JP2019041138A - 受動素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも透過波の位相変化量を大きくする。
【解決手段】受動素子は、環状の金属からなる導体部1と、この導体部1によって囲まれた空間内に、導体部1の2点と繋がるように形成された金属からなる導体部2aとを備える。導体部2aは、この導体部2aに設けられたギャップ3aより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、分割リング共振器を用いたメタマテリアル受動素子に関するものである。
ミリ波/テラヘルツ波は、その物質に対する透過性や高い分解能からイメージングやレーダー技術への応用が期待されている。しかし、その高い周波数ゆえに、回路内での伝搬損失が大きく、ミリ波/テラヘルツ波帯の信号を低損失に取り扱う技術が求められる。例えば非特許文献1では、100GHz以上の周波数で4×4の平面アレーアンテナを用いる場合、10dB以上の損失が生じている。
材料の屈折率を設計し、空間系にて低損失に超高周波信号を制御可能なメタマテリアル技術は、超高周波帯空間系デバイスを実現する技術として期待されている。例えば非特許文献2では、分割リング共振器をメタマテリアルデバイスの単位セルとして用い、分割リング共振器のギャップの寸法を変化させることにより共振周波数をシフトさせている。この共振周波数のシフトにより、共振周波数から離れた、低損失な透過特性を示す動作周波数領域における透過移相量分布を変化させ、メタマテリアルデバイスを透過する電磁波の伝搬を制御している。
図14に従来の代表的な分割リング共振器の構造を示す。分割リング共振器は、金属からなる導体部100と、導体部100に設けられたギャップ101とから構成される。ギャップ101と平行なy軸方向の電界成分Einを有する入射電磁波により、ギャップ101に起電力が励起され周回電流iが生じる。この周回電流iは、ギャップ101と導体部100とに由来する容量成分および誘導成分により決定されるLC共振周波数において最大となる。
ギャップ101の寸法Gを変化させることにより、共振周波数をシフトさせる場合、寸法Gが大きい程、容量成分が小さいため、共振周波数は高くなる。一方で寸法Gが小さいと容量成分が大きくなるため、共振周波数も低くなる。
以上のように分割リング共振器のギャップ101の寸法Gを変化させ、分割リング共振器の共振周波数をシフトさせることにより、共振周波数近傍における透過位相量変化を実現し、共振周波数より高い損失の少ない周波数領域にて二次元の透過位相量分布を形成している。
上記のような分割リング共振器を単位セルとするメタマテリアルデバイスを利用すれば、電磁波の集光レンズ/偏向レンズを実現することができる。しかしながら、高利得の電磁波ビームを形成する場合、電磁波の波長に対してメタマテリアルデバイスの大きな開口面積が必要となり、電磁波の任意の伝搬方向、ビーム幅、あるいは焦点距離を実現するのに必要な透過位相変化量が大きくなるため、メタマテリアルデバイスに2πの透過位相変化量が求められる。
原理的に、散乱波の位相変化量は散乱体の共振周波数近傍において最大π[rad]であるため、散乱を受けずに透過する直接波と散乱波との足し合わせとして観測される透過波の位相変化量はπ[rad]よりも小さくなる。そのため、2π[rad]の透過位相量設計幅を実現するためにはメタマテリアルデバイスを、ある間隔で多層化しなければならないため、メタマテリアルデバイスのサイズが大きくなってしまうという問題点があった。
W.Shin,et al.,"A 108-112 GHz 4×4 Wafer-Scale Phased Array Transmitter with High-Efficiency On-Chip Antennas",proc.of IEEE RFIC,pp.199-202,2012 D.Kitayama,et.al.,"Laminated metamaterial flat lens at millimeter-wave frequencies",OPTICS EXPRESS,Vol.23,No.18,pp.23348-23356,2015
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来よりも透過波の位相変化量を大きくすることができる受動素子を提供することを目的とする。
本発明の受動素子は、環状の金属からなる第1の導体部と、この第1の導体部によって囲まれた空間内に、前記第1の導体部の少なくとも1点と繋がるように形成された金属からなる第2の導体部とを備え、前記第2の導体部は、この第2の導体部に設けられたギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成されることを特徴とするものである。
また、本発明の受動素子は、環状の金属からなる第1の導体部と、この第1の導体部によって囲まれた空間内に、前記第1の導体部の2点間を接続するように形成された金属からなる第2の導体部とを備え、前記第1の導体部は、前記第2の導体部を間に挟んで互いに向かい合う位置に設けられた2つのギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成されることを特徴とするものである。
また、本発明の受動素子の1構成例は、前記入射電磁波によって前記第1、第2の導体部に励起される周回電流の経路が、前記第1の導体部の中心を含む面であり、かつ前記入射電磁波の電界面と平行な面に対して非対称となるように前記第1、第2の導体部が形成されることを特徴とするものである。
また、本発明の受動素子は、環状の金属からなる導体部を備え、前記導体部は、この導体部に設けられたギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成されることを特徴とするものである。
また、本発明の受動素子の1構成例は、前記入射電磁波によって前記導体部に励起される周回電流の経路が、前記導体部の中心を含む面であり、かつ前記入射電磁波の電界面と平行な面に対して非対称となるように前記導体部が形成されることを特徴とするものである。
また、本発明の受動素子の1構成例は、前記第1の導体部と前記第2の導体部と前記ギャップとを各々含む複数の単位セルを備え、前記複数の単位セルは、アレイ状に配置され、前記複数の単位セルの各々は、前記ギャップの寸法および前記第1の導体部の寸法が単位セル毎に設定されることを特徴とするものである。
また、本発明の受動素子の1構成例は、前記導体部と前記ギャップとを各々含む複数の単位セルを備え、前記複数の単位セルは、アレイ状に配置され、前記複数の単位セルの各々は、前記ギャップの寸法および前記導体部の寸法が単位セル毎に設定されることを特徴とするものである。
また、本発明の受動素子の1構成例は、鏡映対称の関係にある前記単位セルが混在して配置されることを特徴とするものである。
本発明によれば、環状の金属からなる第1の導体部と、第1の導体部によって囲まれた空間内に、第1の導体部の少なくとも1点と繋がるように形成された金属からなる第2の導体部とを設け、第2の導体部に設けられたギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成することにより、受動素子の共振周波数近傍における散乱波の位相変化量(0〜π[rad])の範囲で透過位相を設計することができ、従来の分割リング共振器に比べて位相設計幅を大きくすることができる。
また、本発明では、環状の金属からなる第1の導体部と、第1の導体部によって囲まれた空間内に、第1の導体部の2点間を接続するように形成された金属からなる第2の導体部とを設け、第2の導体部を間に挟んで互いに向かい合う位置に設けられた2つのギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成することにより、受動素子の共振周波数近傍における散乱波の位相変化量(0〜π[rad])の範囲で透過位相を設計することができ、従来の分割リング共振器に比べて位相設計幅を大きくすることができる。
また、本発明では、入射電磁波によって第1、第2の導体部に励起される周回電流の経路が、第1の導体部の中心を含む面であり、かつ入射電磁波の電界面と平行な面に対して非対称となるように第1、第2の導体部を形成することにより、周回電流を流すために必要な条件を満たすことができる。
また、本発明では、環状の金属からなる導体部を設け、導体部に設けられたギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成することにより、受動素子の共振周波数近傍における散乱波の位相変化量(0〜π[rad])の範囲で透過位相を設計することができ、従来の分割リング共振器に比べて位相設計幅を大きくすることができる。
また、本発明では、入射電磁波によって導体部に励起される周回電流の経路が、導体部の中心を含む面であり、かつ入射電磁波の電界面と平行な面に対して非対称となるように導体部を形成することにより、周回電流を流すために必要な条件を満たすことができる。
また、本発明では、第1の導体部と第2の導体部とギャップとを各々含む複数の単位セルをアレイ状に配置する。本発明では、同一形状の単位セルをアレイ状に配置すれば、入射電磁波の偏波を回転させることができる。また、本発明では、ギャップの寸法の違い、または第1の導体部の寸法の違いにより共振周波数が異なる単位セルをアレイ状に配置すれば、これらの単位セルが形成されている面に垂直な軸に対して散乱波の伝搬方向を傾けることができ、入射電磁波の伝搬方向を偏光する機能を実現することができる。あるいは、単位セルが形成されている面から離れた位置に散乱波が集光するレンズ機能を実現することができる。
また、本発明では、導体部とギャップとを各々含む複数の単位セルをアレイ状に配置する。本発明では、同一形状の単位セルをアレイ状に配置すれば、入射電磁波の偏波を回転させることができる。また、本発明では、ギャップの寸法の違い、または導体部の寸法の違いにより共振周波数が異なる単位セルをアレイ状に配置すれば、入射電磁波の伝搬方向を偏光する機能を実現したり、単位セルが形成されている面から離れた位置に散乱波が集光するレンズ機能を実現したりすることができる。
また、本発明では、鏡映対称の関係にある単位セルを混在させて配置することにより、受動素子の共振周波数近傍で2π[rad]の位相設計幅を実現することができる。
図1は、本発明の第1の実施例に係る分割リング共振器の構造を示す平面図である。 図2は、本発明の第1の実施例に係る分割リング共振器の散乱波の強度および位相の特性を示す図である。 図3は、本発明の第1の実施例に係る分割リング共振器の別の構造を示す平面図である。 図4は、図1、図3の分割リング共振器を並べて配置したメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。 図5は、図4のメタマテリアル受動素子の散乱波の強度および位相の特性を示す図である。 図6は、本発明の第2の実施例に係る分割リング共振器の構造を示す平面図である。 図7は、本発明の第2の実施例に係る分割リング共振器の別の構造を示す平面図である。 図8は、本発明の第2の実施例に係る分割リング共振器の別の構造を示す平面図である。 図9は、本発明の第3の実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。 図10は、本発明の第4の実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。 図11は、本発明の第5の実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。 図12は、本発明の第6の実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。 図13は、本発明の第7の実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。 図14は、従来の分割リング共振器の構造を示す平面図である。
[発明の原理]
(I)本発明のメタマテリアル受動素子の単位セルとなる分割リング共振器は、環状の金属からなる第1の導体部によって囲まれた空間内に、第1の導体部の少なくとも1点と繋がるように形成された金属からなる第2の導体部を備える。第2の導体部は、この第2の導体部に設けられたギャップより再放射される散乱波(電磁波)が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成されていることを特徴とする。
(II)あるいは、本発明のメタマテリアル受動素子の単位セルとなる分割リング共振器は、環状の金属からなる導体部を備える。導体部は、この導体部に設けられたギャップより再放射される散乱波(電磁波)が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成されていることを特徴とする。
(III)具体的な例としては、上記の(I)、(II)の分割リング共振器は、ギャップより再放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と直交する電界成分を有するように第1、第2の導体部が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、入射電磁波の電界方向成分と異なる電界方向成分を有する散乱波が生じるため、偏光板等により散乱波成分を抽出できる。散乱波成分のみを抽出できると、本発明の受動素子の共振周波数近傍における散乱波の位相変化量(0〜π[rad])の範囲で透過位相を設計できる。また、入射電磁波と異なる電界方向成分を有する散乱波が透過波と足し合わされることにより、楕円偏波や円偏波を形成することが可能になる。また、偏向板を組み合わせることで入射電磁波と異なる電界方向成分の直線偏波を形成することもできる。直線偏波成分は、本発明の受動素子の共振周波数近傍における散乱波の位相変化量(0〜π[rad])の範囲で透過位相を設計できる。
[第1の実施例]
従来の分割リング共振器は、図14に示したように、導体部100とギャップ101とから構成されており、ギャップ101より再放射される散乱波が、分割リング共振器に対して垂直に入射する電磁波の電界成分Einと平行な方向の電界成分Esを有する構造が形成されていた。周回電流iが誘起されるLC共振モードが励起されると、ギャップ101に電気双極子が形成され、主にギャップ101より再放射される散乱波と、散乱されずに透過した入射電磁波とが足し合わされて透過波として観測される。
散乱されずに透過した入射電磁波と散乱波の電界成分方向が一致しているため、入射電磁波と散乱波とを分離することはできず、観測される透過波の位相変化は、散乱波の位相変化よりも小さくなってしまう。図14に示した分割リング共振器の共振周波数近傍における散乱波の位相変化量はπ[rad]である。しかしながら、例えば非特許文献2では、散乱されずに透過した入射電磁波と散乱波との足し合わせである透過波の位相変化設計幅はπ/3[rad]となり、散乱波の位相変化よりも小さくなっている。
これに対して、本実施例では、上記の発明の原理で説明した構造を採用することにより、分割リング共振器の共振周波数近傍において透過波の位相変化量をπ[rad]にすることができる。
図1は本実施例に係る分割リング共振器の構造を示す平面図である。本実施例の分割リング共振器10aは、環状の金属からなる導体部1と、導体部1によって囲まれた空間内に、導体部1の複数点(ここでは左右の2点)と繋がるように形成された金属からなる導体部2aと、導体部2aに設けられたギャップ3aとから構成される。本発明では、導体部1,2aとギャップ3aとを含む面(図1の紙面)と垂直な方向から電磁波が入射する。図1におけるx,y,zは座標軸を表し、Hは入射電磁波の磁界成分の方向、Einは入射電磁波の電界成分の方向、kは波数の方向、Esはギャップ3aより再放射される散乱波(電磁波)の電界成分の方向を表している。
本実施例では、導体部1,2aとギャップ3aとを含む面(図1の紙面)内で導体部2aをクランク状に曲げた形状とすることにより、ギャップ3aより再放射される散乱波が入射電磁波の電界成分Einの方向と直交する電界成分Esを有するようにしている。さらに、本実施例では、導体部1,2aとギャップ3aとを含む面に対して垂直に入射する電磁波によって導体部1,2aに励起される周回電流iの経路が、導体部1の中心を含む面であり、かつ入射電磁波の電界面と平行な面(図1の直線Lを含むxz平面)に対して非対称となっている。これにより、入射電磁波に応じた周回電流iが図1のように流れ、LC共振モードが励起され、ギャップ3aに電気双極子が誘起される。
本実施例における散乱特性の概念図を図2に示す。図2の20は本実施例の分割リング共振器10aの散乱波の強度を示し、21は散乱波の位相を示している。このように、散乱波は、分割リング共振器10aの共振周波数近傍においてπ[rad]の位相変化を生じる。
本実施例では、電気双極子が放射する散乱波の電界成分Esの方向が入射電磁波の電界成分Einの方向と直交しているため、例えば偏光板や偏波依存性の大きなアンテナ等を用いることで散乱波のみを抽出することができる。したがって、分割リング共振器10aの共振周波数近傍における散乱波の位相変化量(0〜π[rad])の範囲で透過位相を設計することができ、従来の分割リング共振器に比べて位相設計幅を大きくすることができる。
図3は本実施例に係る分割リング共振器の別の構造を示す平面図であり、同一の構成には同一の符号を付してある。分割リング共振器10bは、導体部1と、導体部1によって囲まれた空間内に、導体部1の複数点(ここでは左右の2点)と繋がるように形成された金属からなる導体部2bと、導体部2bに設けられたギャップ3bとから構成される。本構成においても図3のように周回電流iを流すために、周回電流iの経路が、導体部1の中心を含む面であり、かつ入射電磁波の電界面と平行な面(図3の直線Lを含むxz平面)に対して非対称となるようにする必要がある。
分割リング共振器10bでは、導体部1,2bとギャップ3bとを含む面(図3の紙面)内で導体部2bをクランク状に曲げた形状としているが、図1に示した分割リング共振器10aに対して導体部2bが曲がる方向を逆方向にしている。つまり、分割リング共振器10aと分割リング共振器10bとは鏡映対称の関係にある。
このように導体部2bが曲がる方向が逆方向になると、ギャップ3bに形成される電気双極子の極性が図1に対して反転するため、ギャップ3bより再放射される散乱波の位相は図1のギャップ3aより再放射される散乱波の位相に対してπ[rad]ずれる。そのため、図1に示した分割リング共振器10aと図3に示す分割リング共振器10bの両方を用いることで、分割リング共振器10a,10bの共振周波数近傍で2π[rad]の位相設計幅を実現することができる。
図4に示すように分割リング共振器10a,10bを並べて配置したメタマテリアル受動素子の散乱特性の概念図を図5に示す。図5の50は分割リング共振器10a,10bの散乱波の強度を示し、51は分割リング共振器10aの散乱波の位相を示し、52は分割リング共振器10bの散乱波の位相を示している。分割リング共振器10a,10bのそれぞれの散乱波は、分割リング共振器10a,10bの共振周波数近傍においてπ[rad]の位相変化を生じる。
図4の例では、分割リング共振器10a,10bのギャップ3a,3bに誘起される電気双極子が放射する散乱波の電界成分Esの方向が入射電磁波の電界成分Einの方向と直交しているため、散乱波のみを抽出することができる。したがって、分割リング共振器10a,10bの共振周波数近傍における散乱波の位相変化を利用することで最大で2π[rad]の透過位相変化量を実現することができ、従来構造に対して大きな位相設計幅をメタマテリアル一層のみで実現することができる。
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、分割リング共振器の別の例を示すものである。図6(A)〜図6(F)、図7(A)〜図7(F)、図8(A)〜図8(F)は本実施例に係る分割リング共振器の構造を示す平面図であり、図1、図3と同一の構成には同一の符号を付してある。
図6(A)に示す分割リング共振器10cは、金属からなる導体部1,2cと、導体部2cを分断するように設けられたギャップ3cとから構成される。分割リング共振器10cは、分割リング共振器10aと同様の平面形状を有するものであるが、分割リング共振器10aの導体部2aの幅がギャップ3aの部分で広くなっているのに対し、分割リング共振器10cでは、幅が一定の導体部2cの部分にギャップ3cが形成されている。
図6(B)に示す分割リング共振器10dは、金属からなる導体部1,2dと、導体部2dを分断するように設けられたギャップ3dとから構成される。分割リング共振器10dは、分割リング共振器10bと同様の平面形状を有するものであるが、分割リング共振器10bの導体部2bの幅がギャップ3bの部分で広くなっているのに対し、分割リング共振器10dでは、幅が一定の導体部2dの部分にギャップ3dが形成されている。分割リング共振器10cと分割リング共振器10dとは鏡映対称の関係にある。
図6(C)に示す分割リング共振器10eは、導体部1と、導体部1によって囲まれた空間内に、それぞれ導体部1の1点と繋がるように形成された金属からなる2つの導体部2eと、2つの導体部2eの間に設けられたギャップ3eとから構成される。分割リング共振器10a〜10dでは、それぞれ1つの導体部2a〜2dを分断するようにギャップ3a〜3dが形成されていた。
これに対して、分割リング共振器10eでは、入射電磁波の電界成分Einと直交する方向の距離が一定値だけ離れた形で、導体部1の内側から入射電磁波の電界成分Einの方向に沿って互いに逆向きに延伸する2つの導体部2eを設け、この2つの導体部2eの対向する部分の間をギャップ3eとしている。2つの導体部2eの距離がギャップ3eの寸法となる。このような構造により、分割リング共振器10eにおいても、ギャップ3eより再放射される散乱波が入射電磁波の電界成分Einの方向と直交する電界成分Esを有し、また入射電磁波によって導体部1,2eに励起される周回電流iの経路が、導体部1の中心を含む面であり、かつ入射電磁波の電界面と平行な面(図6(C)の直線Lを含むxz平面)に対して非対称となっている。
図6(D)に示す分割リング共振器10fは、導体部1と、導体部1によって囲まれた空間内に、それぞれ導体部1の1点と繋がるように形成された金属からなる2つの導体部2fと、2つの導体部2fの間に設けられたギャップ3fとから構成される。分割リング共振器10fでは、2つの導体部2fの延伸する向きが分割リング共振器10eの導体部2eと逆になっている。これにより、分割リング共振器10eと分割リング共振器10fとは鏡映対称の関係にある。
図6(E)に示す分割リング共振器10gは、環状の金属からなる導体部1gと、導体部1gによって囲まれた空間内に導体部1gの2点間を接続するように形成された金属からなる導体部2gと、導体部1gを分断するように設けられた2つのギャップ3gとから構成される。分割リング共振器10a〜10fでは、導体部2a〜2fにギャップ3a〜3fが設けられていた。
これに対して、分割リング共振器10gでは、導体部1gに2つのギャップ3gを形成している。具体的には、導体部1gを2つに分断し、分断した導体部1gに対向する部分が2箇所できるように、入射電磁波の電界成分Einの方向および電界成分Einと直交する方向に位置をずらして、この2つの導体部1gの対向する部分の間をギャップ3gとしている。このような構造により、分割リング共振器10gにおいても、ギャップ3gより再放射される散乱波が入射電磁波の電界成分Einの方向と直交する電界成分Esを有し、また入射電磁波によって導体部1g,2gに励起される周回電流iの経路が、導体部1gの中心を含む面であり、かつ入射電磁波の電界面と平行な面(図6(E)の直線Lを含むxz平面)に対して非対称となっている。
図6(F)に示す分割リング共振器10hは、環状の金属からなる導体部1hと、導体部1hによって囲まれた空間内に導体部1hの2点間を接続するように形成された金属からなる導体部2hと、導体部1hを分断するように設けられた2つのギャップ3hとから構成される。分割リング共振器10hでは、分割リング共振器10gと鏡映対称の関係になるように、分断された2つの導体部1hのずらし方を分割リング共振器10gの導体部1gと逆にしている。
図7(A)に示す分割リング共振器10iは、金属からなる導体部1i,2iと、導体部2iを分断するように設けられたギャップ3iとから構成される。分割リング共振器10iは、分割リング共振器10cの角環状の導体部1の代わりに、円環状の導体部1iを設けたものである。
図7(B)に示す分割リング共振器10jは、金属からなる導体部1j,2jと、導体部2jを分断するように設けられたギャップ3jとから構成される。分割リング共振器10jは、分割リング共振器10dの導体部1の代わりに、円環状の導体部1iを設けたものである。分割リング共振器10iと分割リング共振器10jとは鏡映対称の関係にある。
図7(C)に示す分割リング共振器10kは、導体部1iと、導体部1iによって囲まれた空間内に、それぞれ導体部1iの1点と繋がるように形成された金属からなる2つの導体部2kと、2つの導体部2kの間に設けられたギャップ3kとから構成される。分割リング共振器10kは、分割リング共振器10eの導体部1の代わりに、円環状の導体部1iを設けたものである。
図7(D)に示す分割リング共振器10lは、導体部1iと、導体部1iによって囲まれた空間内に、それぞれ導体部1iの1点と繋がるように形成された金属からなる2つの導体部2lと、2つの導体部2lの間に設けられたギャップ3lとから構成される。分割リング共振器10lは、分割リング共振器10fの導体部1の代わりに、円環状の導体部1iを設けたものである。分割リング共振器10kと分割リング共振器10lとは鏡映対称の関係にある。
図7(E)に示す分割リング共振器10mは、円環状の金属からなる導体部1mと、導体部1mによって囲まれた空間内に導体部1mの2点間を接続するように形成された金属からなる導体部2mと、導体部1mを分断するように設けられた2つのギャップ3mとから構成される。分割リング共振器10mは、分割リング共振器10gの導体部1gの代わりに、円環状の導体部1mを設けたものである。
図7(F)に示す分割リング共振器10nは、円環状の金属からなる導体部1nと、導体部1nによって囲まれた空間内に導体部1nの2点間を接続するように形成された金属からなる導体部2nと、導体部1nを分断するように設けられた2つのギャップ3nとから構成される。分割リング共振器10nでは、分割リング共振器10mと鏡映対称の関係になるように、分断された2つの導体部1nのずらし方を分割リング共振器10mの導体部1mと逆にしている。
図8(A)に示す分割リング共振器10oは、金属からなる導体部1,2oと、導体部2oを分断するように設けられたギャップ3oとから構成される。分割リング共振器10oの導体部2oは、分割リング共振器10cの導体部2cの角を丸めたものに相当する。
図8(B)に示す分割リング共振器10pは、金属からなる導体部1,2pと、導体部2pを分断するように設けられたギャップ3pとから構成される。分割リング共振器10pの導体部2pは、分割リング共振器10dの導体部2dの角を丸めたものに相当する。分割リング共振器10oと分割リング共振器10pとは鏡映対称の関係にある。
図8(C)に示す分割リング共振器10qは、環状の金属からなる導体部1qと、導体部1qに設けられたギャップ3qとから構成される。分割リング共振器10qでは、導体部1qに分断部を1箇所形成し、この分断部に対向する部分ができるように、入射電磁波の電界成分Einの方向および電界成分Einと直交する方向に位置をずらして、この対向する部分の間をギャップ3qとしている。このような構造により、分割リング共振器10qにおいても、ギャップ3qより再放射される散乱波が入射電磁波の電界成分Einの方向と直交する電界成分Esを有し、また入射電磁波によって導体部1qに励起される周回電流iの経路が、導体部1qの中心を含む面であり、かつ入射電磁波の電界面と平行な面(図8(C)の直線Lを含むxz平面)に対して非対称となっている。
図8(D)に示す分割リング共振器10rは、環状の金属からなる導体部1rと、導体部1rに設けられたギャップ3rとから構成される。分割リング共振器10rでは、分割リング共振器10qと鏡映対称の関係になるように、分断された導体部1rのずらし方を分割リング共振器10qの導体部1qと逆にしている。
図8(E)に示す分割リング共振器10sは、金属からなる導体部1i,2sと、導体部2sを分断するように設けられたギャップ3sとから構成される。分割リング共振器10sの導体部2sは、分割リング共振器10iの導体部2iの角を丸めたものに相当する。
図8(F)に示す分割リング共振器10tは、金属からなる導体部1i,2tと、導体部2tを分断するように設けられたギャップ3tとから構成される。分割リング共振器10tの導体部2tは、分割リング共振器10jの導体部2jの角を丸めたものに相当する。分割リング共振器10sと分割リング共振器10tとは鏡映対称の関係にある。
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図9は本実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。本実施例のメタマテリアル受動素子は、誘電体基板4上に、鏡映対称の関係にある分割リング共振器10a,10b(単位セル)をアレイ状に形成したものである。これにより、本実施例では、分割リング共振器10a,10bの共振周波数近傍で2π[rad]の位相設計幅を実現することができ、従来構造に対して大きな位相設計幅をメタマテリアル一層のみで実現することができる。本実施例では、鏡映対称の関係にあるものであれば、分割リング共振器10a〜10tのいずれを用いてもよい。
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図10は本実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。本実施例のメタマテリアル受動素子は、誘電体基板4上に、同一形状の分割リング共振器10a(単位セル)をアレイ状に形成したものである。これにより、本実施例では、入射波の偏波を回転させることができる。本実施例では、分割リング共振器10a〜10tのいずれを用いてもよい。
[第5の実施例]
次に、本発明の第5の実施例について説明する。図11は本実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。本実施例のメタマテリアル受動素子は、誘電体基板4上に、入射電磁波の電界成分Einと直交する方向のギャップ3a−1,3a−2の寸法Gが異なる分割リング共振器10a−1,10a−2(単位セル)をアレイ状に形成したものである。
本実施例では、容量成分に該当するギャップ3a−1,3a−2の寸法の違いにより共振周波数が異なる分割リング共振器10a−1,10a−2を配置することで、散乱波位相分布を形成することができる。例えばギャップ3a−1,3a−2より再放射される散乱波の位相を式(1)に従う位相分布とすると、本実施例のメタマテリアル受動素子が形成されている面に垂直な軸に対して散乱波の伝搬方向がθ[rad]傾く。
ここで、xおよびyはメタマテリアル受動素子が形成されている面の座標、Φ(x,y)は(x,y)における散乱波位相、λは入射電磁波の波長、θは偏向角である。このように、散乱波の位相が式(1)になるように、ギャップの寸法が異なる分割リング共振器をアレイ状に形成することにより、入射電磁波の伝搬方向を偏光する機能を実現することができる。
また、散乱波の位相を式(2)に従う位相分布とすると、本実施例のメタマテリアル受動素子が形成されている面から距離f0に散乱波が集光するレンズ機能を実現することができる。
なお、本実施例では、ギャップの寸法が異なるものであれば、分割リング共振器10a〜10tのいずれを用いてもよい。
[第6の実施例]
次に、本発明の第6の実施例について説明する。図12は本実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。本実施例のメタマテリアル受動素子は、誘電体基板4上に、環状の導体部1−3,1−4の寸法が異なる分割リング共振器10a−3,10a−4(単位セル)をアレイ状に形成したものである。
誘導成分に該当する導体部1−3,1−4の寸法の違いにより共振周波数が異なる分割リング共振器10a−3,10a−4を配置することで、散乱波位相分布を形成することができる。例えばギャップ3aより再放射される散乱波の位相を式(1)に従う位相分布とすると、本実施例のメタマテリアル受動素子が形成されている面に垂直な軸に対して散乱波の伝搬方向がθ[rad]傾くので、入射電磁波の伝搬方向を偏光する機能を実現することができる。
また、散乱波の位相を式(2)に従う位相分布とすると、本実施例のメタマテリアル受動素子が形成されている面から距離f0に散乱波が集光するレンズ機能を実現することができる。本実施例では、環状の導体部の寸法が異なるものであれば、分割リング共振器10a〜10tのいずれを用いてもよい。
[第7の実施例]
次に、本発明の第7の実施例について説明する。図13は本実施例に係るメタマテリアル受動素子の構造を示す平面図である。本実施例のメタマテリアル受動素子は、誘電体基板4上に、入射電磁波の電界成分Einと直交する方向のギャップ3a−5〜3a−8の寸法Gおよび環状の導体部1−5〜1−8の寸法が異なる分割リング共振器10a−5〜10a−8を、アレイ状に形成したものである。
本実施例では、容量成分に該当するギャップ3a−5〜3a−8の寸法の違いおよび誘導成分に該当する導体部1−5〜1−8の寸法の違いにより共振周波数が異なる分割リング共振器10a−5〜10a−8を配置することで、散乱波位相分布を形成することができる。例えばギャップ3a−5〜3a−8より再放射される散乱波の位相を式(1)に従う位相分布とすると、本実施例のメタマテリアル受動素子が形成されている面に垂直な軸に対して散乱波の伝搬方向がθ[rad]傾くので、入射電磁波の伝搬方向を偏光する機能を実現することができる。
また、散乱波の位相を式(2)に従う位相分布とすると、本実施例のメタマテリアル受動素子が形成されている面から距離f0に散乱波が集光するレンズ機能を実現することができる。本実施例では、ギャップの寸法および環状の導体部の寸法が異なるものであれば、分割リング共振器10a〜10tのいずれを用いてもよい。
第5〜第7の実施例において、ギャップの寸法および環状の導体部の寸法は単位セル(分割リング共振器)毎に設定すればよい。
また、第5〜第7の実施例では、ギャップの寸法および環状の導体部の寸法のうち少なくとも一方が異なる同種の単位セル(分割リング共振器)をアレイ状に形成したが、鏡映対称の関係にある単位セルを混在させて配置してもよい。鏡映対称の関係にある単位セルを混在させて配置することにより、ギャップより再放射される散乱波の位相変化量を2πの範囲で設計することができる。
本発明は、分割リング共振器を用いたメタマテリアル受動素子に適用することができる。
1,1g,1h,1i,1m,1n,1q,1r,2a〜2p,2s,2t…導体部、3a〜3t…ギャップ、4…誘電体基板、10a〜10t…分割リング共振器。

Claims (8)

  1. 環状の金属からなる第1の導体部と、
    この第1の導体部によって囲まれた空間内に、前記第1の導体部の少なくとも1点と繋がるように形成された金属からなる第2の導体部とを備え、
    前記第2の導体部は、この第2の導体部に設けられたギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成されることを特徴とする受動素子。
  2. 環状の金属からなる第1の導体部と、
    この第1の導体部によって囲まれた空間内に、前記第1の導体部の2点間を接続するように形成された金属からなる第2の導体部とを備え、
    前記第1の導体部は、前記第2の導体部を間に挟んで互いに向かい合う位置に設けられた2つのギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成されることを特徴とする受動素子。
  3. 請求項1また2記載の受動素子において、
    前記入射電磁波によって前記第1、第2の導体部に励起される周回電流の経路が、前記第1の導体部の中心を含む面であり、かつ前記入射電磁波の電界面と平行な面に対して非対称となるように前記第1、第2の導体部が形成されることを特徴とする受動素子。
  4. 環状の金属からなる導体部を備え、
    前記導体部は、この導体部に設けられたギャップより放射される散乱波が入射電磁波の電界成分方向と異なる方向の電界成分を有するように形成されることを特徴とする受動素子。
  5. 請求項4記載の受動素子において、
    前記入射電磁波によって前記導体部に励起される周回電流の経路が、前記導体部の中心を含む面であり、かつ前記入射電磁波の電界面と平行な面に対して非対称となるように前記導体部が形成されることを特徴とする受動素子。
  6. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の受動素子において、
    前記第1の導体部と前記第2の導体部と前記ギャップとを各々含む複数の単位セルを備え、
    前記複数の単位セルは、アレイ状に配置され、
    前記複数の単位セルの各々は、前記ギャップの寸法および前記第1の導体部の寸法が単位セル毎に設定されることを特徴とする受動素子。
  7. 請求項4または5記載の受動素子において、
    前記導体部と前記ギャップとを各々含む複数の単位セルを備え、
    前記複数の単位セルは、アレイ状に配置され、
    前記複数の単位セルの各々は、前記ギャップの寸法および前記導体部の寸法が単位セル毎に設定されることを特徴とする受動素子。
  8. 請求項6または7記載の受動素子において、
    鏡映対称の関係にある前記単位セルが混在して配置されることを特徴とする受動素子。
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