以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
(配電システムの全体構成)
図1は、本実施形態に係る配電システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る配電システム100は、直流電源装置10と、分電盤12と、分電盤14と、遠制装置16と、開閉器18と、開閉器20と、機器22と、開閉器一括監視装置24と、遠隔監視制御装置26とを有する。配電システム100は、直流電源装置10から、電力系統を構成する配電線上に設けられた開閉器18、20及び機器22に、制御用の電流を一括で供給して、開閉器18、20、及び機器22を動作させるシステムである。また、配電システム100は、開閉器一括監視装置24により、開閉器18、20に供給される制御用の電流(制御電流)の波形を記録して、複数の開閉器を一括監視する。なお、図1の例では、配電システム100には、2つの開閉器18、20のみが記載されているが、開閉器の数は、複数であれば任意であり、3つ以上設けられていてもよい。また、機器22は、開閉器(遮断器)以外の機器であり、図1の例では1つであるが、複数設けられていてもよい。この場合、機器は、開閉器(遮断器)以外の機器であれば、その機能も任意である。
配電システム100は、直流電源装置10と、分電盤12と、分電盤14と、遠制装置16と、開閉器18、20と、機器22と、開閉器一括監視装置24とが、電気所110に設けられ、遠隔監視制御装置26が、制御所120に設けられている。電気所110は、例えば発電所や変電所などの電気所設備である。また、制御所120は、例えば給電所などであり、電気所110から離れた場所に設けられる設備である。
制御電源としての直流電源装置10は、電気所110に設けられた開閉器及び機器(図1の例では開閉器18、20及び機器22)に対し、それらの開閉器及び機器を制御するための制御電流(制御用の電流)と、それらの開閉器及び機器を実際に操作するための操作電流(操作用の電流)とを供給する直流電源である。つまり、直流電源装置10は、各機器に供給する制御電流を一括して生成する制御電源と、各機器に供給する操作電流を一括して生成する操作電源と、を備えている。尚、本実施の形態に限定されず、制御電源と操作電源とは、個別の直流電源装置に設けられていてもよい。
図1に示すように、直流電源装置10は、整流器30と、蓄電池32と、供給母線34と、配線用遮断器36、37、38と、操作電源出力端子40と、制御電源出力端子42と、電源出力端子43と、電流測定部S1、S2とを有する。整流器30は、供給母線34の電源側に設けられ、交流電源からの交流電流を直流電流に変換する。蓄電池32は、供給母線34の電源側に設けられ、整流器30から出力される直流電流を充電する。供給母線34は、整流器30からの直流電流が流れる電線である。配線用遮断器36は、整流器30と供給母線34とを接続する配線上に設けられる配線用遮断器(MCCB;Molded Case Circuit Breaker)である。
配線用遮断器37は、供給母線34と操作電源出力端子40とを接続する配線上に設けられる配線用遮断器である。配線用遮断器37は、供給母線34に供給されている直流電流の一部を分岐して、操作電源出力端子40に主幹電流I2として供給する。操作電源出力端子40は、配線用遮断器37を介して供給母線34と接続されており、主幹電流I2が入力される。操作電源出力端子40は、分電盤12に主幹電流I2を出力する。なお、主幹電流I2は、開閉器18、20及び機器22用の操作電流を含む。すなわち、開閉器18、20及び機器22は、主幹電流I2から分岐された電流を、それぞれの操作電流として取得している。言い換えれば、直流電源装置10は、各機器の操作電流を、主幹電流I2として一括で供給している。なお、主幹電流I2は、最大値が後述する主幹電流I1より大きい。
配線用遮断器38は、供給母線34と制御電源出力端子42とを接続する配線上に設けられる配線用遮断器である。配線用遮断器38は、供給母線34に供給されている直流電流の一部を分岐して、制御電源出力端子42に主幹電流I1として供給する。制御電源出力端子42は、配線用遮断器38を介して供給母線34と接続されており、主幹電流I1が入力される。制御電源出力端子42は、分電盤14に主幹電流I1を出力する。なお、主幹電流I1は、開閉器18、20及び機器22用の制御電流を含む。すなわち、開閉器18、20及び機器22は、主幹電流I1から分岐された電流を、それぞれの制御電流として取得している。言い換えれば、直流電源装置10は、各機器の制御電流を、主幹電流I1として一括で供給している。
電源出力端子43は、配線用遮断器を介して供給母線34と接続されている。電源出力端子43は、予備の出力端子であり、1つであっても複数であってもよく、未使用であるが必要に応じて使用(他の設備に接続)してもよい。
電流測定部S1は、供給母線34と制御電源出力端子42とを接続する配線上であって、配線用遮断器38と制御電源出力端子42との間に設けられる。電流測定部S1は、主幹電流I1を測定するセンサであり、本実施形態では、クランプ式電流変成器である。電流測定部S1は、所定の時間毎に、主幹電流I1の電流値を測定する。電流測定部S1は、主幹電流I1の測定値(測定データ)を、開閉器一括監視装置24に送信する。なお、電流測定部S1は、分電盤14よりも上流側に設けられ、分電盤14で開閉器18、20及び機器22のそれぞれの制御電流に分岐する前の主幹電流I1を測定するものであれば、設置位置及び電流測定の方式は任意である。
電流測定部S2は、供給母線34と操作電源出力端子40とを接続する配線上であって、配線用遮断器37と操作電源出力端子40との間に設けられる。電流測定部S2は、主幹電流I2を測定するセンサであり、本実施形態では、クランプ式電流変成器である。電流測定部S2は、所定の時間毎に、主幹電流I2の電流値を測定する。電流測定部S2は、主幹電流I2の測定値(測定データ)を、開閉器一括監視装置24に送信する。なお、電流測定部S2は、分電盤12よりも上流側に設けられ、分電盤12で開閉器18、20及び機器22のそれぞれの操作電流に分岐する前の主幹電流I2を測定するものであれば、設置位置及び電流測定の方式は任意である。
分電盤12は、直流電源装置10の操作電源出力端子40を介して供給される主幹電流I2を、操作電流として各機器(開閉器18、20及び機器22)に分配する受電設備である。分電盤12は、操作電源母線46と、操作電源入力端子48と、操作電源出力端子49とを有する。操作電源入力端子48は、直流電源装置10の操作電源出力端子40に接続され、操作電源出力端子40から主幹電流I2が入力される。操作電源母線46は、操作電源入力端子48に接続される配電線である。操作電源母線46は、操作電源入力端子48からの主幹電流I2を、各機器用の複数の操作電流に分岐(分配)する。操作電源出力端子49は、複数設けられ、それぞれが操作電源母線46に接続される。操作電源出力端子49は、主幹電流I2から分岐された操作電流がそれぞれ入力される。操作電源出力端子49のうちの1つは、操作配電線P0を介して、後述する開閉器18の投入回路73に接続され、操作配電線P0を介して、投入回路73に操作電流を出力する。また、図示は省略するが、他の操作電源出力端子49は、開閉器18以外の機器(開閉器20や機器22)にそれぞれ接続され、それぞれに操作電流を供給する。
分電盤14は、直流電源装置10の制御電源出力端子42を介して供給される主幹電流I1を、制御電流として各機器(開閉器18、20及び機器22)に分配する受電設備である。分電盤14は、制御電源母線50と、制御電源入力端子52と、制御電源出力端子54とを有する。制御電源入力端子52は、直流電源装置10の制御電源出力端子42に接続され、制御電源出力端子42から主幹電流I1が入力される。制御電源母線50は、制御電源入力端子52に接続される配電線である。制御電源母線50は、制御電源入力端子52からの主幹電流I1を、各機器用の複数の制御電流に分岐(分配)する。制御電源出力端子54は、複数設けられ、それぞれが制御電源母線50に接続される。制御電源出力端子54は、主幹電流I1から分岐された制御電流がそれぞれ入力される。制御電源出力端子54のうちの1つは、制御配電線P1を介して、後述する開閉器18の投入制御回路70、引き外し回路71、シールイン回路72に接続され、制御配電線P1を介して、それらの各回路に制御電流を出力する。また、図示は省略するが、他の制御電源出力端子54は、開閉器18以外の機器(開閉器20や機器22)にそれぞれ接続され、それぞれに制御電流を供給する。
遠制装置16は、遠隔制御装置であり、遠隔監視制御装置26と通信可能に接続され、遠隔監視制御装置26の子局として機能する。具体的には、遠制装置16は、遠隔監視制御装置26からの開閉器18を含めた複数の開閉器に向けた投入指令又は引外し指令を所定の伝送手順により受信して、各指令に応じた信号を開閉器に送信する機能を有する。尚、所定の伝送手順としては、情報を定周期で送受信するCDT(Cyclic Data Transfer)方式、イベント情報が発生する度に送受信するHDLC(High level Data Link Control)方式等が採用される。
遠制装置16は、電源入力端子56と、制御用継電器58と、選択用継電器60と、投入指令出力端子62と、制御用継電器64と、選択用継電器66と、引き外し指令出力端子68とを有する。
電源入力端子56は、分電盤14の制御電源出力端子54のうちの1つに接続される。制御用継電器58は、遠隔監視制御装置26から受信した投入指令に基づいて、複数の開閉器の中でいずれか一つの開閉器を投入する(閉動作させる)際に励磁される。選択用継電器60は、複数設けられ、遠隔監視制御装置26から受信した投入指令に基づいて、複数の開閉器の中で投入操作(閉動作)を行う開閉器を選択する。投入指令出力端子62は、複数の選択用継電器60毎に対応づけられて設けられ、選択用継電器60により選択された開閉器の投入制御回路70に向けて投入指令(閉動作指令)を出力する。なお、制御用継電器58及び複数の選択用継電器60は、対応する継電器が励磁された場合に連動して閉じる主接点及び補助接点を有する。
制御用継電器64は、遠隔監視制御装置26から受信した引き外し指令に基づいて、複数の開閉器の中でいずれか一つの開閉器を遮断する(開動作させる)際に励磁される。選択用継電器66は、複数設けられ、遠隔監視制御装置26から受信した引き外し指令に基づいて、複数の開閉器の中で引外し操作(開動作)を行う開閉器を選択する。引き外し指令出力端子68は、複数の選択用継電器66毎に対応づけられて設けられ、選択用継電器66により選択された開閉器の引き外し回路71に向けて引外し指令(閉動作指令)を出力する。なお、制御用継電器64及び複数の選択用継電器66は、対応する継電器が励磁された場合に連動して閉じる主接点及び補助接点を有する。
開閉器18は、高圧及び特別高圧向けの電線路(送電線又は配電線)に流れる電流の開閉を行う開閉器であり、真空遮断器、ガス遮断器、空気遮断器、磁気遮断器等の種類がある。開閉器18は、シールイン回路72が接続された間接遮断方式の開閉器である。開閉器18は、投入制御回路70と、引き外し回路71と、シールイン回路72と、投入回路73とを有する。投入制御回路70と、引き外し回路71と、シールイン回路72とは、制御配電線P1にそれぞれ並列に接続されており、分電盤14から制御配電線P1に供給された制御電流により動作する。投入回路73は、操作配電線P0に接続されており、分電盤12から操作配電線P0に供給された操作電流により動作する。このため、開閉器18は、電源系統として2系統有している。
投入制御回路70は、投入動作(閉動作)を制御するための回路である。投入制御回路70は、接点70Aと、投入ロック端子70Bと、遮断器投入制御コイル70Cと、接点70Dとを有する。接点70Aは、投入制御回路70の最も制御配電線P1側に配置される接点である。投入ロック端子70Bは、接点70Aに直列に接続され、接点70Aよりも制御配電線P1と反対側に配置されている。遮断器投入制御コイル70Cは、接点70A及び投入ロック端子70Bに直列に接続され、投入ロック端子70Bよりも制御配電線P1と反対側に配置されている。接点70Dは、接点70A、投入ロック端子70B及び遮断器投入制御コイル70Cに直列に接続され、遮断器投入制御コイル70Cよりも制御配電線P1と反対側に配置されている。また、接点70Aと投入ロック端子70Bとの間には、遠制装置16の投入指令出力端子62からの配線が接続されている。ただし、以上の投入制御回路70の構成は一例であり、投入動作(閉動作)を制御可能な回路であればよい。例えば、投入ロック端子70Bは設けられていなくてもよく、また例えば、遠制装置16の投入指令出力端子62からの配線は、投入ロック端子70Bと遮断器投入制御コイル70Cとの間に接続されていてもよい。
引き外し回路71は、引き外し動作(開動作)を行うための回路である。引き外し回路71は、接点71A1、71A2と、トリップロック端子71Bと、遮断器引き外しコイル71Cと、接点71Dとを有する。接点71A1は、引き外し回路71の最も制御配電線P1側に配置される接点である。接点71A2は、接点71A1に直列に接続され、接点71A1よりも制御配電線P1と反対側に配置されている。トリップロック端子71Bは、接点71A1、71A2に直列に接続され、接点71A2よりも制御配電線P1と反対側に配置されている。遮断器引き外しコイル71Cは、接点71A1、71A2及びトリップロック端子71Bに直列に接続され、トリップロック端子71Bよりも制御配電線P1と反対側に配置されている。接点71Dは、接点71A1、71A2、トリップロック端子71B及び遮断器引き外しコイル71Cに直列に接続され、遮断器引き外しコイル71Cよりも制御配電線P1と反対側に配置されている。また、接点71A2とトリップロック端子71Bとの間には、遠制装置16の引き外し指令出力端子68からの配線が接続されている。ただし、以上の引き外し回路71の構成は一例であり、引き外し動作(開動作)を行うことが可能な回路であればよい。例えば、遠制装置16の引き外し指令出力端子68からの配線は、トリップロック端子71Bと遮断器引き外しコイル71Cとの間に接続されていてもよい。
シールイン回路72は、引き外し回路71の接点71A1、71A2を閉じて引き外し回路71に引き外し動作を行わせるための回路である。シールイン回路72は、接点72X1、72X2、72Y1、72Y2と、リレー72A1、72A2、72B1、72B2と、トリップロック端子72Dと、接点72Eとを有する。接点72X1は、シールイン回路72の最も制御配電線P1側に配置される接点である。接点72X2は、接点72X1に直列に接続され、接点72X1よりも制御配電線P1と反対側に配置されている。接点72X2は、接点72X1のフェイルセーフ用の接点である。接点72Y1は、接点72X1、72X2と並列に制御配電線P1に接続される接点である。接点72Y2は、接点72Y1と直列に接続され、接点72Y1よりも制御配電線P1と反対側に配置されている。すなわち、接点72Y1、72Y2は、接点72X1、72X2と並列に接続されている。リレー72A1は、接点72X1、72X2及び接点72Y1、72Y2に直列に接続されており、接点72X2、72Y2よりも制御配電線P1と反対側に配置されている。リレー72A2は、コイル72A1よりも制御配電線P1と反対側に配置され、リレー72A1に直列に接続されている。トリップロック端子72Dは、コイル72A2よりも制御配電線P1と反対側に配置され、コイル72A2に直列に接続されている。接点72Eは、トリップロック端子72Dよりも制御配電線P1と反対側に配置され、トリップロック端子72Dに直列に接続されている。リレー72B1とリレー72B2とは、直列に接続されている。リレー72B1とリレー72B2とは、リレー72A1、72A2が接続されている回路とは電気的に接続されておらず、リレー72A1、72A2の励磁により励磁される。
投入回路73は、実際に投入動作(閉動作)を行うための回路である。投入回路73は、操作配電線P0に接続されており、接点73Aと投入コイル73Cとを有する。接点73Aは、投入回路73の最も操作配電線P0側に配置される接点である。投入コイル73Cは、接点73Aに直列に接続され、接点73Aよりも操作配電線P0と反対側に配置されている。ただし、以上の投入回路73の構成は一例であり、投入動作(閉動作)を行うことが可能な回路であればよい。
開閉器20は、開閉器18とは異なり、シールイン回路72を有していない開閉器である。開閉器20は、投入制御回路70と、引き外し回路71と、投入回路73とを有しているが、例えば引き外し回路71の接点71A1、71A2が、手動で開閉可能なものになっている。開閉器20は、開閉器18とは別の操作配電線P0及び制御配電線P1に接続されている。このように、配電システム100は、シールイン回路72を有する開閉器18と、シールイン回路72を有さない開閉器20とを備えている。ただし、配電システム100は、複数の開閉器を備えており、その開閉器の少なくとも1台がシールイン回路72を有しているものであれば、開閉器の数は任意である。
機器22は、開閉器以外の機器であり、開閉器18、20とは別の操作配電線P0及び制御配電線P1に接続されている。機器22は、定常的に一定の制御電流が入力されることで、所定の動作を行っている。
開閉器一括監視装置24は、各開閉器(図1の例では、開閉器18、20)の動作を一括監視する装置である。開閉器一括監視装置24は、電流測定部S1、S2が測定した主幹電流I1、I2の測定値に基づき、制御電流の波形を記録することで、開閉器の動作を監視する。主幹電流I1は、各開閉器及び機器の制御電流が分岐される前の一括された電流であるため、この主幹電流I1の波形を測定、記録することで、全ての開閉器の動作を一括して監視することができる。開閉器一括監視装置24の構成については、後述する。
配電システム100は、以上説明したような構成となっている。
(開閉器の操作)
次に、開閉器18の投入動作(閉動作)及び引き外し動作(開動作)について説明する。最初に、投入動作について説明する。開閉器18は、投入制御回路70に制御電流が入力されると、投入動作(閉動作)を行う。投入制御回路70は、例えば手動で接点70Aが閉じられることで、遮断器投入制御コイル70Cに制御配電線P1からの制御電流が供給される。遮断器投入制御コイル70Cは、制御電流が供給されると励磁され、投入回路73の接点73Aを閉じる。投入回路73は、接点73Aが閉じると、投入電流が投入コイル73Cに供給される。投入コイル73Cは、投入電流により励磁され、駆動力を、開閉器18の図示しないリンク機構に伝達する。また、開閉器18には、図示しない遮断部が設けられており、遮断部は、絶縁ケース内に可動接触子と固定接触子とが設けられている。リンク機構は、投入コイル73Cからの駆動力を、図示しない絶縁操作ロッドなどを介して、遮断部の可動接触子に伝えて、可動接触子を固定接触子に接触させる。これにより、開閉器18は、投入(閉)状態となる。また、投入制御回路70は、遠制装置16の投入指令出力端子62から、投入用の電流が入力された際にも、同様に遮断器投入制御コイル70Cに電流を入力して、投入回路73の接点73Aを閉じることにより、投入動作(閉動作)を行う。投入動作が完了すると、接点70Dが開いて、遮断器投入制御コイル70Cへの電流の入力が停止される。
次に、引き外し動作について説明する。開閉器18は、シールイン回路72に制御電流が入力されると、引き外し回路71の接点71A1、71A2を閉じて、引き外し回路71に引き外し動作(開動作)を行わせる。シールイン回路72は、例えば地絡事故や短絡事故などの異常を検出した場合に、自動で接点72X1、72X2を閉じる。これにより、シールイン回路72には、制御配電線P1からの制御電流が入力される。シールイン回路72は、これにより接点72Y1、72Y2が閉じて、自己保持状態となる。接点72X1、72X2又は接点72Y1、72Y2が閉じると、制御配電線P1からの制御電流がリレー72A1、72A2に入力される。リレー72A1、72A2は、制御電流によりコイルが励磁され、引き外し回路71の接点71A1、71A2を閉じる。
引き外し回路71は、接点71A1、71A2が閉じられると、遮断器引き外しコイル71Cに制御配電線P1からの制御電流が供給される。遮断器引き外しコイル71Cは、制御電流が供給されると励磁され、駆動力を、開閉器18のリンク機構に伝達する。リンク機構は、遮断器引き外しコイル71Cからの駆動力を、絶縁操作ロッドなどを介して、遮断部の可動接触子に伝えて、可動接触子を固定接触子から引き離す。これにより、開閉器18は、引き外し(開)状態となる。また、引き外し回路71は、遠制装置16の引き外し指令出力端子68から、引き外し用の電流が入力された際にも、同様に遮断器引き外しコイル71Cに電流を入力して、リンク機構に駆動力を伝えることにより、引き外し動作(開動作)を行う。引き外し動作が完了すると、接点71Dが開いて、遮断器引き外しコイル71Cへの電流の入力が停止される。このように、シールイン回路72は、主幹電流I1が制御電流として供給された場合に、シールイン回路72に接続された開閉器18(の引き外し回路71)の接点71A1、71A2を閉じることにより、開閉器18(の遮断器引き外しコイル71C)に主幹電流I1を供給させて、開閉器18を開動作させる。
(制御電流の波形)
次に、制御電流の波形について説明する。配電システム100は、開閉器一括監視装置24が、制御電流の波形を記録する。具体的には、開閉器一括監視装置24は、電流測定部S1が計測した主幹電流I1の波形を記録する。上述のように、主幹電流I1は、制御電流が分岐される前の電流であるため、主幹電流I1の波形から、制御電流の波形を抽出することができる。
開閉器18、20が動作していない場合には、主幹電流I1は、機器22の制御電流のみが流れている。機器22の制御電流は、常時一定量の変化が少ない定常電流であるため、開閉器18、20が動作していない場合には、主幹電流I1は、変化が少ない定常電流の波形となる。一方、開閉器18、20が投入動作又は引き外し動作をしている場合、開閉器18、20に制御電流が流れるため、主幹電流I1の波形は、開閉器18、20の制御電流の分、大きく変化する。開閉器一括監視装置24は、このように主幹電流I1の波形が変化した場合に、開閉器18、20に制御電流の波形が流れている可能性があると判断して、その主幹電流I1の波形を記録する。
ここで、開閉器18は、シールイン回路72が接続されている。発明者は、シールイン回路72が接続されている開閉器18の引き外し動作時の制御電流の波形が、開閉器20の引き外し動作時の制御電流の波形と異なることを発見した。このように波形が異なると、開閉器18の制御電流の波形を抽出して記録することが困難となる。それに対し、発明者は、シールイン回路72が接続されている開閉器18の制御電流の波形を適切に記録する方法を想起した。以下、波形の違いについて説明する。
図2は、シールイン回路が接続されていない開閉器の制御電流波形の一例を示すグラフである。さらに詳しくは、図2は、開閉器20の引き外し動作が行われている際の主幹電流I1の波形を示している。図2の横軸は時間であり、縦軸の左側が電流(A)であり、縦軸の右側が電流の変化率(%)である。図2の線分L1は、時間毎の主幹電流I1の値を示しており、図2の線分L2は、時間毎の主幹電流I1の変化率を示している。なお、線分L2に示す変化率は、複数のサンプリング点(ここでは5サンプリング)の移動平均で算出した値である。なお、ここでの変化率は、電流測定部S1が直前のタイミングで測定した主幹電流I1の測定値に対する主幹電流I1の測定値の差分値の比率である。
図2に示すように、時間t1より前では、主幹電流I1は、変化率が0に近い定常電流となっている。すなわち、時間t1より前には、開閉器20が動作しておらず、機器22にのみ制御電流が供給されている。時間t1から時間t2までは、時間経過に従い、電流の変化率が上昇しながら主幹電流I1の値が上昇している。そして、時間t2から時間t3までは、時間経過に従い、電流の変化率が下降しているが、時間t3においても、電流の変化率は0より大きい。従って、時間t2から時間t3までは、時間経過に伴い、主幹電流I1の値の上昇は続くが、上昇率が時間t1から時間t2までより小さくなっている。時間t3から時間t4までは、時間経過に伴い、電流の変化率が再度上昇しながら、主幹電流I1の値が上昇している。また、時間t4から時間t5までは、時間経過に伴い、電流の変化率が下降し、時間t5で電流の変化率が0となる。従って、時間t4から時間t5までは、時間経過に伴い、主幹電流I1の値の上昇は続くが、上昇率が時間t3から時間t4までより小さくなっている。時間t5から時間t6までは、時間経過に伴い、電流の変化率が0から下降しており、主幹電流I1の値が下降する。ただし、時間t6においても、主幹電流I1の値は、定常電流(時間t1より前)での値より大きい。時間t6から時間t7までは、電流の変化率がマイナスから上昇し、時間t7において0となる。時間t6から時間t7までにおいて、主幹電流I1は、下降を続けるが、時間t5から時間t6までの下降率より小さい。そして、主幹電流I1は時間t7において、定常電流の値となる。時間t7以降は、電流の変化率が0に近いままとなり、主幹電流I1も定常電流のままとなる。
図2においては、時間t1において開閉器20(引き外し回路71)への制御電流の供給が開始しており、時間t5において開閉器20の引き外し動作が完了している。そして、時間t5以降は、引き外し回路71の接点のアーク抵抗により制御電流が減少していき、時間t7で開閉器20(引き外し回路71)への制御電流の供給が終了している。開閉器一括監視装置24は、主幹電流I1の波形がこのような波形である場合に、時間t1から時間t5までの間が、開閉器20に引き外し動作のための制御電流の供給が開始されてから、開閉器20が動作し、開閉器20の動作が完了するまでの開閉器動作時間であると判断する。すなわち、開閉器一括監視装置24は、このような波形の場合、時間t1から開閉器20(引き外し回路71)への制御電流の供給が開始し、時間t5で開閉器20の動作が終了したと判断する。
また、線分L1を参照すると、主幹電流I1は、時間t1から時間t7までの間の波高値(定常電流を差し引いた相対電流波形)が、1A以上(通常は5A程度)であることが分かる(第1の特性)。また、主幹電流I1が開閉器20の制御電流波形となる時間長さ、すなわち時間t1から時間t5までの長さは、比較的短時間(例えば1秒未満)であることが分かる(第2の特性)。また、時間t1から時間t5の間のように、遮断器の引き外し動作が開始されると同時に、L/Rの時定数をもって主幹電流I1が上昇することが分かる(第3の特性)。また、時間t5から時間t7の間のように、動作終了時のアーク抵抗により、主幹電流I1が急減することが分かる(第4の特性)。また、時間t3近傍に示すように、主幹電流I1が時定数をもって上昇する際に、電流の変化率(上昇率)が、一旦急変することが分かる(第5の特性)。そして、電流の変化率は、時間t2と時間t4とで、合計2回の正のピーク値をとることが分かる。
図3は、シールイン回路が接続されている開閉器の制御電流波形の一例を示すグラフである。さらに詳しくは、図3は、開閉器18の引き外し動作が行われている際の主幹電流I1の波形を示している。図3の線分L3は、時間毎の主幹電流I1の値を示しており、線分L4は、時間毎の主幹電流I1の変化率を示している。なお、線分L4に示す変化率は、複数のサンプリング点(ここでは5サンプリング)の移動平均で算出した値である。
図3に示すように、時間t11(第1時間)より前では、主幹電流I1は、変化率が0に近い定常電流(電流値B1)となっている。すなわち、時間t11より前には、開閉器18が動作しておらず、機器22にのみ制御電流が供給されている。時間t11から時間t11A(第2時間)までは、時間経過に従い、電流の変化率が上昇しながら主幹電流I1の値が上昇している。そして、時間t11Aから時間t11B(第3時間)までにおいては、電流の変化率が下降して0となり、時間t11Bまで0のままとなっている。従って、時間t11から時間t11Bまでにおいては、主幹電流I1の値がわずかに上昇した後、一定となる。時間t11Bにおける電流値B2は、電流値B1より大きい。
図3に示すように、時間t11B以降の電流の変化率の波形は、図2に示す時間t1以降の電流の変化率の波形と同様の傾向となる。すなわち、時間t11Bから時間t12までは、時間経過に従い、電流の変化率が上昇しながら主幹電流I1の値が電流値B1から上昇している。そして、時間t12から時間t13までは、時間経過に従い、電流の変化率が下降しているが、時間t13においても、電流の変化率は0より大きい。時間t12から時間t13までは、時間経過に伴い、主幹電流I1の値の上昇は続くが、上昇率が時間t11から時間t12までより小さくなっている。時間t13から時間t14までは、時間経過に伴い、電流の変化率が再度上昇しながら、主幹電流I1の値が上昇している。また、時間t14から時間t15までは、時間経過に伴い、電流の変化率が下降し、時間t15で電流の変化率が0となる。従って、時間t14から時間t15までは、時間経過に伴い、主幹電流I1の値の上昇は続くが、上昇率が時間t13から時間t14までより小さくなっている。時間t15から時間t16までは、時間経過に伴い、電流の変化率が0から下降しており、主幹電流I1の値が下降する。ただし、時間t16においても、主幹電流I1の値は、定常電流(時間t11より前)での値より大きい。時間t16から時間t17までは、電流の変化率がマイナスから上昇し、時間t17において0となる。時間t16から時間t17までにおいて、主幹電流I1は、下降を続けるが、時間t15から時間t16までの下降率より小さい。そして、主幹電流I1は時間t17において、定常電流の値となる。時間t17以降は、電流の変化率が0に近いままとなり、主幹電流I1も定常電流のままとなる。
図3においては、時間t11においてシールイン回路72への制御電流の供給が開始し、徐々に電流値が上昇して、時間t11Aでシールイン回路72での制御電流の供給が定常状態となる。そして、時間t11Bにおいて開閉器18(引き外し回路71)への制御電流の供給が開始し、時間t15で開閉器18の動作が完了する。そして、時間t15以降は、接点のアーク抵抗により制御電流が減少していき、時間t17で引き外し回路71及びシールイン回路72への制御電流の供給が終了している。このように、開閉器18の動作時において、主幹電流I1の変化率は、時間t11A(第2時間)と、時間t12と、時間t14とで、合計3回の正のピーク値をとることが分かる。言い換えれば、開閉器18が引き外し動作を行う際、主幹電流I1の変化率は、時間t11(第1時間)から時間t11A(第2時間)までの間において上昇し、時間t11Aにおいてピーク値となる。そして、主幹電流I1の変化率は、時間t11A(第2時間)から時間t11B(第3時間)までの間において下降し、時間t11Bにおいて0となる。そして、主幹電流I1の変化率は、時間t11Bから再度上昇する。
すなわち、開閉器18に制御電流が流れた場合の主幹電流I1は、時間t11から時間t11Bまでのシールイン回路72の動作開始時において、主幹電流I1の変化率が1つのピークを有している点で、開閉器20に制御電流に流れた場合の主幹電流I1とは異なっている。開閉器18が引き外し動作をしている時間(開閉器動作時間)は、実際には時間t11Bからt15までの間である。そして、引き外し回路71の制御電流のピーク値は、時間t15における主幹電流I1の最大値である電流値B3から、時間t11Bにおける電流値B2を差し引いた値である。しかし、例えば、主幹電流I1が定常電流から上昇を開始した際に、開閉器18が引き外し動作を開始したと判断して、主幹電流I1の波形解析を行うケースを考える。この場合、時間t11から変化率が上昇しているため、時間t11から引き外し動作を開始したと判断して、開閉器動作時間を時間t11から時間t15までであると誤った解析を行うおそれがある。また、主幹電流I1のピーク値を、電流値B3から、時間t11における電流値B1(定常電流値)を差し引いた値と判断して、誤った解析を行うおそれがある。
それに対して、開閉器一括監視装置24は、図3のような波形の場合、時間t11からt11Bまでの間を、シールイン回路72に制御電流が供給されており引き外し回路71には制御電流が供給されていないシールイン回路導通時間であると判断する。シールイン回路導通時間は、開閉器18は引き外し動作を行っていない時間である。さらに言えば、開閉器一括監視装置24は、主幹電流I1の変化率が、シールイン回路導通時間において1つのピークを持っていると判断した場合に、時間t11A(第2時間)からの主幹電流I1の波形に基づき波形処理を実行して、開閉器18の動作状態を判定するための開閉器18の制御電流の波形を抽出する。以下、開閉器一括監視装置24の構成について説明する。なお、開閉器一括監視装置24は、時間t11Bからt15までの間を、引き外し回路71に制御電流が供給されて引き外し動作を行っている開閉器動作時間であると判断してもよい。
(開閉器一括監視装置について)
図4は、本実施形態に係る開閉器一括監視装置の模式的なブロック図である。図4に示すように、開閉器一括監視装置24は、CPU(Central Processing Unit)である制御部80と、入力部82と、出力部84と、記憶部86とを有するコンピュータ(情報処理装置)である。入力部82は、例えばマウスやキーボードやタッチパネルであり、作業者からの入力を受け付ける。出力部84は、例えばディスプレイやタッチパネルの表示部であり、各種情報を出力(表示)する。記憶部86は、メモリである。制御部80は、電流取得部90と、サンプリング部92と、監視部93と、主幹電流波形記録部94と、判定部96と、波形処理部98と、制御電流判断部99とを有する。電流取得部90と、サンプリング部92と、監視部93と、主幹電流波形記録部94と、判定部96と、波形処理部98と、制御電流判断部99とは、記憶部86が記憶した開閉器一括監視プログラムを読み込んで制御部80が実現するソフトウェアのプログラムであるが、例えばそれぞれの機能を実施する専用の装置であってもよい。
電流取得部90は、電流測定部S1から主幹電流I1の測定値を取得し、電流測定部S2から主幹電流I2の測定値を取得する。
サンプリング部92は、電流取得部90が取得した主幹電流I1、I2の測定値を時間毎にサンプリングし、記憶部86に記憶させる。
監視部93は、サンプリング部92がサンプリングした主幹電流I1、I2の測定値を監視する。監視部93は、主幹電流I1が、所定の変化率K1以上の変化率で変化(上昇)したかを判定する。監視部93は、主幹電流I1の変化率が、変化率K1以上である場合に、主幹電流波形記録部94に主幹電流I1の波形を記録させる。この変化率K1は、開閉器20の引き外し回路71に制御電流が供給された際の立ち上がりの変化率(図2の例では時間t1からの変化率)、及び開閉器18のシールイン回路72に制御電流が供給された際の立ち上がりの変化率(図3の例では時間t11からの変化率)よりも小さな値として設定されている。また、変化率K1は、機器22に制御電流が供給されつつ開閉器には制御電流が供給されていない例定常電流における、微小な変化率よりも大きな値となっている。
主幹電流波形記録部94は、監視部93によって主幹電流I1の変化率が変化率K1以上であると判断されたことをトリガとして、主幹電流I1の所定時間分(例えば1秒分)の波形を生成、記録する。主幹電流波形記録部94は、主幹電流I1の変化率の所定時間分の波形についても、生成、記録する。主幹電流波形記録部94が記録する主幹電流I1の波形は、例えば図3に示す線分L3に相当する。また、主幹電流波形記録部94が記録する主幹電流I1の変化率の波形は、例えば図3に示す線分L4に相当する。
判定部96は、主幹電流波形記録部94が記録した主幹電流I1の変化率の波形を読み出す。判定部96は、主幹電流I1の変化率の波形に基づき、主幹電流I1の変化率が、制御状態であるかを判定する。判定部96は、主幹電流I1の変化率が、第1時間から第2時間までの間において上昇し、第2時間から第3時間までの間において下降し、第3時間から再度上昇している場合に、制御状態であると判定する。第1時間、第2時間及び第3時間とは、主幹電流波形記録部94が記録した波形内における時間であり、第2時間は、第1時間より後の時間であり、第3時間は、第2時間より後の時間である。第1時間は、例えば図3に示す時間t11に相当し、第2時間は、例えば時間t11Aに相当し、第3時間は、例えば時間t11Bに相当する。
判定部96は、主幹電流I1の変化率が制御状態であると判定した場合に、第1時間から第3時間までの間においてシールイン回路72に主幹電流I1(制御電流)が供給されていると判断する。また、判定部96は、第3時間から、開閉器18の引き外し回路71に主幹電流I1が制御電流として供給されたと判断してもよい。すなわち、判定部96は、制御状態であると判定した場合に、その主幹電流I1の第1時間から第3時間までの波形が、シールイン回路72に制御電流が供給された場合の波形を含むと判断する。
以下、制御状態の判定方法についてさらに詳述する。判定部96は、主幹電流I1の変化率が、第2時間においてピーク値となり、第3時間において0となり、第3時間から再度上昇した場合に、制御状態であると判定する。また、判定部96は、第1時間から第2時間までの長さ(図3の例における時間t11から時間t11Aまでの長さ)が、所定の時間長さ閾値K2以下である場合に、制御状態であると判断する。また、判定部96は、第1時間から第2時間までにおける主幹電流I1の変化率の最大値、すなわち第2時間におけるピーク値(図3の例では変化率A1)が、所定の変化率閾値K3以上である場合に、制御状態であると判定する。
時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3は、予め設定されており、記憶部86に記憶されている。時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3は、例えば開閉器18のシールイン回路72の性能に基づき設定される。時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3は、判定部96が予め設定してもよいし、作業者によって設定されてもよい。時間長さ閾値K2は、例えば、5ミリ秒であり、2ミリ秒以上5ミリ秒以下であることが好ましい。また変化率閾値K3は、例えば10%であり、5%以上20%以下であることが好ましい。
なお、シールイン回路72付の開閉器18が複数ある場合、時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3は、それぞれの開閉器18のシールイン回路72の性能に基づき設定される。時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3は、開閉器18が複数ある場合でも共通の値として設定される。ただし、時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3をそれぞれの開閉器18毎に設定してもよい。この場合、判定部96は、ある開閉器18の時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3に基づき制御状態であると判定し、他の開閉器18の時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3に基づいては制御状態でないと判定することが可能となる。その場合、制御状態であると判定した開閉器18に制御電流が流れたと判定することが可能となり、主幹電流I1をサンプリングするだけで、どの開閉器18が引き外し動作を行っているかを判断することが可能となる。
波形処理部98は、判定部96が制御状態であると判断した場合に、第3時間からの主幹電流I1の波形に基づき、波形処理を実行する。すなわち、判定部96は、制御状態である場合、第3時間まではシールイン回路72にのみ電流が供給されており、第3時間から引き外し動作が開始している(引き外し回路71に制御電流が流れ始めた)可能性があると判断している。従って、波形処理部98は、第3時間までの波形を除き、第3時間からの主幹電流I1の波形を用いて、開閉器18の動作状態を判定するための波形処理を行っている。具体的には、波形処理部98は、波形処理として、主幹電流I1の波形のうち、第1時間から第3時間の波形を除いた第3時間以降の主幹電流I1の波形から、開閉器18の動作状態を判定するための電流波形を抽出する。さらに詳しくは、波形処理部98は、第3時間以降の主幹電流I1の波形から、第3時間における主幹電流の電流値(図3の例では電流値B2)を差し引いた波形を、電流波形として抽出する。すなわち、波形処理部98が抽出する電流波形は、主幹電流I1の波形のうち、第3時間以降の波形を抽出した波形である。また、波形処理部98が抽出する電流波形は、電流値が、主幹電流I1の測定値から第3時間における主幹電流I1の電流値(図3の例では電流値B2)を差し引いたものとなる。
図5は、波形処理部が抽出した電流波形の一例を示すグラフである。図5の線分L3Aに示すように、波形処理部98が抽出した電流波形は、図3に示す主幹電流I1の波形である線分L3に対し、第3時間(時間t11A)からの波形であり、電流値が、図3の電流値B2を差し引いた値となっている。
図4に示す制御電流判断部99は、波形処理部98が抽出した電流波形に基づき、その電流波形が開閉器18の制御電流の波形であるかを、より詳しくは開閉器18の引き外し動作を行っている際の制御電流の波形であるかを、判断する。制御電流判断部99による判断方法は、後述する。
開閉器一括監視装置24は、以上のような構成となっている。次に、開閉器一括監視装置による波形処理フローを、フローチャートに基づき説明する。図6は、開閉器一括監視装置の波形処理フローを説明するフローチャートである。図6に示すように、最初に、開閉器一括監視装置24は、記憶部86から閾値を読み込む(ステップS10)。閾値とは、上述の変化率K1、時間長さ閾値K2及び変化率閾値K3を指す。閾値を読み込んだ後、開閉器一括監視装置24は、監視部93が、主幹電流I1、I2の測定値を監視し(ステップS12)、主幹電流I1が所定の変化率K1以上で変化(上昇)しているかを判断する(ステップS14)。開閉器一括監視装置24は、主幹電流I1が所定の変化率K1以上で変化していないと判断した場合(ステップS14;No)は、ステップS12に戻り、監視を続ける。開閉器一括監視装置24は、主幹電流I1が所定の変化率K1以上で変化したと判断した場合(ステップS14;Yes)、主幹電流波形記録部94が、主幹電流I1の波形を記録する(ステップS16)。
開閉器一括監視装置24は、主幹電流I1の波形の記録が終わったら、判定部96が、主幹電流I1の波形データから、第1時間から第2時間までの長さと、変化率のピーク値を取得する(ステップS18)。判定部96は、主幹電流I1の波形が、変化率が最初に上昇を開始する第1時間から、その後の第2時間までの間において上昇し、第2時間から第3時間までの間において下降し、第3時間から再度上昇しているかを判断する。判定部96は、主幹電流I1の波形が上記に該当すると判断した場合に、第1時間から第2時間までの長さを算出し、第1時間から第2時間までにおける変化率の正のピーク値(図3の例では時間t11Aにおける変化率A1)を算出する。
第1時間から第2時間までの長さと、その間の変化率のピーク値とを取得したら、開閉器一括監視装置24は、判定部96が、第1時間から第2時間までの長さが、時間長さ閾値K2以下であるかを判断する(ステップS20)。すなわち、判定部96は、変化率が最初に上昇を開始するタイミングから、変化率がピークとなるタイミングまでの時間が、時間長さ閾値K2以下であるかを判断する。第1時間から第2時間までの長さが、時間長さ閾値K2以下でない(時間長さ閾値K2より長い)と判断した場合(ステップS20;No)、第1時間から第3時間まで間の波形が、シールイン回路72の制御電流によるものでない(制御状態ではない)として、本処理を終了する。
第1時間から第2時間までの長さが、時間長さ閾値K2以下であると判断した場合(ステップS20;Yes)、判定部96は、さらに、第1時間から第2時間までにおける変化率のピーク値が、変化率閾値K3以上であるか判断する(ステップS22)。判定部96は、変化率のピーク値が、変化率閾値K3以上でない(変化率閾値K3より小さい)と判断した場合(ステップS22;No)、第1時間から第3時間までのピーク波形が、シールイン回路72の制御電流によるものでない(制御状態ではない)として、本処理を終了する。判定部96は、変化率のピーク値が、変化率閾値K3以上であると判断した場合(ステップS22;Yes)、主幹電流I1の変化率が制御状態であると判断する(ステップS24)。すなわち、判定部96は、第1時間から第2時間までの長さが短く、かつ、変化率のピーク値が高い場合に、第1時間から第3時間まで間の波形が、シールイン回路72の制御電流によるものであると判定する。
制御状態であると判断した後、開閉器一括監視装置24は、波形処理部98が、主幹電流I1の波形から、第3時間のタイミング(図3における時間t11B)と、第3時間における主幹電流I1の電流値(図3における電流値B2)とを取得して(ステップS26)、波形処理を行って電流波形を抽出する(ステップS28)。波形処理部98は、主幹電流I1の波形から、第3時間以降の波形であって、主幹電流I1の電流値から第2時間における主幹電流I1の電流値(図3の例では電流値B2)を差し引いた波形を抽出して、電流波形とする。電流波形の抽出により、本処理は終了する。
このように、開閉器一括監視装置24は、第1時間から第3時間までの主幹電流I1の波形が所定の条件を満たす場合に、その時間にシールイン回路72が動作していると判断して、シールイン回路72の動作時間を除くことで、開閉器の動作状態を判定するための電流波形を抽出している。そして、開閉器一括監視装置24は、制御電流判断部99により、この抽出した電流波形に基づき、その電流波形が開閉器20の制御電流の波形であるかを判断する。以下、制御電流判断部99の判断処理フローを説明する。
図7は、制御電流判断部による制御電流の波形であるかの判断フローを説明するフローチャートである。図7に示すように、波形処理部98によって波形処理を行って電流波形が抽出された(ステップS28)後、制御電流判断部99は、抽出した電流波形における電流値が規定電流値以上であるかを判定する(ステップS30)。制御電流判断部99は、抽出した電流波形における電流値の最大値が、規定電流値以上であるかを判断するこの規定電流値は、例えば1Aであり、このステップS30は、電流波形が上述の第1の特性を満たしているかを判断するものである。電流値が規定電流値以上である場合(ステップS30;Yes)、抽出した電流波形における波形初期が、時定数(L/R)で上昇しているかを判断する(ステップS32)。このステップS32は、電流波形が上述の第3の特性を満たしているかを判断するものである。波形初期が時定数(L/R)で上昇していると判断した場合(ステップS32;Yes)、制御電流判断部99は、突入電流が発生していないかを確認する(ステップS36)。突入電流とは、電気機器に電源を投入した際に一時的に流れる大電流である。制御電流判断部99は、配線用遮断器37の開閉状況に基づき、突入電流が発生しなかったと判断する。突入電流が発生していない場合(ステップS36;Yes)、制御電流判断部99は、この電流波形が、開閉器20の制御電流の波形であると判断し、その電流波形を、開閉器20の制御電流の波形として記録する(ステップS38)。制御電流判断部99は、制御電流の波形と判断したこの電流波形に基づき、開閉器20に制御電流が流れた時間や、制御電流のピーク値を算出する。制御電流判断部99は、この時間やピーク値に基づき、開閉器20が正常に動作しているかを判断してもよい。また、作業者が、制御電流判断部99が記録した波形や、算出した時間やピーク値などに基づき、開閉器20が正常に動作しているかを判断してもよい。ステップS38により、本処理は終了する。
また、ステップS30において、電流波形の電流値が規定電流値以上でないと判断した場合(ステップS30;No)、制御電流波形の判定は困難であるため、制御電流判断部99は、操作電流用の主幹電流I2の測定値に基づき、操作電流用の主幹電流I2が規定電流値以上であるかを確認する(ステップS34)。制御電流判断部99は、主幹電流I2から定常電流を差し引いた際の最大電流値が、操作電流として規定された規定電流量(例えば2Aから5A)以上であるかを確認する。主幹電流I2が規定電流値以上である場合(ステップS34;Yes)、ステップS36に移る。主幹電流I2が規定電流値以上でない場合(ステップS34;No)、抽出した電流波形は開閉器18の制御電流波形でないと判断して、電流波形を記録せずに本処理を終了する。また、ステップS32において電流波形における波形初期が、時定数(L/R)で上昇していないと判断した場合(ステップS32;No)と、ステップS36において突入電流があると判断した場合(ステップS36;No)とにおいても、抽出した電流波形は開閉器18の制御電流波形でないと判断して、電流波形を記録せずに本処理を終了する。
なお、図6の処理において電流波形を抽出しない場合、すなわち、シールイン回路72に制御電流が流れていないと判断した場合でも、記録している主幹電流I1の波形を用いてステップS30以降の処理を実行して、その主幹電流I1の波形が開閉器の制御電流波形であるかを判定して、その波形を記録することも可能である。これにより、シールイン回路72を有する開閉器18の制御電流の波形と、シールイン回路72を有さない開閉器20の制御電流の波形との、両方を適切に抽出することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る開閉器一括監視装置24は、少なくとも一台がシールイン回路72に接続されている複数の開閉器(図1の例では開閉器18、20)と、制御電源(直流電源装置10)とを有した電気所110において、複数の開閉器の動作を一括監視する。制御電源は、複数の開閉器及び開閉器以外の機器22のそれぞれに供給される制御電流を、主幹電流I1として供給する。開閉器一括監視装置24は、電流取得部90と、判定部96と、波形処理部98とを有する。電流取得部90は、主幹電流I1の測定値を取得する。判定部96は、主幹電流I1の測定値に基づき、主幹電流I1の変化率が、第1時間から第2時間までの間において上昇し、第2時間から第3時間までの間において下降し、第3時間から再度上昇している制御状態であるかを判定する。判定部96は、制御状態と判定した場合に、第1時間から第3時間までの間においてシールイン回路72に主幹電流I1が供給されたと判断する。波形処理部98は、判定部96が制御状態であると判断した場合に、第3時間からの主幹電流I1の波形に基づき波形処理を実行して、開閉器18の動作状態を判定するための電流波形を抽出する。
ここで、シールイン回路72が接続されている開閉器18は、主幹電流I1が制御電流として供給された際、最初にシールイン回路72を作動させる電流ピークが立ち上がった後、引き外し回路71に制御電流が流れることで2つ目の電流ピークが立ち上がって、開閉器18が動作を開始する。例えば、電流ピークが立ち上がったことをトリガとして、開閉器18が動作を開始したと判断した場合、シールイン回路72が動作しているが引き外し回路71は動作していないタイミングにおいても、開閉器18が動作していると誤って判定してしまうおそれがある。また、主幹電流I1の電流値は、定常電流と、シールイン回路72に流れる電流値と、引き外し回路71に流れる電流値との合計値である。しかし、シールイン回路72に流れる電流値を把握できず、引き外し回路71に流れる電流値、すなわち開閉器18の制御電流の値を、誤って測定してしまうおそれがある。また、主幹電流I1の波形が制御電流波形であるかの判定を電流値で行う場合に、判定を誤って、制御電流でないと判断したりするおそれもある。このように、シールイン回路72が接続されている開閉器18の動作を判定するために主幹電流I1の波形を用いると、適切に開閉器18の制御電流の波形を抽出できず、開閉器18の動作を適切に監視できないおそれがある。
それに対し、本実施形態に係る開閉器一括監視装置24は、主幹電流I1の変化率に基づき、変化率が制御状態であるとの条件を満たした場合に、第1時間から第3時間までの間で、シールイン回路72に主幹電流I1が流れており、その間には開閉器18の動作が開始していないと判断する。そして、開閉器18の動作が開始したと考えられる第3時間からの主幹電流I1の波形に基づき、開閉器18の動作状態を判定するための電流波形を抽出する。このように、開閉器一括監視装置24は、主幹電流I1の波形に基づいて開閉器18の制御電流の波形を抽出する際に、シールイン回路72が作動しているタイミングを適切に検出し、そのタイミングを除いて波形の抽出を行う。従って、開閉器一括監視装置24は、開閉器18の制御電流の波形を適切に抽出し、開閉器18の動作を適切に監視することができる。また、主幹電流I1の波形を波形処理するだけで、シールイン回路72を含む開閉器の一括監視ができるため、開閉器の動作を容易に監視することが可能となる。
また、判定部96は、主幹電流I1の変化率が、第2時間においてピーク値となり、第3時間において0となり、第3時間から再度上昇した場合に、制御状態であると判定する。開閉器一括監視装置24は、このような条件を満たした場合に、シールイン回路72が作動していると判断しているため、シールイン回路72を含む開閉器18が動作しているかをより高精度で検出することができる。
また、判定部96は、第1時間から第2時間までの時間の長さが、所定の時間長さ閾値K2以下である場合に、制御状態であると判断する。また、判定部96は、第1時間から第2時間までにおける主幹電流I1の変化率の最大値が、所定の変化率閾値K3以上である場合に、制御状態であると判定する。開閉器一括監視装置24は、このような条件を満たした場合に、シールイン回路72が作動していると判断しているため、シールイン回路72を含む開閉器18が動作しているかをより高精度で検出することができる。
また、波形処理部98は、判定部96が制御状態と判断した場合、第3時間からの主幹電流I1の波形から、第3時間における主幹電流I1の電流値を差し引いた波形に基づき、波形処理を実行する。この波形処理部98は、第3時間における主幹電流I1の電流値、すなわちシールイン回路72に流れる電流値を差し引いた波形を、動作判断のための電流波形として抽出している。従って、この開閉器一括監視装置24は、開閉器18の制御電流の波形をより高精度に抽出して、開閉器18の動作を適切に監視することができる。
また、開閉器一括監視装置24は、電流取得部90が取得した主幹電流I1が所定の変化率K1以上であるかを検出する監視部93と、監視部93が所定の変化率K1以上であると検出した場合に、主幹電流I1の波形を記録する主幹電流波形記録部94と、を更に有する。判定部96は、この主幹電流I1の波形に基づき、制御状態であるかを判定する。この開閉器一括監視装置24は、主幹電流I1が所定の変化をした場合に主幹電流I1の波形の記録を行い、その主幹電流I1の波形に基づき、シールイン回路72に電流が流れているかを判断する。従って、この開閉器一括監視装置24は、シールイン回路72に電流が流れているかを、容易にかつ正確に判断することができ、開閉器の動作を容易に監視することが可能となる。
また、シールイン回路72は、主幹電流I1が供給された場合に、シールイン回路72に接続された開閉器18の接点71A1、71A2を閉じることにより開閉器18に主幹電流I1を供給させて、開閉器18を開動作させるものである。開閉器一括監視装置24は、このようなシールイン回路72に電流が流れているかを適切に判断可能であるため、開閉器の動作を容易に監視することが可能となる。
図8は、開閉器の他の例を示す模式図である。図8に示すように、シールイン回路72を有する開閉器18aは、引き外し回路71aに、電流検出部S3を設けてもよい。電流検出部S3は、接点71Aに直列であって、接点71Aよりも制御配電線P1側に配置されているが、引き外し回路71aに電流が流れているかを確認可能な位置であれば、その位置に限られない。電流検出部S3は、引き外し回路71aに電流が流れているかを確認可能なセンサであり、この例では、引き外し回路71aに流れる電流値を測定可能なクランプ式電流変成器である。開閉器一括監視装置24は、この電流検出部S3から、引き外し回路71aに電流が流れているか、すなわち制御電流が流れているかの情報を取得する。開閉器一括監視装置24は、例えば複数の開閉器18aが設けられている場合、電流検出部S3からどの開閉器18aに電流が流れたかを確認することも可能となる。従って、この開閉器一括監視装置24によると、抽出した開閉器の制御電流波形が、どの開閉器のものであるかを認識可能となり、例えば波形から動作不良が確認された場合に、どの開閉器が動作不良であるかを容易に確認することが可能となる。従って、このような構成によると、複数の開閉器をより好適に一括監視できる。なお、この電流検出部S3は、シールイン回路72が設けられていない開閉器20に対しても、同じ位置に設けられていることが好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。