JP2019019362A - 焼結部材、及び焼結部材の製造方法 - Google Patents

焼結部材、及び焼結部材の製造方法 Download PDF

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繁樹 江頭
Shigeki Egashira
繁樹 江頭
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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【課題】機械的強度に優れる焼結部材を提供する。【解決手段】鉄系合金からなる組成を有する焼結部材であって、相対密度が95%以上、前記焼結部材の断面における空孔の平均径が15μm以下、前記焼結部材の断面における空孔の真円度が2以下である焼結部材。【選択図】なし

Description

本発明は、焼結部材、及び焼結部材の製造方法に関する。
鉄系合金からなる焼結部材として、特許文献1の耐摩耗性焼結合金が知られている。この耐摩耗性焼結合金は、原料粉末にオーステナイト系ステンレス鋼粉末とFe−P系合金粉末と黒鉛粉末とを配合した混合粉末を圧粉成形し、得られた成形体(粉末成形体)を焼結(液相焼結)することで製造されている。
特開昭60−255958号公報
機械的強度の更なる向上が望まれている。
そこで、機械的強度に優れる焼結部材を提供することを目的の一つとする。
また、機械的強度に優れる焼結部材を製造できる焼結部材の製造方法を提供することを目的の一つとする。
本開示に係る焼結部材は、
鉄系合金からなる組成を有する焼結部材であって、
相対密度が95%以上、
前記焼結部材の断面における空孔の平均径が15μm以下、
前記焼結部材の断面における空孔の真円度が2以下である。
本開示に係る焼結部材の製造方法は、
複数の鉄系合金粒子を含む原料粉末を加圧成形して粉末成形体を作製する成形工程と、
前記粉末成形体を液相焼結する焼結工程とを備え、
前記鉄系合金粒子は、多結晶であり、焼結温度で液相合金を生じる焼結助剤元素が結晶粒界に存在する組織を有する。
上記焼結部材は、機械的強度に優れる。
上記焼結部材の製造方法は、機械的強度に優れる焼結部材を製造できる。
Fe−Ni−Mo−Mn−C−P系状態図である。
《本発明の実施形態の説明》
本発明者は、機械的強度の向上を妨げる原因を鋭意検討した結果、従来の焼結部材には粗大な空孔が存在することが分かった。また、粗大な空孔は、焼結時、粉末成形体の鉄系合金粒子間におけるFe−P系合金粒子(焼結助剤粒子)の介在箇所に形成されることが分かった。焼結助剤粒子が焼結時に液相となってその周辺に展延し、介在箇所から焼結助剤粒子が存在しなくなることで、粗大な空孔が形成される。焼結助剤粒子は粉末成形体中において均一に存在しないため、液相の分布に斑が生じて焼結時の収縮が不均一となることで、空孔が更に粗大化する。即ち、焼結助剤粉末を用いることで焼結部材に粗大な空孔が形成され、粗大な空孔により相対密度が高められない。
そこで、本発明者は、鉄系合金粒子自体が液相を生成すれば、粗大な空孔が形成される原因となる焼結助剤粉末を用いなくてもよい上に、粉末成形体の鉄系合金粒子間に液相を均一的に展延させ易いため、均一に収縮させ易く、粗大な空孔の形成を抑制できて相対密度を高められるのではないかと考えた。そして、更なる検討を続けた結果、鉄系合金粒子が特定の組織を有することで、鉄系合金粒子自体が液相を生成できる、との知見を得た。この特定の組織を有する鉄系合金粒子を用いると、相対密度が高くて空孔のサイズが小さい上に、空孔の形状が円形状である焼結部材を製造できる、との知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づくものである。最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一形態に係る焼結部材は、
鉄系合金からなる組成を有する焼結部材であって、
相対密度が95%以上、
前記焼結部材の断面における空孔の平均径が15μm以下、
前記焼結部材の断面における空孔の真円度が2以下である。
上記の構成によれば、機械的強度に優れる。この焼結部材は、相対密度が高く緻密であるからである。また、割れなどの損傷の起点になり易い空孔のサイズが小さいからである。更に、空孔の形状が円形に近くて応力緩和し易い、換言すれば応力の集中が生じ難い形状であるからである。
(2)上記焼結部材の一形態として、前記焼結部材の断面における空孔率が5%以下であることが挙げられる。
上記の構成によれば、機械的強度により一層優れる。割れなどの損傷の起点になり易い空孔が少ないからである。
(3)本発明の一形態に係る焼結部材の製造方法は、
複数の鉄系合金粒子を含む原料粉末を加圧成形して粉末成形体を作製する成形工程と、
前記粉末成形体を液相焼結する焼結工程とを備え、
前記鉄系合金粒子は、多結晶であり、焼結温度で液相合金を生じる焼結助剤元素が結晶粒界に存在する組織を有する。
上記の構成によれば、焼結部材の相対密度を高められ、空孔のサイズを小さくできて空孔の形状を円形状に近づけられるため、機械的強度に優れる焼結部材を製造できる。焼結温度で液相合金を生じる焼結助剤元素が結晶粒界に存在する組織を有する鉄系合金粒子を用いるため、鉄系合金粒子自体が液相合金を生成して粉末成形体の鉄系合金粒子間に展延させられる。そのため、焼結助剤粒子を用いなくてもよい上に、粉末成形体の鉄系合金粒子間に液相合金を均一的に展延させられることで均一的に収縮させられるからである。また、均一的に収縮させるため、寸法精度に優れる焼結部材を製造できる。
(4)上記焼結部材の製造方法の一形態として、
前記鉄系合金粒子は、
Ni,Mo,Cr,及びMnの中から選択される1種以上の元素と、
P,Si,及びBの中から選択される1種の前記焼結助剤元素とを含み、
残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有することが挙げられる。
上記の構成によれば、上記元素は機械的強度の向上に寄与するため、機械的強度に優れる焼結部材を製造できる。
(5)上記組成を有する上記焼結部材の製造方法の一形態として、前記鉄系合金粒子全体における前記焼結助剤元素の含有量は、その鉄系合金の状態図において、γ単相域と、γ相+鉄系合金相の二相域と、γ相+液相の二相域との三重点よりも多いことが挙げられる。
上記の構成によれば、焼結助剤元素の含有量が多いため結晶粒界に焼結助剤元素を存在させ易い。
(6)上記焼結助剤元素の含有量が上記三重点よりも多い上記焼結部材の製造方法の一形態として、前記焼結助剤元素は、Pであり、前記Pの含有量は、1.2質量%以上であることが挙げられる。
上記の構成によれば、Pの含有量が多いため結晶粒界に焼結助剤元素を存在させ易い。また、Pは焼結時に液相合金を生成し易くて焼結を促進させ易い。
(7)上記焼結部材の製造方法の一形態として、前記鉄系合金粒子の平均粒径は、20μm以上200μm以下であることが挙げられる。
平均粒径が20μm以上であれば、粉末流動性に優れるため、成形工程において給粉し易い。平粒粒径が200μm以下であれば、粉末成形体における鉄系合金粒子同士の間隔が過度に広すぎないため、焼結時に粗大な空孔が形成され難い。
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態の詳細を、以下に説明する。
〔焼結部材〕
実施形態に係る焼結部材は、鉄系合金からなる組成を備える。この焼結部材は、複数の鉄系合金粒子を含む原料粉末を加圧成形して液相焼結したものである。この焼結部材の特徴の一つは、相対密度が高い点と、空孔が形成されていることを許容するが、その空孔の平均径が小さくて真円度が高い点とにある。以下、詳細を説明する。
(組成)
鉄系合金は、Feを主成分とし、Ni,Mo,Cr,Mn,P,Si,B,及びCから選択される1種以上の添加元素を含有することが挙げられる。この鉄系合金粒子は、不可避的不純物を含有することを許容する。これらの添加元素は、焼結部材の機械的強度を向上させる。具体的には、鉄系合金は、Ni,Mo,Cr,及びMnの中から選択される1種以上の元素と、P,Si,及びBの中から選択される1種の元素と、Cとを含むことが好ましい。各元素は、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectrometry:ICP−OES)などによって成分分析を行うことで確認できる。
Ni,Mo,Cr,及びMnの含有量は、例えば、合計で0.5質量%以上15.0質量%以下が好ましく、更に1.0質量%以上10.0質量%以下が好ましい。Pの含有量は、例えば、1.2質量%以上2.0質量%以下が好ましく、更に1.3質量%以上1.8質量%以下が好ましい。Cの含有量は、例えば、0.1質量%以上1.1質量%以下が好ましく、更に0.2質量%以上0.8質量以下が好ましい。各元素の含有量は、ICP発光分光分析法などにより測定できる。
(相対密度)
焼結部材の相対密度は、95%以上である。相対密度が95%以上であることで、非常に緻密であるため、機械的強度に優れる。相対密度は96%以上が好ましく、更に97%以上が好ましく、特に98%以上が好ましい。この相対密度は、「焼結部材の見かけ密度/焼結部材の真密度」の百分率から求める。焼結部材の見かけ密度は、アルキメデス法に準拠して求められる。焼結部材の空中の質量と純水中の質量を測定し、「(水の密度×空中での質量)/(空中の質量−水中の質量)」から焼結部材の見かけ密度を算出する。
(空孔)
空孔の平均径は15μm以下である。空孔の平均径が15μm以下であることで、割れなどの損傷の起点になり易い空孔のサイズが小さいため、機械的強度に優れる。空孔の平均径は、10μm以下が好ましく、更に8μm以下が好ましい。空孔の平均径は、焼結部材の断面における4つ以上の視野内に存在する全空孔径の平均とする。空孔径は、空孔の重心を通り空孔の外周を結ぶ直線の最大長さとする。空孔径は、市販の画像解析ソフトにより求められる。断面は任意の断面とし、1断面につき1視野として4つ以上の断面をとってもよいし、1断面につき複数の視野をとってもよい。断面の観察には光学顕微鏡を用い、各視野の倍率は450倍とし、各視野サイズは0.4mm×0.6mmとする。最大空孔径は、70μm以下が好ましい。そうすれば、粗大な空孔がないため、機械的強度により一層優れる。最大空孔径は、更に60μm以下が好ましく、特に50μm以下が好ましい。最大空孔径は、焼結部材の断面における4つ以上の視野内に存在する全空孔において最も空孔径の長い値とする。断面及び視野については、上述の通りである。
空孔率は、5%以下であることが好ましい。そうすれば、空孔の数が少ないため、機械的強度により一層優れる。空孔率は、更に4%以下が好ましく、特に3%以下が好ましい。空孔率は、焼結部材の断面において、1つの視野内に存在する全空孔の合計面積の割合(1つの視野内に存在する全空孔の合計面積/1つの視野面積)を求め、4つ以上の視野の平均とする。空孔の面積は、市販の画像解析ソフトにより求められる。断面及び視野については、上述の通りである。
空孔の真円度は2.0以下である。この真円度が1.0の空孔の形状は真円に該当する。空孔の真円度が2.0以下であることで、空孔の形状が応力集中し難くて割れなどの損傷の起点になり難い形状であるため、機械的強度に優れる。即ち、空孔の形状は円形状であることが好ましい。この空孔の真円度は、1.95以下が好ましく、更に1.90以下が好ましい。真円度は、焼結部材の断面における4つ以上の視野内に存在する全空孔の「空孔の外接円の直径/空孔の内接円の直径」の平均とする。外接円及び内接円の直径は、市販の画像解析ソフトにより求められる。断面及び視野については、上述の通りである。
[用途]
実施形態に係る焼結部材は、各種の一般構造用部品(スプロケット、ローター、ギア、リング、フランジ、プーリー、軸受けなどの機械部品などの焼結部材)に好適に利用できる。
〔作用効果〕
実施形態に係る焼結部材によれば、機械的強度に優れる。相対密度が高く緻密であり、空孔が存在するものの、そのサイズは小さくて割れなどの損傷の起点になり難く、その形状は円形状に近くて応力緩和し易い(応力集中し難い)形状だからである。
〔焼結部材の製造方法〕
焼結部材の製造方法は、複数の鉄系合金粒子を含む原料粉末を加圧成形して粉末成形体を作製する成形工程と、粉末成形体を焼結する焼結工程とを備える。この焼結部材の製造方法の特徴の一つは、原料粉末における鉄系合金粒子が特定の組織を有する点にある。上述の焼結部材は、この焼結部材の製造方法により得られる。各工程の詳細を説明する。
[成形工程]
成形工程では、複数の鉄系合金粒子を含む原料粉末を加圧成形して粉末成形体を作製する。具体的には、成形工程は、原料粉末を準備する原料準備工程と、原料粉末を加圧成形する加圧工程とを備える。
(原料準備工程)
原料粉末は、複数の鉄系合金粒子を主体として含有する。この原料粉末は、複数の鉄系合金粒子と、複数の炭素(黒鉛)粒子とを混合した混合粉末が利用できる。原料粉末は、焼結助剤粒子を含まない。
〈鉄系合金粒子〉
鉄系合金粒子は、Feを主成分とする多結晶であり、焼結温度で液相合金を生じる焼結助剤元素が結晶粒界に存在する組織を有する。結晶粒界における焼結助剤元素の存在形態は、主としてFeとの化合物として存在することが挙げられる。即ち、焼結温度で生じる液相合金は、主として焼結助剤元素とFeとの化合物が挙げられる。結晶粒界における焼結助剤元素の存在形態は、Feとの化合物に加えて、Feと化合物を形成せず、焼結助剤元素単独で存在していてもよい。鉄系合金粒子の組織は、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)により分析できる。
結晶粒界に焼結助剤元素が存在する鉄系合金粒子は、鉄系合金粒子全体における焼結助剤元素の含有量を、鉄系合金の状態図(図1参照)において、γ単相域と(γ相+鉄系合金相)の二相域と(γ相+液相)の二相域との三重点(図1矢羽根矢印で示す)よりも多い量とすることが好ましい。そうすれば、焼結助剤元素を結晶粒界に存在させられる。図1では、一例として、Fe−Ni−Mo−Mn−C−P系状態図を示している。図1の縦軸は、温度(K)、横軸は、P含有量(質量%)であり、左端は、0質量%P(Fe−2質量%Ni−0.5質量%Mo−0.2質量%Mn−0.3質量%C)である。鉄系合金粒子全体における焼結助剤元素の含有量を上記範囲とするとき、鉄系合金粒子は、結晶粒界だけではなく鉄系合金の母相にも焼結助剤元素が存在(固溶)している。
焼結助剤元素の種類は、結晶粒界に存在して焼結温度で液相合金を生じることで焼結を促進する元素であれば限定されない。その上、焼結助剤元素の種類は、焼結部材の機械的強度の向上に寄与する元素であることが好ましい。焼結助剤元素の具体的な種類は、P,Si,及びBの中から選択される1種が好ましく、中でもPが好ましい。Pは、酸化し難い上に、焼結時に焼結雰囲気と反応して化合物を形成し難いからである。
鉄系合金粒子全体に含まれるPの含有量は、上述の焼結部材と同様である。即ち、Pの含有量は、例えば、1.2質量%以上2.0質量%以下が好ましく、更に1.3質量%以上1.8質量%以下が好ましい。これらの焼結助剤元素の含有量がそれぞれの下限値以上であることで、焼結助剤元素を適切に結晶粒界に存在させられる。これらの焼結助剤元素の含有量がそれぞれの上限値以下であることで、焼結時に液相合金が過度に生成され過ぎない。
鉄系合金粒子の組成は、更に、Ni,Mo,Cr,及びMnの中から選択される1種以上の元素を含むことが好ましい。この鉄系合金粒子は、不可避的不純物を含有することを許容する。これらの添加元素は、焼結部材の機械的強度を向上させる。これらの添加元素は、主として鉄系合金の母相に固溶して存在する。各元素の含有量は、上述の焼結部材と同様である。即ち、Ni,Mo,Cr,及びMnの含有量は、例えば、合計で0.5質量%以上15.0質量%以下が好ましく、更に1.0質量%以上10.0質量%以下が好ましい。
鉄系合金粒子の含有量は、原料粉末を100質量%とするとき、例えば95質量%以上が好ましく、更に97質量%以上、特に99質量%以上が好ましい。
鉄系合金粒子の平均粒径は、20μm以上200μm以下が好ましい。鉄系合金粒子の平均粒径が20μm以上であれば、粉末流動性に優れるため、成形工程において給粉し易い。鉄系合金粒子の平均粒径が200μm以下であれば、粉末成形体における鉄系合金粒子同士の間隔が過度に広すぎない。そのため、焼結時に粗大な空孔が形成され難い。鉄系鉄合金粒子の平均粒径は、更に50μm以上150μm以下が好ましい。鉄系鉄合金粒子の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した体積粒度分布における累積体積が50%となる粒径(D50)のことである。金属粉末の平均粒径が上記範囲内であれば、取り扱い易く、プレス成形が行い易い。
この鉄系合金粒子は、例えば、上述の成分の鉄系合金溶湯を準備し、高圧水又は高圧ガスを噴射させる水アトマイズ法又はガスアトマイズ法により粉末を作製した後、その粉末にアニール処理を施すことで得られる。アニール処理の条件は、例えば、雰囲気をアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、又は減圧雰囲気とし、温度を500℃以上900℃以下、更には550℃以上800℃以下とし、時間を5分以上120分以下、更には10分以上60分以下とすることが挙げられる。このアニール処理により、歪や表面の酸化物を除去できる。
〈炭素粒子〉
炭素粒子は、焼結部材の機械的強度の向上に寄与する。炭素粒子の含有量は、原料粉末を100質量%とするとき、例えば、0.1質量%以上1.1質量%以下が好ましく、更に0.2質量%以上0.8質量以下が好ましい。
〈その他〉
原料粉末は、潤滑剤を含有してもよい。原料粉末が潤滑剤を含有することで、原料粉末を加圧成形して粉末成形体を作製する際に成形時の潤滑性が高められ、成形性が向上する。よって、緻密な粉末成形体を得易く、粉末成形体の密度を高めることで、高密度の焼結部材を得易い。潤滑剤は、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウムなどの金属石鹸、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドなどが挙げられる。潤滑剤は、固体状や粉末状、液体状など形態を問わない。潤滑剤の含有量は、原料粉末を100質量%とするとき、例えば、2質量%以下、更に1質量%以下とすることが挙げられる。潤滑剤の含有量が2質量%以下であれば、成形体に含まれる鉄系合金粒子の割合を多くできる。そのため、緻密で強度の高い粉末成形体を得易い。更に、焼結工程で粉末成形体を焼結した際に潤滑剤が消失することによる体積収縮を抑制でき、寸法精度が高く、高密度の焼結部材を得易い。潤滑剤の含有量は、潤滑性の向上効果を得る観点から、0.1質量%以上、更に0.5質量%以上が好ましい。
(加圧工程)
加圧成形は、焼結部材の最終形状に沿った形状に成形できる適宜な成形装置(成形用金型)を用いる。成形圧力は、例えば600MPa以上、更に700Mpa以上が挙げられる。成形圧力を高くするほど、粉末成形体を高密度化でき、焼結部材を高密度化できる。成形圧力の上限は、製造上の観点から、例えば2960MPa以下が挙げられる。
[焼結工程]
焼結工程では、上述の粉末成形体を液相焼結する。この工程により、鉄系合金粒子の結晶粒界に存在する焼結助剤元素が液相合金として生成され、粉末成形体における鉄系合金粒子同士の間に展延する。そうして、液相合金が焼結を促進し、鉄系合金からなる組成を有する焼結部材を作製する。
焼結温度は、結晶粒界の焼結助剤元素が液相合金として生成される温度が挙げられる。この焼結温度は、例えば、1100℃以上1400℃以下が挙げられ、更には1200℃以上1300℃以下が挙げられる。焼結時間は、例えば5分以上120分以下、更に10分以上60分以下が挙げられる。焼結雰囲気は、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気とすることが挙げられる。
[その他]
焼結後の焼結部材に浸炭焼入れ・焼戻しを行うことが好ましい。そうすれば、機械的特性、特に高硬度で高靭性な焼結部材を作製できる。
〔用途〕
実施形態に係る焼結部材の製造方法、各種の一般構造用部品(スプロケット、ローター、ギア、リング、フランジ、プーリー、軸受けなどの機械部品などの焼結部材)の製造に好適に利用できる。
〔作用効果〕
実施形態に係る焼結部材の製造方法によれば、相対密度を高められ、空孔が存在するがそのサイズを小さくできてその形状を円形状に近づけられるため、機械的強度に優れる焼結部材を製造できる。焼結温度で液相合金を生じる焼結助剤元素が結晶粒界に存在する組織を有する鉄系合金粒子を用いるため、鉄系合金粒子自体が液相合金を生成して粉末成形体の鉄系合金粒子間に展延させられる。そのため、焼結助剤粒子を用いなくてもよい上に、粉末成形体の鉄系合金粒子間に液相合金を均一的に展延させられることで均一的に収縮させられるからである。また、均一的に収縮させることで、寸法精度に優れる焼結部材を製造できる。
《試験例1》
焼結部材を作製し、焼結部材の機械的強度と寸法精度とを評価した。
〔試料No.1−1〕
試料No.1−1の焼結部材は、上述の焼結部材の製造方法と同様にして、成形工程と焼結工程とを経て作製した。
[成形工程]
原料粉末を加圧成形して粉末成形体を作製した。原料粉末には、以下の鉄系合金粒子群と炭素粒子群とを混合した混合粉末を用いた。
(鉄系合金粒子群)
組成:2質量%Ni−0.5質量%Mo−1.2質量%P−残部Fe及び不可避的不純物
平均粒径(D50):75μm
含有量:99.7質量%(原料粉末を100質量%)
この鉄系合金粒子は、上記組成の合金溶湯に高圧水を噴射させる水アトマイズ法後、アニール処理(窒素ガス雰囲気下、700℃×60分)を施すことで作製した。鉄系合金粒子の組織をEDXにより分析した。その結果、結晶粒界にPが存在していることが確認できた。
(炭素粒子群)
平均粒径(D50):3μm
含有量:0.3質量%(原料粉末を100質量%)
原料粉末を円筒状の粉末成形体が得られる所定の成形用金型に充填し、930MPaの成形圧力で加圧成形して、厚み:5mm(内径:20mm、外径:30mm)、軸方向の長さ15mmの粉末成形体を作製した。
[焼結工程]
粉末成形体を以下の条件で液相焼結して焼結部材を作製した。
(焼結条件)
焼結温度:1300℃
焼結時間:60分
焼結雰囲気:窒素ガスフロー
〔試料No.1−101〕
試料No.1−101の焼結部材は、原料粉末に以下の鉄系合金粒子群と焼結助剤粒子群と炭素粒子群とを混合した混合粉末を用いた点を除き、試料No.1−1と同様にして作製した。ここでは、混合粉末全体の組成が、2質量%Ni−0.5質量%Mo−1.2質量%P−0.3C質量%−残部Fe及び不可避的不純物となるようにした。
(鉄系合金粒子群)
組成:2質量%Ni−0.5質量%Mo−残部Fe及び不可避的不純物
平均粒径(D50):75μm
含有量:95.3質量%(原料粉末を100質量%)
(焼結助剤粒子群)
組成:27質量%P−残部Fe及び不可避的不純物
平均粒径(D50):30μm
含有量:4.4質量%(原料粉末を100質量%)
(炭素粒子群)
平均粒径(D50):3μm
含有量:0.3質量%(原料粉末を100質量%)
〔試料No.1−102〕
試料No.1−102の焼結部材は、原料粉末に以下の鉄系合金粒子群を用いて固相焼結した点を除き、試料No.1−1と同様にして作製した。
(鉄系合金粒子群)
組成:2質量%Ni−0.5質量%Mo−残部Fe及び不可避的不純物
平均粒径(D50):75μm
含有量:99.7質量%(原料粉末を100質量%)
(炭素粒子群)
平均粒径(D50):3μm
含有量:0.3質量%(原料粉末を100質量%)
〔相対密度〕
各試料の焼結部材の相対密度(%)を測定した。相対密度は、「焼結部材の見かけ密度/焼結部材の真密度」の百分率から求めた。焼結部材の見かけ密度は、アルキメデス法に準拠して求められる。焼結部材の空中の質量と純水中の質量を測定し、「(水の密度×空中での質量)/(空中の質量−水中の質量)」から焼結部材の見かけ密度を算出する。ここでは、試料No.1−1,No1−101の焼結部材の真密度は7.793g/cmであり、試料No.1−102の焼結部材の真密度は7.802g/cmである。このとき、水中での質量の安定性を考慮して5g以上の測定試料を利用することが好ましい。その結果を表1に示す。
〔断面観察〕
各試料の焼結部材の断面を観察し、空孔の平均径(μm)、最大空孔径(μm)、空孔率(%)、空孔の真円度(平均)を測定した。これらは、画像解析ソフト(日本ローパー社製)により求めた。空孔の平均粒径は、焼結部材の断面における4つの視野内に存在する全空孔径の平均とした。空孔率は、焼結部材の断面において、1つの視野内に存在する全空孔の合計面積の割合(1つの視野内に存在する全空孔の合計面積/1つの視野面積)を求め、4つの視野の平均とした。空孔の真円度は、焼結部材の断面における4つの視野内に存在する全空孔の「空孔の外接円の直径/空孔の内接円の直径」の平均とした。各視野の倍率は450倍とし、各視野サイズは0.4mm×0.6mmとした。これらの結果を纏めて表1に示す。
〔機械的強度の評価〕
各試料の焼結部材の機械的強度は、次のようにして面圧疲労強度を測定することで評価した。
(a)焼結部材に荷重を付加する円筒(柱)状の荷重付加部材を準備する。荷重付加部材には、JIS規格のSCM435浸炭焼結材を用いた。
(b)荷重付加部材と焼結部材の外周面同士を接触させるように配置する。ここでは、荷重付加部材と焼結部材の軸が水平方向に伸び、鉛直方向に平行に並ぶように荷重付加部材を焼結部材の鉛直方向上方に配置する。
(c)荷重付加部材により焼結部材に荷重を付加する。
(d)焼結部材と荷重付加部材の各々を各軸を中心に800rpmで回転させる。互いの回転方向を逆方向とする。
(e)焼結体の回転数が10回でも破断しない最大のヘルツ応力を面圧疲労強度とする。この応力が大きいほど、面圧疲労強度に優れ、機械的強度に優れる。
その結果を表1に示す。
〔寸法精度の評価〕
各試料の焼結部材の寸法精度は、外径のバラつきと高さ(軸方向に沿った長さ)のバラつきとを測定することで評価した。外径のバラつきは、焼結部材の軸に直交すると共に互いに直交する2方向の外径を、軸方向の一端側と他端側と中央の3つの高さ位置にて合計6箇所測定し、その最大長さと最小長さの差とした。高さのバラつきは、焼結部材の外周面を等間隔に4箇所で軸方向の長さを測定し、その最大長さと最小長さの差とした。高さの測定箇所は、外径の測定箇所、即ち、上記2方向の各々の両端とした。その結果を表1に示す。いずれの結果も、評価数n=3の平均値である。
Figure 2019019362
表1に示すように、試料No.1−1は、相対密度が95%以上、空孔の平均径が15μm以下、空孔の真円度が2.0以下であった。また、この試料No.1−1は、最大空孔径が70μm以下、空孔率が5%以下であった。この試料No.1−1は、試料No.1−101,No.1−102に比較して、相対密度が高くて空孔の平均値(サイズ)が小さく、試料No.1−101と同程度に空孔の形状が円形に近く、試料No.1−102に比較して、空孔の形状がより円形に近い。また、試料No.1−1は、試料No.1−102と同程度に最大空孔径が小さく、試料No.1−101に比較して、最大空孔径が非常に小さい。さらに、試料No.1−1は、試料No.1−101,No.1−102に比較して、空孔率が小さい。
試料No.1−1は、面圧疲労強度が1.5GPa以上、更には1.6GPa以上であり、試料No.1−101,No.1−102に比較して、機械的強度に優れることが分かった。また、試料No.1−1は、外径のバラつきが0.15mm以下、更には0.1mm以下、高さのバラつきが0.04mm以下であり、固相焼結した試料No.1−102ほどではないが、液相焼結した試料No.1−101に比較して、寸法精度に優れることが分かった。
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (7)

  1. 鉄系合金からなる組成を有する焼結部材であって、
    相対密度が95%以上、
    前記焼結部材の断面における空孔の平均径が15μm以下、
    前記焼結部材の断面における空孔の真円度が2以下である焼結部材。
  2. 前記焼結部材の断面における空孔率が5%以下である請求項1に記載の焼結部材。
  3. 複数の鉄系合金粒子を含む原料粉末を加圧成形して粉末成形体を作製する成形工程と、
    前記粉末成形体を液相焼結する焼結工程とを備え、
    前記鉄系合金粒子は、多結晶であり、焼結温度で液相合金を生じる焼結助剤元素が結晶粒界に存在する組織を有する焼結部材の製造方法。
  4. 前記鉄系合金粒子は、
    Ni,Mo,Cr,及びMnの中から選択される1種以上の元素と、
    P,Si,及びBの中から選択される1種の前記焼結助剤元素とを含み、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する請求項3に記載の焼結部材の製造方法。
  5. 前記鉄系合金粒子全体における前記焼結助剤元素の含有量は、その鉄系合金の状態図において、γ単相域と、γ相+鉄系合金相の二相域と、γ相+液相の二相域との三重点よりも多い請求項4に記載の焼結部材の製造方法。
  6. 前記焼結助剤元素は、Pであり、
    前記Pの含有量は、1.2質量%以上である請求項5に記載の焼結部材の製造方法。
  7. 前記鉄系合金粒子の平均粒径は、20μm以上200μm以下である請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の焼結部材の製造方法。
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