JP2019027957A - L−fabpの免疫学的測定方法及び該方法に用いられる測定試薬 - Google Patents

L−fabpの免疫学的測定方法及び該方法に用いられる測定試薬 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、免疫学的にL−FABPを測定する方法において、検体に由来する測定誤差の影響を回避することを課題とする。【解決手段】免疫学的にL−FABPを測定する方法において、L−FABPの存在が疑われる試料をDTNBと接触させることにより、L−FABPを迅速簡便、かつ正確に免疫学的に測定できる方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、L−FABPに対する抗体を用いた、L−FABPの免疫学的測定方法及び該方法に用いられる測定試薬に関する。特に、L−FABPの存在が疑われる試料と、DTNBとを接触させる工程を含む測定方法及び該方法に用いられる測定試薬に関する。
脂肪酸結合蛋白質(FABP:fatty acid binding protein)は、サイトゾルに存在し、脂肪酸と結合する能力を有する分子量約14キロダルトン前後の蛋白質群で、肝臓型(L−FABP)、腸型(I−FABP)、心筋型(H−FABP)、脳型(B−FABP)、皮膚型(C−FABP/E−FABP)、脂肪細胞型(aP2)、末梢神経細胞型(ミエリンP2)等少なくとも7つの分子種が知られている。これらはいずれも脂肪酸結合能を有し、共通の祖先遺伝子から進化したファミリーであると考えられている。各型のFABPは特異的な組識分布を示し、命名は、初めにどの組織から見出されたかを意味するが、その組織にしか存在しないことを必ずしも意味するものではない。ヒトの腎臓組織中では、肝臓型(L−FABP)と心筋型(H−FABP)の少なくとも二種類のFABPが発現しており、これらのうちL−FABPは近位尿細管に分布し、H−FABPは主として遠位尿細管に分布している(Maatmanら、BiochemicalJournal、第288巻、第285-290頁、1992年;Maatmanら、Biochemical Journal、第273巻、第759-766頁、1991年)。
L−FABPの免疫学的測定方法としては、以下の特許文献1〜4に示す方法が知られている。
特許文献1には、腎組織中におけるL−FABPの発現と腎疾患の予後との関連性に着目し、被検試料中に存在する、腎臓組織由来の脂肪酸結合蛋白質を検出することを特徴とする、腎疾患の検査方法として抗マウスL−FABPポリクローナル抗体を用い、腎疾患患者から採取した尿をサンプルとして、尿中に漏出しているL−FABP量をサンドイッチELISAにより測定している例が記載されている。
また、特許文献2では、採取した尿をヘミン(=クロロ(ポルフィリナト)鉄(III)錯体)等の酸化還元試薬で処理することで、尿中L−FABPの免疫反応性が増強されること、その増強程度(誘導倍率)が大きいほど、敗血症又は多臓器不全の患者の予後が不良であるという知見に基づき、処理前後の尿に含まれる肝臓型脂肪酸結合蛋白質を、特異的抗体を用いたELISAで検出する方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、尿試料に変性剤として、還元剤(グルタチオン、システイン、ペニシラミン等)、カオトロピック試薬(尿素、グアニジン等)及び界面活性剤(n-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)からなる化合物の1種又は2種を添加し、尿試料をこれらの化合物を用いて前処理することで免疫測定の感度、すなわち測定対象物である尿中の蛋白質の測定感度を向上させる方法が開示されており、尿中の蛋白質の一例として、L−FABPがあげられている。
また、特許文献4には、被検試料中に存在する腎臓組織由来のL−FABP(肝臓型脂肪酸結合タンパク質)を、量子ドットにより標識されたプローブを用いて検出することを特徴とする、腎症の検査方法およびその検査キットが開示されている。
特開平11−242026 特開2011−22000 特開2014−85208 国際公開WO2009/081680号パンフレット
本発明者らは、より迅速簡便なL−FABPの測定方法を開発すべく、まずラテックス凝集測定法でL−FABPの検出を試みたところ、一般的な構成のラテックス凝集測定用試薬を用いただけでは直ちには実用に供せないことが判明した。原因としては、試料に由来すると思われる測定誤差の問題が考えられた。ここで、上記特許文献1〜4には、このような試料に由来すると思われる免疫測定法における測定誤差の問題点は開示されておらず、また、当然のことながらそのような問題点を解決するための詳細な測定条件(試料の処理や抗原抗体反応の条件)に関する検討もされていない。
したがって、本発明の課題は、検体中のL−FABPを免疫測定法により測定するに際し、試料に由来する測定誤差の影響を回避して、既存の体外診断用医薬品と同等以上の検出感度を有するL−FABPの免疫学的測定方法を提供することである。また、本発明は、当該L−FABPの免疫学的測定法に用いる測定試薬、測定試薬キットを提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、測定反応系に対する各種化合物種類及び添加条件について鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、L−FABPの存在が疑われる試料をDTNBと接触させることにより、L−FABPを迅速簡便、かつ正確に免疫学的に測定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、DTNBは、測定時に試料と共存していればよく、試料への添加のタイミングは問わないこと、すなわち、試料に添加しても試薬に添加しても効果が得られ、また、採取直後の試料を測定する場合であっても、採取後しばらく室温保存した後の試料を測定する場合であっても、DTNBの反応測定系への添加のタイミングを問わず測定値の変動を抑える効果があることがわかった。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)試料中のL−FABPを、L−FABPに対する抗体により測定する免疫学的測定方法であって、L−FABPの存在が疑われる試料と、DTNBとを接触させる工程を含む前記方法。
(2)L−FABPの存在が疑われる試料が、尿、血液、及び腎組組織からなる群から選ばれるいずれか1以上を由来とする試料である、(1)に記載の方法。
(3)L−FABPの存在が疑われる試料とDTNBとを接触させる工程の後、該試料とL−FABPに対する抗体と接触させる工程を含む、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)L−FABPの存在が疑われる試料、L−FABPに対する抗体及びDTNBを同時に接触させる工程を含む、(1)又は(2)に記載の方法。
(5)免疫学的測定方法がラテックス免疫凝集測定法である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)L−FABPの存在が疑われる試料に、DTNBを含む第一試薬を添加する工程を含む、(5)に記載の方法。
(7)L−FABPの存在が疑われる試料とDTNBとを接触させる工程、並びに、緩衝液を含む第一試薬及びL−FABPに対する抗体を担持するラテックス粒子を含む第二試薬を添加する工程を含む、(5)に記載の方法。
(8)免疫学的測定方法がELISA法によるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(9)測定時におけるDTNBの濃度が0.05mM以上10mM以下である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)L−FABPの存在が疑われる試料が、DTNB添加後室温で1日以上経過した試料である(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)L−FABPの存在が疑われる試料中のL−FABPをラテックス免疫凝集測定法で測定するための試薬キットであって、DTNBを含む前記試薬キット。
(12)試薬キットが、第一試薬及び第二試薬を含み、少なくとも一方にDTNBを含む(11)に記載の試薬キット。
(13)免疫学的測定方法に供されるL−FABPの存在が疑われる試料の保存安定化方法であって、該試料をDTNBの存在下で保存する前記方法。
(14)保存液中のDTNBの濃度が0.05mM以上10mM以下である(13)に記載の方法。
(15)免疫学的測定方法に使用されるための、DTNBを有効成分として含む、L−FABPの存在が疑われる試料の保存安定化剤。
(16)L−FABPの免疫学的測定方法において試料に由来する測定誤差を低減する方法であって、DTNB存在下で免疫学的測定を行う前記方法。
本発明によれば、L−FABPの存在が疑われる試料をDTNBと接触させることにより、L−FABPを迅速簡便、かつ正確に免疫測定することを可能にする。
(試料)
本発明に用いる試料としては、尿、血液(血漿又は血清)、腎組織等の生体由来試料が挙げられる。腎臓組織を由来とする試料としては腎組織からの抽出液等が挙げられる。これらのうち、特に尿が好適な試料である。L−FABPの存在が疑われる試料であれば、健常者由来の試料、患者由来の試料、病気が疑われる者由来の試料など、いずれの試料も用いることができる。
本発明は、後述するように保存安定化効果、測定誤差低減効果を有するため、試料は採取直後のもの、低温管理されたものに限らず、時間が経過した試料、室温で保管された試料でも好ましく測定対象とすることができる。
(検出・測定)
本発明のL−FABPに対する抗体を用いたL−FABPを検出・測定する方法は、免疫学的測定方法である。より具体的には、ラテックス免疫凝集測定法(以下、LTIAということがある)、ELISA法、化学発光検出法、イムノクロマトグラフィー法(ラテラルフロー式、フロースルー式)が挙げられるが、これらの例に限定されない。
また、本明細書中、「検出」又は「測定」という用語は、L−FABPの存在の証明及び/又は定量などを含めて最も広義に解釈する必要があり、限定的に解釈してはならない。
(DTNB等)
本発明に用いるDTNBは、化学名を5,5'-Dithiobis(2-nitrobenzoic acid)といい、チオール基を比色定量する試薬で、イールマン試薬とも呼ばれる化合物である。
DTNBの濃度は、L−FABPとの接触時において、抗原抗体反応などの主反応に強い影響を及ぼさないことを限度として制限はないが、下限としては0.05mM、0.06mM、0.07mM、0.08mM、0.09mM、0.1mM以上であり、0.1mM以上が挙げられる。上限としては、10mM以下であり、9mM、8mM、7mM、6mM、5mM、以下が挙げられる。
好ましい濃度範囲としては、0.05〜10mMの範囲のほかに、上記上限と下限の組み合わせが挙げられ、たとえば、0.06mM〜9mM、0.07mM〜8mM、0.08mM〜7mM、0.09mM〜6mMが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5mMである。
また、前記のDTNB等は単独で用いてもよいし、複数のDTNB等を併用してもよい。また、複数のDTNB等を併用する場合には、両者を併せた濃度が上記の濃度範囲であればよい。
(L−FABPに対する抗体)
本発明に用いるL−FABPに対する抗体は、臓器から精製した天然のL−FABPを免疫原(抗原)として調製することができる。L−FABPは、主に肝臓又は腎臓に分布しているので、それらの臓器から精製できる。また、L−FABPは、ヒト、マウス、ブタ、ウシ、ラット間でホモロジーが高く、アミノ酸レベルで90%以上であることが知られているので、ヒトのL−FABPと結合する抗体を得るために、例えばマウスL−FABPを抗原として用いることもできる。
精製は、Kelvinらの文献(J.Biol.Chem.、第263巻、第15762-15768頁、1988年)記載の方法などに準じて実施できる。すなわち、摘出した臓器をホモジナイズした後、超遠心して得られる細胞質画分を、ゲルろ過および陰イオン交換クロマトグラフィーなどにより分画し、分子量や脂肪酸結合活性を指標としてL−FABPを含有する画分を選択して精製する。前記選択された画分をSDS−ポリアクリルアミド電気泳動にかけ、精製蛋白質が単一のバンドとなっていること確認し、必要であれば更に精製を行う。精製蛋白質について、アミノ酸組成やN末端側アミノ酸配列を決定し、報告された組成や配列と比較することにより、目的とする分子種であることを確認できる。
抗原として用いるL−FABPは、遺伝子工学的手法によって製造されたリコンビナント蛋白質であってもよい。L−FABPのアミノ酸配列や遺伝子配列は既に報告されている(Veerkamp and Maatman、Prog.Lipid Res.、第34巻、第17-52頁、1995年)ので、例えば、それらをもとにプライマーを設計し、PCR(polymerase chain reaction)法により適当なcDNAライブラリ等からcDNAをクローニングすることができる。これを用いて遺伝子組換えを行うことにより、リコンビナントL−FABPを調製することができる。また、抗原として、L−FABPの断片、またはその部分配列を有する合成ペプチド等を、必要に応じてキャリア高分子物質(BSA、ヘモシアニン等)と結合させて用いることもできる。
L−FABPに対する抗体は、抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等いずれであってもよい。L−FABPに対する抗体は、高い特異性を有するものが好ましく、例えば、抗L−FABP抗体であれば、H−FABPとは実質的に交差反応しないことが望ましい。より特異性の高い抗体を取得するためには、より高度に精製され純度の高い抗原を用いることが望ましい。抗体の調製に際しては、温血動物に、調製した精製抗原を接種して免疫する。免疫する温血動物としては、哺乳動物(ウサギ、ヒツジ、ラット、マウス、モルモット、ウマ、ブタなど)、鳥類(ニワトリ、アヒル、ガチョウなど)が挙げられる。ウサギの場合、例えば、抗原 100μg〜1mg程度を約1mlの生理食塩水及びフロイントの完全アジュバント中に乳化したものを、背部又は後肢掌皮下に接種し、2回目以降はアジュバントをフロイントの不完全アジュバントにかえて、これを2〜4週間おきに3〜8回接種して免疫し、最終接種の約7〜12日後に使用する。マウスの場合、1 回あたり10〜30μg/匹の抗原を、通常、皮下、腹腔内、静脈内に、約2週間隔で3〜8回接種して免疫し、最終接種の約2〜4日後に使用する。
ポリクローナル抗体は、前記のように免疫した動物から採血し、血清(抗血清)を分取して、得られた抗血清からIgG画分を回収して調製できる。例えば、抗血清からProtein Gカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーなどによりIgG画分を回収してポリクローナルIgGを得ることができる。
モノクローナル抗体は、免疫動物から採取した抗体産生細胞を、不死化細胞と融合させて得られるハイブリドーマにより産生される。モノクローナル抗体のための免疫動物としては、例えばマウス及びラットが好適に用いられる。ハイブリドーマの作製は、ケーラーおよびミルシュタインの方法(Kohler & Milstein、Nature、第256巻、第495〜897頁、1975年)に準じて以下のように実施できる。前記のように免疫した動物から抗体産生細胞(例えば脾細胞又はリンパ節細胞など)を採取し、これを適当な不死化細胞と細胞融合させる。不死化細胞としては、例えば骨髄腫細胞の細胞株(NSI- Ag4/1、Sp2/O-Agl4など)が好適に用いられる。骨髄腫細胞は、それ自身が抗体又は免疫グロブリンのH鎖又はL鎖を産生しない非分泌型である ことが好ましい。また、未融合の骨髄腫細胞と融合したハイブリドーマとを選択培地中で選別し得るような選択マーカーを有していることが好ましい。例えば選択マーカーとして、8−アザグアニン耐性(ヒポキサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損)、チミジンキナーゼ欠損等を有する細胞株がよく使用される。
細胞融合は、ポリエチレングリコールなど適当な融合促進剤を添加して行う。細胞融合は、不死化細胞当たり約10の抗体産生細胞の比率で行うことが好ましく、またおよそ抗体産生細胞106個/mlの細胞密度で好適に実施できる。
融合処理した細胞を、適当に希釈した後、選択培地中で1〜2週間培養する。例えば、8−アザグアニンに耐性の骨髄腫細胞を用いる場合、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)培地中で培養すると、未融合骨髄腫細胞は死滅し、また未融合の抗体産生細胞も分裂サイクルが限られているため死滅するが、融合細胞だけは選択培地中で分裂を続け生存できる。選択培地中での培養後、その上清について例えばエンザイムイムノアッセイを行って目的とする抗体の有無を検出し、限界希釈法によってクローニングすることにより、目的抗原を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択できる。選択に際しては、抗体価、抗体のクラス、サブクラス、抗原との親和性、特異性、エピトープなど好適な性質を有するハイブリドーマ(モノクローナル抗体)を選択できる。モノクローナル抗体のクラスとしては一般にIgGが好ましい。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、免疫に使用した動物と同種の腹腔内に移植し、一定期間後腹水を採取し、目的のモノクローナル抗体を単離することができる。あるいは、ハイブリドーマを適当な動物細胞培養用の培地中で培養し、その培養液からモノクローナル抗体を単離することもできる。また、一旦目的のハイブリドーマを得たら、該ハイブリドーマからモノクローナル抗体をコードする遺伝子を取得し、通常の遺伝子組換え技術により適当な宿主中で目的のモノクローナル抗体を発現させ産生させることができる。
抗体の分離・精製は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を必要に応じて組合せた通常の精製法に従って行うことができる。
本発明のL−FABPに対する抗体は、公知の抗体であってもよく、今後開発される抗体であってもよい。特に限定されないが、市販の抗L−FABP抗体である、Santa Cruz Biotechnology社のL−FABP 抗体(C-4)(カタログNo.sc-374537)やR&D systems社のHuman FABP1/L−FABP MAb (Clone 328607) (カタログNo.MAB2964)などが利用可能である。
本発明におけるL−FABPに対する抗体には、完全な免疫グロブリン分子だけでなく、Fab、Fab’2、CDR、ヒト化抗体、多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)等、本技術分野において公知の抗体断片または抗体誘導体が含まれる。以下、L−FABPに対する抗体の代表的な例として抗L−FABP抗体を使用した場合について説明する。
(不溶性担体)
本発明で使用する不溶性担体としては、ポリスチレン樹脂などの高分子基材、ガラスなどの無機基材、セルロースやアガロースなどの多糖類基材などからなる不溶性担体を用いることができ、その形状は特に限定されない。例えば、ラテックス粒子、金属コロイド粒子などのビーズ状、粒子状のものや、多孔性メンブレン、イムノプレートなどの板状あるいはシート状のもの、試験管などの筒状のものなど、測定法に応じた任意の形状を選択できる。
本発明のLTIAに用いるラテックス粒子としては、免疫測定試薬として一般的に用いられているラテックス粒子であれば特に制限されない。ラテックス粒子は、種々のモノマーを重合又は共重合させることによって得ることができる。ここにモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、4−ビニル安息香酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等のフェニル基を有する重合性単量体、スチレンスルホン酸塩、ジビニルベンゼンスルホン酸塩、o−メチルスチレンスルホン酸塩、p−メチルスチレンスルホン酸塩等のフェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、(メタ)アクリル酸α−ナフチル、(メタ)アクリル酸β−ナフチル等のナフチル基を有する重合性単量体などの重合性不飽和芳香族類、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の重合性不飽和カルボン酸類、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル等の重合性不飽和カルボン酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N −ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類、重合性不飽和ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、共役ジエン類等を挙げることができる。これらのモノマーは、要求される表面特性、比重等によって適宜選択され、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
ラテックス粒子の平均粒径は、L−FABPの試料中での濃度あるいは測定機器の検出感度などを考慮し、好ましくは0.02〜1.6μm、より好ましくは0.1μm〜0.4μmのものが適宜選択される。使用されるラテックス粒子は、感度向上等の所望の性能を得るため、材質や粒子径を適宜選択することができ、材質や粒子径が異なるものを組み合わせて使用することもできる。 また、本発明における凝集反応測定時のラテックス粒子の濃度は特に制限がなく、所望の感度や性能に応じて適宜設定することができる。
多孔性メンブレンとしては、従来公知のものが使用でき、また、任意の材質のものが使用できる。多孔性メンブレンの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン類、ガラス、セルロースやセルロース誘導体などの多糖類あるいはセラミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。具体的には、ミリポア社、東洋濾紙社、ワットマン社などより販売されているガラス繊維ろ紙やセルロースろ紙などがある。
プレート状のイムノプレートとしては、従来公知のものが使用でき、また、任意の材質のものが使用できる。プレートの材質としては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンエラストマーなどの合成高分子のほか、ガラスなども利用することができるが、これらに限定されない。
(固定化)
抗L−FABP抗体を不溶性担体上に固定化する方法としては特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。抗L−FABP抗体を粒子上に固定化する場合、例えば、粒子と抗体を混合することによりおこる物理的な吸着を用いる物理吸着法、カルボジイミド等のカップリング剤により、粒子表面のカルボキシ基やアミノ基と抗体分子を化学的に結合させる化学結合法が用いられる。また、抗体分子はスペーサー分子を介して粒子に固定化させてもよい。さらに、アルブミン等の他のタンパク質に化学結合法を用いて抗体を結合させた後に、そのタンパク質を粒子に物理的あるいは化学的に固定化してもよい。また、抗L−FABP抗体を多孔性メンブレン上に固定化する場合、例えば、抗体を含む溶液を一定量、ライン状、点あるいは、+等の特定のシンボル状に、多孔性メンブレンに塗布することで固定化できる。
本明細書において、「不溶性担体」を「固相」、抗原や抗体を不溶性担体に物理的あるいは化学的に担持させることあるいは担持させた状態を「固定」、「固定化」、「固相化」、「感作」、「吸着」と表現することがある。
(標識抗体)
抗体を標識するための標識物質としては、例えば酵素、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、アビジン、又は放射性同位体、金コロイド粒子、着色ラテックスなどが挙げられる。
また標識物質と抗体との結合方法としては、当業者に利用可能なグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、又は過ヨウ素酸法などの方法を用いることができる。標識物質、結合方法のいずれも、上記に限定されることなく標識抗体の作製に用いることができる。
例えば、パーオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの酵素を標識物質として用いる場合には、その酵素の特異的基質(酵素が西洋ワサビパーオキシダーゼの場合には、例えば1,2−フェニレンジアミンあるいは3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、アルカリホスファターゼの場合には、p−ニトロフェニルホスフェートなど)を用いて酵素活性を測定することができ、ビオチンを標識物質として用いる場合には少なくともアビジンあるいは酵素修飾アビジンを反応させるのが一般的である。
(測定方法)
本発明の試料中のL−FABPを、抗L−FABP抗体により測定する免疫学的測定方法は、L−FABPの存在が疑われる試料と、DTNBとを接触させる工程を含む方法である。
L−FABPの存在が疑われる試料とDTNBとを接触させる工程は、測定時に接触された状態であればよく、あらかじめ試料とDTNBを接触させた後、該試料と抗L−FABP抗体と接触させる方法であってもよく、またL−FABPの存在が疑われる試料、抗L−FABP抗体及びDTNBを同時に接触させる方法であってもよい。
あらかじめ試料とDTNBを接触させる方法は、採取した試料に直接DTNBを添加する方法であってもよく、また、測定時に測定試薬とともに、あるいは測定試薬として試料と混合する方法であってもよい。採取した試料に直接DTNBを添加するタイミングは、採取直後であってもよく、また試料保存中であってもよく、あるいは測定直前であってもよい。測定試薬としてDTNBを含む場合は、他の試薬構成に影響を及ぼさない範囲であれば、検体希釈液、第一試薬、第二試薬、第三試薬などいずれに含まれていてもよい。
DTNBの濃度は、接触時において0.1mM以上10mM以下であることが望ましい。
(測定試薬キット)
本発明の試料中のL−FABPをラテックス免疫凝集法に測定するための試薬キットは、DTNBをキットの構成に含むものであればいずれでもよい。
DTNBの各構成試薬中における濃度は、接触時である、試薬と試料の混合状態において0.1mM以上10mM以下に調整しうるような形態で含まれていることが望ましく、各試薬型により異なる。例えば、第1試薬、第2試薬からなる2試薬型である場合、試料、第1試薬、第2試薬を混合後の測定反応液中のDTNBの濃度が上記濃度範囲に入るのであれば、DTNBは第1試薬と第2試薬の少なくとも一方に含有させればよく、両方に含有させてもよい。
本発明により提供される、DTNB以外の、測定キットの構成物は、L−FABPを免疫学的に測定できることを限度として、特に限定されるものではない。以下、サンドイッチELISA、イムノクロマトグラフィーおよびラテックス免疫凝集法(以下、LTIAということがある)を例にそれぞれを説明する。
<サンドイッチELISA>
サンドイッチELISAの場合、試薬キットは少なくとも、(a)本発明の抗L−FABP抗体を固定化した不溶性担体及び(b)標識物質で標識され、L−FABPと反応する性質を有する抗体、を含む。この場合、不溶性担体はプレートが好ましく、標識物質は、適宜選択して使用できる。
不溶性担体に固定化された抗体は、試料中のL−FABPを捕捉し、不溶性担体上で複合体を形成する。標識物質で標識された抗体は、前記捕捉されたL−FABPに結合して前述の複合体とサンドイッチを形成する。標識物質に応じた方法により標識物質の量を測定することにより、試料中のL−FABPを測定することができる。抗体の不溶性担体への固定化の方法、抗体と標識物質との結合方法など、具体的な方法は、当業者に周知の方法を特に制限なく使用することができる。この構成の場合、ホモジーニアスな測定方法、ヘテロジーニアスな測定方法のいずれも構成することが可能であるが、ホモジーニアスな測定方法がより好適である。
本発明のDTNBは、例えば、試料希釈液や抗原抗体反応を行う溶液に添加することで、試料中のL−FABPと接触する。
<イムノクロマトグラフィー>
一般的なイムノクロマトグラフィーでは、多孔性メンブレンなどのシート状の不溶性担体上に、試料を含む溶液の展開方向に順に「1.試料供給部位」、「2.標識抗体を保持する部位(標識抗体保持部位)」、「3.標識抗体とL−FABP抗体により形成された複合体を捕捉するための抗体を固定化する部位(捕捉抗体部位)」を具備した試験片が使用され、試料溶液が毛細管現象により連続的に移動するように構成されている。イムノクロマトグラフィーでは、測定キットは、上記のような試験片を少なくとも含む。
具体的には、L−FABPを含む試料を試料供給部位に所定量添加すると、試料は毛細管現象により標識保持部位に侵入し、L−FABPと標識抗体とが結合して複合体を形成する。該複合体は、メンブレンを展開し、捕捉抗体部位に侵入すると、メンブレンに固定化された抗体(捕捉抗体)に捕捉され、捕捉抗体−L−FABP−標識抗体の三元複合体が形成される。そして標識を任意の方法(例えば、金コロイドなど可視化可能な標識の場合にはその凝集像、酵素の場合には、基質を添加することによる発色反応)で検出することで、L−FABPの存在を検出することができる。
本発明のDTNBは、例えば、試料希釈液等に添加しておいたり、試料供給部位や標識保持部位に含有させておくことで、試料中のL−FABPと接触する。
<ラテックス免疫凝集測定法>
ラテックス免疫凝集測定法では、試薬キットは少なくとも抗体が固定化されたラテックスを含む。ラテックス免疫凝集測定法に使用される抗体としては、「抗原に対する認識部位が異なる2種類のモノクローナル抗体」、「ポリクローナル抗体」、または「モノクローナル抗体とポリクローナル抗体」のいずれの組合せも用いることが出来る。この場合、ラテックス粒子は、抗体を固定化する不溶性担体であると同時に、標識物質である。
これらの測定用試薬に使用されるラテックス粒子は、感度向上などの所望の性能を得るため、粒子径や材質を適宜選択することができる。ラテックス粒子としては、抗体の担持に適したものであれば良い。例えば、ポリスチレン、スチレン−スルフォン酸(塩)共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。ラテックス粒子の形状は特に限定されないが、その平均粒子径は、ラテックス粒子表面の抗体とL−FABPとの凝集反応の結果生じる凝集体が、肉眼又は光学的に検出できるに十分な大きさを有することが好ましい。なお、金属コロイド、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体などの材質よりなる粒子をラテックス粒子に代えて使用することもできる。
臨床検査で使用される一般的なLTIA用の測定キットは、通常、第一試薬、第二試薬の形態で提供される。上記の抗体を固定化したラテックス粒子は、第一試薬あるいは第二試薬に含有させることができる。一般には抗体を固定化したラテックス粒子を第二試薬に含有させることが好適である。
第一試薬、第二試薬の形態で提供される場合、本発明のDTNBは、試薬の少なくとも一方に含まれていることが好ましく、第一試薬に含まれていることがよりいっそう好ましい。DTNBと試料とを混合することにより、試料中のL−FABPとDTNBが接触する。
また、本発明のDTNBは、これらの試薬類に含まれず、試料希釈液、試料添加液としてキットの構成に含まれる形態もある。この場合、あらかじめ試料とDTNBとを接触させた後、上記の緩衝液を含む第一試薬及び抗体を固定化したラテックス粒子を含む第二試薬が添加される。
(その他)
本発明の試薬キットは、それぞれ上記の他に、適宜緩衝成分(緩衝液)を含む。本発明に用いることが出来る緩衝液としては、一般的に使用されるものであればよく、例えばトリス塩酸、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、マレイン酸、グリシン及びそれらの塩などや、MES、Bis−Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES等のグット緩衝液などが挙げられる。
また、本発明の試薬キットは、測定感度向上や非特異的反応抑制の目的で、必要に応じて糖類やタンパク質などを含む。例えば、抗原抗体反応を促進する成分(ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、リン脂質ポリマーなどの高分子など)、タンパク質やペプチド(アルブミン、カゼインなど)、アミノ酸、糖類(ショ糖、シクロデキストリンなど)、防腐剤(アジ化ナトリウム、ProClin300など)が挙げられる。
また、測定の標準物質(L−FABP標準物質)として、肝臓、腎臓等の各組織由来のような天然のL−FABPが使用できるが、遺伝子工学的手法によって製造されたリコンビナント蛋白質であってもよい。L−FABPのアミノ酸配列や遺伝子配列は既に報告されている(Veerkamp and Maatman、Prog.Lipid Res.、第34巻、第17-52頁、1995年)ので、例えば、それらをもとにプライマーを設計し、PCR(polymerase chain reaction)法により適当なcDNAライブラリ等からcDNAをクローニングすることができる。これを用いて遺伝子組換え技術より、リコンビナントL−FABPを調製することができる。標準物質として、構造が安定したリコンビナント蛋白質を用いることがより好ましい。
(保存安定化剤)
本発明の保存安定化剤は、L−FABPの免疫学的測定方法において試料の保存安定化のために使用される薬剤であり、少なくともDTNBを有効成分として含む。上記測定試薬中のDTNB等を含む試薬をそのまま使用することができる。本発明の保存安定化方法における保存液中のDTNBの濃度は望ましくは0.1mM以上10mM以下である。
本発明において「試料を保存安定化する」とは、試料中の測定対象物質を保存安定化することを言い、測定対象物質そのものの変性を防ぐことのほか、測定対象物質以外の成分であって、保存により測定対象物質の変性の原因となるような成分の生成を抑制することなど、広義の意味での試料の保存安定化を言うものとする。
(測定誤差低減剤)
本発明の測定誤差低減剤は、L−FABPの免疫学的測定方法において試料に由来する測定誤差を低減するための薬剤であり、少なくともDTNBを有効成分として含む。上記測定試薬中のDTNB等を含む試薬をそのまま使用することができる。本発明の測定誤差低減方法における反応液中のDTNBの濃度は望ましくは0.1mM以上10mM以下である。
免疫学的測定方法においては、試料中に含まれる何らかの成分によりしばしば非特異的反応が生じ、測定値の正又は負の測定誤差の原因となることが知られている。本発明において、「測定誤差を低減する」とは、上記測定値の正又は負の測定誤差を、本来の測定値(真値)に近づけることをいう。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
実施例1〜4及び比較例1〜10では以下の材料を用いて、以下の条件にて測定を行った。
1.抗L−FABP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液
(1)CloneL固定化ラテックス粒子懸濁液の調製
抗ヒトL−FABP抗体CloneL(シミックホールディングス社製)を0.64mg/mL含む20mmol/LTris緩衝液(pH8.5)13mLに、平均粒径0.224μmの1%ラテックス粒子(積水化学工業社製)懸濁液13mLを加え、4℃にて2時間撹拌した。これに、0.5%BPFを含む20mmol/L Tris緩衝液(pH8.5)13mLを加え、4℃で1時間撹拌した。その後、5mmol/LMOPS緩衝液(pH7.0)に透析して、CloneL抗体固定化ラテックス粒子懸濁液を得た。
(2)Clone1抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の調製
抗L−FABP抗体Clone1(シミックホールディングス社製)を0.64mg/mL含む7.5mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.5)8mLに、平均粒径0.315μmの1%ラテックス粒子(積水化学工業社製)懸濁液8mLを加え、4℃にて2時間撹拌した。これに、0.5%BPFを含む7.5mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.5)8mLを加え、4℃で1時間撹拌した。その後、5mmol/LMOPS緩衝液(pH7.0)に透析してClone1抗体固定化ラテックス粒子懸濁液を得た。
2.試料
層別無作為化された尿検体を用いた。
3.L−FABP標準物質
L−FABP標準物質は、特開平11−242026号公報の記載に従い、遺伝子組換えにより得た。
4.標準液
L−FABP標準物質を、下記標準物質希釈液を用いて所望濃度に調整し、標準液とした。
(標準物質希釈液)
2.7mM 塩化カリウム
1.5mM リン酸二水素カリウム
136.9mM 塩化ナトリウム
8.1mM リン酸水素二ナトリウム
0.1% Blocking Peptide Fragment(BPF)
0.05% プロクリン300
5.測定試薬
(1)第一試薬
300mmol/L HEPES緩衝液(pH7.0)
300mmol/L KCl
0.2% BPF
0.4% Lipidure−BL403SE
(2)第二試薬
5mmol/L MOPS緩衝液(pH7.0)
3.75Abs/mL CloneL抗体固定化ラテックス粒子懸濁液(注)
1.25Abs/mL Clone1抗体固定化ラテックス粒子懸濁液(注)
(注)Absは280nmにおける吸光度を示す。
6.LTIAの測定条件
(1)分析装置:日立7180型自動分析装置(日立ハイテクノロジーズ社製)
(2)試料量及び試薬量:試料2.4μL、第一試薬120μL、第二試薬40μL
(3)反応時間(反応温度):第一試薬5分(37℃)、第二試薬5分(37℃)
(4)測光ポイント及び測光対象:第二試薬添加直後と添加5分後の間の吸光度変化量
<LTIAの第一試薬にDTNBを添加した例>
(1)実施例1
上記第一試薬に1mmol/LとなるようDTNB(5,5'-Dithiobis(2-nitrobenzoic acid)、和光純薬工業社製)を添加し、実施例1の第一試薬を調整した。第二試薬は上記を用いた。上述の試料である尿検体20本について、試料中に含まれるL−FABPの濃度を測定した。測定は、検体採取時と、検体を室温で1日保存した後の2回行った。検体採取時の測定値に対する室温で1日保存した後の測定値の割合を測定値変動率(%)として求めた。
(2)比較例1
第一試薬にDTNBを添加しないこと以外は実施例1と同様の方法によりL−FABPの濃度を測定した。
(3)結果
実施例1の結果を表1に、比較例1の結果を表2に、それぞれ示す。
(4)考察
DTNBを第一試薬に添加した実施例1においては、測定値変動率(%)が基準(±15%:表中網掛け)を超えた試料は、20試料中9試料に留まった。それに対し、DTNBを第一試薬に添加していない比較例1においては、20試料中16試料の測定値変動率が、基準を超えた。
本結果より、L−FABP測定試薬の第一試薬にDTNBを添加することで、室温保存を経た尿試料の測定において、測定値変動を抑えることができることがわかった。
<LTIAにおいて尿試料にDTNBを添加した例>
(1)実施例2〜4、比較例2〜10
試料における濃度が表3に示す各濃度なるよう、各種添加物質を上述の試料である尿検体に添加し、実施例2〜4、比較例2〜10に用いた。また、添加物質無しのものをコントロールとした。
測定は、それぞれ、試料採取直後および採取後室温保存3日後の2回行った。各添加物質の添加による測定値への影響を調べるため、採取直後のコントロールに対する各実施例及び比較例の測定値変動率(%)を求めた(表4の(2)の列)。
また、検体採取直後の測定値に対する室温で3日保存した後の測定値の割合を測定値変動率(%)として求めた(表4の(4)の列)。
(2)結果
結果を表4に示す。実施例2〜4においては、採取直後の試料にDTNBを添加したことによる測定値への変動の影響は見られなかった(表4中、(2)の実施例2〜4)。また、測定試料を3日室温保存したのちL−FABP測定した場合でも、採取直後の測定と比較して変動は見られなかった(表4中、(4)の実施例2〜4)。
比較例2〜10においては、いずれの添加濃度でも室温保存3日後のL−FABP測定値が大きく変動した(表4中、(4)の比較例2〜10)。
また、このうち、比較例9、10は、試料採取直後において、測定値変動率(%)の基準(±15%)を超えていた(表4中、(2)の比較例9、10)。
(3)考察
尿試料にDTNBを添加することにより、試料を室温保存した後に測定を行った場合でも試料を採取した直後から変動の少ない測定値を得ることができた。
また、DTTのように、採取直後の試料を用いた場合でも、添加することにより測定値の変動を引き起こす物質もあるが、DTNBにはそのような測定値の変動作用はなく、良好な測定結果が得られることがわかった。
<ELISAでの測定例>
実施例5及び比較例11では以下の材料を用いて、以下の条件にて測定を行った。
1.抗ヒトL−FABPマウスモノクローナル抗体固相化マイクロプレートの作成
抗ヒトL−FABPマウスモノクローナル抗体CloneLをPBSで5μg/mLに希釈し、マイクロプレート(NUNC社製)に1ウエルあたり50μL添加して4℃で一昼夜静置した。0.05% Tween20を含むPBS(PBST)で洗浄後、1% BSAを含むPBST(BSA−PBST)を1ウエルあたり300μL添加し4℃で一昼夜ブロッキングした。
2.試料
同意を得た患者より採取した尿検体を用いた。
実施例5として、前記試料に濃度が0.1mMとなるようDTNB(同仁化学社製)を添加した。比較例11として、DTNBの添加をしない尿検体を用いた。
3.L−FABP標準液
L−FABP標準品(シミックホールディングス社製)を用い、標準液を作成した。
4.測定
実施例5若しくは比較例11の尿検体、またはL−FABP標準液を、1ウエルあたり20μLずつ、L−FABP抗体固相化マイクロプレートに添加し、室温で一晩反応させた。検体液又は標準液を除去した後、全ウエルをPBST 350μLを用いて3回洗浄した。PBSTを除去し、HRP標識した抗ヒトL−FABPマウスモノクローナル抗体Clone1(シミックホールディングス社製)を100μLずつ全ウエルに添加し室温で30分静置した。抗体液を除去し洗浄した後、TMB基質液を100μLずつ全ウエルに添加して、遮光下、室温で30分静置反応させた。その後、1.5N硫酸を100μLずつ全ウエルに添加し、酵素反応を停止させ、マイクロプレート用吸光光度計を用いて各ウエルの吸光度を測定波長450nm、副波長610nm以上で測定した。L−FABP標準液の吸光度をもとに検量線を作成し、検体中のL−FABP量を算出した。
5.結果
結果を表5に示す。DTNBを添加していない比較例11では、室温1日保存後に測定値の変動が起こったのに対し、0.1mMDTNBを添加した実施例5では、測定値の変動が抑制された。
したがって、ELISA法においても、DTNBの添加によって測定値の上昇が抑制されることがわかった。
<実施例1〜5からの考察>
実施例1〜5より、免疫学的測定方法でL−FABPを測定する際に、抗L−FABP抗体とDTNBとを接触する工程を設けることで、測定原理に依存せず、室温保存した試料であっても測定値の変動を抑える効果が得られることが示された。
L−FABPの免疫学的測定方法において、L−FABPの存在が疑われる試料と、DTNBとを接触させることにより、試料に由来する測定誤差を低減し、正確なL−FABPの測定が可能となった。

Claims (16)

  1. 試料中のL−FABPを、L−FABPに対する抗体により測定する免疫学的測定方法であって、L−FABPの存在が疑われる試料と、DTNBとを接触させる工程を含む前記方法。
  2. L−FABPの存在が疑われる試料が、尿、血液、及び腎組組織からなる群から選ばれるいずれか1以上を由来とする試料である、請求項1に記載の方法。
  3. L−FABPの存在が疑われる試料とDTNBとを接触させる工程の後、該試料とL−FABPに対する抗体と接触させる工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. L−FABPの存在が疑われる試料、L−FABPに対する抗体及びDTNBを同時に接触させる工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 免疫学的測定方法がラテックス免疫凝集測定法である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. L−FABPの存在が疑われる試料に、DTNBを含む第一試薬を添加する工程を含む、請求項5に記載の方法。
  7. L−FABPの存在が疑われる試料とDTNBとを接触させる工程、並びに、緩衝液を含む第一試薬及びFABPに対する抗体を担持するラテックス粒子を含む第二試薬を添加する工程を含む、請求項5に記載の方法。
  8. 免疫学的測定方法がELISA法によるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  9. 接触時におけるDTNBの濃度が0.05mM以上10mM以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. L−FABPの存在が疑われる試料が、DTNB添加後室温で1日以上経過した試料である請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. L−FABPの存在が疑われる試料中のL−FABPを免疫学的測定法で測定するための試薬キットであって、DTNBを含む前記試薬キット。
  12. 試薬キットが、第一試薬及び第二試薬を含み、少なくとも一方にDTNBを含む請求項11に記載の試薬キット。
  13. 免疫学的測定方法に供されるL−FABPの存在が疑われる試料の保存安定化方法であって、該試料をDTNBの存在下で保存する前記方法。
  14. 保存液中のDTNBの濃度が0.05mM以上10mM以下である請求項13に記載の方法。
  15. 免疫学的測定方法に使用されるための、DTNBを有効成分として含む、L−FABPの存在が疑われる試料の保存安定化剤。
  16. L−FABPの免疫学的測定方法において試料に由来する測定誤差を低減する方法であって、DTNB存在下で免疫学的測定を行う前記方法。
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