JP2019014151A - インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の制御方法、およびプログラム - Google Patents

インクジェット記録装置、インクジェット記録装置の制御方法、およびプログラム Download PDF

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孝俊 中野
中川 善統
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善統 中川
敦士 高橋
Atsushi Takahashi
敦士 高橋
拓也 深澤
Takuya Fukazawa
拓也 深澤
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Abstract

【課題】インクの増粘が進行した場合でも吐出口面を適切な状態に保つことができ、インクの吐出不良等の発生を抑制することができる。
【解決手段】インクを吐出する吐出口が配列された吐出口面と、吐出口と連通しインクが充填される圧力室と、を有する記録ヘッドと、圧力室の内部を通るようにインクを循環させる循環手段と、吐出口面を払拭するワイピング動作を行う払拭手段と、吐出口から吐出されたインク滴をカウントするドットカウント手段と、インクの濃度を取得する濃度取得手段と、ドットカウント手段によってカウントされたカウント値に基づいて第1のタイミングで払拭手段にワイピング動作を行わせる制御手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、制御手段は、濃度取得手段によって取得された濃度が濃度閾値を越えている場合に、第1のタイミングより早い第2のタイミングで払拭手段にワイピング動作を行わせることを特徴とする。
【選択図】図13

Description

本発明は、インクを吐出して画像を記録する記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置では、記録ヘッドの吐出口面をクリーニングするためにワイピングが行われる。特許文献1には、所定サイズの領域に記録されるドットの密度(デューティ)や記録モード(パス数および駆動周波数)に応じて、ワイピングの実行タイミングを決定する方法が開示されている。
特開2007−331309号公報
循環型のインク供給系を採用する記録装置では、インクタンクから吐出口にインクが絶えず供給されるため、循環中に吐出口から水分が蒸発し、循環経路内のインクの増粘が進行する。インクの増粘が進行すると、記録動作時に吐出口面に付着するインク(ミスト)の量が増大し、インクの吐出不良が発生しやすくなる。特許文献1に記載された方法は、インク粘度を考慮したワイピングが行われていないため、例えば、循環型のインク供給系を採用する記録装置に適用した場合に、インクの吐出不良等を発生させるおそれがある。
そこで、本発明の目的は、インクの増粘が進行した場合でも吐出口面を適切な状態に保つことができ、インクの吐出不良等の発生を抑制することである。
本発明によるインクジェット記録装置は、インクを吐出する吐出口が配列された吐出口面と、吐出口と連通しインクが充填される圧力室と、を有する記録ヘッドと、圧力室の内部を通るようにインクを循環させる循環手段と、吐出口面を払拭するワイピング動作を行う払拭手段と、吐出口から吐出されたインク滴をカウントするドットカウント手段と、インクの濃度を取得する濃度取得手段と、ドットカウント手段によってカウントされたカウント値に基づいて第1のタイミングで払拭手段にワイピング動作を行わせる制御手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、制御手段は、濃度取得手段によって取得された濃度が濃度閾値を越えている場合に、第1のタイミングより早い第2のタイミングで払拭手段にワイピング動作を行わせることを特徴とする。
本発明によれば、インクの増粘が進行した場合でも吐出口面を適切な状態に保つことができ、インクの吐出不良等の発生を抑制することができる。
記録装置が待機状態にあるときの図である。 記録装置の制御構成図である。 記録装置が記録状態にあるときの図である。 (a)〜(c)は、第1カセットから給送された記録媒体の搬送経路図である。 (a)〜(c)は、第2カセットから給送された記録媒体の搬送経路図である。 (a)〜(d)は、記録媒体の裏面に記録動作を行う場合の搬送経路図である。 記録装置がメンテナンス状態にあるときの図である。 (a)および(b)は、メンテナンスユニットの構成を示す斜視図である。 第1実施形態の記録装置で採用するインク供給ユニットを含む図である。 (a)および(b)は、記録素子基板の構成を説明するための図である。 (a)および(b)は、記録ヘッドから吐出されたインク滴が記録媒体に到達するまでの様子を示す図である。 (a)〜(c)は、記録ヘッドと、記録ヘッドの吐出口面をワイピングする複数のブレードワイパとを説明するための図である。 (a)〜(e)は、第1実施形態の記録装置が行うワイピングを説明するための図である。 (a)〜(c)は、第2実施形態の記録装置が行うワイピングを説明するための図である。 (a)および(b)は、第3実施形態の記録装置が行うワイピングを説明するための図である。 (a)および(b)は、第4実施形態の記録装置が行うワイピングを説明するための図である。 印刷要求を受け付けてから記録ヘッドのワイピングが行われるまでの、第5実施形態における処理の流れを示す図である。 印刷要求を受け付けてから記録ヘッドのワイピングが行われるまでの、第6実施形態における処理の流れを示す図である。
以下に述べる実施形態は、本発明の具体例であるから、技術的に好ましい様々の限定が付けられている。しかし、本発明の思想に沿うものであれば、実施形態は以下に記載の実施形態やその他の具体的方法に限定されるものではない。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側および下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述したように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
図4(a)〜(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
図5(a)〜(c)は、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bに給送されて記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字上に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
その後の搬送経路は、図4(b)および図4(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
図6(a)〜(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す。両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は図4(a)〜(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以後、図4(c)以後の搬送工程について説明する。
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示した第1面記録の場合と同様である。図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
図7は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
一方、記録ヘッド8を図3に示す記録位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
図8(a)はメンテナンスユニット16が待機ポジションにある状態を示す斜視図であり、図8(b)はメンテナンスユニット16がメンテナンスポジションにある状態を示す斜視図である。図8(a)は図1に対応し、図8(b)は図7に対応している。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、メンテナンスユニット16は図8(a)に示す待機ポジションにあり、キャップユニット10は鉛直方向上方に移動しており、ワイピングユニット17はメンテナンスユニット16の内部に収納されている。キャップユニット10はy方向に延在する箱形のキャップ部材10aを有し、これを記録ヘッド8の吐出口面8aに密着させることにより、吐出口からのインクの蒸発を抑制することができる。また、キャップユニット10は、キャップ部材10aに予備吐出等で吐出されたインクを回収し、回収したインクを不図示の吸引ポンプに吸引させる機能も備えている。
一方、図8(b)に示すメンテナンスポジションにおいて、キャップユニット10は鉛直方向下方に移動しており、ワイピングユニット17がメンテナンスユニット16から引き出されている。ワイピングユニット17は、ブレードワイパユニット171とバキュームワイパユニット172の2つのワイパユニットを備えている。
ブレードワイパユニット171には、吐出口面8aをx方向に沿ってワイピングするためのブレードワイパ171aが吐出口の配列領域に相当する長さだけy方向に配されている。ブレードワイパユニット171を用いてワイピング動作を行う際、ワイピングユニット17は、記録ヘッド8がブレードワイパ171aに当接可能な高さに位置決めされた状態で、ブレードワイパユニット171をx方向に移動する。この移動により、吐出口面8aに付着するインクなどはブレードワイパ171aに拭き取られる。
ブレードワイパ171aが収納される際のメンテナンスユニット16の入り口には、ブレードワイパ171aに付着したインクを除去するとともにブレードワイパ171aにウェット液を付与するためのウェットワイパクリーナ16aが配されている。ブレードワイパ171aは、メンテナンスユニット16に収納される度にウェットワイパクリーナ16aによって付着物が除去されウェット液が塗布される。そして、次に吐出口面8aをワイピングしたときにウェット液を吐出口面8aに転写し、吐出口面8aとブレードワイパ171a間の滑り性を向上させている。
一方、バキュームワイパユニット172は、y方向に延在する開口部を有する平板172aと、開口部内をy方向に移動可能なキャリッジ172bと、キャリッジ172bに搭載されたバキュームワイパ172cとを有する。バキュームワイパ172cは、キャリッジ172bの移動に伴って吐出口面8aをy方向にワイピング可能に配されている。バキュームワイパ172cの先端には、不図示の吸引ポンプに接続された吸引口が形成されている。このため、吸引ポンプを作動させながらキャリッジ172bをy方向に移動すると、記録ヘッド8の吐出口面8aに付着したインク等は、バキュームワイパ172cによって拭き寄せられながら吸引口に吸い込まれる。この際、平板172aと開口部の両端に設けられた位置決めピン172dは、バキュームワイパ172cに対する吐出口面8aの位置合わせに利用される。
本実施形態では、ブレードワイパユニット171によるワイピングを行いバキュームワイパユニット172によるワイピングを行わない第1のワイピング処理と、両方のワイピングを順番に行う第2のワイピング処理を実施することができる。以下、ブレードワイパユニット171によるワイピングをブレードワイピングと呼ぶ。また、バキュームワイパユニット172によるワイピングをバキュームワイピングと呼ぶ。第1のワイピング処理を行う際、プリントコントローラ202は、まず、記録ヘッド8を図7のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16から引き出す。そして、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8をブレードワイパ171aに当接可能な位置まで鉛直方向下方に移動させた後、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16内へ移動させる。この移動により、吐出口面8aに付着するインク等はブレードワイパ171aに拭き取られる。すなわち、ブレードワイパ171aは、メンテナンスユニット16から引き出された位置からメンテナンスユニット16内へ移動する際に吐出口面8aをワイピングする。
ブレードワイパユニット171が収納されると、プリントコントローラ202は、次にキャップユニット10を鉛直方向上方に移動させ、キャップ部材10aを記録ヘッド8の吐出口面8aに密着させる。そして、プリントコントローラ202は、その状態で記録ヘッド8を駆動して予備吐出を行わせ、キャップ部材10a内に回収されたインクを吸引ポンプによって吸引する。
一方、第2のワイピング処理を行う際、プリントコントローラ202は、まず、記録ヘッド8を図7のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16からスライドさせて引き出す。そして、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8をブレードワイパ171aに当接可能な位置まで鉛直方向下方に移動させた後、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16内へ移動させる。これにより、ブレードワイパ171aによるワイピング動作が吐出口面8aに対して行われる。次に、プリントコントローラ202は、再び記録ヘッド8を図7のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16からスライドさせて所定位置まで引き出す。続いて、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を図7に示すワイピング位置に下降させながら、平板172aと位置決めピン172dを用いて吐出口面8aとバキュームワイパユニット172の位置決めを行う。その後、プリントコントローラ202は、上述したバキュームワイパユニット172によるワイピング動作を実行する。プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向上方に退避させ、ワイピングユニット17を収納した後、第1のワイピング処理と同様に、キャップユニット10によるキャップ部材内への予備吐出と回収したインクの吸引動作を行う。
<インク供給ユニットについて>
図9は、本実施形態の記録装置1で採用するインク供給ユニット15を含む図である。図9を用いて本実施形態のインク循環系の流路構成を説明する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14から記録ヘッド8へインクを供給する構成である。ここでは、1色のインクについての構成を示しているが、実際にはこのような構成が、インク色ごとに用意されている。インク供給ユニット15は、基本的に図2で示したインク供給制御部209によって制御される。以下、ユニットの各構成について説明する。
インクは主にサブタンク151と記録ヘッド8(図9ではヘッドユニット)の間を循環する。ヘッドユニット8では画像データに基づいてインクの吐出動作が行われ、吐出されなかったインクが再びサブタンク151に回収される。
所定量のインクを収容するサブタンク151は、ヘッドユニット8へインクを供給するための供給流路C2とヘッドユニット8からインクを回収するための回収流路C4に接続されている。すなわち、サブタンク151、供給流路C2、ヘッドユニット8、および回収流路C4によってインクが循環する循環経路が構成される。
サブタンク151には複数のピンで構成される液面検知手段151aが設けられ、インク供給制御部209は、これら複数のピン間の導通電流の有無を検知することによって、インク液面の高さ即ちサブタンク151内のインク残量を把握することができる。減圧ポンプP0は、サブタンク151の内部を減圧するための負圧発生源である。大気開放弁V0は、サブタンク151の内部を大気に連通させるか否かを切り替えるための弁である。
メインタンク141は、サブタンク151へ供給されるインクを収容するタンクである。メインタンク141は可撓性部材で構成され、可撓性部材の容積変化によってサブタンク151へインクが充填される。メインタンク141は、記録装置本体に対して着脱可能な構成である。サブタンク151とメインタンク141を接続するタンク接続流路C1の途中には、サブタンク151とメインタンク141の接続を切り替えるためのタンク供給弁V1が配されている。
以上の構成のもと、インク供給制御部209は、液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量より少なくなったことを検知すると、大気開放弁V0、供給弁V2、回収弁V4、およびヘッド交換弁V5を閉じ、タンク供給弁V1を開く。この状態において、インク供給制御部209は減圧ポンプP0を作動させる。すると、サブタンク151の内部が負圧となりメインタンク141からサブタンク151へインクが供給される。液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量を超えたことを検知すると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ減圧ポンプP0を停止する。
供給流路C2は、サブタンク151からヘッドユニット8へインクを供給するための流路であり、その途中には供給ポンプP1と供給弁V2が配されている。記録動作中は、供給弁V2を開いた状態で供給ポンプP1を駆動することにより、ヘッドユニット8へインクを供給しつつ循環経路においてインクを循環することができる。ヘッドユニット8によって単位時間あたりに吐出されるインクの量は画像データに応じて変動する。供給ポンプP1の流量は、ヘッドユニット8が単位時間あたりのインク吐出量が最大となる吐出動作を行った場合にも対応できるように決定されている。
リリーフ流路C3は、供給弁V2の上流側であって、供給ポンプP1の上流側と下流側を接続する流路である。リリーフ流路C3の途中には差圧弁であるリリーフ弁V3が配される。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量がヘッドユニット8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量(インクを引く量)の合計値よりも多い場合は、リリーフ弁V3は自身に作用する圧力に応じて開放される。これにより、供給流路C2の一部とリリーフ流路C3とで構成される巡回流路が形成される。上記リリーフ流路C3の構成を設けることにより、ヘッドユニット8に対するインク供給量はヘッドユニット8でのインク吐出量に応じて調整され、循環経路内の流圧を画像データによらず安定させることができる。
回収流路C4は、ヘッドユニット8からサブタンク151へインクを回収するための流路であり、その途中には回収ポンプP2と回収弁V4が配されている。回収ポンプP2は、循環経路内にインクを循環させる際、負圧発生源となってヘッドユニット8よりインクを吸引する。回収ポンプP2の駆動により、ヘッドユニット8内のIN流路80bとOUT流路80cの間に適切な圧力差が生じ、IN流路80bとOUT流路80cの間でインクを循環させることができる。ヘッドユニット8内の流路構成については後に詳しく説明する。
回収弁V4は、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときの逆流を防止するための弁である。本実施形態の循環経路では、サブタンク151はヘッドユニット8よりも鉛直方向において上方に配置されている(図1参照)。このため、供給ポンプP1や回収ポンプP2を駆動していないとき、サブタンク151とヘッドユニット8の水頭差によって、サブタンク151からヘッドユニット8へインクが逆流してしまうおそれがある。このような逆流を防止するため、本実施形態では回収流路C4に回収弁V4を設けている。
同様に供給弁V2も、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときに、サブタンク151からヘッドユニット8へのインクの供給を防止するための弁として機能する。
ヘッド交換流路C5は、供給流路C2とサブタンク151の空気層(インクが収容されていない部分)を接続する流路であり、その途中にはヘッド交換弁V5が配されている。ヘッド交換流路C5の一端は供給流路C2におけるヘッドユニット8の上流に接続し、他端はサブタンク151の上方に接続して内部の空気層と連通する。ヘッド交換流路C5は、ヘッドユニット8を交換する際や記録装置1を輸送する際など、使用中のヘッドユニット8からインクを回収するときに利用される。ヘッド交換弁V5は、記録装置1にインクを初期充填するときとヘッドユニット8からインクを回収するとき以外は閉じるように、インク供給制御部209によって制御される。また、上述した供給弁V2は、供給流路C2において、ヘッド交換流路C5との接続部と、リリーフ流路C3との接続部の間に設けられている。
次に、ヘッドユニット8内の流路構成について説明する。供給流路C2よりヘッドユニット8に供給されたインクは、フィルタ83を通過した後、第1の負圧制御ユニット81と、第2の負圧制御ユニット82とに供給される。第1の負圧制御ユニット81は、弱い負圧に制御圧力が設定されている。第2の負圧制御ユニット82は、強い負圧に制御圧力が設定されている。これら第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82における圧力は、回収ポンプP2の駆動により適正な範囲で生成される。
インク吐出部80には、複数の吐出口が配列された記録素子基板80aが複数配置され、長尺の吐出口列が形成されている。第1の負圧制御ユニット81より供給されるインクを導くための共通供給流路80b(IN流路)と、第2の負圧制御ユニット82より供給されるインクを導くための共通回収流路80c(OUT流路)も、記録素子基板80aの配列方向に延在している。さらに個々の記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路が形成されている。このため、個々の記録素子基板80aにおいては、相対的に負圧の弱い共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い共通回収流路80cへ流出するような、インクの流れが生成される。個別供給流路と個別回収流路との経路中に、各吐出口に連通し、インクを充填する圧力室が設けられており、記録を行っていない吐出口や圧力室においてもインクの流れが生じる。記録素子基板80aで吐出動作が行われると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口から吐出されることによって排出されるが、吐出されなかったインクは共通回収流路80cを経て回収流路C4へ移動する。
以上の構成のもと、記録動作を行うとき、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1とヘッド交換弁V5を閉じ、大気開放弁V0、供給弁V2、および回収弁V4を開き、供給ポンプP1および回収ポンプP2を駆動する。これにより、サブタンク151→供給流路C2→ヘッドユニット8→回収流路C4→サブタンク151の循環経路が確立する。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量がヘッドユニット8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量の合計値よりも多い場合は、供給流路C2からリリーフ流路C3にインクが流れ込む。これにより、供給流路C2からヘッドユニット8に流入するインクの流量が調整される。
記録動作を行っていないとき、インク供給制御部209は、供給ポンプP1および回収ポンプP2を停止し、大気開放弁V0、供給弁V2、および回収弁V4を閉じる。これにより、ヘッドユニット8内のインクの流れは止まり、サブタンク151とヘッドユニット8の水頭差による逆流も抑制される。また、大気開放弁V0を閉じることで、サブタンク151からのインク漏れやインクの蒸発が抑制される。
ヘッドユニット8からインクを回収するとき、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1、供給弁V2、および回収弁V4を閉じ、大気開放弁V0およびヘッド交換弁V5を開き、減圧ポンプP0を駆動する。これにより、サブタンク151内が負圧状態になり、ヘッドユニット8内のインクは、ヘッド交換流路C5を経由してサブタンク151へ回収される。このように、ヘッド交換弁V5は、通常の記録動作や待機時には閉じられており、ヘッドユニット8からインクを回収する際に開放される弁である。但し、ヘッドユニット8への初期充填においてヘッド交換流路C5にインクを充填する際もヘッド交換弁V5は開放される。
<インク吐出部について>
図10(a)は記録素子基板80aの一部を拡大した平面模式図であり、図10(b)は、図10(a)の断面線Xb−Xbにおける断面模式図である。記録素子基板80aには、インクが充填される圧力室1002とインクを吐出する吐出口84が設けられている。圧力室1002において、吐出口84と対向する位置には記録素子1001が設けられている。また、記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路1003と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路1004とが吐出口84毎に複数形成されている。
上述した構成により、記録素子基板80aでは、相対的に負圧の弱い(圧力の高い)共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い(圧力の低い)共通回収流路80cへ流出するインクの流れが生成される。より詳しくは、共通供給流路80b→個別供給流路1003→圧力室1002→個別回収流路1004→共通回収流路80cの順にインクが流れる。記録素子1001によってインクが吐出されると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口84から吐出されることによってヘッドユニット8の外部へ排出される。一方、吐出口84から吐出されなかったインクは、共通回収流路80cを経て回収流路C4へ回収される。
<インク濃度とインク滴について>
図11は、記録ヘッド8(図の左側)から吐出されたインク滴が記録媒体S(図の右側)に到達するまでの様子を示す図である。図11(a)には、初期状態(すなわち、蒸発率が0%)のインクが吐出される様子が示されている。図11(a)では、主滴と、主滴に対して相対的に粒径の小さいサテライトが2つ存在している。図11において、主滴は吐出方向における先頭のインク滴である。また、サテライトは吐出方向において主滴の後ろに続くインク滴を示す。ここでは、サテライトの数が少ない状態のことを、記録ヘッド8の滴形成が相対的に良い、と定義する。
一方、図11(b)には、水分蒸発により増粘したインクが吐出される様子が示されている。図11(b)では、主滴に対してサテライトが4つ或いは5つ存在しており、図11(a)と比べて、記録ヘッド8の滴形成が悪い。上述したように、インクを循環させると、吐出口84から水分が蒸発してインクの増粘が進行する。インクの増粘が進行すると、インクが増粘していない場合と比較して、吐出口84からインクを吐出した後、次の吐出のために吐出口84にインクがリフィルされるまでの時間が長くなる。その結果、リフィルが間に合わない状態で吐出されることでインクの吐出不良が起きたり、滴形成が相対的に悪化したりする。本実施形態の記録装置1では、インクの蒸発率が高くなるにつれて相対的に滴形成が悪化する。
なお、図11(a)(b)では、搬送速度を13ips、ヘッドの駆動周波数を15.6kHzとしたときの記録ヘッド8から吐出されたインク滴の様子が示されている。また、図11(a)における推定fr(リフィル周波数)は19kHzである。つまり、リフィル周波数がヘッド駆動周波数より高いので、適切にリフィルが行われ、図示されるように滴形成が良好な状態でインクが吐出されている。一方、図11(b)における推定frは14kHzである。つまり、リフィル周波数がヘッド駆動周波数より低いので、リフィルがインクの吐出に間に合わなくなり、インクの滴形成が悪化し、図示されるようにミストが発生している。
サテライトの中でも粒径の小さいものは、記録媒体Sに着弾せずに巻き上がって記録ヘッド8の吐出口面8aに付着する。したがって、同じドット数を印字した場合でも、水分蒸発によりインク粘度が高くなるほど、吐出口面8aに付着するインク(ミスト)の量が増大し、インクの吐出不良が発生しやすくなる。したがって、吐出口面8aを適切な状態に保つためには、少なくともインクの粘度に応じて、吐出口面8aをワイピングする必要がある。
<記録ヘッドとブレードワイパについて>
ここで、図12を用いて、本実施形態における記録ヘッド8と、記録ヘッド8の吐出口面8aをワイピングする複数のブレードワイパ171aとを説明する。図12(a)には、記録ヘッド8の吐出口面8aに配置される記録素子基板を底面から見た様子が示されている。図12(a)に示すように、記録ヘッド8は、シアンC,マゼンタM,イエロY,ブラックKの4色のインクを吐出可能な略平行四辺形の記録素子基板80aが直線上に複数配列(インラインに配置)されるライン型の記録ヘッドである。図12(b)には、第1のワイピング処理を行う際の、記録ヘッド8の吐出口面8aと、吐出口面8aをワイピングする複数のブレードワイパ171aとを、底面から見た様子が示されている。なお、理解を容易にするため、ブレードワイパユニット171については、ブレードワイパ171aのみを図示し、他の部材については記載を省略している。不図示の駆動機構によって、図12(b)の下方(ワイパの駆動方向、ワイパの移動方向)に向かってブレードワイパユニット171が駆動することで、吐出口面8aのインクや紙粉などをブレードワイパ171aが払拭するクリーニング動作が行われる。図12(c)には、隣り合う2つの記録素子基板80aの隣接部を底面から見た様子が示されている。図12(c)に示すように、各記録素子基板80aにおける吐出口84が配列される吐出口列85a〜85dが、記録ヘッド8の長手方向に対し一定角度傾くように配置されている。吐出口列85a,85b,85c,85dはそれぞれ、シアンC,マゼンタM,イエロY,ブラックKに対応する。
<ブレードワイパユニットによるワイピングについて>
図13を用いて、本実施形態の記録装置1が行うワイピングを説明する。図13(a)には、印刷要求を受け付けてから記録ヘッド8のワイピングが行われるまでの処理の流れが示されている。まず、プリントコントローラ202は、印刷要求を受け付けると、ROM203から各インク色の濃度情報N(以降、単に濃度Nと記す)を取得する濃度取得処理を行う(ステップS1301)。以下、インク色xの濃度をNxと記す。
ここで、インクの濃度Nについて説明する。本実施形態では、濃度Nとして、以下の式1によって算出される値がROM203に記憶されていて、プリントコントローラ202は、任意のタイミングで濃度Nを取得することが可能である。
N[n+1]=(N[n]×(J−I))÷(J−I−V)・・・式1
ここで、N[n]は、n回目の記録動作前の濃度Nを示す。N[n+1]は、n回目の記録動作後の濃度N、すなわちn+1回目の記録動作前の濃度Nを示す。Jは記録動作前のインクの循環システム内のインク量を示す。Iは記録によって吐出されたインク量を示す。Vは該循環システムからの蒸発量を示す。
プリントコントローラ202は、記録動作毎にN[n+1]を算出し、算出した濃度N[n+1]をROM203に上書き保存する。なお、濃度N[n]には、初期値(以下、Nrefと記す)として、図13(b)に示す値が格納されているものとする。また、安定吐出可能な濃度N[n]の上限値(以下、Nmaxと記す)として、図13(c)に示す値が予め定められているものとする。本実施形態におけるNmaxは、インクの蒸発率を10%とした場合、すなわち、(J−I−V)/(J−I)を0.9とした場合に、式1により導出されるN[n+1]の値に相当する。なお、図13(b)(c)に示すテーブルは例示に過ぎず、初期値Nrefと上限値Nmaxとに他の値が設定されていてもよい。
次いで、プリントコントローラ202は、記録動作を開始する(ステップS1302)。プリントコントローラ202は、記録動作中に、各インク色に対応する吐出口列(吐出口列85a〜85d)から吐出されるインク滴(ドット)の数をカウントする(ステップS1303)。以下、カウントされたドットの数をドットカウント値Dと記す。ドットカウント値Dは、ROM203等に記憶され、記録動作終了後もその値が保持される。したがって、ステップS1303において、ROM203等にドットカウント値Dが保持されている場合には、プリントコントローラ202は、その値からカウントを継続する。
記録動作が終了すると(ステップS1304)、プリントコントローラ202は、図13(d)に示すテーブルを参照して、記録動作終了時における各インク色の濃度Nに基づき、各インク色の係数Kを導出する(ステップS1305)。係数Kは、ドットカウント値Dを濃度Nに応じて補正するための係数である。プリントコントローラ202は、各インク色について得られたドットカウント値Dに、各インク色について導出した係数Kをそれぞれ乗算して得られる値を、各インク色の補正後のドットカウント値D´として取得する(ステップS1306)。以下、インク色xに対応するドットカウント値D、補正後のドットカウント値D´、及び係数Kを、それぞれDx、D´x、及びKxと記す。なお、図13(d)における0.0842という数値は、蒸発率を5(=10÷2)%とした場合、すなわち、(J−I−V)/(J−I)を0.95とした場合に、式1により導出されるN[n+1]の値である。つまり、0.0842は、初期値Nrefと上限値Nmaxとの中間値である。図13(d)における0.0632も同様である。なお、図13(d)に示すように、本実施形態では、インク濃度が初期値Nrefと上限値Nmaxとの中間値を超えたときに、係数Kを、1.0から1.0より大きい値(1.5)に切り替えるようにしている。しかし、図13(d)に示すテーブルは例示に過ぎず、上記中間値以外の値が、係数Kを切り替える値としてテーブルに設定されていてもよい。なお、インク濃度を直接計測可能な濃度計測手段によって濃度に関する情報を取得してもよい。
プリントコントローラ202は、インク色xについて、補正後のドットカウント値D´と、ドットカウント閾値Sとを比較する(ステップS1307)。ドットカウント閾値Sは、記録ヘッド8をワイピングするか否かを決定するためのドットカウント値の閾値であって、図13(e)に示すように、予めインク色xごとに設定される。以下、ドットカウント閾値Sを単に閾値Sと記す場合がある。また、インク色xに対応する閾値SをSxと記す。なお、図13(b)〜(e)に示すテーブル(数値)は、予めROM203等の記憶部に記憶されているものとする。
補正後のドットカウント値D´xが閾値Sを超えていない場合には(ステップS1307のNO)、プリントコントローラ202は、未判定のインク色があるかを確認する(ステップS1308)。未判定のインク色がある場合には(ステップS1308のYES)、判定対象とするインク色を変更して(ステップS1309)、ステップS1307の処理に戻る。すべてのインク色について判定が行われている場合には(ステップS1308のNO)、プリントコントローラ202は処理を終了する。
補正後のドットカウント値D´xが閾値Sxを超えている場合には(ステップS1307のYES)、プリントコントローラ202は、ワイピングを実行する(ステップS1310)。ここでは、ブレードワイピングのみを行う第1のワイピング処理が行われるものとする。なお、ブレードワイピングとバキュームワイピングとを順番に行う第2のワイピング処理が行われてもよい。そして、プリントコントローラ202は、すべてのインク色のドットカウント値Dを0にリセットして(ステップS1311)、処理を終了する。
以上のように、本実施形態では、記録動作時の各インク色のドットカウント値Dを求めて、各インク色のドットカウント値Dを各インク色の濃度Nに基づいて補正する。具体的には、各インク色の濃度Nが濃度閾値(ブラックKの場合は0,0842、ブラックK以外のインクの場合は0.0632)を超えている場合に、1より大きい係数を各インク色のドットカウント値Dに乗算する。そして、各インク色の補正後のドットカウント値D´を用いて、ワイピングを行うか否かを決定している。したがって、本実施形態によれば、循環型のインク供給系を採用する記録装置において、インク濃縮を考慮したワイプタイミングの調整を行うことができる。それにより、インク濃縮に応じて適切なタイミングでワイピングが実行されるため、インクの増粘が進行した状態においても安定した吐出を行うことができる。
また、上述したように、ワイピングを実行した場合、その実行後に予備吐出が行われる。したがって、過剰にワイピングを行うと、廃インクの量を増加させるおそれがある。一方、本実施形態では、上記のような処理により、インクの増粘が進行していない状態ではワイピングの実行間隔が長く設定されるので、過剰なワイピングが抑制され、廃インクの量を低減することができる。また、過剰なワイピングが抑制されることにより、吐出口面8aの劣化を抑制することができる。
[第2実施形態]
第1実施形態では、インク色の濃度Nに基づいて、ドットカウント値Dを補正し、補正後のドットカウント値D´と閾値Sとを比較して、ワイピングを実行するか否かを決定する処理を説明した。本実施形態では、プリントコントローラ202は、ドットカウント値補正を行う代わりに、閾値Sをインクの濃度Nに基づいて設定する閾値補正を行う。
図14を用いて、本実施形態の記録装置1が行うワイピングを説明する。図14(a)には、印刷要求を受け付けてから記録ヘッド8のワイピングが行われるまでの、第2実施形態における処理の流れが示されている。なお、図14におけるステップS1401,S1404〜S1406,S1408〜S1411の処理は、図13におけるステップS1301,S1302〜S1304,S1308〜S1311の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS1401の後、プリントコントローラ202は、図14(b)に示すテーブルを参照して、記録動作終了時における各インク色の濃度Nに基づき、各インク色の係数Kを導出する(ステップS1402)。なお、本実施形態における係数Kは、閾値Sを濃度Nに応じて補正するための係数である。図14(b)に示すように、本実施形態では、インク濃度が初期値Nrefと上限値Nmaxとの中間値を超えたときに、係数Kを、1.0より大きい値(1.5)から1.0に切り替えるようにしている。しかし、図14(b)に示すテーブルは例示に過ぎず、上記中間値以外の値が、係数Kを切り替える値としてテーブルに設定されていてもよい。
プリントコントローラ202は、図14(c)に示される各インク色の閾値Sに、各インク色について導出した係数Kをそれぞれ乗算して得られる閾値を、各インク色の補正後の閾値S´として取得する(ステップS1403)。図14(c)に示すように、本実施形態では、ブラックKの閾値Skには予め2.0×10^8[dot]が設定されている。また、シアンCの閾値Sc、マゼンタMの閾値SmおよびイエロYの閾値Syには、予め1.0×10^8[dot]が設定されている。なお、図14(b)や図14(c)に示すテーブル(数値)は、予めROM203等の記憶部に記憶されているものとする。
ステップS1406の後、プリントコントローラ202は、インク色xについて、ステップS1405で取得したドットカウント値Dと、ステップS1403で取得した補正後の閾値S´とを比較する(ステップS1407)。以下、インク色xに対応する補正後の閾値S´をS´xと記す。
ドットカウント値Dxが閾値S´xを超えていない場合には(ステップS1407のNO)、処理はステップS1408に移行する。ドットカウント値Dxが閾値S´xを超えている場合には(ステップS1407のYES)、処理はステップS1410に移行する。
以上のように、本実施形態では、記録ヘッド8をワイピングするか否かを決定するための各インク色の閾値Sを、各インク色の濃度Nに基づいて補正する。具体的には、各インク色の濃度Nが濃度閾値(ブラックKの場合は0.0842、ブラックK以外のインクの場合は0.0632)を超えている場合に、各インク色の閾値Sを、各インク色の濃度Nが濃度閾値以下である場合よりも小さい値に補正する。したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、循環型のインク供給系を採用する記録装置において、インク濃縮を考慮したワイプタイミングの調整を行うことができる。
[第3実施形態]
記録媒体Sと記録ヘッド8との相対速度(ここでは、搬送速度)が高くなると、駆動周波数がリフィル周波数を上回り、図11(b)に示す現象が発生しやすくなる。そこで、本実施形態では、インク濃縮に加えて、搬送速度を考慮したワイプタイミングの調整を行う記録装置について説明する。
図15を用いて、本実施形態におけるワイピングを説明する。図15(a)には、印刷要求を受け付けてから記録ヘッド8の払拭が行われるまでの、第3実施形態における処理の流れが示されている。なお、図15(a)におけるステップS1501〜S1506,S1510〜S1513の処理は、図13(a)におけるステップS1301〜S1306,S1308〜S1311の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS1506の後、プリントコントローラ202は、図15(b)に示すテーブルを参照して、搬送速度に基づき、各インク色の係数Lを導出する(ステップS1507)。係数Lは、ドットカウント値Dを搬送速度に応じて補正するための係数である。なお、図15(b)に示すテーブルは例示に過ぎず、各相対速度に対応する係数Lには他の値が設定されていてもよい。但し、このようなテーブルでは一般的に、搬送速度が小さいほど、係数Lが小さくなるように設定される。なお、図15(b)に示すテーブル(数値)は、予めROM203等の記憶部に記憶されているものとする。また、テーブルを用いずに、所定の計算式を用いて、搬送速度から係数Lを導出するようにしてもよい。
次いで、プリントコントローラ202は、各インク色について導出した係数Lを、ステップS1506で取得された、補正後のドットカウント値D´xにそれぞれ乗算して、補正後のドットカウント値D´xを補正(更に補正)する(ステップS1508)。
ステップS1508の後、プリントコントローラ202は、インク色xについて、補正後のドットカウント値D´と、図13(e)に示される閾値Sとを比較する(ステップS1509)。
補正後のドットカウント値D´xが、閾値Sxを超えていない場合には(ステップS1509のNO)、処理はステップS1510に移行する。ドットカウント値D´xが、閾値Sxを超えている場合には(ステップS1509のYES)、処理はステップS1512に移行する。
以上のように、本実施形態では、記録動作時の各インク色のドットカウント値Dを求めて、各インク色のドットカウント値Dを、各インク色の濃度Nと搬送速度とに基づいて補正する。そして、各インク色の補正後のドットカウント値D´を用いて、ワイピングを行うか否かを判定している。したがって、本実施形態によれば、循環型のインク供給系を採用する記録装置において、インク濃縮と搬送速度とを考慮したワイプタイミングの調整を行うことができる。それにより、廃インクの量をさらに低減することができる。また、吐出口面8aの劣化をさらに抑制することができる。
なお、第2の実施形態においても同様に、搬送速度を考慮したワイプタイミングの調整を行うようにしてもよい。そのような形態を実現するには、例えば、ステップS1407の判定処理において、ドットカウント値Dxに係数Lを乗算して得られる値と、閾値Sxとを比較するようにすればよい。
[第4実施形態]
吐出口面8aに付着するインク(ミスト)は、粘度が高くなるほど拭き取りづらくなる。そこで、本実施形態では、インクの粘度に応じて、ブレードワイパユニット171によるワイピングの速度(以下、ブレードワイプ速度と呼ぶ。)を切り替える。
図16を用いて、本実施形態の記録装置1が行うワイピングを説明する。図16には、印刷要求を受け付けてから記録ヘッド8のワイピングが行われるまでの、第4実施形態における処理の流れが示されている。なお、図16におけるステップS1601〜S1604,S1606,S1607,S1612の処理は、図13におけるステップS1301〜S1304,S1308,S1309,S1311の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS1604の後、プリントコントローラ202は、図13(e)に示される、ドットカウント値Dの閾値Sを取得する。以下、ここで取得されるドットカウント値Dの閾値Sを、閾値S1と呼ぶ。プリントコントローラ202は、インク色xについて、ステップS1602で得られたドットカウント値Dと、閾値S1とを比較する(ステップS1605)。以下、インク色xに対応する閾値S1を閾値S1xと記す。
ドットカウント値Dxが閾値S1xを超えていない場合には(ステップS1605のNO)、処理はステップS1606に移行する。ドットカウント値Dxが閾値S1xを超えている場合には(ステップS1605のYES)、処理はステップS1608に移行する。
ステップS1608において、プリントコントローラ202は、インク色xについて、濃度Nと閾値S2とを比較する(ステップS1609)。閾値S2は、インクが高粘度であるか否かを判定するための閾値であって、図16(b)に示すように、予めインク色xごとに設定される。ここでは、図16(b)における0.0842,0.0632は、上述した、初期値Nrefと上限値Nmaxとの中間値である。なお、図16(b)に示すテーブルは例示に過ぎず、初期値Nrefと上限値Nmaxとの中間値以外の値が設定されていてもよい。以下、インク色xに対応する閾値S2をS2xと記す。
濃度Nxが閾値S2xを超えている場合には(ステップS1608のYES)、プリントコントローラ202は、ブレードワイプ速度を低速に設定する(ステップS1609)。濃度Nxが閾値S2xを超えていない場合には(ステップS1608のNO)、プリントコントローラ202は、ブレードワイプ速度を高速に設定する(ステップS1610)。
そして、プリントコントローラ202は、ワイピングを実行する(ステップS1611)。その際、プリントコントローラ202は、ステップS1608〜S1610の処理で設定したブレードワイプ速度に従って、ワイピングユニット17を移動させる。
以上のように、本実施形態では、吐出口面8aに付着しているインクの粘度が高いと判断した場合には、ブレードワイプ速度を低速に設定する。それにより、インクの増粘が進行した場合でも、吐出口面8aに付着するインクの拭き残し量を少なくすることができ、吐出口面8aを適切な状態に保つことができる。
[第5実施形態]
第4実施形態では、インクの粘度に応じてブレードワイプ速度を調整する記録装置について説明した。本実施形態では、インクの粘度に応じてブレードワイプ回数を調整する記録装置について説明する。
図17を用いて、本実施形態の記録装置1が行うワイピングを説明する。図17には、印刷要求を受け付けてから記録ヘッド8のワイピングが行われるまでの、第5実施形態における処理の流れが示されている。なお、図17におけるステップS1701〜S1707,S1712の処理は、図16におけるステップS1601〜S1607,S1612の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS1708の判定処理において、濃度Nxが閾値S2xを超えている場合(ステップS1708のYES)、プリントコントローラ202は、ブレードワイプ回数を3回に設定する(ステップS1709)。濃度Nxが閾値S2xを超えていない場合には(ステップS1708のNO)、プリントコントローラ202は、ブレードワイプ回数を1回に設定する(ステップS1710)。
そして、プリントコントローラ202は、ワイピングを実行する(ステップS1711)。その際、プリントコントローラ202は、ステップS1708〜S1710の処理で設定したブレードワイプ回数に従って、ワイピングユニット17を移動させる。
以上のように、本実施形態では、吐出口面8aに付着しているインクの粘度が高いと判断した場合には、ブレードワイプ回数を、インクの粘度が低いと判断した場合に設定する回数(1回)よりも多い回数(3回)に設定する。それにより、インクの増粘が進行した場合でも、ワイピング実行時のインクの拭き残し量を少なくすることができ、吐出口面8aを適切な状態に保つことができる。なお、ステップS1709,S1710において設定されるブレードワイプ回数は例示に過ぎず、記録装置の性能等に応じて他の値が設定されてもよい。
[第6実施形態]
記録装置1は、上述したように、ワイピングを実行した後、予備吐出を行って、ワイピングにより吐出口84に押し込まれたインクを排出させる。その際、押し込まれたインク(増粘インク)が吐出口84内のインクによって拡散(再溶解)されるまで待機してから、予備吐出を行う必要がある。その理由は、吐出口84において増粘インクが拡散されていない状態、すなわち増粘インクによって吐出口84が目詰まりした状態で予備吐出を行うと、吐出不良や不吐出が発生し予備吐出の効果が十分に発揮されなくなるからである。
そこで、本実施形態では、ブレードワイピングを実行してから予備吐出を行うまでの待機時間(以下、予備吐出待機時間と呼ぶ。)を、インクの粘度に応じて調整する記録装置について説明する。
図18を用いて、本実施形態の記録装置1が行うワイピングを説明する。図18には、印刷要求を受け付けてから記録ヘッド8のワイピングが行われるまでの、第6実施形態における処理の流れが示されている。なお、図18におけるステップS1801〜S1807,S1812の処理は、図16におけるステップS1601〜S1607,S1612の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS1808の判定処理において、濃度Nxが閾値S2xを超えている場合には(ステップS1808のYES)、プリントコントローラ202は、予備吐出待機時間を3秒に設定する(ステップS1809)。濃度Nxが閾値S2xを超えていない場合には(ステップS1808のNO)、プリントコントローラ202は、予備吐出待機時間を1秒に設定する(ステップS1810)。
そして、プリントコントローラ202は、ワイピングを実行する(ステップS1811)。ワイピング実行後、プリントコントローラ202は、ステップS1808〜S1810の処理で設定した予備吐出待機時間が経過するのを待ってから、予備吐出を実行する。
以上のように、本実施形態では、吐出口面8aに付着しているインクの粘度が高いと判断した場合には、予備吐出待機時間を、インクの粘度が低いと判断した場合に設定する時間(1秒)よりも長い時間(3秒)に設定する。それにより、吐出口84に押し込まれた増粘インクが拡散されるまでの待機時間をインク粘度に応じて変更するため、増粘インクによって吐出口が目詰まりした状態で予備吐出が行われることを回避することができる。その結果、吐出不良や不吐出を発生させることなく予備吐出を適切に実行することが可能となる。なお、ステップS1809,S1810において設定される予備吐出待機時間は例示に過ぎず、インクの性質等に応じて他の値が設定されてもよい。
上記の各実施形態では、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドを有する記録装置を例に説明したが、各実施形態は、シリアルタイプの記録ヘッドを有する記録装置にも同様にして適用可能である。
また、上記の各実施形態では、複数色のインクを吐出可能なカラーインクジェット記録ヘッドを有する記録装置を例に説明した。しかし、各実施形態は、1色のインクのみを吐出する記録ヘッド、例えばモノクロ専用のインクジェット記録ヘッドを有する記録装置にも同様にして適用可能である。
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
8 記録ヘッド(ヘッドユニット)
8a 吐出口面
80 インク吐出部
80a 記録素子基板
80b 共通供給流路(IN流路)
80c 共通回収流路(OUT流路)
83 フィルタ
84 吐出口
141 メインタンク
151 サブタンク
151a 液面検知手段
202 プリントコントローラ
C1 タンク接続流路
C2 供給流路
C3 リリーフ流路
C4 回収流路
C5 ヘッド交換流路
P0 減圧ポンプ
P1 供給ポンプ
P2 回収ポンプ
V0 大気開放弁
V1 タンク供給弁
V2 供給弁
V3 リリーフ弁
V4 回収弁
V5 ヘッド交換弁

Claims (14)

  1. インクを吐出する吐出口が配列された吐出口面と、前記吐出口と連通しインクが充填される圧力室と、を有する記録ヘッドと、
    前記圧力室の内部を通るようにインクを循環させる循環手段と、
    前記吐出口面を払拭するワイピング動作を行う払拭手段と、
    前記吐出口から吐出されたインク滴をカウントするドットカウント手段と、
    インクの濃度を取得する濃度取得手段と、
    前記ドットカウント手段によってカウントされたカウント値に基づいて第1のタイミングで前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる制御手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記制御手段は、前記濃度取得手段によって取得された濃度が濃度閾値を越えている場合に、前記第1のタイミングより早い第2のタイミングで前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記濃度に基づいて、前記カウント値を補正するカウント値補正手段をさらに備え、
    前記制御手段は、
    前記カウント値補正手段によって補正された前記カウント値がカウント閾値を超えている場合に、前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる
    ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記カウント値補正手段は、
    前記カウント値に前記濃度に応じた係数を乗算して、前記カウント値を補正し、
    前記濃度に応じた係数には、前記濃度が前記濃度閾値を越えている場合に、前記濃度が前記濃度閾値以下である場合よりも大きい値が設定される
    ことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記カウント値補正手段は、
    前記補正されたカウント値に、前記記録ヘッドと記録媒体との相対速度に基づき設定される係数を乗算して、前記補正されたカウント値をさらに補正し、
    前記相対速度に基づき設定される係数には、前記相対速度が小さいほどより小さい値が設定される
    ことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記濃度に基づいて、前記第1のタイミングに基づき予め設定されたカウント閾値を補正する閾値補正手段をさらに備え、
    前記制御手段は、
    前記カウント値が前記閾値補正手段によって補正された前記カウント閾値を超えている場合に、前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる
    ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記閾値補正手段は、
    前記カウント閾値に前記濃度に応じた係数を乗算して、前記カウント閾値を補正し、
    前記濃度に応じた係数には、前記濃度が前記濃度閾値以下である場合に、前記濃度が前記濃度閾値を越えている場合よりも大きい値が設定される
    ことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
  7. インクを吐出する吐出口が配列された吐出口面と、前記吐出口と連通しインクが充填される圧力室と、を有する記録ヘッドと、
    前記圧力室の内部を通るようにインクを循環させる循環手段と、
    前記吐出口面を払拭するワイピング動作を行う払拭手段と、
    前記吐出口から吐出されたインク滴をカウントするドットカウント手段と、
    インクの濃度を取得する濃度取得手段と、
    前記ドットカウント手段によってカウントされたカウント値に基づいて所定のタイミングで前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる制御手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記制御手段は、前記濃度に基づき設定したワイプ速度で、前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる
    ことを特徴とするインクジェット記録装置。
  8. 前記制御手段は、
    前記濃度が濃度閾値を超えている場合には、前記ワイプ速度を、前記濃度が前記濃度閾値以下である場合に設定する速度よりも低い速度に設定する
    ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
  9. インクを吐出する吐出口が配列された吐出口面と、前記吐出口と連通しインクが充填される圧力室と、を有する記録ヘッドと、
    前記圧力室の内部を通るようにインクを循環させる循環手段と、
    前記吐出口面を払拭するワイピング動作を行う払拭手段と、
    前記吐出口から吐出されたインク滴をカウントするドットカウント手段と、
    インクの濃度を取得する濃度取得手段と、
    前記ドットカウント手段によってカウントされたカウント値に基づいて所定のタイミングで前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる制御手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記制御手段は、前記濃度に基づき設定したワイプ回数で、前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる
    ことを特徴とするインクジェット記録装置。
  10. 前記制御手段は、
    前記濃度が濃度閾値を超えている場合には、前記ワイプ回数を、前記濃度が前記濃度閾値以下である場合に設定する回数よりも大きい回数に設定する
    ことを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
  11. インクを吐出する吐出口が配列された吐出口面と、前記吐出口と連通しインクが充填される圧力室と、を有する記録ヘッドと、
    前記圧力室の内部を通るようにインクを循環させる循環手段と、
    前記吐出口面を払拭するワイピング動作を行う払拭手段と、
    前記吐出口から吐出されたインク滴をカウントするドットカウント手段と、
    インクの濃度を取得する濃度取得手段と、
    前記ドットカウント手段によってカウントされたカウント値に基づいて所定のタイミングで前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる制御手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記制御手段は、前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせた後、前記濃度に基づき設定した待機時間が経過してから、予備吐出を実行する
    ことを特徴とするインクジェット記録装置。
  12. 前記制御手段は、
    前記濃度が濃度閾値を超えている場合には、前記待機時間を、前記濃度が前記濃度閾値以下である場合に設定する待機時間よりも長い時間に設定する
    ことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録装置。
  13. インクを吐出する吐出口が配列された吐出口面と、前記吐出口と連通しインクが充填される圧力室と、を有する記録ヘッドと、
    前記圧力室の内部を通るようにインクを循環させる循環手段と
    前記吐出口面を払拭するワイピング動作を行う払拭手段と、を備えるインクジェット記録装置の制御方法であって、
    前記吐出口から吐出されたインク滴をカウントするドットカウントステップと、
    インクの濃度を取得する濃度取得ステップと、
    前記カウントされたカウント値に基づいて第1のタイミングで前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせる制御ステップと、を含み
    前記制御ステップにおいて、前記濃度取得ステップにおいて取得された濃度が濃度閾値を越えている場合に、前記第1のタイミングより早い第2のタイミングで前記払拭手段に前記ワイピング動作を行わせることを特徴とする制御方法。
  14. コンピュータを、請求項1から請求項12のうちのいずれか1項に記載のインクジェット記録装置として機能させるためのプログラム。
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