JP2019041692A - 菌従属栄養ラン科植物の人工栽培 - Google Patents

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【課題】本発明の目的は、菌従属栄養ラン科植物の発芽から結実までを可能とする人工栽培方法を提供することである。【解決手段】菌従属栄養ラン科植物の育成方法は、培地として、自生地の腐植進行中の原木と複数の腐植進行中の球果を敷き詰める。培地がある室内環境を温度15℃〜30℃、かつ湿度70%以上にする。【選択図】図1

Description

本発明は、菌従属栄養ラン科植物の人工栽培に関する。
従来、菌従属栄養ラン科植物の人工栽培方法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
特開2005−245332号公報 特開2005−245333号公報 特開2017−66118号公報
しかし、特許文献1、2には、シナノショウキランの人工培養方法が記載されているが、シナノショウキランの人工培養するために環境を無菌にしなければならない。また、特許文献3には、ラン科植物の共生菌との共生を促進するための方法が記載されているが、ラン科植物の発芽を促進するために、ジベレリン阻害剤、サリチル酸、およびサリチル酸誘導体からなる群より選択される物質を含む剤を用いる必要があり、共生発芽系においては、特定の菌(ツラネスラ属の菌)を用いなければならない。また、特許文献3に示す発明では、菌従属栄養ラン科植物の発芽を促進することが可能であるものの、開花や結実までの育成が可能であるかは不明である。さらに付言すると、これまでに、菌従属栄養ラン科植物のオニノヤガラ属のヤツシロラン(例えば、クロヤツシロラン、アキザキヤツシロラン、ハルザキヤツシロラン)の開花・結実を可能とする人工栽培方法は確立されていない。
本発明の目的は、菌従属栄養ラン科植物の発芽から結実までを可能とする人工栽培方法を提供することである。
上記目的は、菌従属栄養ラン科植物の培地として、腐植進行中の原木と複数の腐植進行中の球果を用い、前記培地がある室内環境を温度15℃〜30℃、湿度70%以上にする、菌従属栄養ラン科植物の育成方法、によって達成される。
本発明によれば、菌従属栄養ラン科植物の人工栽培が可能となる。
本発明の実施形態による菌従属栄養ラン科植物の人工栽培方法に用いる育成キット100を説明する図である。 本発明の実施形態による菌従属栄養ラン科植物の人工栽培方法に用いて栽培したヤツシロラン類(クロヤツシロラン、アキザキヤツシロラン、ハルザキヤツシロラン)の栽培結果を示す写真である。 本発明の実施形態による菌従属栄養ラン科植物の人工栽培方法に用いて栽培したクロヤツシロランとアキザキヤツシロランの共生を説明するための栽培結果を示す写真である。 本発明の実施形態による菌従属栄養ラン科植物の人工栽培方法に用いて栽培したヤツシロラン類(クロヤツシロラン、アキザキヤツシロラン)のプロトコームと育成キット100の培地より同定した菌根菌の表である。
以下、本発明の実施形態による菌従属栄養ラン科植物の人工栽培方法を説明する。
図1を用いて、菌従属栄養ラン科植物のオニノヤガラ属のヤツシロラン類(クロヤツシロラン、アキザキヤツシロラン、ハルザキヤツシロラン)の人工培養を行うための育成キット100を説明する。図1(a)は、育成キット100の側面図であり、図1(b)は、育成キット100の正面図である。
育成キット100は、半透明のプラスチックケース11(蓋11a、筺体11bで構成される)に、筺体11bの中央に腐植進行中の丸太20を配置し、丸太20の周辺には腐葉土40と腐植進行中の杉の葉にできる球果30を敷き詰め、筺体11bの開口部を被うように水分吸収材13(本実施の形態では、ガーゼを使用)とビニール12を被せ、蓋11aを閉め密閉状態となるように構成される。
育成キット100内に配置される丸太20、球果30、および/または腐葉土40上にヤツシロラン(クロヤツシロラン、アキザキヤツシロラン、ハルザキヤツシロラン)の種子をまんべんなく広がるように播種する。播種は、ヤツシロランの産地の培地(丸太2、球果30、腐葉土40)と種子を組み合わせるのが好適であるが、ヤツシロランの産地の培地と種子を組み合わせない場合があってもよい。なお、本発明の実施形態による菌従属栄養ラン科植物の人工栽培方法の有効性を確認する実験として、クロヤツシロランの種子を神奈川県、および静岡県、ハルザキヤツシロランの種子を徳島県、アキザキヤツシロランの種子を静岡県の各自生地より採取し、もしくは実験室内で自家受粉させて採取した。また、丸太20、球果30、腐葉土40は、クロヤツシロランの人工栽培において神奈川県の自生地より採取し、アキザキヤツシロランの人工栽培において高知県と神奈川県の自生地より採取し、ハルザキヤツシロランの人工栽培において徳島県の自生地より採取した。クロヤツシロランの人工栽培における丸太20は、腐植進行中の杉を採用し、球果30は、腐植進行中の杉の球果を採用し、腐葉土40は、杉の腐葉土を採用した。アキザキヤツシロランの人工栽培における丸太20は、腐植進行中のモウソウチクを採用し、球果30は、腐植進行中の杉の球果を採用し、腐葉土40は、モウソウチクの腐葉土を採用した。また、ハルザキヤツシロランの人工栽培における丸太20は、腐植進行中のスダジイを採用し、球果30は、腐植進行中の杉の球果を採用し、腐葉土40は、スダジイ林腐葉土を採用した。なお、丸太20、球果30、腐葉土40は、上記以外を採用する場合があってもよい。また、丸太20のみで培地を構成してもよいし、球果30のみで培地を構成してもよいし、腐葉土40のみで培地を構成してもよいし、丸太20と球果30で培地を構成してもよいし、丸太20と腐葉土40で培地を構成してもよいし、球果30と腐葉土40で培地を構成してもよい。なお、球果30は、杉の球果を採用するのが好ましいが、杉以外の針葉樹(例えば、ヒノキ科、イヌマキ科、コウヤマキ科、またはマツ科)の球果であってもよい。
育成キット100を用いたヤツシロランの人工栽培は、育成キット100内の室内温度を15℃〜30℃、室内湿度を70%以上に保ち、花茎抽出までは育成キット100に段ボールをかぶせて育成キット100内を暗黒条件下にし、花茎抽出後は、育成キット100内を光条件下(昼間は明るく夜間は暗くする)に移行することで行われる。湿度を70%以上に保つたに、天然水もしくは蒸留水を定期的に噴霧器にて湿度状態を確認しながら適宜散水する。なお、育成キット100内の室内温度を好ましくは18℃〜27℃、さらに好ましくは20℃〜25℃、室内湿度を好ましくは75%〜90%、さらに好ましくは80%〜85%に保つ。温度を20℃〜25℃、湿度を80%〜85%にすることで、ヤツシロラン類の生育や共生菌の活動を最も活発にし、1個体から年3回開花・結実を可能にするなど短期間に発芽生育が可能となった。なお、ヤツシロランの花茎抽出までは育成キット100内を暗黒条件にするのが好ましいが、育成キット100内を光条件下としても、ヤツシロランの育成が可能であることを確認した。
<クロヤツシロランの人工栽培>
クロヤツシロランの人工栽培の結果を図2に示す。クロヤツシロランの種子は発芽しプロトコームを形成した。塊茎原基はプロトコーム形成後、ボール状になったプロトコームの頂上部より苞を形成し、それが割れて形成された。根もプロトコームの左右両サイドより発達した。開花後も根の一つは優先的に連続的に伸長した。塊茎は播種後4か月ほどで発育をストップし、シュート形成が起こる。抽苔後一か月で開花し、さく果は自然条件下で開花後約20−30日後成熟し裂開する。詳細は、クロヤツシロランは杉培地で播種から発芽まで17日〜約2か月を要し、プロトコーム、塊茎原基、根、開花、結実は播種後それぞれ、20−65日、25−80日、30−82日、154−299日、194−321日を要した。クロヤツシロランの花の中には播種後154日で咲くものもあった。人工培養法では、生育開花促進効果がみられ、大きな塊茎個体では年三回開花・結実するものもみられた。これら発育スピードは1年に1回咲く自然条件下と比較してかなりの効果的なスピードアップとなった。さらに栄養条件や生育環境が悪い場合、開花に数年、もしくは開花しない、塊茎が消失、菌と出会えず発芽しないこともあることから画期的な培養システムといえる。
<アキザキヤツシロランの人工栽培>
アキザキヤツシロランの人工栽培の結果を図2に示す。アキザキヤツシロランは杉、モウソウチク培地で、播種後から発芽まで8−36日、その後プロトコーム、塊茎原基、根、開花、結実は播種後それぞれ、33−53日、44−79日、50−83日、154−340日、245日を要した。杉培地は開花・結実に有効であった。また、アキザキとクロヤツシロランは同じ培地で共に生育することが可能であることが確認された(図3参照)。アキザキヤツシロランはプロトコーム時にクロヤツシロラン塊茎と同じ菌糸を共有することが確認された(図3に示す黒矢印: クロヤツシロラン、白矢印:アキザキヤツシロラン)。また、クロヤツシロランとアキザキヤツシロランは同じ培地で同じような生育スピードを示すことも確認された。このことは菌根菌とヤツシロラン類の種特異性が低いことを示しているものと思われる。
<ハルザキヤツシロランの人工栽培>
ハルザキヤツシロランの人工栽培の結果を図2に示す。ハルザキヤツシロランは杉培地・スダジイ培地では播種から発芽まで13−30日要し、プロトコーム、塊茎原基、根形成は播種後それぞれ、15−32日、30−45日、30−45日を要した。なお、発芽は自然条件下よりも早いことを確認した。
<培地と種子の産地>
さらに、本実施形態による人工栽培方法を用いて以下のような実験結果を得た。
(ア)神奈川県で採取した培地(杉の丸太20、杉の球果30、杉の腐葉土40)にて、神奈川県(培地と同じ場所)で採取したクロヤツシロランと静岡県(培地と異なる場所)で採取したクロヤツシロランの人工栽培が可能であることを確認した。
(イ)徳島県で採取した培地(スダジイの丸太20、杉の球果30、スダジイの腐葉土40)にて、徳島県(培地と同じ場所)で採取したハルザキヤツシロランと静岡県(培地と異なる場所)で採取したアキザキヤツシロランの人工栽培が可能であることを確認した。
(ウ)高知県で採取した培地(モウソウチクの丸太20、杉の球果30、モウソウチクの腐葉土40)にて、静岡県(培地と異なる場所)で採取したアキザキヤツシロランの人工栽培が可能であることを確認した。
<ヤツシロラン類の菌根菌の同定>
プロトコームを用いてCTAB法でゲノムを抽出した。菌が保持するrDNA中ITS領域をITS1F−ITS4BプライマーおよびTakaRa Ex Taq キットを用いて増幅した。PCR反応液は、DNA抽出物2μl、 Ex Taq polymerase 0.05μl、 各プライマー 10μM、dNTP mix 0.25μM、10x buffer を収量10μlになるように調整した。反応液をicyclerによりサイクル前の熱変性を94℃で5分、熱変性を94℃で30秒、アニーリングを55℃で30秒、伸長反応を72℃で1分のサイクルを30回行ったのち、最後の伸長を72℃で7分間行った。PCR産物は、EconoSpinを用いて精製した。精製したPCR産物でダイレクトシークエンスを行った。得られたDNA配列はBLAST検索を行った。GeneBankより得られた複数の配列に基づいてClustalXで系統樹を作成した。
<菌根菌の分子レベルでの同定>
本研究における人工培養方を用いて、オニノヤガラ属のヤツシロラン類の菌根菌同定を試みた。ITS領域から得た配列に基づき菌根菌の同定を行った。図4は、クロヤツシロラン(神奈川県)およびハルザキヤツシロラン(徳島県)のプロトコームと育成キット100の培地より同定した菌根菌のテーブルである。クロヤツシロラン(神奈川県)およびハルザキヤツシロラン(徳島県)のプロトコームから得られたITS配列は、それぞれ学名(Diplomitoporus rimosus)と学名(Thelepurus membranaeus)と99%以上の相同率で一致した。これらの菌根菌は、それぞれのスギ培地およびスダジイ培地からも同様の結果が検出された。この結果は、人工培養方を用いることでオニノヤガラ属のヤツシロラン類の生長に必要な菌を同定するためにも効率的であることがわかった。学名(Diplomitoporus rimosus)および学名(Theleporus membranaeus)のそれぞれの菌根菌は、いずれもPolyporalesタマチョレイタケ目の一種であることに共通性がある。したがって、これらの菌根菌の名前をNCBIから検索して同種の登録されているITS領域のゲノム配列を比較させてClastalWで解析しNJplotで系統樹の作成を行った。その結果は、これら2種はあまり近い関係にあるわけではないことがわかった。また、菌根菌の同定において、他種の菌も検出された。アキザキヤツシロランおよびハルザキヤツシロランのプロトコームから得られたITS配列において、学名(Trechispora)、学名(Corticium)、学名(Mycena spp)の菌根菌も検出された。しかし、検出されたこれらの菌種とは相同性が低かったため、オニノヤガラ属のヤツシロラン類の生育において依存した関係性があることを見出すことはできなかった。しかし、これらをもってオニノヤガラ属のヤツシロラン類が生長を良好に行う上で非特異的に複数の菌根菌との共生関係を保持しているということが示唆された。
以上のことから、育成キット100を用いたオニノヤガラ属のヤツシロラン類の人工栽培において次の結果が得られた。
・クロヤツシロラン
杉培地にて人工栽培に成功し、同一個体で年3回の開花・結実が可能であることが確認された。また、菌根菌の一つは、学名(Diplomitoporus rimosus)であることが確認された。
・アキザキヤツシロラン
杉培地、モウチク培地にて人工栽培に成功した。また、菌根菌の一つは、学名(Gerronema stronbodes)であることが確認された。
・ハルザキヤツシロラン
杉培地、スダジイ培地にて人工栽培に成功した。また、菌根菌の一つは、学名(Theleporus membranaeus)であることが確認された。
上記の実験結果より、スギの腐植球果が菌根菌の繁殖及びヤツシロランの生育に好影響を与えたことが確認された。杉の球果の中には多種多様な菌糸が発達しているものが多くみられ、共生菌にとって杉の球果の複雑な3−D構造が、菌にとって適度な湿度と気相を兼ね備えた良い生育環境であり、杉球果を培地に加えることが共生菌の生育活動を活発化させ本人工栽培について好影響を与えたことが確認された。また、ガーゼを天井面に設置したことが過剰な結露と結露の落下を防ぎ程よい湿度が保たれ、人工栽培に好影響を与えたことも確認された。また、育成キット100内の室温を20〜25℃付近に保ち、かつ育成キット100内の湿度を80〜85%付近に保つことで、ヤツシロラン類の生育や共生菌の活動を活発にすることも確認された。なお、ヤツシロランは複数の共生菌と各生長過程で異なる菌根菌と共生することを示唆する結果も得られた。
また、上記の実験結果より得られたヤツシロランの塊茎から、ガストロジン(英名Gastrodin)が発見された。以下にヤツシロランの塊茎からガストロジンを抽出した方法を示す。
(ア)ヤツシロランの塊茎に適量の50%メタノールを加え、乳鉢で破砕する(塊根1g当たり、メタノール10ml使用)。
(イ)破砕後の塊根と抽出液をナスフラスコに移し、80℃の熱水中で還流しながら、10分程度抽出を行う。
(ウ)所定の濾紙を用いて抽出液を濾過し、粗抽出液とする。
(エ)粗抽出液に等量の石油エーテルを加え、分液漏斗を用いて分画し、水層を分液する(本例では3回繰り返す)。
(オ)水層に等量の酢酸エチルを加え、分液漏斗を用いて分画し、水層を分液する(本例では3回繰り返す)。
(カ)得られた水層をエバポレーターにより濃縮させる。
(キ)50%メタノールで再懸濁し、粗精製液とする。
以上の方法によって、ヤツシロランの塊茎からガストロジンを抽出した。また、開花直前の塊茎から、最も高濃度のガストロジン抽出液を取り出すことができた。なお、上記以外の方法でガストロジンを抽出する場合があってもよい。
また、本実施形態による菌従属栄養ラン科植物の人工栽培方法は、オニノヤガラの人工栽培においても有効であることも確認した。
これまでは、グループの菌が菌従属栄養植物の共生者とみなされており、例えばラン科シンビジウム属において、もっとも近縁の独立栄養植物と菌従属栄養植物でそれぞれが共生する菌の多様性を比較した結果、菌従属栄養植物の共生菌の多様性は格段に低くなり、菌従属ラン科植物と共生菌との間の種特異性は高いと考えられてきた。しかしながら、クロヤツシロランの根菌とアキザキヤツシロラン、ハルザキヤツシロランの根菌がアキザキヤツシロランと、またGaleola hydraの根菌がGaleola spとそれぞれ共生関係を樹立したとされ、これらの結果に共通するのは、根菌と共生したランが、根菌の分離元のランとそれぞれ同属であることであること、また、3種の同じオニノヤガラ属のヤツシロラン類の共生菌は、Mycenaceae Marasmiaceaeの割合が多いものの、多種多様な菌Ceratobasidiaceae、 Polyporaceae等が検出されており、本実施の形態による人工栽培方法の効果を確認する実験結果からも3種の同属のランに共通の共生関係を樹立するパートナーの根菌MycenaceaeもしくはPolyporaceaeの存在が確認され、これら3種のランについての根菌共生に関する種の特異性は低く、進化の途中で様々なリスク(例えば植物病原菌の犯されてしまう等)を冒しつつも将来に向けての様々の共生菌とのパートナーシップの関係性構築の模索中の過程である可能性が示された。よって、本実施の形態による人工栽培方法においては、特に特定の菌を抽出し種子を接種しなくても自生地周辺の腐葉土や腐植木を採取しその中に存在する多様な菌根菌を利用すれば菌従属栄養ラン科植物の人工栽培が十分栽培が可能であることが確認された。また、同じオニノヤガラ属のオニノヤガラについては漢方薬の薬効が知られており、栽培法については数多くの報告があるが、その他のオニノヤガラ属のラン科については無菌発芽については報告があるものの、その他栽培法に関する報告は全くない。また、本実施の形態による人工栽培方法による育成キット100を用いることで、短期間に大量の栽培が可能であることは、今までにない画期的増殖法でもある。オニノヤガラではナラタケと共生することで有名であるが、しかしこれは生育が進んでからの事で、発芽から実生の初期はクヌギタケ属の菌としか共生しないと報告されており、シュンラン属でも生育ステージごとに共生する菌の種類の組み合わせが変わるとされ、ヤツシロラン類においても生育ステージごとに最適な菌のパートナーがシフトする。したがって、共生菌の同定と単離培養、そして最適な菌の組み合わせを行い、本実施の形態による人工栽培方法に応用することで、単に園芸的な栽培利用の目的のみならず、絶滅危惧植物の増殖、さらには現地での播種や移植による生物多様性の保全、薬効成分のある菌従属栄養植物の医学分野への利用、地下部の形態を破壊せずに観察可能であること等から生物教育分野への教材として利用等の様々な可能性に道が開かれる。またこの方法ではヤツシロラン類の種子を3か月で入手できるためモデルプランツとして知られるアラビドプシスに相当するモデルプランツとしての役割の期待もあり、この方法で遺伝的に均一な個体の作出や開花期の調節、オニノヤガラ属間の交配も可能である。さらには自家受粉によるインブリード交配も可能となる。
本発明は、絶滅に瀕している生物多様性の保全や、医学分野や園芸分野、さらには生物教育における教材化等における様々な分野において広く利用可能である。
100 育成キッド
11a 蓋
11b 筺体
12 ビニール
13 水分吸収材
20 丸太
30 球果
40 腐葉土

Claims (4)

  1. 菌従属栄養ラン科植物の培地として、腐植進行中の原木と複数の腐植進行中の球果を用い、
    前記培地がある室内環境を温度15℃〜30℃、かつ湿度70%以上にする、菌従属栄養ラン科植物の育成方法。
  2. 請求項1に記載の育成方法を用いて培養したヤツシロラン。
  3. 請求項1に記載の育成方法を用いて培養したオニノヤガラ。
  4. ヤツシロランの塊茎から抽出したガストロジン(英名Gastrodin)。
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