以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法および半導体装置用の成形金型の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置用の成形金型の構造について説明する。図1は、実施の形態1にかかる半導体装置用の成形金型の要部の構造を模式的に示す斜視図である。図1には、トランスファー成形法により半導体部品を樹脂封止する際に成形装置(不図示)に取り付ける金型(以下、本体金型とする)10を示す。図2は、図1の本体金型の型板を金型面側から見たレイアウトを模式的に示す平面図である。
図3は、図2の本体金型に配置された個別金型の構造を模式的に示す斜視図である。図4は、図3の個別金型の型板を金型面側から見たレイアウトを模式的に示す平面図である。図5は、図2の切断線A1−A3における断面構造を示す断面図である。図6〜8は、図2の切断線A1−A3における断面構造の別の一例を示す断面図である。図5〜8は、本体金型10を閉じた状態であり、本体金型10の内部に半導体モジュール(半導体部品)220や樹脂材料片を配置していない状態である。
図1に示す本体金型10は、2つ(2枚)の型板1,2で構成される。本体金型10には、型板1,2の金型面(主面)1a,2a同士を対向させた状態で重ね合わせて内部に個別金型20を配置可能な空洞(後述する凹部11,15で形成された空洞)が形成される。また、本体金型10は、型板1,2間に個別金型20を挟んだ状態で閉じられ、型板1,2の金型面1a,2a同士を押し付ける方向に型板1,2にかけた圧力(型締め力)3により締め付けられた(型締めされた)状態で成形装置に保持される。本体金型10を型締めする圧力(型締め力)3は、成形品の寸法や、1回の成形で処理可能な成形品数により決定される。
本体金型10の型板1,2以外の部品は、例えば、本体金型10の開閉時の位置合わせや、成形装置(不図示)への本体金型10の取り付け等のための図示省略する一般的なモールドベースの部品で構成される。本体金型10を構成する2つの型板1,2のうちの一方の型板1は成形装置の固定盤に固定され、他方の型板2は成形装置の可動盤に取り付けられる。可動側の型板2を可動させることで、本体金型10が開閉される。
本体金型10の型板1,2の金属材料は、熱容量(金属材料の比熱と密度の積)が大きく、高硬度で耐摩耗性の優れた例えば鋼(スチール)等の鉄(Fe)の合金である。具体的には、本体金型10の型板1,2の金属材料は、例えば、炭素工具鋼にモリブデン、クロム、バナジウム等を添加したSKD11(冷間金型用の鋼)であってもよい。本体金型10の型板1,2に、例えば金型寿命を延ばすための焼き入れ処理が行われていてもよい。
固定側の型板1の金型面1aには、凹部11、カル12、ランナー13およびゲート14が設けられている(図1には不図示、図2,5〜8参照)。凹部11、カル12、ランナー13およびゲート14と、後述する凹部15およびポット16は、本体金型10の型板1,2を重ね合せたときに空洞を形成する。これら空洞を形成する凹部11,15、カル12、ランナー13およびゲート14およびポット16のうち、カル12、ランナー13およびゲート14およびポット16を白抜きで示す。凹部11は、本体金型10による1回の成形で処理可能な成形品数分(ここでは4つ)設けられている。
すなわち、凹部11は、1つ以上設けられている。各凹部11の内部には、それぞれ個別金型20が嵌め込まれる。図2,5〜8には、凹部11(図5,8においては凹部11,15、図7においては凹部15)に個別金型20を嵌め込んだ状態を示す。凹部11の深さd1は、例えば凹部11に嵌め込まれたときの個別金型20の、型板1の金型面1aと直交する方向の長さ(高さ)x11よりも浅い(図5,8参照)。凹部11の底面には、凹部11の底面から本体金型10の外側に貫通するピン孔11aが設けられている。ピン孔11aには、凹部11に嵌め込まれた個別金型20を凹部11から押し出すためのイジェクトピン(不図示)が挿入される。
カル12は、半導体部品の樹脂封止に用いる熱硬化性の樹脂材料片を配置する溝であり、個別金型20の後述するキャビティ31へ軟化された樹脂を供給する樹脂供給部となる。カル12は、例えば、略円柱状の樹脂材料片を配置可能な略円柱状をなす。ランナー13は、カル12に配置された樹脂材料片が軟化されたときにカル12から個別金型20の後述するキャビティ31へ流動する樹脂材料の流動経路となる溝であり、カル12とすべての凹部11とを繋ぐように形成されている。
カル12とキャビティ31とがランナー13を介して連結されていればよく、カル12およびランナー13は、固定側の型板1に設けられていてもよいし(図5,7参照)、可動側の型板2に設けられていてもよい(図6,8参照)。ゲート14は、本体金型10のランナー13と個別金型20の後述するランナー32との間にそれぞれ形成されている。ゲート14は、本体金型10の凹部11に個別金型20が嵌め込まれ本体金型10を閉じた状態(すなわち型板1,2の金型面1a,2a同士が接触した状態)で、本体金型10のランナー13と個別金型20のランナー32とを連結する位置に配置されている。本体金型10のランナー13と個別金型20のランナー32とは、本体金型10の凹部11に個別金型20が嵌め込まれ本体金型10を閉じた状態で、ゲート14を介して隙間なく連続する。ゲート14は、例えば本体金型10のランナー13よりも浅い溝であり、本体金型10のランナー13から個別金型20のランナー32に流れ込む樹脂材料の流入速度を調整する機能を有する。
可動側の型板2には、本体金型10を閉じた状態(すなわち型板1,2の金型面1a,2a同士が接触した状態)で固定側の型板1の凹部11と対向する位置に、凹部15が設けられている(図5,8参照)。本体金型10を閉じたときに、固定側の型板1の凹部11と、可動側の型板2の凹部15と、で形成される略直方体状の空洞に個別金型20が嵌め込まれる。すなわち、可動側の型板2の凹部15には、個別金型20の、凹部11に嵌め込まれた部分以外の残りの部分が嵌め込まれる。
型板1,2の凹部11,15で形成される空洞は、個別金型20を収納可能である。凹部11,15に個別金型20を嵌め合せるためのクリアランス(凹部11,15の側壁と個別金型20との間に確保すべき距離)を考慮して、型板1,2の凹部11,15で形成される空洞の平面方向の寸法は、例えば個別金型20の平面方向の外径寸法以上である。型板1,2の凹部11,15で形成される空洞の高さ(深さ)方向の寸法は、例えば個別金型20の厚さ方向の外径寸法と略同じ寸法を有する。
例えば、型板1,2の凹部11,15で形成される略直方体状の空洞の3辺の寸法のうち、深さ方向の寸法x1は、前記空洞に嵌め合わされる個別金型20の対応する深さ方向の1辺の寸法x11と略同じである(x1≒x11)。型板1,2の凹部11,15で形成される略直方体状の空洞の3辺の寸法のうち、平面方向の2辺の寸法x2,x3は、前記空洞に嵌め合わされる個別金型20の平面方向の対応する2辺の寸法x12,x13以上である(x2≧x12、x3≧x13)。
具体的には例えば、凹部11,15の底面の幅x2および奥行きx3とした場合、凹部11の深さd1と凹部15の深さd2との総和が型板1,2の凹部11,15で形成される空洞の高さx1となる。凹部11の深さd1と凹部15の深さd2との総和は、個別金型20の金型面21a,22aと直交する方向の長さx11と略同じである(x1=x11=d1+d2)。
可動側の型板2に凹部15が設けられていなくてもよい(図6参照)。この場合、固定側の型板1の凹部11の外形寸法は個別金型20の外径寸法と略同じであり、固定側の型板1の凹部11の内部に個別金型20の全体が嵌め込まれる。また、固定側の型板1に凹部11を設けずに、可動側の型板2の凹部15の内部に個別金型20の全体がはめ込まれてもよい(図7参照)。この場合、可動側の型板2の凹部15の外形寸法は、個別金型20の外径寸法と略同じである。図7の個別金型20の取り出し方法については、実施の形態3,4で説明する。
また、可動側の型板2には、本体金型10を閉じた状態で固定側の型板1のカル12と対向する位置に、ポット(加熱室)16が形成されている。ポット16は、型板2の金型面(一方の主面)2aから他方の主面に貫通する例えば円柱状の貫通孔である。ポット16は、本体金型10を閉じた状態で、固定側の型板1のカル12に連結される。ポット16は、型板1のカル12に配置された樹脂材料片を加熱し軟化(または液状化)させる機能を有する。
ポット16の内部には、型板1のカル12に配置され樹脂材料片に圧力をかけるブランジャー(不図示)が配置される。ブランジャーは、軟化された樹脂材料片をカル12から個別金型20のキャビティ31へ押し出して流動させる機能を有する。固定側の型板1は、凹部11を形成した金属部材と、カル12を形成した金属部材(カルブロック)と、を接合して形成されていてもよい。可動側の型板2は、ポット16を形成した金属部材(センターブロック)と、センターブロックの周囲を囲む金属部材と、を接合して形成されていてもよい。
個別金型20は、2つ(2枚)の型板21,22で構成され(図3)、2つの型板21,22を重ねあわせたときに略直方体状をなす。個別金型20には、型板21,22の金型面(主面)21a,22a同士を対向させた状態で重ね合わせて内部に半導体部品を配置可能な空洞が形成される。個別金型20は、本体金型10の型板1,2の凹部11,15(または凹部11,15のいずれかのみ)で形成された略直方体状の空洞の内部に自由な向きで配置可能である(図5〜8参照)。個別金型20は、例えば、型板21,22の金型面21a,22aが本体金型10の型板1,2の金型面1a,2aと平行になるように配置されてもよい(図5,8)。この場合、本体金型10のランナー13から個別金型20のキャビティ31に樹脂材料が供給される方向は、本体金型10の固定側の型板1の金型面1aに平行な方向(以下、横方向とする)になる。
または、個別金型20は、例えば、金型面21a,22aが本体金型10の型板1,2の金型面1a,2aと直交するように配置されてもよい(図6,7)。図6に示すように本体金型10の固定側の型板1の凹部11の内部に個別金型20のキャビティ31が位置する場合、本体金型10のランナー13から個別金型20のキャビティ31に樹脂材料が供給される方向は上側から下側へ向かう方向になる。図7に示すように本体金型10の可動側の型板2の凹部15の内部に個別金型20のキャビティ31が位置する場合、本体金型10のランナー13から個別金型20のキャビティ31に樹脂材料が供給される方向は下側から上側へ向かう方向になる。
個別金型20の型板21,22の金属材料は、例えば、本体金型10の型板1,2の金属材料と同様である。例えば個別金型20の金型寿命を延ばすために、個別金型20の型板21,22に焼き入れ処理が行われていてもよい。また、個別金型20の金型面21a,22aや型板21,22の凹部11,15の内壁を例えば窒化処理することで、個別金型20と、個別金型20のキャビティ31に充填される樹脂材料と、の離形性が高められていてもよい。
個別金型20の型板21,22のうちの一方の型板21の金型面(主面)21aには、キャビティ31、ランナー32および樹脂溜り33が形成されている(図4参照)。キャビティ31は、樹脂封止する半導体部品を配置する凹部である。キャビティ31の内部には、樹脂封止する半導体部品が取り付けられる。ランナー32は、固定側の型板1のランナー13からキャビティ31へ流動する樹脂材料の流動経路となる溝であり、固定側の型板1のランナー13に連結されている。樹脂溜り33は、キャビティ31から溢れた樹脂材料を収容する樹脂収容部となる溝である。樹脂溜り33は、例えば、キャビティ31に対して、固定側の型板1のランナー13と反対側に配置される。
個別金型20の型板21,22のうちの他方の型板22の金型面22aには、溝22bが設けられている(図5〜7,11参照)。型板22の金型面22aの溝22bに代えて、型板21のキャビティ31の底面に溝21bが設けられていてもよい(図8,22参照)。これらの溝21b,22bは、個別金型20に後述する半導体モジュール220を取り付ける際に外部接続用端子225を挿入する孔である(図10,11,22,23参照)。また、個別金型20および本体金型10には、本体金型10の型締め時に個別金型20を所定位置に移動(スライド)させるスライド機構(移動機構(不図示):図5〜8,11〜13,16〜20においても同様に不図示)が設けられている。スライド機構の構造については後述する。図5〜8には、個別金型20の型板21,22を本体金型10の型板1,2よりも薄いハッチングで示す。また、個別金型20の型板21,22を重ね合せたときに空洞となるキャビティ31、ランナー32および樹脂溜り33を白抜きで示す。
次に、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法(半導体部品の樹脂封止方法)について、積層基板221の主面と直交する方向に突出する外部接続用端子225を有する一般的な構成の半導体モジュール(半導体部品)220を樹脂封止する場合を例に説明する。図9は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。図9には、半導体モジュール220の樹脂封止の1サイクルを示す。図10,11A〜11C,12,13,14A,14B,16〜21は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図15A,15Bは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の別の一例の状態を示す平面図である。図15Cは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の別の一例の状態を示す断面図である。
図10に示す半導体モジュール220は、半導体チップ224、外部接続用端子225および積層基板221を備える。また、半導体モジュール220は、積層基板221の一方の主面の導電性板223a上に半導体チップ224を実装し、前記導電性板223aに外部接続用端子225の一方の端部を接合した構成となっている。図10には、例えば、半導体チップ224を挟んで積層基板221と対向する回路基板226が配置され、半導体チップ224と回路基板226との導体層(不図示)同士を端子ピン227により電気的に接続したピン構造の半導体モジュール220を示す。
この半導体モジュール220は樹脂封止する半導体部品の一例であり、回路基板226および端子ピン227は設けられていなくてもよい。ピン構造の半導体モジュール220とした場合、外部接続用端子225の他方の端部は、回路基板226を貫通し、回路基板226の、積層基板221側の主面に対して反対側の主面から突出している。積層基板221は、セラミック基板222の両面にそれぞれ導電性板223a,223bを形成してなる。
このような積層基板221の主面と直交する方向に突出する外部接続用端子225を有する半導体モジュール220を組立てた後、前記半導体モジュール220を樹脂封止する。ここでは、本体金型10の固定側の型板1の凹部11の内部に個別金型20のキャビティ31が位置するように本体金型10の凹部11,15で形成される空洞に個別金型20を配置し、本体金型10のランナー13から個別金型20のキャビティ31に横方向に樹脂材料が供給される場合(すなわち図5の構成)を例に説明する。
まず、図11Aに示すように、個別金型20の型板22の金型面22aを上側(重力方向Gに対して反対側)にし、溝22bに半導体モジュール220の外部接続用端子225の他方の端部を差し込むことで、前記型板22に半導体モジュール220を固定する。次に、個別金型20の型板21,22同士を金型面21a,22a同士が対向するように重ね合わせて、個別金型20の型板21を半導体モジュール220に被せることで、個別金型20の型板21のキャビティ31の内部に半導体モジュール220を取り付ける(ステップS1)。符号41で示す下向きの矢印の方向は、個別金型20の型板22の溝22bに外部接続用端子225を差し込むときに半導体モジュール220に加える圧力41の方向である。符号42で示す下向きの矢印の方向は、個別金型20の型板21を半導体モジュール220に被せるときの前記型板21の移動方向である。
ステップS1の工程を行うことで、図11Bに示すように、半導体モジュール220は、外部接続用端子225が型板22に固定され、積層基板221の、半導体チップ224を実装した主面に対して反対側の主面の導電性板223bがキャビティ31の底面に接触して固定された状態で、キャビティ31の内部に取り付けられる。このため、半導体モジュール220は、積層基板221の主面(半導体チップ224および外部接続用端子225を実装した面)を下側にして、積層基板221がキャビティ31の上側に位置するように取り付けられた状態になる。
次に、図11B、11Cに示すように、重力方向Gと直交する軸(個別金型20の型板21,22の金型面21a,22aに平行な軸)を中心に個別金型20を180°回転Rさせることで、個別金型20を上下反転させる(ステップS2)。すなわち、ステップS1の工程において、溝22bが形成された型板22が他方の型板21よりも下側(重力方向G側)に位置した状態であった個別金型20を、ステップS2の工程において上下反転させることで、溝22bが形成された型板22を他方の型板21よりも上側に位置させた状態にする。図11Bに個別金型20の回転R前の状態を示し、図11Cに個別金型20の回転R後の状態を示す。
ステップS2の工程を行うことで、図11Cに示すように、個別金型20は、溝22bが形成された型板22を他方の型板21よりも上側に位置させた状態で、以降の工程で用いる製造装置へ搬送される。こうすることで、後述するステップS3,S4において、半導体モジュール220は、積層基板221の主面を上側にして、積層基板221がキャビティ31の下側に位置するように取り付けられた状態になる。ステップS2の工程は、ステップS1の工程の後、後述するステップS4の工程の前までに行えばよい。
次に、図12に示すように、半導体モジュール220を取り付けた個別金型20を例えば130℃以上180℃以下程度の温度で加熱された恒温槽43内に所定時間保持することで、半導体モジュール220を予備加熱する(ステップS3)。上述したように、個別金型20は熱容量の大きい金属材料で形成されているため、個別金型20に半導体モジュール220を取り付ける前に個別金型20のみを恒温槽43で加熱してもよい。ステップS1〜S3の工程は、成形装置の外部で個別金型20のみを用いて行う工程である。
次に、図13に示すように、個別金型20のランナー32側の面と本体金型10のゲート面14aとが対向するように、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20を嵌め込む。これにより、本体金型10のランナー13およびゲート14と個別金型20のランナー32とが連続した溝となる。符号44で示す矢印の方向は、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20を嵌め込むときに個別金型20に加える圧力44の方向である。かつ、図14Aに示すように、本体金型10の可動側の型板2を可動させて前記可動側の型板2の金型面2aを固定側の型板1の金型面1aに接触させることで、本体金型10を閉じる。このとき、可動側の型板2の凹部15に個別金型20が嵌め込まれる。符号45で示す下向きの矢印の方向は、本体金型10の可動側の型板2の凹部15を個別金型20に嵌め込むときに可動側の型板2に加える圧力45の方向である。
そして、本体金型10を型締めすることで、型板1,2の金型面1a,2a同士を接触させ、本体金型10の凹部11,15で形成される空洞に個別金型20を取り付ける(ステップS4)。ステップS3,S4の工程において、例えば、個別金型20の型板21が金型面21aを上側(重力方向Gと反対側)にして配置され、かつ個別金型20の型板22が金型面22aを下側(重力方向G側)にして、型板21の上に配置されるように、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20を嵌め込むことが好ましい。ステップS2の工程において個別金型20の型板21,22の上下位置を変更したことで、ステップS3の工程において前工程からの搬送時と同じ状態のまま個別金型20を本体金型10の固定側の型板1の凹部11の上方から前記凹部11の内部に下降させることで、上記好適な配置で本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20を嵌め込むことができる。これにより、個別金型20を介して本体金型10の固定側の型板1の凹部11の内部に、個別金型20のキャビティ31の内部の下側の空間に積層基板221が位置するように半導体モジュール220を取り付けることができる。
また、ステップS4の工程において、本体金型10の可動側の型板2の凹部15を個別金型20に嵌め込むときに可動側の型板2に加える圧力45、および、本体金型10の型締め力3(図1参照)により、本体金型10と個別金型20との間でスライド機構60aが機能する。このスライド機構60aにより、本体金型10の固定側の型板1の凹部11の内部を、凹部11の底面に平行な方向(以下、横方向とする)46に個別金型20を移動(スライド)させることができる。図14Aのスライド機構60aを図14Bに拡大して示す。具体的には、図14Bに示すように、スライド機構60aは、本体金型10と個別金型20との接触面において本体金型10および個別金型20にそれぞれ設けられ、互いに嵌め合わせ可能な突起部61およびノッチ(溝)62で構成される。図14A,14Bには、スライド機構60aの突起部61とノッチ62とを嵌め合わせる途中の状態を示す。
スライド機構60aの突起部61は、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面15dに設けられている。突起部61は、本体金型10のゲート面14a(図14A参照)に対向する側面(以下、傾斜面とする)61aが凹部15の底面15dに対して傾斜していることで、凹部15の底面15dから離れるほど(すなわち高くなるほど)、本体金型10のゲート面14aから傾斜面61aが離れるように幅の狭くなる略台形状の断面形状を有する。すなわち、突起部61の傾斜面61aは、本体金型10のゲート面14a(図14A参照)に対向する。本体金型10のゲート面14aとは、本体金型10の凹部11,15で形成される空洞の、ゲート14側の側壁である。突起部61の、本体金型10のゲート面14aに対向する側面(傾斜面61a)を除く他の側面は、凹部15の底面15dに対して突起部61の幅を狭めるように傾斜を有していてもよいし、凹部15の底面15dに対して垂直であってもよい。
スライド機構60aのノッチ62は、個別金型20の型板22の、可動側の型板2の凹部15の底面15dに接触する面(すなわち金型面22aに対して反対側の主面:以下、個別金型20の上面とする)22cに、突起部61と対向して設けられている。ノッチ62は、個別金型20の上面22cに対して本体金型10のゲート面14aに対向する側面(以下、傾斜面とする)62aが傾斜していることで、個別金型20の上面22cから離れるほど(すなわち深くなるほど)、本体金型10のゲート面14aから傾斜面62aが離れるように幅の狭くなる略台形状の断面形状を有する。
すなわち、ノッチ62の傾斜面62aは、本体金型10のゲート面14a(図14A参照)に対向する。ノッチ62の、本体金型10のゲート面14aに対向する側面(傾斜面62a)を除く他の側面は、個別金型20の上面22cに対してノッチ62の幅を狭めるように傾斜を有していてもよいし、個別金型20の上面22cに対して垂直であってもよい。ノッチ62は、突起部61と略同じ寸法で略同じ略台形状の断面形状を有してもよい。ノッチ62は、本体金型10のゲート面14aに対向する側面に突起部61の傾斜面61aと対向する傾斜面62aを有し、突起部61が嵌められる大きさ、形状であればよい。
本体金型10に個別金型20を嵌め合わせる段階において、凹部11,15に個別金型20を嵌め合せるためのクリアランスを考慮するために、本体金型10と個別金型20の間には隙間がある。このような構成のスライド機構60aを設けることで、本体金型10の可動側の型板2の凹部15を個別金型20に嵌め込むときに可動側の型板2に加える圧力45、および、本体金型10の型締め力3(図1参照)により、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面15dの突起部61が個別金型20のノッチ62に押し込まれる。これにより、突起部61の傾斜面61aとノッチ62の傾斜した側壁(以下、傾斜面とする)62aとが接触して、個別金型20が横方向46に移動し、本体金型10のゲート面14aに強く押し付けられる。このため、本体金型10の型締め後、本体金型10のゲート面14aと個別金型20との間に隙間は生じない。したがって、後述する樹脂封止時に、本体金型10のゲート面14aと個別金型20との間に樹脂材料が流れ込むことを防止することができる。
図14Aには、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の、ゲート面14aから離れた位置にスライド機構60aを設けた場合を図示しているが、スライド機構60aは、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面15dのいずれの位置にも配置可能である。また、スライド機構60aは、個別金型20の上面22c側から見て個別金型20の略矩形状の上面22cの1辺に沿って延在する直線状に配置されていてもよい(図15A参照)。この場合、スライド機構60aの長さは、個別金型20の上面22cの1辺と略同じ長さであってもよいし、個別金型20の上面22cの1辺の略半分の長さであってもよい。
また、個別金型20の上面22c側から見て個別金型20の略矩形状の上面22cの4つの頂点に対応する付近にそれぞれスライド機構60aのノッチ62(図15B参照)が配置されるようにスライド機構60aを複数配置し、これら複数のスライド機構60aを組合せて個別金型20を本体金型10のゲート面14aに固定してもよい。図15A,15Bには、スライド機構60aのノッチ62のレイアウトのみを図示し、突起部61のレイアウトを図示省略するが、突起部61はノッチ62と同様のレイアウトで本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面15dに配置される。
また、上述したスライド機構60aに代えて、固定側の型板1の金型面1aと、個別金型20の下面(個別金型20の型板21の、固定側の型板1の金型面1aの凹部11の底面との接触面)と、の間に、スライド機構60aと同じ機能を有するスライド機構(不図示)を設けてもよい。この固定側の型板1の金型面1aと個別金型20の下面との間のスライド機構と、上述したスライド機構60aと、をともに設けてもよい。
また、図15Cに示すように、スライド機構60a’の突起部61’を個別金型20の上面22cに設け、ノッチ62’を本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面15dに設けてもよい。この場合、突起部61’およびノッチ62’ともに、本体金型10のゲート面14aに対向する側面に対して反対側の側面(傾斜面)61a’,62a’が傾斜している。突起部61’は、個別金型20の上面22cから離れるほど(すなわち高くなるほど)、本体金型10のゲート面14aに傾斜面61a’が近づくように幅の狭くなる略台形状の断面形状を有する。ノッチ62’は、突起部61’と対向して設けられている。ノッチ62’は、 凹部15の底面15dから離れるほど(すなわち深くなるほど)、本体金型10のゲート面14aに傾斜面62a’が近づくように幅の狭くなる略台形状の断面形状を有する。このように突起部61’およびノッチ62’を設けることで、本体金型10にノッチ62’があり、個別金型20に突起部61’がある場合においても、個別金型20が横方向46に移動し、本体金型10のゲート面14aに強く押し付けられる。
また、本体金型10の温度は、常時、例えば130℃〜180℃程度に保たれている。例えば後述する比較例の製造方法では、半導体モジュール220を樹脂封止する前に、半導体モジュール220を加熱するために、半導体モジュール220を成形装置(金型200)に取り付けた状態で所定時間放置する必要がある(図34のステップS102参照)。一方、本発明においては、半導体モジュール220は、ステップS4の工程を行う段階において既に個別金型20の内部で加熱されている。そのため、比較例の製造方法のように半導体モジュール220を成形装置に取り付けた状態で放置する必要がない。したがって、成形装置での処理の1サイクルに要する時間(サイクルタイム)を短縮することができる。
次に、固定側の型板1のカル12に、例えば略円柱状の樹脂材料片を配置する。この樹脂材料片は、可動側の型板2のポット16により加熱されて軟化される。そして、図16に示すように、可動側の型板2のポット16の内部に装着されたブランジャー4により、軟化された樹脂材料47に圧力をかけて前記樹脂材料47を本体金型10のカル12からランナー13およびゲート14へ流動させて、個別金型20のランナー32からキャビティ31の内部へ圧入する。これにより、個別金型20のキャビティ31の内部の半導体モジュール220が樹脂材料47で覆われ、半導体モジュール220が樹脂封止される(ステップS5)。
ステップS5の工程において、可動側の型板2のポット16により加熱され軟化した樹脂材料47は、本体金型10および個別金型20の内部に形成された流動経路(ランナー13,32)を進むごとに、硬化が進行する。このため、本体金型10は、個別金型20のキャビティ31の内部で樹脂材料47の硬化が進行する温度に保持されていることが好ましい。個別金型20のキャビティ31から溢れた樹脂材料47や、樹脂材料47の流動時に樹脂材料47の内部に生じた気泡(ボイド)47aは、キャビティ31に隣接する樹脂溜り33に収容される。符号47cは、樹脂溜り33まで移動した気泡47aが溜まってなるエア溜りである。
また、ここでは、軟化した樹脂材料47を後述する比較例の製造方法(図36〜38参照)と同様に重力方向Gと直交する方向47bに流動させる例を示す。樹脂材料47の流動時に樹脂材料47に発生した気泡47aは、浮力により個別金型20のキャビティ31の内部の上側の空間に移動する。そのため、比較例の製造方法においては、個別金型20のキャビティ31の内部の上側の空間に位置する半導体チップ224表面や、半導体チップ224を実装した導電性板223a上に、気泡47aが残りやすい。これらは、半導体モジュール220に絶縁不良を発生させる原因となる。一方、本発明においては、上述したように個別金型20のキャビティ31の内部の下側の空間に積層基板221が位置するように半導体モジュール220が配置されている。このため、個別金型20のキャビティ31の内部において樹脂材料47の内部に気泡47aが残ったとしても、半導体チップ224表面や、半導体チップ224を実装した導電性板223a上には、気泡47aが残らない。そのため、半導体モジュール220の絶縁不良を防止することができる。
次に、図17に示すように、本体金型10の可動側の型板2を可動させることで、本体金型10を開く(型開き)。符号48で示す上向きの矢印の方向は、本体金型10の可動側の型板2の移動方向である。次に、図18に示すように、本体金型10の固定側の型板1のピン孔11aに挿入されたイジェクトピン49により個別金型20を押し上げて、本体金型10の固定側の型板1の凹部11から個別金型20を取り出す(ステップS6)。符号50で示す上向きの矢印の方向は、イジェクトピン49の移動方向である。次に、本体金型10に付着した樹脂材料47の残渣(残樹脂)等を清掃する(ステップS7)。ステップS4〜S7の工程は、成形装置で行う工程である。
次に、図19に示すように、個別金型20を例えば加熱庫51に挿入して、例えば130℃以上180℃程度の温度で樹脂材料47を1次硬化させる(ステップS8)。比較例の製造方法(図34参照)では、成形装置(金型200)から半導体モジュール220を取り出す前に樹脂材料231を1次硬化させていたが(図34のステップS104参照)、本発明においては、成形装置(本体金型10)から半導体モジュール220(個別金型20)を取り出した後に樹脂材料47を1次硬化させる。このため、成形装置での処理のサイクルタイムを比較例の製造方法よりも短縮することができる。また、例えば、ステップS7の工程(成形装置の清掃)と、ステップS8の工程(樹脂材料47の1次硬化)と、を並行して行うことができる。このため、成形装置での処理の1サイクルを連続して行うライン作業に要する時間を比較例の製造方法よりも短縮することができる。なお、ステップS8の工程は、必要に応じて行えばよく、省略可能である。
次に、図20に示すように、個別金型20を開く(型開き)ことで、成形品(樹脂材料47で樹脂封止された半導体モジュール220)から個別金型20の型板22を外す。例えば、個別金型20の型板22に設けたピン孔(不図示)に挿入したイジェクトピンにより樹脂材料47側から成形品を押し出して、個別金型20の型板22の溝22bから外部接続用端子225を外すことで、成形品から個別金型20の型板22を外してもよい。符号52で示す上向きの矢印の方向は、個別金型20の型板22の移動方向である。
次に、図21に示すように、個別金型20の型板21のキャビティ31から成形品を取り出す(ステップS9)。符号53で示す上向きの矢印の方向は成形品の移動方向である。外部接続用端子225の他方の端部は、ステップS5の工程(樹脂封止)において個別金型20の型板22の溝22bに差し込まれているため、樹脂封止されない。これによって、外部接続用端子225の他方の端部を通して、外部と半導体モジュール220とを導通させることができる。
また、積層基板221の、半導体チップ224および外部接続用端子225を実装した主面に対した反対側の主面は、ステップS5の工程において個別金型20の型板21のキャビティ31の底面に接しているため、樹脂封止されない。これによって、半導体モジュール220は、積層基板221の裏面から、半導体チップで発せられた熱を放熱させることができる。ステップS8,S9の工程は、成形装置の外部で個別金型20のみを用いて行う工程である。これによって、半導体モジュール220の樹脂封止の1サイクルが完了する。これらステップS1〜S9の工程を繰り返し行うことで、半導体モジュール220の樹脂封止が連続して行われる。
また、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を適用することで、例えば、本体金型10の可動側の型板2の凹部15に個別金型20のキャビティ31が配置される場合(すなわち図8の構成)においても、半導体モジュール220を樹脂封止可能である。この場合においても、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の内部において、個別金型20のキャビティ31の内部の下側の空間に積層基板221が位置するように半導体モジュール220が配置されることが好ましい。
具体的には、例えば、図8の個別金型20を用いる場合の実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法は、上述した実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、ステップS1の工程と,ステップS4の工程における個別金型20の型板21,22の上下位置と、が異なる以外は図5の個別金型20を用いた場合と同様である。具体的には、図8の個別金型20を用いる場合、次のようにステップS1,S4の工程を行えばよい。図22,23は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の別の一例の状態を示す断面図である。ステップS1の工程においては、図22に示すように、個別金型20の型板21の金型面21aを上側にし、前記型板21のキャビティ31の底部の溝21bに半導体モジュール220の外部接続用端子225の他方の端部を差し込むことで、前記キャビティ31の内部に半導体モジュール220を取り付ける。
次に、個別金型20の型板21,22同士を金型面21a,22a同士が対向するように重ね合わせて、個別金型20の型板22を半導体モジュール220に被せる。これにより、半導体モジュール220は、外部接続用端子225が型板21のキャビティ31の底面に固定され、積層基板221の、半導体チップ224を実装した主面に対して反対側の主面の導電性板223bが型板22の金型面22aに接触して固定された状態で、キャビティ31の内部に取り付けられる。符号41’で示す下向きの矢印の方向は、個別金型20の型板21のキャビティ31の底部の溝21bに外部接続用端子225を差し込むときに半導体モジュール220に加える圧力41’の方向である。符号42’で示す下向きの矢印の方向は、個別金型20の型板22を半導体モジュール220に被せるときの前記型板22の移動方向である。
ここまでの工程で、図5の個別金型20を用いた場合と同様に、半導体モジュール220は、積層基板221の主面(半導体チップ224および外部接続用端子225を実装した面)を下側にして、積層基板221がキャビティ31の上側に位置するように取り付けられた状態になる。このため、図5の個別金型20を用いた場合と同様に、ステップS2の工程において個別金型20を回転させて、型板21,22を上下反転させた状態で、以降の工程の製造装置へ個別金型20を搬送することができる。
ステップS4の工程においては、図23に示すように、図5の個別金型20を用いた場合と同様に、個別金型20のランナー32側の面と本体金型10のゲート面14aとが対向するように、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20を嵌め込む。図5の個別金型20を用いた場合と同様に、ステップS2の工程において個別金型20の型板21,22の上下位置を変更しているため、個別金型20の、キャビティ31を有する型板21の下側に型板22が位置するように、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20が嵌め込まれる。
したがって、半導体モジュール220は、図5の個別金型20を用いた場合と同様に、積層基板221の主面を上側にして、積層基板221がキャビティ31の下側に位置するように取り付けられた状態になる。符号44’で示す矢印の方向は、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20を嵌め込むときに個別金型20に加える圧力44’の方向である。その後、図5の個別金型20を用いた場合と同様に、本体金型10の可動側の型板2を可動させて本体金型10を閉じた後、本体金型10を型締めすればよい。
以上、説明したように、実施の形態1によれば、半導体部品を取り付けるキャビティを個別金型に設け、本体金型には、個別金型を取り付ける空洞(凹部)と、個別金型に樹脂を供給するカルおよびランナーと、のみを設けた構成とする。これによって、本体金型に個別金型を取り付ける向きを種々変更することで、本体金型の内部における半導体部品の向きを自由に設計することができる。さらに、本体金型の内部における個別金型の位置、を種々変更することで、本体金型のランナーと個別金型のキャビティとの位置を自由に設計することができる。これにより、本体金型のランナーから個別金型のキャビティへ注入する樹脂の注入方向を自由に設計することができる。
また、本体金型に個別金型を嵌め合わせる段階では、本体金型と個別金型との間にはクリアランスによる隙間がある。このような状態で樹脂封止を行うと本体金型と個別金型との隙間に樹脂が流入し、個別金型が取り出せなくなる場合がある。それに対して、実施の形態1によれば、スライド機構を有することで、本体金型の型締め後、本体金型のゲート面と個別金型との間に隙間は生じない。したがって、樹脂封止時に、本体金型と個別金型との間に樹脂材料が流れ込むことを防止することができる。そのため、1サイクルの樹脂成型ごとに、個別金型の取り付けおよび取り外しを行うことができる。そのため、最適な向きで取り付けた半導体部品を有する個別金型を、最適な向きで成形金型に取り付けることができる。
また、実施の形態1によれば、半導体部品に対して行う事前処理(半導体部品の予備加熱等)や事後処理(半導体部品の1次硬化等)を、成形装置から個別金型を取り外した状態で行うことができる。このため、成形装置での処理の1サイクルに要する時間(サイクルタイム)を短縮することができる。また、実施の形態1によれば、同一構成の個別金型を複数用意することで、1つの個別金型で事後処理を行っている間に、前記個別金型での事後処理と並行して、他の個別金型を用いてで成形装置での処理を行うことができる。このため、成形装置での処理でのサイクルタイムをさらに短縮することができる。また、実施の形態1によれば、半導体部品ごと個別金型を用意することができるため、半導体部品の形状に合わせて個別金型を最適化可能である。また、実施の形態1によれば、本体金型の構成を変更しないため、金型変更に伴う成形装置での段取り変更を行う必要がない。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法として、金型面21a,22aが本体金型10の型板1,2の金型面1a,2aと直交するように本体金型10の固定側の型板1の凹部11のみに個別金型20を配置し、本体金型10のランナー13から個別金型20のキャビティ31に上側から下側へ向かう方向に樹脂材料47が供給される場合における半導体部品の樹脂封止方法を説明する。実施の形態2の本体金型10は、実施の形態1の図6に相当し、可動側の型板2に凹部15を有していない。図24は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法は、ステップS2の工程(個別金型20を回転させる工程)における個別金型20の回転角度、ステップS4の工程(個別金型20の取り付け)における本体金型10への個別金型20の取り付け方向と、ステップS5の工程(樹脂封止)の樹脂材料47の流動方向54と、が異なる以外は実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法(図9参照)と同様である。また、実施の形態2においては、本体金型10への個別金型20の取り付け方向が異なることで、個別金型20の各部の配置が後述するように実施の形態1の個別金型20と若干異なる。半導体モジュール220の構成(図10参照)は、実施の形態1と同様である。
具体的には、まず、実施の形態1と同様にステップS1〜S3の工程を順に行う。このとき、ステップS2の工程において、重力方向Gと直交する軸を中心に個別金型20を90°回転させる。すなわち、実施の形態1においては、ステップS2の工程の後、個別金型20の型板21,22のうちの一方の型板が他方の型板よりも下側(重力方向G側)に位置する状態であった(例えば型板22が型板21よりも下側:図11B参照)。それに対して、実施の形態2においては、ステップS2の工程において重力方向Gと直交する軸を中心に個別金型20を90°回転させることで、型板21,22の金型面21a,22aが重力方向Gに対して水平になり、型板21,22ともに同じ高さに位置した状態となる。こうすることで、半導体モジュール220の積層基板221の主面が重力方向Gに対して水平になった状態で、個別金型20が以降の工程へ搬送される(図24参照)。
図24に示すように、ステップS4の工程においては、金型面21a,22aが本体金型10の型板1,2の金型面1a,2aと直交するように、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20を配置する。この場合においても、実施の形態1と同様に(図13〜15参照)、本体金型10の可動側の型板2と個別金型20との間にスライド機構(不図示)を設けることで、個別金型20を本体金型10のゲート面14aに押し付けるように嵌め込むことができる。個別金型20の取り出し方法は、実施の形態1と同様に、イジェクトピン(不図示)により個別金型20を押し上げればよい。
実施の形態2の個別金型20は、実施の形態1の個別金型20(図12参照)と次の2点が異なる。1つ目の相違点は、個別金型20の型板21,22の、本体金型10の可動側の型板2の金型面22aに対向する側面にそれぞれ樹脂溜り33およびランナー32が形成されている点である。2つ目の相違点は、個別金型20の型板22の側の金型面22aに対して反対側の主面と、本体金型10のゲート面14aと、が対向するように、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20が嵌め込まれる点である。すなわち、積層基板221の、半導体チップ224を実装した導電性板223aと本体金型10のゲート面14aとが対向するように、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20が嵌め込まれている。
また、積層基板221の主面が本体金型10の型板1,2の金型面1a,2aに垂直になっていればよく、例えば、積層基板221の、半導体チップ224を実装していない導電性板223bと本体金型10のゲート面14aとが対向するように、本体金型10の固定側の型板1の凹部11に個別金型20が嵌め込まれていてもよい。この場合、個別金型20の型板21(本体金型10のゲート面14aと接する型板)の、本体金型10の可動側の型板2の金型面22aに対向する側面にランナー32が形成される。かつ、個別金型20の型板22の、本体金型10の可動側の型板2の金型面22aに対向する側面に樹脂溜り33が形成される。
上述したように本体金型10に個別金型20を取り付けることで、ステップS5の工程において、本体金型10のランナー13から個別金型20のキャビティ31に上側から下側へ向かう流動方向54で樹脂材料47が供給される。このため、重力により個別金型20のキャビティ31への樹脂材料47の充填が容易になる。また、樹脂材料47の流動時に樹脂材料47に発生した気泡47aは、浮力により個別金型20のキャビティ31の内部の上側の空間に移動する。このため、実施の形態1と同様に、積層基板221の、半導体チップ224表面や、半導体チップ224を実装した導電性板223a上に気泡47aが残ることを防止することができる。また、積層基板221の主面が樹脂材料47の流動方向54に略平行に位置するため、積層基板221上や、積層基板221と回路基板226との間の樹脂材料47の流れも阻害されにくい。
以上、説明したように、実施の形態2によれば、半導体部品を取り付けたキャビティ内部への樹脂材料の流動方向が異なる場合においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、個別金型の金型面と、本体金型の金型面と、が異なる方向を向いていることで、半導体部品の積層基板や回路基板を重力に平行な方向に配置され、樹脂や気泡の流動をよりスムーズにすることができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法として、金型面21a,22aが本体金型10の型板1,2の金型面1a,2aと直交するように本体金型10の可動側の型板2の凹部15のみに個別金型20を配置し、本体金型10のランナー13から個別金型20のキャビティ31に下側から上側へ向かう流動方向74で樹脂材料47が供給される場合における半導体部品の樹脂封止方法を説明する。実施の形態3の本体金型10は、実施の形態1の図7に相当し、固定側の型板1に凹部11を有していない。図25,26A,26B,27は、実施の形態3にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法は、個別金型20を回転させる工程、ステップS4の工程(個別金型20の取り付け)と、ステップS5の工程(樹脂封止)の樹脂材料47の流動方向74と、ステップS6の工程(個別金型5の取り出し)と、が実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法(図9参照)と異なる。個別金型20の構成は、後述するようにスライド機構60b,60cを設ける位置が異なる以外は実施の形態1と同様である。半導体モジュール220の構成(図10参照)は、実施の形態1と同様である。
具体的には、まず、実施の形態1と同様にステップS1〜S3の工程を順に行う。このとき、ステップS2の工程において、実施の形態2と同様に、重力方向Gと直交する軸を中心に個別金型20を90°回転させる。これにより、実施の形態2と同様に、半導体モジュール220の積層基板221の主面が重力方向Gに対して水平になった状態で、個別金型20が以降の工程へ搬送される(図25参照)。
次に、図25に示すように、ステップS4の工程において、本体金型10の可動側の型板2の凹部15に、ランナー32を下側にして個別金型20を嵌め込む。このとき、個別金型20は、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面に埋め込まれた電磁石18の電磁力をオンすることにより前記凹部15の内部に固定される。符号71で示す上向きの矢印の方向は、本体金型10の可動側の型板2の凹部15に個別金型20を嵌め込むときの個別金型20の移動方向である。
実施の形態3においては、実施の形態2と同様に、個別金型20を介して本体金型10の可動側の型板2の凹部15の内部に、積層基板221の主面が本体金型10の型板1,2の金型面1a,2aに垂直になるように半導体モジュール220が取り付けられる。かつ、本体金型10の可動側の型板2の凹部15に個別金型20を取り付けた状態で、樹脂溜り33はキャビティ31の上側に位置し、ランナー32はキャビティ31の下側に位置する。
本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面と、個別金型20の型板22の、前記凹部15の底面に対向する側面と、の間には、スライド機構60bが設けられている。スライド機構60bの突起部63は、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面に設けられている。スライド機構60bのノッチ64は、個別金型20の型板22の、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面に接触する側面(以下、個別金型20の型板22の上側の側面とする)に、突起部63と対向して設けられている。スライド機構60bの突起部63およびノッチ64の構成は、実施の形態1のスライド機構(図14A,14B参照)と同様である。本体金型10の可動側の型板2の凹部15に個別金型20を嵌め込んだときに、スライド機構60bを構成する突起部63がノッチ64に押し込まれる。
次に、図26Aに示すように、本体金型10の可動側の型板2を可動させて前記可動側の型板2の金型面2aを固定側の型板1の金型面1aに接触させることで、本体金型10を閉じる。本体金型10の固定側の型板1の金型面1aと、個別金型20の型板22の、本体金型10の固定側の型板1に対向する側面と、の間には、スライド機構60cが設けられている。スライド機構60cは、スライド機構60bと同様に、互いに嵌め合わせ可能な突起部65およびノッチ66で構成される。図26Aのスライド機構60cの突起部65とノッチ66とを嵌め合わせる途中の状態を図26Bに拡大して示す。
図26Bに示すように、スライド機構60cの突起部65は、本体金型10の固定側の型板1の金型面1aに設けられている。突起部65は、本体金型10のゲート面14a(図24参照)に対向する側面(傾斜面)65aが本体金型10の固定側の型板1の金型面1aに対して傾斜していることで、本体金型10の固定側の型板1の金型面1aから離れるほど(すなわち高くなるほど)、本体金型10のゲート面14aから傾斜面65aが離れるように幅の狭くなる略台形状の断面形状を有する。すなわち、突起部65の傾斜面65aは、本体金型10のゲート面14b(図26A参照)に対向する。本体金型10のゲート面14aとは、本体金型10の可動側の型板2の凹部15のゲート14側の側壁である。本体金型10の固定側の型板1のゲート14は、例えば、固定側の型板1の金型面1aと直交する方向に、個別金型20のランナー32に対向する位置まで延在している。
スライド機構60cのノッチ66は、個別金型20の型板22の、本体金型10の固定側の型板1の金型面1aに接触する面(以下、個別金型20の型板22の下側の側面とする)22dに、突起部65と対向して設けられている。ノッチ66は、個別金型20の型板22の下側の側面22dに対して本体金型10のゲート面14aに対向する側面(傾斜面)66aが傾斜していることで、個別金型20の型板22の下側の側面22dから離れるほど(すなわち深くなるほど)、本体金型10のゲート面14aから傾斜面66aが離れるように幅の狭くなる略台形状の断面形状を有する。すなわち、ノッチ66は、実施の形態1と同様に、突起部65と略同じ寸法で略同じ略台形状の断面形状を有する。このような構成のスライド機構60cを設けることで、本体金型10を閉じるときに本体金型10の可動側の型板2から固定側の型板1に加わる圧力72、および、本体金型10の型締め力3(図1参照)により、本体金型10の固定側の型板1の金型面1aの突起部65が個別金型20のノッチ66に押し込まれる。
次に、実施の形態1と同様に、本体金型10の型締めを行う。このとき、本体金型10の型締めの終盤において、電磁石18の電磁力をオフする。電磁石18の電磁力をオフすることで、本体金型10の型締め時、実施の形態1と同様にスライド機構60b,60cにより個別金型20が本体金型10のゲート面14bに強く押し付けられる。符号73は、本体金型10の型締め時に、スライド機構60cの突起部65の傾斜面65aとノッチ66の傾斜面66aとが接触したときに(図26B参照)、個別金型20が移動する方向(横方向)である。スライド機構60b,60cのいずれか一方のみが設けられていてもよい。
本体金型10に個別金型20を取り付けることで、ステップS5の工程において、図27に示すように、本体金型10のランナー13から個別金型20のキャビティ31に下側から上側へ向かう流動方向74で樹脂材料47が供給される。したがって、樹脂材料47の流動時に樹脂材料47に発生した気泡47aは、重力により個別金型20の上側の空間(すなわち樹脂溜り33)に移動しやすい。また、積層基板221の主面が樹脂材料47の流動方向74に略平行に位置するため、積層基板221上や、積層基板221と回路基板226との間の樹脂材料47の流れも阻害されにくい。
ステップS6の工程においては、可動側の型板2が可動させて本体金型10を型開きしたときに、電磁石18の電磁力をオフにしておく。これにより、本体金型10の固定側の型板1の金型面1a上に個別金型20を残した状態で本体金型10を型開きすることができ、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の内部から個別金型20を容易に取り出すことができる。電磁石18の電磁力をオンにしたまま、可動側の型板2を可動させて本体金型10を型開きしてもよい。この場合、本体金型10を型開きした後に電磁石18の電磁力をオフにして、可動側の型板2の凹部15の内部から個別金型20を取り出せばよい。
以上、説明したように、実施の形態3によれば、半導体部品を取り付けたキャビティ内部への樹脂材料の流動方向が異なる場合においても、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体装置の製造方法について説明する。図28,29A,30は、実施の形態4にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図29Bは、図29Aの切断線B1−B2における各部平面形状を示す平面図である。実施の形態4にかかる半導体装置の製造方法は、ステップS4の工程(個別金型20の取り付け)と、ステップS6の工程(個別金型5の取り出し)と、が実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法(図9参照)と異なる。かつ、ステップS4,S6の工程が実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法と異なることで、本体金型10の次の2点の構成が実施の形態3の本体金型10と異なる。
1つ目の相違点は、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面の幅x2を、個別金型20の、前記凹部15の底面に対向する面の長さ(個別金型20の金型面21a,22aと直交する方向の長さx11)よりも広くした点である。これによって、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の内部には、半導体モジュール220を樹脂封止するために個別金型20を配置する空間(以下、第2空間とする)15bに連続して、前記凹部15に個別金型20を出し入れするための空間(以下、第1空間とする)15aが設けられている。
2つ目の相違点は、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の開口側に、本体金型10のゲート面14bと直交するように突出する支持部15cが設けられている点である。支持部15cは、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の第2空間15bに配置された個別金型20の一部に接触して個別金型20を支持し、前記凹部15の内部からの個別金型20の落下を防止する機能を有する。半導体モジュール220を樹脂封止する際に、本体金型10のゲート面14bと、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の底面15dと、支持部15cとに囲まれた第2空間15bに個別金型20が嵌め込まれる(図29A,29B参照)。
このように本体金型10の可動側の型板2の凹部15に第1,2空間15a,15bを設けることで、ステップS4の工程において、まず、図28に示すように、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の第1空間15aに個別金型20を押し入れる。符号81で示す上向きの矢印の方向は、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の第1空間15aに個別金型20を押し入れるときの個別金型20の移動方向である。
次に、図29A、29Bに示すように、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の第2空間15bに個別金型20を嵌め込む。このとき、本体金型10の可動側の型板2の凹部15の第2空間15bに個別金型20を嵌め込むときの個別金型20にかかる横方向の圧力82により、本体金型10の固定側の型板1の金型面1aの突起部65が個別金型20のノッチ66に押し込まれる。これによって、個別金型20が本体金型10のゲート面14bに強く押し付けられる。
個別金型20の構成は、本体金型10の固定側の型板1の金型面1aと、個別金型20の型板22の、本体金型10の固定側の型板1に対向する側面と、の間にのみスライド機構60cを設ける以外は実施の形態3の個別金型20と同様である。図示省略するが、ステップS6の工程においては、本体金型10の型開き後に、第2空間15bから第1空間15aに個別金型20を引き出す。そして、第1空間15aから凹部15の外部へ個別金型20を取り出せばよい。
以上、説明したように、実施の形態4によれば、本体金型10への個別金型の取り付け方法を変更した場合であっても、半導体部品を取り付けたキャビティ内部への樹脂材料の流動方向が同じ実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
(比較例)
次に、比較例の金型の構造について説明する。図31は、比較例の金型の構造を示す斜視図である。図32は、図31の金型の固定側の型板を金型面側から見たレイアウトを示す平面図である。図33は、図32の切断線AA−AA’における断面構造を示す断面図である。図33には、金型200を閉じた状態を示す。図31に示すように、比較例の金型200は、金型面(主面)201a,202a同士を対向させた状態で樹脂封止する半導体部品を内部に配置可能な空洞(後述するキャビティ211)を形成する2つ(2枚)の型板201,202で構成される。2つの型板201,202のうちの一方の型板201は成形装置の固定盤に取り付けられ、他方の型板202は成形装置の可動盤に取り付けられる。
固定側の型板201の金型面201aには、キャビティ211、カル212、ランナー213、ゲート214および樹脂溜り215が形成されている(図31には不図示、図32参照)。キャビティ211は、樹脂封止する半導体部品を配置する凹部である。カル212は、半導体部品の樹脂封止に用いる樹脂材料片を配置する溝である。ランナー213は、カル212からキャビティ211へ流動する樹脂材料の流動経路となる溝であり、カル212とすべて(ここでは4つ)のキャビティ211とを繋ぐように形成される。ゲート214は、ランナー213とキャビティ211との間に形成され、キャビティ211に流れ込む樹脂材料の速度を調整する機能を有する。樹脂溜り215は、キャビティ211へ流動しキャビティ211から溢れた樹脂材料を収容する溝である。
可動側の型板202には、金型200を閉じたとき(すなわち型板201,202の金型面201a,202a同士が接触したとき)に、型板201のカル212と対向する位置にポット(加熱室)216が形成されている。型板202のポット216は、型板202の金型面202aから他方の主面に貫通する貫通孔である。型板202のポット216の内部には、型板201のカル212に配置され軟化された樹脂材料片を前記カル212からキャビティ211へ圧入するために樹脂材料片に圧力をかけるブランジャー(不図示)が配置される。半導体部品の樹脂封止時に金型200が閉じた状態が維持されるように金型200を締め付ける(型締めする)圧力(型締め力)203は、成形品の寸法や、金型200による1回の成形で処理可能な成形品数により決定される。
この比較例の金型200では、例えば固定側の型板201上に可動側の型板202を配置した場合、型締め力203の方向は型板201,202の金型面201a,202aと直交する上下方向(重力の方向に平行する方向)となる。この場合、固定側の型板201のキャビティ211に配置される半導体部品の取り付け方や、キャビティ211へ樹脂材料231を流動させる方向233(図37参照)が制約される。
比較例の金型200を用いた半導体部品の樹脂封止法について、一般的な構成の半導体モジュール(半導体部品)220を樹脂封止する場合を例に説明する。図34は、比較例の半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。図34には、比較例の金型200を用いた半導体モジュール220の樹脂封止の1サイクルを示す。図35〜38は、比較例の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図35〜38には、比較例の金型200を用いた半導体モジュール220の樹脂封止途中の状態を示す。
図35に示すように、一般的な半導体モジュール220は、半導体チップ224、外部接続用端子225および積層基板221を備える。外部接続用端子225は、積層基板221の、半導体チップ224を実装した導電性板223aに一方の端部を接合している。また、外部接続用端子225は、積層基板221の主面に対して垂直に配置した構成となっている。積層基板221は、セラミック基板222の両面にそれぞれ導電性板223a,223bを形成してなる。また、図35に示す半導体モジュール220は、回路配線を行う回路基板226および端子ピン227を備える。
この半導体モジュール220を樹脂封止するにあたって、まず、半導体モジュール220を組立てた後、外部接続用端子225の他方の端部を、金型200の下側(重力方向G側)に位置する固定側の型板201のキャビティ211の底面の溝211aに差し込むことで、キャビティ211の内部に半導体モジュール220を取り付ける(ステップS101)。すなわち、ステップS101においては、半導体モジュール220は、外部接続用端子225により金型200の固定側の型板201のキャビティ211の内部に固定される。
次に、金型200を閉じた後、金型200を型締めする。このとき、金型200の固定側の型板201は、金型面201aを上側(重力方向Gに対して反対側)にして配置される。かつ、金型200の可動側の型板202は、金型面202aを下側(重力方向G側)にして、固定側の型板201の上に配置される。このため、半導体モジュール220は、積層基板221の半導体チップ224および外部接続用端子225を実装した主面を下側にして、キャビティ211の内部に取り付けられる。
例えば、金型200の下側に位置する固定側の型板201のキャビティ211の底面に、積層基板221の裏面(半導体チップ224および外部接続用端子225を実装した主面に対して反対の面)を下側にして、半導体モジュール220を取り付けることは、好ましくない。その理由は、固定側の型板201の上側に位置する可動側の型板202の金型面202aに、外部接続用端子225の他方の端部(積層基板221に接合していない側の端部であって、成形樹脂から露出されるべき部分)を差し込む溝(不図示)が形成され、前記溝に、金型200の型締め時に外部接続用端子225の他方の端部が差し込まれることになるからである。この場合、可動側の型板202の金型面202aの溝に外部接続用端子225の他方の端部を差し込む際に、外部接続用端子225が折れたり、曲がったりする虞ある。
また、例えば、金型200の上側の型板である可動側の型板202の金型面202aに溝を形成し、前記溝に外部接続用端子225の他方の端部を差し込むことは、好ましくない。その理由は、金型200の型締めを始める前までに、可動側の型板202の金型面202aの溝から半導体モジュール220の外部接続用端子225が抜け落ちて、半導体モジュール220が落下する虞があるからである。このため、半導体モジュール220は、外部接続用端子225の他方の端部を、金型200の下側の型板である固定側の型板201の溝211aに差し込んで取り付けられる。結果として、半導体モジュール220は、積層基板221の主面(半導体チップ224および外部接続用端子225を実装した面)を下側にして、積層基板221がキャビティ31の上側に位置するように取り付けられた状態になる。
次に、金型200に取り付けた状態で半導体モジュール220を所定時間放置する(ステップS102)。金型200の温度は、常時、例えば130℃〜180℃程度に保たれている。このため、ステップS103に進む前に、金型200に取り付けた状態で半導体モジュール220を所定時間放置することで、金型200の内部の半導体モジュール220も加熱される。次に、固定側の型板201のカル212に樹脂材料片を配置する。樹脂材料片は、ポット216で加熱されて軟化し、軟化した樹脂材料231がキャビティ211の内部に流動する(図36)。符号232は、キャビティ211の内部に流動した樹脂材料231の内部に残る気泡(ボイド)である。
次に、ブランジャー204により、固定側の型板201のカル212の内部の軟化された樹脂材料231に圧力をかけて流動させ、樹脂材料231をキャビティ211へ圧入することで、キャビティ211の内部に樹脂材料231を充填させる(図37)。これにより、キャビティ211の内部の半導体モジュール220が樹脂材料231で覆われ、半導体モジュール220が樹脂封止される(ステップS103)。キャビティ211から溢れた樹脂材料231は、キャビティ211に対してランナー213の反対側においてキャビティ211に隣接する樹脂溜り215に収容される。符号234は、樹脂溜り215まで移動した気泡232が溜まってなるエア溜りである(図38)。
次に、樹脂材料231で樹脂封止された半導体モジュール220をキャビティ211の内部で所定時間保持することで、樹脂材料231を1次硬化させる(ステップS104)。次に、金型200を開けて(型開きして)成形品(樹脂材料231で樹脂封止された半導体モジュール220)を取り出す(ステップS105)。こうして外部接続用端子225の他方の端部および積層基板221の裏面が露出され、それ以外の部分が樹脂封止された半導体モジュール220が成形される。次に、成形装置や金型200に付着した樹脂材料の残渣(残樹脂)等を清掃することで(ステップS106)、半導体モジュール220の樹脂封止の1サイクルが完了する。これらステップS101〜S106の工程を繰り返し行うことで、半導体モジュール220の樹脂封止が連続して行われる。
この比較例の金型200(図31〜33)では、上述したように金型200の固定側の型板201が金型面201aを上側にして配置され、可動側の型板202が金型面202aを下側(重力方向側)にして固定側の型板201の上に配置される。この場合、半導体モジュール220の樹脂封止時、軟化した樹脂材料231は、重力方向と直交する方向233に流動することとなる。このため、樹脂材料231は、重力によりキャビティ211の内部の下側の空間を優先的に流れる。これによって、キャビティ211の内部の中間の高さ位置から上側(重力方向側に対して反対側)の高さ位置までの空間では、キャビティ211の内部の下側の空間よりも樹脂材料231の流動速度が遅くなる。
例えば、キャビティ211の内部で樹脂材料231の流動速度に差が生じた場合、キャビティ211の内部の、樹脂材料231の流動速度の遅い上側の空間に気泡232が残ってしまう。このため、上述したように、半導体モジュール220の位置精度確保や固定のために、キャビティ211の内部の上側の空間に積層基板221が位置するように半導体モジュール220が配置された場合(図36〜38参照)、積層基板221の、半導体チップ224を実装した導電性板223a上に気泡232が残った状態で半導体モジュール220が樹脂封止されてしまう虞がある。導電性板223a上に残る気泡232は、半導体モジュール220に絶縁不良を発生させる原因となる。すなわち、比較例の金型200は、半導体部品の形状に合わせて最適化することが困難である。
それに対して、本発明によれば、上述したように、本体金型10に個別金型20を取り付ける向きを種々変更することで、本体金型10の内部における半導体モジュール220の向きを自由に設計することができる。このため、例えば、個別金型20のキャビティ31の内部の下側の空間に積層基板221が位置するように半導体モジュール220を配置することで、比較例の金型200で生じた上記問題が生じない。
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、凹部、ランナーおよび樹脂溜りの配置や形状、寸法が異なる個別金型であっても、外形寸法が同じ個別金型である場合には、1つの本体金型に、各種の半導体モジュールに対応した個別金型を嵌めこんでもよい。また、直方体状の個別金型が例えば0度(=180度)回転させた場合と90度回転させた場合とで同じ寸法である場合、1つの本体金型に同じ構成の個別金型を嵌め込む際に、その都度異なる向きで個別金型を本体金型に嵌めこんでもよい。