JP2019018007A - 腫瘍判別方法、腫瘍用診断薬、及び腫瘍診断用増感剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 確実に腫瘍細胞と正常細胞とを判別することができる腫瘍細胞の判別方法の提供。【解決手段】 5−アミノレブリン酸(ALA)のような蛍光色素と、酸化チタン粒子のような光散乱粒子とを別々に生体内に投与して光をあてると、蛍光色素単独で得られる発光に比較し、より確実に腫瘍細胞を正常細胞との区別できる強度の発光が得られる。さらに、その発光時間は、蛍光色素と光散乱粒子とを別々に生体内に投与することにより延長される。【選択図】 なし
Description
本発明は、腫瘍細胞と正常細胞とを判別する方法、そのために用いられる診断薬および増感剤に関する。
腫瘍の治療において、腫瘍領域を全てまたは部分的に切り取る治療が外科療法(手術療法)である。腫瘍領域を全て適切に取り切ることが当該治療の望まれる目的となるが、そのためには腫瘍の実質を構成する腫瘍細胞を明確に正常細胞と区別し、判別することが必要となりかつ重要となる。切除の範囲が適切でないと、腫瘍領域が残った場合には再発転移に繋がる恐れがあり、他方、腫瘍が波及していない部分まで過剰に切り取ると生体機能が損なわる可能性が高まり、術後障害などQOLの低下につながる恐れがあるからである。
近年、患者の負担が少ないことから内視鏡による腫瘍の外科治療が行われており、生体内において、腫瘍細胞と正常細胞、または腫瘍領域と正常領域を区別し、判別することも求められるに至っている。
腫瘍領域または腫瘍細胞と正常領域または正常細胞とを判別する手法として、特に内視鏡下の生体内において判別するために腫瘍細胞をイメージング、すなわち画像化・可視化する技術が提案されている。例えば、WO91/01727号公報(特許文献1)は、5−アミノレブリン酸(ALA)を用いた腫瘍細胞の検出および治療方法を開示する。ここで、ALAは、それ自体光感受性を有さないが、腫瘍細胞内でヘム生合成経路の一連の酵素群によりプロトポルフィリンIX(PpIX)に代謝活性化され、これが細胞外に排出され光励起により発光する。ALAのこのような性質を利用して腫瘍細胞を画像化・可視化する。さらにPpIXの光励起により発生する一重項酸素が細胞を変性・壊死させることから、腫瘍の治療にも用いることが出来るとされている。
このような腫瘍細胞において特異的に構造変換され、光励起により蛍光の発光が可能となる物質がその後提案されている(Nature Communications,6:6463(2015)(非特許文献1))。
ALAのような蛍光色素を用い、より効率よく腫瘍細胞を画像化・可視化する提案、さらに治療効率を上げる提案がいくつかなされている。例えば、特開2011−1307号公報(特許文献2)は、ALAと、複数の波長の光を組み合わせて、PpIXの蓄積部を判別し、病変部組織を壊死させる方法を提案している。
また、特開2009−91345号公報(特許文献3)は、その表面に生体親和性高分子を結合した酸化チタンナノ粒子であって、さらにALAを結合した粒子を開示している。この粒子は、癌患者の体内に投与されると癌組織に効率的に到達して蓄積され、患部に超音波や光を照射することにより癌の診断および治療を可能にする。しかしながら、この特許文献が開示する酸化チタン粒子とALAは、結合して一体化して用いられることを前提としており、それを分離して用いることの開示または示唆はない。
また、WO2012/153493号公報(特許文献4)は、ALAと、ランタニド粒子等の赤外域光にてアップコンバージョンを起こす粒子を組み合わせた、光線力学的治療剤および光線力学的診断剤を開示する。この文献が開示する手法は、深部癌をその対象としている。
Nature Communications,6:6463(2015)
本発明者らは、今般、蛍光色素と光散乱粒子とを別々に生体内に投与することで、蛍光色素単独で得られる蛍光に比較し、より確実に腫瘍細胞を正常細胞と区別できる強度の蛍光が得られるとの知見を得た。さらに、その蛍光の発光時間は、蛍光色素と光散乱粒子とを別々に生体内に投与することで延長されるとの知見を得た。本発明は、これら知見に基づくものである。
従って、本発明は、腫瘍細胞と正常細胞とを、または腫瘍領域と正常領域とを判別する方法、そのために用いられる診断薬および増感剤の提供をその目的としている。さらに、本発明は腫瘍細胞の判別システムの提供をその目的としている。
そして、本発明による腫瘍細胞の判別方法は、腫瘍細胞と正常細胞とを判別する方法であって、
(a) 腫瘍選択性を有する蛍光色素を前記腫瘍細胞内に取込ませる工程と、
(b) 光散乱粒子を前記腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または前記腫瘍細胞内に取込ませる工程と 、
(c) 前記蛍光色素が前記腫瘍細胞において蛍光を発するタイミングで前記蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を前記腫瘍細胞に照射する工程と
を少なくとも含んでなる。
(a) 腫瘍選択性を有する蛍光色素を前記腫瘍細胞内に取込ませる工程と、
(b) 光散乱粒子を前記腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または前記腫瘍細胞内に取込ませる工程と 、
(c) 前記蛍光色素が前記腫瘍細胞において蛍光を発するタイミングで前記蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を前記腫瘍細胞に照射する工程と
を少なくとも含んでなる。
さらに、上記判別方法がin vivoで行われる場合、本発明による判別方法は、
前記工程(a)が、腫瘍選択性を有する蛍光色素を生体内に投与し、当該蛍光色素を前記腫瘍細胞内に取込ませる工程であり、かつ
前記工程(b)が、光散乱粒子を生体内に投与し、前記腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または前記腫瘍細胞内に取込ませる工程とされる。
前記工程(a)が、腫瘍選択性を有する蛍光色素を生体内に投与し、当該蛍光色素を前記腫瘍細胞内に取込ませる工程であり、かつ
前記工程(b)が、光散乱粒子を生体内に投与し、前記腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または前記腫瘍細胞内に取込ませる工程とされる。
また、本発明による診断薬は、上記本発明による判別方法に用いるための診断薬であって、腫瘍選択性を有する蛍光色素と、光散乱粒子とを含んでなり、前記蛍光色素と光散乱粒子とが結合されていないものである。
また、本発明による増感剤は、上記本発明による判別方法に用いるための増感剤であって、光散乱粒子を含んでなるものである。
さらに本発明による腫瘍細胞の判別システムは、
(1)腫瘍選択性を有する蛍光色素と、光散乱粒子とを含んでなり、前記蛍光色素と光散乱粒子とが結合されていない診断薬、
(2)腫瘍細胞内に取り込まれた前記蛍光色素と、腫瘍細胞表面に吸着された、および/または腫瘍細胞内に取込まれた前記光散乱粒子と、に対して、前記蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を照射可能な光源、および
(3)上記光源により照射された結果、腫瘍細胞において発生した蛍光を観察または検出する光学機器
を備えてなるものである。
(1)腫瘍選択性を有する蛍光色素と、光散乱粒子とを含んでなり、前記蛍光色素と光散乱粒子とが結合されていない診断薬、
(2)腫瘍細胞内に取り込まれた前記蛍光色素と、腫瘍細胞表面に吸着された、および/または腫瘍細胞内に取込まれた前記光散乱粒子と、に対して、前記蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を照射可能な光源、および
(3)上記光源により照射された結果、腫瘍細胞において発生した蛍光を観察または検出する光学機器
を備えてなるものである。
本発明によれば腫瘍細胞における蛍光色素の発光の増強、およびその時間延長が可能であり、その結果腫瘍識別性の向上を図ることが出来る。
判別
本発明が提供する方法は、腫瘍細胞と正常細胞とを判別する方法であり、その一つの態様によれば、ヒトを含む動物の体内において、各種腫瘍の実質を構成する腫瘍細胞を正常細胞から可視光下で判別することを可能にする。ここで、「腫瘍細胞と正常細胞とを判別する」とは、何らかの手段によって、腫瘍細胞を正常細胞と区別し、特定の細胞を腫瘍細胞として判定することを意味する。具体的には、腫瘍細胞において詳細を後記する蛍光色素が発光し、正常細胞において当該色素は発光しない。これにより、発光した領域の細胞を腫瘍細胞として判定し、正常細胞と区別することができる。本発明によれば、蛍光色素は、当該色素単独で投与されたときと比較して、増強され、より明るく発光する。従って、例えば大きく切開せずに行う内視鏡による手術において、内視鏡が有する可視光光源下で、同一視野および/または同一領域にある腫瘍細胞を正常細胞から判別することを可能にする。そして、好ましくは、可視光の内視鏡下で腫瘍領域を切除する外科療法を行うことが出来る。
本発明が提供する方法は、腫瘍細胞と正常細胞とを判別する方法であり、その一つの態様によれば、ヒトを含む動物の体内において、各種腫瘍の実質を構成する腫瘍細胞を正常細胞から可視光下で判別することを可能にする。ここで、「腫瘍細胞と正常細胞とを判別する」とは、何らかの手段によって、腫瘍細胞を正常細胞と区別し、特定の細胞を腫瘍細胞として判定することを意味する。具体的には、腫瘍細胞において詳細を後記する蛍光色素が発光し、正常細胞において当該色素は発光しない。これにより、発光した領域の細胞を腫瘍細胞として判定し、正常細胞と区別することができる。本発明によれば、蛍光色素は、当該色素単独で投与されたときと比較して、増強され、より明るく発光する。従って、例えば大きく切開せずに行う内視鏡による手術において、内視鏡が有する可視光光源下で、同一視野および/または同一領域にある腫瘍細胞を正常細胞から判別することを可能にする。そして、好ましくは、可視光の内視鏡下で腫瘍領域を切除する外科療法を行うことが出来る。
本発明の腫瘍細胞における蛍光の増強は、蛍光色素と光散乱粒子との個別投与による併用により得られる。酸化チタンに蛍光色素が結合した特開2009−91345号公報(特許文献3)の態様と比較し、本発明により得られる蛍光は腫瘍細胞で選択的に強く、かつ発光時間が長い。強い発光は、微小な腫瘍をも正常細胞から判別でき、また腫瘍領域と正常領域との境界を明確に示す。例えば、本発明の好ましい態様によれば、1mm以下の微小な腫瘍を可視化して確実な切除を可能にする。また、上皮内癌のような平坦な癌を可視化して確実な切除を可能にする。さらに、発光時間が長いことが外科的手術に有利なことは明らかである。
本発明おいて、蛍光色素と光散乱粒子は、特開2009−91345号公報(特許文献3)に記載のような両者が結合された形態をとらない。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、蛍光色素と光散乱粒子との間に一定以上の物理的距離があることで、光源、例えば内視鏡等から照射された照射光と、照射光より光散乱粒子によって生じる散乱光が蛍光色素に効果的に届いて蛍光強度を上げ、次に該蛍光より光散乱粒子の側方または後方へ効果的に散乱することで、照射光が入射してきた方向に該発光が増強され、結果として非常に明るい蛍光観察ができるものと考えられる。本発明は、また、個別投与は、特許文献3と比較して、蛍光色素と光散乱粒子の複合化を必要とせず、また蛍光色素と光散乱粒子の組み合わせの自由度が高まり、汎用性の高い技術となる点でも有利である。
腫瘍細胞
本発明による方法によって判別される腫瘍細胞は、蛍光色素が選択性を有する種類である限り限定されないが、本発明の一つの態様によれば、上皮性腫瘍細胞、非浸潤性の腫瘍細胞、または上皮内癌の実質を構成する腫瘍細胞に好ましく適用される。上皮性腫瘍は、腫瘍の中でも上皮にできる腫瘍であり、癌ステージ初期において表層領域に形成される非浸潤性の腫瘍や上皮内癌を含む。このような腫瘍で、1mm以下の微小な腫瘍は、正常領域とは区別し難く、見分けにくい腫瘍であり、本発明はこのような腫瘍に有利に適用できる。加えて、上皮内癌は平坦で正常な領域とは区別し難く、見分けにくい癌であり、本発明はこのような癌においても癌の領域を正常領域と区別する場合に有利に適用できる。
本発明による方法によって判別される腫瘍細胞は、蛍光色素が選択性を有する種類である限り限定されないが、本発明の一つの態様によれば、上皮性腫瘍細胞、非浸潤性の腫瘍細胞、または上皮内癌の実質を構成する腫瘍細胞に好ましく適用される。上皮性腫瘍は、腫瘍の中でも上皮にできる腫瘍であり、癌ステージ初期において表層領域に形成される非浸潤性の腫瘍や上皮内癌を含む。このような腫瘍で、1mm以下の微小な腫瘍は、正常領域とは区別し難く、見分けにくい腫瘍であり、本発明はこのような腫瘍に有利に適用できる。加えて、上皮内癌は平坦で正常な領域とは区別し難く、見分けにくい癌であり、本発明はこのような癌においても癌の領域を正常領域と区別する場合に有利に適用できる。
本発明の一つの態様によれば、本発明による判別方法が適用される癌としては、膀胱癌、尿路上皮癌、大腸癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、胆道癌、気管支癌、肺癌および脳腫瘍が挙げられる。これら癌は、内視鏡下における手術の対象とされるものであり、これら癌に本発明は有利に適用できる。
蛍光色素
本発明において用いられる「腫瘍選択性を有する蛍光色素」は、まず「腫瘍選択性」を有する。この性質は、腫瘍細胞に結合する性質または集中する特性を意味する。これに加え「腫瘍選択性」の用語は、この色素自体は、腫瘍細胞に結合または集中する性質を有さないが、例えば元の構造は蛍光する性質を有さず、腫瘍細胞における代謝の結果、蛍光構造を獲得する性質を有するものも、つまり腫瘍において選択的に蛍光を発光するような性質も含む意味に用いる。
本発明において用いられる「腫瘍選択性を有する蛍光色素」は、まず「腫瘍選択性」を有する。この性質は、腫瘍細胞に結合する性質または集中する特性を意味する。これに加え「腫瘍選択性」の用語は、この色素自体は、腫瘍細胞に結合または集中する性質を有さないが、例えば元の構造は蛍光する性質を有さず、腫瘍細胞における代謝の結果、蛍光構造を獲得する性質を有するものも、つまり腫瘍において選択的に蛍光を発光するような性質も含む意味に用いる。
また本発明において「蛍光色素」も、それ自体、蛍光を発光する性質を有するものは無論、それに加えて上記のように何らかの代謝を受けて蛍光構造を有する至るものも含む意味に用いる。
蛍光色素に発光を与える光は、蛍光を生じる波長を有するものであれば限定されないが、好ましい態様によれば、可視光が、特別な画像化・可視化の手段を用いず腫瘍細胞を判別できることが好ましい。蛍光色素としてALAを用いる場合は、細胞内で代謝されることで蛍光性のPpIXに変換され、特に腫瘍細胞において蓄積する。このPpIXを励起するために照射する光の波長としては、380nm〜420nm、好ましくは400nm〜410nm、特に好ましくは403nm〜407nm、最も好ましくは405nmが挙げられる。また、蛍光色素に発光を生じさせる光は、蛍光を生じる波長を有するものであれば限定されないが、光散乱粒子によって蛍光色素からの蛍光をより効率的に増強できる波長が好ましい。
照射する光源としては、公知のものを使用することができ、例えば紫色LED、好ましくはフラッシュライト型紫色LEDや、半導体レーザー等のレーザー光を挙げることができるが、装置がコンパクトになり、コスト面や可搬性において有利である紫色LED、中でもフラッシュライト型紫色LEDや、紫色半導体ダイオードがより好ましい。
蛍光色素としてALAを用いる場合に、特に腫瘍細胞において蓄積するPpIXを検出するために、赤色の蛍光、具体的には610nm〜650nm、好ましくは625nm〜638nmの波長の蛍光を検出することで、腫瘍細胞の判別ができる。
本発明の好ましい態様によれば、「腫瘍選択性を有する蛍光色素」の具体例として、5−アミノレブリン酸類、ポルフィリン類、ヒペリシン類、および酵素切断色素からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましい態様によれば、腫瘍選択性を有する蛍光色素は5−アミノレブリン酸類である。
本発明において、用語「5−アミノレブリン酸類(ALA類)」は、5−アミノレブリン酸(ALA)若しくはその誘導体、またはこれらの塩を含む意味に用いるものとする。ここで、既述のとおりALAは公知の化合物であり、それ自身は可視光の吸収も弱く光照射で蛍光も活性酸素も発生しない。しかしながら、体内に投与されると光増感物質であるプロトポルフィリンに代謝され、蛍光物質となる。ALA類を投与した場合のプロトポルフィリンの蓄積は、がん、異形成、細菌・真菌感染領域、ウイルス感染細胞などの病変部に特異的であり、また、ALA類は安全性も高い化合物であるため、本発明において好ましく用いられる。
本発明においてALAの誘導体は、下記一般式で表すことが出来る;
R1R2NCH2COCH2CH2COR3
(式中、
R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を表し、
R3は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を表す)。
R1R2NCH2COCH2CH2COR3
(式中、
R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を表し、
R3は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を表す)。
従って、ALA誘導体の具体例としては、ALAメチルエステル、ALAエチルエステル、ALAプロピルエステル、ALAブチルエステル、ALAペンチルエステル、ALAヘキシルエステル等を挙げることができる。また、ALA誘導体として、エステル基とアシル基を有するALA誘導体を例示することができる。エステル基とアシル基を有するALA誘導体としては、メチルエステル基とホルミル基、メチルエステル基とアセチル基、メチルエステル基とn−プロパノイル基、メチルエステル基とn−ブタノイル基、エチルエステル基とホルミル基、エチルエステル基とアセチル基、エチルエステル基とn−プロパノイル基、エチルエステル基とn−ブタノイル基の組み合わせもまた好ましい例として挙げられる。
本発明においてALAおよびその誘導体は塩の形態であってもよく、薬学的に許容される無機酸または有機酸の酸付加塩が好ましい。無機酸の付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩を挙げることができ、有機酸の付加塩としては、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等を挙げることができる。さらに、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等も挙げることができる。
本発明の好ましい態様によれば、好ましいALA類として、はALA、ALAメチルエステル、ALAエチルエステル、ALAプロピルエステル、ALAブチルエステル、ALAペンチルエステル、及びこれらの塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩が挙げられる。
また、本発明において、ALA類は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、ALA類は、化学合成、微生物による生産、酵素による生産のいずれの方法によっても製造することができる。
光散乱粒子
本発明において用いられる「光散乱粒子」とは、上記した蛍光色素の蛍光を、可視光下において増強するものを意味する。蛍光の増強に関わる光の物理的な現象としては、光の散乱、反射、干渉、屈折、および回折などが挙げられる。この中で光の散乱としては、レイリー散乱やミー散乱等の現象が挙げられるが、特にミー散乱によって上記した蛍光色素の蛍光を、可視光下において増強するものと考えられる。散乱に関わる重要な因子としては、光散乱粒子を構成する物質物性に由来する屈折率が高いことが挙げられる。また、光の波長と同等〜1/10程度の大きさであることが好ましい。可視光とは一般的に400nm〜700nmの波長域の光のことを示す。
本発明において用いられる「光散乱粒子」とは、上記した蛍光色素の蛍光を、可視光下において増強するものを意味する。蛍光の増強に関わる光の物理的な現象としては、光の散乱、反射、干渉、屈折、および回折などが挙げられる。この中で光の散乱としては、レイリー散乱やミー散乱等の現象が挙げられるが、特にミー散乱によって上記した蛍光色素の蛍光を、可視光下において増強するものと考えられる。散乱に関わる重要な因子としては、光散乱粒子を構成する物質物性に由来する屈折率が高いことが挙げられる。また、光の波長と同等〜1/10程度の大きさであることが好ましい。可視光とは一般的に400nm〜700nmの波長域の光のことを示す。
本発明における好ましい態様によれば、光散乱粒子は、酸化チタン、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、およびポリスチレン群から選ばれる少なくとも1種の粒子を含んでなり、より好ましくは、腫瘍細胞へ到達しやすく光の散乱効果の高い、低密度かつ光屈折率を有する酸化チタン、ポリスチレンである。さらにこれらの粒子は生体親和性高分子がその表面に結合してなるものが、さらに好ましい。ここで、「表面に結合」とは、生体親和性高分子の少なくとも一部が、好ましくは多座配位結合により、最も好ましくは二座配位結合により、該生体親和性高分子が有する官能基を介して粒子の表面に結合しており、かつ官能基を介しての結合によらず、粒子の表面に吸着している生体親和性高分子が存在していることを許容し、これを包含する意味に用い、あるいは官能基を介して結合している生体親和性高分子に物理的結合(例えば、吸着、絡まりつく等)により粒子の表面に留まる生体親和性高分子が存在していることを許容し、これを包含する意味に用いる。
本発明のより好ましい態様によれば、光散乱粒子は酸化チタンであり、かつ生体親和性高分子が多座配位結合により少なくとも部分的に表面に結合されたものである。
本発明の好ましい態様によれば、本発明において用いられる光散乱粒子は、動的光散乱法により測定した平均粒子径60nm〜400nmを有するものであり、好ましい下限は70nmであり、より好ましい下限は80nmであり、また好ましい上限は310nmであり、より好ましい上限は200nmである。
また、光散乱粒子の表面に少なくとも部分的に結合されている生体親和性高分子の詳細は後記する酸化チタンについて好ましい生体親和性高分子と同様であってよいが、本発明の好ましい態様によれば、生体親和性高分子はポリエチレングリコールである。
本発明の一つの好ましい態様によれば、光散乱粒子は、酸化チタン粒子と、その表面に結合した生体親和性高分子とを備える。一つの態様によれば、酸化チタン粒子と、生体親和性高分子との結合は、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して形成される。このような官能基を介した結合は酸化チタンとの間で配位結合を形成するため、酸化チタン粒子が高い触媒活性を備えているにも関わらず、分散性を保持できる。この結合は、体内における安全性の観点から、体内への投与後24〜72時間程度の間、結合が確保される多座配位結合であることが、より好ましい。前述した官能基のうち、多座配位結合を形成する官能基は、ジオール基、サリチル酸基、である。多座配位結合であることで、生理条件での分散が安定し、生体親和性高分子の遊離が抑えられ、正常細胞へのダメージが低減される。
本発明の好ましい態様によれば、上記生体親和性高分子は、酸化チタン粒子を水系溶媒中で分散させることができれば特に限定されないが、電荷を有するものとしては、アニオン性またはカチオン性を有する生体親和性高分子、また、電荷を有さずに水和によって分散性を与えるものとしてはノニオン性を有する生体親和性高分子が挙げられ、これらの少なくとも一種を含んでなる。
本発明の好ましい態様によれば、前記生体親和性高分子は重量平均分子量2000〜100000である。生体親和性高分子の重量平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィーを用いて求めた値である。前記分子量をこの範囲とすることで、生体親和性高分子のもつ電荷あるいは水和の作用によって、酸化チタン粒子の分散が困難とされる中性付近の水系溶媒中であって酸化チタン粒子を高度に分散させることができる。より好ましい範囲は5000〜100000であり、さらに好ましくは5000〜40000である。
本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いる生体親和性高分子としては、アニオン性生体親和性高分子として酸化チタン粒子を水系溶媒中で分散させることができればいずれも使用可能である。カルボキシル基を有するものとしては、例えばカルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルセルロース、ポリカルボン酸類、およびカルボキシル基単位を有する共重合体(コポリマー)などが挙げられる。具体的には、生体親和性高分子の加水分解性および溶解度の観点から、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸類、およびアクリル酸/マレイン酸やアクリル酸/スルフォン酸系モノマーの共重合体(コポリマー)がより好適に使用され、さらに好ましくはポリアクリル酸である。
また、アニオン性生体親和性高分子として、ポリアクリル酸を用いる場合、分散性の観点からポリアクリル酸の重量平均分子量は2000〜100000であるのが好ましく、より好ましくは5000〜40000であり、さらに好ましくは5000〜20000である。その構造は特に限定されないが、直鎖構造、分岐構造、くし型構造などがあげられる。
本発明の好ましい態様によれば、生体親和性高分子は、アミノ基を有するものであってもよく、その具体例としてはポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリアミン類、およびアミン単位を有する共重合体(コポリマー)などが挙げられる。さらに生体親和性高分子の加水分解性および溶解度の観点から、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミン類がより好適に使用され、さらに好ましくはポリエチレンイミンである。
カチオン性生体親和性高分子として、ポリエチレンイミンを用いる場合、分散性の観点からポリエチレンイミンの重量平均分子量は2000〜100000であるのが好ましく、より好ましくは5000〜40000であり、さらに好ましくは5000〜20000である。その構造は特に限定されないが、直鎖構造、分岐構造、くし型構造などがあげられる。
本発明の別の態様によれば、生体親和性高分子は、ノニオン性生体親和性高分子であり、好ましくは水酸基および/またはポリオキシアルキレン基を有する高分子が挙げられる。そのような生体親和性高分子の具体例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デキストランあるいはそれらを含有するコポリマーが挙げられ、より好ましくはポリエチレングリコール(PEG)およびデキストランであり、さらに好ましくはポリエチレングリコールである。
ノニオン性生体親和性高分子として、ポリエチレングリコールを用いる場合、分散性の観点からポリエチレングリコールの重量平均分子量は2000〜100000であるのが好ましく、より好ましくは5000〜40000である。その構造は特に限定されないが、直鎖構造、分岐構造、くし型構造などがあげられる。
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン粒子は、アナターゼ型酸化チタンまたはルチル型酸化チタンおよびアモルファス型酸化チタンであり、最も好ましくはアモルファス型酸化チタンである。本発明の一つの態様によれば、酸化チタン粒子は、溶媒に分散されて分散液の形態とされてなるのが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、光散乱粒子はさらに腫瘍細胞と結合可能な分子を表面に備えてなる。ここで、腫瘍細胞と結合可能な分子とは、腫瘍細胞との結合を促進する分子であれば特に限定されないが、具体例としては、タンパク質、ペプチド、核酸、葉酸、あるいはその他の腫瘍細胞結合性の高分子または低分子が挙げられ、より好ましくはタンパク質、ペプチド、核酸であり、さらに好ましくはタンパク質である。抗体は種々のタンパク質の中で好適に用いられる。また、表面に備えてなる態様については、光散乱粒子と、腫瘍細胞と結合可能な分子とが結合することによる形態を含み、該結合は物理結合であっても化学結合であってもよい。該化学結合においては、例えば光散乱粒子として酸化チタン粒子を用いる場合は、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して形成される。このような官能基を介した結合は、酸化チタンと配位結合を形成するため、酸化チタン粒子が高い触媒活性を備えているにも関わらず、腫瘍細胞と結合可能な分子と光散乱粒子との結合が生体内で保持できる。腫瘍細胞と結合可能な分子と光散乱粒子との結合は、体内における安全性の観点から、体内への投与後24〜72時間程度の間、結合が確保される多座配位結合であることが、より好ましい。前述した官能基のうち、多座配位結合を形成する官能基は、ジオール基、サリチル酸基、である。多座配位結合であることで、生理条件での分散が安定し、腫瘍細胞と結合可能な分子の遊離が抑えられ、正常細胞へのダメージが低減される。
本発明の好ましい態様によれば、そのようなタンパク質としては、抗上皮成長因子受容体抗体等の抗体、上皮成長因子等の成長因子、レクチン等の糖タンパク質およびそれらの組換え体等が挙げられる。
判別方法
以下、本発明による判別方法の各工程をさらに詳細に説明する。
工程(a)
本工程は、腫瘍選択性を有する蛍光色素を腫瘍細胞内に取込ませる工程である。この取込みの工程は、具体的には、蛍光色素と腫瘍細胞とが接触する態様で行われればよい。蛍光色素が、それ自体は蛍光する性質を有さず、腫瘍細胞において代謝等を受けて蛍光構造を有するに至るものである場合、蛍光色素がそのような代謝を受け得る状態で接触すればよい。
以下、本発明による判別方法の各工程をさらに詳細に説明する。
工程(a)
本工程は、腫瘍選択性を有する蛍光色素を腫瘍細胞内に取込ませる工程である。この取込みの工程は、具体的には、蛍光色素と腫瘍細胞とが接触する態様で行われればよい。蛍光色素が、それ自体は蛍光する性質を有さず、腫瘍細胞において代謝等を受けて蛍光構造を有するに至るものである場合、蛍光色素がそのような代謝を受け得る状態で接触すればよい。
本発明の別の態様によれば、判定方法はin vitroのみならずin vivoで行うことができ、in vivoの場合、この工程(a)は、腫瘍選択性を有する蛍光色素を生体内に投与し、腫瘍細胞に蛍光色素を取込ませる工程とする。ここで、蛍光色素の生体内への投与は、全身性の投与であっても、局所投与であってもよい。本発明の一つの態様によれば、全身性の投与としては、経口投与、静脈注射、動脈注射、腹腔投与、点滴等があげられ、局所投与としては、膀胱内注入、腸内注入、胃注入等を含む、内視鏡やカテーテルもしくは注射器により各領域の腫瘍近傍で注入される投与ルートが考えられる。
工程(b)
本工程は、光散乱粒子を腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または腫瘍細胞内に取込ませる工程である。光散乱粒子の吸着および取込みは、蛍光色素の発光を増強する限り限定されず、例えば、光散乱粒子を腫瘍細胞表面に接触させて吸着させ、あるいは浸透させて取り込ませることが出来る。
本工程は、光散乱粒子を腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または腫瘍細胞内に取込ませる工程である。光散乱粒子の吸着および取込みは、蛍光色素の発光を増強する限り限定されず、例えば、光散乱粒子を腫瘍細胞表面に接触させて吸着させ、あるいは浸透させて取り込ませることが出来る。
本発明の別の態様によれば、判定方法をin vivoで行う場合、この工程(b)は、光散乱粒子を生体内に投与し、腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または腫瘍細胞内に取込ませる工程とする。ここで、光散乱粒子の生体内への投与は、全身性の投与であっても、局所投与であってもよいが、好ましくは体内動態の観点から局所投与である。このような局所投与について限定はされないが、本発明の一つの態様によれば、投与後にすぐ腫瘍に光散乱粒子が直接接触できるような投与ルートが考えられ、例えば膀胱内注入、腸内注入、胃注入等を含む、内視鏡やカテーテルもしくは注射器により各領域の腫瘍近傍で注入される投与ルートが考えられる。
本発明において、工程(a)と(b)の順序は、蛍光色素の発光増強の効果が得られる限り問わない。本発明の一つの態様によれば、蛍光色素が、それ自体は蛍光を発光する性質を有さず、腫瘍細胞において代謝等を受けて蛍光構造を有するに至るものである場合、その蛍光構造を獲得するまでに一定の時間を要することがある。この時間を勘案すれば、例えば、工程(a)を先に実施し、蛍光色素を腫瘍細胞内に取り込ませた後、工程(b)を実施して光散乱粒子を腫瘍細胞表面に吸着または腫瘍細胞内に取り込ませる順序が効率的であると考えられる。
工程(c)
本工程は、蛍光色素が腫瘍細胞において蛍光を発するタイミングで蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を前記腫瘍細胞に照射する工程である。本発明の好ましい態様によれば、蛍光色素に蛍光を生じる波長の光は、可視光である。
本工程は、蛍光色素が腫瘍細胞において蛍光を発するタイミングで蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を前記腫瘍細胞に照射する工程である。本発明の好ましい態様によれば、蛍光色素に蛍光を生じる波長の光は、可視光である。
上記のとおり、蛍光色素が、それ自体は蛍光する性質を有さず、腫瘍細胞において代謝等を受けて蛍光構造を有するに至るものである場合、その蛍光構造を獲得するまでに一定の時間を要することがある。例えばALAは、体内に投与されてから光増感物質であるプロトポルフィリンに代謝され、蛍光物質となるまでに2時間以上を要する。本発明にあっては、発光に至る前から光を照射することを排除するものではないが、蛍光を発するタイミングで蛍光色素が蛍光を生じる波長の光を腫瘍細胞に照射することが効率的である。
本工程において光を照射すると腫瘍細胞は蛍光を発光し、正常細胞は蛍光をほとんど発さない。この蛍光の有無、強度差およびその位置によって、腫瘍細胞と正常細胞とを判別する。
蛍光の観察または検出
本発明の一つの態様によれば、光源から照射された光により、腫瘍細胞または腫瘍領域において発生した蛍光は、ヒトの目により観察される。この態様にあって蛍光は、観察画像として提供されるが、この画像は光学機器を通じて得られるのが通常である。具体的には、内視鏡、膣拡大鏡(コルポスコープ)、デジタルカメラ、および蛍光顕微鏡などを通じて得られる画像を、目視で観察する。
本発明の一つの態様によれば、光源から照射された光により、腫瘍細胞または腫瘍領域において発生した蛍光は、ヒトの目により観察される。この態様にあって蛍光は、観察画像として提供されるが、この画像は光学機器を通じて得られるのが通常である。具体的には、内視鏡、膣拡大鏡(コルポスコープ)、デジタルカメラ、および蛍光顕微鏡などを通じて得られる画像を、目視で観察する。
また、本発明の別の態様によれば、蛍光または蛍光の特定成分を、機器を通じて検出して、それを観察してもよい。このような蛍光または蛍光の特定成分に対応する情報の観察は、蛍光の有無だけでなく、強度や発生位置を精度よく認識できるため好ましい。このための機器としては、光学機器、例えば光学分光検出器が挙げられる。光学分光検出器を適用すれば、適切な蛍光スペクトルを検出可能となる。蛍光または蛍光の特定成分に対応する情報、例えば蛍光強度を、同一視野または同一領域の異なる検出位置において比較することにより、腫瘍細胞と正常細胞とを、または腫瘍領域と正常領域とを効率よく判別することができる。
さらに、本発明の好ましい態様によれば、上記の目視可能な画像と、上記の機器を通じて検出された蛍光または蛍光の特定成分に対応する情報を組み合わせることで、より有利に腫瘍細胞と正常細胞とを、または腫瘍領域と正常領域とを判別することが出来る。体内における基準位置を決め、蛍光または蛍光の特定成分に対応する情報、例えば相対的な蛍光スペクトルを、目視可能な画像と重ねることで、腫瘍細胞と正常細胞とを、または腫瘍領域と正常領域とを効率よく判別することができる。
本発明の一つの態様によれば、蛍光を観察または検出するための光学機器は、光源から照射された光の方向とは異なる方向からの蛍光を観察または検出されるものであることが、より好ましい。このような光学機器としては、例えば、光ファイバ、レンズ、および光学分光検出器の組み合わせを好適に利用可能である。
本発明の一つの態様によれば、観察または検出の結果を受けて、例えば、腫瘍領域を切除する外科治療を行う。好ましい態様によれば、外科治療を内視鏡下において行う。内視鏡にはその照明としての可視光光源を有するが、この可視光を発光の光源として用いることができ、正確かつ効率的に腫瘍領域を切除することができる点で極めて有利である。
診断薬、増感剤および腫瘍細胞の判定システム
以上から明らかなとおり、本発明の別の態様によれば、本発明による判別方法に用いるための腫瘍細胞診断薬が提供され、この診断薬は、腫瘍選択性を有する蛍光色素と、光散乱粒子と含んでなり、蛍光色素と光散乱粒子とが結合されていないことを特徴とするものである。
以上から明らかなとおり、本発明の別の態様によれば、本発明による判別方法に用いるための腫瘍細胞診断薬が提供され、この診断薬は、腫瘍選択性を有する蛍光色素と、光散乱粒子と含んでなり、蛍光色素と光散乱粒子とが結合されていないことを特徴とするものである。
また、本発明の別の態様によれば、本発明による判別方法に用いるための腫瘍細胞診断増感剤が提供され、この増感剤は、上記した光散乱粒子を含んでなるものである。ここで、好ましくは光散乱粒子は、酸化チタン、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、およびポリスチレン群から選ばれる少なくとも1種であり、かつ生体親和性高分子が二座配位結合により少なくとも部分的に表面に結合されたものであり、より好ましくは、ポリエチレングリコールである。
また、本発明の別の態様によれば、腫瘍細胞の判定システムが提供され、この判定システムは、次の(1)乃至(3)を備えてなる、腫瘍細胞の判別システムである。
(1)腫瘍選択性を有する蛍光色素と、光散乱粒子とを含んでなり、前記蛍光色素と光散乱粒子とが結合されていない診断薬、
(2)腫瘍細胞内に取り込まれた前記蛍光色素と、腫瘍細胞表面に吸着された、および/または腫瘍細胞内に取込まれた前記光散乱粒子と、に対して、前記蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を照射可能な光源、および
(3)上記光源により照射された結果、腫瘍細胞において発生した蛍光を観察または検出する光学機器。
(1)腫瘍選択性を有する蛍光色素と、光散乱粒子とを含んでなり、前記蛍光色素と光散乱粒子とが結合されていない診断薬、
(2)腫瘍細胞内に取り込まれた前記蛍光色素と、腫瘍細胞表面に吸着された、および/または腫瘍細胞内に取込まれた前記光散乱粒子と、に対して、前記蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を照射可能な光源、および
(3)上記光源により照射された結果、腫瘍細胞において発生した蛍光を観察または検出する光学機器。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
操作1:光散乱粒子(1)の作製
チタンテトラエトキシドをアセトニトリル/エタノール溶液に加えて、0.1mmol/lチタンテトラエトキシド溶液を調製した。この溶液にエタノールおよび0.1mmol/lアンモニア水を混合し、室温で60分間攪拌して十分に加水分解を行った。このとき、目的の平均粒子径に応じてアンモニア水量を溶液の0.01〜1v/v%の範囲で4種調節した。加水分解後、80℃で3時間以上攪拌を行い、加熱還流した。加熱還流により得られた固形成分を回収するため、20000g、10分間で遠心分離を行い、メタノールで固形成分約20w/v%に濃度調整して4種の光散乱粒子(1)(i)〜(iv)の分散液を得た。
チタンテトラエトキシドをアセトニトリル/エタノール溶液に加えて、0.1mmol/lチタンテトラエトキシド溶液を調製した。この溶液にエタノールおよび0.1mmol/lアンモニア水を混合し、室温で60分間攪拌して十分に加水分解を行った。このとき、目的の平均粒子径に応じてアンモニア水量を溶液の0.01〜1v/v%の範囲で4種調節した。加水分解後、80℃で3時間以上攪拌を行い、加熱還流した。加熱還流により得られた固形成分を回収するため、20000g、10分間で遠心分離を行い、メタノールで固形成分約20w/v%に濃度調整して4種の光散乱粒子(1)(i)〜(iv)の分散液を得た。
4種の光散乱粒子(1)(i)〜(iv)について、超純水を用いて固形成分0.005w/v%に濃度調整し、動的光散乱測定装置(スペクトリス社製、ゼータサイザーナノZS)を用い、動的光散乱法でキュミュラント解析により平均粒子径を測定した。その結果、平均粒子径はそれぞれ(i)86.5nm、(ii)133.5nm、(iii)204.4nm、そして(iv)330nmであった。また、PDI(多分散度)はそれぞれ、(i)0.047、(ii)0.017、(iii)0.017、そして(iv)0.017であった。
操作2:光散乱粒子の表面に分散剤を結合させた粒子(2)の作製
PEGとしてポリオキシエチレン−モノアリル−モノメチルエーテルと無水マレイン酸の共重合体(平均分子量;33659−日本油脂製)1gに超純水5mlを添加し加水分解後得られた溶液と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(同仁化学製)を、超純水を用いてそれぞれ濃度が50mg/mlおよび50mmol/lとなるように混合し調製した。調製した溶液に4−アミノサリチル酸(富士フイルム和光純薬工業)を濃度0.1Mになるよう混合し、室温にて24時間振とう撹拌して反応させた。反応後、得られた溶液をスペクトラ/ポア CE 透析用チューブ(分画分子量=3500、Spectrum Laboratories,Inc.)に移し、室温で24時間透析を行った。透析後、凍結乾燥して得られた粉末に25mg/mlとなるようジメチルホルムアミド(DMF:富士フイルム和光純薬工業)を添加して混合し、4−アミノサリチル酸結合PEG溶液とした。
PEGとしてポリオキシエチレン−モノアリル−モノメチルエーテルと無水マレイン酸の共重合体(平均分子量;33659−日本油脂製)1gに超純水5mlを添加し加水分解後得られた溶液と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(同仁化学製)を、超純水を用いてそれぞれ濃度が50mg/mlおよび50mmol/lとなるように混合し調製した。調製した溶液に4−アミノサリチル酸(富士フイルム和光純薬工業)を濃度0.1Mになるよう混合し、室温にて24時間振とう撹拌して反応させた。反応後、得られた溶液をスペクトラ/ポア CE 透析用チューブ(分画分子量=3500、Spectrum Laboratories,Inc.)に移し、室温で24時間透析を行った。透析後、凍結乾燥して得られた粉末に25mg/mlとなるようジメチルホルムアミド(DMF:富士フイルム和光純薬工業)を添加して混合し、4−アミノサリチル酸結合PEG溶液とした。
次にDMFを用いて4−アミノサリチル酸結合PEG溶液が終濃度1.5mg/ml、操作1で得られた平均粒子径の異なる粒子(1)(i)〜(iv)が終濃度で固形成分0.5w/v%となるよう調整し、20mlの反応溶液とした。この反応溶液を130℃で16時間加熱した。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを完全に乾燥するまで除去した。以後、クリーンベンチ内で無菌操作とし、滅菌済み超純水を添加して混合した光散乱粒子溶液を滅菌済みの50mlチューブに移した後、20000g、10分間で遠心分離を行い、溶液の90v/v%を除去して滅菌済み超純水に交換する操作を8回繰り返した。最終的に終濃度で固形成分1.0w/v%となるよう調整し、10mlの溶液とした。このようにして得られた、生体親和性高分子を結合させた光散乱粒子(2)(i)〜(iv)を作製した。
生体親和性高分子を結合させた光散乱粒子(2)(i)〜(iv)について、操作1と同様にキュミュラント解析により平均粒子径を測定した。その結果、平均粒子径はそれぞれ粒子(1)(i)(平均粒子径86.5nm)から作製した光散乱粒子(2)(i):83.3nm、(ii)(平均粒子径133.5nm)から作製した光散乱粒子(2)(ii):129nm、(iii)(平均粒子径204.4nm)から作製した光散乱粒子(2)(iii):198.6nm、そして(iv)(平均粒子径330nm)から作製した光散乱粒子(2)(iv):304.4nm、であった。また、PDI(多分散度)はそれぞれ、(i)0.043、(ii)0.019、(iii)0.008、そして(iv)0.019であった。
操作3:腫瘍細胞および不死化正常細胞の準備
細胞の培養はすべて、CO2インキュベータ(パナソニック MCO−230AICUV−PJ)を用い、37℃、5v/v%CO2、加湿条件下で行った。また、遠心分離はすべて、卓上遠心機(KOKUSAN H−36)を用いて、220×g、6分間の条件で行った。
細胞の培養はすべて、CO2インキュベータ(パナソニック MCO−230AICUV−PJ)を用い、37℃、5v/v%CO2、加湿条件下で行った。また、遠心分離はすべて、卓上遠心機(KOKUSAN H−36)を用いて、220×g、6分間の条件で行った。
(1)腫瘍細胞(T24、ヒト膀胱癌細胞株)の準備
T24細胞(T24、JCRB0711)を準備した。この細胞株をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific)、10v/v%FBS(Thermo Fisher Scientific))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをMEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、6ウェルプレートに3.6×104 cells/2ml/ウェルにて播種し3日間培養した。
T24細胞(T24、JCRB0711)を準備した。この細胞株をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific)、10v/v%FBS(Thermo Fisher Scientific))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをMEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、6ウェルプレートに3.6×104 cells/2ml/ウェルにて播種し3日間培養した。
(2)腫瘍細胞(UM−UC−3、ヒト膀胱癌細胞株)の準備
UM−UC−3細胞(UMUC3、ATCC CRL−1749)を準備した。この細胞株をE−MEM培地(ATCC−formulated Eagle’s Minimum Essential Medium(ATCC)、10v/v%FBS(Life Technologies))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、E−MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをE−MEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、6ウェルプレートに3.6×104 cells/2ml/ウェルにて播種し、3日間培養した。
UM−UC−3細胞(UMUC3、ATCC CRL−1749)を準備した。この細胞株をE−MEM培地(ATCC−formulated Eagle’s Minimum Essential Medium(ATCC)、10v/v%FBS(Life Technologies))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、E−MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをE−MEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、6ウェルプレートに3.6×104 cells/2ml/ウェルにて播種し、3日間培養した。
(3)腫瘍細胞(DLD−1、ヒト大腸癌細胞株)の準備
DLD−1細胞(DLD−1、JCRB9094)を準備した。この細胞株をRPMI−1640培地(RPMI−1640 Medium(Life Technologies)、10v/v%FBS(Life Technologies))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、RPMI−1640培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをRPMI−1640培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、6ウェルプレートに2.9×105 cells/2ml/ウェルにて播種し、1日間培養した。
DLD−1細胞(DLD−1、JCRB9094)を準備した。この細胞株をRPMI−1640培地(RPMI−1640 Medium(Life Technologies)、10v/v%FBS(Life Technologies))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、RPMI−1640培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをRPMI−1640培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、6ウェルプレートに2.9×105 cells/2ml/ウェルにて播種し、1日間培養した。
(2)不死化正常細胞(WI−38、VA13 sub 2 RA、ヒト胎児肺細胞株)の準備
正常二倍体線維芽細胞株WI−38の不死化細胞株WI−38細胞(WI−38 VA13 sub 2 RA、JCRB9057)を準備した。この細胞株をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific)、10v/v%FBS(Thermo Fisher Scientific))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをMEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、6ウェルプレートに5.0×104 cells/2ml/ウェルにて播種し、3日間培養した
正常二倍体線維芽細胞株WI−38の不死化細胞株WI−38細胞(WI−38 VA13 sub 2 RA、JCRB9057)を準備した。この細胞株をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific)、10v/v%FBS(Thermo Fisher Scientific))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをMEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、6ウェルプレートに5.0×104 cells/2ml/ウェルにて播種し、3日間培養した
操作4:蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与によるT24膀胱癌細胞における蛍光の増強効果
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
評価は次のように行った。操作3で得られた6ウェルプレートのT24細胞の培地をアスピレータにて除去し、PBS(−)(Thermo Fisher Scientific)を2ml加えた。再びアスピレータにてPBS(−)を除去し、ALA溶液を2ml加え2時間培養した。次に、6ウェルプレートのALA溶液をアスピレータにて除去し、光散乱粒子溶液を2ml加え2時間培養した。さらに、6ウェルプレートの粒子溶液をアスピレータにて除去し、HBSS(−)(Thermo Fisher Scientific)を2ml加えて洗浄し、再びアスピレータにて除去し、HBSS(−)を2ml加えて蛍光の観察および検出に用いた。
観察および検出は倒立型蛍光顕微鏡(ECLIPSE Ti−E、Nikon)を用いて行った。ハロゲン光源ランプと450nmのダイクロイックミラーを用いて、励起光を半値幅25nm、410nmのバンドパスフィルタを通して照射し、蛍光を600nmのロングパスフィルタを通した。接眼レンズは10倍、また対物レンズは20倍、開口数0.75のものを使用した。照射絞りはND=8、露光時間は400ms、ゲインは14.0xにそれぞれ設定した。蛍光像は冷却CCDカラーカメラ(DS−Fi3、Nikon)によりデジタル画像として取得した。取得された画像から、画像解析装置IS−Elements AR ver.4.60(Nikon)により、ダークノイズ分の輝度を減算した後、蛍光が取得される全画素の平均輝度をもとめ、蛍光強度を計算することで蛍光を検出した。また、取得された画像を目視で観察した。
相対蛍光強度は上記で取得された蛍光強度を用いて次式を用いて算出した。
[相対蛍光強度]=[各条件での蛍光強度]/[蛍光色素のみ投与の場合における観察光照射直後の蛍光強度]
[相対蛍光強度]=[各条件での蛍光強度]/[蛍光色素のみ投与の場合における観察光照射直後の蛍光強度]
表1より明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合では、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。また、観察光照射後150秒においても同様に蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合の方が高い相対蛍光強度が得られた。このような高い相対蛍光強度は、蛍光色素とは別に投与された光散乱粒子(2)(ii)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。また、観察の結果からも、光散乱粒子ありの方が、明らかに長い時間明るさを維持できることが確認できた。
以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、より明るく長い時間においてT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作5:蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与によるUM−UC−3膀胱癌細胞における蛍光の増強効果
ALA水溶液(50mmol/l)をE−MEM培地(ATCC−formulated Eagle’s Minimum Essential Medium(ATCC))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液(1w/v%)をE−MEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をE−MEM培地(ATCC−formulated Eagle’s Minimum Essential Medium(ATCC))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液(1w/v%)をE−MEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
評価は次のように行った。操作3で得られた6ウェルプレートのUM−UC−3細胞の培地をアスピレータにて除去し、操作4のPBS(−)をE−MEM培地に、HBSS(−)をMEM培地(no glutamine,no phenol red(Thermo Fisher Scientific))に変更した条件で評価を行い、蛍光検出に用いた。
検出は操作4と同様に倒立型蛍光顕微鏡(ECLIPSE Ti−E、Nikon)を用いて行い、取得された画像から、ダークノイズ分の輝度を減算した後、蛍光が取得される細胞の単位面積あたりの平均輝度をもとめ、蛍光強度を計算した。相対蛍光強度は上記で取得された蛍光強度を用いて次式を用いて算出した。
[相対蛍光強度]=[各条件での単位面積あたりの蛍光強度]/[蛍光色素のみ投与の場合における単位面積当たりの蛍光強度]
[相対蛍光強度]=[各条件での単位面積あたりの蛍光強度]/[蛍光色素のみ投与の場合における単位面積当たりの蛍光強度]
表2より明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合では、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。これは、別に投与された光散乱粒子(2)(ii)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、より明るくUM−UC−3膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作6:蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与によるDLD−1大腸癌細胞おける蛍光の増強効果
ALA水溶液(50mmol/l)をRPMI−1640培地(RPMI−1640 Medium(Life Technologies))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をRPMI−1640培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をRPMI−1640培地(RPMI−1640 Medium(Life Technologies))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をRPMI−1640培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
評価は次のように行った。操作3で得られた6ウェルプレートのDLD−1細胞の培地をアスピレータにて除去し、操作4のPBS(−)をRPMI−1640培地に、HBSS(−)をRPMI−1640培地(no glutamine,no phenol red(Thermo Fisher Scientific))に変更した条件で評価を行い、蛍光の検出に用いた。
検出は操作5と同様に倒立型蛍光顕微鏡を用い、取得された画像から蛍光強度を求め、相対蛍光強度を算出した。
表3より明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合では、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。これは、別に投与された光散乱粒子(2)(ii)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、より明るくDLD−1大腸癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作7:蛍光色素と光散乱粒子(2)(iv)の個別投与によるT24膀胱癌細胞における蛍光の増強効果
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(iv)の水溶液をMEM培地に混和し、0.01、0.1および0.5w/v%の光散乱粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(iv)の水溶液をMEM培地に混和し、0.01、0.1および0.5w/v%の光散乱粒子溶液とした。
操作3で得られたウェルプレートのT24細胞の培地をアスピレータにて除去し、操作4と同様の条件で評価を行い、蛍光を検出し、相対蛍光強度を算出した。
表4より明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(iv)の個別投与の場合では、特に光散乱粒子濃度0.1w/v%の際に、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。このような高い相対蛍光強度は、蛍光色素とは別に投与された光散乱粒子(2)(iv)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(iv)を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、より明るくT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作8:蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の同時投与によるT24膀胱癌細胞における蛍光の増強効果
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地に混和(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))し、4mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001、0.002および0.02w/v%の光散乱粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地に混和(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))し、4mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001、0.002および0.02w/v%の光散乱粒子溶液とした。
評価は次のように行った。操作3で得られた6ウェルプレートのT24細胞の培地をアスピレータにて除去し、PBS(−)(Thermo Fisher Scientific)を2ml加えた。再びアスピレータにてPBS(−)を除去し、ALA溶液1mlと光散乱粒子溶液1mlを混合した2ml混合溶液を加え37℃、5v/v%CO2の条件で2時間培養した。次に、6ウェルプレートの細胞の混合溶液をアスピレータにて除去し、HBSS(−)(Thermo Fisher Scientific)を2ml加えて洗浄し、再びアスピレータにて除去し、HBSS(−)を2ml加えて検出に用いた。
検出は操作4と同様に倒立型蛍光顕微鏡を用い、取得された画像から蛍光強度を求め、相対蛍光強度を算出した。
表5より明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の同時投与の場合では、特に光散乱粒子濃度0.0005(w/v)%の際に、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。このような高い相対蛍光強度は、蛍光色素とは別に投与された光散乱粒子(2)(ii)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。
以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)を同時投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、より明るくT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作9:蛍光色素(ヒペリシン)と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与によるT24膀胱癌細胞における蛍光の増強効果
ジメチルスルホキシド(富士フイルム和光純薬工業)を溶媒としたヒペリシン(富士フイルム和光純薬工業)溶液(100mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、1μmol/lのヒペリシン溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
ジメチルスルホキシド(富士フイルム和光純薬工業)を溶媒としたヒペリシン(富士フイルム和光純薬工業)溶液(100mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、1μmol/lのヒペリシン溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
評価は次のように行った。操作3で得られた6ウェルプレートのT24細胞の培地をアスピレータにて除去し、MEM培地を2ml加えた。再びアスピレータにてMEM培地を除去し、ヒペリシン溶液を2ml加え37℃、5v/v%CO2の条件で1時間培養した。次に、6ウェルプレートの細胞のヒペリシン溶液をアスピレータにて除去し、光散乱粒子溶液を2ml加え37℃、5v/v%CO2の条件で2時間培養した。さらに、6ウェルプレートの細胞の光散乱粒子溶液をアスピレータにて除去し、MEM培地(no glutamine,no phenol red(Thermo Fisher Scientific))を2ml加えて洗浄し、再びアスピレータにて除去し、MEM培地を2ml加えて検出に用いた。
検出は操作5と同様に倒立型蛍光顕微鏡を用い、取得された画像から蛍光強度を求め、相対蛍光強度を算出した。
表6より明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合では、観察光照射直後においてヒペリシンのみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。これは、別に投与された光散乱粒子(2)(ii)により可視光散乱が強められ、ヒペリシンから発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明においてヒペリシンと光散乱粒子(2)(ii)を個別投与で用いることで、従来のヒペリシンのみより蛍光が増強されて、より明るくT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作10:蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与によるT24癌細胞及びWI−38不死化正常細胞判別の効果
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
操作3で得られた6ウェルプレートのT24細胞およびWI−38細胞の培地をぞれぞれアスピレータにて除去し、操作4と同様に、検出を行い、相対蛍光強度を算出した。
表7より明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合では、T24細胞株においてWI−38細胞株よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。また、すべての条件において、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合で、T24細胞株を用いた際に最も高い相対蛍光強度が得られた。このような高い相対蛍光強度は、蛍光色素とは別に投与された光散乱粒子(2)(ii)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。さらに蛍光色素の癌選択性と、腫瘍細胞および不死化正常細胞における粒子の細胞取込み性の違いによって、T24細胞株を用いた際に最も高い相対蛍光強度が得られたものと考えられる。
以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、不死化正常細胞よりも明るくT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作11:蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与による、同一視野にT24膀胱癌細胞及びWI−38不死化正常細胞が存在する場合の判別の効果
図1を用いて、本実施例に係る、同一視野に腫瘍細胞と不死化正常細胞を存在させるための共培養について説明する。共培養には、CytpSelect TM 24−welll 細胞共培養システム(コスモ・バイオ製)1を用いた。T24細胞株をMEM培地(MEM,GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific)、10v/v%FBS(Thermo Fisher Scientific))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをMEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、細胞フリーな領域を作成するための直径8mmインサート2を入れたウェルに4.4×104 cells/0.225ml/ウェルにて播種し、2日間培養してインサート2の周りの領域3にモノレイヤーを形成させた。
図1を用いて、本実施例に係る、同一視野に腫瘍細胞と不死化正常細胞を存在させるための共培養について説明する。共培養には、CytpSelect TM 24−welll 細胞共培養システム(コスモ・バイオ製)1を用いた。T24細胞株をMEM培地(MEM,GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific)、10v/v%FBS(Thermo Fisher Scientific))で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをMEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、細胞フリーな領域を作成するための直径8mmインサート2を入れたウェルに4.4×104 cells/0.225ml/ウェルにて播種し、2日間培養してインサート2の周りの領域3にモノレイヤーを形成させた。
WI−38細胞をMEM培地で継代培養した。3日、あるいは4日後に対数増殖期になった前記培養細胞を、Trypsin/EDTA(Thermo Fisher Scientific)で剥離し、MEM培地で反応を停止後、遠心分離した。この細胞ペレットをMEM培地で懸濁した。細胞懸濁液は細胞密度を測定し、インサート2を除いたウェル1に1.0×105 cells/0.5ml/ウェルにて播種し、1日間培養した。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(ii)の水溶液をMEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
評価は次のように行った。前記共培養プレートの培地をアスピレータにて除去し、MEM培地を0.5ml加えた。再びアスピレータにてMEM培地を除去し、ALA溶液を0.5ml加え2時間培養した。次に、共培養プレートのALA溶液をアスピレータにて除去し、光散乱粒子溶液を0.5ml加え2時間培養した。さらに、共培養プレートの細胞の粒子溶液をアスピレータにて除去し、MEM培地(no glutamine,no phenol red(Thermo Fisher Scientific))を0.5ml加えて洗浄し、再びアスピレータにて除去し、MEM培地を0.5ml加えて検出に用いた。
検出は操作4と同様に倒立型蛍光顕微鏡(ECLIPSE Ti−E、Nikon)を用いて行い、視野領域が横3300μm×縦2200μmの大きさの画像を取得し、操作5と同様に相対蛍光強度を算出した。
表8から明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合では、WI−38細胞株とT24細胞株の相対蛍光強度の差が大きく得られた。これは、蛍光色素とは別に個別投与された光散乱粒子(2)(ii)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。
以上から、同一平面上に不死化正常細胞と腫瘍細胞が存在する場合に、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、不死化正常細胞と腫瘍細胞の蛍光値の差がより大きくなることで判別し、腫瘍細胞の領域を確実に判定できることが明らかとなった。
操作12:蛍光色素と光散乱粒子(シリカ粒子)の個別投与によるT24膀胱癌細胞における蛍光の増強効果
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、粒子径100nmのシリカ粒子(sicastar、Silica Microsphere、Plain、25mg/ml、Polyscience製)の水溶液をMEM培地に混和し、0.01w/v%のシリカ粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、粒子径100nmのシリカ粒子(sicastar、Silica Microsphere、Plain、25mg/ml、Polyscience製)の水溶液をMEM培地に混和し、0.01w/v%のシリカ粒子溶液とした。
評価は、操作3で得られた6ウェルプレートのT24細胞の培地をアスピレータにて除去し、操作4のPBS(−)をMEM培地に、HBSS(−)をMEM培地(no glutamine,no phenol red(Thermo Fisher Scientific))に、それぞれ変更した条件で行い、蛍光検出に用いた。
検出は操作5と同様に倒立型蛍光顕微鏡を用い、取得された画像から蛍光強度を求め、相対蛍光強度を算出した。
表9より明らかなように、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。これは、別に投与されたシリカ粒子により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明において蛍光色素とシリカ粒子を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、より明るくT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作13:蛍光色素と光散乱粒子(ポリスチレン粒子)の個別投与によるT24膀胱癌細胞における蛍光の増強効果
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、粒子径100nmのポリスチレン粒子(Polybead Polystyrene Microspheres 2.5%Solid−Latex、Polyscience製)の水溶液をMEM培地に混和し、0.01w/v%のポリスチレン粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、粒子径100nmのポリスチレン粒子(Polybead Polystyrene Microspheres 2.5%Solid−Latex、Polyscience製)の水溶液をMEM培地に混和し、0.01w/v%のポリスチレン粒子溶液とした。
操作3で得られた6ウェルプレートのT24細胞の培地をアスピレータにて除去し、操作12と同様の条件で評価を行い、蛍光検出および相対蛍光強度を算出した。
表10より明らかなように、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。これは、別に投与されたポリスチレン粒子により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明において蛍光色素とポリスチレン粒子を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、より明るくT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作14:腫瘍細胞と結合可能な分子(抗体)を表面に備えた光散乱粒子の作製とその蛍光の増強効果
操作2で得られた、光散乱粒子(2)(ii)が固形成分0.5%となるよう50mMのMES緩衝液(pH5.5)で調整した。さらに、マウス抗ヒト上皮成長因子受容体モノクローナル抗体(Ab−2(Clone225)、Thermo Fisher Scientific社)が終濃度50μg/mlとなるよう混合して、4℃にて24時間振とう撹拌して光散乱粒子(2)(ii)表面に抗体を物理的に吸着させた。その後、15000g、30分間で遠心分離を行い、溶液の90%を除去して超純水に交換する操作を3回繰り返した。氷冷下で超音波分散を繰り返し、マウス抗ヒト上皮成長因子受容体モノクローナル抗体を表面に物理的に吸着させた光散乱粒子(2)(ii)を得た。このように操作2で得られた光散乱粒子(2)(ii)をもとにして作製した光散乱粒子(2)(v)について、超純水を用いて固形成分0.01%に濃度調整し、操作1と同様にキュミュラント解析により平均粒子径を測定した結果、光散乱粒子(2)(v)の平均粒子径は115nmであった。
操作2で得られた、光散乱粒子(2)(ii)が固形成分0.5%となるよう50mMのMES緩衝液(pH5.5)で調整した。さらに、マウス抗ヒト上皮成長因子受容体モノクローナル抗体(Ab−2(Clone225)、Thermo Fisher Scientific社)が終濃度50μg/mlとなるよう混合して、4℃にて24時間振とう撹拌して光散乱粒子(2)(ii)表面に抗体を物理的に吸着させた。その後、15000g、30分間で遠心分離を行い、溶液の90%を除去して超純水に交換する操作を3回繰り返した。氷冷下で超音波分散を繰り返し、マウス抗ヒト上皮成長因子受容体モノクローナル抗体を表面に物理的に吸着させた光散乱粒子(2)(ii)を得た。このように操作2で得られた光散乱粒子(2)(ii)をもとにして作製した光散乱粒子(2)(v)について、超純水を用いて固形成分0.01%に濃度調整し、操作1と同様にキュミュラント解析により平均粒子径を測定した結果、光散乱粒子(2)(v)の平均粒子径は115nmであった。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(v)の水溶液(1w/v%)をMEM培地に混和し、0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
操作3で得られた6ウェルプレートのT24細胞の培地をアスピレータにて除去し、操作12と同様の条件で評価を行い、蛍光検出および相対蛍光強度を算出した。
表11より明らかなように、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合かつ蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。これは、個別投与された光散乱粒子(2)(v)が腫瘍細胞と結合可能な分子を表面に備えたことから、光散乱粒子(2)(v)の、腫瘍細胞表面への吸着および/または腫瘍細胞への取り込みが促進されたため、可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(v)を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみおよび蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合より蛍光が増強されて、より明るくT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作15:腫瘍細胞と結合可能な分子(ヒト上皮成長因子)を表面に備えた光散乱粒子の作製とその蛍光の増強効果
操作2で得られた、光散乱粒子(2)(ii)が固形成分0.5%となるよう50mMのホウ酸緩衝液(pH5.5)で調整した。さらに、ヒト上皮成長因子rhEGF(Animal−derived−free、富士フイルム和光純薬製)が終濃度50μg/mlとなるよう混合して、4℃にて24時間振とう撹拌してrhEGFを光散乱粒子(2)(ii)の表面に備えた。その後、15000g、30分間で遠心分離を行い、溶液の90%を除去して超純水に交換する操作を3回繰り返した。氷冷下で超音波分散を繰り返し、rhEGFを表面に備えた光散乱粒子(2)(ii)を得た。このように操作2で得られた粒子(2)(ii)をもとにして作製した光散乱粒子(2)(vi)について、超純水を用いて固形成分0.01%に濃度調整し、操作1と同様にキュミュラント解析により平均粒子径を測定した結果、光散乱粒子(2)(vi)の平均粒子径は102nmであった。
操作2で得られた、光散乱粒子(2)(ii)が固形成分0.5%となるよう50mMのホウ酸緩衝液(pH5.5)で調整した。さらに、ヒト上皮成長因子rhEGF(Animal−derived−free、富士フイルム和光純薬製)が終濃度50μg/mlとなるよう混合して、4℃にて24時間振とう撹拌してrhEGFを光散乱粒子(2)(ii)の表面に備えた。その後、15000g、30分間で遠心分離を行い、溶液の90%を除去して超純水に交換する操作を3回繰り返した。氷冷下で超音波分散を繰り返し、rhEGFを表面に備えた光散乱粒子(2)(ii)を得た。このように操作2で得られた粒子(2)(ii)をもとにして作製した光散乱粒子(2)(vi)について、超純水を用いて固形成分0.01%に濃度調整し、操作1と同様にキュミュラント解析により平均粒子径を測定した結果、光散乱粒子(2)(vi)の平均粒子径は102nmであった。
ALA水溶液(50mmol/l)をMEM培地(MEM, GlutaMAXtm supplement(Thermo Fisher Scientific))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また、光散乱粒子(2)(vi)の水溶液(1w/v%)をMEM培地に混和し、0.001w/v%の粒子溶液とした。
操作3で得られた6ウェルプレートのT24細胞の培地をアスピレータにて除去し、操作12と同様の条件で評価を行い、蛍光検出および相対蛍光強度を算出した。
表12より明らかなように、観察光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合かつ蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合よりも非常に高い相対蛍光強度が得られた。これは、個別投与された光散乱粒子(2)(vi)が腫瘍細胞と結合可能な分子を表面に備えたことから、光散乱粒子(2)(vi)の、腫瘍細胞表面への吸着および/または腫瘍細胞への取り込みが促進されたため、可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(vi)を個別投与で用いることで、従来の蛍光色素のみおよび蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)の個別投与の場合より蛍光が増強されて、より明るくT24膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
操作16:光散乱粒子の表面に生体親和性高分子を結合させた粒子(3)の作製
PEGとしてモノメトキシポリエチレングリコールのN−ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルのうち、(i)平均分子量10000(SUNBRIGHT ME−100GS、日本油脂製)、(ii)平均分子量20000(SUNBRIGHT ME−200GS、日本油脂製)、(iii)平均分子量40000(SUNBRIGHT ME−400GS、日本油脂製)をそれぞれジメチルホルムアミド(DMF:富士フイルム和光純薬工業)に添加して混合し、それぞれPEG溶液(i)〜(iii)を調製した。また、ドーパミン塩酸塩(富士フイルム和光純薬工業)をDMFに溶解し、ドーパミン塩酸塩溶液とした。次に、10v/v%のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(富士フイルム和光純薬工業)を含むDMF溶媒中で、終濃度4mMとなるようドーパミン塩酸塩溶液と、終濃度40g/lのPEG溶液(i)または終濃度80g/lのPEG溶液(ii)、もしくは終濃度160g/lのPEG溶液(iii)となるよう各PEG溶液(i)〜(iii)をそれぞれ混合し、30℃にて3時間撹拌して反応させた。反応後、得られた溶液をドーパミン結合PEG溶液(i)〜(iii)とした。ドーパミン結合率は、C18カラムと電気化学検出器を具備した疎水性クロマトグラフィーシステム(HTEC−500、エイコム社)を用いて、メーカーより指定のドーパミン検出条件に従い、0.1N塩酸水溶液で希釈したドーパミン結合PEG溶液(i)〜(iii)中のドーパミン量を測定し、反応前後のドーパミン量の変化から反応前を0%とした時のドーパミン結合率を算出した結果、それぞれドーパミン結合PEG溶液(i)のドーパミン結合率93%、ドーパミン結合PEG溶液(ii)のドーパミン結合率92%、ドーパミン結合PEG溶液(iii)のドーパミン結合率90%であり、十分にドーパミンがPEGと結合していることが確認された。
PEGとしてモノメトキシポリエチレングリコールのN−ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルのうち、(i)平均分子量10000(SUNBRIGHT ME−100GS、日本油脂製)、(ii)平均分子量20000(SUNBRIGHT ME−200GS、日本油脂製)、(iii)平均分子量40000(SUNBRIGHT ME−400GS、日本油脂製)をそれぞれジメチルホルムアミド(DMF:富士フイルム和光純薬工業)に添加して混合し、それぞれPEG溶液(i)〜(iii)を調製した。また、ドーパミン塩酸塩(富士フイルム和光純薬工業)をDMFに溶解し、ドーパミン塩酸塩溶液とした。次に、10v/v%のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(富士フイルム和光純薬工業)を含むDMF溶媒中で、終濃度4mMとなるようドーパミン塩酸塩溶液と、終濃度40g/lのPEG溶液(i)または終濃度80g/lのPEG溶液(ii)、もしくは終濃度160g/lのPEG溶液(iii)となるよう各PEG溶液(i)〜(iii)をそれぞれ混合し、30℃にて3時間撹拌して反応させた。反応後、得られた溶液をドーパミン結合PEG溶液(i)〜(iii)とした。ドーパミン結合率は、C18カラムと電気化学検出器を具備した疎水性クロマトグラフィーシステム(HTEC−500、エイコム社)を用いて、メーカーより指定のドーパミン検出条件に従い、0.1N塩酸水溶液で希釈したドーパミン結合PEG溶液(i)〜(iii)中のドーパミン量を測定し、反応前後のドーパミン量の変化から反応前を0%とした時のドーパミン結合率を算出した結果、それぞれドーパミン結合PEG溶液(i)のドーパミン結合率93%、ドーパミン結合PEG溶液(ii)のドーパミン結合率92%、ドーパミン結合PEG溶液(iii)のドーパミン結合率90%であり、十分にドーパミンがPEGと結合していることが確認された。
次にDMFを用いてドーパミン結合PEG溶液(i)〜(iii)が終濃度1.5mg/ml、操作1で得られた平均粒子径133.5nmの光散乱粒子(1)(ii)が終濃度で固形成分0.5w/v%となるよう調整し、操作2と同様に反応及び調整し、10mlの溶液とした。このようにして得られた、生体親和性高分子を結合させた光散乱粒子(3)(i)〜(iii)を作製した。
生体親和性高分子を結合させた光散乱粒子(3)(i)〜(iii)について、超純水を用いて固形成分0.005w/v%に濃度調整し、操作2と同様にキュミュラント解析により平均粒子径を測定した。その結果、平均粒子径はそれぞれドーパミン結合PEG溶液(i)を用いて作製した生体親和性高分子を結合させた光散乱粒子(3)(i):142.9nm、ドーパミン結合PEG溶液(ii)を用いて作製した生体親和性高分子を結合させた光散乱粒子(3)(ii):149.4nm、ドーパミン結合PEG溶液(iii)を用いて作製した生体親和性高分子を結合させた光散乱粒子(3)(iii):156.4nm、であった。また、PDI(多分散度)はそれぞれ、(3)(i)0.044、(3)(ii)0.011、および(3)(iii)0.042であった。
操作17:蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)および(3)(ii)の個別投与によるUM−UC−3膀胱癌細胞における検出器を用いた蛍光の増強効果
ALA水溶液(50mmol/l)をE−MEM培地(ATCC−formulated Eagle’s Minimum Essential Medium(ATCC))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また光散乱、粒子(2)(ii)および光散乱粒子(3)(ii)の水溶液をE−MEM培地に混和し、それぞれ0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
ALA水溶液(50mmol/l)をE−MEM培地(ATCC−formulated Eagle’s Minimum Essential Medium(ATCC))に混和し、2mmol/lのALA溶液とした。また光散乱、粒子(2)(ii)および光散乱粒子(3)(ii)の水溶液をE−MEM培地に混和し、それぞれ0.001w/v%の光散乱粒子溶液とした。
操作3で得られた6ウェルプレートのUM−UC−3細胞の培地をアスピレータにて除去し、操作5と同様の条件で評価を行い、検出に用いた。
検出は光学分光検出器(USB2000小型ファイバ光学分光器、Ocean Optics)を用いて、室温下、暗所にて行った。励起光は波長405nmのLED光源ランプ(M405F1、Thorlabs)と接続したφ=1mm、開口数0.5の光学ファイバ(M59L01、Thorlabs)を経由して、さらに焦点距離=4.34mm、開口数=0.57のコリメートレンズ(F230SMA−A、Thorlabs)を通し、上面垂直方向より6ウェルプレートの細胞へ励起光を照射して、そこから生じた蛍光を上面50度方向に設置した焦点距離=10.9mm、開口数=0.25のコリメートレンズ(F220SMA−A、Thorlabs)を通し、さらにφ=1mm、開口数0.5の光学ファイバー(M59L01、Thorlabs)を経由して、上記光学分光検出器で検出した。励起光の出力はLEDドライバ(DC4100、Thorlabs)を用い500mAに設定した。励起光の波長405nmの照射パワー密度を、光強度測定器(PM160、Thorlabs)を用いて測定した結果、照射対象の6ウェルプレートの高さにおいて、10mW/cm2であった。上記光学分光検出器の設定はPC制御にて行い、制御計測ソフトウェア(Spectra Suite、Ocean Optics)を用いて露光時間100ms、測定平均回数は1回、波長スペクトル範囲は200nm〜800nmにそれぞれ設定し、上記光学分光検出器で検出した波長スペクトルを取得した。測定サンプルに光を照射した際に取得された波長スペクトルから、ダークノイズ分の波長スペクトルを減算した後、蛍光ピークを示す波長635nmの強度値を求めた。また、コントロールとして蛍光色素を投与しなかった細胞のみに光を照射した際に取得された波長スペクトルから、ダークノイズ分の波長スペクトルを減算した後、波長635nmの強度値を求めた。参照強度として、上記と同様に波長600nmにおける強度値を測定サンプルおよびコントロールについてそれぞれ求め、測定サンプルの値からコントロールの値を減算して参照強度とした。次に、この参照強度をコントロールの波長635nmの強度値に加算した値をそれぞれの測定サンプルにおけるバックグラウンドの強度値とした。そして、測定サンプルの波長635nmの強度値から、それぞれの測定サンプルにおけるバックグラウンドの強度値を減算した差分をもとめ、蛍光検出強度を計算した。相対蛍光強度は上記で取得された蛍光検出強度を用いて次式を用いて算出した。
[相対蛍光検出強度]=[各条件での蛍光検出強度]/[蛍光色素のみ投与の場合における光照射直後の蛍光検出強度]
[相対蛍光検出強度]=[各条件での蛍光検出強度]/[蛍光色素のみ投与の場合における光照射直後の蛍光検出強度]
表13より明らかなように、蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)および光散乱粒子(3)(ii)の個別投与の場合では、光照射直後において蛍光色素のみ投与の場合よりも非常に高い相対蛍光検出強度が得られた。これは、別に個別投与された光散乱粒子(2)(ii)および光散乱粒子(3)(ii)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。さらに、培養した腫瘍細胞の上面垂直方向より6ウェルプレートの細胞へ励起光を照射して、そこから生じた蛍光を上面50度方向から計測することで、蛍光色素から発せられる蛍光が増強されることを確認できた。これは、上面から細胞へ可視光域の励起光を照射したにも関わらず、別に個別投与された光散乱粒子(2)(ii)および光散乱粒子(3)(ii)により可視光散乱が強められ、蛍光色素から発せられる蛍光が増強された結果と考えられる。以上から、本発明において蛍光色素と光散乱粒子(2)(ii)および光散乱粒子(3)(ii)を個別投与で用いることで、検出器を用いた系において、従来の蛍光色素のみより蛍光が増強されて、より高い検出強度でUM−UC−3膀胱癌細胞を判別できることが明らかとなった。
Claims (14)
- 腫瘍細胞と正常細胞とを判別する方法であって、
(a)腫瘍選択性を有する蛍光色素を前記腫瘍細胞内に取込ませる工程と、
(b)光散乱粒子を前記腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または前記腫瘍細胞内に取込ませる工程と、
(c)前記蛍光色素が前記腫瘍細胞において蛍光を発するタイミングで前記蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を前記腫瘍細胞に照射する工程と
を少なくとも含んでなる、腫瘍細胞の判別方法。 - 前記工程(a)が、腫瘍選択性を有する蛍光色素を生体内に投与し、当該蛍光色素を前記腫瘍細胞内に取込ませる工程であり、かつ
前記工程(b)が、光散乱粒子を生体内に投与し、前記腫瘍細胞表面に吸着させる、および/または前記腫瘍細胞内に取込ませる工程である、
請求項1に記載の方法。 - 前記腫瘍細胞が、上皮性腫瘍細胞、非浸潤性の腫瘍細胞、または上皮内癌の実質を構成する腫瘍細胞である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記蛍光を生じる波長の光が可視光である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記蛍光を、内視鏡を用いて観察して、および/または、検出器を用いて検出して、腫瘍細胞を判別する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記腫瘍細胞が、膀胱癌、尿路上皮癌、大腸癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、または胆道癌の実質を構成する腫瘍細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記蛍光によって、腫瘍の領域を正常領域と区別する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記蛍光色素と光散乱粒子は結合されていない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記腫瘍選択性を有する蛍光色素が、5−アミノレブリン酸類およびヒペリシン類からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記光散乱粒子が、酸化チタン、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、およびポリスチレン群から選ばれる少なくとも1種の粒子である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記光散乱粒子が、生体親和性高分子を表面に結合してなるものである、請求項10に記載の方法。
- 前記生体親和性高分子が、ポリエチレングリコールである、請求項11に記載の方法。
- 前記光散乱粒子が、腫瘍細胞と結合可能な分子を表面にさらに備えてなるものである、請求項11に記載の方法。
- 腫瘍細胞の判別システムであって、
(1)腫瘍選択性を有する蛍光色素と、光散乱粒子とを含んでなり、前記蛍光色素と光散乱粒子とが結合されていない診断薬、
(2)腫瘍細胞内に取り込まれた前記蛍光色素と、腫瘍細胞表面に吸着された、および/または腫瘍細胞内に取込まれた前記光散乱粒子とに対して、前記蛍光色素に蛍光を生じる波長の光を照射可能な光源、および
(3)上記光源により照射された結果、腫瘍細胞において発生した蛍光を観察または検出する光学機器
を備えてなる、腫瘍細胞の判別システム。
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