以下、一実施形態に係るインクジェットプリンタ、及びインクジェットヘッドについて図面を参照して説明する。
まず、一実施形態に係るインクジェットプリンタ1について説明する。図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ1の構成例を示す説明図である。
インクジェットプリンタ1は、インクジェット記録装置の一例である。なお、インクジェット記録装置はこれに限らず、複写機のような他の装置であっても良い。
インクジェットプリンタ1は、例えば、記録媒体である印刷媒体を搬送しながら画像形成等の各種処理を行う。インクジェットプリンタ1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、通信インタフェース14、ディスプレイ15、操作部16、搬送モータ17、モータ駆動回路18、ポンプ19、ポンプ駆動回路20、インクジェットヘッド21、ヘッドコントローラ22、及び電源回路23を備える。さらに、インクジェットプリンタ1は、図示されない給紙カセット及び排紙トレイを備える。
CPU11は、演算処理を実行する演算素子(たとえば、プロセッサ)である。CPU11は、ROM12に記憶されているプログラムなどのデータに基づいて種々の処理を行う。CPU11は、ROM12に格納されているプログラムを実行することにより、種々の動作を実行可能な制御部として機能する。
ROM12は、読み出し専用の不揮発性メモリである。ROM12は、プログラム及びプログラムで用いられるデータなどを記憶する。
RAM13は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11の処理中のデータなどを一時的に格納する。また、RAM13は、CPU11が実行するプログラムを一時的に格納する。
通信インタフェース14は、他の機器と通信するインタフェースである。通信インタフェース14は、例えば、インクジェットプリンタ1に印刷指令を送信する上位装置との通信に用いられる。通信インタフェース14は、Bluetooth(登録商標)またはWi−fi(登録商標)などの規格に応じて他の機器と無線通信を行うものであってもよい。
ディスプレイ15は、CPU11、または図示されないグラフィックコントローラなどの表示制御部から入力される映像信号に応じて画面を表示する表示装置である。例えば、ディスプレイ15には、インクジェットプリンタ1の設定の画面が表示される。
操作部16は、操作に基づいて、操作信号を生成する。操作部16は、例えば、タッチセンサ、テンキー、電源キー、用紙フィードキー、種々のファンクションキー、またはキーボードなどである。タッチセンサは、例えば、抵抗膜式タッチセンサ、または静電容量式タッチセンサ等である。タッチセンサは、ある領域内において指定された位置を示す情報を取得する。タッチセンサは、上記のディスプレイ15と一体にタッチパネルとして構成されることにより、ディスプレイ15に表示された画面上のタッチされた位置を示す信号を生成する。
搬送モータ17は、回転することによって、印刷媒体を搬送する為の図示されない搬送路の搬送部材を動作させる。搬送部材は、印刷媒体を搬送するベルト、ローラ、及びガイドなどである。搬送モータ17は、印刷媒体を保持するベルトと連動して動作するローラを駆動することによって印刷媒体をガイドに沿って搬送させる。
モータ駆動回路18は、搬送モータ17を駆動する回路である。モータ駆動回路18は、CPU11から入力された搬送制御信号に従って搬送モータ17を駆動することにより、給紙カセットの印刷媒体を、インクジェットヘッド21を経由させて排紙トレイに搬送する。給紙カセットは、複数の印刷媒体を収容するカセットである。排紙トレイは、インクジェットプリンタ1によって画像形成されて排出された印刷媒体を収容する。
ポンプ19は、例えばインクが保持されているインクタンク(図示せず)とインクジェットヘッド21とを連通するチューブを備える。具体的には、チューブは、インクジェットヘッド21の図示されない共通インク室と連通されている。
ポンプ駆動回路20は、CPU11から入力されたインク供給制御信号に従ってポンプ19を駆動することによって、インクタンク内のインクをインクジェットヘッド21の共通インク室に供給させる。
インクジェットヘッド21は、印刷媒体に画像を形成する画像形成部である。インクジェットヘッド21は、ヘッドコントローラ22から供給される電源電圧及び制御信号に基づき、搬送モータ17及び図示されない保持ローラによって搬送される印刷媒体にインクを吐出することにより、画像を形成する。インクジェットプリンタ1は、例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、及びブラック等の各色にそれぞれ対応した複数のインクジェットヘッド21を備えていてもよい。
ヘッドコントローラ22は、インクジェットヘッド21を制御する回路である。ヘッドコントローラ22は、インクジェットヘッド21を動作させることにより、インクジェットヘッド21からインクを吐出させる。ヘッドコントローラ22は、インクジェットヘッド21に複数の電源電圧を供給する。また、ヘッドコントローラ22は、通信インタフェース14を介して入力された印刷指令に基づいて制御信号を生成する。ヘッドコントローラ22は、電源電圧及び制御信号を供給することにより、印刷媒体に対してインクジェットヘッド21により画像を形成させる。
電源回路23は、商用電源から供給された交流電力を直流電力に変換する。電源回路23は、直流電力をインクジェットプリンタ1内の各構成に供給する。
図2は、インクジェットヘッド21及びヘッドコントローラ22の詳細な構成について説明する為の説明図である。インクジェットヘッド21とヘッドコントローラ22とは、伝送用のフレキシブルプリント回路(FPC)基板(以下、伝送FPC31と称する)を介して接続される。これにより、ヘッドコントローラ22は、インクジェットヘッド21に対して電源電圧及び制御信号を供給することができる。
まずヘッドコントローラ22について説明する。
ヘッドコントローラ22は、電源電圧生成器32、電源シーケンス回路33、第1の通信インタフェース34、制御IC35、及び第2の通信インタフェース36を備える。
電源電圧生成器32は、電源回路23から供給された直流電圧DCVを用いて、インクジェットヘッド21の動作に必要な複数の電源電圧、及び制御IC35の動作に必要な電源電圧を生成する。直流電圧DCVは、例えば39Vである。
例えば、電源電圧生成器32は、直流電圧DCVを用いて、電源電圧VAA−IN、電源電圧VCC−IN、電源電圧VDD−IN、及び電源電圧VOL−LOGを生成する。電源電圧VAA−INは、インクジェットヘッド21で用いられる電源電圧VAAを生成する為の電源電圧である。電源電圧VAA−INは、例えば20Vである。電源電圧VCC−INは、インクジェットヘッド21で用いられる電源電圧VCCを生成する為の電源電圧である。電源電圧VCC−INは、例えば39Vである。電源電圧VDD−INは、インクジェットヘッド21で用いられる電源電圧VDDを生成する為の電源電圧である。電源電圧VDD−INは、例えば5Vである。電源電圧VDD−LOGは、制御IC35を動作させる為の電源電圧である。電源電圧VDD−LOGは、例えば5Vである。
電源電圧生成器32は、電源電圧VAA−IN、電源電圧VCC−IN、及び電源電圧VDD−INを電源シーケンス回路33に供給する。また、電源電圧生成器32は、電源電圧VDD−LOGを制御IC35に供給する。
電源シーケンス回路33は、インクジェットヘッド21への各電源電圧の投入と遮断とを行う。電源シーケンス回路33は、イネーブル状態である場合、インクジェットヘッド21への各電源電圧の投入及び遮断を行う。また、電源シーケンス回路33は、ディセーブル状態である場合、各電源電圧の投入及び遮断を行わない。電源シーケンス回路33は、制御IC35の制御に基づき、イネーブル状態とディセーブル状態とを切り替える。
電源シーケンス回路33は、電源電圧生成器32から供給された電源電圧VAA−IN、電源電圧VCC−IN、及び電源電圧VDD−INに基づき、インクジェットヘッド21に対して電源電圧VAA、電源電圧VCC、及び電源電圧VDDを出力する。
電源シーケンス回路33は、予め設定された順序(シーケンス)に基づき、各電源電圧の出力を開始(投入)する。また、電源シーケンス回路33は、予め設定された順序(シーケンス)に基づき、各電源電圧の出力を停止(遮断)する。電源シーケンス回路33は、電源の投入時において、電源電圧VDD、電源電圧VCC、電源電圧VAAの順に電源電圧を投入する。また、電源シーケンス回路33は、電源の遮断時において、電源電圧VAA、電源電圧VCC、電源電圧VDDの順に電源電圧を遮断する。
第1の通信インタフェース34は、CPU11または通信インタフェース14と、制御ICとを接続するインタフェースである。通信インタフェース14を介して接続された上位装置、またはCPU11から第1の通信インタフェース34に入力された印刷指令は、制御IC35に供給される。
制御IC35は、電源電圧VDD−LOGにより動作する。制御IC35は、第1の通信インタフェース34を介して入力された印刷指令に基づいて、制御信号を生成する。制御信号は、クロック信号CK、リセット信号RST、初期化信号INIT、及び印刷データSDIなどを含む。制御IC35は、制御信号を伝送FPC31を介してインクジェットヘッド21に出力する。
また、制御IC35は、電源シーケンス回路33の動作をイネーブル状態とディセーブル状態とで切り替える為のスイッチング信号VOL−SWを生成する。制御IC35は、スイッチング信号VOL−SWを電源シーケンス回路33に入力することにより、電源シーケンス回路33の動作をイネーブル状態とディセーブル状態とで切り替える。例えば、制御IC35は、電源電圧VDD−LOGの供給を受けて起動した場合、電源シーケンス回路33の動作をイネーブル状態に切り替える。また、制御IC35は、CPU11から所定の信号を受け取った場合に電源シーケンス回路33の動作をディセーブル状態に切り替える。
第2の通信インタフェース36は、インクジェットヘッド21とヘッドコントローラ22とを接続するインタフェースである。第2の通信インタフェース36は、伝送FPC31が接続される種々の端子を備える。
例えば、第2の通信インタフェース36は、電源シーケンス回路33の電源電圧VAAの出力端子に接続された4つの端子、電源シーケンス回路33の電源電圧VCCの出力端子に接続された2つの端子、及び電源シーケンス回路33の電源電圧VDDの出力端子に接続された1つの端子を備える。また、第2の通信インタフェース36は、制御IC35のクロック信号CKの出力端子に接続された1つの端子、制御IC35のリセット信号RSTの出力端子に接続された1つの端子、制御IC35の初期化信号INITの出力端子に接続された1つの端子、及び制御IC35の印刷データSDIの出力端子に接続された1つの端子を備える。また、第2の通信インタフェース36は、接地された7つの端子を備える。また、伝送FPC31も、第2の通信インタフェース36の各端子に接続される複数の配線を備える。
電源シーケンス回路33から出力された電源電圧VAA、電源電圧VCC、及び電源電圧VDD、並びに制御IC35から出力されたクロック信号CK、リセット信号RST、初期化信号INIT、及び印刷データSDIは、第2の通信インタフェース36及び伝送FPC31を介して接続されたインクジェットヘッド21に供給される。
なお、第2の通信インタフェース36が備える端子の数、及び伝送FPC31の配線の数(芯数)は、インクジェットヘッド21における消費電流に基づき決定することができ、上記の数に限定されるものではない。即ち、端子と配線の数は、インクジェットヘッド21及びヘッドコントローラ22の仕様に応じて適宜変更されてもよい。
次にインクジェットヘッド21について説明する。
インクジェットヘッド21は、チャネル群41、通信インタフェース42、バッファIC43、論理電源電圧生成器44、ドライバIC45、リカバリ回路46、及びヘッド基板47を備える。チャネル群41、通信インタフェース42、バッファIC43、論理電源電圧生成器44、ドライバIC45、及びリカバリ回路46は、ヘッド基板47に実装される。
チャネル群41は、インクを吐出する部材である。チャネル群41は、印加された電圧に応じてインクを吐出するチャネルが複数配列されて構成される。チャネル群41は、ヘッド基板47に接合された第1の圧電部材、第1の圧電部材に接合された第2の圧電部材、複数の電極、及びノズルプレートを備える。
第1の圧電部材及び第2の圧電部材は、互いに分極方向が対向するように接合される。第1の圧電部材及び第2の圧電部材には、第2の圧電部材側から第1の圧電部材に至る複数の平行な溝が形成されている。また、溝毎に電極が形成されている。2つの溝に形成された2つの電極により挟まれた第1の圧電部材及び第2の圧電部材は、2つの電極の電位差によって変形するアクチュエータとして構成される。
ノズルプレートは、溝を封止する部材である。ノズルプレートは、溝とインクジェットヘッド21の外部とを連通させる複数の吐出ノズルが溝毎に形成されている。また、ノズルプレートにより封止された溝は、ポンプ19によりインクが充填され、且つ壁が1対のアクチュエータにより構成される圧力室として機能する。
ドライバIC45から駆動波形が圧力室の壁を構成するアクチュエータの電極に入力された場合、アクチュエータが変形し、圧力室の容積が変化する。これにより、圧力室の圧力が変化し、圧力室内のインクが吐出ノズルから吐出される。本例では、圧力室と、吐出ノズルとの組合せをチャネルと称する。即ち、チャネル群41は、溝の数に応じたチャネルを備える。
通信インタフェース42は、インクジェットヘッド21とヘッドコントローラ22とを接続するインタフェースである。通信インタフェース42は、伝送FPC31が接続される種々の端子を備える。
通信インタフェース42は、ヘッドコントローラ22から電源電圧が供給される複数の電源電圧入力端子と、ヘッドコントローラ22から制御信号が供給される複数の制御信号入力端子とを有する。例えば、通信インタフェース42は、伝送FPC31における電源電圧VAAの伝送用の複数の配線にそれぞれ接続される4つのVAA入力端子を備える。VAA入力端子は、ドライバIC45の電源電圧VAAの電源入力端子にそれぞれ接続されている。また、通信インタフェース42は、伝送FPC31における電源電圧VCCの伝送用の複数の配線にそれぞれ接続される2つのVCC入力端子を備える。VCC入力端子は、ドライバIC45の電源電圧VCCの電源入力端子にそれぞれ接続されている。これらの構成により、伝送FPC31及び通信インタフェース42を介して、ヘッドコントローラ22から電源電圧VAA及び電源電圧VCCがドライバIC45に供給される。
また、通信インタフェース42は、伝送FPC31における電源電圧VDDの伝送用の配線に接続される1つのVDD入力端子を備える。VDD入力端子は、第1のダイオード48のアノードと、バッファIC43の電源入力端子とに並列に接続されている。第1のダイオード48のカソードは、ドライバIC45の論理電源電圧生成器44の電源入力端子に接続されている。この構成により、伝送FPC31及び通信インタフェース42を介して、ヘッドコントローラ22から電源電圧VDDが論理電源電圧生成器44及びバッファIC43に供給される。
また、通信インタフェース42は、伝送FPC31におけるクロック信号CKの伝送用の配線に接続され、且つバッファIC43のクロック信号CKの信号入力端子に接続された1つのCK入力端子を備える。また、通信インタフェース42は、伝送FPC31におけるリセット信号RSTの伝送用の配線に接続され、且つバッファIC43のリセット信号RSTの信号入力端子に接続された1つのRST入力端子を備える。また、通信インタフェース42は、伝送FPC31における初期化信号INITの伝送用の配線に接続され、且つバッファIC43の初期化信号INITの信号入力端子に接続された1つのINIT入力端子を備える。また、通信インタフェース42は、伝送FPC31における印刷データSDIの伝送用の配線に接続され、且つバッファIC43の印刷データSDIの信号入力端子に接続された1つのSDI入力端子を備える。また、通信インタフェース42は、接地された7つのGND端子を備える。これらの構成により、伝送FPC31及び通信インタフェース42を介して、ヘッドコントローラ22からクロック信号CK、リセット信号RST、初期化信号INIT、及び印刷データSDIがバッファIC43に供給される。
バッファIC43は、通信インタフェース42のVDD入力端子(電源電圧入力端子)に接続され、電源電圧VDDにより動作する。バッファIC43は、伝送FPC31及び通信インタフェース42を介してヘッドコントローラ22から供給された制御信号の電圧レベルを変更(正規化)し、ドライバIC45を制御する為の制御信号を生成し、ドライバIC45に供給する。例えば、バッファIC43は、クロック信号CKの信号入力端子に入力されたクロック信号CKを正規化し、クロック信号CK−ICに変換する。また、バッファIC43は、リセット信号RSTの信号入力端子に入力されたリセット信号RSTを正規化し、リセット信号RST−ICに変換する。また、バッファIC43は、初期化信号INITの信号入力端子に入力された初期化信号INITを正規化し、初期化信号INIT−ICに変換する。また、バッファIC43は、印刷データSDIの信号入力端子に入力された印刷データSDIを正規化し、印刷データSDI−ICに変換する。バッファIC43は、クロック信号CK−IC、リセット信号RST−IC、初期化信号INIT−IC、及び印刷データSDI−ICをドライバIC45に入力する。
なお、バッファIC43の各信号入力端子は、入力保護回路として構成されている。即ち、クロック信号CKの信号入力端子、リセット信号RSTの信号入力端子、初期化信号INITの信号入力端子、及び印刷データSDIの信号入力端子は、それぞれプラス側(信号入力端子から電源入力端子に向かって順方向)のダイオードが接続されていない構成となっている。これにより、信号入力端子に入力された信号の電圧が電源電圧VDDより高くなった場合であっても、信号入力端子から電源入力端子に電流が流れる事を防ぐことができる。
論理電源電圧生成器44は、電源電圧VDDをドライバIC45の仕様に応じた電源電圧VCC−ICに変換する。論理電源電圧生成器44は、電源電圧VCC−ICをドライバIC45に入力する。
ドライバIC45は、通信インタフェース42のVAA入力端子、VCC入力端子、及びなどの電源電圧入力端子、論理電源電圧生成器44、並びにバッファIC43などに接続される。ドライバIC45は、バッファIC43から出力された制御信号に基づきチャネル群41を駆動する。
ドライバIC45は、電源電圧VAA、電源電圧VCC、電源電圧VDD−ICを電源入力として、バッファIC43から入力されるクロック信号CK−IC、リセット信号RST−IC、初期化信号INIT−IC、及び印刷データSDI−ICなどの制御信号に基づき、駆動波形を生成する。ドライバIC45は、駆動波形をチャネル群41のアクチュエータの電極に入力することにより、アクチュエータを変形させて、圧力室の容積を変化させる。これにより、ドライバIC45は、圧力室内のインクを吐出ノズルから吐出させる。
図3は、ドライバIC45の構成例について説明する為の説明図である。ドライバIC45は、論理回路51、レベルシフタ52、及びドライバ53を備える。
論理回路51は、電源電圧VDD−ICにより動作する。論理回路51は、制御信号として入力されたクロック信号CK−IC、リセット信号RST−IC、初期化信号INIT−IC、及び印刷データSDI−ICに基づき、ドライバ53のスイッチング素子を制御する為の駆動信号を生成する。論理回路51は、駆動信号をレベルシフタに入力する。なお、論理回路51は、印刷データSDI−ICを一次的に保存するレジスタを備える。
論理回路51の制御信号が入力される端子も、入力保護回路として構成されている。即ち、クロック信号CK−ICの信号入力端子、リセット信号RST−ICの信号入力端子、初期化信号INIT−ICの信号入力端子、及び印刷データSDI−ICの信号入力端子は、それぞれプラス側(信号入力端子から電源入力端子に向かって順方向)のダイオードが接続されていない構成となっている。これにより、信号入力端子に入力された信号の電圧が電源電圧VDD−ICより高くなった場合であっても、信号入力端子から電源入力端子に電流が流れる事を防ぐことができる。
レベルシフタ52は、論理回路51から入力された駆動信号の電圧レベルを、電源電圧VCCを用いて変換する。レベルシフタ52は、電圧レベルを変換した駆動信号をドライバ53に入力する。
ドライバ53は、例えばp−MOSFET及びn−MOSFETにより構成されたスイッチング素子をチャネル群41に構成される電極毎に2つ備える。スイッチング素子のゲートは、レベルシフタ52の出力端子に接続されている。p−MOSFETソースは、電源電圧VAAに接続され、n−MOSFETのソースは、GNDに接続されている。また、2つのスイッチング素子の接続点であるそれぞれのドレインには、チャネル群41の電極が接続されている。このような構成により、ドライバ53は、電源電圧VAAまたはGNDレベルを、レベルシフタ52から入力された駆動信号に応じたタイミングで出力する。これにより、ドライバ53は、チャネル群41の各電極に駆動波形を入力する。この結果、ドライバ53は、チャネル群41の吐出ノズルからインクを吐出させる。
リカバリ回路46は、通信インタフェース42の制御信号入力端子の電位をドライバIC45の論理回路51の電源入力端子に供給し、且つドライバIC45の論理回路51の電源入力端子(または論理電源電圧生成器44の電源入力端子)の電位がバッファIC43の電源入力端子に供給されることを防ぐ。リカバリ回路46は、上記の第1のダイオード48と、第2のダイオード49とを備える。
上記したように、第1のダイオード48は、アノードが通信インタフェース42の電源電圧入力端子としてのVDD入力端子に接続され、カソードが論理電源電圧生成器44の電源入力端子(またはドライバIC45の電源入力端子)に接続されている。
第2のダイオード49は、通信インタフェース42の制御信号入力端子としてのINIT入力端子にアノードが接続され、カソードが論理電源電圧生成器44の電源入力端子(またはドライバIC45の電源入力端子)に接続されている。
上記の構成において、電源電圧VDDが伝送される経路において接続不良が存在する場合、バッファIC43及び論理電源電圧生成器44に対して電源電圧VDDが供給されない状態になる。論理電源電圧生成器44は、電源入力端子に電源電圧が供給されないと、電源電圧VDD−ICをドライバIC45に入力しない状態になる。
しかし、リカバリ回路46は、電源電圧VDDが伝送される経路において接続不良が存在する場合、第2のダイオード49を介して、制御信号が伝送される経路の電圧を論理電源電圧生成器44の電源入力端子に供給することができる。例えば、リカバリ回路46は、第2のダイオード49を介して、初期化信号INITの電圧を電源電圧VDD−DIとして、論理電源電圧生成器44の電源入力端子に供給することができる。この場合、論理電源電圧生成器44は、電源電圧VDD−DIを用いて電源電圧VDD−ICを生成することができる。
次に、電源電圧VDDが伝送される経路において接続不良が存在しない場合(正常時)と、接続不良が存在する場合(異常時)とにおける動作について説明する。
図4は、ヘッドコントローラ22及びインクジェットヘッド21の正常時の動作について説明する為の説明図である。横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。
タイミングt1において、インクジェットプリンタ1の電源が投入されると、電源回路23からヘッドコントローラ22に直流電圧DCVが供給される。
電源電圧生成器32は、直流電圧DCVが供給されると、タイミングt2において、電源電圧VAA−IN、電源電圧VCC−IN、電源電圧VDD−IN、及び電源電圧VDD−LOGを生成する。電源電圧生成器32は、電源電圧VAA−IN、電源電圧VCC−IN、及び電源電圧VDD−INを電源シーケンス回路33に供給するともに、電源電圧VDD−LOGを制御IC35に供給する。
タイミングt3において、制御IC35に印刷指令が入力されると、制御IC35は、電源シーケンス回路33をイネーブル状態にするスイッチング信号VOL−SWを電源シーケンス回路33に供給する。即ち、制御IC35は、スイッチング信号VOL−SWをHレベルにする。電源シーケンス回路33は、スイッチング信号VOL−SWによりイネーブル状態になると、電源電圧VDD、電源電圧VCC、電源電圧VAAの順に出力を開始する。
タイミングt4において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VDDの出力を開始する。この時、インクジェットヘッド21の論理電源電圧生成器44は、電源電圧VDD−ICをドライバIC45に供給する。また、タイミングt4において、制御IC35は、インクジェットヘッド21のバッファIC43へのクロック信号CK及び初期化信号INITの出力を開始する。また、タイミングt4において、バッファIC43は、クロック信号CK及び初期化信号INITを正規化し、クロック信号CK−IC及び初期化信号INIT−ICをドライバIC45に供給する。
タイミングt5において、制御IC35は、インクジェットヘッド21のバッファIC43へのリセット信号RSTの出力を開始する。また、タイミングt5において、バッファIC43は、リセット信号RSTを正規化し、リセット信号RST−ICをドライバIC45に供給する。
タイミングt6において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VCCの出力を開始する。これにより、ドライバIC45に電源電圧VCCが供給される。
タイミングt7において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VAAの出力を開始する。これにより、ドライバIC45に電源電圧VAAが供給される。
タイミングt8において、制御IC35は、インクジェットヘッド21のバッファIC43への印刷データSDIの出力を開始する。また、タイミングt8において、バッファIC43は、印刷データSDIを正規化し、印刷データSDI−ICをドライバIC45に供給する。
制御IC35は、タイミングt9においてインクジェットヘッド21に印刷を開始させる。例えば、制御IC35は、1ライン分の印刷データSDIの出力が完了したタイミングt9において、初期化信号INITをHレベルからLレベルに所定クロック分(例えば1クロック分)引き下げる。これにより、バッファIC43がドライバIC45に入力する初期化信号INIT−ICもLレベルに引き下げられる。ドライバIC45の論理回路51は、初期化信号INIT−ICがLレベルに引き下げられたことをトリガーとして、クロック信号CK−IC、印刷データSDI−IC、及び電源電圧VDD−ICを用いて駆動信号の生成を開始する。これにより、レベルシフタ52及びドライバ53が動作を開始し、駆動波形がチャネル群41の電極に入力される。この結果、印刷が実行される。
また、タイミングt10において、印刷が完了したことを制御IC35が認識した場合、制御IC35は、電源シーケンス回路33をディセーブル状態にするスイッチング信号VOL−SWを電源シーケンス回路33に供給する。即ち、制御IC35は、スイッチング信号VOL−SWをLレベルにする。電源シーケンス回路33は、スイッチング信号VOL−SWによりディセーブル状態になると、電源電圧VAA、電源電圧VCC、電源電圧VDDの順に出力を停止する。
タイミングt11において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VAAの出力を停止する。これにより、ドライバIC45への電源電圧VAAの供給が停止される。
タイミングt12において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VCCの出力を停止する。これにより、ドライバIC45への電源電圧VCCの供給が停止される。
タイミングt13において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VDDの出力を停止する。また、制御IC35は、タイミングt13において、クロック信号CK、リセット信号RST、及び初期化信号INITの出力を停止する。即ち、制御IC35は、タイミングt13において、クロック信号CK、リセット信号RST、及び初期化信号INITをHレベルからLレベルに引き下げる。これにより、バッファIC43からドライバIC45に供給されるクロック信号CK−IC、リセット信号RST−IC、及び初期化信号INIT−ICもHレベルからLレベルに引き下げられる。また、これにより、論理電源電圧生成器44の電源入力端子にも電源電圧が供給されない状態になる。この結果、ドライバIC45への電源電圧VDD−ICの供給が停止される。
図5は、ヘッドコントローラ22及びインクジェットヘッド21の異常時の動作について説明する為の説明図である。横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。
タイミングt1において、インクジェットプリンタ1の電源が投入されると、電源回路23からヘッドコントローラ22に直流電圧DCVが供給される。
電源電圧生成器32は、直流電圧DCVが供給されると、タイミングt2において、電源電圧VAA−IN、電源電圧VCC−IN、電源電圧VDD−IN、及び電源電圧VDD−LOGを生成する。電源電圧生成器32は、電源電圧VAA−IN、電源電圧VCC−IN、及び電源電圧VDD−INを電源シーケンス回路33に供給するともに、電源電圧VDD−LOGを制御IC35に供給する。
タイミングt3において、制御IC35に印刷指令が入力されると、制御IC35は、電源シーケンス回路33をイネーブル状態にするスイッチング信号VOL−SWを電源シーケンス回路33に供給する。即ち、制御IC35は、スイッチング信号VOL−SWをHレベルにする。電源シーケンス回路33は、スイッチング信号VOL−SWによりイネーブル状態になると、電源電圧VDD、電源電圧VCC、電源電圧VAAの順に出力を開始する。
タイミングt4において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VDDの出力を開始する。しかし、電源電圧VDDが伝送される経路において接続不良が存在する場合、インクジェットヘッド21の論理電源電圧生成器44及びバッファIC43に電源電圧VDDが供給されない。また、タイミングt4において、制御IC35は、インクジェットヘッド21のバッファIC43へのクロック信号CK及び初期化信号INITの出力を開始する。制御IC35から出力された初期化信号INITは、第2のダイオード49を介して、論理電源電圧生成器44の電源入力端子に電源電圧VDD−DIとして入力される。論理電源電圧生成器44は、電源電圧VDD−DIを用いて電源電圧VDD−ICを生成し、ドライバIC45への電源電圧VDD−ICの供給を開始する。なお、電源電圧VDDが供給されない為、バッファIC43は、動作を停止したままになる。この為、バッファIC43からドライバIC45に対して、クロック信号CK−IC、及び初期化信号INIT−ICが供給されない。
タイミングt5において、制御IC35は、インクジェットヘッド21のバッファIC43へのリセット信号RSTの出力を開始する。しかし、バッファIC43が動作していない為、リセット信号RST−ICがドライバIC45に供給されない。
タイミングt6において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VCCの出力を開始する。これにより、ドライバIC45に電源電圧VCCが供給される。
タイミングt7において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VAAの出力を開始する。これにより、ドライバIC45に電源電圧VAAが供給される。
タイミングt8において、制御IC35は、インクジェットヘッド21のバッファIC43への印刷データSDIの出力を開始する。しかし、バッファIC43が動作していない為、印刷データSDI−ICがドライバIC45に供給されない。また、この場合は、印刷が実行されない。
また、タイミングt10において、制御IC35は、電源シーケンス回路33をディセーブル状態にするスイッチング信号VOL−SWを電源シーケンス回路33に供給する。即ち、制御IC35は、スイッチング信号VOL−SWをLレベルにする。電源シーケンス回路33は、スイッチング信号VOL−SWによりディセーブル状態になると、電源電圧VAA、電源電圧VCC、電源電圧VDDの順に出力を停止する。
タイミングt11において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VAAの出力を停止する。これにより、ドライバIC45への電源電圧VAAの供給が停止される。
タイミングt12において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VCCの出力を停止する。これにより、ドライバIC45への電源電圧VCCの供給が停止される。
タイミングt13において、電源シーケンス回路33は、電源電圧VDDの出力を停止する。また、制御IC35は、タイミングt13において、クロック信号CK、リセット信号RST、及び初期化信号INITの出力を停止する。即ち、制御IC35は、タイミングt13において、クロック信号CK、リセット信号RST、及び初期化信号INITをHレベルからLレベルに引き下げる。これにより、論理電源電圧生成器44の電源入力端子に供給されていた電源電圧VDD−DIが停止される。この結果、ドライバIC45への電源電圧VDD−ICの供給が停止される。
例えば、電源電圧VAA及び電源電圧VCCがドライバIC45に供給され、且つ電源電圧VDD−ICがドライバIC45に供給されない場合、論理回路51から駆動信号がレベルシフタ52に供給されない状態になる。レベルシフタ52は、電源電圧VCCが供給されており、且つ論理回路51から駆動信号が供給されない場合、不定状態になる。この場合、レベルシフタ52は、ドライバ53の2つのスイッチング素子を同時にオンしてしまう可能性がある。ドライバ53の2つのスイッチング素子が同時にオンされると、電源電圧VAAが2つのスイッチング素子の導電経路に印加され、貫通電流が流れる。
しかし、上記のように、リカバリ回路46は、電源電圧VDDが伝送される経路において接続不良が存在し、バッファIC43及び論理電源電圧生成器44に対して電源電圧VDDが供給されない場合であっても、通常Hレベルで維持される初期化信号INITの電圧を電源電圧VDD−DIとして、第2のダイオード49を介して、論理電源電圧生成器44の電源入力端子に供給することができる。この構成によると、論理電源電圧生成器44は、初期化信号INITの電圧である電源電圧VDD−DIを用いて電源電圧VDD−ICを生成することができる。即ち、論理電源電圧生成器44は、電源電圧VDD−DIにより、論理回路51の電源電圧VDD−ICが入力される電源入力端子の電位を確保することができる。この結果、リカバリ回路46は、論理回路51から駆動信号がレベルシフタ52に供給されず、レベルシフタ52が不定状態になり、ドライバ53に貫通電流が流れることを防ぐことができる。つまり、本実施形態のインクジェットヘッド及びインクジェットプリンタは、安全性が高い。
また、バッファIC43は、電源電圧VDDが供給されないと、ドライバIC45に対して制御信号を入力しない状態になる。即ち、バッファIC43は、ほぼGNDレベルのクロック信号CK−IC、リセット信号RST−IC、初期化信号INIT−IC、及び印刷データSDI−ICをドライバIC45の論理回路51に入力する状態になる。この場合、ドライバIC45の論理回路51は、基準クロックであるクロック信号CK−ICが供給されていない為、動作せず、電力を消費しない状態になる。これにより、最低限の電流で論理回路51の電源入力端子の電位を確保することができる。この結果、ヘッドコントローラ22の制御IC35の電力の負担を軽減することができる。
また、バッファIC43の電源入力端子と、リカバリ回路46の第2のダイオード49のカソードとの間に、初期化信号INITがバッファIC43の電源入力端子に入力される事を防ぐ第1のダイオード48が接続されている。これにより、電源電圧VDDの伝送経路に接続不良が存在する場合に、バッファIC43が動作することを防ぐことができる。また、このように電源電圧VDDの伝送経路に接続不良が存在する場合に、バッファIC43及びドライバIC45を動作させないようにすることにより、ヘッドコントローラ22の制御IC35による不具合の検出を容易にすることができる。
なお、上記の実施形態では、リカバリ回路46は、初期化信号INITの電圧を論理電源電圧生成器44を介してドライバIC45の論理回路51に供給する構成であると説明したが、この構成に限定されない。リカバリ回路46は、電源電圧VCCが立ち上がるタイミングt6より前に所定以上の電圧を確保することができる制御信号であれば、如何なるものを用いてドライバIC45の論理回路51に電位を供給する構成であってもよい。例えば、リカバリ回路46は、リセット信号RSTが入力される信号線からドライバIC45の論理回路51に電位を供給する構成であってもよい。またさらに、リカバリ回路46は、電源電圧VCCが伝送される導線の電圧を論理電源電圧生成器44でドライバIC45に適した電圧に変換し、ドライバIC45の論理回路51に電位を供給する構成であってもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。