図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分には同一の参照符号を付与する。
(第1実施形態)
先ず、図1に基づき、本実施形態のモータ装置が適用されたバルブタイミング調整装置の概略構成について説明する。
図1に示すバルブタイミング調整装置10は、車両において内燃機関の図示しないクランク軸からカム軸12へクランクトルクを伝達する伝達系に設けられる。カム軸12は、内燃機関の動弁、たとえば図示しない吸気弁をクランクトルクの伝達により開閉する。バルブタイミング調整装置10は、後述するモータ20により、吸気弁のバルブタイミングを制御する。
バルブタイミング調整装置10は、位相調整機構14及びモータ装置16を備えている。位相調整機構14は、カム軸12に連結されている。図1では位相調整機構14を簡略化して図示している。
後述する駆動装置70は、クランク角センサ及びカム角センサからの検出信号に基づいて回転位相を算出し、算出結果に応じてモータ20への通電を制御する。その結果、位相調整機構14がモータ20の回転に応じて回転位相を調整し、バルブタイミングを制御する。
次に、図1〜図5に基づき、モータ装置16の概略構成について説明する。
図1に示すように、モータ装置16は、モータ20及び駆動装置70を備えている。モータ装置16は、駆動装置70(EDU:Electronic Driver Unit)が内蔵された回転電機と称することもできる。
モータ20は、ブラシレスの永久磁石型同期モータである。モータ20は、図1及び図2に示すように、ハウジング22、ベース24、軸受26,28、モータ軸30、ステータ32、ロータ34、及びセンサマグネット36を有している。
ハウジング22は、鉄系などの金属材料を用いて、有底の略円筒状に形成されている。ハウジング22は、金属板をプレス加工することで形成されている。ベース24は、アルミニウム系材料を用いて、略円板状に形成されている。ベース24は、ハウジング22の開口を塞ぐように設けられている。ベース24は、アルミダイカストにより成形されている。
ハウジング22及びベース24を組み付けてなる収容空間Smには、モータ20を構成する他の要素26,28,30,32,34,36が配置されている。このように、ハウジング22及びベース24は、モータ20の筐体をなしている。ハウジング22及びベース24は、内燃機関においてチェーンケースなどの固定節に取り付けられる。ベース24は、後述するように、駆動装置70の筐体も構成している。
詳しくは、ハウジング22が、図1に示すように小径部220、大径部221、及びフランジ部222を有している。小径部220は、モータ軸30の軸方向(以下、単に軸方向と示す)において、位相調整機構14側に設けられている。軸方向は、ベース24の板厚方向と一致している。大径部221は、駆動装置70側に設けられ、小径部220よりも大きい径を有している。フランジ部222は、大径部221における駆動装置70側の端部に連なり、モータ軸30を中心とする径方向において外側に延設されている。モータ軸30の軸の中心が、モータの回転軸に相当する。
ハウジング22は、ベース24の一面2400側に配置されている。フランジ部222は、ベース24の外周縁部2401において、一面2400に載置されている。ベース24の外周縁部2401は、ベース24において収容空間Smを規定する部分よりも、径方向外側の部分である。外周縁部2401とフランジ部222との間には、収容空間Sm及び後述する収容空間Seを水密に封止するために、シール材38が配置されている。シール材38としては、たとえばシリコーンを主成分とする接着材を用いることができる。
フランジ部222におけるベース24側の面は、平坦面となっている。図2及び図3に示すように、フランジ部222の外周端には、取り付け部223が設けられている。取り付け部223は、シール材38が配置される部分よりも径方向外側に設けられている。取り付け部223には、バルブタイミング調整装置10を内燃機関の固定節にねじ締結するための貫通孔224が形成されている。ハウジング22は、貫通孔224を備えた取り付け部223を3つ有している。
ベースの外周縁部2401には、取り付け部2402が設けられている。取り付け部2402は、外周縁部2401において、シール材38が配置される部分よりも径方向外側に設けられている。取り付け部2402は、後述する位置決めがされた状態で、軸方向からの投影視においてハウジング22の取り付け部223と重なるように設けられている。取り付け部2402には、内燃機関の固定節にねじ締結するために貫通孔2403が形成されている。貫通孔2403は、ハウジング22の貫通孔224に対応して形成されている。
ベース24の一面2400においてシール材38が配置されるシール面2404は、外周縁部2401のうち、フランジ部222との対向部分に設けられている。シール面2404は、収容空間Smを取り囲むように、モータ軸30を中心とする周方向に延設されて環状に設けられている。シール面2404は、取り付け部2402よりも径方向内側に設けられている。
ベース24の一面2400において、外周縁部2401の内周端には、第1凸部2405が設けられている。第1凸部2405は、シール面2404に対して突出している。第1凸部2405は、周方向に沿って延設されている。第1凸部2405は、収容空間Smを取り囲むように設けられている。第1凸部2405は、シール面2404の内周端に隣接している。第1凸部2405の突出先端面は、平坦面となっている。第1凸部2405の突出先端面は、取り付け部2402のハウジング22側の面の一部と、同じ平面に位置している。
ベース24の一面2400には、シール面2404の外周端に隣接して第2凸部2406が設けられている。第2凸部2406も、シール面2404に対して突出している。第2凸部2406も、収容空間Smを取り囲むように設けられている。第2凸部2406の突出先端面も、平坦面となっている。第2凸部2406の突出先端面は、取り付け部2402のハウジング22側の面の一部、及び、第1凸部2405の突出先端面と、同じ平面に位置している。
そして、第1凸部2405の突出先端面、第2凸部2406の突出先端面、及び取り付け部2402のそれぞれが、フランジ部222におけるベース24側の平坦面に接触している。ハウジング22及びベース24はともに金属材料を用いて形成されており、第1凸部2405の突出先端面、第2凸部2406の突出先端面、及び取り付け部2402の接触面は、ハウジング22とのメタルタッチ面となっている。
軸受26,28は、それぞれモータ軸30を正逆回転回能に支持している。軸方向において、位相調整機構14側の軸受26の外輪は、ハウジング22の小径部220の内面に固定され、内輪はモータ軸30に固定されている。軸受26は、ほぼ全体が軸方向において小径部220内に配置されている。
ベース24は、図1及び図3に示すように、一面2400側に第1凹部2407を有している。第1凹部2407は、軸受28及びモータ軸30に対応して設けられている。第1凹部2407は、略円板状をなすベース24の中心付近に設けられている。軸受28及びモータ軸30の一端は、第1凹部2407に収容されている。詳しくは、第1凹部2407の内周面に軸受28の外輪が固定され、軸受28の内輪はモータ軸30に固定されている。軸受28により、モータ軸30の一端がベース24に接触しないように保持されている。モータ軸30を支持する軸受26,28のうち、軸受26がハウジング22に固定され、軸受28がベース24に固定されている。
ハウジング22における底部の中心付近には、開口部225が形成されている。モータ軸30は、開口部225を介してハウジング22の外部に突出し、位相調整機構14に連結されている。モータ軸30は、シャフトとも称される。モータ軸30の位相調整機構14側の端部には、貫通孔が形成されている。図1及び図2に示すように、この貫通孔にピン40を挿通させることで、位相調整機構14に連結するためのジョイント42が、モータ軸30に固定されている。
また、ハウジング22における開口部225の周縁内面とモータ軸30との間には、環状のシール材44が介在している。シール材44としては、たとえばオイルシールが用いられる。シール材44は、軸受26よりも位相調整機構14側に設けられている。
ステータ32は、ハウジング22に保持されている。ステータ32は、ハウジング22の大径部221に圧入固定されている。ステータ32は、円筒状に形成され、複数のティース部を有するステータコア46、及び、各ティース部に樹脂ボビン48を介して巻回された巻線50を、それぞれ複数ずつ有している。
各ステータコア46は、金属片を積層して形成され、モータ軸30の回転方向である周方向に沿って等間隔に配置されている。各巻線50は、それぞれ対応するステータコア46に個別に巻回されている。すなわち、各巻線50も、周方向に沿って等間隔に配置されている。モータ20のU,V,Wの各相に対応する巻線50は、中性点を形成するためのターミナル52を介して互いに接続されている。ステータ32は、後述するコンタクト86を介して巻線50に駆動電流が供給されることで、ロータ34の後述する永久磁石56に作用する回転磁界を発生する。
ベース24は、図3に示すように、複数の第2凹部2408及び複数の補強部2409を有している。第2凹部2408は、一面2400において、外周縁部2401のシール面2404に対して凹んで設けられている。第2凹部2408は、ステータ32の各巻線50に対応して設けられている。第2凹部2408には、対応する巻線50が接触しないように収容されている。
補強部2409は、周方向において隣り合う第2凹部2408の間に設けられている。すなわち、周方向において、第2凹部2408と補強部2409が交互に設けられている。一面2400において、補強部2409は、第2凹部2408の底面よりも浅い位置であって、シール面2404に対して若干凹んだ位置とされている。
ベース24は、図1及び図3に示すように、一面2400から一面2400と反対の裏面2410にわたって貫通する貫通孔2411,2412を有している。貫通孔2411は、モータ20の中性点、すなわちターミナル52と各相の巻線50との接続部が、一面2400側から裏面2410側に突出するように設けられている。貫通孔2412は、後述するコンタクト86の端子860が、各相の巻線50の接続部と溶接などによって電気的に接続されるように設けられている。
ロータ34は、円筒状をなすステータ32の内側に、回転可能に収容されている。ロータ34は、モータ軸30から径方向外側に突出する円環板状に形成され、周方向に正逆回転可能となっている。ロータ34は、円板状のコアシートを複数枚積層してなるロータコア54、ロータコア54に対して一体的に回転可能に設けられた複数の永久磁石56、及びロータコア54の軸方向両端部に設けられた固定板58を有している。ロータコア54は、モータ軸30に直接固定されてもよいし、係合部材を介して固定されてもよい。複数の永久磁石56は、周方向で磁極が交互に入れ替わっている。
センサマグネット36は、環状をなしており、ロータ34のベース24側の面における外周端部に、ロータ34と一体的に回転可能に固定されている。センサマグネット36は、ロータ34の回転位置、すなわちモータ20の回転角度を検出するために設けられている。センサマグネット36には、N極とS極が所定角度毎に交互に設けられている。
ベース24は、図1及び図3に示すように、一面2400において外周縁部2401に対して凹んで設けられた第3凹部2413を有している。第3凹部2413は、センサマグネット36に対応して略円環状に設けられている。第3凹部2413は、センサマグネット36を収容している。径方向において、第3凹部2413は、第1凹部2407と第2凹部2408の間に設けられている。
駆動装置70は、ベース24、カバー72、回路基板74、コネクタ84、及びコンタクト86を有している。上記したように、ベース24も、駆動装置70の構成要素である。ベース24は、モータ20と駆動装置70とで兼用されている。駆動装置70が駆動部に相当し、回路基板74が回路部に相当する。
カバー72は、鉄系などの金属材料を用いて、図2に示すように略円板状に設けられている。カバー72は、ベース24の裏面2410側に配置されている。ベース24及びカバー72を組み付けてなる収容空間Seに、回路基板74が配置されている。ベース24及びカバー72は、回路基板74を収容する筐体76をなしている。したがって、筐体76が、ハウジング22の開口を閉塞している。回路基板74は、ベース24とカバー72との間に収容されている。
回路基板74は、プリント基板78、及び、プリント基板78に実装された複数の電子部品80を有している。プリント基板78の板厚方向は、モータ軸30の軸方向と略一致している。プリント基板78は、図1及び図4に示すように、ベース24の裏面2410上に配置されている。プリント基板78は、軸方向からの投影視において、第1凹部2407と重ならないように、略クランク形状をなしている。プリント基板78(回路基板74)は、ねじ等によってベース24に固定されている。
ベース24の外周縁部2401には、回路基板74と、回路基板74とモータ20との接続部とを取り囲むように、内溝部2414が形成されている。すなわち、筐体76の収容空間Seを水密に封止できる位置に、内溝部2414が形成されている。この内溝部2414には、シール材82が配置されている。シール材82は、収容空間Sm及び収容空間Seを水密に封止するために、ベース24の外周縁部2401とカバー72の外周縁部720との間に配置されている。シール材82としては、たとえばシリコーンを主成分とする接着材を用いることができる。収容空間Sm,Seは、貫通孔24011,2412及び後述する貫通孔2415を通じて連通している。シール材38,82は、シール材44とともに、収容空間Sm,Seを水密に封止している。
複数の電子部品80は、プリント基板78に実装されている。電子部品80は、プリント基板78の配線とともに、モータ20を駆動するための回路を形成する要素として、MOSFETやIGBT等のスイッチング素子、駆動IC、コイル、コンデンサなどを含んでいる。スイッチング素子により、モータ20を駆動するための三相インバータが構成されている。
駆動ICは、後述するホール素子800の検出信号に基づき、ロータ34の回転位置を検出する。駆動ICは、図示しないECUのマイコンから、モータ20の回転方向及び回転数を指示する信号を取得し、この指示信号と上記回転位置とに基づいて回転位相を算出し、算出結果に応じたゲート駆動信号を生成する。そして、ゲート駆動信号を各スイッチング素子に出力する。
プリント基板78には、図1、図3、及び図5に示すように、電子部品80としてホール素子800も実装されている。ホール素子800は、ロータ34の回転位置を検出し、検出信号を駆動ICに出力する。ホール素子800は、プリント基板78のベース24側の面に実装されている。ホール素子800は、センサマグネット36に対応して設けられている。本実施形態では、3つのホール素子800が、周方向に沿って所定の回転角度間隔で設けられている。
ベース24は、一面2400から裏面2410にわたって貫通する貫通孔2415を有している。貫通孔2415は、ホール素子800に対応して設けられている。各ホール素子800は、対応する貫通孔2415に個別に収容されている。このように、貫通孔2415にホール素子800を配置することで、軸方向においてモータ装置16の体格を小型化することができる。また、金属製のベース24内で生じる渦電流によるセンサ感度の低下を抑制することもできる。貫通孔2415は、第3凹部2413の底面に設けられている。
コネクタ84は、図4に示すように、リン青銅などの導電性材料を用いて形成された複数の端子840と、構成材料として樹脂を含み、端子840を保持するハウジング841を有している。コネクタ84の一部は、ベース24とカバー72とにより形成される筐体76の開口部760を介して、外部に突出している。図4では、開口部760のうち、ベース24側の部分のみを図示している。
端子840の一端側はプリント基板78に接続されており、他端側は外部機器との接続が可能となっている。端子840は、上記したECUと回路基板74とを電気的に中継する。図示を省略するが、ハウジング841とベース24との対向部分、及び、ハウジング841とカバー72との対向部分にも、シール材82が介在している。
コンタクト86は、図4に示すように、リン青銅などの導電性材料を用いて形成された複数の端子860、及び、構成材料として樹脂を含み、端子860を保持するハウジング861を有している。端子860の一端側はプリント基板78に接続されており、他端側はモータ20の巻線50の接続部500(図2参照)に溶接されている。端子860は、回路基板74に形成されたインバータの三相出力線と、モータ20の巻線50とを電気的に中継している。ハウジング861はベース24に接着固定されている。
次に、図2、図3、図5、及び図6に基づき、ハウジング22とベース24との位置決め構造、ひいてはモータ20と駆動装置70との位置決め構造について説明する。図5では、インロー側面2416及び第4凹部2417の位置を明確化するために、ハウジング22のインロー突起部226についても図示している。
図2、図5、及び図6に示すように、ハウジング22は、フランジ部222に複数のインロー突起部226を有している。複数のインロー突起部226は、フランジ部222におけるベース24側の面から軸方向に突出している。複数のインロー突起部226は、周方向に沿って設けられている。複数のインロー突起部226は、仮想的な同一円周上に設けられている。複数のインロー突起部226は、モータ軸30を取り囲むように、周方向に分散して設けられている。ハウジング22は、インロー突起部226を5つ有している。インロー突起部226は、略円柱状をなしている。インロー突起部226の軸方向に直交する断面形状は、略真円形状とされている。
図3、図5、及び図6に示すように、ベース24は、外周縁部2401にインロー側面2416及び第4凹部2417を有している。第4凹部2417が、インロー側面2416を含む凹部に相当する。
インロー側面2416は、モータ軸30と同軸の円環状をなしている。インロー側面2416は、周方向に沿って延設されている。インロー側面2416に、複数のインロー突起部226が嵌合することで、インロー構造が形成され、ハウジング22とベース24とが径方向において位置決めされる。位置決め精度を向上するために、ダイカストにより成形されたベース24を切削加工することで、インロー側面2416が形成されている。本実施形態において、インロー側面2416は、円環状の切削面となっている。インロー側面2416の一部は、ベース24の外周縁部2401の外周端にほぼ一致している。
第4凹部2417は、周方向に沿って延設されている。図6に示すように、第4凹部2417は、該第4凹部2417を規定する側面として、インロー側面2416、及び、インロー側面2416と反対の側面である反対面2418を含んでいる。本実施形態では、インロー側面2416の一部によって第4凹部2417が構成されている。また、インロー側面2416が第4凹部2417の内側面をなし、反対面2418が外側面をなしている。ベース24は、周方向に沿って形成された2つの第4凹部2417を有している。第4凹部2417は、外周縁部2401において、取り付け部2402の根元部分に形成されている。
ベース24は、第4凹部2417として、周方向に延設され、径方向においてインロー突起部226の長さ(直径)よりも幅の広い幅広部2417aを有している。また、反対面2418として、幅広部2417aをなす反対面2418の部分に連なり、インロー突起部226の周方向の移動、すなわちモータ軸30の軸の中心周りの回転を規制する回り止め部2418a(回り止め面)を少なくとも1つ有している。
このように構成されるハウジング22及びベース24(筐体76)では、先ず、インロー側面2416に複数のインロー突起部226を嵌合させる。これにより、ハウジング22とベース24とが径方向において位置決めされる。次いで、この嵌合状態で、インロー突起部226が回り止め部2418aに当て止まるまで、ハウジング22とベース24とを相対的に回転させる。インロー突起部226が回り止め部2418aに接触することで、ハウジング22とベース24とが周方向において位置決めされる。
本実施形態では、回り止め部2418aにおける第4凹部2417の幅が、幅広部2417aから遠ざかるほど狭くされている。詳しくは、回り止め部2418aにおける第4凹部2417の幅が連続的に変化するように、回り止め部2418aがインロー側面2416に対して傾斜している。このため、上記した相対的な回転により、インロー突起部226が、回り止め部2418aとインロー側面2416との間に圧入される。このようにして、インロー突起部226が、回り止め部2418aとインロー側面2416との間で固定されている。なお、圧入固定においてインロー突起部226が少なからず塑性変形する場合、インロー突起部226が第4凹部2417の側面、すなわちベース24に対してかしめ固定されているとも言える。
また、ベース24が、第4凹部2417として、幅広部2417aよりも幅の狭い幅狭部2417bを有している。回り止め部2418aは、反対面2418のうち、幅広部2417aと幅狭部2417bとを繋ぐ部分として構成されている。したがって、回り止め部2418aにおける第4凹部2417の幅が、幅狭部2417bに近づくほど狭くされている。
次に、上記したモータ装置16の効果について説明する。図7及び図8は、比較例を示している。比較例では、本実施形態の要素と同一又は関連する要素について、本実施形態の符号の末尾にrを付け加えて示している。
図7に示すように、比較例のハウジング22rは、フランジ部222rにかしめ部230rを有している。かしめ部230rは、フランジ部222rの外周縁から径方向外側に突出するとともに、その先端がベース24r側を向くように屈曲している。かしめ部230rの先端は二股に分岐している。
ベース24rは、周縁部に固定部2450rを有している。固定部2450rには、軸方向に貫通するとともに径方向外側に開口する係止凹部2451rが形成されている。かしめ部230rは、その先端が係止凹部2451rに挿入された状態で、二股状に分岐した部分が広がるように、固定部2450rに対してかしめ固定される。
比較例では、かしめにより、ハウジング22とベース24とが周方向において位置決めされる。しかしながら、かしめる際に、かしめ部230rの二股の開きにばらつきが生じる。図8の上段では、かしめ部230rの二股の開きが同程度とされている。このため、周方向において、係止凹部2451rの中心とかしめ部230rの中心CL1が略一致している。一方、図8の下段では、偏ってかしめられることで、二股のうちの一方のみが大きく開き、他方がほとんど開いていない。このため、かしめ部230rの中心CL2が、係止凹部2451rの中心に対してずれている。このように中心CL1,CL2とでずれが生じる。
周方向の位置決め精度が悪いと、たとえばセンサマグネットに対してホール素子の位置がばらつく。このため、モータの回転角度を精度良く検出できない虞がある。また、モータの巻線に対して、駆動装置のコンタクトの位置がばらつき、電気的接続を行う溶接工程の歩留りが低下する虞がある。
これに対し、本実施形態では、モータ20のハウジング22が、周方向に沿って設けられた複数のインロー突起部226を有している。また、駆動装置70の筐体76を構成するベース24が、周方向に沿って延設されたインロー側面2416と反対面2418を両側面とする第4凹部2417を有している。そして、反対面2418が、インロー突起部226の周方向の移動を規制する回り止め部2418aを有し、この回り止め部2418aに、インロー突起部226が当て止まって接触している。このように、インロー突起部226を回り止め部2418aに接触させることで、周方向において、ハウジング22とベース24、ひいてはモータ20と駆動装置70とを精度良く位置決めすることができる。
また、上記した複数のインロー突起部226がインロー側面2416に嵌合することで、インロー構造が形成される。したがって、径方向においても、ハウジング22とベース24、ひいてはモータ20と駆動装置70とを精度良く位置決めすることができる。
以上のように、インロー突起部226と第4凹部2417の側面(インロー側面2416及び反対面2418)とにより、径方向及び周方向のそれぞれにおいて、モータ20と駆動装置70とを精度良く位置決めすることができる。すなわち、簡素な構成で、モータ20と駆動装置70とを精度良く位置決めすることができる。
これにより、ホール素子800をセンサマグネット36に対して精度よく位置決めし、ひいてはモータ20の回転角度を精度良く検出することができる。また、巻線50に対して、コンタクト86の端子860を精度よく位置決めし、溶接工程の歩留り低下を抑制することができる。さらには、上記したかしめ部230rや固定部2450rも不要となるため、モータ装置16の体格も小型化することができる。
また、本実施形態では、回り止め部2418aにおける第4凹部2417の幅が、幅広部2417aから遠ざかるほど狭くされている。このように、第4凹部2417が回り止め部2418aにおいて先細り形状をなしているため、インロー突起部226を、回り止め部2418aとインロー側面2416との間に保持しやすい。特に、回り止め部2418aにおいて、第4凹部2417の幅が連続的に変化しているため、周方向においてインロー突起部226を位置精度よく保持することができる。
さらに、本実施形態では、インロー突起部226が、回り止め部2418aとインロー側面2416との間に圧入されている。このように、インロー突起部226が、回り止め部2418aとインロー側面2416との間で固定(仮固定)されているため、ねじ締結や接着などにより、ハウジング22とベース24、すなわちモータ20と駆動装置70とを本固定するまでの間、ハウジング22とベース24との周方向の位置を、精度のよい状態で保持することができる。
なお、インロー側面2416が第4凹部2417の内側面をなし、反対面2418が外側面をなす例を示したが、これに限定されない。図9に示す第1変形例のように、インロー側面2416が第4凹部2417の外側面をなし、反対面2418が内側面をなしてもよい。すなわち、内側面の一部が、回り止め部2418a構成してもよい。
インロー側面2416が、モータ軸30と同軸の円環状をなす例を示した。換言すれば、周方向において第4凹部2417の両端が開口している例を示した。しかしながら、これに限定されない。図10に示す第2変形例のように、周方向において両端が閉じた第4凹部2417を採用することもできる。図10では、周方向において、回り止め部2418aが第4凹部2417の一端をなしている。ベース24は、インロー突起部226と同数の第4凹部2417を有している。
回り止め部2418aにおける第4凹部2417の幅が、幅広部2417aから遠ざかるほど狭くされた構成として、回り止め部2418aにおける第4凹部2417の幅が連続的に変化するように、回り止め部2418aがインロー側面2416に対して傾斜している例を示した。しかしながら、これに限定されない。たとえば、図示しないが回り止め部2418aが階段状に設けられることで、第4凹部2417の幅が、幅広部2417aから遠ざかるほど狭くされてもよい。すなわち、連続的に狭くなるのではなく、段階的に狭くなるようにしてもよい。
(第2実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示したモータ装置16と共通する部分についての説明は省略する。
本実施形態のモータ装置16において、インロー突起部226は、図11に示すように、表面に複数の凸部2260を有している。凸部2260は、インロー側面2416及び回り止め部2418aの少なくとも一方との接触部分に設けられている。図11に示す例では、インロー側面2416との接触部分及び回り止め部2418aとの接触部分の両方を含むように、突出先端から軸方向の所定範囲に設けられている。環状の凸部2260が軸方向に複数連なって設けられている。
図示を省略するが、本実施形態でも、回り止め部2418aにおける第4凹部2417の幅が、幅広部2417aから遠ざかるほど狭くされている。インロー突起部226を、回り止め部2418aとインロー側面2416との間に圧入する際、図12に示すように凸部2260の先端がつぶれて変形しやすい。すなわち、圧入しやすい。また、凸部2260が、少なからず弾性変形する。したがって、インロー突起部226を、回り止め部2418aとインロー側面2416との間で、安定的に固定することができる。
図13に示す第3変形例のように、インロー突起部226の表面を粗化してもよい。インロー突起部226は、粗化部2261を有している。粗化部2261は、インロー側面2416及び回り止め部2418aの少なくとも一方との接触部分に設けられている。粗化部2261は、たとえばインロー側面2416との接触部分及び回り止め部2418aとの接触部分の両方を含むように、突出先端から軸方向の所定範囲に設けられている。粗化部2261は、ブラスト処理、エッチング、粗化めっき、レーザ粗化などによって形成される。
このように、インロー突起部226に粗化部2261を設けると、インロー突起部226と第4凹部2417の側面との接触部分において、摩擦力が大きくなる。したがって、圧入したインロー突起部226が、回り止め部2418aとインロー側面2416との間から抜けにくくなり、インロー突起部226を、回り止め部2418aとインロー側面2416との間で安定的に固定することができる。
(第3実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示したモータ装置16と共通する部分についての説明は省略する。
ベース24が成形体、たとえばダイカストによる成形体の場合、巣などの空洞が生じ得る。このため、図14に示す参考図のように、インロー側面2416におけるインロー突起部226との接触部分に、空洞2420が露出する虞がある。インロー突起部226の断面形状が略真円形状の場合、インロー突起部226はインロー側面2416に対して線接触する。したがって、空洞2420の大きさによっては、インロー側面2416との接触のために余分に奥まで押し込まなければならない。これにより、空洞2420が存在する場合のインロー突起部226の位置(図14中の実線)は、空洞2420が存在しない場合のインロー突起部226の位置(図14中の破線)に対して、周方向にずれることとなる。
これに対し、本実施形態のモータ装置16では、図15に示すように、断面形状が楕円形状のインロー突起部226を採用している。インロー突起部226は、楕円柱状をなしている。そして、楕円の短軸及び長軸のうち、短軸が径方向と略一致するように、インロー突起部226が配置されている。すなわち、インロー突起部226は、径方向よりも周方向に長い。したがって、インロー側面2416に空洞2420が開口していても、インロー突起部226が空洞2420の開口端に接触しやすい。
図15において、破線が空洞2420が存在しない場合のインロー突起部226の位置を示し、実線が空洞2420が存在する場合のインロー突起部226の位置を示している。このように、空洞2420の有無によって、インロー突起部226の位置はほとんど変化しない。したがって、断面真円形状に較べて、空洞2420による位置ずれを抑制することができる。
なお、断面楕円形状に代えて、断面多角形状のインロー突起部226を採用してもよい。図16に示す第4変形例では、断面矩形状のインロー突起部226を採用している。インロー突起部226は、四角柱状をなしている。そして、インロー突起部226における隣り合う角の間の面が、インロー側面2416に接触するように、インロー突起部226が配置されている。すなわち、矩形の四辺の1つがインロー側面2416に接触するように、インロー突起部226が配置されている。したがって、インロー側面2416に空洞2420が開口していても、インロー突起部226が空洞2420の開口端に接触しやすい。
図16において、破線が空洞2420が存在しない場合のインロー突起部226の位置を示し、実線が空洞2420が存在する場合のインロー突起部226の位置を示している。このように、空洞2420の有無によって、インロー突起部226の位置はほとんど変化しない。したがって、断面真円形状に較べて、空洞2420による位置ずれを抑制することができる。
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
バルブタイミング調整装置10が、吸気弁のバルブタイミングを制御する例を示した。しかしながら、動弁として、排気弁のバルブタイミングを調整する装置や、吸気弁及び排気弁の両方のバルブタイミングを調整する装置に適用することもできる。
モータ20の回転角度を検出する磁電変換素子として、ホール素子800の例を示した。しかしながら、磁電変換素子としては、それ以外にもたとえば磁気抵抗効果素子を採用することができる。
回路基板74におけるインバータの三相出力線と巻線50との接続は、コンタクト86に限定されない。その他の電気的な接続構造を採用することもできる。
バルブタイミング調整装置10に適用されるモータ装置16の例を示したが、それ以外のモータ装置にも適用できる。
回り止め部2418aの数は特に限定されない。ベース24は、反対面2418として、回り止め部2418aを少なくとも1つ有せばよい。
ハウジング22にインロー突起部226を設け、ベース24にインロー側面2416を含む第4凹部2417を設ける例を示したが、これに限定されない。モータ20のハウジング22及び駆動装置70の筐体76のうち、一方である第1部材にインロー突起部が設けられ、他方である第2部材にインロー側面及び反対面を含む凹部が設けられればよい。たとえばハウジング22に凹部を設け、ベース24にインロー突起部を設けてもよい。
回り止め部2418aにおける第4凹部2417の幅が、周方向において幅広部2417aから遠ざかるほど狭くされ、インロー突起部226が回り止め部2418aとインロー側面2416との間に圧入される例を示したが、これに限定されない。第4凹部2417の幅が、幅広部2417aから遠ざかるほど狭くされる構成において、インロー突起部226が回り止め部2418aに単に接触するようにしてもよい。これによれば、回り止め部2418aとインロー側面2416との間で、インロー突起部226を保持することができる。
図17に示す第5変形例のように、径方向と平行な回り止め部2418aを有する第4凹部2417を採用することもできる。図17においても、回り止め部2418aは幅広部2417aをなす反対面2418の部分に連なっている。ハウジング22とベース24とを相対的に回転させることで、インロー突起部226が回り止め部2418aに接触して当て止まる。このように、インロー突起部226を回り止め部2418aに接触させることで、周方向においてモータ20と駆動装置70とを精度良く位置決めすることができる。