JP2019019217A - 硬化樹脂用組成物、該組成物の硬化物、該組成物および該硬化物の製造方法、ならびに半導体装置 - Google Patents
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Abstract
Description
ベンゾオキサジン化合物とは、ベンゼン骨格とオキサジン骨格とを有するベンゾオキサジン環を含む化合物を指し、その硬化物(重合物)であるベンゾオキサジン樹脂は、耐熱性、機械的強度等の物性に優れ、多方面の用途において高性能材料として使用されている。
しかしながら、優れた硬化物性能と高機械的強度を両立できる硬化物を得るための硬化樹脂用組成物は、いまだ得られていない。
[1] (A)ベンゾオキサジン環を少なくとも二つ有する多官能ベンゾオキサジン化合物であって、式(1)の構造単位を有する多官能ベンゾオキサジン化合物、および式(2)の構造で示される多官能ベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1種の多官能ベンゾオキサジン化合物と、
(B)ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物と、
(C)硬化剤と、
(D)シランカップリング剤と、
(E)無機充填剤と
を含有する、硬化樹脂用組成物。
[2] 前記(D)シランカップリング剤が式(9)で示される構造を有する、[1]に記載の硬化樹脂用組成物。
[3] 前記(D)シランカップリング剤のYが1級アミノ基、メルカプト基、2級アミノ基からなる群から選択される、[2]に記載の硬化樹脂用組成物。
[4] 前記(D)シランカップリング剤の配合割合が前記(A)、前記(B)、前記(C)および前記(E)の合計100質量部に対して0.01〜2質量部である、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の硬化樹脂用組成物。
[5] (F)硬化促進剤をさらに含有する、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の硬化樹脂用組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれか一つに記載の硬化樹脂用組成物を硬化させてなる硬化物。
[7] [1]〜[6]のいずれか一つに記載の硬化樹脂用組成物を硬化させてなる硬化物中に半導体素子が設置されている、半導体装置。
[8] 硬化樹脂用組成物の製造方法であって、
(A)ベンゾオキサジン環を少なくとも二つ有する多官能ベンゾオキサジン化合物であって、式(1)の構造単位を有する多官能ベンゾオキサジン化合物、および式(2)の構造で示される多官能ベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1種の多官能ベンゾオキサジン化合物と、
(B)ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物と、
(C)硬化剤と、
(D)シランカップリング剤と、
(E)無機充填剤と
を混合して混合物を得る工程、
該混合物を粉体状、ペレット状、または顆粒状の硬化樹脂用組成物に加工する工程
を有する、硬化樹脂用組成物の製造方法。
[9] 前記混合物を得る工程において、(F)硬化促進剤をさらに混合して混合物を得る、[8]に記載の製造方法。
[10] [8]または[9]に記載の方法により製造した前記硬化樹脂用組成物を180〜300℃にて加熱して硬化させる工程
を有する、硬化物の製造方法。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の成分(A)および(B)における「化合物」とは、各式に示す単量体だけでなく、該単量体が少量重合したオリゴマー、すなわち硬化樹脂を形成する前のプレポリマーも含むものとする。
硬化樹脂用組成物を構成する成分(A)は、式(1)の構造単位を有する多官能ベンゾオキサジン化合物、および式(2)の構造で示される多官能ベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1種の、ベンゾオキサジン環を少なくとも二つ有する多官能ベンゾオキサジン化合物である。なお、上記式(1)のベンゼン環に交差して示されている二つの横線は、水素、置換基および/または連結基(スペーサー)を表し、かつ、少なくとも一つは連結基であり、該連結基によって少なくとも二つのベンゾオキサジン環が連結されている。なお、ここで連結基とは、二つのベンゾオキサジン環が他の基を介さずに直接結合しているものも含むものとする。また、上記置換基とは、例えば、炭素数1〜8の炭化水素基が挙げられる。
したがって、上記式(1)は、成分(A)の選択肢の内、ベンゼン環部分で二つ以上のベンゾオキサジン環が連結されている化合物についてその構造単位を表したものである。
炭素数1〜12の鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
炭素数3〜8の環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
炭素数6〜14のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニル基が挙げられる。
炭素数6〜14のアリール基は置換されていてもよく、その置換基としては炭素数1〜12の鎖状アルキル基またはハロゲンが挙げられる。炭素数1〜12の鎖状アルキル基もしくはハロゲンで置換された、炭素数6〜14のアリール基としては、例えば、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、o−t−ブチルフェニル基、m−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、o−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基が挙げられる。
取り扱い性が良好な点において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびp−トリル基から選択されることが好ましい。
さらに、成分(A)は、各々Rが異なる式(1)または(1a)に示す化合物の混合物であってもよい。
さらに、成分(A)は、各々Lが異なる式(2)に示す化合物の混合物であってもよい。
具体例として、下記式(3)に示す官能基群を挙げることができる。
硬化樹脂用組成物を構成する成分(B)は、ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物である(以下、単に「多官能エポキシ化合物」ともいう)。上記多官能エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物が好ましく、下記式(4)に示す、5員環、6員環またはノルボルナン環に結合したエポキシ構造を有することがより好ましい。
成分(A)と(B)の配合割合が当該範囲内にあると、良好な耐熱性を得ることができる。
硬化樹脂用組成物を構成する成分(C)は硬化剤であり、イミダゾール類、芳香族アミン類、および多官能フェノール類等を例示できる。
成分(C)の具体的な化合物としては、例えば、ジエチルトルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシレンジアミン、およびこれらの各種誘導体等の芳香族アミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等のカルボン酸無水物、アジピン酸ヒドラジド等のカルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、単官能フェノール、ビスフェノールAおよび、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等のビスフェノールスルフィドのような多官能フェノール化合物、ポリフェノール化合物、ポリメルカプタン、カルボン酸塩、ならびに三フッ化ホウ素エチルアミン錯体等のルイス酸錯体等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上の混合物として使用してもよい。
本発明で用いられる(D)シランカップリング剤は、有機成分である(A)多官能ベンゾオキサジン化合物や(B)多官能エポキシ化合物と(C)無機充填剤との双方に反応性を持ち、両者の親和性を向上させる成分である。本発明の(D)シランカップリング剤としては、有機成分との結合に寄与する官能基Yと(C)無機充填剤との結合に寄与する官能基Xとを有する、下記式(9)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
式(9−1)におけるRが示す「炭化水素基」は、アルキレン基が挙げられ、該アルキレン基は置換されていてもよくその置換基としては特に限定されるものではないが、炭素数1〜12の鎖状アルキル基または炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。炭素数1〜12の鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられる。炭素数6〜14のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニル基が挙げられる。
上記アルキレン基の炭素原子数は特に限定されるものではないが、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3である。上記アルキレン基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。上記アルキレン基としては置換されていないアルキレン基が好ましい。
これらの(D)シランカップリング剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
硬化樹脂用組成物を構成する成分(E)は無機充填剤である。本発明で用いる無機充填剤は特に限定されず、硬化樹脂用組成物あるいはその硬化物の用途あるいは付与したい性状を考慮して選択することができる。このような無機充填剤としては、たとえば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化マンガン等の窒化物;水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ素化合物;ホウ酸アルミニウム等のホウ素化合物、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等のジルコニウム化合物;リン酸ジルコニウム、リン酸マグネシウウム等のリン化合物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン化合物;マイカ、タルク、カオリン、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、コーディエライト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、ゼオライト、ハイドロタルサイト、水和石膏、ミョウバン、ケイ藻土、ベーマイト等の鉱物類、フライアッシュ、脱水汚泥、ガラスビーズ、ガラスファイバー、ケイ砂、カーボンブラック、マグネシウムオキシサルフェイト、シリコン酸化物、シリコンカーバイド等;銅、鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいはそのいずれかを含む合金;センダスト、アルニコ磁石、フェライト等の磁性材料、等が挙げられ、好ましくは、シリカまたはアルミナである。ここで、シリカとしては、例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、無定形シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられ、好ましくは球状シリカ、結晶シリカである。無機充填剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(E)の配合割合の下限値は、成分(A)、(B)、(C)、および(D)の合計100質量部に対して、例えば150質量部以上が挙げられ、400質量部以上が好ましく、500質量部以上がより好ましい。また、成分(F)の配合割合の上限値は、1300質量部以下が挙げられ、1150質量部以下が好ましく、950質量部以下がより好ましい。400質量部以上であれば、硬化樹脂組用組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下を抑制でき、したがって良好な耐半田クラック性を有する硬化物を得ることができる。また、1300質量部以下であれば、硬化樹脂組用組成物が流動性を有し、金型への充填がしやすく、硬化物が良好な封止性能を発揮する。
本発明の硬化樹脂用組成物は、所望により(F)硬化促進剤をさらに含有してもよい。
硬化促進剤としては、公知の硬化促進剤を使用することができ、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン系化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、トリフェニルホスフィン等の共有結合のみでリンが結合している有機リン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の共有結合およびイオン結合でリンが結合している塩タイプの有機リン化合物等の有機リン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記した硬化促進剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。これらのうち、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン化合物が、硬化速度向上の効果が大きく、好ましい。
上記有機リン化合物は、特開昭55−157594号公報に記載されているように、エポキシ基とフェノール性水酸基との架橋反応を促進する機能を発揮するものである。さらに、(A)多官能ベンゾオキサジン化合物が高温で開裂反応した際に発生する水酸基とエポキシ基との反応を促進する機能も発揮する。本発明の有機リン化合物は当該機能を有するものであれば、特に限定されない。
成分(F)の配合割合としては、成分(A)および(B)の合計100質量部に対して、成分(F)を0.01質量部以上、10質量部以下の範囲とすることが好ましい。0.1質量部以上、7質量部以下の範囲とすることがより好ましい。成分(F)をこの範囲で含有することにより、良好な速硬化性を有する硬化樹脂用組成物とすることができる。
本発明の硬化樹脂用組成物は、該組成物の粘度を低下させたい場合、その性能を損なわない範囲で、成分(A)以外のベンゾオキサジン化合物として、ベンゾオキサジン環が一つである単官能ベンゾオキサジン化合物を含有してもよい。
また、本発明の硬化樹脂用組成物には、その性能を損なわない範囲で、例えば、ナノカーボンや難燃剤、離型剤等を配合することができる。
ナノカーボンとしては、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレンまたはそれぞれの誘導体が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、赤燐、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート等のリン酸エステルや、ホウ酸エステル等が挙げられる。
離型剤としては、例えば、シリコーンオイル、ステアリン酸エステル、カルナバワックス等が挙げられる。
本発明の硬化樹脂用組成物の溶融粘度は、200℃、回転数100rpmにおける最低溶融トルクとして測定することができ、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、最低溶融トルクとしては6.5gf・cm以下が挙げられ、流動性の観点から、好ましくは、6.2gf・cm以下、より好ましくは6.1gf・cm以下、さらに好ましくは6.0gf・cm以下とされる。最低溶融トルクは、一定温度、一定回転数の下に描かれるトルク曲線の最低値で示され、ゲルタイム測定機やラボプラストミル等により測定することができる。具体的には、市販のゲルタイム測定機(例えば松尾産業製)を用いることにより、簡便に行うことができる。
次に、本発明の硬化樹脂用組成物の製造方法について説明する。
成分(A)〜(E)、さらに、所望により成分(F)、その他の添加剤、および溶剤を適宜追加して混練または混合装置によって混合することにより、本発明の硬化樹脂用組成物を製造することができる。
混練、混合方法は、特に限定されず、例えば、ニーダーやプラネタリーミキサー、2軸押出機、熱ロールまたはニーダー等の混練機等を用いて混合することができる。また、必要に応じて加熱して混練したり、さらに、加圧または減圧条件下で混練したりしても良い。加熱温度としては80〜120℃が好ましい。また、成分(D)は一般に常温で液体状であるため、前もって成分(E)と混合させても、成分(A)、(B)、(C)、(F)等と混合してもよい。
成分(E)を含む硬化樹脂用組成物は室温下では固体状であるので、加熱混練後、冷却、粉砕して粉体状としてもよく、該粉体を打錠成形してペレット状にしてもよい。また、粉体を造粒して顆粒状にしてもよい。
本発明の硬化樹脂用組成物の硬化物は耐熱性が良好で、熱分解し難く、ガラス転移温度が高く、機械的強度が高いという特徴を有している。本発明の硬化樹脂用組成物がこのような優れた硬化物を形成する理由としては、次のようなことが考えられる。
まず、ベンゾオキサジンの単独重合では、重合によりフェノール性の水酸基が生成する。このフェノール性の水酸基は、高温、例えば200℃以上にて、ケトエノ−ル互変異性体を経由し、それによって高分子鎖が切断されるため、耐熱性が低く、ガラス転移温度も低くなると考えられている。
それに対し、本願のノルボルナン構造を有し、エポキシ基を二つ以上有するエポキシ化合物は、単独重合し難く、上記ベンゾオキサジン由来のフェノール性水酸基と反応することにより、上記高分子鎖の切断を防止すると考えられる。よって、高耐熱性の硬化物が得られる。
さらに、成分(D)は多官能ベンゾオキサジン化合物(A)と多官能エポキシ化合物(B)とに対する反応性と、無機充填剤(E)への反応性を併せ持つため、有機物と無機充填剤の親和性を向上させ、機械的強度を向上したり、硬化樹脂の溶融粘度を低減することができると考えられる。
本発明の硬化物は、例えば、次のように製造することができる。すなわち、公知のベンゾオキサジン化合物および/またはエポキシ化合物と同様の硬化条件にて、開環重合を行い硬化することができる。例えば、以下の方法を挙げることができる。
まず、本発明の硬化樹脂用組成物を上記方法によって製造する。続いて、得られた硬化樹脂用組成物を、180〜300℃にて、1分間〜1時間加熱することで、硬化物を得ることができる。硬化物を連続生産する点では、硬化時間は1〜3分間で十分であるが、十分な強度を得る点では5分間〜1時間程度加熱することが好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他のベンゾオキサジン化合物および/または他のエポキシ化合物を配合して硬化物を得ることもできる。
本発明の半導体装置は、成分(A)〜(E)、所望により(F)を含有する本発明の硬化樹脂用組成物を硬化させてなる硬化物中に半導体素子が設置されている半導体装置である。ここで、通常、半導体素子は金属素材の薄板であるリードフレームにより支持固定されている。「硬化物中に半導体素子が設置されている」とは、半導体素子が上記硬化樹脂用組成物の硬化物で封止されていることを意味し、半導体素子が該硬化物で被覆されている状態を表す。この場合、半導体素子全体が被覆されていてもよく、基板上に設置された半導体素子の表面が被覆されていてもよい。
成分(B)として下記(B1)〜(B5)を使用した。
(B1)多官能エポキシ化合物1;式(5−1)の化合物
上記式(6)に示す化合物(a)を、『土田詔一ら、「ブタジエンとシクロペンタジエンとのDiels−Alder反応−三量体の決定−」、石油学会誌、1972年、第15巻、3号、p189−192』に記載の方法に準拠して合成した。
次に、上記式(6)の反応を次のようにして行った。反応容器に、クロロホルム23.5kgおよび化合物(a)1.6kgを投入し、0℃で攪拌しながらメタクロロ過安息香酸4.5kgを滴下した。室温まで昇温し、12時間反応を行った。
次に、ろ過により副生したメタクロロ安息香酸を除去した後、ろ液を1N水酸化ナトリウム水溶液で3回洗浄後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過により硫酸マグネシウムを除去してろ液を濃縮し、粗体を得た。
粗体にトルエン2kgを加え、室温で溶解した。これにヘプタン6kgを滴下して晶析し、5℃で1時間熟成した。晶析物をろ取してヘキサンにより洗浄した。35℃下、24時間減圧乾燥することによって、下記式(5−1)に示す化合物を白色固体として1.4kg得た。
化合物(b)を化合物(a)と同様に、上記文献に記載の方法に準拠して合成した。
次に、上記式(7)の反応を次のようにして行った。反応容器に、クロロホルム59.2kgおよび化合物(b)4.0kgを投入し、−10℃で攪拌しながらメタクロロ過安息香酸10.6kgを滴下した。室温まで昇温し、12時間反応を行った。
次に、ろ過により副生したメタクロロ安息香酸を除去した後、ろ液を5%亜硫酸ナトリウム水溶液42.0kgで洗浄した。有機層を更に1N水酸化ナトリウム水溶液41.6kgで4回洗浄後、飽和食塩水48.0kgで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過により硫酸マグネシウムを除去してろ液を濃縮し、粗体5.1kgを得た。
粗体にトルエン3.5kgを加え、室温で溶解した。これにヘプタン13.7kgを滴下して晶析し、5℃で1時間熟成した。晶析物をろ取してヘプタンにより洗浄した。35℃下、12時間減圧乾燥することによって、下記式(5−2)に示す化合物を白色固体として2.8kg得た。
反応容器にジシクロペンタジエン10kg、重曹68kg、アセトン100Lおよびイオン交換水130Lを仕込み、10℃以下に冷却した後、反応液の温度を30℃以下に維持するように冷却を制御して、オキソン84kgを徐々に添加し、撹拌しながら10時間反応を行った。
次に、酢酸エチル100Lによる反応生成物の抽出を2回行い、得られた有機層を分取して合わせた。続いて、当該有機層を食塩およびチオ硫酸ナトリウムの混合水溶液(食塩20wt%+チオ硫酸ナトリウム20wt%)100Lにて洗浄した後、さらに、イオン交換水100Lで2回洗浄した。
洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥後、ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、ろ液から有機溶媒を留去して、下記式(5−4)に示す化合物を白色固体として11kg得た。
(B4)多官能エポキシ化合物4;下記式(10)に示す多官能エポキシ化合物(YX−4000H、三菱化学株式会社製)
成分(D)として下記(D1)、(D2)、(D3)を使用した。
(D1)シランカップリング剤1;3−アミノプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)
(D2)シランカップリング剤2;N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)
(D3)シランカップリング剤3;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)
成分(E)として、平均粒径D50が22μmの溶融球状シリカ(FB−820、デンカ株式会社製)を使用した。以後、(E)と称する。
成分(F)として下記を使用した。
(F);トリフェニルホスフィン(TPP)(北興化学工業株式会社製)
離型剤としてカルナバワックス(クラリアントジャパン株式会社製)、着色剤としてカーボンブラック(MA600、三菱化学株式会社製)を使用した。
硬化樹脂用組成物(以後単に組成物と称する)および硬化物を以下のようにして調製し、耐熱性評価としてのガラス転移温度、機械的強度の評価として曲げ試験による強度および弾性率、流動性評価として溶融トルクを測定した。
(A)、(B1)、(C)、(D1)、(E)、(F)、カルナバワックス、およびカーボンブラックを、表1に示す配合割合で、表面温度が90℃と100℃の2本ロールを有する熱ロール混練機(BR−150HCV、アイメックス株式会社)を用いて大気圧下で10分間混練した後、室温まで冷却して混合物を得た。該混合物をミニスピードミルMS−09(ラボネクト株式会社製)により、金型への充填が良好に行えるように粉末状に粉砕して組成物を得た。
ガラス転移温度、曲げ試験による強度および弾性率、ならびに溶融トルクの測定結果を表1に示す。
トランスファー成形機を用い、金型温度200℃、注入圧力4MPa、硬化時間6分の条件で、調製した組成物を硬化させ、さらに、後硬化処理としてオーブンで240℃、4時間加熱することで縦3mm×横3mm×長さ15mmの硬化物を作成した。該硬化物を縦3mm×横3mm×長さ2mmの大きさに切断した試験片を用いて、DSCによって下記条件によりTgを測定した。
装置:X−DSC−7000(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
測定条件:N2流量;20mL/分、昇温速度;20℃/分
トランスファー成形機を用い、金型温度200℃、注入圧力4MPa、硬化時間3分の条件で、調製した組成物を硬化させ、さらに、後硬化処理としてオーブンで240℃、4時間加熱することで幅10mm×長さ80mm×厚さ3mmの硬化物を作成した。該硬化物の曲げ強度[MPa]および曲げ弾性率[MPa]をJIS K 6911に準じて精密万能試験機(島津製作所製AGS−1kNX)によって測定した。
調製した組成物0.60gの200℃における回転数100rpmでの最低溶融トルク[gf・cm]をゲルタイム測定機(松尾産業製自動硬化時間(ゲルタイム)測定装置「まどか」)により測定した。
撹拌方法:二軸偏心
サンプル量:0.60g
各成分の配合割合を表1に示した通りとした以外は実施例1と同様にして、各実施例の組成物を調製した。各々の組成物について実施例1と同様にして耐熱性(ガラス転移温度)、曲げ強度、曲げ弾性率、および溶融トルクを測定した。結果を表1に示す。
各成分の配合割合を表2に示した通りとした以外は実施例1と同様にして、各比較例の組成物を調製した。各々の組成物について実施例1と同様にして耐熱性(ガラス転移温度)、曲げ強度、曲げ弾性率、および溶融トルクを測定した。結果を表2に示す。
以上の結果から、本発明の実施形態である硬化樹脂用組成物とすることにより、該組成物を硬化させてなる硬化物の高耐熱性と高曲げ強度を両立できることが分かった。
Claims (10)
- (A)ベンゾオキサジン環を少なくとも二つ有する多官能ベンゾオキサジン化合物であって、式(1)の構造単位を有する多官能ベンゾオキサジン化合物、および式(2)の構造で示される多官能ベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1種の多官能ベンゾオキサジン化合物と、
(B)ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物と、
(C)硬化剤と、
(D)シランカップリング剤と、
(E)無機充填剤と
を含有する、硬化樹脂用組成物。
- 前記(D)シランカップリング剤のYが1級アミノ基、メルカプト基、2級アミノ基からなる群から選択される、請求項2に記載の硬化樹脂用組成物。
- 前記(D)シランカップリング剤の配合割合が前記(A)、前記(B)、前記(C)および前記(E)の合計100質量部に対して0.01〜2質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化樹脂用組成物。
- (F)硬化促進剤をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化樹脂用組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化樹脂用組成物を硬化させてなる硬化物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化樹脂用組成物を硬化させてなる硬化物中に半導体素子が設置されている、半導体装置。
- 硬化樹脂用組成物の製造方法であって、
(A)ベンゾオキサジン環を少なくとも二つ有する多官能ベンゾオキサジン化合物であって、式(1)の構造単位を有する多官能ベンゾオキサジン化合物、および式(2)の構造で示される多官能ベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1種の多官能ベンゾオキサジン化合物と、
(B)ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物と、
(C)硬化剤と、
(D)シランカップリング剤と、
(E)無機充填剤と
を混合して混合物を得る工程、
該混合物を粉体状、ペレット状、または顆粒状の硬化樹脂用組成物に加工する工程
を有する、硬化樹脂用組成物の製造方法。
- 前記混合物を得る工程において、(F)硬化促進剤をさらに混合して混合物を得る、請求項8に記載の製造方法。
- 請求項8または9に記載の方法により製造した前記硬化樹脂用組成物を180〜300℃にて加熱して硬化させる工程
を有する、硬化物の製造方法。
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