JP2019042666A - 汚泥濃縮装置の運転方法及び、汚泥濃縮システム - Google Patents

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Abstract

【課題】上水汚泥の濃縮処理を行うための汚泥濃縮装置の制御において、汚泥の処理効率をより高くすることができる技術を提供する。【解決手段】汚泥を含む原水を取り込む槽と、前記槽の原水中に浸漬され、前記原水から汚泥を分離して、表面に汚泥を濃縮するろ過体と、前記ろ過体を介して前記槽の中の原水を吸引する吸引装置と、を備える汚泥濃縮装置の運転方法であって、前記吸引装置の吸引圧力の情報を取得し、前記吸引装置の吸引流量を、取得した前記吸引圧力の情報に対応するように制御する。【選択図】図5

Description

本発明は、上水汚泥をろ過して濃縮する汚泥濃縮装置の運転方法及び、汚泥濃縮システムに関する。
上水汚泥は、飲料水を製造する浄水設備において河川水,地下水などの原水に凝集剤を添加して沈殿池の底部に沈降・堆積させた汚泥であり、多量の水分を含んでいるため、重力により一旦濃縮し、さらに、フィルタープレスや天日乾燥機等の最終脱水工程によりさらに濃縮される。このようにして、所定の濃度以上に濃縮された汚泥は、埋立てや園芸土としての再生利用が可能となる。
また、最終脱水工程の前処理として、ろ布や膜を用いた汚泥濃縮装置によって濃縮汚泥をさらに濃縮・脱水することも行われている。このような前処理により、最終脱水工程の見かけの能力を向上させることで、フィルタープレスや天日乾燥機等の小型化や設置台数低減といったコストダウンを期待することができる。
このような技術に関連する発明としては、容器と、容器内に設置した濾過膜と、濾過膜から容器の外に延設した濾液排出手段と、濾過膜の1次側と2次側に差圧を生じさせる差圧発生手段と、容器内に懸濁液を供給する懸濁液供給手段と、容器内の懸濁液を排出する懸濁液排出手段と、濾過膜に付着した残渣を濾過膜から剥離する残渣剥離手段と、剥離された残渣を容器外に排出する残渣排出手段とを有する濾過濃縮装置において、事前に複数バッチろ過を行い、残渣濃度が最も高かった懸濁液排出水位速度条件でろ過を行う技術が公知である(例えば、特許文献1を参照)。
また、膜分離装置への原水の供給量が一定に保持されており、汚泥濃度計で計測された原水の汚泥濃度に基づいて濃縮水の汚泥濃度を所定の目標値にするための透過水量を演算し、管路に配設した流量計の計測値が演算された透過水量となるように吸引ポンプの出力をフィードフォワード制御する技術が公知である(例えば、特許文献2を参照)。
しかしながら、上記の技術においては、ろ布や膜を用いた汚泥濃縮装置における汚泥の処理効率に影響を与える、ろ布や膜の下流側からの吸引圧力に基づいた制御が行われておらず、汚泥濃縮装置による汚泥の処理効率が必ずしも高いとは言えなかった。
特開2008−212768号公報 特開2003−164870号公報
このような現状を鑑みた本発明の目的は、上水汚泥の濃縮処理を行うための汚泥濃縮装置の制御において、汚泥の処理効率をより高くすることができる技術を提供することである。
上記目的を達成するための本発明は、汚泥を含む原水を取り込む槽と、
前記槽の原水中に浸漬され、前記原水から汚泥を分離して、表面に汚泥を濃縮するろ過
体と、
前記ろ過体を介して前記槽の中の原水を吸引する吸引装置と、を備える汚泥濃縮装置の運転方法であって、
前記吸引装置の吸引圧力の情報を取得し、
前記吸引装置の吸引流量を、取得した前記吸引圧力の情報に対応するように制御する、汚泥濃縮装置の運転方法である。
これによれば、汚泥濃縮装置のろ過体を介して吸引装置に原水を吸引させ、原水から汚泥を分離して、ろ過体表面において汚泥を濃縮する場合に、汚泥の処理効率に大きな影響を与える吸引圧力に対応するように、吸引流量を制御するので、汚泥の処理効率をより高くすることが可能となる。
また、本発明においては、前記吸引圧力の情報は吸引圧力の値であり、前記吸引装置の吸引流量を、吸引圧力の値に対応してあらかじめ定められた値となるように制御してもよい。これによれば、例えば、汚泥の処理効率が良好となる、吸引流量と吸引圧力の関係をあらかじめ実験等により求めて決定し、当該関係を記憶させておく。そして、汚泥濃縮装置の運転時においては、吸引圧力の値を取得し、前記関係において各吸引圧力の値に対応する吸引流量の値を読み出して、吸引装置による吸引流量を読み出された値に制御する。このような簡単な制御により、汚泥濃縮装置による汚泥の処理効率をより高くすることが可能となる。
また、本発明においては、前記吸引流量を、前記吸引圧力の値があらかじめ定められた、その時点における目標値となるように(例えば、時間とともに直線状に変化するように)フィードバック制御によって制御するようにしてもよい。これによれば、より精度よく、吸引圧力の値が所定の変化をするように(例えば、時間とともに直線状に変化するように)、吸引流量を制御することが可能である。その結果、より確実に、汚泥濃縮装置による汚泥の処理効率を高めることが可能となる。
また、本発明においては、前記吸引圧力の情報は吸引圧力の変化を示す情報であり、
前記吸引装置の吸引流量を、吸引圧力の変化を示す情報に対応して増減させるように制御してもよい。これによれば、吸引圧力の変化量に対応して(微分成分を利用して)吸引流量を制御することができるので、制御の応答を早め、吸引流量の値をより早期に、吸引圧力の情報に対応した値に制御することが可能である。
また、本発明においては、前記吸引圧力の情報に対応する前記吸引流量は、原水における汚泥の性状に応じて定められていることとしてもよい。
ここで、汚泥濃縮装置の作動中の各吸引圧力の値に対して最適な吸引流量の値は、汚泥の性状によって異なる。よって吸引流量を、吸引圧力の値に対応した流量であってさらに原水における汚泥の性状に対応した流量となるように制御することで、より確実に、汚泥濃縮装置による汚泥の処理効率を高めることが可能となる。
なお、前記汚泥の性状は、原水における汚泥濃度または、汚泥の粘性としてもよい。汚泥濃度や汚泥の粘性が変われば、同じ吸引圧力によって処理できる汚泥の量が変化する。よって、汚泥濃度または、汚泥の粘性に応じて吸引流量を制御することにより、より確実に、汚泥の処理効率を高くすることが可能である。
また、本発明においては、前記ろ過体表面の前記汚泥を剥離した状態から、前記原水のろ過により前記ろ過体表面に前記汚泥が蓄積することで前記吸引装置の吸引圧力が所定の値となるまでを1サイクルのろ過運転とした場合に、
前記吸引圧力の情報に対応する前記吸引流量は、1サイクルのろ過運転における吸引流量の合計が所定量以上となるように定められているようにしてもよい。
これによれば、汚泥濃縮装置の1サイクルのろ過運転における吸引流量の合計が所定量以上になるような、吸引圧力と吸引流量の関係に従って、吸引流量を制御することができ、より確実に、汚泥濃縮装置の1サイクルのろ過運転における汚泥の処理量を確保することが可能である。
また、前記所定量は、ろ過体表面に蓄積する汚泥の量が第二所定量以上となるような吸引流量の合計量としてもよい。これによれば、汚泥濃縮装置の1サイクルのろ過運転においてろ過体表面に蓄積する汚泥の量が第二所定量以上になるような、吸引圧力と吸引流量の関係に従って、吸引流量を制御することができる。その結果、より確実に、汚泥濃縮装置の運転の1サイクルにおける汚泥の堆積量を確保することが可能である。
また、本発明においては、前記ろ過体表面の前記汚泥を剥離した状態から、前記原水のろ過により前記ろ過体表面に前記汚泥が蓄積することで前記吸引装置の吸引圧力が所定の値となるまでを1サイクルのろ過運転とした場合に、
前記吸引圧力の情報に対応する前記吸引流量は、1サイクルのろ過運転における運転時間が所定時間以下となるように定められていることとしてもよい。
ここで、汚泥濃縮装置の1サイクルのろ過運転の時間によって濃縮された汚泥の剥離性が異なることが分かっている。より具体的には、汚泥濃縮装置の1サイクルのろ過運転の時間が長過ぎる場合に、ろ過体表面に蓄積した汚泥の剥離性が悪化することが分かってきた。よって、本発明によれば、汚泥濃縮装置の1サイクルのろ過運転の時間を所定時間以下とすることで、ろ過体表面に蓄積し濃縮された汚泥の剥離性を最適化することが可能となり、汚泥濃縮処理の作業効率を高めることが可能となる。
また、本発明においては、前記吸引圧力の値に対応してあらかじめ定められた値は、
前記吸引圧力の値を含む所定の吸引圧力範囲に対して、該吸引圧力範囲における吸引流量の合計が、第三所定量以上となるように定められた値としてもよい。
これによれば、前記所定の吸引圧力範囲において、吸引流量の合計が第三所定量以上となるような吸引流量を定め、この吸引圧力範囲と吸引流量のセットを複数組み合わせることで、より広い吸引圧力範囲全体に対して吸引流量の合計値を可及的に大きくすることが可能となる。これにより、より広い吸引圧力範囲において汚泥の処理効率を、より確実に向上させることが可能となる。
また、本発明は、汚泥を含む原水を取り込む槽と、
前記槽の原水中に浸漬され、前記原水から汚泥を分離して、表面に汚泥を濃縮するろ過体と、
前記ろ過体を介して前記槽の中の原水を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置の吸引圧力の情報を取得し、前記吸引装置の吸引流量を、取得した前記吸引圧力の情報に対応するように制御する制御装置を備える、汚泥濃縮システムであってもよい。
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することができる。
本発明にあっては、上水汚泥の濃縮処理を行うための汚泥濃縮装置の制御において、汚
泥の処理効率をより高くすることが可能となる。
本発明の実施例に係る上水汚泥濃縮装置の概略図である。 本発明の実施例に係るろ布の概略図である。 本発明の実施例に係るろ布エレメントの概略図である。 本発明の実施例に係る上水汚泥濃縮装置における、ろ過水吸引ポンプによる吸引時の吸引圧力と吸引流量の変化の例を示すグラフである。 本発明の実施例に係る吸引圧力・流量曲線の第1の測定例である。 本発明の実施例に係る吸引圧力・流量曲線の第2の測定例である。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。
<実施例1>
図1は、本実施例における上水汚泥濃縮装置1の概略構成を示す図である。本実施例における上水汚泥濃縮装置1は、凝集剤を添加した原汚泥Mを一旦貯留する原汚泥槽2、原汚泥Mを濃縮沈殿させる濃縮槽3、濃縮槽3において濃縮された濃縮汚泥を乾燥させる天日乾燥床5、装置の制御を行う制御部8及び圧力センサ9を含んでいる。
ここで、原汚泥Mを濃縮沈殿させる濃縮槽3の構成について詳しく説明する。濃縮槽3には原汚泥Mをろ過させるろ過体としてのろ布40を備えたろ布エレメント4が複数備えられている。図2には、ろ布40の概略図を示す。図2(a)は正面図、図2(b)は側面図、図2(c)は上面図を示す。図2から分かるように、ろ布40は、袋状に形成されており、正面から見て概略長方形の封筒状の形状を有している。ろ布表面40aにおいて、原汚泥Mのろ過及び汚泥の分離が可能となっている。また、ろ布40の上下には、上側開口40c、下側開口40dが設けられており、この上側開口40c及び下側開口40dを介してろ布40の内側から原汚泥Mを吸引することで、原汚泥Mをろ過し、ろ過後のろ液を上側開口40c及び下側開口40dから外部へ排出可能となっている。
図3には、ろ布エレメント4の概略図を示す。図3(a)はろ布エレメント4の正面図、図3(b)は上面図である。図3に示すように、本実施例のろ布エレメント4には、5枚のろ布40が備えられている。ろ布エレメント4は、5枚のろ布40を図3(a)の正面図における周囲から囲うように設けられたフレーム4aを有する。このフレーム4aは金属製で中空の管状部材により形成されている。そして、正面図における左右上端には、ろ布40の内部の流体を吸引可能な吸引口4b、4cが設けられている。
また、フレーム4aの上辺にはろ布40の上側開口40cと接続可能な上側接続口4dを5つ備えている。また、フレーム4aの下辺にはろ布40の下側開口40dと接続可能な下側接続口4eを5つ備えている。ろ布40の上側開口40cとフレーム4aの上側接続口4dとは内部が連通された状態で接続され、締結部材(不図示)により内部を流通する流体が漏れないように締結されている。ろ布40の下側開口40dとフレーム4aの下側接続口4eも同様に接続され、締結部材(不図示)により締結されている。
また、フレーム4aの内部には、三箇所の仕切り板4f、4g、4hが設けられており、仕切り板4f、4g、4hの両側において流体の流通は遮断されている。この状態で、吸引口4b、4cから吸引することで、5枚のろ布40の下側開口40d及び上側開口40cの両方を介して、ろ布40の内側から原汚泥Mをろ過することが可能となっている。
次に図1の説明に戻る。図1において、上水の排水池等からの原汚泥Mは、原汚泥槽2に一旦貯留される。貯留された原汚泥Mは原汚泥用ポンプ6によって、原汚泥槽2から濃縮槽3に圧送される。濃縮槽3にはろ布エレメント4が複数備えられており、ろ過水吸引ポンプ7でろ布40の内側から原汚泥Mを吸引可能となっている。ろ過水吸引ポンプ7で、各ろ布エレメント4に取り付けられたろ布40の内側から原汚泥Mを吸引することで、濃縮槽3内の原汚泥Mが各ろ布表面40aから各ろ布40の内部に吸引される。
その際に、原汚泥Mはろ布40によってろ過され、ろ液のみが各ろ布40の内部に移動する。その後、ろ液は、ろ布40の上側開口40c及び下側開口40d、フレーム4aの上側接続口4d及び下側接続口4e、吸引口4b、4cを通過して、ろ過水吸引ポンプ7まで吸引される。そして、ろ液はろ過水吸引ポンプ7を通過して排水または回収される。その際、ろ布表面40aには、原汚泥Mがろ過された後に残る濃縮汚泥が堆積する。
そして、上水汚泥濃縮装置1においては、所定のタイミングで、コンプレッサ(不図示)によって、吸引口4b、4cを介して、ろ布40の上側開口40c及び下側開口40dから空気を送り込む。そうすることで、ろ布40の内部からろ布表面40aを介して空気がろ布40の外部に噴出し、ろ布表面40aに堆積した濃縮汚泥がろ布40から脱落し、濃縮槽3の底面に堆積する。そして、濃縮槽3の底面に堆積した濃縮汚泥は、天日乾燥床5に排出され、天日乾燥床5において天日に曝されることで乾燥された後、処分される。
なお、上記の原汚泥用ポンプ6、ろ過水吸引ポンプ7の制御は制御部8により行われる。この制御部8はポンプ類の駆動回路や圧力センサ9の検出回路を含む電気回路のみで構成されていてもよいし、CPU、記憶装置を有するコンピュータシステムを含んで構成されていてもよい。この制御部8には、吸引圧力を検出する圧力センサ9が電気的に接続されている。そして、ろ過水吸引ポンプ7の制御は、圧力センサ9により検出され制御部8に表示される吸引圧力を見ながら、ユーザにより制御部8を用いたマニュアル操作にて行われてもよい。また、制御部8が有する記憶装置に記憶されたプログラムと、制御データ及び、圧力センサ9による検出データに基づく自動制御により行われてもよい。
次に、ろ過水吸引ポンプ7の作動により変化する吸引圧力と吸引流量の関係について説明する。図4には、上水汚泥濃縮装置1における、ろ過水吸引ポンプ7の作動による吸引圧力と吸引流量の時間的変化の図を示す(以下、吸引圧力・流量曲線ともいう。)。ろ過水吸引ポンプ7で、ろ布40の内側から吸引することで濃縮槽3内の原汚泥Mをろ過する際に、従来は、図4(a)に示すように、吸引圧力が一定となるようにろ過水吸引ポンプ7を作動させる場合があった。そうすると、ろ布表面40aに濃縮汚泥が堆積するとともに、吸引流量は急激に減少し、短時間のうちに吸引流量が極端に減少し、汚泥の処理効率が極端に低下する問題があった。
また、従来は、図4(b)に示すように、吸引流量が一定となるようにろ過水吸引ポンプ7を作動させる場合もあった。この場合には、ろ布表面40aに濃縮汚泥が堆積するとともに、吸引圧力が急激に減少(負圧が増大)し、短時間のうちに設定圧力まで吸引圧力が低下してしまっていた。結果として、短時間のうちに汚泥処理を一旦終了させ、ろ布表面40aに堆積した濃縮汚泥を除去する必要があった。そうすると、ろ過水吸引ポンプ7でろ液を設定圧力まで吸引することで処理可能な汚泥の量が極端に少なくなり、この場合も汚泥の処理効率が極端に低下する問題があった。
これに対し、本実施例では、図4(c)に示すように、吸引圧力の値に応じて吸引流量を変化させつつ原汚泥Mを吸引することとした。すなわち、ろ過水吸引ポンプ7による吸引の開始後、吸引圧力の値が徐々に低下(負圧が徐々に増大)するように、吸引圧力の値に対応させて吸引流量を変化させ、設定圧力(ここでは、約−40KPa)になるまでの
、合計の吸引流量を大きくし、汚泥の処理効率を向上させることとした。設定圧力は、ろ過水吸水ポンプ7の定格の到達圧力であってもよい。なお、本実施例では、吸引圧力が設定圧力まで低下し、一旦ろ過水吸引ポンプ7の作動を停止した後には、コンプレッサにより空気をろ布40内に注入することで、ろ布表面40aに堆積した濃縮汚泥を脱落させる。この一連の動作が、1サイクルの汚泥濃縮処理となる。
ここで、吸引圧力の値に応じて吸引流量を変化させる際に用いる吸引流量の値は、以下の方法で決定した。大気圧から設定圧力までの吸引圧力の範囲を、複数の微小な吸引圧力範囲に分割し、各々の微小な吸引圧力範囲における吸引流量を変更させて、1サイクルのろ過運転を複数回実施した。複数の1サイクルのろ過運転結果から、微小な吸引圧力範囲とその吸引圧力範囲における吸引流量のセットを取り出し、合計の吸引流量や、汚泥の剥離性、吸引ろ過開始から設定圧力までの降下時間などが所望のパラメータの条件を満たすように、組合せて、再度1サイクルのろ過運転を実施した。これを繰り返すことにより、1サイクルのろ過運転において、各パラメータの条件を満足できる微小な吸引圧力範囲と吸引流量(第三所定量に相当)のセット、つまり吸引圧力と吸引流量の関係を定め、さらにその最適な組合せを決定した。
なお、合計の吸引流量は、1サイクルのろ過運転における合計吸引流量が所定量以上になるように定めてもよい。また、汚泥の剥離性については、汚泥が、ろ布からの良好な剥離性を得ることができるように、1サイクルのろ過運転におけるろ過表面に蓄積される汚泥の量が第二所定量以上となるように定めてもよい。一方、吸引ろ過開始から設定圧力までの降下時間は、実用的な運転時間となるように定めてもよい。また、実用的な運転時間となりかつ、ろ布からの良好な汚泥剥離性を得ることができるような運転時間となるように定めてもよい。
ここで、発明者らの鋭意研究により、上記の1サイクルの汚泥濃縮処理において、吸引圧力に応じて適切に吸引流量を変化させることで、1サイクルの汚泥濃縮処理における合計吸引流量を可及的に増大させることができる他、濃縮汚泥の性状を最適化することが可能であることが分かってきた。以下にそれらの点について詳述する。
図5には、吸引流量を吸引圧力に応じた値に制御し、吸引圧力が直線的に低下するようにした場合の吸引圧力・流量曲線を示す。図5は吸引圧力を吸引ろ過開始から30分で−40kPaに達するように変化させた場合のグラフである。図5では、ろ布面積を約3mとした場合に、原汚泥濃度約1.0%の汚泥に対する1サイクルの汚泥濃縮処理において、約90Lの合計吸引流量によって、約10Lの濃縮汚泥をろ布40に堆積させることができた。このように、吸引圧力が吸引ろ過開始から設定圧力まで降下するまでの時間を適切に選択し、吸引圧力と吸引流量の関係に基づいて吸引流量を制御することで、充分な合計吸引流量と濃縮汚泥量が得られ、充分な汚泥の処理効率を得られることが分かった。
次に、図6には、より多くの合計吸引流量及び汚泥量を確保した場合の吸引圧力・流量曲線を示す。図6(a)は吸引圧力が吸引ろ過開始から60分で−40kPaに達するように変化させた場合のグラフである。図6(b)は吸引圧力が吸引ろ過開始から120分で−40kPaに達するように変化させた場合のグラフである。
図6(a)では、ろ布面積を約3mとした場合に、原汚泥濃度約1.0%の汚泥に対する1サイクルの汚泥濃縮処理において、約170Lの合計吸引流量によって、約20Lの濃縮汚泥をろ布40に堆積させることができた。また、図6(b)では、原汚泥濃度約1.0%の汚泥に対する1サイクルの汚泥濃縮処理において、約170Lの合計吸引流量によって、約20Lの濃縮汚泥をろ布40に堆積させることができた。このように、ろ布面積が約3m、原汚泥濃度が約1.0%の条件で、例えば、合計吸引流量を150L以
上とし、その際にろ布40に15L以上の汚泥を堆積させる場合には、図6に示すような吸引圧力・流量曲線を採用すれば良いことが分かった。なお、本実施例において、150Lは吸引流量の合計の所定量に相当し、15Lは、蓄積する汚泥の第二所定量に相当する。
なお、一般的に本発明の技術を用いることができる原汚泥濃度の範囲は、約0.1質量%以上15質量%以下である。より望ましくは、約0.5質量%以上10質量%以下である。さらに望ましくは、約1質量%以上約5質量%以下である。
一方、図6に基づく1サイクルの汚泥濃縮処理において、吸引圧力の降下の時間が長い場合、ろ布40から濃縮汚泥を脱落させる際の汚泥の剥離性が悪化することが分かった。より詳しくは、吸引圧力の降下の時間が長い場合、ろ布40と濃縮汚泥の境界部分の水分が多く、濃縮汚泥の脱落後のろ布表面40aが汚れている現象が見られた。これは、吸引圧力の降下速度を緩やかにしたために、ろ過開始時の吸引流量が低い値となり、ろ布40における初期の汚泥捕捉で汚泥が圧密化されなかったことに起因すると推測される。本実施例では、ろ布面積が約3m、原汚泥濃度が約1.0%の条件で、1サイクルのろ過運転における運転時間を90分以下にすることで、実用上充分な汚泥の剥離性を得ることができた。なお、本実施例において運転時間の90分という値は所定時間に相当する。
次に、本実施例における自動運転について説明する。自動運転においては、吸引圧力を大気圧から設定圧力まで変化させる間、吸引流量を、あらかじめ定めた吸引圧力と吸引流量の関係に基づき制御する。なお、この自動運転は、吸引圧力と吸引流量の関係をあらかじめ上水汚泥濃縮装置1の制御部8の記憶装置に記憶させておき、吸引圧力を圧力センサ9で検出し、検出された吸引圧力に応じた吸引流量になるように、ろ過水吸引ポンプ7を作動させるプログラムによるものであってもよい。自動運転の結果、1サイクルのろ過運転について、安定的かつ精度良く再現することができた。
(汚泥の性状の影響)
次に、汚泥濃縮処理において得られる結果と、汚泥の性状としての原汚泥の濃度との関係について説明する。原汚泥の濃度が変わった場合には、同じ吸引流量で汚泥を吸引した場合に、ろ布表面40aに堆積する汚泥の量が変わるので、最大の堆積汚泥が得られる(汚泥の処理効率が最も高くなる)吸引圧力・流量曲線も変わる。
本実施例では、原汚泥濃度が高い場合には、同じ吸引流量であっても、多くの濃縮汚泥がろ布表面40aに堆積する傾向があるので、同じ吸引圧力範囲に対応する吸引流量を少なく設定する。逆に、原汚泥濃度が低い場合には、同じ吸引流量であっても、濃縮汚泥がろ布表面40aにあまり堆積しない傾向があるので、同じ吸引圧力範囲に対応する吸引流量を多く設定する。しかし、原汚泥濃度が低いからと吸引流量を過度に多くすると、凝集剤の影響により、ろ布がすぐに閉塞してしまう場合がある。その場合には、吸引流量を抑えつつ、原汚泥の濃度に応じた所定量以上の合計吸引流量を確保することで、良好な処理効率を得られることがわかった。
次に、汚泥濃縮処理において得られる結果と、汚泥の性状としての粘性との関係について説明する。ここで、汚泥の性状は、各浄水処理施設における原汚泥の組成、季節、天候、気温などによって様々である。例えば、上水汚泥には、原汚泥の組成、季節、天候、気温などによって量を適宜調整された凝集剤が注入される。これにより、上水汚泥には粘性が生じる。このように汚泥の粘性が高い場合に吸引流量を過度に多くすると急激にろ布40が閉塞するとともに、ろ布表面40aに堆積した汚泥の剥離性が悪くなる。その他、夏場の汚泥は温度が高いので粘性が低く、冬場の汚泥は温度が低いので粘性が高いという特性の違いがある。吸引圧力と吸引流量の関係に基づいて、吸引流量を制御するとともに、
汚泥の性状に応じた吸引流量に制御することで、良好な処理効率を得ることが可能となる。
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例は、実施例1の吸引圧力と吸引流量の関係をあらかじめ定める点を、変更するものである。本実施例においては、実施例1と共通する部分の説明は省略する。本実施例においては、制御装置は、吸引の開始から終了までの間の所定タイミングで、吸引圧力に関する情報を取得し、取得した情報に対応させて吸引流量を制御する。一例として、吸引圧力に関する情報は吸引圧力の情報であり、吸引開始時刻からの時間に対応して、あらかじめ定められた吸引圧力となるように吸引流量を制御する。このようにすれば、吸引圧力は時間の経過とともに直線状に変化することになり、汚泥濃縮装置による汚泥の処理効率を高めることが可能となる。また、別の例として、吸引圧力に関する情報は吸引圧力の変化を示す情報であり、吸引装置の吸引流量を、吸引圧力の変化を示す情報に対応して増減させるように制御する。このようにすれば、吸引圧力の変化量に対応して(微分成分を利用して)吸引流量を制御することができるので、制御の応答を早め、吸引流量の値をより早期に、吸引圧力の情報に対応した値に制御することが可能である。ここで、これらの制御を精度よく行うために、フィードバック制御等を取り入れてもよい。
本実施例における自動運転については、吸引圧力が、直線的な下降ラインに沿った目標値になるように、吸引圧力の変化を示す情報に対して、フィードバック制御によって吸引流量を調整する。
なお、本発明が適用されるろ布及びろ布エレメントは、図2及び図3に示したものに限られない。本発明は、他の形状・仕様で作成されたろ布及びろ布エレメントに適用可能であることは当然である。また、上記の実施例においては、上水汚泥濃縮装置1に制御部8及び、圧力センサ9が備えられた例について説明したが、上水汚泥濃縮装置1は制御部8または圧力センサ9を備えず、これらを別途準備するようにしても構わない。
1・・・上水汚泥濃縮装置
2・・・原汚泥槽
3・・・濃縮槽
4・・・ろ布エレメント
5・・・天日乾燥床
6・・・原汚泥用ポンプ
7・・・ろ過水吸引ポンプ
8・・・制御部
9・・・圧力センサ
40・・・ろ布
M・・・原汚泥
F・・・ろ液

Claims (9)

  1. 汚泥を含む原水を取り込む槽と、
    前記槽の原水中に浸漬され、前記原水から汚泥を分離して、表面に汚泥を濃縮するろ過体と、
    前記ろ過体を介して前記槽の中の原水を吸引する吸引装置と、を備える汚泥濃縮装置の運転方法であって、
    前記吸引装置の吸引圧力の情報を取得し、
    前記吸引装置の吸引流量を、取得した前記吸引圧力の情報に対応するように制御する、汚泥濃縮装置の運転方法。
  2. 前記吸引圧力の情報は吸引圧力の値であり、
    前記吸引装置の吸引流量を、吸引圧力の値に対応してあらかじめ定められた値となるように制御する、請求項1記載の汚泥濃縮装置の運転方法。
  3. 前記吸引圧力の情報は吸引圧力の変化を示す情報であり、
    前記吸引装置の吸引流量を、吸引圧力の変化を示す情報に対応して増減させるように制御する、請求項1記載の汚泥濃縮装置の運転方法。
  4. 前記吸引圧力の情報に対応する前記吸引流量は、原水における汚泥の性状に応じて定められている、請求項1から3のいずれか一項に記載の汚泥濃縮装置の運転方法。
  5. 前記ろ過体表面の前記汚泥を剥離した状態から、前記原水のろ過により前記ろ過体表面に前記汚泥が蓄積することで前記吸引装置の吸引圧力が所定の値となるまでを1サイクルのろ過運転とした場合に、
    前記吸引圧力の情報に対応する前記吸引流量は、1サイクルのろ過運転における吸引流量の合計が所定量以上となるように定められている請求項1から4のいずれか一項に記載の汚泥濃縮装置の運転方法。
  6. 前記所定量は、ろ過体表面に蓄積する汚泥の量が第二所定量以上となるような量である、請求項5に記載の汚泥濃縮装置の運転方法。
  7. 前記ろ過体表面の前記汚泥を剥離した状態から、前記原水のろ過により前記ろ過体表面に前記汚泥が蓄積することで前記吸引装置の吸引圧力が所定の値となるまでを1サイクルのろ過運転とした場合に、
    前記吸引圧力の情報に対応する前記吸引流量は、1サイクルのろ過運転における運転時間が所定時間以下となるように定められている請求項1から5のいずれか一項に記載の汚泥濃縮装置の運転方法。
  8. 前記吸引圧力の値に対応してあらかじめ定められた値は、
    前記吸引圧力の値を含む所定の吸引圧力範囲に対して、該吸引圧力範囲における吸引流量の合計が、第三所定量以上となるように定められた値であることを特徴とする、請求項2に記載の汚泥濃縮装置の運転方法。
  9. 汚泥を含む原水を取り込む槽と、
    前記槽の原水中に浸漬され、前記原水から汚泥を分離して、表面に汚泥を濃縮するろ過体と、
    前記ろ過体を介して前記槽の中の原水を吸引する吸引装置と、
    前記吸引装置の吸引圧力の情報を取得し、前記吸引装置の吸引流量を、取得した前記吸引圧力の情報に対応するように制御する制御装置を備える、汚泥濃縮システム。
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