JP2019018755A - 異常検知装置、異常検知方法およびコンピュータプログラム - Google Patents

異常検知装置、異常検知方法およびコンピュータプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】精度の高い異常検知を実現する装置、方法及びプログラムを提供する。【解決手段】異常検知装置100は、条件生成部230と、閾値設定部220と、異常検知部110とを備える。条件生成部は、制御指令値と予測モデルとに基づく車両の状態の予測値と、車両の状態の計測値との差分を区分する複数の条件を、車両の走行情報に基づいて、生成する。閾値設定部は、複数の条件に対し複数の閾値を設定する。異常検知部は、予測モデルと、複数の閾値と、複数の条件とに基づき、車両の異常検知を行う。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、異常検知装置、異常検知方法およびコンピュータプログラムに関する。
鉄道の安全・安定な運行を維持するため、鉄道車両の保守管理や点検を日常的に実施する必要がある。従来は鉄道車両の定期的な検査を中心とした保守管理が行われてきたが、近年は鉄道のより高度な安全性を確保するために、鉄道車両から取得されるセンサの値や制御値といった車両情報を活用して、診断や状態監視を行うことで、異常の早期発見を行う技術の開発が進められている。
鉄道車両上のセンサで計測された値と、閾値との比較により異常検知を行う技術や、鉄道車両の正常系の動作を再現するモデルを用意し、それを用いて異常あるいは異常予兆を検知する技術が存在する。しかし、路線勾配や天気の変化、乗客の乗降、運転士の操作などで時系列に走行条件がダイナミックに変化する鉄道車両において、同じ閾値に基づき正確な異常検知をするのは難しい。
特開2013―100111号公報 国際公開第2015/129512号
本発明の実施形態は、精度の高い異常検知を実現する異常検知装置、異常検知方法およびコンピュータプログラムを提供する。
本発明の実施形態としての異常検知装置は、条件生成部と、閾値設定部と、異常検知部とを備える。前記条件生成部は、制御指令値と予測モデルとに基づく車両の状態の予測値と、前記車両の状態の計測値との差分を区分する複数の条件を、前記車両の走行情報に基づいて、生成する。前記閾値設定部は、前記複数の条件に対し複数の閾値を設定する。前記異常検知部は、前記予測モデルと、前記複数の閾値とに基づき、前記車両の異常検知を行う。
本発明の実施形態に係る異常検知システムのブロック図。 鉄道車両のブレーキノッチ、ブレーキ、エアスプリングの構成例を表す図。 鉄道車両の発電ブレーキ及び回生ブレーキの構成例を表す図。 計測情報と環境情報に関するテーブルの例を示す図。 ブレーキ情報に関するテーブルの例を示す図。 変換テーブルの例を示す図。 モデルデータベースの例を示す図。 正規分布を用いた閾値の決定方法の例を示す図。 検知結果データベースの例を示す図。 走行条件を生成するために用いるデータセットの例を示す図。 決定木の例を示す図。 モデルデータベースの他の例を示す図。 異常検知モデルの動作例を示す図。 異常検知装置が出力するメイン画面の例を示す図。 異常検知装置が出力する異常詳細画面の例を示す図。 運転士用の確認画面の例を示す図。 本発明の本実施形態に係る異常検知装置のハードウェア構成を示す図。 本発明の実施形態に係る異常検知処理のフローチャート。 異常検知装置の学習モードに係る処理のフローチャート。 モデルデータベースの他の例を示す図。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。また、図面において同一の構成要素は、同じ番号を付し、説明は、適宜省略する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る異常検知システムの一例を示すブロック図である。
図1の異常検知システムは、異常検知装置100と、車両システム500と、環境情報システム600と、端末700と、入力装置800と、画面表示装置900と、を備えている。以下、図1の異常検知システムの概要を説明する。
異常検知装置100は、学習モードと、運用モードとを備えている。異常検知装置100は、学習モードでは、車両システム500から取得される鉄道車両(以下、車両)の計測情報、および環境情報システム600から取得する車両の環境情報の少なくとも一方に基づき、鉄道車両のブレーキシステムに関する異常検知モデルを作成する機能(異常検知モデル生成部200)を有する。本実施形態に係る車両の走行情報は、車両システム500から取得される車両の計測情報と、環境情報システム600から取得する車両の環境情報との少なくとも一方を含む。異常検知モデルは、車両の状態を予測する予測モデルと、予測モデルの予測値からの乖離(ずれ)に関する閾値とを含む。車両の状態は、一例として、車両の減速度である。
異常検知装置100は、運用モードで、予測モデルと閾値とを用いて、車両の異常検知を行う機能(異常検知部110)を備えている。異常検知とは、異常の有無を判断することである。異常検知は異常判定とも呼ばれる。異常検知は、予測モデルの予測値と、車両から取得される車両の状態の実測値との差分である乖離を、閾値と比較することで行われる。
また異常検知装置100は、車両の走行情報に基づく複数の条件(以下、走行条件)ごとに、閾値を設定する機能(閾値設定部220)を有する。この場合、異常検知装置100は、1つの予測モデルと、複数の走行条件に対応する複数の閾値とを含む異常検知モデルを生成する。この異常検知モデルを用いた異常検知では、異常検知モデルに含まれる複数の閾値から、車両が置かれている走行条件、すなわち、異常検知の対象となる走行情報(現在の走行情報)が満たす走行条件に対応する閾値を選択し、選択した閾値と、予測モデルとを使用する。
複数の走行条件の作成、および複数の閾値の設定は、学習モードで行う。走行条件の作成では、車両の走行情報、および、異常検知の結果(予測モデルの予測値と状態値の実測値との乖離など)を利用する。学習モードと運用モードは、自動的または保守員等の指示により切り換えるようにしてもよいし、それぞれ同時に実行してもよい。
異常検知装置100は異常を検知した場合に、一例として、異常が検出された箇所、異常検知に用いられた異常検知モデル、異常検知に用いられた走行情報、予測モデルによる予測値などを、画面表示装置900に表示する。これにより、鉄道の運用者による監視を支援する。
ここで、本実施形態に係る車両のブレーキシステムについて簡単に説明する。図2は、ブレーキノッチと、車両のある特定の車輪に対するブレーキおよびエアスプリングの構成例を示す。なお、ブレーキノッチは、実際には、電車の運転室にある。以下では図2を参照しながら異常検知装置100が異常検知の対象とする車両のブレーキシステムについて説明する。
コントローラの一例であるブレーキレバー10は、運転士に、ブレーキ操作をする手段を提供する。運転士はブレーキレバーを下から上方向に動かすことにより、車両にブレーキをかけることができる。ブレーキレバー10に表示されている1から8までの数値はブレーキノッチ(ブレーキ段)であり、この数値が大きいほど車両に強い制動力が働く。ここでのノッチ数は例であり、これより多いノッチ数または少ないノッチ数の車両を用いることを排除するものではない。ブレーキノッチは、車両またはブレーキに対する制御指令値の一例に対応する。
なお、車両へのブレーキ操作は運転士が行うものに限られない。例えば、自動列車停車装置(Automatic Train Stop:ATS)、自動列車制御装置(Automatic Train Control:ATC)、自動列車運転装置(Automatic Train Operation:ATO)が搭載されている車両においては、運転士に代わりこれらの装置がブレーキ操作を行う場合がある。この場合、これらの装置から出力されるブレーキ制動に関する指令が、一例として、制御指令値に対応する。
図2には、レール20の上を走行する車両の車輪30が示されている。この車両へブレーキによる制動を行う手段のひとつとして、踏面ブレーキ42がある。ここでは説明のため車輪を1つのみ示しているが、実際には、左右一対の車輪が複数組設けられている。
踏面ブレーキ42はエアシリンダを動力としている。エアシリンダ43内の圧力であるブレーキシリンダ圧を高めることによって、制輪子41が車輪30の、レールに接する面である踏面に押し付けられる。車輪30と制輪子41との間の摩擦力が、踏面ブレーキ42の制動力となる。
このように、踏面ブレーキは制輪子の摩擦力を利用しているため、継続した使用により制輪子が摩耗し、制動力が低下する可能性がある。踏面ブレーキは、車両に用いられる機械式ブレーキの一例であり、他に車輪軸に固定した円盤を、パッドなどで車輪に押し付け、制動力を得るディスクブレーキなどの方式もある。ブレーキの制動力は、制輪子またはパッドなどの摩耗状態によって変動する。本異常検知装置によりブレーキシステムに異常が検知された場合に、作業員等がブレーキシステムの制輪子または円盤等を確認して、実際に異常が無いかを確認してもよい。
ブレーキの制動力は、部品の摩耗の他に車両への荷重によっても変動する。図2の車両には、応荷重装置50が搭載されている。応荷重装置50は空気ばね51を備えており、空気ばね51のエアスプリング圧を検知することにより、車両にかかっている荷重を測定することができる。車両のブレーキ制御として、ブレーキレバー10の操作に加え、応荷重装置50で検出されたエアスプリング圧に応じて、ブレーキの制動力を調整してもよい。これにより、車両にかかる荷重の増減に関わらず、所望の減速度を達成することができる。
車両のブレーキシステムにおいては、機械式ブレーキの制動力を補うために、電気ブレーキを併用してもよい。図3を用いて電気ブレーキについて説明する。図3は、車両の発電ブレーキ及び回生ブレーキの構成例である。
図3の車両には主電動機60a、60bが搭載されている。発電ブレーキを用いる場合には、主電動機60a、60bは抵抗器70と閉回路を構成し、主電動機の電力を更に熱エネルギーに変換する。
一方、回生ブレーキを用いる場合には、主電動機60a、60bで発電された電力をパンタグラフ80より、架線90に送電する。または、車両に蓄電池が搭載されている場合に、発電された電力を用いて蓄電池を充電してもよい。このように、回生ブレーキでは、主電動機60a、60bを発電機として使い、運動エネルギーを電力に変換することにより、制動力を確保する。
機械式ブレーキや発電ブレーキは一例であり、その他の方式のブレーキをブレーキシステムで用いた場合も、異常検知装置100で異常検知の対象にできる。
ここで、車両のブレーキシステムについて正確な異常検知を行うのは、ブレーキシステムの構成が比較的複雑であることと、複数の要因や条件によりブレーキやブレーキシステムの特性が変動しうることから難しい。
例えば、車両のブレーキシステムにおいては、特性が異なる複数の方式のブレーキが併用されている。また、上述のように車両のブレーキシステムの制動力は荷重により変化する。例えば、旅客用の車両については、乗客数が時間帯や運行区間によって大きく変動するため、ブレーキシステムの制動力は短期間で大きく変動する。貨物用の車両についても、貨物積載量に応じ荷重は大きく変化する。この他に車両が走行する路線や区間によって、勾配やカントの傾向が異なり、ブレーキ操作を行ったときの減速度が変動する可能性がある。さらに降水の有無、気温の高低など気象条件の違いが、ブレーキシステムを構成する部品の物理的な性質を変化させ、ブレーキシステムの特性に影響することがある。その他、運転士によりブレーキ操作の特徴が異なる上に、車両ごとの個体差によりブレーキの特性に違いが生ずることもある。
そこで本実施形態では、車両が置かれている走行条件に応じて、使用する閾値を切り換えることで、車両内外の状況に応じた適切な閾値を使用し、これにより高精度な異常検知を簡易に行う。これにより、異常有無について誤検知発生のリスクを減らし、異常の早期発見と鉄道の安全・安定な運行を維持する。
以下、図1の異常検知装置100について、さらに詳細に説明する。以下の説明で異常検知装置100が異常検知の対象とするブレーキシステムは、鉄道の任意の車両の特定の車輪に対するブレーキ装置でもよいし、車両全体の複数のブレーキ装置全体でもよいし、複数の車両または編成のブレーキ装置群の全体でもよい。異常検知の対象はブレーキシステムだけでなく、動力システム、空調システム、電力システムなどを対象としてもよい。また、異常検知を行う対象は鉄道車両に限定されず、自動車、建設機械、航空機などの車輪を備えた任意の車両でもよい。車両以外の装置またはシステムも排除されない。
異常検知装置100は、車両情報収集部101と、環境情報収集部102と、データ加工部103と、異常検知モデル生成部200と、条件生成部230と、異常検知部110と、発報部120と、画面生成部130とを備えている。
異常検知モデル生成部200は、モデル生成部210と、閾値設定部220とを含む。
車両情報収集部101は、車両内の車両システム500の各種センサから車両に関する計測情報(計測データと呼んでも良い)を取得する。センサの例として、車両のブレーキ操作等を制御指令値として検出するセンサ、車両の減速度を検出するセンサ、運転速度を検出するセンサ、車両にかかっている荷重を計測するセンサなどがある。他にも様々なセンサが考えられる。計測情報は、センサの検出値(制御指令値等)、センサの計測値(運転速度、荷重、減速度など)などを含む。その他、車両システム500で速度センサの値から減速度を計算する場合、当該計算された減速度を、計測情報の一部として取得してもよい。
取得対象となる計測情報の種類(センサの種類や制御指令値の種類)は任意に設定することができる。計測情報を取得する周期は任意に設定できる。例えば、車両の運転速度に関連する計測情報についてはミリ秒単位の短いサンプリング周期で値を取得する。車両にかかっている荷重を計測するセンサについては、分単位のサンプリング周期で値を取得する。
環境情報収集部102は、環境情報システム600から車両の環境情報(走行環境データと呼んでも良い)を取得する。環境情報の例として、運行路線に関する情報、または気象に関する情報などがある。運行路線に関する情報の例として、区間毎の勾配やカント(鉄道の内側および外側のレールの高低差)など運行路線に関する情報がある。気象に関する情報の例として、天気、気温、降水量、風速、気圧など気象に関する情報がある。環境情報の取得は、地上システム内のデータベースからそこに蓄積されている情報を取得することで行ってもよいし、外部のサーバから配信される情報を取得することで行ってもよい。取得対象とする環境情報の種類と、取得を行う頻度は任意に設定することができる。
異常検知装置100は、地上装置として鉄道の運行管理会社の施設や運転指令所内など、車両外に設置されていてもよいし、車上装置として車両上に設置されていてもよい。異常検知装置100の設置形態は特に限定されない。
異常検知装置100が地上装置として車両外に設置されている場合、車両内の車両システム500の計測情報等を、一例として、車上子、トランスポンダ地上子、および地上の情報ネットワークを介して受信する。つまり、車両システム500が、地上子等を介して地上の情報ネットワークにデータを送信し、異常検知システムが、データを地上の情報ネットワークを介して受信する。地上の情報ネットワークには、メタリックケーブル、同軸ケーブル、光ケーブル、電話回線、無線、Ethernet(登録商標)などを用いることができるが、特に方式は問わない。また、異常検知装置100は、地上の情報ネットワークを経由して環境情報システム600からデータを受信する。
異常検知装置100が車上装置である場合、異常検知装置100は車両内の情報ネットワークを介して車両システム500からデータを取得する。車両内の情報ネットワークにはEthernetや無線LAN(Local Area Network)などがあるが、その他の方式によるものであってもよい。異常検知装置100は、車上子やトランスポンダ地上子を用いて地上の情報ネットワークに接続されている環境情報システム600のデータを取得してもよい。
入力装置800は、保守員による操作用のインターフェースを提供する。入力装置800は、マウス、キーボード、音声認識システム、画像認識システム、タッチパネルまたはこれらの組み合わせなどを含む。保守員は入力装置800より異常検知装置100へ各種の指令またはデータを入力し、操作を行うことができる。
画面表示装置900は、異常検知装置100が出力したデータまたは情報を、静止画像または動画像として表示する。画面表示装置900は一例として、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、蛍光表示管(VFD)などであるが、その他の方式による表示装置であってもよい。
入力装置800及び画面表示装置900はそれぞれ複数台設置されていてもよい。例えば、運転指令所と車両の運転台とのそれぞれに、入力装置800と画面表示装置900が設置されていてもよい。
また、入力装置800と画面表示装置900は一体化したひとつの装置であってもよい。例えばタッチパネル機能付ディスプレイをいる場合、同じ装置が入力装置800と画面表示装置900を兼ねることができる。
異常検知装置100は、データベースとして、情報データベース310と、モデルデータベース320と、検知結果データベース330とを含む。
データベース310、320、330は、すべて図1では異常検知装置100の内部に配置されている。しかし、データベースの配置方法については、特に問わない。例えば、一部のデータベースを、外部のサーバやストレージ装置などに配置させてもよい。データベースはリレーショナルデータベースマネジメントシステムや各種NoSQLシステムにより実装することができるが、その他の方式を用いることもできる。データベースの保存フォーマットとしてはXML、JSON、CSVなどでもよいし、バイナリ形式などその他の形式でもよい。異常検知装置100内のすべてのデータベースが同一のデータベースシステム及び保存フォーマットで実現されている必要はなく、複数の方式によるものが混在していてもよい。
情報データベース310は、車両情報収集部101が取得した計測情報と、環境情報収集部102が取得した環境情報を内部に格納する。計測情報と環境情報が格納されたメモリデバイスなどの記憶媒体を異常検知装置100に挿入し、当該記憶媒体を情報データベース310として用いてもよい。
情報データベース310の例を、図4および図5に示す。走行情報(計測情報および環境情報)は、図4に示すテーブル310aと図5に示すテーブル310bの形態で保存される。
図4のテーブル310aの「データID」列は、テーブル310aに格納されたエントリの識別番号を格納する。データIDは、主キー(primary key)となる。それぞれのデータIDについて、図5のようなテーブル310bが対応づけられている。テーブル310bも、情報データベース310に保存されている。「時刻」列は、エントリの生成時刻が格納される。エントリは、この例では、一定のサンプリング時間ごとに生成されている。ただし、エントリは、線路に予め設定した区間単位で生成するなど、別の基準で生成することも可能である。
テーブル310aの「運転士」列には、ブレーキ操作を行った運転士名が格納されている。ブレーキ操作を行う主体が運転士ではなく、ATS、ATC、ATOなどの装置である場合には、代わりに操作を行った装置名または装置を表す識別子などを格納してもよい。
テーブル310aの「天気」列には、環境情報システム600から取得された天気に関する情報が格納されている。
テーブル310aの「気温」列には、環境情報システム600から取得された気温に関する情報が格納されている。気温に関する情報は、測定した実測値でもよいし、実測値をクラス分けしたラベルでもよい。図示の例では、図6の変換テーブル310cを用いて、実数値の気温から変換したT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7のいずれかのクラスのラベルを格納している。例えば、気温が−11℃である場合には、クラスT1に、気温が15℃である場合には、クラスT4に、気温が33℃である場合には、クラスT6にそれぞれ変換される。なお、後述する予測モデルを作成する際には、クラスT1を1、T2を2.T3を3のように、クラス名を任意の整数に変換したデータを説明変数として用いてもよい。
「気温」列の例のように情報データベース310には、計測情報または環境情報に対して演算または変換を行った加工後の情報を格納してもよい。
テーブル310aの「乗車率」列には、車両にかかる荷重の指標としてパーセント形式の乗車率が格納されている。荷重を表すために他の指標を用いてもよい。乗車率は、一例として、旅客用車両の定員と旅客用車両の乗客数の比率で定義される。乗車率は応荷重装置のエアスプリング圧から推定されることが多いため、直接、エアスプリング圧を指標に用いることもできる。
エアスプリング圧はセンサの実測値であり、乗車率のように変換表や式などを用いて間接的に推定された値ではないため、モデル生成時の誤差を軽減できる可能性がある。だが、エアスプリング圧は車両に搭載された応荷重装置のメーカーや型番に依存した値をとり、汎用性に欠ける面もある。従って、乗車率のような一般的に用いられる指標を使った方が車両ごとの応荷重装置の違いの差を吸収できる場合もあると考えられる。
テーブル310aの「勾配」列には、路線の勾配がパーミル単位で表した値が格納されている。パーミルとは、水平距離1000m当たりの高低差をメートル単位で表した値である。パーミルは例示であり、他の単位による値を格納してもよい。
テーブル310aの「カント」列にはミリメートル単位のカントが格納されているが、ここにも同じく、他の単位による値を格納してもよい。
テーブル310aには、他に「風速」列と、「気圧」列が示されている。現在位置、線路における現在の区間など、他の情報を格納した列が存在していてもよい。
図5のようなテーブル310bは、図4のテーブル310aの対応するエントリについて、時刻情報とともに、ブレーキノッチ、減速度の実測値などの情報を格納する。図5の例では、図4のデータID:2560に対応するテーブル310bである。テーブル310bのエントリは、テーブル310aよりも短い時間間隔で生成されている。テーブル310bのエントリの生成間隔(サンプリング間隔)は、テーブル310aと同じでもよい。また、テーブル310bとテーブル310aを別々にしているが、これらを一体化したテーブルを用いてもよい。
情報データベース310に格納されたデータの加工を行ってもよい。例えば、データ加工部103は、画面表示装置900に情報データベース310に格納された各テーブルの内容を表示させる。保守員や運転士は、入力装置800を用いて、データに対する加工操作を行う。データ加工部103は、加工操作に従って、データ加工を行う。
また、車両情報収集部101または環境情報収集部102による情報またはデータの取得間隔を調整してもよい。例えばデータ加工部103が、入力装置800を介して、保守員や運転士から取得間隔の指定操作を受け付け、操作の内容に従って、取得間隔を調整する。
異常検知モデル生成部200は、情報データベース310に格納されたデータを用いて、車両のブレーキシステムの異常検知モデルを作成する。異常検知モデルは、予測モデルと、1つ又は複数の閾値とを含む。予測モデルは、モデル生成部210が生成し、閾値は閾値設定部220が生成する。生成された異常検知モデルは、モデルデータベース320に保存される。
図7は、モデルデータベース320の例である。モデルデータベース320には、1つまたは複数の異常検知モデルを保存できる。各異常検知モデルは、モデルIDで識別される。予測モデルの列には、該当する予測モデルを表すデータ、または当該予測モデルが格納されたメモリのアドレス(ポインタ)が格納される。予測モデルを表すデータには、例えば減速度モデルが含まれる。閾値の列には、1つまたは複数の閾値が格納される。複数の閾値が格納される場合、各閾値に対応する走行条件も併せて格納される(詳細は後述)。
異常検知モデルの生成は、一例として、異常検知装置100の立ち上げ時や新たにシステムを異常検知対象として追加したときに学習モードで行われる。異常検知対象となるシステムが複数ある場合、システムごとに、異常検知モデルが生成される。
異常検知モデルは、情報データベース310から抽出されるデータサンプル(特徴ベクトル)を用いて作成される。
データサンプル(特徴ベクトル)は、1つ以上の説明変数を含む。説明変数の一例として、テーブル310bのブレーキノッチの値(制御指令値)を用いる。これに加えて、走行情報におけるその他の種類の値(速度など)や車両のスペック(一例として、車両のサイズ、重量など)を、説明変数として用いてもよい。走行情報に含まれる複数の項目を演算して説明変数を生成してもよい。また、予測モデルの目的変数は、ここでは、減速度とする。データサンプルは、ブレーキ情報テーブル310bのエントリ単位で生成してもよいし、時間の粒度を低くして、連続する複数のエントリを1つにまとめて、これらから1つのデータサンプルを生成してもよい。
以下、予測モデルの生成方法について説明する。予測モデルとして回帰モデルを用いる場合を想定する。モデル生成部210は、情報データベース310を用いて、説明変数を要素とする特徴ベクトルX=(x,x,x,・・・,x)を得る。
次にモデル生成部210は、重回帰分析を行い、目的変数である減速度を予測する式(1)を求める。
ここで、yは目的変数、xは説明変数、bは偏回帰係数である。なお、各説明変数の測定単位の差を吸収するために、目的変数とすべての説明変数を平均値0、分散1に正規化することにより、偏回帰係数bとして標準偏回帰係数を用いてよい。説明変数は1つでも、複数でもよい。
重回帰分析によるモデル生成は例であり、他にサポートベクトル回帰(Support Vector Regression)、自己回帰などその他の手法を用いて目的変数の予測モデルを作成してもよい。
予測モデルを作成する際に、交差検証を用いてもよい。例えばデータサンプルを複数個の集合に分割し、そのうち少なくとも1つの集合を検証用にテストデータとし、他の集合をモデルの作成に用いることができる。これにより生成したモデルの性能を確認できる。
本発明の実施形態においては、情報データベースには、異常検知となるブレーキシステムが正常な状態の元で取得された情報が格納されているとする。したがって、生成される予測モデルは、車両のブレーキシステムの正常状態の振る舞いをモデル化したものであるといえる。ただし、一部のブレーキが故障している場合の情報が情報データベースに格納されている場合を許容してもよい。
予測モデルの作成に用いる説明変数の個数を抑制するために、例えば変数選択法や主成分分析(Principle Components Analysis)などを用いて、説明変数の数を調整してもよい。異なる説明変数どうしに相関が存在する場合や、計算時間と処理負荷の削減が求められている場合などに有効である。
変数選択法とは、全説明変数の集合から、予測に有効な説明変数の部分集合を選び出してモデルを生成する手法である。1つまたは少数の説明変数を用いたモデルを始めに生成し、その後説明変数を一つずつ追加したモデルを生成して、有用な説明変数を選び出してもよいし、逆に説明変数が多いモデルを始めに生成し、その後説明変数を1つずつ取り除いたモデルを生成することによって有用な説明変数を特定してもよい。他に、遺伝的アルゴリズムを用いて説明変数の選択を行うこともできる。
主成分分析とは、モデル生成に用いるデータの相関行列または分散共分散行列の固有値問題を解くことによって、新たな説明変数を生成し、次元数を集約する手法である。主成分分析により得られた新たな説明変数を、式(1)の変数xとして用い、回帰分析をすることを主成分回帰という。
変数選択法を用いた例を示す。異常検知の対象が車両のブレーキシステムであり、予測モデルの目的変数をブレーキの減速度とした場合、例えば、最初に減速度と最も相関関係が高いと推測されるブレーキノッチのみを説明変数に用いた予測モデルを作成する。その後、車両の走行速度など他に減速度と相関関係があると考えられる説明変数を予測モデルに順次追加し、予測精度を確認する。所望の予測精度が得られるときの説明変数を採択する。
次に、閾値設定部220により予測モデルに対して設定される閾値について説明する。閾値の使われ方として、予測モデルにより計算される目的変数の予測値(ここでは減速度の予測値)と、減速度の計測値(実測値)との差分が閾値を超えていた場合に異常有りの決定をする。異常有りの決定をすることを、異常を検知するとも呼ぶ。実測値と予測値との差分を乖離とよぶ。実測値が予測値より大きい場合と、実測値が予測値より小さくなる場合の両方がありうるため、乖離の値は正負いずれの符号をとりうる。予測値からの距離の絶対値に着目し、符号が問題にならない場合には、差分の絶対値を乖離と定義してもよい。
図8は、正規分布を用いた閾値の決定方法の例を示している。図8のグラフは、乖離の正規分布400を表しており、横軸は乖離、縦軸は確率密度である。予測モデルの予測値と実測値との乖離を複数取得し、これら複数の乖離が正規分布に従うと仮定して、正規分布400を作成する。複数の乖離を取得するために使用するデータは、予測モデルの生成に用いたデータサンプルでもよいし、テストデータでもよいし、予測モデルの生成に関連していない別の走行情報でもよいし、これらの任意の組み合わせでもよい。乖離のばらつきがより大きい場合には、破線で表された正規分布401、402のように、より裾が広がった分布となる。
正規分布400を利用して、予測モデルに対する閾値を設定する。一例として、標準偏差をσとすると、2σまたは3σなど標準偏差の定数倍の値を、閾値に設定する。2σを閾値に設定する場合、乖離が2σを超えると、異常検知で異常が検知される。このような閾値を設定すると、実測値の約95%が、異常無し(正常である)と判断される。閾値の別の設定例として、所定の確率(例えば上位Xパーセント点または下位Xパーセント点)に対応する乖離の値またはその絶対値を、閾値に設定してもよい。ここで述べた閾値の決定方法は一例であり、その他の方法を用いることを排除するものではない。例えば、正規分布以外の分布を仮定して閾値を決めてもよいし、保守員、運転士などの人が経験に基づき閾値を設定してもよい。
異常検知部110は、モデルデータベース320に格納された異常検知モデル(予測モデルと閾値)を用いて、異常検知の対象とするシステムの異常検知を行う。異常検知に使用する走行情報から特徴ベクトルを生成し、生成した特徴ベクトルと、予測モデルを用いて、減速度を予測する。予測した減速度と、実測の減速度との乖離を、閾値と比較する。閾値以下であれば、正常と判定し、閾値より大きければ異常と判定する。異常検知部110は、異常検知の結果に基づき、検知結果データベース330に情報を格納する。異常検知部110は、異常検知の結果に関する情報を画面生成部130および発報部120に通知する。
図9は検知結果データベースの例を示している。ブレーキノッチと、減速度の実測値と、予測モデル(ID0001)による減速度の予測値と、異常検知有無とが時系列に格納されている。図9の例では、いずれの時点でも、異常が検知されていない。検知結果データベースに、該当する時刻の走行情報(例えば運転手、天気、気温、乗車率、勾配、カント、風速、気圧等の項目)を追加してもよい。
これまでは、予測モデルに対して1つの閾値を設定する例を示したが、本実施形態では、閾値設定部220が、走行条件に応じた複数の閾値を、予測モデルに対して設定することができる。この場合、異常検知部110は、異常検知を行う際に、現在の走行情報が満たす走行条件を特定する。そして、特定した走行条件に対応する閾値を用いて、異常検知を行う。閾値設定部220が複数の閾値を設定するために必要とする走行条件は条件生成部230により生成される。
条件生成部230は、検知結果データベース330と、異常検知に用いた走行情報とを利用して、予測モデルの予測値と実測値との差分を当該差分の値に応じて区分する複数の走行条件(複数の条件)を生成する。以下、条件生成部230の動作について詳細に説明する。
条件生成部230は、検知結果データベース330と走行情報を利用して、乖離に応じたクラスを予測する分類器(例えば決定木)を作成する。
検知結果データベースにおける予測値と実測値との乖離を、複数のクラス(乖離クラス)に分類する。例えば乖離が閾値A以下であれば、乖離が小さい乖離クラスA、閾値Aより大きく閾値B未満であれば、乖離が中程度の乖離クラスB、乖離が閾値B以上であれば、乖離が大きい乖離クラスCとする。閾値Aは、予測モデルに対して最初に設定した閾値でもよいが、これに限定されない。他のクラス分類の例として、次のようにしてもよい。乖離を昇順または降順に並べる。乖離の大きさを昇順で並べたとすると、先頭20%の乖離が最も小さいデータの集合を乖離クラスA、次に乖離が小さい60%のデータ集合を乖離クラスB、残りの20%のデータの集合を乖離クラスCとする。各クラスの割合は任意に決定でき、ここで示した値に限定されない。
条件生成部230は、図9のような検知結果データベース330の各エントリに対して、当該エントリの乖離に応じて、乖離クラスA〜Cのいずれかを選択し、選択した乖離クラスを割り当てる。さらに、各エントリに対応する走行情報を図4のテーブル310aから特定して、各エントリに対応付ける。ただし、検知結果データベース330にすでに走行情報が含まれる場合はこの動作は不要である。これにより、図10に示すように、検知結果データベースの各エントリに、乖離クラスと走行情報とを対応づけたデータセットを生成する。データセットは条件生成部230の内部バッファに格納してもよいし、図示しない記憶装置またはデータベースに格納してもよい。図10のデータセットでは、乖離クラスはすべてAになっている。このデータセットを学習データとして用いて、乖離クラスを目的変数とし、それ以外の項目を説明変数として設定することにより、決定木を生成する。なお、データセットを作成する際、作成元となるデータベース(図9、図4等)に不要な項目がある場合は、使用する必要はない。例えば異常検知有無の項目が不要であれば、図10のデータセットに含めなくてもよい。
ここでは、データセット内に、異常が検知されたデータがない場合を想定しているが、異常が検知されたデータが存在する場合は、当該データをデータセットから除外してもよい。また、異常検知部110が異常を検知した際に、当該検知結果の正誤について保守員に確認させてもよい。例えば、異常が検知された場合に、検知結果の正誤を確認させる確認画面(後述する図16参照)を画面表示装置900に表示する。保守員が、検知結果が誤検知と判断した場合は、その旨の指示を入力する。この指示に基づき、条件生成部230または別の処理部が、検知結果データベース330の検知結果を修正する。データセットにおいて、異常が検知されたデータは、決定木の作成の際に、除外してもよい。
図11は、生成された決定木の例を示している。この決定木は、降水量および乗車率に関する2つの説明変数から、目的変数に対応する乖離クラスを予測する。ノード1001a、1001b、1001cは、目的変数に対応する末端ノードである。一番上のノードは、根ノードと呼ばれる。末端ノードおよび根ノード以外のノードは、中間ノードと呼ばれる。根ノードおよび中間ノードは、説明変数ノードである。末端ノードは、乖離クラスノード(目的変数ノード)である。ノード1001a、1001b、1001cは、それぞれ乖離クラスA、乖離クラスB、乖離クラスCに対応する。この決定木は、「晴天のとき(降水なし)で、乗車率が90%以下」のときは、乖離クラスAに分類し、「晴天のとき(降水なし)で、乗車率が90%より大きい」ときは、乖離クラスBに分類し、「雨天のとき(降水なし)」は、乖離クラスCに分類する。
条件生成部230は、各乖離クラスノード(末端ノード)から根ノードまでのパスに含まれる条件を、各乖離クラスに対応する走行条件として取得する。この結果、乖離クラスAから根ノードまでのパスに対応する条件「晴天のとき(降水なし)で、乗車率が90%以下」と、乖離クラスBから根ノードまでのパスに対応する条件「晴天のとき(降水なし)で、乗車率が90%より大きい」と、乖離クラスCから根ノードまでのパスに対応する条件「雨天のとき(降水なし)」とを、それぞれ走行条件A、B、Cとして取得する。
閾値設定部220は、走行条件A〜Cのそれぞれに対して閾値を設定する。具体的には、予測モデルの生成に用いた走行情報(または予測モデルの生成に用いていない走行情報)を、走行条件A〜Cを満たすグループA〜Cに分類する。グループAに分類された走行情報について、異常検知を行い、検知結果に基づき乖離を計算する。乖離の分布(正規分布等)を求め、この分布を利用して、閾値Aを設定する(図8の説明を参照)。これにより走行条件Aに対する閾値Aが設定される。同様にして、グループBに対しても走行条件Bに対応する閾値Bを設定し、グループCに対しても走行条件Cに対応する閾値Cを設定する。
グループAに対応する乖離の分布は、標準偏差が小さくなるため、閾値Aは小さい値となる。グループCに対応する乖離の分布は、標準偏差が大きくなるため、閾値Cは大きい値となる。グループBに対応する閾値Bは、閾値Aと、閾値Cとの間の値になる。
閾値Aは晴天で乗車率が90%以下のときに使用する閾値、閾値Bは、晴天で乗車率が90%より大きいときに使用する閾値、閾値Cは、降水量が0より大のときに使用するときの閾値である。このような走行条件に応じて、異常検知の際に、閾値を切り換えることで、ブレーキ特性を正確に再現した異常検知を実現できる。ここでは、降水量と乗車率のみが走行条件に用いられたが、気温、湿度など、その他の項目が走行条件として用いられ得る。
決定木の学習に用いるアルゴリズムにはID3、C4.5など複数存在するが、どのアルゴリズムを用いてもよい。ノイズや過学習を防止するために、決定木の枝刈りを行ってもよい。決定木の学習は例であり、その他の分類器を用いてもよい。走行情報の複数の項目のうちどの項目の説明変数が決定木で採用されるかは、アルゴリズムや、使用する学習データに依存する。
ここでは、決定木を利用して走行条件ごとの閾値を設定したが、専門家の知見を加味して、保守員が、各走行条件に対する閾値との設定を行うことも可能である。
条件生成部230および閾値設定部220で生成および設定された走行条件と閾値との各組は、モデルデータベース320の閾値列の該当するセル内に格納される。モデル0001に対して、複数の閾値と、それぞれ対応する走行条件とを格納した例を図12に示す。
このように、予測モデルに複数の閾値が設定された異常検知モデルを用いる場合、異常検知部110は、異常検知を行う際に、複数の走行条件のうち、現在の走行情報を満たす走行条件を特定する。そして、特定した走行条件に対応する閾値と、予測モデルとを用いて、異常検知を行う。以下、この場合の異常検知部110の動作の具体例について説明する。
図13は、異常検知部110の動作例を説明する図である。図13の上段はブレーキノッチを示している。中段はブレーキの減速度を示している。下段は実測値と予測モデルによる予測値との乖離を示している。予測モデルにおいて、ブレーキノッチは説明変数、減速度は目的変数に対応する。
時刻t1において、ブレーキノッチを4ノッチに入れる操作が行われている。ブレーキシステムはこの操作を受け、車両に制動力を加えるため、車両の減速度は上昇し、その後、一定の値付近で安定する。時刻t1とt2の間の区間においては、減速度の予測値と計測値(実測値)には若干のずれが生じているものの、ほぼ同様に推移しており、予測値と実測値との乖離は閾値α未満の範囲となっている。この区間では、車両の走行環境は、走行条件Aを満たしている。閾値αは、走行条件Aに対応するものである。
時刻t2において、車両の走行環境が満たす走行条件がAからBに変わっている。異常検知部110は走行条件の変化を検出し、使用する閾値をβに変更する。
走行環境およびその変化は、計測情報に含まれる計測値や制御指令値、環境情報に含まれる路線データや気象データから、検出できる。他に運転士や指令所による明示的な指令、地上子から受信した無線信号などに基づいて、走行環境およびその変化を検出してもよい。
時刻t2とt3の間においては、減速度の予測値は一定であるが、実測値は時刻t1とt2の間に比べて、大きく変動している。このため、乖離が閾値βを超えるタイミングが3回発生しており、異常検知部110はそれぞれのタイミングにおいて異常を検知する。
時刻t3において、ブレーキノッチを4ノッチから2ノッチに変更する操作が行われている。ブレーキシステムはこの操作を受け、車両に加えられる制動力を減らすため、車両の減速度は減少する。時刻t3とt4の間、乖離は閾値βの範囲内であるため、異常は検知されない。
時刻t4において、車両の走行環境が満たす走行条件がBからAに戻っている。異常検知部110は走行条件の変化を検出したため、時刻t4を境に、使用する閾値をβからαに変更する。時刻t4とt5の間、乖離は閾値αの範囲内であるため、異常は検知されない。
時刻t5において、ブレーキを解除する操作が行われている。ブレーキシステムはこの操作を受け、車両に加えられる制動力を更に減らすため、車両の減速度は一層減少する。時刻t5以降も、乖離は閾値αの範囲内であるため、異常は検知されない。
発報部120は、鉄道の運用者、運転士や保守員が使用する端末700へ、異常検知部110で異常が検知された旨を通知する。この通知は電子メールの送信、端末700の操作画面上へのポップアップメッセージの表示、所定の機器管理プロトコルによる通知などによって行われてもよいし、その他の手段によるものであってもよい。通知には、異常の詳細情報(例えば異常が発生した地図上の箇所(現在値)、異常の発生した車両の識別子など)を含めてもよい。運用者や保守員はこの通知を受けとることにより、異常が検知された旨およびその詳細を知ることができる。
画面生成部130は、異常検知の有無、異常検知があった場合には検知された車両の現在位置、異常検知に用いられた異常検知モデルと閾値、センサのデータ、予測モデルによる予測値などを画面表示装置900に表示する。画面生成部130は、異常検知装置100が備えるものであってもよいし、異常検知装置100が接続されている車両情報システム、もしくは地上システムの情報ネットワークに配置されている端末や管理サーバなどが備えるものでもよい。
図14は、画面生成部130で表示されるメイン画面901の例を示している。このメイン画面901は、複数の編成の情報を表示している。ここでは、画面表示装置900が複数編成を管理監視する指令室にある場合を想定している。
メイン画面901の上部には、車両に関する情報が表形式で表示されている。表示項目の例としては、編成、異常検知の有無、列番(編成の識別子)、乗車率、現在位置などが挙げられるが、その他の情報を表示してもよい。表の中の「異常」列には、異常検知の有無を表示している。感嘆符“!”が異常検知有りを表している。編成Bで異常が検知されたことがわかる。この異常検知の有無に係る表示は一例に過ぎず、その他の表現であってもよい。
メイン画面901の下部には、地図が表示されており、それぞれの編成の現在位置が示されている。異常が検知された編成Bに対して、吹き出しで、異常検知がされた旨と、使用されたモデル名とが表示されている。
図14のメイン画面901上で該当する編成をクリックすることにより、異常詳細画面に遷移することができる。画面遷移の方式はこれに限定されず、所定のキーボード操作などその他の方式により行ってもよい。
図15は、編成Bをクリックしたことにより遷移した異常詳細画面902の例を示している。
図15は、画面右には、図8と同様のグラフが表示されている。すなわち、ブレーキノッチのグラフと、減速度の予測値のグラフと、減速度の実測値のグラフと、乖離のグラフとが表示されている。それぞれ、異常検知時刻を含む一定期間について表示されている。異常が検知された時刻が視覚的に確認できるように、閾値越えを示す縦長の棒状の絵が表示されている。
図15の画面左側にはチェックボックスが設けられており、グラフ表示する項目を選択できるようになっている。これとは別に、グラフ表示する時間範囲を指定する手段を設けてもよい。以上のようなインターフェースを提供することにより、鉄道の運用者などは異常の詳細を把握し、迅速な対応をとることができる。
異常検知部110が異常を検知した場合、確認画面を係員に提示して、当該検知結果の正誤について保守員に確認させてもよい。図16に確認画面903の例を示す。保守員が、検知結果が誤検知と判断した場合は、その修正の指示を入力する。条件生成部230が、当該指示に基づいて、検知結果データベースにおける検知結果を修正する。
図17に、本実施形態に係る異常検知装置のハードウェア構成を示す。本実施形態に係る異常検知装置は、コンピュータ装置100により構成される。コンピュータ装置100は、CPU151と、入力インターフェース152と、表示装置153と、通信装置154と、主記憶装置155と、外部記憶装置156とを備え、これらはバス157により相互に接続されている。
CPU(中央演算装置)151は、主記憶装置155上で、コンピュータプログラムである異常検知プログラムを実行する。異常検知プログラムは、異常検知装置の上述の各機能構成を実現するプログラムのことである。CPU151が、異常検知プログラムを実行することにより、各機能構成は実現される。
入力インターフェース152は、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどの入力装置からの操作信号を、異常検知装置に入力するための回路である。
表示装置153は、異常検知装置から出力されるデータまたは情報を表示する。表示装置153は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、CRT(ブラウン管)、及びPDP(プラズマディスプレイ)であるが、これに限られない。コンピュータ装置100から出力されたデータまたは情報は、この表示装置153により表示することができる。
通信装置154は、異常検知装置が外部装置と無線または有線で通信するための回路である。計測情報は、通信装置154を介して外部装置から入力することができる。外部装置から入力した計測情報を、情報データベース310に格納することができる。
主記憶装置155は、異常検知プログラム、異常検知プログラムの実行に必要なデータ、及び異常検知プログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。異常検知プログラムは、主記憶装置155上で展開され、実行される。主記憶装置155は、例えば、RAM、DRAM、SRAMであるが、これに限られない。情報データベース310、モデルデータベース320、検知結果データベース330は、主記憶装置155上に構築されてもよい。
外部記憶装置156は、異常検知プログラム、異常検知プログラムの実行に必要なデータ、及び異常検知プログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。これらのプログラムやデータは、異常検知プログラムの実行の際に、主記憶装置155に読み出される。外部記憶装置156は、例えば、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、及び磁気テープであるが、これに限られない。情報データベース310、モデルデータベース320、検知結果データベース330は、外部記憶装置156上に構築されてもよい。
なお、異常検知プログラムは、コンピュータ装置100に予めインストールされていてもよいし、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶されていてもよい。また、異常検知プログラムは、インターネット上にアップロードされていてもよい。
なお、コンピュータ100は、プロセッサ151、入力インターフェース152、表示装置153、通信装置154、及び主記憶装置155を、それぞれ1つ又は複数備えてもよいし、プリンタやスキャナなどの周辺機器を接続されていてもよい。
また、異常検知装置は、単一のコンピュータ100により構成されてもよいし、相互に接続された複数のコンピュータ100からなるシステムとして構成されてもよい。
図18は、本発明の実施形態に係る運用モードで行う異常検知処理のフローチャートである。図18のフローチャートに係る処理は、異常検知対象のシステムのある動作を契機に実行されてもよいし、一定周期で実行されてもよいし、保守員等のユーザから指示を受けたタイミングで実行されてもよいし、その他のタイミングで実行されてもよい。
ステップS101では、異常検知部110が、情報データベース310から異常検知の対象となる走行情報を取得する。
ステップS102では、異常検知部110が、モデルデータベース320から、異常検知対象となるシステム(ここでは車両のブレーキシステム)に対応する予測モデルを選択する。また、複数の走行条件のうち、取得した走行情報が満たす走行条件に対応する閾値を選択する。一例として、予測モデルは、車両に対する制御指令値(ブレーキノッチ等)を表す説明変数から、車両の状態(減速度等)を表す目的変数を予測するモデルである。すなわち、予測モデルは、車両に対する制御指令値を表す説明変数を、車両の状態を表す目的変数に対応づけたモデルである。
ステップS103では、異常検知部110が、取得した走行情報から特徴ベクトルを生成する。例えば制御指令値を含む特徴ベクトルを生成する。特徴ベクトルの要素数は1でも複数でもよい。異常検知部110は、特徴ベクトルと、予測モデルとから目的変数(ここでは減速度)を予測する。すなわち、異常検知部10は、制御指令値と予測モデルとに基づく車両の状態の予測値を計算する。
ステップS104では、異常検知部110は、予測した減速度と、走行情報に含まれる減速度との差である乖離を計算し、計算した乖離を、閾値と比較する。
乖離が閾値より大きければ(YES)、異常検知部110が異常を検知し、異常検知を通知する情報を画面表示装置900等に出力する(S105)。
乖離が閾値以下であれば(NO)、異常検知部110は異常を検知しない(S106)。すなわち、異常検知部110は、車両のブレーキシステムは正常であることを決定する。異常を検知しない場合に、車両のブレーキシステムが正常の旨を通知する情報を、画面表示装置900等に出力してもよい。
図19は、異常検知装置の学習モードに係る閾値設定処理のフローチャートである。本処理は、一定周期で実行されてもよいし、保守員が指示したタイミングで行ってもよいし、その他のタイミングで実行してもよい。予測モデルに対して、走行条件に応じた複数の閾値を設定する場合の動作例を示す。前提として異常検知部110で、事前に生成した予測モデルと1つの閾値とに基づき異常検知が行われており、検知結果データベース330には異常検知に関するデータが格納されているとする。
ステップS201で、条件生成部230が、検知結果データベース330に基づき、予測値と実測値との乖離に対して、乖離の値に応じて、乖離クラスを割り当てる。条件生成部230が、乖離クラスと、走行情報とを対応づけたデータセットを生成する(図10参照)。
ステップS202で、条件生成部230は、データセットの各項目を説明変数、乖離クラスを目的変数とし、機械学習等を行うことで、複数の説明変数のうちの少なくとも1つの説明変数から目的変数を予測する分類器を生成する。すなわち、少なくとも1つの説明変数に関する複数の条件と、複数の乖離クラスとを対応づけた分類器を生成する。ここでは、分類器として、決定木(図11参照)を生成する。
ステップS203で、条件生成部230は、分類器に含まれる複数の条件を、複数の走行条件として取得する。決定木の場合、各乖離クラスノード(末端ノード)から根ノードまでのパスに含まれる条件を、各乖離クラスに対応する走行条件として取得する。
ステップS204で、閾値設定部220は、複数の走行条件に対し複数の閾値を設定する。一例として、閾値設定部は、走行情報各走行条件を満たす乖離クラスに分類される乖離の分布に基づき、閾値を決定する。例えば、決定木の生成に用いた走行情報(または決定木の生成に用いていない走行情報)を、各走行情報を満たすグループに分類する。各グループについて、異常検知を行い、検知結果に基づき乖離を計算する。そして、乖離の確率分布(図8参照)を生成する。確率分布において所定の確率(上位Xパーセント点など)に対応する乖離の値、または標準偏差σの2倍または3倍に基づく値を、閾値として決定する。
ステップS205で、閾値設定部220は、複数の閾値と複数の走行条件との複数の組を、該当する予測モデルに対応づけて、モデルデータベース320に格納する。
本実施形態では、予測モデルの目的変数がブレーキの減速度である場合を例に説明したが、代わりに車両の別の状態、例えば、ブレーキの制動距離を予測する予測モデルを用いてもよい。制動距離の計測は、例えば、ブレーキを開始してから停止するまで、または所望の減速度または速度に達するまでの距離を計算することで行ってもよい。また、ブレーキの減速度と制動距離の両方を予測する予測モデルを用いてもよい。この場合、一例として、減速度と制動距離のそれぞれについて式(1)を用意する。この結果、予測モデルの目的変数の数は2つとなるが、このように、予測モデルの目的変数は1つではなく、複数であってもよい。この場合、すべての目的変数について、乖離が閾値を超えた場合に異常を検知してもよいし、いずれかの目的変数について、乖離が閾値を超えたら異常を検知してもよい。
本実施形態によれば、走行条件に応じた閾値を設定することにより、幅広いバリエーションに係る条件に適合した多数の異常検知モデルを生成できる。例えば、朝、昼、夜など複数の時間帯、都市部、郊外、中山間地など複数地域の路線、春、夏、秋、冬の全季節、雨、雪、晴れなど複数の天候の場合において行うことにより、細かい条件に適合した閾値を設定できる。
上述した第1の実施形態では、同じ予測モデルに対して、走行条件に応じて複数の閾値を設定したが、第2の実施形態として、走行条件に応じて複数の異常検知モデル(予測モデルと閾値との複数の組)を生成してもよい。この場合、異常検知を行う際は、現在の走行情報を満たす走行条件を特定し、特定した走行条件に対応する異常検知モデル(予測モデルと閾値)を使用する。
モデル生成部210は、複数の走行条件ごとに予測モデルを生成する。閾値設定部220は、各予測モデルに対応する閾値(すなわち各走行条件に対応する閾値)を設定する。
具体的には、第1の実施形態と同様にして、モデル生成部210が複数の走行条件を生成する。モデル生成部210は、走行情報から各走行条件を満たすデータを抽出し、抽出したデータを用いて予測モデルを生成する。予測モデルの生成方法は、上述した実施形態と同様である。また、閾値設定部220は、各予測モデルに対応する閾値(すなわち各走行条件に対応する閾値)を、上述した実施形態と同様にして設定する。生成された予測モデルと、設定された閾値と、これらに対応する走行条件とを、モデルデータベース320に格納する。第2の実施形態に係るモデルデータベース320の例を図20に示す。図7のモデル0001に代わって、モデル0001_A、0001_B、0001_Cが生成されている。すなわち、1つの異常検知モデルに代わって、3つの異常検知モデルが新たに生成されている。このように1つのモデルに代わる複数のモデルを生成することをモデル分割と呼ぶ。また、各モデルに対応する走行条件を格納する走行条件の列が追加されている。
前述した図11の決定木が生成された場合は、モデル0001_Aは、「晴天のとき(降水なし)で、乗車率が90%以下」の走行条件が満たされるときに使用される。モデル0001_Bは、「晴天のとき(降水なし)で、乗車率が90%より大きい」の走行条件が満たされるときに使用される。モデル0001_Cは、「雨天のとき(降水なし)」の走行条件が満たされるときに使用される。
本実施形態で生成した異常検知モデルに対してさらにモデル分割を再帰的に繰り返すことにより、幅広いバリエーションに係る条件に適合した多数の異常検知モデルを生成できる。例えば、朝、昼、夜など複数の時間帯、都市部、郊外、中山間地など複数地域の路線、春、夏、秋、冬の全季節、雨、雪、晴れなど複数の天候の場合において行うことにより、細かい条件に適合した異常検知モデルを生成できる。
本実施形態を第1の実施形態と組み合わせることもできる。すなわち、モデル分割で生成した複数の異常検知モデルのそれぞれに対して、走行条件に応じた複数の閾値を設定することができる。これによりさらにきめ細かい条件に対応した異常検知モデルを生成できる。
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
10 ブレーキレバー
20 レール
30 車輪
41 制輪子
42 踏面ブレーキ
43 エアシリンダ
50 応荷重装置
51 空気ばね
60a 60b 主電動機
70 抵抗器
80 パンタグラフ
90 架線
100 異常検知装置/コンピュータ装置
101 車両情報収集部
102 環境情報収集部
103 データ加工部
110 異常検知部
111 モデル選択部
120 発報部
130 画面生成部
151 CPU
152 入力インターフェース
153 表示装置
154 通信装置
155 主記憶装置
156 外部記憶装置
157 バス
200 異常検知モデル生成部
210 モデル生成部
220 閾値設定部
230 条件生成部
310 情報データベース
310a 310b 310c テーブル
320 モデルデータベース
330 検知結果データベース
400 401 402 正規分布
500 車両システム
600 環境情報システム
700 端末
800 入力装置
900 画面表示装置
901 メイン画面
902 異常詳細画面
903 確認画面

Claims (12)

  1. 制御指令値と予測モデルとに基づく車両の状態の予測値と、前記車両の状態の計測値との差分を区分する複数の条件を、前記車両の走行情報に基づいて、生成する条件生成部と、
    前記複数の条件に対し複数の閾値を設定する閾値設定部と、
    前記予測モデルと、前記複数の閾値と、前記複数の条件とに基づき、前記車両の異常検知を行う異常検知部と
    を備えた異常検知装置。
  2. 前記条件生成部は、前記車両の走行情報に基づく複数の説明変数と、前記差分に応じたクラスとを含むデータのセットを用いて、少なくとも1つの前記説明変数に関する複数の条件を、複数の前記クラスへ対応づける分類器を生成し、
    前記分類器に係る前記複数の条件を、前記差分を区分する前記複数の条件とする
    請求項1に記載の異常検知装置。
  3. 前記閾値設定部は、前記分類器により前記クラスに分類される差分の分布に基づき、前記閾値を決定する
    請求項2に記載の異常検知装置。
  4. 前記閾値設定部は、前記差分の確率分布を生成し、前記確率分布の標準偏差に基づく値、または前記確率分布において所定の確率に対応する前記差分の値を、前記閾値とする
    請求項3に記載の異常検知装置。
  5. 前記閾値設定部は、ユーザインタフェースを介して前記複数の閾値の設定指示を受け付け、前記設定指示に基づき、前記複数の閾値を設定する
    請求項1ないし4のいずれか一項に記載の異常検知装置。
  6. 前記異常検知部は、第1の時点に対応する制御指令値と、前記予測モデルとに基づき、前記車両の状態の予測値を算出し、前記複数の条件のうち前記第1の時点に対応する走行情報が満たす前記条件を特定し、前記予測値と、前記車両の状態の計測値との差分を、特定した条件に対応する前記閾値と比較することにより、前記車両の異常の有無を検知する
    請求項1ないし5のいずれか一項に記載の異常検知装置。
  7. 前記複数の条件に対して、前記車両に対する制御指令値を、前記車両の状態に対応づけた複数の予測モデルを生成するモデル生成部を備え、
    前記異常検知部は、前記複数の予測モデルと、前記複数の閾値と、前記複数の条件とに基づき、前記車両の異常検知を行う
    請求項1ないし6のいずれか一項に記載の異常検知装置。
  8. 前記異常検知部は、前記複数の条件のうち第1の時点に対応する走行情報が満たす前記条件を特定し、特定した条件に対応する前記予測モデルと、前記第1の時点に対応する制御指令値とに基づき、前記車両の状態の予測値を算出し、前記予測値と前記車両の状態の計測値との差分を、前記特定した条件に対応する前記閾値と比較することにより、前記車両の異常の有無を検知する
    請求項7に記載の異常検知装置。
  9. 前記制御指令値は、前記車両のブレーキの大きさに関する指令値であり、
    前記状態は、前記車両の減速度、または空気ブレーキ圧を含む
    請求項1ないし8のいずれか一項に記載の異常検知装置。
  10. 前記走行情報は、前記車両の少なくとも1つのセンサの計測情報および前記車両の環境情報の少なくとも一方を含む
    請求項1ないし9のいずれか一項に記載の異常検知装置。
  11. 制御指令値と予測モデルとに基づく車両の状態の予測値と、前記車両の状態の計測値との差分を区分する複数の条件を、前記車両の走行情報に基づいて、生成し、
    前記複数の条件に対し複数の閾値を設定し、
    前記予測モデルと、前記複数の閾値と、前記複数の条件とに基づき、前記車両の異常検知を行う
    異常検知方法。
  12. 制御指令値と予測モデルとに基づく車両の状態の予測値と、前記車両の状態の計測値との差分を区分する複数の条件を、前記車両の走行情報に基づいて、生成し、
    前記複数の条件に対し複数の閾値を設定するステップと、
    前記予測モデルと、前記複数の閾値と、前記複数の条件とに基づき、前記車両の異常検知を行うステップと、
    をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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