次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
最初に、本発明に係る角度調整装置1の理解を容易にするため、図12を参照して角度調整装置1を用いることができる光学機器Mの概要について説明する。なお、図12は、光学機器Mの一例として汎用的なプロジェクタを示すとともに、本実施形態に係る角度調整装置1を備えた状態を示している。
図12に示すように、光学機器Mは、光学系Mcと、この光学系Mcを除く光学機器本体部Mmとを備える。光学機器本体部Mmは、キャビネット21に覆われ、このキャビネット21の前面には、レンズ装着用開口部21hを有する。また、交換レンズ方式の投射レンズ部(不図示)を備え、この投射レンズ部の後部側を、外部からレンズ装着用開口部21hの内部に挿入し、光学機器本体部Mmのマウント部22に取付けている。この光学機器本体部Mmには、液晶パネル等の表示パネル部23を内蔵し、投射レンズ部に対して適切なバックフォーカスが確保される所定の位置Xsに固定状態に実装されている。
次に、本実施形態に係る角度調整装置1の構成について、図1〜図12を参照して具体的に説明する。
図1〜図6に示すように、本実施形態に係る角度調整装置1は、大別して、光学変換ユニット部2と回動支持機構部3を備える。光学変換ユニット2は、図12に示すように、光学系Mcにおける光軸に沿った二つのレンズ部U1,U2の中間に配し、図2及び図3に示すように、入光する光Cを複数の反射面Rf,Rs,Rtにより順次反射させることにより出光軸Soを入光軸Siに対して平行にする光学変換機能を備える。一方、回動支持機構部3は、図1に示すように、光学変換ユニット部2を、入光軸Siを中心に回動変位可能及び固定可能に支持する支持機能を備える。このように、光学変換ユニット部2を、光学系Mcにおける光軸に沿った少なくとも二つのレンズ部U1,U2の中間に配すれば、例えば、光進方向後方Fsrにリレーレンズ部Urを配し、光進方向前方Fsfに投射レンズ部Ueを配することができるなど、特に、光学機器Mとなるプロジェクタに最適な光学系Mcを構築できる利点がある。
例示の場合、二つのレンズ部U1,U2における一方のレンズ部U1にリレーレンズ部Urを適用し、他方のレンズ部U2に投射レンズ部Ueを適用した。この投射レンズ部Ueには、前述した光学機器Mに備える投射レンズ部を利用することも可能である。これにより、リレーレンズ部Urは、光学変換ユニット2に対して、光進方向後方Fsrに配されるとともに、投射レンズ部Ueは、光学変換ユニット2に対して、光進方向前方Fsfに配される。
このため、角度調整装置1は、図1に示すように、リレーレンズ部Urの前端に取付けることができ、回動支持機構部3には、リレーレンズ部Urの前端に、回動可能に嵌め込む支持リング部12と、この支持リング部12に設け、かつ光学変換ユニット部2を支持する支持ブロック部13とを有するユニット支持部3sを備える。
この場合、リレーレンズ部Urは、図1及び図7に示すように、鏡筒部31の外周面における前端付近に、フランジ部32を備えるとともに、鏡筒部31の前端に、大径に形成した接続口33を備えるため、支持リング部12は、この接続口33の内側に嵌合し、かつ嵌合した状態で周方向に回動変位可能となるリング形状に形成する。したがって、この支持リング部12に対して、この支持リング部12を任意の位置(角度)で固定可能な機能を付加することにより回動支持機構部3を構成することができる。なお、図1中、L1,L2,L3,L4は、リレーレンズ部Urを構成する第一レンズ群,第二レンズ群,第三レンズ群,第四レンズ群をそれぞれ示している。
また、リレーレンズ部Urは、図12に示すように、鏡筒部31の外周面にフランジ部30を有するため、このフランジ部30を光学機器本体部(プロジェクタ本体部)Mmにおけるマウント部22に取付けることができる。これにより、光学機器本体部Mmの光進方向後方Fsrに、表示パネル部23を内蔵するため、この表示パネル部23の実質的位置を、実際の配設位置Xsに対して光進方向前方Fsfに変移させることができる。即ち、レンズ部U1にリレーレンズ部Urを用いることにより、表示パネル部23の実質的位置を、光学機器本体部Mmの前方となる外部にまで変移させることができる。この結果、表示パネル部23からの出射光を光学変換ユニット部2に直接入光させることと同じになり、光学変換ユニット部2に基づく角度調整を、既設の光学系に制約されることなく、より柔軟かつ確実に行うことができる利点がある。
さらに、図1は、回動支持機構部3の一例を示している。例示の場合、リレーレンズ部Urの接続口33を形成する段差面に周方向に沿ったガイドスリット部34…を形成し、固定ネジ35…を、このガイドスリット部34…を通した後、支持リング部12における外周面の近傍位置に螺着する。この場合、一つのガイドスリット部34を、ほぼ180〔°〕の角度範囲にわたって形成すれば、二つのガイドスリット部34…を設けることができ、角度調整装置1では、ほぼ180〔°〕にわたって角度調整が可能になる。これにより、固定ネジ35…を緩めれば、支持リング部12を回動変位可能になり、任意の角度に調整できるとともに、固定ネジ35…を締付ければ、調整した角度で支持リング部12を固定可能になる。
したがって、図1は、調整方法が手動タイプとなる一例である。これに対して、図11及び図12には、調整方法が電動タイプとなる一例を示す。この例は、支持リング部12に、周方向に沿ったラックギア41を一体に設けるとともに、電動モータ等を利用した回転駆動部42を付設し、この回転駆動部42により回転するピニオンギア又はウォームギア等の駆動ギア43をラックギア41に噛合させて構成したものである。これにより、回転駆動部42を正逆方向に回転駆動すれば、支持リング部12を正逆方向へ回動変位させることができるとともに、回転駆動部42の駆動を解除すれば、停止(固定)させることができる。なお、ラックギア41を設ける周方向範囲を選定することにより、調整できる角度範囲を設定できる。例えば、全周にわたって設ければ、ほぼ360〔°〕の角度範囲にわたって調整が可能となる。
一方、上述した光学変換ユニット2及び回動支持機構部3の具体的構成は次のようになる。まず、光学変換ユニット2には、図1及び図6に示すプリズムユニット11を用いる。例示のプリズムユニット11は、三つの光学部材として機能する第一プリズムメンバ11a,第二プリズムメンバ11b及び第三プリズムメンバ11cの組合わせにより構成する。これにより、第一プリズムメンバ11aに光Cを屈折する境界面に基づく第一反射面Rfが、第二プリズムメンバ11bに光Cを屈折する境界面に基づく第二反射面Rsが、第三プリズムメンバ11cに光Cを屈折する境界面に基づく第三反射面Rstがそれぞれ設けられる。これにより、プリズムユニット11は、図2及び図3に示すように、入光する光Cを、第一反射面Rf,第二反射面Rs,第三反射面Rstにより順次反射させることにより出光軸Soを入光軸Siに対して平行にする光学変換機能を備える。
このように、光学変換ユニット部2を構成するに際し、光学部材として三つ(一般的には複数)のプリズムメンバ11a,11b,11cを用いたプリズムユニット11により構成すれば、ミラーを組合わせたミラーユニット等を使用する場合と異なり、高い剛性及び強度を容易に確保できるため、角度調整装置1に必要となる安定性及び信頼性を確保できるなど、角度調整装置1を構築する際の光学変換ユニット部2として最適となる利点がある。さらに、プリズムユニット11を構成するに際し、第一プリズムメンバ11a,第二プリズムメンバ11b及び第三プリズムメンバ11cの組合わせにより構成すれば、目的とする光学変換ユニット部2を容易に得ることができるとともに、光学精度及び光学安定性の高い光学変換ユニット部2を得ることができる。
ところで、このようなプリズムユニット11を用いる場合、入光する光Cは、第一反射面Rf,第二反射面Rs,第三反射面Rstの三つの反射面を経由するため、各反射面における反射率が重要となる。例えば、一面当たりの反射率が90〔%〕であっても三回の反射を繰り返した場合、72.9(0.9×0.9×0.9=0.729)〔%〕となり、約27〔%〕の光量損失を生じる。
したがって、各プリズムメンバ11a…を全反射状態で使用、即ち、反射面の反射率を100〔%〕に設定すれば、光量損失をゼロにすることができるが、全反射状態で使用するには臨界角条件Ccがあるため、透過可能な光線角度には限界を生じ、高いNA(開口数)の光学系には使用できない。例えば、図8に示すような90〔°〕角(入射角θi=45〔°〕)を有する一般的なプリズム(材質BK−7,n=1.5168)の場合、臨界角θc(臨界角条件Cc)は[数1]で表される。
したがって、入射可能な光線角は、「45」−「41.25」=3.75〔°〕なり、不足角θwが生じる。この結果、対応できるF値は、
となり、F値は「5」(NA=0.1相当)までとなる。
なお、プリズム自体の屈折率を高くすることにより、限界範囲を広げることも可能であるが、一般的に屈折率の高いプリズムは高価となる難点がある。
一方、プリズムを、NA=0.25(F値が「2」に相当)の光学系に対応させるには、臨界角θcから全反射条件Crは、θc≧41.25〔°〕となるため、[数3]を解くことにより、
θc=9.45〔°〕となる。この結果、41.25+9.45=50.74〔°〕により、反射条件Crを満たす反射面Rfの角度は、50.74〔°〕以上の入射角θcが必要となる。即ち、図9に示すように、入射角θiが50.74〔°〕以上となる反射面Rf…を有する反射条件Crのプリズムメンバ11a…を使用すれば、NA=0.25を有する光学系の光Cを全反射できることになる。
本発明に係る角度調整装置1を構成する光学変換ユニット部2は、この原理に基づいて構成したものであり、反射面Rf…における入光する光Cに対する臨界角条件Cc…から全反射条件Cr…を満たす反射面Rf…の角度を選定したものである。
そして、入光する光Cを、第一反射面Rf,第二反射面Rs,第三反射面Rtを経由して順次反射させることにより出光軸Soを入光軸Siに対して平行にすれば、目的の光学変換ユニット部2を構築することができる。この場合、出光軸Soを入光軸Siに対して平行にするためには、第一プリズムメンバ11aの出光軸に対して第二プリズムメンバ11bの入光軸を所定角度だけ回動変位させた位置関係(角度関係)により組付けるとともに、第二プリズムメンバ11bの出光軸に対して第三プリズムメンバ11cの入光軸を所定角度だけ回動変位させた位置関係(角度関係)により組付ければよい。
図2及び図3は、第一プリズムメンバ11a,第二プリズムメンバ11b及び第三プリズムメンバ11cの結合態様を示している。図2は、プリズムユニット11を平面方向から見たものであり、第一プリズムメンバ11aの出光軸に対して第二プリズムメンバ11bの入光軸を所定角度Qpだけ回動変位させた位置関係を示している。また、図3は、プリズムユニット11を側面方向から見たものであり、第二プリズムメンバ11bの出光軸に対して第三プリズムメンバ11cの入光軸を所定角度Qqだけ回動変位させた位置関係を示している。なお、この場合の所定角度Qp,Qqは光学的に算出することができるため、予め所定角度Qp,Qqを算出し、得られた所定角度Qp,Qqに基づいて組付けを行ってもよいし、実際に光Cを第一プリズムメンバ11aと第二プリズムメンバ11b間に透過し、光Cの方向を確認しながら、いわば実験的に所定角度Qp,Qqを求めてもよい。一例として、ガラス材料に前述したBK−7を使用した場合、所定角度Qp,Qqは、それぞれ概ね10〔°〕前後となる。
図2〜図4において、Viは、プリズムユニット11に入射する画面を模式的に示すとともに、Voは、プリズムユニット11から出射する画面を模式的に示している。即ち、入射する画面Viが水平画面であっても、出射する画面Voは、画面Viに対して90〔°〕回転した垂直画面に変換されることを示している。このように構成するプリズムユニット11は、高い屈折率を有するプリズムを使用しないため、プリズム材料には屈折率の低い安価なガラス材料も使用可能となり、低コスト化にも寄与できる利点がある。
一方、回動支持機構部3は、光学変換ユニット部2を、入光軸Siを中心に回動変位可能及び固定可能に支持する機能を備え、この回動支持機構部3は、光進方向後方Fsrにおけるリレーレンズ部Ur(レンズ部U1)の前端に回動可能に嵌め込む支持リング部12と、この支持リング部12に設け、かつ光学変換ユニット部2を支持する支持ブロック部13を有するユニット支持部3sを備える。
この支持ブロック部13は、図1及び図6に示すように、支持リング部12の前面12f(図6参照)にネジ等の固定具51…により固定するリング取付部52と、このリング取付部52から前方に突出したプリズムユニット支持部53を一体形成したものであり、プリズムユニット支持部53の側面には鉛直面によるプリズム取付面53cを有する。また、プリズム取付面53cには、このプリズム取付面53cから突出し、第一プリズムメンバ11aの位置決めを行うプリズム位置決め部53ccを一体形成する。
次に、本実施形態に係る角度調整装置1に係わる全体の製作手順について、各図を参照しつつ図10に示すフローチャートに従って時系列により説明する。
本実施形態に係る角度調整装置1を製作するに際しては、最初に、第一プリズムメンバ11a,第二プリズムメンバ11b及び第三プリズムメンバ11cを用意する。各プリズムメンバ11a,11b,11cは次のように製作する。まず、第一プリズムメンバ11aのプリズム材料を選定する(ステップS1)。本例では、一例として、前述したBK−7を選定した場合を想定する。プリズム材料を選定したなら、選定したプリズム材料に基づく第一プリズムメンバ11aの反射面Rfの角度を算出する(ステップS2)。BK−7の場合、前述した[数3]から得られるように、プリズム反射面Rfへの入射角θiが50.74〔°〕以上となる角度を選定することができる。
さらに、第二プリズムメンバ11b及び第三プリズムメンバ11cについても同様に反射面Rs及びRtの角度を算出する(ステップS3,S2)。この場合、各プリズムメンバ11a,11b,11cは、必ずしも同一材料を選定する必要がない。仮に、第二プリズムメンバ11b及び第三プリズムメンバ11cの材料を第一プリズムメンバ11aと同一のBK−7を選定した場合には、第一プリズムメンバ11aと同じ50.74〔°〕以上となる反射面Rs,Rtの角度を選定することができる。これに対して、異なる材料を選定した場合には屈折率が異なるため、反射面Rf,Rs,Rtの角度も異なる角度が得られる。
全プリズムメンバ11a,11b,11cに対する角度選定が終了したなら、選定した角度に基づく各プリズムメンバ11a…の製作を行う(ステップS3,S4)。次いで、図5に示すように、プリズムユニット支持部53のプリズム取付面53cに対して第一プリズムメンバ11aの側面を貼着等により取付ける(ステップS5)。なお、取付けに際しては、支持ブロック部13を治具等にセットした後、この支持ブロック部13に、第一プリズムメンバ11aを位置決めしつつ取付けることができる。次いで、この第一プリズムメンバ11aの上面に、第二プリズムメンバ11bの下面を貼着等により取付ける(ステップS6)。この場合、図3に示すように、第一プリズムメンバ11aの第一反射面Rfを反射した光Cは、やや前寄りの上方に向かうため、第二プリズムメンバ11bを第一プリズムメンバ11aに取付ける際には、前述した図2に示すように、第一プリズムメンバ11aに対して第二プリズムメンバ11bを所定角度Qpだけ回した状態に取付ける。次いで、第二プリズムメンバ11bの側面に、第三プリズムメンバ11cの側面を貼着等により取付ける(ステップS7)。この場合、図2に示すように、第二プリズムメンバ11bの第二反射面Rsを反射した光Cは、やや前方及びやや上方となる側面方向へ向かうため、第三プリズムメンバ11cを第二プリズムメンバ11bに取付ける際には、前述した図3に示すように、第二プリズムメンバ11bに対して第三プリズムメンバ11cを所定角度Qqだけ回した状態に取付ける。この結果、第三反射面Rtを反射した光Cの出光軸Soは第一プリズムメンバ11aに入る光Cの入光軸Siに対してオフセットし、かつ平行となる。
これにより、支持ブロック部13に支持されたプリズムユニット11が得られるため、この支持ブロック部13におけるリング取付部52を、ネジ等の固定具51…により支持リング部12の前面12f(図6参照)に取付けるとともに、この支持リング部12をリレーレンズUrの前面に設けた接続口33に嵌合して装着する(ステップS8)。これにより、プリズムユニット11はリレーレンズUrの前面に配されるため、全体の位置関係や角度関係に係わる微調整を行う(ステップS9)。
このように、回動支持機構部3を構成するに際し、光進方向後方Fsrにおけるレンズ部U1の前端に回動可能に嵌め込む支持リング部12と、この支持リング部12に設け、かつ光学変換ユニット部2を支持する支持ブロック部13とを有するユニット支持部3sを設けて構成すれば、光学機器本体部Mmに変更を加えることなく、レンズ部U1に対する後付けにより実施できるため、実施の容易性及び低コスト性に優れるとともに、汎用性及び発展性も高めることができる。加えて、支持ブロック部13は、プリズムユニット11自身を組付けるフレーム部材として利用できるため、プリズムユニット11自身を組付ける貼付工程等を大幅に削減できるとともに、プリズムユニット11の組立を容易かつ確実に行うことができる利点がある。
以上により、入光する光Cを複数の反射面Rf,Rs,Rtにより順次反射させることにより出光軸Soを入光軸Siに対して平行にする光学変換ユニット部2と、この光学変換ユニット部2を、入光軸Siを中心に回動変位可能及び固定可能に支持する回動支持機構部3とを具備する角度調整装置1の基本形態を得ることができるため、さらに、後述する残りの付属部品等を組付けることができる(ステップS10)。
なお、例示は、各プリズムメンバ11a…同士を直接貼着等により結合した例を示したが、その他、プリズムユニット11を構成するに際しては、少なくとも一部のプリズムメンバ同士、例えば、プリズムメンバ11bと11c同士の対向面間に、所定の隙間(例えば、1〔mm〕前後)を生じさせる位置関係により組付けることもできる。このような組付けを行えば、隙間の断熱構造によりプリズムメンバ11b,11c同士間の熱伝達を回避できるため、プリズムユニット11全体の耐熱性を高めることができるとともに、容易に耐熱対策を施すことができる。
次に、本実施形態に係る角度調整装置1を用いて好適な光学系Mcの一例について、図1,図11及び図12を参照して説明する。
なお、角度調整装置1は、リレーレンズ部Urの前端に取付けられているものとする。また、角度調整装置1は、図12に示すように、全体をケーシング61により覆うとともに、このケーシング61の前方、即ち、光学変換ユニット部2に対して、光進方向前方Fsfには、レンズ部U2を構成する投射レンズ部Ueを配する。この投射レンズ部Ueには、前述したように、光学機器Mに備える投射レンズ部を利用可能である。このように、レンズ部U2として、投射レンズ部Ueを用いれば、投射レンズ部Ueを、光学変換ユニット部2に対する専用の投射レンズとして設計できるため、投射レンズ部Ueと光学変換ユニット部2、更にはレンズシフト機構部15に対してマッチングする最適な光学系Mcを構築できる利点がある。
一方、光学変換ユニット部2の光進方向前方Fsfには、当該光進方向前方Fsfにおける投射レンズ部Ueを、横方向及び/又は縦方向へ変位させるレンズシフト機構部15を設ける。例示のレンズシフト機構部15は、図12に示すように、投射レンズ部Ueを支持する縦方向シフトプレート機構65と、この縦方向シフトプレート機構65を縦方向(上下方向)に移動可能に支持する横方向シフトプレート機構66と、この横方向シフトプレート機構66を横方向(左右方向)に移動可能に支持する基礎プレート67を備え、この基礎プレート67をケーシング61の前端に取付ける。なお、68は縦方向シフトプレート機構65に備える電動モータ等を利用した縦方向回転駆動部、69は横方向シフトプレート機構66に備える電動モータ等を利用した横方向回転駆動部をそれぞれ示す。
したがって、このようなレンズシフト機構部15を設ければ、投射画面に対する位置の調整を行うことができるため、角度調整装置1による角度の調整により投射画面の位置がズレた場合であっても、角度調整装置1による位置のズレ分を容易に解消できる利点がある。
次に、本実施形態に係る角度調整装置1の機能及び使用方法について、図1〜図13を参照して説明する。
今、角度調整装置1を組付けた図12に示す光学系Mcを構成するとともに、この光学系Mcを光学機器M(プロジェクタ)に用いた場合を想定する。この場合、光学機器Mに備える既設の投射レンズ(交換レンズ)を取り外し、代わりに図12に示す光学系Mcを取り付ける。なお、角度調整装置1を使用する際に用いる投射レンズ部Ue(レンズ部U2)は、専用の投射レンズ部Ueとして予め用意してもよいし、上記光学機器Mから取り外した投射レンズを、投射レンズ部Ueとして用いてもよい。また、図12に示す光学系Mcを光学機器Mに取り付けるに際しては、リレーレンズ部Urに備えるマウント部30を、光学機器Mのキャビネット21内部に備えるマウント部22に取り付ければよい。
次いで、光学機器Mを所望の場所に設置する。例示の場合、光学機器Mを吊下げ可能な支持器を使用して天井に設置するものとする。この際に使用する支持器は、光軸を中心に回動させて角度調整を行う角度調整機構は備えていない。即ち、首振り方向のみの角度調整が可能な比較的単純構成の支持器を使用できる。
図13は、設置された光学機器Mに備える本実施形態に係る角度調整装置1の正面図を仮想線1sで示すとともに、この光学機器Mによりスクリーンに投射された投射画面を仮想線100sで示している。
まず、光学機器Mの作動時には、表示パネル部23からの出射光がリレーレンズ部Urに入光し、このリレーレンズ部Urを透過する。このリレーレンズ部Urの機能により、表示パネル部23の実質的位置は、表示パネル部23の実際の配設位置Xsに対して、光進方向前方Fsf、即ち、光学機器本体部Mmの前方となる外部にまで変移される。この結果、表示パネル部23からの出射光を、リレーレンズ部Urの前方に配する光学変換ユニット部2に直接入光させることと同じになる。
なお、例示のリレーレンズ部Urの倍率は、0.5倍であり、表示パネル部23の実質的位置から出射される出射光により表示される映像は、実際の配設位置Xsにおける表示パネル部23から出射される出射光により表示される映像に対して、0.5倍に縮小されている。また、リレーレンズ部Urから出射した映像は、角度調整装置1を構成するプリズムユニット11に入光し、このプリズムユニット11を通過する。
さらに、プリズムメンバ11cから出射する出射光は、レンズシフト機構部15を通過する。このレンズシフト機構部15により、X方向(横方向)及びY方向(縦方向)の映像に対する画面位置のシフト調整が行われる。また、レンズシフト機構部15を通過した映像は、投射レンズ部Ueに入光し、この投射レンズ部Ueを透過する。投射レンズ部Ueを透過した映像は、スクリーン上に、仮想線100sで示した投射画面により表示される。なお、この映像は、投射レンズ部Ueに備えるズーミング調整機構やフォーカシング調整機構を含む各種調整機構により調整が行われている。
ところで、図13に仮想線100sで示す投射画面は、図中、水平に対して概ね40〔°〕右下がりに傾斜している。この傾斜は、本実施形態に係る角度調整装置1を用いて調整することができる。即ち、前述した手動タイプ又は自動タイプにより構成可能な回動操作手段を利用し、仮想線1sで示す角度調整装置1の位置Xpsを、角度Qs(概ね20〔°〕)だけ矢印方向へ回動変位させる。これにより、角度調整装置1は実線で示す位置Xpaまで回動変位するとともに、出光するプリズムメンバ11cは、仮想線で示す位置11csから実線で示す位置11caに角度Qsだけ変位(旋回変位)する。
この結果、仮想線100sで示す投射画面は、位置Xssから「2×Qs」の角度(概ね40〔°〕)だけ変位するとともに、プリズムメンバ11cの旋回変位により上下位置及び左右位置も変位する。この位置の変位は、レンズシフト機構15により修正できるため、最終的には、実線100aで示す投射画面の位置Xsaまで変位させる角度調整を行うことができ、仮想線100sで示す傾斜した投射画面を、正規の位置及び角度となる実線100aで示す投射画面に設定することができる。以上が、角度調整装置1を用いた角度調整に係わる処理となる。
このように、本実施形態に係る角度調整装置1によれば、基本構成として、入光する光Cを三つの反射面Rf,Rs,Rtにより順次反射させることにより出光軸Soを入光軸Siに対して平行にする光学変換ユニット部2と、この光学変換ユニット部2とを具備してなるため、光Cを屈折する境界面に基づく反射面Rf,Rs,Rtを有する三つの光学部材を組合わせることにより入光する光Cを順次反射する光経路を構成するとともに、三つの反射面Rf,Rs,Rtにおける入光する光Cに対する臨界角条件Ccから全反射条件Crを満たす反射面Rf,Rs,Rtの角度を選定し、入光する光Cを三つの反射面Rf,Rs,Rtにより順次反射させることにより出光軸Soを入光軸Siに対して平行にする光学変換ユニット部2を設けたため、光学変換ユニット部2における反射面Rf,Rs,Rtの反射率を高めることができる。これにより、光学変換ユニット部2全体の光透過率を高めることができ、高いNA(開口数)の光学系も組合わせ可能になるとともに、透過する画像全体の明るさを確保できる。しかも、プリズム材料には屈折率の低い安価なガラス材料も使用可能となり、低コスト化にも寄与できる。
また、この光学変換ユニット部2は、回動支持機構部3により、入光軸Siを中心に回動変位可能及び固定可能に支持されるため、入光軸Siを中心に360〔°〕回動変位(旋回変位)させることができる。これにより、プロジェクタ等の光学機器Mを設置する場所が、例えば、45〔°〕に傾斜した天井や室内における支柱の側面などであっても角度調整可能になるなど、様々な設置場所に対応できる広い角度調整範囲を実現できる。また、角度調整を行うに際し、光学系Mcを構成する一部の部品を回動操作すれば足りるため、容易かつ正確な調整処理を実現できる。しかも、吊金具等の支持機構における剛性や強度に影響を与えないため、支持機構本来の剛性や強度を確保でき、長期使用においても調整角度にズレを生じにくいとともに、支持機構における耐久性及び信頼性の向上にも寄与できる。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、光学変換ユニット部2として、プリズムユニット11を用いた場合を例示したが、複数のミラーメンバを組合わせて構成するなど、同様の機能を発揮する他の手段の適用を排除するものではない。また、三つのプリズムメンバ11a,11b,11cの組合わせにより構成する場合を示したが、五つのプリズムメンバ11a…を用いるなど、プリズムメンバ11a…の数量は特定の数に限定されるものではない。さらに、回動支持機構部3を構成するに際し、光進方向後方Fsrにおけるレンズ部U1の前端に回動可能に嵌め込む支持リング部12と、この支持リング部12に設け、かつ光学変換ユニット部2を支持する支持ブロック部13とを有するユニット支持部3sを設けて構成した例を示したが、レンズ部U1の先端形態に対応した各種形態により実施可能である。なお、回動支持機構部3を設けることが望ましいが、角度設定した光学変換ユニット部2をレンズ部U1の前端に固定する構成などであってもよく、この回動支持機構部3は、必ずしも必須の構成要素となるものではない。一方、リレーレンズ部Urにおいて変倍機能を持たせるか否かは任意である。さらに、光進方向後方Fsrのレンズ部U1にリレーレンズ部Urを使用し、光進方向前方Fsfのレンズ部U2に投射レンズ部Ueを使用したが、他の種類を用いたレンズ部U1,U2の使用を排除するものではないし、また、例示の場合、光学変換ユニット部2の前後にそれぞれ一つのレンズ部U1とU2を配したが、前後にそれぞれ複数種類のレンズ部U1…しU2…を配してもよい。なお、レンズシフト機構部15を設けることが望ましいが、必ずしも必須の構成要素となるものではない。