以下、本発明の苗移植機について説明する。図1に、本実施の形態の苗移植機1の概略の左側面図を示し、図2に概略の平面図を示す。
野菜などの苗を移植する苗移植機1は、図1、図2及び図4に示すとおり、走行車輪としての左右一対の前輪2および後輪3を備えた走行車体15と、走行車体15の前部に配置されたエンジン12及びミッションケース(主伝動ケース)4と、走行車体15の後部に配置された、苗22を圃場に植え付けるべく植付具11を上下揺動させる苗植付装置300と、その苗22を収容したトレイ20を供給するトレイ搬送装置100と、そのトレイ搬送装置100のトレイ20の育苗ポット21の内部に取出部材260を突入させて苗22を取りだして植付具11へ供給する取出装置200と、苗22の植付深さを一定に保つセンサ板を含む植付深さ調整機構と、鎮圧輪13、操縦ハンドル8、及び操縦ハンドル8の中央部に配置された操作部800等を備えて構成されている。
また、図1、図2に示すとおり、エンジン12から出力される回転動力はミッションケース4により分岐され、左右一対の走行伝動ケース60を介して左右一対の後輪3に伝動されると共に、ミッションケース4の後側に設けられた植付伝動装置18にも伝動される。
即ち、苗移植機1では、育苗ポット21から苗22を取り出して圃場の畝部に植付けるべく、ミッションケース4からの動力が植付伝動装置18に伝動されて、チェーンベルト202を介して取出装置200に伝動されるとともに、その植付伝動装置18に取り付けられた苗植付装置駆動機構400と、苗植付装置300を介して植付具11に伝達される。苗移植機1の植付動作は、苗植付装置駆動機構400により間欠的に行われる。
また、トレイ搬送装置100には、図2に示す通り、トレイ搬送路111上のトレイ20の有無を検知するトレイ検知装置1100を設ける。該トレイ搬送装置100の送り動作は、トレイ20の横方向一列分の育苗ポット21の苗が、取出部材260により順次取り出されるべく、苗置台110が、間欠的に左右横方向に送られる横送り動作と、横方向一列分の全ての育苗ポット21の苗の取出が完了した後、苗置台110上のトレイ20がトレイ送りロッド121により育苗ポット21の横方向一列分について下方向に送られる縦送り動作がある。
トレイ送りロッド121による縦送りは、トレイ20の裏面側の隣接する育苗ポット21間の溝部にトレイ送りロッド121の先端部が係合した状態となり、この状態でトレイ送りロッド121が側面視で略四角形の軌跡A(図5参照)を描いて回動することにより、トレイ20がトレイ搬送路111に沿って斜め下方に間欠的に縦送りされることで実行される。
また、図1、図2に示すとおり、ミッションケース4の後端の左右方向に配置された左右フレーム16の後部には、右寄りの位置に延びる主フレーム17を設ける。該主フレーム17の後端部には左右端側から後方に延びた操縦ハンドル8を設け、この操縦ハンドル8が主フレーム17及び左右フレーム16を介してミッションケース4に支持された構成となっている。
これにより、作業者は、走行車体15の後方を歩きながら操縦ハンドル8を用いて走行車体15の操向操作を行うことができる。
即ち、苗移植機1は、左右の前輪2、2及び左右の後輪3、3によって畝Uを跨いだ状態で走行車体15を進行させながら、トレイ20に収容されている苗22を畝Uの上面に自動的に植え付ける構成である。
また、走行部には、走行車体15に対し左右の後輪3、3を上下動させて、走行車体15の姿勢及び車高を制御する機体制御機構50を設けている。該機体制御機構50は、前記後輪3の走行伝動ケース60と走行車体15の間において、後輪3の上下動によって走行車体15を昇降する油圧昇降シリンダ10と、走行車体15を左右傾斜させる水平用油圧シリンダ14が設けられており、該油圧昇降シリンダ10を伸縮作動させると、左右の後輪3が同方向に同量だけ走行車体15に対して上下動し、走行車体15が昇降する。
図1、図2に示す通り、左右の後輪3側に駆動力を出力するミッション出力軸4aがミッションケース4の左右外側に向けて突出している。さらに、走行伝動ケース60の入力軸61が、ミッション出力軸4aとスプライン結合により連結される。また、走行伝動ケース60からミッションケース4側に突き出した左右の回動外筒部63の外周の上面側には、入力軸61と直交方向に延びたスイングアーム63aが各々固着される(図1、図2参照)。そして、走行伝動ケース60は、左右の回動外筒部63を介して、ミッションケース4に対して入力軸61を中心として回動可能に連結される。
また、油圧昇降シリンダ10のピストンロッドの先端部にはロッド連結板9が取り付けられており、ロッド連結板9の左右両端部と、左右のスイングアーム63aとが、連結ロッド9aを介して連結されている。そして、左側の連結ロッド9aとスイングアーム63aの間には、水平用油圧シリンダ14を設けている。
また、油圧昇降シリンダ10は、ミッションケース4の上部に設ける油圧切替バルブ部40(図1参照)に固着され、ミッションケース4に設けた油圧ポンプからの送油を切り替える切替バルブ部40に備えられた、昇降操作バルブ(図示省略)を操作することにより作動する構成である。
また、ミッションケース4の右側には振り子式の左右傾斜センサ41を設け、該左右傾斜センサ41の検出により切替バルブ部40に設ける水平操作バルブ(図示省略)を介して水平用油圧シリンダ14を作動させ、左側の後輪3のみを上下動させて、畝Uの谷部の凹凸に関係なく走行車体15を左右水平に維持する構成としている。
ここで、植付具11について、図3(a)〜図3(c)を用いて説明する。図3(a)、図3(b)に示すとおり、植付具11は、苗を一時的に保持し圃場に植え付ける、左側ホッパー部1011L及び右側ホッパー部1011Rと、左側ホッパー部1011L及び右側ホッパー部1011Rの上端部を保持すると共に、左側ホッパー部1011L及び右側ホッパー部1011Rの先端側を開閉するべく互いに離合可能に連結された左ホッパーホルダー1012L及び右ホッパーホルダー1012Rと、左ホッパーホルダー1012L及び右ホッパーホルダー1012Rを支点軸1013aを中心に回動可能に保持するホルダー保持枠1013と、左ホッパーホルダー1012L及び右ホッパーホルダー1012Rの前側下端部に一端と他端が固定されて、左側ホッパー部1011L及び右側ホッパー部1011Rが閉じる方向の圧縮力を常時付勢するホッパー引っ張りスプリング1014と、左ホッパーホルダー1012L及び右ホッパーホルダー1012Rの前側上端部に固定され、開閉用連結ケーブル350の他端部352が連結された左右一対の開閉アーム1015L及び1015Rと、を備えている。
ここで、左ホッパーホルダー1012Lの連結部1012Laと、右ホッパーホルダー1012Rの連結部1012Raは、ギア形状であり、そのギア形状は前後で半歯ずれており、対向して左右に組み付けることで、ギアを噛み合わせる構成である。具体的には、右ホッパーホルダー1012Rに固定されている、開閉用連結ケーブル350の他端部352が連結された右側の開閉アーム1015Rが、開閉用連結ケーブル350により引っ張られると、右ホッパーホルダー1012Rの連結部1012Raは支点軸1013aを中心にして右側ホッパー部1011Rが開く方向に回動する。それと同時に、右ホッパーホルダー1012Rの連結部1012Raとのギアの噛み合わせにより、左ホッパーホルダー1012Lの連結部1012Laが連動して回動することで、左側ホッパー部1011Lが開く方向に同時に回動する。
また、左右のホッパー部1011L、1011Rは、閉じた状態で下端部が嘴状に尖っており、上端部が開放された略円筒形状を成している。そして、左側ホッパー部1011Lと右側ホッパー部1011Rとが互いに突き合わされる前側と後側の端面部において、正面視で略V字状の前V字切り欠き部1200Fと、背面視で略V字状の後V字切り欠き部1200Bが設けられている。
前V字切り欠き部1200Fと後V字切り欠き部1200Bを設けたことにより、植付具11が閉じた時、左側ホッパー部1011Lと右側ホッパー部1011Rの合わせ面の接触部が小さくなるので、合わせ面が当たることで発生する騒音が低減出来る。
また、本実施の形態の植付具11では、前V字切り欠き部1200Fを内側から覆う前ガード1210Fと、後V字切り欠き部1200Bを内側から覆う後ガード1210Bとを備えている。該前ガード1210Fは、ホルダー保持枠1013の前側立ち上がり部1013Fに上端部1210Faが固定され、そこから側面視で(図3(a)参照)、植付具11の内側中心に向けて斜め下方に伸びた平板部が前V字切り欠き部1200Fを、背面視で(図3(b)参照)概ね覆うべく構成されている。
また、後ガード1210Bは、ホルダー保持枠1013の左側枠部1013Lの後端側及び右側枠部1013Rの後端側に、左側上端部1210BL及び右側上端部1210BRが固定され、そこから側面視で(図3(a)参照)、植付具11の内側中心に向けて斜め下方に伸びた平板部が後V字切り欠き部1200Bを、前ガード1210Fと同様に概ね覆うべく構成されている。
また、後ガード1210Bの平板部の上端縁部1210BUは(図3(c)参照)、ホルダー保持枠1013に固定された状態において、左右一対のホッパー部の後側上端縁部1011BU(図3(a)参照)と同じ高さになる様に構成されている。即ち、後ガード1210Bの上端縁部1210BUは、背面視で、後ガード1210Bの左右上端部1210BL、1210BRの高さよりも低く構成されている。なお、前ガード1210F及び後ガード1210Bは、弾性を有する樹脂製若しくはゴム製の板状部材である。
前ガード1210F及び後ガード1210Bを設けたことにより、取出装置200が苗22を植付具11に供給する際に、前V字切り欠き部1200Fや後V字切り欠き部1200Bから苗22を植付具11の外へ落としたり、前V字切り欠き部1200Fや後V字切り欠き部1200Bに苗22が引っ掛かることを防止出来、苗の移植精度が向上する。
また、後ガード1210Bの上端縁部1210BUが、左右一対のホッパー部の後側上端縁部1011BU(図3(a)参照)と同じ高さ若しくはそれ以下の高さにする為に、上端縁部1210BUの高さを、背面視で、後ガード1210Bの左右上端部1210BL、1210BRの高さよりも低く構成されていることにより、取出装置200が苗22を植付具11に供給する際に、苗22の一部が後ガード1210Bの上端縁部1210BUと接触することが防止出来、苗22に傷を付けずに且つ正確にホッパー内に供給できる。
次に、主として図4(a)(b)及び図5を用いて、上述したトレイ搬送装置100について更に説明する。トレイ20は、複数の育苗ポット21を縦横に連設したもので、プラスチックで形成されていて、可撓性を保持する構成になっている。各育苗ポット21は表面側で連結し、裏面は独立した形態となっている。
トレイ搬送装置100は、トレイ20の底部を支持する前下がりに傾斜したトレイ搬送路111を有する苗置台110と、トレイ20をトレイ搬送路111に沿って縦方向に間欠的に送るトレイ縦送り装置120と、トレイ搬送路111を有する苗置台110を左右方向に移動させるトレイ搬送路移動装置170(図2参照)とを備える。
また、上述した通り、トレイ搬送装置100には、トレイ搬送路111上にトレイ20が載置されていないことを検知するためのトレイ検知装置1100が設けられている。
前記トレイ検知装置1100は、図2、図5に示す通り、トレイ搬送路111の略中央部に回動可能に配置されたトレイ検知部材1110と、苗置台110の左右両側の外側面にそれぞれ配置されてトレイ検知部材1110の回動と連動して回動する左右の連動アーム1120L、1120Rと、トレイ検知部材1110と左右の連動アーム1120L、1120Rとを連結する連結シャフト1130と、トレイ搬送路移動装置170の左右両側部172L、172Rの内側面において、左右の連動アーム1120L、1120Rに対応する位置にそれぞれ配置された左右一対のリミッタスイッチ1140L、1140R
を有している。左右のリミッタスイッチ1140L、114Rの信号ライン(図示省略)は、制御装置(図示省略)に接続されている。
そして、トレイ搬送路111の上にトレイ20が供給されていないときや、トレイ20の後端部がトレイ検知部材1110の位置を通過しているときは、トレイ検知部材1110は、バネ部材(図示省略)の復元力によりトレイ搬送路111の略中央部から表側に向けて突き出しているが、トレイ搬送路111の上にトレイ20が供給されているときは、トレイ20の裏面が当該バネ部材の復元力に対抗する力でトレイ検知部材1110を押さえつけるので、左側面視で、トレイ検知部材1110は反時計回りに回動する。
これにより、トレイ20の有無に合わせて、トレイ検知部材1110が時計回り又は反時計回りに回動し、それに連動して、左右一対の連動アーム1120L、1120Rが回動する。
トレイ搬送路111上の中央部にトレイ20が存在しない状態では、トレイ検知部材1110は、左側面視で、時計回りに回動してトレイ搬送路111の略中央部の開口部から表側に向けて突き出すと共に、左右一対の連動アーム1120L、1120Rはこれと連動して時計回りに回動して所定位置で停止している。そして、苗置台110が、横送りされてトレイ搬送路移動装置170の左右両側部172L、172Rの何れかの内側面に到達すると、左右一対の連動アーム1120L又は1120Rが、左右一対のリミッタスイッチ1140L又は1140Rの可動部1141L又は1141Rに当たり、それにより、トレイ搬送路111の上の略中央部にトレイ20が存在しない旨を示す信号が、制御装置に対して送られる。当該信号を受けた制御装置は、警報ブザー(図示省略)を鳴らす。
前記警報ブザーは、左右一対のリミッタスイッチ1140L又は1140Rの可動部1141L又は1141Rが押された後、一定時間(数秒間)鳴り、その後、自動的に警報ブザーの警報音は停止する構成である。
また、当該一定時間を、苗置台110が端から端まで移動する時間以上に設定し、且つ、左右一対のリミッタスイッチ1140L又は1140Rの可動部1141L又は1141Rが押される度に、その一定時間のカウントがリセットされて、新たに押されたリミッタスイッチ1140L又は1140Rからの信号を受けて、一定時間のカウントを新たに開始する構成とすることで、トレイ20が供給されるまで、警報音が停止することなく連続して鳴る構成とすることができる。
上述した通り、左右一対のリミッタスイッチ1140L、1140Rが、左右に移動しない固定部分であるトレイ搬送路移動装置170の左右両側部172L、172Rに取り付けられているので、左右一対のリミッタスイッチ1140L、1140Rから伸びる信号配線(図示省略)を確実に固定することが出来、断線などが防止できる。また、警報ブザーは警報音を一定時間発すると自動的に音が止まるので、停止スイッチも設ける必要がない。
上記実施の形態では、警報ブザーが一定時間鳴る構成について説明したが、これに限らず例えば、トレイ検知装置1100がトレイ20の不存在を検知すると、ソレノイド1440と連動して、トレイ20の横一列に配列された育苗ポット21の個数に合わせて例えば10回、警報ブザーが鳴る構成としても良い。
また、トレイ検知装置1100が2回連続してトレイ20の不存在を検知すると、連続して数秒間警報ブザーが鳴る構成としても良いし、或いは、トレイ20の不存在を検知する度に、ソレノイド1440と連動して、警報ブザーの鳴る長さが長くなる構成としても良い。
上記構成によれば、苗の残量が警報ブザーの音で分かるため、余裕をもってトレイ20を入れ替えられる。
また、上記構成によれば、ソレノイド1440の作動に連動した間欠植付動作の度に警報が作動することにより苗減少度合いや苗残量度合いが判断できるという効果を奏する。
ここで、再び、トレイ搬送装置100のトレイ縦送り装置120の説明に戻る。前記トレイ縦送り装置120は、トレイ20の裏面側から、当該裏面側に突き出した育苗ポット21同士の間に入り、下方に移動することでトレイ20を育苗ポット21の横一列分だけ送り、その後、育苗ポット21同士の間から抜け出して、育苗ポット21の横一列分だけ上方に移動する構成のトレイ送りロッド121を有している。
該トレイ送りロッド121は、中央部121aがトレイ搬送路111の下部に設けられた退避溝111aに出入り可能に構成され、両端部121bは直角に折り曲げられて、トレイ搬送路111の両サイドより外側に位置しており、トレイ20がトレイ搬送路111上を移動する際に、邪魔にならない構成である。
更に、トレイ搬送装置100は、退避溝111aの下流側であってトレイ搬送路111の両サイドの端面部において、トレイ送りロッド121の動きを規制するための左右一対のロッドガイドプレート112を備えている。このロッドガイドプレート112の上端縁部には、トレイ送りロッド121の中央部121aの両端で下流側に突き出した突起部121abが進入可能な切り欠き部112aが形成されている(図5(b)参照)。
即ち、この切り欠き部112aは、トレイ送りロッド121の中央部121aが、下方に移動した後、育苗ポット21同士の間から抜け出すまでの間において、一時的にトレイ送りロッド121の中央部121aの両端の突起部121abを保持して、育苗ポット21に入れられている苗22の重みでトレイ20が下方へずれ動くことを規制する構成である。尚、トレイ送りロッド121の中央部121aの軌跡については、図5を用いて後述する。
また、トレイ搬送路移動装置170は、トレイ搬送路111の裏面側に設けられ、苗移植機1の本体側から駆動力を得て、トレイ搬送路111を有する苗置台110を左右方向に移動させるリードカム軸171と、リードカム軸171より上方に設けられ、トレイ搬送路111を有する苗置台110の左右方向への移動を案内する案内レール155と、案内レール155を左右両側で保持する左右両側部172L、172Rを有している。
また、トレイ搬送路111は、リードカム軸171と、トレイ搬送路111の内側上部に設けられた左右移動を案内する案内レール155により支持されている。これにより、案内レール155はリードカム軸171と離れた位置でトレイ搬送路111を支えるため、左右方向への移動時にがたつきが少ない。 トレイ搬送路111と押え枠25との間に挟み込むようにしてトレイ20を苗載台110の上方から差し込むと、トレイ20の裏面側の溝部にトレイ送りロッド121の先端部が係合した状態となり、この状態でトレイ送りロッド121が側面視で略四角形の軌跡Aを描いて回動することにより、トレイ20がトレイ搬送路111に沿って斜め下方に間欠的に縦送りされる構成である。
なお、トレイ送りロッド121を用いて、トレイ20の縦送りを間欠的に行う機構については、更に後述する。
また、本実施の形態では、トレイ20がトレイ搬送路111に沿って斜め下方に順次縦送りされて苗22が取出部材260により全て取り出された後、トレイ縦送り装置120の下方を通り、最終的に操作部800の上方を通過して操縦ハンドル8の方向に排出される構成であり(図1の排出経路20t参照)、この点について説明する。
即ち、図1、図2に示す通り、トレイ20が排出される排出経路20tの先には主クラッチレバー900が配置されており、主クラッチレバー900を前方側に操作すると主クラッチが「入」状態となり、後方側に操作すると(図1の矢印900B参照)主クラッチが「切」状態となる。
操縦ハンドル8の方向に排出されてきたトレイ20は、通常は、作業者により取り除かれるが、作業者が排出されてきたトレイ20の取り除き作業を怠った場合でも、本実施の形態では、排出されてきたトレイ20の先端部により主クラッチレバー900が後方側に押されることにより(図1の矢印900B参照)「切」状態となり、安全のために、植付作業が自動的に停止する構成である。
ところで、取出装置200は、苗置台110の下端部に対向する位置に配置されており、取出部材260の先端が軌跡Kを描く様に作動して、横方向に移動する育苗ポット21から、順次、苗22を取り出して植付具11に供給する構成である。
次に、主として図6から図9を用いて、本実施の形態の苗移植機1に設けられた取出装置200の構成を中心に説明する。前記取出装置200は、苗移植機1の本体に固定された取出装置固定部材201に回動可能に保持されて、チェーンベルト202を介して本体側の駆動源の動力で矢印B方向に回動する駆動軸203により同方向に回動する駆動アーム220と、駆動アーム220の先端側部220aに、一端部230aが回動自在に連結された連結アーム230と、取出装置固定部材201に固定ピン201a、201bによって保持され、外形が略アルファベットのJ文字の形状を呈した板状部材であって、トレイ搬送装置100に近い側が直線状であり遠い側が略R状に立ち上がった形状を呈した案内溝241を有する案内部240と、を備えている。
また、取出装置200は、案内溝241に対してガタつくことなく且つスムーズにスライド移動可能に挿入された、後述するカム軸271と一体である第1の被案内部材245と、第2の被案内部材247とが連結され、それら被案内部材が連結された側面の一端側から突き出して略直角に折り曲げられた折り曲げ部251を有する基板250と、基板250の折り曲げ部251から垂直に突き出して、回動自在に保持された左右一対の取出爪保持ピン252L、252R、根元部がそれぞれ左右一対の取出爪保持ピン252L、252Rに取付られ、先端部の幅がピンセット状に細くなっている、育苗ポット21内の苗22を取り出す一対の取出爪261L、261Rと、一対の取出爪261L、261Rの対向する内面部の根元部側にその両端が取り付けられた引っ張りバネ263とを有する取出部材260と、を備えている。
また、取出装置200は、基板250に回動自在に貫通した、上記第1の被案内部材254と一体であるカム軸271を有したカム270であって、そのカム270の外周部の厚みに関して、上記一対の取出爪261L、261Rの内面部に設けられた左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触する際、その外周部の場所によって厚みが変化している外周部272と、そのカム270の最外縁部のカム軸271の軸中心からの距離(外径ともいう)に関して、その最外縁部の場所によってその外径が変化している最外縁部273を備えたカム270と、基板250に回動自在に連結され、カム270の最外縁部273の外径の変化により、一対の取出爪261L、261Rに沿って、育苗ポット21から取り出して一対の取出爪261L、261Rで保持されている苗22を押し出す押出ロッド281を有する押出機構280と、を備えている。
前記取出装置200の特徴の一つは、取出部材260が育苗ポット21内の苗22を取り出した後、押出ロッド281が苗22を押し出す方向に少し移動し、その後、押出ロッド281が苗22を植付具11へ供給するときに、押出ロッド281が、苗22を押し出す方向に、更に移動するべく構成されている点である。これにより、押出ロッド281を苗22の床部に接触させることができるので、取出部材260と押出ロッド281で苗22を安定して保持でき、植付精度の向上が図れる。
尚、本実施の形態の取出部材260は、本発明の取出具の一例にあたり、本実施の形態の押出ロッド281は、本発明の押出具の一例にあたる。
また、カム軸271と一体である第1の被案内部材245の先端近傍縁部245aは、連結アーム230の他端部230bに回動可能に連結されている。また、カム軸271と一体である第1の被案内部材245は、駆動アーム220の回転力によって、第1ギア291、第2ギア292、第3ギア293から構成された伝達機構290を介して回動させられ、駆動アーム220の駆動周期に合わせてカム軸271へ駆動力を伝達する構成である。
また、カム270の外周部272が、一対の取出爪261L、261Rの内面側に設けられた左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触する際、カム270の外周部272の厚みの変化と、引っ張りバネ263の復元力との相互作用により、一対の取出爪261L、261Rを開閉させる構成である。
次に、上記伝達機構290について更に説明する。即ち、第1ギア291は、駆動アーム220の先端側部220aに固定されており、連結アーム230に対しては、第1回動軸291aを介して回動自在に取り付けられている。また、第3ギア293は、カム軸271と一体である第1の被案内部材245の先端部245bに固定されており、第1の被案内部材245の先端近傍縁部245aが、連結アーム230の他端部230bに回動可能に連結されているため、第3ギア293は、連結アーム230に対して回動自在に保持されている。従って、第3ギア293は、第1の被案内部材245と一体で回動する。また、第2ギア292は、連結アーム230の中央位置において回動自在に取り付けられており、第1ギア291及び第3ギア293の両方に挟まれて、双方のギアと嵌合している。
次に、上記押出機構280について、図6から図9を参照しながら更に説明する。該押出機構280は、前記一対の取出爪261L、261Rに沿って左右の押出ロッド281,281が摺動することにより、該左右の取出爪261L、261Rが保持する苗22を押し出す部材である。該左右の押出ロッド281,281の基部は、前記カム270の回転によって前後方向に回動する押出アーム283に設ける取付軸282に各々設け、左右の押出ロッド281,281の端部は、左右の取出爪261L、261Rの前端部付近に臨ませる。
前記左右の押出ロッド281,281は、ある程度の硬さと柔軟性を備える細長い線材を曲げて加工するものであり、基部側は円柱状の前記取付軸282に沿って複数回巻いてコイル部281a,281aを各々形成すると共に、端部側は左右の取出爪261L、261Rの周囲を少なくとも一周する、即ち、左右の取出爪261L、261Rの上下及び左右を包囲するループ部281b,281bを各々形成する。
また、前記左右の押出ロッド281,281は、前記取付軸282に装着する基部側の左右幅が端部側の左右幅よりも狭くなる姿勢で、且つ左右の取出爪261L、261Rの上方を通過する配置とする。
前記ループ部281b,281bは、左右の押出ロッド281,281の端部付近を左右の取出爪261L,261Rの外側で下方に向けて屈曲させ、左右の取出爪261L,261Rよりも下方で内側に向けて屈曲させる。そして、左右の取出爪261L,261Rよりも内側で上方に向けて屈曲させ、左右の取出爪261L,261Rよりも上方で外側に屈曲させると共に、左右の取出爪261L,261Rよりも外側で下方に向けて屈曲させて構成する。なお、屈曲部はR形状となる曲げ方で形成するものとする。
さらに、前記取付軸282の左右中央部には、左右の押出ロッド281,281のコイル部281a,281aが接触し合うことを防止する分離突起282aを設け、左右の押出ロッド281,281の基部側の左右間隔が狭くなり過ぎることを防止する。
そして、前記押出アーム283の下部側で、且つ押出アーム連結軸283dよりも上方に第1保持突起283cを設けると共に、前記基板250に第2保持突起250aを設け、該第1保持突起283cと第2保持突起250aに亘って引張スプリング284を設ける。
前記カム270が矢印B方向に回動すると、最外縁部273の内で外径が最も大きい部分を有する最大突出部273bが前記第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触することにより、引張スプリング284が引き延ばされ、押出アーム283は、図 において反時計方向に回動し(矢印C参照)、取付軸282に連結された押出ロッド281が後退する構成となる。
また、前記カム270が矢印B方向に更に回動すると、最外縁部273の内で、最大突出部273bの最大径より外径が小さく、且つ、最外縁部273の内で外径が最も小さい最小突出部273aより外径が大きい中間突出部273cにおける接触位置273c1(図 参照)が、第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触する構成である。
このとき、それまで引き延ばされていた引張スプリング284が少し収縮し、押出アーム283は、図 において時計方向に回動し(矢印D参照)、取付軸282で連結された左右の押出ロッド281,281が少し突出し、ループ部281b,281bが苗22に接触する構成である。
また、カム270が矢印B方向にさらに回動すると、最外縁部273の内で外径が最も小さい最小突出部273aにおける押出位置273a1が、第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触する構成である。
これにより、引張スプリング284が更に縮まり、押出アーム283は、図8において時計方向に回動さられて(矢印D参照)、左右の押出ロッド281,281が更に突出し、ループ部281b,281bが苗22を植付具11側に完全に放出する構成である。
左右の押出ロッド281,281が突出、及び苗22を植付具11に放出してから後退する際、左右のループ部281b,281bが一対の取出爪261L、261Rの外周部に沿って進退するので、一対の取出爪261L、261Rに付着する土等の夾雑物が取り除かれる。なお、この夾雑物は、苗22の根部の周囲の培土や、千切れた細根等であり、トレイ20から苗22を取り出す際に付着するものである。
上記の夾雑物が一対の取出爪261L、261Rに付着したままであると、夾雑物が取出爪261L、261Rの左右間隔を狭めてしまい、取出爪261L、261Rがトレイ20に進入し辛くなり、苗22をトレイ20から取り損なうことや、苗を取り出すタイミングが遅れて植付具11に投入されず、苗22の植付が行われない場所、所謂欠株が発生することがあるので、定期的に夾雑物が除去される必要がある。
上記の構成では、左右の押出ロッド281,281を細長い線材を加工して構成したことにより、左右の押出ロッド281,281が前後方向に摺動しても一対の取出爪261L、261Rが保持する苗22に接触しにくいので、苗22を押し出す際に傷付けることが防止され、苗22の生育が安定すると共に、植付後に枯れる苗22の発生が防止される。
これに加えて、左右の押出ロッド281,281の重量を軽量に構成することができるので、駆動力を受ける際に重量が抵抗になりにくく、押出ロッド281,281の前後摺動がスムーズになり、苗22を確実に押し出して植付具11に放出することができる。
また、左右の押出ロッド281,281の基部側にコイル部281a,281aを形成したことにより、取出爪261L,261Rの開閉に連動して端部のループ部281b,281bが左右方向に移動しても、左右の押出ロッド281,281の基部の左右方向に移動量を抑えることができる。これにより、左右の押出ロッド281,281の取付位置の変化が防止され、取出爪261L,261Rの開閉動作を妨げることがなく、トレイ20から苗22を確実に取り出して植付具11に放出することができる。
そして、ループ部281b,281bが取出爪261L,261Rの外周部を包囲した状態で前後摺動することにより、苗22をトレイ20から取り出して植付具11に放出する度に取出爪261L,261Rに付着した夾雑物を擦り落とすことができるので、付着した夾雑物によって取出爪261L,261Rがトレイ20に進入しにくくなり、苗22を取り出し損なうことが防止される。
あるいは、苗22を取り出すタイミングが遅れ、植付具11に適切なタイミングで苗22が放出されず、苗が植え付けられない箇所が発生することが防止される。
さらに、押出ロッド281,281を巻回して形成するループ部281b,281bの終端部は、取出爪261L,261Rの外側、即ち苗22の非保持作用域に位置することにより、押出ロッド281,281の端部の鋭利な部分が苗22に接触することがないので、苗22が傷付くことが防止され、苗22の生育が安定すると共に、植付後に枯れる苗22の発生が防止される。
これに加えて、押出ロッド281,281の各屈曲部はR形状とすることにより、苗22と接触する際に苗を傷付けることを防止できるので、苗22の生育が安定すると共に、植付後に枯れる苗22の発生が防止される。
そして、左右の押出ロッド281,281が取出爪261L,261Rの上方を通過することにより、コイル部281a,281aとループ部281b,281bの間隔部が苗22の上部、即ち茎葉部が倒れることを防止するガイド部となるので、取出爪261L,261Rにより苗22の保持姿勢が多少不適切であっても苗22が倒れることを防止でできる。これにより、放出時の苗22の姿勢により、植付具11に植付可能な姿勢で入り込まなくなることが防止され、欠株の発生が防止され、手作業で苗22を植え直す作業が不要になる。
以上の構成において、次に、図6から図9を参照しながら、取出装置200の動作を説明する。上述した通り、案内部240は、苗移植機1の本体に固定された取出装置固定部材201にしっかりと固定されているため動かない。
駆動アーム220の回動に伴って、連結アーム230が揺動するが、その動きは、案内部240に形成された案内溝241を貫通して基板250に連結されている第1の被案内部材245により規制される。
一方、連結アーム230の動きに伴って、基板250も揺動するが、基板250は、第1の被案内部材245の他に、第2の被案内部材247が、案内溝241を貫通している為(但し、第2の被案内部材247は連結アーム230には連結されていない)、その動きは、案内溝241に沿った往復移動を繰り返す。基板250には、取出部材260が取り付けられている為、取出部材260も基板250と同様の動きをし、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、図8、図9に示す軌跡Kを描く。
ここで、図9は、駆動アーム220の回動の位置と、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの軌跡K上の位置との概略の対応関係を示す模式図である。図9に示す、駆動アーム220の回動の位置P1〜P6は、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの軌跡K上の位置K1〜K6に対応する。尚、軌跡Kを示す破線上に記載した矢印は、動作方向を示している。
図9に示すとおり、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K1から位置K2に向かう動作は、育苗ポット21から苗22を抜き取る動作に対応している。位置K1から位置K2までの軌跡Kが直線状になっていることから、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、育苗ポット21から真っ直ぐに後退する。この時、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpには、引っ張りバネ263の復元力により、互いに近づく方向の力が作用しており、育苗ポット21から抜き取った苗22を保持することが出来る。尚、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作については、押出ロッド281,281の動作と合わせて後述する。
なお、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K6から位置K1に向かう動作は、苗取出位置にあるトレイ20の育苗ポット21内の苗22に対して、一対の取出爪261L、261Rを挿入させる動作に対応しており、位置K1から位置K2に向かう軌跡Kとほぼ同じ経路を逆向きに移動するので、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、育苗ポット21にほぼ真っ直ぐに挿入される。この時、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpには、引っ張りバネ263の復元力に対抗して、互いに遠ざかる方向の力が作用しており、双方の先端部が開いた状態で、育苗ポット21に進入できる。
これにより、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、トレイ20、育苗ポット21、及び苗自体を傷付けることが無い。
なお、位置K1から位置K2までの軌跡K、及び、位置K6から位置K1までの軌跡Kが、概ね直線状になっているのは、案内溝241のトレイ搬送装置100に近い側が直線状に形成されている為である。
次に、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが位置K2から位置K3に向かうに従って、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、それまで育苗ポット21に対向していた姿勢から略下方に向けて急激に姿勢を変化させ、位置K4まで移動した時には、先端部261Lp、261Rpは、ほぼ真下を向いている。
また、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが位置K3から位置K4に向かう間において、中間突出部273cにおける接触位置273c1(図8参照)が、第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触する。これにより、左右の押出ロッド281,281が、押出位置273a1の手前で少し突出し、ループ部281b,281bが共に苗2・BR>Qに接触する。
なお、この様に、略下方に向けて急激に姿勢を変化させるのは、案内溝241のトレイ搬送装置100から遠い側が、略R状に立ち上がった形状に形成されている為である。
そして、丁度その時、その先端部261Lp、261Rpの下方には、上死点に向けて軌跡T1(図1参照)上の上昇工程にある植付具11の苗投入口(図示省略)が上方に向いており、位置K4から位置K5の間において、押出位置273a1(図8参照)が、第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触する。
これにより、押出ロッド281,281が完全に突き出されて、押出ロッド281,281のループ部281b,281bにより一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpから押し出された苗22が、植付具11へ供給される。
次に、位置K5から位置K6に向かうに従って、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、それまで略下方に向けていた姿勢を次の育苗ポット21に対向出来る様に急激に姿勢を変化させて、位置K1まで移動した時には、先端部261Lp、261Rpは、新たな育苗ポット21に挿入されている。
図9に示す、駆動アーム220の回動の位置と、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの軌跡K上の位置との概略の対応関係から分かる様に、位置K4から位置K5に向かう動作は、上述した位置K1から位置K2に向かう動作に比べてゆっくり行われるので、育苗ポット21からの苗22の取出は素早く行えて、且つ植付具11への苗22の放出を確実に行える。
この様な動作が行われるのは、連結アーム230が、駆動アーム220より前方(トレイ搬送装置100の抜き取り位置)側に設けられているためである。また、駆動アーム220が、連結アーム230に比べて、トレイ搬送装置100の抜き取り位置から遠い為、苗22を取り出す時に苗22に接触することが無く、邪魔にならない。
次に、主として図6から図9を参照しながら伝達機構290と押出機構280の動作を中心に説明する。
図6(a)に示す通り、駆動アーム220のB方向への回動により、駆動アーム220の先端側部220aに固定された第1ギア291は、駆動アーム220の回動支点220bを中心としてB方向へ公転する。第1ギア291は、連結アーム230に対して第1回動軸291aを介して回動自在に取り付けられており、第2ギア292を介して、第3ギア293をB方向に回動させる。第3ギア293は、カム軸271と一体である第1の被案内部材245の先端部245bと固定されており、且つ、第1の被案内部材245の先端近傍縁部245aが、連結アーム230の他端部230bに回動可能に連結されているため、第3ギア293の回動により、カム軸271を介して、カム270がB方向に回動する。即ち、駆動アーム220の駆動周期に合わせてカム270が回動する。
カム270は、場所によって厚みが変化している外周部272と、場所によってカム軸271の軸中心からの距離(外径)が変化している最外縁部273を有しており、図8に示す通り、最外縁部273の内で最大突出部273bは、最小突出部273aより外径が大きく、カム軸271の軸中心から同じ距離にある外周部272の内で第1の範囲272aの厚みは、残りの肉厚部分である第2の範囲272bの厚みに比べて薄く設定されている。
以上の構成のもとで、駆動アーム220の駆動周期に同期してカム270が回動する際、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K6から位置K1に向かう動作を行う時の一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作、及び、押出ロッド281の動作は次の通りである。
即ち、カム270の外周部272の内、肉厚部分である第2の範囲272bが、左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触することにより、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、引っ張りバネ263の復元力に対抗して、互いに遠ざかる方向の力が作用しており、双方の先端部が開いた状態である。
一方、この時、カム270の最外縁部273の内、最大突出部273bが、第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触していることにより、引張スプリング284が引き延ばされ、押出アーム283は、図8において反時計方向に回動して(矢印C参照)、取付軸282で連結された押出ロッド281,281が後退した状態を維持する。よって、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、育苗ポット21に進入して、苗を取り出すことができる。
次に、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K1から位置K2に向かう動作を行う時の一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作、及び、押出ロッド281の動作は次の通りである。
即ち、位置K1から位置K2に向かう動作を開始すると同時に、カム270の外周部272の内、肉薄部分である第1の範囲272aが、左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触することにより、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、引っ張りバネ263の復元力により、互いに近づく方向に移動するので、双方の先端部が閉じた状態になる。
一方、この時、カム270の最外縁部273の内、最大突出部273bが、依然として第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触していることにより、引張スプリング284が引き延ばされ、押出アーム283は、図8において反時計方向に回動した状態を維持しており(矢印C参照)、取付軸282で連結された左右の押出ロッド281,281が後退した状態を維持している。
よって、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、取り出した苗22を先端部にしっかりと保持することができ、そのまま植付具11側へ移動して行く。
なお、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが位置K3から位置K4に向かう間において、中間突出部273cにおける接触位置273c1(図8参照)が、第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触し、これにより、押出ロッド281,281が、押出位置273a1の手前で少し突き出されて、ループ部281b,281bが苗22に接触することは、上述のとおりである。
次に、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K4から位置K5に向かう動作を行う時の一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作、及び、押出ロッド281,281の動作は次の通りである。
即ち、位置K4から位置K5に向かう動作を開始すると同時に、カム270の最外縁部273の内、中間突出部273cに代わり最小突出部273aが、第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触する。
これにより、引張スプリング284の復元力で、押出アーム283は、第1保持突起283cの根元部が、押出位置273a1の手前の接触位置273c1に移動した時に、時計方向に少し回動し、その後、押出位置273a1にきた時に、瞬時に、時計方向に回動した状態となる(図8の矢印D参照)。
即ち、取付軸282で連結された押出ロッド281は、第1保持突起283cの根元部が接触位置273c1にきた時に少し突き出されて、その後、押出位置273a1にきた時に、押出ロッド281は完全に突き出されると同時に、押出ロッド281,281のループ部281b,281bが、一対の取出爪261L、261Rの先端部を押し広げながら移動する。
これにより、押出ロッド281,281を、ループ部281b,281bが苗22に接触する程度まで突き出して、その後、押出位置273a1で苗22を押し出すことで、根鉢がくずれにくく、苗22を植付具11に放出するタイミングも安定する。
また、ループ部281b,281bが、一対の取出爪261L、261Rの外周を包囲した状態で、且つ先端部側を押し広げながら移動することので、取出爪261L、261Rに付着していた夾雑物が同時に取り除かれ、取出爪261L、261Rの左右間隔がトレイ20から苗22をスムーズに取出可能に保たれる。
次に、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K5から位置K6に向かう動作を行う時の一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作、及び押出ロッド281,281の動作は、次のとおりである。
即ち、カム270の外周部272の内、肉薄部分である第1の範囲272aに代わり肉厚部分である第2の範囲272bが、左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触することにより、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、引っ張りバネ263の復元力に対抗して、互いに遠ざかる方向の力が作用して、双方の先端部が開いた状態に変化する。
一方、位置K6の近傍に来た時、カム270の最外縁部273の内、最小突出部273aに代わり最大突出部273bが、第1保持突起283cの根元部の外周縁部に接触することにより、引張スプリング284が引き延ばされ、押出アーム283は、図8において反時計方向に回動さられて(矢印C参照)、取付軸282で連結された押出ロッド281,281が後退した状態に変化する。
なお、一対の取出爪261L、261Rは、根元部から先端部に亘って一体物で、同一の金属製の板部材で構成されている場合について説明したが、これに限らず、先端側を取り外しが可能で弾性を有した例えばゴム板や、樹脂板で構成しても良い。これにより、引っ張りバネ263の復元力で先端部が苗22をつかんでも、先端側の弾性によりゴム板の方が変形するので、苗22を潰さない、という効果を発揮し得る。
また、押出ロッド281,281は、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが位置K6の近傍に移動するまでは、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの上方を覆う構成としている。これにより、位置K5から位置K6に移動する際に、トレイ20上の苗22の葉が一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpに引っ掛かることを防止できる。
また、押出ロッド281,281は、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが育苗ポット21に挿入される時の挿入速度に合わせて後退する構成としている。これにより、苗22の葉が先端部261Lp、261Rpに絡まることを防止できる。
次に、再び、図4、図5を参照しながら、トレイ搬送装置100のトレイ送りロッド121を間欠的に駆動させる機構を中心に更に説明する。
図5に示す通り、トレイ縦送り装置120は、(1)上述したトレイ送りロッド121と、(2)トレイ送りロッド121の両端部121bの上側先端部121b1が固定され、片方が内側に湾曲した湾曲縁部131aを有する突起状カム131が下部に形成された送りロッドアーム130と、(3)根元部141が、苗置台110の側板110aに回動自在に支持され、先端部142で送りロッドアーム130を回動自在に支持する、下端縁部に第1凹部143a、第2凸部143b、第3凹部143cが側面視で滑らかに連続して形成された送りアーム140と、(4)苗移植機1の動力原から得た駆動力により矢印E方向に回動する縦送り回動軸151を取出装置200側から見て、縦送り回動軸151の中央位置と右端位置の2箇所にそれぞれ固定され、先端部に牽制ローラ152を回動自在に有する縦送り駆動アーム150と、を備える。
また、送りアーム140の先端部142と、苗置台110の側板110aの下部110a1との間には、送りアーム140に常に下向きに引っ張る力が印加される様に、送りアーム引っ張りバネ160が取り付けられている。また、送りアーム140の根元部141には、送りロッドアーム130の上端部に取り付けられたピン132に一方端が取り付けられた送りロッドアーム引っ張りバネ161の他方端を保持するバネ取付ロッド163が固定されている。
次に、図4、図5を参照しながら、トレイ送りロッド121の間欠的な動作について説明する。
リードカム軸171の回動により、苗置台110が右方向すなわち矢印F方向(図5参照)に向けて移動しているとする。その時、縦送り回動軸151は矢印E方向に回動している(図5参照)。
その間において、取出装置200は、右端の育苗ポット21から順次、苗22を取り出して植付具11に苗22を供給しており、その後、苗置台110が最右端に移動した時点で、最左端の育苗ポット21の苗22が取出装置200により取り出される。これにより、育苗ポット21の横一列分の全ての苗22が取り出されたことになる。
この時、縦送り回動軸151と共に矢印E方向に回動している、縦送り回動軸151の右端に固定されている縦送り駆動アーム150の先端部に回動自在に取り付けられている牽制ローラ152が、送りアーム140の第1凹部143aとの接触を開始した後、少し遅れて送りロッドアーム130の湾曲縁部131aとの接触を開始する構成であるので、トレイ送りロッド121は、送りアーム140の時計回りの回動に伴い一旦上昇移動した後、先端部142の軸中心で反時計回りに回動を開始する。
即ち、トレイ送りロッド121が、矢印121a0(図4(b),図5参照)の方向に一旦上昇移動することにより、それまで切り欠き部112aに保持されていたトレイ送りロッド121の突起部121abが、切り欠き部112aから抜け出すと共に、それまで育苗ポット21の裏側の隙間21aで待機していたトレイ送りロッド121の中央部121aも、その隙間21aの範囲内で矢印121a0の方向に上昇移動する。その後、送りロッドアーム130が、先端部142の軸中心で反時計回りに回動を開始することにより、トレイ送りロッド121の中央部121aは、矢印121a1(図5参照)の方向に移動する。尚、切り欠き部112aの切り欠き深さは、トレイ送りロッド121の中央部121aが隙間21aの範囲内で移動できる程度に設定されている。
その後、更に、牽制ローラ152が回動を続けると、牽制ローラ152が送りロッドアーム130の湾曲縁部131aとの接触を続けているため、トレイ送りロッド121の中央部121aは退避溝111aに位置した状態を維持している。この時、同時に牽制ローラ152が送りアーム140の第1凹部143aから第2凸部143bに向けて移動するので、送りアーム140は更に時計回りに回動し、トレイ送りロッド121の中央部121aは、結果的に、退避溝111aに位置した状態を維持しつつ、矢印121a2(図5参照)の方向に移動する。
その後、更に、牽制ローラ152が回動を続けると、牽制ローラ152が送りロッドアーム130の湾曲縁部131aと非接触状態となると同時に、送りロッドアーム引っ張りバネ161の復元力により送りロッドアーム130が先端部142の軸中心で時計回りに瞬時に回動することで、トレイ送りロッド121の中央部121aは、隙間21aから育苗ポット21の一列分だけ上側に位置する隙間21bに向けて、矢印121a3に示す様に移動する。
その後、更に、牽制ローラ152が回動を続けると、牽制ローラ152は、送りアーム140の第3凹部143cと接触しながら移動するので、送りアーム引っ張りバネ160の復元力により送りアーム140が下方に引っ張られて、トレイ送りロッド121の中央部121aは、結果的に、隙間21bに位置した状態を維持しつつ、矢印121a4(図5参照)の方向に移動するとともに、トレイ送りロッド121の中央部121aの突起部121abが切り欠き部112aに保持される。
そして、矢印121a4(図5参照)の方向に移動したトレイ送りロッド121の中央部121aは、育苗ポット21の裏側の育苗ポット同士の隙間に位置した状態を維持しており、苗置台110が、矢印G方向、即ち左方向に移動を開始すると、取出装置200は、左端の育苗ポット21から順次、苗22を取り出して植付具11に苗22を供給し、その後、苗置台110が最左端に移動した時点で、最右端の育苗ポット21の苗22が取出装置200により取り出される。これにより、育苗ポット21の横一列分の全ての苗22が取り出されたことになる。
また、この間は、トレイ送りロッド121の中央部121aの突起部121abが切り欠き部112aに保持されているので、育苗ポット21に入れられている苗22の重みでトレイ20が下方へずれ動くことを防止出来る。
なお、育苗ポット21の横一列分の全ての苗22が取り出されると、上記と異なり、縦送り回動軸151の中央位置に固定されている縦送り駆動アーム150の先端部に回動自在に取り付けられている牽制ローラ152が、送りロッドアーム130の湾曲縁部131aと、送りアーム140の第1凹部143aとの接触を開始する。
上記の動作を繰り返すことにより、トレイ20は、右方向又は左方向に移動されるとともに、育苗ポット21の一列分だけ間欠的に縦送りされる。
これにより、コンパクトな構造のトレイ縦送り装置120が得られる。また、案内レール155と、リードカム軸171の簡単な構造でトレイ搬送路111を左右移動可能に支持出来る。
また、トレイ送りロッド121の中央部121aは、トレイ搬送路111の平面部111bに配置されているので、トレイ20が内側に撓むことがないので、育苗ポット21の裏側において、一定幅の隙間21a、21bを確保出来るため、トレイ送りロッド121が隙間21a、21bに確実に入ることが出来る。
また、トレイ搬送路111の平面部111bの下流側に曲面部111cが設けられているので、トレイ20はその曲面にそって撓む。そのため、トレイ送り時に、トレイ送りロッド121が、矢印121a2の方向に移動している時でも、その撓みが抵抗となって、トレイ20が下流側にずれることが防止される。
上記のトレイ搬送装置100でトレイ20が縦送りされる際、次の左右一列の苗22が取出装置200によって適切に取り出されるべく、トレイ20は正確に一列分縦送りされる必要がある。しかしながら、トレイ20の縦送りは、トレイ送りロッド121の接触と自重による移動であるので、トレイ20が適切な位置まで縦送りされないと、取出装置200で苗22が取り出せない、または取り出す姿勢が乱れ、植付具11に放出すると植付具11内に植え付けに適した姿勢で入らないことにより、苗が植え付けられない場所、所謂欠株が生じることがある。
トレイ20が苗の取り出しに適した位置よりも移動方向の上手側にいれば、トレイ送りロッド121がトレイ裏面側の溝部に進入していても、機体の振動や自重によって下手側に移動し、苗の取り出しに適した位置に移動するので、上記の問題の影響は小さい。
しかしながら、トレイ20が苗の取り出しに適した位置よりも移動方向の下手側にいるときは、自然に苗の取り出しに適した位置に移動することは無く、少なくとも左右一列分に亘って欠株の発生の可能性が高くなる。作業者が苗トレイの位置を調節することはできるが、横送り中にトレイ20の位置を変えると取出装置200が苗22を取り出せず、欠株が発生する可能性がある。
さらに、トレイ20の移動量によっては、トレイ20が下手側に二列分移動してしまい、苗の取出位置を超過した一列分の苗がトレイ20に残ってしまい、苗の植付を予定通り行えなくなる問題がある。
これらの問題を、欠株を生じさせることなく解消するには、植付作業を一旦停止してトレイ20の位置を手作業で修正すればよいが、その間は植付作業が中断されるので、作業能率が低下する問題がある。
上記の問題を解消すべく、縦送りの終了時にトレイ20の上面に接触して移動を規制するブレーキアーム180L,180Rをトレイ搬送装置100の左右両側で、且つトレイ送りロッド121の作用域よりも上方(トレイ20の移動方向の上手側)に各々設ける。該左右のブレーキアーム180L,180Rが常時トレイ20に接触していると、抵抗によってトレイ20が苗の取出位置まで移動しなくなるので、該左右のブレーキアーム180L,180Rはトレイ送りロッド121の動作に連動してブレーキ状態と解除状態に切り替わる構成とする。
図10、図11に示すとおり、前記突起状カム131の上端部に、前記送りロッドアーム引っ張りバネ161の一端部を引っ掛けるピン132を受ける長孔を有するバネ受けステー181(図11参照)を設ける。該バネ受けステー181の一端部は円弧形状とする。また、右側のブレーキアーム180Rの右側のブレーキ回動軸182Rに右側のブレーキ連動アーム183Rを設ける。前記右側のブレーキアーム180Rは、トレイ搬送装置100の搬送方向下手側に設け、右側のブレーキ連動アーム183Rは、トレイ搬送装置100の搬送方向下手側に設ける。
そして、該右側のブレーキ連動アーム183Rの取付基部側には、右側のブレーキ回動軸182Rの円周方向に複数の調節取付孔183aR…を形成すると共に、前記右側のブレーキアーム180Rの取付基部側には、一つの取付孔180aRを形成する。さらに、前記右側のブレーキ回動軸182Rに設けるトルク・スプリング184の一端を取付孔180aRに装着すると共に、他端を調節取付孔183aR…のいずれか一つに装着し、右側のブレーキアーム180Rのブレーキ力を調節可能に構成する。
前記右側のブレーキ連動アーム183Rの端部には、側面視において他の部分よりも上下幅が広い幅広部185Rを形成する。該幅広部185Rは、突起状カム131やバネ受けステー181に面する側に突出して幅を広くする構成とする。なお、幅広部185Rは、きついテーパ角をつけて形成するものとする。
前記バネ受けステー181の前端部は、前記突起状カム131の回動に連動して移動し、所定の位置で前記右側のブレーキ連動アーム183Rに接触することにより、右側のブレーキアーム180Rをトレイ20に接触させてブレーキをかける。
一方、図11に示すとおり、左側のブレーキアーム180Lは、バネ受けステー181と接触する位置にないので、右側と異なる構成となる。
該左側のブレーキアーム180Lの左側の回動軸182Lと同軸に左側のブレーキ連動アーム183Lを設ける。また、前記左側のブレーキアーム180Lは、トレイ搬送装置100の搬送方向下手側に設け、左側のブレーキ連動アーム183Lは、トレイ搬送装置100の搬送方向下手側に設ける。
そして、該左側のブレーキ連動アーム183Lの取付基部側には、左側のブレーキ回動軸182Lの円周方向に複数の調節取付孔183aL…を形成すると共に、前記左側のブレーキアーム180Lの取付基部側には、一つの取付孔180aLを形成する。さらに、前記左側のブレーキ回動軸182Lに設けるトルク・スプリング184の一端を取付孔180aLに装着すると共に、他端を調節取付孔183aL…のいずれか一つに装着し、左側のブレーキアーム180Lのブレーキ力を調節可能に構成する。
前記ブレーキ連動アーム183Lは、前記縦送り駆動アーム150に設ける牽制ローラ152と接触して回動する構成とし、該牽制ローラ152と接触する面で且つ端部側に、他の部分よりも幅狭となる幅狭部(凹部)185Lを形成する。
以下において、左右のブレーキアーム180L,180Rによる、トレイ20のブレーキ作用と非作用の切り替わりについて説明する。
まず、トレイ送りロッド121がトレイ20の下方に向かって移動しているとき(121a1)、前記バネ受けステー181は右側のブレーキ連動アーム183Rから離間すると共に、牽制ローラ152は左側のブレーキ連動アーム183Lから離間することにより、左右のブレーキアーム180L,180Rをトレイ20から上方に離間させる。
これにより、トレイ20の縦送り開始時に左右のブレーキアーム180L,180Rが抵抗になることがなく、トレイ20が自重によって移動し始める。
そして、トレイ送りロッド121がトレイ20の下方まで移動してから、次の一列に移動する間(121a2から121a3の間)は、バネ受けステー181は右側のブレーキ連動アーム183Rに接触すると共に、牽制ローラ152は左側のブレーキ連動アーム183Lに接触することにより、左右のブレーキアーム180L,180Rをトレイ20の表面に接触させる。
これにより、移動し始めたトレイ20の左右両側にブレーキ力を作用させることができるので、自重によってトレイ20が移動方向下手側に大きく移動することが防止され、トレイ20が一列分以上移動してから停止することが防止される。
さらに、トレイ20が一列分移動して、トレイ送りロッド121がトレイ20の裏面に接触するとき(121a4)、バネ受けステー181は右側のブレーキ連動アーム183Rの幅広部185Rに接触すると共に、牽制ローラ152は左側のブレーキ連動アーム183Lの幅狭部185Lに接触することにより、左右のブレーキアーム180L,180Rがトレイ20の表面に接触する力を弱める。
これにより、左右のブレーキアーム180L,180Rのブレーキ力が作用し過ぎて、トレイ送りロッド121と接触したトレイ20の移動が苗の取り出しに適した位置よりも上手側で停止することを防止できるので、トレイ20を苗の取り出しに適した位置で停止させることができ、欠株の発生が防止される。
なお、トレイ20には、苗22を栽培する穴の数が異なるものがあり、穴の数が128個あるものと、200個あるものが一般的である。当然のことながら、200穴のトレイ20の方が128穴のトレイ20よりも前後長さが長い。
上述した右側のブレーキ連動アーム183Rに幅広部185Rを形成すると共に、左側のブレーキ連動アーム183Lに幅狭部185Lを形成する構成は、前後長さが長い200穴のトレイ20の停止時に作用するものとし、128穴のトレイ20を使用する際は、左右のブレーキアーム180L,180Rのブレーキ力が強い状態(121a3)でトレイ20の移動が停止するものとすると、同一の苗移植機で穴数の異なるトレイ20を用いた植付作業を行なうことができるので、苗移植機に合わせたトレイ20でのみ苗の栽培を行う必要や、苗移植機に合わせたトレイ20だけを選別して持ち運ぶ必要が無く、作業の労力の軽減が図られると共に、作業条件の適応性が向上する。
上記では、トレイ20の移動が原因で問題が生じる、としているが、トレイ送り装置121が設定された軌跡からずれて移動していると、トレイ送り装置121がトレイ20を搬送方向下手側に引っ張り、苗の取り出しに適した位置を超えて移動させることになる。
これを防止すべく、図12に示すとおり、前記トレイ搬送路111の左右両側に設ける左右の側板に、トレイ送りロッド121の左右端部が通過するロッドレール121rを形成してもよい。該ロッドレール121rは、トレイ送りロッド121の左右端部がトレイ20を縦送りする際に描く軌跡と同じとすることで、トレイ送りロッド121がトレイ20の搬送に適さない軌跡を描くことを防止する。
上記により、トレイ送りロッド121がトレイ20を一列分正確に移動させることができるので、苗の取り出しが確実に行われ、欠株の発生が防止される。
前記植付具11は、取出装置200から受け取った苗を圃場に植え付けるものであり、植付時には苗を開放すべく下部側が開きながら土中に入り込む構成としている。これにより、植付具11の内部には、圃場の土が付着することがある。この土が植付具11の内部に蓄積すると、植付具11内の空間の一部が土に占拠され、取出装置200から受け取った苗の姿勢が土によって植付に適さない姿勢となり、圃場に植え付けられた苗の生育に影響が生じるおそれがある。
これを防止すべく、植付具11に送水ポンプ500が搬送する洗浄水を供給する洗浄装置を設け、植付具11の下降時に苗22の植え付けと共に土を洗い流す構成としている。これにより、植え付けの度に植付具11内の土が洗い流されるので、土の蓄積により苗の姿勢を乱すことが防止され、苗の植付精度が向上する。
該送水ポンプ500の構成について説明する。図13、図14に示すとおり、取出装置200からトレイ搬送装置100に駆動力を伝動する伝動シャフト510を機体左右一側(右側)に突出させ、該伝動シャフト510にクランクプレート520を時計回り方向に一体回転可能に装着する。具体的には、伝動シャフト510の端部に支持プレート515を装着し、該支持プレート515にクランクプレート520を機体外側からボルト等の固定部材521を介して装着する。
なお、該固定部材521を装着すべく、クランクプレート520には第1調節長孔522を形成すると共に、該第1調節長孔522よりも長い第2調節長孔523を形成する。該第1調節長孔522と第2調節長孔523に固定部材521を通す位置を変更することにより、送水ポンプ500が水を供給するタイミングを調節する。
また、前記クランクプレート520には、前記伝動シャフト510を中心として所定角度毎に、具体的には90度毎にロッド取付孔525…を四箇所形成する。なお、該四つのロッド取付孔525…は、互いに伝動シャフト510を中心とした同心円上に位置しない構成とする。
そして、前記四つのロッド取付孔525…のうち、任意の送水量とすべきロッド取付孔525が機体後側に位置するようにクランクプレート520を伝動シャフト510に装着し、該ロッド取付孔525にポンプロッド530の一側端部を装着する。さらに、該ポンプロッド530の他側端部は、洗浄水を出し入れするポンプケース540に連結する。
四つのロッド取付孔525…がいずれも同心円上にないことにより、取付位置毎にポンプロッド530の前後移動量が変更されるので、送水ポンプ500の送水量を設定することが可能になる。
前記ポンプロッド530の一側部にはポンプヘッド550を設け、該ポンプヘッド550内部には、ポンプロッド530を回転可能に支持する軸受560を設ける。また、該ポンプヘッド550及び軸受560の左右両側には、送水ポンプ500の支点となるポンプ支軸570,570を設ける。
なお、軸受560とポンプ支軸570,570は互いに接触させ、ポンプヘッド550に設ける一つのグリスニップル650から注油すると、両方にグリスが供給される構成とし、注油作業に要する時間と労力の軽減を図る。
また、前記ポンプヘッド550の機体左右一側(右側)で且つ上側には、水タンクに繋がる給水ホース(図示省略)を接続するサクションニップル580を設け、機体左右他側(左側)で且つ下側には、植付具11に水を送る送水ホース(図示省略)を接続するデリバリニップル590を設ける。
なお、側面視である図13に示すとおり、デリバリニップル590の底面は、前記ポンプケース540の底部よりも下方に位置する構成とする。
前記サクションニップル580とデリバリニップル590は、バルブヘッド550内部に設けるバルブプレート600に連結する。該バルブプレート600は、3枚の板体を連結して構成する。具体的には、一対の通水プレート610F,610Rと、該通水プレート610F,610Rの前後間に設ける中間プレート620で構成する。
図15に示すとおり、該通水プレート610F,610Rは、中央部に前記ポンプロッド530に装着するための取付孔611を形成し、円周上の一部に正面(背面)視でコの字形状の切欠部612を形成すると共に、該取付孔611を中心として点対象となる位置に丸穴613を形成して構成するものであり、実質的には同一形状の部材である。前記ポンプロッド530に装着する際、前側の通水プレート610Fはサクションニップル580側に切欠部612が臨み、デリバリニップル590側に丸穴613が臨む配置とすると共に、後側の通水プレート610Rはサクションニップル580側に丸穴613が臨み、デリバリニップル590側に切欠部612が臨む配置とする。
また、前記中間プレート620は、中央部に前記ポンプロッド530に装着するための取付孔621を形成し、該取付孔621を中心として点対象となる位置に、各々一対の中間切欠部622,622を形成する。
前記中間プレート620はゴム等の弾性素材で構成するものであるので、中間切欠部622,622の左右間に位置する突出部623,623は、丸穴613,613に接触すると水の経路を塞ぐので、切欠部612,612に水を移動させることが可能になる。
さらに、前記ポンプロッド530の後部側には、水を出し入れするピストンヘッド640を設ける。該ピストンヘッド640は、ポンプケース540の内径に沿う径の前後のピストンプレート641,641と、該前後のピストンプレート641,641の前後間に設けて水漏れを防止するOリング642で構成する。
上記の構成では、伝動シャフト510が取出装置200の動作に連動して回転すると、クランクプレート520が時計回り方向の所定角度に亘って回動する。これにより、ポンプロッド530が装着したロッド取付孔525…に合わせて摺動し、ピストンヘッド640をポンプケース540内で前後方向に摺動させる。なお、送水ポンプ500はポンプヘッド550に設ける左右のポンプ支軸570,570を支点として上下回動することにより、ポンプロッド530の摺動を妨げない構成としている。
本件の送水ポンプ500は、ポンプロッド530がクランクプレート520の時計回り回動によって機体前側に移動し、ピストンヘッド640が機体後側から前側に移動する際にデリバリニップル590から植付具11側に水を供給する構成となるので、伝動シャフト510の駆動力でポンプロッド530が移動する。これにより、水圧による負荷がポンプロッド530にかかりにくいので、ポンプロッド530を従来より細くすることができるので、送水ポンプ500のコンパクト化が図られる。
また、バルブプレート600をポンプヘッド550内に設けたことにより、ポンプケース540を長さの異なるものに変更することでポンプ容量を調節することができるので、作業条件の適応範囲が広くなる。
そして、側面視において、デリバリニップル590の底部をポンプケース540の底部よりも機体下側に位置させたことにより、排水時に送水ポンプ500を空運転させるとポンプケース540内の水を完全に抜き取ることができるので、内部に残った水により送水ポンプ500が破損することが防止される。