以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、実施形態に係る超音波診断装置が示されている。この超音波診断装置は、生体に対して超音波を送受波し、これにより得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成する医療用の装置である。
図1において、超音波診断装置は装置本体10と超音波プローブ11とにより構成されている。超音波プローブ11は、プローブヘッド12、ケーブル30及びコネクタ32からなるものである。コネクタ32が装置本体10側のコネクタ36に着脱可能に接続される。
プローブヘッド12は、超音波送受波器として機能するものであり、その送受波面18Aが生体20の表面に当接される。プローブヘッド12は超音波振動子14を有する。超音波振動子14は、本実施形態において、図示されたz方向に直交するx方向及びy方向に二次元配列された複数の振動素子からなり、つまり超音波振動子14は振動素子アレイにより構成されている。超音波振動子14の前側(生体側)には整合層16が設けられ、更にその前側には保護層18が設けられている。整合層16は、複数の整合素子からなる整合素子アレイとして構成されている。z方向に複数の整合層が積層されてもよい。保護層18の表面が上記の送受波面18Aである。送受波面18Aは生体20に接触する面であり、生体安全性の観点から、その温度を管理する必要がある。例えば、その温度が所定温度(例えば43度)を超えないように、送受信を制御することが求められる。
超音波振動子14の後側(非生体側)にはバッキング22が設けられている。バッキング22は二次元配列された複数のリードからなるリードアレイを内蔵している。バッキング22の後側には中継基板24及び電子回路としてのIC(集積回路)26が設けられている。IC26はチャンネルリダクション機能つまりサブビームフォーミング機能を有する。IC26が有する端子群が中継基板24及びリードアレイを介して振動素子アレイに電気的に接続されている。中継基板24の裏面には温度センサ28が設けられている。温度センサ28は例えばサーミスタで構成される。温度センサ28は、プローブヘッド12の内部温度、特に、IC26の近傍位置で内部温度を検出するものである。プローブヘッド12の内部に複数の温度センサが配置されてもよい。体表当接型の超音波プローブに代えて、体腔内挿入型の超音波プローブが利用されてもよい。1D超音波プローブが利用されてもよい。ワイヤレス方式の超音波プローブが利用されてもよい。
プローブヘッド12において、IC26及び超音波振動子14がそれぞれ熱源となる。IC26から送受波面18Aへ伝わる熱が図1においてQ1で示されており、超音波振動子14から送受波面18Aへ伝わる熱が図1においてQ2で示されている。もっとも、送信開始直後等、過渡期においては、生体20の温度又は環境温度の方が超音波振動子14やIC26の温度よりも高い場合もある。
プローブヘッド12とコネクタ32との間にはケーブル30が設けられている。ケーブル30は例えば百数十本の信号線を有する。コネクタ32は、本実施形態において、環境温度を測定する温度センサ34を有している。温度センサ34は例えばサーミスタにより構成される。本実施形態に係る超音波診断装置は、後に詳述するように、診断モード(Bモード、CWモード等)、消費電力に関わる送受信条件、内部温度、環境温度等に基づいて送受波面18Aの温度を推定する機能を有する。
装置本体10について説明する。送受信部38はメインビームフォーマーとして機能する電子回路である。具体的には、送受信部38は、送信時において、遅延処理された複数の送信信号をIC26へ出力する。IC26は、それらの複数の送信信号に基づいて、数百個又は数千個にも及ぶ複数の振動素子へ与える複数の送信信号を生成する。受信時において、複数の振動素子からの複数の受信信号がIC26において遅延加算処理され、その処理後の複数の受信信号が送受信部38へ送られる。送受信部38は、複数の受信信号に対して更なる遅延加算処理を適用し、これによって受信ビームに相当するビームデータを出力する。例えば、x方向への1回の超音波ビームの走査に当たり、1つの受信フレームデータが生成される。1つの受信フレームデータは複数のビームデータにより構成される。個々のビームデータは深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。
ビームデータ処理部40は、ビームデータを順次処理する電子回路である。その処理として、検波処理、対数変換処理、相関処理、等があげられる。画像形成部42は電子回路として構成され、具体的には、それはデジタルスキャンコンバータ(DSC)によって構成される。画像形成部42は、受信フレームデータ列に基づいて表示フレームデータ列を生成する。その際においては、座標変換、画素補間、レート変換等の各処理が実行される。表示フレームデータ列は、時間軸上に並ぶ複数の表示フレームデータで構成され、それは、例えば、動画像としてのBモード断層画像を構成する。三次元画像、ドプラ波形画像、等が形成されてもよい。表示部44の表示画面上には超音波画像が表示される。表示部44は有機ELデバイス、LCD等によって構成される。
制御部46は、プログラムに従って動作するCPUによって構成される。制御部46は、図1に示した個々の構成を制御するものであり、特に、送受波面の温度を管理する機能を備えている。図1においては、その機能が温度管理部48として表現されている。温度管理部48には、例えば、プローブ種別、診断モード、送受信条件、内部温度、環境温度等の情報が与えられる。温度管理部48は、それらの情報に基づいて、送受波面の温度を推定し、また、推定された温度に従って装置動作を制御する。例えば、推定された温度が限界値又は閾値に到達した場合に、送受信を強制的に停止する制御を実行する。推定された温度は、状況に応じて、表示部44の画面上に数値等として表示される。制御部46には、図示されていない操作パネルが接続されている。操作パネルは、トラックボール、スイッチ、つまみ、キーボード等を有する入力デバイスである。
図2には、図1に示した温度管理部48の構成例がブロック図として示されている。個々のブロックは実際にはプログラムに相当する。但し、個々のブロックがプロセッサ又はデバイスによって構成されてもよい。
消費電力演算器50は、診断モード及び送受信条件に基づいて消費電力を演算するモジュールである。送受信条件として、送信電圧、送信周波数、波数、PRT(パルス繰り返し周期)、送信チャンネル数(送信開口を構成する素子数)、送信重み関数、受信チャンネル数、受信重み関数、等があげられる。本実施形態では、ICの消費電力Picと超音波振動子の消費電力Ptdの2つが演算されている。装置本体から見て観測可能なものは超音波プローブ全体の消費電力であり、また装置本体から見て最初に見えるのはICであるから、装置本体から見た消費電力がICの消費電力Picとされている。それを基準として、内分け消費電力として、超音波振動子の消費電力Ptdが推定されている。もっとも、これは計算上の都合によるものであり、IC単体の消費電力を求め、それを温度推定の基礎に含めるようにしてもよい。また、他の算定基準に従って、個々の消費電力を求めるようにしてもよい。後述する消費電力Ptotalは、消費電力Picと消費電力Ptdとを便宜上、合算したものである。
体腔に挿入される超音波プローブに比べて、体表に当接される超音波プローブの場合、超音波振動子での消費電力(発熱)が非常に大きく、超音波振動子の消費電力を考慮して、送受波面の温度を推定することが望まれる。
第1演算器52は、基本関数に従って、送受波面の温度を推定するものである(2つの演算器52,54で推定される2つの温度を相互に区別するため、第1演算器52により推定される温度をTAとし、第2演算器54で演算される温度をTBとする。)。基本関数は、通常期(安定変化期)において、温度を推定するための関数である。実験及び研究の結果から、基本関数として、以下に示す一次式が求められている。
上記(1)式において、T1は、検出された内部温度である(本願明細書において温度はすべて摂氏で表記する。)。αは傾き係数であり、超音波プローブに応じて、例えば0.6、0.7又は0.8といった一定値が定められる。(C1+C2+C3)の項はそれら全体として切片(オフセット)を規定する。詳しくは、C1は消費電力Ptotal(=Pic+Ptd)に対して所定の係数を乗算することにより定められる。C2は環境温度Tenvに対して所定の係数を乗算することにより定められる。C3は調整用の定数である。上記(1)式は、送受波面の温度TAが内部温度T1に比例すること、消費電力Ptotal及び環境温度T2が切片を規定すること、を表している。もっとも、プローブ構造その他に応じて他の関数を基本関数として利用するようにしてもよい。上記(1)式に従い、一定の時間間隔(例えば1秒間隔)で温度TAが演算される。
第2演算器54は、補助関数に従って、送受波面の温度を第2温度TBとして推定するものである。補助関数は、過渡期(状態が急に変化する期間)において、換言すれば、基本関数による温度推定が成り立たない期間において、送受波面の温度を推定するための関数である。実験及び研究の結果から、補助関数として、以下に示す漸化式が求められている。
上記(2)式において、Tpreは、前回の演算で推定された温度(TA又はTB)である。ΔT1は、現在検出された内部温度T1から前回検出された内部温度T1preを減算して得られる差分値である(ΔT1=T1−T1pre)。βは傾き係数である。診断モードや装置状態に応じてβを適応的に可変するのが望ましい。
なお、プローブ使用開始時において、Tpreには、内部温度T1及び環境温度T2から定まる温度が与えられてもよい。Tpreに対して、生体温度を与えてもよい。上記(2)式に従い、一定の時間間隔(例えば1秒間隔)で、温度TBが演算される。後述する選択部56は第1演算器52及び第2演算器54の動作タイミングに同期して動作する。
上記(2)式は、前回の演算で推定された温度Tpreを正しいものと仮定し、それを基礎とし、そこからの連続性を担保しつつ、内部温度T1の変化方向及び変化量から、今回の送受波面の温度TBを推定するものである。
基本関数と補助関数のコンビネーションによれば、基本関数による簡潔な温度推定を基本としつつも、それでは対応できない過渡期において、一定の精度をもって温度を推定することが可能である。つまり、諸状況下においてリアルタイムで温度を推定することが可能となる。基本関数だけ利用した場合、それが一次関数であることから、消費電力変更時に推定温度が大きく変化し、つまり、前回の推定温度と今回の推定温度との間に大きな段差が生じてしまうという問題が生じ易いが、上記構成によれば、補助関数を一時的に適用して、そのような問題が生じることを回避でき、あるいは、その問題を軽減することが可能である。なお、第1演算器52及び第2演算器54は推定手段として機能する。以下に説明する選択部56は選択手段として機能する。
選択部56は、推定された温度TA及び温度TBのいずれかを推定温度Tとして出力するモジュールである。その選択に際しては、内部温度T1、消費電力Pic、消費電力Ptd、温度TA及び温度TBが参照されてもよい。温度TA及び温度TBの比較結果が選択基準に含まれる場合、選択に先立って、温度TA及び温度TBの両方が同時並行的に計算される。プローブヘッド内での消費電力の変化方向等が選択基準に含まれてもよい。
本実施形態では、基本関数及び補助関数に従って温度TA,TBが演算されているが、更に他の関数により温度TC等を演算し、それを選択対象に加えてもよい。
平滑器58は、現時点で演算された推定温度から数えて、過去の方向に所定個(例えば8個)の推定温度を参照し、その平均値を出力するモジュールである。他の平滑化方式が採用されてもよい。
温度制御部60は、推定温度Tが第1温度Tx1(例えば36度)以上かつ第2温度Tx2(例えば40度)未満であれば、推定温度Tを通常表示態様で数値として表示し、推定温度Tが第2温度Tx2以上かつ第3温度Tx3(例えば43度)未満であれば、推定温度Tをハイライト表示態様で数値として表示し、同時に警告メッセージを表示する制御を実行する。推定温度Tが第3温度Tx3以上であれば、それらの表示を行うと共に、送受信を強制的に止める制御を実行する。これによりクールダウンのための状態が形成される。その後、推定温度Tが第4温度Tx4(例えば40度)未満となった場合、送受信を許容する制御を実行する。但し、実際には、検査者によるフリーズ解除操作があってから、送受信が可能となる。但し、これらの制御内容は一例に過ぎないものである。上記閾値比較において、温度のばらつき又は推定誤差を考慮するようにしてもよい。
図3には、図1に示したプローブヘッド12の詳細な構造が示されている。図3においては紙面上方向がz方向(当接方向)である。二次元振動素子アレイ66は圧電材料で構成され、例えば、PZTなどのセラミックス、PMN−PTなどの単結晶、等で構成される。二次元振動素子アレイ64の前側(生体側)には二次元整合素子アレイ68が設けられている。そこに2つ又はそれ以上の個数の整合層が設けられてもよい。その前側には、バリアフィルム88を介して、保護層72が設けられている。保護層72は、シリコーンゴム等によって構成される。その表面(送受波面)が湾曲していてもよい。二次元振動素子アレイ66の後側(非生体側)には二次元ハードバッキング(HB)素子アレイ64が設けられている。個々のHB素子は、対応する振動素子との関係において共振器として機能する。それは導電性材料により構成される。HB素子と振動素子の組み合わせ体がそれ全体としてλ/2に対応する(λは中心周波数における波長である)。二次元HB素子アレイ64の後側にはバッキング(ソフトバッキング)70が設けられている。バッキング70は、後方に放射された超音波を減衰させる部材で構成される。バッキング70には複数のリードからなるリードアレイが埋設されている。バッキング70の後側には中継基板74が設けられている。中継基板74はインターポーザーであり、多層基板として構成されている。中継基板74の後面には電子回路としてのIC76が接合されている。IC76は中継基板74に対してフリップチップ方式で実装されている。IC76における端子群が、中継基板74、リードアレイ及び二次元HB素子アレイ64を介して、二次元振動素子アレイに電気的に接続される。
中継基板74の後面であってIC76の近傍には内部温度T1を検出する温度センサ78が設けられている。それはサーミスタにより構成されている。中継基板74上に複数の温度センサが設けられてもよい。温度センサ78が熱伝導条件を満たす他の箇所(例えばバッキング70の側面、他の基板)に設けられてもよい。中継基板74には2つのフレキシブル回路基板(FPC)82,84が接続されている。それらに形成された導電ライン列が図示されていない複数の信号線に接続される。IC76の後面には放熱ブロック86が接合されている。バッキング作用を有する放熱ブロック86が利用されてもよい。なお、保護層72の内部であってバリアフィルム88の周囲には接着剤71が充填されている。符号80は樹脂ケースを示している。上記構成では、温度センサ78により、IC76の近傍において、その温度に近い温度として、内部温度T1が検出される。
図4にはコネクタ100(図1おいて符号32を参照)が示されている。外ケース102は樹脂で構成された中空筐体であり、それは2つの半ケース102A,102Bからなる。外ケース102の内部には、金属で構成される内ケース112が設けられている。内ケース112も2つの半ケース112A,112Bからなる。内ケース112の内部には、複数の電子回路基板110が設けられている。複数の電子回路基板110を包み込むように内ケース112が設けられている。それは個々の電子回路基板110に対して電磁シールド作用を発揮する。つまり、内ケース112はシールドケースである。複数の電子回路基板110はコネクタブロック104に物理的に連結されている。個々の電子回路基板110には複数の電子部品(ICを含む)が搭載されており、それによって各送信信号及び各受信信号に対して必要な信号処理が施される。
内ケース112と外ケース102との間には隙間空間が存在し、そこには基板114が配置されている。具体的には、外ケース102の内面に対して基板114が複数のネジで固定されている。基板114の下面(内ケース112側の面)には温度センサ116が設けられている。それはサーミスタによって構成される。温度センサ116は環境温度T2を検出するものである。
図5にはコネクタの内部が示されている。上記のように、外ケース102と内ケース112との間に基板114が配置され、その基板114上に温度センサ116が配置されている。基板114と特定の電子回路基板との間が信号線118で接続される。隙間空間内に温度センサ116が配置されているので、換言すれば、内ケース112の外側に温度センサ116が配置されているので、複数の電子回路基板110において仮に発熱が生じたとしても(あるいは装置本体からの熱が複数の電子回路基板110に及んだとしても)、温度センサ116において、その熱の影響を受けてしまうことを防止でき、又は、その影響があってもそれを軽減できる。外ケース102の内部に温度センサが配置されているので、それを物理的に保護できる。もっとも、温度センサを他の場所(例えば本体)に設けるようにしてもよい。
図6には温度管理方法の一例が示されている。S10では本処理を終了させるか否かが判断される。所定の終了条件が満たされた場合に本処理が終了する。S12においては、内部温度T1及び環境温度T2が正常範囲内にあるか否かが判断される。いずれかの温度が異常値に相当する場合、温度センサの故障等の可能性があるので、S14においてエラー処理が実行される。エラー処理としては、警告メッセージの表示等があげられる。その場合、発熱抑制モードが自動的に設定されてもよい。
S16においては、送受信条件、内部温度及び外部温度に基づいて、送受波面の温度が推定される。既に説明したように、本実施形態では、基本関数による温度TAの推定と補助関数による温度TBの推定とが同時並行的に実行され、2つの温度TA,TBの内のいずれかが推定温度Tとして選択される。S18では、通常制御方式及びクールダウン制御方式のいずれの方式が設定されているのかが判断される。
通常制御方式が設定されている場合、S20において、推定温度Tが第1温度Tx1(例えば36度)未満であるか否かが判断される。推定温度Tが第1温度Tx1未満であれば、S10以降の各工程が繰り返し実行される。S22において、推定温度が第1温度Tx1(例えば37度)以上で且つ第2温度Tx2(例えば40度)未満であることが判断された場合、S24において、推定温度Tが通常の表示態様で表示される。S26において、推定温度Tが第2温度Tx2(例えば40度)以上で且つ第3温度Tx3(例えば43度)未満であることが判断された場合、S28において、推定温度Tがハイライト表示態様で表示される。その際に併せて警告メッセージも表示される。
S26においてNoが判断された場合、つまり、推定温度Tが第3温度Tx3(例えば43度)以上であると判断された場合、S30において、S28と同様に温度等が表示されると共に、送受信を強制的に停止させる制御が実行される。S32では、送受波面の冷却のためにクールダウン制御方式が設定される。
S18において、制御方式としてクールダウン制御方式が設定されていると判断された場合、S34以降の工程が実行される。S34では、超音波プローブが交換されたか否かが判断される。超音波プローブの交換があった場合、一定条件下において、S38が実行される。S36では、推定温度Tが第4温度Tx4(例えば40度)未満まで到達したと判断された場合、S38が実行される。S38では、送受信禁止状態が解除され、つまり、所定操作(フリーズ解除操作)を行うことにより送受信を再開させることが可能となる。S40では通常制御方式が設定される。
以上のように、本実施形態によれば、推定温度Tが一定の温度まで達すると、送受信が禁止され、その後、クールダウン完了が確認された以降において、送受信の再開が許容される。送受信禁止の前段階において、推定温度が表示され、また必要な情報が表示されるので、それらの情報によって送受信の強制停止に至る前に自発的にクールダウン措置をとることが可能である。また、クールダウン後において自動的に送受信を再開させないので、不用意な温度上昇を防止できる。
既述した(1)式つまり基本関数において、内部温度T1と送受波面の推定温度TAは比例関係にあり、その傾きは基本的に一定値である。消費電力Pic,Ptdと、環境温度T2と、が基本関数における切片を規定する。一方、状態の急激な変化により生じる立ち上がり期及び立ち下がり期(つまり過渡期)においては、状態変化の時期及び内容に応じて、温度変化態様は様々となる。そこで、(2)式つまり補助関数においては、過去の推定温度Tを基礎として、内部温度変化ΔT1の方向及び変化量から、現在の温度TBを推定するようにしている。
図7には、温度上昇及びその後の温度下降を含む温度変化の一例が示されている。図7に示す例において、グラフ200は、当初の立ち上がり期に対応する部分200a、当初の立ち上がり期に続く通常期に対応する部分200b、送受信条件の変更(例えば停止)により生じた立ち下がり期に対応する部分200c、及び、立ち下がり期に続く通常期に対応する部分200dによって構成される。部分200bと部分200dは平行であるが、それぞれのオフセットは相違している。
当初の立ち上がり期においては部分200aが補助関数によって近似され(符号202参照)、通常期においては部分200bが基本関数によって近似される(符号204参照)。立ち下がり期においては部分200cが補助関数によって近似され(符号206参照)、通常期においては部分200dが基本関数によって近似される(符号208参照)。もちろん、超音波振動子の消費電力その他のパラメータに従ってより細かい選択条件を設けることが可能である。
なお、グラフ200の形態は超音波プローブの種別や構造によって大きく変わる。個々の超音波プローブごとにグラフを取得してその傾向を分析し、その超音波プローブ固有の選択条件を事前に定めておくのが望ましい。
超音波プローブ及び送受信条件に応じて、図7に示したグラフの形態つまりヒステリシス特性が異なるので、それに応じて必要な1又は複数のパラメータを参照するのが望ましい。
上記実施形態によれば、単一の基本関数に基づいて送受波面の温度を推定する場合に比べて、その温度の推定精度を高められる。すなわち、基本関数により温度を推定可能な通常期の他、基本式によっては温度を推定困難な過渡期においても、送受波面の温度を一定の精度で推定できる。特に、環境温度の影響も考慮して表受波面の温度を推定できる。