JP2019021465A - リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法および評価用セル - Google Patents

リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法および評価用セル Download PDF

Info

Publication number
JP2019021465A
JP2019021465A JP2017138043A JP2017138043A JP2019021465A JP 2019021465 A JP2019021465 A JP 2019021465A JP 2017138043 A JP2017138043 A JP 2017138043A JP 2017138043 A JP2017138043 A JP 2017138043A JP 2019021465 A JP2019021465 A JP 2019021465A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lithium ion
electrode
cell
secondary battery
ion secondary
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017138043A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6943659B2 (ja
Inventor
英雅 常石
Hidemasa Tsuneishi
英雅 常石
林 良樹
Yoshiki Hayashi
良樹 林
万聡 西内
Masato Nishiuchi
万聡 西内
隆之 坪田
Takayuki Tsubota
隆之 坪田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobelco Research Institute Inc
Original Assignee
Kobelco Research Institute Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobelco Research Institute Inc filed Critical Kobelco Research Institute Inc
Priority to JP2017138043A priority Critical patent/JP6943659B2/ja
Publication of JP2019021465A publication Critical patent/JP2019021465A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6943659B2 publication Critical patent/JP6943659B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Secondary Cells (AREA)

Abstract

【課題】電極内のリチウムイオン濃度分布が顕著となる低温環境下でリチウムイオン二次電池の分析を行うにあたり、リチウムイオン二次電池内部の温度が該低温環境と同じ温度に到達するまでの時間が短縮され、速やかにリチウムイオン二次電池の評価を行うことができる分析方法を提供する。【解決手段】電極、電解質及び拘束板を含むリチウムイオン二次電池を−30〜−10℃で充放電する工程及び特定の工程を含み、前記拘束板により前記リチウムイオン二次電池に外圧がかけられ、前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下であり、前記拘束板の表面が体積抵抗率1014Ω・cm以上の絶縁体で被覆されており、かつ前記充放電する工程で前記絶縁体が前記電解質と反応しないリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。【選択図】図2

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の充放電中に生じる電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法と評価用セルに関し、特に−30〜−10℃といった低温環境下における該リチウムイオン濃度分布を分析する方法と前記分析に好適に用いられる評価用セルに関する。
リチウムイオン二次電池を充放電する際には、電解質や電極材中に反応分布が生じることが知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、電極中の活物質の種類にも依存するものの、多くの場合、充放電停止直後から電極中の反応分布が緩和していく。そのため、充放電後に電池を解体して電極を取り出し、該電極を分析に供すると、充放電停止からの時間がかかりすぎて該反応分布が緩和してしまい、電極内の真の反応分布を観察することは難しい。すなわち、充電又は放電後約数分で緩和して反応分布がほぼ無くなってしまう電極に対して、電池を解体してからの調査によって充放電の最中に生じている分布を可視化することは困難である。
充放電中の電極内の反応分布を観察する方法として、in−situ観察する方法(その場観察法)が報告されている(非特許文献2)。
しかしながら、その場観察法では、XAFS法による解析など、反応分布の分析に使用できる手法は限られている。
それに対し、本発明者らは充放電停止直後からの電極中の反応分布の緩和は、電極内のリチウムイオンの移動による濃度変化であると考え、電極中のリチウムイオン濃度分布を保持した上で電池を解体し、該電極を分析に供する新たな分析方法を報告した(特許文献1)。
特開2017−091804号公報
SUNBEAM Annual Report with Research Results,Part2,Vol.2,P79−81(2012) Photon Factory Activity Report 2012 #30(2013)B
本発明者らのさらなる検討により、リチウムイオン二次電池における充放電中の電極材中の反応分布は、低温で充放電する場合に非常に顕著となることが確認された。反応分布が顕著である場合、電極内では局所的に過充電・過放電の状態となり、電池性能や安全性が低下する。
反応分布が顕著となる低温環境下での充放電中に生じる電極内の反応分布を知ることができれば、電池性能劣化のメカニズムの解明等に繋がる新たな情報を取得できる可能性がある。また、寒冷の地におけるリチウムイオン二次電池の挙動を解明することもできる。
しかしながら従来のリチウムイオン二次電池は、電池に外圧をかけるための拘束板として例えばSUS(ステンレス−スチール)が使用されていた。該SUSの熱抵抗は高く、低温環境下でのリチウムイオン二次電池の評価を行う際、リチウムイオン二次電池内の電極及び電解質を低温である測定温度に到達させるためには長時間の冷却が必要であり、その結果、評価には長時間を要していた。
そこで本発明では、電極内のリチウムイオン濃度分布が顕著となる低温環境下でリチウムイオン二次電池の分析を行うにあたり、リチウムイオン二次電池内部の温度が該低温環境と同じ温度に到達するまでの時間が短縮され、速やかにリチウムイオン二次電池の評価を行うことができる分析方法及びそれに用いられる評価用セルを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、−30〜−10℃の低温環境下で充放電を行う際に、リチウムイオン二次電池に外圧をかける拘束板として特定のものを採用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[11]に係るものである。
[1] リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法であって、
電極、電解質及び拘束板を含むリチウムイオン二次電池を−30〜−10℃で充放電する工程と、
前記充放電する工程の任意の時点で充電又は放電を停止する工程と、
前記充電又は放電を停止してから1分以内に、前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程と、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持した後の前記電極を取り出して分析に供する工程と、を含み、
前記拘束板により前記リチウムイオン二次電池に外圧がかけられ、
前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下であり、
前記拘束板の表面が体積抵抗率1014Ω・cm以上の絶縁体で被覆されており、かつ
前記充放電する工程で前記絶縁体が前記電解質と反応しない、リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[2] 前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0001K/W以下である、前記[1]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[3] 前記リチウムイオン二次電池がラミネートセルであり、
前記充放電する工程の前に露点−50℃以下のドライ環境下で、前記ラミネートセルの外装を除去する工程と、前記外装を除去したラミネートセルの正極、セパレータ及び負極の対を電解液に浸漬する工程と、電解液に浸漬された前記対を外側から挟むように拘束板を設けて外圧をかける工程と、を含み、
前記充放電する工程が、前記ラミネートセルが−30〜−10℃の電解液に浸漬された状態で行われ、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記電解液を溶媒に置換することで行われる、前記[1]又は[2]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[4] 前記リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルであり、
前記セルの外装には溶液のin−out端子が設けられ、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記in−out端子を通じて電解液を溶媒に置換されることで行われる、前記[1]又は[2]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[5] 前記リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルを液体窒素に浸漬する工程、その後液体窒素による冷却状態を保ったまま前記セルを露点−50℃以下のドライ環境下で解体する工程、及び、次いで露点−50℃以下のドライ環境下で前記解体したセルを常温に戻すと同時に、少なくとも電解液が付着した前記電極を溶媒に浸漬することにより前記電解液を溶媒に置換する工程を含む、前記[1]、[2]又は[4]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[6] 前記リチウムイオン二次電池が全固体型のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルを加熱して前記電解質をイオン伝導率が10−4S・cm−1以下の相に変態させることで行われる、前記[1]又は[2]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[7] 前記リチウムイオン二次電池が全固体型のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルに外力を加えることで前記電解質にクラックを生じさせて前記電解質のイオン伝導率を10−4S・cm−1以下にすることで行われる、前記[1]又は[2]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[8] 電極、電解質及び拘束板を含む評価用セルであって、
前記拘束板により前記評価用セルに外圧がかけられ、
前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下であり、
前記拘束板の表面が体積抵抗率1014Ω・cm以上の絶縁体で被覆されており、かつ
前記絶縁体が前記電解質と反応しない、評価用セル。
[9] 前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0001K/W以下である、前記[8]に記載の評価用セル。
[10] −30〜−10℃の環境下におけるリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布の分析に用いられる、前記[8]又は[9]に記載の評価用セル。
[11] 前記拘束板が金属板であり、かつ前記絶縁体が高分子フィルムである、前記[8]〜[10]のいずれか1に記載の評価用セル。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の低温環境下(−30〜−10℃)での充放電中に生じる電極内のリチウムイオン濃度分布を速やかに分析できる。
低温環境下における電極内のリチウムイオン濃度分布は非常に顕著であることから、該分析として、TEM(透過型電子顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)、XPS(X線光電子分光法)、XRD(X線回折法)、ICP−AES(高周波誘導結合プラズマ−発光分光分析法)、GD−OES(グロー放電発光分析法)等の各種分析を行うことで、従来は知り得なかった結果が得られる可能性があり、劣化メカニズムの解明、および電池特性の改善に繋がる新たな情報を取得することが可能となる。また、寒冷地におけるリチウムイオン二次電池の挙動について新たな知見を得ることも可能性となる。
図1は、リチウムイオン二次電池がラミネートセルである場合において、分析に際して外装を除去されたリチウムイオン二次電池が拘束板により外圧をかけられている状態の一例を示す模式図である。 図2は、グロー放電発光分析法(GD−OES)を用い、正極中の深さ方向リチウムイオン濃度分布を25℃又は−10℃の環境下で測定した結果を示すグラフである。 図3は、単層の評価用セルであるリチウムイオン二次電池を室温から−20℃まで冷却した際の正極−負極間の温度(セル内部の温度)の時間変化を、拘束板の種類ごとに示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。また、数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法]
本発明に係るリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法は、下記工程(b)〜(e)を含み、拘束板によりリチウムイオン二次電池に外圧がかけられ、前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下であり、前記拘束板の表面が体積抵抗率1014Ω・cm以上の絶縁体で被覆されており、かつ、下記工程(b)で前記絶縁体が電解質と反応しないことを特徴とする。
(b)電極、電解質及び拘束板を含むリチウムイオン二次電池を−30〜−10℃で充放電する工程、
(c)前記充放電する工程の任意の時点で充電又は放電を停止する工程、
(d)前記充電又は放電を停止してから1分以内に、前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程、
(e)前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持した後の前記電極を取り出して分析に供する工程。
上記工程(b)の前に工程(a)として「前準備を行う工程」が設けられていてもよい。
本発明におけるリチウムイオン二次電池は、電極、電解質及び拘束板を含む。前記拘束板によりリチウムイオン二次電池に外圧がかかり、電池内部の接触抵抗が低減し、また、電極における反応が促進される。
拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下であることで、−30〜−10℃といった低温環境下でリチウムイオン二次電池を作動させる際に、電池内部の温度が外部環境の温度と同じ温度に到達するまでの時間が短くなり、速やかに分析を行えるようになる。なお本明細書において、電池内部の温度とは、正極−負極間の温度と同義である。
拘束板の300Kにおける熱抵抗は0.0001K/W以下がより好ましい。また、熱抵抗の下限は特に限定されない。
本発明における拘束板の導電性が高いと、該拘束板によりリチウムイオン二次電池が短絡したり、拘束板成分が溶出したりするおそれがある。そのため、拘束板の表面は体積抵抗率が1014Ω・cm以上の絶縁体で被覆されている。前記絶縁体の体積抵抗率は1016Ω・cm以上がより好ましく、上限は特に限定されない。
また、拘束板が電極に接するように配置されている場合等、該拘束板の表面を被覆している絶縁体が電解液(電解質+溶媒)又は電解質と接する場合がある。そのため、絶縁体にはリチウムイオン二次電池を充放電しても電解質との反応や腐食が起こらない材料を用いる必要がある。
本発明における拘束板は、例えば、熱抵抗の低い金属板を用い、該金属板の表面全体を、導電性が低く、さらには電解質と反応しない絶縁性のフィルムで覆ったものを好ましく用いることができる。ただし、絶縁性のフィルムの熱抵抗が高い場合には、フィルムの厚みを調整し、金属板の熱伝導性を妨げないようにする必要がある。すなわち、拘束板である金属板が絶縁性のフィルムで覆われた状態での熱抵抗が0.0003K/W以下、好ましくは0.0001K/W以下となるように、フィルムの厚みを十分薄くすることが好ましい。
金属板としては、熱伝導率の点からアルミニウム、金、銅、銀、タングステン等が好ましく、中でも比重や価格の点から銅がより好ましい。
拘束板の厚みは、リチウムイオン二次電池に外圧をかけるのに十分な重さを確保できるだけの厚みがあればよく、好ましい厚みは金属の密度やリチウムイオン二次電池の構成によって異なる。例えばリチウムイオン二次電池が図1に示すような、ラミネートセルの外装を除去されたセルであり、拘束板として銅を用いる場合、金属板の厚みは5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。
前記拘束板を覆う絶縁体としては、高分子フィルムが体積抵抗率や被覆のし易さの点から好ましい。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムが好ましい。その他、体積抵抗率の高い物質で表面を被覆できれば絶縁体の素材は問わず、フィルム以外の形態としては、具体的にはセラミックスやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等によるコーティングも有効である。
絶縁体であるフィルムやコーティングの厚みは、拘束板やフィルム、コーティングの種類によって異なるが、0.01〜0.1mmが好ましい。0.03mm以上とすることで、フィルムの穴や破れ、コーティングの欠陥といった欠損を懸念することなく、拘束板を完全に絶縁体で被覆することができる。また厚みを0.1mm以下とすることで、拘束板の高い熱伝導性を妨げることなく、拘束板及び絶縁体を含めた全体としての熱抵抗を0.0003K/W(@300K)以下とすることができる。
拘束板は、正極及び負極の対を外側から挟むように配置されることが好ましく、正極及び負極に接するように配置されることがより好ましい。これは、リチウムイオン二次電池を低温環境下で作動させる際、該二次電池内部の温度を迅速に冷却することができるためである。
拘束板は電極と見かけ面積が同じであるか、又は電極よりも見かけ面積が大きいことが、リチウムイオン二次電池全体に等しく外圧をかけることができることから好ましい。
ラミネートセル、積層型構造又は巻回型構造のセル、全固体型のセル等、リチウムイオン二次電池の形態に関わらず、電極からのリードが確保されていれば、本発明における拘束板をセルの外装として用いてもよい。
本発明におけるリチウムイオン二次電池の拘束板及び絶縁体以外の構成は一般的に用いられるものであれば特に制限されない。
例えば、正極には正極活物質、導電助剤、バインダー等を含むことができる。正極活物質にはリチウム金属酸化物が挙げられ、リチウム以外に含まれていてもよい金属としては、Ni、Mn、Co、Fe、Al等が挙げられる。導電助剤やバインダーにも一般的に用いられるものを用いることができる。
負極には負極活物質、導電助剤、バインダー等を含むことができる。負極活物質にはグラファイト、ハードカーボン、スズ系材料、ケイ素系材料、チタン酸系材料、ゲルマニウム系材料等が挙げられる。導電助剤やバインダーにも一般的に用いられるものを使用することができる。対極としてリチウム金属を用い、ハーフセルとしてリチウムイオン二次電池の分析を行ってもよい。
電解質は充放電を行う温度においてリチウムイオン伝導性を有するものであればよく、非水系電解液、ポリマー電解質、イオン液体電解質、固体電解質等が挙げられる。
さらに、電解質の種類によっては、セパレータを用いることが好ましい。また、集電体やガスケット、電極タブ(電極リード、電極端子)、絶縁材等、その他適宜公知の物を使用することができる。
本発明におけるリチウムイオン二次電池の構造は特に制限されず、例えば単層ラミネートセル、積層ラミネートセル等の積層型構造のセル、角型セルや18650型セル等の巻回型構造のセル、全固体型のセル、コイン型セル等を用いることができる。
また、所望により既存のセルを変改した構造のリチウムイオン二次電池としてもよい。例えば図1に示したように、ラミネートセルの外装を除去し、内部の正極、セパレータ及び負極の対を電解液に浸漬し、さらに前記対を外側から挟むように本発明における拘束板を設けたセルとしてもよい。
工程(b)の充放電する工程において、充電レート、放電レート、充電終止電圧、放電終止電圧、充放電温度等の充放電試験条件は、用いる正極材料、負極材料、電解質等や、試験目的に合わせて任意に定めることができる。
工程(b)は−30〜−10℃の低温環境下で行われるが、例えば所定の温度に設定された恒温槽の中にリチウムイオン二次電池を設置することで、該低温環境下で工程(b)を行うことができる。なお、工程(b)における温度はセル内部の温度であるため、リチウムイオン二次電池を恒温槽内に設置した後、セル内部の温度が該温度に到達してから充放電を行う。なお本発明においては、拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下と低いことから、セル内部が恒温槽内の温度と同じ温度になるまでの時間が短く、従来のセルと比べて速やかに充放電を始めることができる。
工程(b)の充放電により、電極内にはリチウムイオン濃度分布が生じ、該濃度分布は充放電の状態によって変化する。続く工程(c)において、所望の電圧など任意の時点で充電又は放電を停止することで、電極内のリチウムイオン濃度分布は特定の充放電状態固有のものとなる。しかしながら、系内にイオン導電体である電解質が存在する以上、充放電を停止しても該リチウムイオン濃度分布は緩和する。そこで工程(d)により、工程(c)の後1分以内にリチウムイオン濃度分布を保持する。
工程(d)では充電又は放電(充放電)を停止してから1分以内に、電極内のリチウムイオン濃度分布を保持する。充放電停止直後の電極はイオン伝導性を有する電解質と接しているため、充放電を停止したままにしておくと、濃度差由来の電位差を駆動力とし、電極|電解質界面を通して、電極内のリチウムイオン濃度分布を緩和する方向にリチウムイオンが移動する。そのため、電極と接する電解質のイオン伝導率を10−4S・cm−1以下とすることにより、電極内のリチウムイオン濃度分布を保持することができる。
例えば、電解質が液体である場合には、セル内の電解液をイオン伝導性の無い溶媒に置換することで電極周りの電解液も該溶媒に置換され、電極|電解質界面を通してのイオン移動を防ぐことができ、電極内のリチウムイオン濃度分布を保持することができる。
固体電解質の場合には、加熱により固体電解質の相を変態させたり、外力を加えることによってクラックを生じさせる等により固体電解質のイオン伝導パスを切ることにより、前記固体電解質のイオン伝導性を失わせ、その結果電極内のリチウムイオン濃度分布を保持することができる。
しかしながら、電解質のイオン伝導率が10−4S・cm−1以下と低くても、その値がゼロでない限りは、電極内のリチウムイオン濃度分布は極めて緩やかではあるが緩和する。そのため、該緩和が進まないうちに電極の取り出しと分析(工程(e))を行うことが必要となる。
例えば電解質のイオン伝導率が10−4S・cm−1オーダーである場合には、工程(d)の後12時間以内に工程(e)を行うことが好ましい。
工程(e)における分析は、TEM、SEM、XPS、XRD、ICP−AES、GD−OES等、多種多様な分析手法が適用できる。
<ラミネートセル>
本発明におけるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様として、ラミネートセルの外装を除いて組み換えられたセルが挙げられる(図1参照)。この場合、工程(b)の前に前準備を行う工程(a)を行う。
工程(a)として具体的には、露点−50℃以下のドライ環境下で、前記ラミネートセルの外装を除去する工程(a1−1)と、前記外装を除去したラミネートセルの正極、セパレータ及び負極の対を電解液に浸漬する工程(a1−2)と、電解液に浸漬された前記対を外側から挟むように拘束板を設けて外圧をかける工程(a1−3)とを行うことによりセルが作製される工程(工程(a1))を含むことが好ましい。
前記工程(a1)は、リチウムイオン二次電池を構成するリチウムが空気中の酸素と反応して変質しないために、露点−50℃以下のドライ環境下で行うことが好ましい。露点−50℃とは、水分量(容量)0.0039%に相当する。露点は−60℃以下がより好ましい。
また、リチウムは窒素とも反応することから、該ドライ環境はAr雰囲気のグローブボックス内等で行うことが好ましい。以下、本明細書においてドライ環境とは、上記と同じ意味を表す。
工程(a1−1)では露点−50℃以下のドライ環境下でラミネートセルの外装を除去するが、ラミネートセルが短絡しなければ、どのように除去してもよい。例えば、ラミネートセルの外装をハサミ等で切って開封し、除去してもよい。
工程(a1−2)では露点−50℃以下のドライ環境下で、外装を除去したラミネートセルの正極、セパレータ及び負極の対を電解液に浸漬する。次いで工程(a1−3)では、図1に示したように、電解液に浸漬する際、正極1、セパレータ2及び負極3の対を拘束板6で挟み、外圧をかける。拘束板の重みによって電解液4から前記対が浮くことが防止されて接触抵抗を低減したり電極における反応を促し、また、セル内部の温度を外部環境の温度と同じ温度に速やかに同一化することができる。なお、拘束板には前記絶縁体が被覆されている。
工程(a1)の後、正極及び負極に繋がる各電極タブ5をそれぞれ充放電装置に接続し、続く充放電する工程(b)を行う。
充放電する工程(b)として、前記工程(a1−3)で拘束板に挟まれた前記対が電解液に浸漬された状態で行われる工程(b1)が好ましい。この工程(b1)も露点−50℃以下のドライ環境下で行われることが好ましい。
工程(b1)の任意の時点で充電又は放電を停止する工程(c)を経た後、前記充電又は放電を停止してから1分以内に、前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する(工程(d))。上記ラミネートセルにおいては、工程(d)として、充電又は放電を停止してから1分以内に、電解液を溶媒に置換することで工程(d1)が行われる。
工程(d1)は電極のみを溶媒に浸漬してもよく、正極、セパレータ及び負極の対を溶媒に浸漬してもよく、図1における電解液4全体を溶媒に入れ替えてもよい。電極のみ又は対を溶媒に浸漬した場合であっても、電極の周囲には電解液が付着しているので、電極の周囲にある電解液が溶媒に置換されたこととなり、電極|電解質界面におけるイオンの移動を起こらなくすることができる。また、セル中の電解液全体を溶媒に入れ替える場合も同様に、電極周囲の電解液も溶媒に置換されることとなり、電極|電解質界面でのイオン移動を起こらなくすることができる。
電解液を置換する溶媒はイオン伝導性が0又は0に近く、用いる電解質(LiPF等)を溶解可能な溶媒であればよい。具体的には、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルエーテル(DME)等が好ましく挙げられる。
通常、充電又は放電を停止させた直後から、電極内におけるリチウムイオン濃度分布は緩和する。そこで、本発明においては、該電解液をイオン伝導性の低い溶媒に置換して溶液に含まれるリチウム塩(溶質)を溶媒にて希釈することによりイオン伝導率を限りなくゼロに近付け、電極内のリチウムイオンを移動できなくする。これによりリチウムイオン濃度の緩和を抑制できるようになり、充放電中の電極内におけるリチウムイオン濃度分布を分析することができるようになる。
上記ラミネートセルは、上記工程(a1)を経て工程(b1)を行うことから、工程(e)において電極を取り出す際には既に外装がなく、セルを解体する手間なく電極を直接取り出すことができることから好ましい。
<積層型構造、巻回型構造>
リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルの場合には、工程(b)の前に前準備を行う工程(a2)を含むことが好ましい。
工程(a2)として、セルの外装に溶液のin−out端子を設けることが好ましい。該in−out端子のin端子から所望の液体(溶媒)を流入し、セル内の電解液をout端子から排出することにより、電解液を該溶媒に置換することができる。これにより、電極周囲の電解液も溶媒に置換されることとなり、電極|電解質界面でのイオン移動を起こらなくすることができる。
すなわち、前記工程(a2)を行うことにより、工程(d)である電極内のリチウムイオン濃度分布を保持する工程は、電解液が溶媒に置換される(工程(d2))ことで達成される。
in−out端子を設ける際は、元々溶液のin−out端子が付いたセルを作製しても、セルにin−out端子を後付けしてもよい。in−out端子を後付けする場合には、ドライ環境下で前記工程(a2)を行うことが好ましい。
in端子からの溶媒の流入量やout端子からの排出量は特に限定されない。工程(d2)において電解液を置換する溶媒は、イオン伝導性が無いものが好ましく、先の<ラミネートセル>における工程(d1)と同様の溶媒を用いることができる。
工程(e)において電極を取り出す際、前記工程(d2)でイオン伝導性を有する電解液は除去されており、電極内のリチウムイオン濃度分布を保持できていることから、電極を取り出すためのセルの解体に長時間を要してもよい。
また、積層型構造又は巻回型構造のセルにおいて、工程(d)である電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程を、セルを液体窒素に浸漬する工程(d3−1)、その後液体窒素による冷却状態を保ったまま前記セルを露点−50℃以下のドライ環境下で解体する工程(d3−2)、及び、次いで露点−50℃以下のドライ環境下で前記解体したセルを常温に戻すと同時に、少なくとも電解液が付着した前記電極を溶媒に浸漬することにより前記電解液を溶媒に置換する工程(d3−3)を含む工程(d3)とすることも好ましい。
該工程(d3)は、上記工程(a2)及び工程(d2)と共に行ってもよく、独立して行ってもよい。
工程(d3−1)は、セル内の電解質のイオン伝導性を低下させるために行う。しかしセル内の電解質のイオン伝導性や冷却された電解質の温度を正確に測定するのは難しいため、セル全体を液体窒素に浸漬することで冷却すればよい。
電解液の種類によって低温時のイオン伝導性が大きく異なることから、セル全体の好ましい温度は一義に定義できない。例えば、電解液として1M LiPF/EC:DEC=1:1(vol.)を用いる場合にはセルの温度を−20℃以下とすると電解液が凝固するため好ましく、−50℃以下とするとイオン伝導性がより低下するためにより好ましい。
セルの冷却は、液体窒素と同程度かそれ以上の冷却能があれば可能であり、例えば液体ヘリウム等を用いてもよい。
工程(d3−2)では、液体窒素による冷却状態を保ったままセルを解体する。ここで「冷却状態を保つ」とは、電解液のイオン伝導性が低い温度、又は電解液が凝固している状態を保ったまま、セルを解体することを意味する。セルの解体はセルのすべてが解体されていなくともよく、続く工程(d3−3)で電解液を溶媒に置換(溶媒で希釈)できる程度に部分的に解体されていればよい。
工程(d3−3)では、解体したセルを常温に戻すと同時に、前記解体したセルのうち、少なくとも電解液が付着した前記電極を溶媒に浸漬することにより、前記電解液を溶媒に置換する。工程(d3−3)において電解液を置換する溶媒は、イオン伝導性が十分に低いものが好ましく、先の<ラミネートセル>における工程(d1)と同様の溶媒を用いることができる。
<全固体型>
リチウムイオン二次電池が全固体型のセルの場合、電解質も固体であることから、工程(d)として、電解質をイオン伝導性が十分に低い溶媒で置換することが難しい。そこで、工程(d)である電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程として、セルを加熱して前記電解質をイオン伝導率が10−4S・cm−1以下の相に変態させる(工程(d4))ことにより、リチウムイオン濃度分布を保持することが好ましい。なお、加熱はセルごと行われるので、加熱雰囲気は密閉雰囲気となる。また、加熱温度は電解質の種類によって適宜設定する。
また、全固体型のセルにおいては、工程(d)として、セルに外力を加えることで固体である電解質にクラックを生じさせ、その部分のイオン伝導のパスを減少させる(工程(d5))ことによって電極|電解質界面でのイオン移動を起こらなくさせ、電極内のリチウムイオン濃度分布を保持することも好ましい。
具体的には、電解質のイオン伝導率が10−4S・cm−1以下となるほどにイオン伝導のパスを減少させることが好ましい。
セルに加える外力としては、セルごと折り曲げたり、セルを圧潰する等の物理的力等が挙げられる。
工程(d4)及び工程(d5)は、セルが破壊されない限り電解質がセルの密閉空間内に留まることから、必ずしもドライ環境下で行われる必要はないが、その後の工程(e)における電極の取り出しやそれに伴うセルの解体及び分析は露点−50℃以下のドライ環境下で行う。
[評価用セル]
本発明に係る評価用セルは、電極、電解質及び拘束板を含む評価用セルであって、前記拘束板により前記評価用セルに外圧がかけられ、前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下、好ましくは0.0001K/W以下であり、前記拘束板の表面が体積抵抗率1014Ω・cm以上の絶縁体で被覆されており、かつ前記絶縁体が前記電解質と反応しないことを特徴とする。
評価用セルにおける拘束板及び絶縁体は、先述した[リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法]に記載された拘束板及び絶縁体とそれぞれ同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。すなわち、拘束板が金属板であり、かつ前記絶縁体が高分子フィルムであることが好ましい。
本発明に係る評価用セルは、−30〜−10℃の環境下におけるリチウムイオン二次電池の評価に用いることが好ましく、−30〜−10℃の環境下におけるリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布の分析に用いられることがより好ましい。
低温環境下におけるリチウムイオン二次電池の評価用セルとして用いる際、評価用セルにおける電極、電解質、集電体等の構成は拘束板及び絶縁体と同様、先述した[リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法]に記載されたものと同様のものを使用することができ、好ましい態様も同様である。また、対極としてLiメタルを用い、ハーフセルとしての評価を行ってもよい。
評価用セルの種類も先述した[リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法]に記載されたものと同様のものを使用することができ、ラミネートセルや積層型構造のセル、巻回型構造のセル、全固体型のセル等が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、その趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
<電極内のリチウムイオン濃度分布の温度依存性>
[評価用ハーフセルの作製]
活物質(LiNi1/3Mn1/3Co1/3(NMC))、導電助剤(アセチレンブラック)及びバインダー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF))を重量比86:7:7で混練し、溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用い、集電体である45×45mmのAl箔上に塗布、80℃で12時間真空乾燥させて正極を作製した。ロールプレスにて2.5g/ccの密度とした。対極にはLi金属箔を用いた。
電解液は1M LiPF/EC:DEC=1:1(vol.)を用いた。
露点−50℃以下のドライベンチ中で、前記電解液で満たされたバット内に前記電極及びポリエチレン製の多孔質セパレータを浸漬し、正極及び対極の外側から拘束板2枚で挟むことでセル(正極ハーフセル)を作製した(図1参照)。
拘束板は0.5mm厚の銅板とし、その表面を絶縁体である0.04mm厚のポリエチレン製フィルムで覆ったものを用いた。表面が絶縁体で被覆された前記拘束板の300Kにおける熱抵抗は0.00009K/W、フィルムの体積抵抗率は1016Ω・cmであり、該拘束板及び絶縁体は充放電を行っても電解質との反応は起こらなかった。
[リチウムイオン濃度分布の分析]
上記で得られた評価用ハーフセルを下記条件で3サイクル充放電するコンディショニングを行った。
(条件)
上限電圧 4.3V
下限電圧 2.8V
充放電レート 0.2C
測定温度 25℃
休止時間 10分
次いで、指定の温度(25℃又は−10℃)まで調整した後、2Cの放電レートにて指定の充電率(SOC)75%に到達するまで、あるいは下限電圧である2.8Vに到達するまで放電させた。なお、2Cとは定電流放電(定電流充電)において、0.5時間で放電(充電)が終了する電流値を表す。
放電停止直後、1分以内に評価用ハーフセルにおけるバット内の電解液を溶媒(DEC)に置換することにより、電解液を除去し、正極中のリチウムイオン濃度分布の保持を行った。
その後正極を取り出してグロー放電発光分析法(GD−OES、(株)堀場製作所製 GD−Profiler2)を用い、正極中のLiと遷移金属(NiMnCo)との比を深さ方向にプロットすることで、正極中の深さ方向リチウムイオン濃度分布を測定した。結果を図2に示す。
その結果、測定温度が25℃である際の深さ方向リチウムイオン濃度分布(Li/NMC)の偏りに比べて、測定温度が−10℃である際の深さ方向リチウムイオン濃度分布は大きく、低温作動時特有のリチウムイオン濃度分布の偏りが可視化された。
<セル内部の温度の時間変化>
[リチウムイオン二次電池(評価用セル)の作製]
活物質(LiNi1/3Mn1/3Co1/3(NMC))、導電助剤(アセチレンブラック)及びバインダー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF))を重量比86:7:7で混練し、溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用い、集電体である45×45mmのAl箔上に塗布、80℃で12時間真空乾燥させて正極を作製した。ロールプレスにて2.5g/ccの密度とした。
活物質(グラファイト)、導電助剤(アセチレンブラック)及びバインダー(PVDF)を重量比86:7:7で混練し、溶媒としてNMPを用い、集電体である50×50mmのCu箔上に塗布、80℃で12時間真空乾燥させて負極を作製した。ロールプレスにて1.3g/ccの密度とした。
電解液は1M LiPF/EC:DEC=1:1(vol.)を用いた。
露点−50℃以下のドライベンチ中で、前記電解液で満たされたバット内に前記正極、負極及びポリエチレン製の多孔質セパレータを浸漬し、正極及び負極の外側から拘束板2枚で挟むことで単層の評価用セル(リチウムイオン二次電池)を作製した(図1参照)。また、正極と負極の間に熱電対を入れることで、正極−負極間の温度(セル内部の温度)を測定可能にした(図示せず)。
なお、上記作業はすべて室温で行った。また、拘束板は0.5mm厚の銅板を用い、その表面を絶縁体である0.04mm厚のポリエチレン製フィルムで覆ったものを用いるか、又は拘束板兼絶縁体として1.1mm厚のアルミナ製の板を用いた。
0.5mm厚の銅板の表面を0.04mm厚のポリエチレン製フィルムで覆った拘束板(厚み0.54mm)の300Kにおける熱抵抗は0.00009K/Wである。
1.1mm厚のアルミナ製の拘束板の300Kにおける熱抵抗は0.0004K/Wである。
いずれの拘束板(又は絶縁体)も、充放電を行っても電解質とは反応しない。また、アルミナは銅に比べて比重が軽い。そのため、銅製の拘束板の厚みを0.54mm、アルミナ製の拘束板の厚みを1.1mmとすることで両方の拘束板の重さは同じになり、両評価用セルにおける拘束圧(外圧)を同じにした。
[正極−負極間の温度の時間変化の分析]
室温で得られた上記評価用セルを、槽内温度が−20℃である恒温槽内に導入し、評価用セル内部の温度が−20℃に到達するまでの時間を測定した。結果を図3に示す。
表面をポリエチレン製フィルムで覆った銅製の拘束板は恒温槽内に評価用セルを導入してから約40分で−20℃に到達したのに対し、アルミナ製の拘束板は恒温槽内に評価用セルを導入してから−20℃に到達するまでに約160分を要した。すなわち、本発明に係る評価用セルを用いることにより、セル内部の温度が外部の環境と同じ温度に到達するまでの時間が1/4程度にまで短縮された。
以上の結果より、本発明によれば、電極材中の反応分布が特に顕著となる低温環境下での分析において、電極内におけるリチウムイオン濃度分布の評価を速やかに行うことができることが分かった。
1 正極
2 セパレータ
3 負極(対極)
4 電解液
5 電極タブ
6 拘束板

Claims (11)

  1. リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法であって、
    電極、電解質及び拘束板を含むリチウムイオン二次電池を−30〜−10℃で充放電する工程と、
    前記充放電する工程の任意の時点で充電又は放電を停止する工程と、
    前記充電又は放電を停止してから1分以内に、前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程と、
    前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持した後の前記電極を取り出して分析に供する工程と、を含み、
    前記拘束板により前記リチウムイオン二次電池に外圧がかけられ、
    前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下であり、
    前記拘束板の表面が体積抵抗率1014Ω・cm以上の絶縁体で被覆されており、かつ
    前記充放電する工程で前記絶縁体が前記電解質と反応しない、リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
  2. 前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0001K/W以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
  3. 前記リチウムイオン二次電池がラミネートセルであり、
    前記充放電する工程の前に露点−50℃以下のドライ環境下で、前記ラミネートセルの外装を除去する工程と、前記外装を除去したラミネートセルの正極、セパレータ及び負極の対を電解液に浸漬する工程と、電解液に浸漬された前記対を外側から挟むように拘束板を設けて外圧をかける工程と、を含み、
    前記充放電する工程が、前記ラミネートセルが−30〜−10℃の電解液に浸漬された状態で行われ、
    前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記電解液を溶媒に置換することで行われる、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
  4. 前記リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルであり、
    前記セルの外装には溶液のin−out端子が設けられ、
    前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記in−out端子を通じて電解液を溶媒に置換されることで行われる、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
  5. 前記リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルであり、
    前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルを液体窒素に浸漬する工程、その後液体窒素による冷却状態を保ったまま前記セルを露点−50℃以下のドライ環境下で解体する工程、及び、次いで露点−50℃以下のドライ環境下で前記解体したセルを常温に戻すと同時に、少なくとも電解液が付着した前記電極を溶媒に浸漬することにより前記電解液を溶媒に置換する工程を含む、請求項1、2又は4に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
  6. 前記リチウムイオン二次電池が全固体型のセルであり、
    前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルを加熱して前記電解質をイオン伝導率が10−4S・cm−1以下の相に変態させることで行われる、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
  7. 前記リチウムイオン二次電池が全固体型のセルであり、
    前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルに外力を加えることで前記電解質にクラックを生じさせて前記電解質のイオン伝導率を10−4S・cm−1以下にすることで行われる、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
  8. 電極、電解質及び拘束板を含む評価用セルであって、
    前記拘束板により前記評価用セルに外圧がかけられ、
    前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0003K/W以下であり、
    前記拘束板の表面が体積抵抗率1014Ω・cm以上の絶縁体で被覆されており、かつ
    前記絶縁体が前記電解質と反応しない、評価用セル。
  9. 前記拘束板の300Kにおける熱抵抗が0.0001K/W以下である、請求項8に記載の評価用セル。
  10. −30〜−10℃の環境下におけるリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布の分析に用いられる、請求項8又は9に記載の評価用セル。
  11. 前記拘束板が金属板であり、かつ前記絶縁体が高分子フィルムである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の評価用セル。
JP2017138043A 2017-07-14 2017-07-14 リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法 Active JP6943659B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017138043A JP6943659B2 (ja) 2017-07-14 2017-07-14 リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017138043A JP6943659B2 (ja) 2017-07-14 2017-07-14 リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019021465A true JP2019021465A (ja) 2019-02-07
JP6943659B2 JP6943659B2 (ja) 2021-10-06

Family

ID=65353121

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017138043A Active JP6943659B2 (ja) 2017-07-14 2017-07-14 リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6943659B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113258155A (zh) * 2021-04-25 2021-08-13 浙江锋锂新能源科技有限公司 一种锂离子电池浸润状态的判断方法
CN114024048A (zh) * 2021-11-04 2022-02-08 中南大学 锂离子电池负极析锂的恢复方法
WO2023050791A1 (zh) * 2021-09-30 2023-04-06 蜂巢能源科技股份有限公司 分析电芯内部电解液分布状态的方法及其应用
WO2024095855A1 (ja) * 2022-11-02 2024-05-10 株式会社Adeka リチウムイオン二次電池の製造方法

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009259454A (ja) * 2008-04-14 2009-11-05 Toyota Motor Corp 電池
CN204216119U (zh) * 2014-10-17 2015-03-18 侯燕 X射线衍射仪原位电池附件及加热冷却装置
JP2015138027A (ja) * 2014-01-23 2015-07-30 公益財団法人高輝度光科学研究センター コンプトン散乱を用いた元素濃度の決定方法
JP2015153478A (ja) * 2014-02-11 2015-08-24 株式会社豊田自動織機 電池拘束具
JP2017091804A (ja) * 2015-11-10 2017-05-25 株式会社コベルコ科研 リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法および評価用セル
JP2017090254A (ja) * 2015-11-10 2017-05-25 株式会社住化分析センター 測定セル

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009259454A (ja) * 2008-04-14 2009-11-05 Toyota Motor Corp 電池
JP2015138027A (ja) * 2014-01-23 2015-07-30 公益財団法人高輝度光科学研究センター コンプトン散乱を用いた元素濃度の決定方法
JP2015153478A (ja) * 2014-02-11 2015-08-24 株式会社豊田自動織機 電池拘束具
CN204216119U (zh) * 2014-10-17 2015-03-18 侯燕 X射线衍射仪原位电池附件及加热冷却装置
JP2017091804A (ja) * 2015-11-10 2017-05-25 株式会社コベルコ科研 リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法および評価用セル
JP2017090254A (ja) * 2015-11-10 2017-05-25 株式会社住化分析センター 測定セル

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113258155A (zh) * 2021-04-25 2021-08-13 浙江锋锂新能源科技有限公司 一种锂离子电池浸润状态的判断方法
WO2023050791A1 (zh) * 2021-09-30 2023-04-06 蜂巢能源科技股份有限公司 分析电芯内部电解液分布状态的方法及其应用
CN114024048A (zh) * 2021-11-04 2022-02-08 中南大学 锂离子电池负极析锂的恢复方法
CN114024048B (zh) * 2021-11-04 2024-02-06 中南大学 锂离子电池负极析锂的恢复方法
WO2024095855A1 (ja) * 2022-11-02 2024-05-10 株式会社Adeka リチウムイオン二次電池の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6943659B2 (ja) 2021-10-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gordon et al. Electrochemical Impedance Spectroscopy response study of a commercial graphite-based negative electrode for Li-ion batteries as function of the cell state of charge and ageing
Lee et al. Analysis of rate-limiting factors in thick electrodes for electric vehicle applications
Petzl et al. Lithium plating in a commercial lithium-ion battery–A low-temperature aging study
Sasaki et al. Memory effect in a lithium-ion battery
Rauhala et al. Low-temperature aging mechanisms of commercial graphite/LiFePO4 cells cycled with a simulated electric vehicle load profile—A post-mortem study
Zhao et al. Preventing lithium ion battery failure during high temperatures by externally applied compression
JP2022522871A (ja) 固液混合電解質リチウム蓄電池
Gordon et al. Original implementation of Electrochemical Impedance Spectroscopy (EIS) in symmetric cells: Evaluation of post-mortem protocols applied to characterize electrode materials for Li-ion batteries
Saito et al. Heat generation behavior during charging and discharging of lithium-ion batteries after long-time storage
Liu et al. Failure study of commercial LiFePO4 cells in overcharge conditions using electrochemical impedance spectroscopy
JP2019021465A (ja) リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法および評価用セル
Dondelinger et al. Electrochemical stability of lithium halide electrolyte with antiperovskite crystal structure
Jeong et al. Stabilizing effect of 2-(triphenylphosphoranylidene) succinic anhydride as electrolyte additive on the lithium metal of lithium metal secondary batteries
JP2019036391A (ja) 全固体電池および負極
Liu et al. Overcharge investigation of degradations and behaviors of large format lithium ion battery with Li (Ni0. 6Co0. 2Mn0. 2) O2 cathode
JP2009145137A (ja) 二次電池の検査方法
JP2015095334A (ja) 非水系二次電池の製造方法
JP5780359B2 (ja) 全固体電池の検査装置及び検査方法
CN110635170A (zh) 非水电解液二次电池的制造方法和制造系统
Schmid et al. Reproducibility of Li-ion cell reassembling processes and their influence on coin cell aging
Singh et al. Electrochemical characterization of ionic liquid based gel polymer electrolyte for lithium battery application
Waldmann et al. Influence of current collecting tab design on thermal and electrochemical performance of cylindrical Lithium-ion cells during high current discharge
Swiderska-Mocek et al. Temperature coefficients of Li-ion battery single electrode potentials and related entropy changes–Revisited
JP6164157B2 (ja) 硫化物系全固体二次電池システム
Zhong et al. Thermal behavior and failure mechanisms of 18650 lithium ion battery induced by overcharging cycling

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190830

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200708

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200804

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200909

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210202

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210322

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210831

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210909

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6943659

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150