JP2019026944A - 芯鞘複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】過酷な使用環境下でも力学特性加え、優れた撥水性能を維持できる衣料用テキスタイルに好適な芯鞘複合繊維を提供する。【解決手段】少なくとも2種類以上のポリマーからなる芯鞘複合繊維について、芯成分の断面に広幅部を有した溝が複数存在し、該溝部入口幅(SWmin)と溝の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)に対する溝深さ(SH)が下記式を満たすことを特徴とする芯鞘複合繊維。(SWmax)/(SWmin)≧1.3 ・・・(式1)0.15≦(SH/D)≦0.25 ・・・(式2)【選択図】図1

Description

本発明は、過酷な条件下で使用した場合でも優れた撥水性を維持できる高耐久撥水素材に適した芯鞘複合繊維に関するものである。
昨今、登山やトレッキング、ウインタースポーツ、競泳用水着などのスポーツ用途で用いる繊維製品には、高い撥水性能が求められている。特に、山岳用途や冬山などで使用する場合は、衣類内に浸透した水分により快適性が失われるばかりでなく、気温の低い環境では体温低下を招き、最悪の場合生命の危機にも及ぶ可能性がある。このため、これらの繊維製品には、あらゆるシーンにおいても大小の水滴を弾き、衣類内に水分を浸透させない高い撥水機能が求められており、過酷な環境下で長期間使用した際にでもこの性能が維持できることが必要になる。
これらの撥水機能が付与された繊維製品では、繊維を織編み等し、布帛に仕立てた後に、繊維あるいは繊維製品の表層に撥水皮膜の形成が可能な、いわゆる撥水剤にて処理し、繊維製品に撥水機能を付与する撥水加工を施すことが行われている。
この撥水加工では、炭素数が8以上のパーフロロアルキル基を有するフッ素系化合物である、いわゆるC8撥水剤がその撥水性能の高さから従来用いられてきた。しかしながら、C8撥水剤は、環境や人体への蓄積性、有害性が問題視されているペルフルオロオクタン酸(PFOA)等を副生することが指摘されるようになり、PFOAフリーな炭素数を6以下のフッ素系撥水剤(C6撥水剤)や非フッ素系撥水剤への代替が加速している。
一方、人体影響が少ないとされるC6撥水剤や非フッ素系撥水剤は、撥水皮膜における分子の規則配列が乱れやすく、種々の撥水処理条件やプロセスを適正化しないと、C8撥水剤に比べて初期の撥水性能ならびにその耐久性が十分なものにならない場合がある。このため、該撥水剤等を用いた撥水素材において、総合的な撥水性能や耐久性を高めるための技術の開発が盛んに行われている。
優れた撥水皮膜を形成させることを狙い薬剤組成やこれを強固に定着する加工条件やプロセス方法などの高次加工技術等の取り組みに加え、基材に特異な表面形態を形成させることで、物理的に撥水性能や耐久性を高める、いわゆるハスの葉効果を狙う繊維の異形断面化に関する技術の開示がある。
特許文献1では、微細な突起部を有した特殊な断面形状を利用した撥水性能向上を狙った技術が提案されている。
これは、繊維断面の外周凸部に基因して繊維間に多くの空気保有層が設けられ、このような状態の布帛にフッ素系撥水剤の付与により撥水性を施すものである。このような繊維により構成された布帛の表面に水滴を滴下した場合には、その表面と水滴との間に十分な空気層が形成され、この空気層をフッ素系撥水剤の効果により、水滴が布帛の表面を転がりやすくなるというものである。この微細な突起部による繊維周辺に存在する空気層の利用が、大きなポイントとなる技術である。
特許文献1では、繊維間の空隙を利用する撥水性能であり、撥水加工後の初期性能は高いものである。しかしながら、布帛へ加わるダメージにより繊維間空隙が変化することで撥水性能の低下を招く恐れがあり、高次加工工程等で糸ガイドや筬との擦過により、布帛および繊維が複雑な変形を受けるため、特許文献1に記載されるような特殊な断面の繊維では、その一部が破壊され、性能発揮に必要な空気保有層の維持ができなくなる場合がある。さらには、外周凸部などのへ繰り返し擦過が加わることにより、付着していた加工剤が脱落し、撥水性能が著しく低下してしまう可能性がある。
一方、摩擦によるフィブリル化を軽減する提案として特許文献2のように、撥水加工を施す布帛を、多葉フィラメント糸で構成し、この繊度と布帛等の織密度の関係を調整することで、糸糸間の自由度が大きくなり、摩耗による応力を受けても分散させることができるのでフィブリル化を軽減できるとのことである。
特開平7−138882号公報(特許請求の範囲) 特開2005−350828号公報(特許請求の範囲)
上述のとおり、撥水性能の向上には様々な提案がなされており、特許文献2においては、先端がシャープな葉をある規定の角度で断面に設けた多葉断面繊維と撥水剤の定着位置を制御することで、洗濯耐久性などの実用的な耐久性に優れたものとなる可能性があるが、撥水機能はそもそも撥水剤の性能に依存するものであり、昨今の撥水剤切り替えによる初期撥水機能の低下を解決することは困難であると考えられる。更には、先端がシャープな多葉断面繊維を活用する必要があるため、耐磨耗性を担保するためには織密度をルーズに調整する必要があり、布帛の耐水圧特性等を考慮すると、適用できる用途は限定的なものになる。また、着用の動作が激しいスポーツ衣料では、臀部や背中など繰返し強い擦過が加えられる部位が存在し、撥水性能に必要となる多葉断面の繊維が押しつぶれ、崩れることで撥水機能が大きく低下する可能性がある。加えて、擦過が繰返し加えられた部位では、断面が潰れた繊維や目ズレの影響により、布帛表面で光の拡散反射が起こることから、筋状の欠点や白ボケするなどの布帛の品位低下も起こる場合がある。
このように従来提案されている特殊な断面の繊維においては、高次加工時や実使用での摩擦に対する耐久性が考慮されていないものが多く、実使用には課題の残るものであった。このため、これらの技術課題を解消した撥水性能における高い耐久性を維持できる原糸の開発が求められていた。
本発明は、従来技術の課題を克服し、過酷な使用環境下でも耐久性に優れた撥水性能を発現するとともに、高次加工の工程通過性や耐磨耗性に優れる衣料用テキスタイルを提供するのに適した芯鞘複合繊維に関するものである。
上記課題は、以下の手段により達成される。
(1)少なくとも2種類以上のポリマーからなる芯鞘複合繊維の横断面形状において、芯成分の外周に広幅部を有した溝部が複数個存在し、該溝部入口幅(SWmin)と溝の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)に対する溝深さ(SH)が下記式を満たすことを特徴とする芯鞘複合繊維。
(SWmax)/(SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
0.15≦(SH/D)≦0.25 ・・・(式2)
(2)溝部の入口を形成する突起部が鋭角であり、かつ隣り合う突起部間の幅(Pout)と溝部の入口幅(SWmin)および、隣り合う突起部間の幅(Pout)と隣り合う溝の底面の幅(Pmin)が下記式を満たすことを特徴とする(1)に記載の芯鞘複合繊維。
(Pout)/(SWmin)=2〜10 ・・・(式3)
(Pout)/(Pmin)≧1.3 ・・・(式4)
(3)溝部の入口幅(SWmin)のバラツキ(CV%)が1.0%以上20.0%以下であり、溝部の深さ(SH)のバラツキ(CV%)が1.0%以上20.0%以下であることを特徴とする(1)または(2)記載の芯鞘複合繊維。
(4)芯成分ポリマーに対する鞘成分ポリマーの溶出速度比が10倍以上であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の芯鞘複合繊維。
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の芯鞘複合繊維の芯成分のみからなる特殊断面繊維。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の繊維を少なくとも一部に含んだ繊維製品。
本発明の芯鞘複合繊維は、繊維製品としての使用時における曲げや擦れ等や繰り返し行われる洗濯や過酷な擦過が加わる使用環境下でも力学特性に加え、耐摩耗性と耐久性に優れた撥水性能を発揮できる衣料用テキスタイルを提供することができるものである。
本発明の芯鞘複合繊維を説明するための概要図である。 本発明の芯鞘複合繊維の溝部を説明するための拡大概略図である。 本発明の芯鞘複合繊維の溝深さを説明するための拡大概略図である。 本発明の芯鞘複合繊維の突起部を説明するための概略図である。 本発明の芯鞘複合繊維の突起部を説明するための拡大概略図である。 本発明の特殊断面繊維の側面写真である。 本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を説明するための説明図であり、複合口金の形態の一例であって、複合口金を構成する主要部分の正断面図である。 本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を説明するための説明図であり、分配プレートの一部の横断面図である。 本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を説明するための説明図であり、吐出プレートの横断面図である。 最終分配プレートにおける分配孔配置の一実施形態の一部拡大図である。
以下、本発明について、望ましい実施形態とともに詳述する。
本発明で言う芯鞘複合繊維とは、2種類のポリマーから構成されており、芯成分の断面において、広幅部を有した溝が複数存在している特殊な断面形態を有する繊維を言う。
本発明で言う特殊断面繊維とは、上記芯鞘複合繊維の芯成分のみからなり、図1に例示するような断面形態を有する繊維である。
該芯鞘複合繊維を構成する成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどの溶融成形可能なポリマーおよびそれらの共重合体が挙げられる。特にポリマーの融点は165℃以上であると耐熱性が良好であり好ましい。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
このような本発明の芯鞘複合繊維は、溶出操作前に織り編み等の高次加工を施した後、鞘成分を溶出することで得ることができる。この鞘成分の溶出に用いる溶剤に対して、芯成分が難溶出、鞘成分が易溶出となることが好ましく、用途に応じて芯成分を選定しておき、そこから用いることができる溶剤を鑑みて前述のポリマーの中から鞘成分を選定すると好適である。
芯鞘複合繊維の難溶出成分(芯成分)と易溶出成分(鞘成分)の溶剤に対する溶出速度比が大きいほど好適な組み合わせと言え、溶出速度比は10倍以上が好ましく、3000倍までの範囲を目安にポリマーを選択すると良い。より好ましくは100倍以上で、さらに好ましくは1000倍以上である。鞘成分としては、例えば、ポリエステルおよびその共重合体、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、ポリビニールアルコールなどの溶融成形可能で、他の成分よりも易溶出性を示すポリマーから選択することが好適である。特に鞘成分の溶出工程を簡易化するという観点では、鞘成分は、水系溶剤あるいは熱水などに易溶出性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニールアルコールなどが好ましく、特に、ポリエチレングリコール、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独あるいは組み合わされて共重合したポリエステルやポリ乳酸を用いることが取扱性および低濃度の水系溶剤に簡単に溶解するという観点から好ましい。
また、本発明者らの検討では、水系溶剤に対する溶出性および溶出の際に発生する廃液の処理の簡易化という観点では、ポリ乳酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が3mol%から20mol%が共重合されたポリエステルおよび前述した5−ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5wt%から15wt%の範囲で共重合されたポリエステルが特に好ましい。特に、前述した5−ナトリウムスルホイソフタル酸単独および5−ナトリウムスルホイソフタル酸に加えてポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルにおいては、結晶性を維持しながらもアルカリ水溶液などの水系溶剤に対して易溶出性を示すため、加熱下で擦過が付与される仮撚り加工等においても、複合繊維間の融着等が起こらず高次加工通過性という観点から好適である。
本発明の芯鞘複合繊維は、前述したポリマーからなる芯成分および鞘成分により図1に例示される繊維断面において、溝部(図1の1)が形成している必要がある。また、芯成分の断面に広幅部を有した溝が複数個存在し、該溝部入口幅(SWmin)と溝の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)に対する溝深さ(SH)が下記式を満たすことが必要であり、これらは以下のとおり求めるものである。
(SWmax)/(SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
0.15≦(SH/D)≦0.25 ・・・(式2)
すなわち、芯鞘複合繊維からなるマルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で溝部が10本以上観察できる倍率として2次元的に画像を撮影する。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の溝部に関して、溝部入口幅(SWmin)、溝の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)、溝深さ(SH)を単位μmで測定し、小数点第2位以下を四捨五入するものである。以上の操作を10回繰り返して撮影した10画像について、それぞれの値の単純な数平均値とし、小数点第2位以下を四捨五入することでそれぞれの値を求めるものである。
本発明では、過酷な使用環境下でも耐久性に優れた撥水性能を発現するために、撥水加工剤に頼らない性能発揮と、撥水加工剤が落ちにくくするための2つのアプローチで鋭意検討を重ねた結果、前述した溝部形状のパラメータが重要であることを見いだしたのである。そもそも布帛の撥水は、布帛表面の表面張力を下げること狙い、フッ素系撥水剤を塗布して得られている。一方、自然界においては、蓮の葉に代表されるようにフッ素などの化学物質に頼らず、表面の微細な突起により、水滴と表面の間に空気層を取り込むことで撥水性能を得ている構造撥水である。この現象を利用し、極細繊維などを利用した様々な提案がこれまでなされているが、洗濯など外部からの力により構造が乱れ、性能低下を招く恐れがある。そこで我々は、繊維一本一本に空気層を取り込むことが出来る構造を安定的に形成するために、繊維に入口が狭く、奥が広くなっている特殊な溝を刻むことで、洗濯等の外部からの力でも構造を維持することに成功したのである。さらには、溝形状を維持することで、溝内部が外部からの擦過等を受けないことから溝内部に浸透した撥水加工剤などが脱落しにくく、性能維持を実現できたのである。その形状について、以下で詳しく、説明する。
本発明の芯鞘複合繊維においては、溝部入口幅(SWmin)と溝の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)に対する溝深さ(SH)が重要であり、第1の要件となる。
ここで、溝の広幅部幅(SWmax)と溝部入口幅(SWmin)の比が1.3以上であることで、水滴が繊維に接触した際、溝の入口が狭いことで溝に水滴が入り込みにくく、さらには取り込まれている空気が、水滴を押し上げようと作用するため空気層を維持でき、撥水効果を得ることが出来るのである。好ましくは、1.5以上で、より好ましくは、18以上である。
また、芯成分径(D)と溝深さ(SH)の比が0.15以上必要であり、水滴の自重や水圧がかかったとしても、溝の奥まで水滴が到達しなく、性能を維持するのである。なお、水滴侵入の観点からは、この値が大きければ大きいほど良いのであるが、溝を形成する突起部が外力を受けたときの変形や破壊で性能低下を招きかねないことから、本発明においては上限として0.25以下とする。好ましくは、0.17以上0.22未満である。
さらに、溝深さ(SH)も撥水性能に寄与するものであり、絶対値として、2μm以上が好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。一般的に、雨粒の大きさは、繊維一本が10〜23μmに対して、過大なものであり100〜1000μm程度である。そこで、繊維に付着した水滴は自重で溝に入り込み、溝の底面(底部)に達すると水滴が付着し、濡れる。しかしながら、溝が深い場合は、水滴の表面張力により押し上げられ濡れずに撥水性能を発揮する。ここで、水滴の表面張力を利用して撥水性能を発揮させるためには、上述の如く、溝深さは2μm以上が好ましいのである。
次に、ここで言う溝部入口幅(SWmin)、溝の広幅部幅(SWmax)、芯成分径(D)、溝深さ(SH)は以下のように求めるものである。
すなわち、溝部入口幅(SWmin)とは、繊維軸に対して垂直方向の繊維断面の、溝部の中心線に直交する長さを中心線に沿って外周部に向けて測定した際の最小箇所とする(図2の3)。また、溝の広幅部幅(SWmax)(図2の4)とは、溝部の中心線に直交する長さを中心線に沿って外周部より繊維中心に向けて測定した際の最大箇所とする。突起部の外接円の直径を芯成分径(D)とする。また、溝深さ(SH)は、溝部中心線において、突起部外接円および溝部内接円との交点間距離を意味する(図3の5)。ここで言う外接円とは、芯鞘複合繊維の断面において突起部の先端に2点以上で最も多く外接する真円(図4の6)であり、内接円とは溝部の先端(底部)に2点以上で最も多く内接する真円(図4の7)を意味する。
本発明の芯鞘複合繊維では、鞘成分を溶出し、芯成分からなる突起形状を有した特殊断面繊維とする。この鞘成分の溶出では、一般に液流染色機等を活用して行われる場合が多く、その処理工程において、繊維は複雑な変形を繰り返し加えられることとなる。この場合、繊維最外層に形成された突起部は複雑な変形を繰り返し加えられることとなり、この力学的な耐久性が低い場合には、突起部が簡単に剥離してしまうことになる。このような場合、繊維の毛羽立ちによる風合いの低下はもとより、溝部形状による機能発現は非常に低下したものとなり、期待した効果が得られない場合があった。この耐久性を突き詰めると、突起部の可動範囲が大きいことに起因しており、突起部先端の幅と溝部の幅との関係に依存するものであり、本願発明の目的を満足する範囲として、Pout/SWminは2.0以上10.0以下が好ましい。係る範囲であれば、前述した溶出処理中の耐久性はもとより、溶出後の突起部は自立して存在するため、溝部形状に依存した機能発現には非常に有効に働き、その繊維表層に形成された突起部(溝部)によって、様々な特性を発現させることが可能となる。このような観点を推し進めると、Pout/SWminの値は大きいほど耐久性に優れるものとなり、耐久性に優れた本発明の芯鞘複合繊維を製造することを考えると、Pout/SWminは3.0以上10.0以下であることが好ましい。また、本発明の芯鞘複合繊維を比較的過酷な雰囲気下で使用されるスポーツのアウターや擦過が多いインナーに使用する場合には、Pout/SWminは4.0以上10.0以下であることが特に好ましく、係る範囲であれば溝部に起因した性能が耐久性高く維持されることとなる。
また、この自立した突起部は擦過などの応力を付与した場合にも、突起部がほとんど可動することなく存在する。このため、突起部の力学的な劣化が起こりにくく、実使用時の耐久性にも大きく影響するのである。繊維表層に溝形状を有した特殊な断面の繊維(またはスリット繊維)の活用は、いくつか提案がなされている。しかしながら、長期間の使用など実用には課題が見られるものであった。これらの従来技術では、繰り返しの擦過や圧縮変形に対する配慮がなされているとは言いがたく、使い捨てのワイピングクロス等には適用できる可能性があるものの、繰り返し使用する衣料用途等には適用困難であった。つまり、外力により発生した突起部の剥離が毛羽立ちとなって、微細な毛玉の発生による風合いの悪化や発色性の低下に繋がり、適用するのが困難なのである。そして、何よりこれ等の繊維の特性は、突起部または溝部の存在に依存したものであるため、期待した性能は大きく低下し、長期使用には耐えないものであった。
一方で、この溶出後の耐久性に着目した突起部形状という観点では、突起部の形状が先端に向け細くなった形状が好適であるが、撥水性能に着目した場合は溝部に空気層を取り込む必要があることから、突起部先端の幅(Pout)と突起部底面の幅(Pmin)の比(Pout/Pmin)は1.3以上が好ましい。より好ましくは、2.3以上でありさらに好ましくは、2.8以上である。ここで言うPminとは突起部を挟んで隣り合う溝部の内接円との接点に相当する部分の点の距離(図5の9)を意味する。Pout/Pminは、撥水性能の観点から大きい方が好ましいが、耐久性の観点で不利となることから、本発明においては、実施可能な上限値を5.0未満が好ましい。より好ましくは、4.5未満である。
本発明の芯鞘複合繊維は、上述のとおり特殊な溝形状により撥水性能を発揮するのであり、該溝形状を維持することが耐久性の維持に必要な要件である。そのためにも、芯鞘複合繊維としていることで、撚糸工程や仮撚工程等の糸加工工程で糸断面に対しての強い変形を受けても、その後の溶出により所望の溝形状が得られるので好ましい。また、溝部入口の形状の輪郭(エッジ)が維持できることから好ましい。この輪郭を維持することは撥水性の維持にも大きく寄与し、溝の入口を形成する突起部分が鋭角であることが好ましい。ここで言う鋭角とは、数学上の鋭角と同義で突起部の繊維表面の辺と溝部の辺の成す角が90deg以下のことをいう。好ましくは80deg以下である。このように突起部分が鋭角となっていることで、溝部に水滴の侵入を抑制できると考えられる。更には、布帛形態においても布帛形成後に溶出するため、糸−糸間の隙間が適度に維持でき、空気層の確保により撥水性能の維持に寄与できるのである。
本発明の芯鞘複合繊維は、繊維巻き取りパッケージやトウ、カットファイバー、わた、ファイバーボール、コード、パイル、織編、不織布など多様な中間体とし、溶出成分を溶出して繊維表層に溝部を発生させ、様々な繊維製品とすることが可能である。また、本発明の芯鞘繊維は、未処理のままや部分的に溶出させるなどして繊維製品とすることも可能である。ここで言う繊維製品は、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途にも使用することができる。
このような繊維製品への活用を想定した場合、基本的には繊維に対して、溶出操作をすることとなる。このため、本発明の芯鞘複合繊維においては、該繊維の断面において芯成分の面積比率が50%から90%とすることが好ましい。係る範囲であれば、例えば、織物とした場合でも、繊維間の空隙が適度となり、他の繊維と混繊するなどする必要なく使用することが可能となる。また、溶出処理時間を短縮するという観点では、鞘成分の面積比率を低くすることが好適であり、この観点では、芯成分の面積比率が70%から90%であることがより好ましく、80%から90%が特に好ましい。
本発明の芯鞘複合繊維においては、芯成分の面積比率が90%を超えたものとすることも可能であるが、実質的に鞘成分が溝部を安定的に形成できる範囲として、比率の上限値を90%とした。
本発明の芯鞘複合繊維においては、鞘成分を溶出することにより特殊断面繊維を得るものであり、該特殊断面繊維では、溝部の光学的な効果による防透け効果も得ることが出来るのである。
以上のような繊維の特性制御等は繊維表層に形成された特殊な形状の溝部によるものである。このため、溝部形状が安定した状態で存在することが重要であり、本発明の芯鞘複合繊維では、溝幅のバラツキ(CV%)が1.0%から20.0%であることが好ましい。さらには、溝深さ(SH)のバラツキ(CV%)が1.0%から20.0%であることが好ましい。
ここで言う溝幅とは、溝部入口幅(SWmin)であり、図6に例示されるように特殊断面繊維の側面を走査型電子顕微鏡(SEM)で溝部が10本以上観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の特殊断面繊維の側面に形成された溝幅を測定した値が本発明で言う溝幅である。ここで、1本の特殊断面繊維で、10本以上の溝部が観察できない場合には、他の特殊断面繊維を含めて合計で10本以上の溝部を観察すれば良い。これら溝幅については、単位をμmとして測定し、小数点第2位以下を四捨五入するものである。以上の操作を撮影した10画像について、それぞれの画像で測定した値の単純な数平均値を求める。この溝幅のバラツキとは、測定した100本の溝部について測定した溝幅の値から求めるものであり、溝幅の平均値および標準偏差から、溝幅バラツキ(溝幅CV%)=(溝幅の標準偏差/溝幅の平均値)×100(%)として算出される。以上の操作で測定した値を溝幅バラツキとし、小数点第2位以下を四捨五入するものである。なお、溝深さについては、前述の溝深さ(SH)の測定で測定した値を使用し、上述の溝幅バラツキ同様に算出する。
該溝幅のバラツキおよび溝深さのバラツキは、本発明の特殊な溝形状を起因とした性能のバラツキを担保するものである。本発明の芯鞘複合繊維に関しては、このバラツキの範囲が1.0%から20.0%であることが好ましく、係る範囲であれば安定して機能を発現することができる。特に、溝形状による性能発揮を目的とする場合には、部分的に溝幅や溝深さが異なると、性能が変化するため、このバラツキが1.0%から15.0%とすることがより好ましい。
本発明の芯鞘複合繊維の断面形状は、真円断面に加えて、短軸と長軸の比(扁平率)が1.0より大きい扁平断面はもとより、三角形、四角形、六角形、八角形などの多角形断面、一部に凹凸部を持ったダルマ断面、Y型断面、星型断面等の様々な断面形状をとることができ、これらの断面形状によって、布帛の表面特性や力学特性の制御が可能となる。
本発明における芯鞘複合繊維は、高次加工における工程通過性や実質的な使用を考えると、一定以上の靭性を持つことが好適であり、繊維の強度と伸度を指標とすることができる。ここで言う、強度とは、JIS L1013(2010年)に示される条件で繊維の荷重−伸長曲線を求め、破断時の荷重値を初期繊度で割った値であり、伸度とは、破断時の伸長を初期試長で割った値である。ここで、初期繊度とは、繊維の単位長さの重量を複数回測定した単純な平均値から、10000m当たりの重量を算出した値を意味する。
本発明の繊維の強度は、0.5〜10.0cN/dtex、伸度は5〜700%であることが好ましい。本発明の繊維において、強度の実施可能な上限値は10.0cN/dtexであり、伸度の実施可能な上限値は700%である。また、本発明の芯鞘複合繊維をインナーやアウターなどの一般衣料用途に用いる場合には、強度が1.0〜4.0cN/dtex、伸度が20〜40%とすることが好ましい。また、使用環境が過酷であるスポーツ衣料用途などでは、強度が3.0〜6.0cN/dtex、伸度が10〜40%とすることが好ましい。産業資材用途、例えば、ワイピングクロスや研磨布としての使用を考えた場合には、加重下で引っ張られながら対象物に擦りつけられることになる。このため、強度が1.0cN/dtex以上、伸度10%以上とすれば、拭き取り中などに繊維が切れて脱落などすることなくなるため、好適である。
以上のように本発明の繊維では、その強度および伸度を目的とする用途等に応じて、製造工程の条件を制御することにより、調整することが好適である。
以下に本発明の芯鞘複合繊維の製造方法の一例を詳述する。
本発明の芯鞘複合繊維は、2種類のポリマーを用い、特殊断面繊維成分(芯成分)と溶出成分(鞘成分)で溝部形成できるように配置して複合紡糸することにより製造可能である。ここで、本発明の芯鞘複合繊維を製糸する方法としては、溶融紡糸による複合紡糸が生産性を高めるという観点から好適である。当然、溶液紡糸などして、芯鞘複合繊維を得ることも可能である。ただし、芯鞘複合繊維を製糸する場合には、断面形状の制御に優れるという観点で、後述する複合口金を用いる方法とすることが好ましい。
この芯鞘複合繊維は、従来公知の複合口金を用いて製造することは、特殊な溝形状とするための断面制御の点で非常に困難なことである。確かに、従来公知の分割複合繊維用口金を用いることでも原理的には製糸可能であるといえるが、本発明の重要な要件である特殊な溝形状の突起部分の間隔や溝深さを制御することは困難である。すなわち、従来公知の複合口金技術では、従来技術に見られる溝部が繊維内層まで入り込んだ形状となったり、開口部および溝深さ方向の安定的な制御が困難となったり、本発明の高次加工通過性や溶出後の耐久性に優れた特殊な溝形状の達成は難しく、本発明の目的を満足するには至らない場合が多い。
この点、前述した繊維の達成のため、本発明の芯鞘複合繊維の製造方法について鋭意検討し、図7に例示するような複合口金を用いた方法が、本発明の目的を達成するには好適であることを見出したのである。
図7に示した複合口金は、上から計量プレート10、分配プレート11および吐出プレート12の大きく3種類の部材が積層された状態で紡糸パック内に組み込まれ、紡糸に供される。ちなみに図7は、ポリマーA(芯成分)およびポリマーB(鞘成分)といった2種類のポリマーを用いるものであり、実施の形態の例示である。ここで、本発明の芯鞘複合繊維においては、ポリマーBを溶出することによりポリマーAからなる芯鞘複合繊維とする場合には、芯成分を難溶出成分、鞘成分を易溶出成分とすれば良い。図7の口金においては、繊維断面形態の制御に優れ、特にポリマーAおよびポリマーBの溶融粘度差に制約を設けることなく、製造を可能とするため、本発明の繊維を製造するのに好ましいのである。
図7に例示した口金部材では、計量プレート10が各吐出孔および芯と鞘の両成分の分配孔当たりのポリマー量を計量して流入し、分配プレート11によって、単(芯鞘複合)繊維の断面における芯成分の断面形状を制御する。次いで、吐出プレート12によって、分配プレート11で形成された複合ポリマー流を圧縮して、吐出するという役割を担っている。複合口金の説明が錯綜するのを避けるために、図示されていないが、計量プレートより上に積層する部材に関しては、紡糸機および紡糸パックに合わせて、流路を形成した部材を用いれば良い。ちなみに、計量プレート10を、既存の流路部材に合わせて設計することで、既存の紡糸パックおよびその部材がそのまま活用することができる。このため、特に該複合口金のために紡糸機を専有化する必要はない。
また、実際には流路−計量プレート間あるいは計量プレート10−分配プレート11間に複数枚の流路プレート(図示せず)を積層すると良い。これは、口金断面方向および単繊維の断面方向に効率よく、ポリマーが移送される流路を設け、分配プレート11に導入される構成とすることが目的である。吐出プレート12より吐出された複合ポリマー流は、従来の溶融紡糸法に従い、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラで引き取られて、本発明の芯鞘複合繊維となる。
以下、図7に例示した複合口金を計量プレート10、分配プレート11を経て、複合ポリマー流となし、この複合ポリマー流が吐出プレート12の吐出孔から吐出されるまでを複合口金の上流から下流へとポリマーの流れに沿って順次説明する。
紡糸パック上流からポリマーAおよびポリマーBが、計量プレートのポリマーA用計量孔13−1、およびポリマーB用計量孔13−2に流入し、下端に穿設された孔絞りによって、計量された後、分配プレート11に流入される。ここで、各ポリマーは、各計量孔に具備する絞りによる圧力損失によって計量される。この絞りの設計の目安は、圧力損失が0.1MPa以上となることである。一方、この圧力損失が過剰になって、部材が歪むのを抑制するために、30.0MPa以下となる設計とすることが好ましい。この圧力損失は計量孔毎のポリマーの流入量および粘度によって決定される。例えば、温度280℃、歪速度1000s−1での粘度が、100〜200Pa・sのポリマーを用い、紡糸温度280〜290℃、計量孔毎の吐出量が0.1〜5.0g/minで溶融紡糸する場合には、計量孔の絞りは、孔径0.01〜1.00mm、L/D(吐出孔長/吐出孔径)0.1〜5.0であれば、計量性よく吐出することが可能である。ポリマーの溶融粘度が上記粘度範囲より小さくなる場合や各孔の吐出量が低下する場合には、孔径を上記範囲の下限に近づくように縮小あるいは/または孔長を上記範囲の上限に近づくように延長すれば良い。逆に高粘度の場合や吐出量が増加する場合には、孔径および孔長をそれぞれ逆の操作を行えばよい。
また、この計量プレート10を複数枚積層して、段階的にポリマー量を計量することが好ましく、2段階から10段階に分けて計量孔を設けることがより好ましい。この計量プレートあるいは計量孔を複数回に分ける行為は、10−5g/min/holeオーダーの微細なポリマー流の制御が必要となる本発明の芯鞘複合繊維を得るには好適なことである。
各計量孔13から吐出されたポリマーは、分配プレート11の分配溝14(図8)に別々に流入される。分配プレート11では、各計量孔13から流入したポリマーを溜める分配溝14とこの分配溝の下面にはポリマーを下流に流すための分配孔15(図8)が穿設されている。分配溝14には、2孔以上の複数の分配孔15が穿設されていることが好ましく、複合繊維の断面形態は、吐出プレート12直上の最終分配プレートにおける各分配孔15の配置により制御することができる。図10にこの分配孔の配置を例示しているが、芯成分用分配孔(図10の15−1)の間に鞘成分分配孔(図10の15−2)を配置することにより、芯成分分配孔から吐出された芯成分の間に挟まれるように鞘成分が設置され、本発明で必要となる特殊な溝形状が制御された芯鞘型に複合化されたポリマー流が形成される。この場合、鞘成分分配孔により溝部が形成されるため、そこから吐出するポリマー量および分配孔の配置により、溝形状を任意に制御することができる。
このような機構を有した複合口金は、前述したようにポリマーの流れが常に安定化したものであり、本発明の達成に必要となる超精密に断面が制御された芯鞘複合繊維の製造を可能とする。
本発明の芯鞘複合繊維を達成するには、前述のような新規な複合口金を採用することに加えて、断面の長時間安定性という観点では、芯ポリマー(ポリマーA)の溶融粘度ηAと鞘ポリマー(ポリマーB)溶融粘度ηBとの溶融粘度比(ηB/ηA)が0.1から2.0であることが好ましい。ここで言う溶融粘度とは、チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、キャピラリーレオメーターによって、測定できる溶融粘度を指し、紡糸温度での同せん断速度の際の溶融粘度を意味する。本発明では複合断面の形態は、基本的に分配孔の配置により制御される。ただし、各ポリマーが合流し、複合ポリマー流を形成した後に縮小孔17(図9)によって断面方向に大幅に縮小されることとなるため、長時間の製造を想定した場合には、ポリマーの吸湿による粘度変化等の経時的な変動を加味する必要があり、溶融粘度比を係る範囲すれば、これ等の変動が影響を与える可能性は小さく、安定に製造が可能となる。このような観点を推し進めると、より好ましい範囲としては、ηB/ηAが0.1から1.0である。なお、以上のポリマーの溶融粘度に関しては、同種のポリマーであっても、分子量や共重合成分を調整することで、比較的自由に制御できるため、本発明においては、溶融粘度をポリマー組み合わせや紡糸条件設定の指標にしている。
分配プレート11から吐出された複合ポリマー流は、吐出プレート12に流入する。ここで、吐出プレート12には、吐出導入孔16を設けることが好ましい。吐出導入孔16とは、分配プレート11から吐出された複合ポリマー流を一定距離の間、吐出面に対して垂直に流すためのものである。これは、ポリマーAおよびポリマーBの流速差を緩和させるととともに、複合ポリマー流の断面方向での流速分布を低減させることを目的としている。本発明においては、芯成分の最外層の溝形状の制御が重要であり、この複合ポリマー流の圧縮する場合に比較的歪みを受け易い最外層のポリマー流速の緩和のためには、この吐出導入孔16を設けることが好適なことである。ポリマーの分子量を考慮する必要はあるものの、流速比の緩和がほぼ完了するという観点から、複合ポリマー流が縮小孔17に導入されるまでに10−1〜10秒(=吐出導入孔長/ポリマー流速)を目安として吐出導入孔16を設計することが好ましい。係る範囲であれば、流速の分布は十分に緩和され、断面の安定性向上に効果を発揮する。
吐出導入孔16および縮小孔17を経て複合ポリマー流は、分配孔15(図10)の配置の通りの断面形態を維持して、吐出孔18(図9)から紡糸線に吐出される。この吐出孔18は、複合ポリマー流の流量、すなわち吐出量を再度計量する点と紡糸線上のドラフト(=引取速度/吐出線速度)を制御する目的がある。吐出孔18の孔経および孔長は、ポリマーの粘度および吐出量を考慮して決定するのが好適である。本発明の芯鞘複合繊維を製造する際には、吐出孔径Dは0.1〜2.0mm、L/D(吐出孔長/吐出孔径)は0.1から5.0の範囲で選択することが好適である。
溶融紡糸を選択する場合、芯成分および鞘成分として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどの溶融成形可能なポリマーおよびそれらの共重合体が挙げられる。特にポリマーの融点は165℃以上であると耐熱性が良好であり好ましい。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
本発明の芯鞘複合繊維を紡糸するための好適なポリマーの組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドをポリマーAとポリマーBで分子量を変更して使用し、一方をホモポリマーとして、他方を共重合ポリマーとして使用することが剥離を抑制するという観点から好ましい。
本発明における紡糸温度は、前述した観点から決定した使用ポリマーのうち、主に高融点や高粘度のポリマーが流動性を示す温度とすることが好適である。この流動性を示す温度とは、ポリマー特性やその分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点が目安となり、融点+60℃以下で設定すればよい。これ以下の温度であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制され、良好に本発明の芯鞘複合繊維を製造することができる。
本発明におけるポリマーの吐出量は、安定性を維持しつつ溶融吐出できる範囲として、吐出孔当たり0.1g/min/holeから20.0g/min/holeを挙げることができる。この際、吐出の安定性を確保できる吐出孔における圧力損失を考慮することが好ましい。ここで言う圧力損失は、0.1MPa〜40MPaを目安にポリマーの溶融粘度、吐出孔径、吐出孔長との関係から吐出量を係る範囲より決定することが好ましい。
本発明に用いる芯鞘複合繊維を紡糸する際の芯成分(ポリマーA)と鞘成分(ポリマーB)の比率は、吐出量を基準に重量比で芯/鞘比率で50/50〜90/10の範囲で選択することができる。この芯/鞘比率のうち、芯比率を高めると芯鞘複合繊維の生産性という観点からは好適である。但し、芯鞘複合断面の長期安定性および特殊断面繊維を効率的に、かつ安定性を維持しつつバランス良く製造できる範囲として、この芯/鞘比率は、70/30〜90/10がより好ましい。さらに溶出処理を迅速に完了させ、させるという点までを考慮すると、80/20〜90/10が特に好ましい。
吐出孔から溶融吐出された糸条は、冷却固化され、油剤等を付与することにより集束し、周速が規定されたローラによって引き取られる。ここで、この引取速度は、吐出量および目的とする繊維径から決定するものである、本発明では、芯鞘複合繊維を安定に製造するという観点から、100m/minから7000m/minが好ましい範囲として挙げることができる。この紡糸された芯鞘複合繊維は、熱安定性や力学特性を向上させるという観点から、延伸を行うことが好ましく、紡糸した芯鞘複合繊維を一旦巻き取った後で延伸を施すことも良いし、一旦、巻き取ることなく、紡糸に引き続いて延伸を行うことも良い。
この延伸条件としては、例えば、一対以上のローラからなる延伸機において、一般に溶融紡糸可能な熱可塑性を示すポリマーからなる繊維であれば、ガラス転移温度以上融点以下温度に設定された第1ローラと結晶化温度相当とした第2ローラの周速比によって、繊維軸方向に無理なく引き伸ばされ、且つ熱セットされて巻き取られる。また、ガラス転移を示さないポリマーの場合には、複合繊維の動的粘弾性測定(tanδ)を行い、得られるtanδの高温側のピーク温度以上の温度を予備加熱温度として、選択すればよい。ここで、延伸倍率を高め、力学物性を向上させるという観点から、この延伸工程を多段で施すことも好適な手段である。
この芯鞘複合繊維から溝部を形成するためには、易溶出成分が溶解可能な溶剤などに繊維を浸漬して鞘成分を除去すればよい。易溶出成分が、5−ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどが共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸等の場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いることができる。この芯鞘複合繊維をアルカリ水溶液にて処理する方法としては、例えば、複合繊維あるいはそれからなる繊維構造体とした後で、アルカリ水溶液に浸漬させればよい。この時、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の進行を早めることができるため、好ましい。また、流体染色機などを利用すれば、一度に大量に処理をすることができるため、生産性もよく、工業的な観点から好ましいことである。
以上のように、本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を長繊維の製造を目的とした溶融紡糸法に基づいて説明したが、シート状物を得るのに適したメルトブロー法およびスパンボンド法でも製造可能であることは言うまでもなく、さらには、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法などによって製造することも可能である。
本発明の芯鞘複合繊維を溶出操作した後、繊維製品として使用する場合、撥水加工を施しており、必要に応じて、制電、難燃、吸湿、制電、抗菌、柔軟仕上げ、その他公知の後加工を併用することができ、これら制電、難燃、吸湿、制電、抗菌、柔軟仕上げ剤などの機能加工剤の洗濯耐久性を向上させることも出来る。
本発明の繊維製品は、撥水度を4級以上とするのが好ましく、この撥水度は、主に撥水剤を施すことにより達成される。繊維製品に施す撥水剤は、シリコーン系、フッ素系等その他任意の撥水剤を用いることができる。撥水加工工程は、パディング法、スプレー法、コーティング法など特に限定されるものではない。
なお、撥水性能の耐久性を向上させるために、撥水剤に架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては、メラミン系樹脂、ブロックイソシアネート系化合物(重合)、グリオキザール系樹脂およびイミン系樹脂などの少なくとも1種使用することができ、その架橋剤は特に限定されるものではない。
以下実施例を挙げて、本発明の芯鞘複合繊維について具体的に説明する。
実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフ1Bによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、1216s−1の溶融粘度を記載している。ちなみに、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
B.繊度
採取した芯鞘複合繊維は、温度25℃湿度55%RHの雰囲気下で単位長さ当たりの重量を測定し、その値から10000mに相当する重量を算出する。これを10回繰り返して測定し、その単純平均値の小数点以下を四捨五入した値を繊度とした。
C.繊維の力学特性
芯鞘複合繊維をオリエンテック社製引張試験機 テンシロン UCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度100%/minの条件で応力−歪曲線を測定する。破断時の荷重を読みとり、その荷重を初期繊度で除することで強度を算出し、破断時の歪を読みとり、試料長で除した値を100倍することで、破断伸度を算出した。いずれの値も、この操作を水準毎に5回繰り返し、得られた結果の単純平均値を求め、強度は小数点第2位、伸度は小数点以下を四捨五入した値である。
D.特殊断面繊維の断面パラメータ
各紡糸条件で採取した芯鞘複合繊維からなる編地を鞘成分が溶解する溶剤で満たされた溶出浴(浴比100)にて鞘成分を99%以上除去した。その特殊断面繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した後、その切削面を(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて特殊断面繊維が10本以上観察できる倍率で撮影した。この画像から無作為に選定した10本の特殊断面繊維を抽出し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、芯成分径(D)を測定した。また、各特殊断面繊維の溝部に関して、10箇所の溝部入口幅(SWmin)、溝の広幅部幅(SWmax)、溝深さ(SH)、を測定した。さらに、各特殊断面繊維の突起部に関して、突起部先端の幅(Pout)、突起部底面の幅(Pmin)についても同様に測定した。同じ操作を10画像について行い、10画像の平均値をそれぞれの値とした。なお、これらの値はμm単位で小数点第2位まで求め、小数点第2位以下を四捨五入するものである。
E.鞘成分溶出処理時の脱落評価
各紡糸条件で採取した芯鞘複合繊維からなる編地を鞘成分が溶解する溶剤で満たされた溶出浴(浴比100)にて鞘成分を99%以上除去した。
突起部の脱落の有無を確認するため、下記の評価を行った。
溶出処理に用いた溶剤を100ml採取し、この溶剤を保留粒子径0.5μmのガラス繊維ろ紙に通す。ろ紙の処理前後の乾燥重量差から突起部の脱落の有無を判断した。重量差が10mg以上の場合には、脱落多として「×」、10mg未満5mg以上の場合には、脱落中「△」、5mg未満の場合には、脱落なし「○」とした。
F.溝幅および溝幅バラツキ(CV%)
特殊断面繊維を観察台に横方向に貼り付け、(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて繊維表層に形成された溝部が10本以上観察できる倍率として撮影し、この画像から無作為に選定した10本の溝部を抽出し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、溝幅を求めた。なお、溝幅はμm単位で小数点第2位まで求め、小数点第2位以下を四捨五入するものである。同じ操作を10画像について行い、10画像の平均値および標準偏差を求めた。これらの結果から下記式に基づき溝幅バラツキ(CV%)を算出した。
溝幅バラツキ(CV%)=(標準偏差/平均値)×100
溝幅バラツキは小数点第2位まで計算して、小数点第2位以下を四捨五入するものである。
G.撥水性能
撥水加工を施した布帛サンプルを20cm×20cmのサンプルサイズになるように10枚切り出し、評価サンプルを準備した。各サンプルについて、中央に直径11.2cmの円を描き、該円の面積が80%拡大されるように伸張し、撥水度試験(JIS L 1092)に使用する試験片保持枠に取り付け、スプレー試験(JIS L 1092(2009)「繊維製品の防水性試験方法」)を行い、級判定を行った。撥水性能を5段階評価し、10サンプルの級判定結果の平均値を撥水性能とした。
H.撥水加工の洗濯耐久性
布帛の洗濯方法については、JIS L 0217(1995)「繊維製品の取扱い表示記号及びその表示方法」に記載の103法を用いた。洗濯回数は0回、10回で評価を行った。なお、撥水性能は上記Hで行った。ここで、洗濯回数10回の級判定において、2級未満を不可として「×」、3級未満を可として「△」、3級以上を良として「○」とした。
I.特殊断面繊維の耐磨耗性評価
摩耗方法についてはJIS L 1076(2012)「織物及び編物のピリング試験方法」に記載のアピアランス・リテンション形試験機を用い、上部ホルダー底面積を約13平方cm、摩擦回数を90rpm、押圧荷重を7.36Nに設定し、上部ホルダー及び下部摩擦板の上に織物を固定し、10分間摩耗した。摩耗後、上部ホルダーにセットした織物の単繊維のフィブリル化の様子を(株)キーエンス社製マイクロスコープVHX−2000にて50倍で観察した。この際、磨耗処理前後のサンプル表面変化を確認し、フィブリル化の様子を3段階評価した。処理前後にてサンプル表面全体にフィブリル化が発生した場合は、不可として「×」、一部に発生が認められる場合は可として「△」、発生が認められない場合は良として「○」とした。
撥水加工例
対象の布帛を、ネオシードNR−158(日華化学社製)を5重量%、ベッカミンM−3(DIC社製)を0.3重量%、キャタリストACX(DIC社製)を0.3重量%、イソプロプルアルコール1重量%、水93.5重量%で混合した処理液に浸漬し、マングルにて絞り率60%で絞液後、130℃×1分で乾燥、170℃×35秒でキュアリングして、撥水加工布帛サンプルを得る。なお、溶出後の繊維がナイロンの場合は、フィックス処理を行う。フィックス処理は、ナイロンフィックス501(センカ社製)を5%owfで使用し、反応条件は80℃×30分、浴比は生地:水を1:20で行う。
実施例1
芯成分として、ナイロン6(N6 溶融粘度:120Pa・s)、鞘成分として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%および分子量1000のポリエチレングリコール10wt%が共重合したポリエチレンテレフタレート(共重合PET1 溶融粘度:45Pa・s)を270℃で別々に溶融後、計量し、図7に示した本発明の複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出した。なお、吐出プレート直上の分配プレートは、芯成分と鞘成分の界面に位置する部分が図10に示す配列パターンとし、芯成分用分配孔群と鞘成分用分配孔群が交互に配置することで、1本の芯鞘複合繊維に8箇所の溝部が形成するようにした。また、吐出プレートは、吐出導入孔長5mm、縮小孔の角度60°、吐出孔径0.3mm、吐出孔長/吐出孔径1.5のものを用いた。
ポリマーの総吐出量は29.4g/minとし、芯鞘複合比は、重量比で80/20となるように調整した。溶融吐出した糸条を冷却固化した後油剤付与し、紡糸速度1200m/minで巻き取ることで未延伸繊維を得た。更に、未延伸繊維を90℃と130℃に加熱したローラ間で2.92倍延伸を行い(延伸速度800m/min)、芯鞘複合繊維を得た(84dtex−24フィラメント)。
ここで得た芯鞘複合繊維の力学特性は、強度4.5cN/dtex、伸度41%と高次加工を行うのに十分な力学特性を有しており、織物や編物に加工した場合でも、糸切れ等が全く発生しないものであった。
この芯鞘複合繊維を編物とした試験片を90℃に加熱した1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:100)にて、鞘成分を99%以上脱海した。この際、鞘成分は溶出処理を開始して10分間以内に鞘成分が速やかに溶出されるものであり、鞘成分を溶出した溶剤を目視観察しても、突起部の脱落は認めらなかった。この鞘成分が溶出した溶剤を利用して脱落評価したが、ろ紙の重量変化が3mg未満であり、脱落なし(判定:○)であり、溝部、突起部いずれの劣化がなく、高次加工通過性に優れるものであった。ちなみに、溶出後の特殊断面繊維を追加で10分間90℃に加熱したアルカリ水溶液で処理しても、依然突起部の脱落は認められないものであった。
前述した操作にて採取した特殊断面繊維の溝部入口幅が0.9μmで溝の広幅部幅が1.6μmであり(SWmax/SWmin:1.8)、溝部の入口が狭く繊維断面中心方向に広くなっていた。また、芯成分径は、15.9μmで溝深さは、3.1μmであり(SH/D:0.19)、空気層を十分に維持できる所望の形状となっていた。溝幅バラツキは、5.3%であり、観察画像内ではいずれも0.9μmの溝部を維持しながら自立している突起部を確認することができた。次いで、耐磨耗性評価を実施したところ、強制的な磨耗を加えた場合でも、突起部の剥離や崩壊は認められず、サンプル表面にフィブリル化の発生は認められなかった(耐磨耗性判定:良(○))。
この耐久性に優れる特殊断面繊維に撥水加工を施すと、水の静的接触角が130°を超え、実使用に用いる際に重要となる動的な撥水性能の級判定が平均で5.0級であり、さらに洗濯耐久性評価においても級判定は平均3.5級であり、水滴の転がりが速く、耐久性のある良好な撥水性能を発現することがわかった(洗濯耐久判定:良(○))。結果を表1に示す。
実施例2、3
芯鞘複合繊維の複合比を70/30(実施例2)、90/10(実施例3)に変更したこと以外は、全て実施例1に従い実施した。
実施例2においては、芯比率を減少させたため、実施例1と比較して溝部全体が大きくなったものの、溝部の入口が狭く、繊維断面中心方向に広い部分がある形状を維持しており、耐久性のある良好な撥水性能を発揮している。さらに、突起部の動きが制限されており、脱落及び耐磨耗性ともに良好なものであった。実施例3においては、芯比率を増加させたため、溝部全体が小さくなったものの、溝部入口が狭くなっており溝部に空気層を維持できる形状となっている。溝部が小さくなっていることで撥水初期性能が実施例1と比較すると低下するが、洗濯耐久判定も良「○」で良好な撥水性能発揮している。さらに、突起幅が増加し、実施例1対比摩擦耐久性が優れるものであった。結果を表1に示す。
実施例4、5
芯鞘複合繊維の複合比は80/20に固定し、芯成分の溝部の本数を4箇所(実施例4)、16箇所(実施例5)と変更したこと以外は、全て実施例1に従い実施した。
いずれも溝部が所望の形状で構造が安定して存在するものであり、本発明の要件を満足しており、実施例5においては、突起の幅が溝数を増加させた影響で薄くなったが、それに伴い突起高さが減少したが、空気層を十分に確保出来ており、撥水性能においても問題のないものであった。ただ、耐磨耗性評価において、フィブリルが観察されたが、軽微なものであり実使用に問題のないものであった。結果を表1に示す。
比較例1
芯成分および鞘成分として、実施例1で用いたN6と共重合PET1を用い、特開平5−287613号公報で記載されている溝部を形成する従来公知の紡糸口金にて紡糸を行う。この際、突起の数が8個とし、その他の条件は実施例1に従い実施した。
比較例1で採取した芯鞘複合繊維の断面では、原理的に芯成分の突起部を被覆するように溝部を形成し、鞘成分を繊維断面方向に流しこむため、溝形状を制御することは困難であり、突起部の高さは不揃いであった(芯成分の外接円径:15.8μm 突起部高さ:平均4μm)。なお、溝部の広い部分が存在せず、溝部の幅が繊維断面中心方向に向かうにつれて狭くなっている(SWmax/SWmin:1.0)。また、突起部の幅は5μm、突起部の底面部が2.5μmであった(Pout/Pmin:2.0)。このような芯鞘複合繊維を実施例1に記載の方法で鞘成分の溶出を実施し、耐摩耗性試験を行った。次いで撥水加工を施し、撥水評価および、洗濯耐久試験を行った。磨耗処理前後でサンプル表層にフィブリルが明らかに増加するものであり、触感もガサガサをした風合いになった(耐磨耗性:不可(×))。これは、突起部の可動範囲が大きいことにより、摩擦により突起部が崩壊し、脱落したと予想する。撥水評価においては、初期性能はあるが、洗濯することで性能低下が著しい結果であった(洗濯耐久性判定:不可(×))。結果を表2に示す。
比較例2
芯成分および鞘成分として、実施例1で用いたN6と共重合PET1を用い、特開平7−102410号公報で記載されている溝部を形成するような従来公知の紡糸口金にて紡糸を行う。この際、突起の数が18個とし、その他の条件は実施例1に従い実施した。
比較例1同様に比較例2でも本発明の芯鞘複合繊維の要件を満足しない結果となった。さらに、このような繊維断面形状では、空気層を維持できなく、撥水性能が低く、洗濯耐久性判定においても不可「×」で耐磨耗性評価においても、フィブリル化が起こり、この突起部の劣化により、耐久性の高い撥水性能を発現するには至らなかった。結果を表2に示す。
実施例6
芯成分をポリエチレンテレフタレート(PET1 溶融粘度:140Pa・s)、海成分は実施例1で使用した共重合PET1(溶融粘度:55Pa・s)として290℃で別々に溶融後、計量し、図9に示す分配孔の配置パターンを活用して、1本の芯鞘複合繊維に8箇所の溝部が形成されるようにし、24ホールから総吐出量50g/min、芯鞘比率80/20で吐出した。その他の条件は、全て実施例1に従い実施した。
実施例6の芯鞘複合繊維では、繊維断面外周部の溝部入口幅が0.7μmで繊維断面中心方向に広い部分が1.8μmであり(SWmax/SWmin:2.6)、溝部の入口が狭く繊維断面中心方向に広くなっていた。また、繊維径は、15.9μmで溝深さは、3.0μmであり(SH/D:0.19)、空気層を十分に維持できる所望の形状となっていた。このため、洗濯耐久性に優れた性能を発現するものであった。結果を表2に示す。
実施例7
芯成分をポリブチレンテレフタレート(PBT 溶融粘度:160Pa・s)に変更して紡糸したこと以外は全て実施例6に従い実施した。
実施例7で得られた芯鞘複合繊維に関しても、実施例6同様の耐久性及び優れた性能を有したものであった。結果を表2に示す。
実施例8
芯成分をポリプロピレン(PP 溶融粘度:150Pa・s)に変更して紡糸したこと以外は全て実施例6に従い実施した。
実施例8で得られた芯鞘複合繊維に関しても、実施例6同様の優れた耐久性を有したものであった。実施例8では、芯鞘複合繊維が疎水性を示すPPからなっており、撥水性能に関しては、撥水加工なしで良好な動的な撥水性を示すことがわかった。PPは密度が0.91g/cmであり、軽量性も有するため、インナーやアウターなどの快適衣料用のテキスタイルに幅広く適用可能であると考える。結果を表2に示す。
1:溝部
2:突起部
3:溝部入口幅(SWmin)
4:溝の広幅部幅(SWmax)
5:溝深さ(SH)
6:突起部外接円(芯成分径(D))
7:溝部内接円
8:突起部先端の幅(Pout)
9:突起部底面の幅(Pmin)
10:内接円と延長線の交点
10:計量プレート
11:分配プレート
12:吐出プレート
13:計量孔
13−1:芯成分用計量孔
13−2:鞘成分用計量孔
14:分配溝
15:分配孔
15−1:芯成分用分配孔
15−2:鞘成分用分配孔
16:吐出導入孔
17:縮小孔
18:吐出孔

Claims (6)

  1. 少なくとも2種類以上のポリマーからなる芯鞘複合繊維の横断面形状において、芯成分の外周に広幅部を有した溝部が複数個存在し、該溝部入口幅(SWmin)と溝の広幅部幅(SWmax)および芯成分径(D)に対する溝深さ(SH)が下記式を満たすことを特徴とする芯鞘複合繊維。
    (SWmax)/(SWmin)≧1.3 ・・・(式1)
    0.15≦(SH/D)≦0.25 ・・・(式2)
  2. 溝部の入口を形成する突起部が鋭角であり、かつ隣り合う突起部間の幅(Pout)と溝部の入口幅(SWmin)および、隣り合う突起部間の幅(Pout)と隣り合う溝の底面の幅(Pmin)が下記式を特徴とする請求項1に記載の芯鞘複合繊維。
    (Pout)/(SWmin)=2〜10 ・・・(式3)
    (Pout)/(Pmin)≧1.3 ・・・(式4)
  3. 溝部の入口幅(SWmin)のバラツキ(CV%)が1.0%以上20.0%以下であり、溝部の深さ(SH)のバラツキ(CV%)が1.0%以上20.0%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の芯鞘複合繊維。
  4. 芯成分ポリマーに対する鞘成分ポリマーの溶出速度比が10倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の芯鞘複合繊維。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の芯鞘複合繊維の芯成分のみからなる特殊断面繊維。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の繊維を少なくとも一部に含んだ繊維製品。
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