JP2019043902A - がんの診断及び治療用放射性薬品 - Google Patents

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英郎 佐治
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Tsutomu Abe
務 阿部
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Abstract

【課題】CA−IXを標的とした低分子薬剤であって、特異性が高く、クリアランスが速く、がんの診断及び治療に使用でき、更にはがんのセラノスティクスにも応用できる薬剤を提供する。【解決手段】 下記一般式(2)で示される化合物。【化1】(式中、M3+は3価の金属元素である。)【選択図】なし

Description

本発明は、炭酸脱水酵素―IX(以下、「CA−IX」ともいう)に親和性のある金属キレート及びその用途に関する。
多くの固形腫瘍は、酸素需給のインバランスにより生じた低酸素状態の領域(低酸素領域)を持つという特徴を示す。低酸素領域は、血管走行が乏しい腫瘍部位で酸素の拡散が制限されるために生じるものであるが、腫瘍の毛細血管系が異常であるため酸素圧が維持されなくなることに起因する場合もある。固形腫瘍における低酸素領域は、腫瘍の増殖及び再発に関与する他、化学療法や放射線療法に対する治療抵抗性にも関与する。低酸素領域は、治療成績の悪化にも反映されるので、がん治療の標的としても重要と考えられる。
また、低酸素腫瘍細胞は、腫瘍の増殖に伴って劇的にその局在を変えることが報告されている。このことから、低酸素腫瘍の治療にはリアルタイムなイメージングが重要であり、その実現には治療と診断の融合、すなわち、セラノスティクス(theranostics)の概念が有効であると考えられる。
一方、CA−IXは、膀胱、子宮頸部、頭頚部、乳房、肺、腎臓等のがんにおける固形腫瘍の低酸素領域がん細胞の細胞膜に特異的に発現することが知られている。したがって、CA−IXはがんの治療及び診断の両方の標的として好適である。
従来、CA−IXを標的とした低分子薬剤として、放射性同位元素標識抗体G250の画像診断または放射線治療への使用が提案されているが(非特許文献1−3)、血液からのクリアランスが遅いため、腫瘍/バックグランド比が高く、明瞭な画像が得られておらず、また、被曝線量が高いという欠点があった。CA−IXを標的とした低分子薬剤の画像診断または放射線治療への使用に関する研究は多数報告されているが(非特許文献4−13)、CA−IXを標的としたがんのセラノスティクス(theranostics)に使用できる薬剤については未だ報告がない。
Hoeben BA, et al., J Nucl Med. 2010; 51: 1076-83 Divgi CR, et al., Lancet Oncol. 2007; 8: 304-10 Muselaers CH, et al., Mol Imaging. 2014; 13: 1-7 Gieling RG, et al., J Med Chem. 2012; 55: 5591-600 Krall N, et al., J Nucl Med. 2016; 57: 943-9 Krall N, et al., Chem Sci. 2014; 5: 3640-4 Lau J, et al., J Nucl Med. 2015; 56: 1434-40 Lau J, et al., Mol Pharm. 2016; 13: 1137-46 Lou Y, et al., Cancer Res. 2011; 71: 3364-76 Lv PC, et al., Bioconjugate Chem. 2016; 27: 1762-9 Pacchiano F, et al., J Med Chem. 2011; 54: 1896-902 Peeters SG, et al., Mol Imaging Biol. 2015; 17: 615-9 Sneddon D, et al., J Med Chem. 2016; 59: 6431-43
本発明は、CA−IXを標的とした低分子薬剤であって、特異性が高く、正常組織及び血液からのクリアランスが速く、がんの診断及び治療に使用でき、更にはがんのセラノスティクス(theranostics)にも応用できる薬剤を提供することにある。
本発明者等は、低酸素領域のがん細胞膜に発現するCA−IXに対するリガンドであるウレイドスルホンアミド誘導体を2分子導入した特定の金属錯体がCA−IXを標的とした診断及び治療に好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の一態様は、下記一般式(1)で示される標識前駆体化合物を提供する。
Figure 2019043902
上記式(1)の化合物は3価の金属イオンをキレートして錯体を形成することができる。
したがって、本発明の他の態様は、上記式(1)に記載の化合物を3価の金属イオンとインキュベートすることを含む、下記一般式(2)で示される化合物の製造方法を提供する。
同様に、本発明の他の態様は、下記一般式(2)で示される化合物を提供する。
Figure 2019043902

(式中、M3+は3価の金属元素である。)
上記式(2)の化合物は両末端にCA−IXリガンドであるウレイドスルホンアミド部位を含むので、CA−IXに特異的に集積するという生理活性を有する。
したがって、本発明の他の態様は、上記式(2)で示される化合物を有効成分として含有する医薬を提供する。
上記式(2)の化合物はガンマ線を放出する3価の放射性金属元素をキレートした場合、腫瘍のCA−IX発現部位に特異的に集積して核医学的検査により当該部位を可視化することができる。
したがって、本発明の他の態様は、上記式(2)で示される化合物(但し、M3+はガンマ線を放出する3価の放射性金属元素である。)を有効成分として含有する、CA−IXを発現する腫瘍のイメージング剤を提供する。
同様に、本発明の他の態様は、上記式(2)で示される化合物(但し、M3+はガンマ線を放出する3価の放射性金属元素である。)が投与された被検体に対し核医学的検査により断層撮影を行うことにより、前記被検体の腫瘍のCA−IX発現部位の描出像を含む画像データを生成するステップを含む、腫瘍の撮像方法を提供する。
また、上記式(2)の化合物はアルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素をキレートした場合、腫瘍の低酸素領域のCA−IX発現部位に集積して放射線治療を可能とする。
したがって、本発明の他の態様は、上記式(2)で示される化合物(但し、M3+はアルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素である。)を有効成分として含有するCA−IXを発現する腫瘍の放射線治療剤を提供する。
同様に、本発明の他の態様は、上記式(2)で示される化合物(但し、M3+はアルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素である。)をCA−IXを発現する腫瘍の患者に対して投与することを含む、腫瘍の放射線治療方法を提供する。
また、アルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素をキレートする上記式(2)で示される化合物と、ガンマ線を放出する3価の放射性金属元素をキレートする上記式(2)で示される化合物とを併用することによって、CA−IX発現する腫瘍のセラノティクスが可能となる。
したがって、本発明の他の態様は、M3+がアルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素である上記式(2)で示される化合物、及び、M3+がガンマ線を放出する3価の放射性金属元素である上記式(2)で示される化合物を共に有効成分として含有するCA−IXを発現する腫瘍のセラノスティクス用医薬を提供する。
また、本発明の他の態様は、医薬の製造における、請求項1又は3に記載の化合物の使用を提供する。
本発明の上記一般式(2)で示される化合物は、生体に投与した場合、腫瘍のCA−IX発現部位に特異的に集積するとともに良好なクリアランスを示すので、腫瘍のCA−IX発現部位を核医学的検査により鮮明に撮像できるだけでなく、重篤な毒性を伴うことなくCA−IXを発現する腫瘍の増殖を抑制することができ、更には化学療法や放射線療法に対する治療抵抗性の抑制も期待できるので、がんの放射線治療に有用であり、がんのセラノスティクス(theranostics)にも応用できる。また、本発明の上記一般式(2)で示される化合物は、比較的大きな分子量を持つと共に、電荷をも持つため、細胞膜透過性が低いので、細胞表面に存在するCA−IXに対する選択性に優れている。
実施例3で測定した標識化合物のHPLC溶出パターンである。 実施例5の結果を示す図である。AはHT-29細胞、MDA-MB-231細胞、 RCC4-VHL細胞、及びRCC4-VA 細胞におけるCA-IX(上段)及びGAPDH(下段)の発現を示すウエスタンブロットである。Bは、化合物のHT-29細胞、MDA-MB-231細胞、RCC4-VHL細胞、及びRCC4-VA 細胞におけるCA-IXへの親和性がCA-IXに親和性を有するアセタゾラミドの共存によって阻害されるかどうかを示すグラフである。数値は、5又は6回についての平均±標準偏差として示す。*P < 0.001 (Student’s t-test)。 実施例6の結果を示す図である。AはHT-29移植腫瘍及びMDA-MB-231腫瘍におけるCA-IX(上段)及びGAPDH(下段)の発現を示すウエスタンブロットである。Bは、各時点における各臓器の放射能量を示す。Cは、血液又は筋肉の放射能量に対するHT-29移植腫瘍の放射能量の比の経時的変化を示す。*はアセタゾラミド(Blocking剤)を共投与した場合を示す。数値は、5検体についての平均±標準偏差として示す。P < 0.05各回。 P < 0.001 (Student’s t-test)。 実施例8及び9で得られたHPLC溶出パターンである。Aは実施例8で得られたマウス血漿中における添加後1、4、8及び24時間の[111In]US2のHPLC溶出パターンである。B及びCは実施例9で得られた血液中及びHT-29移植腫瘍中の投与後1及び24時間 の[111In]US2のHPLC溶出パターンである。 実施例10で得られた担がんマウス(HT-29細胞:MDA-MB-231)モデルを用いた[111In]US2によるSPECT/CT画像。Aは撮像方向の説明図である。Bは[111In]US2のみを投与した場合のSPECT/CT画像である。Cは[111In]US2とアセタゾラミドを共投与した場合のSPECT/CT画像である。図において、左側の矢印はHT-29移植腫瘍を示し、右側の矢印はMDA-MB-231腫瘍を示し、中央の矢印は肝臓を示す。 実施例11で得られたex vivoオートラジオグラムおよび免疫組織学的染色像である。Aは[111In]US2を用いたHT-29移植腫瘍の切片におけるCA-IXを可視化したex vivoオートラジオグラムである。Bは抗CA-IX抗体を用いてHT-29移植腫瘍の隣接切片を可視化した免疫組織化学染色パターンである。 実施例12の放射線治療の方法およびその効果を評価する方法を示す。 実施例12の放射線治療の治療計画を示す図である。 実施例12におけるマウスのHT-29移植腫瘍の腫瘍増殖曲線である。 実施例12における相対腫瘍体積の経時変化([90Y]US2投与日の腫瘍体積に対する比)を示すグラフである。 実施例12におけるマウスの体重の経時変化を示すグラフである。 実施例12におけるマウスの相対体重の経時変化([90Y]US2投与日の体重に対する比)を示すグラフである。 は実施例12におけるマウスの白血球数の経時変化を示すグラフである。 実施例12におけるマウスの相対白血球数の経時変化([90Y]US2投与日の白血球数に対する比)を示すグラフである。 実施例12におけるマウスの血小板数の経時変化を示すグラフである。 実施例12におけるマウスの血小板数の[90Y]US2投与日の血小板数に対する比の経時変化を示すグラフである。 実施例12で得られた生存曲線を示すグラフである。
本発明において、上記式(2)化合物中のM3+で表される3価の金属元素としては、該化合物よってキレートされるものであれば特に限定されないが、例えば、インジウム、ガリウム、アクチニウム、イットリウム、ルテチウム等が挙げられる。上記式(2)化合物をイメージング剤として使用する場合、M3+としてガンマ線を放出する3価の放射性金属元素が使用される。ガンマ線を放出する3価の放射性金属元素としては、例えば、111In、67Ga、68Gaが挙げられる。上記式(2)の化合物を放射線治療剤として使用する場合、M3+としてアルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素が使用される。アルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素としては、例えば、225Ac、90Y、177Luが挙げられる。
本発明において「イメージング剤」とは、核医学的検査を目的として体内に投与される放射性医薬品を意味するものである。
本発明において核医学的検査としては、ポジトロン断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)などが挙げられ、具体的には、イメージング剤を生体内に投与後、体内から放出される放射線をPET装置、SPECT装置等で検出・画像化することにより、非侵襲的に病態の診断を可能にする検査を意味する。上記式(2)化合物のM3+としてガンマ線を放出する3価の放射性金属元素が使用される場合、核医学的検査としてSPECTが好適である。
上記式(2)化合物はCA−IXを発現する腫瘍に特異的に集積するものであるが、CA−IXを発現する腫瘍としては、例えば、膀胱、子宮頸部、頭頚部、乳房、肺、腎臓等のがんにおける固形腫瘍が挙げられ、CA−IXは固形腫瘍の低酸素領域のがん細胞膜で特異的に発現する。
本発明において、「被検体」とは、核医学的検査の対象とされる生体を意味し、ヒト及び動物を包含する。
本発明において、「患者」とは、放射線治療の対象とされる生体を意味し、ヒト及び動物を包含する。
上記式(1)で示される化合物は、上記式(2)で示される化合物の前駆体化合物である。上記式(2)で示される化合物は、上記式(1)で示される化合物と金属イオンM3+ とを溶媒中でインキュベートすることにより製造することができる。金属イオンM3+としては、金属M3+の塩化物などの塩を使用できる。インキュベートする温度及び時間は金属イオンM3+の種類によって異なり、用いる金属イオンM3+の種類に応じ、好ましい条件を用いれば良い。
本発明のイメージング剤及び放射線治療剤は、非経口的手段によって投与されることが好ましく、剤形としては、注射剤がより好ましい。好ましくは、水溶液であり、適宜、pH調節剤、製薬学的に許容される可溶化剤、等張化剤、安定剤又は酸化防止剤などの追加成分を含んでいてもよい。
本発明のイメージング剤中の上記式(2)で示される化合物の含有量は、使用時に核医学検査が可能となる放射能量を有していれば特に限定されないが、例えば、使用時に50〜740MBqの放射能量を有していれば、成人に対する撮像に実用的である。
本発明の放射線治療剤中の上記式(2)で示される化合物の含有量は、使用時に放射線治療が可能となる放射能量を有していれば特に限定されない。
以下、実施例を記載して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
実施例中、各化合物の分子構造は、NMRスペクトルで同定した。NMR装置として、JNM−ECP−400(日本電子株式会社製)を使用し、溶媒は、重クロロホルムを使用した。H−NMRは、共鳴周波数400MHzで測定し、重クロロホルムのシグナルδ7.24を参照として使用した。全ての化学シフトはデルタスケール(δ)上のppmであり、そしてシグナルの微細分裂については、略号(s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、dd:ダブルダブレット、dt:ダブルトリプレット、dq:ダブルカルテット、ddt:ダブルダブルトリプレット、m:マルチプレット、br:ブロード)を用いて示した。
以下、実施例において「室温」は、25℃である。
・実験用細胞株
ヒト大腸がん細胞株であるHT-29細胞及びヒト乳がん細胞株であるMDA-MB-231細胞は大日本住友製薬株式会社から購入した。pcDNA3-VHL (VHL-発現ベクター)を感染させたヒト腎臓がん細胞株(RCC4) であるRCC4 plus VHL (RCC4-VHL)、及び、pcDNA3 (ベクターのみ)を感染させたヒト腎臓がん細胞株(RCC4)であるRCC4 plus vector alone (RCC4-VA)は、DSファーマバイオメディカル株式会社から購入した。細胞株は、10%の熱不活性化処理されたウシ胎児血清(Thermo Fisher Scientific製)、100 U/mLのペニシリン及び100 μg/mLストレプトマイシンが添加されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM) (Thermo Fisher Scientific製)中で37℃の5% CO2/airインキュベータ内にて培養した。
・実験動物
実施例で使用した雄BALB/c-nu/nuヌードマウス及び雄ddYマウスは清水実験材料株式会社から購入した。雄BALB/c-nu/nuヌードマウスについては、イソフルラン麻酔下に、DMEMとGeltrex (Thermo Fisher Scientific製)の1:1混液150 μL中のMDA-MB-231細胞(1 × 107 細胞/マウス)を左脇腹に皮下接種した。15日後、MDA-MB-231細胞が移植されたマウスの右脇腹にHT-29細胞(1 × 107 細胞/マウス)を皮下接種した。細胞が接種されたマウスは、腫瘍が直径約10〜15mmに達した時点で試験に使用した。放射線治療には、BALB/c-nu/nuヌードマウスの右脇腹にHT-29細胞(5 × 106 細胞/マウス)のみを皮下接種し、腫瘍が直径約5〜10mmに達した時点で使用した。
実施例1:標識前駆体化合物の合成
標識前駆体化合物を下記のスキームに従い調製した。
Figure 2019043902
合成1:2,2’-(4,10-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,7-ジイル)二酢酸(5)の合成
化合物(5)をサイクレン(cyclen)からDe Leon-Rodriguez LM, et al., Tetrahedron Lett. 2006; 47: 6937-40に記載の方法に従い上記スキームに従って調製した。
合成2:4-(3-(4-アミノフェニル)ウレイド)ベンゼンスルホンアミド (6)の合成
スルファニルアミド(172 mg, 1.0 mmol)及び1,1’-カルボニルジイミダゾール (195 mg, 1.2 mmol)をジメチルスルホキシド(DMSO) (5 mL)に溶解し、室温にて3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで反応が完了したことを確認した後、反応混合物を一晩凍結乾燥した。残渣をアセトニトリル(10 mL)に溶解し、1,4-フェニレンジアミン (130 mg, 1.2 mmol)を加え、室温にて1時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/MeOH = 10:1)にて精製し、化合物(6)を71 mg (23%)得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.90 (s,1H), 8.28 (s, 1H), 7.69 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.57 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.18 (s, 2H), 7.08 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.51 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.82 (s, 2H). MS (ESI): C13H14N4O3S (M+)のm/z, 計算値306; 測定値307 (MH+).
合成3:2,2’,2’’-(10-(2-オキソ-2-((4-(3-(4-スルファモイルフェニル)ウレイド)フェニル)アミノ)エチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸(7)の合成
化合物(5)(22 mg, 42 μmol)のジメチルホルムアミド(DMF)(10 mL)溶液に、化合物(6) (13 mg, 42 μmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBT・H2O)(13 mg, 84 μmol)、1-エチル-3-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl) (16 mg, 84 μmol)及びトリエチルアミン(Et3N) (12 μL, 84 μmol)を添加し、室温にて48時間撹拌した。溶媒を減圧下留去し、残差を酢酸エチル(50 mL)に溶解し、有機層を0.5 M水酸化ナトリウム水溶液(50 mL × 2)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL)及び飽和食塩水(50 mL)で連続して洗浄した。有機層を減圧下濃縮し得られた残渣にトリフルオロ酢酸(TFA) (5 mL)を加え、室温にて6時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣を移動相としてH2O/MeCN/TFA (90:10:0.1 (0 min)→60:40:0.1 (30 min))を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)にて精製し、化合物(7)を 6 mg (21%)得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.37 (s, 1H), 9.45 (s, 1H), 9.20 (s, 1H), 7.70 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.61 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.51 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.44 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.20 (s, 2H), 3.39-3.15 (m, 16H), 3.06-2.53 (m, 8H). MS (ESI): C29H40N8O10S (M+)のm/z計算値 692; 測定値693 (MH+).
合成4:2,2’-(4,10-ビス(2-オキソ-2-((4-(3-(4-スルファモイルフェニル)ウレイド)フェニル)アミノ)エチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,7-ジイル)二酢酸(8)の合成
化合物(5)(59 mg, 0.12 mmol)、化合物(6) (71 mg, 0.23 mmol)、 HOBT・H2O (35 mg, 0.23 mmol)、EDC・HCl (44 mg, 0.23 mmol)及び Et3N (32 μL, 0.23 mmol)をDMF (10 mL)に溶解し、室温にて26時間撹拌した。溶媒を減圧下留去し、残渣を酢酸エチル(50 mL)に溶解し、有機層を0.5 M 水酸化ナトリウム水溶液 (50 mL × 2)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL)及び飽和食塩水(50 mL)で連続して洗浄した。有機層を減圧下濃縮し得られた残渣にTFA (5 mL)を加え、室温にて6時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣を移動相としてH2O/MeCN/TFA (90:10:0.1 (0 min)→60:40:0.1 (30 min))を用いたRP-HPLCにて精製し、化合物(8)を19mg (17%)得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.05 (s, 2H), 8.78 (s, 2H), 7.71 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.59 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.54 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.21 (s, 4H), 3.82-3.49 (m, 8H), 3.24-2.73 (m, 16H). MS (ESI): C42H52N12O12S2 (M+)のm/z計算値980; 測定値981 (MH+).
実施例2:[ 114 In]US1および[ 114 In]US2の合成
下記のスキームに従い、114In標識化合物を合成した。
Figure 2019043902
合成1:[ 114 In]US1(9)の合成
化合物(7)(100 mg, 0.14 mmol)のDMSO (1 mL)溶液に無水InCl3(250 mg, 1.13 mmol)及び2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸 (MES)緩衝液 (0.1 M, pH 5.5, 10 mL).を加え、60℃にて6時間撹拌した。反応液を、移動相としてH2O/MeCN/TFA (95:5:0.1 (0 min)→65:35:0.1 (30 min))を用いたRP-HPLCにて精製し、化合物[114In]US1(9)を40mg (35%)得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.49 (s, 1H), 9.14 (s, 1H), 8.86 (s, 1H), 7.72 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.51 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.21 (s, 2H), 2.68-2.65 (m, 8H), 2.47-2.38 (m, 8H), 2.37-2.29 (m, 8H). MS (ESI): C29H37 114InN8O10S+ (M+)のm/z 計算値804; 測定値805 (MH+).
合成2:[ 114 In]US2 (10)の合成
化合物(8) (10 mg, 10 μmol)のDMSO (1 mL)溶液に無水InCl3(23 mg, 10 μmol)及びMES緩衝液 (0.1 M, pH 5.5, 10 mL)を加え、60℃にて12時間撹拌した。反応液を、移動相としてH2O/MeCN/TFA (90:10:0.1 (0 min)→60:40:0.1 (30 min))を用いたRP-HPLCにて精製し、化合物[114In]US2 (10) を9mg (80%)得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.92 (s, 2H), 9.31 (s, 2H), 9.10 (s, 2H), 7.71 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.60 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.49 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.44 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.20 (s, 4H), 3.64 (s, broad, 16H), 3.00-2.71 (m, 8H). MS (ESI): C42H50 114InN12O12S2 + (M+)のm/z 計算値 1092; 測定値1093 (MH+).
実施例3:[ 111 In]US1、 [ 111 In]US2および[ 90 Y]US2の合成
下記のスキームに従い、111In標識化合物及び90Y標識化合物を合成した。
Figure 2019043902
合成1: 111 In標識化合物の合成
111InCl3 (200 μL)溶液をMES緩衝液(0.01 又は 0.1 M, pH 5.5, 600 μL)又は NaOAc 緩衝液 (0.01 又は 0.1 M, pH 6.0, 600 μL)と混合し、室温にて15分間プレインキュベートした。この溶液に前駆体化合物 (7 又は 8)水溶液 (最終濃度0.05 mM)50 μLを 加え、室温、60 ℃又は90 ℃にて30分間インキュベートした。得られた混合物を室温まで冷却し、RP-HPLCにて精製した。得られた111In標識化合物([111In]US1及び[111In]US2)を、下記の条件下で、RP-HPLCにて分析した。得られた[111In]US2の放射化学的収率を表1に示す。また、得られた[111In]US1及び[111In]US2の保持時間を表2及び図1に示す。得られた[111In]US2の放射化学的収率は66.0%であり、放射化学的純度は99.9%以上であった。
・RP-HPLC条件
カラム:Cosmosil C18 カラム (5C18-PAQ, 4.6 × 250 mm)
移動相:H2O/MeCN/TFA (90:10:0.1 (0 min)→60:40:0.1 (30 min))
流速:1.0 mL/min
Figure 2019043902
Figure 2019043902
合成2: 90 Y標識化合物の合成
90YCl3 (100 μL)溶液をMES緩衝液 (0.1 M, pH 5.5, 300 μL)と混合し、室温にて15分間プレインキュベートし、90Y-MES溶液を得た。この溶液に前駆体化合物 (8)水溶液 (最終濃度0.04 mM)50 μLを 加え、90 ℃にて30分間インキュベートした。得られた混合物を室温まで冷却し、RP-HPLCにて精製した。得られた90Y標識化合物([90Y]US2)を、下記の条件下でRP-HPLCにて分析した。得られた[90Y]US2の保持時間を表2及び図1に示す。得られた[90Y]US2の放射化学的収率は48.8%であり、放射化学的純度は99.9%以上であった。
・RP-HPLC条件
カラム:Cosmosil C18 カラム (5C18-PAQ, 4.6 × 250 mm)
移動相: H2O/MeCN/TFA (90:10:0.1 (0 min)→60:40:0.1 (30 min))
流速:1.0 mL/min
実施例4:[ 111 In]US1、[ 111 In]US2及び[ 90 Y]US2の分配係数の測定
実施例3で得られた[111In]US1、[111In]US2及び[90Y]US2の1−オクタノール/PBS(pH 7.4)分配係数を測定した。
上記2相を予め相互に飽和させ、[111In]US1、[111In]US2又は[90Y]US2(50 kBq)を含む15-mL試験管に1−オクタノール(3 mL)及びPBS(3 mL)をピペットで加えた。試験管を2分間ボルテックスし、遠心分離(4,000 g, 5 min)にかけた。1−オクタノール相及びPCS相から0.5mLを分取し、2つの試験管の夫々に移して測定した。残余のPBS相(1 mL)及び新たに用意した1−オクタノール(3 mL)及びPBS(2 mL)を新しい試験管にピペットで加えた。一定の分配係数値が得られるまで(通常6回目の分配まで)、上記ボルテックス、遠心分離及び測定を繰り返した。各試験管の放射能量はガンマーカウンター(型名:Wallac 1470 Wizard、PerkinElmer, Massachusetts, U.S.A.製)で測定した。分配係数は式log Pow = log[カウント1-octanol/カウントPBS]を用いて計算した。結果を表3に示す.
Figure 2019043902
実施例5[ 111 In]US2のin vitro CA-IX 親和性・特異性
HT-29細胞、MDA-MB-231細胞、 RCC4-VHL細胞、及びRCC4-VA 細胞を12-ウェルプレート(5 × 105 cells/well)中37 ℃にて5% CO2の雰囲気下で24時間インキュベートした。培地を取り除いた後、各ウェルに[111In]US2(20 kBq)含む培地(1 mL)を加え、37 ℃にて5% CO2の雰囲気下で2時間インキュベートした。また、これとは別に、[111In]US2(20 kBq)にCA-IXに対する競合化合物としてアセタゾラミド(50 μM)を加えた以外同様のプレートを同様にインキュベートした。その後、各ウェルをリン酸緩衝食塩水(PBS) (pH 7.4) (Thermo Fisher Scientific社製) 1 mLで洗浄し、0.2 M 水酸化ナトリウム水溶液(0.5 mL × 2)で細胞を溶解した。細胞に結合した放射能量をガンマーカウンター(型名:Wallac 1470 Wizard、PerkinElmer, Massachusetts, U.S.A.製)で測定した。結果を図2に示す。
図2Bから、CA-IX陽性のHT-29細胞ではアセタゾラミド存在下で阻害が見られたが、競合化合物非存在下では阻害は見られなかった。一方、CA-IX陰性のMDA-MB-231細胞ではアセタゾラミドの存否にかかわらず競合阻害が見られなかった。また、CA-IX発現を阻害するHippel-Lindau(VHL)腫瘍抑制タンパクを発現するRCC4-VHL細胞ではアセタゾラミドの存否にかかわらず競合阻害が見られなかったが、VHL腫瘍抑制タンパクを発現しないRCC4-VA 細胞ではアセタゾラミド存在下で阻害が見られた。これらのことから、[111In]US2はCA-IX高発現細胞に対するin vitroのCA-IXに対して特異的親和性を示すことがわかる。
なお、図2Aは、HT-29細胞、MDA-MB-231細胞、 RCC4-VHL細胞、及びRCC4-VA 細胞を溶解してポリアクリルアミド電気泳動した後、ポリビニリデンフルオリド膜(Immobilon-P Membrane; Merck製)に転写し、抗CA-IXモノクローナル抗体(ab108351, 1:5,000希釈; Abcam, Cambridgeshire製)又は抗グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)抗体(14C10, 1:1,000希釈; Cell Signaling Technology製)を用いたウエスタンブロットの結果を示す。図2Aに示されるとおり、何れの細胞もGAPDHを発現していたのに対し、CA-IXはHT-29細胞及びRCC4-VA 細胞のみに強い発現が見られ、その他の細胞ではほとんど発現が見られなかった。
実施例6:[ 111 In]US2の担がんマウスにおける体内分布
[111In]US2(40 kBq)を溶解した生理食塩水(100 μL)をHT-29及び MDA-MB-231担がんマウス(各回ともn = 5)の尾静脈から投与した。別途、In vivoでの競合を確認するため、担がんマウスに[111In]US2(40 kBq)の投与と同時にアセタゾラミド(10 mg/kg)を溶解した生理食塩水(100 μL)を投与した。投与1、4、8及び24時間後に、マウスを屠殺し、血液、脾臓、膵臓、胃、腸、腎臓、肝臓、心臓、肺、脳、HT-29移植腫瘍、MDA-MB-231移植腫瘍、及び筋肉を回収した。各臓器の重量を測定し、放射能量をガンマーカウンター(PerkinElmer社製)で測定した。各臓器の放射能集積は、各臓器の放射能量の投与放射能量に対する割合を臓器重量で割った%ID(injected dose)/gで表記した。結果を表4及び図3に示す。
Figure 2019043902

注:表中、数値の単位は%ID/組織重量(g)であり、5検体についての平均±標準偏差で示す。*はアセタゾラミド(10 mg/kg)を共投与したことを示す。†の数値の単位は%IDである。P < 0.05. §P < 0.001.
HT-29細胞及び MDA-MB-231細胞はそれぞれCA-IX陽性細胞株及びCA-IX陰性細胞株として使用されたものであるが、図3Aのウエスタンブロッティングの結果において、HT-29移植腫瘍では大量のCA-IXが発現しているが、MDA-MB-231移植腫瘍ではCA-IXの発現は弱いことが確認できた。また、表4に示されるとおり、[111In]US2はMDA-MB-231移植腫瘍 (投与後1時間で1.64%ID/g)に比べてHT-29移植腫瘍(投与後1時間で4.57%ID/g)に大量に集積するので、CA-IX発現腫瘍に高い特異性を備えていることがわかる。また、[111In]US2がHT-29移植腫瘍に取り込まれる量は従来のCA-IX描出用プローブよりも多いと考えられる。また、全ての時点において、[111In]US2がHT-29移植腫瘍に取り込まれる量はMDA-MB-231移植腫瘍に取り込まれる量を上回っていた。また、図3Bにおいて、投与後24時間におけるHT-29移植腫瘍の放射能量(1.72%ID/g)がアセタゾラミドの共存下では有意に減少していた(0.63%ID/g)ことから、[111In]US2がCA-IXに対して特異性を有していることもわかる。また、図3Cにおいて、HT-29移植腫瘍/血液比及びHT-29移植腫瘍/筋肉がいずれも経時的に増加し、投与後24時間でそれぞれ10.78及び7.75に達していることから、[111In]US2は固形腫瘍のin vivo撮像にとって好ましい薬物動態を備えていることがわかる。
実施例7:[ 111 In]US2の正常マウスにおける体内分布
[111In]US2(40 kBq)を溶解した生理食塩水(100 μL)をddYマウス (雄、5週齢)の尾静脈から投与した。投与1、4、8及び24時間後に、マウスを屠殺し、血液、脾臓、膵臓、胃、小腸、腎臓、肝臓、心臓、肺、脳、及び筋肉を回収した。各臓器の重量を測定し、放射能量をガンマーカウンター(PerkinElmer社製)で測定した。各臓器の放射能集積は、各臓器の放射能集積の投与放射能に対する割合を臓器重量で割った%ID(injected dose)/gで表記した。結果を表5に示す。
Figure 2019043902

注:表中、数値の単位は%ID/組織重量(g)であり、5検体についての平均±標準偏差で示す。*の数値の単位は%IDである。
表5の結果から、[111In]US2は、投与後1時間における血液及び筋肉中の放射能量が低く(それぞれ、2.34及び1.14%ID/g)、血液及び筋肉からの経時的なクリアランスも早い(投与後24時間で、それぞれ、0.10及び0.22%ID/g)ことがわかる。したがって、in vivoイメージングにおいてバックグラウンドシグナルが低くなり、毒性も低くなると考えられる。また、肝臓に比べ腎臓への集積が総ての時点で高かった(投与後1〜24時間で、7.11-11.39%ID/g)が、表3に示されるように[111In]US2が高い疎水性(log Pow = -2.81)を備えるので、腎臓への排泄が多いためと考えられる。
実施例8: [ 111 In]US2のマウス血漿中におけるIn vitro安定性
血液をddyマウスから採取し、静脈血採血管(Becton, Dickinson and Company社製)中で遠心分離した。血漿(200 μL)を分離し、それに[111In]US2(185 kBq)を加え、37℃にて1、4、8及び24時間インキュベートした。そして、アセトニトリル (200 μL)を添加した後、遠心分離(10,000 g, 5 min)を行い、上清をコスモナイスフィルター(S) (0.45 μm, 4 mm)(ナカライテスク社製)で濾過し、濾液を下記条件下にRP-HPLCで分析した。結果を図4A及び表6に示す。
・RP-HPLC条件
カラム: Cosmosil C18 カラム (5C18-PAQ, 4.6 × 250 mm)
移動相: H2O/MeCN/TFA (90:10:0.1 (0 min)→60:40:0.1 (30 min))を用いた分析用流速:1.0 mL/min
Figure 2019043902
図4A及び表6から、24時間インキュベートまでほぼ全ての[111In]US2が代謝を受けず無傷な状態で存在し、十分な安定性を有することがわかる。
実施例9:[ 111 In]US2のマウス血漿中におけるIn vivo安定性
[111In]US2(40 kBq)を溶解した生理食塩水(4.5MBq/100 μL)をHT-29担がんマウス(n = 5)の尾静脈から投与した。投与1及び24時間後に、マウスを断頭により屠殺し、血液及びHT-29移植腫瘍を回収した。血液は遠心分離(4,000 g, 5 min)して血漿を分離し、血漿にアセトニトリルを加えて遠心分離(4,000 g, 5 min)した後、上清をコスモナイスフィルター(S) (0.45 μm, 4 mm)(ナカライテスク社製)で濾過し、濾液をRP-HPLCで分析した。HT-29移植腫瘍はトリス緩衝液でホモジナイズし、アセトニトリルを加えて遠心分離(4,000 g, 5 min)した後、上清をコスモナイスフィルター(S) (0.45 μm, 4 mm)(ナカライテスク社製)で濾過し、濾液を下記条件下にRP-HPLCで分析した。結果を図4B及び図4Cに示す。
・RP-HPLC条件
カラム: Cosmosil C18 カラム (5C18-PAQ, 4.6 × 250 mm)
移動相: H2O/MeCN/TFA (90:10:0.1 (0 min)→60:40:0.1 (30 min))を用いた分析用流速:1.0 mL/min
図4B及び図4Cから、大部分の[111In]US2は投与後1時間において血液及びHT-29移植腫瘍において代謝を受けず無傷の状態で存在して(それぞれ81.4 及び84.4%)いることがわかる。また、図4Cから、HT-29移植腫瘍では投与後24時間において70.4%の[111In]US2が代謝を受けず無傷な状態で存在しており、[111In]US2がCA-IXを認識するとともにCA-IXに結合し続けており、高いin vivo安定性を備えていることがわかる。
実施例10:[ 111 In]US2を用いたin vivo SPECT/CT撮像
[111In]US2(30 MBq)を溶解した生理食塩水(150 μL)をHT-29及び MDA-MB-231担がんマウス(n = 2)の尾静脈から投与した。In vivoにおいて競合実験を行うため、担がんマウスに[111In]US2(30 kBq)の投与と同時にアセタゾラミドを溶解した生理食塩水(150 μL)を投与した(10 mg/kg)。マウスをイソフルランで麻酔し、投与後1、4、8及び24時間において0.6-mmピンホールコリメータ付きU-SPECT-II system (MILabs, Utrecht, the Netherlands) (SPECT 条件: 60 min × 1 frame; CT条件: 60 kV/615 μA のaccurate full angle mode) でSPECT及びCT画像を得た。SPECT画像は0.8-mmガウシアンフィルタを用いたOSEM法(8 subset, 1 iteration)を用いて再構成した。結果を図5に示す。
図5から、右脇腹に移植したHT-29移植腫瘍(図5Bでは左側の矢印の部分)は、投与後1時間で弱く可視化され、投与後4、8及び24時間では高いバックグラウンド比で明瞭に可視化されたが、左脇腹に移植したMDA-MB-231移植腫瘍(図5Bでは右側の矢印の部分)は可視化できなかった。これは、[111In]US2がin vivoにおいてもCA-IXに対して非常に高い選択性を有することを示し、体内分布試験(図3B)の結果とも符合する。
図5Cから、[111In]US2と過剰のアセタゾラミドを同時に投与場合、HT-29移植腫瘍の放射能量が減少したことがわかる。これは、[111In]US2がCA-IXに対して高い選択性を有することを示すものである。また、[111In]US2は血中及び筋肉からのクリアランスも早いので、投与後早期に腫瘍を撮像することが可能となる。
実施例11:[ 111 In]US2が投与されたHT-29担がんマウスのex vivoオートラジオグラフィー
[111In]US2(15 MBq)を溶解した生理食塩水(150 μL)をHT-29担がんマウス(n = 2)の尾静脈から投与した。投与4時間後にマウスを屠殺し、直ちに腫瘍を摘出し、Super Cryoembedding Medium compound (SECTION-LAB製)中に包埋した後、ドライアイス/ヘキサン浴中で凍結させた。10μmの薄切切片を作製し、BASイメージングプレート(富士フィルム株式会社製)に10時間露出した。BAS5000スキャナーシステム(富士フィルム株式会社製)を用いてオートラジオグラムを得た。隣接する薄切切片を免疫組織化学染色するためにPBS中で5分間2回インキュベートし、抗CA-IX第一抗体(ab108351; Abcam, Cambridgeshire, U.K.製、希釈度1:100)と室温で100分間インキュベートした。PBS中で5分間のインキュベーションを2回行った後、抗ウサギ第二抗体(Dako製) と室温で60分間インキュベートした。その後、切片をPBS中で5分間2回インキュベートし、ジアミノベンジジン(Merck製)と5分間インキュベートした。切片を水で洗浄した後、顕微鏡(FSX100; Olympus製)下で観察した。結果を図6に示す。
図6に示されるように、[111In]US2のラジオオートグラムのパターン(図6A)と隣接切片で観察されたCA-IXの免疫組織化学染色パターン(図6B)とが一致しているため、[111In]US2が腫瘍のCA-IXに結合することが確認された。
実施例12:[ 90 Y]US2を用いた放射線治療
[90Y]US2 (7.4, 3.7又は1.85 MBq)を溶解した生理食塩水(100 μL)又は対照としての生理食塩水(100 μL)をHT-29担がんマウス(各投与量毎にn = 6)の尾静脈から投与した。[90Y]US2の投与から4週間まで週に3回腫瘍体積と体重を測定した。腫瘍体積(V)は、式V= [長さ× (幅)2]/2を用いて計算し、初期値(0日目)と比較して相対腫瘍体積として算出した。また、放射線治療による骨髄毒性を末梢血球数を用いて評価した。血液は各マウスの尾静脈から採取した。血液サンプル(2 μL)を白血球カウント用にチュルク試液(0.01%ゲンチアナバイオレット及び1% 酢酸)を用いて1:50の比率で希釈し、血小板カウント用に1%シュウ酸アンモニウムを用いて1:1250の比率で希釈した。細胞のカウントは光学顕微鏡(EVOS XL Core Cell Imaging System; Thermo Fisher Scientific製)及び細胞カウンタ(Cell Counter model R1; Olympus製)を用いて行った。細胞のカウントは、[90Y]US2の投与から4週間まで週に3回行い、初期値(−4日目)と比較して相対血球数として算出した。結果を図7に示す。なお、図7において、数値は、6検体についての平均±標準偏差として示す。
図7Dのとおり、3.7及び7.4MBqの[90Y]US2を投与したマウスの相対腫瘍体積はそれぞれ23日目以降及び12日目以降では、生理食塩水のみ投与した対照よりも有意に小さかったので、7.4及び3.7MBqの[90Y]US2の投与により腫瘍の増殖を抑制することができることがわかる。しかし、1.85 MBqの[90Y]US2を投与したマウスと生理食塩水のみを投与した対照との間には相対腫瘍体積に有意な差は認められなかったので、1.85 MBqの[90Y]US2の投与はHT-29移植腫瘍の治療に有効ではないと考えられる。放射線治療の安全性については、マウスの体重と血球カウント(図7E−J)によって評価したが、体重には大きな変化が見られなかったので、[90Y]US2の安全性は高いものと考えられる。また、[90Y]US2の投与によって白血球及び血小板のカウント数に僅かな減少が特に高投与量群に見られたが、この減少は有意でなく、[90Y]US2の投与から3週以内に回復している(図7G−J)。[90Y]US2の安全性が高いことは、図3B及び表4で示されるように[90Y]US2が迅速なクリアランスを示すことに由来するものと考えられる。
また、図7Cにおいて腫瘍体積750mm3以上となった時点を人道的エンドポイント(安楽死)と設定すると、図8のようなカプラン・マイヤー生存曲線が得られる。この生存曲線から、[90Y]US2の投与によりマウス生存期間は延長したと判断できる。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で示される標識前駆体化合物。
    Figure 2019043902

  2. 請求項1に記載の化合物を3価の金属イオンとインキュベートすることを含む、下記一般式(2)で示される化合物の製造方法。
    Figure 2019043902

    (式中、M3+は3価の金属元素である。)
  3. 下記一般式(2)で示される化合物。
    Figure 2019043902

    (式中、M3+は3価の金属元素である。)
  4. 請求項3に記載の化合物を有効成分として含有する医薬。
  5. 請求項3に記載の化合物(但し、M3+はガンマ線を放出する3価の放射性金属元素である。)を有効成分として含有する、CA−IXを発現する腫瘍のイメージング剤。
  6. 請求項3に記載の化合物(但し、M3+はガンマ線を放出する3価の放射性金属元素である。)が投与された被検体に対し核医学的検査により断層撮影を行うことにより、前記被検体の腫瘍のCA−IX発現部位の描出像を含む画像データを生成するステップを含む、腫瘍の撮像方法。
  7. 請求項3に記載の化合物(但し、M3+はアルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素である。)を有効成分として含有するCA−IXを発現する腫瘍の放射線治療剤。
  8. 3+がアルファ線又はベータマイナス線を放出する3価の放射性金属元素である請求項3に記載の化合物、及び、M3+がガンマ線を放出する3価の放射性金属元素である請求項3に記載の化合物を共に有効成分として含有するCA−IXを発現する腫瘍のセラノスティクス用医薬。
  9. 医薬の製造における、請求項1又は3に記載の化合物の使用。
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