JP2019044164A - セルロース強化樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

セルロース強化樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂組成物中の異物量が極めて少なく高い真空成形性を有するセルロース強化樹脂組成物を製造する方法を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂と、セルロースとを含む樹脂組成物の製造方法であって、水を主成分とする分散媒と、前記分散媒中に分散させたセルロースとを含む分散液を調製する第一の工程、溶融状態にある熱可塑性樹脂中に前記分散液を添加し、溶融混練して混練物を得る第二の工程、及び第二の工程で得られた混練物から分散媒を除去して樹脂組成物を得る第三の工程、をこの順に含み、第二の工程における分散液の添加を、前記溶融状態にある熱可塑性樹脂の温度における水の蒸気圧以上の圧力で実施する、樹脂組成物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースで強化された樹脂組成物の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂は、軽く、加工特性に優れるため、自動車部材、電気・電子部材、事務機器ハウジング、精密部品等の多方面に広く使用されている。しかしながら、樹脂単体では、機械特性、寸法安定性等が不十分である場合が多く、樹脂と各種強化材料をコンポジットしたものが一般的に用いられている。
近年、樹脂の新たな強化材料として、セルロースが用いられるようになってきている。
セルロースは、アラミド繊維に匹敵する高い弾性率を示すが、真密度が1.56g/cm3と低く、一般的な強化材であるガラス(密度2.4〜2.6g/cm3)やタルク(密度2.7g/cm3)と比し圧倒的に軽い材料である。
また、セルロースを樹脂中に微分散させることにより、樹脂組成物の伸張粘度を向上させ、シート成形性等を向上させることも知られている。
しかしながら、セルロースは、水中で分散している状態では、比較的安定な分散状態を維持するが、水を除去するなどすると、セルロース同士の強固な凝集力により、良好な分散を得ることが困難である。
そのため、これまでセルロースを熱可塑性樹脂中に分散させる技術として、特許文献1〜3に記載されるようなセルロースの変性や混合順の最適化といった検討がなされてきている。
例えば特許文献1には、粉末状セルロースに親油性処理を施して可塑剤に均一分散させた混合物を得たのち、ポリオレフィンと溶融混練する技術が記載されている。また、特許文献2には、樹脂と、特殊な液体中で膨潤させた植物繊維と、有機液体とを混合する技術が記載されている。さらには特許文献3には、セルロース分散液を特定粒子径の樹脂粉末と予め混合して得た混合分散液から水を分離し、セルロース/樹脂混合物を得たのち、該混合物を溶融混練する技術が記載されている。
特開2016−104874号公報 国際公開第2013/133093号 特開2008−297364号公報
セルロースは上述の通り、樹脂中に微分散させることにより、樹脂組成物の伸張粘度を向上させるため、溶融状態で延伸がかかる材料への期待が高まっている。この具体例としては、例えば、塗装用マスキング材が挙げられる。塗装用マスキング材は、自動車等の塗装において色を分けて塗装する必要がある場合、所望の部分にのみ塗装する目的で、塗装を施さない部位に使用される消費材である。塗装用マスキング材は、通常、押出成形等でシート状に成形され、その後、二次加工と呼ばれる真空成形を実施し、被塗装物の塗装のマスキングに適した形状に成形される。真空成形には、伸張時に高粘度が要求されるため、この特性発現のため、樹脂の高分子量化や、分岐ポリマーの少量配合といった試みが行われてきている。
ところが、近年、自動車のデザインには、斬新さが求められてきており、鋭角な部分としなやかな曲線を併せ持つようなパーツのデザインが増えつつある。このような複雑化する形状に対応するため、更に高延伸に追従可能な樹脂が求められるようになってきているが、従来のような樹脂の高粘度化のアプローチでは生産性が大きく低下するなどの課題が明確になってきている。そのため、樹脂を高粘度化させるのではなく、セルロースを微分散させることで伸張粘度を向上させる手法に注目が集まっている。
しかしながら、これまでの技術においては、上記のような新たな高い要求に対してセルロースの分散が必ずしも充分ではなかった。すなわち、セルロースと樹脂とを含む樹脂組成物中に混在する異物量が多いため、これらの要求に対応しきれておらず、現時点において、高い伸張粘度を発現可能なセルロース強化樹脂組成物を得るための製造方法は存在していない。
本発明は、上記の課題を解決し、樹脂組成物中の異物量が極めて少なく、高度な要求に対応可能なほどの高い真空成形性を有するセルロース強化樹脂組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討を進めた結果、セルロース含有樹脂組成物を製造するにあたり、水を主成分とする分散媒中にセルロースを分散させたセルロース分散液を、溶融状態にある熱可塑性樹脂中に、該溶融温度における分散媒の蒸気圧以上の圧力で添加し溶融混練した後、分散媒を除去する工程を実施することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] 熱可塑性樹脂と、セルロースとを含む樹脂組成物の製造方法であって、
水を主成分とする分散媒と、前記分散媒中に分散させたセルロースとを含むセルロース分散液を調製する第一の工程、
溶融状態にある熱可塑性樹脂中に前記セルロース分散液を添加し、溶融混練して混練物を得る第二の工程、及び
第二の工程で得られた混練物から分散媒を除去して樹脂組成物を得る第三の工程、
をこの順に含み、
第二の工程におけるセルロース分散液の添加を、前記溶融状態にある熱可塑性樹脂の温度における水の蒸気圧以上の圧力で実施する、樹脂組成物の製造方法。
[2] 樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の比率が、樹脂組成物100質量%に対して50〜99質量%である、上記態様1に記載の樹脂組成物の製造方法。
[3] 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらのいずれか2種以上の混合物からなる群より選択される、上記態様1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
[4] 熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂である、上記態様3に記載の樹脂組成物の製造方法。
[5] 前記ポリアミド系樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド6,6、又はこれらの混合物である、上記態様4に記載の樹脂組成物の製造方法。
[6] セルロースが、セルロースファイバー、セルロースウィスカー又はこれらの混合物である、上記態様1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
[7] 第一の工程で得られたセルロース分散液中のセルロースの比率が、セルロース分散液100質量%に対して1〜30質量%である、上記態様1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
[8] 第三の工程における分散媒の除去の少なくとも一部が、減圧状態にて実施される、上記態様1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、樹脂へのセルロースの分散性に優れ、高い伸張粘度を有する樹脂組成物を得ることができるという効果を有する。
図1は、実施例におけるカップ状真空成形片の作製方法を説明する概略図である。
本発明の例示の態様について以下具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂と、セルロースとを含む樹脂組成物の製造方法である。本製造方法は、第一の工程、第二の工程及び第三の工程を含む。以下、順に説明する。
≪第一の工程≫
本製造方法においては、セルロースを、水を主成分とする分散媒中に分散させ、セルロース水分散液を調製する第一の工程が必要である。ここで、使用するセルロースは、いずれのものでも構わないが、樹脂組成物中に微分散させるためには、微細なセルロースであることが望ましい。より具体的には、セルロースが、セルロースファイバー、セルロースウィスカー又はこれらの混合物であることがより好ましい。
本開示で、セルロースの「長さ」(L)及び「径」(D)は、例えばセルロースウィスカーにおいては長径及び短径に、またセルロースファイバーにおいては繊維長及び繊維径に、それぞれ相当する。セルロースウィスカー及びセルロースファイバーとしては、それぞれ、径がナノメートルサイズ(すなわち1μm未満)であるものが、伸張粘度を効果的に向上させる観点から好ましい。本発明で好適に使用可能なセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々は、その径が500nm以下のものである。好ましいセルロースの径の上限は、450nmであり、より好ましくは400nmであり、更により好ましくは350nmであり、最も好ましくは300nmである。
特に好ましい態様において、セルロースウィスカーの径は、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは450nm以下、更に好ましくは400nm以下、更により好ましくは350nm以下であり、最も好ましくは300nm以下である。
また、特に好ましい態様において、セルロースファイバーの径は、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、更により好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは15nm以上であり、最も好ましくは20nm以上であり、好ましくは450nm以下であり、より好ましくは400nm以下であり、更に好ましくは350nm以下であり、更により好ましくは300nm以下であり、最も好ましくは250nm以下である。
樹脂組成物の伸張粘度を効果的に向上させるためには、セルロースの径を上述の範囲内にすることが望ましい。
本発明におけるセルロースウィスカーとは、パルプ等を原料とし、これを裁断後、塩酸や硫酸といった酸中でセルロースの非晶部分を溶解した後に残留する結晶質のセルロースを指す。
また、セルロースファイバーは、パルプ等を100℃以上の熱水等で処理し、ヘミセルロース部分を加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミルやディスクミルといった粉砕法により解繊したセルロース、及び、粉砕等の強力な機械的解繊ではなくTEMPO酸化法や有機溶剤中でのセルロースファイバー水酸基の化変性により解繊されたセルロースファイバーを包含する。
セルロースウィスカーの好ましい長さ/径比率(L/D比)は30未満である。セルロースウィスカーのL/D上限は、好ましくは25であり、より好ましくは20であり、より好ましくは15であり、更により好ましくは10であり、最も好ましくは5である。下限は特に限定されないが、1を超えていればよい。樹脂組成物に適度な流動性を付与するためには、セルロースウィスカーのL/D比は上述の範囲内にあることが望ましい。
セルロースファイバーのL/D下限は、好ましくは30であり、より好ましくは50であり、より好ましくは80であり、更により好ましくは100であり、特に好ましくは120であり、最も好ましくは150である。上限は特に限定されないが、樹脂組成物の溶融粘度を高くし過ぎない観点から好ましくは1000以下である。
本開示で、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比は、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の水分散液を、高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、高分解能走査型顕微鏡(SEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本のセルロースが観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本のセルロースの長さ(L)及び径(D)、並びに比(L/D)を算出することで確認が可能である。本開示のセルロースの長さ及び径とは、計100本のセルロースの数平均値である。セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々について、長さ(L)の数平均値、径(D)の数平均値、及び比(L/D)の数平均値を算出して、本開示の、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比とする。また、本開示において、セルロースウィスカーとセルロースファイバーとを、比(L/D)が30未満のものをセルロースウィスカー、30以上のものをセルロースファイバーと分類することで互いに区別することもできる。
又は、組成物中のセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比は、固体である組成物を測定サンプルとして、上述の測定方法により測定することで確認することができる。
又は、組成物中のセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々の長さ、径、及びL/D比は、組成物の樹脂成分を溶解できる有機又は無機の溶媒に組成物中の樹脂成分を溶解させ、セルロースを分離し、前記溶媒で充分に洗浄した後、溶媒を純水に置換した水分散液を調製し、セルロース濃度が0.1〜0.5質量%となるように純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとして上述の測定方法により測定することで確認することができる。この際、測定するセルロースは無作為に選んだL/Dが30以上のセルロースファイバー100本以上と、L/Dが30未満のセルロースウィスカー100本以上の、合計200本以上での測定を行う。
本発明で好適に使用可能なセルロースウィスカーは、結晶化度が55%以上のセルロースウィスカーである。結晶化度がこの範囲にあると、セルロースウィスカー自体の力学物性(強度、寸法安定性)が高まるため、樹脂に分散した際に、樹脂組成物の強度、寸法安定性が高くなる傾向にある。
セルロースウィスカーの結晶化度は、好ましくは60%以上であり、より好ましい結晶化度の下限は65%であり、更により好ましくは70%であり、最も好ましくは80%である。セルロースウィスカーの結晶化度は高いほど好ましい傾向にあるので、上限は特に限定されないが、生産上の観点から99%が好ましい上限である。
また、セルロースファイバーは、結晶化度が55%以上のセルロースファイバーが好適に使用可能である。結晶化度がこの範囲にあると、セルロースファイバー自体の力学物性(強度、寸法安定性)が高まるため、樹脂に分散した際に、樹脂組成物の強度、寸法安定性が高くなる傾向にある。より好ましい結晶化度の下限は、60%であり、更により好ましくは70%であり、最も好ましくは80%である。セルロースファイバーの結晶化度についても上限は特に限定されず、高い方が好ましいが、生産上の観点から好ましい上限は99%である。
セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの結晶化度は、これらセルロースの製造時の非晶部分の除去度合に左右されるが、非晶部分の除去度合が高くなるような製造条件においてはリグニン等の不純物の除去度合も高くなる。リグニン等の不純物の残存量が多いと、樹脂組成物の加工時の熱により変色をきたすことがあるため、押出加工時及び成形加工時の樹脂組成物の変色を抑制する観点から、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの結晶化度は上述の範囲内にすることが望ましい。
ここでいう結晶化度は、セルロースがセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10〜30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=([2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]−[2θ/deg.=18の非晶質に起因する回折強度])/[2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度]×100
また結晶化度は、セルロースがセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%)=h1/h0×100
セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、I型及びII型のセルロースは汎用されている一方、III型及びIV型のセルロースは実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。本発明で用いるセルロースとしては、構造上の可動性が比較的高く、当該セルロースを樹脂に分散させることによって線膨張係数がより低く、引っ張り、曲げ変形時の強度及び伸びがより優れた樹脂コンポジットが得られることから、セルロースI型結晶又はセルロースII型結晶を含有するセルロースが好ましく、セルロースI型結晶を含有し、かつ結晶化度が55%以上のセルロースがより好ましい。
セルロースウィスカーの重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは120以上であり、より好ましくは130以上であり、より好ましくは140以上であり、より好ましくは150以上、好ましくは300以下、より好ましくは280以下、より好ましくは270以下、より好ましくは260以下、より好ましくは250以下である。また、セルロースファイバーの重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは420以上であり、より好ましくは430以上、より好ましくは440以上、より好ましくは450以上であり、好ましくは2500以下、より好ましく2300以下、より好ましくは2200以下、より好ましくは2100以下、より好ましくは2000以下である。押出成形における加工性と、成形体の機械的特性発現の観点から、セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの重合度は高すぎない方が好ましく、機械的特性発現の観点からは低すぎないことが望まれる。
セルロースウィスカー及びセルロースファイバーの重合度は、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」の確認試験(3)に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従って測定される平均重合度を意味する。
セルロースの重合度(すなわち平均重合度)を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースやリグニン等の不純物も取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、後記の押出工程等、機械的せん断を与える工程において、セルロース成分が機械処理を受けやすくなり、セルロース成分が微細化されやすくなる。
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、アルカリ加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、例えば、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースをセルロース原料とし、これを水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調整されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分間以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。なお、加水分解時のセルロース原料の分散液には、水の他、本発明の効果を損なわない範囲において有機溶媒を少量含んでいてもよい。
第一の工程において用いる分散媒は、水を主成分とする分散媒である。ここでいう、水を主成分とするとは、分散媒中に占める水の割合が50質量%以上である状態である。水以外の分散媒としては、例えば、水と相溶の有機溶剤、水と非相溶の有機溶剤、界面活性剤等が例示可能である。
水と相溶の有機溶剤は、水とあらゆる組成範囲で混和する有機溶剤だけではなく、ある特定の組成範囲で混和する有機溶剤も包含する。具体例を挙げると、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルスルフォオキシド、酢酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、水に非相溶な有機溶剤とは、水に対する溶解度が1質量%以下で、ほとんど溶解しない有機溶剤を指す。具体例を挙げると、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン等が挙げられるがが、これらに限定されるものではない。
更に、界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、セルロースとの親和性の点で、陰イオン系界面活性剤及び非イオン系界面活性剤が好ましく、非イオン系界面活性剤がより好ましい。
陰イオン系界面活性剤としては、脂肪酸系(陰イオン)として、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム,アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム等が挙げられ、直鎖アルキルベンゼン系として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、高級アルコール系(陰イオン)として、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、アルファオレフィン系としてアルファオレフィンスルホン酸ナトリウム等、ノルマルパラフィン系としてアルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、それらを1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
非イオン系界面活性剤としては、脂肪酸系(非イオン)として、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の糖脂質、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられ、高級アルコール系(非イオン)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられ、アルキルフェノール系としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、それらを1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
両性イオン系界面活性剤としては、アミノ酸系として、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム等が挙げられ、ベタイン系としてアルキルベタイン等が挙げられ、アミンオキシド系としてアルキルアミンオキシド等が挙げられ、それらを1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
陽イオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩系として、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、それらを1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
界面活性剤は、油脂の誘導体であってよい。油脂としては、脂肪酸とグリセリンとのエステルが挙げられ、通常は、トリグリセリド(トリ−O−アシルグリセリン)の形態を取るものをいう。脂肪油で酸化を受けて固まりやすい順に乾性油、半乾性油、不乾性油と分類され、食用、工業用など様々な用途で利用されているものを用いることができ、例えば以下のものを、1種又は2種以上併用して用いることができる。
油脂としては、動植物油として、例えば、テルピン油、トール油、ロジン、白絞油、コーン油、大豆油、ゴマ油、菜種油(キャノーラ油)、こめ油、糠油、椿油、サフラワー油(ベニバナ油)、ヤシ油(パーム核油)、綿実油、ひまわり油、エゴマ油(荏油)、アマニ油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル、レタス油、魚油、鯨油、鮫油、肝油、カカオバター、ピーナッツバター、パーム油、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)、鶏油、兎脂、羊脂、馬脂、シュマルツ、乳脂(バター、ギー等)、硬化油(マーガリン、ショートニングなど)、ひまし油(植物油)等が挙げられる。
特に好ましい態様において、界面活性剤は、ロジン誘導体、アルキルフェニル誘導体、ビスフェノールA誘導体、βナフチル誘導体、スチレン化フェニル誘導体、及び硬化ひまし油誘導体からなる群より選択される1種以上である。
セルロースを、水を主成分とする分散媒中に分散させたセルロース分散液は、種々の方法で得ることが可能である。具体例を挙げると、原料となるパルプ等を100℃以上の熱水等で処理し、ヘミセルロース部分を加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミルやディスクミルといった粉砕法により解繊する方法、原料となるパルプ等を裁断し、塩酸や硫酸といった酸中で、セルロースの非晶部分を溶解したのち、中和する方法、原料パルプ等を粉砕、100℃以上の熱水等で処理し、脱水して得られたパルプを撹拌機で攪拌し、有機溶剤等の雰囲気下、ビーズミル等で解繊修飾した後、溶剤を水置換する方法等が挙げられる。
また、上述のように調製されたセルロース分散液を、せん断条件下で乾燥処理し、粉末状セルロースとして取得した後、所望のセルロース濃度となるようブレンドし、分散媒とともに高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミルやディスクミルといったせん断を与える装置条件下でせん断を与え、再分散させる方法も好適に使用可能である。
セルロース分散液の好ましいセルロース比率は、セルロース分散液を100質量%としたとき、1〜30質量%である。より好ましい量は、用いるセルロースの種類及びその比率によって異なる。
具体的には、セルロース種がセルロースファイバー単独の場合、下限量は、より好ましくは1.5質量%であり、更に好ましくは2.0質量%であり、更により好ましくは2.5質量%であり、最も好ましくは3.0質量%である。また、添加効率を考えればセルロース比率は高い方が好ましいが、取扱い性の面から、上限量は、より好ましくは25質量%であり、更に好ましくは23質量%であり、更により好ましくは20質量%であり、最も好ましくは18質量%である。
またセルロース種がセルロースウィスカー単独の場合、下限量は、より好ましくは4質量%であり、更に好ましくは6質量%であり、更により好ましくは8質量%であり、最も好ましくは10質量%である。また、上限値は、より好ましくは29質量%であり、更に好ましくは28質量%であり、更により好ましくは27質量%であり、最も好ましくは25質量%である。
なお、セルロース種がセルロースファイバーとセルロースウィスカーの混合物の場合、好ましい量比は、上述の間をとる。具体的には、下限量は、より好ましくは1.5質量%であり、更に好ましくは2.0質量%であり、更により好ましくは2.5質量%であり、最も好ましくは3.0質量%であり、上限量は、より好ましくは29質量%であり、更に好ましくは28質量%であり、更により好ましくは27質量%であり、最も好ましくは25質量%である。
上述の下限量以上とすることにより、高濃度のセルロースを含有する樹脂組成物を得やすくなり、上限量以下とすることで、ポンプでのセルロース分散液の移送がしやすくなるという利点を発現しやすくなる。
≪第二の工程≫
本製造方法においては、第一の工程に引き続いて実施される、溶融状態にある熱可塑性樹脂中にセルロース分散液を添加して溶融混練することで混練物を得る第二の工程が必要である。
第二の工程において、セルロース分散液の添加は、溶融した熱可塑性樹脂の温度(すなわち、溶融状態の熱可塑性樹脂にセルロース分散液を添加する時点での当該熱可塑性樹脂の温度)における水の蒸気圧以上の圧力で実施することが重要である。このとき、分散液は分散媒の乾燥なく熱可塑性樹脂中に分散される。したがって、セルロース分散液中に安定的に微分散しているセルロースは、分散媒がなくなること(すなわち、乾燥されること)なく、微分散された状態のまま溶融樹脂と混練されることとなり、結果的に、熱可塑性樹脂中にセルロースが高度に分散した樹脂組成物が得られる。
第二の工程において、溶融した熱可塑性樹脂の温度における水の蒸気圧以上の圧力でセルロース分散液を添加することで、得られる樹脂組成物に充分な伸張粘度を発現させることができ、真空成形等の際に、成形品のやぶれ等の発生を抑制することができる。
第二の工程の具体例としては、例えば、オートクレーブ状の加圧可能な装置内で、溶融した熱可塑性樹脂が撹拌されている中に、溶融した熱可塑性樹脂の温度における水の蒸気圧以上の圧力でセルロース分散液を液添添加する方法や、押出機中で熱可塑性樹脂を溶融し混練している状態の中へ、溶融した熱可塑性樹脂の温度における水の蒸気圧以上の圧力でセルロース分散液を液添添加する方法が挙げられるが、商業的な生産を意図した場合、押出機を用いる方法がより好ましい。また、押出機の中でも二軸押出機がより好ましく使用可能である。
二軸押出機を用いる際には、セルロース分散液を液添添加する位置での圧力を、溶融した熱可塑性樹脂の温度における水の蒸気圧以上とするために、添加位置の前後には圧力に耐える樹脂のシール部分を形成することが望ましい。樹脂のシール可能な圧力は、その部位におけるスクリューパーツの選択と、押出機を流れる熱可塑性樹脂の量、及びスクリューの回転数によりコントロールできる。
より具体的な例を挙げると、例えば、スクリューパーツとしては、シールリングと呼ばれる樹脂の流路を急激に狭めるスクリューパーツ(以下、単にSRと呼ぶことがある。)を配する方法、反時計回りスクリュー(逆送りタイプスクリュー:以下単にLSと呼ぶことがある。)を配する方法、反時計回りニーディングディスク(逆送りタイプニーディングディスク:以下、単にLKBと呼ぶことがある。)を配する方法、ニュートラルニーディングディスク(無搬送タイプニーディングディスク:以下、単にNKBと呼ぶことがある。)を配する方法、及び、これらスクリューの組み合わせが好ましく使用可能である。反時計回りニーディングディスクにおいては、1パーツ中に、複数のディスクが一定の角度でズレながら逆送り方向に配されており、その隣のディスクとの角度が小さく、各ディスクの厚みが薄く、1パーツにより多数のディスクがある方が、シール性に優れる傾向にある。
(熱可塑性樹脂)
本発明において使用される熱可塑性樹脂としては、100℃〜350℃の範囲内に融点を有する結晶性樹脂、又は、100〜250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性樹脂が挙げられる。
ここでいう結晶性樹脂の融点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温した際に現れる吸熱ピークのピークトップ温度をいう。吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を指す。この時の吸熱ピークのエンタルピーは、10J/g以上であることが望ましく、より望ましくは20J/g以上である。また測定に際しては、サンプルを一度融点+20℃以上の温度条件まで加温し、樹脂を溶融させたのち、10℃/分の降温速度で23℃まで冷却したサンプルを用いることが望ましい。
ここでいう非晶性樹脂のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置を用いて、23℃から2℃/分の昇温速度で昇温しながら、印加周波数10Hzで測定した際に、貯蔵弾性率が大きく低下し、損失弾性率が最大となるピークのピークトップの温度をいう。損失弾性率のピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側のピークのピークトップ温度を指す。この際の測定頻度は、測定精度を高めるため、少なくとも20秒に1回以上の測定とすることが望ましい。また、測定用サンプルの調製方法については特に制限はないが、成形歪の影響をなくす観点から、熱プレス成型品の切り出し片を用いることが望ましく、切り出し片の大きさ(幅及び厚み)はできるだけ小さい方が熱伝導の観点より望ましい。
本発明で好適に使用可能な熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でもポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が、取り扱い性・コストの観点からより好ましい樹脂であり、特に、ポリアミド系樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂として好ましいポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα−オレフィン類)やアルケン類をモノマー単位として重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどに例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などに例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などに代表されるエチレンなどα−オレフィンの共重合体等が挙げられる。
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、更により好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、更により好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、組成物の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、組成物の流動性の観点から上記下限値を下回らないことが望ましい。
また、セルロースとの親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。この際の酸としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及びこれらの無水物、並びにクエン酸等のポリカルボン酸、から適宜選択可能である。これらの中でも好ましいのは、変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物である。変性方法については特に制限はないが、過酸化物の存在下/非存在下で融点以上に加熱して溶融混練する方法が一般的である。酸変性するポリオレフィン樹脂としては前出のポリオレフィン系樹脂はすべて使用可能であるが、ポリプロピレンが中でも好適に使用可能である。酸変性されたポリプロピレンは、単独で用いても構わないが、組成物としての変性率を調整するため、変性されていないポリプロピレンと混合して使用することがより好ましい。この際のすべてのポリプロピレンに対する酸変性されたポリプロピレンの割合は、0.5質量%〜50質量%である。より好ましい下限は、1質量%であり、更に好ましくは2質量%、更により好ましくは3質量%、特に好ましくは4質量%、最も好ましくは5質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%であり、更に好ましくは40質量%、更により好ましくは35質量%、特に好ましくは30質量%、最も好ましくは20質量%である。セルロースとの界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、樹脂としての延性を維持するためには、上限以下が好ましい。
酸変性されたポリプロピレンの、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定したときの好ましいメルトマスフローレイト(MFR)は、セルロース界面との親和性を高めるため、50g/10分以上であることが好ましい。より好ましい下限は100g/10分であり、更により好ましくは150g/10分、最も好ましくは200g/10分である。上限は特に限定されないが、機械的強度の維持から好ましい上限は500g/10分である。MFRをこの範囲内とすることにより、セルロースと樹脂との界面に酸変性されたポリプロピレンが存在しやすくなるという利点を享受できる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂の例示としては、ラクタム類の重縮合反応により得られるポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12や、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1−6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミン等のジアミン類と、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸等のジカルボン酸類との共重合体として得られるポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6、C、ポリアミド2M5,C、及びこれらがそれぞれ共重合された共重合体、一例としてポリアミド6,T/6,I等の共重合体が挙げられる。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12といった脂肪族ポリアミドや、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,Cといった脂環式ポリアミドがより好ましく、ポリアミド6及びポリアミド6,6は特に好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETと称することもある)、ポリブチレンサクシネート(脂肪族多価カルボン酸と脂肪族ポリオールとからなるポリエステル樹脂(以下、単位PBSと称することもある)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下、単にPBSAと称することもある)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、単にPBATと称することもある)、ポリヒドロキシアルカン酸(3−ヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂。以下、単にPHAと称することもある)、ポリ乳酸(以下、単にPLAと称することもある)、ポリブチレンテレフタレート(以下、単にPBTと称することもある)、ポリエチレンナフタレート(以下、単にPENと称することもある)、ポリアリレート(以下、単にPARと称することもある)、ポリカーボネート(以下、単にPCと称することもある)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でより好ましいポリエステル系樹脂としては、PET、PBS、PBSA、PBT、PENが挙げられ、更に好ましくは、PBS、PBSA、PBTが挙げられる。
本発明における熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂には、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、1,3−ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましく使用できる。特に、コモノマー成分(例えば1,3−ジオキソラン)量としては0.01〜4モル%の範囲内がより好ましい。コモノマー成分量の好ましい下限量は、0.05モル%であり、より好ましくは0.1モル%であり、更により好ましくは0.2モル%である。また好ましい上限量は、3.5モル%であり、更に好ましくは3.0モル%であり、更により好ましくは2.5モル%、最も好ましくは2.3モル%である。
押出加工や成形加工時の熱安定性の観点から、下限は上述の範囲内とすることが望ましく、機械的強度の観点から、上限は上述の範囲内とすることが望ましい。
≪第三の工程≫
本発明においては、第二の工程に引き続き、第二の工程で得られた混練物から水を主成分とする分散媒を除去する第三の工程を設ける必要がある。
この第三の工程における分散媒の除去は、第二の工程での加圧状態から大気圧への開放による、分散媒の蒸発によって実現できるが、これに加えて、第三の工程の一部を大気圧未満の減圧状態にて実施してもよい。第三の工程の少なくとも一部を大気圧未満の減圧状態で行う方法がより好ましい。
この第三の工程の具体例としては、例えば、オートクレーブ装置内で行う製法においては、溶融状態の熱可塑性樹脂中にセルロース分散液を液添添加した後、オートクレーブのバルブを開放して、内圧を下げていく方法、押出機を用いる製法においては、第二の工程の下流側で、蒸発した分散媒を大気解放ベント経由で除去する方法や、減圧吸引等で強制的に分散媒等を除去する方法が挙げられるが、商業的な生産を意図した場合、押出機を用いる方法がより好ましい。また、押出機の中でも、二軸押出機がより好ましく使用可能である。
第三の工程において、大気圧未満の減圧状態とすることで、真空成形時のガスの発生を抑制し、金型の転写性が高まるという副次的な効果をもたらすことが可能となる。これは、混練物中に含まれる揮発成分が、減圧下で除去されるためであると考えられる。
第三の工程で混練物から分散媒を除去することにより、目的の樹脂組成物が得られる。
本発明の製造方法で得られる樹脂組成物における、熱可塑性樹脂の好ましい比率は、40〜99質量%である。下限量は、より好ましくは50質量%、更に好ましくは60質量%、更により好ましくは70質量%、特に好ましくは80質量%、最も好ましくは90質量%である。好ましい上限は、98質量%であり、最も好ましい上限は、97質量%である。
本発明に係る製造方法を採ることにより、樹脂組成物に含まれるセルロースが少量であっても高い伸張粘度を発現することが可能となる。
また、本発明では、上記した成分のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。これら付加的成分の添加量は、樹脂組成物合計量を100質量部としたとき15質量部を超えない範囲であることが望ましい。
付加的成分の例としては、追加の熱可塑性樹脂、無機フィラー(タルク、カオリン、ゾノトライト、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ガラス繊維など)、無機フィラーと樹脂との親和性を高める為の公知のシランカップリング剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、着色用カーボンブラック等の着色剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂中にセルロースを高度に分散させることが可能となるため、得られる樹脂組成物の伸張粘度を向上させ、溶融状態で延伸がかかる材料等に使用可能である。具体的には、大型のシート成形、ブロー成形、真空成形及びインフレーション成形等で成形される、種々の大型部品用途に好適に使用可能である。もちろん、通常の射出成型品においても、セルロースの高い分散性によって安定した物性が得られるため、信頼性が要求される自動車外装材、シャーシ等の構造部材、内装部材、ギア等の駆動部材等に好適に使用可能である。
本発明を実施例に基づいて更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
[原料及び評価方法]
以下に、使用した原料及び評価方法について説明する。
≪熱可塑性樹脂≫
ポリアミド
ポリアミド6(以下、単にPAと称す。)
宇部興産株式会社より入手可能な「UBEナイロン 1013B」
≪評価方法≫
<セルロースの重合度>
「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定した。
<セルロースの結晶形、結晶化度>
X線回折装置(株式会社リガク製、多目的X線回折装置)を用いて粉末法にて回折像を測定(常温)し、Segal法で結晶化度を算出した。また、得られたX線回折像から結晶形についても測定した。
<セルロースのL/D>
セルロースを、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものの粒子像を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。粒子像の長径(L)及び短径(D)を計測し、更にこれらの値から比(L/D)を求め、100個〜150個の粒子の平均値として算出した。
<セルロースの平均径>
セルロースを固形分40質量%として、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、商品名「5DM−03−R」、撹拌羽根はフック型)中において、126rpmで、室温常圧下で30分間混練した。次いで、固形分0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」、ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、更に、この上澄みについて、116000m2/sで45分間遠心処理する。)した。遠心後の上澄み液を用いて、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分間、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)を測定し、この値を平均径とした。
<樹脂組成物中の異物量>
樹脂組成物ペレットを、ISOの多目的試験片の形状に射出成形した後、該成形片の中央部を、高分解能3DX線顕微鏡(nano3DX:リガク社製)を用いて、X線管電圧40kV、管電流30mA条件、成形片中央部の600立方μmを対象に、CT測定を実施した。投影数は1000枚とし、露光時間は1枚当たり24秒とした。この時の空間分解能は0.54μm/ピクセルであった。得られたデータはOtsu法にて二値化し、組成物中に物体として検出された体積を、全体体積で除して、異物量として算出した。この場合、仮にセルロースを10体積%配合して、その半分が空間分解能以上の凝集体として組成物内に存在していた場合、5体積%が異物として計算されることとなる。
<真空成形性>
樹脂組成物ペレットを、幅約15cmのシートが成形可能な単軸シート押出機を用いて、シリンダー温度及びダイ温度を240℃に設定、ダイ厚みを0.6mmに調整し、吐出量が35kg/hrとなるようスクリュー回転数を調節し、引き取りローラーの回転速度を調節し、厚み約0.4mm、長さ約300mmのシートを得た。このときのシートの幅は、約140〜145mmであった。
図1は、実施例におけるカップ状真空成形片の作製方法を説明する概略図である。真空成形性の評価として、得られたシートを200mmの長さに切断し、真空成形機での成形を実際に行った。真空成形機の金型は、幅70mm、長さ80mm、深さ30mmの四角いカップ状形状の成形片と幅70mm、長さ80mm、深さ35mmの四角いカップ状形状の成形片を同時に成形できる金型であり、シート1の加熱投影面積は240cm2(20cm×12cm)である。
真空成形機のヒーター(図示せず)は280℃に設定し、予備加熱時間は5分とし、予備加熱終了後すぐに減圧吸引を実施して、シート1をシート押さえ部2で押さえながら真空成形を実施した。この予熱時間終了直後の樹脂の温度を非接触型赤外線温度計で測定したところ約220℃であった。得られたカップ状成形片の成形状態を目視で確認し以下の3段階で評価した。
3点:伸張部分の厚みが均一であり、きれいなカップ状成形片が得られた。
2点:伸張部分の厚みに偏りがあるが、カップ状の成形片は得られた。
1点:伸張部分に裂け目や穴が確認され、カップ状成形片が得られなかった。
≪押出機デザイン≫
押出機デザイン−1
シリンダーブロック数が13個ある二軸押出機(STEER社製 OMEGA30H、L/D=60)のシリンダー6に圧力コントロール型の液体注入ノズルを設置し、シリンダー1を水冷、シリンダー2を150℃、シリンダー3を250℃、シリンダー4〜7を270℃、シリンダー8〜13及びダイスを250℃に設定した。
押出機のスクリューデザインは、シリンダー1及び2を搬送スクリューのみで構成される搬送ゾーンとし、シリンダー3に上流側より2個の時計回りニーディングディスク(送りタイプニーディングディスク:以下、単にRKBと呼ぶことがある。)と、NKB及びLKBを配して、樹脂溶融ゾーンとし、シリンダー4をシリンダー2と同様に搬送ゾーンとし、シリンダー5にSRと引き続いてのLSを配して、液添ゾーン(シリンダー6)上流側の溶融樹脂シールゾーンとし、シリンダー6の液体添加部分に撹拌効率を高めるため複数のNKBを配した。次いで、シリンダー7において、SRと引き続いてのLSを配することで、液添ゾーン下流側の溶融樹脂シールとした。シリンダー8は、搬送ゾーンとし、続くシリンダー9の上部は開口部とし、シリンダー7のシール部を超えて解放された樹脂から出た水蒸気を放出する脱蒸気ゾーンとした。更に、シリンダー11にて、RKBとそれに引き続いての2個のNKBと1個のLSを配した後、シリンダー12で減圧吸引が可能とした。その後シリンダー13の搬送ゾーンを経由してダイスよりストランド形状で押出し、水冷してペレタイズするデザインとした。
押出機デザイン−2
押出機デザイン−1と同じ押出機を使用し、同じくシリンダー6に圧力コントロール型の液体注入ノズルを設置し、シリンダー1を水冷、シリンダー2を80℃、シリンダー3を150℃、シリンダー4〜13及びダイスを250℃に設定した。
押出機のスクリューデザインは、シリンダー1及び2が搬送スクリューのみで構成される搬送ゾーンとし、シリンダー3に上流側より2個のRKBと、NKB及びLKBを配して、樹脂溶融ゾーンとし、シリンダー4をシリンダー2と同様に搬送ゾーンとし、シリンダー5に2個のRKBと引き続いての1個のNKBを配した混練ゾーンとし、液添ゾーンから添加され蒸発した水蒸気が逆流しないようにし、シリンダー6の液体添加部分には、搬送スクリューのみの構成とした。次いで、シリンダー7において、RKBと引き続いての2個のNKBを配して混練ゾーンとした。シリンダー8〜10は、搬送ゾーンとし、シリンダー11にて、1個のNKBと1個のLSを配した後、シリンダー12で減圧吸引が可能とした。その後シリンダー13の搬送ゾーンを経由してダイスよりストランド形状で押出し、水冷してペレタイズするデザインとした。
[実施例1]
<工程1>セルロースファイバー分散液を調製する工程
リンターパルプを裁断後、オートクレーブを用いて、120℃以上の熱水中で3時間加熱し、ヘミセルロース部分を除去した精製パルプを、圧搾し、純水中に固形分率が1.5重量%になるように叩解処理により高度に短繊維化及びフィブリル化させた後、そのままの濃度で高圧ホモジナイザー(操作圧:85MPaにて10回処理)により解繊することにより解繊セルロースを得た。ここで、叩解処理においては、ディスクリファイナーを用い、カット機能の高い叩解刃(以下カット刃と称す)で4時間処理した後に解繊機能の高い叩解刃(以下解繊刃と称す)を用いて更に1.5時間叩解を実施し、セルロースファイバーを得た。得られたセルロースファイバーの特性を上述の方法で評価した。結果を下記に示す。
L/D=300
平均繊維径=90nm
結晶化度=80%
重合度=600
得られたセルロースファイバー分散液を遠心濾過して、固形分(セルロース)率が5重量%の分散液を得た。
<工程2>溶融樹脂中へのセルロース分散液を液添する工程
押出機デザイン−1の押出機を用いて、シリンダー1より、PA6を11.4kg/hの流量で供給した。この時のスクリュー回転数は300rpmとした。
シリンダー6の液添ノズルの開放圧力を、270℃における水の蒸気圧(5.5MPa)より高い6.2MPaに設定し、ポンプでセルロースファイバー分散液を送液し所定圧まで高め、200cc/分の流量で押出機に液添した。
<工程3>分散媒を除去する工程
押出機デザイン−1の押出機のシリンダー12での減圧吸引を実施せず、大気圧で解放(ベントオープン)とし、押出し、セルロースファイバー含有量5質量%の樹脂組成物ペレットを得た。
[実施例2]
<工程1>セルロースウィスカー分散液を調製する工程
市販DPパルプ(平均重合度1600)を裁断し、10%塩酸水溶液中で、105℃で30分間加水分解した。得られた酸不溶解残さを濾過、洗浄、pH調整し、固形分濃度14重量%、pH6.5のセルロースウィスカー分散液を調製した。得られたセルロースウィスカーの特性を上述の方法で評価した。結果を下記に示す。
L/D=1.6
平均径=200nm
結晶化度=78%
重合度=200
<工程2>溶融樹脂中にセルロース分散液を液添する工程
押出機デザイン−1の押出機を用いて、シリンダー1より、PA6を15kg/hの流量で供給する以外は、実施例1と同様に実施した。
<工程3>分散媒を除去する工程
実施例1と同様にシリンダー12での減圧吸引を実施せず、大気圧で解放(ベントオープン)とし、押出し、セルロースウィスカー含有量10質量%の樹脂組成物ペレットを得た。
[実施例3]
<工程1>セルロース混合物分散液を調製する工程
実施例1の工程1で調製したセルロースファイバー分散液と、実施例2の工程2で調製したセルロースウィスカー分散液とを等量で混合し、撹拌機で2時間撹拌し、セルロース含有量が9.5質量%のセルロース混合物分散液を調製した。
<工程2>溶融樹脂中にセルロース分散液を液添する工程
押出機デザイン−1の押出機を用いて、シリンダー1より、PA6を10.2kg/hの流量で供給する以外は、実施例1と同様に実施した。
<工程3>分散媒を除去する工程
実施例1と同様にシリンダー12での減圧吸引を実施せず、大気圧で解放(ベントオープン)とし、押出し、セルロース含有量10質量%の樹脂組成物ペレットを得た。
[実施例4]
工程3のシリンダー12での減圧吸引を実施した以外はすべて実施例3と同様に実施した。
真空成形を実施したところ、表面平滑性に優れた真空成形体が得られた。押出の減圧吸引により組成物中の揮発分が除去されるとともに、ポリアミド樹脂が減圧により高分子化したことが要因と考えられる。
[実施例5]
<工程1>セルロースウィスカー分散液を調製する工程
実施例2の工程1で調製したセルロースウィスカー分散液100質量部に対し、水以外の分散媒として、界面活性剤として、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンRCW−20)を、4質量部添加し、撹拌して、セルロースウィスカー分散液を調製した。セルロースウィスカーの特性は実施例2と同様である。
<工程2>溶融樹脂中にセルロース分散液を液添する工程
押出機デザイン−1の押出機を用いて、シリンダー1より、PA6を14.6kg/hの流量で供給する以外は、実施例2と同様に実施した。
<工程3>分散媒を除去する工程
実施例2と同様にシリンダー12での減圧吸引を実施せず、大気圧で解放(ベントオープン)とし、押出し、セルロースウィスカー含有量10質量%の樹脂組成物ペレットを得た。
[比較例1]
工程2におけるシリンダー6の液添ノズルの開放圧力を、270℃における水の蒸気圧(5.5MPa)より低い2.8MPaに変更した以外はすべて実施例3と同様に実施した。
[比較例2]
<工程1>セルロースファイバー分散液を調製する工程
実施例1の工程1と同様に実施して、固形分(セルロース)率が5重量%の分散液を得た。
<工程2>溶融樹脂中にセルロース分散液を液添する工程
押出機デザイン−2の押出機を用いて、シリンダー1より、PA6を11.4kg/hの流量で供給した。この時のスクリュー回転数は300rpmとした。
シリンダー6の液添ノズルの開放圧力を、ゼロに設定し、実質的に圧力がかからない条件としてポンプでセルロースファイバー分散液を送液し、200cc/分の流量で押出機に液添した。
<工程3>分散媒を除去する工程
押出機デザイン−2の押出機のシリンダー12での減圧吸引を実施せず、大気圧で解放(ベントオープン)とし、押出し、セルロースファイバー含有量5質量%の樹脂組成物ペレットを得た。
[比較例3]
工程2において、押出機デザイン−2の押出機を用いて、シリンダー6の液添ノズルの開放圧力を、ゼロに設定し、実質的に圧力がかからない条件としてポンプでセルロースファイバー分散液を送液した以外はすべて実施例2と同様に実施した。
[比較例4]
工程2において、押出機デザイン−2の押出機を用いて、シリンダー6の液添ノズルの開放圧力を、ゼロに設定し、実質的に圧力がかからない条件としてポンプでセルロースファイバー分散液を送液した以外はすべて実施例3と同様に実施した。
水の蒸気圧以上の圧力で押出機にセルロース分散液を液添した実施例はいずれも、低い異物量を示し、そのため真空成形性は良好であった。一方、実施例3と同様に実施したが、液添時の圧力を樹脂温度における水の蒸気圧未満に低くした比較例1では、異物量が増大し、真空成形性が悪化した。また、更に液添時の圧力がほぼゼロでスクリューデザインも変更した比較例2〜4では、異物量が多く、真空成形した際に小さなやぶれが生じていた。
本発明の製造方法で得られる樹脂組成物は、自動車部材、電気・電子部材、事務機器ハウジング、精密部品等の種々の用途の成形体に好適に適用され得る。
1 シート
2 シート押さえ部

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂と、セルロースとを含む樹脂組成物の製造方法であって、
    水を主成分とする分散媒と、前記分散媒中に分散させたセルロースとを含むセルロース分散液を調製する第一の工程、
    溶融状態にある熱可塑性樹脂中に前記セルロース分散液を添加し、溶融混練して混練物を得る第二の工程、及び
    第二の工程で得られた混練物から分散媒を除去して樹脂組成物を得る第三の工程、
    をこの順に含み、
    第二の工程におけるセルロース分散液の添加を、前記溶融状態にある熱可塑性樹脂の温度における水の蒸気圧以上の圧力で実施する、樹脂組成物の製造方法。
  2. 樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の比率が、樹脂組成物100質量%に対して50〜99質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
  3. 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂及びこれらのいずれか2種以上の混合物からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
  4. 熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂である、請求項3に記載の樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記ポリアミド系樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド6,6、又はこれらの混合物である、請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
  6. セルロースが、セルロースファイバー、セルロースウィスカー又はこれらの混合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  7. 第一の工程で得られたセルロース分散液中のセルロースの比率が、セルロース分散液100質量%に対して1〜30質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  8. 第三の工程における分散媒の除去の少なくとも一部が、減圧状態にて実施される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
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