(配線基板)
[実施形態1〜3]
図1(A)〜(C)に、本発明の一例である実施形態1〜3の配線基板を示す。本実施の形態の配線基板は、絶縁層3と、この絶縁層3上に配置された第1の導体層4と、この第1の導体層4に形成された線状の開口5と、この線状の開口5の下方の絶縁層3に形成された溝6と、この溝6の内部に配置され前記第1の導体層4と電気的に接続する溝内導体15と、を有し、前記第1の導体層4が、前記線状の開口5側の端部において、前記溝6の幅内に飛び出した庇部12を有する、配線基板23である。
本実施の形態の配線基板は、絶縁層を有している。ここで、絶縁層とは、第1の導体層を支持するとともに電気的な絶縁性を有するものである。絶縁層としては、一般に配線基板に用いられるプリプレグや樹脂フィルム等を用いて形成した有機絶縁材料が挙げられる。プリプレグは、補強基材であるガラス繊維等に樹脂組成物(樹脂ワニス)を含浸させ、半硬化のBステージ状態にした接着性を有するシート状のものをいう。また、樹脂フィルムとは、ガラス繊維等の補強基材を有しない接着性を有するシート状のものをいう。このような補強基材を有しない樹脂フィルムとしては、配線基板で内層材と絶縁層両側の銅箔を接着するために用いられる高分子エポキシ樹脂や熱可塑性のポリイミド接着フィルム等が挙げられる。
上記の樹脂組成物としては、配線基板の絶縁材料として用いられる公知慣例の樹脂組成物を用いることができる。通常、耐熱性、耐薬品性の良好な熱硬化性樹脂がベースとして用いられ、フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、フッ素樹脂等の樹脂の1種類又は2種類以上を混合して用い、必要に応じてタルク、クレー、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の無機質粉末充填剤、ガラス繊維、アスベスト繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填剤を添加したものが挙げられる。
また、樹脂組成物には、誘電特性、耐衝撃性、ドリルやレーザによる加工性などを考慮して、熱可塑性樹脂がブレンドされてあっても良い。さらに必要に応じて有機溶媒、難燃剤、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性粒子、着色剤、紫外線不透過剤、酸化防止剤、還元剤などの各種添加剤や充填剤を加えて調合する。
上記の補強基材としては、ガラス、アスベスト等の無機質繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、フッ素樹脂等の有機質繊維、木綿等の天然繊維の織布、不織布、紙、マット等を用いることができる。
通常、補強基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で20〜90質量%となるように補強基材に含浸又は塗工した後、通常100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化状態(Bステージ状態)のプリプレグを得る。このプリプレグを通常1〜20枚重ね、その両面に金属箔を配置した構成で加熱加圧して積層一体化する。積層一体化する前のプリプレグの1枚当りの厚さは、用途等によって異なるが、例えば、0.015〜0.1mmの厚みのものが用いられる。
積層一体化のための成形条件としては通常の積層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、通常、温度100〜250℃、圧力2〜100kgf/cm2(196kPa〜9.81MPa)、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形したり、真空ラミネート装置などを用いてラミネート条件50〜150℃、0.1〜5MPaの条件で減圧下又は大気圧の条件で行ったりする。このようにして、金属箔と加熱加圧により積層一体化した後の絶縁層の厚さは、用途等によって異なるが、例えば、0.015〜0.1mmが挙げられる。
本実施の形態の配線基板は、絶縁層上に配置された第1の導体層を有している。ここで、第1の導体層とは、絶縁層上に配置され、電気的に導電性を有し、回路加工によって配線パターンが形成されたものであって、後述する庇部を有するものをいう。このような第1の導体層として、電気めっきや圧延等によって作製された金属箔、電気めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタリング等によって形成された金属膜などが使用できる。金属箔を用いる場合は、JISB0601に示す10点平均粗さ(Rz)が、両面とも2.0μm以下であることが電気特性上好ましい。金属箔として、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔等を用いることができるが、通常は銅箔を使用する。
絶縁層上に第1の導体層を配置する方法としては、上述したように、絶縁層を形成するためのプリプレグを通常1〜20枚重ね、その両面に金属箔を配置した構成で加熱加圧して積層一体化する方法、絶縁層の表面に直接、電気めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタリング等によって金属膜を形成する方法が挙げられる。前者のように、金属箔を加熱加圧して積層一体化した場合は、第1の導体層(ここでは、金属箔)と絶縁層との強い密着が得られる。
第1の導体層の厚さは、特に制限はないが、第1の導体層や後述する溝の形成を容易にする観点から、2〜10μmが一般的である。
本実施の形態の配線基板は、第1の導体層に形成された線状の開口を有している。ここで、線状の開口とは、第1の導体層に形成され、平面視において線状の開口をいう。また、線状とは、平面視において、幅に対して長さが大きい長方形もしくは長楕円形を意味し、直線に限られず、曲線でもよい。さらに、図6(a)、(b)に示すように、複数の円状の形状同士が少なくとも一部重複した状態で連続したものでもよい。また、アスペクト比(幅に対する長さの比)が、5以上(好ましくは10以上)のものをいう。線状の開口は、レーザ加工等によって、第1の導体層を貫通し、その下方の絶縁層に到るように加工することで形成することができる。線状の開口は、第1の導電層に形成されるものなので、配線基板として完成した後の状態では、後述するめっき層等により、線状の開口の幅が狭まったり、完全に埋まってしまう場合があるが、このめっき層等は含まない。つまり、線状の開口とは、このような、めっき層を形成する前に、第1の導体層のみで形成されている導体層に形成される開口をいう。
本実施の形態の配線基板は、第1の導体層の線状の開口の下方の絶縁層に形成された溝を有している。ここで、溝とは、第1の導体層の線状の開口の下方の絶縁層に形成される、平面視において線状の凹部をいう。つまり、溝は、絶縁層に形成された線状の凹部をいい、第1の導体層に設けられた線状の開口を含まない。また、線状とは、平面視において、幅に対して長さが大きい長方形もしくは長楕円形を意味し、直線に限られず、曲線でもよい。例えば、図6(a)、(b)に示すように、複数の円状の形状同士が少なくとも一部重複した状態で連続したものでもよい。また、アスペクト比(幅に対する長さの比)が、5以上(好ましくは10以上)のものをいう。なお、溝が絶縁層を貫通し、第2の導体層に到るように形成される場合は、第2の導体層が溝の加工又はめっき層形成のための前処理(エッチング等)でくぼみを形成することがあるが、このような場合は、このくぼみを含む。つまり、溝とは、第1の導体層に形成される線状の開口を除くが、その下方の絶縁層及び第2の導体層に形成されるくぼみを含む。
図1(A)〜(C)に示すように、本実施の形態の配線基板の溝の深さは、絶縁層の途中までの深さでもよく、絶縁層を貫通してその下に配置される第2の導体層又はその下方の絶縁層あるいは導体層まで到達するものであってもよい。溝内導体を形成するためのめっきの充填性や付きまわり性を確保する観点から、後述する溝の幅(40〜100μm)(開口幅は30〜80μm)との関係(アスペクト比で0.15〜2.5)を考慮すると、溝の深さは、15〜100μmであるのが好ましい。ここで、本実施の形態における溝の深さとは、第1の導体層を除き、絶縁層の表面から溝の底部までをいう。
このような溝を形成する方法としては、第1の導体層に対しては、一般的に配線基板の加工に用いられるレーザ加工、ドリル加工、プレス加工等の機械加工や、金属箔のエッチングに用いられるエッチング液を用いることができる。また、絶縁層に対しては、一般的に配線基板の加工に用いられるレーザ加工、ドリル加工、プレス加工等の機械加工や、乾式及び湿式のデスミア処理などを用いることができる。これらの中でも、後述する第1の導体層に庇部を形成しやすい点から、レーザ加工が好ましい。
レーザ加工の方法としては、第1の導体層に線状の開口を予めエッチングで形成した後、線状の開口の幅よりも直径の大きいビーム径のレーザを用い、第1の導体層をレーザ加工のマスクとして、絶縁層に線状の凹部を形成すようにレーザ加工を行う、いわゆるコンフォーマル工法と、予め第1の導体層に線状の開口を形成することなく、第1の導体層側から第1の導体層と絶縁層とを一度にレーザ加工して、第1の導体層に線状の開口と絶縁層に線状の凹部を形成する、いわゆるダイレクレーザ工法が挙げられる。何れのレーザ加工方法においても、第1の導体層に形成される線状の開口の幅よりも、絶縁層に形成される線状の凹部の幅が広くなるため、絶縁層上に配置された第1の導体層が、溝の幅内に飛び出した部分(庇部)を形成することができる。
これらの中でも、ダイレクトレーザ工法が好ましい。これにより、少ない工程で第1の導体層への線状の開口、絶縁層への線状の凹部(溝)及び庇部を形成でき、しかも、第1の導体層に形成される線状の開口の幅が、約30μmまで細く形成でき、その下方の絶縁層に形成される線状の凹部(溝)の幅も、約40μmまで細く形成でき、溝内導体によって形成される配線パターンの微細化を図ることが可能になる。
ここで、絶縁層に形成される線状の凹部の幅(溝の幅)とは、長さ方向に対し直角方向の断面において、絶縁層の厚さ方向で最大となる個所の凹部の幅をいう。
本実施の形態の溝の幅は、配線基板の用途に合わせて設定すればよく、特に制限なく選択できるが、レーザ加工での形成のし易さから、40〜100μmが好ましい。ここで、本実施の形態において、溝の幅とは、溝を断面視したとき、絶縁層の厚さ方向で最大となる個所の幅をいう。
本実施の形態の配線基板は、溝の内部に配置され第1の導体層と電気的に接続する溝内導体を有している。ここで、溝内導体とは、絶縁層に形成された線状の溝内に配置され、電気的に導通性を有するものである。溝内導体を形成する方法としては、一般的な配線基板の非貫通ビアに用いられるめっきが挙げられ、このようなめっきとして、溝内を充填するように形成されるフィルドめっきや、溝内の内壁に沿って膜状に形成されるスルーホールめっきが挙げられる。
フィルドめっきやスルーホールめっきにより、溝内導体を形成する方法としては、まず、下地として、薄付け用の無電解めっき(以下、単に「無電解めっき」という。)を形成した後、これを給電層として、電気めっきでフィルドめっきやスルーホールめっきを行う方法が挙げられる。
フィルドめっきは、後述する電解フィルドめっき液を用いてめっき層を形成するものであり、所定の条件で電気めっきを行うことで、溝内を充填するようにめっき層(溝内導体)を形成すること、及び溝内の内壁に沿って膜状にめっき層(溝内導体)を形成することができる。
電解フィルドめっき液は、一般に硫酸銅めっき浴中にめっき成長を抑制するめっき抑制剤と、めっき成長を促進するめっき促進剤とを添加したものである。
めっき抑制剤は、物質の拡散則に伴い、スルーホール用穴の内部には吸着し難く、基板表面には吸着し易いことを応用して、スルーホール用穴の内部と比較して基板表面のめっき成長速度を遅くすることで、スルーホール用穴の内部を電解フィルド銅めっき層によって充填させ、スルーホール用穴の直上部分とスルーホール用穴の直上部分以外の部分とで、基板表面に平滑な電解フィルド銅めっき層を形成する効果があるといわれている。めっき抑制剤としては、ポリアルキレングリコールなどのポリエーテル化合物、ポリビニルイミダゾリウム4級化物、ビニルピロリドンとビニルイミダゾリウム4級化物との共重合体などの窒素含有化合物などを用いることができる。
めっき促進剤は、スルーホール用穴内の側面、基板表面に、一様に吸着し、続いて、スルーホール用穴の内部ではめっきの成長に伴い、表面積が減少していき、スルーホール用穴内の促進剤の分布が密になることを利用して、スルーホール用穴の内部のめっき速度が基板表面のめっき速度より速くなり、スルーホール用穴の内部を電解フィルド銅めっき層によって充填させ、スルーホール用穴の直上部分とスルーホール用穴の直上部分以外の部分とで、基板表面に平滑な電解フィルド銅めっき層を形成する効果があるといわれている。めっき促進剤としては、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムもしくは2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムで表される硫黄化合物、もしくはビス−(3−スルフォプロピル)−ジスルファイドジソディウム等で表される硫黄化合物を用いることができる。これらめっき促進剤は、ブライトナー(光沢剤)と呼ばれる銅めっき液に添加する添加物の一種でもある。
上記めっき抑制剤やめっき促進剤は、1種、もしくは2種以上を混合して用いる。これらの水溶液の濃度は特に限定されないが、数質量ppm〜数質量%の濃度で用いることができる。
フィルドめっきは、電解フィルドめっき液によって形成することができる。溝内を充填するようにフィルドめっきを形成する方法としては、2回以上に分けてフィルドめっきを行う方法が好ましい。
このような方法の一例として、まず、フィルドめっきによるめっき層によって、第1の導体層の庇部の下方の溝内に形成される下方空間が充填され、かつ第1の導体層の線状の開口が塞がれる前の段階で、一端、給電を停止し、数秒間以上放置した後、給電を再開することによってフィルドめっきを継続する方法が挙げられる。これによれば、絶縁層に形成された溝の内部及び第1の導体層に形成された線状の開口の内部を、めっき層にボイドのない状態で埋め込むことが容易になる点で好ましい。
また、フィルドめっきを用いて、溝内の内壁に沿って膜状にめっき層(溝内導体)を形成する方法としては、上記のように、溝内がめっき層で埋め込まれる前の段階で、フィルドめっきを停止する方法が挙げられる。これによれば、フィルドめっきは、庇部の下方に形成される下方空間(特に直下部)に析出し易いため、膜状のめっき層であっても、第1の導体層と溝内導体との接続信頼性を確保できる。
スルーホールめっきは、配線基板の層間接続(スルーホール)を形成するために、一般的に用いられる電気めっき液を用いてめっき層を形成するものであり、このような電気めっき液として、硫酸銅めっき液が挙げられる。スルーホールめっきによれば、電気めっきの電流分布や、めっき液の液流等を所定の条件で行うことにより、溝内の内壁に沿って、均一な厚さで膜状にめっき層(溝内導体)を形成することができる。
本実施の形態の配線基板は、第1の導体層4が、線状の開口5側の端部において、溝6の幅内に飛び出した庇部12を有する。ここで、庇部とは、絶縁層上に配置された第1の導体層が、線状の開口側の端部において、溝の幅内に飛び出した部分をいう。庇部は、例えば、図6(a)、(b)に示すように、溝の長さ方向に沿って連続して形成されている。また、溝の幅内に飛び出した部分とは、下方の絶縁層に形成される溝の内壁よりも飛び出すことをいい、このため、庇部の裏面(絶縁層側)は、絶縁層から露出している。庇部は、例えば、絶縁層上に第1の導体層を配置した基板に対し、ダイレクトレーザ工法又はコンフォーマル工法を用いて、第1の導体層に線状の開口と、絶縁層に線状の凹部を形成することにより形成することができる、即ち、ダイレクトレーザ工法又はコンフォーマル工法で第1の導体層を貫通してその下の絶縁層に線状の溝を形成する場合には、第1の導体層とその下の絶縁層を構成する樹脂との間で、レーザ加工のされやすさ(熱分解温度)に大きな違いがあることにより、レーザ加工条件を調整することによって、第1の導体層に形成される線状の開口の先端が、その下にある絶縁層の側壁よりも溝の幅内に飛び出すことにより形成することができる。また、第1の導体層の溝の幅内に飛び出した部分の先端(庇部の先端)の下面は、絶縁層から露出する。
庇部が溝の幅内に飛び出す幅(庇部の飛び出し量)は、後述する溝内導体を形成するためのめっきが形成できればよく、特に制限はないが、一般に片側で2〜10μmである。また、庇部の飛び出し量とは、溝の幅(溝の断面視において厚さ方向で最大となる個所の幅)から、開口幅(第1の導体層に形成された線状の開口の幅)を引いて2で割った幅をいう。
本実施の形態の配線基板は、絶縁層に形成された溝の幅内に飛び出した、第1の導体層の庇部を有する。庇部は、例えば、図6(a)、(b)に示すように、溝の長さ方向に沿って連続して形成されている。これにより、第1の導体層の庇部と絶縁層の溝内の側壁との間には、庇部の下方空間が、溝の長さ方向に連続して形成される。ここで、下方空間とは、第1の導体層の上方から平面視したとき、第1の導体層の庇部と絶縁層の溝の側壁と底部に囲まれる空間をいう。
庇部の下方空間は、溝の長さ方向に沿って、途切れ途切れではなく、連続して形成されるため、電解フィルドめっき液の液流が回り込みにくい状態となっている。また、図6(a)、(b)に示すように、複数の円状の形状の開口5同士が少なくとも一部重複した状態で連続したものであると、開口5形状は、平面視において、単純な直線状又は曲線状ではなく、複雑な凹凸を有する形状となる。また、溝6の側壁も凹凸25を生じる。このような場合は、庇部が溝の深さ方向に対する電解フィルドめっき液の液流を回り込み難くすることに加えて、平面視における庇部及び溝の側壁の複雑な形状が、面方向に対する電解フィルドめっき液の液流を回り込み難くする。このため、さらに、電解フィルドめっき液の液流が回り込みにくい状態となるので好ましい。
このような開口5の形状は、例えば、レーザ加工で形成される円状の形状の開口5の中心位置を少しずつずらして線状の開口5及び溝6を形成することによって形成することができる。このとき、レーザ加工装置の加工精度に基づくレーザ加工の位置ずれ等によってずれ24を生じることによっても、開口5の形状や溝6の側壁に凹凸が発生する。平面視における円状の形状の中心のずれ量24は、例えば、形成される溝6の幅の約1/15〜1/2(3〜50μm)が好ましく、1/10〜1/4(4〜25μm)がより好ましい。また、溝6の直線性を考慮すると、約1/15〜1/10(3〜10μm)であることが好ましい。なお、平面視における円状の形状の中心のずれ量24は、例えば、線状の開口5を10箇所観察したときの、開口5の幅における中央の位置の変化量(図6(b)のずれ量24)から求めることができる。
この下方空間の中でも、特に、庇部の裏面近傍の直下部は、下方空間の中でも、電解フィルドめっき液の液流が回り込みにくい領域となる。このため、この直下部を含む下方空間は、電解フィルドめっき液の促進剤が吸着し易くなっており、電解フィルドめっきの初期段階では、まずこの直下部を起点として下方空間に電解フィルドめっき層が形成され、下方空間が充填される。このため、電解フィルドめっきを用いて、溝内導体を形成する場合に、めっき層の付きまわり性又は充填性を改善できる。
つまり、電解フィルドめっきを用いて、溝内導体を溝の内壁に沿って膜状に形成する仕様(溝を埋め込まない仕様)及び溝を埋め込んで配置する仕様の何れの場合でも、溝内導体の形成性を改善できる。このような作用によれば、溝内導体として形成するめっき層の付きまわり性と充填性を改善できるので、仕様に応じた溝内導体を形成することができる。このため、高周波対応のためシールド配線を形成する場合、及び大電流対応のため導体層の断面積増大を図る場合に対応できる。
また、めっき層の付きまわり性又は充填性を改善できることにより、溝内導体を形成するために使用するフィルドめっきやスルーホールめっきを比較的薄く形成しても、第1の導体層と溝内導体との電気的接続とを確保することができる。溝内導体を形成する際のめっきは、溝内だけでなく、第1の導体層の表面も覆うので、めっき層を薄くできることは、めっき工程を短縮できるとともに、第1の導体層の表面を覆うめっき層の厚さを抑制することができ、その結果、第1の導体層とめっき層で形成される表層配線の配線パターンを微細化することができる。
また、第1導体層(金属)がその下方の絶縁層(樹脂)よりもレーザ加工され難いため、いわゆるダイレクトレーザ工法又はコンフォーマルマスク工法を用いることができる。つまり、ダイレクトレーザ工法又はコンフォーマルマスク工法では、第1導体層(金属)をマスクとして、その下の絶縁層(樹脂)をレーザ加工するが、第1の導体層の端部で、絶縁層が過剰に加工されるようにレーザ加工の条件を調整することにより、第1導体層がその下の絶縁層よりも飛び出した庇部を形成することができる。これにより、第1の導体層をマスクとしてレーザ加工することができるので、炭酸ガスレーザのように、ビーム径が絞れないレーザ加工の場合でも、レーザのビーム径に制限されることなく、絶縁層に微細幅の線状の凹部(溝)を形成できる。
さらに、このように、ダイレクトレーザ工法やコンフォーマルマスク工法を使用できるので、YAGレーザ等に比べて加工速度が速い炭酸ガスレーザを用いることができる。
本実施の形態の配線基板によれば、溝内導体により、シールド配線や断面積を増大させた導体を形成でき、ダイレクトレーザ工法又はコンフォーマル工法によりレーザのビーム径に制限されずに微細幅の線状の凹部を形成でき、このため、加工速度の速い炭酸ガスレーザを用いることができる。したがって、配線基板の高周波対応及び大電流対応を可能としつつ、従来よりも微細な幅の溝を配置することができ、しかも従来の転写法に比べて工数低減が可能な配線基板及びその製造方法を提供することができる。
図1(A)及び(C)に示すように、本実施の形態の配線基板は、絶縁層上の一方及び他方に導体層が配置され、絶縁層の一方に配置された第1の導体層に線状の開口が形成され、線状の開口の下方の絶縁層に形成された溝が、絶縁層を貫通し、絶縁層上の他方に配置された第2の導体層に到るように形成されてもよい。これによれば、第1の導体層と第2の導体層との電気的な接続によって、異なる配線層同士の層間接続を形成することができる。また、これによって、第1の導体層と第2の導体層をシールド層として用いることができ、よりシールド効果を得ることができる。
図1(B)に示すように、本実施の形態の配線基板は、絶縁層上の一方及び他方に導体層が配置され、絶縁層の一方に配置された第1の導体層に線状の開口が形成され、線状の開口の下方の絶縁層に形成された溝が、絶縁層を貫通せず、絶縁層上の他方に配置された第2の導体層まで到らないように形成されてもよい。これによれば、溝内導体による配線パターンと、第2の導体層による配線パターンを独立して形成することができるので、配線の多層化を図ることができ、高密度化を図ることができる。
また、図示しないが、溝の深さは一定である必要はなく、絶縁層の途中まで形成した線状の溝の一部が絶縁層を貫通してその下の第2の導体層又はその下方の絶縁層あるいは導体層までに到達してもよい。このように、溝の深さを絶縁層の途中までとし、溝の一部を絶縁層を貫通して第2の導体層に到るように形成することで、第1の導体層と第2の導体層を部分的に電気的に接続することができ、いわゆる層間接続を形成することができる。
図1(A)〜(C)に示すように、本実施の形態では、第1の導体層4の庇部12の下面12bの少なくとも一部が、絶縁層3から露出し、溝6の内部に配置された溝内導体15が、第1の導体層4の庇部12の下面12bを覆うように配置されるのが好ましい。つまり、溝内導体15をフィルドめっきやスルーホールめっきによって形成する際に、これらのめっきが、第1の導体層の庇部の下面を覆うように形成される。
上述したように、第1の導体層の溝の幅内に飛び出した部分(庇部)の少なくとも一部の下面は、絶縁層から露出するので、溝内導体を形成するめっきは、第1の導体層の少なくとも一部の下面において、第1の導体層との電気的な接続が形成される。これにより、溝内導体を形成するめっき層が、第1の導体層の庇部の端面や表面に形成されない場合又は薄く形成した場合であっても、接続信頼性を確保することができる。また、庇部の下面を覆うことで、第1の導体層を下面から密着・保持できるので、絶縁層表面の第1の導体層が細線(微細)であっても、絶縁層との密着強度を確保できる。また、確実に導通を形成でき、接続信頼性を向上できる。
絶縁層上に配置された第1の導体層の厚さが2〜10μmであるのが好ましい。ダイレクトレーザ工法を用いる場合、第1の導体層が薄いと線状の開口の幅が大きくなり、厚いと線状の開口の幅が小さくなる傾向があり、厚過ぎると線状の開口が形成し難くなる蛍光がある。しかし、第1の導体層の厚さがこの範囲であることにより、ビーム径が約30μmと比較的大きい炭酸ガスレーザを用いてダイレクトレーザ工法を用いる場合でも、第1の導体層に形成される線状の開口の幅を20μm以下に狭くできるので、線状の開口の下方に形成される絶縁層の溝の幅も狭くすることができ、溝内導体で形成される配線パターンを微細化することが可能になる。
線状の開口の幅は、30〜80μmであるのが望ましい。線状の開口の幅が30〜80μmであると、ダイレクトレーザ工法やコンフォーマルマスク工法で形成することができ、出力の大きい炭酸ガスレーザを用いて加工を早く行うことができるとともに、溝内導体の幅を微細化することができるので、溝内導体による配線パターンの高密度化を図るのに好ましい。また、線状の開口を通して、下方の絶縁層に形成される溝内にめっき層を形成できるので、溝内導体を形成することができ、放熱や大電流対応が可能になる。
庇部の溝の幅内への飛び出し量が、2〜10μmであるのが好ましい。これにより、庇部の裏面側に下方空間や直下部が形成されるので、フィルドめっきを用いて溝内導体を形成するときのめっきの充填性や付きまわり性を確保することができる。また、下方の絶縁層に形成される溝内に、めっき層を埋め込んだり、溝の内壁に沿って膜状に形成できるので、立体的で断面積の大きな溝内導体を形成することができ、放熱や大電流対応が可能になる。このため、溝が細くても溝内導体の断面積が拡大でき、高密度化、大電流、放熱性向上に対応できる。
図1(A)(B)に示すように、溝の内部に配置された溝内導体が、溝を埋め込んで配置されるのが好ましい。これにより、溝内導体の断面積が増加するので、抵抗を小さくすることができ、比較的大きな電流が必要とされる仕様の配線としても使用できる。また、放熱効果が高まるので、放熱を要する仕様の配線にも適用可能である。また、同一の配線基板内に、層間接続用のフィルドビアを有する場合、このフィルドビアを形成するためのめっき層と一括形成ができる。さらに、表層配線の表面を平滑になるので、表面配線上にさらに絶縁層を配置し、ビルドアップによる多層化を行う場合、凹凸が生じ難く平滑性を確保しやすい。
図1(C)に示すように、本実施の形態の配線基板においては、溝内導体が、溝の内壁に沿って膜状に形成されてもよい。これにより、溝内導体によって溝を埋め込む必要がないため、溝内導体を形成する際に、第1の導体層の表面に析出するめっき層の厚さを薄くすることができ、その結果、表面配線を微細化することで高密度化が可能になる。特に、フィルドめっきを用いて、溝内導体を溝の内壁に沿って膜状に形成する場合は、第1の導体層の表面に析出するめっき層の厚さを非常に薄くすることができ、より微細化を図ることができる。
絶縁層上に配置された第1の導体層が、前記溝内導体の長さ方向に対し直角方向の断面において、前記溝内導体と接合した表層配線と、前記溝内導体と独立した表層配線とを形成するようにしてもよい。これにより、溝内導体と接合した表層配線と、溝内導体と独立した表層配線によって、配線構造を多様化することができ、シールド対応、大電流対応、高密度化対応等に適した配線基板を提供できる。
(配線基板の製造方法)
本発明の一例である実施形態1の配線基板の製造方法の概略を図2に、詳細を図3〜図5に示す。
本実施の形態の配線基板の製造方法は、まず、図2の工程(1)に示すように、絶縁層上に第1の導体層が配置された導体層付き積層板に対し、レーザ加工により、前記絶縁層上の第1の導体層に線状の開口と、この線状の開口の下方の絶縁層に溝と、前記第1の導体層が前記線状の開口側の端部において前記溝の幅内に飛び出した庇部と、を形成する溝形成工程(1)を有している。
絶縁層上に第1の導体層が配置された導体層付き積層板は、(配線基板)の[実施形態1〜3]で述べたように、絶縁層を形成するためのプリプレグを通常1〜20枚重ね、その両面に金属箔を配置した構成で加熱加圧して積層一体化する方法、絶縁層の表面に直接、電気めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタリング等によって金属膜を形成する方法等によって得ることができる。前者のように、金属箔を加熱加圧して積層一体化した場合は、第1の導体層(ここでは、金属箔)と絶縁層との強い密着が得られる。
この導体層付き積層板に対して、第1の導体層に線状の開口と、絶縁層に溝と、溝の幅内に飛び出した庇部とを形成するためのレーザ加工方法としては、(配線基板)の[実施形態1〜3]で述べたように、ダイレクトレーザ工法、コンフォーマルマスク工法が挙げられる。
次に、図2の工程(2)に示すように、前記溝内に、前記絶縁層上に配置された第1の導体層と電気的に接続する溝内導体を形成する、溝内導体形成工程(2)を有している。
溝内導体を形成する方法としては、(配線基板)の[実施形態1〜3]で述べたように、フィルドめっきやスルーホールめっきを用いて、溝内導体を溝の内壁に沿って膜状にめっき層を形成する方法、溝内をめっき層で充填する方法、等が挙げられる。特に、フィルドめっきを用いる場合は、溝内導体を溝の内壁に沿って膜状にめっき層を形成する方法、及び溝内をめっき層で充填する方法の何れでも用いることができ、また、溝内へのめっきの付きまわり性や充填性が優れ、かつ、第1の導体層の表面に形成されるめっき層も薄く表層配線を薄く形成でき、微細回路の形成性に優れる点でより望ましい。
次に、図2の工程(3)に示すように、前記絶縁層上の両側に配置された第1の導体層を回路加工して表面配線を形成する回路加工工程(3)と、を有する。
第1の導体層を回路加工する方法としてはエッチングにより不要な個所の第1の導体層を除去するサブトラクト法やセミアディティブ法が挙げられる。
本実施の形態の配線基板の製造方法によれば、レーザ加工により、絶縁層上の第1の導体層に線状の開口と、この線状の開口の下方の絶縁層に溝と、第1の導体層が線状の開口側の端部において溝の幅内に飛び出した庇部と、を形成する溝形成工程(1)を有するので、絶縁層に形成された溝の上方(開口側)に、第1の導体層が飛び出した庇部が形成される。
この庇部によって、上述したように、溝内導体を溝の内壁に沿って膜状に形成する仕様(溝を埋め込まない仕様)及び溝を埋め込んで配置する仕様の何れの場合でも、溝内導体として形成するめっき層の付きまわり性と充填性を改善できるので、仕様に応じた溝内導体を形成することができる。このため、高周波対応のためシールド配線を形成する場合、及び大電流対応のため導体層の断面積増大を図る場合に対応できる。
また、めっき層の付きまわり性又は充填性を改善できることにより、溝内導体を形成するために使用するフィルドめっきやスルーホールめっきを比較的薄く形成しても、第1の導体層と溝内導体との電気的接続とを確保することができる。その結果、第1の導体層とめっき層で形成される表層配線の配線パターンを微細化することができる。
また、ダイレクトレーザ工法又はコンフォーマルマスク工法を用いて、第1の導体層の端部で、絶縁層が過剰に加工されるようにレーザ加工の条件を調整することにより、第1導体層がその下の絶縁層よりも飛び出した庇部を形成することができる。
本実施の形態の配線基板によれば、溝内導体により、シールド配線や断面積を増大させた導体を形成でき、ダイレクトレーザ工法又はコンフォーマル工法によりレーザのビーム径に制限されずに微細幅の線状の凹部を形成でき、このため、加工速度の速い炭酸ガスレーザを用いることができる。したがって、配線基板の高周波対応及び大電流対応を可能としつつ、従来よりも微細な幅の溝を配置することができ、しかも従来の転写法に比べて工数低減が可能な配線基板及びその製造方法を提供することができる。
溝形成工程(1)では、レーザ加工方法がダイレクトレーザ工法であり、レーザ加工位置精度が、形成される溝幅の3分の1以下になるように、スキャンエリアを小さくし、かつ、各ショットを重複させるのが好ましい。具体的には、縦5mm×横5mm〜縦10mm×横10mm程度が好ましい。これにより、形成される溝の直線性を確保することができる。また、隣接するレーザ加工スキャンエリア同士の少なくとも一部が重複するように設定されるのが好ましい。
ダイレクトレーザ工法は、一般に層間接続孔を形成するための単独の孔を形成するのに用いられている。このように、隣接するレーザ加工スキャンエリア同士の少なくとも一部を重複するように設定することにより、レーザ加工により形成される孔(開口)が連続して形成され、線状の開口を形成することができる。
溝形成工程(1)では、レーザ加工が、炭酸ガスレーザを用いて行われるのが好ましい。炭酸ガスレーザは、エキシマやYAGレーザ等に比べて、ビーム径が大きいが、出力が大きいため、加工速度を向上できるメリットがある。本実施の形態においては、第1の導体層が線状の開口を有するので、第1の導体層がレーザ加工のマスクとなる。このため、ビーム径が大きい炭酸ガスレーザを用いた場合でも、線状の開口の幅に対応した幅の溝を絶縁層に形成することができる。なお、レーザ加工の方法としては、ダイレクトレーザ工法やコンフォーマルマスク工法を用いることができ、レーザ加工の条件を調整することにより、線状の開口の幅に対して、その下方の絶縁層に形成される溝の幅を小さくすること、同等にすること、大きくすることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、本実施例に限定されない。
(実施例1)
まず、図3の工程(1−1)に示すように、絶縁層3の両側のそれぞれに、表層配線10用の銅箔4(第1の導体層4)及び内層配線1用の銅箔4(第2の導体層1)(何れも厚さ9μm)を積層一体化した銅箔張り積層板(絶縁層厚さ0.02mm)を準備した。
次に、この銅箔4の表面に、厚さ0.3〜0.5μmの黒化処理層(図示しない。)を形成した後、図3の工程(1−2)に示すように、炭酸ガスレーザを用いたダイレクトレーザ工法により、第1の導体層4に線状の開口5を形成し、その下方の絶縁層に第2の導体層に到る線状の凹部6(溝6)を形成した。このとき、平面視における開口5及び溝6の形状は、図6(A)、(B)に示すとおりである。円状の形状における中心のずれ量24は平均5μm、最大10μmであった。なお、平面視における円状の形状の中心のずれ量24は、線状の開口5を10箇所観察したときの、開口5の幅における中央の位置の変化量(図6(b)のずれ量24)から求めた。具体的には、まず、線状の開口5を10箇所観察して、開口5の幅における中央の位置の平均値(平均位置)を求めた。次に、この中央の位置の平均値(平均位置)に対する、各観察個所の開口5の幅における中央の位置の変化量の平均値及び最大値を求めた。次に、この変化量を2倍することによって、ずれ量を求めた。以下、同様である。
このときのレーザ加工の条件(1穴あたり加工条件)は、以下の通りである。
・パワー:3.2W
・ビーム径:100μm
・照射時間:8μsec
・スキャンエリア:縦10mm×横10mm*
*レーザ加工位置精度が、形成される溝幅(40μm)の3分の1以下になる大きさとした。以下、同様である。
・ビームのピッチ:15μm
・ショット数:1
次に、図3の工程(1−3)に示すように、塩化鉄第二鉄水溶液や過硫酸アンモニウム、硫酸−過酸化水素水混合水溶液などのエッチング液により、銅箔の黒化処理層を取り除くために、第1の導体層4である銅箔の厚さが2〜3μmになるまでハーフエッチングした。また、このとき、溝6の底部19となる第2の導体層1の表面も、1μm程度エッチングされるようにして、レーザ加工時の残渣が除去されるようにした。
次に、デスミア処理を行ってスルーホール壁面に付着した樹脂残渣を取り除いた。そして、銅箔4上及び溝6の内部に、パラジウムコロイド触媒であるHS201B(日立化成株式会社製、商品名)を使用して触媒核を付与後、CUST2000(日立化成株式会社製、商品名。「CUST」は登録商標。)を使用して、図4の工程(2−1)に示すように、厚さ0.5μmの電解フィルド銅めっきの下地めっき層9となる無電解銅めっき層を形成した。
次に、図4の工程(2−2)に示すように、溝6の内部にめっき層7を埋め込んで溝内導体15を形成した。溝6内をめっき層7で充填する方法としては、電解フィルドめっきを断続的に複数回(2回)に分けて行う方法を用いた。
まず、一段階目の電解フィルドめっきとして、第1の導体層4である銅箔4上の厚さとしては2μmの電解フィルド銅めっき層を形成した。電解フィルド銅めっき液には、市販の直流電解めっき液CU−BRITE VFIV(株式会社JCU製、商品名)を用いた。このとき、一段目の電解フィルド銅めっきの条件は、1.0A/dm2の電流密度で、約8分である。このとき、一段目の電解フィルド銅めっき層を形成した溝6の断面形状は、一段目の電解フィルドめっき層が下方空間13を充填した状態であった(図示しない)。
次に、電解フィルド銅めっきの電流密度を一旦低下させるため、一度整流器の電源を切って0A/dm2としたまま、1分間放置した。この間、基板は電解フィルド銅めっき液に浸漬したままであった。
その後、二段階目の電解フィルドめっきとして、銅箔4及び一段目の電解フィルド銅めっき層上の厚さとしては、12μmの電解フィルド銅めっき層(一段階目と合せて14μm)により、溝穴6の充填を行った。このときの二段目の電解フィルド銅めっきの条件は、1.0A/dm2の電流密度で、約55分であった。
次に、図5の工程(3−1)に示すように、ドライフィルムレジストであるSL−1229(日立化成株式会社、商品名)を使用して、厚さ29μmのエッチングレジスト11を形成した。表層配線10及び内層配線1となるべき個所以外からは、エッチングレジスト11を取り除いた。
次に、図5の工程(3−2)に示すように、表層配線10及び内層配線1以外の銅箔4及びめっき層7をエッチング除去した。その後、図5の工程(3−3)に示すように、アルカリ性剥離液や硫酸あるいは市販のレジスト剥離液を用いて、エッチングレジスト11の剥離を行い、表層配線10及び内層配線1を有する配線基板23(図1(A))を形成した。
(実施例2)
まず、図3の工程(1−1)に示すように、絶縁層3の両側のそれぞれに、表層配線10用の銅箔4(第1の導体層4)及び内層配線1用の銅箔4(第2の導体層1)(何れも厚さ5μm)を積層一体化した銅箔張り積層板(絶縁層厚さ0.02mm)を準備した。
次に、この銅箔4の表面に、厚さ0.3〜0.5μmの黒化処理層(図示しない。)を形成した後、図3の工程(1−2)に示すように、炭酸ガスレーザを用いたダイレクトレーザ工法により、第1の導体層4に線状の開口5を形成し、その下方の絶縁層に第2の導体層に到る線状の凹部6(溝6)を形成した。このとき、平面視における開口5及び溝6の形状は、図6(A)、(B)に示すとおりである。円状の形状における中心の位置ずれ量24は平均5μm、最大10μmであった。
このときのレーザ加工の条件(1穴あたりの加工条件)は、以下のとおりである。
・パワー:3.2W
・ビーム径:100μm
・照射時間:4μsec
・スキャンエリア:縦10mm×横10mm
・ビームのピッチ:15μm
・ショット数:1
上記以外は、実施例1と同様にして、配線基板23(図1(A))を作成した。
(実施例3)
まず、図3の工程(1−1)に示すように、絶縁層3の両側のそれぞれに、表層配線10用の銅箔4(第1の導体層4)及び内層配線1用の銅箔4(第2の導体層1)(何れも厚さ3μm)を積層一体化した銅箔張り積層板(絶縁層厚さ0.02mm)を準備した。
次に、この銅箔4の表面に、厚さ0.3〜0.5μmの黒化処理層(図示しない。)を形成した後、図3の工程(1−2)に示すように、炭酸ガスレーザを用いたダイレクトレーザ工法により、第1の導体層4に線状の開口5を形成し、その下方の絶縁層に第2の導体層に到る線状の凹部6(溝6)を形成した。このとき、平面視における開口5及び溝6の形状は、図6(A)、(B)に示すとおりである。円状の形状における中心の位置ずれ量24は平均5μm、最大10μmであった。
このときのレーザ加工の条件(1穴あたりの加工条件)は、以下のとおりである。
・パワー:3.2W
・ビーム径:100μm
・照射時間:3μsec
・スキャンエリア:縦10mm×横10mm
・ビームのピッチ:15μm
・ショット数:1
上記以外は、実施例1と同様にして、配線基板23(図1(A))を作成した。
(実施例4)
まず、図3の工程(1−1)に示すように、絶縁層3の両側のそれぞれに、表層配線10用の銅箔4(第1の導体層4)及び内層配線1用の銅箔4(第2の導体層1)(何れも厚さ5μm)を積層一体化した銅箔張り積層板(絶縁層厚さ0.04mm)を準備した。
次に、この銅箔4の表面に、厚さ0.3〜0.5μmの黒化処理層(図示しない。)を形成した後、炭酸ガスレーザを用いたダイレクトレーザ工法により、第1の導体層4に線状の開口5を形成し、その下方の絶縁層に第2の導体層に到る線状の凹部6(溝6)を形成した。このとき、平面視における開口5及び溝6の形状は、図6(A)、(B)に示すとおりである。円状の形状における中心の位置ずれ量24は平均5μm、最大10μmであった。
このときのレーザ加工の条件(1穴あたりの加工条件)は、以下のとおりである。
・パワー:3.2W
・ビーム径:100μm
・照射時間:4μsec
・スキャンエリア:縦10mm×横10mm
・ビームのピッチ:15μm
・ショット数:2
上記以外は、実施例1と同様にして、配線基板23(図1(A))を作成した。
(実施例5)
まず、図3の工程(1−1)に示すように、絶縁層3の両側のそれぞれに、表層配線10用の銅箔4(第1の導体層4)及び内層配線1用の銅箔4(第2の導体層1)(何れも厚さ5μm)を積層一体化した銅箔張り積層板(絶縁層厚さ0.06mm)を準備した。
次に、この銅箔4の表面に、厚さ0.3〜0.5μmの黒化処理層(図示しない。)を形成した後、図3の工程(1−2)に示すように、炭酸ガスレーザを用いたダイレクトレーザ工法により、第1の導体層4に線状の開口5を形成し、その下方の絶縁層に第2の導体層に到る線状の凹部6(溝6)を形成した。このとき、平面視における開口5及び溝6の形状は、図6(A)、(B)に示すとおりである。円状の形状における中心の位置ずれ量24は平均5μm、最大10μmであった。
このときのレーザ加工の条件(1穴あたりの加工条件)は、以下のとおりである。
・パワー:3.2W
・ビーム径:100μm
・照射時間:4μsec
・スキャンエリア:縦10mm×横10mm
・ビームのピッチ:15μm
・ショット数:3
上記以外は、実施例1と同様にして、配線基板23(図1(A))を作成した。
(比較例)
まず、図3の工程(1−1)に示すように、絶縁層3の両側のそれぞれに、表層配線10用の銅箔4(第1の導体層4)及び内層配線1用の銅箔4(第2の導体層1)(何れも厚さ5μm)を積層一体化した銅箔張り積層板(絶縁層厚さ0.02mm)を準備した。
次に、表層配線10用の銅箔4(第1の導体層4)をエッチングにより除去した後、絶縁層3が露出した側から、炭酸ガスレーザを用いて、絶縁層3に第2の導体層1に到る線状の凹部6(溝6)を形成した。このとき、平面視における開口5及び溝6の形状は、図6(A)、(B)に示すとおりである。円状の形状における中心の位置ずれ量24は平均5μm、最大10μmであった。
このときのレーザ加工の条件(1穴あたりの加工条件)は、以下のとおりである。
・パワー:3.2W
・ビーム径:100μm
・照射時間:4μsec
・スキャンエリア:縦10mm×横10mm
・ビームのピッチ:15μm
・ショット数:1
上記以外は、実施例1と同様にして、配線基板23(図7)を作成した。
表1に、実施例1〜5及び比較例1の配線基板の第1の導体層の厚さ、線状の開口の幅、庇部の飛び出し幅、絶縁層の溝の幅、絶縁層の溝の深さ、絶縁層の溝のアスペクト比、溝内導体の配置、めっき層の厚さ(第1の導体上のめっき層の厚さ。但し、比較例1においては絶縁層上のめっき層の厚さ)、を纏めた結果を示す。
*( )内の数値は、一段目のめっき層の厚さと二段目のめっき層の厚さを表す。
表1に示すように、実施例1〜5では、第1の導体層の線状の開口側の端部において、溝の幅内に飛び出した庇部が形成され、線状の開口の下方の絶縁層に形成された溝内に、めっきボイドや未析出個所を生じることなく、めっきによって溝内導体を形成することができた。このため、埋め込み回路によるシールド配線の形成や、断面積増加による大電流用への対応が可能になる。また、めっきによって溝内導体を形成可能であり、従来の転写法を用いる必要がないため、工数低減が可能である。また、実施例1〜5の溝は、比較例に比べて幅が狭く、アスペクト比が大きいものが形成され、配線の微細化によって高密度化にも対応できる。一方、比較例では、絶縁層上に第1の導体層や庇部を有しておらず、絶縁層に形成された溝内に、フィルドめっきでめっき層を埋め込んで溝内導体を形成しようとすると、めっきボイドが発生した。