JP2019035734A - 蓄電デバイスの検査方法および製造方法 - Google Patents

蓄電デバイスの検査方法および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】蓄電デバイスの良否判定を迅速にかつ高精度に行うことができる,蓄電デバイスの検査方法および製造方法を提供すること。【解決手段】充電済みの蓄電デバイスに外部電源を逆電圧向きに接続して回路を形成するとともに,接続直後には電流が流れないように外部電源の電圧を調整する。その後に蓄電デバイスの電圧低下により回路に流れる電流の収束後の電流値を取得する電流測定工程(S4〜S8)と,収束後の電流値に基づく良否決定工程(S9)とを行う。ここで電流測定工程では,回路抵抗を実測する抵抗実測工程および実測した回路抵抗に基づいて電流の収束時期を予測する予測工程とを行う(S6)。回路抵抗と収束時間との関係はあらかじめ把握しておく。その後は蓄電デバイスと外部電源との接続を解除しないこととする。予測される収束時期が到来したときに電流値を取得する(S8)。【選択図】図7

Description

本発明は,蓄電デバイスの良否を判定する検査方法に関する。さらに詳細には,蓄電デバイスの電圧低下量でなく放電電流量に基づき,迅速に良否判定を行うことができる,蓄電デバイスの検査方法に関するものである。本発明はまた,その蓄電デバイスの検査方法を工程の一環として含む蓄電デバイスの製造方法をも対象とする。
従来から,二次電池その他の蓄電デバイスの良否を判定する検査方法が種々提案されている。例えば特許文献1では,判定対象とする二次電池を加圧状態で放置する放置工程を行うとともに,その放置工程の前後にて電池電圧を測定することとしている。放置工程の前後での電池電圧の差がすなわち放置に伴う電圧低下量である。電圧低下量が大きい電池は,自己放電量が多いということである。そのため,電圧低下量の大小により二次電池の良否を判定できる,というものである。こうした検査方法は,製造方法中の1工程として行われることもある。
特開2010−153275号公報
しかしながら前記した従来の二次電池の良否判定には,次のような問題点があった。良否判定に時間が掛かることである。良否判定に時間が掛かる理由は,放置工程の放置時間を長く取らないと,有意性があるといえるほどの電圧低下量にならないからである。その原因として,電圧測定時の回路抵抗のばらつきがある。このため,電圧低下量そのものがある程度大きくないと,回路抵抗のばらつきの影響を無視できないのである。また,厳密にいえば,回路抵抗には電圧測定時の接触抵抗が含まれる。電圧測定は,二次電池の両端子間に測定計器を接続することで測定される。その際不可避的に,二次電池側の端子と測定計器側の端子との間に接触抵抗が存在し,測定結果は接触抵抗の影響を受けたものとなる。そして接触抵抗は,二次電池側の端子と測定計器側の端子とを接続させる都度異なる。
さらに,電圧測定の精度自体もあまりよくない。電圧測定は,測定時の通電経路での電圧降下の影響をどうしても受けてしまうからである。そして,二次電池側の端子と測定計器側の端子との接触箇所が接続の都度多少異なるため,電圧降下の程度も測定時ごとにばらついてしまうためである。そこで,電圧測定に替えて電流測定を用いることで,自己放電量の測定時間を短縮し測定精度を上げることが考えられる。電流は回路内のどこでも一定であるため,電圧測定と異なり接触箇所の影響をほとんど受けないからである。しかしそれでも,単純に電圧測定を電流測定に置き替えるだけで良好な判定ができるという訳でもない。
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,蓄電デバイスの良否判定を迅速にかつ高精度に行うことができる,蓄電デバイスの検査方法および製造方法を提供することにある。
本発明の一態様における蓄電デバイスの検査方法は,充電済みの蓄電デバイスに外部電源を逆電圧向きに接続して回路を形成するとともに,接続直後には回路に電流が流れないように外部電源の電圧を調整して,その後に回路に流れる電流の収束後の電流値を取得する電流測定工程と,電流測定工程で取得した収束後の電流値に基づいて蓄電デバイスの良否を決定する良否決定工程とを行うことにより蓄電デバイスを検査する方法である。ここにおいて本方法ではさらに,回路の回路抵抗と,電流測定工程における電流の収束のための所要時間との関係をあらかじめ把握しておき,回路の回路抵抗を実測する抵抗実測工程と,実測した回路抵抗との関係とに基づいて電流の収束時期を予測する予測工程とを行い,電流測定工程では,予測される収束時期が到来したときに電流値を取得して,収束後の電流値とする。
上記態様における蓄電デバイスの検査方法では,蓄電デバイスの自己放電性についての良否検査を行う。そのため,充電済みの蓄電デバイスと外部電源とで回路を形成するとともに,回路に電流が流れないように外部電源の電圧を調整する。その後,蓄電デバイスの電圧が自己放電により低下するのに伴い,回路に電流が流れ,その電流は上昇していく。上昇が収束した後の電流値の大小が,自己放電性の多寡を表す指標である。このため,収束後の電流値に基づいて蓄電デバイスの良否を決定することができる。これにより,蓄電デバイスの電圧低下を測定することによる検査よりも,要処理時間と測定精度の点で有利である。
ここで本態様では,個々の蓄電デバイスごとに回路の電流の収束時期を予測し,予測される収束時期が到来したときの電流値を収束後の電流値とする。収束時期は回路の回路抵抗に左右され,回路抵抗は個々の回路ごとに異なるからである。そこで本形態では,回路抵抗を実測することで,あらかじめ把握しておいた回路抵抗と収束時間との関係に照らし,収束時期を予測する。これにより,早すぎるタイミングでの電流値による誤判定を防止する。また,電流測定工程が過度に長時間かかってしまうことも防ぐ。
上記態様の蓄電デバイスの検査方法ではさらに,抵抗実測工程を,蓄電デバイスと外部電源とを接続した後に行い,その後,回路における蓄電デバイスと外部電源との接続を解除しないで電流測定工程を行うことが望ましい。
この態様の蓄電デバイスの検査方法では,電流測定工程にて,抵抗実測工程と予測工程とを行い,その後は回路における蓄電デバイスと外部電源との接続を解除しない。回路抵抗が個々に異なる理由として,蓄電デバイスと外部電源との接続の接触抵抗が不可避的にばらつくことが挙げられる。この態様での抵抗実測工程は,接触抵抗を込めた状態で行われる。このため判定精度がより高い。
接触抵抗を込めて回路抵抗を実測する態様の蓄電デバイスの検査方法ではまた,抵抗実測工程では,外部電源と蓄電デバイスの第1端子とを並列な第1プローブおよび副第1プローブで接続したときにおける並列な第1プローブおよび副第1プローブで構成される第1閉回路の回路抵抗と,外部電源と蓄電デバイスの第2端子とを並列な第2プローブおよび副第2プローブで接続したときにおける並列な第2プローブおよび副第2プローブで構成される第2閉回路の回路抵抗とを取得し,取得した第1閉回路および第2閉回路の回路抵抗の合計の半分をもって回路の回路抵抗とすることが望ましい。このようにすることで回路抵抗を,蓄電デバイスと外部電源との間の接触抵抗を含めた形で適切に測定し,収束時期を高精度に予測することができる。
上記のいずれかの態様の蓄電デバイスの検査方法ではさらに,電流測定工程では,抵抗実測工程およびその後の予測工程を反復して行うことで,予測される収束時期を更新し,最新の予測される収束時期が到来したときに電流値を取得することが望ましい。収束時期は,回路抵抗の他に蓄電デバイスの温度等の他の要因の影響も受ける。このため,収束時期の予測を複数回行うことで,電流測定工程開始後の状況の変化による収束時期への影響にも対処できる。これにより判定精度がさらに向上する。
本発明の別の一態様における蓄電デバイスの製造方法は,組み立てた未充電の蓄電デバイスをあらかじめ定めた充電状態まで初充電して充電済みの蓄電デバイスとする初充電工程と,充電済みの蓄電デバイスを検査する検査工程とを行い,検査工程では,上記のいずれかの態様の蓄電デバイスの検査方法を行うことにより,蓄電デバイスを製造する。
本構成によれば,蓄電デバイスの良否判定を迅速にかつ高精度に行うことができる,蓄電デバイスの検査方法および製造方法が提供されている。
実施の形態における二次電池の検査方法を実施するために組んだ回路の構成を示す回路図である。 実施の形態における検査対象たる二次電池の例を示す外観図である。 実施の形態の検査における電圧及び電流の経時変化を示すグラフである。 実測される回路電流の経時変化の一例(低抵抗の場合)を示すグラフである。 実測される回路電流の経時変化の一例(高抵抗の場合)を示すグラフである。 回路抵抗と回路電流の収束のための所要時間との関係を示すグラフである。 実施の形態における二次電池の検査方法の手順を示すフローチャートである。 回路抵抗の実測の第1の変形例を示す回路図である。 回路抵抗の実測の第2の変形例を示す回路図である。 回路抵抗の実測の第3の変形例を示す回路図である。 回路抵抗の実測の第4の変形例を示す回路図である。
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態の蓄電デバイスの検査方法は,図1に示すように,検査対象とする蓄電デバイスである二次電池1に,計測装置2を接続して回路3を組んだ状態で実施される。まず,計測装置2による二次電池1の検査方法の基本原理を説明する。
[基本原理]
二次電池1は,図1中では模式的に示しているが実際には,例えば図2に示すような扁平角型の外観を有するものである。図2の二次電池1は,外装体10に電極積層体20を内蔵してなるものである。電極積層体20は,正極板と負極板とをセパレータを介して積層したものである。外装体10の内部には電極積層体20の他に電解液も収容されている。また,二次電池1の外面上には,正負の端子50,60が設けられている。なお二次電池1は,図2のような扁平角型のものに限らず,円筒型等他の形状のものでも構わない。
図1についてさらに説明する。図1中では,二次電池1を模式的に示している。図1中の二次電池1は,起電要素Eと,内部抵抗Rsと,短絡抵抗Rpとにより構成されるモデルとして表されている。内部抵抗Rsは,起電要素Eに直列に配置された形となっている。短絡抵抗Rpは,電極積層体20中に侵入していることがある微小金属異物による導電経路をモデル化したものであり,起電要素Eに並列に配置された形となっている。
また,計測装置2は,直流電源4と,電流計5と,電圧計6と,プローブ7,8とを有している。直流電源4に対して,電流計5は直列に配置され,電圧計6は並列に配置されている。直流電源4の出力電圧VSは可変である。直流電源4は,二次電池1に後述するように出力電圧VSを印加するために使用される。電流計5は,回路3に流れる電流を計測するものである。電圧計6は,プローブ7,8間の電圧を計測するものである。図1では,計測装置2のプローブ7,8を二次電池1の端子50,60に結合させて回路3を構成させている。
また,本形態における回路3では,計測装置2におけるプローブ7およびプローブ8に対してそれぞれ並列に,副プローブ17,18を設けている。計測装置2から副プローブ17,18に至る導線上には,抵抗計13,14およびスイッチ22,23が設けられている。図1では抵抗計13,14を計測装置2の外側に描いているが,計測装置2中に抵抗計13,14を内蔵していてもよい。ここで図1では,計測装置2からプローブ7,8,副プローブ17,18へのそれぞれの導線抵抗をRx1〜4で示している。さらに,プローブ7,8,副プローブ17,18と端子50,60との間の接触抵抗をRy1〜4で示している。ここで本形態における回路3では,次の2式が成り立つようにされている。
Rx1 = Rx2
Rx3 = Rx4
また,プローブ7と副プローブ17とは,接触抵抗Ry1,Ry2がだいたい同じになるようにされている。同様にプローブ8と副プローブ18とも,接触抵抗Ry3,Ry4がだいたい同じになるようにされている。また,スイッチ22,23のオン状態での接点抵抗は,接触抵抗Ry1〜4と比べて無視できるほど小さいものとする。
計測装置2による検査方法では,二次電池1の自己放電量の多寡を検査する。自己放電量が多ければ不良であり少なければ良である。そのためまず,二次電池1を,回路3に繋ぐ前に充電する。そして充電後の二次電池1を回路3に繋ぎ,その状態で計測装置2により二次電池1の自己放電量を算出する。そしてその算出結果に基づいて二次電池1の良否を判定するのである。
具体的には,充電後の二次電池1を回路3に繋ぐ。このとき,回路3に繋ぐ充電後の二次電池1は,充電後に通常行われる高温エージングまで終了して電池電圧が安定化した後のものとする。ただし,本形態の検査そのものは常温で行う。二次電池1を回路3に繋いだら,まずは計測装置2の出力電圧VSを調節して,電流計5の読み値がゼロとなるようにする。このときの出力電圧VSは,二次電池1の電池電圧VBの初期値である初期電池電圧VB1と一致している。
この状態では,出力電圧VSが初期電池電圧VB1に一致しているとともに,出力電圧VSと二次電池1の電池電圧VBとが逆向きになっている。このため両電圧が打ち消し合い,回路3の回路電流IBはゼロとなる。そしてそのまま,計測装置2の出力電圧VSを,初期電池電圧VB1で一定に維持したまま放置する。
その後の回路3の状況を図3に示す。図3では,横軸を時間とし,縦軸を電圧(左側)および電流(右側)としている。横軸の時間について,図3中の左端である時刻T1が,上記により初期電池電圧VB1に等しい出力電圧VSの印加を開始したタイミングである。時刻T1の後,二次電池1の自己放電により,電池電圧VBは初期電池電圧VB1から徐々に低下していく。そのため,出力電圧VSと電池電圧VBとの均衡が崩れて,回路3に回路電流IBが流れることとなる。回路電流IBは,ゼロから徐々に上昇して行く。回路電流IBは,電流計5により直接に測定される。そして,時刻T1より後の時刻T2に至ると,電池電圧VBの低下も回路電流IBの上昇も飽和して,以後,電池電圧VB,回路電流IBとも一定(VB2,IBs)となる。
なお図3から明らかなように,不良品の二次電池1では良品の二次電池1と比較して,回路電流IBの上昇,電池電圧VBの低下とも急峻である。そのため,不良品の二次電池1の場合の収束後の回路電流IBsは,良品の二次電池1の場合の収束後の回路電流IBsより大きい。また,不良品の二次電池1の収束後の電池電圧VB2は,良品の二次電池1の収束後の電池電圧VB2より低い。
時刻T1後の回路3の状況が図3のようになる理由を説明する。まず,電池電圧VBが低下する理由は前述の通り二次電池1の自己放電である。自己放電により,二次電池1の起電要素Eには自己放電電流IDが流れていることになる。自己放電電流IDは,二次電池1の自己放電量が多ければ大きく,自己放電量が少なければ小さい。前述の短絡抵抗Rpの値が小さい二次電池1では,自己放電電流IDが大きい傾向がある。
一方,時刻T1の後に電池電圧VBの低下により流れる回路電流IBは,二次電池1を充電する向きの電流である。つまり回路電流IBは,二次電池1の自己放電を抑制する方向に作用し,二次電池1の内部では自己放電電流IDと逆向きである。そして,回路電流IBが上昇して自己放電電流IDと同じ大きさになると,実質的に,自己放電が停止する。これが時刻T2である。よってそれ以後は,電池電圧VBも回路電流IBも一定(VB2,IBs)となるのである。なお,回路電流IBが収束したか否かについては,既知の手法で判定すればよい。例えば,回路電流IBの値を適当な頻度でサンプリングして,値の変化があらかじめ定めた基準より小さくなったときに収束したと判定すればよい。
ここで前述のように回路電流IBは,電流計5の読み値として直接に把握することができる。そこで,収束後の回路電流IBsに対して基準値IKを設定しておくことで,二次電池1の良否判定ができることになる。収束後の回路電流IBsが基準値IKより大きかった場合にはその二次電池1は自己放電量の多い不良品であり,回路電流IBsが基準値IKより小さかった場合にはその二次電池1は自己放電量の少ない良品である,ということである。
このような判定方法での要処理時間(時刻T1→時刻T2)は,背景技術欄で述べた手法での放置時間より短い。また,図3中では出力電圧VSを初期電池電圧VB1のまま一定としているが,時刻T1後に出力電圧VSを初期電池電圧VB1から徐々に上昇させていくことで要処理時間をさらに短縮することもできる。なお,図3中における収束後の電池電圧VB2による良否判定はあまりよい手段ではない。電池電圧VBは,必ずしも電圧計6の読み値として正確に現れるものではないからである。以上が,計測装置2による二次電池1の検査方法の基本原理である。
[本形態としての特徴点]
ここまでの説明ではあたかも時刻T2が既知であるかのように述べたが,実際には,二次電池1の仕様が同一であっても時刻T2は個々にばらつくものである。本発明者らの研究により,ばらつきの主たる要因は,図1のように組んだ回路3の回路抵抗にあることが分かった。ここでいう回路抵抗は,回路3を構成する計測装置2側の抵抗のことである。計測装置2側の抵抗とは,前述の導線抵抗Rx1,4および接触抵抗Ry1,4のことである。つまり,回路抵抗をRcで表せば,次式で与えられることとなる。
Rc = Rx1+Ry1+Rx4+Ry4
ここで問題となるのが,回路抵抗に前述のようにプローブ7,8の接触抵抗Ry1,4が含まれることである。接触抵抗Ry1,4は,プローブ7,8と端子50,60とを接続する都度異なる。また,図1のような回路3を多数組構成すれば接触抵抗Ry1,4は個々に異なる値となる。このため回路抵抗Rcがばらつき,時刻T2がばらつくのである。具体的には,回路抵抗Rcが小さい場合(図4)よりも大きい場合(図5)の方が,回路電流IBの収束のための所要時間(時刻T2−時刻T1)が長い。高抵抗時には接触抵抗による電圧降下が大きい分,直流電源4の出力電圧VSのうち起電要素Eの充電に有効に寄与する成分が少ないためである。
そこで本形態では,個々の回路3ごとに回路抵抗Rcを実測する。そして,回路抵抗Rcの実測値に基づいて時刻T2を予測する。この回路抵抗Rcの実測のために図1中の副プローブ17,18を使用する。すなわち本形態では,端子50に対してプローブ7,副プローブ17の両方を当てる。同様に端子60に対してプローブ8,副プローブ18の両方を当てる。ここで前述のように接触抵抗を揃えるため,プローブ7,副プローブ17の端子50への押し当て力を等しくする。プローブ8,副プローブ18の端子60への押し当て力も同様である。なお,スイッチ22,23は,特に必要がある場合以外はオフとする。
図1の回路3における回路抵抗Rcの実測は,次のようにして行う。回路抵抗Rcの実測を行うときには,スイッチ22,23をオンして,抵抗計13,14により抵抗測定を行う。このようにして抵抗測定を行っているとき,抵抗計13の測定対象は,導線抵抗Rx1,Rx2,接触抵抗Ry1,Ry2のみにより構成される閉回路である。同様に抵抗計14の測定対象は,導線抵抗Rx3,Rx4,接触抵抗Ry3,Ry4のみにより構成される閉回路である。
ここで導線抵抗Rx1〜4および接触抵抗Ry1〜4の前述の関係より,次の関係が成り立つ。つまり,同一の端子に接触する2つのプローブにおける導線抵抗と接触抵抗の合計は互いに等しいということである。
Rx1+Ry1 = Rx2+Ry2
Rx3+Ry3 = Rx4+Ry4
これより,プローブ7についての導線抵抗と接触抵抗の合計(Rx4+Ry4)は,抵抗計14の測定値の半分として求められる。同様にプローブ8についての導線抵抗と接触抵抗の合計(Rx1+Ry1)は,抵抗計13の測定値の半分として求められる。これにより前述の回路抵抗Rcは,抵抗計13,14の測定値の合計の半分として算出されることとなる。なお,導線抵抗Rx1,Rx2,接触抵抗Ry1,Ry2の個々を個別に算出することは不要である。
なお,上記のようにして回路抵抗Rcを実測したら,以後は図3の電流測定が完了するまで,プローブ7,8,副プローブ17,18と端子50,60との接続状態を変更しないこととする。一旦接続を解除してから繋ぎ直すようなことをすると,接触抵抗が変化してしまい,回路抵抗Rcを実測した意味がなくなってしまうからである。また,スイッチ22,23をオフに戻す。
本形態の検査方法ではまた,回路抵抗Rcと回路電流IBの収束のための所要時間T(時刻T2−時刻T1)との関係をあらかじめ把握しておく。前述のように両者間には,正の相関性がある(図4,図5)。このため図6のような右上がりのグラフとして表すことができる。同一の仕様でかつ良品である多くの二次電池1を用いて試験することにより,図6のグラフを作成することができる。図6のグラフがあらかじめ作成されていれば,実測した回路抵抗Rcをグラフに当てはめることで,その二次電池1についての所要時間Tを求めることができる。これにより,時刻T2を予測することができる。
このように時刻T2をその到来前に予測できることで,次のような利点がある。すなわち,適切な時期に取得した回路電流IBを,収束後の回路電流IBsと見なすことができる。もし,時刻T2が到来していないうちに取得した回路電流IBを,収束後の回路電流IBsと見なすと,それは真の収束後の回路電流IBsより小さい値である。このような回路電流値で二次電池1の良否判定を行うと,不良品とすべきものを良品と誤判定してしまうおそれがある。一方,時刻T2が到来してから相当の時間が経過した後で回路電流IBsを取得すると,誤判定の原因にはならないものの,良否判定のために必要以上に時間を費やしたことになってしまう。これでは生産効率が上がらない。本形態では,適切に時刻T2を予測することで,これらの弊害を排除している。
なお,時刻T2の予測を,1回だけでなく複数回行うこととしてもよい。その理由は,回路抵抗Rcが変動することがある,ということである。回路抵抗Rcが大幅に変動するようなことはまずないが,変動の原因としては温度の変動が挙げられる。二次電池1の温度が変動すると内部抵抗Rsも変動し,そのために回路抵抗Rcが変動するのである。したがって,時刻T2の予測を適宜のタイミングで再度行い,予測値を上書きすることが望ましい。また,プローブ7,8と端子50,60との接続が意図せず外れてしまい再接続を余儀なくされた場合にも,時刻T2を予測し直すことが好ましい。接触抵抗が変化してその分回路抵抗Rcが変化したはずだからである。
例えば,時刻T2の予測を行う時間間隔をあらかじめ適当な一定値(例,30分等)に定めておく,という手法がある。あるいは,時刻T2の予測を行ったときに,次回の予測タイミングを設定することとしてもよい。その場合には例えば,予測実行時から時刻T2までの残余時間のうち所定の割合の時間が経過したときに時刻T2の再予測を行う,という手法が考えられる。すなわち,上記の「所定の割合」を50%〜80%程度の範囲内の適当な値に設定しておくことで,予測実行時に次回の予測タイミングの設定も合わせて行うことができる。ただ,このような手法を採ると,時刻T2までの残余時間が短くなるほど,予測の実行頻度が上昇することになる。このため,次回の予測タイミングまでの間隔に最低時間を設定したり,あるいは予測の実行回数に上限を設ける等の対策をするのがよい。
また,2回目もしくはそれ以降の予測を行った時における時刻T2の更新については,新たに予測した時刻T2そのものでの上書き以外の手法もある。例えば,新たに予測した時刻T2とそれまでの時刻T2との代表値(平均等)を算出し,その代表値で上書きする,という手法が考えられる。また,初回の予測をいつ行うかについては,あらかじめそのタイミングを定めておけばよい。
一方,二次電池1の温度を一定とすることで回路抵抗Rcの変動を抑制してもよい。例えば,図1の回路3の全体を恒温室内に置き,二次電池1の温度が一定となってから,回路抵抗Rcの実測およびその後の回路電流IBの取得を行うのである。このようにすることで,時刻T2の予測の回数を1回だけとすることができる。なお,恒温室内で測定を行い,かつ時刻T2の予測を複数回行うことを排除するものではない。
[検査の流れ]
上記の方法による良否検査の流れを,図7により説明する。まず,対象とされる二次電池1の充電を行う(S1)。この充電は,個々の二次電池1の電池電圧VBが狙いの値となるように行えばよい。その後,高温エージングを行う(S2)。ただし高温エージングは,通常行っている処理ではあるが,必須な訳ではない。続いて,図1に示したような回路3を組む(S3)。このときにプローブ7,8と端子50,60とが接続される。そして,図3の電流測定を開始する(S4)。
そして,設定されている予測タイミングになったら(S5:Yes),時刻T2の予測を上記のように実行する(S6)。これにより,時刻T2が設定される。また,時刻T2の予測を複数回行う設定になっている場合には,次回の予測タイミングもこのときに設定する。なお,図7においては,初回の予測タイミングが電流測定の開始後(例えば10分後)に設定されているものとしている。ただしこれ以外に,回路3の構成(S3)後電流測定開始(S4)前に初回の予測を行うように設定されていてもよい。設定されている時刻T2が到来する前に再び予測タイミングになったら(S7:No→S5:Yes),再び時刻T2の予測を実行する(S6)。
設定されている時刻T2が到来したら(S7:Yes),その時点での回路電流IBを取得する(S8)。取得した回路電流IBを,収束後の回路電流IBsとする。そして,この回路電流IBsにより,二次電池1の良否判定を行う(S9)。以上が図7の手順による検査の流れである。
[抵抗測定についての変形形態]
ここで,回路抵抗Rcの実測方法の変形例を説明する。以下に説明する各変形例では,図1の回路図に示した構成のうち,スイッチ22,23および副プローブ17,18は使用しない。よって,導線抵抗をRx2,Rx3,接触抵抗Ry2,Ry3については考慮しない。
第1の変形例を図8に示す。図8の変形例は,プローブ7,8間に抵抗計19を繋ぐことで回路抵抗Rcを測定する,というものである。この変形例による回路抵抗Rcの測定は,プローブ7,8を二次電池1に繋ぐ前に行う。この測定の際には直流電源4の出力電圧VSをオフとする。この変形例では,図1中の抵抗計13,14および副プローブ17,18は使用しない。
第2の変形例を図9に示す。図9の変形例は,プローブ7,8間を短絡して回路抵抗Rcを測定する,というものである。この変形例でも,回路抵抗Rcの測定は,プローブ7,8を二次電池1に繋ぐ前に行う。この測定の際には直流電源4の出力電圧VSをごく低い値とし,回路3に微弱な回路電流IBを流す。出力電圧VSと回路電流IBとの比により回路抵抗Rcを算出する。この変形例でも,抵抗計13,14および副プローブ17,18は使用しない。
第3の変形例を図10に示す。図10の変形例は,抵抗計13,14を用いて,プローブ7,8側のそれぞれの回路抵抗(Rx1+Ry1,Rx4+Ry4)を直接測定する,というものである。この変形例では,プローブ7,8,副プローブ17,18をいずれも二次電池1に繋いで回路抵抗Rcを測定する。抵抗計13,14の読み値の合計が回路抵抗Rcとなる。自己放電量の検査としての回路電流IBの測定は,回路抵抗Rcの測定後に副プローブ17,18を端子50,60から外して(もしくはスイッチ22,23をオフして)行う。
第4の変形例を図11に示す。図11の変形例は,図10における抵抗計13,14を外部電源24,25で置き替えたものである。外部電源24,25はそれぞれ,ごく低い電圧を印加する機能と,その時に流れる微弱電流を測定する機能とを有するものである。印加電圧と微弱電流との比を求めることにより,抵抗計13,14の代わりとするのである。この変形例でも,プローブ7,8,副プローブ17,18をいずれも二次電池1に繋いで回路抵抗Rcを測定する。その後に副プローブ17,18を端子50,60から外して(もしくはスイッチ22,23をオフして),回路電流IBの測定を行う。
上記の4つの変形例のうち図8,図9のものでは,プローブ7,8の接触抵抗Ry1,Ry4を考慮していない。この点で図1のものに比べると精度面ではやや不利である。しかしそれでも,回路抵抗Rcの測定をしないよりはした方がよい。また,プローブ7,8の端子50,60への押圧力を毎回一定にする等で,接触抵抗Ry1,Ry4のばらつきをある程度抑制することは可能である。
図10,図11の変形例では,回路抵抗Rcの測定時に実際には副プローブ17,18側の導線抵抗Rx2,Rx3,接触抵抗Ry2,Ry3の影響を受ける。したがって,やはりその分図1のものよりは精度面ではやや不利である。ただし,前述のようにプローブ7,8側と副プローブ17,18側とで抵抗値が同じと見なせるようにしておいて,測定値の半分を回路抵抗Rcとする手法をとることが可能である。
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,二次電池1に対して外部電圧を逆向きに掛ける形で計測装置2を接続し,その状態での回路電流IBsの収束値に基づき良否判定を行う。これにより,電池電圧VBの低下量で判定する場合と比較して,所要時間の短縮および判定精度の向上を図っている。そして本形態ではさらに,個々の二次電池1ごとに,回路電流IBの測定のために組んだ回路3の回路抵抗Rcを実測することとしている。そしてこの実測値に基づいて,回路電流IBが収束する時刻T2を予測することとしている。これにより,適切なタイミングで収束後の回路電流IBsを取得することで,二次電池1の良否判定を迅速にかつ高精度に行うことができる,二次電池の検査方法が実現されている。
また,新たに組み立てた未充電の二次電池1をあらかじめ定めた充電状態まで初充電して充電済みの二次電池1とし,充電済みとなった二次電池1を上記の検査方法で行うことで,本形態の二次電池の検査方法の特徴を有する二次電池の製造方法が実現される。二次電池1の組立は,外装体10(図2参照)に電極積層体20を収納し,さらに電解液を外装体10に注入して密閉することである。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,前記形態では,対象の二次電池1の加圧については別段言及しなかったが,高温エージング時や電流測定時に,二次電池1をその厚み方向に加圧することとしてもよい。さらには,多数の二次電池1を厚み方向に重ねた配置として同時に拘束治具で拘束して加圧することとしてもよい。また,前記形態では,回路抵抗Rcの実測を,計測装置2に内蔵されている電圧計6の読み値により行っている。しかしそれに限らず,計測装置2とは別の電圧計を用いて回路抵抗Rcを実測するようにしてもよい。
また,高温エージング時や電流測定時に,二次電池1またはその拘束体を検査棚上に積載することとしてもよい。これにより,同じ検査棚上の二次電池1は同じ温度履歴を経るものと見なせるからである。また,取得した収束後の回路電流IBsの良否判定については,基準値IKとの単純な比較でなくてもよい。また,本形態の検査方法は,新品として製造された直後の二次電池に限らず,例えば使用済み組電池のリマン処理のため等,中古品の二次電池を対象として行うこともできる。また,判定対象とする蓄電デバイスは,二次電池に限らず,電気二重層キャパシタ,リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタであってもよい。
1 二次電池 6 電圧計
2 計測装置 7 プローブ
3 回路 8 プローブ
4 直流電源 17 副プローブ
5 電流計 18 副プローブ

Claims (6)

  1. 充電済みの蓄電デバイスに外部電源を逆電圧向きに接続して回路を形成するとともに,接続直後には前記回路に電流が流れないように前記外部電源の電圧を調整して,その後に前記回路に流れる電流の収束後の電流値を取得する電流測定工程と,
    前記電流測定工程で取得した収束後の電流値に基づいて蓄電デバイスの良否を決定する良否決定工程とを行うことによる蓄電デバイスの検査方法であって,
    前記回路の回路抵抗と,前記電流測定工程における電流の収束のための所要時間との関係をあらかじめ把握しておき,
    前記回路の回路抵抗を実測する抵抗実測工程と,
    実測した回路抵抗と前記関係とに基づいて電流の収束時期を予測する予測工程とを行い,
    前記電流測定工程では,予測される収束時期が到来したときに電流値を取得して,収束後の電流値とすることを特徴とする蓄電デバイスの検査方法。
  2. 請求項1に記載の蓄電デバイスの検査方法であって,
    前記抵抗実測工程を,蓄電デバイスと外部電源とを接続した後に行い,
    その後,前記回路における蓄電デバイスと外部電源との接続を解除しないで前記電流測定工程を行うことを特徴とする蓄電デバイスの検査方法。
  3. 充電済みの蓄電デバイスに外部電源を逆電圧向きに接続して回路を形成するとともに,接続直後には前記回路に電流が流れないように前記外部電源の電圧を調整して,その後に前記回路に流れる電流の収束後の電流値を取得する電流測定工程と,
    前記電流測定工程で取得した収束後の電流値に基づいて蓄電デバイスの良否を決定する良否決定工程とを行うことによる蓄電デバイスの検査方法であって,
    前記回路の回路抵抗と,前記電流測定工程における電流の収束のための所要時間との関係をあらかじめ把握しておき,
    前記電流測定工程では,
    前記回路の回路抵抗を実測する抵抗実測工程と,
    実測した回路抵抗と前記関係とに基づいて電流の収束時期を予測する予測工程とを行い,
    その後は前記回路における蓄電デバイスと外部電源との接続を解除しないこととし, 予測される収束時期が到来したときに電流値を取得して,収束後の電流値とすることを特徴とする蓄電デバイスの検査方法。
  4. 請求項2または請求項3に記載の蓄電デバイスの検査方法であって,
    前記抵抗実測工程では,
    前記外部電源と前記蓄電デバイスの第1端子とを並列な第1プローブおよび副第1プローブで接続したときにおける前記並列な第1プローブおよび副第1プローブで構成される第1閉回路の回路抵抗と,
    前記外部電源と前記蓄電デバイスの第2端子とを並列な第2プローブおよび副第2プローブで接続したときにおける前記並列な第2プローブおよび副第2プローブで構成される第2閉回路の回路抵抗とを取得し,
    取得した前記第1閉回路および前記第2閉回路の回路抵抗の合計の半分をもって前記回路の回路抵抗とすることを特徴とする蓄電デバイスの検査方法。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の蓄電デバイスの検査方法であって,
    前記電流測定工程では,
    前記抵抗実測工程およびその後の前記予測工程を反復して行うことで,予測される収束時期を更新し,
    最新の予測される収束時期が到来したときに電流値を取得することを特徴とする蓄電デバイスの検査方法。
  6. 組み立てた未充電の蓄電デバイスをあらかじめ定めた充電状態まで初充電して充電済みの蓄電デバイスとする初充電工程と,
    前記充電済みの蓄電デバイスを検査する検査工程とを行い,
    前記検査工程では,請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の蓄電デバイスの検査方法を行うことを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。
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