以下、本発明の実施の形態によるサスペンションシステムを、4輪自動車等の車両に搭載するエアサスペンションシステムに適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1ないし図16に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図15は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、車載用のエアサスペンションシステム1は、左,右の前輪側サスペンション2、左,右の後輪側サスペンション7、圧縮装置11、低圧側の第1タンク27、高圧側の第2タンク30、コントローラ35等を含んで構成されている。
左,右の前輪側サスペンション2は、車両の前輪側に位置して当該車両の車体側と車軸側(いずれも図示せず)との間に介装して設けられている。左,右の前輪側サスペンション2は、左,右の前輪にそれぞれ対応して設けられている。前輪側サスペンション2は、作動流体としての圧縮空気(エア)が供給または排出されることにより、このときの空気の給排量(エア量)に応じて上,下に拡張または縮小して車両の前輪側で車高調整を行うものである。前輪側サスペンション2は、前側分岐管路3および前側給排路4を介して圧縮装置11に接続されている。
前側分岐管路3の一端は、左,右の前輪側サスペンション2にそれぞれ接続され、前側分岐管路3の他端は前側給排路4に接続されている。この前側分岐管路3の途中には、左,右の前輪側サスペンション2にそれぞれ対応して前側給排気弁5が設けられている。また、前側給排路4の一端は、前側分岐管路3に接続され、前側給排路4の他端は、後述の圧縮装置11の第1切替弁14を介して第1,第2通気管路12,13のいずれか一方に接続される。前側給排路4の途中には、前側切替弁6が設けられている。
各前側給排気弁5は、前輪側サスペンション2と前側切替弁6との間に位置して、各前側分岐管路3にそれぞれ設けられている。この前側給排気弁5は、ソレノイド(コイル)5Aを備えた2ポート2位置の常閉式電磁弁により構成され、後述のコントローラ35により切替制御される。前側給排気弁5は、コントローラ35からソレノイド5Aに給電されることによって、各前側分岐管路3を開いて前輪側サスペンション2に対する圧縮空気の給排を許す開位置(a)と、各前側分岐管路3を閉じて前輪側サスペンション2に対する圧縮空気の給排を遮断する閉位置(b)とに選択的に切替えられる。
前側切替弁6は、前側給排気弁5と圧縮装置11との間に位置して、前側給排路4に設けられている。この前側切替弁6は、ソレノイド6Aを備えた2ポート2位置の常閉式電磁弁により構成され、後述のコントローラ35により切替制御される。前側切替弁6は、コントローラ35からソレノイド6Aに給電されることによって、前側給排路4を開いて前輪側サスペンション2に対する圧縮空気の給排を許す開位置(c)と、前側給排路4を閉じて前輪側サスペンション2に対する圧縮空気の給排を遮断する閉位置(d)とに選択的に切替えられる。
左,右の後輪側サスペンション7は、車両の後輪側に位置して当該車両の車体側と車軸側(いずれも図示せず)との間に介装して設けられている。左,右の後輪側サスペンション7は、左,右の後輪にそれぞれ対応して設けられている。後輪側サスペンション7は、圧縮空気(エア)が供給または排出されることにより、このときの空気の給排量(エア量)に応じて上,下に拡張または縮小して車両の後輪側で車高調整を行うものである。後輪側サスペンション7は、後側分岐管路8、後側給排路9を介して圧縮装置11に接続されている。
各後側分岐管路8の一端は後側給排路9に接続され、各後側分岐管路8の他端は、左,右の後輪側サスペンション7にそれぞれ接続されている。この後側分岐管路8の途中には、左,右の後輪側サスペンション7にそれぞれ対応して後側給排気弁10が設けられている。後側給排路9の一端は、後述する圧縮装置11の第2切替弁15を介して第1,第2通気管路12,13のいずれか一方に接続され、後側給排路9の他端は各後側分岐管路8に接続されている。
各後側給排気弁10は、各後輪側サスペンション7と圧縮装置11との間に位置して、各後側分岐管路8にそれぞれ設けられている。この後側給排気弁10は、ソレノイド10Aを備えた2ポート2位置の常閉式電磁弁により構成され、コントローラ35により切替制御される。後側給排気弁10は、コントローラ35からソレノイド10Aに給電されることによって、各後側分岐管路8を開いて後輪側サスペンション7に対する圧縮空気の給排を許す開位置(e)と、各後側分岐管路8を閉じて後輪側サスペンション7に対する圧縮空気の給排を遮断する閉位置(f)とに選択的に切替えられる。
加圧装置としての圧縮装置11は、前輪側サスペンション2と後輪側サスペンション7との間に配設されている。具体的には、圧縮装置11の一端(第1切替弁14の一側ポート)は前側給排路4に接続され、圧縮装置11の他端(第2切替弁15の他側ポート)は後側給排路9に接続されている。圧縮装置11は、図1等に示すように、第1,第2通気管路12,13、第1,第2切替弁14,15、主管路16、コンプレッサ17、電動モータ18、エアドライヤ19、速度調整弁20、吸込管路21、排気管路22等を含んで構成されている。この圧縮装置11は、例えば空気を圧縮した圧縮空気を前輪側サスペンション2と後輪側サスペンション7とに供給する圧気源を構成している。
第1通気管路12の一端は第1切替弁14に接続され、第1通気管路12の他端は第2切替弁15に接続されている。この第1通気管路12は、コンプレッサ17の吸込側に主管路16を介して接続されると共に、前側給排路4と後側給排路9との間を接続するものである。この場合、第1通気管路12は、第1切替弁14と後述の接続点12Cとの間を繋ぐ前側第1通気管路12Aと、接続点12Cと第2切替弁15との間を繋ぐ後側第1通気管路12Bとを含んで構成されている。接続点12Cは、前側第1通気管路12Aと後側第1通気管路12Bとの間で、主管路16の上流側に接続される接続点である。
ここで、前側第1通気管路12Aの一端は、後述の第1切替弁14に接続されている。この前側第1通気管路12Aは、例えば図4に示すように、後輪側サスペンション7とコンプレッサ17とを連通させたときに、第2タンク30内の圧縮空気をコンプレッサ17の吸込側に導く通気路を構成している。また、後側第1通気管路12Bの他端には、後述の第2切替弁15が接続されている。この後側第1通気管路12Bは、例えば図5に示すように、後輪側サスペンション7を第2切替弁15等を介してコンプレッサ17の吸込側に接続する通気路を構成している。
一方、第2通気管路13の一端は第1切替弁14に接続され、第2通気管路13の他端は第2切替弁15に接続されている。この第2通気管路13は、コンプレッサ17の吐出側に主管路16を介して接続されると共に、第1切替弁14と第2切替弁15との間を接続するものである。この場合、第2通気管路13は、第1切替弁14と接続点13C(主管路16)との間を繋ぐ前側第2通気管路13Aと、接続点13C(主管路16)と第2切替弁15との間を繋ぐ後側第2通気管路13Bとから構成されている。接続点13Cは、前側第2通気管路13Aと後側第2通気管路13Bとの間で、主管路16の下流側に接続される接続点である。
第1切替弁14は、前側切替弁6とコンプレッサ17の吸込側または吐出側との間に位置して設けられている。即ち、第1切替弁14は、前側給排路4の他端を前側第1通気管路12Aの一端と前側第2通気管路13Aの一端との何れか一方に選択的に接続する。第1切替弁14は、前側給排路4をコンプレッサ17の吸込側(第1通気管路12)または吐出側(第2通気管路13)に対して選択的に接続するため、例えば、ソレノイド14Aを備えた3ポート2位置の電磁式方向制御弁により構成され、コントローラ35により切替制御される。
ここで、第1切替弁14は、コントローラ35からソレノイド14Aに給電されることによって、第2タンク30内の圧縮空気を第1通気管路12側に流通させる通電位置(g)と、第2通気管路13側の圧縮空気を第2タンク30内に流通させる非通電位置(h)とに選択的に切替えられる。即ち、第1切替弁14は、圧縮空気の流れ方向を変更する方向制御弁である。
第2切替弁15は、後側給排気弁10とコンプレッサ17の吸込側または吐出側との間に位置して設けられている。即ち、第2切替弁15は、後側給排路9の一端を後側第1通気管路12Bの他端と後側第2通気管路13Bの他端との何れか一方に選択的に接続する。第2切替弁15は、第1通気管路12または第2通気管路13を後側給排路9に対して選択的に接続するため、例えば、ソレノイド15Aを備えた3ポート2位置の電磁式方向制御弁により構成され、コントローラ35により切替制御される。
ここで、第2切替弁15は、コントローラ35からソレノイド15Aに給電されることによって、第2通気管路13を後側給排路9に連通させる通電位置(i)と、第1通気管路12を後側給排路9に連通させる非通電位置(j)とに選択的に切替えられる。この非通電位置(j)では、例えば各サスペンション2,7内の圧縮空気を後側第1通気管路12B、主管路16、前側第2通気管路13Aを通じて第2タンク30内に供給(送出)することができる。
主管路16は、第1通気管路12と第2通気管路13との間を接続している。即ち、主管路16の上流側は、第1通気管路12の接続点12Cに接続され、主管路16の下流側は、第2通気管路13の接続点13Cに接続されている。主管路16は、各サスペンション2,7に対する圧縮空気の給排を行う給排管路を構成している。主管路16には、コンプレッサ17、エアドライヤ19、速度調整弁20が設けられている。
コンプレッサ17は、例えば往復動圧縮機またはスクロール式圧縮機等により構成され、主管路16に設けられた流体ポンプである。コンプレッサ17は、駆動源としての電動モータ18により回転駆動され、第1通気管路12側または吸込管路21側から吸込んだ空気を圧縮して圧縮空気を発生させ、この圧縮空気をエアドライヤ19に向けて供給する。
エアドライヤ19は、主管路16に位置して、コンプレッサ17と速度調整弁20との間に設けられている。このエアドライヤ19は、ドライヤケース内に水分吸着剤(図示せず)等を内蔵し、コンプレッサ17から供給される圧縮空気が速度調整弁20に向けて順方向に流通するときに、内部の水分吸着剤で水分を吸着する。そして、エアドライヤ19は、乾燥した圧縮空気(ドライエア)を各サスペンション2,7に向けて供給する。一方、各サスペンション2,7または第2タンク30から後述の排気管路22に向けて逆方向に流通する圧縮空気(排気)は、エアドライヤ19内を逆流することにより、水分吸着剤に吸着された水分を奪い取り、この水分吸着剤を再生することができる。
速度調整弁20は、主管路16に位置して、エアドライヤ19と第2通気管路13(接続点13C)との間に設けられている。この速度調整弁20は、絞り20Aとチェック弁20Bとの並列回路により構成され、順方向流れに対しては、チェック弁20Bが開弁して圧縮エアの流量を絞ることはない。しかし、逆方向の流れに対してはチェック弁20Bが閉弁し、このときの圧縮空気は絞り20Aにより流量が絞られるために、エアドライヤ19内をゆっくりと小流量で逆流するものである。
吸込管路21は、コンプレッサ17の吸込側に接続して設けられている。具体的には、吸込管路21の一端は吸込口21Aを介して外気に連通し、吸込管路21の他端は第1通気管路12の接続点12Cに接続されている。この吸込管路21は、コンプレッサ17が作動することにより、吸込口21Aから吸込んだ外気または大気を、吸込フィルタ21Bを介してコンプレッサ17に向けて供給するものである。吸込管路21には、吸込口21Aから吸込んだ空気の逆流を防止するチェック弁21Cが設けられている。
排気管路22は、コンプレッサ17の吐出側とエアドライヤ19、速度調整弁20との間に接続して設けられている。具体的には、排気管路22の一端は主管路16に接続され、排気管路22の他端は排気口22Aを介して外気と連通している。この排気管路22は、各サスペンション2,7内およびタンク27,30内の圧縮空気を外部の大気中に排出するための管路である。排気管路22の途中には、排気弁23が設けられている。
排気弁23は、主管路16に接続された排気管路22を大気に対して連通、遮断させる弁である。この排気弁23は、ソレノイド23Aを備えた2ポート2位置の常閉式電磁弁により構成され、コントローラ35により切替制御される。排気弁23は、コントローラ35からソレノイド23Aに給電されることにより、排気管路22を開いて排気口22Aからの圧縮空気の排出を許す開位置(k)と、排気管路22を閉じて排気口22Aからの圧縮空気の排出を遮断する閉位置(l)とに選択的に切替えられる。即ち、排気弁23は、常時は閉弁して排気管路22を排気口22Aに対し遮断している。そして、排気弁23が開弁した場合、排気管路22を排気口22Aに連通させ、排気管路22内の圧縮空気を大気中に排出(放出)する。
バイパス管路24は、圧縮装置11を迂回して前側給排路4と後側給排路9との間に接続して設けられている。具体的には、バイパス管路24の一端は前側給排路4に接続され、バイパス管路24の他端は後側給排路9に接続されている。このバイパス管路24は、圧縮装置11を迂回して、前側給排路4から後側給排路9に向けて、または後側給排路9から前側給排路4に向けて圧縮空気を流通させる管路である。バイパス管路24の途中には、バイパス弁25が設けられている。
バイパス弁25は、バイパス管路24を連通、遮断させる弁である。このバイパス弁25は、ソレノイド25Aを備えた2ポート2位置の常閉式電磁弁により構成され、コントローラ35により切替制御される。バイパス弁25は、コントローラ35からソレノイド25Aに給電されることによって、バイパス管路24を開いて前側給排路4と後側給排路9との間を連通させる開位置(m)と、バイパス管路24を閉じて前側給排路4と後側給排路9との間を遮断する閉位置(n)とに選択的に切替えられる。
第1タンク管路26は、前側給排路4またはバイパス管路24の途中に接続されている。具体的には、第1タンク管路26の一端は、前側給排路4とバイパス管路24との接続点に接続され、第1タンク管路26の他端は、後述のタンク弁28を介して第1タンク27に接続されている。後述の圧力センサ31は、前側給排路4、バイパス管路24または第1タンク管路26の途中に接続して設けられている。
第1タンク27は、コンプレッサ17により大気圧を超えて加圧された圧縮空気を蓄える低圧タンクである。第1タンク27とコンプレッサ17とは、第1タンク管路26、前側給排路4、前側第1通気管路12A、前側第2通気管路13A、主管路16等を介して接続されている。第1タンク27(即ち、低圧タンク)内に蓄えられた圧縮空気は、後述の第2タンク30(即ち、高圧タンク)内に蓄えられた圧縮空気と比較して低圧であり、例えばサスペンション2,7内に供給される空気圧よりも低圧(例えば、1〜3気圧)に設定されている。この第1タンク27は、前輪側サスペンション2が前輪側の車高を下げるときに、前輪側サスペンション2内の圧縮空気が排出される低圧タンクである。
ここで、第1タンク27の圧力(即ち、内部に蓄えられた圧縮空気の圧力)が高くなってくると、前輪側サスペンション2は、内部の圧縮空気を第1タンク27に向けて排出することができなくなる。このような事態をなくすために、後述の「タンク圧力調整動作」が指令装置(即ち、コントローラ35)により行われる。この結果、第1タンク27内の圧縮空気は、コンプレッサ17を駆動することにより、第1タンク管路26、バイパス管路24、後側給排路9、後側第1通気管路12B、主管路16、前側第2通気管路13A、前側給排路4、第2タンク管路29を通じて第2タンク30内に移送(供給)される。
タンク弁28は、第1タンク管路26を連通、遮断させる弁である。このタンク弁28は、ソレノイド28Aを備えた2ポート2位置の常閉式電磁弁により構成され、コントローラ35により切替制御される。タンク弁28は、コントローラ35からソレノイド28Aに給電されることによって、第1タンク管路26を開いて第1タンク27に対する圧縮空気の給排を許す開位置(o)と、第1タンク管路26を閉じて第1タンク27に対する圧縮空気の給排を遮断する閉位置(p)とに選択的に切替えられる。
第2タンク管路29は、前側切替弁6と第1切替弁14との間に位置して、前側給排路4の途中に接続されている。具体的には、第2タンク管路29の一端は前側給排路4に接続され、第2タンク管路29の他端は第2タンク30に接続されている。
第2タンク30は、コンプレッサ17により加圧された圧縮空気を第1タンク27よりも高い圧力で蓄える高圧タンクである。第2タンク30とコンプレッサ17とは、第2タンク管路29、前側給排路4、前側第1通気管路12A、前側第2通気管路13A、主管路16等を介して接続されている。これにより、コンプレッサ17から吐出(供給)された圧縮空気は、主管路16、前側第2通気管路13A、前側給排路4、第2タンク管路29等を通じて第2タンク30内に蓄えられる。
この場合、第2タンク30内に蓄えられた圧縮空気は、第1タンク27内に蓄えられる圧縮空気と比較して高圧であり、例えばサスペンション2,7内に供給される空気圧よりも高圧(例えば、10〜15気圧)に設定されている。図4に示すように、車高を同時上昇させるときに、第2タンク30内に蓄えられた圧縮空気は、前側給排路4および前側分岐管路3を通じて前輪側サスペンション2に供給されると共に、圧縮装置11のコンプレッサ17を電動モータ18で駆動することにより、後側給排路9および後側分岐管路8を通じて後輪側サスペンション7にも供給される。
圧力センサ31は、前側給排路4とタンク弁28との間に位置して、例えば第1タンク管路26の途中等に接続して設けられている。この圧力センサ31は、タンク弁28を開位置(o)としたときに、第1タンク27内の圧力を低圧タンクの圧力として検出することができる。また、前側切替弁6を開位置(c)に切替え、これ以外の弁(例えば、前側給排気弁5、バイパス弁25およびタンク弁28等)を閉弁した状態では、第2タンク30内の圧力を圧力センサ31により検出することができる。
左,右の前輪側には、フロント左車高センサ32A,フロント右車高センサ32Bが設けられ、左,右の後輪側には、リヤ左車高センサ32C,リヤ右車高センサ32Dが設けられている。これらの車高センサ32A〜32Dは、前輪側,後輪側の車高検出器をそれぞれ構成している。車高センサ32A〜32Dは、前輪側,後輪側の各サスペンション2,7が拡張または縮小する方向の変位(上下方向の変位)をそれぞれ検出し、その検出信号を後述のコントローラ35に個別に出力する。
車両の車体側には、車両の走行速度を検出する車速センサ33と、車高変更スイッチ34等が設けられている。車高変更スイッチ34は、例えばオペレータの好み等に応じて車高を適宜に上げたり、下げたりするときに操作される。車高変更スイッチ34が上げ操作されたときには、前輪側,後輪側サスペンション2,7が同時に上昇動作される。車高変更スイッチ34が下げ操作されたときには、前輪側,後輪側サスペンション2,7は同時に下降動作される。車速センサ33からの検出信号(車速信号)と車高変更スイッチ34からの変更信号とは、それぞれ後述のコントローラ35に出力され、車高調整を行うための制御信号として用いられる。
コントローラ35は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成された車高調整用の制御装置である。このコントローラ35は、その入力側が図2に示すように、フロント左車高センサ32A、フロント右車高センサ32B、リヤ左車高センサ32C、リヤ右車高センサ32D、車速センサ33、車高変更スイッチ34および圧力センサ31等に接続されている。コントローラ35の出力側は、前側給排気弁5、前側切替弁6、後側給排気弁10、第1切替弁14、第2切替弁15、電動モータ18、排気弁23、バイパス弁25およびタンク弁28等に接続されている。
ここで、コントローラ35は、例えばROM,RAM,不揮発性メモリ等からなる記憶部としてのメモリ35Aを有し、このメモリ35A内には、例えば図11〜図15に示すエアサスペンション制御処理用のプログラムと、後述の閾値P1,P2、車速の設定値(例えば、40km/h)等が格納されている。また、コントローラ35は、図3に示すように、第1の目標車高算出部36、第2の目標車高算出部37、目標車高選択部38、車高調整判定部39および調整動作選択部40を含んで構成されている。
第1の目標車高算出部36は、車速センサ33からの車速信号に基づいて第1の目標車高を算定する。第2の目標車高算出部37は、車高変更スイッチ34からの車高変更信号に基づいて第2の目標車高を算定する。そして、目標車高選択部38は、予め決められた手順に従って前記第1,第2の目標車高のうちいずれか一方を目標車高として選択する。
車高調整判定部39は、フロント左車高センサ32A,フロント右車高センサ32B,リヤ左車高センサ32Cおよびリヤ右車高センサ32Dから出力される各輪の実際の車高と目標車高選択部38から出力される目標車高とを比較し、各輪側で車高調整を行うか否かを判定した上で、「上昇」、「下降」または「調整なし」の調整指令を出力する。
調整動作選択部40は、前記車速信号、車高変更信号、調整指令および圧力センサからのタンク圧力信号に基づいて、「上昇調整動作」、「交互下降調整動作」、「同時下降調整動作」、「タンク圧力調整動作」または「調整なし」のいずれかの調整動作を選択する。この上で、コントローラ35は、調整動作選択部40で選択した車高調整の動作を実行させるため、前側給排気弁5、前側切替弁6、後側給排気弁10、第1切替弁14、第2切替弁15、排気弁23、バイパス弁25およびタンク弁28の切替えと、電動モータ18の駆動または停止とを制御する。
即ち、コントローラ35は、電動モータ18の駆動、停止を制御したり、各前側給排気弁5、前側切替弁6、後側給排気弁10、第1切替弁14、第2切替弁15、排気弁23、バイパス弁25、タンク弁28を切替え制御したりすることにより、車高調整機構としての各サスペンション2,7を制御し、車両の前,後で車高調整を行う機能を有している。また、コントローラ35は、圧力センサ31、車速センサ33等から入力される検出信号に基づいて、第1タンク27内の圧力と車両の走行速度等とを監視し、第1タンク27内のエア(作動流体)を圧縮装置11(コンプレッサ17)を用いて第2タンク30に供給可能とする指令装置としても機能するものである。
第1の実施の形態によるエアサスペンションシステム1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、第2タンク30内に圧縮空気が充分に蓄えられていない場合(即ち、第2タンク30内の圧力が車高調整を行うのに必要な所定の設定圧力よりも低い場合)には、第1切替弁14を非通電位置(h)とし、第2切替弁15も同じく非通電位置(j)とする。また、前側給排気弁5を閉位置(b)とし、前側切替弁6を閉位置(d)とすると共に、後側給排気弁10も閉位置(f)とする。そして、排気弁23を閉位置(l)とし、バイパス弁25を閉位置(n)とすると共に、タンク弁28も同じく閉位置(p)とする。そして、電動モータ18によりコンプレッサ17を作動して圧縮運転を行う。
これにより、コンプレッサ17は、吸込管路21の吸込口21A、吸込フィルタ21B、チェック弁21Cおよび主管路16を通じてコンプレッサ17により外気を吸込みつつ、この空気を加圧(圧縮,昇圧)して圧縮空気をエアドライヤ19に向けて吐出する。コンプレッサ17から吐出された圧縮空気は、エアドライヤ19によって乾燥された後、速度調整弁20、前側第2通気管路13A、前側給排路4、第2タンク管路29を介して第2タンク30に供給され、第2タンク30内には圧縮空気が貯留される。そして、例えば第2タンク30内の圧力が所定の設定圧力(例えば、10〜15気圧)に達すると、コンプレッサ17を停止させる。これにより、第2タンク30は、車高調整を行う上で充分な量の圧縮空気を貯留した状態となる。
次に、図4に示すように、各サスペンション2,7により前輪側と後輪側とで車高を同時に上昇させる場合には、前側給排気弁5を閉位置(b)から開位置(a)に切替えると共に、前側切替弁6を閉位置(d)から開位置(c)に切替える。これにより、前輪側サスペンション2と第2タンク30との間を連通させ、第2タンク30内の圧縮空気を、前側給排路4および前側分岐管路3を介して前輪側サスペンション2に向け供給する。
一方、後側給排気弁10を閉位置(f)から開位置(e)に切替え、第1切替弁14を通電位置(g)に切替えると共に、第2切替弁15を通電位置(i)に切替えることにより、第2タンク30とコンプレッサ17の吸込側との間およびコンプレッサ17の吐出側と後輪側サスペンション7との間を連通させる。この状態でコンプレッサ17を作動することより、第2タンク30内の圧縮空気を、第2タンク管路29、前側給排路4、前側第1通気管路12A、主管路16を介してコンプレッサ17の吸込側に流通させる。そして、コンプレッサ17(圧縮装置11)により第2タンク30内の圧縮空気を加圧しつつ、この圧縮空気を、主管路16、後側第2通気管路13B、後側給排路9、後側分岐管路8を介して後輪側サスペンション7に向け供給する。
この同時上昇の場合、コンプレッサ17により、第2タンク30から前輪側サスペンション2に向かう圧縮空気と、第2タンク30から後輪側サスペンション7に向かう圧縮空気とを分流させている。これにより、前輪側サスペンション2に向かう圧縮空気の圧力と、後輪側サスペンション7に向かう圧縮空気の圧力とを異ならせて、前輪側サスペンション2内の圧力と後輪側サスペンション7内の圧力とが互いに影響を与えないようにしている。
即ち、後輪側サスペンション7に向かう圧縮空気は、コンプレッサ17を介して再加圧されているので、前輪側サスペンション2に向かう圧縮空気よりも圧力が高くなる。なお、前,後の車高を同時に上昇させる場合には、コンプレッサ17が前輪側サスペンション2から圧縮空気を吸込むことがないようにするため、第2タンク30内の圧縮空気の圧力を予め十分な高さに設定しておくのがよい。
車高の上げ動作が完了した後には、前側給排気弁5を閉位置(b)に切替え、後側給排気弁10も閉位置(f)に切替えて、前側分岐管路3および後側分岐管路8をそれぞれ閉じる。これにより、各サスペンション2,7に対する圧縮空気の流通を遮断して、各サスペンション2,7は伸長状態を保ち、車高を上昇させた状態に保つことができる。
次に、図5に示すように、各サスペンション2,7により前輪側と後輪側とで車高を同時に下降させる場合には、前側給排気弁5を閉位置(b)から開位置(a)に切替えると共に、タンク弁28を閉位置(p)から開位置(o)に切替える。また、前側切替弁6を閉位置(d)に戻し、バイパス弁25を閉位置(n)に戻して保持する。これにより、前輪側サスペンション2と第1タンク27との間を連通させ、前輪側サスペンション2内の圧縮空気を第1タンク27に排出して、前輪側サスペンション2を縮小させることにより、前輪側の車高を下げる。
これと同時に、後側給排気弁10を閉位置(f)から開位置(e)に切替え、第1切替弁14を非通電位置(h)に保持し、第2切替弁15も非通電位置(j)に保持する。これにより、コンプレッサ17の吸込側と後輪側サスペンション7との間を連通させると共に、コンプレッサ17の吐出側と第2タンク30との間を連通させる。この状態でコンプレッサ17を作動することより、後輪側サスペンション7内の圧縮空気を、後側分岐管路8、後側給排路9、後側第1通気管路12B、主管路16を介してコンプレッサ17の吸込側に流通させる。そして、コンプレッサ17により後輪側サスペンション7内の圧縮空気を吸込みつつ、この圧縮空気を、主管路16、前側第2通気管路13A、前側給排路4、第2タンク管路29を介して第2タンク30に向けて供給する。
この結果、後輪側サスペンション7は圧縮装置11により第2タンク30内に圧縮空気を排出して、後輪側サスペンション7を縮小させることにより、後輪側の車高を下げることができる。これと同時に、前輪側サスペンション2内の圧縮空気を第1タンク27に排出して、前輪側サスペンション2を縮小させることができ、前輪側と後輪側との車高を同時に下降させることができる。
次に、図6、図7に示すように、前輪側と後輪側とで車高を交互に下降させるため、前輪側の車高を下げる場合(図6参照)には、前側給排気弁5を開位置(a)に切替えると共に、バイパス弁25を開位置(m)に切替える。そして、前側切替弁6を閉位置(d)とし、後側給排気弁10を閉位置(f)とし、タンク弁28を閉位置(p)に保持する。また、第1切替弁14を非通電位置(h)とし、第2切替弁15も非通電位置(j)に保持する。この状態で、コンプレッサ17を回転駆動することにより、前輪側サスペンション2内の圧縮空気は、前側分岐管路3、前側給排路4、バイパス管路24、後側給排路9、後側第1通気管路12B、主管路16を介してコンプレッサ17の吸込側に流通する。そして、コンプレッサ17により前輪側サスペンション2内の圧縮空気を吸込みつつ、この圧縮空気を、主管路16、前側第2通気管路13A、前側給排路4、第2タンク管路29を介して第2タンク30に向け供給する。この結果、前輪側サスペンション2から圧縮空気が排出され、前輪側サスペンション2を縮小させることにより、前輪側の車高を下げることができる。
これに続いて、図7に示すように、後輪側の車高を下げるために、後側給排気弁10を開位置(e)に切替え、前側給排気弁5を閉位置(b)に戻し、前側切替弁6を同じく閉位置(d)にし、バイパス弁25も閉位置(n)にし、タンク弁28を閉位置(p)に保持する。また、第1切替弁14を非通電位置(h)とし、第2切替弁15も非通電位置(j)に保持する。この状態で、コンプレッサ17を駆動すると、後輪側サスペンション7内の圧縮空気は、後側分岐管路8、後側給排路9、後側第1通気管路12B、主管路16を介してコンプレッサ17の吸込側に流通する。そして、コンプレッサ17により後輪側サスペンション7内の圧縮空気を吸込みつつ、この圧縮空気を矢印の方向に流通させ、主管路16、前側第2通気管路13A、前側給排路4、第2タンク管路29を介して第2タンク30内へと貯留させるように充填、供給する。
この結果、前輪側サスペンション2が縮小されて前輪側の車高を下降させた後に、後輪側サスペンション7から圧縮空気を排出して後輪側サスペンション7を縮小させることにより後輪側の車高を下げ、車高を前,後で交互に下降させることができる。
次に、前輪側の車高を前輪側サスペンション2により上げる場合は、例えば図1中の前側給排気弁5を閉位置(b)から開位置(a)に切替えると共に、バイパス弁25を閉位置(n)から開位置(m)に切替える。また、前側切替弁6を閉位置(d)にし、後側給排気弁10を閉位置(f)にし、タンク弁28を閉位置(p)に保持する。さらに、第1切替弁14を非通電位置(h)から通電位置(g)に切替えると共に、第2切替弁15を非通電位置(j)から通電位置(i)に切替えることにより、第2タンク30とコンプレッサ17の吸込側との間およびコンプレッサ17の吐出側と前輪側サスペンション2との間を連通させる。
この状態で、コンプレッサ17を作動することより、第2タンク30内の圧縮空気を、第2タンク管路29、前側給排路4、前側第1通気管路12A、主管路16を介してコンプレッサ17の吸込側に流通させる。そして、コンプレッサ17により第2タンク30内の圧縮空気を、主管路16、後側第2通気管路13B、後側給排路9、バイパス管路24、前側給排路4、前側分岐管路3を介して前輪側サスペンション2に向け供給する。
一方、後輪側の車高を後輪側サスペンション7により上げる場合は、例えば図1中の後側給排気弁10を閉位置(f)から開位置(e)に切替える。また、前側給排気弁5を閉位置(b)とし、前側切替弁6を閉位置(d)とし、バイパス弁25を閉位置(n)とし、タンク弁28を閉位置(p)に保持する。さらに、第1切替弁14を非通電位置(h)とし、第2切替弁15を非通電位置(j)に保持することにより、第2タンク30とコンプレッサ17の吸込側との間およびコンプレッサ17の吐出側と後輪側サスペンション7との間を連通させる。
この状態でコンプレッサ17を作動することより、第2タンク30内の圧縮空気を、第2タンク管路29、前側給排路4、前側第1通気管路12A、主管路16を介してコンプレッサ17の吸込側に流通させる。そして、コンプレッサ17により第2タンク30内の圧縮空気を、主管路16、後側第2通気管路13B、後側給排路9、後側分岐管路8を介して後輪側サスペンション7へと供給する。これにより、後輪側サスペンション7は後輪側の車高を上昇させることができる。
なお、前輪側の車高のみを第2タンク30内の圧縮空気により上昇させる場合には、前側給排気弁5および前側切替弁6を開位置(a),(c)に切替え、後側給排気弁10、バイパス弁25、タンク弁28を閉位置(f),(n),(p)に保持する。また、第1切替弁14および第2切替弁15を非通電位置(h),(j)に保持する。これにより、第2タンク30内の圧縮空気を、第2タンク管路29、前側給排路4、前側分岐管路3を介して、前輪側サスペンション2のみに供給することができる。
また、後輪側の車高のみを第2タンク30内の圧縮空気により上昇させる場合には、前側切替弁6、後側給排気弁10およびバイパス弁25を開位置(c),(e),(m)に切替え、前側給排気弁5、タンク弁28を閉位置(b),(p)に保持する。また、第1切替弁14および第2切替弁15を非通電位置(h),(j)に保持する。これにより、第2タンク30内の圧縮空気を、第2タンク管路29、前側給排路4、バイパス管路24、後側給排路9、後側分岐管路8を介して、後輪側サスペンション7のみに供給することができる。
次に、図8に示す如く、第1タンク27(低圧リザーバ)の圧力調整のため、第1タンク27内の圧縮空気を第2タンク30に供給(移送)する場合には、バイパス弁25を閉位置(n)から開位置(m)に切替え、タンク弁28を閉位置(p)から開位置(o)に切替える。また、前側給排気弁5は閉位置(b)に、前側切替弁6も閉位置(b)に、後側給排気弁10も閉位置(f)に戻した状態で、第1切替弁14を非通電位置(h)に、第2切替弁15も非通電位置(j)に保持する。これにより、第1タンク27とコンプレッサ17の吸込側との間およびコンプレッサ17の吐出側と第2タンク30との間を連通させる。
この状態でコンプレッサ17を作動することより、第1タンク27内の圧縮空気を、第1タンク管路26、バイパス管路24、後側給排路9、後側第1通気管路12B、主管路16を介してコンプレッサ17の吸込側に流通させる。即ち、コンプレッサ17により第1タンク27内の圧縮空気を、主管路16、前側第2通気管路13A、前側給排路4、第2タンク管路29を介して第2タンク30に向け供給する。これにより、第1タンク27内の圧縮空気を第2タンク30へと移して、第1タンク27を低圧状態に保つことができる。換言すると、指令装置として機能するコントローラ35は、圧力センサ31、車速センサ33等から入力される検出信号に基づいて、第1タンク27内の圧力と車両の走行速度等とを監視し、第1タンク27内のエア(作動流体)を圧縮装置11(コンプレッサ17)を用いて第2タンク30に供給可能とするものである。
次に、第2タンク30内の圧縮空気を外部に排出させる場合は、前側給排気弁5、前側切替弁6、後側給排気弁10、バイパス弁25、タンク弁28を閉位置(b),(d),(f),(n),(p)に保持し、排気弁23を開位置(k)に切替える。また、第1切替弁14および第2切替弁15を非通電位置(h),(j)に保持する。これにより、第2タンク30内の圧縮空気を、第2タンク管路29、前側給排路4、前側第2通気管路13A、主管路16、速度調整弁20の絞り20A、エアドライヤ19、排気管路22を介して排気口22Aから外部に直接的に排出することができる。この場合、第2タンク30から排出された圧縮空気は、エアドライヤ19を介して排気管路22へと流れるので、エアドライヤ19内に充填された乾燥剤から水分を除去することができ、乾燥剤を再生させる。
ところで、エアサスペンションシステム1は、コンプレッサ17により圧縮された圧縮空気を第1,第2タンク27,30に蓄えて、この第1,第2タンク27,30に蓄えられた圧縮空気を各サスペンション2,7に供給する閉回路(クローズドシステム)を構成している。このような、クローズドシステム(エアサスペンションシステム1)においては、各輪のサスペンション2,7内と第1,第2タンク27,30内の作動流体(圧縮空気からなるエア)の総量は、いかなる車高状態(車高の上昇、下降または保持状態)でも基本的に変化しない。
図9中の特性線41,42は、同時下降調整と上昇調整を複数回繰返し、各サスペンション2,7内の作動流体が同量になるときに、第1,第2タンク27,30内の圧力をそれぞれ計測した結果である。同時下降調整により作動流体であるエアは、図5に示すように、前輪側サスペンション2から第1タンク27(低圧リザーバ)に流れ、第1タンク27(低圧リザーバ)の圧力が実線で示す特性線41の如く上昇すると、第2タンク30(高圧リザーバ)の圧力は、点線で示す特性線42の如く低下する。
図10は、車高を上昇させるときの車高調整速度と第1,第2タンク27,30(リザーバ)圧力との関係を示している。点線で示す特性線43の如く、第2タンク30(高圧リザーバ)の圧力がある圧力値(閾値P2)以下になると、車高調整速度が低下する。このとき、第1タンク27(低圧リザーバ)の圧力は、実線で示す特性線44の如く、車高調整速度が閾値P2以上となると低下する。この閾値P2は、後述の如くタンク圧調整動作を行うか否かの判定基準となる圧力値であり、第1タンク27(低圧リザーバ)の圧力が閾値P2より高圧であれば、第1タンク27から第2タンク30にエア(作動流体)を送るタンク圧調整動作を行うこととする。なお、図10中の閾値P1は、同時下降調整が1回以上実施されたことを判定するための圧力値である。
そこで、第1の実施の形態では、コントローラ35(指令装置)で図11〜図15に示す制御処理を実行することにより、例えば車高の下降調整を少なくとも1回以上行った後に、コンプレッサ17(即ち、ポンプ)を作動させて低圧側の第1タンク27から高圧側の第2タンク30へと作動流体(エア)を移すタンク圧調整動作を行うと共に、このようなタンク圧調整動作時に騒音が発生するのを抑えることができ、車高調整処理を短時間で効率的に行うことができるようにしている。
即ち、図11に示す車高調整の処理動作がスタートすると、ステップ1で信号入力が行われ、例えば車高変更スイッチ34からの変更信号と、車速センサ33、各輪の車高センサ32A〜32D、圧力センサ31からの検出信号とを読込む。圧力センサ31からの検出信号により低圧側の第1タンク27内の圧力が検出される。
次のステップ2では、例えば図3に示す第1の目標車高算出部36により、車速センサ33からの車速信号に基づいて第1の目標車高を算定すると共に、第2の目標車高算出部37により、車高変更スイッチ34からの車高変更信号に基づいて第2の目標車高を算定し、この上で目標車高選択部38により前記第1,第2の目標車高のうちいずれか一方を目標車高として選択する。
次のステップ3では、車高調整判定部39により、フロント左車高センサ32A,フロント右車高センサ32B,リヤ左車高センサ32Cおよびリヤ右車高センサ32Dから出力される各輪の実際の車高と目標車高選択部38から出力される目標車高とを比較し、各輪側で車高調整を行うか否かを判定した上で、調整指令を「上昇」、「下降」または「調整なし」のいずれかとして出力する。
次のステップ4では、調整動作選択部40により、前記車速信号、車高変更信号、調整指令および圧力センサからのタンク圧力信号に基づいて、「上昇調整動作」、「交互下降調整動作」、「同時下降調整動作」、「タンク圧力調整動作」または「調整なし」のいずれかの調整動作を選択する。なお、ステップ4の調整動作選択処理については、後述の図13〜図15に示す処理により具体化して説明する。
次のステップ5では、前記調整動作選択部40により「上昇調整動作」が選択されたか否かを判定する。ステップ5で「YES」と判定したときには、車両の前輪側と後輪側とで車高を上昇させるため、次のステップ6において、各前輪側サスペンション2と各後輪側サスペンション7とに圧縮空気(エア)を供給制御するように、電動モータ18と各弁5,6,10,14,15,23,25,28(即ち、前側給排気弁5、前側切替弁6、後側給排気弁10、第1切替弁14、第2切替弁15、排気弁23、バイパス弁25、タンク弁28)とに出力すべき駆動指令を演算して求める。
次のステップ7では、前記ステップ6による駆動指令に基づいた信号出力を行い、その指令内容に従って電動モータ18の駆動、停止を制御したり、各弁5,6,10,14,15,23,25,28を切替え制御(開,閉)したりすることにより、車高調整機構としての各サスペンション2,7を制御し、車両の前,後の車高を調整する。そして、次のステップ8でリターンする。
一方、前記ステップ5で「NO」と判定したときには、次のステップ9で「交互下降調整動作」が選択されたか否かを判定する。ステップ9で「YES」と判定したときには、車両の前輪側と後輪側とで車高を交互に下降させるため、次のステップ10において、各前輪側サスペンション2と各後輪側サスペンション7とから圧縮空気(エア)を交互に排出するように、電動モータ18と各弁5,6,10,14,15,23,25,28とに出力すべき駆動指令を演算して求める。次のステップ7で、前記ステップ10による駆動指令に基づいた信号出力を行うことにより、車高調整機構としての各サスペンション2,7を制御し、車両の前,後の車高を調整する。そして、次のステップ8でリターンする。
また、前記ステップ9で「NO」と判定したときには、図12に示すステップ11で、「同時下降調整動作」が選択されたか否かを判定する。ステップ11で「YES」と判定したときには、車両の前輪側と後輪側とで車高を同時に下降させるため、次のステップ12において、各前輪側サスペンション2と各後輪側サスペンション7とから圧縮空気(エア)を同時に排出するように、電動モータ18と各弁5,6,10,14,15,23,25,28とに出力すべき駆動指令を演算して求める。その後は、ステップ7に移って、前記ステップ12による駆動指令に基づいた信号出力を行い、電動モータ18の駆動、停止を制御したり、各弁5,6,10,14,15,23,25,28を切替え制御(開,閉)したりすることにより、車高調整機構としての各サスペンション2,7を制御し、車両の前,後の車高を調整する。そして、次のステップ8でリターンする。
一方、前記ステップ11で「NO」と判定したときには、次のステップ13で「タンク圧力調整動作」が選択されたか否かを判定する。ステップ13で「YES」と判定したときには、次のステップ12において、低圧の第1タンク27から高圧の第2タンク30に圧縮空気(エア)を送出するため、電動モータ18と各弁5,6,10,14,15,23,25,28とに出力すべき駆動指令を演算して求める。その後は、ステップ7に移って、前記ステップ14による駆動指令に基づいた信号出力を行い、電動モータ18の駆動、停止を制御したり、各弁5,6,10,14,15,23,25,28を切替え制御(開,閉)したりする。そして、次のステップ8でリターンする。
また、前記ステップ13で「NO」と判定したときには、「調整動作なし」の場合であり、次のステップ15に移って電動モータ18を停止させると共に、各弁5,6,10,14,15,23,25,28を消磁(停止)させるような指令を演算して求める。その後は、ステップ7に移って、前記ステップ15による指令に基づいた信号出力を行い、電動モータ18を停止させると共に、各弁5,6,10,14,15,23,25,28を停止させる制御を行い、次のステップ8でリターンする。
次に、図13〜図15を参照してコントローラ35の調整動作選択部40による調整動作選択処理について説明する。この処理は、図11中のステップ4を具体化したもので、前記調整動作選択部40により、前記車速信号、車高変更信号、調整指令および圧力センサからのタンク圧力信号に基づいて、「上昇調整動作」、「交互下降調整動作」、「同時下降調整動作」、「タンク圧力調整動作」または「調整なし」のいずれかの調整動作を選択する。
即ち、図13の処理動作がスタートとすると、ステップ21で「上昇調整動作」中であるか否かを判定し、「YES」と判定したときには、次のステップ22で調整指令が「上昇」であるか否かを判定する。ステップ22で「YES」と判定したときには、次のステップ23で「上昇調整動作」を選択し、その後は図15中のステップ48でリターンする。一方、ステップ22で「NO」と判定したときには、調整指令が「上昇」から切換わっているので、次のステップ24で「調整動作なし」を選択し、その後は図15中のステップ48でリターンする。
また、ステップ25では「交互下降調整動作」中であるか否かを判定し、「YES」と判定したときには、次のステップ26で調整指令が「下降」であるか否かを判定する。ステップ26で「YES」と判定したときには、次のステップ23で「交互下降調整動作」を選択し、その後はステップ48でリターンする。一方、ステップ26で「NO」と判定したときには、調整指令が「下降」から切換わっているので、次のステップ28で「調整動作なし」を選択し、その後はステップ48でリターンする。
また、ステップ29では「同時下降調整動作」中であるか否かを判定し、「YES」と判定したときには、次のステップ30で調整指令が「下降」であるか否かを判定する。ステップ30で「YES」と判定したときには、次のステップ31で「同時下降調整動作」を選択し、その後はステップ48でリターンする。一方、ステップ30で「NO」と判定したときには、調整指令が「下降」から切換わっているので、次のステップ32で「調整動作なし」を選択し、その後はステップ48でリターンする。
また、ステップ33では「タンク圧力調整動作」中であるか否かを判定し、「YES」と判定したときには、次のステップ34で調整指令が「上昇」であるか否か、即ち「タンク圧力調整動作」を行っている途中で、調整指令が「上昇」に切換わったか否かを判定する。ステップ34で「YES」と判定したときには、次のステップ35で低圧タンク(第1タンク27)の圧力が、例えば図10に示す閾値P2未満か否かを判定する。
ステップ35で「YES」と判定したときには、第1タンク27の圧力が低い状態にあるので、次のステップ36で「上昇調整動作」を選択し、その後は図15中のステップ48でリターンする。一方、ステップ35で「NO」と判定したときには、第1タンク27の圧力が閾値P2以上に高くなっているので、第2タンク30のエア量が相対的に少なくなって圧力が低くなることが予想され、仮に「上昇調整動作」を行った場合には、動作時間が遅くなって余分な時間がかかる可能性が高い。そこで、この場合は「上昇調整動作」を行わずに、次のステップ37では、低圧側の第1タンク27から高圧側の第2タンク30へと作動流体(エア)を移す「タンク圧力調整動作」を選択し、その後はステップ48でリターンする。
また、ステップ34で「NO」と判定したときには、「タンク圧力調整動作」を行っている途中で、次のステップ38において調整指令が「下降」に切換わったか否かを判定する。ステップ38で「YES」と判定したときには、次のステップ39で車高変更スイッチ34により「変更指示」が出されているか否か、即ち「タンク圧力調整動作」の途中で車高変更スイッチ34が操作されたか否かを判定する。ステップ39で「YES」と判定したときには、車高変更スイッチ34の「変更指示」に従って、次のステップ40で「同時下降調整動作」を選択し、その後はステップ48でリターンする。
一方、ステップ39で「NO」と判定したときには、車高変更スイッチ34が操作されてはいないので、ステップ41に移って「タンク圧力調整動作」の途中において低圧タンク(第1タンク27)の圧力が、例えば図10に示す閾値P1未満か否かを判定する。ステップ41で「YES」と判定したときには、第1タンク27の圧力が十分に低いので、これ以上はタンク圧力調整動作は不要と判断して、次のステップ42で「調整動作なし」を選択し、その後はステップ48でリターンする。
一方、ステップ41で「NO」と判定したときには、第1タンク27の圧力が閾値P1以上となっているので、次のステップ43で車速が設定値(例えば、40km/h)未満か否かを判定する。ステップ43で「YES」と判定したときには車速が低いので、電動モータ18でコンプレッサ17を駆動すると、モータ音が周囲に音漏れとなって発生し易い。このため、ステップ43で「YES」と判定したときにも、「タンク圧力調整動作」を中止させるようにステップ42の処理を実行する。
これに対し、ステップ43で「NO」と判定したときには、車速が速くなってモータ音が周囲に音漏れする可能性は低い。そこで、この場合はタンク圧力調整動作(低圧側の第1タンク27から高圧側の第2タンク30へとエアを移送)を続けるように、次のステップ44で「タンク圧力調整動作」を選択し、電動モータ18でコンプレッサ17を駆動することを許すようにする。その後はステップ48でリターンする。
また、ステップ33で「NO」と判定し、「タンク圧力調整動作」中ではないときには、図15のステップ45に移って調整指令が「上昇」であるか否かを判定する。ステップ45で「YES」と判定したときには、次のステップ46で低圧タンク(第1タンク27)の圧力が閾値P2未満か否かを判定する。ステップ46で「YES」と判定したときには、第1タンク27の圧力が低い状態にあるので、次のステップ47で「上昇調整動作」を選択し、その後はステップ48でリターンする。
一方、ステップ46で「NO」と判定したときには、第1タンク27の圧力が閾値P2以上まで高くなっているので、第2タンク30のエア量が相対的に少なくなって圧力が低くなることが予想され、仮に「上昇調整動作」を行った場合には、動作時間が遅くなって余分な時間がかかる可能性が高い。そこで、次のステップ49では、低圧側の第1タンク27から高圧側の第2タンク30へと作動流体(エア)を移す「タンク圧力調整動作」を選択し、その後はステップ48でリターンする。
ステップ45で「NO」と判定したときには、次のステップ50で調整指令が「下降」であるか否かを判定し、「YES」と判定したときには、次のステップ39で車高変更スイッチ34による「変更指示」がないか否かを判定する。ステップ51で「YES」と判定したときには、車高変更スイッチ34の「変更指示」は出されていないので、次のステップ52で「交互下降調整動作」を選択し、その後はステップ48でリターンする。一方、ステップ51で「NO」と判定したときには、車高変更スイッチ34による「変更指示」が出されているので、これに従って、次のステップ53で「同時下降調整動作」を選択し、その後はステップ48でリターンする。
ステップ50で「NO」と判定したときには、次のステップ54で低圧タンク(第1タンク27)の圧力が閾値P1以上か否かを判定する。ステップ54で「YES」と判定したときには、第1タンク27の圧力が閾値P1以上となっているので、次のステップ55で車速が設定値(例えば、40km/h)以上か否かを判定する。ステップ55で「YES」と判定したときには、車速が速くなってモータ音が周囲に音漏れする可能性は低いので、次のステップ56で「タンク圧力調整動作」を選択し、電動モータ18でコンプレッサ17を駆動することを許すようにする。
しかし、ステップ54で「YES」と判定したときには、第1タンク27の圧力が十分に低い状態にあるので、次のステップ57で「調整動作なし」を選択する。また、ステップ55で「NO」と判定したときには車速が低いため、電動モータ18でコンプレッサ17を駆動すると、モータ音が周囲に音漏れとなって発生し易い。このため、ステップ55で「NO」と判定したときにも、ステップ57の処理を実行し、その後はステップ48でリターンする。
かくして、第1の実施の形態のエアサスペンションシステム1によれば、各サスペンション2,7により車高を下げるときに、前輪側サスペンション2は、第1タンク27に圧縮空気を排出し、後輪側サスペンション7には、圧縮装置11により第2タンク30内に圧縮空気を排出する構成としている。これにより、短時間で前,後同時下降の車高調整を行うことができる。
即ち、車高を下げるときに、前輪側サスペンション2と後輪側サスペンション7とは、別々のタンク27,30に圧縮空気を排出する構成としている。これにより、前輪側サスペンション2から排出する圧縮空気と後輪側サスペンション7から排出する圧縮空気とを分流させることができるので、前輪側サスペンション2から第1タンク27へと排出する圧縮空気と、後輪側サスペンション7から第2タンク30へと排出する圧縮空気とが互いに干渉せず、影響を与えないようにすることができる。
このため、前輪側サスペンション2内の圧力と後輪側サスペンション7内の圧力とが異なる場合でも、互いに影響を与えることが無いので、圧力の高いサスペンションから圧力の低いサスペンションに圧縮空気が流れることを抑制できる。この結果、前輪側と後輪側とで車高を同時に下降させることができるので、短時間で車高調整を行うことができる。
また、第1の実施の形態によれば、第1タンク27は、第2タンク30と比して低圧であり、車高調整を行わない待機状態では、図8に示すタンク圧調整動作を行うことにより、第1タンク27内の圧縮空気を圧縮装置11を用いて第2タンク30に移すように供給することができる。これにより、第1タンク27内の圧力を低圧状態に保つことができ、例えば前輪側での車高下降の速度が低下するのを抑制できる。この結果、短時間で車高調整を行うことができる。
特に、第1の実施の形態によれば、低圧タンク(第1タンク27)の圧力が閾値P1以上またはP2以上になると、車速が設定値(例えば、40km/h)以上のときに、電動モータ18でコンプレッサ17を駆動して低圧側の第1タンク27から高圧側の第2タンク30へと作動流体(エア)を移すタンク圧調整動作を行う構成としている。
このため、車両の走行中で車速が速い(即ち、走行時の騒音が相対的に大きくなっている)ときに電動モータ18でコンプレッサ17を駆動することにより、電動モータ18のモータ音が周囲に音漏れする可能性を低くでき、タンク圧調整動作時に騒音が発生するのを抑えることができる。しかも、各前輪側サスペンション2と各後輪側サスペンション7とにより車高調整(車高を変更)するようなことのない走行中にタンク圧調整動作を行うため、車高調整処理を短時間で効率的に行うことができる。
また、第1の実施の形態によれば、前輪側と後輪側とで車高を同時に下降させる構成としている。これにより、車高下降時の車両の挙動を安定させることができる。即ち、車両下降時の傾きを軽減することができるので、車両走行中のヘッドライトの角度が変化しにくくなると同時に、車両外観性能を向上させることができる。
また、第1の実施の形態によれば、各サスペンション2,7により車高を上げるときに、前輪側サスペンション2には、第2タンク30内の圧縮空気が供給され、後輪側サスペンション7には、圧縮装置11により第2タンク30内の圧縮空気が加圧されて供給される構成としている。これにより、前輪側サスペンション2に供給する圧縮空気と後輪側サスペンション7に供給する圧縮空気とを分流させることができるので、前輪側サスペンション2に供給する圧縮空気と後輪側サスペンション7に供給する圧縮空気とが影響を与えないようにすることができる。この結果、前輪側と後輪側とで車高を同時に上昇させることができるので、短時間で車高調整を行うことができる。
また、エアサスペンションシステム1は、コンプレッサ17により圧縮された圧縮空気を第2タンク30に蓄えて、この第2タンク30に蓄えられた圧縮空気を各サスペンション2,7に供給することができる閉回路(クローズドシステム)を構成している。これにより、エアサスペンションシステム1は、外部の温度、湿度、圧力等の影響を受けにくいので、安定したサスペンション制御を行うことができる。
また、エアサスペンションシステム1は、前輪側の車高のみを下げる場合は、前輪側サスペンション2内の圧縮空気を圧縮装置11を用いて第2タンク30内に排出することができる。また、後輪側の車高のみを下げる場合は、後輪側サスペンション7内の圧縮空気を圧縮装置11を用いて第2タンク30内に排出することができる。これにより、第1タンク27を用いなくとも車高を下げることができるので、第1タンク27と第2タンク30との間で圧力調整を省くことができる。
また、エアサスペンションシステム1は、車高を上げる場合に、第2タンク30内の圧縮空気を、圧縮装置11を介さずに、サスペンション2,7に供給することができる。これにより、電動モータ18を使用しないので、省電力、低騒音とすることができる。
従って、第1の実施の形態によれば、車両の運転者(オペレータ)が好みに応じて行う車高変更スイッチ34の操作に対し、車両の前,後で同時調整により短時間で車高が下降するので、オペレータが意図した車高調整速度を実現することができる。また、車両の前,後で同時下降調整の直後にリザーバ圧調整をしないので、車高変化の後に作動音が発生することがない。さらに、主に車両走行時にリザーバ圧調整を行うので、電動モータ18の作動音が周囲に騒音となって洩れるのを抑えることができ、違和感を低減することができる。
次に、図16は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第2の実施の形態の特徴は、低圧側の第1タンク27の容量を小さくした場合でも、車両の前,後で同時に車高を下降させるときの動作速度が遅くなるのを抑え、応答性を向上できるようにしたことにある。
図16に示す特性線51は、下降時の車高調整速度と第1タンク27(リザーバ)圧力との関係を表している。車高を下降させるときの動作速度は、第1タンク27の圧力がある圧力値(例えば、閾値P3)以上になると急激に低下する。この閾値P3は、車両の前,後で同時に車高を下降させる「同時下降調整」時の動作速度が、例えば「交互下降調整」時の動作速度を下回らないような第1タンク27の圧力値として設定されている。
第1タンク27の圧力が、例えば閾値P3未満のときには、車高の調整指令が「下降」のときに「同時下降調整動作」を選択することにより、前述した第1の実施の形態と同様な制御を行う。しかし、第2の実施の形態では、第1タンク27の圧力が閾値P3以上になると、「同時下降調整動作」ではなく、「交互下降調整動作」を選択する構成としている。
即ち、第2の実施の形態では、調整指令が「下降」(例えば、図14中のステップ38参照)の場合に、車高変更スイッチ34と圧力センサ31(第1タンク27の圧力)とに基づいて「交互下降調整動作」または「同時下降調整動作」を選択する。具体的には、第1タンク27の圧力が閾値P3以上になると、「同時下降調整動作」ではなく、「交互下降調整動作」を選択する。
これに対し、前記第1の実施の形態では、図14中のステップ39の如く、車高変更スイッチ34の「変更指示」があると、これに従って「同時下降調整動作」を選択している。しかし、同時下降調整を繰返した場合(特に、オフロードタイプの車両では同時下降調整を複数回繰返すことがある)、これに伴って第1タンク27(低圧リザーバ)の圧力が上昇するので、図16に示す特性線51の如く、車高調整速度が低下する。これは、第1タンク27(低圧リザーバ)の容量が小さい程、より顕著となる。
かくして、第2の実施の形態によれば、第1タンク27の圧力が閾値P3未満のときには、車高変更スイッチ34の「変更指示」があると、これに従って「同時下降調整動作」を選択するので、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかし、第2の実施の形態では、第1タンク27の圧力が閾値P3以上になると、「同時下降調整動作」ではなく、「交互下降調整動作」を選択するので、車両の車高を下降させるときの動作速度が遅くなるのを抑え、応答性を向上させることができる。
なお、前記第1の実施の形態では、車高を下げるときに、前輪側サスペンション2は第1タンク27に圧縮空気を排出し、後輪側サスペンション7は圧縮装置11を用いて第2タンク30内に圧縮空気を排出する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、前輪側サスペンションは圧縮装置を用いて第2タンク30内に圧縮空気を排出し、後輪側サスペンションは第1タンク27に圧縮空気を排出する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態でも同様である。
また、前記第1の実施の形態では、前輪側サスペンション2に第2タンク30内の圧縮空気を供給し、後輪側サスペンション7に圧縮装置11を用いて昇圧した圧縮空気を供給する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、前輪側サスペンションにコンプレッサを用いて昇圧した圧縮空気を供給し、後輪側サスペンションにタンク内の圧縮空気を供給する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態でも同様である。
また、前記第1の実施の形態では、圧縮装置11は1つのコンプレッサ17を備える構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、圧縮装置は2つ以上のコンプレッサを備える構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態でも同様である。
また、各実施の形態では、作動流体として圧縮空気を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、作動流体として油液や添加剤を混在させた水等の液体を用いる構成としてもよい。その場合、コンプレッサに代えて液圧ポンプ等を用いると共に、エアドライヤを省く構成とすればよい。
以上説明した実施形態に基づくサスペンションシステムとして、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
サスペンションシステムの第1の態様としては、車体と車軸との間に介装され作動流体の給排に応じて車高調整を行う前輪側サスペンションおよび後輪側サスペンションと、作動流体を加圧する加圧装置と、該加圧装置により加圧された作動流体を蓄える第1タンク、第2タンクと、を備えるサスペンションシステムであって、前記前輪側サスペンションと後輪側サスペンショとにより車高を下げるときに、何れか一方のサスペンションは作動流体を前記第1タンクに排出し、他方のサスペンションは前記加圧装置により作動流体を前記第2タンク内に排出する構成とし、前記第1タンク内の圧力を監視し、前記第1タンク内の作動流体を前記加圧装置を用いて前記第2タンクに供給可能とする指令装置が備えられていることを特徴としている。
第2の態様としては、第1の態様において、前記指令装置は、車両の走行時に前記第1タンクから第2タンクに作動流体を前記加圧装置を用いて供給することを特徴としている。第3の態様としては、第1の態様において、前記指令装置は、車両の走行時であって、さらに車高を下げる動作を少なくとも1回行ったときに、前記第1タンクから第2タンクに作動流体を前記加圧装置を用いて供給することを特徴としている。