等に予備成形したものを用いるとよい。
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る釘について、実施の形態1、2、3に基づいて説明したが、本発明は、実施の形態1、2、3に限定されるものではない。
以上、本発明に係る釘について、実施の形態1、2、3に基づいて説明したが、本発明は、実施の形態1、2、3に限定されるものではない。
例えば、実施の形態1の棒状(好ましくは円柱状)とした三次元繊維構造体の表面、または、実施の形態2の短冊状とした繊維強化樹脂材にて成形した棒状(好ましくは円柱状)の表面に、熱可塑性エポキシ樹脂によって頭部又は胴部の表面に凸部が形成されたものであってもよい。
また、上記の各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
以下、本発明に係る釘の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例において、「部」は質量部のことを表している。
なお、以下の実施例及び比較例におけるAの評価項目における各種物性値は、次の方法によって行った。
[A:Vf値]
得られた釘のVf値は、以下の式1で求めた。
得られた釘のVf値は、以下の式1で求めた。
Vf値(%)=(W−ρ3×V)/[(ρ2−ρ3)×V]×100・・・式1
式1において、Wは釘の質量(g)、Vは釘の体積(cm3)、ρ2は、釘に用いられる強化繊維の密度(g/cm3)、ρ3は、釘に用いられる樹脂の密度(g/cm3)を表している。
(実施例1)
実施例1では、強化繊維の束として、炭素繊維の単繊維を24000本束ねたもの(炭素繊維の束24K)を用いた(PAN系炭素繊維(東レ株式会社製のトレカ(登録商標)T700SC))。
実施例1では、強化繊維の束として、炭素繊維の単繊維を24000本束ねたもの(炭素繊維の束24K)を用いた(PAN系炭素繊維(東レ株式会社製のトレカ(登録商標)T700SC))。
まず、この炭素繊維の束を110本、製組機に設置し、全ての強化繊維の束が斜向方向に配向した状態で強化繊維の束同志が交絡しながら立体形状に編成された中実の三次元繊維構造体を製造した。
次に、三次元繊維構造体に以下に示す反応型の熱可塑性エポキシ樹脂溶液をディッピングにより付与した。
[熱可塑性エポキシ樹脂溶液(粘度:80mPa・s)]
・熱可塑性エポキシ樹脂(DENATITE XNR6850V、固形分85質量%、ナガセケムテックス株式会社製) 100部
・硬化剤(DENATITE XNH6850V、固形分30質量%、ナガセケムテックス株式会社製) 6.5部
・メチルエチルケトン(MEK) 10部
・熱可塑性エポキシ樹脂(DENATITE XNR6850V、固形分85質量%、ナガセケムテックス株式会社製) 100部
・硬化剤(DENATITE XNH6850V、固形分30質量%、ナガセケムテックス株式会社製) 6.5部
・メチルエチルケトン(MEK) 10部
引き続き、熱可塑性エポキシ樹脂溶液を付与した三次元繊維構造体をダイスに通過させて形状を整えて60℃で20分間乾燥し、その後、さらに、ダイスに通しながら150℃で20分間熱処理を行うことで反応型の熱可塑性エポキシ樹脂を反応させて高分子化し、三次元繊維構造体に反応型の熱可塑性エポキシ樹脂が付与された、断面形状が直径約6mmのほぼ円形の棒状の繊維強化樹脂材Aを得た。熱可塑性エポキシ樹脂のガラス転移点は100℃であった。得られた繊維強化樹脂材AのVf値は50%であった。
棒状の繊維強化樹脂材Aのカットした切断面を、電子顕微鏡を用いて100倍で観察したところ、炭素繊維の束の中央部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が入り込んでいた。
なお、本実施例で用いた熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度は、B型粘度計(TVB−15形粘度計:東機産業株式会社製)を用いて、ロータNo.20、12rpm、室温で測定したものである。
次に、棒状の繊維強化樹脂材Aを、頭部がケーシング頭、胴部及び先端部はスムース、長さが15cmで直径d(図1参照)が0.5cmの胴部となる釘の金型の中に入れ、真空プレス機を用いて、200℃、20MPaで5分間の加熱及び加圧を行った。
その後、金型の型枠から滲み出した熱可塑性エポキシ樹脂を除去することで、釘を得た。
このようにして得られた釘の外観品位は良好であり、この断面を電子顕微鏡を用いて100倍で観察したところ、釘の頭部には炭素繊維が存在しており、また、釘の胴部の内部に空間は確認されずに熱可塑性エポキシ樹脂で埋め尽くされていることが分かった。また、得られた釘のVf値は50%であった。
(実施例2)
実施例2では、強化繊維の束として、1方向に配列した炭素繊維の単繊維24000本束ねたもの(24K)を用いた(PAN系炭素繊維:東レ株式会社製のトレカ(登録商標)T700 SC)。
実施例2では、強化繊維の束として、1方向に配列した炭素繊維の単繊維24000本束ねたもの(24K)を用いた(PAN系炭素繊維:東レ株式会社製のトレカ(登録商標)T700 SC)。
この炭素繊維の束を巻いたドラムからそのまま炭素繊維の束を引き出しながら、炭素繊維の束の片面にキスロールを用いて、以下に示す反応型の熱可塑性エポキシ樹脂溶液を付与した。なお、ドラムから引き出したときの炭素繊維の束の断面形状は、偏平な形状であった。
[熱可塑性エポキシ樹脂溶液(粘度:15mPa・s以下(装置の測定限界値以下))]
・熱可塑性エポキシ樹脂(反応型樹脂:DENATITE XNR6850V:ナガセケムテックス株式会社製) 100部
・硬化剤(DENATITE XNH6850V:ナガセケムテックス株式会社製)
6.5部
・メチルエチルケトン(MEK) 50部
・熱可塑性エポキシ樹脂(反応型樹脂:DENATITE XNR6850V:ナガセケムテックス株式会社製) 100部
・硬化剤(DENATITE XNH6850V:ナガセケムテックス株式会社製)
6.5部
・メチルエチルケトン(MEK) 50部
次に、熱可塑性エポキシ樹脂溶液を付与した炭素繊維の束を4本のロールに接触(炭素繊維の束の上面及び下面を交互にそれぞれ2回ずつ接触)させることにより炭素繊維の束をシゴいた後、ダイスに通過させ、60℃で20分間乾燥し、引き続き150℃で20分間熱処理を行うことで反応型の熱可塑性エポキシ樹脂を反応させて高分子化し、一方向に配列された強化繊維の束に反応型の熱可塑性エポキシ樹脂が付与された、断面形状が幅約2〜3mmの扁平で長尺の繊維強化樹脂材を得た。熱可塑性エポキシ樹脂のガラス転移点は100℃であった。
次に、得られた長尺の繊維強化樹脂材を、炭素繊維の軸方向に対しほぼ垂直に40〜50mmの長さとなるようにカットし、断面が扁平な短冊状の繊維強化樹脂材を得た。このようにして得られた繊維強化樹脂材のVf値は50%であった。なお、得られた繊維強化樹脂材中の炭素繊維の長さは、用いた炭素繊維が長繊維であるので繊維強化樹脂材の長さと同じで、40〜50mmである。
短冊状の繊維強化樹脂材のカットした切断面を、電子顕微鏡を用いて100倍で観察したところ、炭素繊維の束の中央部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が入り込んでいることが分かった。
なお、本実施例で用いた熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度は、B型粘度計(TVB−15形粘度計:東機産業株式会社製)を用いて、ロータNo.20、12rpm、室温で測定したものである。
次に、得られた短冊状の繊維強化樹脂材を複数枚と、棒状の繊維強化樹脂材Aとを、頭部が平頭フラット、胴部及び先端がスムース、長さ15cmで直径d(図1参照)が0.5cmの胴部となる釘の金型の中に入れ、真空プレス機を用いて、200℃、20MPaで5分間の加熱及び加圧を行った。
その後、金型の型枠から滲み出した熱可塑性エポキシ樹脂を除去することで、短冊状の繊維強化樹脂材(炭素繊維の束)が3次元にランダムに積層された(各束が釘の長さ方向に対して、わずかに傾斜して、相互に折り重なった)釘を得た。
このようにして得られた釘の外観品位は良好であり、この釘の断面を電子顕微鏡を用いて100倍で観察したところ、頭部には炭素繊維が存在しており、また、釘の胴部の内部に空間は確認されずに熱可塑性エポキシ樹脂で埋め尽くされていることが分かった。また、得られた釘のVf値は55%であった。
(実施例3)
実施例3では、実施例2で得られた40〜50mmの短冊状の繊維強化樹脂材を複数本用い、釘の長さが5cmである金型(頭部が無いもの)に、繊維強化樹脂材を構成する炭素繊維が、釘の長さ方向に配列するように配置(釘の先端部には長めの短冊状の繊維強化樹脂材を配置)し、実施例2と同様に加熱及び加圧を行った。
実施例3では、実施例2で得られた40〜50mmの短冊状の繊維強化樹脂材を複数本用い、釘の長さが5cmである金型(頭部が無いもの)に、繊維強化樹脂材を構成する炭素繊維が、釘の長さ方向に配列するように配置(釘の先端部には長めの短冊状の繊維強化樹脂材を配置)し、実施例2と同様に加熱及び加圧を行った。
その後、金型の型枠から滲み出した熱可塑性エポキシ樹脂を除去することで、釘の長さ方向に、釘の胴部を成形する炭素繊維が配列するように配置された釘を得た。
このようにして得られた釘の外観品位は良好であり、この釘の断面を電子顕微鏡を用いて100倍で観察したところ、釘の胴部の内部に空間は確認されずに熱可塑性エポキシ樹脂で埋め尽くされていることが分かった。また、得られた釘のVf値は55%であった。
(実施例4)
実施例4では、強化繊維の束として、1方向に配列した炭素繊維の単繊維を24000本束ねたもの(24K)を用いた(PAN系炭素繊維:東レ株式会社製のトレカ(登録商標)T700 SC)。
実施例4では、強化繊維の束として、1方向に配列した炭素繊維の単繊維を24000本束ねたもの(24K)を用いた(PAN系炭素繊維:東レ株式会社製のトレカ(登録商標)T700 SC)。
この炭素繊維の束を巻いたドラムから開繊処理を行わずにそのまま炭素繊維の束を引き出しながら、炭素繊維の束の片面にキスロールを用いて、以下に示す反応型の熱可塑性エポキシ樹脂溶液を付与した。なお、ドラムから引き出したときの炭素繊維の束の断面形状は、偏平な形状であった。
[熱可塑性エポキシ樹脂溶液(粘度:450mPa・s)]
・熱可塑性エポキシ樹脂(反応型樹脂:DENATITE XNR6850V:ナガセケムテックス株式会社製) 100部
・硬化剤(DENATITE XNH6850V:ナガセケムテックス株式会社製)
6.5部
・熱可塑性エポキシ樹脂(反応型樹脂:DENATITE XNR6850V:ナガセケムテックス株式会社製) 100部
・硬化剤(DENATITE XNH6850V:ナガセケムテックス株式会社製)
6.5部
次に、熱可塑性エポキシ樹脂溶液を付与した炭素繊維の束を4本のロールに接触(炭素繊維の束の上面及び下面を交互にそれぞれ2回ずつ接触)させることにより炭素繊維の束をシゴいた後、ダイスに通過させ形状を整え、60℃で20分間乾燥し、引き続き150℃で20分間熱処理を行うことで反応型の熱可塑性エポキシ樹脂を反応させて高分子化し、その後、ダイスに通過させ形状を整えることで、一方向に配列された強化繊維の束に反応型の熱可塑性エポキシ樹脂が付与された、断面形状が直径約2〜3mmのほぼ円形の棒状の繊維強化樹脂材を得た。熱可塑性エポキシ樹脂のガラス転移点は100℃であった。
次に、得られた棒状の繊維強化樹脂材を、炭素繊維の軸方向に対しほぼ垂直に5mmの長さとなるようにカットし、断面形状がほぼ円形である短冊状(棒状)の繊維強化樹脂材を得た。このようにして得られた繊維強化樹脂材のVf値は30%であった。なお、得られた繊維強化樹脂材中の炭素繊維の長さは、用いた炭素繊維が長繊維であるので繊維強化樹脂材の長さと同じで、5mmである。
短冊状(棒状)の繊維強化樹脂材のカットした切断面を、電子顕微鏡を用い100倍で観察したところ、炭素繊維の束の中央部にまで樹脂が入り込んでいることが分かった。
なお、本実施例で用いた熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度は、B型粘度計(TVB−15形粘度計:東機産業株式会社製)を用いて、ロータNo.20、12rpm、室温で測定したものである。
次に、得られた短冊状(棒状)の繊維強化樹脂材を射出成形機に投入し、120℃から250℃に加熱しながら溶融させ、溶融した樹脂を金型内に射出することで、釘を得た。釘の中では炭素繊維の束がほぼ直線状で平行に積層している箇所や炭素繊維の束が「く」の字状に曲がった状態で積層状態の箇所など、炭素繊維の束の繊維軸方向が様々な向きで積層していた。
このようにして得られた釘の外観品位は良好であり、この釘の断面を電子顕微鏡を用いて100倍で観察したところ、頭部には炭素繊維が存在しており、また、釘の胴部の内部に空間は確認されずに熱可塑性エポキシ樹脂で埋め尽くされていることが分かった。また、得られた釘のVf値は30%であった。
(実施例5)
実施例5では、棒状の繊維強化樹脂材を製造した。
実施例5では、棒状の繊維強化樹脂材を製造した。
まず、24Kの炭素繊維束(PAN系炭素繊維。東レ株式会社製。T700SC。)を3本束ね、S方向に30回/m撚りをかけたものを炭素繊維の束として用い、当該炭素繊維の束の外周をガラス繊維で被覆した。具体的には、製紐機(24打機)を用いて、8打ちの石目打にて、炭素繊維の束の周りの全面を組紐状にガラス繊維で被覆した。
次に、ガラス繊維で被覆した炭素繊維の束に以下に示す反応型の熱可塑性エポキシ樹脂溶液をディッピングにより付与した。
[熱可塑性エポキシ樹脂溶液(粘度:80mPa・s以下)]
・熱可塑性エポキシ樹脂(反応型樹脂:DENATITE XNR6850V:ナガセケムテックス株式会社製) 100部
・硬化剤(DENATITE XNH6850V:ナガセケムテックス株式会社製)
6.5部
・メチルエチルケトン(MEK) 10部
・熱可塑性エポキシ樹脂(反応型樹脂:DENATITE XNR6850V:ナガセケムテックス株式会社製) 100部
・硬化剤(DENATITE XNH6850V:ナガセケムテックス株式会社製)
6.5部
・メチルエチルケトン(MEK) 10部
引き続き、熱可塑性エポキシ樹脂溶液が付与されたガラス繊維で被覆した炭素繊維の束をダイスに通過させて形状を整えて60℃で20分間乾燥し、その後、さらに、ダイスに通しながら150℃で20分間熱処理を行い反応型の熱可塑性エポキシ樹脂を反応させて高分子化し、炭素繊維の束に反応型の熱可塑性エポキシ樹脂が付与された、断面形状が直径約3mm(ノギスで測定)のほぼ円形の繊維強化樹脂材を得た。熱可塑性エポキシ樹脂のガラス転移点は100℃であった。得られた繊維強化樹脂材のVf値は50%であった。
繊維強化樹脂材のカットした切断面を、電子顕微鏡を用いて100倍で観察したところ、炭素繊維の束の中央部にまで熱可塑性エポキシ樹脂が入り込んでいた。
なお、本実施例で用いた熱可塑性エポキシ樹脂溶液の粘度は、B型粘度計(TVB−15形粘度計:東機産業株式会社製)を用いて、ロータNo.20、12rpm、室温で測定したものである。
次に、得られた繊維強化樹脂材3本を120℃に加熱しながら撚りあわせてストランド構造体とした。
次に、長さ20cmの釘を製造するためのインサート成形・射出成型機用の型に、得られたストランド構造体の繊維強化樹脂材を長さ25cmに切断したものを挿入し、次に、実施例4で用いた短冊状(棒状)の繊維強化樹脂材(Vf値は30%)を射出成形機に投入し、120℃から250℃に加熱しながら溶融させ、溶融した樹脂を型内に射出し、冷却後、型から取り出し、不要部分を除去することで、長さ20cmの釘を得た。
このようにして得られた釘の外観品位は良好であり、この釘の断面を電子顕微鏡を用いて100倍で観察したところ、釘の内部に空間は確認されずに、長さ方向に配向した棒状(ストランド構造)の繊維強化樹脂材と短冊状(棒状)の繊維強化樹脂材に由来すると想定される強化繊維と熱可塑性エポキシ樹脂で埋め尽くされていることが分かった。
なお、実施例1、2、3、4、5の釘を用いて木材に打ち込んだところ、先端部が多少凹んだものの、釘の頭部、胴部及び先端部はいずれもほぼ変形が見られず、十分な強度を有する釘が得られたことが確認された。
(まとめ)
以上、本実施の形態に係る釘は、軽くて錆が発生せず、結露が発生しにくく、水や湿気等に対する形態の安定性に優れていて緩みが発生しにくく、しかも、強度が強く、耐久性にも優れている。
以上、本実施の形態に係る釘は、軽くて錆が発生せず、結露が発生しにくく、水や湿気等に対する形態の安定性に優れていて緩みが発生しにくく、しかも、強度が強く、耐久性にも優れている。
これにより、例えば本実施の形態に係る釘を木造建築物等の木材同士を接合する際の接合部材として用いることで、木材への重量的な負担が軽くすることができ、また、結露がしにくいため結露を抑えて木材の腐食を抑制することができる。さらに、長期間にわたって釘が緩むことなく木材の接合状態を維持することができる。
また、本実施の形態に係る釘は、海沿いや食品加工場で用いられても塩害や結露による錆の発生を抑えることができ、また、長期にわたって釘が緩むことなく接合状態を維持することができる。
本発明に係る釘は、軽くて錆が発生せず、結露が発生しにくく、磁性が帯びにくく、水や湿気等に対する形態の安定性に優れていて緩みが発生しにくく、しかも、強度が強く、耐久性にも優れているため、木材の接合をはじめとして、従来の釘の代替としてあらゆる部材の接合に適している。
1 頭部
2 首部
3 胴部
4 先端部
2 首部
3 胴部
4 先端部
Claims (9)
- 強化繊維とエポキシ樹脂とを含む繊維強化樹脂材を用いて成形された釘。
- 前記エポキシ樹脂が、熱可塑性エポキシ樹脂である請求項1に記載の釘。
- 前記熱可塑性エポキシ樹脂が、反応型のエポキシ樹脂である請求項2に記載の釘。
- 前記強化繊維の束を編成した三次元繊維構造体を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の釘。
- 前記強化繊維が、筒状の組紐または編物である請求項4に記載の釘。
- 短冊状の前記繊維強化樹脂材が3次元にランダムに積層されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の釘。
- 前記強化繊維の長さが、1mm超である請求項6に記載の釘。
- 前記釘の胴部を構成する前記強化繊維が、当該強化繊維の軸方向と前記釘の長さ方向とが並行するように配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の釘。
- 前記釘の繊維体積率が、20〜80%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の釘。
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