JP2019037989A - 車両用ホイール部材用金型および車両用ホイール部材の製造方法 - Google Patents

車両用ホイール部材用金型および車両用ホイール部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 引け巣の発生を抑制し、各部の品質の均一化を図ることが可能であるとともに、鋳造にかかるサイクルタイムを短縮することが可能な、車両用ホイール部材用金型およびこれを用いた車両用ホイール部材の製造方法を提供する。
【解決手段】 横型下部冷却回路17は、リム部キャビティ21(交差部キャビティ21c、21d)の外周を囲むように配置される。冷却経路17b、17c、17d、17e、17fのそれぞれにおいて、リム部キャビティ21に最も近くなる部位が存在する。この部位を、近接部位とする。リム部キャビティ21の径方向の厚みが略同一である部位においては、近接部位と冷却経路との距離を略同一とし、厚みが厚い近接部位は、厚みが薄い近接部位に対して、距離を小さく設定する。
【選択図】図5

Description

本発明は、車両用ホイール部材を鋳造するための車両用ホイール部材用金型およびこれを用いた車両用ホイール部材の製造方法に関するものである。
アルミニウムなどいわゆる軽合金からなる車両用ホイールの製造方法としては、例えば、低圧鋳造によって車両用ホイール部材(以下、ホイール部材と言う場合がある。)を製造し、リム部をフローフォーミング加工によって最終形状に加工する方法がある。この方法によれば、製造性に優れ、薄肉で高強度の軽合金ホイールを得ることができる。なお、以下、上記フローフォーミング加工に供するためのホイール部材を例として、従来技術を説明するが、本発明は、フローフォーミング加工に供するホイール部材に限定されない。
上記フローフォーミング加工に供するホイール部材の一例を図2に示す。図2に示すように、ホイール部材80は、リム部81とディスク部82から成る。ディスク部82は、車軸が固定されるハブ部82aと、ハブ部82aの外周面から放射状に伸びる複数のスポーク部82bによって形成される。複数のスポーク部82bの一端が固定される略円筒形状のリム部81は、リム素材部81aと、アウターフランジ81bを有している。また、リム部81は、リム素材部81aとアウターフランジ81bとの間に、スポーク部82bがリム部81と交差する厚肉の交差部81cを有している。
このようなホイール部材を低圧鋳造によって製造する際には、上記ホイール部材が象られた金型のキャビティに充填されたアルミニウム合金溶湯(以下、溶湯という場合がある。)を効率的に冷却し、凝固せしめ短サイクルで鋳造を行うとともに、ホイール部材の各部における引け巣の発生を抑制する必要がある。特に、リム部81の中で厚みの大きな交差部81cは凝固までに時間がかかり最終凝固部となりやすく、引け巣が生じやすい。このため、引け巣の生じにくい製造方法が提案されている。
例えば、金型のリム部に複数の温度センサを配置し、各温度センサで検出された各部の温度に応じて、金型の外部に配置された複数のエア噴出冷却装置の作動を制御することで、ディスク側(湯口側)から遠ざかるほど、検出温度が低くなるように制御する方法がある(特許文献1)。
特開2000−61610号公報
しかし、特許文献1のような方法では、エア噴出冷却装置から噴出されたエアで金型の側面を冷却するため、厚肉である交差部が象られたキャビティに充填された溶湯を必ずしも効率よく冷却することができない。そのため、溶湯の凝固に時間がかかり、鋳造にかかるサイクルタイムを短縮できず、かつ交差部の引け巣の発生を抑制することが困難である可能性がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、鋳造にかかるサイクルタイムを短縮するとともに、交差部の引け巣の発生を抑制可能な、車両用ホイール部材用金型およびこれを用いた車両用ホイール部材の製造方法を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、第1の発明は、車軸が固定されるハブ部と、前記ハブ部の外周面から放射状に伸びる複数のスポーク部と、複数の前記スポーク部の一端が固定される略円筒形状のリム部とを有し、前記リム部は、前記スポーク部との交差部を複数備える車両用ホイール部材を鋳造するための金型であって、上型と、前記上型に相対するように配置される下型と、前記上型および下型の側方に配置される2以上に分割された横型と、を有し、前記上型、前記下型および前記横型が型合わせされることにより形成される前記リム部を象るキャビティのうち、少なくとも前記交差部を象るキャビティの外周に配置された冷却回路を前記横型の内部に有し、前記冷却回路は、前記交差部を象るキャビティとの近接部位を備え、前記リム部を象るキャビティの中心軸に直交する断面において、前記交差部を象るキャビティと前記冷却回路の近接部位とが最も近接した位置における前記交差部を象るキャビティと前記冷却回路の近接部位との径方向の距離をtaとし、前記リム部を象るキャビティのうち前記交差部を象るキャビティを除くキャビティと前記冷却回路の径方向の距離をtbとしたとき、ta<tbであることを特徴とする車両用ホイール部材用金型である。
上記第1の発明において、互いに周方向の幅wの異なる複数の前記スポーク部を象るキャビティが形成されており、前記交差部を象るキャビティの外周に前記冷却回路の近接部位が配置されており、幅wが略同一である前記スポーク部を象るキャビティの一端側に配置された前記交差部を象るキャビティまでの距離taは、互いに略同一であり、幅wが広い前記スポーク部を象るキャビティの一端側に配置された前記交差部を象るキャビティまでの距離taは、幅wが狭い前記スポーク部を象るキャビティの一端側に配置された前記交差部を象るキャビティまでの距離taに対して、小さく設定されることが望ましい。
さらに、上記第1の発明において、前記リム部を象るキャビティの中心軸に直交するとともに前記交差部を象るキャビティを含む断面において、前記横型は、前記リム部を象るキャビティのうち前記交差部を象るキャビティを除く部分と前記冷却回路との間に、断熱層を有してもよい。
第1の発明によれば、金型のリム部を象るキャビティのうち、少なくとも交差部を象るキャビティの外周には、冷却回路が配置されている。そして、冷却回路は、交差部を象るキャビティとの近接部位を備えており、交差部を象るキャビティと前記近接部位とが最も近接した位置における径方向の距離taは、リム部を象るキャビティのうち交差部を象るキャビティを除くキャビティと冷却回路の径方向の距離tbよりも小さい。このように、交差部を象るキャビティに近接する近接部位を有する冷却回路に冷却水を流すことで、効率よく交差部を象るキャビティに充填された溶湯を冷却することができる。このため、径方向の寸法が大きな交差部を象るキャビティに充填された溶湯の凝固が促進され、鋳造サイクルタイムの短縮を図ることができる。そして、交差部を象るキャビティに充填された溶湯を早い冷却速度で冷却し、凝固せしめるので組織が微細化し、ホイール部材の交差部に生じる引け巣を抑制することができる。
また、ホイール部材が、周方向の幅が異なる複数のスポークを有する場合において、当該スポークを象るキャビティの幅wに応じて、交差部を象るキャビティまでの距離taを変え、交差部を象るキャビティに充填された溶湯の冷却速度を調整することで、交差部ごとの組織のバラツキ(差異)が少ない、より均一な品質の交差部を有する車両用ホイール部材を得ることができる。
また、交差部を象るキャビティを除く部分において、冷却回路とキャビティとの間に断熱層を形成することで、交差部を象るキャビティに充填された溶湯の冷却能力を確保しつつ、交差部以外の部位が過剰に冷却されることを抑制し、交差部と交差部以外の間で組織のバラツキ(差異)が少ない車両用ホイール部材を得ることができる。
第2の発明は、第1の発明にかかる車両用ホイール部材用金型を用い、前記上型、前記下型および前記横型を型合わせして形成された前記リム部を象るキャビティに金属溶湯を注入し、前記冷却回路に冷却水を流して前記金属溶湯を凝固させることを特徴とする車両用ホイール部材の製造方法である。
第2の発明によれば、品質のよい車両用ホイール部材を効率よく製造することができる。
本発明によれば、鋳造にかかるサイクルタイムを短縮するとともに、交差部の引け巣の発生を抑制可能な、車両用ホイール部材用金型およびこれを用いた車両用ホイール部材の製造方法を提供することができる。
ホイール部材用の金型10を示す断面図であって、図4のD−D線断面図。 ホイール部材80を示す断面図。 ホイール部材80を示す断面矢視図であって、図2のYY−YY線断面矢視図。 金型10を示す断面図であって、図1のA−A線断面図。 横型A16aの拡大断面図。 金型10を示す断面図であって、図1のB−B線断面図。 金型10を示す断面図であって、図1のC−C線断面図。 フローフォーミング加工後のホイール部材90を示す断面図。 金型10aを示す断面図であって、図10のU−U線断面図。 金型10aを示す断面図であって、図9のT−T線断面図。 (a)は、金型10bを示す断面図、(b)は(a)のAA部拡大図。 金型10cを示す断面図であって、図14のAE−AE線断面図。 金型10cの部分拡大図。 金型10cを示す断面図であって、図12のAB−AB線断面図。 金型10cを示す断面図であって、図12のAC−AC線断面図。 金型10cを示す断面図であって、図12のAD−AD線断面図。 ホイール部材80を示す断面図。 ホイール部材80を示す断面図であって、図17のYY−YY線断面図。 交差部の金属組織写真。
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、フローフォーミング加工に供するための車両用ホイール部材を製造する場合を例として説明するが、本発明は、フローフォーミング加工に供する車両用ホイール部材に限定されない。図1は、ホイール部材用の金型10を示す縦方向の断面図(キャビティの中心軸に平行な断面図)である。図2は、金型10で製造されるホイール部材80の軸方向断面図、図3は、金型10で製造されるホイール部材80の径方向断面矢視図である。また、図4〜図7は、金型10を示す径方向断面図(キャビティの中心軸に直交する断面図)である。なお、図1は、図4のD−D線断面図であり、図4は、図1のA−A線断面図、図6は、図1のB−B線断面図、図7は、図1のC−C線断面図である。また、図2は、図3のXX−XX線断面図、図3は、図2のYY−YY線断面矢視図である。また、図1〜図7において、Oはリム部を象るキャビティの中心軸を示す。
図1に示すように、金型10は、主に、下型ベース11、上型ベース12、下型14、上型15、および、一対(複数)の可動分割型から成る横型A16a、横型B16bから構成される。なお、横型A16a、横型B16bを総称して、横型16とする。下型14と、上型15とは、互いに相対するように配置される。また、2分割された横型A16a、横型B16bは、下型14および上型15の側方に配置される。なお、本実施形態の横型16は2分割構造であるが、横型は複数個に分割される構造であればよい。
下型14、上型15、横型A16a、および横型B16bが型合わせされて嵌合することで、キャビティ20が形成される。キャビティ20は、ホイール部材80の形状が象られた空間である。すなわち、下型14および下型ベース11の略中央に形成された湯口13からキャビティ20に、例えばアルミニウムなどの金属溶湯を注湯して凝固させることで、図2に示す形状のホイール部材80を鋳造することができる。
図2および図3に示すように、車両用のホイール部材80は、主に、リム部81とディスク部82から成る。ディスク部82は、車軸が固定されるハブ部82aと、ハブ部82aの外周面から放射状に伸びる複数のスポーク部82bと、締結ボルト座面82cによって形成される。リム部81は、複数のスポーク部82bの一端が固定される略円筒形状であり、フローフォーミング加工に供される部位であるリム素材部81aと、アウターフランジ81bとを有している。交差部81cは、それぞれのスポーク部82bがリム部81と交差する部位であり、リム部81において、リム素材部81aとアウターフランジ81bの間に、円周方向において所定の間隔で複数個形成されている。このため、図3に示すように、リム部81の半径方向の厚みは、交差部81cが存在する部分が、交差部81cが存在しない部分に対し厚肉となっている。また、図2に示すホイール部材80はフローフォーミング加工に供する部材であり、フローフォーミングのための加工代を有するリム素材部81aは、そのフローフォーミング加工後の形状を示す図8のリム本体部91aに対し、厚肉に形成されている。
上記形状のホイール部材80を鋳造するための本実施形態に係る金型10は、図1に示すように、リム部81が象られたキャビティ(以下、リム部キャビティと略称する場合がある。ホイール部材の他の部位を象るキャビティについて同じ。)21と、ディスク部82が象られたディスク部キャビティ22を有している。より詳細には、リム部キャビティ21は、リム素材部81aを象るリム素材部キャビティ21aと、アウターフランジ81bを象るアウターフランジキャビティ21bと、交差部81cを象る交差部キャビティ21cとを有している。また、ディスク部キャビティ22は、ハブ部82aを象るハブ部キャビティ22aと、スポーク部82bを象るスポーク部キャビティ22bで構成される。なお、交差部キャビティ21cは、リム部キャビティ21において、スポーク部キャビティ22bの一端側が連結する部位であり、スポーク部キャビティ22bの一端部の幅が、交差部キャビティ21cの幅となっている。
次に、金型10の冷却構造について説明する。図1に示すように、横型16の内部には、リム部キャビティ21の外側に、横型下部冷却回路17、横型中間冷却回路18、および横型上部冷却回路19が形成される。横型下部冷却回路17、横型中間冷却回路18、および横型上部冷却回路19は、横型16の下方から順に、複数階層に独立してそれぞれ形成される。
なお、交差部キャビティ21cを効率よく冷却するという点では、横型16は、少なくとも横型下部冷却回路17を備えていればよい。しかしながら、鋳造サイクルをより短縮するためには、横型下部冷却回路17と同様な構成の横型中間冷却回路18および横型上部冷却回路19を、リム素材部キャビティ21aの上端および中間の外周に配置し、リム素材部キャビティ21a全体の冷却を効率化することが好ましい。この構成は、本実施形態のホイール部材のようにリム素材部81aが肉厚である場合には、特に好適である。
さらに、上記構成の金型10を使用し、健全なホイール部材80を鋳造するにあたっては、そのキャビティ20に充填された溶湯が指向性凝固するよう冷却制御することが好ましい。すなわち、金型10のキャビティ20に充填された溶湯が、まずはリム部キャビティ21の上部から下方に向かい凝固していき、その後、スポーク部キャビティ22bおよびハブ部キャビティ22aを経て湯口13で最終凝固するという、指向性凝固を図ることが肝要である。そして、リム部キャビティ21の下方に存在する、径方向の寸法が大きな交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯は冷却されにくく、指向性凝固を阻害する要因となる。つまり、上記した凝固の指向性が崩れ、交差部キャビティ21cに充填された溶湯が最終凝固部となると、溶湯補給ができない交差部に鋳巣が生じる可能性がある。つまり、冷却効率の向上による鋳造サイクルタイムの短縮および交差部の鋳巣の低減以外に指向性凝固の達成という点でも、交差部キャビティ21cの冷却効率を高めることが望ましい。
図4に示すように、横型下部冷却回路17は、横型A16a、横型B16bのそれぞれに形成される。それぞれの横型下部冷却回路17は、冷却入口17a、冷却経路17b、17c、17d、17e、17f、および冷却出口17gから構成される。冷却入口17a、冷却経路17b〜17f、および冷却出口17gは、これらを一つの通路として多角形で繋ぐように形成される。本実施形態の横型A16aの横型下部冷却回路17と、横型B16bの横型下部冷却回路17とは、対称に形成されるため、以下の説明では、特に記載がない限り横型A16aを用いて説明する。
なお、本実施形態の金型10では、図3に示すように、ホイール部材80のスポーク部82bが、周方向にほぼ等間隔で形成されているため、横型A16aの横型下部冷却回路17と、横型B16bの横型下部冷却回路17とは、対称に形成されている。しかしながら、最終的なホイールのデザインによりスポーク部82bの配置態様は異なるため、横型A16aの横型下部冷却回路17と、横型B16bの横型下部冷却回路17とは、必ずしも対称に形成する必要はない。
横型下部冷却回路17は、交差部キャビティ21c、21dの外周を囲むように配置される。ここで、本実施形態のホイール部材80の周方向に隣り合うスポーク部82bは、互いに周方向の幅が異なる。したがって、ホイール部材80の形状に対応するように、周方向に隣り合うスポーク部キャビティ22bの周方向の幅も互いに異なる。
図5は、図4における横型A16aの拡大図である。図示したように、幅の広いスポーク部に対応する交差部キャビティ21cの幅をw1とし、幅の狭いスポーク部に対応する交差部キャビティ21dの幅をw2とする。すなわち、異なる幅w1、w2の交差部キャビティ21c、21dが、周方向に離間して交互に形成される。
なお、中心軸Oに沿う方向において交差部キャビティ21c、21dが存在する範囲で、周方向において交互に配置された交差部キャビティ21cおよび21dとの間の径方向の寸法が小さなリム部キャビティ21の部分、つまり、交差部キャビティ21c、21dを除くリム部キャビティ21である部分を、以下、交差部間リム部キャビティ21eと言う場合がある。
上記横型下部冷却回路17は、周方向に離間して配置される5個の交差部キャビティ21c、21dのそれぞれに相対する位置に配置された複数の近接部位E、F、G、H、Iを有する。すなわち、本実施形態の冷却経路17b〜17fは略直線状であり、リム部キャビティ21は、略円状である。このため、本実施形態の横型下部冷却回路17では、冷却経路17b、17c、17d、17e、17fのそれぞれにおいて、5個の交差部キャビティ21c、21dに最も近くなる部位を、近接部位E、F、G、H、Iとした。より具体的には、中心Oからそれぞれの交差部キャビティ21c、21dの幅方向の中心へ引いた径方向の直線上に、冷却経路17b〜17fのそれぞれ近接部位が配置される。
なお、本実施形態のように横型下部冷却回路17が直線状の冷却経路17b〜17fで構成されている場合、近接部位の境界が明確ではない。このような場合には、図5において破線で示すように、横型下部冷却回路17において、交差部キャビティ21c、21dと相対する領域を、冷却回路の近接部位E、F、G、H、Iとすればよい。
ここで、上記構成の金型10の中心軸Oに直交する断面において、交差部キャビティ21c、21dと、横型下部冷却回路17の冷却経路17b、17c、17d、17e、17fのそれぞれの近接部位E〜Iが最も近接した位置における交差部キャビティ21c、21dと当該近接部位E〜Iの径方向の距離をt1、t2、t3、t4、t5とする。
また、上記近接部位E〜Iが最も近接した位置における断面において、交差部キャビティ21c、21dを除くリム部キャビティ21である交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17の冷却経路17b、17c、17d、17e、17fのそれぞれの径方向の距離をtbとする。
この場合において、径方向の厚みが相対的に厚い交差部キャビティ21c、21dにおける、それぞれの交差部キャビティ21c、21dと横型下部冷却回路17の近接部位E、F、G、H、Iとの径方向の距離t1、t2、t3、t4、t5をtaとすると、いずれの交差部キャビティ21c、21dにおいても、その近接部位E〜Iとの距離taは、径方向の厚みが相対的に薄い交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17との径方向の距離tbよりも小さい。すなわち、交差部キャビティ21c、21dと横型下部冷却回路17の近接部位E〜Iとの径方向の距離taは、いずれの交差部キャビティ21c、21dについても、ta<tbとなる関係が成立する。
なお、図5では、距離tbを例示するため、中心Oから交差部間リム部キャビティ21eの周方向の中間へ引いた径方向の直線上における、交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17の冷却経路17e(または17f)の径方向の距離をtbとして一点のみ示しているが、距離tbは一点のみでなく、交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17との間の全ての距離tbのことを指す。
上記のように、交差部キャビティ21c、21dに近接する近接部位E〜Iを有する横型下部冷却回路17に冷却水を流すことで、効率よく交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯を冷却することができる。このため、径方向の寸法が大きな交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯の凝固が促進され、鋳造サイクルタイムの短縮を図ることができる。そして、径方向の寸法が大きな交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯を速い冷却速度で冷却し、凝固せしめるので組織が微細化し、ホイール部材の交差部に生じる引け巣を抑制することができる。
さらに、交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17との径方向の距離tbは、交差部キャビティ21c、21dと横型下部冷却回路17の近接部位E〜Iとの径方向の距離taに較べ大きくなるよう設定されているので、薄肉の交差部間リム部キャビティ21eに充填された溶湯の過度な冷却が抑制され、溶湯の過度な冷却に起因する表面ブローホール(いわゆるキラワレ)や湯境などの発生を防止することができる。
また、横型下部冷却回路17から、幅が略同一であるスポーク部キャビティ22bのそれぞれの一端側に配置された交差部キャビティ21c、21dまでの距離は、互いに略同一である。すなわち、幅がw1と同一である3つの交差部キャビティ21cと、これに対応する冷却経路17b、17d、17fの近接部位E、G、Iまでの距離t1、t3、t5は略同一である。同様に、幅がw2と同一である2つの交差部キャビティ21dと、これに対応する冷却経路17c、17eの近接部位F、Hまでの距離t2、t4は略同一である。
また、広い幅w1の交差部キャビティ21cまでの距離t1、t3、t5は、狭い幅w2の交差部キャビティ21dまでの距離t2、t4に対して、小さく設定される。すなわち、幅の広い交差部キャビティ21cに配置される冷却経路17b、17d、17fの近接部位E、G、Iは、幅の狭い交差部キャビティ21dに配置される冷却経路17c、17eの近接部位F、Hに対し、その距離が相対的に近くに配置される。したがって、t1=t3=t5<t2=t4の関係が成立する。このようにすることで、幅が広く、凝固の際により多くの抜熱量が必要な交差部キャビティ21cに対して、より大きな冷却能力を発揮させることができる。このため、幅の異なる交差部キャビティ21c、21dのそれぞれに対して、適切な冷却速度で冷却を行うことができ、組織の均一化を図ることができる。
図6は、横型中間冷却回路18を示す断面図である。横型中間冷却回路18は、リム素材部キャビティ21aの外周を囲むように配置される。横型中間冷却回路18は、冷却入口18a、冷却経路18b、18c、18d、18e、冷却出口18fから構成される。冷却入口18a、略直線状の冷却経路18b〜18e、冷却出口18fは、これらを一つの通路として多角形で繋ぐように形成される。なお、図6に示すように、リム素材部キャビティ21aは略円環形状をなしており、当該リム素材部キャビティ21aに充填された溶湯を均一に冷却するためには、冷却経路18b〜18eは中心軸Oに対して対称となるように、任意の角度ピッチで削孔して形成することが望ましい。また、横型A16aの横型中間冷却回路18と、横型B16bの横型中間冷却回路18とは、対称に形成することが望ましい。
上記のように冷却経路18b、18c、18d、18eは略直線状であり、リム素材部キャビティ21aは、略円環形状である。このため、横型下部冷却回路17と同様に、冷却経路18b、18c、18d、18eのそれぞれにおいて、リム素材部キャビティ21aに最も近くなる近接部位J、K、M、Nが必然的に形成される。
ここで、本実施形態の横型中間冷却回路18では、リム素材部キャビティ21aと横型中間冷却回路18の冷却経路18b、18c、18d、18eのそれぞれ近接部位J、K、M、Nの径方向の距離t6を略同一の大きさとした。このように冷却経路18b〜18eの近接部位J〜Nとリム素材部キャビティ21aとの距離t6を略同一することで、周方向において一定の径方向の厚みd2を有するリム素材部キャビティ21aに充填された溶湯の冷却速度の均一化を図ることができ、周方向における組織のバラツキ(差異)の少ないリム素材部キャビティ21aを得ることができる。
図7は、横型上部冷却回路19を示す断面図である。横型上部冷却回路19は、リム素材部キャビティ21aの先端部の外周を囲むように配置される。横型上部冷却回路19は、冷却入口19a、冷却経路19b、19c、19d、19e、冷却出口19fから構成される。冷却入口19a、略直線状の冷却経路19b〜19e、冷却出口19fは、これらを一つの通路として多角形で繋ぐように形成される。なお、図7に示すように、リム素材部キャビティ21aは略円環形状をなしており、当該リム素材部キャビティ21aに充填された溶湯を均一に冷却するためには、冷却経路19b〜19eは中心軸Oに対して対称となるように、任意の角度ピッチで削孔して形成することが望ましい。また、横型下部冷却回路17と同様に、横型A16aの横型上部冷却回路19と、横型B16bの横型上部冷却回路19とは、対称に形成することが望ましい。
上記のように、冷却経路19b、19c、19d、19eは略直線状であり、リム素材部キャビティ21aは、略円環形状である。このため、横型下部冷却回路17と同様に、冷却経路19b、19c、19d、19eのそれぞれにおいて、リム素材部キャビティ21aに最も近くなる近接部位P、Q、R、Sが必然的に形成される。
ここで、本実施形態の横型上部冷却回路19では、リム素材部キャビティ21aと横型上部冷却回路19の冷却経路19b、19c、19d、19eのそれぞれ近接部位P、Q、R、Sの径方向の距離t7を略同一の大きさとした。このように冷却経路19b〜19eの近接部位P〜Sとリム素材部キャビティ21aとの距離t7を略同一することで、周方向において一定の径方向の厚みd3を有するリム素材部キャビティ21aに充填された溶湯の冷却速度の均一化を図ることができ、周方向における組織のバラツキ(差異)の少ないリム素材部キャビティ21aを得ることができる。
ここで、図2に示すように、ホイール部材80のリム部81は、部位によって肉厚(中心Oから見た径方向の厚み)が異なる。より詳細には、交差部81cとリム素材部81aの先端(横型上部冷却回路19の位置)が厚肉部となり、リム素材部81aの中央部近傍(横型中間冷却回路18の位置)が他の部位に対して相対的に薄肉部となる。また、交差部81cの厚みは、リム素材部81aの厚みよりも厚い。
したがって、キャビティ20の中心軸Oを通る断面において、リム部キャビティ21のうち交差部キャビティ21cおよび21dの厚みd1(図1、図5参照)は、リム素材部キャビティ21aの先端部の厚みd3(図1、図7参照)よりも厚く、リム素材部キャビティ21aの先端部の厚みd3は、リム素材部キャビティ21aの中央部の厚みd2(図1、図6参照)よりも厚い。すなわち、交差部キャビティ21cおよび21dが第1の厚肉部となり、リム素材部キャビティ21aの先端部が、第1の厚肉部の厚みよりも厚みが薄い第2の厚肉部となり、第1の厚肉部と第2の厚肉部の間が、第1の厚肉部および第2の厚肉部よりも薄い薄肉部となる。
上記構成のキャビティ20を有する本実施形態の金型10では、上記した指向性凝固をも考慮すると、第2の厚肉部(厚みd3)であるリム素材部キャビティ21aの先端部と横型上部冷却回路19との間の最短距離、すなわち近接部位との距離t7は、薄肉部(厚みd2)であるリム素材部キャビティ21aの中間部と横型中間冷却回路18の近接部位との距離t6よりも小さく、第1の厚肉部(厚みd1)である交差部キャビティ21c、21dと横型下部冷却回路17の近接部位との距離t1〜t5は、第2の厚肉部(厚みd3)における距離t7よりも小さくすることが望ましい。
このように、リム部キャビティ21の厚みd1>d3>d2の関係に対して、前述した近接部位との距離は、t1〜t5<t7<t6の関係となるよう、リム部キャビティ21の上部、中間および下部に対応するよう配置した各冷却回路の径方向の位置を調整することにより、リム部キャビティ21の各部位の径方向の厚みに応じ、当該部位に充填された溶湯を効率的に凝固せしめて鋳造サイクルタイムをより短縮できる。そして、第1の厚肉部(厚みd1)である交差部キャビティ21c、21dと横型下部冷却回路17の近接部位との距離t1〜t5は、第2の厚肉部(厚みd3)における距離t7よりも小さく設定されているので、交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯は、より効率的に冷却される。そして、横型上部冷却回路19、横型中間冷却回路18および横型下部冷却回路17へ冷却水を通水するタイミングまたは冷却水の流量を回路ごとに個別に設定して冷却能に差異を与えることで、キャビティ20に充填された溶湯全体の指向性凝固が達成され、健全なホイール部材80を得ることができる。
次に、金型10を用いた、アルミニウム製のホイール部材80の製造方法について説明する。先ず、図1に示すように、下型14、上型15、および横型16を型締めしてキャビティ20を形成する。次いで、保持炉(図示せず)を加圧し、保持炉内に貯留した溶湯を、ストークを介して湯口13に向け注入し、キャビティ20に充填する。
リム素材部キャビティ21aの上端部近くの金型10に設けた温度センサで、キャビティ20末端まで充填されたことを確認後、保持炉内の加圧を所定時間維持すると共に、横型16に配置した横型下部冷却回路17、横型中間冷却回路18および横型上部冷却回路19に冷却水を通水する。これにより、金型10のリム部キャビティ21の外側が冷却される。
ここで、キャビティ20に充填された溶湯を指向性凝固させる場合には、例えば溶湯が、キャビティ20末端まで充填された時点から、横型上部冷却回路19、横型中間冷却回路18、横型下部冷却回路17の順で時間差を設けながら冷却水を通水することで、リム部キャビティ21の先端側から順に冷却することもできる。同様に、横型下部冷却回路17、横型中間冷却回路18、横型上部冷却回路19への冷却水の流量に差を与えることでも同様の効果を得ることができる。
そして、本実施形態の金型10を使用したホイール部材の製造方法によれば、交差部キャビティ21c、21dに近接する近接部位E〜Iを有する横型下部冷却回路17に冷却水を流すことで、効率よく交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯を冷却することができ、径方向の寸法が大きな交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯の凝固が促進され、鋳造サイクルタイムの短縮を図ることができる。そして、径方向の寸法が大きな交差部キャビティ21c、21d充填された溶湯を早い冷却速度で冷却し、凝固せしめるので組織が微細化し、ホイール部材80の交差部81cに生じる引け巣を抑制することができる。さらに、各冷却回路への通水タイミングや通水量を最適化することで、リム素材部キャビティ21a側からアウターフランジキャビティ21b方向にかけて溶湯の凝固タイミングに差を生じさせ、リム部キャビティ21に充填された溶湯の指向性凝固を図ることができる。この結果、ホイール部材80のリム部81全体における、引け巣の発生を防止することができる。
なお、本実施形態の金型10では、上記したようにリム部キャビティ21の上部、中間および下部の各部位に充填された溶湯の冷却能率および指向性凝固を考慮し、上部、中間および下部の各冷却回路とリム部キャビティ21との径方向の距離を、上部、中間および下部の部位により異なるように調整している。これにより、リム部キャビティ21の各部における冷却能力が調整されているため、全ての冷却回路に略同時に冷却水を通水しても、リム部キャビティ21に充填された溶湯を指向性凝固させることができる。そして、上部、中間および下部の各冷却回路への冷却水の通水を同時にする又は冷却水の流量を増やすことで、鋳造サイクルタイムをより短縮することができる。
次いで、保持炉内の加圧を止めて、湯口13に残留する溶湯を保持炉に戻し、凝固が完了したホイール部材80を金型から取り出す。以上により、ホイール部材80が製造される。
その後、ホイール部材80のリム部81(リム素材部81a)に対して、フローフォーミング加工を施すことで、リム素材部81aを薄肉化して、図8に示すように、最終的なホイールの形状に近いリム本体部91aを有するホイール部材90を製造することができる。この後、リム本体部91aの仕上げ加工やボルト部の削孔、表面処理等を施すことで、車両用のホイールを製造することができる。
次に、第2の実施形態について説明する。図9は、第2の実施形態にかかる金型10aを示す縦方向の断面図(キャビティの中心軸に平行な断面)であり、図10のU−U線断面図である。また、図10は、金型10aを示す径方向断面図(リム部キャビティ21の中心軸に直交するとともに交差部キャビティ21c、21dを含む断面)であり、図9のT−T線断面図である。なお、以下の説明において、金型10と同一の機能を奏する構成については、図1〜図7と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
金型10aは、冷却回路の構成含め第1実施形態の金型10とほぼ同様の構成であるが、横型16に代えて、断熱層31を有する横型30が用いられる点で異なる。
本実施形態の横型30は、一対の横型A30aと横型B30bとで構成されている。そして、横型A30aおよび横型B30bは、双方とも中心軸Oに垂直な分割面で上下に2分割された構造となっている。すなわち、横型A30aは、下部横型A30dと上部横型A30cとを分割面で組合せることにより一体化され、横型B30bは、下部横型B30fと上部横型B30eとを分割面で組合せることにより一体化されている。すなわち、本実施形態の横型30は、横型16における横型A16aが、下部横型A30dと上部横型A30cで構成され、横型B16bが、下部横型B30fと上部横型B30eで構成されたものである。
金型10aにおいて、横型下部冷却回路17は、下部横型A30dと下部横型B30fに形成される。また、横型中間冷却回路18および横型上部冷却回路19は、上部横型A30cと上部横型B30eに形成される。
図10に示すように、横型下部冷却回路17は、第1実施形態の金型10と同様に、交差部キャビティ21c、21dの外周を囲むように配置される。また、横型下部冷却回路17の冷却経路17b、17c、17d、17e、17fのそれぞれは、交差部キャビティ21c、21dとの近接部位E〜Iを有している。
ここで、冷却経路17b、17c、17d、17e、17fのそれぞれの近接部位E〜Iは、それぞれ交差部キャビティ21c、21dに相対するように形成されているが、本実施形態の横型30では、交差部間リム部キャビティ21e(リム部キャビティ21のうち交差部キャビティ21c、21dを除く部分)と横型下部冷却回路17との間に、断熱層31が形成されている。
本実施形態の断熱層31は、例えば、交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17の間に部分的に形成された空気断熱層である。横型A30aおよび横型B30bに断熱層31を設けるためには、例えば、下部横型A30dおよび下部横型B30fともにその上面を加工し、図10に示すように交差部間リム部キャビティ21eの外周に円弧状のスリットを設け、その後、それぞれに上部横型A30cおよび上部横型B30eを組合せて一体化させればよい。なお、断熱層31は、上記したスリット状の空断熱層に限られず、孔であってもよく、さらには内部に断熱材等が配置されてもよい。
第2の実施形態の金型10aによれば、第1の実施形態の金型10と同様の効果を得ることができる。また、交差部キャビティ21c、21dを含む断面において、厚肉である交差部を形成するための交差部キャビティ21c、21dは、径方向の寸法が大きいため、交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯を効率よく冷却できる冷却能力が必要となる。一方で、交差部間リム部キャビティ21eは、径方向の寸法が小さく、交差部間リム部キャビティ21eに充填された溶湯も少なくなる。このように充填量の少ない交差部間リム部キャビティ21eの溶湯を、交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯と同条件で冷却すると、過度な冷却となり、表面ブローホール(いわゆるキラワレ)など鋳肌不良が生じるおそれがある。
これに対し、本実施形態の金型10aでは、交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17の間に断熱層31が形成される。このため、横型下部冷却回路17による冷却が断熱層31によって妨げられ、交差部間リム部キャビティ21eの過度な冷却を抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、断熱層31によって、リム部キャビティ21の周方向の各部位によって、冷却能力に差を設けることができるため、径方向の寸法が異なる交差部キャビティ21c、21dおよび交差部間リム部キャビティ21eが混在している場合であっても、各々について最適な冷却条件で冷却を行うことができる。これにより、交差部キャビティ21c、21dに充填された溶湯の冷却速度を速め、交差部の組織を微細化することにより引け巣の発生を抑制するとともに、交差部間リム部キャビティ21eに充填された溶湯を適切な冷却速度で冷却し、リム部におけるキラワレや湯境などの鋳肌不良の発生を防止することができる。
次に、第3の実施形態について説明する。図11(a)は、第3の実施形態にかかる金型10bを示す縦方向の断面図(キャビティの中心軸Oに平行な断面)であり、図11(b)は、図11(a)のAA部拡大図である。金型10bは、金型10aとほぼ同様の構造であるが、断熱層31の形態が異なる。
前述した金型10aにおいては、下部横型A30dと上部横型A30cとの分割面および、下部横型B30fと上部横型B30eの分割面のそれぞれから、断熱層31が加工されて構成された。すなわち、前述した金型10aにおいては、横型30が、キャビティの中心軸Oに垂直な分割面を有し、分割面から断熱層31が形成された。一方、本実施形態では、金型10と同様に、横型16は、横型A16aと横型B16bの2分割で構成される。すなわち、横型16は、キャビティの中心軸Oに垂直な分割面を有しない。
金型10bにおける断熱層31は、リム部キャビティ21への露出面から形成される。また、リム部キャビティ21への開口部には、穴埋め部32が形成される。穴埋め部32は、断熱層31の開口部を塞ぐことができれば、材質や加工方法は限定されない。例えば、断熱部材であってもよく、溶接等で塞がれてもよい。
第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、断熱層31の形成方法は特に限定されず、交差部キャビティ21c、21d以外の径方向の厚みが薄い交差部間リム部キャビティに対して、断熱層31を形成することで、厚みの薄い交差部間リム部キャビティに充填された溶湯の過剰な冷却を抑制することができる。また、金型10aと比較して、横型16の分割数を減らすことができる。
次に、第4の実施形態について説明する。図12は、金型10cを示す縦方向の断面図(キャビティの中心軸Oに平行な断面図)であり、図13は、図12の横型34近傍の拡大図、図14〜図16は、金型10cを示す径方向断面図(キャビティの中心軸Oに直交する断面図)である。なお、図12は、図14のAE−AE線断面図であり、図14は、図12のAB−AB線断面図、図15は、図12のAC−AC線断面図、図16は、図12のAD−AD線断面図である。
金型10cは、金型10等とほぼ同様の構造であるが、横型16に代えて、横型34が用いられる点で異なる。金型10cは、主に、下型ベース11、上型ベース12、下型14、上型15、横型A34a、横型B34bから構成される。また、横型A34aは、横型A本体34c、横型A回路部34d、34eから構成され、横型B34bは、横型B本体34f、横型B回路部34g、34hから構成される。なお、横型A本体34c、横型A回路部34d、34e、横型B本体34f、横型B回路部34g、34hを総称して、横型34とする。
横型A本体34cおよび横型B本体34fは、外周面に凹部が形成され、それぞれの凹部に横型A回路部34d、34eおよび横型B回路部34g、34hがそれぞれ嵌めこまれる。なお、横型A回路部34d、34eおよび横型B回路部34g、34hは、それぞれ一体であってもよい。または、横型A回路部34e、横型B回路部34hをさらに複数に分割してもよい。
下型14と、上型15とは、互いに相対するように配置され、横型A回路部34d、34eが組み込まれた横型A本体34cと、横型B回路部34g、34hが組み込まれた横型B本体34fは、下型14および上型15の側方に配置される。すなわち、本実施形態は、金型10における横型A16aが、横型A本体34cと横型A回路部34d、34eで構成され、横型B16bが、横型B本体34fと横型B回路部34g、34hで構成されたものである。
横型A回路部34d、34eおよび横型B回路部34g、34hの内面(横型A本体34cおよび横型B本体34fとの対向面)には、溝が形成される。横型A本体34cおよび横型B本体34fのそれぞれに横型A回路部34d、34eおよび横型B回路部34g、34hが組み込まれることで、当該溝が、冷却回路として機能する。例えば、図示した例では、横型A回路部34d、34eおよび横型B回路部34g、34hはそれぞれ上下に2分割され、横型A回路部34dおよび横型B回路部34gそれぞれに横型下部冷却回路17が形成され、横型A回路部34eおよび横型B回路部34hそれぞれに横型中間冷却回路18および横型上部冷却回路19が形成される。なお、前述したように、横型A回路部34d、34eおよび横型B回路部34g、34hは、それぞれ一体であってもよく、それぞれの冷却回路ごとに別体であってもよい。
図14に示すように、横型下部冷却回路17は、第1実施形態の金型10と同様に、交差部キャビティ21c、21dの外周を囲むように配置される。
第1実施形態と同様に、本実施形態でも、その横型A回路部34dによる横型下部冷却回路17と、横型B回路部34gによる横型下部冷却回路17とは、対称に形成されるため、以下の説明では、特に記載がない限り横型A回路部34dおよび横型A本体34cを用いて説明する。また、本実施形態の金型10cでも、図3に示すように、ホイール部材80のスポーク部82bが、周方向にほぼ等間隔で形成されているため、横型A34aの横型下部冷却回路17と、横型B34bの横型下部冷却回路17とは、対称に形成されている。しかしながら、最終的なホイールのデザインによりスポーク部82bの配置態様は異なるため、横型A34aの横型下部冷却回路17と、横型B34bの横型下部冷却回路17とは、必ずしも対称に形成する必要はない。なお、図14において、各交差部キャビティ21c、21dに対応する近接部位は、符号V〜Zで示し、それぞれの近接部位におけるリム部キャビティ21(交差部キャビティ21c、21d)と横型下部冷却回路17との径方向の距離を、符号t11〜t15で示す。
図14に示すように、横型下部冷却回路17は、全体として略円形(横型A本体34c側と横型B本体34f側にそれぞれ略半円形)であり、交差部キャビティ21c、21dの外形に沿って形成される。横型下部冷却回路17は、周方向の各部において、中心からの距離が変わるように、屈曲する。すなわち、交差部キャビティ21cおよび21dと近接部位V〜Zとの距離t11〜t15は、交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17との距離tbより小さくなるよう設定されている。そして、本実施形態の横型下部冷却回路17の各部位は、中心O周りにリム部キャビティ21と同心円状に形成されているため、例えば近接部位Vの交差部キャビティ21cとの距離t11は、円周方向において略一定となっている(他の近接部位W〜Zと交差部キャビティ21cまたは21dとの距離t12〜t15、交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17との距離tbについても同様)。
各交差部キャビティ21c、21dに対応する横型下部冷却回路17の近接部位V〜Zと、交差部間リム部キャビティ21eに対応する横型下部冷却回路17との間の屈曲部を連結経路17hとする。すなわち、各交差部キャビティ21c、21dに対応する近接部位V〜Zと、交差部間リム部キャビティ21eに対応する横型下部冷却回路17とは、連結経路17hで連結する。
上記のとおり、本実施形態の横型下部冷却回路17の近接部位V〜Zは、交差部間リム部キャビティ21eに相対する横型下部冷却回路17と、円周方向において近接部位V〜Zから外側に伸びる連結経路17hで連結されている。そのため、本実施形態の近接部位V〜Zの場合には、第1実施形態の近接部位とは異なり、連結経路17hで近接部位V〜Zの境界を設定することが可能であり、円周方向において当該連結経路17hの最も内側を近接部位V〜Zの境界とする。
第1実施形態の近接部位と同様に、各近接部位V〜Zにおける、リム部キャビティ21(交差部キャビティ21c、21d)と横型下部冷却回路17との径方向の距離t11〜t15と、交差部キャビティ21c、21d以外に部位における交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17との径方向の距離tbとが異なる。すなわち、径方向の厚みが相対的に厚い交差部キャビティ21c、21dにおける、それぞれの交差部キャビティ21c、21dと横型下部冷却回路17の近接部位V〜Zとの径方向の距離t11〜t15をtaとすると、いずれの交差部キャビティ21c、21dにおいても、その近接部位V〜Zとの距離taは、径方向の厚みが相対的に薄い交差部間リム部キャビティ21eと横型下部冷却回路17との径方向の距離tbよりも小さい。したがって、任意の交差部キャビティ21c、21dにおける、交差部キャビティ21c、21dと横型下部冷却回路17の近接部位V〜Zとの径方向の距離taは、いずれの交差部キャビティ21c、21dについても、ta<tbとなる関係が成立する。
また、第1実施形態の近接部位と同様に、横型下部冷却回路17から、幅が略同一であるスポーク部キャビティ22bのそれぞれの一端側に配置された交差部キャビティ21c、21dまでの距離は、互いに略同一である。すなわち、幅が同一である3つの交差部キャビティ21cと、これらに対応する近接部位V、X、Zまでの距離t11、t13、t15は略同一である。同様に、幅が同一である交差部キャビティ21dと、これらに対応する近接部位W、Yまでの距離t12、t14は略同一である。
また、第1実施形態の近接部位と同様に、広い幅の交差部キャビティ21cまでの距離t11、t13、t15は、狭い幅の交差部キャビティ21dまでの距離t12、t14に対して、小さく設定される。すなわち、幅の広い交差部キャビティ21cに位置する横型下部冷却回路17の近接部位V、X、Zは、幅の狭い交差部キャビティ21dに位置する横型下部冷却回路17の近接部位W、Yに対し、その距離が相対的に近くに配置される。したがって、t11=t13=t15<t12=t14<tbの関係が成立する。このようになるように、横型下部冷却回路17の屈曲形状が設定される。このようにすることで、幅が広く、凝固の際により多くの抜熱量が必要な交差部キャビティ21cに対して、より大きな冷却能力を発揮させることができる。このため、幅の異なる交差部キャビティ21c、21dのそれぞれに対して、適切な冷却速度で冷却を行うことができ、組織の均一化を図ることができる。
図15は、横型中間冷却回路18を示す断面図である。本実施形態では、横型中間冷却回路18は、リム素材部キャビティ21aの外周に沿って一つの通路として略円形(横型A本体34c側と横型B本体34f側にそれぞれ略半円形)に形成される。また、横型中間冷却回路18は、中心軸Oに対し、リム素材部キャビティ21aと同心円状に形成されている。前述したように、本断面におけるリム素材部キャビティ21aは、周方向に対して略一定の径方向の厚みd2である。このため、リム素材部キャビティ21aと横型中間冷却回路18との径方向の距離t16は、全周にわたって略一定となる。このように横型中間冷却回路18とリム素材部キャビティ21aとの距離t16を略同一することで、周方向において一定の径方向の厚みd2を有するリム素材部キャビティ21aに充填された溶湯の冷却速度の均一化を図ることができ、周方向における組織のバラツキ(差異)の少ないリム素材部キャビティ21aを得ることができる。
図16は、横型上部冷却回路19を示す断面図である。本実施形態では、横型上部冷却回路19は、リム素材部キャビティ21aの外周に沿って一つの通路として略円形(横型A本体34c側と横型B本体34f側にそれぞれ略半円形)に形成される。また、横型上部冷却回路19は、中心軸Oに対し、リム素材部キャビティ21aと同心円状に形成されている。前述したように、本断面におけるリム素材部キャビティ21aは、周方向に対して略一定の径方向の厚みd3である。このため、リム素材部キャビティ21aと横型中間冷却回路18との径方向の距離t17は、全周にわたって略一定となる。このように横型上部冷却回路19のとリム素材部キャビティ21aとの距離t17を略同一することで、周方向において一定の径方向の厚みd3を有するリム素材部キャビティ21aに充填された溶湯の冷却速度の均一化を図ることができ、周方向における組織のバラツキ(差異)の少ないリム素材部キャビティ21aを得ることができる。
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、各冷却回路が、直線を組み合わせた多角形状ではなく、リム部キャビティ21の外形に沿った略円形に形成されるため、リム部キャビティ21が同一の径方向厚みの部位に対して、リム部キャビティ21と冷却回路との径方向の距離を略一定にすることができる。このため、周方向の冷却条件を一定にすることができ、均一な品質を得ることができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、ホイール部材の形状は、図示した例には限られず、スポーク部82bの幅や本数などは適宜設定される。スポーク部82bの幅が一定である場合には、前述したリム部キャビティ21と横型下部冷却回路17の近接部位との距離t1〜t5は全て同一とすればよい。また、スポーク部82bの本数が変わる場合には、スポーク部82bの本数に応じて冷却経路を配置すればよい。
また、冷却回路は、横型下部冷却回路17、横型中間冷却回路18、横型上部冷却回路19の3段に形成したが、冷却回路の回路段数は、これに限られない。例えば、4段以上に冷却回路を配置しても、それぞれの段の冷却回路を含む各径方向断面において、近接部位に対応するキャビティの厚みに応じて、キャビティと冷却回路との距離を設定することで、指向性凝固を促進することができる。
また、横型下部冷却回路17において、各冷却経路の径を変えてもよい。冷却能力は、冷却水の流速によって変わるため、例えば、幅の広い交差部キャビティ21cに対応する冷却経路17b、17d、17fの径を相対的に小さくし、幅の狭い交差部キャビティ21dに対応する冷却経路17c、17eの径を相対的に大きくしてもよい。このようにすることで、冷却水の流速に応じて、冷却能力を部位によって変えることができる。
また、各実施形態における構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
以下、前述した第1の実施形態の金型10を使用して、ホイール部材80を作製した実施例を説明する。図17および図18は、図2および図3と同一の図面であり、ホイール部材80の各部の寸法位置を示す(ホイール部材80の各部名称は、図2および図3参照)。図17および図18の各部の寸法は以下の通りである。
D1(アウターフランジ81bの直径):550mm
D2(リム素材部81aの上端直径):530mm
D3(リム素材部81aの中間部直径):495mm
L1(中心軸方向全長):160mm
L2(アウターフランジ81b端面から交差部81cまでの中心軸方向長さ):15mm
L3(交差部81cの中心軸方向長さ):45mm
d1(交差部81c間のリム部厚さ):20mm
d2(交差部81cの最大厚さ):35mm
d3(リム素材部81aの上端の厚さ):30mm
d4(リム素材部81aの中間部の厚さ):25mm
w1(交差部81cに連結したスポーク部82bの幅):60mm
w1(交差部81dに連結したスポーク部82bの幅):45mm
上記形状のホイール部材80に対応したキャビティが象られた図1に示す金型10を準備した。金型10を構成する上型15、下型14および横型16の材料は、いずれもJIS SKD61相当材を使用し、作製した。なお、横型下部冷却回路17は、中心軸方向において、交差部キャビティ21cの最大肉厚部の外周に位置するよう配置した。また、横型上部冷却回路19および横型中間冷却回路18は、中心軸方向において、それぞれ、リム素材部キャビティ21aの上端および中間の外周に位置するよう配置した。
図4および図5に示すように、横型下部冷却回路17は、直径が14.5mmの直線状の孔を組合せて形成した。また、近接部位E、G、Iから、それぞれ対応する3つの交差部キャビティ21cまでの距離t1、t3、t5は20mmとし、近接部位F、Hから2つの交差部キャビティ21dまでの距離t2、t4は25mmとした。また、図5および6に示す、横型上部冷却回路19および横型中間冷却回路18も、横型下部冷却回路17と同様に、直径が14.5mmの直線状の孔を組合せて形成し、リム素材部キャビティ21aまでの距離t6およびt7は、各々、35mm、30mmとした。
図1に示すように、上型15、下型14および横型16を上型ベース12および下型ベース11とともに鋳造機に組み込みこんだ、そして、上型15、下型14および横型16を型合わせし、形成されたキャビティ20に、保持炉内に貯留されたアルミニウム合金溶湯をストークから湯口13を通じ注入した。アルミニウム合金溶湯としては、Si:7.0質量%、Mg:0.32質量%、Fe:0.1質量%、Ti:0.12質量%、残部アルミニウムおよび不可避不純物と、JIS AC4CH相当に調整された溶湯を使用した。
注入されたアルミニウム合金溶湯が、リム素材部キャビティ21aの上端部に到達したことを温度センサ(熱電対)で検出後、保持炉内の圧力を維持するとともに、横型上部冷却回路19、横型中間冷却回路18および横型下部冷却回路17に、冷却水を通水した。ここで、交差部キャビティに充填されたアルミニウム合金溶湯の冷却効率向上およびリム素材部キャビティに充填されたアルミニウム合金溶湯の下方に向かう指向性凝固を図るため、横型上部冷却回路19には10L/min、横型中間冷却回路18には10L/min、横型下部冷却回路17には7L/minで冷却水が流れるよう、各冷却回路の流量を調整した。上記の結果、キャビティ20に充填されたアルミニウム合金溶湯は注入開始後90秒で全て凝固し、鋳造サイクルの短時間化を図ることができた。一方で、本発明を適用せず上記と同一のホイール部材を製造した場合、キャビティ20に充填されたアルミニウム合金溶湯の凝固時間は、注入開始後90秒を超える時間を要した。
上記で得られたホイール部材80の交差部81cおよび81dの組織を確認した。図18に示すように、ホイール部材80の交差部81cおよび81dのうち5か所から測定片(TP1〜5)を採取し、組織の確認に供した。また、比較のため、交差部の間にある薄肉のリム部からも5か所測定片(TP6〜10)を採取し、組織の確認に供した。確認した項目は、初晶アルミニウムのデンドライト2次アームスペーシング(DASII)と透過X線検査である。
DASIIは、各測定片の任意の箇所について光学顕微鏡で100倍の倍率で組織写真を撮像し、各組織写真で任意に設定した75×56mmの測定範囲から測定した。また、透過X線検査はYXLON International社製MUJ−200−WA101により、管電圧40V、管電流5mAの条件で透過画像を取得し、引け巣の存在を確認した。交差部から採取した測定片TP1の組織写真の一例を図19に示す。
交差部から採取した5個の測定片(TP1〜TP5)のDASIIの平均値は60μmと、リム部から採取した5個の測定片(TP6〜TP10)のDASIIの平均値55μmと同程度と小さく、交差部キャビティ21c、21dに充填されたアルミニウム合金溶湯の冷却速度が速く、効率的に冷却されていることが判った。また、当該部位の透過X線検査の結果、交差部から採取した5個の測定片の欠陥分布はリム部から採取した5個の測定片と同等のASTM E155 ランク1以下であり、上記のように交差部キャビティが効率的に冷却された結果、引け巣も抑制されていることが判った。一方で、本発明を適用せず上記と同一のホイール部材を製造した場合、その交差部から採取した5個の測定片にはDASIIの平均値が60μmを超える測定片が含まれ、また、ASTM E155 ランク1を超える試験片も含まれていた。
10、10a、10b、10c………金型
11………下型ベース
12………上型ベース
13………湯口
14………下型
15………上型
16………横型
16a………横型A
16b………横型B
17………横型下部冷却回路
17a………冷却入口
17b………冷却経路
17c………冷却経路
17d………冷却経路
17e………冷却経路
17f………冷却経路
17g………冷却出口
17h………連結経路
18………横型中間冷却回路
18a………冷却入口
18b………冷却経路
18c………冷却経路
18d………冷却経路
18e………冷却経路
18f………冷却出口
19………横型上部冷却回路
19a………冷却入口
19b………冷却経路
19c………冷却経路
19d………冷却経路
19e………冷却経路
19f………冷却出口
20………キャビティ
21………リム部キャビティ
21a………リム素材部キャビティ
21b………アウターフランジキャビティ
21c、21d………交差部キャビティ
21e………交差部間リム部キャビティ
22………ディスク部キャビティ
22a………ハブ部キャビティ
22b………スポーク部キャビティ
30………横型
30a………横型A
30b………横型B
30c………上部横型A
30d………下部横型A
30e………上部横型B
30f………下部横型B
31………断熱層
32………穴埋め部
34………横型
34a………横型A
34b………横型B
34c………横型A本体
34d、34e………横型A回路部
34f………横型B本体
34g、34h………横型B回路部
80、90………ホイール部材
81………リム部
81a、91a………リム素材部
81b………アウターフランジ部
81c………交差部
82………ディスク部
82a………ハブ部
82b………スポーク部
82c………締結ボルト座面

Claims (4)

  1. 車軸が固定されるハブ部と、前記ハブ部の外周面から放射状に伸びる複数のスポーク部と、複数の前記スポーク部の一端が固定される略円筒形状のリム部とを有し、前記リム部は、前記スポーク部との交差部を複数備える車両用ホイール部材を鋳造するための金型であって、
    上型と、前記上型に相対するように配置される下型と、前記上型および下型の側方に配置される2以上に分割された横型と、を有し、
    前記上型、前記下型および前記横型が型合わせされることにより形成される前記リム部を象るキャビティのうち、少なくとも前記交差部を象るキャビティの外周に配置された冷却回路を前記横型の内部に有し、
    前記冷却回路は、前記交差部を象るキャビティとの近接部位を備え、
    前記リム部を象るキャビティの中心軸に直交する断面において、前記交差部を象るキャビティと前記冷却回路の近接部位とが最も近接した位置における前記交差部を象るキャビティと前記冷却回路の近接部位との径方向の距離をtaとし、前記リム部を象るキャビティのうち前記交差部を象るキャビティを除くキャビティと前記冷却回路の径方向の距離をtbとしたとき、ta<tbであることを特徴とする車両用ホイール部材用金型。
  2. 互いに周方向の幅wの異なる複数の前記スポーク部を象るキャビティが形成されており、前記交差部を象るキャビティの外周に前記冷却回路の近接部位が配置されており、
    幅wが略同一である前記スポーク部を象るキャビティの一端側に配置された前記交差部を象るキャビティまでの距離taは、互いに略同一であり、
    幅wが広い前記スポーク部を象るキャビティの一端側に配置された前記交差部を象るキャビティまでの距離taは、幅wが狭い前記スポーク部を象るキャビティの一端側に配置された前記交差部を象るキャビティまでの距離taに対して、小さく設定されることを特徴とする請求項1記載の車両用ホイール部材用金型。
  3. 前記リム部を象るキャビティの中心軸に直交するとともに前記交差部を象るキャビティを含む断面において、前記横型は、前記リム部を象るキャビティのうち前記交差部を象るキャビティを除く部分と前記冷却回路との間に、断熱層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ホイール部材用金型。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用ホイール部材用金型を用い、
    前記上型、前記下型および前記横型を型合わせして形成された前記リム部を象るキャビティに金属溶湯を注入し、
    前記冷却回路に冷却水を流して前記金属溶湯を凝固させることを特徴とする車両用ホイール部材の製造方法。
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