JP2019028029A - ひび割れ追従性を評価する方法 - Google Patents

ひび割れ追従性を評価する方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019028029A
JP2019028029A JP2017150923A JP2017150923A JP2019028029A JP 2019028029 A JP2019028029 A JP 2019028029A JP 2017150923 A JP2017150923 A JP 2017150923A JP 2017150923 A JP2017150923 A JP 2017150923A JP 2019028029 A JP2019028029 A JP 2019028029A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
obtaining
evaluation value
value
crack followability
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017150923A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6854731B2 (ja
Inventor
洸 冨田
Ko Tomita
洸 冨田
和田 環
Tamaki Wada
環 和田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kajima Corp
Original Assignee
Kajima Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kajima Corp filed Critical Kajima Corp
Priority to JP2017150923A priority Critical patent/JP6854731B2/ja
Publication of JP2019028029A publication Critical patent/JP2019028029A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6854731B2 publication Critical patent/JP6854731B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Strength Of Materials By Application Of Mechanical Stress (AREA)

Abstract

【課題】膜のひび割れ追従性を評価可能な方法を提供する。【解決手段】ひび割れ追従性を評価する方法は、下地5上に形成された少なくともひとつの膜部を有する膜2であって、建築資材として用いられる高分子材料によって形成される膜2のひび割れ追従性を評価する方法であって、膜2は、下地5上に形成された下層膜3により構成される単層膜を含み、ナノインデンターを用いて下層膜3を評価することにより得た材料パラメータを利用して、下層膜3の特性を示すデータを得るステップS10と、下層膜3に関する厚み(TN)を得るステップS20と、ステップS10及びステップS20の後に、下層膜3の特性を示すデータ及び厚み(TN)を利用して、下層膜3のひび割れ追従性を示す評価値(ZN)を得るステップS30と、を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、膜のひび割れ追従性を評価する方法に関する。
非特許文献1には、コンクリート表面被覆材の耐久性能評価方法と当該方法を用いた調査報告が記載されている。調査報告には、高温多湿及び紫外線が多い等の環境下では表面被覆材の塗膜が劣化しやすいこと、このような塗膜の劣化によって塗膜のひび割れ追従性が低下すること、ひび割れ追従性の低下が被覆材の耐久性低下の主要因となっていることが示されている。
竃本武弘ほか・著、「コンクリート表面被覆材の耐久性向上に関する検討」、公益社団法人日本コンクリート工学会、コンクリート工学、2009年2月(vol.47 No.2)、pp.30〜pp.36。
上記の耐久性能評価方法では、いわゆる破壊試験によってひび割れ追従性が評価されている。具体的には、まず、表面に塗膜といった膜が形成された多数のコンクリートの供試体を準備する。次に、膜が破断するまで当該供試体に対して引張応力を負荷する。そして、破断したときの伸びをひび割れ追従性として得る。このように、膜のひび割れ追従性の評価は、供試体を用いた破壊試験によって行われるため、供用されている構造物に実際に用いられている膜のひび割れ追従性の評価には適さなかった。
本発明は、膜のひび割れ追従性を簡易に評価可能な方法を提供することを目的とする。
本発明の一形態は、基材上に形成された少なくともひとつの膜部を有する膜であって、建築資材として用いられる高分子材料によって形成される膜のひび割れ追従性を評価する方法であって、膜は、基材上に形成された第1の膜部により構成される単層膜を含み、ナノインデンターを用いて単層膜を評価することにより得た第1の測定結果を利用して、単層膜の特性を示す第1のデータを得るステップと、単層膜に関する第1の厚みを得るステップと、第1のデータを得るステップ及び第1の厚みを得るステップの後に、第1のデータ及び第1の厚みを利用して、単層膜のひび割れ追従性を示す第1の評価値を得るステップと、を有する。
このひび割れ追従性を評価する方法においては、ナノインデンターを用いて単層膜を評価することにより得た第1の測定結果を利用して、第1のデータを得る。次に、当該第1のデータと第1の厚みとを用いて、第1の膜部により構成される単層膜のひび割れ追従性を示す第1の評価値を得る。したがって、ナノインデンターを用いた測定結果に基づいて、ひび割れ追従性を評価することが可能である。ここで、ナノインデンターを用いた測定には、わずかな大きさの第1の膜部を含むサンプルで足りるので、膜のひび割れ追従性を簡易に評価することができる。
第1のデータを得るステップは、ナノインデンターを用いて、第1のデータに含まれる第1の測定結果を得るステップと、第1の測定結果を得るステップの後に、第1の測定結果を利用して、第1のデータに含まれる第1の伸びを得るステップと、を含み、第1の評価値を得るステップは、第1の伸びを利用して膜厚係数を得るステップと、第1の厚みを変数とし第1の評価値を従属変数とすると共に、膜厚係数を比例係数として含む関数を利用して、第1の評価値を算出するステップと、を含み、第1の伸びに基づく膜厚係数は、第1の伸びが大きいほど、第1の厚みが第1の評価値に及ぼす影響度合いが大きくなることを示していてもよい。この構成によれば、第1の評価値は、第1の厚みを変数とし膜厚係数を比例係数として含む関数を利用して得られる。この膜厚係数は、第1の伸びを利用して得られる。そして、第1の伸びは、第1の測定結果を利用して得られる。従って、ナノインデンターを用いて得た第1の測定結果と厚みの測定結果とによってひび割れ追従性を評価する第1の評価値を得ることができる。
第1の測定結果を得るステップは、第1の膜部に関し、第1の測定結果に含まれる第1の押込みクリープ及び第1のマルテンス硬さを取得するステップと、第1の押込みクリープを第1のマルテンス硬さで除した結果を、第1のデータに含まれる第1の媒介変数として得るステップと、を含み、第1の伸びを得るステップでは、第1の媒介変数を利用して、第1の伸びを算出してもよい。この構成によれば、第1の測定結果から、単位硬さあたりの押込みクリープである第1の媒介変数を得る。そして、この第1の媒介変数を利用して第1の伸びを算出する。第1の伸びを得るステップにおいて、第1の媒介変数を利用して第1の伸びを算出しているので、精度の良い第1の伸びが得られる。従って、精度の良い第1の伸びを利用して得た第1の評価値の精度も高めることができる。
膜は、単層膜を構成する第1の膜部と、第1の膜部上に形成された第2の膜部と、を含む複層膜であり、ナノインデンターを用いて複層膜を評価することにより、複層膜に関する第2の測定結果を得るステップと、第1の評価値を得るステップ及び第2の測定結果を得るステップの後に、第1の評価値及び第2の測定結果を利用して、複層膜のひび割れ追従性を示す第2の評価値を得るステップと、をさらに有し、第2の評価値を得るステップは、第1の測定結果と第2の測定結果とを利用して上層膜係数を得るステップと、第1の評価値を変数とし第2の評価値を従属変数とすると共に、上層膜係数を比例係数として含む関数を利用して第2の評価値を算出するステップと、を含み、上層膜係数は、複層膜のひび割れ追従性に対する第2の膜部の影響度合いを示していてもよい。第2評価値を算出するステップでは、上層膜係数を用いていわゆる複層膜である膜のひび割れ追従性を示す第2の評価値を得る。この上層膜係数は、複層膜のひび割れ追従性に対する第2の膜部の影響度合いを示す。したがって、上層膜係数を用いた評価によれば、第1の評価値に対して第2の膜部の影響度合いを加味することが可能となり、その結果複層膜のひび割れ追従性を示す第2の評価値を得ることができる。そうすると、複層構造を有する膜であっても、ナノインデンターを用いた測定に必要なだけのわずかな大きさの膜を用いて、ひび割れ追従性を評価することができる。
第2の測定結果を得るステップは、第2の測定結果に含まれる第2の押込みクリープ及び第2のマルテンス硬さを取得するステップと、第2の押込みクリープを第2のマルテンス硬さで除した結果を、第2の媒介変数として得るステップと、を含み、上層膜係数を得るステップでは、前記第2の媒介変数の値を利用して前記上層膜係数を算出してもよい。この構成によれば、第2の測定結果から、単位硬さあたりの押込みクリープである第2の媒介変数を得て、この第2の媒介変数を利用して上層膜係数を算出する。このステップによれば、精度のよい第2の評価値を得ることができる。
本発明によれば、膜のひび割れ追従性を簡易に評価可能な方法を提供することができる。
図1は、第1実施形態に係るひび割れ追従性を評価する方法が適用される膜の構造を示す断面図である。 図2は、第1実施形態に係るひび割れ追従性を評価する方法の手順を示すフローチャートである。 図3(a)は、実験例1〜9に係る試験結果をまとめた表である。図3(b)は、実験例1〜9に係る試験結果をまとめたグラフである。 図4(a)は、実験例10〜18に係る試験結果をまとめた表である。図4(b)は、実験例10〜18に係る試験結果をまとめたグラフである。 図5(a)は、実験例19〜27に係る試験結果をまとめた表である。図5(b)は、実験例19〜27に係る試験結果をまとめたグラフである。 図6(a)は、実験例28〜36に係る試験結果をまとめた表である。図6(b)は、実験例28〜36に係る試験結果をまとめたグラフである。 図7は、実験例37〜45に係る試験結果をまとめた表である。 図8(a)は、実験例37〜45に係る試験結果をまとめたグラフである。図8(b)は、実験例37〜45に係る試験結果をまとめた別のグラフである。 図9は、実験例37〜45に係る試験結果をまとめたさらに別のグラフである。 図10は、実験例46〜59に係る試験結果をまとめた表である。 図11は、実験例46〜59に係る試験結果をまとめたグラフである。 図12は、実験例60〜73に係る試験結果をまとめた表である。 図13は、実験例60〜73に係る試験結果をまとめたグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素同士、或いは相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
[第1実施形態]
まず、本実施形態に係るひび割れ追従性を評価する方法によって評価される膜について説明する。
膜(例えば、塗膜)は、コンクリート、パネル等の下地を覆うために用いられる。膜には、下地のひび割れ、下地同士の接合部の挙動等からの影響を受けることによりひび割れが生じることがある。膜にひび割れが生じると、構造物の美観が低下したり、膜による保護能力(膜によって覆われたコンクリート等の内部躯体を漏水等から保護するための機能)が低下したりする。そこで、膜のひび割れ抑制のための構造として、単層膜構造又は複層膜構造が知られている。複層膜構造は、下層膜(例えば、中塗)と上層膜(例えば、上塗)とによって構成される。下層膜は、当該複層膜のひび割れ追従性の確保を目的とする。下層膜の厚みは上層膜の厚みよりも大きい。下層膜は、柔軟性の高い材料によって下地上に形成されている。上層膜は、耐候性、美観性、及び耐汚染性等を目的とする。上層膜の厚みは下層膜の厚みよりも小さいことが多い。上層膜は、中程度の柔軟性を有する材料によって下層膜上に形成されている。
図1に示されるように、サンプル1が有する膜2は、下層膜3(第1の膜部)と、上層膜4(第2の膜部)と、を有する複層膜である。膜2は、下層膜3によって構成される単層膜を含んでいる。膜2は、例えば、1辺の長さを1cm以上2cm以下とする平面視略正方形状をなしている。本実施形態に係るひび割れ追従性を評価する方法は、下記の規格に示されている材料、及び、これらに類する材料によって形成された膜であって、建築資材として利用される高分子材料によって形成される膜(例えば、塗膜、シート等)の評価に適用してよい。
・JIS(日本工業規格:Japanese Industrial Standards) A 6909「建築用仕上塗材」。膜の材質としては、エポキシ・塩化ビニール・ウレタン・アクリルゴム・合成樹脂エマルション等が挙げられる。
・JIS A 6021「建築用塗膜防水材」
・JIS K 5658「建築用耐候性上塗り塗料」
・JASS(日本建築学会 建築工事標準仕様書:Japanese Architectural Standard Specification) 8「防水工事」。
下層膜3は、下地5(基材)上に形成されている。上層膜4は、下層膜3上に形成されている。サンプル1において、上層膜4は、下層膜3上における一部に塗装されている。つまり、サンプル1においては、上層膜4の一部が下層膜3から剥がされている。この一部とは、例えば、平面視における下層膜3の面積の半分程度である。すなわち、膜2において、下層膜3の一部が露出している。下地5は、例えば、コンクリートによって形成されている。
下層膜3の厚み(T)は、下層膜3に関する複層膜の積層方向における寸法である。下層膜3の厚み(T)は、例えば、0.25mm以上3.0mm以下である。本実施形態において、下層膜3の厚み(T)は、1.0mmである。上層膜4の厚み(T)は、上層膜4に関する複層膜の積層方向における寸法である。上層膜4の厚み(T)は、例えば、0.05mm以上0.1mm以下である。本実施形態においては、上層膜4の厚み(T)は、0.1mmである。ただし、厚み(T),(T)の値は上記の範囲に限定されない。
下層膜3を形成する塗料としては、以下の規格に示された塗材、並びに、これらに類する塗材を適用してよい。
・JIS A 6909「建築用仕上塗材」
・JIS A 6021「建築用塗膜防水材」
・JASS 23「吹付け工事」。
また、上層膜4を形成する塗料としては、以下の規格に示された塗材及びこれに類する塗り材を適用してよい。
・JIS K 5658「建築用耐候性上塗り塗料」。
次に、図2を参照して膜2のひび割れ追従性を評価する方法について説明する。本実施形態においては、ナノインデンターを用いてひび割れ追従性を評価する。ここで、「ひび割れ追従性」とは、以下の規格に示された試験方法に基づく。
・JSCE(土木学会:Japan Society of Civil Engineers)−K532−2010「表面被覆材のひび割れ追従性試験方法」。
上記規格によれば「ひび割れ追従性」とは、表面被覆材がその延伸性によって、コンクリートのひび割れに対してその被覆性を保持する性能をいう。ひび割れ追従性の評価値は、伸び量(mm)によって示される。また、「ナノインデンター」とは、ナノインデンテーション試験に用いられる装置をいう。以下において、ナノインデンターに関する測定方法、及び材料パラメータは、以下の規格に準拠する。
・ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)14577−1「Metallic materials −Instrumented indentation test for hardness and materials parameters−」。
図2に示されるように、第1実施形態に係るひび割れ追従性を評価する方法は、ステップS10と、ステップS20と、ステップS30と、ステップS40と、ステップS50と、を有する。ステップS10では、中塗の特性を示すデータ(第1のデータ)を得る。ステップS20では、中塗の厚み(第1の厚み)を得る。ステップS30では、中塗のひび割れ追従性を示す評価値(第1の評価値)を得る。ステップS40では、複層膜に関する材料パラメータ(第2の測定結果)を得る。ステップS50では、複層膜のひび割れ追従性を示す評価値(第2の評価値)を得る。
<中塗の特性を示すデータを得るステップS10>
はじめに、ステップS10において、下層膜3の特性を示すデータを得る。下層膜3の特性を示すデータは、下層膜3に関する材料パラメータ(第1の測定結果)と、下層膜3についての媒介変数(P)(第1の媒介変数)と、下層膜3の伸び(E)(第1の伸び)と、下層膜3のひび割れ追従性の標準値(ZNO)と、を含む。下層膜3の材料パラメータとしては、下層膜3のマルテンス硬さ(HM)(第1のマルテンス硬さ)、及び、下層膜3の押込みクリープ(CITN)(第1の押込みクリープ)を含む。ステップS10は、材料パラメータを得るステップS11と、伸びを得るステップS12と、ひび割れ追従性の標準値を得るステップS13と、を含む。
ステップS11では、まず、ナノインデンターを用いて下層膜3の測定を行う。この測定の結果として、下層膜3の材料パラメータに含まれるマルテンス硬さ(HM)及び押込みクリープ(CITN)が取得される(ステップS11a)。ここでは、ナノインデンターによる測定は、バーコビッチ圧子である圧子6(図1参照)を、下層膜3の表面に押し当てる。この押し当てにあっては、圧子6を下層膜3に押し込む深さ(最大押し込み深さ)を制御する。さらに、下層膜3の測定にあっては、下層膜3の材料パラメータが下地5からの影響を受けないようにする。そのために、圧子6の最大押込み深さが厚み(T)の1/6以下となるように、下層膜3における露出している領域から下地5に向けて圧子6を押し込む。この押し込みによって、押込みクリープ(CITN)及びマルテンス硬さ(HM)を得る。次に、押込みクリープ(CITN)をマルテンス硬さ(HM)で除する。その結果として、媒介変数(P=CITN/HM)を取得する(ステップS11b)。
次に、ステップS12を行う。ステップS12は、ステップS11よりも後に行われる。ステップS12では、下層膜3の材料パラメータを利用して、下層膜3の伸び(E)を得る。本実施形態では、ステップS11bにおいて取得した媒介変数(P)を利用して、伸び(E)を算出する。具体的には、式(1)に示されるように、媒介変数(P)を変数とし、定数(α),(β),(γ)を係数として含む関数(f)を利用して、伸び(E)を算出する。
Figure 2019028029
次に、ステップS13を行う。ただし、ステップS11を行った後、ステップS12を行う前にステップS13を行ってもよく、或いは、ステップS12及びステップS13を並行して行ってもよい。ステップS13では、下層膜3の材料パラメータを利用して、下層膜3のひび割れ追従性の標準値(ZNO)を得る。ここで、下層膜3のひび割れ追従性の標準値(ZNO)とは、基準厚(T)を有する下層膜3のひび割れ追従性を示す値をいう。基準厚(T)とは、下層膜3に関する複層膜の積層方向における基準の寸法(厚み)である。
本実施形態では、ステップS11bにおいて取得した媒介変数(P)を利用して、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)を算出する。具体的には、式(2)に示されるように、媒介変数(P)を変数とし、定数(δ),(ε)を係数として含む関数(f)を利用して、標準値(ZNO)を算出する。
Figure 2019028029
<中塗の厚みを得るステップS20>
次に、ステップS20を行う。ただし、ステップS10を行う前にステップS20を行ってもよく、或いは、ステップS10及びステップS20を並行して行ってもよい。ステップS20では、膜2における下層膜3に関する厚み(T)を得る(ステップS20)。具体的には、マイクロメーター又は顕微鏡による断面観察等により下層膜3の寸法を測定する。この測定結果として、厚み(T)が取得される。膜2において、下層膜3に関する複層膜の積層方向における寸法として複数の値が測定された場合には、当該複数の値のうちの最小値を、厚み(T)とする。
<中塗のひび割れ追従性を示す評価値を得るステップS30>
次に、ステップS30を行う。ステップS30は、ステップS10及びステップS20よりも後に行われる。ステップS30では、下層膜3のひび割れ追従性を示す評価値(Z)を得る。ステップS30は、膜厚係数を得るステップS31と、ひび割れ追従性を示す評価値を算出するステップS32と、を含む。
ここで、本発明者の知見によれば、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)は厚み(T)によって影響される。例えば、厚み(T)が大きいほどひび割れ追従性を示す評価値(Z)が大きくなる。そして、評価値(Z)への厚み(T)の影響度合いは、伸び(E)との相関を有する。すなわち、伸び(E)が大きいほど、影響度合いが大きくなる。そのため、伸び(E)と、厚み(T)がひび割れ追従性を示す評価値(Z)に及ぼす影響度合いとの相関関係を示す係数として、伸び(E)に基づく膜厚係数(Δ)を導入する。そして、膜厚係数(Δ)を利用して、厚み(T)からひび割れ追従性を示す評価値(Z)を得る。
したがって、ステップS31では、ステップS12において取得した伸び(E)を利用して膜厚係数(Δ)を得る。具体的には、式(3)に示されるように、伸び(E)を変数とし、定数(ζ),(η)を係数として含む関数(f)を利用して、膜厚係数(Δ)を算出する。
Figure 2019028029
次に、ステップS32を行う。ステップS32は、ステップS31よりも後に行われる。ステップS32では、ステップS31において取得した膜厚係数(Δ)を利用して、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)を算出する。具体的には、式(4)に示されるように、厚み(T)を変数とし、評価値(Z)を従属変数とすると共に、膜厚係数(Δ)を比例係数として含む関数(f)を利用して算出する。
Figure 2019028029
以上により、下層膜3によって構成される単層膜のひび割れ追従性を示す値として、評価値(Z)を得る。
<複層膜に関する材料パラメータを得るステップS40>
次に、ステップS40を行う。ただし、ステップS10〜ステップS30を行う前にステップS40を行ってもよく、或いは、ステップS10〜ステップS30とステップS40とを並行して行ってもよい。ステップS40では、膜2に関する材料パラメータと、膜2についての媒介変数(P)(第2の媒介変数)と、をそれぞれを取得する。膜2に関する材料パラメータは、ナノインデンターを用いた膜2の評価により得られる。膜2の材料パラメータとしては、膜2のマルテンス硬さ(HM)(第2のマルテンス硬さ)、及び、膜2の押込みクリープ(CITF)(第2の押込みクリープ)を含む。
ステップS40では、まず、ナノインデンターを用いて膜2の測定を行う(ステップS41)。この測定の結果、膜2の材料パラメータに含まれるマルテンス硬さ(HM)及び押込みクリープ(CITF)が取得される。ここでは、ナノインデンターによる測定は、バーコビッチ圧子である圧子7(図1参照)を用いて、最大押込み深さ制御によって行う。このとき、複層膜である膜2として、下層膜3からの影響が反映されるように膜2の測定を行う。そのために、圧子7の最大押込み深さが厚み(T)の1/6以上となるように、上層膜4側から下地5に向けて圧子7を押し込む。この押し込みにより、押込みクリープ(CITF)とマルテンス硬さ(HM)とが得られる。次に、押込みクリープ(CITF)をマルテンス硬さ(HM)で除することにより、媒介変数(P=CITF/HM)が取得される(ステップS42)。
<複層膜のひび割れ追従性を示す評価値を得るステップS50>
次に、ステップS50を行う。ステップS50は、ステップS30及びステップS40よりも後に行われる。ステップS50では、複層膜である膜2のひび割れ追従性を示す評価値(Z)を得る。ステップS50は、上層膜係数を得るステップS51と、ひび割れ追従性を示す評価値を算出するステップS52と、を含む。
ここで、複層膜である膜2のひび割れ追従性を示す評価値(Z)は、下層膜3のひび割れ追従性を示す評価値(Z)、及び、上層膜4の特性(例えば、上層膜4の伸び)によって影響される。例えば、評価値(Z)が一定である場合、上層膜4の伸びが小さいほど、評価値(Z)が小さくなる。上層膜4の伸びが小さくなる場合として、劣化により上層膜4が硬くなっている状態が挙げられる。一方、上層膜4が硬いほど、材料パラメータに影響を与える。例えば、上層膜4が硬いほど、膜2についての押込みクリープ(CITF)が小さくなり、マルテンス硬さ(HM)が大きくなる。また、上層膜4が硬いほど、媒介変数(P)が小さくなる。
したがって、下層膜3についての媒介変数(P)と膜2についての媒介変数(P)とを比較した際に、媒介変数(P)に対する媒介変数(P)の割合が所定の大きさ以上である場合、膜2のひび割れ追従性に対する上層膜4の特性からの影響度合いが大きいということになる。そのため、膜2のひび割れ追従性に対する上層膜4の影響度合いを示す係数として、上層膜係数(Δ)を用いる。そして、上層膜係数(Δ)と下層膜3のひび割れ追従性を示す評価値(Z)とに基づいて、膜2のひび割れ追従性を示す評価値(ZF)を得る。
ステップS51では、ステップS11において取得した下層膜3の材料パラメータとステップS40において取得した膜2の材料パラメータとを利用して、上層膜係数(Δ)を得る。下層膜3の材料パラメータは、押込みクリープ(CITN)及びマルテンス硬さ(HMN)である。膜2の材料パラメータは、押込みクリープ(CITF)及びマルテンス硬さ(HM)である。本実施形態においては、ステップS11bにおいて取得した媒介変数(P)とステップS40bにおいて取得した媒介変数(P)とを利用する。具体的には、式(5)に示されるように、媒介変数(P)及び媒介変数(P)を変数とし、定数(θ),(ι)を係数として含む関数(f)を利用して、上層膜係数(Δ)を算出する。
Figure 2019028029
次に、ステップS52を行う。ステップS52は、ステップS51よりも後に行われる。ステップS52では、ステップS51において取得した膜厚係数(Δ)を利用して、複層膜である膜2のひび割れ追従性を示す評価値(Z)を算出する。具体的には、式(6)に示されるように、評価値(Z)を変数とし、評価値(Z)を従属変数とすると共に、膜厚係数(Δ)を比例係数として含む関数(f)を利用して算出する。
Figure 2019028029
以上により、下層膜3及び上層膜4によって構成される複層膜である膜2のひび割れ追従性を示す値として、評価値(Z)を得ることができ、膜2のひび割れ追従性の評価が完了する。
続けて、第1実施形態に係るひび割れ追従性を評価する方法の作用効果について説明する。以下の説明において、適宜、次の各参考文献を適宜用いる。
・参考文献1:片山繁雄・著、「ナノインデンテーション試験の軟質材,軟質皮膜への応用」、日本材料試験技術協会、2009年4月(vol.54 No.2)、pp.107〜pp.114。
・参考文献2:澤健司・著、「規格に捕らわれない硬さ試験の応用(第2報) −高温計装化押込み試験の実例−」、日本材料試験技術協会、2009年4月(vol.54 No.2)、pp.115〜pp.118。
第1実施形態に係るひび割れ追従性を評価する方法において、ナノインデンターを用いて下層膜3を評価することにより得た下層膜3の材料パラメータを利用して、下層膜3の特性を示すデータを得る。次に、下層膜3の特性を示すデータと下層膜3の厚み(T)とを用いて、下層膜3により構成される単層膜のひび割れ追従性を示す評価値(Z)を得る。したがって、ナノインデンターを用いた測定結果に基づいて、ひび割れ追従性を評価することが可能である。ここで、ナノインデンターを用いた測定には、わずかな大きさの下層膜3を含むサンプルで足りるので、下層膜3のひび割れ追従性を簡易に評価することができる。
また、下層膜3の特性を示すデータを得るステップS10は、ナノインデンターを用いて、当該データに含まれる下層膜3の材料パラメータを得るステップS11と、ステップS11の後に、下層膜3の材料パラメータを利用して、下層膜3の特性を示すデータに含まれる下層膜3の伸び(E)を得るステップS12と、を含む。これにより、下層膜3のひび割れ追従性を示す評価値(Z)は、厚み(T)を変数とし膜厚係数(Δ)を比例係数として含む関数(f)を利用して得られる。この膜厚係数(Δ)は、下層膜3の伸び(E)を利用して得られる。そして、伸び(E)は、下層膜3の材料パラメータを利用して得られる。従って、ナノインデンターを用いて得た下層膜3の材料パラメータと厚み(T)の測定結果とによって下層膜3のひび割れ追従性を評価する評価値(Z)を得ることができる。
また、ステップS11は、下層膜3に関し、材料パラメータに含まれる下層膜3の押込みクリープ(CITN)及び下層膜3のマルテンス硬さ(HM)を取得するステップS11aと、押込みクリープ(CITN)をマルテンス硬さ(HM)で除して、下層膜3の特性を示すデータに含まれる媒介変数(P)を得るステップS11bと、を含む。ステップS12では、媒介変数(P)を利用して、伸び(E)を算出する。これにより、下層膜3の材料パラメータから、単位硬さあたりの押込みクリープ(CITN)である媒介変数(P)を得る。そして、この媒介変数(P)を利用して伸び(E)を算出する。下層膜3の材料パラメータを得るステップS12において、媒介変数(P)を利用して伸び(E)を算出しているので、精度の良い伸び(E)が得られる。従って、精度の良い伸び(E)を利用して得た評価値(Z)の精度も高めることができる。
一般に、ナノインデンターを用いたナノインデンテーション試験は、硬質な基材の硬度等の物性を評価するために利用されている。ところが、参考文献1及び参考文献2には、ナノインデンテーション試験は、軟質な膜の物性の評価にも有効であることが提案されている。一方、複層膜のひび割れ追従性を評価するためにナノインデンテーション試験を用いることは考えられていなかった。
ここで、本実施形態において、膜2は、単層膜を構成する下層膜3と、下層膜3上に形成された上層膜4と、を含む複層膜であり、ナノインデンターを用いて膜2を評価することにより、複層膜である膜2に関する材料パラメータを得るステップS40と、ステップS30及びステップS40の後に、評価値(Z)及び膜2の材料パラメータを利用して、膜2のひび割れ追従性を示す評価値(Z)を得るステップS50と、をさらに有し、ステップS50は、下層膜3の材料パラメータと膜2の材料パラメータとを利用して上層膜係数(Δ)を得るステップS51と、評価値(Z)を変数とし評価値(Z)を従属変数とすると共に、上層膜係数(Δ)を比例係数として含む関数(f)を利用して評価値(Z)を算出するステップS52と、を含み、上層膜係数(Δ)は、膜2のひび割れ追従性に対する上層膜4の影響度合いを示している。
したがって、ステップS50では、上層膜係数(Δ)を用いていわゆる複層膜である膜2のひび割れ追従性を示す評価値(Z)を得る。この上層膜係数(Δ)は、複層膜のひび割れ追従性に対する上層膜4の影響度合いを示す。したがって、上層膜係数(Δ)を用いた評価によれば、評価値(Z)に対して上層膜4の影響度合いを加味することが可能となり、その結果膜2のひび割れ追従性を示す評価値(Z)を得ることができる。
また、ステップS40は、膜2の材料パラメータに含まれる押込みクリープ(CITF)及びマルテンス硬さ(HM)を取得するステップS41と、押込みクリープ(CITF)をマルテンス硬さ(HM)で除して、媒介変数(P)を得るステップS42と、を含み、ステップS51では、媒介変数(P)を利用して上層膜係数(Δ)を算出する。これにより、膜2の材料パラメータから、単位硬さあたりの押込みクリープ(CITF)である媒介変数(P)を得て、この媒介変数(P)を利用して上層膜係数(Δ)を算出する。このステップS40によれば、精度のよい評価値(Z)を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態において、下層膜3に関する材料パラメータとして、マルテンス硬さ(HM)、及び、押込みクリープ(CITN)を用いた。また、膜2に関する材料パラメータとして、マルテンス硬さ(HM)、及び、押込みクリープ(CITF)を用いた。しかしながら、材料パラメータは、ISO14577−1において規格された材料パラメータのうち、押込み硬さ(HIT)、及び、くぼみの弾性戻り変形仕事量(Welast)を用いてもよい。
また、上記実施形態では、ステップS11a及びステップS41のナノインデンターによる測定において、制御パラメータとしてバーコビッチ圧子である圧子6,7の最大押込み深さを用いた。しかしながら、圧子は、バーコビッチ圧子に限定されず、別の圧子でもよい。また、ナノインデンターによる測定における制御パラメータは、最大押込み深さに限定されず、別の制御要素を用いてもよい。
また、上記実施形態では、媒介変数(P=CITN/HM)を取得する(ステップS11b)と共に、媒介変数(P=CITF/HM)を取得した(ステップS42)。ひび割れ追従性を評価する方法は、ステップS11b及びステップS42を有していなくてもよい。つまり、各ステップにおいて、媒介変数(P)に代えて、ステップS11aにおいて取得した下層膜3の材料パラメータのうちのいずれかを直接に用いてもよい。また、各ステップにおいて、媒介変数(P)に代えて、ステップS41において取得した膜2の材料パラメータのうちのいずれかを直接に用いてもよい。
一例として、媒介変数(P)に代えて、マルテンス硬さ(HM)を適用し、媒介変数(P)に代えて、マルテンス硬さ(HM)を適用した場合について説明する。ステップS11bを実施しない場合、ステップS12では、関数(f)に代えて、式(7)に示される関数(f)を用いてもよい。関数(f)は、マルテンス硬さ(HM)を変数とし、定数(κ),(λ)を係数として含む。この関数(f)を用いて伸び(E)を算出してもよい。
Figure 2019028029
また、ステップS11bを実施しない場合、ステップS13では、関数(f)に代えて、式(8)に示される関数(f)を用いてもよい。関数(f)は、マルテンス硬さ(HM)を変数とし、定数(μ),(ν)を係数として含む。この関数(f)を用いて、標準値(ZNO)を算出してもよい。
Figure 2019028029
また、ステップS42を実施しない場合、ステップS51では、関数(f)に代えて、式(9)に示される関数(f)を用いてもよい。関数(f)は、マルテンス硬さ(HM)及びマルテンス硬さ(HM)を変数とし、定数(ξ),(ρ)を係数として含む。この関数(f)を用いて、上層膜係数(Δ)を算出してもよい。
Figure 2019028029
また、上記実施形態では、ひび割れ追従性を評価する方法が適用される膜として、複層膜である膜2を例示した。しかし、ひび割れ追従性を評価する方法が適用される膜は、複層膜である膜2に限定されない。膜は、少なくともひとつの膜部を有していればよく、例えば、下層膜3のみを有する単層膜であってもよい。その場合、上述したステップS40〜ステップS50は省略される。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例におけるナノインデンターによる測定は、次の測定条件とした。
・圧子:バーコビッチ圧子
・制御方式:最大押込み深さ制御
・最大押込み深さ:40μm
・押込み時間:5秒
・クリープ時間:5秒
・除荷時間:5秒
また、実施例に供するサンプルは、次のとおりである。
・サンプルの大きさ:縦10mm、横10mm
・基材の材質:フレキシブルボード
・基材の厚み:4mm
・膜:塗膜
・中塗(下層膜)の材質:塗り材でエポキシ樹脂、合成樹脂エマルション、アクリルゴム
・上塗(上層膜)の材質:塗料でアクリルシリコン
・中塗の厚み:1.0mm
・上塗の厚み:0.1mm
[中塗の伸び]
実験例1〜9では、関数(f)(式(1))を利用して得た伸び(E)の妥当性を確認した。この確認では、関数(f)を利用して得た伸び(E)(計算値)を、実測により得た中塗の伸び(E)(測定値)と比較した。
まず9個のサンプルを準備した。実験例1〜9のサンプルは、塗膜の材質が異なるだけであり、その他の構成や数値は上記のとおりである。実験例1,3,4のサンプルは、塗膜がエポキシ樹脂からなる。実験例2のサンプルは、塗膜が合成樹脂エマルションからなる。実験例5〜9のサンプルは、塗膜がアクリルゴムからなる。
伸び(E)(計算値)は、まず、ステップS11を実施して、中塗の媒介変数(P)を得た。次に、ステップS12を実施して、伸び(E)(計算値)を得た。ここで、ステップS12において用いた関数(f)は、定数(α)を「−0.953」、定数(β)を「43.2」、定数(γ)を「3.72」とした。これらの定数は、多数の試験体から得た伸び(測定値)を、関数(f)式(1)にあてはめることによって得た。ここでは、経時による劣化を模擬するため、様々な性状(材質、伸び、及びひび割れ追従性)の試験体を用いた。
伸び(E)(測定値)は、JIS A 6909 7.29「伸び試験」に規定される試験に準拠して得た。
具体的には、中塗の伸び(E)を、以下のように測定した。まず、剥離紙に乾燥後の厚みが1.0mmとなるよう中塗を塗付けて養生した。その後、ダンベル状 2号(JIS K 6251 6.1「ダンベル状試験片」に規定)に打抜き刃で剥離紙を取り除き、標点距離間20mmとした試験片を万能試験機で50mm/minで引張り、破断時の伸び率とした。
図3(a)は、実験例1〜9におけるサンプルの材質と、伸び(E)(測定値)と、媒介変数(P)と、伸び(E)(計算値)とを列記する。また、図3(b)は、伸び(E)(計算値)と伸び(E)(測定値)との関係を示すグラフである。横軸は、伸び(E)(計算値)を示す。縦軸は、伸び(E)(測定値)を示す。そして、各プロットは、ある伸び(E)(計算値)を得たときに、同じサンプルから得た伸び(E)(測定値)を示す。理想的には、伸び(E)(計算値)は、伸び(E)(測定値)と同じになるはずであり、プロットは、直線状にならぶ。従って、プロットの分布が直線に近くなるほど、伸び(E)(計算値)が伸び(E)(測定値)を精度良く予測できており、妥当性が高いといえる。
グラフG1は、各プロットの線形近似線である。線形近似線と各プロットとの近さは、相関係数(R)により示される。図3(b)のグラフG1においては、相関係数(R)は「0.860」であった。この相関係数(R)の数値によれば、伸び(E)(計算値)と伸び(E)(測定値)との間には強い相関があるといえるので、関数(f)を利用して得た伸び(E)(計算値)は、充分に伸び(E)(測定値)を予想できていることがわかった。
実験例10〜18では、関数(f)(式(7))を利用して得た伸び(E)(計算値)の妥当性を確認した。この確認では、関数(f)を利用して得た伸び(E)(計算値)を、実測により得た伸び(E)(測定値)と比較した。
まず9個のサンプルを準備した。実験例10〜18のサンプルは、塗膜の材質が異なるだけであり、その他の構成や数値は上記のとおりである。実験例10,12,13のサンプルは、塗膜がエポキシ樹脂からなる。実験例11のサンプルは、塗膜が合成樹脂エマルションからなる。実験例14〜18のサンプルは、塗膜がアクリルゴムからなる。
伸び(E)(計算値)は、まず、ステップS11を実施して、中塗のマルテンス硬さ(HM)を得た。次に、ステップS12を実施して、伸び(E)(計算値)を得た。ここで、ステップS12において用いた関数(f)は、定数(κ)「616」、定数(λ)を「−0.316」とした。
伸び(E)(測定値)は、JIS A 6909 7.29「伸び試験」に規定される試験に準拠して得た。具体的な測定については、上記と同様である。
図4(a)は、実験例10〜18におけるサンプルの材質と、伸び(E)(測定値)と、マルテンス硬さ(HM)と、伸び(E)(計算値)とを列記する。また、図4(b)は、伸び(E)(計算値)と伸び(E)(測定値)との関係を示すグラフである。横軸は、伸び(E)(計算値)を示す。縦軸は、伸び(E)(測定値)を示す。そして、各プロットは、ある伸び(E)(計算値)を得たときに、同じサンプルから得た伸び(E)(測定値)を示す。
グラフG2は、各プロットの線形近似線である。図4(b)のグラフG2においては、相関係数(R)は「0.938」であった。この相関係数(R)の数値によれば、伸び(E)(計算値)と伸び(E)(測定値)との間には強い相関があるといえるので、関数(f)を利用して得た伸び(E)(計算値)は、充分に伸び(E)(測定値)を予想できていることがわかった。
[中塗のひび割れ追従性の標準値]
実験例19〜27では、関数(f)(式(2))を利用して得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)の妥当性を確認した。この確認では、ここでは、基準厚(T)を1mmと仮定したとき、関数(f)を利用して得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)を、実測により得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)と比較した。
まず9個のサンプルを準備した。実験例19〜27のサンプルは、塗膜の材質が異なるだけであり、その他の構成や数値は上記のとおりである。実験例19,21,22のサンプルは、塗膜がエポキシ樹脂からなる。実験例20のサンプルは、塗膜が合成樹脂エマルションからなる。実験例23〜27のサンプルは、塗膜がアクリルゴムからなる。
ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)は、まず、ステップS11を実施して、中塗の媒介変数(P)を得た。次に、ステップS13を実施して、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)を得た。ここで、ステップS13において用いた関数(f)は、定数(δ)を「0.710」、定数(ε)を「0.462」とした。
ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)は、JSCE−K532−2010「表面被覆材のひび割れ追従性試験方法」に規定される試験に準拠して得た。
具体的には、中塗のひび割れ追従性の標準値(ZNO)を、以下のように測定した。まず、裏面中央に切込みを入れたストレート板の表に所定の厚みになるよう中塗を塗付けて養生した。その後、万能試験機でストレート板を1mm/minで引張り、目視でピンホール・ひび割れが発生した時点でのひび割れ幅とした。
図5(a)は、実験例19〜27におけるサンプルの材質と、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)と、媒介変数(P)と、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)とを列記する。また、図5(b)は、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)とひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)との関係を示すグラフである。横軸は、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)を示す。縦軸は、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)を示す。そして、各プロットは、あるひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)を得たときに、同じサンプルから得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)を示す。
グラフG3は、各プロットの線形近似線である。図5(b)のグラフG3においては、相関係数(R)は「0.960」であった。この相関係数(R)の数値によれば、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)とひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)との間には強い相関があるといえるので、関数(f)を利用して得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)は、充分にひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)を予想できていることがわかった。
実験例28〜36では、関数(f)(式(8))を利用して得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)の妥当性を確認した。この確認では、関数(f)を利用して得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)を、実測により得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)と比較した。
まず9個のサンプルを準備した。実験例28〜36のサンプルは、塗膜の材質が異なるだけであり、その他の構成や数値は上記のとおりである。実験例28,30,31のサンプルは、塗膜がエポキシ樹脂からなる。実験例29のサンプルは、塗膜が合成樹脂エマルションからなる。実験例32〜36のサンプルは、塗膜がアクリルゴムからなる。
ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)は、まず、ステップS11を実施して、中塗のマルテンス硬さ(HM)を得た。次に、ステップS13を実施して、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)を得た。ここで、ステップS13において用いた関数(f)は、定数(μ)を「2.63」、定数(ν)を「−0.57」とした。
ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)は、JSCE−K532−2010「表面被覆材のひび割れ追従性試験方法」に規定される試験に準拠して得た。具体的な測定については、上記と同様である。
図6(a)は、実験例28〜36におけるサンプルの材質と、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)と、マルテンス硬さ(HM)と、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)とを列記する。また、図6(b)は、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)とひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)との関係を示すグラフである。横軸は、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)を示す。縦軸は、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)を示す。そして、各プロットは、あるひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)を得たときに、同じサンプルから得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)を示す。
グラフG4は、各プロットの線形近似線である。図6(b)のグラフG4においては、相関係数(R)は「0.986」であった。この相関係数(R)の数値によれば、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)とひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)との間には強い相関があるといえるので、関数(f)を利用して得たひび割れ追従性の標準値(ZNO)(計算値)は、充分にひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)を予想できていることがわかった。
[中塗のひび割れ追従性を示す評価値]
実験例37〜45では、関数(f)(式(3))及び関数(f)(式(4))を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)の妥当性を確認した。この確認では、関数(f),(f)を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を、実測により得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)と比較した。
まず9個のサンプルを準備した。実験例37〜45のサンプルは、塗膜の材質と中塗の厚み(T)が異なるだけであり、その他の構成や数値は上記のとおりである。実験例37〜39のサンプルは、塗膜がエポキシ樹脂aからなる。実験例40〜43のサンプルは、塗膜がアクリルゴムaからなる。実験例44,45のサンプルは、塗膜がアクリルゴムbからなる。
ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)は、まず、ステップS20を実施して、中塗の厚み(T)を得た。次に、上記と同様の実測により、中塗の伸び(E)(測定値)を得た。その後、ステップS30を実施して、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得た。
より具体的には、まず、ステップS31を実施して、中塗の膜厚係数(Δ)を得た。次に、ステップS32を実施して、中塗のひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得た。ここで、ステップS31において用いた関数(f)は、関数(f)における定数(ζ)を「0.60」、定数(η)を「0.0036」とした。
ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)は、JSCE−K532−2010「表面被覆材のひび割れ追従性試験方法」に規定される試験に準拠して得た。
具体的には、中塗のひび割れ追従性示す評価値(Z)を、以下のように測定した。まず、裏面中央に切込みを入れたストレート板の表に所定の厚みになるよう中塗を塗付けて養生した。その後、万能試験機でストレート板を1mm/minで引張り、目視でピンホール・ひび割れが発生した時点でのひび割れ幅とした。
図7は、実験例37〜45におけるサンプルの材質と、伸び(E)(測定値)と、ひび割れ追従性の標準値(ZNO)(測定値)と、厚み(T)と、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)と、膜厚係数(Δ)と、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とを列記する。図8(a)は、材質ごとの厚み(T)とひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)との関係を示すグラフである。横軸は、厚み(T)を示す。縦軸は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を示す。グラフG5は材質がエポキシ樹脂aであるサンプルのプロットの線形近似線である。グラフG6は、材質がアクリルゴムaであるサンプルのプロットの線形近似線である。グラフG7は、材質がアクリルゴムbであるサンプルのプロットの線形近似線である。これらのグラフG5,G6,G7によれば、関数(f),(f)を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)は、塗膜の材質によらずに、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)の予想のために適用できることがわかった。
図8(b)は、膜厚係数と中塗のダンベル伸びとの関係を示すグラフである。横軸は、中塗のダンベル伸びを示す。縦軸は、膜厚係数を示す。なお、膜厚係数は、図8(a)におけるグラフG5〜グラフG7のそれぞれの傾きである。各プロットは、あるダンベル伸びを得たときに、同じサンプルから得た膜厚係数を示す。グラフG8は、各プロットの線形近似線である。図8(b)のグラフG8においては、相関係数(R)は「0.733」であった。この相関係数(R)の数値によれば、ダンベル伸びと膜厚係数との間には強い相関があるといえる。図8(b)により、中塗のダンベル伸びと中塗のひび割れ追従性との関係を利用して、膜厚係数から中塗のひび割れ追従性を算出できることがわかった。
また、図9は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)との関係を示すグラフである。横軸は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を示す。縦軸は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を示す。そして、各プロットは、あるひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得たときに、同じサンプルから得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を示す。
グラフG9は、各プロットの線形近似線である。図9のグラフG9においては、相関係数(R)は「0.937」であった。この相関係数(R)の数値によれば、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)との間には強い相関があるといえるので、関数(f),(f)を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)は、充分にひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を予想できていることがわかった。
[複層膜(ここでは、複層塗膜)のひび割れ追従性を示す評価値]
実験例46〜59では、関数(f)(式(5))及び関数(f)(式(6))を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)の妥当性を確認した。この確認では、関数(f),(f)を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を、実測により得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)と比較した。
まず14個のサンプルを準備した。実験例46〜59のサンプルは、塗膜の材質が異なるだけであり、その他の構成や数値は上記のとおりである。実験例46〜48のサンプルは、中塗がエポキシ樹脂aからなる。実験例49〜51のサンプルは、中塗がエポキシ樹脂bからなる。実験例52〜54のサンプルは、中塗がアクリルゴムaからなる。実験例55〜59のサンプルは、中塗がアクリルゴムbからなる。
また、実験例46,49,56のサンプルは、上塗がアクリルシリコンaからなる。実験例47,50,53,58のサンプルは、上塗がアクリルシリコンbからなる。実験例48,51,54,59のサンプルは、上塗がアクリルシリコンcからなる。実験例52,55のサンプルは、上塗がアクリルシリコンdからなる。実験例57のサンプルは、上塗がアクリルシリコンeからなる。
ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)は、まず、ステップS11を実施して、中塗の媒介変数(P)を得た。次に、ステップS40を実施して、複層塗膜の媒介変数(P)を得た。次に、上記と同様の実測により、中塗のひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を得た。その後、ステップS50を実施して、複層塗膜のひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得た。
より具体的には、まず、ステップS51を実施して、上層膜係数(Δ)を得た。次に、ステップS52を実施して、複層塗膜のひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得た。ここで、ステップS51において用いた関数(f)は、定数(θ)を「0.781」、定数(ι)を「1.6」とした。
ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)は、JSCE−K532−2010「表面被覆材のひび割れ追従性試験方法」に規定される試験に準拠して得た。
具体的には、複層塗膜のひび割れ追従性を示す評価値(Z)を、以下のように測定した。まず、裏面中央に切込みを入れたストレート板の表に所定の厚みになるよう中塗を塗付けた。また、中塗上に上塗を0.1mmの厚みで塗り付けて養生した。その後、万能試験機でストレート板を1mm/minで引張り、目視で上塗又は複層塗膜にピンホール・ひび割れが発生した時点でのひび割れ幅とした。
図10は、実験例46〜59におけるサンプルの材質(中塗、上塗)と、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)と、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)と、媒介変数(P)と、媒介変数(P)と、上層膜係数(Δ)と、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とを列記する。図11は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)との関係を示すグラフである。横軸は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を示す。縦軸は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を示す。そして、各プロットは、あるひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得たときに、同じサンプルから得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を示す。
グラフG10は、各プロットの線形近似線である。図11のグラフG10においては、相関係数(R)は「0.898」であった。この相関係数(R)の数値によれば、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)との間には強い相関があるといえるので、関数(f),(f)を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)は、充分にひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を予想できていることがわかった。
実験例60〜73では、関数(f)(式(9))及び関数(f)(式(6))を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)の妥当性を確認した。この確認では、関数(f),(f)を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を、実測により得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)と比較した。
まず14個のサンプルを準備した。実験例60〜73のサンプルは、塗膜の材質が異なるだけであり、その他の構成や数値は上記のとおりである。実験例60〜62のサンプルは、中塗がエポキシ樹脂aからなる。実験例63〜65のサンプルは、中塗がエポキシ樹脂bからなる。実験例66〜68のサンプルは、中塗がアクリルゴムaからなる。実験例69〜73のサンプルは、中塗がアクリルゴムbからなる。
また、実験例60,63,70のサンプルは、上塗がアクリルシリコンaからなる。実験例61,64,67,72のサンプルは、上塗がアクリルシリコンbからなる。実験例62,65,68,73のサンプルは、上塗がアクリルシリコンcからなる。実験例66,69のサンプルは、上塗がアクリルシリコンdからなる。実験例71のサンプルは、上塗がアクリルシリコンeからなる。
ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)は、まず、ステップS11を実施して、中塗のマルテンス硬さ(HM)を得た。次に、ステップS40を実施して、複層膜のマルテンス硬さ(HM)を得た。次に、上記と同様の実測により、中塗のひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を得た。その後、ステップS50を実施して、複層膜のひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得た。
より具体的には、まず、ステップS51を実施して、上層膜係数(Δ)を得た。次に、ステップS52を実施して、複層膜のひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得た。ここで、ステップS51において用いた関数(f)は、定数(ξ)を「−0.212」、定数(ρ)を「1.94」とした。
ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)は、JSCE−K532−2010「表面被覆材のひび割れ追従性試験方法」に規定される試験に準拠して得た。具体的な測定については、上記と同様である。
図12は、実験例60〜73におけるサンプルの材質(中塗、上塗)と、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)と、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)と、媒介変数(P)と、媒介変数(P)と、上層膜係数(Δ)と、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とを列記する。図13は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)との関係を示すグラフである。横軸は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を示す。縦軸は、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を示す。そして、各プロットは、あるひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)を得たときに、同じサンプルから得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を示す。
グラフG12は、各プロットの線形近似線である。図13のグラフG12においては、相関係数(R)は「0.871」であった。この相関係数(R)の数値によれば、ひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)とひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)との間には強い相関があるといえるので、関数(f),(f)を利用して得たひび割れ追従性を示す評価値(Z)(計算値)は、充分にひび割れ追従性を示す評価値(Z)(測定値)を予想できていることがわかった。
1…サンプル、2…膜、3…下層膜(第1の膜部)、4…上層膜(第2の膜部)、5…下地(基材)。

Claims (5)

  1. 基材上に形成された少なくともひとつの膜部を有する膜であって、建築資材として用いられる高分子材料によって形成される前記膜のひび割れ追従性を評価する方法であって、
    前記膜は、前記基材上に形成された第1の膜部により構成される単層膜を含み、
    ナノインデンターを用いて前記単層膜を評価することにより得た第1の測定結果を利用して、前記単層膜の特性を示す第1のデータを得るステップと、
    前記単層膜に関する第1の厚みを得るステップと、
    前記第1のデータを得るステップ及び前記第1の厚みを得るステップの後に、前記第1のデータ及び前記第1の厚みを利用して、前記単層膜のひび割れ追従性を示す第1の評価値を得るステップと、を有する、ひび割れ追従性を評価する方法。
  2. 前記第1のデータを得るステップは、
    前記ナノインデンターを用いて、前記第1のデータに含まれる前記第1の測定結果を得るステップと、
    前記第1の測定結果を得るステップの後に、前記第1の測定結果を利用して、前記第1のデータに含まれる第1の伸びを得るステップと、を含み、
    前記第1の評価値を得るステップは、
    前記第1の伸びを利用して膜厚係数を得るステップと、
    前記第1の厚みを変数とし前記第1の評価値を従属変数とすると共に、前記膜厚係数を比例係数として含む関数を利用して、前記第1の評価値を算出するステップと、を含み、
    前記第1の伸びに基づく前記膜厚係数は、前記第1の伸びが大きいほど、前記第1の厚みが前記第1の評価値に及ぼす影響度合いが大きくなることを示す、請求項1に記載のひび割れ追従性を評価する方法。
  3. 前記第1の測定結果を得るステップは、
    前記第1の膜部に関し、前記第1の測定結果に含まれる第1の押込みクリープ及び第1のマルテンス硬さを取得するステップと、
    前記第1の押込みクリープを前記第1のマルテンス硬さで除した結果を、前記第1のデータに含まれる第1の媒介変数として得るステップと、を含み、
    前記第1の伸びを得るステップでは、前記第1の媒介変数を利用して、前記第1の伸びを算出する、請求項2に記載のひび割れ追従性を評価する方法。
  4. 前記膜は、前記単層膜を構成する前記第1の膜部と、前記第1の膜部上に形成された第2の膜部と、を含む複層膜であり、
    前記ナノインデンターを用いて前記複層膜を評価することにより、前記複層膜に関する第2の測定結果を得るステップと、
    前記第1の評価値を得るステップ及び前記第2の測定結果を得るステップの後に、前記第1の評価値及び前記第2の測定結果を利用して、前記複層膜のひび割れ追従性を示す第2の評価値を得るステップと、をさらに有し、
    前記第2の評価値を得るステップは、
    前記第1の測定結果及び前記第2の測定結果を利用して上層膜係数を得るステップと、
    前記第1の評価値を変数とし前記第2の評価値を従属変数とすると共に、前記上層膜係数を比例係数として含む関数を利用して前記第2の評価値を算出するステップと、を含み、
    前記上層膜係数は、前記複層膜のひび割れ追従性に対する前記第2の膜部の影響度合いを示す、請求項1〜3のいずれか一項に記載のひび割れ追従性を評価する方法。
  5. 前記第2の測定結果を得るステップは、
    前記第2の測定結果に含まれる第2の押込みクリープ及び第2のマルテンス硬さを取得するステップと、
    前記第2の押込みクリープを前記第2のマルテンス硬さで除した結果を第2の媒介変数として得るステップと、を含み、
    前記上層膜係数を得るステップでは、前記第2の媒介変数の値を利用して前記上層膜係数を算出する、請求項4に記載のひび割れ追従性を評価する方法。
JP2017150923A 2017-08-03 2017-08-03 ひび割れ追従性を評価する方法 Active JP6854731B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017150923A JP6854731B2 (ja) 2017-08-03 2017-08-03 ひび割れ追従性を評価する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017150923A JP6854731B2 (ja) 2017-08-03 2017-08-03 ひび割れ追従性を評価する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019028029A true JP2019028029A (ja) 2019-02-21
JP6854731B2 JP6854731B2 (ja) 2021-04-07

Family

ID=65478226

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017150923A Active JP6854731B2 (ja) 2017-08-03 2017-08-03 ひび割れ追従性を評価する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6854731B2 (ja)

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0627010A (ja) * 1992-07-09 1994-02-04 Sekisui House Ltd シート防水材の硬度計による劣化判定方法
JPH0741730A (ja) * 1993-05-25 1995-02-10 Toray Chiokoole Kk コンクリート塗装材、及びそれを用いたコンクリート塗装方法
US6053034A (en) * 1998-10-09 2000-04-25 Advanced Micro Devices, Inc. Method for measuring fracture toughness of thin films
JP2001302970A (ja) * 2000-04-26 2001-10-31 Kansai Paint Co Ltd 常温乾燥型発泡塗料組成物とそれを使用した発泡塗膜の形成方法
JP2009047427A (ja) * 2007-08-13 2009-03-05 Mitsutoyo Corp 押込み試験機における試験管理方法及び押込み試験機
JP2014148599A (ja) * 2013-01-31 2014-08-21 Fukoku Co Ltd コーティング組成物およびゴム部材
JP2015059195A (ja) * 2013-09-20 2015-03-30 中国塗料株式会社 エポキシ樹脂組成物
JP2016032915A (ja) * 2014-07-31 2016-03-10 大日本塗料株式会社 塗装物及びコンクリート構造物のひび割れ検査方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0627010A (ja) * 1992-07-09 1994-02-04 Sekisui House Ltd シート防水材の硬度計による劣化判定方法
JPH0741730A (ja) * 1993-05-25 1995-02-10 Toray Chiokoole Kk コンクリート塗装材、及びそれを用いたコンクリート塗装方法
US6053034A (en) * 1998-10-09 2000-04-25 Advanced Micro Devices, Inc. Method for measuring fracture toughness of thin films
JP2001302970A (ja) * 2000-04-26 2001-10-31 Kansai Paint Co Ltd 常温乾燥型発泡塗料組成物とそれを使用した発泡塗膜の形成方法
JP2009047427A (ja) * 2007-08-13 2009-03-05 Mitsutoyo Corp 押込み試験機における試験管理方法及び押込み試験機
JP2014148599A (ja) * 2013-01-31 2014-08-21 Fukoku Co Ltd コーティング組成物およびゴム部材
JP2015059195A (ja) * 2013-09-20 2015-03-30 中国塗料株式会社 エポキシ樹脂組成物
JP2016032915A (ja) * 2014-07-31 2016-03-10 大日本塗料株式会社 塗装物及びコンクリート構造物のひび割れ検査方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6854731B2 (ja) 2021-04-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Hay et al. Measuring substrate-independent modulus of thin films
Marasteanu et al. Development of a simple test to determine the low temperature creep compliance of asphalt mixtures
Dietsch et al. Assessing the integrity of glued-laminated timber elements
Sadowski et al. ANN modeling of pull-off adhesion of concrete layers
Yamazaki et al. Determination of interfacial fracture toughness of thermal spray coatings by indentation
KR101373059B1 (ko) 계장화 압입 시험을 이용한 잔류응력 평가 방법
Hwang et al. Extracting plastic properties from in-plane displacement data of spherical indentation imprint
Beck et al. Mechanical properties of SiO2 and Si3N4 coatings: a BAM/NIST co-operative project
Annamdas et al. Monitoring concrete by means of embedded sensors and electromechanical impedance technique
Moy et al. Indentation and imprint mapping for the identification of material properties in multi-layered systems
Fischer-Cripps et al. Nanoindentation test standards
JP6854731B2 (ja) ひび割れ追従性を評価する方法
Mallikarjunachari et al. Nanomechanical study of polymer‐polymer thin film interface under applied service conditions
Ivanovna Increasing the Durability of Paint and Varnish Coatings in Building Products and Construction
Czarnecki et al. Optimization of polymer-cement coating composition using material model
Inoue et al. Evaluation of interfacial strength of multilayer thin films polymer by nanoindentation technique
Obelode et al. Residual stress analysis on thick film systems by the incremental hole-drilling method–simulation and experimental results
RU2489701C1 (ru) Способ определения модуля упругости материала покрытия на изделии
Fischer-Cripps et al. Nanoindentation of thin films and small volumes of materials
JP6909720B2 (ja) 複層膜のひび割れ追従性を評価する方法
Grubîi et al. Measurement of surface-checking in sliced lamellae-based engineered wood flooring using digital image correlation
Hay Measuring substrate-independent modulus of dielectric films by instrumented indentation
Gathimba et al. Static ductility evaluation of corroded steel plates considering surface roughness characteristics
Kartashova et al. A study of the resistance of polymer coatings for the working equipment of road machinery to the effect of climatic factors
Chakroun et al. Measuring elastic properties of the constituent multilayer coatings for different modulation periods

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200210

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210225

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210309

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210316

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6854731

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250